(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】昇降装置およびメンテナンスシステム
(51)【国際特許分類】
B66F 7/04 20060101AFI20241126BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B66F7/04
H02G1/02
(21)【出願番号】P 2021047569
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】510330541
【氏名又は名称】株式会社牛越製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝年
(72)【発明者】
【氏名】牛越 弘彰
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-87442(JP,A)
【文献】特開昭49-28766(JP,A)
【文献】特開2004-286114(JP,A)
【文献】特開平4-161325(JP,A)
【文献】特開昭57-38114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 3/24,7/04,7/08
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に空間が形成される鉄骨型の柱状部材の内側で昇降対象物を昇降させるための昇降装置であって、
柔軟性を有する樹脂製のチューブと、前記チューブの一端部が固定されるとともに前記昇降装置の下端側に配置される固定部材と、前記チューブの一端から前記チューブの内側に気体を供給する気体供給機構とを備え、
前記チューブは、少なくとも一部分が上下方向を軸方向とする膨らんだ状態の筒状をなすとともに一端部が前記固定部材に固定される第1チューブ部と、窄んだ状態で前記第1チューブ部の内周側に配置される第2チューブ部とが形成されるように、前記第1チューブ部の上端で下側に向かって折り返されており、
前記第1チューブ部の他端となる前記第1チューブ部の上端と前記第2チューブ部の一端となる前記第2チューブ部の上端とを繋ぐ接続部は、前記昇降対象物が載置される載置部となっており、
前記チューブは、前記第2チューブ部の他端に繋がるとともに、前記固定部材から引き出される第3チューブ部を備え、
前記固定部材には、前記第3チューブ部が挿通される貫通穴と、前記気体供給機構から供給される気体が通過する気体供給穴とが形成され、
前記気体供給機構によって前記第1チューブ部の一端から前記第1チューブ部の内側に気体が供給されると、前記チューブの、前記第2チューブ部だった部分が順次、前記載置部の一部分となった後に前記第1チューブ部の一部分になって前記載置部が上昇するとともに、前記チューブの、前記第3チューブ部だった部分が順次、前記第1チューブ部の内周側に引き込まれて前記第2チューブ部の一部分になり、
前記固定部材からの引出し方向に前記第3チューブ部が引っ張られると、前記チューブの、前記第1チューブ部だった部分が順次、前記載置部の一部分となった後に前記第2チューブ部の一部分になって前記載置部が下降するとともに、前記チューブの、前記第2チューブ部だった部分が順次、前記第1チューブ部の内周側から引き出されて前記第3チューブ部の一部分になることを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
前記固定部材の内部には、前記貫通穴に配置される前記第3チューブ部の一部分に接触するとともに前記第3チューブ部の移動に伴って回転するローラが配置されていることを特徴とする請求項1記載の昇降装置。
【請求項3】
前記第1チューブ部は、前記第1チューブ部の下端部を構成し水平方向を軸方向とする膨らんだ状態の筒状をなすとともに一端部が前記固定部材に固定される水平部と、前記水平部の他端から上側に向かって立ち上がるとともに上下方向を軸方向とする膨らんだ状態の筒状をなす鉛直部とから構成され、
前記固定部材には、前記鉛直部の下端部および前記水平部の内周側に配置されるとともに前記第2チューブ部の下端部が内周側に配置される筒状のガイド部材が固定され、
前記ガイド部材は、前記水平部と前記鉛直部の下端部との間で前記第2チューブ部を案内することを特徴とする請求項1または2記載の昇降装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の昇降装置と、前記載置部に載置される前記昇降対象物とを備え、
前記昇降対象物は、前記柱状部材に塗装を行うための塗装機能、および、前記柱状部材の塗装前に前記柱状部材にケレン処理を行って前記柱状部材の素地を調整するための素地調整機能の少なくともいずれか一方の機能を有するメンテナンス装置であり、
前記第2チューブ部および前記第3チューブ部の内周側には、前記メンテナンス装置から引き出される配管および配線の少なくともいずれか一方が配置されていることを特徴とするメンテナンスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内側に空間が形成される鉄骨型の架線柱等の柱状部材のメンテナンス等を行うときに使用される昇降装置に関する。また、本発明は、この昇降装置を備えるメンテナンスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道用の架線柱が広く利用されている。鉄道用の架線柱として、内側に空間が形成される鉄骨型の架線柱が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の架線柱は、たとえば、複数の山型鋼等の鋼材によって構成されている。架線柱の側面には、複数の開口が形成されている。特許文献1では、一対の架線柱が線路を挟んだ状態で設置されている。一対の架線柱の上端部は、架線を吊るすための架線梁(横梁)によって繋がれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄骨型の架線柱の場合、架線柱の腐食を防止するために、定期的に架線柱の表面の塗料を塗り替える必要がある。従来、架線柱の塗料の塗り替え時には、架線柱に塗料を塗る塗装作業と、塗装作業前に架線柱にケレン処理を行って架線柱の素地を調整する素地調整作業とを作業者が手作業で行っている。手作業での塗装作業や素地調整作業は手間がかかる大変な作業であるため、本願発明者は、自動で塗装を行う塗装装置や自動でケレン処理を行うケレン装置を架線柱の内側の空間に配置して、塗装作業や素地調整作業を行うこと検討している。この場合、架線柱の内側に配置される塗装装置やケレン装置を架線柱に沿って昇降させる昇降装置を設置する必要があるが、この昇降装置の構成は、簡易な構成であることが好ましい。
【0005】
そこで、本発明の課題は、内側に空間が形成される鉄骨型の架線柱等の鉄骨型の柱状部材の内側で昇降対象物を昇降させるための昇降装置において、構成を簡素化することが可能な昇降装置を提供することにある。また、本発明の課題は、この昇降装置を備えるメンテナンスシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の昇降装置は、内側に空間が形成される鉄骨型の柱状部材の内側で昇降対象物を昇降させるための昇降装置であって、柔軟性を有する樹脂製のチューブと、チューブの一端部が固定されるとともに昇降装置の下端側に配置される固定部材と、チューブの一端からチューブの内側に気体を供給する気体供給機構とを備え、チューブは、少なくとも一部分が上下方向を軸方向とする膨らんだ状態の筒状をなすとともに一端部が固定部材に固定される第1チューブ部と、窄んだ状態で第1チューブ部の内周側に配置される第2チューブ部とが形成されるように、第1チューブ部の上端で下側に向かって折り返されており、第1チューブ部の他端となる第1チューブ部の上端と第2チューブ部の一端となる第2チューブ部の上端とを繋ぐ接続部は、昇降対象物が載置される載置部となっており、チューブは、第2チューブ部の他端に繋がるとともに、固定部材から引き出される第3チューブ部を備え、固定部材には、第3チューブ部が挿通される貫通穴と、気体供給機構から供給される気体が通過する気体供給穴とが形成され、気体供給機構によって第1チューブ部の一端から第1チューブ部の内側に気体が供給されると、チューブの、第2チューブ部だった部分が順次、載置部の一部分となった後に第1チューブ部の一部分になって載置部が上昇するとともに、チューブの、第3チューブ部だった部分が順次、第1チューブ部の内周側に引き込まれて第2チューブ部の一部分になり、固定部材からの引出し方向に第3チューブ部が引っ張られると、チューブの、第1チューブ部だった部分が順次、載置部の一部分となった後に第2チューブ部の一部分になって載置部が下降するとともに、チューブの、第2チューブ部だった部分が順次、第1チューブ部の内周側から引き出されて第3チューブ部の一部分になることを特徴とする。
【0007】
本発明の昇降装置では、柔軟性を有する樹脂製のチューブは、少なくとも一部分が上下方向を軸方向とする膨らんだ状態の筒状をなすとともに一端部が固定部材に固定される第1チューブ部と、窄んだ状態で第1チューブ部の内周側に配置される第2チューブ部とが形成されるように、第1チューブ部の上端で下側に向かって折り返されており、第1チューブ部の他端(上端)と第2チューブ部の一端(上端)とを繋ぐ接続部は、昇降対象物が載置される載置部となっている。また、本発明では、チューブは、第2チューブ部の他端に繋がるとともに、固定部材から引き出される第3チューブ部を備えている。
【0008】
さらに、本発明では、気体供給機構によって第1チューブ部の一端から第1チューブ部の内側に気体が供給されると載置部が上昇し、固定部材からの引出し方向に第3チューブ部が引っ張られると載置部が下降する。そのため、本発明では、チューブと固定部材と気体供給機構とを用いた簡易な構成で、載置部に載置される昇降対象物を昇降させることが可能になる。すなわち、本発明では、昇降装置の構成を簡素化することが可能になる。
【0009】
また、本発明では、柔軟性を有する樹脂製のチューブが柱状部材の内側に配置されるため、昇降装置が使用される柱状部材の断面形状や断面の大きさが異なっていても、共通のチューブを柱状部材の形状等に合わせて柱状部材の内側に配置することが可能になり、その結果、共通のチューブを用いて昇降対象物を昇降させることが可能になる。したがって、本発明では、昇降装置の汎用性を高めることが可能になる。また、本発明では、柔軟性を有する樹脂製のチューブが柱状部材の内側に配置されるため、柱状部材の側面に形成される開口が狭くても、柱状部材の側面の開口から柱状部材の内側にチューブを入れることが可能になる。
【0010】
なお、下端に昇降対象物が取り付けられるワイヤーを用いて、ワイヤーに吊り下げられた昇降対象物を柱状部材の内側で昇降させることも可能であるが、この場合、柱状部材の上端が蓋等によって塞がれていると、昇降対象物を昇降させることが困難になるおそれがあるが、本発明では、柱状部材の上端が蓋等によって塞がれていても、柱状部材の内側で昇降対象物を昇降させることが可能になる。
【0011】
本発明において、固定部材の内部には、貫通穴に配置される第3チューブ部の一部分に接触するとともに第3チューブ部の移動に伴って回転するローラが配置されていることが好ましい。このように構成すると、第1チューブ部の内側に供給される気体が貫通穴から漏れるのを抑制するために貫通穴の内径が比較的小さくなっていても、貫通穴の中で第3チューブ部を円滑に移動させることが可能になる。したがって、第1チューブ部の内側に供給される気体が貫通穴から漏れるのを抑制して第1チューブ部および載置部の形状を維持することが可能になるとともに、載置部に載置される昇降対象物を円滑に昇降させることが可能になる。
【0012】
本発明において、第1チューブ部は、第1チューブ部の下端部を構成し水平方向を軸方向とする膨らんだ状態の筒状をなすとともに一端部が固定部材に固定される水平部と、水平部の他端から上側に向かって立ち上がるとともに上下方向を軸方向とする膨らんだ状態の筒状をなす鉛直部とから構成され、固定部材には、鉛直部の下端部および水平部の内周側に配置されるとともに第2チューブ部の下端部が内周側に配置される筒状のガイド部材が固定され、ガイド部材は、水平部と鉛直部の下端部との間で第2チューブ部を案内することが好ましい。
【0013】
このように構成すると、一端部が固定部材に固定される水平部の内側で水平方向と平行になるように第2チューブ部を配置することが可能になるため、第2チューブ部の他端に繋がる第3チューブ部を固定部材から水平方向に引き出すことが可能になる。したがって、たとえば、第1チューブ部が鉛直部のみよって構成されていて、固定部材から下側に向かって第3チューブ部が引き出される場合と比較して、第3チューブ部を引き出しやすくなる。また、このように構成すると、水平部と鉛直部の下端部との間で第2チューブ部を案内するガイド部材が固定部材に固定されているため、水平部と鉛直部とによって第1チューブ部が構成されていても、水平部と鉛直部の下端部との間で第2チューブ部を円滑に移動させることが可能になる。
【0014】
本発明の昇降装置は、載置部に載置される昇降対象物を備えるメンテナンスシステムに用いることができる。このメンテナンスシステムでは、たとえば、昇降対象物は、柱状部材に塗装を行うための塗装機能、および、柱状部材の塗装前に柱状部材にケレン処理を行って柱状部材の素地を調整するための素地調整機能の少なくともいずれか一方の機能を有するメンテナンス装置であり、第2チューブ部および第3チューブ部の内周側には、メンテナンス装置から引き出される配管および配線の少なくともいずれか一方が配置されている。
【0015】
このメンテナンスシステムでは、昇降装置の構成を簡素化することが可能になる。また、このメンテナンスシステムでは、メンテナンス装置から引き出されて第2チューブ部および第3チューブ部の内周側に配置される配管や配線に張力をかけた状態で載置部を昇降させて、載置部に載置されるメンテナンス装置を上昇させたり、下降させたりすることが可能になる。すなわち、メンテナンス装置を載置部に所定の接触圧で接触させた状態でメンテナンス装置を昇降させることが可能になる。したがって、昇降装置によって昇降するメンテナンス装置の昇降時の状態を安定させることが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明では、内側に空間が形成される鉄骨型の架線柱等の鉄骨型の柱状部材の内側で昇降対象物を昇降させるための昇降装置の構成を簡素化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(A)は、本発明の実施の形態にかかるメンテナンスシステムの構成を説明するための側面図であり、(B)は、(A)に示すメンテナンスシステムの構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(メンテナンスシステムの概略構成)
図1(A)は、本発明の実施の形態にかかるメンテナンスシステム1の構成を説明するための側面図であり、
図1(B)は、
図1(A)に示すメンテナンスシステム1の構成を説明するための断面図である。
図2は、
図1(B)のE部の拡大図である。
【0020】
本形態のメンテナンスシステム1は、屋外に設置される柱状部材2のメンテナンスを行うときに使用される。本形態の柱状部材2は、鉄道用の架線柱である。したがって、以下では、柱状部材2を「架線柱2」とする。架線柱2は、複数の山型鋼等の鋼材3によって構成された鉄骨型の架線柱である。架線柱2は、複数の鋼材3が溶接されることによって形成されている。架線柱2の内側(内部)には、空間が形成されている。また、架線柱2の側面には、複数の開口が形成されている。
【0021】
架線柱2は、たとえば、線路を挟むように線路の両側に設置されており、線路の両側に設置される架線柱2の上端部は、架線を吊るすための架線梁4によって繋がれている。架線柱2は、たとえば、四角柱状に形成されており、架線柱2の断面形状は、正方形状または長方形状となっている。なお、架線柱2は、三角柱状に形成されていても良いし、三角柱状および四角柱状以外の多角柱状に形成されていても良い。
【0022】
メンテナンスシステム1は、架線柱2の塗装を行うときに使用される。メンテナンスシステム1は、架線柱2の内側に配置されるメンテナンス装置としての塗装装置6と、架線柱2の内側で塗装装置6を昇降させるための昇降装置7とを備えている。塗装装置6は、架線柱2に塗装を行うための塗装機能を有している。本形態の塗装装置6は、昇降装置7によって昇降させられる昇降対象物となっている。
【0023】
塗装装置6は、たとえば、霧状の塗料を噴射する塗料用ノズルと、塗料用ノズルから噴射された塗料を拡散させるための圧縮空気を噴射するエアノズルと、塗料用ノズルおよびエアノズルが取り付けられるベース板8とを備えている。ベース板8は、たとえば、円板状に形成されており、ベース板8の上面に塗料用ノズルおよびエアノズルが取り付けられている。塗装装置6からは、配管9が引き出されている。配管9は、下側に向かって引き出されている。配管9には、塗料用ノズルに塗料等を供給するための配管と、エアノズルに圧縮空気を供給するための配管とが含まれている。配管9は、柔軟性を有するホースである。
【0024】
(昇降装置の構成)
図3は、
図1(B)のF部の拡大図である。
【0025】
昇降装置7は、柔軟性を有する樹脂製のチューブ10と、チューブ10の一端部が固定されるとともに昇降装置7の下端側に配置される固定部材11と、チューブ10の一端からチューブ10の内側に気体を供給する気体供給機構12と、固定部材11が載置されて固定されるベース部材(図示省略)とを備えている。ベース部材は、地面に設置されている。気体供給機構12は、送風機(ファン)または圧縮機(コンプレッサー)である。本形態の気体供給機構12は、チューブ10の内側に圧縮空気を供給する。気体供給機構12は、架線柱2の下端部の外側に配置されている。また、気体供給機構12は、たとえば、ベース部材の近傍に配置されている。
【0026】
チューブ10は、安価なポリエチレン製のポリチューブである。チューブ10の重量は軽くなっている。また、チューブ10の肉厚は薄くなっている。ただし、
図2、
図3では、説明の便宜上、チューブ10の肉厚を厚くして図示している。チューブ10は、気密性を有しており、膨らむと円筒状となる。チューブ10は、一部分が上下方向を軸方向とする膨らんだ状態の筒状をなすとともに一端部が固定部材11に固定される第1チューブ部10aと、窄んだ状態で第1チューブ部10aの内周側に配置される第2チューブ部10bとが形成されるように、第1チューブ部10aの上端で下側に向かって折り返されている。
【0027】
すなわち、第1チューブ部10aの内周側に第2チューブ部10bが配置されるように、チューブ10は、第1チューブ部10aの上端において第1チューブ部10aの内側に折り曲げられている。チューブ10の、第1チューブ部10aにおいて外周面をなす面を外周面10cとし、チューブ10の、第1チューブ部10aにおいて内周面をなす面を内周面10dとすると、第2チューブ部10bでは、外周面10cは、第2チューブ部10bの内周面をなし、内周面10dは、第2チューブ部10bの外周面をなしている。
【0028】
第1チューブ部10aは、円筒状に形成されている。第1チューブ部10aは、内部に充填される空気によって膨らんでいる。気体供給機構12は、膨らんだ状態の第1チューブ部10aの形状が維持されるように、第1チューブ部10aの内側に空気を送り込む。たとえば、気体供給機構12は、膨らんだ状態の第1チューブ部10aの形状が維持されるように、第1チューブ部10aの内側に常時、空気を送り込む。
【0029】
第1チューブ部10aの他端となる第1チューブ部10aの上端と第2チューブ部10bの一端となる第2チューブ部10bの上端とを繋ぐ接続部は、塗装装置6が載置される載置部10eとなっている。載置部10eは、円環状に形成されている。載置部10eには、塗装装置6のベース板8が載置されている。また、チューブ10は、第2チューブ部10bの他端に繋がるとともに、固定部材11から引き出される第3チューブ部10fを備えている。
【0030】
第1チューブ部10aは、上下方向を軸方向とする膨らんだ状態の筒状をなす鉛直部10gと、水平方向を軸方向とする膨らんだ状態の筒状をなす水平部10hとから構成されている。水平部10hは、第1チューブ部10aの下端部を構成している。水平部10hの一端部は、固定部材11に固定されている。鉛直部10gは、水平部10hの他端から上側に向かって立ち上がっている。鉛直部10gは、架線柱2の内側に配置されている。鉛直部10gの外径は、たとえば、100~200mm程度となっている。鉛直部10gの上端は、第1チューブ部10aの上端となっている。水平部10hは、架線柱2の下端部の開口から架線柱2の外側に引き出されている。
【0031】
第3チューブ部10fは、固定部材11から水平方向に引き出されている。また、第3チューブ部10fは、第1チューブ部10aの一端部から離れる方向に引き出されている。第3チューブ部10fでは、外周面10cは、第3チューブ部10fの内周面をなし、内周面10dは、第3チューブ部10fの外周面をなしている。なお、
図1、
図3では、固定部材11から引き出された第3チューブ部10fは膨らんでいるが、固定部材11から引き出された第3チューブ部10fは窄んでいることが好ましい。また、窄んだ状態の第3チューブ部10fが捩じられていることがより好ましい。
【0032】
第2チューブ部10bおよび第3チューブ部10fの内周側には、配管9が配置されている。配管9の端部は、第3チューブ部10fの外側まで引き出されている。配管9の端部には、塗装装置6に塗料を供給する塗料の供給機構と、塗装装置6に圧縮空気を供給する気体供給機構とが接続されている。
【0033】
固定部材11は、架線柱2の下端部の外側に配置されている。水平方向における固定部材11の一端部は、第1チューブ部10aの一端部(具体的には、水平部10hの一端部)が固定される円柱状のチューブ固定部11aとなっている。チューブ固定部11aは、水平部10hの一端部の内側に挿入されている。水平部10hの一端部は、水平部10hの一端部の外周側に配置されるクランプ部材13とチューブ固定部11aの外周面との間に挟まれた状態でチューブ固定部11aに固定されている。チューブ固定部11aの外径は、鉛直部10gの外径よりも小さくなっている。
【0034】
固定部材11には、第3チューブ部10fが挿通される貫通穴11bと、気体供給機構12から供給される圧縮空気が通過する気体供給穴11cとが形成されている。貫通穴11bは、水平方向で固定部材11を貫通している。貫通穴11bは、固定部材11の中心に形成されている。貫通穴11bには、第3チューブ部10fの一部分と、第3チューブ部10fの内周側に配置される配管9の一部分とが配置されている。
【0035】
気体供給穴11cは、たとえば、固定部材11の外周面と水平方向における固定部材11の一端面(具体的には、チューブ固定部11a側の端面)との間で形成されている。固定部材11の外周面の、気体供給穴11cが形成された部分には、コネクタ14が取り付けられている。圧縮空気は、気体供給穴11cから第1チューブ10aの内側に向かって
図3の矢印の方向に供給される。
【0036】
固定部材11の内部には、貫通穴11bに配置される第3チューブ部10fの一部分に接触するとともに第3チューブ部10fの移動に伴って回転するローラ15が配置されている。ローラ15は、第3チューブ部10fの一部分を挟むように2個配置されている。ローラ15は、固定部材11に回転可能に保持されている。固定部材11の内部の、ローラ15が配置される部分には、ローラ15の配置空間11dが形成されている。
【0037】
固定部材11には、鉛直部10gの下端部および水平部10hの内周側に配置されるとともに第2チューブ部10bの下端部が内周側に配置される筒状のガイド部材16が固定されている。ガイド部材16は、水平方向を軸方向として配置される第1ガイド部16aと、円弧状に湾曲する第2ガイド部16bとから構成されている。第1ガイド部16aの一端部は、チューブ固定部11aに固定されている。具体的には、第1ガイド部16aの一端部は、チューブ固定部11aの端面に形成される凹部の中に配置された状態でこの凹部に固定されている。第1ガイド部16aの内周側は、貫通穴11bに通じている。第2ガイド部16bの一端は、第1ガイド部16aの他端に繋がっている。第2ガイド部16bの他端に形成される開口は、上側を向いている。ガイド部材16は、水平部10hと鉛直部10gの下端部との間で第2チューブ部10bを案内する機能を果たしている。
【0038】
昇降装置7では、気体供給機構12によって第1チューブ部10aの一端から第1チューブ部10aの内側に圧縮空気が供給されると、チューブ10の、第2チューブ部10bだった部分が順次、載置部10eの一部分になった後に第1チューブ部10aの一部分になって(具体的には、鉛直部10gの一部分になって)載置部10eが上昇するとともに(
図2の二点鎖線参照)、チューブ10の、第3チューブ部10fだった部分が順次、第1チューブ部10aの内周側に引き込まれて第2チューブ部10bの一部分になる。すなわち、気体供給機構12によって第1チューブ部10aの一端から第1チューブ部10aの内側に圧縮空気が供給されると、チューブ10の、第3チューブ部10fだった部分が第1チューブ部10aの内周側に引き込まれて、第1チューブ部10aの鉛直部10gおよび第2チューブ部10bが上側に向かって伸びる。
【0039】
また、昇降装置7では、固定部材11からの引出し方向に第3チューブ部10fが引っ張られると、チューブ10の、第1チューブ部10aだった部分が順次、載置部10eの一部分になった後に第2チューブ部10bの一部分になって載置部10eが下降するとともに、チューブ10の、第2チューブ部10bだった部分が順次、第1チューブ部10aの内周側から引き出されて第3チューブ部10fの一部分になる。すなわち、固定部材11からの引出し方向に第3チューブ部10fが引っ張られると、チューブ10の、第2チューブ部10bだった部分が順次、第1チューブ部10aの内周側から引き出されて、鉛直部10gおよび第2チューブ部10bが下側に向かって縮む。
【0040】
固定部材11からの引出し方向に第3チューブ部10fを引っ張る作業は、たとえば、作業員が手作業で行う。ただし、固定部材11からの引出し方向に第3チューブ部10fを引っ張るための引張り機構を昇降装置7が備えていて、第3チューブ部10fを引っ張る作業を自動で行っても良い。なお、鉛直部10gは、架線柱2の内側に配置されていて架線柱2を構成する複数の鋼材3に囲まれているため、チューブ10がポリチューブで形成されていても、鉛直部10gおよび第2チューブ部10bは、途中で折れ曲がることはなく上側に伸びていくとともに、途中で折れ曲がることはなく下側に縮んでいく。
【0041】
(架線柱の塗装方法)
メンテナンスシステム1で架線柱2の塗装を行うときには、まず、第2チューブ部10bおよび第3チューブ部10fの内周側に配管9が配置されている状態の塗装装置6と、第1チューブ部10aが窄んでいる状態のチューブ10の一部分とを、架線柱2の下端部の側面に形成される開口から架線柱2の内側に入れて配置する。その後、気体供給機構12によって第1チューブ部10aの内側に圧縮空気を供給して、架線柱2の上端部まで載置部10eを上昇させる。すなわち、載置部10eに載置される塗装装置6を架線柱2の上端部まで上昇させる。このときには、配管9に張力がかかるように、固定部材11からの引出し方向に配管9を軽く引っ張る。
【0042】
その後、固定部材11からの引出し方向に第3チューブ部10fを引っ張って、載置部10eを徐々に下降させる。すなわち、載置部10eに載置される塗装装置6を徐々に下降させる。このときには、第3チューブ部10fと一緒に配管9を引っ張る。具体的には、配管9に張力がかかるように配管9を引っ張る。本形態では、塗装装置6が徐々に下降するときには、塗装装置6は、架線柱2に向かって塗料を噴射するが、塗装装置6が上昇するときには、塗布装置6は、架線柱2に向かって塗料を噴射しない。すなわち、塗装装置6の下降時に、架線柱2の塗装が行われる。
【0043】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、柔軟性を有する樹脂製のチューブ10は、第1チューブ部10aと、窄んだ状態で第1チューブ部10aの内周側に配置される第2チューブ部10bとが形成されるように、第1チューブ部10aの上端で下側に向かって折り返されており、第1チューブ部10aの上端と第2チューブ部10bの上端とを繋ぐ接続部は、塗装装置6が載置される載置部10eとなっている。また、本形態では、チューブ10は、第2チューブ部10bの他端に繋がるとともに、固定部材11から引き出される第3チューブ部10fを備えている。
【0044】
さらに、本形態では、気体供給機構12によって第1チューブ部10aの一端から第1チューブ部10aの内側に気体が供給されると載置部10eが上昇し、固定部材11からの引出し方向に第3チューブ部10fが引っ張られると載置部10eが下降する。そのため、本形態では、チューブ10と固定部材11と気体供給機構12とを用いた簡易な構成で、載置部10eに載置される塗装装置6を昇降させることが可能になる。すなわち、本形態では、昇降装置7の構成を簡素化することが可能になる。
【0045】
本形態では、柔軟性を有する樹脂製のチューブ10の鉛直部10gが架線柱2の内側に配置されている。そのため、本形態では、塗装が行われる架線柱2の断面形状や断面の大きさが異なっていても、共通のチューブ10を架線柱2の形状等に合わせて架線柱2の内側に配置することが可能になり、その結果、共通のチューブ10を用いて塗装装置6を昇降させることが可能になる。したがって、本形態では、昇降装置7の汎用性を高めることが可能になる。また、本形態では、柔軟性を有する樹脂製のチューブ10の鉛直部10gが架線柱2の内側に配置されているため、架線柱2の下端部の側面に形成される開口が狭くても、第1チューブ部10aが窄んでいる状態のチューブ10を架線柱2の開口から架線柱2の内側に入れることが可能になる。
【0046】
本形態では、気体供給機構12によって第1チューブ部10aの一端から第1チューブ部10aの内側に圧縮空気が供給されると、第1チューブ部10aの鉛直部10gおよび第2チューブ部10bが上側に向かって伸びて、塗装装置6が上昇するとともに、固定部材11からの引出し方向に第3チューブ部10fが引っ張られると、鉛直部10gおよび第2チューブ部10bが下側に向かって縮んで、塗装装置6が下降する。そのため、本形態では、たとえば、架線柱2の上端が蓋等によって塞がれていても、架線柱2の内側で塗装装置6を昇降させることが可能になる。
【0047】
なお、本形態では、鉛直部10gが上下方向に伸縮しても、鉛直部10gの外周面は、架線柱2に対して上下動しない。そのため、本形態では、鉛直部10gの外周面が架線柱2に接触していても、鉛直部10gが伸縮したときに、鉛直部10gの外周面に傷が発生しにくい。したがって、本形態では、チューブ10がポリエチレン製のポリチューブであっても、鉛直部10gに穴が開くのを防止することが可能になる。
【0048】
本形態では、固定部材11の内部に、貫通穴11bに配置される第3チューブ部10fの一部分に接触するとともに第3チューブ部10fの移動に伴って回転するローラ15が配置されている。そのため、本形態では、第1チューブ部10aの内側に供給される圧縮空気が貫通穴11bから漏れるのを抑制するために貫通穴11bの内径が比較的小さくなっていても、貫通穴11bの中で第3チューブ部10fを円滑に移動させることが可能になる。したがって、本形態では、第1チューブ部10aの内側に供給される圧縮空気が貫通穴11bから漏れるのを抑制して第1チューブ部10aおよび載置部10eの形状を維持することが可能になるとともに、載置部10eに載置される塗装装置6を円滑に昇降させることが可能になる。
【0049】
なお、本願発明者の検討によると、固定部材11から引き出された第3チューブ部10fが窄んでいる場合であって、かつ、窄んだ状態の第3チューブ部10fが捩じられている場合には、貫通穴11bの内径が比較的小さくなっていても、貫通穴11bの中で第3チューブ部10fをより円滑に移動させることが可能になる。
【0050】
本形態では、第1チューブ部10aの水平部10hの一端部が固定部材11に固定されており、第3チューブ部10fは、固定部材11から水平方向に引き出されている。そのため、本形態では、たとえば、第1チューブ部10aが鉛直部10gのみよって構成されていて、固定部材11から下側に向かって第3チューブ部10fが引き出される場合と比較して、第3チューブ部10fを引き出しやすくなる。また、本形態では、水平部10hと鉛直部10gの下端部との間で第2チューブ部10bを案内するガイド部材16が固定部材11に固定されているため、水平部10hと鉛直部10gとによって第1チューブ部10aが構成されていても、水平部10hと鉛直部10gの下端部との間で第2チューブ部10bを円滑に移動させることが可能になる。
【0051】
本形態では、塗装装置6から引き出される配管9が第2チューブ部10bおよび第3チューブ部10fの内周側に配置されており、塗装装置6を昇降させるときには、配管9に張力がかかるように配管9を引っ張っている。そのため、本形態では、塗装装置6を載置部10eに所定の接触圧で接触させた状態で塗装装置6を昇降させることが可能になる。したがって、本形態では、昇降装置7によって昇降する塗装装置6の昇降時の状態を安定させることが可能になる。
【0052】
本形態では、架線柱2の塗装時に第1チューブ部10aの外周面に塗料が付着するおそれがあるが、架線柱2の塗装時には、載置部10eに載置される塗装装置6を載置部10eと一緒に徐々に下降させており、載置部10eが下降するときには、チューブ10の、第1チューブ部10aの外周面だった面は、第2チューブ部10bの内周面になった後、第3チューブ部10fの内周面となる。そのため、本形態では、第3チューブ部10fの内周面に付着した塗料が第3チューブ部10fの周囲に配置される物に付着するのを防止することが可能になる。なお、本形態のチューブ10は、安価なポリチューブであるため、塗料が付着したチューブ10を使い捨てにしても、昇降装置7のランニングコストを低減することが可能である。
【0053】
(他の実施の形態)
上述した形態において、チューブ10は、ポリエチレン以外の柔軟性を有する樹脂で形成されていても良い。たとえば、チューブ10は、ナイロンで形成されていても良い。また、チューブ10は、ヨットのセイル(帆)に使用されるセイル生地で形成されていても良い。また、上述した形態において、チューブ10の内側に供給される気体は、圧縮空気以外の気体であっても良い。
【0054】
上述した形態において、貫通穴11bの中で第3チューブ部10fを支障なく移動させることができるのであれば、固定部材11の内部にローラ15が配置されていなくても良い。また、上述した形態において、第1チューブ部10aは、鉛直部10gのみによって構成されていても良い。この場合には、第1チューブ部10aの全体が上下方向を軸方向とする膨らんだ状態の筒状をなしている。また、この場合には、第3チューブ部10fは、固定部材11から下側に向かって引き出されている。この場合には、ガイド部材16は設置されていない。
【0055】
上述した形態において、配管9に加えて、または、配管9に代えて、塗装装置6から配線が引き出されていても良い。この場合には、塗装装置6から引き出される配線は、第2チューブ部10bおよび第3チューブ部10fの内周側に配置されている。また、この配線の端部は、第3チューブ部10fの外側まで引き出されている。この場合には、塗装装置6を昇降させるときに、配線に張力がかかるように配線が引っ張られる。また、上述した形態において、気体供給機構12によって第1チューブ部10aの内側に圧縮空気を供給して塗装装置6を上昇させるときに、補助的に簡易なクレーンを使用して塗装装置6を上昇させても良い。
【0056】
上述した形態において、塗装装置6に代えて、メンテナンス装置としてのケレン装置が架線柱2の内側に配置されていても良い。このケレン装置は、架線柱2の塗装前に架線柱2にケレン処理を行って架線柱2の素地を調整するための素地調整機能を備えている。この場合のケレン装置は、載置部10eに載置される昇降対象物となっている。また、塗装装置6に代えて、メンテナンス装置としての塗装・ケレン装置が架線柱2の内側に配置されていても良い。この塗装・ケレン装置は、塗装機能と素地調整機能とを備えている。この場合の塗装・ケレン装置は、載置部10eに載置される昇降対象物となっている。さらに、塗装装置6に代えて、塗装機能および素地調整機能以外の機能を有する所定の装置が架線柱2の内側に配置されていても良い。この装置は、架線柱2のメンテナンスを行うときや、架線柱2に対する所定の作業を行うときに使用される。
【0057】
上述した形態において、架線柱2の上端部に架線梁4が繋がっていなくても良い。また、上述した形態において、メンテナンスシステム1によってメンテナンスが行われる柱状部材2は、架線柱以外の鉄骨型の柱状部材であっても良い。たとえば、柱状部材2は、送電鉄塔の一部分を構成する鉄骨型の柱状部材であっても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 メンテナンスシステム
2 架線柱(柱状部材)
6 塗装装置(昇降対象物、メンテナンス装置)
7 昇降装置
9 配管
10 チューブ
10a 第1チューブ部
10b 第2チューブ部
10e 載置部
10f 第3チューブ部
10g 鉛直部
10h 水平部
11 固定部材
11b 貫通穴
11c 気体供給穴
12 気体供給機構
15 ローラ
16 ガイド部材