(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】判定方法及び判定システム
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20241126BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241126BHJP
【FI】
A01K29/00 A
G06T7/00 350B
(21)【出願番号】P 2021093645
(22)【出願日】2021-06-03
【審査請求日】2024-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】311001347
【氏名又は名称】ノーリツプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100170748
【氏名又は名称】稲垣 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】面家 康孝
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-35355(JP,A)
【文献】特開2019-169011(JP,A)
【文献】特開2020-14421(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0228587(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜の分娩兆候に関する判定方法であって、
前記家畜に関する動画像データを取得するステップと、
学習済みモデルに前記動画像データを入力することによって、前記家畜の姿勢が立位又は座位である確率を示す確率情報を所定間隔で出力するステップと、
前記姿勢が立位又は座位の一方から他方に変化した回数を示す変化回数をカウントするステップと、
複数の区間の各々における前記変化回数の集計を行なうステップと、
前記集計の結果に基づいて前記家畜の分娩兆候に関する判定を行なうステップとを含み、
前記姿勢が立位又は座位の一方である確率が所定確率以上である第1状態が、前記姿勢が立位又は座位の他方である確率が所定確率以上である第2状態に変化した後に、前記第2状態が所定回数継続すると、前記変化回数がカウントされる、判定方法。
【請求項2】
前記学習済みモデルは、前記家畜を含む画像と該画像に含まれる前記家畜の姿勢を示す姿勢情報とを教師データに用いた機械学習を通じて構築される、請求項1に記載の判定方法。
【請求項3】
前記家畜は分娩房内に収容され、
前記動画像データはサーモグラフィーカメラによって生成され、
前記サーモグラフィーカメラは、前記サーモグラフィーカメラの撮像範囲内に前記分娩房が納まる位置に設置されている、請求項1又は請求項2に記載の判定方法。
【請求項4】
前記分娩房内には前記家畜が1頭のみ収容される、請求項3に記載の判定方法。
【請求項5】
家畜の分娩兆候に関する判定を行なう判定システムであって、
前記家畜に関する動画像データを取得する取得部と、
学習済みモデルに前記動画像データを入力することによって、前記家畜の姿勢が立位又は座位である確率を示す確率情報を所定間隔で出力する出力部と、
前記姿勢が立位又は座位の一方から他方に変化した回数を示す変化回数をカウントするカウント部と、
複数の区間の各々における前記変化回数の集計を行なう集計部と、
前記集計の結果に基づいて前記家畜の分娩兆候に関する判定を行なう判定部とを備え、
前記姿勢が立位又は座位の一方である確率が所定確率以上である第1状態が、前記姿勢が立位又は座位の他方である確率が所定確率以上である第2状態に変化した後に、前記第2状態が所定回数継続すると、前記カウント部は前記変化回数をカウントする、判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定方法及び判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
WO2017/158698(特許文献1)は、監視装置を開示する。この監視装置は、牛舎内に設置され、牛を監視する。この監視装置においては、牛舎内における牛の移動量が算出され、該移動量に応じて牛の分娩兆候に関する判定が行なわれる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている監視装置においては、牛(家畜の一例)の分娩兆候の判定に牛舎内における牛の移動量が用いられる。ところで、家畜の分娩兆候と相関を有するパラメータとして、家畜の移動量の他に、家畜の姿勢の変化回数(以下、「姿勢変化回数」とも称する。)がある。家畜の姿勢としては、立位及び座位がある。すなわち、家畜の姿勢の変化とは、立位から座位への変化、及び、座位から立位への変化である。
【0005】
しかしながら、姿勢変化回数を高精度にカウントするのは必ずしも容易ではない。姿勢変化回数に基づいて分娩兆候に関する判定を行なう場合に、姿勢変化回数のカウントの精度が低いと、分娩兆候に関する判定の精度が低くなる。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、家畜の姿勢変化回数に基づいて分娩兆候に関する判定を行なう場合に、分娩兆候に関する判定をより高精度に行なうことが可能な判定方法及び判定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある局面に従う判定方法は、家畜の分娩兆候に関する方法である。この判定方法は、家畜に関する動画像データを取得するステップと、学習済みモデルに動画像データを入力することによって、家畜の姿勢が立位又は座位である確率を示す確率情報を所定間隔で出力するステップと、姿勢が立位又は座位の一方から他方に変化した回数を示す変化回数をカウントするステップと、複数の区間の各々における変化回数の集計を行なうステップと、集計の結果に基づいて家畜の分娩兆候に関する判定を行なうステップとを含む。姿勢が立位又は座位の一方である確率が所定確率以上である第1状態が、姿勢が立位又は座位の他方である確率が所定確率以上である第2状態に変化した後に、第2状態が所定回数継続すると、変化回数がカウントされる。
【0008】
この判定方法においては、第1状態が第2状態に変化した後に第2状態が所定回数継続しない場合に変化回数がカウントされない。したがって、家畜の姿勢が変化する過程で第1状態と第2状態との入れ替わりが頻繁に生じたとしても、変化回数が必要以上にカウントされる可能性が抑制される。したがって、この判定方法によれば、家畜の姿勢の変化回数を比較的高精度にカウントすることができるため、家畜の分娩兆候に関する判定をより高精度に行なうことができる。
【0009】
上記判定方法において、学習済みモデルは、家畜を含む画像と画像に含まれる家畜の姿勢を示す姿勢情報とを教師データに用いた機械学習を通じて構築されてもよい。
【0010】
上記判定方法において、家畜は分娩房内に収容され、動画像データはサーモグラフィーカメラによって生成され、サーモグラフィーカメラはサーモグラフィーカメラの撮像範囲内に分娩房が納まる位置に設置されていてもよい。
【0011】
上記判定方法において、分娩房内には家畜が1頭のみ収容されてもよい。
【0012】
本発明の他の局面に従う判定システムは、家畜の分娩兆候に関する判定を行なう。この判定システムは、取得部と、出力部と、カウント部と、集計部と、判定部とを備える。取得部は、家畜に関する動画像データを取得する。出力部は、学習済みモデルに動画像データを入力することによって、家畜の姿勢が立位又は座位である確率を示す確率情報を所定間隔で出力する。カウント部は、姿勢が立位又は座位の一方から他方に変化した回数を示す変化回数をカウントする。集計部は、複数の区間の各々における変化回数の集計を行なう。判定部は、集計の結果に基づいて家畜の分娩兆候に関する判定を行なう。姿勢が立位又は座位の一方である確率が所定確率以上である第1状態が、姿勢が立位又は座位の他方である確率が所定確率以上である第2状態に変化した後に、第2状態が所定回数継続すると、カウント部は変化回数をカウントする。
【0013】
この判定システムにおいては、第1状態が第2状態に変化した後に第2状態が所定回数継続しない場合に変化回数がカウントされない。したがって、家畜の姿勢が変化する過程で第1状態と第2状態との入れ替わりが頻繁に生じたとしても、変化回数が必要以上にカウントされる可能性が抑制される。したがって、この判定システムによれば、家畜の姿勢の変化回数を比較的高精度にカウントすることができるため、家畜の分娩兆候に関する判定をより高精度に行なうことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、家畜の姿勢変化回数に基づいて分娩兆候に関する判定を行なう場合に、家畜の分娩兆候に関する判定をより高精度に行なうことが可能な判定方法及び判定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】分娩兆候判定システムの構成を模式的に示す図である。
【
図2】サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】サーバにおいて実現されるソフトウェアモジュールの構成を示す図である。
【
図4】カウント部による姿勢変化回数のカウント方法を説明するための図である。
【
図5】パラメータDBにおいて管理される姿勢変化回数テーブルを示す図である。
【
図6】学習済みモデルを生成する場合に用いられる教師データの一例を示す図である。
【
図7】姿勢変化回数のカウント手順を示すフローチャートである。
【
図8】姿勢変化回数に基づく分娩兆候有無の判定手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
[1.概要]
家畜(例えば、牛)の分娩時に人が立ち会うことによって、家畜の分娩事故の発生確率が大幅に低下することが知られている。分娩時に人が立ち会うためには、家畜の分娩が開始する前から人が分娩房で待機する必要がある。家畜の分娩兆候の検出精度が向上すると、例えば、分娩兆候が検出された後から人が分娩房で待機すればよいため、分娩の監視に要する労力が軽減される。本実施の形態に従う分娩兆候判定システム10においては、家畜の分娩兆候に関する判定精度が向上している。
【0018】
図1は、分娩兆候判定システム10の構成を模式的に示す図である。
図1に示されるように、分娩兆候判定システム10は、サーモグラフィーカメラ100と、サーバ200とを含んでいる。
【0019】
サーモグラフィーカメラ100は、家畜(例えば、牛)400を収容する分娩房300内に設置される。サーモグラフィーカメラ100は、家畜400に関する画像データを生成するように構成されている。より詳細には、サーモグラフィーカメラ100は、撮像範囲における温度分布を示す画像データを生成する。サーモグラフィーカメラ100は、例えば、サーモグラフィー画像を連続的に生成することによって、撮像範囲における温度分布を示す動画像データを生成する。サーモグラフィーカメラ100は、例えば、赤外線センサを含んでいる。画像データがサーモグラフィー画像のデータであるため、周囲の明るさに拘わらず、画像データに基づいて家畜400の状況を把握することができる。
【0020】
分娩房300内には、例えば、家畜400が1頭のみ収容される。サーモグラフィーカメラ100は、サーモグラフィーカメラ100の撮像範囲内に分娩房300が納まる位置に設置される。サーモグラフィーカメラ100は、例えば、分娩房300の四隅のいずれかの近傍に設置されてもよい。例えば、分娩房300内におけるサーモグラフィーカメラ100の高さ位置は、サーモグラフィーカメラ100の撮像範囲内に家畜400が納まる位置であってもよい。また、例えば、サーモグラフィーカメラ100の向きは、サーモグラフィーカメラ100の画角の略中心が分娩房300内の中心となるような向きであってもよい。
【0021】
サーモグラフィーカメラ100によって生成された画像データは、ネットワークN1を介してサーバ200へ送信される。すなわち、サーモグラフィーカメラ100は、通信機能を有している。サーバ200においては、受信された画像データに基づいて家畜400の分娩兆候に関する判定が行なわれる。
【0022】
家畜400の分娩兆候と相関を有するパラメータとして、家畜の姿勢の変化回数(姿勢変化回数)がある。サーバ200においては、姿勢変化回数に基づいて家畜400の分娩兆候に関する判定が行なわれる。しかしながら、サーモグラフィーカメラ100によって生成された画像データに基づいて姿勢変化回数を高精度にカウントするのは必ずしも容易ではない。姿勢変化回数に基づいて分娩兆候に関する判定を行なう場合に、姿勢変化回数のカウントの精度が低いと、分娩兆候に関する判定の精度が低くなる。本実施の形態に従う分娩兆候判定システム10においては、姿勢変化回数のカウントが高精度に行なわれ、結果的に、家畜400の分娩兆候に関する判定がより高精度に行なわれる。以下、分娩兆候判定システム10の構成等について順に説明する。
【0023】
[2.構成]
<2-1.ハードウェア構成>
図2は、サーバ200のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示されるように、サーバ200は、制御部210と、記憶部220と、通信モジュール230と、入出力I/F240とを含んでいる。サーバ200に含まれる各構成要素は、バスを介して電気的に接続されている。
【0024】
制御部210は、CPU(Central Processing Unit)211、RAM(Random Access Memory)212及びROM(Read Only Memory)213等を含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行なうように構成されている。
【0025】
記憶部220は、例えば、フラッシュメモリ等のメモリである。記憶部220は、例えば、制御プログラム221を記憶するように構成されている。制御プログラム221は、制御部210によって実行されるサーバ200の制御プログラムである。制御部210が制御プログラム221を実行する場合に、制御プログラム221は、RAM212に展開される。そして、制御部210は、RAM212に展開された制御プログラム221をCPU211によって解釈及び実行することにより、各構成要素を制御する。
【0026】
通信モジュール230は、外部機器と通信するように構成されており、例えば、サーモグラフィーカメラ100と通信する。通信モジュール230は、例えば、無線LAN(Local Area Network)モジュール、有線LANモジュール、又は、LTE(Long Term Evolution)等の他の通信規格に準拠した通信モジュールで構成される。
【0027】
入出力I/F240は、サーバ200における入出力装置である。入出力I/F240は、例えば、キーボード、マウス及びディスプレイで構成される。
【0028】
<2-2.ソフトウェア構成>
図3は、サーバ200において実現されるソフトウェアモジュールの構成を示す図である。
図3に示されるように、サーバ200においては、制御部210が制御プログラム221を実行することによって、取得部250と、出力部252と、学習済みモデル260と、カウント部254と、集計部256と、判定部258とが実現される。
【0029】
取得部250は、サーモグラフィーカメラ100によって生成された動画像データを取得するように構成されている。動画像データが示す動画像には、家畜400が含まれている。
【0030】
出力部252は、学習済みモデル260に動画像データを入力することによって、家畜400の姿勢が立位又は座位である確率を示す確率情報を所定間隔で出力するように構成されている。所定間隔は、家畜400の姿勢の変化開始から変化終了までに要する時間よりも短い時間であり、例えば1秒である。なお、本明細書における「座位」には、一般的な「座位」(後肢を折り曲げて腰を下ろし、上半身を起こした姿勢)、「伏臥」(胸を起こした姿勢)及び「横臥」(肢を投げ出し横倒しの姿勢)の少なくともいずれかが含まれる。
【0031】
学習済みモデル260は、取得部250によって取得されたサーモグラフィー画像データを入力データとして、サーモグラフィー画像に含まれている家畜400の姿勢が立位又は座位である確率を示す確率情報を出力部252へ出力するように構成されている。例えば、「立位である確率は90%」、「立位である確率は60%」、「座位である確率は80%」又は「座位である確率は70%」といった情報が確率情報として出力される。学習済みモデル260は、例えば、後述の教師データを用いた学習(機械学習)を行なうことによって生成される。なお、機械学習としては、ディープラーニング、ニューラルネットワーク、決定木学習、相関ルール学習及びベイジアンネットワーク等の公知の種々の方法を適用することができる。
【0032】
カウント部254は、家畜400の姿勢が立位又は座位の一方から他方に変化した回数を示す姿勢変化回数をカウントするように構成されている。カウント部254は、出力部252によって出力された確率情報に基づいて姿勢変化回数をカウントする。
【0033】
家畜400の姿勢が変化する途中においては、出力部252によって出力される確率情報が激しく変化する。すなわち、家畜400の姿勢が変化する途中においては、例えば、家畜400の姿勢が立位である確率が閾値Th1を上回る状態(以下、「立位優勢状態」とも称する。)と、家畜400の姿勢が座位である確率が閾値Th2を上回る状態(以下、「座位優勢状態」とも称する。)との入れ替わりが頻繁に生じる。立位優勢状態と座位優勢状態とが入れ替わる度に姿勢変化回数がカウントされると、実際の姿勢変化回数よりも多くの姿勢変化回数がカウントされる。その結果、姿勢変化回数のカウント精度が低下する。
【0034】
そこで、カウント部254は、例えば、家畜400の姿勢が立位である確率が閾値Th1以上であるとの判定が所定回数継続した場合に、家畜400の姿勢が立位であるとみなす。また、カウント部254は、例えば、家畜400の姿勢が座位である確率が閾値Th2以上であるとの判定が所定回数継続した場合に、家畜400の姿勢が座位であるとみなす。
【0035】
すなわち、カウント部254は、例えば、家畜400の姿勢が立位であるとみなされた状態が、家畜400の姿勢が座位である確率が閾値Th2以上である状態に変化した後に、家畜400の姿勢が座位である確率が閾値Th2以上であるとの判定が所定回数継続した場合に、姿勢変化回数をカウントする。また、カウント部254は、例えば、家畜400の姿勢が座位であるとみなされた状態が、家畜400の姿勢が立位である確率が閾値Th1以上である状態に変化した後に、家畜400の姿勢が立位である確率が閾値Th1以上であるとの判定が所定回数継続した場合に、姿勢変化回数をカウントする。
【0036】
図4は、カウント部254による姿勢変化回数のカウント方法を説明するための図である。
図4を参照して、横軸は時間を示し、上方に延びる縦軸は立位確率を示し、下方に延びる縦軸は座位確率を示す。折れ線L1は、出力部252によって出力される確率情報の推移を示す。
【0037】
時刻t0-t1において、確率情報は立位確率の閾値Th1以上となっている。例えば、所定回数の判定は時刻t0-t1の間の時間よりも短い時間で行なわれる。したがって、時刻t1において、家畜400の姿勢は立位であるとみなされる。時刻t1-t2において、確率情報は大きく変化する。しかしながら、時刻t2-t3において、確率情報は座位確率の閾値Th2以上となっていない。したがって、時刻t2-t3において、家畜400の姿勢は立位とみなされたままである。
【0038】
時刻t3-t4において、確率情報は座位確率の閾値Th2以上となっている。例えば、所定回数の判定は時刻t3-t4の間の時間よりも短い時間で行なわれる。家畜400の姿勢が座位である確率が閾値Th2以上であるとの判定が所定回数継続した時点で、家畜400の姿勢は座位であるとみなされ、姿勢変化回数が1回カウントされる。
【0039】
時刻t4-t5において、確率情報は大きく変化する。時刻t5-t6において、確率情報は立位確率の閾値Th1以上となっている。しかしながら、時刻t5-t6の間の時間においては、所定回数の判定が行なわれない。したがって、時刻t5-t6において、家畜400の姿勢変化回数はカウントされない。時刻t6における家畜400の姿勢は、座位のままである。時刻t7-t8に関しても時刻t5-t6と同様であり、時刻t8における家畜400の姿勢は座位のままである。時刻t9において、確率情報は、再び座位確率の閾値Th2以上となる。この例においては、時刻t3-t4の間において家畜400の姿勢が座位とみなされた後は、家畜400の姿勢が座位とみなされたままである。
【0040】
このように、サーバ200においては、例えば、家畜400の姿勢が立位であるとみなされた状態が、家畜400の姿勢が座位である確率が閾値Th2以上である状態(座位優勢状態)に変化した後に、家畜400の姿勢が座位である確率が閾値Th2以上であるとの判定が所定回数継続しない限り、姿勢変化回数がカウントされない。また、サーバ200においては、例えば、家畜400の姿勢が座位であるとみなされた状態が、家畜400の姿勢が立位である確率が閾値Th1以上である状態(立位優勢状態)に変化した後に、家畜400の姿勢が立位である確率が閾値Th1以上であるとの判定が所定回数継続しない限り、姿勢変化回数がカウントされない。
【0041】
したがって、家畜400の姿勢が変化する過程で立位優勢状態と座位優勢状態との入れ替わりが頻繁に生じたとしても、姿勢変化回数が必要以上にカウントされる可能性が抑制される。したがって、サーバ200によれば、家畜400の姿勢の変化回数を比較的高精度にカウントすることができるため、家畜400の分娩兆候に関する判定をより高精度に行なうことができる。
【0042】
再び
図3を参照して、集計部256は、複数の区間の各々における姿勢変化回数の集計を行なうように構成されている。すなわち、集計部256は、一定期間毎における姿勢変化回数の集計を行なう。集計部256は、例えば、所定時間(1時間)毎の姿勢変化回数の集計を行なう。集計部256は、集計結果をパラメータDB270に登録する。
【0043】
図5は、パラメータDB270において管理される姿勢変化回数テーブル271を示す図である。姿勢変化回数テーブル271においては、集計部256によって集計された姿勢変化回数が時間帯と対応付けて管理される。
【0044】
再び
図3を参照して、判定部258は、姿勢変化回数テーブル271において管理されている情報に基づいて家畜400の分娩兆候に関する判定を行なう。判定部258は、例えば、家畜400の分娩兆候があるか否かを判定する。例えば、家畜400が所定時間(例えば、10時間)以内に分娩する確率が所定確率(例えば、70%)以上と判定されると、分娩兆候があると判定される。一方、例えば、家畜400が所定時間以内に分娩する確率が所定確率未満と判定されると、分娩兆候がないと判定される。
【0045】
[3.学習済みモデル]
上述のように、学習済みモデル260は、サーモグラフィー画像に含まれている家畜400の姿勢(立位又は座位)を判定するように構成されている。学習済みモデル260は、例えば、以下の教師データを用いた機械学習を行なうことによって生成される。
【0046】
図6は、姿勢判定用の学習済みモデル260を生成する場合に用いられる教師データの一例を示す図である。
図6に示されるように、教師データ500には、立位状態の家畜400が含まれている複数(多数)のサーモグラフィー画像510と、座位状態の家畜400が含まれている複数(多数)のサーモグラフィー画像520とが含まれている。サーモグラフィー画像510には「立位」である旨を示すラベルが対応付けられており、サーモグラフィー画像520には「座位」である旨を示すラベルが対応付けられている。
【0047】
このような教師データを用いた機械学習を行なうことによって、学習済みモデル260は生成されている。なお、上述のように、機械学習としては、ディープラーニング、ニューラルネットワーク、決定木学習、相関ルール学習及びベイジアンネットワーク等の公知の種々の方法を適用することができる。機械学習を通じて生成された学習済みモデル260は、サーモグラフィーカメラ100によって生成されたサーモグラフィー画像データの入力を受け付けることによって、家畜400の姿勢が立位又は座位である確率を示す確率情報を出力する。
【0048】
[4.動作]
図7は、姿勢変化回数のカウント手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、制御部210によって実行される。
【0049】
図7を参照して、制御部210は、サーモグラフィー画像データを取得する(ステップS100)。制御部210は、サーモグラフィー画像に含まれる家畜領域を検出する(ステップS105)。制御部210は、サーモグラフィー画像に家畜領域が含まれているか否かを判定する(ステップS110)。家畜領域の判定には、公知の技術が用いられる。
【0050】
家畜領域が含まれていると判定されると(ステップS110においてYES)、制御部210は、家畜400の姿勢に関する確率情報を出力する(ステップS115)。家畜400の姿勢に関する確率情報の生成には、学習済みモデル260が用いられる。一方、家畜域が含まれていないと判定されると(ステップS110においてNO)、制御部210は、家畜400の姿勢に関する確率情報として前回値を設定する(ステップS120)。
【0051】
制御部210は、確率情報を参照して、現在の姿勢とみなされている姿勢と異なる姿勢である確率が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS125)。現在の姿勢とみなされている姿勢と異なる姿勢である確率が閾値以上ではないと判定されると(ステップS125においてNO)、処理はステップS140に移行する。
【0052】
一方、現在の姿勢とみなされている姿勢と異なる姿勢である確率が閾値以上であると判定されると(ステップS125においてYES)、制御部210は、現在の姿勢とみなされている姿勢と異なる姿勢である確率が閾値以上であるとの判定が所定回数継続しているか否かを判定する(ステップS130)。
【0053】
このような判定が所定回数継続していないと判定されると(ステップS130においてNO)、処理はステップS140に移行する。一方、このような判定が所定回数継続していると判定されると(ステップS130においてYES)、制御部210は、姿勢変化回数のカウント(カウントアップ)を行なう(ステップS135)。
【0054】
その後、制御部210は、(前回所定時間T1が経過してから)所定時間T1が経過したか否かを判定する(ステップS140)。所定時間T1は、例えば
図5の例では1時間である。
【0055】
所定時間T1が経過していないと判定されると(ステップS140においてNO)、処理はステップS100に戻る。一方、所定時間T1が経過したと判定されると(ステップS140においてYES)、制御部210は、カウントされた姿勢変化回数を時間帯と対応付けてパラメータDB270に登録する(ステップS145)。その後、制御部210は、姿勢変化回数の値を初期値(0)にリセットする(ステップS150)。
【0056】
図8は、姿勢変化回数に基づく分娩兆候有無の判定手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、制御部210によって、例えばパラメータDB270が更新される毎に実行される。
【0057】
図8を参照して、制御部210は、パラメータDB270に登録された最新の姿勢変化回数が所定回数以上であるか否かを判定する(ステップS200)。最新の姿勢変化回数が所定回数以上であると判定されると(ステップS200においてYES)、制御部210は、家畜400の分娩兆候があると判定する(ステップS210)。一方、最新の姿勢変化回数が所定回数以上でないと判定されると(ステップS200においてNO)、制御部210は、家畜400の分娩兆候がないと判定する(ステップS220)。
【0058】
[5.特徴]
以上のように、本実施の形態に従うサーバ200においては、例えば、家畜400の姿勢が立位であるとみなされた状態が座位優勢状態に変化した後に座位優勢状態であるとの判定が所定回数継続しない限り、姿勢変化回数がカウントされない。また、サーバ200においては、例えば、家畜400の姿勢が座位であるとみなされた状態が立位優勢状態に変化した後に立位優勢状態であるとの判定が所定回数継続しない限り、姿勢変化回数がカウントされない。
【0059】
したがって、家畜400の姿勢が変化する過程で立位優勢状態と座位優勢状態との入れ替わりが頻繁に生じたとしても、姿勢変化回数が必要以上にカウントされる可能性が抑制される。したがって、サーバ200によれば、家畜400の姿勢の変化回数を比較的高精度にカウントすることができるため、家畜400の分娩兆候に関する判定をより高精度に行なうことができる。
【0060】
[6.変形例]
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下、変形例について説明する。
【0061】
上記実施の形態においては、姿勢変化回数のカウント等の各種処理がサーバ200によって実行された。しかしながら、各種処理を行なう主体は、必ずしもサーバ200である必要はない。例えば、サーモグラフィーカメラ100にPC(Personal Computer)が接続されており、該PCにおいて各種処理が実行されてもよい。また、例えば、各種処理がサーモグラフィーカメラ100において実行されてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態においては、家畜400の分娩兆候の有無が、姿勢変化回数が所定回数以上か否かに基づいて判定された。しかしながら、家畜400の分娩兆候の有無の判定方法はこれに限定されない。例えば、姿勢変化回数を入力データとし、分娩兆候の有無を出力する学習済みモデルを用いることによって、家畜400の分娩兆候の有無が判定されてもよい。
【0063】
また、上記実施の形態においては、家畜400の画像を取得する手段としてサーモグラフィーカメラ100が用いられた。しかしながら、家畜400の画像を取得する手段は必ずしもサーモグラフィーカメラである必要はない。家畜400の画像を取得する手段は、例えば、動画撮影可能な通常のデジタルカメラであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 分娩兆候判定システム、100 サーモグラフィーカメラ、200 サーバ、210 制御部、211 CPU、212 RAM、213 ROM、220 記憶部、221 制御プログラム、230 通信モジュール、240 入出力I/F、250 取得部、252 出力部、254 カウント部、256 集計部、258 判定部、260 学習済みモデル、270 パラメータDB、271 姿勢変化回数テーブル、300 分娩房、400 家畜、500 教師データ、510,520 サーモグラフィー画像、L1 折れ線、N1 ネットワーク。