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特許7593640ポリマー材料およびその製造方法、ガス吸収材料、ガス回収装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ポリマー材料およびその製造方法、ガス吸収材料、ガス回収装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20241126BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20241126BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241126BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20241126BHJP
   C08F 220/60 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B01J20/26 A ZAB
B01J20/30
B01D53/62
B01D53/14 100
B01D53/14 220
C08F220/60
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021520837
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2020020079
(87)【国際公開番号】W WO2020235622
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2019095510
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「農産物の品質や生産性を向上させる為の環境制御システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】523089623
【氏名又は名称】株式会社JCCL
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】星野 友
(72)【発明者】
【氏名】山下 知恵
(72)【発明者】
【氏名】寺山 友規
(72)【発明者】
【氏名】藤原 智美
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 猛
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/027668(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/146231(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/024633(WO,A1)
【文献】特開2012-219172(JP,A)
【文献】特開2001-353442(JP,A)
【文献】特表2015-512763(JP,A)
【文献】特開2017-047412(JP,A)
【文献】J. Am. Chem. Soc.,2012年,Vol.134,P.18177-18180
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 - 20/34
B01D 53/02 - 53/12
B01D 53/62
C01B 32/50
C08F 20/60
C08F 220/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単官能モノマーと10モル%超で30モル%以下の多官能モノマーからなるモノマー混合物の前記単官能モノマーと前記多官能モノマーを重合させてなるポリマーを含み、
前記単官能モノマーは、N-(アミノアルキル)アクリルアミド、N-(アミノアルキル)メタクリルアミド、アミノアルキルアクリレートおよびアミノアルキルメタクリレートからなる群より選択され、
前記多官能モノマーは、多官能(メタ)アクリルアミド系モノマーおよび多官能(メタ)アクリレート系モノマーからなる群より選択される、アミン含有ガス吸収用ポリマー材料。
【請求項2】
前記多官能モノマーがN,N’-アルキレンビス(メタ)アクリルアミドである、請求
項1に記載のガス吸収用ポリマー材料。
【請求項3】
前記多官能モノマーがアミノ基を有する、請求項1に記載のガス吸収用ポリマー材料。
【請求項4】
前記多官能モノマーが、複数のアミノ基を有する、請求項1に記載のガス吸収用ポリマ
ー材料。
【請求項5】
界面活性剤を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のガス吸収用ポリマー材料。
【請求項6】
前記モノマー混合物が疎水性基を有するモノマーを含む、請求項1~5のいずれか1項
に記載のガス吸収用ポリマー材料。
【請求項7】
1グラムの乾燥ポリマーを30℃で一晩水に浸漬させたときの前記ポリマーの含水量が
3グラム以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載のガス吸収用ポリマー材料。
【請求項8】
単官能モノマー、多官能モノマー、溶媒および開始剤を含む反応混合物中のモノマーを重合させることによりポリマーを合成するポリマー合成工程と、
前記ポリマーにアミンを含有する処理液を含浸させるアミン含浸工程を含み、
前記反応混合物の総モノマー濃度が0.7モル/L以上であり、
前記反応混合物に含まれるモノマーのうち前記多官能モノマーの割合が10モル%超で30モル%以下であり、
前記単官能モノマーは、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する単官能モノマーから選択され、
前記多官能モノマーは、多官能(メタ)アクリルアミド系モノマーおよび多官能(メタ)アクリレート系モノマーからなる群より選択される、ガス吸収用ポリマー材料の製造方法。
【請求項9】
単官能モノマー、多官能モノマー、溶媒および開始剤を含む反応混合物中のモノマーを重合させることによりポリマーを合成するポリマー合成工程を含み、
前記反応混合物の総モノマー濃度が0.7モル/L以上であり、
前記反応混合物に含まれるモノマーのうち前記多官能モノマーの割合が10モル%超で30モル%以下であり、
前記単官能モノマーは、N-(アミノアルキル)アクリルアミド、N-(アミノアルキル)メタクリルアミド、アミノアルキルアクリレートおよびアミノアルキルメタクリレートからなる群より選択され、
前記多官能モノマーは、多官能(メタ)アクリルアミド系モノマーおよび多官能(メタ)アクリレート系モノマーからなる群より選択される、ガス吸収用ポリマー材料の製造方法。
【請求項10】
さらに、前記ポリマーにアミンを含有する処理液を含浸させるアミン含浸工程を含む、請求項9に記載のガス吸収用ポリマー材料の製造方法。
【請求項11】
前記反応混合物が界面活性剤を含む、請求項8~10のいずれか1項に記載のガス吸収
用ポリマー材料の製造方法。
【請求項12】
前記ポリマー合成工程で得られたポリマーを粉砕する、請求項8~11のいずれか1項
に記載のガス吸収用ポリマー材料の製造方法。
【請求項13】
前記ポリマー合成工程で得られたポリマーを濾過する、請求項8~12のいずれか1項
に記載のガス吸収用ポリマー材料の製造方法。
【請求項14】
前記ポリマー合成工程で得られたポリマーを乾燥する、請求項8~13のいずれか1項
に記載のガス吸収用ポリマー材料の製造方法。
【請求項15】
前記溶媒として水とアルコールを用いる、請求項8~14のいずれか1項に記載のガス
吸収用ポリマー材料の製造方法。
【請求項16】
前記反応混合物中に疎水性基を有するモノマーを含む、請求項8~15のいずれか1項
に記載のガス吸収用ポリマー材料の製造方法。
【請求項17】
前記ポリマー合成工程の前に、アミノ基を有するモノマーと多官能モノマーと水を含む
混合物を加熱した後、前記混合物に疎水性基を有するモノマーを加える工程を有する、請
求項16に記載のガス吸収用ポリマー材料の製造方法。
【請求項18】
前記疎水性基を有するモノマーをアルコール溶液にして加える、請求項17に記載のガ
ス吸収用ポリマー材料の製造方法。
【請求項19】
前記反応混合物の総モノマー濃度が3モル/L以下である、請求項16~18のいずれ
か1項に記載のガス吸収用ポリマー材料の製造方法。
【請求項20】
請求項8~19のいずれか1項に記載の製造方法により製造されるガス吸収用ポリマー
材料。
【請求項21】
請求項1~7および請求項20のいずれか1項に記載のガス吸収用ポリマー材料を含有
するガス吸収材料。
【請求項22】
さらに、フィラーを含む、請求項21に記載のガス吸収材料。
【請求項23】
前記フィラーが粉末である、請求項22に記載のガス吸収材料。
【請求項24】
前記フィラーの一次粒子の粒径が1000nm以下の微粒子である、請求項22または
23に記載のガス吸収材料。
【請求項25】
前記微粒子の水接触角が70°以上である、請求項24に記載のガス吸収材料。
【請求項26】
前記フィラーがフュームドシリカである、請求項22~25のいずれか1項に記載のガ
ス吸収材料。
【請求項27】
前記フィラーが撥水処理されたフュームドシリカである、請求項22~25のいずれか
1項に記載のガス吸収材料。
【請求項28】
請求項21~27のいずれか1項に記載のガス吸収材料を充填したガス吸収カートリッ
ジ。
【請求項29】
請求項21~27のいずれか1項に記載のガス吸収材料を含むガス供給装置。
【請求項30】
請求項21~27のいずれか1項に記載のガス吸収材料を含むガス回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火力発電所や製鉄所、セメント工場等の施設から排出された二酸化炭素による地球温暖化や硫化水素等の有害ガスによる環境汚染が問題になるなどしており、こうしたガスによる影響を防止するため、ガスを分離・回収するための研究開発が進められている。その中には、アミノ基を有するモノマーと疎水性基を有するモノマーを重合させて合成したポリマー粒子のガス可逆吸収能を利用したガス吸収材やガス分離材に関する研究も見受けられる。
例えば特許文献1および特許文献2には、N-(ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド55mol%、N-tert-ブチルアクリルアミド43mol%、N,N’-メチレンビスアクリルアミド2mol%を水に溶解して調製したモノマー混合物(総モノマー濃度0.312モル/L)に、開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を添加して反応させ、凍結乾燥することによりポリマー粒子を製造したことが記載されている。そして、製造したポリマー粒子は、その水分散液を多孔質体上にスプレーコートする等の方法により製膜することができ、得られた膜は二酸化炭素を吸収した後、加熱により二酸化炭素を放散するガス可逆吸収材料として有用であることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/024633号
【文献】国際公開第2017/146231号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、ガス可逆吸収性能を有しながら低含水性のポリマー材料を開発すると同時に本ポリマー材料を効率よく製造する方法を提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
具体的には以下の解決手段を提供するものである。
【0006】
[1] 単官能モノマーと10モル%超で30モル%以下の多官能モノマーからなるモノマー混合物のポリマーを含むアミン含有ポリマー材料。
[2] 前記単官能モノマーがアミノ基を有している、[1]に記載のポリマー材料。
[3] 前記多官能モノマーがN,N’-アルキレンビス(メタ)アクリルアミドである、[1]または[2]に記載のポリマー材料。
[4] 前記多官能モノマーがアミノ基を有する、[1]または[2]に記載のポリマー材料。
[5] 前記多官能モノマーが、複数のアミノ基を有する、[1]または[2]に記載のポリマー材料。
[6] 前記ポリマーが2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)を開始剤として重合したポリマーである、[1]~[5]のいずれか1項に記載のポリマー材料。
[7] 前記ポリマーが界面活性剤の存在下で重合したポリマーである、[1]~[6]のいずれか1項に記載のポリマー材料。
[8] 界面活性剤を含む、[1]~[7]のいずれか1項に記載のポリマー材料。
[9] 前記界面活性剤がセチルトリメチルアンモニウムブロミドである、[7]または[8]に記載のポリマー材料。
[10] 粉砕物である、[1]~[9]のいずれか1項に記載のポリマー材料。
[11] 濾過物である、[1]~[10]のいずれか1項に記載のポリマー材料。
[12] 乾燥物である、[1]~[11]のいずれか1項に記載のポリマー材料。
[13] 前記ポリマーが水とアルコールを溶媒として重合したポリマーである、[1]~[12]のいずれか1項に記載のポリマー材料。
[14] 前記モノマー混合物が疎水性基を有するモノマーを含む、[1]~[13]のいずれか1項に記載のポリマー材料。
[15] ガス吸収用のポリマー材料である、[1]~[14]のいずれか1項に記載のポリマー材料。
[16] 二酸化炭素ガス吸収用のポリマー材料である、[1]~[15]のいずれか1項に記載のポリマー材料。
[17] 二酸化炭素ガスを可逆的に吸収しうる、[1]~[16]のいずれか1項に記載のポリマー材料。
[18] 1グラムの乾燥ポリマーを30℃で一晩水に浸漬させたときの前記ポリマーの含水量が3グラム以下である、[1]~[17]のいずれか1項に記載のポリマー材料。
[19] 単官能モノマー、多官能モノマー、溶媒および開始剤を含む反応混合物中のモノマーを重合させることによりポリマーを合成するポリマー合成工程と、
前記ポリマーにアミンを含有する処理液を含浸させるアミン含浸工程を含み、
前記反応混合物の総モノマー濃度が0.7モル/L以上であり、
前記反応混合物に含まれるモノマーのうち前記多官能モノマーの割合が10~30モル%であり、
前記単官能モノマーがアミノ基を有する場合は、前記アミン含浸工程を行わなくてもよい、ポリマー材料の製造方法。
[20] 前記単官能モノマーがアミノ基を有しており、前記アミン含浸工程を行う、[19]に記載のポリマー材料の製造方法。
[21] 前記単官能モノマーがアミノ基を有しており、前記アミン含浸工程を行わない、[19]に記載のポリマー材料の製造方法。
[22] 前記多官能モノマーが、N,N’-アルキレンビス(メタ)アクリルアミドである、[19]~[21]のいずれか1項に記載のポリマー材料の製造方法。
[23] 前記多官能モノマーが、アミノ基を有する、[19]~[21]のいずれか1項に記載のポリマー材料の製造方法。
[24] 前記多官能モノマーが、複数のアミノ基を有する、[19]~[21]のいずれか1項に記載のポリマー材料の製造方法。
[25] 前記開始剤が、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)である、[19]~[24]のいずれか1項に記載のポリマー材料の製造方法。
[26] 前記反応混合物が界面活性剤を含む、[19]~[25]のいずれか1項に記載のポリマー材料の製造方法。
[27] 前記界面活性剤がセチルトリメチルアンモニウムブロミドである、[26]に記載のポリマー材料の製造方法。
[28] 前記ポリマー合成工程で得られたポリマーを粉砕する、[19]~[27]のいずれか1項に記載のポリマー材料の製造方法。
[29] 前記ポリマー合成工程で得られたポリマーを濾過する、[19]~[28]のいずれか1項に記載のポリマー材料の製造方法。
[30] 前記ポリマー合成工程で得られたポリマーを乾燥する、[19]~[29]のいずれか1項に記載のポリマー材料の製造方法。
[31] 前記溶媒として水とアルコールを用いる、[19]~[30]のいずれか1項に記載のポリマー材料の製造方法。
[32] 前記反応混合物中に疎水性基を有するモノマーを含む、[19]~[31]のいずれか1項に記載のポリマー材料の製造方法。
[33] 前記ポリマー合成工程の前に、アミノ基を有するモノマーと多官能モノマーと水を含む混合物を加熱した後、前記混合物に疎水性基を有するモノマーを加える工程を有する、[32]に記載のポリマー材料の製造方法。
[34] 前記疎水性基を有するモノマーをアルコール溶液にして加える、[33]に記載のポリマー材料の製造方法。
[35] 前記反応混合物の総モノマー濃度が3モル/L以下である、[32]~[34]のいずれか1項に記載のポリマー材料の製造方法。
[36] ガス吸収材料用ポリマー材料の製造方法である、[19]~[35]のいずれか1項に記載のポリマー材料の製造方法。
[37] 二酸化炭素ガス吸収用ポリマー材料の製造方法である、[19]~[36]のいずれか1項に記載のポリマー材料の製造方法。
[38] 二酸化炭素ガスを可逆的に吸収しうるポリマー材料の製造方法である、[19]~[36]のいずれか1項に記載のポリマー材料の製造方法。
[39] 1グラムの乾燥ポリマーを30℃で一晩水に浸漬させたときの前記ポリマーの含水量が3グラム以下であるポリマー材料の製造方法である、[38]に記載のポリマー材料の製造方法。
[40] [19]~[39]のいずれか1項に記載の製造方法により製造されるポリマー材料。
[41] [1]~[18]および[40]のいずれか1項に記載のポリマー材料を含有するガス吸収材料。
[42] さらに、熱可塑性樹脂を含む、[41]に記載のガス吸収材料。
[43] 前記熱可塑性樹脂がポリエチレンである、[42]に記載のガス吸収材料。
[44] さらに、フィラーを含む、[41]~[43]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[45] 前記フィラーがガス吸着能を有する、[44]に記載のガス吸収材料。
[46] 前記フィラーが粉末である、[44]または[45]に記載のガス吸収材料。
[47] 前記フィラーの一次粒子の粒径が1000nm以下の微粒子である、[44]~[46]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[48] 前記微粒子の水接触角が70°以上である、[44]~[47]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[49] 前記フィラーがカーボンブラックである、[44]~[48]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[50] 前記フィラーが撥水処理されたカーボンブラックである、[44]~[48]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[51] 前記フィラーがフュームドシリカである、[44]~[48]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[52] 前記フィラーが撥水処理されたフュームドシリカである、[44]~[48]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[53] 前記フィラーがフッ素化樹脂粉体である、[44]~[48]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[54] 前記フィラーがテフロン(登録商標)パウダーである、[44]~[48]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[55] 前記フィラーが活性炭やゼオライトである、[44]~[48]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[56] 水により膨潤した、[41]~[55]に記載のガス吸収材料。
[57] 水蒸気により加水された、[41]~[56]に記載のガス吸収材料。
[58] 加水時に二酸化炭素ガスや重炭酸イオンを添加した[57]に記載のガス吸収材料。
[59] [41]~[58]のいずれか1項に記載のガス吸収材料を充填したガス吸収カートリッジ。
[60] [41]~[58]のいずれか1項に記載のガス吸収材料を含むガス供給装置。
[61] [41]~[58]のいずれか1項に記載のガス吸収材料を含むガス回収装置。
[62] 前記ガス吸収材料でガスを吸収した後、ガス吸収材料の温度を上昇させることによりガスを脱着する、[61]に記載のガス回収装置。
[63] 前記ガス吸収材料でガスを吸収、貯留した後、ガスの分圧を低下させることによりガスを脱着する、[61]に記載のガス回収装置。
[64] 前記ガス吸収材料でガスを吸収した後、水蒸気を流通することによりガスを脱着する、[61]に記載のガス回収装置。
[65] 前記ガス吸収材料でガスを吸収した後、温度の高い水を流通することによりガスを脱着する、[61]に記載のガス回収装置。
[66] 前記ガス吸収材料でガスを吸収する際、ガス吸収材料からの水分の蒸発によりガスの吸収反応熱によるガス吸収材料の温度の上昇が抑制された、[61]~[65]のいずれか1項に記載のガス回収装置。
[67] 前記ガス吸収材料でガスを吸収する際、乾燥ガスを流通することによりガス吸収材料の温度を低下させる、[61]~[66]のいずれか1項に記載のガス回収装置。
[68] ガスが酸性ガスである、[61]~[67]のいずれか1項に記載のガス回収装置。
[69] ガスが二酸化炭素ガスである、[61]~[67]のいずれか1項に記載のガス回収装置。
[70] ガスが水蒸気である、[61]~[67]のいずれか1項に記載のガス回収装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリマー材料の製造方法によれば、ガス可逆吸収性能を有しながら低含水性のポリマー材料を製造することができ、製造されたポリマー材料は、ガス可逆吸収材料として効果的に用いることができる。本発明のガス吸収材料を用いたガス回収装置は、二酸化炭素等の酸性ガスや水蒸気等を効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のガス回収装置の第1実施形態を示す模式図である。
図2】本発明のガス回収装置の第2実施形態を示す模式図である。
図3】各種ポリマー粉砕物とRY300の混合物(微粒子含有ポリマー材料)の粒度分布である。
図4】7厘目で粉砕したポリマー粉砕物とRY300を含む微粒子含有ポリマー材料(試料18)、および7厘目で粉砕したポリマー粉砕物(試料19)の吸収過程におけるCO吸収量および放散過程におけるCO放散量を示すグラフである。
図5】7厘目で粉砕したアミノ基含有高分子粉砕物とRY300を含む微粒子含有ポリマー材料(試料18)、および1.5分目で粉砕したポリマー粉砕物とRY300の混合物をビーズミルで粉砕した粉砕物(試料20)の吸収過程におけるCO吸収量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において「(メタ)アクリルアミド」とは、「アクリルアミド」および「メタクリルアミド」を意味するものとし、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および「メタクリレート」を意味するものとする。
【0010】
<ポリマー材料>
ポリマー材料は、例えば、単官能モノマーと10モル%超で30モル%以下の多官能モノマーからなるモノマー混合物のポリマーを含むアミン含有ポリマー材料とすることができる。
モノマー混合物における多官能モノマーの割合は10モル%超で30モル%以下とすることができ、15モル%以上30モル%以下とすることもできる。
ポリマー材料は、例えば、適度に架橋され、あるいは、また、過度に膨潤しない条件で重合することができ、水に浸漬した後も低含水性でありながら、大量のアミンを有し二酸化炭素ガスなどの酸性ガスや水蒸気の可逆吸収量を大きくすることができる。
また、湿度が高い条件であっても大量の酸性ガスを可逆吸収可能にすることもできる。高湿度環境で使用した場合も、過度な含水による膨潤をすることなく、単位体積あたり高い充填率で長期間使用することもできる。
また、過度な含水をすることなく、加熱などの温調により二酸化炭素等のガスを放散する際に水の温調するための余計なエネルギーを必要としないこともできる。
ポリマー材料は、以下に記載する製造方法によって効率良く製造することができる。
【0011】
<ポリマー材料の製造方法>
ポリマー材料の製造方法は、例えば、単官能モノマー、多官能モノマー、溶媒および開始剤を含む反応混合物中のモノマーを重合させることによりポリマーを合成するポリマー合成工程と、ポリマーにアミンを含む処理液を含浸させるアミン含浸工程を含み、反応混合物の総モノマー濃度を0.7モル/L以上とし、反応混合物に含まれるモノマーのうち多官能モノマーの割合を10モル%超で30モル%以下とすることができる。
ただし、単官能モノマーがアミノ基を有する場合は、上記のアミン含浸工程を行わないこともできる。
ポリマー材料の製造方法では、反応混合物の総モノマー濃度および多官能モノマーの割合を上記の範囲とすることにより、低含水性でありながらガス可逆吸収量が大きいポリマー材料を効率よく得ることができる。
また、比較的少ない量の溶媒で十分な量のポリマーを合成することもでき、製造装置が大規模になることを防止することもできる。
また、得られたポリマー材料は、膨潤性が低いことにより、ガス吸収材やガス分離材として製品化する際、その体積充填率を十分に大きく採ることもできる。
以下において、各工程について詳細に説明する。
【0012】
[1]ポリマー合成工程
本工程では、単官能モノマー、多官能モノマー、溶媒および開始剤を含む反応混合物中のモノマーを重合させることによりポリマーを合成する。
以下において、ポリマー合成工程で用いる各モノマー、溶媒、開始剤および必要に応じて使用する界面活性剤、並びに、重合反応の条件、ポリマーの後処理について説明する。
【0013】
[単官能モノマー]
「単官能モノマー」は、例えば、重合性基を分子内に1つのみもつモノマーである。重合性基として、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチレニル基等のエチレン性不飽和基を有する重合性基等を挙げることができる。
製造されるポリマーのガス可逆吸収能は、例えば、アミノ基とガス成分との反応あるいはアミノ基とガス成分と水との反応により発現するが、ここで用いる単官能モノマーは、例えば、アミノ基を有するものであってもよいし、アミノ基を有しないものであってもよい。
また、アミノ基を有しない単官能モノマーとアミノ基を有する単官能モノマーを組み合わせて用いてもよい。
なお、単官能モノマーとしてアミノ基を有するものを用いる場合、後述する「アミン含浸工程」を行わなくてもよい。
アミノ基を有しない単官能モノマーとして、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸、メタクリル酸塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸塩、N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、N,N-ジアルキルアクリルアミド、N-(ヒドロキシアルキル)アクリルアミド、(ヒドロキシアルキル)アクリレート、N,N-ジアルキルメタクリルアミド、N-(ヒドロキシアルキル)メタクリルアミド、(ヒドロキシアルキル)メタクリレート等を挙げることができ、また、その他の置換(メタ)アクリルアミドを用いることもできる。
アミノ基を有しない単官能モノマーの具体例として、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-プロピルメタクリルアミド、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N,N-ジプロピルメタクリルアミド等を挙げることができる。
ここで、末端のプロピル基は、n-プロピル基であっても、イソプロピル基であってもよい。
これらのアミノ基を有しないモノマーは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
単官能モノマーがアミノ基を有する場合、そのアミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のいずれであってもよい。
「アミノ基」は、アミド構造(-CO-NR:Rは水素原子または置換基である)を構成するアミノ基を意味しないこともできる。
単官能モノマーが有するアミノ基は、共役酸としての酸解離定数(pKa)が設計されていることもできる。
製造されたポリマーの二酸化炭素吸収効率を高くする点から、二酸化炭素を吸収する環境におけるアミノ基の酸解離定数(pKa)は炭酸の酸解離定数(pKa)と同等か、それよりも大きくすることができる。
1級のアミノ基や一部の2級アミノ基は、二酸化炭素と強固な共有結合を形成し、一度吸収した二酸化炭素を放散できないことがある。
そのため単官能性モノマーがアミノ基を有する場合、アミノ基の中でも、2級アミノ基、3級アミノ基であることができ、近傍に水酸基やアミド基、アルキル基を有する2級アミノ基や3級アミノ基であることもでき、ジメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基であることもできる。
また、アミンとしてピペリジンやピペラジン等の環状アミンやその誘導体を有する単官能モノマーであってもよい。
アミノ基の酸解離定数が高すぎる場合、放散時に効率よく二酸化炭素を放散できない場合がある。
そのため、アミノ基を有するモノマーとともに疎水性の側鎖を有するモノマーを共重合したり、一定量の多官能のモノマーを導入したりすることでゲル内のアミノ基の周りが混み合った環境にすることもできる。
単官能モノマーにおけるアミノ基は、ポリマーの主鎖を構成する部分に結合していても、側鎖を構成する部分に結合していてもよいが、側鎖を構成する部分に結合していることもできる。
また、単官能モノマーが有するアミノ基の数は、特に限定されず、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
モノマーが2つ以上のアミノ基を有する場合、各アミノ基は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0014】
アミノ基を有するモノマーとして、例えば、N-(アミノアルキル)アクリルアミド、N-(アミノアルキル)メタクリルアミド、アミノアルキルアクリレート、アミノアルキルメタクリレート等を挙げることができる。
これらのモノマーにおいて、アミノ基はアルキル基等の置換基で置換されていてもよい。
アミノ基を有するモノマーの具体例として、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチルアクリルアミド、3-アミノプロピルメタクリルアミド、3-アミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、3-アミノプロピルメタクリレート、3-アミノプロピルアクリレート等を挙げることができる。
あるいはこれらの化合物と酸性物質の塩、例えば塩酸塩や重炭酸塩であってもよい。あるいは、1級アミンや2級アミンを有する市販のオリゴアミン、ポリアミンをアクリル酸やメタクリル酸あるいはそれらの誘導体と縮合させることにより合成したアクリルアミドであってもよい。
また、エチレンイミン、ビニルアミン、アリルアミン、アリルアミン塩酸塩等もアミノ基を有するモノマーとして用いることができる。
これらのアミノ基を有する単官能モノマーは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
[多官能モノマー]
「多官能モノマー」は、例えば、重合性基を分子内に2つ以上もつモノマーである。重合性基の具体例については、[単官能モノマー]の欄の記載を参照することができる。多官能モノマーが有する重合性基の数は、特に制限されないが、2~6個、または2~5個、または2~4個、または2個とすることができる。多官能モノマーが有する複数の重合性基は同じであってもよいし、異なっていてもよい。反応混合物が多官能モノマーを所定の割合で含むことにより、ポリマー鎖間に架橋構造が形成され、含水性や膨潤度が抑えられた硬いポリマーを得ることができる。
適度な量の多官能モノマーをアミノ基を有するモノマーと共重合することで、アミノ基の周囲に疎水性や立体障害を導入し、二酸化炭素放散条件におけるアミノ基の酸解離定数を低下させ、効率よく放散を行う材料を合成することができる。その際、多官能モノマーの導入量が多すぎると二酸化炭素吸収条件におけるアミノ基の酸解離定数が低くなりすぎるため二酸化炭素吸収量が低下する。そのため、多官能モノマーの導入量を適度に設計することが重要である。
多官能モノマーとして、例えば、多官能(メタ)アクリルアミド系モノマー、多官能(メタ)アクリレート系モノマー、チタン架橋剤等の架橋剤を挙げることができ、重合性基を2個有するアクリルアミド系モノマー(アクリルアミド誘導体)を用いることができる。重合性基を2個有するアクリルアミド系モノマーとして、N,N’-アルキレンビス(メタ)アクリルアミドを例示することができる。ここで、N,N’-アルキレンビス(メタ)アクリルアミドのアルキレン基の炭素数は、特に限定されないが、1~12、または1~4、または1~2とすることができる。重合性基を2個有するアクリルアミド誘導体の具体例として、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(BIS)を挙げることができる。また、アルキレン基の代わりに、オリゴエチレンイミンやN,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,4-(ビスアミノプロピル)ピペラジンなどのアミノ基を有する直鎖状あるいは環状の架橋鎖を有する架橋剤を多官能モノマーとして用いることもできる。同様にアルキレン基の代わりにオリゴエチレングリコールが架橋鎖を構成する架橋剤を多官能モノマーとして用いることもできる。また、多官能(メタ)アクリレート系モノマーの具体例としては、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を挙げることができる。
これらの多官能モノマーは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
[疎水性基を有するモノマー]
反応混合物は、疎水性基を有するモノマーを含んでいてもよい。
「疎水性基」とは、アルキル基あるいはフェニル基のような水に難溶な官能基を意味することができる。
疎水性基を有するモノマーは、例えば、疎水性基を有し、アミノ基を有しない単官能モノマーであってもよいし、疎水性基を有する多官能モノマーであってもよい。
疎水性基とアミノ基を共に有する単官能モノマーは、「アミノ基を有する単官能モノマー」に分類することができ、疎水性基を有する多官能モノマーは、「多官能モノマー」に分類することができる。よって、疎水性基を有し、アミノ基を有しない単官能モノマーを、「疎水性基を有する単官能モノマー」と称する。
モノマーが有する疎水性基として、例えば、C2XあるいはC2X+1(Xは整数である)で表される炭化水素基を挙げることができ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等とすることできる。また、疎水性基は、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基のように、上記の疎水性基の水素原子が水酸基で置換されたものであってもよい。
モノマーにおける疎水性基は、ポリマーの主鎖を構成する部分に結合していても、側鎖を構成する部分に結合していてもよいが、側鎖を構成する部分に結合していることができる。また、モノマーが有する疎水性基の数は、特に限定されず、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。モノマーが2つ以上の疎水性基を有する場合、各疎水性基は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0017】
疎水性基を有するモノマーの具体例として、N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、N,N-ジアルキルアクリルアミド、N-(ヒドロキシアルキル)アクリルアミド、(ヒドロキシアルキル)アクリレート、N,N-ジアルキルメタクリルアミド、N-(ヒドロキシアルキル)メタクリルアミド、(ヒドロキシアルキル)メタクリレート、N-フェニルメタクリルアミド、N-フェニルメタクリレート等を挙げることができる。
これらの疎水性基を有するポリマーは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
[モノマーの組み合わせ]
単官能モノマーと多官能モノマーの組合せとして、例えば、アミノ基を有する単官能モノマーと多官能モノマーの組み合わせ、アミノ基と疎水性基を共に有しない単官能モノマーと多官能モノマーの組み合わせ、疎水性基を有する単官能モノマーと多官能モノマーの組み合わせ、アミノ基を有する単官能モノマーと疎水性基を有する単官能モノマーと多官能モノマーの組み合わせ、アミノ基を有する単官能モノマーとアミノ基と疎水性基を共に有しない単官能モノマーと多官能モノマーの組み合わせ等が挙げられる。
アミノ基を有する単官能モノマーと多官能モノマーの組み合わせとして、N-(アミノアルキル)(メタ)アクリルアミドと、重合性基を2個有するアクリルアミド誘導体または重合性基を2個有する(メタ)アクリレートの組み合わせを挙げることができる。具体例として、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド(DMAPM)とN,N’-メチレンビスアクリルアミド(BIS)の組み合わせが挙げられる。
アミノ基を有する単官能モノマーと疎水性基を有する単官能モノマーと多官能モノマーの組み合わせとして、N-(アミノアルキル)(メタ)アクリルアミドと、N-アルキル(メタ)アクリルアミドと、重合性基を2個有するアクリルアミド誘導体または重合性基を2個有する(メタ)アクリレートの組み合わせを挙げることができる。具体例として、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド(DMAPM)とN-tert-ブチルアクリルアミド(TBAm)とN,N’-メチレンビスアクリルアミド(BIS)の組み合わせが挙げられる。
アミノ基および疎水性基を有しない単官能モノマーと多官能モノマーの組み合わせとして、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドと、重合性基を2個有するアクリルアミド誘導体または重合性基を2個有する(メタ)アクリレートの組み合わせや、N-アルキル(メタ)アクリルアミドと、重合性基を2個有するアクリルアミド誘導体または重合性基を2個有する(メタ)アクリレートの組み合わせを挙げることができる。具体例として、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド(DMAm)とN,N’-メチレンビスアクリルアミド(BIS)の組み合わせ、N-イソプロピルアクリルアミド(NiPAm)とN,N’-メチレンビスアクリルアミド(BIS)の組み合わせが挙げられる。
【0019】
[溶媒]
溶媒は、重合反応の反応媒体として機能するものである。反応混合物が溶媒を含むことにより、ポリマー内のアミノ基の周りに適度な空間をもたせた状態のポリマーを合成することができる。そのため、適度な溶媒を添加して重合することで得られるポリマーのガス可逆吸収能が高くなる傾向がある。
溶媒として、水、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒を挙げることができ、これら極性溶媒を2種以上組み合わせた混合溶媒であってもよい。また、水、または水と他の極性溶媒との混合溶媒を用いることができ、水とアルコールの混合溶媒を用いることもでき、水とエタノールであることもでき、水とメタノールの混合溶媒を用いることもできる。水とアルコールの混合容量比(水:アルコール)は、1:0~1:1、または1:0.2~1:0.8、または1:0.3~1:0.5とすることができる。溶媒には塩類や溶媒に可溶な高分子が含まれてもよい。
【0020】
[開始剤]
開始剤は、モノマーの重合反応を開始するために加える化合物であり、エネルギー印加により、反応性の高い中間体に変換しうる化合物を用いることができる。例えば、加熱によりラジカルやカチオンなどの活性種を発生する熱重合開始剤、光照射によりラジカル、カチオン、アニオンなどの活性種を発生する光重合開始剤を挙げることができる。熱ラジカル重合の開始剤として、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN)、2,2’-アゾビスブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-70)等のアゾ化合物や、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素水、過硫酸塩、tert-ブチルハイドロパーオキサイド+硫酸第1鉄等の過酸化物などを挙げることができ、熱カチオン重合開始剤として、ベンゼンスルホン酸エステル、アルキルスルホニウム塩などを挙げることができる。また、紫外線照射や電子線照射によりラジカルを発生する開始剤として、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ誘導体等が挙げることができる。
AIBN等の開始剤は、精製(再結晶)してから使用してもよいし、精製せずに使用してもよい。
【0021】
[界面活性剤]
反応混合物には、必要に応じて界面活性剤等を添加してもよい。これにより、均一なポリマーを合成することができる。
添加剤としては、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の両親媒性高分子、そのオリゴマー、あるいはセチルトリメチルアンモニウムブロミド等のイオン性界面活性剤等を用いることができる。
【0022】
[重合反応]
製造方法では、上記のような単官能モノマー、多官能モノマー、溶媒および開始剤を含む反応混合物中でモノマーを重合させることによりポリマーを製造するが、このとき、反応混合物の総モノマー濃度を0.7モル/L以上とし、反応混合物に含有させるモノマーのうち多官能モノマーの割合を10モル%超で30モル%以下とすることができる。ここで、反応混合物の「総モノマー濃度」とは、例えば、反応混合物が1L当たりに含む全てのモノマーの合計モル数のことをいうことができる。
上記の反応混合物中でモノマーを重合させると、単官能モノマーに由来する構成単位を含むポリマー鎖と多官能モノマーに由来する架橋構造を有するポリマーが合成される。このとき、製造方法では、反応混合物の総モノマー濃度を0.7モル/L以上と高めに設定することができ、限られた体積の反応混合物中で、ポリマー鎖同士が相互作用や絡み合いにより効率よく非共有結合的な架橋点を形成し、さらに架橋剤により共有結合的な架橋により構造が安定化された状態で重合されるようにすることができる。その結果、ポリマーが湿潤状態において過度に含水、変形しない。質量当たりのガス可逆吸収量を維持したまま、膨潤性が低い、すなわち単位体積あたりのガス可逆吸収量が大きいポリマーを高い収率で合成することができる。
また、総モノマー濃度を0.7モル/L以上とし、且つ、モノマーのうち多官能モノマーの割合を10モル%以上とすることができ、ポリマー鎖間に、比較的密に架橋構造が形成されるようにすることもできる。これにより、硬くて含水量や膨潤性がより低いポリマーが得られる。さらに、総モノマー濃度の上限値を4モル/Lとし、且つ、多官能モノマーの割合の上限値を30モル%とすることもでき、これらの濃度が高すぎることによる、質量当たりのガス可逆吸収量の低下が抑えられるようにすることもできる。以上により、単位体積当たりのガス可逆吸収量が大きなポリマー材料を生産性よく製造することができる。
【0023】
反応混合物中のモノマーの総濃度は、例えば、1.0~2.8モル/L、または1.5~3モル/Lとすることができる。
モノマーのうちの多官能モノマーの割合は、例えば、10モル%超で30モル%以下であり、15モル%以上で30モル%以下とすることができる。
反応混合物にアミノ基を有する単官能モノマーを含有させる場合、モノマーのうちアミノ基を有する単官能モノマーの割合は、例えば、1~95モル%、または5~90モル%、または30~85モル%とすることができる。
反応混合物に疎水性基を有する単官能モノマーを含有させる場合、モノマーのうち疎水性基を有する単官能モノマーの割合は、例えば、1~50モル%、または5~45モル%、または10~43モル%とすることができる。
反応混合物にアミノ基を有する単官能モノマーと疎水性基を有する単官能モノマーを含有させる場合、アミノ基を有する単官能モノマーと疎水性基を有する単官能モノマーとのモル比は、例えば、95:5~5:95、または3:1~1:2とすることができる。
【0024】
反応混合物の各成分を混合する手順は特に制限されないが、アミノ基を有する単官能モノマーと疎水性基を有する単官能モノマーを併用する場合には、アミノ基を有する単官能モノマーと多官能モノマーと水を含む混合物を加熱した後、この混合物に疎水性基を有する単官能モノマーを加えることができ、または疎水性基を有する単官能モノマーはアルコール溶液として混合物に添加することができる。これにより、溶媒量を少なく抑えながら、各モノマーを均一に混合することができる。
反応混合物の反応温度は、例えば0~200℃、または30~120℃、または50~105℃とすることができる。
反応時間は、例えば、0.1~5時間、または0.2~3時間とすることができる。
【0025】
[ポリマーの後処理]
本発明の製造方法では、反応液中に、低膨潤性のポリマーが沈殿物として生成するか反応液全体がゲル化する。生成したポリマーは、機械的に粉砕してスラリーあるいは粉末としてもよく、反応液から液体成分を除去し、残った沈殿物(ポリマー)を機械的に粉砕して粉末としてもよい。また、得られた粉末を分散媒に懸濁させてスラリーを調製してもよい。
ゲルの粉砕は、各種粉砕機を用いて行うことができる。例えばジョークラッシャー、ジャイレトリクラッシャー、インパクトクラッシャー、ロールクラッシャー、エッジランナー、ディスインテグレーター、SAGミル、自生粉砕ミル、ボールミル、ロッドミル、ジェットミル、摩砕機、押し出し・せん断式粉砕機、ミートチョッパー、フィッツミルにより行うことができる。
また、調製したスラリーを塗布、乾燥してポリマー粉体からなる多孔膜を形成してもよいし、スラリーを濾過してフィルター上にポリマーを膜状に残し、これを乾燥することでポリマーの膜や充填層を形成してもよい。
従来のガス吸収材料に用いられているポリマー粒子では、粒子が水分を吸収して膨潤してしまうと、粒子が膨潤し粒子間の空隙が閉塞する。そのため粒子間の水分の除去が難しく、濾過や乾燥が困難である。これに対して、本発明のポリマーの粉末は膨潤性が低いため、濾取等の方法でも膜の形や充填層の形状に容易に成形することができる。膜状に成形あるいは充填したポリマーは、いったん保管した後に水に再分散して製膜あるいは再充填したり、樹脂と混練して成形したりすることもできる。
スラリーの塗布方法としては、例えば、沙紙法、スプレーコート法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、等を挙げることができる。
また、上記の反応液中に生成したポリマーの沈殿物、沈殿物から調製した粉末、スラリーおよび膜は、凍結乾燥あるいは噴霧乾燥させてもよい。あるいは流動層を用いて熱風で乾燥しても良い。本発明のポリマーは、凍結乾燥後に再度水中に分散させた場合でも給水しすぎず適度な膨潤性を保持する。一度乾燥後に再度膨潤させる際には塩酸や二酸化炭素などの酸を添加しても良い。あるいは再膨潤を加速するために乾燥時にポリエチレングリコールやグリセリンなど揮発性が低く親水性が高い樹脂を添加しておいても良い。
また、ポリマーの沈殿物から調製した粉末、スラリー、膜、およびこれらの凍結乾燥物は、必要に応じて洗浄し、下記のガス吸収材料に供することができる。
【0026】
[2]アミン含浸工程
本発明の製造方法では、ポリマー合成工程[1]で得たポリマーに、アミンを含む処理液(以下、「アミン含有処理液」という)を含浸させてポリマー材料を得る。ただし、ポリマー合成工程[1]で、アミノ基を含む単官能モノマーを用いた場合には、アミン含浸工程を行わなくてもよい。
ポリマーにアミン含有処理液を含浸させると、ポリマー鎖間にアミン含有処理液が侵入して拡散し、ポリマーがアミンを含んだ状態になる。このとき、上記のポリマー合成工程で得たポリマーは、ポリマー鎖間に比較的密に架橋構造が形成されていることにより、アミン含有処理液を含浸させても膨潤し難く、硬い状態を保持する。こうして得られたポリマー材料は、ポリマーの膨潤が抑えられていることにより充填時にガスが良好に拡散することと、アミンのアミノ基や単官能モノマーに由来するアミノ基がガスを可逆的に吸収する官能基として効果的に機能することにより、優れたガス可逆吸収能を示す。
以下において、アミン含浸工程で用いるアミン含有処理液およびアミン含浸処理の条件について説明する。
【0027】
[アミン含有処理液]
アミン含浸工程で用いるアミン含有処理液は、アミンを含む液状材料であればよく、例えば、アミンを溶媒に溶解して調製したアミン溶液であってもよいし、液状のアミンであってもよい。また、アミン含有処理液は、適度な量の水を含んでいてもよい。
【0028】
(アミン)
アミン含有処理液に含有させるアミンは、低分子のアミンおよび高分子のアミンのいずれであってもよい。
アミンの分子量は、例えば、61~10000、または75~1000、または90~500とすることができる。
アミンとして用いうる化合物の説明と具体例については、後述の吸収促進剤および放散促進剤の説明における低分子のアミンの説明と具体例を参照することができる。
【0029】
(溶媒)
アミン含有処理液としてアミン溶液を用いる場合、その溶媒には、例えば、溶質としてのアミンを溶解することができ、且つ、ポリマーとの相溶性が高く二酸化炭素や重炭酸イオンの溶解度が高い溶媒を用いることができる。具体的には、水、エチレングリコール、グリセリンなどを挙げることができ、これらの溶媒を2種以上組み合わせた混合溶媒であってもよい。
アミン溶液におけるアミンの濃度は、アミン濃度換算で例えば0.1~12Ν、または1~10Ν、または3~9Νとすることができる。
【0030】
(その他の成分)
アミン含有処理液には、アミンや溶媒以外の成分(その他の成分)を添加してもよい。その他の成分として、酸化防止剤、抗酸化剤等を挙げることができる。
【0031】
[アミン含浸処理の条件]
ポリマーへのアミン含有処理液の含浸(アミン含浸処理)は、例えばアミン含有処理液中にポリマーを浸漬することにより行うことができる。
処理に供するポリマーは、乾燥させたものであっても、水等の液体で膨潤させたものであってもよい。液体で膨潤させたポリマーをアミン含有処理液中に浸漬すると、その液体の少なくとも一部がアミン含有処理液に置換され、アミン含有処理液、または、その液体とアミン含有処理液の混合液を内部に含むポリマー材料が得られる。
アミン含浸処理に用いるアミン含有処理液の量は、処理に供するポリマーの質量の例えば0.1~10倍、または0.2~5倍、または0.3~3倍とすることができる。
アミン含有処理液の温度は、例えば5~100℃、または10~80℃、または15~60℃とすることができる。
アミン含浸処理の処理時間は、アミン含有処理液の濃度や温度によっても異なるが、例えば0.1~100時間、または1~24時間、または2~12時間とすることができる。
また、アミン含浸処理は、ポリマーを浸漬させたアミン含有処理液を振盪させながら行うことができる。
【0032】
<ポリマー材料>
次に、本発明のポリマー材料について説明する。
本発明のポリマー材料は、本発明の製造方法により製造されることを特徴とする。
本発明の製造方法についての説明は、上記の<ポリマー材料の製造方法>の欄の記載を参照することができる。
本発明のポリマー材料は、例えば、(A)単官能モノマーに由来する構成単位を含むポリマー鎖と多官能モノマーに由来する架橋構造を有するポリマーと、アミン含有処理液に由来するアミンを含有する態様と、(B)アミノ基を有する単官能モノマーに由来する構成単位を含むポリマー鎖と多官能モノマーに由来する架橋構造を有するポリマーを含有し、アミン含有処理液に由来する成分を含有しない態様がある。(A)の態様における単官能モノマーおよび(B)の態様における多官能モノマーは、アミノ基を有していてもよく、アミノ基を有していなくてもよい。本発明のポリマー材料は、ポリマーの構成単位および含浸されたアミンの少なくとも一方にアミノ基を含有することにより、二酸化炭素や硫化水素等の酸性ガスを選択的に吸収しうる。また、加熱を行うことにより、pKaの低下、疎水性基の疎水性相互作用の増大等の相転移が起こり、吸収した酸性ガスを放散する。すなわち、本発明のポリマー材料は、酸性ガスを選択的かつ可逆的に吸収するガス可逆吸収能を有する。また、本発明のポリマー材料は、本発明の製造方法で製造されたものであるため、含水性や膨潤性が低い。そのため、ガス吸収材やガス分離材として製品化する際、その体積充填率を十分に大きく採ることができる。また、その製品を適用したガス回収装置に水分を含むガスを流した場合、ポリマーは含水して膨潤するが限られた量の水しか吸収できず膨張度が限定される。そのため、ガス流路が十分に確保できるとともに、ガス放散のための加熱工程に要する熱量を低く抑えることができる。また、吸収材料に液体の水を添加した場合も含水したポリマー間の間隙が維持され、水の流路が十分に確保できると共に、その後のガスの流通により容易に水を排出し空隙にガスを導入可能である。これらのことから、本発明のポリマー材料は、二酸化炭素等の酸性ガスを可逆的に吸収するためのガス吸収材料として効果的に用いることができ、そのガス吸収材料は、混合ガスから酸性ガスを分離するためのガス分離材料として効果的に用いることができる。
以下に、本発明のポリマー材料が含むポリマーの平均分子量、ポリマーがアミノ基や疎水性基を有する場合の各基の量、ポリマーの物性値、並びに、ポリマー材料がアミンを含有する場合のアミンの含有量について説明する。
【0033】
[ポリマーの平均分子量、アミノ基および疎水性基の量]
ポリマーがアミノ基を有する場合、そのアミノ基の量は例えば1mmol/g~23mmol/g、または1mmol/g~18mmol/g、または2mmol/g~7mmol/gとすることができる。あるいは全モノマー中のアミノ基を有するモノマーの割合は、例えば5~100mol%、または30~100mol%、または50~90mol%とすることができる。
ポリマーが疎水性基を有する場合、その疎水性基の量は例えば1mol%~50mol%、または5mol%~45mol%、または10mol%~43mol%とすることができる。
ポリマーの架橋度は例えば0mol%~50mol%、または5mol%~40mol%、または10mol%~30mol%とすることができる。
ポリマー材料がアミンを含有する場合、その含有量はポリマーの乾燥重量あたり例えば1~30mmol/g、または2~20mmol/g、または3~10mmol/gとすることができる。
【0034】
[ポリマーの膨潤度]
本発明のポリマー材料が含有するポリマーの膨潤度は、例えば水に長時間含浸させたときの含水量で評価可能である。
【0035】
[ポリマーの含水量]
本発明のポリマー材料が含有するポリマーは、過剰量の水で膨潤させたときの含水量が例えば4グラム/グラムポリマー以下、または3グラム/グラムポリマー以下、または2グラム/グラムポリマー以下とすることができる。
ここで、ポリマーの「含水量」とは、過剰量水を加えて室温で一晩静置した高分子をハンドブレンダーで粉砕した後、ろ紙や金属メッシュを用いたろ過により水分を取り除いた後の濡れた状態のポリマー重量をM、本ポリマーを凍結乾燥や自然乾燥により乾燥させた際のポリマー重量をMとしたとき、下記式にて求められる値のことをいう。
含水量=(M-M)/M
【0036】
[ポリマー材料のガス可逆吸収能]
ポリマー材料は乾燥ポリマー重量あたりのCO可逆吸収量が例えば30mL/g以上、または45mL/g以上、または60mL/g以上とすることができる。これにより、例えば排ガスから二酸化炭素を回収するガス回収装置に適用したとき、排ガスに含まれる二酸化炭素を効率よく吸収して回収することができる。
CO可逆吸収量の測定方法については、実施例における(CO可逆吸収試験)の欄の記載を参照することができる。
【0037】
[ポリマー材料の態様]
本発明のポリマー材料の態様は、特に限定されず、例えば粉末、スラリー、膜、バルク体等のいずれであってもよい。粉末、スラリー、膜の作製方法については、ポリマー材料の製造方法における[ポリマーの後処理]の欄の記載を参照することができる。
【0038】
<ガス吸収材料>
次に、本発明のガス吸収材料について説明する。
本発明のガス吸収材料は、本発明のポリマー材料を含有するものである。
本発明のガス吸収材料は、本発明のポリマー材料を含有することにより、二酸化炭素や硫化水素等の酸性ガスあるいは水蒸気を吸収した後、温度やガス分圧の変化によって酸性ガスあるいは水蒸気を放散するガス可逆吸収能を有する。本発明のポリマー材料についての説明は、上記の<ポリマー材料>の欄の記載を参照することができる。
本発明のガス吸収材料は、本発明のポリマー材料に加えて、本発明のポリマー材料以外の成分(その他の成分)が含有されていてもよい。ガス吸収材料に用いうるその他の成分として、例えば水分、pKa調整剤、吸収促進剤、放散促進剤、吸湿剤、酸化防止剤、熱可塑性樹脂、フィラー等を挙げることができる。水分は、例えば水や水蒸気を用いて意図的に加水することによってガス吸収材料に含ませることができる。加水時には、例えば二酸化炭素ガスや重炭酸イオンを添加することもできる。
【0039】
[pKa調整剤]
pKa調整剤は、例えば重合時に添加することで重合後のポリマーのpKaを所望の値に調整すること等を目的として添加しうるものである。これにより、ポリマーに吸収されるガスの種類、ガス吸収材料を選択的に透過するガスや液体の種類、透過流束、他のガスに対する吸収対象ガスの選択率等を制御することができる。pKa調整剤としては、例えばポリマーのアミノ基をプロトン化または脱プロトン化しうるものを用いることができ、例えば塩酸等の酸や水酸化ナトリウム等の塩基を、所望のpKaに応じて適宜濃度を調整して用いることができる。また、多官能モノマーによる架橋率によっても、ポリマー内のアミンの周りのポリマー密度やアミン間距離、極性等の局所環境を調節しアミンのPKaを制御することができるため、上記の多官能モノマーをpKa調整剤として兼用してもよい。また、疎水性のモノマーやアルコール、親水性のポリマーを重合時に添加することによってもアミンの周りのポリマー密度やアミン間距離、極性等の局所環境を調節しアミンのpKaを制御することができるため、これらをpKa調整剤として兼用してもよい。
【0040】
[吸収促進剤、放散促進剤]
吸収促進剤は、本発明のポリマーへの酸性ガスの吸収を促進する機能を有する化合物である。放散促進剤は、酸性ガスのポリマーからの放散を促進する機能を有する化合物である。本発明では、吸収促進剤と放散促進剤の両方の機能を有する吸収放散促進剤を用いてもよい。これらの吸収促進剤、放散促進剤、吸収放散促進剤は、それぞれガス吸収材料を安定化する安定化剤の機能を兼ねたものであってもよい。本発明のガス吸収材料における吸収促進剤、放散促進剤、吸収放散促進剤の合計含有量は、固形分1gあたり例えば0.05mL以上、または0.1mL以上とすることができる。また、ガス吸収材料における吸収促進剤の含有量は、アミン濃度換算で例えば0.1~12N、または1~10N、または3~9Nとすることができる。
吸収促進剤、放散促進剤、吸収放散促進剤として、低分子のアミンを用いることができる。低分子のアミンの分子量は、例えば61~10000、または75~1000、または90~500であるものを用いてもよい。低分子のアミンの沸点は、長期利用できて実用的であることから、例えば80℃以上、または120℃以上、または150℃以上であるものを用いてもよい。沸点上昇のためにイオン液体のように対イオンと塩を形成する部位を有し、且つ液体となるアミン含有化合物を用いてもよい。
低分子のアミンには、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アンモニウム基、イミダゾリウム基のいずれが含まれていてもよく、アミノ基、アンモニウム基、イミダゾリウム基は複数含まれていてもよく、例えば1~3個含まれていてもよい。また、2級アミノ基や3級アミノ基は環状アミノ基であってもよい。さらに、低分子のアミンには、アミノ基、アンモニウム基、イミダゾリウム基以外の官能基が含まれていてもよく、例えばヒドロキシル基が含まれていてもよい。低分子のアミンに含まれているヒドロキシル基は0~2個であってもよい。低分子のアミンとして、アミノ基とヒドロキシル基を有するアミンや、アミノ基を3つ有するアミン等を例示することができ、例えば2級アミノ基とヒドロキシル基を有するアミン等を例示することができる。高い濃度領域において特に飛躍的に酸性ガスの放散量を高めることができ、繰り返し利用に適していることから、例えば沸点が150℃以上の2級アミノ基とヒドロキシル基を有するアミンを選択してもよい。
低分子のアミンとしては、下記式で表される具体的な化合物を挙げることができる。
【0041】
【化1】
【0042】
これらのうちで、特に、酸性ガスの放散量を多くできることから、DMAE、IPAE,Bis(2DMAE)ER、1-2HE-PRLD、1-2HE-PP、TM-1,4-DAB、TMHAD、PMDETAを選択してもよく、中でも、沸点が比較的高く、蒸発しにくいことから、IPAE、Bis(2DMAE)ER、1-2HE-PP、TM-1,4-DAB、TMHAD、PMDETAを選択してもよく、その濃度を高めることで酸性ガスの放散量を顕著に増大できることから、IPAE、TM-1,4-DAB、TMHAD、PMDETAを選択してもよく、入手が容易であることから、IPAE、TMHAD、PMDETAを選択してもよい。
【0043】
[吸湿剤]
添加剤として用いることができる吸湿剤は、例えば飽和水溶液としたときに25℃での相対湿度が90%以下となるものを用いることができる。そのような吸湿剤として、例えば臭化物イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、重炭酸イオン、リチウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン等のイオンを挙げることができる。また、そのような吸湿剤として、例えば臭化リチウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、酢酸カリウム、塩化マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の塩も挙げることができる。吸湿剤を添加する場合、その添加量はガス吸収材料全量に対して例えば0.01~10質量%とすることができる。
【0044】
[酸化防止剤]
添加剤として用いることができる酸化防止剤は、添加することにより酸化を抑制ないし防止することができるものである。そのような酸化防止剤として、例えばビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム二酸化硫黄、ヒドロキノンおよびその誘導体を挙げることができる。酸化防止剤を添加する場合、その添加量はガス吸収材料全量に対して例えば0.01~10質量%とすることができる。
【0045】
[熱可塑性樹脂]
ガス吸収材料には、熱可塑性樹脂を含有させてもよい。これにより、熱可塑性樹脂と、本発明のポリマーおよび必要に応じて添加するその他の成分を混錬してペレットやフィルムに成形することができる。
熱可塑性樹脂としては、公知のものを用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリ乳酸エチルなどのポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、例えばポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂を選択したりすることができる。ガス吸収材料に熱可塑性樹脂を含有させる場合、熱活性樹脂の含有量は、ガス吸収材料全量に対して例えば10~40質量%とすることができる。
【0046】
[フィラー]
ガス吸収材料には、フィラーを含有させてもよい。これにより、ガス吸収材料に空隙を形成することができ、ガス吸収材料内部へのガスの拡散を促進して、ガスの可逆吸収速度や可逆吸収量を向上させることができる。さらにガス吸着能を有するフィラーを用いることで吸収材料のガス吸収に加えて吸着材のガス吸着も発揮することが可能である。ガス吸着材は低湿度で大きなガス可逆吸着能を発揮し、ガス吸収材料は高湿度下で大きなガス吸収性能を発揮することが知られているためガス吸着剤をフィラーとして用いることで広い湿度条件において大きなガス可逆吸着能を有する材料を実現することができる。ガス吸着能を有するフィラーとしては例えば各種活性炭やゼオライトなど大きな細孔面積を有する材料を用いてもよい。特に大きな二酸化炭素ガス吸着能を有する吸着材を選択して用いてもよい。また、ガス吸収材料を構成するポリマー材料が、水を含んでゲル化している場合やゲル化したポリマーの粉砕物(ポリマー粉砕物)である場合、フィラーを添加すると嵩が小さくなって充填量が大きくなり、ガス可逆吸収能を向上させることができる。フィラーには、後述する一次粒子径が1000nm以下の微粒子を好ましく用いることができる。さらに、ポリマー粉砕物とフィラーを含むガス吸収材料を粉砕すると、ガス可逆吸収能をより一層向上させることができる。このポリマー粉砕物とフィラーを含むガス吸収材料の粉砕は、ビーズミル等を用いた遊星型ボールミル装置にて行うことができる。
吸収材料内部へのガスの拡散を促進するためにフィラーは粉末状であるものを選択してもよい。また、一次粒子の平均粒径が例えば1000nm以下であるものを採用してもよい。ここでいう一次粒子径は、透過型電子顕微鏡観察によって測定することができる。本発明で用いる一次粒子径1000nm以下の微粒子は、一次粒子径が1000nm以下の微粒子のみからなるものであってもよい。粒径は、平均一次粒子径で0.1nm~1000nm、または0.3nm~500nm、または0.5nm~300nm、または1nm~200nm、または1.5nm~100nm、または2nm~50nm、または2.5nm~25nmとすることができる。これにより、ガス吸収材料の成形体にガス拡散相がより確実に形成され、ガスの吸収速度および放散速度がより向上する傾向がある。微粒子は、1次粒子が凝集しているものであってもよい。凝集体は100nm~200μmであることが好ましく、500nm~100μmであることがより好ましく、2.5μm~50μmであることが最も好ましい。また、フィラーの中でも、水接触角が例えば70°以上であるものを使用してもよい。水接触角は、80°以上、または100°以上、または110°以上、または120°以上、または130°以上、または140°以上であってもよい。
【0047】
一次粒子径が1000nm以下の微粒子
以下において、フィラーとして用いうる一次粒子径が1000nm以下の微粒子について具体的に説明する。
一次粒子径が1000nm以下の微粒子は、無機材料で構成されていても、有機材料で構成されていてもよいし、有機材料と無機材料を組み合わせて構成されていてもよい。また、微粒子は、撥水性微粒子であっても、親水性微粒子であってもよいが、撥水性微粒子であることが好ましい。微粒子が撥水性微粒子であることにより、微粒子によって形成された空隙が、ガス吸収材料に含ませた水分によって閉塞されることが抑えられ、この空隙がガス拡散相として効果的に機能するようになる。
ここで、「撥水性微粒子」とは、一次粒子径が1000nm以下であって、水接触角が70°以上の微粒子のことを意味する。微粒子の「水接触角」とは、その微粒子で形成した微粒子堆積膜の表面について測定される水との接触角のことをいう。その微粒子堆積膜表面の水接触角は対水静的接触角測定により測定することができる。
撥水性微粒子の水接触角は、80°以上であることが好ましく、100°以上であることがより好ましく、110°以上であることがさらに好ましく、120°以上であることがさらにより好ましく、130°以上であることが特に好ましく、140°以上であることが最も好ましい。
【0048】
(撥水性微粒子)
一次粒子径が1000nm以下の撥水性微粒子は、それ自体が撥水性を有する微粒子であってもよいし、基材となる粒子(基材粒子)の表面に撥水性を付与したものであってもよい。基材粒子の表面に撥水性を付与した微粒子として、基材表面に撥水性被膜を形成した被膜付き微粒子や基材粒子に撥水性を付与するための表面修飾を施した表面修飾微粒子を挙げることができる。
まず、それ自体が撥水性を有する微粒子として、カーボンブラックを挙げることができる。カーボンブラックとして、例えばアセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ランプブラック、ケッチェンブラック等を挙げることができ、中でもアセチレンブラックが好ましい。
その他の撥水性微粒子として、クノーベル(多孔質炭素、東洋炭素株式会社製)、酸化チタン、メソポーラスシリカ等からなる微粒子も挙げることができる。
また、それ自体が撥水性を有する微粒子として、撥水性有機材料により形成された微粒子も用いることができる。粒子の形成に用いうる撥水性有機材料としては、-(CA-CA)-で表される構成単位を含むフッ素樹脂を挙げることができる(ただし、A~Aは水素原子、フッ素原子、塩素原子またはパーフルオロアルキル基を示し、A~Aの少なくとも1つはフッ素原子である)。フッ素樹脂の具体例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンと他のモノマーとの共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレンと他のモノマーとの共重合体、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリテトラフルオロプロピレン(HEP)等を挙げることができる。テトラフルオロエチレンと他のモノマーとの共重合体として、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA:テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP:テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレン共重合体)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロジオキソールコポリマー(TFE/PDD)等を挙げることができる。また、クロロトリフルオロエチレンと他のモノマーとの共重合体としては、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)を挙げることができる。
これらの撥水性有機材料は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
被膜付き微粒子および表面修飾微粒子の基材粒子は、無機粒子であっても有機粒子であってもよいが、無機粒子であることが好ましい。また、それ自体が撥水性を有する微粒子を基材粒子に用い、その微粒子に撥水性被膜や撥水性を付与する表面修飾を施すと、ガスの吸収速度および放散速度とともに、ガス吸収・放散量も向上させることができる。
無機粒子としては、公知のものを用いることができ、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ランプブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、金属元素または半金属元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩等の無機化合物からなる粒子、天然鉱物粒子等が挙げられる。金属元素または半金属元素の無機化合物として、フッ化リチウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、フッ化カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン(チタニア)、二酸化ジルコニア(ジルコニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、アルミナシリケート(ケイ酸アルミナ、カオリン、カオリナイト)、酸化ケイ素(シリカ、シリカゲル)等が挙げられ、天然鉱物としてタルク、クレー等が挙げられる。これらの中でもカーボンブラック、酸化ケイ素からなる粒子が好ましい。
有機粒子としては、公知のものを用いることができ、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系の高分子からなる粒子を挙げることができる。このとき、フィラーを併用してもよく、例えば活性炭やゼオライトをフィラーとして好ましく用いることができる。
【0050】
基材粒子に形成する撥水性被膜には、微粒子の形成に用いうる撥水性材料として例示した、上記の撥水性有機材料の他、オルガノポリシロキサンやオルガノハイドロジェンポリシロキサンの被膜を用いることができる。オルガノポリシロキサンとして、ジアルキルポリシロキサン、アルキルフェニルポリシロキサンを挙げることができ、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、アルキルハイドロジェンポリシロキサンを挙げることができる。ジアルキルポリシロキサン、アルキルフェニルポリシロキサンおよびアルキルハイドロジェンポリシロキサンにおけるアルキル基は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましく、1~6であることがさらに好ましい。ここで、ケイ素原子に結合する2つのアルキル基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。オルガノポリシロキサンの具体例として、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等を挙げることができ、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としてメチルハイドロジェンポリシロキサン等を挙げることができる。
【0051】
基材粒子に行う表面修飾法としては、基材粒子の表面に、アルキル基やフッ化アルキル基等の撥水性基を導入する方法を挙げることができる。基材粒子に導入するアルキル基、フッ化アルキル基は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基、フッ化アルキル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10であることがさらに好ましい。また、フッ化アルキル基は、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換された部分フッ化アルキル基であってもよいし、水素原子の全部がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基であってもよい。
【0052】
これらの撥水性基を基材粒子に導入する表面修飾は、シランカップリング剤やシラザン等のシラン化合物を用いて行うことができる。シランカップリング剤としては、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(1)
SiX(4-n)
(一般式(1)において、Xは加水分解によりシラノール基を生成する加水分解基を表し、Rは撥水性基を含む基を表す。nは1~3の整数である。)
一般式(1)で表されるシランカップリング剤は、Xの加水分解にて生成されたシラノール基やシリル基が、基材粒子表面の官能基と反応することにより、該基材粒子に撥水性基を導入する。
一般式において、Xが表す「シラノール基を生成する加水分解基」としては、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、ハロゲン基等を挙げることができる。
における撥水性基として、アルキル基、フッ化アルキル基、ジメチルシロキサン等を挙げることができる。アルキル基およびフッ化アルキル基の説明と好ましい範囲は、基材粒子の表面に導入しうる撥水性基の説明と好ましい範囲を参照することができる。撥水性基はSiに直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。
nは1~3の整数であり、1または2であることが好ましい。nが2以上であるとき、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。nが2以下であるとき、複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。
一般式(1)で表されるシラン系カップリング剤の例として、トリエトキシアルキルシラン、ジエトキシジアルキルシラン、エトキシトリアルキルシラン、トリメトキシアルキルシラン、ジメトキシジアルキルシラン、メトキシトリアルキルシラン、トリクロロアルキルシラン等を挙げることができる。また、シラン系カップリング剤の具体例として、トリエトキシカプリリルシラン(トリエトキシ-n-オクチルシラン)、オクタデシルトリクロロシラン等を挙げることができる。
以上の基材粒子への撥水性被膜の形成や表面修飾処理は、常法に従って行うことができる。
【0053】
撥水性微粒子の市販品としては、Microdispers-200(テクノケミカル社製)、AEROSIL RY200、AEROSIL RY300、AEROSIL R805(いずれもエボニック社製)、ケッチェンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)等を挙げることができる。
以上の撥水性微粒子は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
(撥水性微粒子以外の微粒子)
フィラーとして用いうる一次粒子径1000nm以下の微粒子は、撥水性微粒子に限定されるものではなく、撥水性微粒子以外の微粒子、すなわち水接触角が70°未満の微粒子であってもよい。また、撥水性微粒子と、水接触角が70°未満の微粒子を組み合わせて用いてもよい。水接触角が70°未満の微粒子は、水接触角が50°以下であってもよいし、30℃以下であってもよいし、10°以下であってもよい。微粒子の水接触角の下限値は0°である。
撥水性微粒子以外の微粒子として、上記の(撥水性微粒子)の欄において、被膜付き微粒子および表面修飾微粒子の基材粒子の例として記載した、金属元素および半金属元素の無機化合物からなる粒子や有機粒子を挙げることができ、酸化ケイ素の粒子を用いることが好ましい。また、これらの無機粒子および有機粒子は、その表面に有機化合物の被膜が形成されていてもよいし、有機官能基が導入されていてもよい。
撥水性微粒子以外の微粒子の市販品として、AEROSIL 200(エボニック社製)を挙げることができる。
【0055】
(微粒子の比表面積)
微粒子の比表面積は、1~3000m/gであることが好ましく、2.5~2750m/gであることがより好ましく、5~2500m/gであることがさらに好ましい。これにより、ガス吸収材料の成形体にガス拡散相がより確実に形成され、ガスの吸収速度および放散速度がより向上する傾向がある。
微粒子の比表面積はBET法により測定することができる。
【0056】
ポリマー材料と一次粒子径1000nm以下の微粒子の量比
ポリマー材料と微粒子の固形分の重量での配合比(ポリマー材料:微粒子)は、95:5~5:95であることが好ましく、90:10~30:70であることがより好ましく、80:20~50:50であることがさらに好ましい。また、ガス吸収材料におけるポリマー材料の含有量は、固形分量で、撥水性微粒子の含有量よりも大きいことが好ましい。また、ポリマー材料が水を含んでゲル化している場合やゲル化したポリマーの粉砕物である場合、ガス吸収材料にフィラーを添加すると、嵩が小さくなって充填量が大きくなり、ガス可逆吸収性能が向上する。このような作用を効果的に得る点から、ゲル化したポリマーまたはその粉砕物と微粒子の容量比(ゲル化したポリマーまたはその粉砕物:微粒子)は、99.9:0.1~98:2であることが好ましく、99.75:0.25~98.5:1.5であることがより好ましく、99.5:0.5~99:1であることがさらに好ましい。
ポリマー材料と微粒子の量比を上記の範囲とすることにより、ガスの吸収速度および放散速度がより高くなる傾向がある。
ただし、本発明のガス吸収材料は、一次粒子径が1000nm以下の微粒子を含むものに限定されるものではない。すなわち、本発明のガス吸収材料は、一次粒子径が1000nm以下の微粒子を含まなくてもよい。
【0057】
その他のフィラー
本発明のガス吸収材料には、上記に例示した微粒子の他、公知のフィラーを用いることができる。例えば、活性炭、ゼオライト、シリカ、フュームドシリカ、疎水化シリカ、疎水化フュームドシリカ、撥水性シリカ、アルミナ、疎水化アルミナ、撥水性アルミナ、ベーマイト、ケイ藻土、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、金属フェライト等の酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム(軽質、重質)、炭酸マグネシウム、ドロマイト、ドーソナイト等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、タルク、マイカ、クレー、ガラス繊維、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト等のケイ酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、カーボンブラック、疎水化カーボンブラック、撥水化カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維等の炭素、その他鉄粉、銅粉、アルミニウム粉、亜鉛華、硫化モリブデン、ボロン繊維、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、フッ素化樹脂粉体、テフロン(登録商標)パウダー等が挙げられ、水蒸気の凝縮や結露を抑制するために疎水性の物質を選択して用いることもできる。またカーボンブラック等の炭素からなるものを選択して用いることもできる。これらのフィラーは、一次粒子径が1000nm以下であっても1000nm超であってもよい。また、本発明のガス吸収材料は、一次粒子径が1000nm以下の微粒子として例示したものと同じ材料からなる粒子であって、一次粒子径が1000nm超の粒子を含んでいてもよい。ガス吸収材料にフィラーを含有させる場合、フィラーの含有量は、ガス吸収材料全量に対して例えば0.1~60質量%とすることができる。
【0058】
[分散媒]
ガス吸収材料は、本発明のポリマー材料および添加剤を懸濁させる分散媒を含んでいてもよい。分散媒の好ましい範囲と具体例については、ポリマー材料の製造方法における[溶媒]の欄の記載を参照することができる。
【0059】
以上に説明したガス吸収材料に用いうる他の成分は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
<ガス吸収材料の使用態様>
本発明のポリマー材料を含有するガス吸収材料は、様々な態様で用いることができる。ガス吸収材料の使用態様として、例えば、ガス吸収材料をドラム缶などの容器に充填する、ガス吸収材料をシート状に成形し、不織布やメッシュ等との積層体やロール体を形成する、ガス吸収材料をフィルター内部に充填する、ガス吸収材料をポリエチレン等の硬い素材と混錬し、自立膜や繊維、ペレットとして成形する、ガス吸収材料の膜を担体で担持する、ガス吸収体粉末をハニカム状の構造体内部に充填する、等が挙げられる。ガス吸収材料をシート状または膜状に形成する場合、その厚さは特に制限されないが、例えば1~10000μm、または10~5000μm、または100~1000μmとすることができる。
ここで、ガス吸収材料を担体で担持する場合、担体には薄板や繊維集合体等を用いることができる。以下において、担体として用いうる薄板および繊維集合体について説明する。
【0061】
[薄板]
薄板には、平板状の板、シート、箔であって、その厚さが例えば2mm以下、5μm以上のものを用いることができる。
薄板の材料は、定圧比熱が例えば2500KJ/(mK)以下であるものを用いてもよく、熱伝導率が10W/(mK)以上であるものを用いてもよい。このような熱特性を有する薄板は、外部の温度変化に応じて応答性よく温度が変化し、その温度変化を効率よくガス吸収材料全体に伝達することができる。
ここで、本明細書中において「定圧比熱」は、水熱量計や示差走査熱量計等の熱量計によって測定される値である。また、「熱伝導率」は、レーザーフラッシュ法や定常熱流法によって測定される値である。
【0062】
薄板としては、金属薄板(金属箔)、炭素材料からなるシート、カーボンシート、樹脂フィルム(高分子化合物フィルム)等を用いることができる。炭素材料からなるシートとしてはグラファイトシート等を例示することができ、樹脂フィルムとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、PET、ポリイミド等を例示することができる。熱伝導率が高いことから、薄板としては、例えばアルミニウム薄板や鉄の薄板、グラファイトシートを用いてもよい。あるいは、比熱が低いことから例えばアルミニウム薄板やグラファイトシート、樹脂フィルムを用いてもよい。また、金属薄板としては、例えばステンレス鋼薄板、鉄薄板、アルミニウム薄板、またはニッケル薄板等を挙げることができ、このうち、熱伝導率が比較的高いことから、鉄薄板、アルミニウム薄板、ニッケル薄板を特に選択してもよい。
【0063】
薄板は、内部構造が均質な板体であってもよいし、多孔質体やハニカム構造体であってもよい。多孔質体やハニカム構造体の場合には、その空孔にガス吸収材料を充填することができるため、薄板の熱をガス吸収材料に容易に伝熱させて、温度変化に対するガス吸収材料の応答性を高めることができる。特に、発泡金属、発泡ニッケル、多孔性カーボンの多孔質体はガス吸収材料に対する伝熱性が高く、これを担体として用いることにより、ガス吸収材料の温度変化に対する応答性を大きく高めることができる。発泡金属などの多孔質体の孔径は、例えば0.1~10mm、または0.4~4mmとすることができる。また、比表面積は、例えば100~10000m/m、または200~6000m/mとすることができる。また、多孔質担体として、多孔性樹脂や多孔性カーボンからなる担体を用いると熱容量が小さいため吸収体の熱効率を向上させることができる。担体として用いる多孔質体は、その空隙率が例えば1~99%、または10~99%、または20~95%であるものを選択してもよい。
本明細書中において「薄板の空隙率」とは、薄板の見かけの体積と質量および素材の密度により測定される空隙率のことを意味する。
また、担体は、これらの薄板を複数枚積層した積層体であってもよい。積層体において、各薄板は全て同じであってもよいし、材料や厚さが異なる複数の薄板を組み合わせてもよい。
【0064】
[繊維集合体]
繊維集合体は、多数の繊維を薄く広い板状に加工したものである。繊維集合体としては、布、紙等を挙げることができ、中でもフィルターのような多孔質状のものを用いることが好ましい。また、布は、織布、フェルト、不織布等のいずれであってもよい。また、金属繊維フェルトを焼結させたものも担体として用いることができる。このものは、繊維焼結体であるファイバーが密に集合した形状をなし、高い伝熱性を得ることができる。例えば、ステンレス鋼繊維からなるフェルトを焼結させたものや、ニッケル繊維からなるフェルトを焼結させたものを用いることができ、中でもニッケル繊維からなるフェルトを焼結させたものを選択して用いることもできる。
繊維集合体に用いる繊維は、定圧比熱が例えば2500KJ/(mK)以下であるものや、熱伝導率が10W/(mK)以上であるものを用いてもよい。このような熱特性を有する繊維集合体は、外部の温度変化に応じて応答性よく温度が変化し、その温度変化を効率よくゲル状膜全体に伝達することができる。
【0065】
繊維集合体に用いる繊維は、無機繊維であってもよいし、有機繊維であってもよいし、無機繊維と有機繊維とを組み合わせた複合繊維であってもよい。無機繊維としては、ステンレス鋼繊維やアルミニウム繊維、ニッケル繊維等の金属繊維、炭素繊維等を挙げることができ、高い伝熱性が得られることからニッケル繊維を選択してもよい。有機繊維としては、綿、麻等の天然繊維、レーヨン、ポリエステル等の合成繊維がいずれも使用できる。
繊維の直径は、特に限定されないが、例えば8~100μmであるものを用いることができる。これにより、ガスの吸収性能および放散性能に優れたガス吸収材料の膜を得ることができる。
また、担体は、これらの繊維集合体を複数枚積層した集積体であってもよい。集積体において、各繊維集合体は全て同じであってもよいし、繊維の種類や繊維径、繊維の密度等が異なる複数の繊維集合体を組み合わせてもよい。また、担体は、薄板と繊維集合体を積層した積層体であってもよい。
【0066】
担体の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができる。担体の形状の具体例としては、板状や筒状等を挙げることができ、その板の平面形状および筒の断面形状は、正方形状や長方形状等の多角形状、真円状、楕円状等のいずれであってもよい。
担体で担持されたガス吸収材料は、ガス吸収材料のスラリーや粉体を担体の表面に塗布する方法や、予め成膜したガス吸収材料の膜を担体の表面に貼り合わせることで形成することができる。ガス吸収材料のスラリーや粉体を担体に安定に固定化するためにバインダを用いてもよい。
【0067】
<ガス回収装置>
本発明のガス吸収材料は、上記のように、二酸化炭素等の酸性ガスや水蒸気を可逆的に吸収することができるとともに、そのポリマー成分の膨潤性が低いため、ガス吸収材等として製品化する際、その体積充填率を高くすることができる。そのため、例えば排ガスから二酸化炭素を選択的に回収するガス回収装置のガス吸収体の材料として好適に用いることができる。以下において、本発明のガス吸収材料を適用したガス回収装置の第1実施形態および第2実施形態について説明する。図1は、第1実施形態のガス回収装置を示す模式図であり、図2は、第2実施形態のガス回収装置を示す模式図である。
【0068】
図1に示すように、第1実施形態のガス回収装置は、熱交換器21と、脱硫器22と、円柱状のガス吸収体23と、これら各部に連結された第1~第3パイプ24、25、26を有する。第1パイプ24は、その一端が排ガス(被処理ガス)を導入するガス導入口とされており、他端が脱硫器22に連結されている。第2パイプ25は、一端が脱硫器22に連結され、他端がガス吸収体23の一方の側面に連結されている。第3パイプ26は、ガス吸収体23の例えば一方の側面と他方の側面に連結された循環経路26aと、ガス吸収体23の一方の側面側において循環経路26aから分岐する分岐経路26bを有しており、分岐経路26bの一端が回収した二酸化炭素ガスを排出するガス排出口とされている。また、ガス吸収体23の一方の側面における第2パイプ25と第3パイプ26の各連結部は、例えば円形をなす側面のほぼ同一直径上に、中心部を挟むようにしてそれぞれ設けられている。熱交換器21は、第1パイプ24の中途部と循環経路26aの中途部にそれぞれ接続されている。
ガス吸収体23は、本発明のガス吸収材料により構成されており、ガス回収装置の動作がOFFのとき、周囲の温度と同程度の温度になっている。
なお、ガス吸収体23はフィルター状に形成して、ガス回収装置におけるガス流路に少なくとも一部を通る位置に配置することもできる。
また、ガス吸収体23をフィルター状にせず、ガス回収装置におけるガス流路の少なくとも一部を外れた位置に配置することもできる。
【0069】
このガス回収装置を用いて排ガスから二酸化炭素を回収するには、各部の動作をONにし、集塵した高温の排ガスを第1パイプ24の一端から導入する。導入された排ガスは第1パイプ24を通過して30℃程度までの冷却能を有する脱硫器22に導入される。ここで脱硫器と冷却器は別の装置であっても良い。また、冷却能を有する脱硫器22を通った後のガスの温度は30℃である必要はなく、40℃あるいは50℃程度であっても良い。第1パイプ24を通過する際、排ガスの熱の一部は熱交換器21を介して第3パイプ26の循環経路26aに伝達され、循環経路26a内のガス温度あるいはガスの露点温度が60℃程度に加熱されるように温調される。循環経路26aにおけるガスの加熱は、加熱した水による加熱であっても良い。循環経路26a内のガスの温度や露点温度は60℃以上であってもよく、75℃や85℃程度であっても良い。また、循環経路26a内のガスは減圧されていても良い。循環経路26a内のガスが減圧されていて、循環経路26aのガスの加熱が、加熱した水による加熱である場合、循環経路26aのガスの流れが無くてもよいし、ガスの流量が極めて少なくても良い。脱硫器22に導入された排ガスは脱硫器22にて脱硫処理が行われた後、第2パイプ25に流入する。第2パイプ25に流入した排ガスは、温度あるいは露点温度が30℃程度になっており、この温度付近でガス吸収体23に導入される。ガス吸収体23では、排ガスの温度が30℃程度であることにより、排ガスが接触した領域において吸収体が冷却され、二酸化炭素などの酸性ガスがガス吸収材料に効率よく吸収され、二酸化炭素以外のガスはガス吸収体23の外部に排出される。排ガスの露点温度が吸収材料の温度より低い場合には、吸収材料からの水分の蒸発により吸収材料および排ガスが効果的に冷却され好適に温調できる。また、冷却された排ガスによる吸収体の冷却が不十分の場合は、冷却ガスの導入や減圧や乾燥ガスの導入による水の蒸発潜熱を用いた冷却等の付加的な冷却を行うこともできる。一方、ガス吸収体23の二酸化炭素を吸収した領域は、ガス吸収体23の回転により、第3パイプ26の連結部付近に移動し、第3パイプ26の循環経路26aから導入されるガスと接触する。循環経路26aから導入されるガスは排ガスとの熱交換により75℃程度に加熱されているため、そのガスが接触した領域のガス吸収体23では、ガス吸収材料が加熱され二酸化炭素等の酸性ガスが放散される。この際、循環経路26a内のガスの露点温度が吸収材料の温度よりも高い場合、水蒸気の凝縮熱により吸収材料がより効果的に加熱され好適である。また、循環経路26a内のガスが減圧されている場合も、二酸化炭素分圧の低下により効果的に二酸化炭素を放出することが可能になる。放散された二酸化炭素の一部は第3パイプ26の分岐路26bに流入し、分岐路26bのガス排出口から外部に排出されて回収される。放散された二酸化炭素の他の一部は第3パイプ26の循環経路26aに流入する。循環経路26aに流入した二酸化炭素は、循環経路26aの途中で熱交換器21により加熱あるいは加湿された後、ガス吸収体23に再導入され、その熱がガス吸収材料の加熱に利用される。
【0070】
以上のように、この第1実施形態の二酸化炭素ガス回収装置では、排ガスの熱を再利用してガス吸収体を加熱し、酸性ガスを吸収する状態から放散する状態へスイッチングを行う。本実施形態では排ガスの熱を有効利用するため、二酸化炭素ガスの分離回収プロセスでのエネルギー消費量を大幅に低減することができる。第1実施形態において排ガスおよびガス吸収体の温度が二酸化炭素の吸収および放散に適した温度に制御できない場合は、配管および吸収体に外部との熱交換機構あるいは追加的な加熱機構を追加することで温度制御を改善する。
【0071】
次に、ガス回収装置の第2実施形態について説明する。
図2に示すように、第2実施形態のガス回収装置は、第1熱交換器31および第2熱交換器32と、脱硫器33と、第1タンク34および第2タンク35と、これら各部に連結された第1パイプ36および第2パイプ37を有する。第1パイプ36は、その一端が排ガス(被処理ガス)を導入するガス導入口とされており、他端が冷却能を有する脱硫器33に連結されている。ここで脱硫器と冷却器は別の装置であっても良い。第2パイプ37は、その一端が脱硫器33に連結された主経路37aと、主経路37aの他端において分岐する第1経路37bと第2経路37cを有している。第1経路37bは、その一端が主経路37aと連通しており、他端が第1タンク34に連結されている。第2経路37cは、その一端が主経路37aと連通しており、他端が第2タンク35に連結されている。第1経路37bおよび第2経路37cの各他端部近傍には各経路37b、37cを開閉する図示しないバルブが設けられている。第1熱交換器31は第1パイプ36の第1中途部と第1タンク34にそれぞれ接続されており、第2熱交換器32は第1パイプ36の第2中途部と第2タンク35にそれぞれ接続されている。
そして、第2実施形態のガス回収装置では、第1タンク34内の第1熱交換器31の熱交換面および第2タンク35内の第2熱交換器32の熱交換面に、それぞれガス吸収材料(ガス吸収体)38、39が形成されており、ガス回収装置の動作がOFFのとき、各ガス吸収体38、39は周囲の温度と同程度の温度(30℃程度)になっている。
【0072】
この二酸化炭素ガス回収装置を用いて排ガスから二酸化炭素ガスを回収するには、まず、第2パイプ37の第1経路37bのバルブを開状態、第2パイプ37の第2経路37cのバルブを閉状態、第1熱交換器31をOFF状態、第2熱交換器32をON状態にする。この状態のとき、第1タンク34は吸収塔として機能する。すなわち、この状態で、高温の集塵後の排ガスを第1パイプ36の一端から導入すると、導入された排ガスは第1パイプ36を通過して脱硫器33に導入される。第1パイプ36を通過する際、排ガスの熱の一部は第2熱交換器32を介して第2タンク35に伝達され、排ガスが冷却される。脱硫器33に導入された排ガスは冷却能を有する脱硫器33にて脱硫処理が行われ、さらに冷却された後、第2パイプ37の主経路37aに流入する。主経路37aに流入した排ガスの温度あるいは露点温度は30℃程度になっており、この温度付近で主経路37aおよび第1経路37bを介して第1タンク34内に導入される。第1タンク34内では、排ガスの温度あるいは露点温度が30℃程度であることにより、ガス吸収体38が効率的に冷却され、結果として二酸化炭素が効率よく吸収され、二酸化炭素以外のガスは第1タンク34に設けられたガス排出口から外部に排出される。主経路37aに流入し、吸収体を冷却する排ガスの温度あるいは露点温度は30℃である必要はなく、40℃あるいは50℃程度であっても良い。
【0073】
ガス吸収体38に二酸化炭素を十分に吸収させた後、第2パイプ37の第1経路37bのバルブを閉状態、第2パイプ37の第2経路37cのバルブを開状態、第1熱交換器31をON状態、第2交換機32をOFF状態に切り替える。これにより、第1パイプ36を通過する排ガスの熱は、第1熱交換器31を介して第1タンク34およびガス吸収体38に伝達される。第1熱交換器31においては、熱媒体として水を用い、熱さられた水や水蒸気の導入によりガス吸収体38が加熱されるのも好ましい。第1タンク34内のガス吸収体38は、第1熱交換器31からの熱により75℃程度に加熱されて、二酸化炭素を放散する。加熱されたガス吸収体38の温度は、60℃や85℃程度であっても良い。また、加熱の際ガス吸収体38は減圧されていても良い。放散された二酸化炭素は第1タンク34に設けられたガス排出口から排出されて回収される。一方、第2タンク35内には、上記と同じ経路で第2パイプ37に流入した30℃程度の排ガスが第2経路37cを介して導入され、そのタンク35内に装填されたガス吸収体39に二酸化炭素が吸収される。排ガスの露点温度が吸収材料の温度より低い場合には、吸収材料からの水分の蒸発により吸収材料および排ガスが効果的に冷却され好適である。また、冷却された排ガスによる吸収体の冷却が不十分の場合は、冷却ガスの導入や減圧や乾燥ガスの導入による水の蒸発潜熱を用いた冷却等の付加的な冷却を行うことが望ましい。すなわち、この状態では、第1タンク34が放散塔、第2タンク35が吸収塔として機能し、二酸化炭素ガスの吸収と放散が平行して行われる。
【0074】
ガス吸収体38からの二酸化炭素の放散、ガス吸収体39への二酸化炭素の吸収を十分に行った後、図2に示すように、第2パイプ37の第1経路37bのバルブを開状態、第2パイプ37の第2経路37cのバルブを閉状態、第1熱交換器31をOFF状態、第2熱交換器32をON状態にして、第1タンク34が吸収塔、第2タンク35が放散塔として機能するように切り替える。これにより、切り替え前とは逆の塔で、それぞれ二酸化炭素ガスの吸収および放散が平行して行われる。さらに、上記のような切り替え操作を繰り返し行うことにより、排ガスの二酸化炭素ガスの吸収および放散を連続的に行うことができ、大量の排ガスから二酸化炭素ガスを効率よく分離、回収することができる。ガス吸収体が充填された塔の数は2塔以上であっても良い。
【0075】
以上のように、この第2実施形態のガス回収装置においても、排ガスの熱を再利用してガス吸収体を加熱し、酸性ガスを吸収する状態から放散する状態へスイッチングを行う。このため、従来の二酸化炭素ガスの分離回収プロセスを用いる場合に比べて、エネルギーの利用効率を大きく高めることができる。第2実施形態において排ガスおよび吸収体の温度が二酸化炭素の吸収および放散に適した温度に制御できない場合は、配管および吸収体に外部との熱交換機構あるいは追加的な加熱機構を追加することで温度制御を改善する。
ガス回収装置は、ガスを供給する目的で使用することも可能である。ガスを供給する目的で使用する場合は、ガス供給装置として提供される。
【実施例
【0076】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、以下の説明において、括弧内の濃度は、対象成分の反応混合物中における濃度を示す。
【0077】
本実施例において、ガス可逆吸収試験は以下のようにして行った。
(CO可逆吸収試験)
ポリマー試料を反応器に入れて水を加え、反応器を密閉して30℃の恒温槽内に搬入した。この反応器内に、60℃で加湿した10%COガス(CO:N=10:90)を10mL/minの流速で46分間導入してポリマー試料にCOを吸収させた。続いて、恒温槽内の温度を75℃に上昇させて25分間保持し、COガスを放散させた。このとき、反応器から排出されてくるCOガス排出量を計測し、ポリマーのCO可逆吸収量とした。なお、以下の実施例1~6、比較例1~8では、ポリマー試料20gを、容量90mLの反応器に入れ、40mLの水を加えて測定を行った。
【0078】
[1]反応混合物の総モノマー濃度の検討
(比較例1) 総モノマー濃度を1.1モル/Lとしたポリマーの製造
N-(ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド(DMAPM:5842.98mg(6215.94mL)、55モル%)、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(BIS:962.02mg、10モル%)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB:36.445mg、2mM)をMilliQ水に溶かし、全量を50mLとして混合物を調製した。この混合物を、メカニカルスターラーで撹拌しながら70℃まで昇温した後、N-tert-ブチルアクリルアミド(TBAm:2779.80mg、35モル%)をメタノール(5mL)に溶解した溶液を加え、窒素バブリングを30分間行った。この混合物に、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN:21.18mg、2.58mM)を含むアセトン溶液(250μL)を加えて反応混合物とし、窒素雰囲気下、70℃で3時間重合させることにより、ポリマーの沈殿物を得た。この反応液を濾過し、濾取したポリマーを凍結乾燥させて比較試料1を得た。
【0079】
(比較例2) 総モノマー濃度を0.57モル/Lとしたポリマーの製造
DMAPM、TBAmおよびBISの量を表1に示すように変更したこと以外は、比較例1と同様にしてポリマーの凍結乾燥物(比較試料2)を得た。
【0080】
(実施例1) 総モノマー濃度を1.7モル/Lとしたポリマーの製造
DMAPM、TBAmおよびBISの量を表1に示すように変更し、TBAmを8mLのメタノールに溶解して混合物に加えたこと以外は、比較例1と同様にしてポリマーの沈殿物を得た。このポリマーの沈殿物に100mLのMilliQ水を加え、ハンドブレンダーで粉砕してスラリーを調製した。このスラリーを濾過し、濾取したポリマーを凍結乾燥させて試料1を得た。
【0081】
(実施例2) 総モノマー濃度2.4モル/Lとしたポリマーの製造
BIS(4625.10mg、20モル%)とCTAB(36.445mg、2mM)を入れたフラスコに、DMAPM(14045.63mg(14942.15mL)、55モル%)を加えてBISの一部を溶解した後、MilliQ水を30mL加えた。この混合物を、メカニカルスターラーで撹拌しながら70℃まで昇温した後、TBAm(4773.00mg、25モル%)をメタノール(12mL)に溶解した溶液を加え、窒素バブリングを30分間行った。この混合物に、AIBN(21.18mg、2.58mM)を含むアセトン溶液(250μL)を加えて反応混合物とし、窒素雰囲気下、70℃で3時間重合させることによりポリマーの沈殿物を得た。このポリマーの沈殿物を水中に一晩浸漬した後、ハンドミキサーでポリマーを粉砕してスラリーを得た。スラリーを濾過し、濾取したポリマーを凍結乾燥させて試料2を得た。
【0082】
(比較例3) 総モノマー濃度を0.31モル/Lとしたポリマーの製造
国際公開第2016/024633号の合成例1と同様にしてポリマーを合成した。
具体的には、三口フラスコに1リットルの純水を入れ、70℃に加温した後、2mMのCTABを加え、さらに、DMAPM(55モル%)、TBAm(43モル%)を含むメタノール溶液、BIS(2モル%)を総モノマー濃度が0.31モル/Lになるように加えて溶解した。この混合物を70℃に保持したまま、メカニカルスターラーで撹拌し、窒素バブリングを1時間行った。この混合物に、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(700mg)を含む水溶液5mLを加えて反応混合物とし、窒素雰囲気下、70℃で3時間重合させることにより、粒径800nmのポリマー粒子(比較試料3)を得た。
【0083】
各実施例および各比較例で製造した試料について、そのポリマー合成に用いた反応混合物の成分量を表1に示す。なお、下記表の比較試料3では2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を開始剤として使用した(表中の*印参照)。
【0084】
【表1】
【0085】
試料1、2および比較試料1~3の収率とCO可逆吸収量を測定した結果を表2に示す。ここで、「収率」は、反応混合物に用いた各モノマー量から計算されるポリマーの理論収量に対する実際の収量の比率(%)である。
【0086】
【表2】
【0087】
表2に示すように、CO可逆吸収量は試料1、2が優れており、試料2が最も優れていた。また、試料1、2は比較試料3よりも格段に収率が改善されていた。そして、試料1、2、比較試料1、2は収率が同等であった。すなわち、総モノマー濃度を高くした試料2で、それよりも総モノマー濃度を低くした試料1、比較試料1、2と同等の収率が得られた。このことは、製造容器を大きくすることなく収量を上げられることを示しており、本発明の製造方法が工業的に有利であることが示された。
また、各試料に水を添加して含水量を調べたところ、試料2、1、比較試料1、2、3の順に含水量が小さいことが示された。
また、試料2について、ガス可逆吸収試験を50回行う耐久性試験を実施したところ、50回目においても1回目と同等のCO可逆吸収量を示し、十分な耐久性を有することが確認された。
さらに、試料2の変形例として、TBAmのメタノール溶液の代わりにTBAm無添加のメタノールを反応混合物に加え、DMAPMの割合を80モル%としてポリマー試料を製造し、CO可逆吸収試験を行ったところ、試料2に比べてCO可逆吸収量が増加した。また、そのCO可逆吸収量は、メタノールの代わりに水を加えて調製したポリマー試料(水100%の溶媒を用いて製造したポリマー試料)よりも大きな値であった。
また、試料2の他の変形例として、DMAPMの代わりにジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAAm)を単官能モノマーに用いてポリマー試料を調製したところ、試料2と同等の結果が得られた。
【0088】
[2]多官能モノマーの濃度および界面活性剤の作用の検討
(実施例3) 界面活性剤(CTAB)を用いないポリマーの製造
反応混合物にCTABを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーの凍結乾燥物(試料3)を得た。
【0089】
(比較例4) 多官能ポリマー(BIS)の割合を10モル%としたポリマーの製造
モノマーのうち、TBAmの割合を35モル%、BISの割合を10モル%に変更したこと以外は、実施例3と同様にしてポリマーの凍結乾燥物(比較試料4)を得た。
【0090】
(比較例5) 多官能ポリマー(EGDMA)の割合を10モル%としたポリマーの製造
モノマーのうち、TBAmの割合を35モル%に変更し、BISの代わりにエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を用いて、その割合を10モル%としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーの凍結乾燥物(比較試料5)を得た。
【0091】
実施例3および比較例4、5で製造した試料について、そのポリマー合成に用いた反応混合物の成分量を表3に示す。なお、下記表の比較試料5ではEGDMAを多官能モノマーとして使用した(表中の*印参照)。
【0092】
【表3】
【0093】
上記の実施例1で製造した試料1と、ここで製造した試料3、比較試料4、5に水を加えたところ、多官能モノマー(BISまたはEGDMA)を10モル%用いた比較試料4、5は、いずれも含水量が高く、膨潤して柔らかくなったが、BISを20モル%用いた試料1、3は含水量が比較的小さく、硬いままであった。このことから、膨潤度の小さいポリマーを得るには、多官能モノマーを15モル%以上の割合で用いる必要があることが示された。また、界面活性剤(CTAB)を用いた試料1とCTABを用いていない試料3を比較すると、試料3にのみ、その表面付近に透明な相が若干認められた。このことから、均一なポリマーを得るには、界面活性剤を反応混合物に添加することが好ましいことがわかった。
【0094】
(比較例6~8) 多官能ポリマー(BIS)の割合を0~10モル%とし、総モノマー濃度を2.4モル/Lとしたポリマーの製造
モノマーのうち、TBAmおよびBISの割合を表4に示すように変更したこと以外は、実施例2と同様にしてポリマーの凍結乾燥物(比較試料6~8)を得た。
【0095】
(実施例4) 多官能ポリマー(BIS)の割合を30モル%とし、総モノマー濃度を2.4モル/Lとしたポリマーの製造
モノマーのうち、TBAmおよびBISの割合を表4に示すように変更したこと以外は、実施例2と同様にしてポリマーの凍結乾燥物(試料4)を得た。
【0096】
比較例6~8および実施例4で製造した試料について、そのポリマー合成に用いた反応混合物の成分量を、実施例2で製造した試料2のものと合わせて表4に示す。
【0097】
【表4】
【0098】
上記の実施例2で製造した試料2と、ここで製造した試料4、比較試料6~8に水を加えたところ、多官能モノマー(BIS)を用いていない比較試料6、BISの割合を5モル%または10モル%とした比較試料7、8は、いずれも含水量が高く、膨潤して柔らかくなったが、BISの割合を20モル%または30モル%とした試料2、4は膨潤せず硬いままであった。また、収率とCO可逆吸収量は、比較試料7、8および試料2、4(BIS濃度:5~30モル%)で同等であったが、BIS濃度を30モル%超としたポリマー試料についても試験を行ったところ、CO可逆吸収量が低下する傾向が見られた。このことから、含水量および膨潤度の小さいポリマーを得るには、多官能モノマーを15モル%以上の割合で用いる必要があり、CO可逆吸収能を十分に発現させるには、多官能モノマーを30モル%以下の割合にしてポリマーを合成する必要があることが示された。
【0099】
ここで、試料2の変形例として、BISの代わりに20モル%のEGDMAを多官能モノマーに用いてポリマー試料を製造し、CO可逆吸収試験を行ったところ、試料2と同等のCO可逆吸収量が得られた。また、この20モル%のEGDMAを用いて製造したポリマー試料は、EGDMAの割合を5モル%または10モル%とした比較試料に比べて含水量・膨潤体積が明らかに小さく(EGDMA10モル%の場合の約1/3、EGDMA5モル%の場合の1/2未満)、格段に大きなCO可逆吸収量が得られた(EGDMA10モル%の場合の約1.5倍、EGDMA5モル%の場合の2倍超)。
【0100】
[3]溶媒の検討
(実施例5、6) 総モノマー濃度を3.0モル/Lとしたポリマーの製造
反応混合物に加えるMilliQ水の量、TBAmの溶解に用いるメタノールの量(反応混合物に加えるメタノールの量)を表5に示すように変更したこと以外は、実施例2と同様にしてポリマーの凍結乾燥物(試料5、6)を得た。
【0101】
実施例2、5、6で反応混合物に加えたMilliQ水およびメタノールの量と、試料2、5、6について測定したCO可逆吸収量を表5に示す。
【0102】
【表5】
【0103】
実施例5、6のいずれにおいてもポリマーの含水量は0.7g(HO)/1g(含水ポリマー)以下であり低含水で良好なポリマー材料を得ることができた。表5に示すように、溶媒の量を少なくした試料5は、試料2に比べてCO可逆吸収量が低下した。さらに溶媒組成からアルコールをなくし水のみにしたところ、さらにCO可逆吸収量が低下した。このことから、極度に溶媒の量を低下させることで重合時にポリマー内のTBAm等の低極性モノマーの濃度が上昇してゲル内部のアミンの周りの局所環境が極度に低極性になり、アミンの塩基性が低下することでCO可逆吸収量が低下することがわかった。モノマーが液体であっても、反応混合物には一定量の水、アルコールなどの溶媒を加える必要があることがわかった。また、メタノールを用いた試料5が、メタノールを用いていない試料6よりも大きなCO可逆吸収量を示したことから、溶媒にはメタノール等のアルコールを併用した方が好ましいことが示された。
また、メタノールのかわりに、エタノール、イソプロパノール、ブタノールまたはt-ブタノールを用いること以外は、実施例2、5、6と同様にしてポリマー試料を製造し、試験を行ったところ、上記のメタノールを用いた場合と同等の結果が得られた。
【0104】
[4]アミン含浸工程を行ったポリマーの製造
(実施例7) 単官能モノマーとしてDMAm(アミノ基を有しない単官能モノマー)を用い、アミン含浸工程を行ったポリマーの製造
ジメチルアクリルアミド(DMAm:80モル%)、BIS(20モル%)およびCTAB(2mM)をMilliQ水に溶かし、全量を50mLとして混合物を調製した。この混合物を、70℃まで昇温しながら窒素バブリングを30分間行った。この混合物に、窒素バブリングを行ったメタノール(12mL)を加えた後、AIBN(2.58mM)を含むアセトン溶液(250μL)を加えて反応混合物とし、窒素雰囲気下、70℃で3時間重合させることにより、ポリマーの沈殿物を得た。このポリマーの沈殿物を水中で一晩静置した後、ハンドミキサーで粉砕し、濾過することでポリマー(含水ポリマー)を回収した。回収したポリマーの含水量は0.6774g(HO)/1g(含水ポリマー)であった。
得られたポリマーを1g計り取り、アミン含有処理液としての2-(イソプロピルアミノ)エタノール(IPAE:7490μL)を加えて浸漬させた。このアミン含有処理液を、振とう機にて一晩ゆっくり撹拌して、ポリマーが含む水分を8NのIPAEで置換した後、濾過することにより、IPAEが含浸されたポリマー材料(試料7)を得た。
【0105】
(実施例8) 単官能モノマーとしてNiPAm(アミノ基を有しない単官能モノマー)を用い、ポリマーをアミン溶液で膨潤させる工程を行ったポリマーの製造
DMAmの代わりにN-イソプロピルアクリルアミド(NiPAm)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして8NのIPAEが含浸されたポリマー材料(試料8)を得た。
【0106】
(実施例9) 単官能モノマーとしてDMAPM(アミノ基を有する単官能モノマー)とTBAm(疎水性基を有する単官能モノマー)を用い、ポリマーをアミン溶液で膨潤させる工程を行ったポリマーの製造
実施例2と同様にして得たポリマーを水中で一晩静置した後、ハンドミキサーで粉砕し、濾過することで含水ポリマーを回収した。このポリマーの水分を、実施例7と同様の手順で、8NのIPAEで置換することにより、8NのIPAEが含浸されたポリマー材料(試料9)を得た。
【0107】
(実施例10) 単官能モノマーとしてDMAPM(アミノ基を有する単官能モノマー)を用い、ポリマーをアミン溶液で膨潤させる工程を行ったポリマーの製造
TBAmのメタノール溶液の代わりにTBAm無添加のメタノールを反応混合物に加え、DMAPMの割合を80モル%としたこと以外は、実施例9と同様にして、8NのIPAEが含浸されたポリマー材料(試料10)を得た。
【0108】
実施例7~10で製造した試料について、そのポリマー合成に用いた反応混合物の成分量を表6に示す。
【0109】
【表6】
【0110】
アミン溶液で膨潤させた試料7~10のCO可逆吸収量は、水で膨潤させたこと以外は同様にして製造したポリマー試料のCO可逆吸収量に比べて、試料7、8では約3倍、試料9では約5倍、試料10では約2倍と大きく増加した。また、水分とIPAEの置換率を改善することにより、ガス可逆吸収能をさらに向上できることも示された。
【0111】
[5]シートの製造
(実施例11) ポリマーを用いたシートの製造
実施例2と同様にして合成したポリマーの沈殿物を濾取して粉砕し、ポリマーの粉末を得た。このポリマーの粉末とポリエチレンペレットを1:2の質量比で混錬して2軸押出成形を行い、ストランドをローラーで幅4mm程度に広げ、ペレタイザーで5mm程度に裁断した200μm、幅4mm、長さ5mm程度のシートを製造した。このシートについて、ガス可逆吸収試験を行ったところ、33mL/gのCO可逆吸収量が得られた。このことから、製造されたポリマーはシートとしてもガス可逆吸収性能を示すことが確認された。
【0112】
[6]多官能モノマーの濃度と総モノマー濃度の検討
(比較例9)多官能モノマー(BIS)の割合を5モル%とし、総モノマー濃度を2.3モル/Lとしたポリマーの製造
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAAm:95モル%)およびBIS(5モル%)を60℃のMilliQ水に溶解して全量30mLの水溶液とし、さらにエタノールを添加して、後工程で反応を行う反応混合物の総モノマー濃度が2.3モル/Lとなるように、混合物を調製した。この混合物を70℃まで昇温した後、撹拌しながら窒素バブリングを30~60分間行った。この混合物に、アセトンと水の混合溶媒にAIBNを溶解して調製した溶液(反応混合物中でのAIBN濃度:2.58mM)を加えて反応混合物とし、窒素気流下、70℃で3時間重合させることにより、ポリマー材料(比較試料9)を得た。
【0113】
(比較例10、実施例11、12)多官能モノマー(BIS)の割合を10~30モル%とし、総モノマー濃度を2.3モル/Lとしたポリマーの製造
DMAPAAmおよびBISの割合を表7に示すように変更したこと以外は、比較例8と同様にしてポリマー材料(比較試料10、試料11、12)を得た。
【0114】
(実施例13~16)多官能モノマー(BIS)の割合を20モル%とし、総モノマー濃度を0.54~2.3モル/Lとしたポリマーの製造
DMAPAAmおよびBISの割合をDMAPAAm:BIS=80モル%:20モル%とし、表7に示す総モノマー濃度となるように反応混合物を調製したこと以外は、比較例9と同様にしてポリマー材料(試料13~16)を得た。
【0115】
比較例9、10および実施例11~16で製造した試料について、そのポリマー合成に用いた反応混合物のモノマー組成および総モノマー濃度、並びに、ポリマー材料の含水量、膨潤体積およびCO可逆吸収量の測定結果を表7に示す。表7中、「g(wet)」は濡れた状態のポリマー重量、「mL(wet)」は濡れた状態のポリマー容量、「g/dry」は乾燥させた状態のポリマー重量をそれぞれ表す単位(gまたはmL)である。
【0116】
【表7】
【0117】
表7において、反応混合物の総モノマー濃度を2.3モル/Lとし、多官能モノマー(BIS)の割合を変えた試料9、10、試料11、12を比較すると、BISの割合を10モル%超で30モル%以下とした試料11、12は、BISの割合を10モル%以下とした試料9、10に比べて含水量および膨潤度が低く抑えられており、単位体積あたりのCO可逆吸収量が向上していることがわかる。また、多官能モノマーの割合を20モル%とし、反応混合物の総モノマー濃度を変えた試料13~16を比較すると、反応混合物の総モノマー濃度が大きいもの程、含水量および膨潤度が低く、単位体積当たりのCO可逆吸収量が大きいことがわかる。このことから、多官能モノマーの割合を所定の範囲とし、さらに、重合濃度(反応混合物の総モノマー濃度)を上げることにより、単位体積当たりのCO可逆吸収量がより大きい材料が実現することがわかった。こうした材料は、比較的小さい体積で用いても十分なCO可逆吸収量が得られるため、温度上昇のための熱量を削減できるというメリットがある。
【0118】
[7]開始剤の種類の検討
(実施例17)2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65)を開始剤に用いたポリマーの製造
DMAPAAm(80モル%)、BIS(20モル%)およびMilliQ水を、5Lのセパラブルフラスコ(第1反応器)に入れて50℃の湯浴に浸し、攪拌した。この混合物にエタノールを加えて、後工程で反応を行う反応混合物の総モノマー濃度が3モル/L、全量が3000mLとなるように液量を調整した。この混合物を、窒素バブリングを行いながら100rpmで1時間撹拌した後、第1反応器を55℃の湯浴に浸した。その後、湯浴の温度を45℃に下げて第1反応器内を減圧した後、混合物にVー65(2.58mM)を開始剤として加え、240rpmで2分間攪拌することにより反応混合物を調製した。この反応混合物を、チューブを用いてステンレス製反応器(第2反応器)に送液し、第2反応器を55℃の湯浴に浸して3時間反応を行った後、湯浴から取り出して粗熱をとることによりポリマー材料(試料17)を得た。
試料17の含水量は2.5g(wet)/g(dry)であり、CO可逆吸収量は69.5mL/g(dry)であった。
V-65は47℃で反応を開始する開始剤であり、これを用いることにより比較的低い温度(ここでは55℃)で重合反応を行うことができた。また、同様の条件により、樹脂容器(ビニール袋)内で重合反応を行っても同様にポリマー材料を合成することができた。さらに、コンベア上にモノマー溶液(混合物)を流し込みながら重合反応を行うことも可能である。
【0119】
[8]粉砕したポリマー材料のCO可逆吸収量の検討
上記の各実施例で合成したポリマー材料を、ミートチョッパーまたはフィッツミルで粉砕してCO可逆吸収量を測定したところ、粉砕法によらず、同等のCO可逆吸収量を示した。
【0120】
[9]ポリマー材料に微粒子を添加することによる効果の検討
(実施例18、19)微粒子含有ポリマー材料の製造
DMAPAAmとBISの割合を、DMAPAAm:BIS=85モル%:15モル%としたこと以外は、比較例9と同様にしてポリマー材料を得た。このポリマー材料の水分量は73.7重量%であった。
このポリマー材料を、ミートチョッパーにて1.5分目(ホール径4.8mm)、1.3分目(ホール径4.0mm)、1分目(ホール径3.2mm)、7厘目(ホール径2.4mm)および3厘目(ホール径1.1mm)で順次粉砕することにより、粉砕度が異なる各種ポリマー粉砕物を得た。各ポリマー粉砕物に、表8に示す配合比で撥水性シリカRY300(エボニック社製:AEROSIL RY300、平均一次粒子径:7nm、水接触角:100°以上)を添加して微粒子含有ポリマー材料を製造した。
この微粒子含有ポリマー材料を、250mLのプラスチック容器に入れて振り混ぜた後、表面を平らにならして高さを計測した。その結果を表8に示す。また、これらの微粒子含有ポリマー材料のうち、撥水性シリカRY300の割合を0.50容量%とした微粒子含有ポリマー材料の粒度分布を図3に示し、7厘目で粉砕したポリマー粉砕物に撥水性シリカRY300(0.50容量%)を添加した微粒子含有ポリマー材料(試料18)と、7厘目で粉砕したポリマー粉砕物(試料19)について、圧力スウィング吸収法で測定した吸収過程でのCO吸収量と放散過程でのCO放散量を図4に示す。図3、4において、「3厘目ポリマー」~「1.5分目ポリマー」は、それぞれ3厘目~1.5分目で粉砕したポリマー粉砕物を表し、「RY300」は撥水性シリカRY300をそれぞれ表す。
圧力スウィング吸収法によるCO可逆吸収性能の評価は次の手順で行った。
まず、反応器に収容した測定対象サンプル(10L)を、温度40℃、相対湿度98%超の恒温槽に入れて十分に加湿した後、温度を30℃に調整した。続いて、加湿したCOとNの混合ガス(CO濃度:10.03容量%)を、1000mL/分の流速で測定対象サンプルに導入するとともに、測定対象サンプルから排出されてくるガスのCO濃度(A)をマルチガス分析計(堀場製作所社製:VA-3000)にて測定した(吸収過程)。次に、測定対象サンプルに導入するガスを、加湿したNガスに切り替えて1000mL/分の流速で測定対象サンプルに導入し、測定対象サンプルから排出されてくるガスのCO濃度(B)を測定した(放散過程)。導入した混合ガスのCO濃度と吸収過程で測定されたCO濃度(A)の差の積算値をCO吸収量とし、放散過程で測定されたCO濃度(B)の積算値をCO放散量として測定対象サンプルのCO可逆吸収性能を評価した。なお、ここで測定されるCO吸収量をグラフに示すとき、CO放散量と区別するため、その値に「-」の符号を付して縦軸におけるマイナス側に示すことがある。
【0121】
【表8】
【0122】
表8に示すように、撥水性シリカRY300の割合を変えることでポリマー材料の嵩(充填量)が変化し、撥水性シリカRY300を0.50容量%としたときに最も嵩が小さく(充填量が大きく)なった。また、図4に示すように、この充填量が大きな微粒子含有ポリマー材料(試料18)は、撥水性シリカRY300を含まないポリマー粉砕物(試料19)に比べて、単位質量当たりのCO可逆吸収量およびCO吸収・放散速度が大きく向上していた。
このことから、微粒子を添加することにより、ポリマー材料の充填量を上げてCO可逆吸収量およびCO吸収・放散速度を向上できることがわかった。
【0123】
[10]微粒子含有ポリマー材料の粉砕による効果の検討
(実施例20)微粒子含有ポリマー材料をさらに細かく粉砕した粉砕物からなる微粒子含有ポリマー粉砕物の製造
実施例18で作製したポリマー粉砕物のうち、ミートチョッパーの1.5分目で粉砕したものと撥水性シリカRY300を、ポリマー粉砕物:撥水性シリカRY300=99.5:0.5の容量比で混合して微粒子含有ポリマー材料を得た。この微粒子含有ポリマー材料を、遊星型ボールミル装置(フリッチュ社製:P-5)にて直径5mmのジルコニア製ビーズを用い、230rpmで粉砕することにより、微粒子含有ポリマー材料の粉砕物(微粒子含有ポリマー粉砕物、試料20)を得た。試料20の粒度分布を測定したところ、粉砕物の大半が100μm未満の粒径であることが確認された。また、試料20の水分量は72.45重量%、試料19に含まれるポリマー粉砕物の水分量は73.17重量%であり、材料に用いたポリマー材料の水分量(73.7重量%)よりも若干減少していた。
【0124】
試料20と、上記の試料19について、圧力スウィング吸収法で測定した吸収過程でのCO吸収量を図5に示す。ここでは、10Lのガス吸収材料を測定対象サンプルとして用い、COとNの混合ガスおよびNガスの流速を3000mL/分として測定を行った。
図5から、ビーズミルで粉砕した微粒子含有ポリマー粉砕物(試料20)は、ビーズミルによる粉砕を行っていない微粒子含有ポリマー材料(試料18)に比べてCO吸収速度が飛躍的に向上していることがわかる。このことから、微粒子含有ポリマー材料の粉砕度を上げることにより、そのCO可逆吸収性能をより高くできることがわかった。
【0125】
以下に、本実施例で使用したモノマー、界面活性剤および開始剤の構造を示す。
【0126】
【化2-1】
【化2-2】
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の製造方法によれば、低含水性でありながらガス可逆吸収量が大きいポリマーを効率よく製造することができる。そのため、本発明のポリマーを用いれば、CO可逆吸収能が高く取り扱い性のよいガス吸収材料を安価に提供することができる。よって、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0128】
21 熱交換器
22、33 脱硫器
23 ガス吸収体
24 第1パイプ
25 第2パイプ
26 第3パイプ
26a 循環経路
26b 分岐経路
31 第1熱交換器
32 第2熱交換器
34 第1タンク
35 第2タンク
36 第1パイプ
37 第2パイプ
37a 主経路
37b 第1経路
37c 第2経路
38、39 ガス吸収体
図1
図2
図3
図4
図5