(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】酸および塩基を含む反応スキーム、空間的に変化する化学組成勾配を含む反応器、ならびに関連システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C04B 7/38 20060101AFI20241126BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20241126BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20241126BHJP
C25B 15/031 20210101ALI20241126BHJP
【FI】
C04B7/38 ZAB
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B15/031
(21)【出願番号】P 2021540832
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 US2020013837
(87)【国際公開番号】W WO2020150449
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2023-01-16
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】チャン, イェット-ミン
(72)【発明者】
【氏名】エリス, リア
(72)【発明者】
【氏名】バデル, アンドレス
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-058170(JP,A)
【文献】国際公開第2013/153692(WO,A1)
【文献】特開2002-018395(JP,A)
【文献】特開2002-018396(JP,A)
【文献】米国特許第09718731(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-7/60
C04B 2/00-2/12
B09B 3/00
C25B 1/00-1/55
C25B 9/00-9/77
C25B 15/031
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気分解により酸および塩基を生成するステップ、
6もしくは6未満のpHを有する反応器の領域において、カルシウムを含む材料を、
前記酸
に溶解して、
カルシウムイオンを含む溶解した1つまたは1つより多くの元素を生成するステップ、
10もしくは10より高いpHを有する反応器の領域において、前記溶解した1つまたは1つより多くの元素の1つまたは1つより多く
から水酸化カルシウムを含む、少なくとも1つの沈殿物を形成するステップ、および
前記少なくとも1つの沈殿物を反応性シリケートと混合してセメントを形成するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記溶解した1つまたは1つより多くの元素が
さらにマグネシウムイオンを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記沈殿物が二重置換反応によって形成される、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記材料が
金属塩を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属塩が金属炭酸塩を含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法を実行するように構成されたシステム。
【請求項7】
前記電気分解が加水分解を含む
、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記電気分解が、反応器内に空間的に変化する化学組成勾配を生じる、請求項1または7に記載の方法。
【請求項9】
前記電気分解が、反応器内に空間的に変化するpH勾配を生じる、請求項1および7~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、前記沈殿物を収集するステップをさらに含む、請求項1および7~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35U.S.C.§119(e)の下、2019年1月16日出願の米国仮特許出願第62/793,294号、2019年2月1日出願の米国仮特許出願第62/800,220号および2019年3月14日出願の米国仮特許出願第62/818,604号への優先権を主張し、これらはすべてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
酸および塩基を含む反応スキーム、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む反応器、ならびに関連システムおよび方法が、概して記載される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
酸および塩基を含む反応スキーム、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む反応器、ならびに関連システムおよび方法が、概して記載される。空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)における、沈殿物の形成に関する本発明のシステムおよび方法もまた、記載される。空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)における沈殿物の形成は、例えば、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第1の領域(例えば、酸性領域)に化学化合物(例えば、金属塩)を溶解し、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第2の領域(例えば、アルカリ性領域)に化学化合物(例えば、金属塩)から1つまたは1つより多くの元素(例えば、金属)を含む沈殿物を収集することにより実現することができる。ある特定の実施形態では、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)は、電気化学セル内に存在し、電気分解(例えば、水の電気分解)によって確立および/または維持される。一部の実施形態によれば、沈殿物が収集された後に、この沈殿物を窯内で加熱して、ポルトランドセメントを含めた、セメントを製造する。本発明の主題は、一部の場合、相互関連生成物、特定の課題に対する代替的解決法、ならびに/または1つもしくは1つより多くのシステムおよび/もしくは物品の複数の様々な使用を含む。
【0004】
一態様では、反応器が提供される。本反応器は、ある特定の実施形態によれば、第1の電極;第2の電極;第1の電極と第2の電極との間の、空間的に変化する化学組成勾配;空間的に変化するpH勾配の第1の領域に連結されている入口;空間的に変化するpH勾配の第2の領域に連結されている出口を備え、出口は、固体を反応器から抜き出すことができるよう構成されている。
【0005】
一部の実施形態では、本反応器は、第1の電極;第2の電極;第1の電極と第2の電極との間の、空間的に変化するpH勾配;空間的に変化するpH勾配の酸性領域に連結されている入口;空間的に変化するpH勾配のアルカリ性領域に連結されている出口を備える。
【0006】
別の態様では、システムが提供される。一部の実施形態によれば、本システムは、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む領域を含む反応器であって、炭酸カルシウムを受け入れるよう構成されている反応器入口および固体の水酸化カルシウムを取り出すよう構成されている反応器出口を含む反応器;および窯の入口を備える窯であって、窯が反応器出口から下流に存在し、窯の入口が固体の水酸化カルシウムおよび/または固体の水酸化カルシウムの少なくとも一部に由来する固体の酸化カルシウムの少なくとも一部を受け入れるよう構成されており、窯がセメント製造プロセスの部分として、固体の水酸化カルシウムおよび/または固体の酸化カルシウムを加熱するよう構成されている窯を備える。
【0007】
別の態様では、方法が提供される。ある特定の実施形態によれば、本方法は、電気分解により酸および塩基を生成するステップ、酸に金属塩を溶解するステップ、および塩基に金属水酸化物を沈殿させるステップを含む。一部のこのような実施形態では、金属塩の金属は、金属水酸化物の金属と同じ金属である。一部のこのような実施形態では、電気分解は、加水分解を含む。一部のこのような実施形態では、電気分解により、反応器内に空間的に変化する化学組成勾配が生じる。一部のこのような実施形態では、電気分解により、反応器内に空間的に変化するpH勾配が生じる。一部のこのような実施形態では、本方法は、沈殿物を収集するステップをさらに含む。一部のこのような実施形態では、金属塩は、金属炭酸塩を含む。一部のこのような実施形態では、金属塩は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび/または炭酸ニッケルを含む。一部のこのような実施形態では、金属水酸化物は、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムおよび/または水酸化ニッケルを含む。一部のこのような実施形態では、金属水酸化物は、水酸化カルシウムを含む。
【0008】
一部の実施形態では、本方法は、一部の実施形態によれば、空間的に変化する化学組成勾配を備える領域を確立および/または維持するステップ、化学化合物が空間的に変化する化学組成勾配内の液体に溶解するおよび/またはこの中で反応するよう、化学化合物を空間的に変化する化学組成勾配の第1の領域に輸送するステップ、空間的に変化する化学組成勾配の第2の領域から沈殿物を収集するステップであって、沈殿物が、空間的に変化する化学組成勾配内で溶解したおよび/または反応した化学化合物に由来する1つまたは1つより多くの元素を含む、ステップを含む。
【0009】
一部の実施形態では、本方法は、空間的に変化するpH勾配を含む領域を確立および/または維持するステップ、金属塩が空間的に変化するpH勾配内の液体に溶解するおよび/またはこの中で反応するよう、金属塩を空間的に変化するpH勾配の酸性領域に輸送するステップ、空間的に変化するpH勾配のアルカリ性領域から沈殿物を収集するステップであって、沈殿物が、空間的に変化するpH勾配内で溶解したおよび/または反応した金属塩に由来する金属を含む、ステップを含む。
【0010】
別の態様では、セメントを製造する方法が提供される。本明細書において、用語「セメント」とは、以下に限定されないが、一般にポルトランドセメントとして知られている、酸化カルシウムおよび粘土鉱物、および必要に応じて石こうを含む混合物、またはクリンカー、ならびにコンクリートとして一般に知られているポルトランドセメントと凝集物との混合物が含まれる。一部の実施形態によれば、本方法は、空間的に変化するpH勾配を含む領域を確立および/または維持するステップ、炭酸カルシウムが空間的に変化するpH勾配内の液体に溶解するおよび/またはこの中で反応するよう、炭酸カルシウムを空間的に変化するpH勾配の酸性領域に輸送するステップ、空間的に変化するpH勾配のアルカリ性領域から固体の水酸化カルシウムを収集するステップであって、固体の水酸化カルシウムが、空間的に変化するpH勾配内で溶解したおよび/または反応した炭酸カルシウムに由来するカルシウムを含む、ステップ、ならびに窯内部で、固体の水酸化カルシウムおよび/または固体の水酸化カルシウムの少なくとも一部に由来する固体の酸化カルシウムを加熱して、セメントを製造するステップを含む。
【0011】
本発明の他の利点および新規な特徴は、添付図面と連携させて考慮すると、本発明の様々な非限定的な実施形態の以下の詳細説明から明白となろう。参照により組み込まれている本明細書および書類が、本開示との矛盾および/または不一致を含む場合、本明細書が優先するものとする。
【0012】
本発明の非限定的な実施形態は、例として、添付の図面を参照して記載されており、これらの図面は、概略図であり、縮尺通りに図示することを意図するものではない。図面において、例示されている同一またはほぼ同一の構成要素はそれぞれ、単一の数字によって通常、表されている。明確にするため、すべての構成要素がすべての図面で標識されているわけではなく、当業者が本発明を理解することができるために図示が必要ではない場合、本発明の各実施形態のすべての構成要素が示されているわけでもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、ある特定の実施形態による、反応器および窯を備えるシステムの断面概略図である。
【0014】
【
図1B】
図1Bは、ある特定の実施形態による、反応器、ヒータおよび窯を備えるシステムの断面概略図である。
【0015】
【
図1C】
図1Cは、ある特定の実施形態による、反応器および窯を備えるシステムの断面概略図である。
【0016】
【
図1D】
図1Dは、ある特定の実施形態による、反応器および窯を備えるシステムの断面概略図である。
【0017】
【
図2A】
図2Aは、ある特定の実施形態による、反応器の断面概略図である。
【0018】
【
図2B】
図2Bは、ある特定の実施形態による、イオンに対して選択的透過性の2つの膜の間に分離チャンバを備える、H型セルの反応器の断面概略図である。
【0019】
【
図3A】
図3Aは、ある特定の実施形態による、化学化合物を添加する前であるが、水の電気分解後の反応器の写真である。
【0020】
【
図3B】
図3Bは、ある特定の実施形態による、化学化合物(この例では、炭酸ニッケル)を添加して10時間後の
図3Aからの反応器の写真である。
【0021】
【
図4A】
図4Aは、ある特定の実施形態による、電気化学セル中で形成された、化学化合物(この例では、炭酸カルシウム)からの沈殿物(この例では、水酸化カルシウム)の写真である。
【0022】
【
図4B】
図4Bは、ある特定の実施形態による、収集して、3:1のモル比でSiO
2および水と混合して、非水硬性セメントを形成させた後の、
図4Aからの沈殿物(この例では、水酸化カルシウム)の写真である。
【0023】
【
図4C】
図4Cは、ある特定の実施形態による、
図4Aの水酸化物沈殿物(この例では、水酸化カルシウム)のX線回折(XRD)パターンを示す図である。
【0024】
【
図5】
図5は、ある特定の実施形態による、反応器の断面概略図である。
【0025】
【
図6】
図6は、ある特定の実施形態による、反応器の断面概略図である。
【0026】
【
図7】
図7は、ある特定の実施形態による、反応器の断面概略図である。
【0027】
【
図8】
図8は、ある特定の実施形態による、反応器の断面概略図である。
【0028】
【
図9】
図9は、ある特定の実施形態による、イオンに対して選択的透過性の2つの膜の間に分離チャンバを備える、H型セルの反応器の断面概略図である。
【0029】
【
図10】
図10は、ある特定の実施形態による、化学化合物(この例では、炭酸ニッケル)を添加した後の、
図3Aの反応器の写真である。
【0030】
【
図11】
図11は、ある特定の実施形態による、本明細書に記載されているセメント生産プロセスと、熱エネルギーのみを使用した従来のセメント生産とを比較する、フローチャートである。
【0031】
【
図12】
図12は、ある特定の実施形態による、排気量の少ない、電気化学ベースのセメントプラントのための概略図である。
【0032】
【
図13】
図13は、ある特定の実施形態による、電解槽をベースとする脱炭酸セルの概略図である。
【0033】
【
図14】
図14A~14Jは、ある特定の実施形態による、白金電極、および電解質として脱イオン水中の1M NaNO
3を使用する、脱炭酸H型セルの低速撮影画像である。
【0034】
【
図15】
図15A~15Fは、ある特定の実施形態による、脱炭酸反応器により生産されたCa(OH)
2粉末を示す図である。
【0035】
【
図16】
図16は、
図13中のタイプの新しく組み立てたH型セルから各々始めた13の実験から測定した、ある特定の実施形態による、脱炭酸反応器のクーロン効率を示す図である。
【0036】
【
図17】
図17A~17Fは、ある特定の実施形態による、脱炭酸反応器において生産されたCa(OH)
2を使用するエーライト(alite)である3CaO-SiO
2の合成を示している。
【0037】
【
図18】
図18A~18Fは、CaCO
3およびSiO
2を使用する、エーライトの合成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
詳細な説明
酸および塩基を含む反応スキーム、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む反応器、ならびに関連システムおよび方法が、概して記載される。一部の実施形態では、本方法は、電気分解(例えば、加水分解)による、酸および塩基を生産するステップを含む。ある特定の実施形態では、本方法は、酸に、金属塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび/または炭酸ニッケルなどの金属炭酸塩)を溶解するステップを含む。一部の場合、本方法は、塩基に、金属水酸化物(例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムおよび/または水酸化ニッケル)を沈殿させるステップを含む。一部の実施形態では、本方法は、沈殿した金属水酸化物を収集するステップを含む。ある特定のこのような実施形態では、電気分解は、反応器内に空間的に変化する化学組成勾配(例えば、反応器内に空間的に変化するpH勾配)を生じる。
【0039】
一部の実施形態では、電気化学反応器は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む。ある特定の実施形態では、沈殿物は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を使用して形成される。一部の実施形態では、化学化合物(例えば、金属塩)は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第1の領域(例えば、酸性領域)に溶解し、化学化合物(例えば、金属塩)に由来する1つまたは1つより多くの元素(例えば、金属)を含む沈殿物が、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第2の領域(例えば、アルカリ性領域)に形成する。
【0040】
一部の実施形態は、電解反応を使用して、電気化学セルの正極と負極との間に化学組成勾配が生じる、組成、方法および反応器設計に関する。一部の実施形態では、次に、前記電気分解により生じた組成勾配を使用し、一方の電極の近傍の化学環境に反応物を供給し、電気分解により生じる化学勾配を使用して、反応物またはその構成成分がもう一方の電極の方に拡散するにつれて、前記反応物からの生成物を生成することによって所望の化学反応を行う。一実施形態では、このような反応器は、電気化学的手段および化学的手段による、分解した無機塩または金属塩の生成を対象とする。一実施形態では、無機塩または金属塩を加熱してこれらを分解することを含む、従来的な熱焼成の代わりにこのような反応器を使用することにより、熱エネルギーの生成のための化石燃料の使用、ならびにそれに伴う温室効果ガスまたは大気汚染物質であるガスの生成が、低減または回避される。一部の実施形態では、無機塩または金属塩は、金属炭酸塩を含み、生成した温室効果ガスは、少なくとも一部が、二酸化炭素である。別の実施形態では、電気分解により推進される化学反応器は、光起電力または風力エネルギーなどの再生可能な資源からの電気によって電力供給され、それにより、焼成または分解反応を行う際に、温室効果ガスを生成するエネルギー源の使用が低減される。
【0041】
一部の実施形態は、ポルトランドセメントなどのセメントの生産方法に関連する。コンクリートは、現在では、世界中で最も広範囲に使用されている人工材料である。セメント生産はまた、世界中でCO2の2番目に大きな工業的排出者であり、全CO2排出量の約8%を占める。セメントの工業的生産の伝統的な方法は、熱的手段によるCaCO3の焼成を含む。セメントの現在の製造では、CO2排出量の約60%が、CaCO3の焼成に起因しており、CO2排出量の約40%が、焼成および焼結過程を実施するための化石燃料の燃焼に起因している。したがって、CO2排出量がより少ないセメント生産プロセスが非常に必要とされている。一部の実施形態は、生産されるセメントの量あたりのCO2が現在の製造法よりも少なく生成する、本明細書において記載されている電気化学的プロセスにより熱焼成を置き換えた、セメント生産プロセスに関連する。
【0042】
電気化学反応器および関連する方法を含む、セメント生産システムが、概して記載される。ある特定の実施形態は、電気化学反応器および窯を備える、セメントを生産するための本発明のシステムに関する。ある特定の実施形態では、電気化学反応器は、CaCO3を受け入れるよう構成されている。一部の実施形態では、電気化学反応器は、Ca(OH)2および/または石灰を取り出すよう構成されている第1の出口を備える。ある特定の場合、電気化学反応器は、CO2、O2および/またはH2ガスを取り出すよう構成されている第2の出口を備える。ある特定の実施形態によれば、窯は、セメント製造プロセスの一部として、Ca(OH)2および/または石灰(および/またはその反応生成物)を加熱するよう構成されている。
【0043】
一部の実施形態では、本システムは、再生可能電気(例えば、太陽エネルギーおよび/または風力エネルギー)によって、少なくとも一部(例えば、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%または100%)が電力供給される。ある特定の場合、本システムは、電気化学反応器の代わりとなる、伝統的な熱焼成を使用する実質的に類似のシステムよりも、正味の炭素排出量はより少ない(例えば、少なくとも10%少ない、少なくとも25%少ない、少なくとも50%少ない、少なくとも75%少ないまたは少なくとも90%少ない)。一部の例では、本システムは、正味ゼロの炭素排出量を有する。
【0044】
ある特定の実施形態は、Ca(OH)2および/または石灰が電気化学反応器において生産される、本発明の方法に関する。一部の実施形態では、電気化学反応器に由来するCa(OH)2および/または石灰は、次に、窯に輸送され、この窯は、セメント製造プロセスの一部として、Ca(OH)2および/または石灰(および/またはそれらの反応生成物)を加熱する。一部の実施形態では、電気化学反応器はまた、CO2、O2および/またはH2ガスを生成する。ある特定の実施形態によれば、CO2は隔離される、液体燃料で使用される、オキシ燃料で使用される、原油増進回収に使用される、ドライアイスを生産するために使用される、および/または飲料における成分として使用される。一部の場合、O2は、隔離され得る、オキシ燃料に使用され得る、CCS用途に使用され得る、および/または原油増進回収に使用され得る。ある特定の例では、H2は、隔離され得る、および/または燃料(例えば、燃料電池においておよび/またはシステムを加熱するため)として使用され得る。一部の実施形態では、本システムから取り出される少なくとも一部分(例えば、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%またはすべて)のCO2、O2および/またはH2が窯に供給される。
【0045】
上記の通り、ある特定の態様は、反応器に関する。そのような反応器の非限定例は、
図1A~3Bおよび
図5~10に示されている。
【0046】
一部の実施形態では、本反応器は、一対の対向する電極を備える。一部の実施形態によれば、本反応器は、同心電極設計を含む。一部の実施形態によれば、本反応器は、H型セルを備える(
図3A、3Bおよび10に示されているものなど)。ある特定の実施形態では、反応器は、第1の電極を備える。一部の実施形態では、第1の電極は、カソードを含む。例えば、
図2Bでは、反応器101は、カソード104を備える。ある特定の実施形態では、第1の電極には、相対的にアルカリ性の条件下で安定な、電子伝導体が選択される。ある特定の実施形態では、第1の電極は、白金、金、ニッケル、イリジウム、銅、鉄、鋼、ステンレス鋼、マンガンおよび亜鉛などの炭素などの金属製電極、またはグラファイトもしくは不規則炭素などの炭素、または炭化ケイ素、炭化チタンもしくは炭化タングステンなどの金属炭化物を含む。ある特定の実施形態では、第1の電極は、金属合金(例えば、ニッケル-クロム-鉄合金、ニッケル-モリブデン-カドミウム合金)、金属酸化物(例えば、酸化イリジウム、ニッケル鉄コバルト酸化物、ニッケルコバルト酸化物、リチウムコバルト酸化物、ランタンストロンチウムコバルト酸化物、バリウムストロンチウム酸化鉄、マンガンモリブデン酸化物、二酸化ルテニウム、イリジウムルテニウムタンタル酸化物)、金属有機フレームワークまたは金属硫化物(例えば、硫化モリブデン)を含む。ある特定の実施形態では、電極触媒または電極材料は分散されて、導電性支持体表面にコーティングされる。
【0047】
一部の実施形態では、反応器は、第2の電極を備える。一部の実施形態では、第2の電極は、アノードを備える。例えば、
図2Bでは、反応器101は、アノード105を備える。ある特定の実施形態では、第2の電極には、相対的に酸性な条件下で安定な、電子伝導体が選択される。ある特定の実施形態では、第2の電極は、白金、パラジウム、鉛もしくはスズなどの金属製電極、または遷移金属酸化物などの金属酸化物を含む。ある特定の実施形態では、第1の電極および/または第2の電極は、触媒を含む。一部の実施形態では、カソード触媒には、ニッケル、鉄、硫化モリブデンなどの遷移金属スルフィド、またはMnO
2、Mn
2O
3、Mn
3O
4、ニッケル酸化物、水酸化ニッケル、酸化鉄、水酸化鉄、酸化コバルトなどの遷移金属酸化物、MnCo
2O
4、CoMn
2O
4、MnFe
2O
4、ZnCoMnO
4などの複合遷移金属スピネル酸化物など、アルカリ性条件下で安定となるように選択される。一部の実施形態では、アノード触媒は、白金またはイリジウムまたはそれらの酸化物など、酸性条件下で安定となるよう選択される。
【0048】
ある特定の実施形態によれば、反応器は、第1の電極と第2の電極との間に空間的に変化する化学組成勾配を含む。一部の実施形態では、空間的に変化する化学組成勾配は、空間的に変化するpH勾配を含む。例えば、
図2Bでは、反応器101は、カソード104の近傍に第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106、およびアノード105の近傍に第1の領域(例えば、酸性領域)107を備える。したがって、反応器101は、第1の電極と第2の電極との間に、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む。一部の実施形態では、第1の領域は、酸性領域を含む。ある特定の実施形態では、第2の領域は、アルカリ性領域を含む。他の実施形態では、第1の領域は、アルカリ性領域を含み、第2の領域は、酸性領域を含む。
【0049】
一部の実施形態では、反応器は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)が、電気分解によって、少なくとも一部が確立および/または維持されるよう構成されている。例えば、
図2Bでは、反応器101は、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106および第1の領域(例えば、酸性領域)107を備える空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む。一部のこのような実施形態では、この空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)は、電気分解によって確立および/または維持される。一部の実施形態によれば、中性電解質の電気分解は、カソード104およびアノード105などの電極間に空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を生じることができる。一部の実施形態では、電気分解反応を使用して、電気化学セルの正極と負極の間に、化学組成勾配を生じさせる。ある特定の実施形態によれば、電気分解により生じた化学組成勾配を使用して、一方の電極の近傍の化学環境に反応物を供給し、電気分解により生じる化学組成勾配を使用して、反応物またはその構成成分がもう一方の電極の方に拡散するにつれて、前記反応物からの生成物を生成することによって、所望の化学反応を行うことができる。
【0050】
一部の実施形態では、電気分解は加水分解を含む。本明細書で使用する場合、加水分解とは、水の電気分解を指す。例えば、一部の実施形態では、カソードにおいて起こる反応は、2つのH2O分子および2個の電子をH2および2つのOH-に変換する一方、アノードで起こる反応は、2つのH2O分子を4個の電子、O2および4つのプロトンに変換する。一部の実施形態では、カソード104およびその近傍での水酸化物イオンの生成は、カソード104またはその近傍で、アルカリ性pHを確立および/または維持して、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106を確立および/または維持する一方、アノード105またはその近傍でのプロトンの生成は、アノード105またはその近傍において、酸性pHを確立し、第1の領域(例えば、酸性領域)107を確立および/または維持する。したがって、ある特定の実施形態では、反応器は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)が、加水分解によって、少なくとも一部が確立および/または維持されるよう構成されている。
【0051】
ある特定の実施形態によれば、反応器は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第1の領域(例えば、酸性領域)に連結された入口を備える。例えば、
図1Bでは、反応器101は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第1の領域(例えば、酸性領域)107に連結された反応器入口114を備える。
【0052】
ある特定の実施形態によれば、酸性領域は、6もしくは6未満、5もしくは5未満、4もしくは4未満、3もしくは3未満、または2もしくは2未満のpHを有する。一部の実施形態では、酸性領域は、少なくとも0、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも4のpHを有する。これらの範囲の組合せもまた可能である(例えば、pH0~6(端点を含む))。
【0053】
ある特定の実施形態では、電気化学反応器は、CaCO3を受け入れるよう構成されている。
【0054】
一部の実施形態では、反応器は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第2の領域(例えば、アルカリ性領域)に連結された出口を備える。例えば、
図1Bでは、反応器101は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106に連結された反応器出口115を備える。
【0055】
一部の実施形態によれば、アルカリ性領域は、8もしくは8より高い、9もしくは9より高い、10もしくは10より高い、11もしくは11より高い、または12もしくは12より高いpHを有する。一部の実施形態によれば、アルカリ性領域は、14もしくは14未満、13もしくは13未満、12もしくは12未満、11もしくは11未満、または10もしくは10未満のpHを有する。これらの範囲の組合せもまた可能である(例えば、pH8~14(端点を含む))。
【0056】
ある特定の実施形態では、出口は、固体を反応器から抜き出すことができるよう構成されている。例えば、
図1Aでは、反応器101は、固体を反応器101から抜き出すことができるよう構成されている反応器出口115を備える。一部の実施形態では、反応器は、出口と連携されており、および反応器から固体を取り除くよう構成されている、固体取り扱い装置を備える。例えば、一部の実施形態では、固体取り扱い装置117は、反応器101から固体(固体の水酸化ニッケル、固体の水酸化カルシウムまたは固体の水酸化マグネシウムなどの固体の金属水酸化物)を除去するよう構成されている。固体取り扱い装置の例には、以下に限定されないが、コンベヤーベルト、オーガ、ポンプ、シュート、または反応器から固体を取り出して輸送することが可能な任意の他のデバイスが含まれる。一部の実施形態では、固体取り扱い装置は、流体流、濾過、沈殿、遠心力、電気泳動、誘電泳動または磁気分離のうちの1つまたは組合せを使用して、固体と液体とを分離する。
【0057】
一部の実施形態では、反応器は、反応器出口を備える。例えば、
図1Cでは、システム100は、反応器101を備えており、この反応器は、反応器出口115を備える。一部の実施形態では、反応器出口は、Ca(OH)
2(例えば、固体の水酸化カルシウム)および/または石灰を取り出すよう構成されている。
【0058】
一部の実施形態では、反応器は、1つより多い反応器出口(例えば、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、5つ未満もしくは5つに等しい、4つ未満もしくは4つに等しい、3つ未満もしくは3つに等しい、または2つ未満もしくは2つに等しい;これらの範囲の組合せもまた可能である)を備える。ある特定の実施形態では、反応器は、第2の出口を備える。例えば、
図1Cでは、反応器101は、第2の出口190を備える。
【0059】
ある特定の実施形態では、第2の出口は、CO2、O2および/またはH2を取り出すよう構成されている。一部の例では、CO2は隔離されることになる、液体燃料で使用されることになる、オキシ燃料で使用されることになる、原油増進回収に使用されることになる、ドライアイスを生産するために使用されることになる、および/または飲料における成分として使用されることになる。一部の実施形態では、O2は、隔離されることになる、オキシ燃料として使用されることになる、CCS用途に使用されることになる、および/または原油増進回収に使用されることになる。ある特定の場合、H2は、隔離されることになる、および/または燃料(例えば、燃料電池においておよび/またはシステムを加熱するため)として使用されることになる。一部の実施形態では、本システムから取り出される少なくとも一部(例えば、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%またはすべて)のCO2、O2および/またはH2が、窯に供給される。
【0060】
一部の実施形態では、反応器は、第3の出口および/または第4の出口を備える。例えば、
図1Dでは、反応器100は、第3の出口195および第4の出口196を備える。一部の場合、第2の出口、第3の出口および/または第4の出口は、CO
2、O
2および/またはH
2を取り出すよう構成されている。例えば、一部の場合、第2の出口は、CO
2およびO
2を取り出すよう構成されている一方、第3の出口は、H
2を取り出すよう構成されている。ある特定の例では、第2の出口は、CO
2を取り出すよう構成されており、第3の出口は、O
2を取り出すよう構成されており、第4の出口は、H
2を取り出すよう構成されている。
【0061】
一部の実施形態によれば、反応器は、第1の電極と第2の電極との間に、イオンに対して選択的透過性の1つまたは1つより多くの膜をさらに備える。ある特定の実施形態では、イオンに対して選択的透過性である11つまたは1つより多くの膜は、イオンに対して選択的透過性の2つの膜を含む。例えば、
図2Bでは、反応器101は、カソード104とアノード105との間に、イオンに対して選択的透過性の2つの膜(膜110aおよび膜110b)を備え、分離チャンバ113が、イオンに対して選択的透過性の膜(膜110aおよび膜110b)の間に形成される。一部の実施形態では、イオンに対して選択的透過性の2つの膜は、互いに同じである。ある特定の実施形態では、イオンに対して選択的透過性の2つの膜は、互いに異なる。
【0062】
一部の実施形態では、イオンに対して選択的透過性の1つまたは1つより多くの膜は、第1の電極上に固体が析出するのを防止するよう、固体が第1の電極を不動態化するのを防止するよう、および/または異なる2種の固体が互いに混入するのを防止するよう構成されている。
【0063】
ある特定の実施形態によれば、イオンに対して選択的透過性の膜により、固体の通過を制限する(またはなくす)と同時に、イオンの通過が可能になる。例えば、
図3Aおよび3Bでは、イオンに対して選択的透過性の膜(膜110aおよび膜110b)は、フィルター紙などの多孔質繊維材料を含むことができ、この多孔繊維材料により、固体の通過を制限する(またはなくす)と同時に、イオンの通過を可能にする。例えば、一部の実施形態では、金属イオン(例えば、Ca
2+)は通過することができる一方、固体の金属塩(例えば、固体CaCO
3などの固体の金属炭酸塩)または沈殿物(例えば、固体Ca(OH)
2などの固体金属水酸化物)は、制限される(または、全く通過しない)。
【0064】
一部の実施形態では、イオンに対して選択的透過性の膜により、イオンの通過が可能になるが、非イオン性化合物の通過を制限する(またはなくす)。ある特定の実施形態では、イオンに対して選択的透過性の膜により、イオンは、第1の速度で通過することが可能になり、非イオン性化合物は、第1の速度よりも遅い第2の速度で通過することが可能になる。一部の実施形態では、イオンに対して選択的透過性の膜により、あるイオンの通過が可能になるが、他のイオンの通過が制限される(またはなくなる)。ある特定の実施形態では、イオンに対して選択的透過性の膜により、あるイオンは、第1の速度で通過することが可能になり、他のイオンは、第1の速度よりも遅い第2の速度で通過することが可能になる。一部の実施形態では、イオンに対して選択的透過性の膜により、ある金属イオンの通過が可能になり得るが、他の通過が制限される(またはなくなる)(または、ある金属イオンは、他よりも速く通過することが可能となる)、H+の通過が可能になり得るが、OH-の通過が制限される(またはなくなる)(または、H+は、OH-よりも速く通過することが可能となる)、OH-の通過が可能になり得るが、H+の通過が制限される(またはなくなる)(または、OH-は、H+よりも速く通過することが可能となる)、金属イオンの通過が可能になり得るが、H+および/またはOH-の通過が制限される(またはなくなる)(または、金属イオンは、H+および/またはOH-よりも速く通過することが可能となる)、および/またはH+および/またはOH-イオンの通過が可能になり得るが、金属イオンの通過が制限される(またはなくなる)(または、H+および/またはOH-イオンは、金属イオンよりも速く通過することが可能である)。
【0065】
例えば、一部の実施形態では、膜110aは、イオンに対して選択的透過性であり、例えば、膜110aは、OH-イオンに対して透過性となり得るが、Ca2+イオンに対する透過性は相対的に低い一方、膜110bもまた、イオンに対して選択的透過性であるが、例えば、Ca2+イオンに対して透過性となり得るが、OH-イオンに対して透過性は相対的に低くなり得る。この例では、第1の領域(例えば、酸性領域)107からのCa2+は、膜110bを通り拡散することができ、この膜は、イオンに対して分離チャンバ113への選択的透過性であるが、膜110aを通り拡散することができず、この膜は、異なるイオンに対して第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106への選択的透過性である。さらに、この例では、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106からのOH-イオンは、膜110aを通り拡散することができ、この膜は、イオンに対して分離チャンバ113への選択的透過性であるが、膜110bを通り拡散することができず、この膜は、違うイオンに対して選択的透過性である。したがって、この例では、Ca2+およびOH-は、分離チャンバ113において、反応して固体のCa(OH)2を形成し、固体のCa(OH)2がカソード104またはアノード105の表面に形成するのを防止することしかできないと思われる。したがって、一部の実施形態では、イオンに対して選択的透過性の1つまたは1つより多くの膜は、固体(例えば、固体のCa(OH)2などの固体の金属水酸化物)が、第1の電極(例えば、カソード)に析出するのを防止することができる、固体(例えば、固体のCa(OH)2などの固体の金属水酸化物)が、第1の電極(例えば、カソード)を不動態化するのを防止することができる、および/または2種の異なる固体、すなわち化学化合物(例えば、固体の炭酸カルシウムなどの固体の金属炭酸塩などの金属塩)および沈殿物(例えば、固体のCa(OH)2などの固体の金属水酸化物などの固体の水酸化物)が互いに混入するのを防止することができる。
【0066】
ある特定の実施形態では、反応器は、電気化学的手段および化学的手段により、焼成もしくは分解した無機塩または金属塩(例えば、金属炭酸塩)の生産を対象とする。一部の実施形態では、無機塩または金属塩を加熱してこれらを分解することを含む、従来的な熱焼成の代わりにこのような反応器を使用することにより、熱エネルギーの生成のための化石燃料の使用、ならびにそれに伴う温室効果ガス(例えば、CO2)または大気汚染物質であるガスの生成が、低減または回避される。
【0067】
ある特定の態様は、セメントを生産するためのシステムに関する。このようなシステムの非限定例は、
図1A~Dに示されている。
【0068】
一部の実施形態では、本システムは、反応器を備える。例えば、
図1Cでは、システム100は、反応器101を備える。
【0069】
ある特定の実施形態では、反応器は、上もしくは本明細書のいずれかで開示されている反応器の実施形態のいずれか、またはそれらの組合せを含む。
【0070】
ある特定の実施形態によれば、反応器は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む領域を含む。一部の実施形態では、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)は、第1の領域(例えば、酸性領域)および第2の領域(例えば、アルカリ性領域)を含む。例えば、
図1Aでは、システム100は、反応器101を備え、この反応器は、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106および第1の領域(例えば、酸性領域)107を含む空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む。
【0071】
ある特定の実施形態によれば、酸性領域は、6もしくは6未満、5もしくは5未満、4もしくは4未満、3もしくは3未満、または2もしくは2未満のpHを有する。一部の実施形態では、酸性領域は、少なくとも0、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも4のpHを有する。これらの範囲の組合せもまた可能である(例えば、pH0~6(端点を含む))。
【0072】
一部の実施形態によれば、アルカリ性領域は、8もしくは8より高い、9もしくは9より高い、10もしくは10より高い、11もしくは11より高い、または12もしくは12より高いpHを有する。一部の実施形態によれば、アルカリ性領域は、14もしくは14未満、13もしくは13未満、12もしくは12未満、11もしくは11未満、または10もしくは10未満のpHを有する。これらの範囲の組合せもまた可能である(例えば、pH8~14(端点を含む))。
【0073】
一部の実施形態によれば、反応器は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)が、電気分解によって、少なくとも一部が確立および/または維持されるよう構成されている。例えば、
図2Aでは、反応器101は、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106および第1の領域(例えば、酸性領域)107を備える空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含み、この空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)は、電気分解によって確立および/または維持された。一部の実施形態によれば、中性電解質の電気分解は、カソード104およびアノード105などの電極間に空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を生じさせる。一部の実施形態では、電気分解は加水分解を含む。本明細書で使用する場合、加水分解とは、水の電気分解を指す。例えば、一部の実施形態では、カソードにおいて起こる反応は、2H
2O+2e
-→H
2+2OH
-である一方、アノードで起こる反応は、2H
2O→O
2+4H
++4e
-である。一部の実施形態では、カソード104およびその近傍での水酸化物イオンの生成は、カソード104またはその近傍で、アルカリ性pHを確立および/または維持して、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106を確立および/または維持する一方、アノード105またはその近傍でのプロトンの生成は、アノード105またはその近傍において、酸性pHを確立し、第1の領域(例えば、酸性領域)107を確立および/または維持する。
【0074】
ある特定の実施形態では、反応器は、炭酸カルシウムを受け入れるよう構成されている反応器入口を備える。例えば、
図1Aでは、システム100は、反応器101を備え、この反応器は、反応器入口114を備え、反応器入口114は、炭酸カルシウムを受け入れるよう構成されている。
【0075】
一部の実施形態では、反応器は、反応器出口を備える。例えば、
図1Cでは、システム100は、反応器101を備えており、この反応器は、反応器出口115を備える。一部の実施形態では、反応器出口は、Ca(OH)
2(例えば、固体の水酸化カルシウム)および/または石灰を取り出すよう構成されている。
【0076】
一部の実施形態では、反応器は、1つより多い反応器出口(例えば、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、5つ未満もしくは5つに等しい、4つも未満もしくは4つに等しい、3つ未満もしくは3つに等しい、または2つ未満もしくは2つに等しい;これらの範囲の組合せもまた可能である)を備える。ある特定の実施形態では、反応器は、第2の出口を備える。例えば、
図1Cでは、反応器101は、第2の出口190を備える。
【0077】
ある特定の実施形態では、第2の出口は、CO2、O2および/またはH2を取り出すよう構成されている。一部の例では、CO2は隔離されることになる、液体燃料で使用されることになる、オキシ燃料で使用されることになる、原油増進回収に使用されることになる、ドライアイスを生産するために使用されることになる、および/または飲料における成分として使用されることになる。一部の実施形態では、O2は、隔離されることになる、オキシ燃料として使用されることになる、CCS用途に使用されることになる、および/または原油増進回収に使用されることになる。ある特定の場合、H2は、隔離されることになる、および/または燃料(例えば、燃料電池においておよび/またはシステムを加熱するため)として使用されることになる。一部の実施形態では、本システムから取り出される少なくとも一部分(例えば、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%またはすべて)のCO2、O2および/またはH2は、窯に供給される。
【0078】
一部の実施形態では、反応器は、第3の出口および/または第4の出口を備える。例えば、
図1Dでは、反応器100は、第3の出口195および第4の出口196を備える。一部の場合、第2の出口、第3の出口および/または第4の出口は、CO
2、O
2および/またはH
2を取り出すよう構成されている。例えば、一部の場合、第2の出口は、CO
2およびO
2を取り出すよう構成されている一方、第3の出口は、H
2を取り出すよう構成されている。ある特定の例では、第2の出口は、CO
2を取り出すよう構成されており、第3の出口は、O
2を取り出すよう構成されており、第4の出口は、H
2を取り出すよう構成されている。
【0079】
一部の実施形態によれば、本システムは、固体の水酸化カルシウムおよび/または固体の酸化カルシウムとは異なる、副生成物を収集するよう構成されている。一部の実施形態では、副生成物は、CO
2、O
2および/またはH
2を含む。例えば、
図2Aでは、副生成物108は、カソード104で生成し、副生成物109は、アノード105で生成する。一部の実施形態では、副生成物108は、H
2(g)を含む。一部の実施形態では、副生成物109は、O
2(g)および/またはCO
2(g)を含む。例えば、一部の実施形態では、加水分解は反応器101において行われ、カソードにおいて起こる反応は、2つのH
2O分子および2個の電子をH
2(g)(副生成物108)および2つのOH
-に変換する一方、アノードで起こる反応は、2つのH
2O分子をO
2(g)(副生成物109)、4個の電子および4つのプロトンに変換する。ある特定の実施形態では、化学化合物(例えば、金属塩)111(例えば、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩)は、第1の領域(例えば、酸性領域)107に加えられ、化学化合物(例えば、金属塩)111は、第1の領域(例えば、酸性領域)107におけるプロトンと反応し、こうして化学化合物(例えば、金属塩)111が溶解して、1つまたは1つより多くの元素(例えば、Ca
2+などの金属)が形成する。例えば、一部の実施形態では、CaCO
3と2つのプロトンとの間の正味の反応は、H
2O、Ca
2+およびCO
2(g)(副生成物109)の形成をもたらす。
【0080】
一部の実施形態では、副生成物の収集は、副生成物のいずれかの収集を含む。例えば、一部の実施形態では、副生成物の収集は、CO2、O2およびH2のそれぞれの収集:CO2だけの収集;O2だけの収集;H2だけの収集;CO2およびO2の収集;CO2およびH2の収集;またはO2およびH2の収集を含む。例えば、一部の実施形態では、副生成物はCO2を含み、副生成物の収集は、CO2の隔離を含む。
【0081】
ある特定の実施形態では、本システムは、窯を備える。例えば、
図1Cでは、システム100は、窯102を備える。一部の実施形態では、窯は窯の入口を備える。例えば、
図1Aでは、窯102は、窯の入口116を備える。一部の実施形態によれば、窯は、反応器出口の下流にある。例えば、
図1Aでは、窯102は、反応器出口115の下流にある。
【0082】
ある特定の実施形態によれば、本システムは、反応器出口と窯の入口との間にヒータをさらに備える。例えば、
図1Bでは、ヒータ103は、反応器出口115と窯の入口116との間にある。ヒータの例は、その内部に置かれた物質を加熱または脱水するデバイスを含む。例えば、ヒータ103は、沈殿物(例えば、Ca(OH)
2などの金属水酸化物などの金属沈殿物)を加熱または脱水して、部分的にまたは完全に、その酸化物(例えば、CaO)にすることができる。一部の実施形態では、反応器出口は、窯の入口に直接、取り付けられている。例えば、
図1Aでは、反応器出口115は、窯の入口116に直接、取り付けられている。
【0083】
本明細書で使用する場合、第1のユニットおよび第2のユニットが、互いに連結されており、第1の単位から第2の単位に輸送された時に、両ユニット間で移送される材料の組成物が、実質的に変化しない場合(すなわち、構成成分の相対存在量が、5%を超えて変化しない)、それらのユニット間に直接的な取り付けが存在する(および、2つのユニットが、互いに「直接、取り付けられている」と述べられる)。例示的な例として、第1のユニットおよび第2のユニットを連結している導管であって、導管の内容物の圧力および温度が調節されるが、その内容物の組成は変わらない導管は、第1のユニットおよび第2のユニットを直接、取り付けていると言う。一方、分離工程が行われる、および/または第1のユニットから第2のユニットへの流れる間に導管の内容物の組成を実質的に変化させる化学反応が行われる場合、この導管は、第1のユニットと第2のユニットを直接、連結しているとは言わない。一部の実施形態では、互いに直接取り付けられている2つのユニットは、第1のユニットから第2のユニットまで輸送されると、物質の相変化が存在しないよう構成されている。
【0084】
ある特定の実施形態では、窯の入口は、固体の水酸化カルシウムおよび/または固体の水酸化カルシウムの少なくとも一部に由来する固体の酸化カルシウムの少なくとも一部を受け入れるよう構成されている。例えば、一部の実施形態では、水酸化カルシウムは、反応器出口115から収集され、反応器出口115は、窯の入口116に直接、取り付けられており、こうして、窯の入口116は、固体の水酸化カルシウムの少なくとも一部を受け入れるよう構成されている。ある特定の実施形態では、水酸化カルシウムは、反応器出口115から収集され、ヒータ103に輸送される。一部の実施形態では、ヒータ103は、水酸化カルシウムを、完全にまたは一部、酸化カルシウムに変換する。一部の実施形態では、窯の入口116は、ヒータ103から、固体の水酸化カルシウムおよび/または固体の水酸化カルシウムの少なくとも一部に由来する固体の酸化カルシウムの少なくとも一部を受け入れるよう構成されている。
【0085】
一部の実施形態によれば、セメント製造プロセスの一部として、窯は、Ca(OH)2(例えば、固体の水酸化カルシウム)および/もしくは石灰(例えば、固体の酸化カルシウム)ならびに/またはそれらの反応生成物を加熱するよう構成されている。一部の実施形態では、セメント製造プロセスの一部としての、Ca(OH)2および/または石灰を加熱するステップは、窯中でのCa(OH)2および/または石灰と他の化合物とを加熱するステップを含む。例えば、Ca(OH)2および/または石灰は、窯中で、SiO2または他の鉱物と共に加熱され得る。
【0086】
ある特定の場合、本システムは、電気化学反応器の代わりとなる、従来的な熱焼成を使用する実質的に類似のシステムよりも、正味の炭素排出量はより少ない(例えば、少なくとも10%少ない、少なくとも25%少ない、少なくとも50%少ない、少なくとも75%少ない、または少なくとも90%少ない)。一部の例では、本システムは、正味ゼロの炭素排出量を有する。
【0087】
ある特定の態様は、方法に関する。ある特定の態様は、電気分解により、酸および塩基を生産する方法に関する。このような方法の1つの非限定例は、
図1Aに示されている実施形態に関して記載され得る。
【0088】
一部の実施形態では、本方法は、電気分解(例えば、加水分解)による、酸および塩基を生産するステップを含む。例えば、ある特定の実施形態では、酸は、
図1Aの第1の領域(例えば、酸性領域)107において生産され、塩基は、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106において生産される。ある特定の実施形態では、本方法は、酸に、金属塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび/または炭酸ニッケルなどの金属炭酸塩)を溶解するステップを含む。例えば、一部の例では、金属塩は、
図1Aにおける反応器入口114から第1の領域(例えば、酸性領域)107に添加することができ、ここで、酸に溶解する。一部の場合、本方法は、塩基に、金属水酸化物(例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムおよび/または水酸化ニッケル)を沈殿させるステップを含む。例えば、ある特定の場合、金属水酸化物は、
図1Aにおける、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106中で沈殿することができる。一部の実施形態では、本方法は、沈殿した金属水酸化物を収集するステップを含む。例えば、ある特定の実施形態では、沈殿した金属水酸化物は、
図1Aの反応器出口115から収集することができる。一部の例では、電気分解により、反応器内に空間的に変化する化学組成勾配(例えば、反応器内に空間的に変化するpH勾配)が生じる。例えば、一部の例では、電気分解により、
図1Aの反応器101内に、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106および第1の領域(例えば、酸性領域)107を含む空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)が生じる。
【0089】
ある特定の態様は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)において、沈殿物を形成する方法に関する。このような方法の1つの非限定例は、
図2Aおよび2Bに示されている実施形態に関して記載され得る。
【0090】
一部の実施形態によれば、本方法は、上もしくは本明細書のいずれかで開示されている実施形態のいずれかと関係付けて記載されている反応器および/またはシステム、またはそれらの組合せにおいて行われる。
【0091】
ある特定の実施形態では、本方法は、空間的に変化する化学組成勾配を備える領域を確立および/または維持するステップを含む。一部の実施形態では、空間的に変化する化学組成勾配は、空間的に変化するpH勾配を含む。例えば、
図2Aでは、反応器101は、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106および第1の領域(例えば、酸性領域)107を含む空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む。ある特定の実施形態では、第1の領域は、酸性領域を含む。一部の実施形態では、第2の領域は、アルカリ性領域を含む。
【0092】
一部の実施形態によれば、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む領域を確立および/または維持するステップは、電気分解を行うステップを含む。例えば、
図2Aでは、反応器101は、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106および第1の領域(例えば、酸性領域)107を含む空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含み、この空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)は、電気分解によって確立および/または維持された。一部の実施形態によれば、中性電解質の電気分解により、カソード104およびアノード105などの電極間に空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)が生じ得る。一部の実施形態では、電気分解は加水分解を含む。本明細書で使用する場合、加水分解とは、水の電気分解を指す。例えば、一部の実施形態では、カソードにおいて起こる反応は、2つのH
2O分子および2個の電子をH
2および2つのOH
-に変換する一方、アノードで起こる反応は、2つのH
2O分子をO
2、4個の電子および4つのプロトンに変換する。一部の実施形態では、カソード104およびその近傍での水酸化物イオンの生成は、カソード104またはその近傍で、アルカリ性pHを確立および/または維持して、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106を確立および/または維持する一方、アノード105またはその近傍でのプロトンの生成は、アノード105またはその近傍において、酸性pHを確立し、第1の領域(例えば、酸性領域)107を確立および/または維持する。
【0093】
一部の実施形態によれば、本方法は、化学化合物(例えば、金属塩)を、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第1の領域(例えば、酸性領域)に輸送するステップを含む。ある特定の実施形態では、金属塩は、金属炭酸塩を含む。一部の実施形態によれば、金属炭酸塩は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび/または炭酸ニッケルを含む。例えば、一部の実施形態によれば、本方法は、炭酸カルシウムを、空間的に変化するpH勾配の第1の領域(例えば、酸性領域)に輸送するステップを含む。例えば、
図2Aでは、化学化合物(例えば、金属塩)111(例えば、炭酸カルシウム)は、空間的に変化するpH勾配の第1の領域(例えば、酸性領域)107に添加される。
【0094】
ある特定の実施形態によれば、酸性領域は、6もしくは6未満、5もしくは5未満、4もしくは4未満、3もしくは3未満、または2もしくは2未満のpHを有する。一部の実施形態では、酸性領域は、少なくとも0、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも4のpHを有する。これらの範囲の組合せもまた可能である(例えば、pH0~6(端点を含む))。
【0095】
ある特定の実施形態によれば、化学化合物(例えば、金属塩)は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)内の液体に溶解する、および/またはこの中で反応する。液体の非限定例としては、非水溶液または水溶液が含まれる。非水溶液の例には、非水性溶媒および電解質塩を含む溶液、および/またはイオン性液体を含む溶液を含む。水溶液の例は、水および電解質塩を含む溶液を含む。電解質塩の例には、NaSO
4およびNaClO
4が含まれる。一部の実施形態では、化学化合物(例えば、金属塩)は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)内の液体に溶解して反応する。例えば、一部の実施形態では、炭酸カルシウムは、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)内の液体に溶解する、および/またはこの中で反応する。一部の実施形態では、炭酸カルシウムは、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)内の液体に溶解して反応する。例えば、
図2Aでは、化学化合物(例えば、金属塩)111(例えば、炭酸カルシウム)は、第1の領域(例えば、酸性領域)107に添加され、化学化合物(例えば、金属塩)111(例えば、炭酸カルシウム)は、化学化合物(例えば、金属塩)111(例えば、炭酸カルシウム)が溶解して、金属などの1つまたは1つより多くの元素を形成する(例えば、Ca
2+およびHCO
3
-またはCa
2+およびH
2CO
3を形成する)よう、第1の領域(例えば、酸性領域)107におけるプロトンと反応する。一部の実施形態では、1つまたは1つより多くの元素(例えば、Ca
2+などの金属)は、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106に移動し、ここで、この元素は、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106における水酸化物イオンと反応して、沈殿物112(例えば、Ca(OH)
2などの金属沈殿物)を形成する。一部の実施形態では、第1の領域は、酸性領域を含む。ある特定の実施形態では、第2の領域は、アルカリ性領域を含む。一部の実施形態によれば、化学化合物(例えば、金属塩)は、酸性領域に溶解し、1つまたは1つより多くの元素(例えば、Ca
2+などの金属)が、アルカリ性領域において反応する。他の実施形態では、第1の領域は、アルカリ性領域を含む。一部の実施形態では、第2の領域は、酸性領域を含む。ある特定の実施形態によれば、化学化合物(例えば、金属塩)は、アルカリ性領域に溶解し、1つまたは1つより多くの元素(例えば、Ca
2+などの金属)が、酸性領域において反応する。
【0096】
一部の実施形態によれば、本方法は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第2の領域(例えば、アルカリ性領域)から沈殿物を収集するステップを含む。ある特定の実施形態では、沈殿物は、金属水酸化物などの金属沈殿物を含む。金属水酸化物の非限定例には、水酸化ニッケル、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムが含まれる。例えば、上で示されている例では、1つまたは1つより多くの元素(例えば、Ca2+などの金属)は、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106に移動し、ここで、この元素は、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106において水酸化物イオンと反応して、沈殿物112(例えば、Ca(OH)2などの金属沈殿物)を形成する。したがって、一部の実施形態では、本方法は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)のアルカリ性領域から固体の水酸化カルシウムを収集するステップを含む。1つまたは1つより多くの元素(例えば、金属)が第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106に移動することができる方法の非限定例は、拡散、対流による輸送、および/または流れによる輸送を含む。
【0097】
一部の実施形態によれば、アルカリ性領域は、8もしくは8より高い、9もしくは9より高い、10もしくは10より高い、11もしくは11より高い、または12もしくは12より高いpHを有する。一部の実施形態によれば、アルカリ性領域は、14もしくは14未満、13もしくは13未満、12もしくは12未満、11もしくは11未満、または10もしくは10未満のpHを有する。これらの範囲の組合せもまた可能である(例えば、pH8~14(端点を含む))。
【0098】
ある特定の実施形態によれば、沈殿物は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)内に溶解および/またはこの中で反応した化学化合物(例えば、金属塩)に由来する1つまたは1つより多くの元素(例えば、金属)を含む。一部の実施形態では、1つまたは1つより多くの元素は、金属元素を含む。金属は、この文脈では、金属それ自体(metallic metal)または金属イオンを指す。一部の実施形態では、沈殿物は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)内で溶解したおよび/またはここで反応した金属塩に由来する金属カチオンを含み、この金属カチオンが沈殿物内のアニオンにイオン結合する。例えば、ある特定の実施形態では、固体の水酸化カルシウムは、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)内で溶解した、および/または反応した炭酸カルシウムに由来するカルシウムを含む。非限定例として、
図2Aでは、上で議論した通り、化学化合物(例えば、金属塩)111(例えば、炭酸カルシウム)は、第1の領域(例えば、酸性領域)107に添加され、化学化合物(例えば、金属塩)111(例えば、炭酸カルシウム)は、化学化合物(例えば、金属塩)111(例えば、炭酸カルシウム)が溶解して、金属などの1つまたは1つより多くの元素を形成する(例えば、Ca
2+およびHCO
3
-またはCa
2+およびH
2CO
3を形成する)よう、第1の領域(例えば、酸性領域)107におけるプロトンと反応する。一部の実施形態では、1つまたは1つより多くの元素(例えば、Ca
2+などの金属)は、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106に移動し、ここで、この元素は、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)106における水酸化物イオンと反応して、沈殿物112(例えば、Ca(OH)
2などの金属沈殿物)を形成する。したがって、沈殿物112(例えば、Ca(OH)
2などの金属沈殿物)は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)内に溶解して、反応した化学化合物(例えば、金属塩)111(例えば、炭酸カルシウム)に由来する1つまたは1つより多くの元素(例えば、金属)を含む。
【0099】
ある特定の実施形態によれば、本方法はセメントを製造する方法である。
【0100】
ある特定の実施形態によれば、本方法は、Ca(OH)
2(例えば、固体の水酸化カルシウム)および/もしくは石灰(例えば、固体の酸化カルシウム)ならびに/またはそれらの反応物生成物を窯内で加熱してセメントを製造するステップを含む。非限定例として、
図1Aでは、水酸化カルシウムが反応器101から収集された後に、水酸化カルシウムは、窯102内で加熱されて、セメントを製造することができる。一部の実施形態では、これは、反応器から水酸化カルシウムを取り出し、窯に直接入れるステップを含む。代替的に、ある特定の実施形態では、水酸化カルシウムを収集するステップと窯内で加熱するステップとの間にステップが存在する。例えば、
図1Bでは、水酸化カルシウムは、反応器101から収集された後、ヒータ103に向かう。一部の実施形態では、ヒータ103は、水酸化カルシウムをその酸化カルシウムへと変換し、次に、水酸化カルシウムおよび/または酸化物である酸化カルシウムが、窯102内で加熱される。一部の実施形態では、ヒータ103は、水酸化カルシウムをその酸化カルシウムへと100%(重量基準)変換し、酸化カルシウムだけが、窯102内で加熱される。他の実施形態では、ヒータ103は、水酸化カルシウムから酸化カルシウムへと、10%もしくは10%より高く、20%もしくは20%より高く、30%もしくは30%より高く、40%もしくは40%より高く、50%もしくは50%より高く、最大で90%まで、最大で95%まで、または最大で99%まで変換する。これらの範囲の組合せもまた可能である(例えば、10%~100%(重量基準)(端点を含む))。一部の実施形態では、水酸化カルシウムと酸化カルシウムの両方が、窯102内で加熱される。ヒータの例は、その内部に置かれた物質を加熱または脱水するデバイスを含む。
【0101】
一部の実施形態では、窯内でCa(OH)2(例えば、固体の水酸化カルシウム)および/もしくは石灰(例えば、固体の酸化カルシウム)ならびに/またはそれらの反応物生成物を加熱してセメントを製造するステップは、窯内でCa(OH)2(例えば、固体の水酸化カルシウム)および/もしくは石灰(例えば、固体の酸化カルシウム)ならびに/またはそれらの反応物生成物を他の化合物と加熱するステップを含む。例えば、Ca(OH)2(例えば、固体の水酸化カルシウム)および/もしくは石灰(例えば、固体の酸化カルシウム)ならびに/またはそれらの反応物生成物は、窯中で、SiO2または他の鉱物と共に加熱され得る。
【0102】
ある特定の実施形態では、セメントを製造する前に、Ca(OH)2(例えば、固体の水酸化カルシウム)および/もしくは石灰(例えば、固体の酸化カルシウム)ならびに/またはそれらの反応物生成物を窯内で加熱するステップの後に次のステップが存在する。例えば、ある特定の実施形態では、窯の後に冷却ステップが存在する。
【0103】
一部の実施形態によれば、本方法は、バッチプロセスの部分である。ある特定の実施形態では、沈殿物(例えば、Ca(OH)2などの金属水酸化物)は、反応器から定期的に収集される。ある特定の実施形態によれば、この方法は連続的に行われる。一部の実施形態では、化学化合物(例えば、CaCO3などの金属炭酸塩などの金属塩)は、アノードおよび/または第1の領域(例えば、酸性領域)において、連続的にまたは定期的に添加される。ある特定の実施形態では、沈殿物(例えば、Ca(OH)2などの金属水酸化物)は、連続的にまたは定期的に収集される。沈殿物(例えば、Ca(OH)2などの金属水酸化物)を収集するステップの非限定例は、沈殿物を流れストリームにより収集するステップ、および/または沈殿物が連続的にまたは定期的に収集される表面への堆積を可能にするステップを含む。
【0104】
一部の実施形態によれば、本方法は、沈殿物とは異なる副生成物を生成する。例えば、一部の実施形態では、本方法は、固体の水酸化カルシウムおよび/または固体の酸化カルシウムとは異なる副生成物を生成する。一部の実施形態では、副生成物は、CO
2、O
2および/またはH
2を含む。例えば、
図2Aでは、副生成物108は、カソード104で生成し、副生成物109は、アノード105で生成する。一部の実施形態では、副生成物108は、H
2(g)を含む。一部の実施形態では、副生成物109は、O
2(g)および/またはCO
2(g)を含む。例えば、一部の実施形態では、加水分解は反応器101において行われ、カソードにおいて起こる反応は、2つのH
2O分子および2個の電子をH
2(g)(副生成物108)および2つのOH
-に変換する一方、アノードで起こる反応は、2つのH
2O分子をO
2(g)(副生成物109)、4個の電子および4つのプロトンに変換する。ある特定の実施形態では、化学化合物(例えば、金属塩)111(例えば、炭酸カルシウムなど(such)の金属炭酸塩)は、第1の領域(例えば、酸性領域)107に加えられ、化学化合物(例えば、金属塩)111(例えば、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩)は、第1の領域(例えば、酸性領域)107におけるプロトンと反応し、こうして化学化合物(例えば、金属塩)111(例えば、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩)が溶解して、1つまたは1つより多くの元素(例えば、金属)が形成する。一部の実施形態では、CaCO
3と2つのプロトンとの間の正味の反応は、H
2O、Ca
2+およびCO
2(g)(副生成物109)の形成をもたらす。
【0105】
ある特定の実施形態によれば、本方法は、副生成物を収集するステップをさらに含む。例えば、一部の実施形態では、副生成物は、CO2、O2およびH2を含む。ある特定の実施形態では、副生成物を収集するステップは、CO2、O2およびH2のそれぞれを収集するステップ:CO2だけを収集するステップ;O2だけを収集するステップ;H2だけを収集するステップ;CO2およびO2を収集するステップ;CO2およびH2を収集するステップ;またはO2およびH2を収集するステップを含む。例えば、ある特定の実施形態では、副生成物はCO2を含み、副生成物を回収するステップは、CO2を隔離するステップを含む。
【0106】
一部の実施形態によれば、副生成物は燃料として使用される。一部の実施形態では、H2は燃料として使用することができる。非限定例には、H2を直接、燃焼させること、またはH2を天然ガスなどの燃料と共に使用することを含む。一部の実施形態では、O2およびCO2を使用して、化石燃料などの燃料の燃焼を支持する。一部の実施形態では、副生成物は、窯用の燃料として使用される。例えば、一部の実施形態では、O2およびCO2は窯に供給されて、化石燃料などの燃料の燃焼を支持する。ある特定の実施形態では、H2、O2およびCO2は、固体酸化物の燃料電池などの燃料電池中で反応させる。ある特定の実施形態では、H2およびO2は、燃料電池中で反応させて、電力を発生させる。
【0107】
一部の実施形態によれば、本明細書に記載されている反応器、システムおよび方法は、1つまたは1つより多くの有益な特性を示し、1つまたは1つより多くの用途を有する。例えば、本明細書に記載されている反応器、システムおよび方法の一部の実施形態は、セメント(例えば、ポルトランドセメント)を生産するために使用することができる。例えば、一部の実施形態では、反応器は、従来のセメント製造プロセスにおける焼成の代わりに使用される。
【0108】
さらに、本明細書に記載されている反応器、システムおよび方法のある特定の実施形態は、大気汚染物質またはCO2などの温室効果ガスの生成が従来のセメント生産プロセスよりも少ない、セメント生産に使用することができる。従来のセメント生産プロセスは、熱的手段によるCaCO3の焼成を含んでおり、これは、CO2排出量の約60%を占める一方、CO2排出量の約40%は、焼成プロセスおよび焼結プロセスを行うために化石燃料を燃焼することに起因する。
【0109】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている方法、反応器および/またはシステムにより生産されるCa(OH)2は、CaCO3からCaOへの従来の焼成の代わりに、セメント製造のためのCaOを生産するために使用することができる。Ca(OH)2のCaOへの熱的脱水は、CaCO3のCaOへの熱焼成(97.0kJ/mol)よりも、25%低い最低エネルギーの必要量(71.2kJ/mol)を有する。
【0110】
ある特定の実施形態によれば、反応器および/またはシステムは、再生可能電気(例えば、太陽エネルギー、風力エネルギーおよび/または水力発電)によって、一部または全体が、電力供給される。
【0111】
ある特定の実施形態によれば、オキシ燃焼、窯効率の改善、NOx排出量の低減、および/または炭素回収および隔離(CCS)に好適な煙道ガスを含めた、多数の使用可能性を有する、CO2、H2および/またはO2などの副生成物が生成する。したがって、一部の実施形態では、副生成物は、販売または使用され得る。
【0112】
一実施形態では、電気分解により推進される化学反応器は、水の電気分解のための電気分解セルを備える。
図5に示される通り、このようなセルは、電気分解を行うと、カソードにおいて高いpHを生じ、ここで水素発生反応(HER)が起こり、OH
-が生成し、アノードにおいて低いpHを生じ、ここで酸素発生反応(OER)が起こり、H
+を生成する。したがって、ある特定の実施形態によれば、pHの勾配が、カソードとアノードとの間に発生する。このような他の電気分解用セルにおいて、他の化学種の勾配が、電気分解反応の性質に応じて発生し得る。
【0113】
一実施形態では、前記pH勾配を使用して、アノードの近傍の低いpHで金属炭酸塩を溶解し、カソードにおけるより高いpH環境の方向に金属イオンが拡散するにつれて、金属水酸化物が沈殿する。一部のこのような実施形態では、
図6に示されている通り、金属炭酸塩がアノード近傍で溶解するにつれて、CO
2ガスが生成して、炭酸塩の金属カチオンが溶液中で生成する。次に、一部のこのような実施形態によれば、これらは拡散するか、または対流もしくは流れによって、カソードにおけるHERによって発生した高いpH環境の方向に、必要に応じて輸送される。
図7に示されている通り、および一部の実施形態によれば、金属イオンとカソードにおいて生成したOH
-イオンとの反応は、金属水酸化物の沈殿をもたらす。一部の実施形態によれば、各電極において起こる電気化学反応および化学反応、ならびに総合的な反応は、
図8に示されている。大部分の任意の金属炭酸塩または金属炭酸塩の混合物は、このようなプロセスにより、その水酸化物(単数または複数)に変換され得、金属炭酸塩の非限定例は、CaCO
3、MgCO
3およびNiCO
3を含む。一部のこのような実施形態では、開始金属炭酸塩からの金属水酸化物の生成と同時に、水素ガスがカソードにおいて遊離し、酸素ガスと二酸化炭素ガスとの混合物が、アノードで遊離する。
【0114】
1つまたは1つより多くの実施形態では、反応器は、バッチで稼働され、これにより、生成物である金属水酸化物が定期的に収集される。
図9は、このような1つの収集方法を例示しており、これにより、分離チャンバが、沈殿した金属水酸化物を収集する目的で、2本の電極の間に設けられる。1つまたは1つより多くの実施形態では、反応器は、追加の金属炭酸塩が、アノードにおいて連続的にまたは定期的に添加され、沈殿した金属水酸化物が、この反応ゾーンから連続的にまたは定期的に取り除かれるような連続法で稼働される。例えば、沈殿した金属水酸化物は、流れストリームを使用して反応ゾーンから取り除かれて、収集されてもよく、または沈殿物は、
図9にあるなどの、反応器が連続的に稼働している間に連続的にまたは定期的に取り除かれる表面に堆積することが可能となり得る。
【0115】
図3A、10および3Bは、H型セル反応器が上記のように使用される例を示している。この例示的な実施形態では、NiCO
3が投入炭酸塩として使用され、Ni(OH)
2が、生成物である水酸化物として生成する。この例示的な実施形態では、汎用的なpH指示体を加えて、炭酸ニッケルを添加する前の、電気分解セルによって発生したpH勾配を例示している(
図3A)。このような例示的な実施形態では、アノードチャンバへの炭酸ニッケルの添加後に、水酸化ニッケルが、H型セルの中央で沈殿し、ここで溶解したニッケルイオンは、OH
-化学種と反応する(
図3B)。
【0116】
図4A~4Cは、本発明の反応器が、CaCO
3からCa(OH)
2を生成するために使用される一例を示している。ここでもやはり、この例示的な実施形態では、沈殿物は、H型セルの中央で形成される。この沈殿物は、例示的な実施形態では、X線回折によって、Ca(OH)
2であることが確認される。
【0117】
一部の実施形態では、電気化学反応器によって生成する水素ガスおよび/または酸素ガスは、有利なことに、使用または販売される。一部の実施形態では、水素および酸素は、燃料電池中で反応させて、電力を発生させる。一部の実施形態では、水素は、反応器または窯または炉を加熱する目的で、燃料としてまたは燃料の構成成分として燃焼される。
【0118】
一部の実施形態では、前記電気分解により推進される化学反応器を実施するための電力は、以下に限定されないが、太陽エネルギー、風力エネルギーまたは水力発電を含めた、再生可能資源から発生される。
【0119】
一実施形態では、前記電気化学により推進される化学反応器を使用して、CaCO
3を脱炭酸化し、ポルトランドセメントを含めた、セメント生産の前駆体としてCa(OH)
2を生成する。
図11は、熱エネルギーのみ使用する従来のセメント生産と比較した、本発明のある特定の実施形態を利用するセメント生産プロセスの例である。両者の総エネルギー消費量を比較し、消費されるエネルギーおよびその炭素強度の形態を考慮することが有用である。単純にするため、CaOをアルミノシリケートおよび他の構成成分と反応させて、ポルトランドセメントを形成させる高温での加熱処理は、2つのプロセスで同一であると仮定する。CaCO
3の熱焼成により生成するCaOを導くためのエネルギー消費量、および電気化学による脱炭酸とその後の900Cという同じ開始温度までのCa(OH)
2の熱的脱水によるエネルギー消費量を考察する。反応物または生成物を所与の温度まで加熱するために投入されるモルあたりのエネルギーは、その熱容量から算出する。分解反応を行うためのモルあたりのエネルギーは、反応の標準自由エネルギーとして与えられる(すなわち、ガス分圧は、1atmである)。
【0120】
この例では、CaCO3の熱焼成の場合の1モルあたりのエネルギーと、Ca(OH)2の熱的脱水の場合の1モルあたりのエネルギーとを比較すると、後者は、97.0kJ/モルに対して72.1kJ/モルという25%少ない最小エネルギー必要量を有する。この例では、電気化学的プロセスは、74.3kJ/モルという標準自由エネルギーで、CaCO3がCa(OH)2に変換される脱炭酸反応をやはり含む。これは、電気化学的プロセスの場合、追加的なエネルギー消費となる。しかし、この例示的なプロセスおよび電気分解反応は、ほぼゼロとなる電気の限界コストで、低炭素またはゼロ炭素再生可能資源に由来する電気によって電力供給され得る。
【0121】
この例示的なプロセスでは、反応器を稼働させるために必要な電気分解反応は、237.1kJ/モルを必要とする。しかし、このエネルギーは、やはり低炭素源によって最初に発生されて、次に付加価値製品として離れて使用することができるか、または例えば、燃料電池を使用して電源を供給することによって、セメント生産プロセスに電力供給するために使用することができるか、または燃焼プロセスにより反応熱を供給する水素および酸素を生じる。発生したエネルギーを使用して、電解槽を稼働するか、または高温窯を加熱することができる。
【0122】
一部の実施形態では、消石灰としても知られている水酸化カルシウム、および/または水と反応して消石灰を生成する酸化カルシウムを反応器から収集し、以下に限定されないが、製紙、煙道ガス処理炭素回収、しっくいミックスと石工(ポゾランセメントを含む)、土壌安定化、pH調節、水処理、廃棄物処理および製糖を含めた、用途に使用される。以下は、水酸化カルシウム(消石灰としても知られている)および/または酸化カルシウム(石灰としても知られている)の使用の非限定例である。
1.冶金用途
a)鉄系金属
【0123】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、鉄および/または鋼の製造に使用される。例えば、鉄および/または鋼の製造では、石灰をフラックスとして使用し、鉄および/または鋼が酸化するのを防止するスラグを形成し、シリカ、ホスフェート、マンガンおよび硫黄などの不純物を除去することができる。一部の場合、消石灰(乾燥体、またはスラリーとして)は、鉄および/または鋼の製造時にダイからワイヤまたはロッドを引き抜くための潤滑体として、付着を防止するためのキャスト成形用金型へのコーティング剤として、および/または腐食を防止するための鋼製品へのコーティング剤として使用される。一部の例では、石灰または消石灰は、酸性廃棄物を中和するためにも使用される。
b)非鉄金属
【0124】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、以下に限定されないが、銅、水銀、銀、金、亜鉛、ニッケル、鉛、アルミニウム、ウラン、マグネシウムおよび/またはカルシウムを含めた、非鉄金属の製造に使用される。石灰は、一部の場合、融剤として使用されて、鉱石に由来する不純物(シリカ、アルミナ、ホスフェート、カーボネート、硫黄、サルフェート)を除去することができる。例えば、石灰および消石灰は、非鉄鉱石の浮選または回収に使用することができる。ある特定の場合、石灰は、沈殿助剤として作用し、適切なアルカリ性を維持し、および/または不純物(硫黄および/またはケイ素など)を除去する。一部の例では、銅、亜鉛、鉛および/または他の非鉄鉱石の溶練および精錬では、硫黄ガスを中和するため、および/または硫酸の形成を予防するために消石灰が使用される。ある特定の例では、石灰および/または消石灰はまた、金属表面へのコーティング剤として、硫黄化学種との反応を防止するために使用される。ある特定の場合、アルミニウムの生産では、石灰および/または消石灰は、ボーキサイト鉱石から不純物(シリカおよび/またはカーボネートなど)を除去するために使用される、および/またはpHを調節するために使用される。一部の例では、石灰は、シアン化物の抽出において、金、銀および/またはニッケルを溶出するためのアルカリ性pHを維持するために使用される。亜鉛の生産では、石灰は、ある特定の場合、還元剤として使用される。一部の場合、カルシウム金属および/またはマグネシウム金属の生産では、酸化マグネシウムおよび/または酸化カルシウムは、高温で還元されて、マグネシウム金属および/またはカルシウム金属を形成する。
2.建築
a)石工(ポルトランドセメント以外)
【0125】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、石工モルタル、しっくい、スタッコ、水しっくい、グラウト、レンガ、ボードおよび/または非ポルトランドセメントの製造に使用される。これらの用途では、ある特定の実施形態では、石灰および/または消石灰は、他の添加物と混合されて、二酸化炭素に曝露され、炭酸カルシウムを生産することができ、石灰および/または消石灰は、他の添加物(アルミノシリケートなど)と反応させて、セメント系材料を形成することができる、ならびに/または石灰および/もしくは消石灰はカルシウム源として使用することができる。モルタル、しっくい、スタッコおよび水しっくいの例では、一部の場合、石灰および/または消石灰は、添加物および/または凝集物(砂など)と混合されて、水が蒸発すると、ならびに石灰および/または消石灰が大気の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを形成すると硬化するペースト/スラリーを形成する。水硬性ポゾランセメントの場合、ある特定の場合、石灰および/または消石灰は、アルミネート、シリケートおよび/または他のポゾラン系材料(例えば、粉燃料灰、火山灰、高炉スラグおよび/または焼成粘土)と反応させて、不溶性カルシウムアルミノシリケートが形成されると硬化する水をベースとするペースト/スラリーを形成する。他の水硬性セメントの場合、一部の例では、石灰および/または消石灰は、ケイ酸二カルシウム、アルミン酸カルシウム、ケイ酸三カルシウムおよび/またはケイ酸一カルシウムを含めた、セメント系化合物が形成されるよう、シリカ源、アルミナ源および/または他の添加物と高温で反応させる。一部の場合、灰砂レンガは、消石灰をシリカ源(例えば、砂、粉砕珪質石および/またはフリント)および/または他の添加物を、ケイ酸カルシウムおよび/またはケイ酸カルシウム水和物を形成するために必要な温度で反応させることによって製造される。一部の場合、軽量コンクリート(例えば、エアクリート)は、石灰および/または消石灰を、反応性シリカ、アルミニウム粉末、水および/または他の添加物と反応させることにより製造される。消石灰とシリケート/アルミネートとの間の反応は、ケイ酸カルシウム/アルミン酸カルシウムおよび/またはケイ酸カルシウム水和物の形成を引き起こす一方、水、消石灰およびアルミニウムとの間の反応は、硬化ペースト内に水素気泡を形成させる。水しっくいは、消石灰の懸濁液から製造される白色コーティング剤であり、これは、消石灰が大気からの二酸化炭素と反応するにつれて、硬化して固まる。一部の場合、ケイ酸カルシウム形成材料(例えば、石灰、消石灰、シリカおよび/またはセメント)および添加物(例えば、セルロース繊維および/または難燃剤)および水が一緒に混合されて、形状にキャストまたは圧縮されると、ケイ酸カルシウム板、コンクリートおよび他のキャストしたケイ酸カルシウム製品が形成される。一部の場合、高温を使用して、石灰、消石灰および/もしくはシリカを反応させる、ならびに/またはセメントを水和させる。
b)土壌安定化
【0126】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、土壌を安定化するため、硬化するためおよび/または乾燥するために使用される。例えば、石灰および/または消石灰は、道路、滑走路および/または線路の建設前に、緩いまたは微粉砕した土壌に適用されてもよく、および/または土手および/もしくは斜面を安定化するために適用されてもよい。一部の場合、石灰が粘土土壌に適用される場合、ポゾラン反応が粘土と石灰との間に起こり、ケイ酸カルシウム水和物、および/またはアルミン酸カルシウム水和物を生産することができ、これらは、土壌を強化および/または硬化する。ある特定の例では、土壌に施用される石灰および/または消石灰はまた、二酸化炭素と反応して、固体の炭酸カルシウムを生成し、これはまた、土壌を強化および/または硬化することができる。一部の場合、石灰は水と容易に反応して、消石灰を形成するので、石灰はまた、建設現場における湿った土壌を乾燥するためにも使用することができる。
c)アスファルト添加物およびアスファルトの再利用
【0127】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、アスファルトを製造するため、および/または再利用するために使用される。例えば、一部の場合、消石灰は、無機充填剤および/または抗酸化剤として、および/または水のストリッピングに対する耐性を向上させるためにホットミックスアスファルトに添加される。ある特定の場合、消石灰は、アルミノシリケートおよび/または二酸化炭素と反応して、アスファルトにおける結合剤と凝集物との間の結合を改善する固体生成物を作製することができる。無機充填剤として、一部の例では、石灰は、結合剤の粘度、アスファルトの剛性、アスファルトの引張強度および/またはアスファルトの圧縮強度を向上することができる。ある特定の例では、道路の水硬性結合剤として、石灰は、水分感度および/またはストリッピングを低下させて結合剤を硬化し、その結果、石灰は、ラッティング(rutting)に耐性を示す、ならびに/または低温での破壊に対する靭性および/もしくは耐性を改善することができる。一部の例では、再利用アスファルトに添加される石灰および/または消石灰は、一層大きな早期強度および/または水分損傷に対する耐性をもたらす。
3.廃棄物処理、水処理、ガス処理
a)ガス処理
【0128】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、酸性ガス(塩化水素、二酸化硫黄、三酸化硫黄および/またはフッ化水素など)の除去、および/またはガス混合物(例えば、煙道ガス、大気、保管室の空気、および/または潜水艦などの密閉呼吸環境中の空気)からの二酸化炭素の除去に使用される。例えば、一部の場合、石灰および/または消石灰は、煙道ガスに曝露され、石灰および/または消石灰と煙道ガス(塩化水素、二酸化硫黄および/または二酸化炭素を含む酸性ガスなど)の構成成分との反応を引き起こし、非ガス状カルシウム化合物(塩化カルシウム、亜硫酸カルシウムおよび/または炭酸カルシウムなど)の形成をもたらす。ある特定の実施形態では、ガスの消石灰への曝露は、消石灰の溶液および/またはスラリーをガスに噴霧することによって、および/またはガスストリームを乾燥石灰および/または消石灰と反応させることによって行われる。ある特定の実施形態では、酸性ガス(複数可)を含有するガスストリームは、最初に、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウム)の溶液と反応させて、可溶性中間化学種(炭酸カリウムなど)を形成し、この化学種は、続いて、石灰および/または消石灰と反応させて、固体のカルシウム種(炭酸カルシウムなど)を生成して元のアルカリ金属水酸化物溶液を再生する。一部の実施形態では、石灰および/または消石灰と二酸化炭素またはアルカリ炭酸塩との反応から形成される炭酸カルシウムは、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法に戻され、その結果、石灰および/または消石灰は再生成することができる、および/または二酸化炭素は隔離され得る。
b)非ガス状廃棄物処理
【0129】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、生物学的廃棄物、産業廃棄物、廃水および/またはスラッジなどの廃棄物を処理するために使用される。一部の場合、石灰および/または消石灰は廃棄物に適用されて、アルカリ性環境を造りだし、これは、酸性廃棄物を中和する、病原体を阻害する、ハエまたはげっ歯類を防ぐ、臭気を制御する、漏れを防止する、ならびに/または汚染物質(重金属、クロム、銅および/または懸濁固体/溶解固体など)および/もしくはスケーリングを引き起こす溶解イオン(カルシウムイオンおよび/またはマグネシウムイオン)を安定化するおよび/もしくは沈殿させるよう働く。ある特定の例では、石灰は、油性廃棄物を脱水するために使用されてもよい。一部の場合、消石灰は、ホスフェート、ニトレートおよび/または硫黄化合物などのある特定の化学種を沈殿させるため、ならびに/または漏出を予防するために使用されてもよい。ある特定の例では、石灰および/または消石灰は、加水分解に都合のよいアルカリ性条件を維持することによって、有機物質の分解を早めるために使用することができる。
c)水処理
【0130】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、水を処理するために使用される。例えば、石灰および/または消石灰は、一部の場合、アルカリ性環境を生成するために使用することができ、これは、殺菌するよう、懸濁材料および/またはコロイド状材料を除去するよう、硬度を低下させるよう、pHを調節するよう、水硬度に寄与するイオンを沈殿させるよう、溶解金属(鉄、アルミニウム、マンガン、バリウム、カドミウム、クロム、鉛、銅および/またはニッケルなど)を沈殿させるよう、および/または他のイオン(フッ化物イオン、硫酸アニオン、亜硫酸アニオン、リン酸アニオンおよび/または硝酸アニオンなど)を沈殿させるよう働く。
4.農業および食物
- 農業
【0131】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は農業に使用される。例えば、石灰および/または消石灰は、一部の場合、単独で、または肥料中の添加物として使用されて、土壌および/または肥料混合物のpHを調節して最適生育条件をもたらす、および/または収穫量を改善することができる。
- 糖
【0132】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、糖を精製するために使用される。例えば、一部の場合、石灰および/または消石灰は、生砂糖ジュースのpHを向上するため、生砂糖ジュースの酵素を破壊するため、ならびに/または無機化学種および/もしくは有機化学種と反応させて沈殿物を形成するために使用される。過剰のカルシウムは、ある特定の例では、二酸化炭素を用いて沈殿させることができる。ある特定の場合、生じる沈降炭酸カルシウムは、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法に戻されて、消石灰を再生成することができる。
- 革
【0133】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、革および/またはパーチメントを製造するために使用される。革製造プロセスでは、一部の場合、石灰は、皮膚から毛髪および/またはケラチンを除去する、ファイバを裂く、および/または脂肪を除去するために使用される。
- 接着剤、ゼラチン
【0134】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、接着剤および/またはゼラチンを製造するために使用される。接着剤および/またはゼラチンの製造プロセスでは、一部の場合、動物の骨および/または皮膚は、消石灰に浸漬され、コラーゲンおよび他のタンパク質を加水分解し、様々な分子量のタンパク質断片の混合物を形成させる。
- 乳製品
【0135】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、乳製品を生産するために使用される。一部の場合、消石灰は、低温殺菌の前に、クリームの酸性を中和するために使用される。ある特定の場合、消石灰は、カゼインの酸性溶液からカゼインカルシウムを沈殿させるために使用される。一部の例では、消石灰は、発酵済み脱脂粉乳に添加されて、乳酸カルシウムを生産する。
- 果物産業
【0136】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、果物産業に使用される。例えば、消石灰および/または石灰は、一部の場合、果実の保管時に空気から二酸化炭素を除去するために使用される。一部の例では、消石灰は、廃棄物のクエン酸を中和するため、および果実液のpHを向上させるために使用される。
- 殺虫剤/殺真菌剤
【0137】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、殺真菌剤および/または殺虫剤における添加物として使用される。例えば、消石灰は、硫酸銅と混合されて、殺有害生物剤である四銅硫酸塩を形成することができる。一部の場合、石灰はまた、その炭酸塩として葉面にフィルムを形成して、葉面に殺虫剤を保持するので、他の種類の殺有害生物剤の担体として使用することもできる。一部の例では、消石灰は、カキ養殖場における、ヒトデの侵襲防除に使用される。
- 食品添加物
【0138】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、食品添加物として使用される。一部の場合、石灰および/または消石灰は、酸性度の調節剤として、酸洗剤として使用されて、セルロース(例えば、トウモロコシなどの穀粒から)を除去するため、および/またはブラインからある特定のアニオン(炭酸アニオンなど)を沈殿させることができる。
5.化学品
【0139】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、化学品を製造するために使用される。例えば、石灰および/または消石灰は、数あるものの中でも、カルシウム源および/またはマグネシウム源、アルカリ、乾燥剤、苛性化剤、けん化剤、結合剤、凝集剤および/または沈殿剤、融剤、ガラス形成剤、有機物質の分解剤、滑沢剤、充填剤および/または加水分解剤として使用されてもよい。
a)無機カルシウム化合物
- 沈降炭酸カルシウム
【0140】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、沈降炭酸カルシウムを製造するために使用される。一部の例では、消石灰の溶液および/もしくはスラリー、ならびに/またはカルシウムイオンの溶液を二酸化炭素および/またはアルカリ炭酸塩と反応させ、その結果、炭酸カルシウムおよび/および炭酸マグネシウムの沈殿物を形成させる。ある特定の例では、沈殿した炭酸アルカリ金属塩は、充填剤として使用され、収縮を軽減する、粘着性を改善する、密度を向上させる、レオロジーを改変する、および/またはプラスチック(PVCおよびラテックスなど)、ゴム、紙、ペンキ、インク、化粧品および/または他のコーティング剤を白くする/明るくすることができる。沈殿した炭酸塩は、一部の場合、難燃剤または粉剤として使用することができる。ある特定の場合、沈降炭酸カルシウムは、農業用アルカリ化剤として、防腐剤、小麦粉添加物、醸造添加物、消化補助剤、および/または瀝青製品用添加物、研磨剤(クリーナー、洗剤、磨き粉および/または歯磨き粉中)、殺有害生物剤中の分散剤、および/または乾燥剤として使用することができる。
- 次亜塩素酸カルシウム
【0141】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、塩素を石灰および/または消石灰と反応させることによって、次亜塩素酸カルシウム、漂白剤を製造するために使用される。
- 炭化カルシウム
【0142】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、高温で石灰を炭素物質(例えば、コークス)と反応させることによって、アセチレンの前駆体である炭化カルシウムを製造するために使用される。
- リン酸カルシウム
【0143】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、適切な比率でリン酸を消石灰および/または水性カルシウムイオンと反応させることによって、リン酸カルシウム(リン酸一カルシウム、リン酸二カルシウムおよび/またはリン酸三カルシウム)を製造するために使用される。一部の場合、リン酸一カルシウムは、セルフライジングフラワー、ミネラル強化食品中の添加物として、ミルク製品の安定剤として、および/または飼料添加物として使用されてもよい。一部の例では、リン酸二カルシウム二水和物は、歯磨き粉中で、軽度の研磨剤として、食料品のミネラル強化のため、ペレット化助剤として、および/または増粘剤として使用される。ある特定の例では、リン酸三カルシウムは、歯磨き粉中で、ならびに/または食料品および/もしくは肥料中の固結防止剤として使用される。
- 臭化カルシウム
【0144】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、臭化カルシウムを製造するために使用される。これは、一部の場合、石灰および/または消石灰を臭化水素酸および/または臭素、ならびに還元剤(例えば、ギ酸および/またはホルムアルデヒド)と反応させることによって行われる。
- ヘキサシアノ鉄酸カルシウム
【0145】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、塩化第一鉄の水溶液中、石灰および/または消石灰をシアン化水素と反応させることによって、ヘキサシアノ鉄酸カルシウムを製造するために使用される。次に、ヘキサシアノ鉄酸カルシウムは、アルカリ金属塩またはヘキサシアノ鉄酸塩に変換することができる。これらは、顔料および固結防止剤として使用される。
- カルシウムシリコン
【0146】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、高温で石灰、石英および/または炭素系材料を反応させることによって、カルシウムシリコンを製造するために使用される。一部の場合、カルシウムシリコンは、脱酸素剤として、脱硫黄剤として、および/または鉄系金属における非金属含有物を改変するために使用される。
- 二クロム酸カルシウム
【0147】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、クロム酸塩鉱石を石灰と共に焙焼することによって、二クロム酸カルシウムを製造するために使用される。
- タングステン酸カルシウム
【0148】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、石灰および/または消石灰をタングステン酸ナトリウムと反応させることによって、レーザー、蛍光灯および/もしくはオシロスコープなどの物品のためのフェロタングステンおよび/またはリン光体の生産に使用される、タングステン酸カルシウムを製造するために使用される。
b)有機カルシウム化合物
- クエン酸カルシウム
【0149】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、石灰および/または消石灰をクエン酸と反応させることによって、クエン酸カルシウムを製造するために使用される。一部の場合、クエン酸カルシウムは、硫酸と反応させて、純粋なクエン酸を再生成することができる。
- カルシウム石鹸
【0150】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、消石灰を脂肪族酸、ワックス酸、不飽和カルボン酸(例えば、オレイン酸、リノール酸、エチルヘキサン酸)、ナフテン酸および/または樹脂酸と反応させることによって、カルシウム石鹸を製造するために使用される。一部の場合、カルシウム石鹸は、滑沢剤、安定剤、離型剤、防水剤、コーティング剤および/または印刷インク中の添加物として使用される。
- 乳酸カルシウム
【0151】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、消石灰を乳酸と反応させることによって、乳酸カルシウムを製造するために使用される。ある特定の例では、乳酸は、第2のステップにおいて、硫酸と反応させて、純粋な乳酸を生産することができる。一部の例では、これらの化学品は、凝固剤および発泡剤として作用する。一部の場合、乳酸カルシウムは、医薬剤および/もしくは食料品におけるカルシウム源として、ならびに/または緩衝剤として使用される。
- 酒石酸カルシウム
【0152】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、消石灰をアルカリ酒石酸水素塩と反応させることによって、酒石酸カルシウムを製造するために使用される。一部の場合、酒石酸水素カルシウムは、第2のステップにおいて、硫酸と反応させて、純粋な酒石酸を生産することができる。ある特定の例では、酒石酸は、食料品、医薬調製物において、ならびに/またはしっくいおよび/もしくは金属研磨剤における添加物として使用される。
c)無機化学品
- 酸化アルミニウム
【0153】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、酸化アルミニウムを製造するために使用される。石灰は、酸化アルミニウムの調製における、加工したボーキサイト鉱石から、不純物(例えば、シリケート、カーボネートおよび/またはホスフェート)を沈殿させるために使用される。
- アルカリ炭酸塩および炭酸水素塩
【0154】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、アンモニア-ソーダ法における、アルカリ塩化物からアルカリ炭酸塩および/または炭酸水素塩を製造するために使用される。このプロセスでは、一部の場合、石灰および/または消石灰は、塩化アンモニウム(および/または塩化イソプロピルアンモニウムなどの塩化アンモニウム)と反応させて、アンモニア(および/またはアミン)とアルカリ塩化物との反応後に、アンモニア(および/またはイソプロピルアミンなどのアミン)を再生成させる。一部の場合、得られた塩化カルシウムは、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法からのアルカリ性ストリームと反応させて、消石灰を再生することができる。
- 炭酸ストロンチウム
【0155】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、炭酸ストロンチウムを製造するために使用される。一部の例では、石灰および/または消石灰は、アンモニアを炭酸化して、硫酸ストロンチウムと反応させた後に形成される硫酸アンモニウムからアンモニアを再生成するために使用される。
- ジルコン酸カルシウム
【0156】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、ジルコン酸カルシウムを製造するために使用される。一部の場合、石灰および/または消石灰は、ジルコンであるZrSiO4と反応させて、ケイ酸カルシウムおよびジルコン酸カルシウムを生産し、ジルコン酸カルシウムをさらに精製する。
- アルカリ水酸化物
【0157】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、苛性化または再苛性化と多くの場合に呼ばれるプロセスにおいて、アルカリ炭酸塩からアルカリ水酸化物を製造するために使用される。一部の場合、消石灰はアルカリ炭酸塩と反応させて、アルカリ水酸化物および炭酸カルシウムを生産する。アルカリ炭酸塩を苛性化するプロセスは、一部の例では、ボーキサイト鉱石の精製、炭酸油の処理およびクラフト液サイクル(この場合、炭酸ナトリウムを含む「緑液」が消石灰と反応して水酸化ナトリウムを含む「白液」を形成する)を含めた、他のいくつかのプロセスの特徴的なものである。
- 水酸化マグネシウム
【0158】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、水酸化マグネシウムを製造するために使用される。一部の場合、マグネシウムイオン(例えば海水および/またはブライン溶液)を含む溶液に消石灰を添加すると、水酸化マグネシウムが溶液から沈殿する。
d)有機化学品
- アルケン酸化物
【0159】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、アルケン酸化物を作製するために使用される。一部の例では、石灰は、プロピレンクロロヒドリンおよび/またはブテンクロロヒドリンをけん化または脱塩化水素化し、対応する酸化物を生産するために使用される。次に、この酸化物は、一部の例では、酸加水分解によってグリコールに変換することができる。
- ジアセトンアルコール
【0160】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、ジアセトンアルコールを製造するために使用される。一部の場合、消石灰は、アルカリ触媒として使用され、アセトンの自己縮合を促進し、ジアセトンアルコールを形成し、これは、樹脂の溶媒として、および/またはメシチルオキシド、メチルイソブチルケトンおよび/またはヘキシレングリコールの生成における中間体におけるものとして使用される。
- ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステル、ペンタエリスリトール
【0161】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、塩基性触媒として、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステルおよび/またはペンタエリスリトールを作製するために使用される。
- アントラキノン染料および中間体
【0162】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、アントラキノン染料および/または中間体の製造において、塩基性試薬として、スルホン酸基を水酸化物で置き換えるために使用される。
- トリクロロエチレン
【0163】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、テトラクロロエタンから塩素を除去して、トリクロロエチレンを形成するために使用される。
6.多岐にわたる用途
- シリカ、炭化ケイ素およびジルコニア耐火物
【0164】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、シリカ、炭化ケイ素および/またはジルコニア耐火物の製造における、結合剤、接合剤および/または安定化剤として使用される。
- 石灰グラス
【0165】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、ソーダ石灰ガラスの製造における、石灰源として使用される。一部の例では、石灰および/または消石灰は、シリカ、炭酸ナトリウム、ならびに/またはアルミナおよび/もしくは酸化マグネシウムなどの添加物を含めた、他の原料と共に高温に加熱される。一部の例では、溶融混合物は、冷却時にガラスを形成する。
- 白陶器およびガラス質エナメル
【0166】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、白陶器および/またはガラス質エナメルを製造するために使用される。ある特定の場合、消石灰は粘土とブレンドされて、フラックス、ガラス形成体として作用する、物質を結合する一助となる、および/または最終製品の白さを増強する。
- キャスト成形および引き抜きのための潤滑剤
【0167】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、材料のキャスト成形および/または引き抜き(鉄、アルミニウム、銅、鋼および/または貴金属など)ための潤滑剤として使用される。一部の例では、カルシウムをベースとする潤滑剤は、高温で使用されて、金属が金型に付着するのを防止する。ある特定の場合、潤滑剤は、カルシウム石鹸、石灰のブレンドおよび他の物質とすることができる(ケイ酸、アルミナ、炭素、ならびに/または蛍石および/もしくはアルカリ酸化物などのフラックス剤を含む)。消石灰は、一部の場合、潤滑剤担体として使用される。ある特定の例では、消石灰は、ワイヤの表面に接合し、表面粗さを増大させる、および/または引き抜き化合物の粘着性を改善する。
- 掘削泥水
【0168】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、掘削泥水の配合物において、高いアルカリ性を維持する、および/または非プラスチック状態の粘土を維持するために使用される。掘削泥水は、一部の場合、石油およびガスを求めて岩を掘削する際に、中空のドリルチューブから汲み上げることができる。ある特定の例では、掘削泥水は、表面へのドリル用ビットによって生じた岩の断片を運ぶ。
- 油添加物および潤滑油
【0169】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、油添加物および/または潤滑油として使用される。一部の例では、石灰は、アルキルフェネートおよび/または有機スルホネートと反応させて、カルシウム石鹸を製造し、この石鹸は、他の添加物とブレンドして、油添加物および/または潤滑油を製造する。一部の場合、石灰をベースとする添加物は、スラッジの蓄積を防止し、とりわけ高温での燃焼生成物に起因する酸性度を低下させる。
- パルプおよび紙
【0170】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、パルプおよび/または製紙産業に使用される。例えば、消石灰は、クラフト法に使用されて、炭酸ナトリウムを水酸化ナトリウムに再苛性化される。一部の場合、この反応から形成する炭酸カルシウムは、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法に戻されて、消石灰を再生成することができる。ある特定の例では、消石灰はまた、パルプ化のスルファイトプロセスにおいてアルカリ源として使用されて、液を調製することができる。ある特定の場合、消石灰は、硫酸の溶液に添加されて、亜硫酸水素塩を形成する。一部の場合、硫酸およびビスルファイトの混合物を使用して、パルプを消化する。消石灰はまた、ある特定の例では、使用済みスルファイト液からリグノスルホン酸カルシウムを沈殿させるためにも使用することができる。
- アクアリウム
【0171】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、海のアクアリウムおよび/またはサンゴ礁の成長のための、カルシウム源および/アルカリ源として使用される。
- 蓄熱法
【0172】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、熱化学エネルギー貯蔵のため(例えば、自己発熱食品容器および/またはソーラー蓄熱のため)に使用される。
- 難燃剤
【0173】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される水酸化カルシウムおよび/または水酸化マグネシウムは、絶縁ケーブルおよび/またはプラスチックの絶縁体への添加物である難燃剤として使用される。
- 抗微生物剤
【0174】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、抗微生物剤として使用される。例えば、一部の例では、石灰および/または消石灰は、壁、床、寝わらおよび/または動物舎などの、疾患により汚染された区域を処置するために使用される。
【0175】
以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態を例示することが意図されているが、本発明の全範囲を例示しているわけではない。
【実施例】
【0176】
(実施例1)
セメント生産は、現在、CO2の最大の単一産業排出者であり、2015年では、全CO2排出量の8%(2.8Gトン/年)を占める。セメント生産の大幅な脱炭酸は、CaCO3のCaOへの分解と焼成(約900℃)および焼結(約1,450℃)プロセスにおける化石燃料の燃焼(主に石炭)の両方によるCO2排出量の改善を必要とする。この実施例は、CaCO3が低いpHにおいて脱炭酸され、Ca(OH)2が中性から高いpHで沈殿し、同時にアノードにおいて高純度O2/CO2ガス混合物(例示されている化学量論量の作用では、1:2モル比)およびカソードではH2を生成する、pH勾配を生じる中性水の電気分解を使用する電気化学的プロセスを実証している。固体Ca(OH)2生成物は、容易に分解し、SiO2と反応して、ポルトランドセメントにおける大部分のセメント相であるエーライトを形成する。この電気化学的焼成手法は、高濃度ガスストリームを生成し、このガスストリームから、CO2が容易に分離されて、隔離され、H2および/またはO2が、燃料電池または燃焼器により、電力を発生させるために使用することができ、O2は、セメント窯におけるオキシ燃料の構成成分として使用されて、CO2およびNOx排気量をさらに低下させることができるか、または産出ガスは、液体燃料生産を含めた他の付加価値プロセスに使用され得る。解析により、反応器により生成した水素が燃焼されて、高温窯を加熱するというシナリオにおいて、電気化学的セメントプロセスが、再生可能電気によって単に電力供給され得ることが示される。
【0177】
セメントは、体積基準で最も広範囲に生産されている人工材料であり、二酸化炭素の最大の単一の工業的生成者であり、現在、人為的温室効果ガス排出量の約8%を排出している。本発明者らのエネルギーシステムの大幅な脱炭酸は、このような工業源に対処することなく達成することができない。この実施例は、回収、電力発生、オキシ燃料の燃焼または液体燃料合成に適した、高濃度CO2、H2およびO2ガスストリームを生成すると同時に、セメント合成に好適な、ポルトランドセメントのカギとなるCO2排出構成成分であるCaCO3をCa(OH)2前駆体に分解する電気化学をベースとするプロセスを実証する。この提案された電気化学的合成手法は、再生可能電気を使用し、他の開発中の持続可能な技術と相乗的に働くことができる。
【0178】
今日のエネルギーシステムの大幅な脱炭酸化には、エネルギー生成(世界の温室効果ガス排出量の24%)および輸送(世界の温室効果ガス排出量の14%)セクターだけでなく、現在、世界の温室効果ガス排出量の約21%の原因である、大型産業などの脱炭酸化が困難なセクターにも対処する必要がある。業界は、化石燃料を、熱のため、化学反応の推進のためおよび還元剤として使用しているが、以下:1)代替電気が利用可能になる、および2)再生可能電力のコストおよび信頼性が改善し続ける場合、化石燃料への依存度を下げるように動機付けられる可能性がある。この実施例は、CaCO
3を脱炭酸し、固体のCa(OH)
2を沈殿させ、これから所望のケイ酸カルシウムを合成し、CO
2の回収および隔離に適する、および/または他の付加価値プロセスに使用されるH
2およびO
2+CO
2の高濃度ガスストリームを生成した、周囲温度での電気化学をベースとするプロセスを実証する(
図12)。
【0179】
図12は、ある特定の実施形態による、排気量の少ない、電気化学をベースとするセメントプラントの概略図である。再生可能電気によって電力供給される電気化学的脱炭酸セルは、CaCO
3をセメント合成に使用されるCa(OH)
2に変換する。脱炭酸セル(
図13を参照されたい)は、酸性アノードにおいて、CaCO
3を溶解し、Ca(OH)
2を沈殿(pH≧6)させるため、中性の水の電気分解によって生じる中性pHの勾配を使用する。同時に、H
2がカソードにおいて生成し、O
2/CO
2がアノードにおいて生成する。これらのガスストリームは、持続可能な生産システムにおけるいくつかの代替的な役割を果たすことができる。CO
2は、本質的に高濃度ストリーム(CCS)から直接、回収され得る。電気または熱は、燃料電池または燃焼器によって、H
2およびO
2から発生させることができる。O
2/CO
2オキシ燃料は、セメント焼結サイクルにおける、よりクリーンな燃焼のために窯に再循環させることができる。原油増進回収(EOR)または液体燃料の生産における使用などの、CO
2の再利用および利用(CO
2U)という概念を使用することができる。
【0180】
セメント(具体的には、ポルトランドセメント)は、世界中で、1年あたり40億メートルトンの割合で生産されている、最も幅広く生産されている人工材料である。セメント産業は、温室効果ガスの最大の工業源(農業以外;製鋼がやや後に続く)であり、世界の温室効果ガス排出量の8%を現在、占める。セメント製造において排出されたCO2の約半分は、重要な構成成分として、CaCO3(一般に、石灰岩)の使用に起因しており、その残りは主に、セメント窯における化石燃料の燃焼により排出される。世界の人口が増加し、一層、都市化されるにつれて、および新興経済国がインフラストラクチャを開発するにつれて、セメントの需要が高まる。2060年までに、地球上の建築物の数は2倍になると予想されている。これは、今後40年間、34日ごとにニューヨーク市と同等なものを建設することに等しい。セメント各1kgの生産は、ほぼ1kgのCO2を排出するので、1年あたり約4GトンのCO2が、このような新しいインフラストラクチャから放出され、セメント生産の脱炭酸化の緊急性が浮き彫りになっている。
【0181】
現在、セメントプラントからの煙道ガスは、アミンスクラビングによる経済的な炭素回収を行うには純度が低すぎる。代替燃料(使用済みタイヤなど)の使用は、CaCO3からの一次排出量を緩和しない。補助セメント材料も同様に、ポルトランドセメントの炭素影響をある程度、弱めることができるに過ぎず、同時にその物理的特性を損なう可能性がある。これらの方法は、現在まで、幅広く採用されてこなかった。別の一連の手法は、炭酸塩に富むセメントまたはコンクリート製品を生産するために、CO2源を使用することに焦点をあてたものである。上記の手法とは対照的に、ある特定の実施形態による電気化学をベースとする手法は、化学的なおよびエネルギーに関連するCO2源の両方を軽減し、低コストな再生可能電気の出現を利用して、許容された世界的に採用されているセメント製品を生産する可能性を有する。一部の実施形態では、本明細書において開示されているプロセスは、風力および太陽光からの低コストの再生可能電気、水分解と燃料の生成、ならびに化学エネルギーおよび電気エネルギーの貯蔵を含めた、持続可能なエネルギーシステムの他の科学的および技術手段と相乗的に機能することができる。
【0182】
この実施例において、反応器は、固有のpH勾配を使用して、CaCO
3脱炭酸およびCa(OH)
2沈殿および収集を行う電気分解セルに基づくものであった(
図13)。CaCO
3の焼成に必要なエネルギーよりも、CaOを脱水するのに必要なエネルギーが少ない、この方法で生産されるCa(OH)
2は、容易にSiO
2と反応し、ポルトランドセメントにおける主要活性相(50~70重量%)であるエーライトを生産する。実験室スケールの反応器の化学量論に近い作用(この場合、2つのプロトンごとに、酸素を発生するアノードにおいて、脱炭酸された1式単位のCaCO
3を電気分解により生成した)が実証された。一部の実施形態では、この電気化学的脱炭酸反応器が、再生可能電気、ならびに1)実質的に高濃度のCO
2ストリームの直接的な回収および隔離、2)燃料電池または燃焼器によるH
2(および、必要に応じてO
2)からの電気または熱の発生、3)セメントの焼結サイクルにおけるよりクリーンな燃焼となるためのオキシ燃料の供給、および4)液体燃料の生産などの、いくつかの代替的な機能のいずれかにおいて発生したガスの使用による電力供給を含めた、低炭素またはゼロ炭素放出セメントプラント(
図12)に統合され得る、いくつかの経路が存在する。再生可能電気のコストの関数としてのこのようなプロセスのエネルギー消費量および燃料コストの一次技術経済分析を提示する。
【0183】
図13は、ある特定の実施形態による、本実施例に使用した電解槽をベースとする脱炭酸セルの概略図である。反応1aおよび1bは、ほぼ中性のpH下で、それぞれ、酸素発生および水素発生の半電池反応である。反応2aおよび2bは、炭酸カルシウムの分解およびCO
2の放出を表す。反応3は、その構成成分イオンに由来する水の通常の形成である。反応4では、反応3における水酸化物イオンは、代わりに、水酸化カルシウムが形成する方向に進み、プロトンは、炭酸イオンをプロトン化する(反応2b)。CaCO
3が、水素、酸素および二酸化炭素の付随的な放出を伴ってCa(OH)
2に変換された全体の反応が下に示されている。最大収率では、この反応の化学量論は、2つのCaCO
3がCa(OH)
2へと変換するOER(反応1a)によって生成する4つのプロトンをそれぞれ有し、ガス状化学種は、下の反応に示されている比で生成する:酸素各1モルに対して2モルの水素がカソードで生成し、アノードにおいて2モルの二酸化炭素が生成する。
【0184】
この実施例に使用した脱炭酸セルは、電解槽および化学反応器として同時に機能して、
図13に概略的に例示されている固体CaCO
3を固体Ca(OH)
2に変換し、
図14A~Jにおいて実験的に実証した。ほぼ中性の水を使用して稼働する電解槽は、以下のアノードおよびカソードの半電池反応を有した:
2H
2O→O
2+4H
++4e
- (1)
2H
2O+2e
-→H
2+2OH
- (2)
【0185】
定常状態では、
図14A~14Jに示されている通り、この電解槽は、可動中のH型セルに汎用的なpH指示体を添加すると、容易に可視化されたpH勾配を生じた。このような電解槽では、
図13中の反応3により例示されている通り、H
+およびOH
-は、正常に再結合して水を形成するであろう。しかし、本反応器は、反応3を脱炭酸反応により置き換えた。CaCO
3が、電気分解中にアノードの近傍において生じた酸性溶液に添加されると、以下の一連の化学反応により、化学的脱炭酸が起こった:
【化1】
【0186】
その濃度勾配を低下させて、より高いpHの方向へと自然に分散する溶解したCa
2+(式3)は、次に、OH
-との反応時にCa(OH)
2として溶液から沈殿した(
図13における反応4):この反応は、pH6未満で有利である。このセル中で行われた電気分解反応および化学反応のまとめは、以下である:
2CaCO
3(s)+4H
2O
(l)→2Ca(OH)
2(s)+2H
2(g)+O
2(g)+2CO
2(g) (7)
【0187】
本明細書で使用する場合、この反応器の化学量論の作用は、電気分解の間に生成する2モルのプロトン(式1)がそれぞれ、式7に示されている通り、1モルのCaCO3を1モルのCa(OH)2に変換する状態である。これは、最大可能収率またはクーロン効率となる。化学量論量の作用では、生成したガスの比はまた、式7によって示される:生成した各1モルのCa(OH)2は、カソードにおいて、1モルのH2およびアノードにおいて1:2のモル比のO2:CO2の発生をもたらす。
【0188】
この例では、CO
2は、ガス状生成物として遊離されて、回収および隔離されるか、または他のプロセスに使用され、Ca(OH)
2は、セメント生産に使用するために沈殿させた。Ca(OH)
2は、セメント生産だけではなく、製糖、パルプおよび製紙、炭酸カリウムの製造、廃水浄化のため、および鋼精錬におけるフラックス剤としても重要な構成成分である。それらの産業では、Ca(OH)
2は、通常、CaCO
3の焼成によって得られたCaOの消和によって生産される。しかし、一部の実施形態では、Ca(OH)
2は、直接的なCO
2回収を可能にしながら、本明細書において開示されている脱炭酸反応器を使用するこれらの用途のために直接、生産され得る。提唱したスキームを試験するために、一連の実験室のH型セルの反応器を構築した。
図14A~21Eは、白金電極を用いて組み立てた、蒸留水中、1M NaNO
3からなる電解質を使用する反応器であって、ここに汎用pH指示体を数滴添加した、反応器の低速撮影画像を示している。図の下部に、色とpHを相関させる色スケールを示す。アノードチャンバは、固体CaCO
3粉末を含有し、
図14F~14Jのセルとは対照的に、チャンバ間に多孔質分離器を使用しなかった。
図14Aでは、黄色い色調は、電解質がCaCO
3の粉末床の真上を除き、最初は、どこも約pH6となったことを示しており、紫色の色調は、炭酸塩の部分溶出によりpHが約10まで向上したことを示した。
図14B~14Eは、セル電圧が2.5Vであり、電流が約6mAである、定電位状態下で電気分解を開始した後の、様々な時間間隔でのセルを示している。色の勾配により、経時的に、各チャンバにおいて一層極端なpH値に達する一層急激なpH勾配が発生しており、予想される半電池反応と一致することが示された(
図1および2)。しかし、架橋管内の溶液を詳しく試験すると、上側に酸性(ピンク色)溶液、下側にアルカリ性(紫色)溶液があり、2つの溶液間の密度の違いに起因する明確な層化が示された。このセルの立体構成では、Ca(OH)
2は、白金ワイヤのカソード表面を直接含む、セルの長さ方向に沿って沈殿することが観察され、このカソードは、最終的に不動態化された。稼働して数時間後、不動態化により、セル電流の急激な低下がもたらされた。
【0189】
図14A~14Jは、ある特定の実施形態による、白金電極、および電解質として脱イオン水中の1M NaNO
3を使用する、脱炭酸H型セルの低速撮影画像である。各セルは、pH指示体の色素を数滴含んでおり、この場合の色スケールが下に示されている。
図14A~Eは、アノード(左)チャンバ中にCaCO
3粉末を含有しており、両チャンバ間に多孔質分離器のないセルを示している。2.5Vに固定したセル電圧(約6mAの電流)での電気分解の間、発生した色勾配は、予期した半電池反応と一致しており(
図13を参照されたい)、アノード(左)において酸性溶液およびカソード(右)においてアルカリ性溶液を生じた。架橋管の詳細な試験により、溶液が層化(理論によって拘泥されることを望むものではないが、層化は、密度により推進される対流により起こると考えられる)されており、上側に酸性(ピンク色)溶液が、下側にアルカリ(紫色)溶液が存在していることが示された。
図14F~Iは、多孔質繊維製の分離器が、両方のチャンバで使用されて対流を制限する脱炭酸セルを示している。さらに、CaCO
3粉末源は、取り外し可能なカップ内に入れられており、その結果、その重量減少(乾燥後)を測定することができた。層化がないことに留意されたい。
図14Jは、12時間の電気分解後に、架橋管中で沈殿したCa(OH)
2を示している。9Vという高いセル電圧をこの実施例に使用して、この反応を加速させた。
【0190】
図14F~14Iは、同じセル設計であるが、対流を制限するために架橋管を有する各チャンバの交差点に置かれた多孔質紙製分離器を有するセル設計を示している。さらに、このセル中のCaCO
3粉末源は、取り外し可能なカップ内に入れられており、その結果、CaCO
3の時間の関数としての溶出量を、残存粉末(乾燥後)を取り出して秤量することによって測定することができた。層化がないことに留意されたい。対流混合の非存在下では、セルはカソードのCa(OH)
2による不動態化なしに、>12時間、稼働可能であった。このセルでは、アルカリ性溶液がセル全体に均一な前面として拡散し、定常状態の稼働では、架橋管内のpHは、Ca(OH)
2の沈殿が両分離器の間で主に起こる程、十分に高く、この場所で、分析を行うためのCa(OH)
2が容易に収集された。この立体構成では、アノード周辺のpHの酸性はずっと低く(すなわち、ピンク色は観察されなかった)、実際に、pH約6を示す、黄色に近いものであったないことにも留意されたい。6は、HCO
3
-およびCO
2(aq)が平衡にある大体のpHである。この観察により、酸素発生反応において生成した実質的にすべてのプロトン(式1)が、炭酸イオンとの反応によって消費されることが示唆され(式4)、これは、以下に一層詳細に議論されている、独立した測定により後に確認された。さらに、産出ガスの組成は、ガスクロマトグラフィーによって確認した。
【0191】
図14F~14Iにおけるセル設計を使用し、
図14Jに示されている通り、カソードの前において、有意な量の白色沈殿物を多孔質紙製の分離器表面から直接、収集した。
図15Aに示されている通り、乾燥時に、粉末X線回折(XRD)を使用すると、沈殿物は少量のCaCO
3(リーベルト法に基づくと6%)を含む、主にCa(OH)
2であることが確認された。Brunauer-Emmett-Teller(BET)分析により、この沈殿物は、0.8m
2/gの比表面積を有することが示された。理論によって拘泥されることを望むものではないが、不純物のCaCO
3は、XRDのために微粉末試料を調製する際に、Ca(OH)
2が空気に曝露した際に、または可溶性のHCO
3
-の一部が、OH
-と接触した際に脱プロトン化されてCaCO
3を再形成した際に形成された可能性があると考えられる。走査型電子顕微鏡(SEM)により、Ca(OH)
2粒子は、3種の異なる特徴的な長さ規模で結晶化したことが示された。
図15Bに示されている、最も大きな単離された結晶は、数10マイクロメートルの寸法を有し、Ca(OH)
2に特徴的な六角柱形状を示す。次にサイズスケールが大きいものは、
図15Cおよび
図15Dに示される通り、数マイクロメートルの寸法を有するが、類似した六角柱形状をしている、はるかに微細な結晶の凝集物であった。最後に、
図15Eおよび15Eに示されている通り、丸みを帯びた小結節形状を有する沈殿物が存在し、これにより、より高い倍率で、サブマイクロメートルスケールの結晶であることが明らかになった。理論によって拘泥されることを望むものではないが、Ca(OH)
2沈殿物の3種の異なる形状の外観は、核生成および成長条件は反応器内で幅広く変わることを示唆していると考えられる。しかし、生成した粒子の実質的にすべてが、セメント生産における粗製ミックスに典型的な<90μmという規格未満の範囲に収まった。エネルギー分散型X線分析による組成分析により、微量のNaを除き、Ca(OH)
2のバックグラウンドレベルを超える不純物は示されず、この反応器の電解質に使用したNa塩に起因している可能性がある。したがって、本実施例において使用した手法は、微細な高純度のCa(OH)
2微粒子を生産することが可能であった。
【0192】
図15A~15Fは、ある特定の実施形態による、脱炭酸反応器により製造されたCa(OH)
2粉末を示す図である。
図15Aは、典型的な試料からの粉末X線回折パターンを示しており、このリーベルト法は、94%のCa(OH)
2および6%のCaCO
3からなることが示された。
図15B~Fは、粉末が3種の特徴的な長さスケールからなるCa(OH)
2結晶を含有することを示すSEM画像である。
図15Bは、最も大きなCa(OH)
2の結晶は、数十マイクロメートルの寸法、およびこの化合物に特徴的な六角形柱形状を有したことを示している。
図15Cは、
図15Dにおけるより高い倍率で示されている、より小さなCa(OH)
2の結晶の凝集物は、類似した六角柱形状を有したが、マイクロメートルの寸法であることを示している。
図15Eは、
図15Fのより高い倍率で、サブマイクロメートルスケールの結晶であることを示した、丸みを帯びた小結節形状を有するCa(OH)
2であることを示している。
【0193】
一連の実験を行い、化学量論限界と比較した、反応器のクーロン効率を特徴づけた。各実験において、1MのNaClO
4またはNaNO
3の塩のどちらか一方、および同じ開始量のCaCO
3粉末を使用して、新しい電解質と共に、H型セル反応器を組み立てた。この反応器は、1~14時間、定電圧条件(3.5V)下で稼働させて、この後、CaCO
3含有カップを反応器から取り外し、乾燥して秤量し、化学溶出に失われたCaCO
3の量を得た。電気分解速度がセル電流に等しい(すなわち、副反応がない)と仮定して計算した、13の実験からの結果を、この実験期間にわたる電流を積分することにより得られた流れたクーロン数(上側の横軸)およびH
2ガス当量(下側の横軸)に対する、溶解したCaCO
3のモル数として
図16にプロットした。
図16の赤い破線は、OER反応におけるアノードにおいて生成した2つのプロトンずつが、1つの炭酸イオンをプロトン化する化学量論量反応を表す。各データ点のエラーバーは、スケールの精度に基づいた累積秤量誤差に相当する。データ点のすべてによる最小二乗法をあてはめると、最大値1に対して、化学反応速度の電気分解速度に対する比が0.85となった。これは、本実施例に使用した手法が、最適化されていない実験室スケールの反応器を使用した場合でさえも、高いクーロン効率を有することを実証した。両方の電解質について、最長時間のデータ(右端のデータ点)は効率の低下を示しており、これは、他の実験が、長い反応器の稼働時間では、Ca(OH)
2によるカソードの不動態化によるものであることを示唆する。データ点のいくつかは、最大理論効率の線より上にあることに留意されたい。理論によって拘泥されることを望むものではないが、この逸脱は、反応器からCaCO
3含有カップを取り除いている間に、CaCO
3のいくらかの不注意な喪失に起因すると考えられる。これらの実験において生成したCa(OH)
2の量は、セル内に沈殿したすべてのCa(OH)
2を回収し(例えば、セル壁から)、紙製の分離器表面の沈殿物のすべてを効率よく除去することが難しいため、直接測定しなかった。そのような場合でも、本実施例の効率は、流入するCaCO
3の約90%を脱炭酸する従来のセメント予備焼成装置の熱効率に近いものであった。
【0194】
図16は、
図13中のタイプの新しく組み立てたH型セルから各々始めた13の実験から測定した、ある特定の実施形態による、脱炭酸反応器のクーロン効率を示す図である。反応器内の電力源であるCaCO
3の質量損失から測定された溶出CaCO
3の質量を、すべての電流が電気分解に向かうと仮定して計算した、このシステムを通過した総電荷(上の横軸)およびカソードで生成された水素のモル当量(下側の横軸)に対してプロットした。赤い破線は、電荷基準での最大変換効率をもたらす化学量論反応を表し、黒い破線は、実験データへの最小二乗法のあてはめを表し、その傾きは、約85%のクーロン効率に相当する。
【0195】
ある特定の実施形態による、対流および化学的勾配を一層強力に制御し、沈殿したCa(OH)2をより効率的および連続的に収集する反応器を設計することができる。例えば、一部の実施形態では、電解二酸化マンガン(EMD)プロセスと同様に、沈殿物は、電極が破壊して落下する原因となる厚さに達するまで、電極の表面に蓄積し続けることが可能となり得、沈殿物は、電極が落ちる際またはその後に収集される。一部の実施形態では、プレート電極またはH型セルの立体構成の反応器の場合、両電極間を流れる液体電解質のストリームは、沈殿物をフィルターまたは流れベースの分離器または遠心分離器まで対流させて沈殿物を分離することができ、次に、この操作を繰り返すために液体を反応器に再循環させることができる。一部の実施形態では、電極の1本が中央の支柱または内側のシリンダーであり、第2の電極が外側のシリンダーである同心電極反応器の設計では、両電極間の電解質の軸方向の流れを使用して、沈殿物を濾過またはフロー分離または遠心分離などによる収集点まで運搬することができる。このような流れベースの沈殿法では、液体の対流は、液体のポンプ注入などによって能動的に、または温度もしくは電解質の密度の勾配を使用して受動的に実施することができる。一部の実施形態では、温度または電解質の密度における前記勾配は、反応器自体の操作によって発生される。
【0196】
提案された脱炭酸反応器の有効性を実証したので、次に、ポルトランドセメントの前駆体としてのその固体Ca(OH)
2製品の適性を評価した。50~70重量%を構成する、ポルトランドセメントにおいて最も重要で豊富な鉱物は、エーライト、すなわち3CaO・SiO
2である。Ca(OH)
2とSiO
2微粉末の混合物、およびエーライトに対応する3:1のモル比で、同じSiO
2と混合した購入したCaCO
3粉末を使用する対照試料を調製した。次に、これらの混合粉末試料に、幅広い範囲の温度にわたり加熱処理を施した。
図17Aおよび17Bは、空気中、2時間、600℃まで加熱した後の、Ca(OH)
2+SiO
2混合物のXRDパターンおよびSEM画像を示す。898℃(1atmのP
CO2)まで分解しないCaCO
3とは異なり、Ca(OH)
2は、512℃(1atm P
H2O)の熱力学分解温度を有しており、本実施例では、600℃で燃やした際に、すでにCaOに分解したが、CaOは、依然としてSiO
2と反応して、エーライトを形成することはなかった。この混合物は、典型的なセメントの窯温度である1,500℃で2時間、加熱した後に反応して、
図16CにおけるXRDパターンによって示されている通り、エーライト(ICSD:4331)の低温T1多形を形成した。エーライトの多形は、原料中の不純物の性質および量、ならびに窯温度からの冷却速度に依存することが知られている。高温M1およびM2の多形が、商業プロセスにおいて一層一般に得られるが、T1多形は、まさにセメント質と見なされている。
図17Dは、本実施例において開示された前駆体から生成したエーライト粒子は、30μm未満のサイズであり、これは、市販のポルトランドセメントにとって望ましい範囲内にある。
図17Eおよび17Fは、カルシウムおよびケイ素の組成マップを示しており、このマップから、エーライトの組成上の均質性は明白であった。
図18Aおよび18Bは、空気中、2時間、600℃まで加熱した後の対応するCaCO
3およびSiO
2混合物のXRDパターンおよびSEM画像を示しており、
図18Cおよび18Dは、空気中、2時間、800℃まで加熱した後の結果を示している。600℃では、有意な分解は起こらなかった一方、800℃では、CaCO
3はCaOに分解したが、エーライトへの反応は始まらなかった。2時間、1500℃まで加熱した後の、
図18Eおよび18FのXRDは、エーライト相が形成されたことを示している。しかし、XRDスペクトルのリーベルト法によれば、6%の未反応CaOがいくらか残留した。
図18FにおけるSEM画像は、
図17Dと比較した場合、Ca(OH)
2およびCaCO
3由来のエーライトは、最終的に、同様の粒子形態およびサイズに到達したことを示している。これらの結果は、脱炭酸反応器から電気化学により生成したCa(OH)
2は、ポルトランドセメントにおける主要な水和ケイ酸カルシウム相を合成するための好適な前駆体であったことを示している。さらに、微細沈殿物の形状(例えば、粉砕石灰岩との比較)、およびその>300℃というより低い分解温度のために、本明細書において開示されている脱炭酸反応器から電気化学的に生成したCa(OH)
2は、CaCO
3に比べて、反応性が改善されているように思われ、このことは、高温反応ステップでエネルギー消費量を低下させる、燃焼時間および/または温度の低下と言い換えることができる。
【0197】
図17A~17Eは、ある特定の実施形態による、脱炭酸反応器において生産されたCa(OH)
2を使用するエーライトである3CaO-SiO
2の合成を示している。
図17Aは、X線回折パターンである。
図17Bは、空気中で2時間、600Cまで加熱した後のCa(OH)
2およびSiO
2の混合物のSEM画像である。Ca(OH)
2は、CaOに分解したが、依然として、SiO
2と反応して、エーライト相を形成することはなかった。2時間、1500Cで焼いた後、
図17Cは、X線回折パターンは単相エーライトであることを示したことを示しており、この形状は、
図17DにおけるSEM画像に示されている。
図17Eおよび
図17Fにおけるカルシウムおよびケイ素の組成マップは、それぞれ、どちらの元素も一様に分布していることを示している。
【0198】
図18A~Eは、CaCO
3およびSiO
2を使用する、エーライトの合成を示している。
図18Aは、空気中で2時間、600Cまで加熱した後のX線回折パターンを示しており、
図18Bは、SEM画像を示しており、この画像は、Ca(OH)
2を用いて作製された混合物とは異なることを示しており、
図17Aは、この場合、CaCO
3がCaOにまだ分解されなかったことを示している。空気中で2時間、800Cまで加熱した後の、
図18CにおけるX線回折パターンは、CaCO
3はCaOに分解したが、依然として、SiO
2と反応して、エーライト相を形成することはなかったことを示している。
図18Dは、このCaOおよびSiO
2の粉末混合物のSEM画像を示している。空気中で2時間、1500Cまで焼いた後のX線回折パターンである
図18Eは、エーライトと一部残留したCaOとの混合物であることを示した。
図18Fは、この不完全に反応した混合物のSEM画像を示している。
【0199】
セメント合成に好適な反応性Ca(OH)2の生産に加え、本実施例に開示されている電気分解をベースとする脱炭酸反応器は、カソードにおいてH2の高濃度ガスストリーム、ならびにアノードにおいてO2およびCO2(高いクーロン効率で稼働した場合、1:2のモル比で)を生成した。これらのガスは、現在、世界中で求められている幅広い範囲の持続可能な技術における重要な構成要素であり、これは、セメント生産とこれらの技術との間の、いくつかの可能な相乗効果の道を開くものである。
【0200】
一部の実施形態では、ある特定の実施形態による脱炭酸反応器からのO2/CO2ストリームを一本化して、これらのプロセスを一層高い効率にすることができる。燃焼後回収とは、カルシウムループ、アミンスクラビングおよび膜濾過など、窯の排気ガスからCO2を回収する技術を指す。オキシ燃料燃焼、または酸素により増強した燃焼とは、空気の代わりに酸素中での化石燃料(この場合、主に石炭)の燃焼を指す。空気の窒素含有物は、加熱する必要がないので、オキシ燃焼は、燃料効率の改善を最初にもたらす。第2に、窒素が存在しないことにより、酸化窒素類(NOx)を排出することなく、より高い火炎温度が可能となり、酸化窒素類は、質量基準でCO2の298倍となる地球温暖化係数を有しており、スモッグ、酸性雨およびオゾン層破壊の一因でもある。第3に、オキシ燃料の燃焼からの煙道ガスは、より高い濃度のCO2を有し、NOx不純物をほとんど有さず、炭素回収を一層効果的にする。一部の実施形態では、ある特定の実施形態による手法を使用するセメントプラントでは、反応器によって生成したO2およびCO2ガス混合物は、高温窯でのオキシ燃料として使用し、エネルギー消費量およびNOx排出量を低下させことができる。
【0201】
従来のセメント窯からの煙道ガス中のCO2の濃度は、約25%である。本明細書において開示されている脱炭酸セルからのガスストリームは、最大で67%のCO2濃度まで上昇し、これは、原理的に、アミンスクラビングを一層効率的にすると思われる。一部の実施形態では、本明細書において開示されているある特定のプロセスの利益は、アミンスクラビングのような高価なCCSプロセスを完全に回避することができることである。一部の実施形態では、本明細書において開示されているある特定のプロセスでは、CO2は、O2およびいくらかのH2O蒸気のみと混合された、非常に高濃度の形態で送達されるので、精製されて濃縮されたCO2の燃焼後の回収に現在使用されているものと同じ単純な圧縮プロセスを使用する、反応器からの直接的な回収を使用することができる。
【0202】
一部の実施形態では、本明細書において開示されているある特定の脱炭酸セルにおいて、カソードで生成する水素ガスは、いくつかの方法で実現され得る価値を有する。供給原料としての水素は、アンモニアおよび肥料の生産、石油およびガス精製、および冶金プロセスなどの主要産業に重要であり、大型輸送、航空および暖房を脱炭酸化することができる技術を開発するカギとなる構成要素と考えられる。一部の実施形態では、脱炭酸セルからの水素は、付加価値製品としてこのような産業に供給することができる。一部の実施形態では、ガスストリームは、水素をやはり使用するもの、およびアルコールを生成するものなどの、液体燃料を生産するCO2利用プロセスに使用することもできる。
【0203】
一部の実施形態では、水素はまた、セメントプロセスを支持するよう元に戻すこともできる(
図12)。水素は、ある特定の場合、セメント操作に熱または電力を戻して供給するよう直接、燃焼され得る。または、一部の例では、H
2およびO
2/CO
2ガスストリームは、電気化学反応器、または、粉砕、混合および取り扱いなどの他のプラント操作に電力供給するよう、現場で電気を発生させる燃料電池を供給することができる。一部の実施形態では、すべての燃料電池のタイプの最高の電気効率(60~80%)を有するSOFCを使用することによって、プロトン交換膜(PEM)燃料電池に及ぼすCO
2の悪影響を回避することができ、500~1,000℃の温度で稼働する典型的なSOFCは、セメント窯からの熱を使用して容易に維持することができる(これは、通常、1,450~1,500℃で稼働する)。同時に、一部の場合、酸素は、O
2/CO
2ガス流から除去することができ、精製したCO
2の隔離をさらに単純化する。
【0204】
ある特定の実施形態によれば、脱炭酸セルから生成したCO2ストリームもまた、関心の高まっている分野である、回収されたCO2をアップサイクルする用途でも価値を有する可能性がある。CO2は、油の回収(OER)を強化するため、ならびにウレア、サリチル酸、メタノール、炭酸塩、合成燃料(フィッシャートロプッシュ法による)および合成天然ガス(サバティエ反応による)などの化学品を製造するために使用することができる。
【0205】
一部の実施形態では、電気化学をベースとするセメント製造プロセスは、再生可能電気を純粋に使用して稼働することができる。ある特定の実施形態では、脱炭酸反応器の産出ガスを使用する最も資本集約的ではない方法は、セメント窯を加熱するための燃焼によるものとすることができる。この立体構成におけるエネルギーの流れを解析した。詳細がSIで与えられている。脱炭酸反応器が85%のクーロン効率で稼働し、電解槽が60~75%の効率で稼働し、得られたH2およびO2が燃焼して、焼結窯を60~80%の効率で加熱すると仮定すると、セメント1kgを製造するために必要な投入電気エネルギーは、5.2~7.1MJである。これは、高温焼結プロセスでCaCO3をCa(OH)2に置き換えることに起因するエネルギー上の利点も、他の補助的な利点もないことを前提にしている(例えば、一部の実施形態では、高温焼結窯での効率的な反応に十分小さい粒子サイズまで石灰石を粉砕するなどのセメント「生粉」を調製する資本およびエネルギーコストは、この機能が化学的溶出により置き換えられた、電気化学プラントでは低減され得る)。一部の場合、脱炭酸セルから生成したH2およびO2の80%燃焼効率では、生成した熱エネルギーは、焼結に必要なエネルギーをわずかに超える。燃焼が60%の効率である場合では、ある特定の例では、焼結に必要な熱エネルギーの90%は、電解槽ガスから供給され得る(すなわち、約0.5MJ/kgの補助エネルギーが必要である)。一部の実施形態では、このエネルギー不足、および稼働を支持するための電力は、脱炭酸化に厳密に必要な容量を超える過剰の電解槽容量で補うことができる。焼結はセメント製造において最もエネルギー集約的なプロセスであるため、この分析は、一部の実施形態では、再生可能エネルギーを動力源とする電気化学的セメントプロセスは、もしあれば、大量の補足エネルギーを必要としないことを示す。
【0206】
電気化学をベースとするプロセスのコストは、立体構成に依存し、その多数の可能な立体構成が上で議論されている。一部の場合、システム全体またはそのサブユニットのいずれかの生涯コストと経済的利益は、資本コスト、効率および耐久性、ならびにセメントおよびガス状副産物の価値に依存する。一部の場合、脱炭酸反応器の生涯コストは、その特異的な設計および性能に依存する。しかし、ある特定の実施形態による電気化学的プロセスのエネルギーコストを、その石炭火力の対応物のエネルギーコストと比較した。電気化学的プロセスに対して推定される5.2~7.1MJ/kgのセメントは、4.6MJ/kgとなる、平均的な米国の窯における従来的なセメントプロセスに必要なエネルギーを超えた。石炭価格が61US$/トン(瀝青炭の場合)では、従来のプロセスのエネルギーコストは、約28US$/トンセメントであり、これは米国の平均セメント販売価格である$113/メートルトンの25%である。電気化学的プロセスに対する対応するコストは、当然ながら、電気の価格に依存し、一部の例では、再生可能資源から得られた場合、ゼロまたはマイナスになることさえあり得る。しかし、電気コストが0.02、0.04および0.06US$/kWhの場合、および電気化学的プロセスのエネルギー要件が推定範囲の中央にある6MJ/kgであると仮定すると、エネルギーコストは、それぞれ、35、60および100US$/トンセメントとなる。これは、他の考慮事項がない場合、電気が<0.02US$/kWhで利用できる場合にのみ、この電気化学的プロセスが従来のプラント(約28US$/トンセメント)とコスト競争力があることを示唆する。比較すると、風力発電の価格は現在、米国内の多くの地域にわたり、0.02US$/kWhまたはそれよりわずかに安い。
【0207】
しかし、このコスト比較は、従来のセメント煙道ガスのアミンスクラビングが91US$/トン程度であると推定されている、炭素の回収および隔離のコストを無視している。上でモデル化された電気化学的シークエンスでは、電解H2が燃焼されて窯を加熱する場合、脱炭酸反応器を示すO2/CO2ストリームからCO2を直接回収するコストは、40US$/トン未満となるはずである。これは、政策が炭素の改善を要求し、低コストの再生可能電力が利用できる環境において、電気化学的プロセスに有利な正味のエネルギーコストを変動させると思われる。
【0208】
最後に、ある特定の実施形態による電解槽をベースとするプロセスの水強度を考慮した。ある特定の実施形態による脱炭酸セルを使用して製造されたセメント1kgごとに、0.4kgの水が必要となる。これは、1日あたり1,800トンのセメントを生産する平均的な米国の窯では、1日あたり約760トンの水が必要になることを意味する。しかし、一部の場合、Ca(OH)2の脱水時にこの水の半分が回収される。ある特定の例では、H2を使用して窯に燃料を供給すると、半分の水が煙道ガスから凝縮され得る。原則として、一部の実施形態では、電気分解に使用されるすべての水をリサイクルすることができる。
【0209】
この実施例は、CaCO3が脱炭酸され、Ca(OH)2が中性の水電解槽によって生じたpH勾配で沈殿し、同時にH2とO2/CO2の高濃度ガスストリームが生成される電気化学をベースとするセメント合成プロセスを実証した。微粉末Ca(OH)2を使用して、通常のポルトランドセメントの大部分のセメント相である純粋なエーライト相を合成した。一部の実施形態では、このプロセスからの高濃度ガスストリームは、持続可能な産業技術のために開発中の他のプロセスと相乗的に使用することができる。いくつかの代替案の中で、一部の実施形態では、CO2は、直接、回収および隔離され得、H2および/またはO2は、燃料電池または燃焼器により、電力を発生するために使用することができ、O2は、オキシ燃料の構成成分として使用されて、セメント窯からのCO2およびNOx排出量をさらに低下させるか、または産出ガスを使用して、液体燃料などの他の付加価値製品を合成することができる。本実施例の実験室規模のプロトタイプ脱炭酸反応器は、電気分解中にアノードで生成する2つのプロトンごとに1つのCaCO3式単位を溶解させる、ほぼ理論的なクーロン効率で稼働することができることが示された。このような条件下では、生成した電気分解水素は、燃焼した場合、セメントの高温焼結に必要な熱エネルギーの大部分またはすべてを供給することができる。この実施例は、すべてのエネルギーが再生可能電気によって供給される、コスト競争力のある無排出セメント製造への道筋を実証する。
物質および方法:
脱炭酸セル
【0210】
特注設計のH型セルは、James Glass,Inc.(Hanover、MA)によって作製された。電解質は、脱イオン水に溶解させた1M NaClO4またはNaNO3(Sigma-Aldrich、≧98%)とした。これらの電解質は、そのカルシウム塩が可溶性であり、高電圧で分解しないので選択した。電極はどちらも白金から作製された:カソードがロッド、およびアノードがワイヤである(BASi、MW-1032)。白金は、酸および塩基の両方において、水素および酸素の発生に高い触媒活性を有するので選択した。代替の低コスト電極物質は、カソード(pH10)の場合、Ni、Cuまたはステンレス鋼を、およびカソード(pH6)の場合、Al、Sn、Pbを含むことができる。CaCO3粉末(Sigma-Aldrich、≧99%)をアノードのコンパートメントに加えた。フィルター紙(VWR、28310-015、粒子保持5μm)を多孔質分離器として使用した。定電圧実験は、Bio-Logic Science Instruments(Seyssinet-Pariset、France)VMP3ポテンシオスタットを使用して行った。試験はすべて室温で行った。
XRD特徴付け
【0211】
XRDパターンは、Cu照射、および240mmの半径を有するバーティカルサークルシータ:シータゴニオメータを使用し、PANalytical(Almelo、Netherlands)X’Pert PRO XRPDを使用して収集した。この機器のデフォルト構成は、Open Eulerian Cradle(OEC)試料ステージを使用した、高速高解像度X’Celerator位置感知検出器を備えたBragg-Brentano形状にある。XRDデータは、Highscoreバージョン4.7を使用して解析した。
SEM特徴付け
【0212】
試料のSEMイメージングおよび組成分析は、エネルギー分散型X線検出器(nanoScience Instruments、Phoenix、AZ)を装備したPhenom XL機器を使用して実施し、イメージングには10kVの加速電圧、EDS分析には15kVで操作した。
BET特徴付け
【0213】
Quantachrome Instruments NOVA 4000E(Anton Paar QuantaTech、Boynton Beach、Florida)を使用して、粉末の比表面積のマルチポイントBET分析を行った。
エーライト合成
【0214】
電気化学的に沈殿したCa(OH)2またはCaCO3(Sigma-Aldrich、≧99%)をSiO2(99.5%、2μm、Alfa Aesar)と3:1のモル比で混合した。粉末をエタノールと共にスラリーに混合し、次に乾燥した。得られた十分に混合した粉末をペレットに圧縮した。ペレットを白金るつぼに入れ、マッフル炉(Thermolyne F46120-CM)において、毎分2℃で1,500℃まで加熱した。温度を1,500℃で2時間、保持し、次に、電源を切ることによりペレットを炉冷した。得られた粉末は、XRDによってエーライトであることを確認した。
(実施例2)
【0215】
この実施例は、炭酸ニッケル(NiCO3)からの電気化学セル内の空間的に変化するpH勾配における、固体の水酸化ニッケル(Ni(OH)2)の形成を記載する。
【0216】
図3Aに図示されている電気化学セルを使用した。電気化学セルは、カソード104、アノード105、および電解質を含有する溶液を含むH型セルであり、カソード104およびアノード105は、少なくとも部分的に溶液に浸けた。カソード104およびアノード105は、どちらも白金ロッドであり、電解質は、0.5M Na
2SO
4とした。この電気化学セルは、室温で、5ボルトで稼働させた。2枚のフィルター紙を、イオンに対して選択的透過性の2つの個別の膜(膜110aおよび膜110b)として使用し、それらの間に分離チャンバ113を形成した。数滴の汎用的な指示体を溶液に入れた。アノード105の周囲の溶液はピンク色であり、pHが約4であることを示した一方、カソード104の周囲の溶液は紫色であり、pHは約10であることを示した。この空間的に変化するpH勾配は、水の電気分解が理由で形成され、この電気分解は、カソードにおける水素発生反応(水酸化物イオンが生成し、したがって、カソードではアルカリ性pHである)、およびアノードにおける酸素発生反応(プロトンが生成し、したがって、アノードでは酸性pHである)を含む。
【0217】
次に、炭酸ニッケルをアノード105周辺の溶液に加えた。炭酸ニッケルを加えて1時間後、アノード105の周辺の溶液の底部は、炭酸ニッケルに由来する緑色である一方、アノード105の周辺の溶液の上部はピンク色のままであり、pHは約4を示した。カソード104の周辺の溶液の色は、変化しないように見えた。
図3Bに示されている通り、炭酸ニッケルを添加して10時間後、炭酸ニッケルは使い果たされ、アノード105周辺の溶液は緑色であり、pHは約7であること示した一方、カソード104周辺の溶液は青色であり、pHは約9であることを示した。10時間時に、沈殿物112(この例では、水酸化ニッケル)が、イオンに対して選択的透過性の膜(膜110aおよび膜110b)の間の分離チャンバ113内に観察された。
【0218】
炭酸ニッケルは、アノードの酸性領域に溶解し、二酸化炭素およびニッケルイオンが生成した。ニッケルイオンは、カソードのアルカリ性領域の方に拡散し、ここで水酸化物イオンと反応して、水酸化ニッケルを形成した(沈殿物が観察された)。水素ガスもまた、カソードから遊離した一方、酸素ガスおよび二酸化炭素ガスは、アノードから遊離した。
(実施例3)
【0219】
この実施例は、炭酸カルシウム(CaCO3)からの電気化学セル内の空間的に変化するpH勾配における、固体の水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の形成を記載する。
【0220】
電気化学セルは、電解質が1M NaClO
4であり、電気化学セルが3.5ボルトの一定電圧で行われた以外、実施例2と同様に設定および実施した。電気化学セルは、一晩、稼働させて、沈殿物112が、
図4Aに示されている通りに形成された。沈殿物112を収集し、
図4Cに示されている通り、X線回折(XRD)(これにより、沈殿物112がCa(OH)
2であることを確認した)により分析し、SiO
2および水と3:1のモル比で混合し、
図4Bに示されている非水硬性セメントを形成した。
【0221】
本発明のいくつかの実施形態が本明細書に記載および例示されているが、当業者は、機能を実行するため、ならびに/または結果および/もしくは本明細書に記載されている1つもしくは1つより多くの利点を取得するための様々な他の手段および/または構造を容易に想定し、このような変形および/または改変のそれぞれが、本発明の範囲内にあると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載のすべてのパラメーター、寸法、物質および立体構成が例示的なものであることが意図されていること、ならびに実際のパラメーター、寸法、物質および/または立体構成が、特定の用途、または本発明の教示に使用される用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者であれば、常套的な実験のみを使用して、本明細書に記載されている本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を理解するか、または解明することができる。したがって、前述の実施形態は単なる例として提示されているに過ぎないこと、ならびに添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内で、本発明は、具体的に記載および特許請求されているもの以外の方法で実施されてもよいことを理解すべきである。本発明は、本明細書に記載されている個々の特徴、システム、物品、物質および/または方法のそれぞれを対象とする。さらに、2つまたは2つより多いこのような特徴、システム、物品、物質および/または方法の任意の組合せは、そのような特徴、システム、物品、物質および/または方法が相互に矛盾しない場合、本発明の範囲内に含まれる。
追加の例示的な概念
【0222】
ある特定の実施形態は、システムに関する。一態様では、システムは、電気化学反応器であって、以下:Ca(OH)2および/または石灰を取り出すよう構成されている第1の出口;およびCO2を取り出すよう構成されている第2の出口;および電気化学反応器の下流に、Ca(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を受け入れるよう構成されているユニットを備える、電気化学反応器を備える[概念1]。
【0223】
概念1の一部の実施形態では、本システムは、第2の出口から取り出したCO2を収集するよう構成されている容器をさらに備える[概念2]。概念1の一部の実施形態では、取り出されたCO2が隔離されることになる、液体燃料で使用されることになる、オキシ燃料で使用されることになる、原油増進回収に使用されることになる、ドライアイスを生産するために使用されることになる、および/または飲料における成分として使用されることになる[概念3]。
【0224】
概念1から3のいずれか1つの一部の実施形態では、ユニットは、セメント製造プロセスの一部として、Ca(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を加熱するよう構成されている窯である[概念4]。概念1から3のいずれか1つの一部の実施形態では、ユニットは、以下:鉄系金属製造プロセス;非鉄金属製造プロセス;石工プロセス;土壌安定化プロセス;アスファルト製造および/またはリサイクルプロセス;酸性ガスおよび/または二酸化炭素の除去プロセス;廃棄物処理プロセス;水処理プロセス;農業プロセス;製糖プロセス;革製造プロセス;接着剤および/またはゼラチン製造プロセス;乳製品の製造プロセス;果物産業プロセス;殺菌剤および/または殺虫剤を製造するためのプロセス;食品製造プロセス;化学品製造プロセス(例えば、炭酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、炭化カルシウム、リン酸カルシウム、臭化カルシウム、ヘキサシアノ鉄酸カルシウム、カルシウムシリコン、二クロム酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、カルシウム石鹸、乳酸カルシウム、酒石酸カルシウム、酸化アルミニウム、アルカリ炭酸塩、アルカリ炭酸水素塩、炭酸ストロンチウム、ジルコン酸カルシウム、アルカリ水酸化物、水酸化マグネシウム、アルケン酸化物、ジアセトンアルコール、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステル、ペンタエリスリトール、アントラキノン染料、アントラキノン中間体および/またはトリクロロエチレンを製造するプロセス);耐火物製造プロセス;石灰ガラス製造プロセス;白陶器および/またはガラス質エナメル製造プロセス;材料のキャスト形成および/または引き抜きプロセス;掘削泥水製造プロセス;油添加剤および/または潤滑油の製造プロセス;製紙プロセス;アクアリウムおよび/もしくはサンゴ礁を成長ならびに/または維持するプロセス;蓄熱プロセス;難燃剤および/または絶縁体の製造プロセス;抗微生物剤製造プロセス;煙道ガス処理炭素回収プロセス;および/またはしっくいミックスプロセスのうちの1つまたは1つより多くの部分である[概念5]。
【0225】
概念1から5のいずれか1つの一部の実施形態では、第2の出口および/または第3の出口は、オキシ燃料として使用されることになる、CCS用途において使用されることになる、および/または原油増進回収において使用されることになるO2を取り出すよう構成されている[概念6]。概念1から6のいずれか1つの一部の実施形態では、第2の出口および/または第4の出口は、燃料(例えば、燃料電池において、または本システムを加熱するため)として使用されることになるH2を取り出すよう構成されている[概念7]。
【0226】
一態様では、システムは、電気化学反応器であって、以下:Ca(OH)2および/または石灰を取り出すよう構成されている第1の出口;ならびに隔離されることになる、オキシ燃料として使用されることになる、CCS用途において使用されることになる、および/または原油増進回収において使用されることになるO2を取り出すよう構成されている第2の出口;および電気化学反応器の下流に、Ca(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を受け入れるよう構成されているユニットを備える、電気化学反応器を備える[概念8]。
【0227】
概念8の一部の実施形態では、ユニットは、セメント製造プロセスの一部として、Ca(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を加熱するよう構成されている窯である[概念9]。概念8の一部の実施形態では、ユニットは、以下:鉄系金属製造プロセス;非鉄金属製造プロセス;石工プロセス;土壌安定化プロセス;アスファルト製造および/またはリサイクルプロセス;酸性ガスおよび/または二酸化炭素の除去プロセス;廃棄物処理プロセス;水処理プロセス;農業プロセス;製糖プロセス;革製造プロセス;接着剤および/またはゼラチン製造プロセス;乳製品の製造プロセス;果物産業プロセス;殺菌剤および/または殺虫剤を製造するためのプロセス;食品製造プロセス;化学品製造プロセス(例えば、炭酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、炭化カルシウム、リン酸カルシウム、臭化カルシウム、ヘキサシアノ鉄酸カルシウム、カルシウムシリコン、二クロム酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、カルシウム石鹸、乳酸カルシウム、酒石酸カルシウム、酸化アルミニウム、アルカリ炭酸塩、アルカリ炭酸水素塩、炭酸ストロンチウム、ジルコン酸カルシウム、アルカリ水酸化物、水酸化マグネシウム、アルケン酸化物、ジアセトンアルコール、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステル、ペンタエリスリトール、アントラキノン染料、アントラキノン中間体および/またはトリクロロエチレンを製造するプロセス);耐火物製造プロセス;石灰ガラス製造プロセス;白陶器および/またはガラス質エナメル製造プロセス;材料のキャスト形成および/または引き抜きプロセス;掘削泥水製造プロセス;油添加剤および/または潤滑油の製造プロセス;製紙プロセス;アクアリウムおよび/もしくはサンゴ礁を成長ならびに/または維持するプロセス;蓄熱プロセス;難燃剤および/または絶縁体の製造プロセス;抗微生物剤製造プロセス;煙道ガス処理炭素回収プロセス;および/またはしっくいミックスプロセスのうちの1つまたは1つより多くの部分である[概念10]。概念8から10のいずれか1つの一部の実施形態では、第2の出口および/または第3の出口は、燃料(例えば、燃料電池において、または本システムを加熱するため)として使用されることになるH2を取り出すよう構成されている[概念11]。
【0228】
一部の実施形態では、システムは、電気化学反応器であって、以下:Ca(OH)2および/または石灰を取り出すよう構成されている第1の出口;ならびに隔離されることになる、および/または燃料(例えば、燃料電池においておよび/またはシステムを加熱するため)として使用されることになるH2を取り出すよう構成されている第2の出口;および電気化学反応器の下流に、Ca(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を受け入れるよう構成されているユニットを備える、電気化学反応器を備える[概念12]。
【0229】
概念12の一部の実施形態では、ユニットは、セメント製造プロセスの一部として、Ca(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を加熱するよう構成されている窯である[概念13]。概念12の一部の実施形態では、ユニットは、以下:鉄系金属製造プロセス;非鉄金属製造プロセス;石工プロセス;土壌安定化プロセス;アスファルト製造および/またはリサイクルプロセス;酸性ガスおよび/または二酸化炭素の除去プロセス;廃棄物処理プロセス;水処理プロセス;農業プロセス;製糖プロセス;革製造プロセス;接着剤および/またはゼラチン製造プロセス;乳製品の製造プロセス;果物産業プロセス;殺菌剤および/または殺虫剤を製造するためのプロセス;食品製造プロセス;化学品製造プロセス(例えば、炭酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、炭化カルシウム、リン酸カルシウム、臭化カルシウム、ヘキサシアノ鉄酸カルシウム、カルシウムシリコン、二クロム酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、カルシウム石鹸、乳酸カルシウム、酒石酸カルシウム、酸化アルミニウム、アルカリ炭酸塩、アルカリ炭酸水素塩、炭酸ストロンチウム、ジルコン酸カルシウム、アルカリ水酸化物、水酸化マグネシウム、アルケン酸化物、ジアセトンアルコール、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステル、ペンタエリスリトール、アントラキノン染料、アントラキノン中間体および/またはトリクロロエチレンを製造するプロセス);耐火物製造プロセス;石灰ガラス製造プロセス;白陶器および/またはガラス質エナメル製造プロセス;材料のキャスト形成および/または引き抜きプロセス;掘削泥水製造プロセス;油添加剤および/または潤滑油の製造プロセス;製紙プロセス;アクアリウムおよび/もしくはサンゴ礁を成長ならびに/または維持するプロセス;蓄熱プロセス;難燃剤および/または絶縁体の製造プロセス;抗微生物剤製造プロセス;煙道ガス処理炭素回収プロセス;および/またはしっくいミックスプロセスのうちの1つまたは1つより多くの部分である[概念14]。
【0230】
概念1から14のいずれか1つの一部の実施形態では、本システムは、再生可能電気(例えば、太陽エネルギーおよび/または風力エネルギー)によって少なくとも一部が電力供給される[概念15]。概念1から15のいずれか1つの一部の実施形態では、本システムから取り出されるCO2、O2および/またはH2の少なくとも一部は、窯に供給される[概念16]。概念1から16のいずれか1つの一部の実施形態では、本システムは、正味ゼロの炭素排出量を有する[概念17]。概念1から17のいずれか1つの一部の実施形態では、電気化学反応器は、CaCO3を受け入れるよう構成されている[概念18]。
【0231】
ある特定の実施形態は、方法に関する。一態様では、方法は、電気化学反応器においてCa(OH)2および/または石灰を生産するステップ;電気化学反応器においてCO2を生産するステップ;Ca(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を電気化学反応器の下流のプロセスに輸送するステップを含む[概念19]。
【0232】
概念19の一部の実施形態では、本方法は、容器中で、電気化学反応器からCO2を収集するステップをさらに含む[概念20]。概念19の一部の実施形態では、CO2は隔離されることになる、液体燃料で使用されることになる、オキシ燃料で使用されることになる、原油増進回収に使用されることになる、ドライアイスを生産するために使用されることになる、および/または飲料における成分として使用されることになる[概念21]。概念19から21のいずれか1つの一部の実施形態では、輸送するステップは、Ca(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を窯に輸送するステップを含み、本方法は、セメント製造プロセスの一部として、窯中でCa(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を加熱するステップをさらに含む[概念22]。
【0233】
概念19から21のいずれか1つの一部の実施形態では、輸送するステップは、以下:鉄系金属製造プロセス;非鉄金属製造プロセス;石工プロセス;土壌安定化プロセス;アスファルト製造および/またはリサイクルプロセス;酸性ガスおよび/または二酸化炭素の除去プロセス;廃棄物処理プロセス;水処理プロセス;農業プロセス;製糖プロセス;革製造プロセス;接着剤および/またはゼラチン製造プロセス;乳製品の製造プロセス;果物産業プロセス;殺菌剤および/または殺虫剤を製造するためのプロセス;食品製造プロセス;化学品製造プロセス(例えば、炭酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、炭化カルシウム、リン酸カルシウム、臭化カルシウム、ヘキサシアノ鉄酸カルシウム、カルシウムシリコン、二クロム酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、カルシウム石鹸、乳酸カルシウム、酒石酸カルシウム、酸化アルミニウム、アルカリ炭酸塩、アルカリ炭酸水素塩、炭酸ストロンチウム、ジルコン酸カルシウム、アルカリ水酸化物、水酸化マグネシウム、アルケン酸化物、ジアセトンアルコール、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステル、ペンタエリスリトール、アントラキノン染料、アントラキノン中間体および/またはトリクロロエチレンを製造するプロセス);耐火物製造プロセス;石灰ガラス製造プロセス;白陶器および/またはガラス質エナメル製造プロセス;材料のキャスト形成および/または引き抜きプロセス;掘削泥水製造プロセス;油添加剤および/または潤滑油の製造プロセス;製紙プロセス;アクアリウムおよび/もしくはサンゴ礁を成長ならびに/または維持するプロセス;蓄熱プロセス;難燃剤および/または絶縁体の製造プロセス;抗微生物剤製造プロセス;煙道ガス処理炭素回収プロセス;および/またはしっくいミックスプロセスのうちの1つまたは1つより多くにおいて、Ca(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を処理するステップを含む[概念23]。
【0234】
概念19から23のいずれか1つの一部の実施形態では、本方法は、電気化学反応器において、O2を生産するステップであって、O2がオキシ燃料として使用されることになる、CCS用途において使用されることになる、および/または原油増進回収において使用されることになる、O2を生産するステップをさらに含む[概念24]。概念19から24のいずれか1つの一部の実施形態では、本方法は、電気化学反応器において、H2を生産するステップであって、H2が、燃料(例えば、燃料電池において、または本システムを加熱するため)として使用されることになる、H2を生産するステップをさらに含む[概念25]。
【0235】
一部の実施形態では、方法は、電気化学反応器においてCa(OH)2および/または石灰を生産するステップ;電気化学反応器において、O2を生産するステップであって、O2が隔離されることになる、オキシ燃料として使用されることになる、CCS用途において使用されることになる、および/または原油増進回収において使用されることになる、O2を生産するステップ;Ca(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を電気化学反応器の下流のプロセスに輸送するステップを含む[概念26]。
【0236】
概念26の一部の実施形態では、輸送するステップは、セメント製造プロセスの一部として、Ca(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を窯に輸送するステップを含み、本方法は、窯中でCa(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を加熱するステップをさらに含む[概念27]。概念26の一部の実施形態では、輸送するステップは、以下:鉄系金属製造プロセス;非鉄金属製造プロセス;石工プロセス;土壌安定化プロセス;アスファルト製造および/またはリサイクルプロセス;酸性ガスおよび/または二酸化炭素の除去プロセス;廃棄物処理プロセス;水処理プロセス;農業プロセス;製糖プロセス;革製造プロセス;接着剤および/またはゼラチン製造プロセス;乳製品の製造プロセス;果物産業プロセス;殺菌剤および/または殺虫剤を製造するためのプロセス;食品製造プロセス;化学品製造プロセス(例えば、炭酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、炭化カルシウム、リン酸カルシウム、臭化カルシウム、ヘキサシアノ鉄酸カルシウム、カルシウムシリコン、二クロム酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、カルシウム石鹸、乳酸カルシウム、酒石酸カルシウム、酸化アルミニウム、アルカリ炭酸塩、アルカリ炭酸水素塩、炭酸ストロンチウム、ジルコン酸カルシウム、アルカリ水酸化物、水酸化マグネシウム、アルケン酸化物、ジアセトンアルコール、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステル、ペンタエリスリトール、アントラキノン染料、アントラキノン中間体および/またはトリクロロエチレンを製造するプロセス);耐火物製造プロセス;石灰ガラス製造プロセス;白陶器および/またはガラス質エナメル製造プロセス;材料のキャスト形成および/または引き抜きプロセス;掘削泥水製造プロセス;油添加剤および/または潤滑油の製造プロセス;製紙プロセス;アクアリウムおよび/もしくはサンゴ礁を成長ならびに/または維持するプロセス;蓄熱プロセス;難燃剤および/または絶縁体の製造プロセス;抗微生物剤製造プロセス;煙道ガス処理炭素回収プロセス;および/またはしっくいミックスプロセスのうちの1つまたは1つより多くにおいて、Ca(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を処理するステップを含む[概念28]。概念26から28のいずれか1つの一部の実施形態では、本方法は、電気化学反応器において生産したH2をさらに含み、このH2は、燃料(例えば、燃料電池において、または本システムを加熱するため)として使用されることになる[概念29]。
【0237】
一部の実施形態では、方法は、電気化学反応器においてCa(OH)2および/または石灰を生産するステップ;電気化学反応器において、H2を生産するステップであって、H2が隔離されることになる、および/または燃料(例えば、燃料電池においておよび/またはシステムを加熱するため)として使用されることになる、H2を生成するステップ;Ca(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を電気化学反応器の下流のプロセスに輸送するステップを含む[概念30]。
【0238】
概念30の一部の実施形態では、輸送するステップは、セメント製造プロセスの一部として、Ca(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を窯に輸送するステップを含み、本方法は、窯中でCa(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を加熱するステップをさらに含む[概念31]。概念30の一部の実施形態では、輸送するステップは、以下:鉄系金属製造プロセス;非鉄金属製造プロセス;石工プロセス;土壌安定化プロセス;アスファルト製造および/またはリサイクルプロセス;酸性ガスおよび/または二酸化炭素の除去プロセス;廃棄物処理プロセス;水処理プロセス;農業プロセス;製糖プロセス;革製造プロセス;接着剤および/またはゼラチン製造プロセス;乳製品の製造プロセス;果物産業プロセス;殺菌剤および/または殺虫剤を製造するためのプロセス;食品製造プロセス;化学品製造プロセス(例えば、炭酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、炭化カルシウム、リン酸カルシウム、臭化カルシウム、ヘキサシアノ鉄酸カルシウム、カルシウムシリコン、二クロム酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、カルシウム石鹸、乳酸カルシウム、酒石酸カルシウム、酸化アルミニウム、アルカリ炭酸塩、アルカリ炭酸水素塩、炭酸ストロンチウム、ジルコン酸カルシウム、アルカリ水酸化物、水酸化マグネシウム、アルケン酸化物、ジアセトンアルコール、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステル、ペンタエリスリトール、アントラキノン染料、アントラキノン中間体および/またはトリクロロエチレンを製造するプロセス);耐火物製造プロセス;石灰ガラス製造プロセス;白陶器および/またはガラス質エナメル製造プロセス;材料のキャスト形成および/または引き抜きプロセス;掘削泥水製造プロセス;油添加剤および/または潤滑油の製造プロセス;製紙プロセス;アクアリウムおよび/もしくはサンゴ礁を成長ならびに/または維持するプロセス;蓄熱プロセス;難燃剤および/または絶縁体の製造プロセス;抗微生物剤製造プロセス;煙道ガス処理炭素回収プロセス;および/またはしっくいミックスプロセスのうちの1つまたは1つより多くにおいて、Ca(OH)2、石灰、ならびに/またはCa(OH)2および/もしくは石灰の反応生成物を処理するステップを含む[概念32]。
【0239】
概念19から32のいずれか1つの一部の実施形態では、本方法は、再生可能電気(例えば、太陽エネルギーおよび/または風力エネルギー)によって少なくとも一部が電力供給される[概念33]。概念19から33のいずれか1つの一部の実施形態では、電気化学セルにおいて生成したCO2、O2および/またはH2の少なくとも一部は、窯に供給される[概念34]。概念19から34のいずれか1つの一部の実施形態では、本方法は、正味ゼロの炭素放出を有する[概念35]。概念19から35のいずれか1つの一部の実施形態では、本方法は、電気化学反応器に、CaCO3を入れるステップをさらに含む。
【0240】
2019年1月16日出願の米国仮特許出願第62/793,294号、2019年2月1日出願の米国仮特許出願第62/800,220号および2019年3月14日出願の米国仮特許出願第62/818,604号はそれぞれ、すべての目的のため、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
本明細書および特許請求の範囲において使用される不定冠詞「a」および「an」は、反対に明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0241】
本明細書および特許請求の範囲において使用される「および/または」という言い回しは、そのように結合された要素、すなわち、一部の場合、結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素の「いずれか一方または両方」を意味すると理解されるべきである。明確に反対に示されない限り、「および/または」という節によって具体的に特定されている要素以外の他の要素は、具体的に特定されている要素に関連するかまたは関連しないかにかかわらず、必要に応じて存在し得る。したがって、非限定例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などのオープンエンドな言語と連携して使用される場合、一実施形態では、BのないA(必要に応じて、B以外の要素を含む);別の実施形態では、AのないB(必要に応じて、A以外の要素を含む):さらに別の実施形態では、AとBの両方(必要に応じて、他の要素を含む)などを指すことができる。
【0242】
本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、「または」は、上で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「または」または「および/または」は包括的として、すなわち、少なくとも1つを含むが、1つより多い要素の数またはリスト、および必要に応じて追加の列挙されていない項目も含むとして解釈されるものとする。「のうちの1つだけ」または「のうちの正確に1つ」などの反対に明確に示される用語だけが、または特許請求の範囲において使用される場合は「からなる」が、要素の数またはリストの正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、用語「または」は、本明細書で使用する場合、「どちらか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つだけ」または「のうちの正確に1つ」などの、排他性の用語が後ろに付く場合のみ、排他的な選択肢(すなわち、「一方またはもう一方であるが、両方ではない」)を示すと解釈されるものとする。「から本質的になる」は、特許請求の範囲において使用される場合、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0243】
本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、1つまたは1つより多くの要素のリストを参照する「少なくとも1つ」という言い回しは、要素のリスト中の要素のいずれか1つまたは1つより多くから選択される、少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしもではないが、要素のリスト内に具体的に列挙されているあらゆる要素の少なくとも1つを含み、要素のリスト中の要素の任意の組合せを排除しないことが理解されるべきである。この定義により、「少なくとも1つの」との言い回しが指す要素のリスト中で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定されたそれらの要素に関係しているかまたは関連していないかにかかわらず、必要に応じて存在してもよいことも可能となる。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも一方」(または、同等に「AまたはBの少なくとも一方」、または、同等に「Aおよび/またはBの少なくとも一方」)は、一実施形態では、必要に応じて2つ以上を含めて少なくとも1つのAであって、Bが存在しない(および、必要に応じてB以外の要素を含む)少なくとも1つのA、別の実施形態では、必要に応じて2つ以上を含めて少なくとも1つのBであって、Aが存在しない(および、必要に応じてA以外の要素を含む)少なくとも1つのB、さらに別の実施形態では、必要に応じて2つ以上を含めて少なくとも1つのAおよび必要に応じて2つ以上を含めて少なくとも1つのB(および、必要に応じて他の要素を含む)を指す。
【0244】
本明細書で使用する場合、反対のことが示されていない限り、相対量を指す本明細書において開示されているすべてのパーセンテージは、重量パーセンテージである。
【0245】
特許請求の範囲において、および上記の明細書において、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」などのすべての移行句は、オープンエンドであること、すなわち含むがそれに限定されないことを意味すると理解すべきである。米国特許庁特許審査手続便覧の第2111.03項に記載されている通り、「~からなる」および「~から本質的になる」という移行句だけが、それぞれ、クローズド移行句またはセミクローズド移行句であるものとする。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
空間的に変化する化学組成勾配を備える領域を確立および/または維持するステップ、
化学化合物が前記空間的に変化する化学組成勾配内の液体に溶解するおよび/またはこの中で反応するよう、前記化学化合物を前記空間的に変化する化学組成勾配の第1の領域に輸送するステップ、
前記空間的に変化する化学組成勾配の第2の領域から沈殿物を収集するステップであって、前記沈殿物が、前記空間的に変化する化学組成勾配内で溶解したおよび/または反応した前記化学化合物に由来する1つまたは1つより多くの元素を含む、ステップ
を含む方法。
(項目2)
セメントを製造する方法であって、
空間的に変化するpH勾配を含む領域を確立および/または維持するステップ、
炭酸カルシウムが前記空間的に変化するpH勾配内の液体に溶解するおよび/またはこの中で反応するよう、前記炭酸カルシウムを前記空間的に変化するpH勾配の酸性領域に輸送するステップ、
前記空間的に変化するpH勾配のアルカリ性領域から固体の水酸化カルシウムを収集するステップであって、前記固体の水酸化カルシウムが、前記空間的に変化するpH勾配内で溶解したおよび/または反応した前記炭酸カルシウムに由来するカルシウムを含む、ステップ、ならびに
窯内部で、前記固体の水酸化カルシウムおよび/または前記固体の水酸化カルシウムの少なくとも一部に由来する固体の酸化カルシウムを加熱して、セメントを製造するステップ
を含む、方法。
(項目3)
前記空間的に変化する化学組成勾配が、空間的に変化するpH勾配を含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記第1の領域が酸性領域を含む、項目1および3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記第2の領域がアルカリ性領域を含む、項目1および3から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記化学化合物が金属塩を含む、項目1および3から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記1つまたは1つより多くの元素が金属元素を含む、項目1および3から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記化学化合物が、前記空間的に変化するpH勾配内の前記液体に溶解して反応する、項目1および3から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記炭酸カルシウムが、前記空間的に変化するpH勾配内の前記液体に溶解して反応する、項目2に記載の方法。
(項目10)
前記化学化合物が金属炭酸塩を含む、項目1および3から8のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記金属炭酸塩が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび/または炭酸ニッケルを含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記沈殿物が金属水酸化物を含む、項目1、3から8、および10から11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記方法が、バッチプロセスの一部である、項目1、3から8および10から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記方法が、連続的に行われる、項目1、3から8、および10から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記方法が、前記沈殿物とは異なる副生成物を生成し、そして前記方法が、前記副生成物を収集するステップをさらに含む、項目1、3から8および10から14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記方法が、前記固体の水酸化カルシウムおよび/または前記固体の酸化カルシウムとは異なる副生成物を生成し、そして前記方法が、前記副生成物を収集するステップをさらに含む、項目2または9のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記副生成物が、CO
2
、O
2
および/またはH
2
を含む、項目15または16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記副生成物がCO
2
を含み、そして前記副生成物を収集する前記ステップが、前記CO
2
を隔離するステップを含む、項目15から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記副生成物が燃料として使用される、項目15から18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記酸性領域が、6または6未満のpHを有する、項目2および4から19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記酸性領域が、5または5未満のpHを有する、項目2および4から20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記アルカリ性領域が、8または8より高いpHを有する、項目2および5から21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記アルカリ性領域が、9または9より高いpHを有する、項目2および5から22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記アルカリ性領域が、10または10より高いpHを有する、項目2および5から23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記空間的に変化するpH勾配を含む前記領域を確立および/または維持する前記ステップが、電気分解を行うステップを含む、項目2から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記電気分解が加水分解を含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
セメントを生産するためのシステムであって、
空間的に変化する化学組成勾配を備える領域を含む反応器であって、炭酸カルシウムを受け入れるよう構成されている反応器入口および固体の水酸化カルシウムを取り出すよう構成されている反応器出口を備える、反応器、および
窯の入口を備える窯であって、
前記窯が、前記反応器出口の下流にあり、
前記窯の入口が、前記固体の水酸化カルシウムおよび/または前記固体の水酸化カルシウムの少なくとも一部に由来する固体の酸化カルシウムの少なくとも一部を受け入れるよう構成されており、そして
前記窯が、セメント生産プロセスの一部として、前記固体の水酸化カルシウムおよび/または固体の酸化カルシウムを加熱するよう構成されている、窯
を備える、システム。
(項目28)
前記空間的に変化する化学組成勾配が、酸性領域およびアルカリ性領域を含む空間的に変化するpH勾配を含む、項目27に記載のシステム。
(項目29)
前記酸性領域が、6または6未満のpHを有する、項目28に記載のシステム。
(項目30)
前記酸性領域が、5または5未満のpHを有する、項目28から29のいずれか一項に記載のシステム。
(項目31)
前記アルカリ性領域が、8または8より高いpHを有する、項目28から30のいずれか一項に記載のシステム。
(項目32)
前記アルカリ性領域が、9または9より高いpHを有する、項目28から31のいずれか一項に記載のシステム。
(項目33)
前記アルカリ性領域が、10または10より高いpHを有する、項目28から32のいずれか一項に記載のシステム。
(項目34)
前記反応器が、前記空間的に変化する化学組成勾配が、電気分解によって少なくとも一部が確立および/または維持されるよう構成されている、項目27から33のいずれか一項に記載のシステム。
(項目35)
前記電気分解が加水分解を含む、項目34に記載のシステム。
(項目36)
前記システムが、前記固体の水酸化カルシウムおよび/または固体の酸化カルシウムとは異なる副生成物を収集するよう構成されている、項目27から35のいずれか一項に記載のシステム。
(項目37)
前記副生成物が、CO
2
、O
2
および/またはH
2
を含む、項目36に記載のシステム。
(項目38)
前記副生成物がCO
2
を含み、そして前記副生成物の前記収集が、前記CO
2
の隔離を含む、項目36または37に記載のシステム。
(項目39)
前記システムが、前記反応器出口と前記窯の入口との間にヒータをさらに備える、項目27から38のいずれか一項に記載のシステム。
(項目40)
前記反応器出口が、前記窯の入口に直接、取り付けられている、項目27から38のいずれか一項に記載のシステム。
(項目41)
第1の電極、
第2の電極、
前記第1の電極と前記第2の電極との間の、空間的に変化する化学組成勾配、
空間的に変化するpH勾配の第1の領域に連結された入口、
前記空間的に変化するpH勾配の第2の領域に連結された出口であって、固体を反応器から抜き出すことができるよう構成されている、出口
を備える、反応器。
(項目42)
前記空間的に変化する化学組成勾配が、空間的に変化するpH勾配を含む、項目41に記載の反応器。
(項目43)
前記第1の領域が酸性領域を含む、項目41から42のいずれか一項に記載の反応器。
(項目44)
前記第2の領域がアルカリ性領域を含む、項目41から43のいずれか一項に記載の反応器。
(項目45)
前記第1の電極と前記第2の電極との間に、イオンに対して選択的透過性の1つまたは1つより多くの膜をさらに備える、項目41から44のいずれか一項に記載の反応器。
(項目46)
イオンに対して選択的透過性の前記1つまたは1つより多くの膜が、前記第1の電極上に固体が析出するのを防止するよう、固体が前記第1の電極を不動態化するのを防止するよう、および/または異なる2種の固体が互いに混入するのを防止するよう構成されている、項目45に記載の反応器。
(項目47)
イオンに対して選択的透過性の前記1つまたは1つより多くの膜が、イオンに対して選択的透過性の2つの膜を含む、項目45または46に記載の反応器。
(項目48)
前記反応器が、前記空間的に変化するpH勾配が、電気分解によって少なくとも一部が確立および/または維持されるよう構成されている、項目42から47のいずれか一項に記載の反応器。
(項目49)
前記電気分解が加水分解を含む、項目48に記載の反応器。
(項目50)
前記出口と連携されており、および前記反応器から固体を取り除くよう構成されている、固体取り扱い装置をさらに備える、項目41から49のいずれか一項に記載の反応器。
(項目51)
電気分解により酸および塩基を生成するステップ、
前記酸に金属塩を溶解するステップ、および
前記塩基に金属水酸化物を沈殿させるステップ
を含む方法。
(項目52)
前記金属塩の金属が、前記金属水酸化物の金属と同じ金属である、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記電気分解が加水分解を含む、項目51から52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記電気分解が、反応器内に空間的に変化する化学組成勾配を生じる、項目51から53のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
前記電気分解が、反応器内に空間的に変化するpH勾配を生じる、項目51から54のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
沈殿物を収集するステップをさらに含む、項目51から55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記金属塩が金属炭酸塩を含む、項目51から56のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
前記金属塩が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび/または炭酸ニッケルを含む、項目51から57のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記金属水酸化物が、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムおよび/または水酸化ニッケルを含む、項目51から58のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記金属水酸化物が水酸化カルシウムを含む、項目51から59のいずれか一項に記載の方法。