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特許7593646BAFF-R/CD19を標的としたキメラ抗原受容体修飾T細胞とその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】BAFF-R/CD19を標的としたキメラ抗原受容体修飾T細胞とその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20241126BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241126BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241126BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241126BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20241126BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241126BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20241126BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/13 ZNA
C12N15/12
C12N15/11 Z
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12N5/0783
A61P35/00
A61P35/02
A61K48/00
A61K39/395 T
A61K39/395 U
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021548701
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 US2020019082
(87)【国際公開番号】W WO2020172440
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】62/808,222
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598004424
【氏名又は名称】シティ・オブ・ホープ
【氏名又は名称原語表記】City of Hope
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】チン,ホン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シウリ
(72)【発明者】
【氏名】クワック,ラリー ウォンシン
(72)【発明者】
【氏名】フォーマン,スティーブン ジェイ.
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/149578(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/237022(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/214167(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/213337(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/214170(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第108728459(CN,A)
【文献】British Journal of Haematology,2018年,Vol.182,pp.939-943
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/
C07K
C12N 5/
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BAFF-R及びCD19をともに標的とするキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、前記キメラ抗原受容体は、
標的化ドメインであって、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、以下の:
a)CD19を標的とするscFv及びBAFF-Rを標的とするscFv、又は
b)CD19 scFvのVLドメイン、BAFF-Rを標的とするscFv及びCD19 scFvのVHドメイン、を含み、その後に、
スペーサードメイン、
膜貫通ドメイン、
共刺激ドメイン、及びCD3ζシグナル伝達ドメイン、
を含む、核酸分子。
【請求項2】
BAFF-R scFvはVHドメイン及びVLドメインを含み、前記VHドメインは、配列番号13~16からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、前記VLドメインは、配列番号17~20からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
BAFF-R scFvはVHドメイン及びVLドメインを含み、前記VHドメインは、配列番号21~24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、前記VLドメインは、配列番号25~28からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記キメラ抗原受容体は、配列番号60、61、62及び63から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の核酸分子。
【請求項5】
前記VLドメインとscFvの間及び/又は前記VHドメインとscFvの間に、各々4~15個のアミノ酸を含むリンカーが存在し、前記リンカーは、G及びSのみを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記共刺激ドメインは、CD28共刺激ドメイン又はアミノ酸の1~5個が修飾されたその変異体、4-1BB共刺激ドメイン又はアミノ酸の1~5個が修飾されたその変異体、及びOX40共刺激ドメイン又はアミノ酸の1~5個が修飾されたその変異体からなる群より選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記膜貫通ドメインは、CD4膜貫通ドメイン又はアミノ酸の1~5個が修飾されたその変異体、CD8膜貫通ドメイン又はアミノ酸の1~5個が修飾されたその変異体、CD28膜貫通ドメイン又はアミノ酸の1~5個が修飾されたその変異体、CD3ζ膜貫通ドメイン又はアミノ酸の1~5個が修飾されたその変異体、共刺激ドメイン又はアミノ酸の1~5個が修飾されたその変異体、並びにCD3ζシグナル伝達ドメイン又はアミノ酸の1~5個が修飾されたその変異体から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項8】
前記スペーサードメインは、IgG4ヒンジ(S→P)、IgG4ヒンジ、IgG4ヒンジ(S228P)+リンカー、CD28ヒンジ、CD8ヒンジ-48aa、CD8ヒンジ-45aa、IgG4(HL-CH3)、IgG4(L235E、N297Q)、IgG4(S228P、L235E、N297Q)、及びIgG4(CH3)、並びに、IgG4ヒンジ(S→P)、IgG4ヒンジ、IgG4ヒンジ(S228P)+リンカー、CD28ヒンジ、CD8ヒンジ-48aa、CD8ヒンジ-45aa、IgG4(HL-CH3)、IgG4(L235E、N297Q)、IgG4(S228P、L235E、N297Q)、及びIgG4(CH3)のアミノ酸の1~5個が修飾された各変異体、からなる群より選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項9】
前記BAFF-R scFvは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域はCDR L1(配列番号1)、CDR L2(配列番号2)及びCDR L3(配列番号3)を含み、かつ、前記重鎖可変領域がCDR H1(配列番号4)、CDR H2(配列番号5)及びCDR H3(配列番号6)を含むか、又は
前記軽鎖可変領域はCDR L1(配列番号7)、CDR L2(配列番号8)及びCDR L3(配列番号9)を含み、かつ、前記重鎖可変領域はCDR H1(配列番号10)、CDR H2(配列番号11)及びCDR H3(配列番号12)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項10】
BAFF-R scFvは、アミノ酸配列が配列番号17~20及び25~28から選択される軽鎖可変ドメインを含み、及び/又は、BAFF-R scFvは、アミノ酸配列が配列番号13~16及び21~24から選択される重鎖可変ドメインを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項11】
CD19 scFvは、配列番号30で表されるアミノ酸配列DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEITを含むVL、及び、配列番号31で表されるアミノ酸配列EVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSSを含むVHを含み、かつ、ここで、
CD19 scFvのVLドメインは配列番号30を含み、CD19 scFvのVHは配列番号31を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項12】
前記請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸分子を含む、ベクター又はレンチウイルスベクター。
【請求項13】
前記請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸分子を含むか、又は、請求項12に記載のベクター又はレンチウイルスベクターによって形質導入されたヒトT細胞の集団又はNK細胞の集団。
【請求項14】
治療有効量を被験体に投与することで被験体のがんを治療するための方法で用いるための、請求項13に記載されたヒトT細胞の集団を含む組成物であって、がんが、リンパ腫、白血病又は骨髄腫である、組成物。
【請求項15】
リンパ腫は、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫若しくはバーキットリンパ腫であるか、又は、白血病が急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病若しくは有毛細胞白血病であるか、又は、骨髄腫が多発性骨髄腫である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
ヒトT細胞の集団は、被験体に対して自己又は同種であるか、又は前記ヒトT細胞集団は、CD4+細胞及びCD8+細胞を含む、請求項14又は15に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
腫瘍特異的T細胞を用いた免疫療法は、遺伝子操作されたT細胞を用いた療法も含めて、抗腫瘍治療について研究されている。
【背景技術】
【0002】
CD19 CAR-T細胞療法は、多くのB-ALL及びリンパ腫患者に有効である。しかしながら、CD19を標的としたCAR-T療法を逃れた抗原欠損変異体による再発が、患者の最大20~30%に起こりうる。CD19陰性B-ALL患者では臨床反応が達成されたことから明らかなように、CD22 CAR-T細胞療法は、CD19抗原喪失からの再発の克服のための代替戦略の1つとして提案されている。しかし、CD22の発現密度は、特に混合型白血病(MLL)では変化し、その発現はCD22標的療法後に減少することが報告された。
【発明の概要】
【0003】
本明細書には、B細胞活性化因子受容体(BAFF-R)及びCD19を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を用いて、B-ALL及びリンパ腫を含むB細胞悪性腫瘍を治療する方法が記載される。ある場合、単一のCARはBAFF-RとCD19をともに標的とする。BAFF-R及びCD19を共に標的とする単一のCARの場合、細胞外標的化部分には、一方の標的に対するscFvが他方のscFvに先行するタンデムフォーマットか、又は2つの標的の一方に対するscFvが他方の標的に対するscFvのVL及びVHドメインの間に配置されるループフォーマットがあってよい。これらのフォーマットのいずれにおいても、当該CARは、膜貫通ドメイン(例えば、CD8膜貫通ドメイン)、共刺激ドメイン(例えば、4-1BB共刺激ドメイン)及びCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む。当該CARはまた、例えば、scFvドメインと膜貫通ドメインとの間、膜貫通ドメインと補助刺激ドメインとの間、及び/又は補助刺激ドメインとCD3ゼータシグナル伝達ドメインとの間に、スペーサー配列を含んでよい。
【0004】
本明細書には、BAFF-R及びCD19をともに標的化されるキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子が記載され、当該キメラ抗原受容体は、アミノ末端からカルボキシ末端まで、BAFF-R及びCD19を標的とする標的化ドメイン;スペーサードメイン;膜貫通ドメイン;共刺激ドメイン;及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0005】
様々な実施形態では、(1)当該標的化ドメインは、アミノ末端からカルボキシ末端まで:a)BAFF-Rを標的化したscFv及びCD19を標的化したscFv;又は、b)CD19を標的化したscFv及びBAFF-Rを標的化したscFvを含み;(2)当該標的化ドメインは、アミノ末端からカルボキシ末端まで:a)CD19 scFvのVLドメイン;BAFF-Rを標的化したscFv;及び、CD19 scFvのVH;又は、(b)CD19 scFvのVHドメイン;BAFF-Rを標的化したscFv;及び、CD19 scFvのVLを含み、かつ、(3)当該標的化ドメインは、アミノ末端からカルボキシ末端まで:a)BAFF-R scFvのVLドメイン;CD19を標的化したscFv;及び、BAFFFのVH;又は、(b)BAFFのVHドメインを含む。-R scFv;CD19を標的とするscFv;及びBAFF-R scFvのVLを含む。
【0006】
本明細書にはまた、BAFF-Rを標的とするキメラ抗原受容体とCD19を標的とするキメラ抗原受容体をともにコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子が記載され、ここで、BAFF-Rを標的とするキメラ抗原受容体は、アミノ末端からカルボキシ末端まで:BAFF-R scFv;スペーサードメイン;膜貫通ドメイン;共刺激ドメイン;及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含み、CD19を標的とするキメラ抗原受容体は、アミノ末端からカルボキシ末端まで:CD19 scFv;スペーサードメイン;膜貫通ドメイン;共刺激ドメイン;及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0007】
様々な実施形態では、共刺激ドメインは、アミノ酸の1~5個が修飾されたCD28共刺激ドメイン又はその変異体、アミノ酸の1~5個が修飾された4-1BB同時刺激ドメイン又はその変異体、及びアミノ酸の1~5個が修飾されたOX40共刺激ドメイン又はその変異体からなる群から選択され、膜貫通ドメインは、アミノ酸の1~5個が修飾されたCD4膜貫通ドメイン又はその変異体、アミノ酸の1~5個が修飾されたCD8膜貫通ドメイン又はその変異体、アミノ酸の1~5個が修飾されたCD28膜貫通ドメイン又はその変異体、及びアミノ酸の1~5個が修飾されたCD3ζ膜貫通ドメイン又はその変異体から選択され、並びにスペーサードメインは、IgG4ヒンジ(S→P)、IgG4ヒンジ、IgG4(S228P)+リンカー、CD28ヒンジ、CD8ヒンジ-48aa、CD8ヒンジ-45aa、IgG4(HL-CH3)、IgG4(L235E、N297Q)、IgG4(S228P、L235E、N297Q)、IgG4(CH3)、及びアミノ酸の1~5個が修飾されたIgG4ヒンジ(S→P)、IgG4ヒンジ、IgG4ヒンジ(S228P)+リンカー、CD28ヒンジ、CD8ヒンジ-48aa、CD8ヒンジ-45aa、IgG4(HL-CH3)、IgG4(L235E、N297Q)、IgG4(S228P、L235E、N297Q)、及びIgG4(CH3)の各変異体からなる群から選択される。
【0008】
様々な実施形態では、(1)BAFF-R scFvは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、当該軽鎖可変領域は、CDR L1(配列番号1)、CDR L2(配列番号2)及びCDR L3(配列番号3)を含み、当該重鎖可変領域は、CDR H1(配列番号4)、CDR H2(配列番号5)及びCDR H3(配列番号6)を含み(2)BAFF-R scFvは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、当該軽鎖可変領域は、CDR L1(配列番号7)、CDR L2(配列番号8)及びCDR L3(配列番号9)を含み、当該重鎖可変領域は、CDR H1(配列番号10)、CDR H2(配列番号11)及びCDR H3(配列番号11)を含む。(3)の BAFF-R scFvは: Chi90 HC、Hu90 HC-1、Hu90 HC-2、Hu90 HC-3、Chi55 HC、Hu55 HC-1、Hu55 HC-2、及びHu55 HC-3から選択される重鎖可変ドメイン、及びChi90 LC、Hu90 LC-1、Hu90 LC-2、Hu90 LC-3、Chi55 LC、Hu55 LC-1、Hu55 LC-2、及びHu55 LC-3から選択される軽鎖可変ドメインを含み;(4)BAFF-R scFvは、配列番号17~20及び25~28から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを含み;(5)BAFF-R scFvは、配列番号13-16及び21-24から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインを含み;(6)CD19 scFvは、以下のアミノ酸配列:DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDQTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFC QQGNTLPYTFGGGTKLEIT(配列番号30)を含むVL及びEVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGG SYAMDYWGQQTSVTVSS(配列番号31)を含むVHを含む。
【0009】
本明細書にはまた、上記の核酸分子の1つ以上を含むベクターも記載される。様々な実施形態では、当該ベクターはレンチウイルスベクターである。本明細書にはまた、記載のベクターによって形質導入されたヒトT細胞の集団も記載される。
【0010】
本明細書にはまた、ヒトT細胞の集団を含む組成物の治療有効量を被験体に投与することを含む、それが必要な被験体のがんの治療方法も記載される。本方法の様々な実施形態では、がんは、リンパ腫、白血病又は骨髄腫であり;リンパ腫は、マントル細胞リンパ腫、濾胞性大B細胞型リンパ腫、辺縁帯リンパ腫又はバーキットリンパ腫であり;白血病は、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病又は有毛細胞白血病であり;骨髄腫は、多発性骨髄腫であり;T細胞の集団は、患者について自家性又は同種異系性であり;かつヒトT細胞の集団は、CD4+細胞及びCD8+細胞を含む。
【0011】
ある実施形態では、BAFF-R scFvとしては、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域があげられ、軽鎖可変領域としては、配列番号7で表されるCDR L1、配列番号8で表されるCDR L2、及び配列番号9で表されるCDR L3があげられ、重鎖可変領域としては、配列番号10に示すCDR H1、配列番号11に示すCDR H2、及び配列番号12に示すCDR H3があげられる。実施形態では、抗体はヒト化抗体である。
【0012】
ある実施形態では、BAFF-R scFvとしては、配列番号1又は7のCDR L1、配列番号2又は8のCDR L2、配列番号3又は9のCDR L3、配列番号4又は10のCDR H1、配列番号5又は11のCDR H2、及び配列番号7又は13のCDR H3があげられる。
【0013】
ある実施形態では、BAFF-R scFvの部分としては、以下の:モノクローナル抗体H90の軽鎖可変ドメイン、モノクローナル抗体H90の重鎖可変ドメイン、又はモノクローナル抗体H55の軽鎖可変ドメイン、及びモノクローナル抗体H55の重鎖可変ドメインがあげられる。重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、5~100個、10~50個、又は10~20個のアミノ酸(例えば、GGGGSGGGGSGGGGS)のリンカーで連結することができる。
【0014】
ある実施形態では、BAFF-R scFvは、以下の:a)モノクローナル抗体H90の軽鎖可変ドメインのヒト化改変体、及びモノクローナル抗体H90の重鎖可変ドメインのヒト化改変体;又はb)モノクローナル抗体H55の軽鎖可変ドメインのヒト化改変体、及びモノクローナル抗体H55の重鎖可変ドメインのヒト化改変体を含む。重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、10~20個のアミノ酸(例えば、GGGGSGGGGSGGGGS)のリンカーで連結することができる。ある場合では、H90軽鎖可変ドメインのヒト化改変体は、Hu90 LC-1、Hu90 LC-2及びHu90 LC-3から選択され、H90重鎖可変ドメインのヒト化改変体は、Hu90 HC-1、Hu90 HC-2及びHu90 HC-3から選択される。ある場合では、H55軽鎖可変ドメインのヒト化改変体は、Hu55 LC-1、Hu55 LC-2及びHu55 LC-3から選択され、H55重鎖可変ドメインのヒト化改変体は、Hu55 HC-1、Hu55 HC-2及びHu90 HC-3から選択される。
【0015】
実施形態では、BAFF-R scFv軽鎖可変領域としては、カバット位置7に対応する位置にセリンを含む。実施形態では、軽鎖可変領域は、カバット位置8に対応する位置にプロリンを含む。実施形態では、軽鎖可変領域は、カバット位置15に対応する位置にバリンを含む。実施形態では、軽鎖可変領域は、カバット位置22に対応する位置にスレオニンを含む。実施形態では、軽鎖可変領域は、カバット位置24に対応する位置にグルタミンを含む。実施形態では、軽鎖可変領域は、カバット位置41に対応する位置にグリシンを含む。実施形態では、軽鎖可変領域は、カバット位置42に対応する位置にリシンを含む。実施形態では、軽鎖可変領域は、カバット位置43に対応する位置にアラニンを含む。実施形態では、軽鎖可変領域は、カバット位置44に対応する位置にプロリンを含む。実施形態では、軽鎖可変領域は、カバット位置56に対応する位置にスレオニンを含む。実施形態では、軽鎖可変領域は、カバット位置72に対応する位置にスレオニンを含む。実施形態では、軽鎖可変領域は、カバット位置73に対応する位置にフェニルアラニンを含む。実施形態では、軽鎖可変領域は、カバット位置79に対応する位置にグルタミンを含む。実施形態では、軽鎖可変領域は、カバット位置104に対応する位置にバリンを含む。
【0016】
実施形態では、BAFF-R scFv軽鎖可変領域は、カバット位置7に対応する位置にセリン、カバット位置8に対応する位置にプロリン、カバット位置15に対応する位置にバリン、カバット位置22に対応する位置にスレオニン、カバット位置24に対応する位置にグルタミン若しくはセリン、カバット位置41に対応する位置にグリシン、カバット位置42に対応する位置にリシン、カバット位置43に対応する位置にアラニン若しくはスレオニン、カバット位置44に対応する位置にプロリン、カバット位置56に対応する位置にスレオニン、カバット位置72に対応する位置にスレオニン、フェニルアラニン若しくはリシン、カバット位置73に対応する位置にグルタミン、カバット位置79に対応する位置にグルタミン、又はカバット位置104に対応する位置にバリンを含む。
【0017】
実施形態では、BAFF-R scFv軽鎖可変領域は、カバット位置7に対応する位置にセリン、カバット位置8に対応する位置にプロリン、カバット位置15に対応する位置にバリン、カバット位置22に対応する位置にスレオニン、カバット位置24に対応する位置にグルタミン若しくはセリン、カバット位置41に対応する位置にグリシン、カバット位置42に対応する位置にリシン、カバット位置43に対応する位置にアラニン若しくはスレオニン、カバット位置44に対応する位置にプロリン、カバット位置56に対応する位置にスレオニン、カバット位置72に対応する位置にスレオニン、フェニルアラニン若しくはリシン、カバット位置73に対応する位置にグルタミン、カバット位置79に対応する位置にグルタミン、又はカバット位置104に対応する位置にバリンを含む結合フレームワーク領域残基を含む。
【0018】
実施形態では、BAFF-R scFv重鎖可変領域は、カバット位置10に対応する位置にスレオニン又はアラニンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置11に対応する位置にリシンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置12に対応する位置にバリンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置15に対応する位置にスレオニンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置19に対応する位置にスレオニンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置23に対応する位置にスレオニンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置41に対応する位置にプロリンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置44に対応する位置にアラニンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置61に対応する位置にプロリン又はスレオニンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置66に対応する位置にアルギニンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置70に対応する位置にスレオニンを含む。実施形態では、重鎖可変領域はカバット位置75に対応する位置にリシンを含む。実施形態では、重鎖可変領域はカバット位79に対応する位置にバリンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置81に対応する位置にスレオニンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置82に対応する位置にメチオニンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置82Bに対応する位置にアスパラギンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置82Cに対応する位置にメチオニンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置84に対応する位置にプロリンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置85に対応する位置にバリンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置108に対応する位置にリシンを含む。実施形態では、重鎖可変領域は、カバット位置109に対応する位置にバリンを含む。
【0019】
実施形態では、BAFF-R scFv重鎖可変領域は、カバット位置10に対応する位置にスレオニン又はアラニン、カバット位置11に対応する位置にリジン、カバット位置12に対応する位置にバリン、カバット位置15に対応する位置にスレオニン、カバット位置19に対応する位置にスレオニン、カバット位置23に対応する位置にスレオニン、カバット位置41に対応する位置にプロリン、カバット位置44に対応する位置にアラニン、カバット位置61に対応する位置にプロリン、セリン又はスレオニン、カバット位置66に対応する位置にアルギニン、カバット位置70に対応する位置にスレオニン、カバット位置75に対応する位置にリシン、カバット位置79に対応する位置にバリン、位置81に対応する位置にスレオニン又はリシン、カバット位置82に対応する位置にメチオニン、カバット位置82Bに対応する位置にアスパラギン、カバット位置82Cに対応する位置にメチオニン、カバット位置84に対応する位置にプロリン、カバット位置85に対応する位置にバリン、カバット位置108に対応する位置にリシン、又はカバット位置109に対応する位置にバリンを含む。
【0020】
実施形態では、BAFF-R scFv重鎖可変領域は、カバット位置10に対応する位置にスレオニン又はアラニン、カバット位置11に対応する位置にリジン、カバット位置12に対応する位置にバリン、カバット位置15に対応する位置にスレオニン、カバット位置19に対応する位置にスレオニン、カバット位置23に対応する位置にスレオニン、カバット位置41に対応する位置にプロリン、カバット位置44に対応する位置にアラニン、カバット位置61に対応する位置にプロリン、セリン又はスレオニン、カバット位置66に対応する位置にアルギニン、カバット位置70に対応する位置にスレオニン、カバット位置75に対応する位置にリシン、カバット位置79に対応する位置にバリン、位置81に対応する位置にスレオニン又はリシン、カバット位置82に対応する位置にメチオニン、カバット位置82Bに対応する位置にアスパラギン、カバット位置82Cに対応する位置にメチオニン、カバット位置84に対応する位置にプロリン、カバット位置85に対応する位置にバリン、カバット位置108に対応する位置にリシン、又はカバット位置109に対応する位置にバリンを含む結合フレームワーク領域残基を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】タンデム構造の2つの例及びBAFF-R/CD19二重(dual)CARのループ構造の1つの例の概略図である。また、1つの細胞がBAFF-Rを標的とし、もう1つがCD19を標的とする2つのCARを発現する二シストロン性構築物の例も示される。
【0022】
図2】シグナル配列(配列番号58)を含む、未成熟1250二重CARのアミノ酸配列を示す図である。成熟CAR (配列番号59)は、アミノ末端からカルボキシ末端まで、以下の:BAFF-R scFv、リンカー、CD19 scFv(FMC63由来)、IgG4(SmP/L235E,N297Q)スペーサードメイン、CD4膜貫通(transmembrane)ドメイン、4-1BB細胞質(cyto)ドメイン、GGリンカー、及びCD3シグナル伝達ドメインを含む。
【0023】
図3】シグナル配列(配列番号60)を含む、未成熟1296二重CARのアミノ酸配列を示す図である。成熟CAR (配列番号61)は、アミノ末端からカルボキシ末端まで、以下の:CD19 scFv(FMC63由来)、リンカー、BAFF-R scFv、IgG4(SmP/L235E,N297Q)スペーサードメイン、CD4膜貫通(transmembrane)ドメイン、4-1BB細胞質(cyto)ドメイン、GGリンカー、及びCD3シグナル伝達ドメインを含む。
【0024】
図4】シグナル配列(配列番号62)を含む、未成熟1316二重CARのアミノ酸配列を示す図である。成熟CAR (配列番号63)は、アミノ末端からカルボキシ末端まで、以下の:CD19 VL(FMC63由来)、GGGSリンカー、BAFF-R scFv、CD19 VH(FMC63由来)、IgG4(SmP/L235E,N297Q)スペーサードメイン、CD4膜貫通(transmembrane)ドメイン、41BB細胞質(cyto)ドメイン、GGリンカー、及びCD3シグナル伝達ドメインを含む。
【0025】
図5】(A)シグナル配列(配列番号64)を含む未成熟CD19 CAR、及びシグナル配列(配列番号66)を含む未成熟BAFF-R CARのアミノ酸配列を示す図である。成熟CD19 CAR(配列番号65)は、アミノ末端からカルボキシ末端まで、以下の:CD19 scFv(FMC63由来)、IgG4(SmP/L235E,N297Q)スペーサードメイン、CD28膜貫通(transmembrane)ドメイン、CD28(GG)細胞質(cyto)ドメイン、GGリンカー、及びCD3シグナル伝達ドメインを含む。成熟BAFF-R CAR (配列番号67)は、アミノ末端からカルボキシ末端まで、以下の:BAFF-R scFv、IgG4(SmP/L235E,N297Q)スペーサードメイン、CD4膜貫通ドメイン、4-1BB細胞質ドメイン、GGGリンカー、及びCD3シグナル伝達ドメインを含む。
【0026】
図6】BAFF-R/CD19二重CARを発現するベクターの例の概略図である。BAFF-R及びCD19 scFvエレメントを変えて、二重CARの配列を変えることができる。切断EGFR(EGFRt)は選択マーカーとして発現する。
【0027】
図7】二重CAR発現の研究の結果を示す図である。T細胞(Jurkat)を、各CAR構築物又は空ベクター(mock)で形質導入した。当該細胞を、タンパク質L-又はEGFR-APC結合抗体で染色した。タンパク質LはscFvの可変軽鎖を標的とし、切断EGFRをCARベクターで共発現させる。二重CARを適当に発現できる構築物をさらに検討した。二重CAR 1296及び二重CAR 1316は、完全なCAR及びEGFRt選択マーカーを発現したが、二重CAR 1250は、完全CARを発現しなかった。
【0028】
図8】標的細胞とのインキュベーション後の1250二重CAR T細胞脱顆粒を評価するFACSアッセイの結果を示す図である。標的細胞は、BAFF-R単独陽性、CD19単独陽性、又はBAFF-R及びCD19二重陰性のいずれかである。対照BAFF-R単一CAR及び非形質導入T細胞(非CAR)を対照として用いた。1250二重CARはBAFF‐R陽性L細胞に対する応答を誘導せず、BAFF‐R標的化scFvが適当に発現していないことが示唆された。
【0029】
図9】BAFF-R/CD19二重CARの研究モデルの開発に用いられる細胞系の発生に関連する分析の結果を示す図である。二重CARモデル開発に用いたNalm-6ノックアウト株のFACSヒストグラム。BAFF-R(左)又はCD19(右)をノックアウトするため、Nalm-6 B-ALL腫瘍株をCRISPRで編集した。市販のBAFF-R及びCD19抗体を用いたFACS染色で、表面タンパク質の発現を確認した。Nalm‐6野生型(WT)を対照として用いた。
【0030】
図10図10A~10Bは、BAFF-R/CD19二重CARのCTL機能の分析結果を示す図である。グラフは、Nalm-6 ALL腫瘍株に対する細胞傷害性Tリンパ球アッセイから算出された特異的溶解をプロットしたものである。標的細胞株Nalm-6(WT、CD19ノックアウト、又はBAFF-Rノックアウト変異体)をクロミウム-51で標識し、エフェクターCAR T細胞とインキュベートした。CARには、BAFF-R/CD19二重標的CAR:A. 1296及び1250又はB. 1296及び1316が含まれ、両パネルの対照には、単一標的CAR:BAFF-R CAR及びCD19 CAR並びに非形質導入T細胞(非CAR、同種対照)が含まれた。全てのT細胞は、各パネルにおいて単一の健常ドナーに由来した。エフェクターT細胞機能による標的細胞から放出されたクロムをガンマカウンターで測定し、可能な最大放出のパーセンテージとして計算した。実験は3回実施し、スチューデントt検定、A. ** P<0.001、及びB.**P<0.001 c/w非CAR対照により分析した。1250のCAR CTL二重データは、BAFF-R標的欠損の可能性を示唆している。
【0031】
図11図11A-11Bは、BAFF-Rplus CD19欠損型混合型B-ALL腫瘍におけるBAFF-R/CD19二重CARの活性を示す図である。A) 1×10 RFP陰性、ルシフェラーゼ発現Nalm-6-CD19KO+2.5×10 RFP陽性、ルシフェラーゼ発現Nalm-6-BAFF-RKO腫瘍細胞の混合物による0日目のIV腫瘍誘発後のNSGマウスの生物発光イメージ。次いで、5匹の腫瘍マウス群を、各々、単回注入として、10日目に2.5×10個のCD4 TN CAR-T + 10個のCD8 T 1296又は1316の二重CAR T細胞/マウスIVのいずれかによる治療に無作為に割り付けた。同一ドナー由来の非形質導入CD4/CD8 T細胞を同種対照(非CAR)として用いた。B) 全生存期間のカプランマイヤープロットを示す。ログランク検定は、示されているように実験群を比較する。1316治療の延命効果は、1296治療と比較して有意であった。
【0032】
図12図12は、ノックアウト腫瘍に対する1316 BAFF-R/CD19二重CARの活性を示す図である。CD107a脱顆粒アッセイにより測定したBAFF-R CAR T細胞の機能のFACSプロットである。CD4又はCD8 BAFF-R CAR T細胞を、CD19BAFF-R+ Nalm-6又はCD19+ BAFF-RNalm-6株のいずれかと同時にインキュベートした。単一標的CD19又はBAFF-R CAR T細胞を対照として用いた。
【0033】
図13図13A-13Bは、混合B-ALL腫瘍におけるTN/MEM 1316 BAFF-R/CD19二重CARの活性を示す図である。A) 1×10のRFP陰性、ルシフェラーゼ発現Nalm-6-CD19KO+1×10のRFP陽性、ルシフェラーゼ発現Nalm-6-BAFF-RKO腫瘍細胞の混合物による0日目のIV腫瘍誘発後のNSGマウスの生物発光イメージ。次いで、各群5匹の腫瘍マウスを、低用量(2.8×10N/MEM)、高用量(5.6×10N/MEM)のいずれかを単回注入し、それぞれ1×10及び2×10 BAFF-R CAR T細胞を産生させ、9日目に1316の二重CAR T細胞/マウス静脈内投与に無作為に割り付けた。又は同一ドナー由来の5×10個の非形質導入TN/MEM細胞を同種対照(非CAR)として用いた。B) 全生存期間のカプランマイヤープロットを示す。ログランク検定は、示されているように実験群を比較する。2回の投与間で生存率に有意差は認められなかった。
【発明を実施するための形態】
【0034】
BAFF-R/CD19二重CAR及びBAFF-R/CD19二シストロン性CARは、様々なBAFF-R scFv及びCD19 scFvのいずれかを用いることができ、第一のscFvが第二のscFvの可変ドメインの間に位置するBAFF-R/CD19二重CARの場合、様々なVL及びVHのいずれかを用いることができる。
【0035】
図1は、BAFF-R scFvがCD19 scFvのアミノ末端であり、CD19 scFvがBAFF-R scFvのアミノ末端であるタンデム構築物の2つの例の概略図である。また、BAFF-R/CD29二重CAR用のループ構築体の一例を示す。この実施例では、BAFF-Rは、CD19 VL(scFvのアミノ末端)とCD19 VHドメイン(scFvのカルボキシ末端)の間に位置する。1つの細胞が2つのCARを発現し、1つはBAFF-Rを標的とし、もう1つがCD19を標的とする、二シストロン性構築物の例もまた、示される。
【0036】
BAFF-R scFv配列
BAFF-R/CD19二重CARで用いられるBAFF-R scFv配列は、2つのモノクローナル抗体、クローン90及びクローン55から誘導することができる。これらは、米国PCT/US2017/036181に詳細に記載されている。例えば、VLは、以下に記載されるC90 CDR配列又はC55 CDR配列を含んでよい。
【0037】
C90 CDR L1: ESVDNYGISF (配列番号1)
【0038】
C90 CDR L2: AAS (配列番号2)
【0039】
C90 CDR L3: QQSKEVPWT (配列番号3)
【0040】
C90 CDR H1: GDSITSGY (配列番号4)
【0041】
C90 CDR H2: ISYSGST (配列番号5)
【0042】
C90 CDR H3: ASPNYPFYAMDY (配列番号6)
【0043】
C55 CDR L1: QDISNY (配列番号7)
【0044】
C55 CDR L2: YTS (配列番号8)
【0045】
C55 CDR L3: FSELPWT (配列番号9)
【0046】
C55 CDR H1: GFSLSTSGMG (配列番号10)
【0047】
C55 CDR H2: IWWDDDK (配列番号11)
【0048】
C55 CDR H3: ARSFGYGLDY (配列番号12)
【0049】
二重CARのBAFF-R scFvで用いるのに適する重鎖可変ドメイン(VH)には、モノクローナル抗体クローン90(PCT/US2017/036181により詳細に記載されている)に由来する以下の重鎖可変ドメインがある。これらのうち、Hu90 HC-1、HC-2及びHC-3はヒト化されている。
【0050】
Chi90 HC:
【化1】
(配列番号13)
【0051】
Hu90 HC-1:
【化2】
(配列番号14)
【0052】
Hu90 HC-2:
【化3】
(配列番号15)
【0053】
Hu90 HC-3:
【化4】
(配列番号16)
【0054】
二重CARのBAFF-R scFvで用いるのに適する軽鎖可変ドメイン(VL)には、モノクローナル抗体クローン90(PCT/US2017/036181により詳細に記載されている)に由来する以下の重鎖可変ドメインがある。これらのうち、Hu90 LC-1、LC-2及びLC-3はヒト化されている。
【0055】
Chi90 LC:
【化5】
(配列番号17)
【0056】
HuC90 LC-1:
【化6】
(配列番号18)
【0057】
Hu90 LC-2:
【化7】
(配列番号19)
【0058】
HuC90 LC-3:
【化8】
(配列番号20)
【0059】
二重CARのBAFF-R scFvで用いるのに適する重鎖可変ドメイン(VH)の中には、モノクローナル抗体クローン55(PCT/US2017/036181により詳細に記載されている)に由来する以下の重鎖可変ドメインもある。これらのうち、Hu55 HC-1、HC-2及びHC-3はヒト化されている。
【0060】
Chi55 HC:
【化9】
(配列番号21)
【0061】
Hu55 HC-1:
【化10】
(配列番号22)
【0062】
Hu55 HC-2:
【化11】
(配列番号23)
【0063】
Hu55 HC-3:
【化12】
(配列番号24)
【0064】
また、二重CARのBAFF-R scFvで用いるのに適する軽鎖可変ドメイン(VL)の中には、モノクローナル抗体クローン90(PCT/US2017/036181により詳細に記載されている)に由来する以下の重鎖可変ドメインがある。これらのうち、Hu55 LC-1、LC-2及びHC-3はヒト化されている。
【0065】
Chi55 LC:
【化13】
(配列番号25)
【0066】
Hu55 LC-1:
【化14】
(配列番号26)
【0067】
Hu55 LC-2:
【化15】
(配列番号27)
【0068】
Hu55 LC-3:
【化16】
(配列番号28)
【0069】
BAFF-R scFvのVH及びVLドメインを修飾することができる。従って、scFv中のHu90 LC-1、Hu90 LC-2、Hu90 LC-3、Hu90 HC-1、Hu90 HC-2及びHu90 HC-3、Hu55 LC-1、Hu55 LC-2、Hu55 LC-3、Hu55 HC-1、Hu55 HC-2及びHu90 HC-3の各々は、1、2、3、4又は5個の単一アミノ酸置換を含むことができる。ある場合、置換はCDRではなくフレームワーク領域(FR)に限定される。ある場合の置換は、保存的置換である。
【0070】
CDR及びFRの位置は、カバット番号付けシステム(Kabatら、免疫学的に注目されるタンパク質の塩基配列第5版米国保健社会福祉省、米国印刷局(1991)))で特定される。同様に、抗体の軽鎖又は重鎖内の個々の残基によって占有される位置は、カバット番号付けシステムによって特定されうる。従って、ヒト化抗体のヒト化軽鎖及びヒト化重鎖内での結合に必要な残基の位置は、当技術分野で周知のように、カバット番号付けシステムによる残基の位置で特定することができる。上記のように、ヒト化抗体は、ドナー抗体(例えば、マウス)由来のCDR及びヒト抗体由来の可変領域フレームワーク(FR)がある抗体でありうる。フレームワーク領域(FR)は、ヒト化抗体中のCDRを所定の位置に保持するといわれる。これらの領域は、アミノ末端から順に、軽鎖についてはFR L1、FR L2、FR L3及びFR L4と、重鎖についてはFR H1、FR H2、FR H3及びFR H4と、命名される。
【0071】
CD19 scFv配列
BAFF-R/CD19二重CARでは、CD19を標的とする様々なscFvを用いることができる。
【0072】
FMC63 scFv:
【化17】
(配列番号29)
【0073】
FMC63 VL
【化18】
(配列番号30)
【0074】
FMC63 VH:
【化19】
(配列番号31)
【0075】
CD19と結合するさらなるscFvは、米国特許出願公開第2016/0152723号及び国際公開第2016/033570号に記載されている。
【0076】
スペーサー領域
本明細書に記載される二重CAR及び二シストロン性CARは、標的化ドメイン(例えば、scFv)と膜貫通ドメインとの間に位置するスペーサーを含むことができる。様々な異なるスペーサーを用いることができる。それらのいくつかは、ヒトFc領域の少なくとも一部、例えば、ヒトFc領域のヒンジ部分、又はCH3ドメイン若しくはその変異体を含む。以下の表1は、本明細書に記載されるCARで用いられうる様々なスペーサーを提供する。
表1:スペーサーの例
【表1】
【0077】
いくつかのスペーサー領域は、免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)ヒンジ領域、すなわち、免疫グロブリンのCH1及びCH2ドメインの間にある配列、例えば、IgG4 Fcヒンジ又はCD8ヒンジの全部又は一部を含む。いくつかのスペーサー領域は、免疫グロブリンCH3ドメイン又はCH3ドメイン及びCH2ドメインをともに含む。免疫グロブリン由来の配列は、1個以上のアミノ酸修飾、例えば、1、2、3、4又は5個の置換、例えば、オフターゲット結合を低下させる置換を含むことができる。
【0078】
ヒンジ/リンカー領域はまた、配列ESKYGPPCPSCP(配列番号34)又はESKYGPPCPPCP(配列番号33)を有するIgG4ヒンジ領域を含むことができる。
【0079】
ヒンジ/リンカーはまた、配列ESKYGPPCPPCP(配列番号33)、続いてリンカー配列GGGSSGGGSG(配列番号32)、続いて以下のIgG4 CH3配列
【化20】
(配列番号41)を含むことができる。従って、リンカー/スペーサー領域全体は、以下の配列:
【化21】
(配列番号_)という配列を含むことができる。ある場合、当該スペーサーには、配列番号__と比較して、1、2、3、4、又は5個の単一アミノ酸変化(例えば、保存的変化)がある。ある場合、IgG4 Fcヒンジ/リンカー領域は、Fc受容体(FcR)による結合を低下させるように、2つの位置(L235E;N297Q)で変異される。
【0080】
膜貫通ドメイン
本明細書中に記載される二重CAR及び二シストロン性CARには、様々な膜貫通ドメインが用いられうる。表2は、適当な膜貫通ドメインの例を含む。スペーサー領域が存在する場合、膜貫通ドメインは、スペーサー領域のカルボキシ末端に位置する。
表2:膜貫通ドメインの例
【表2】
【0081】
共刺激ドメインとCD3ゼータドメイン
共刺激ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインと共に用いるのに適したいかなるドメインでありうる。ある場合、共刺激ドメインは、以下の配列:
【化22】
(配列番号52:LLからGGへのアミノ酸変化に二重下線を付した)と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一である配列を含むCD28共刺激ドメインである。ある場合、CD28共シグナル伝達ドメインには、配列番号23と比較して、5個のアミノ酸変化(好ましくは、保存的であり、好ましくは、下線を付したGG配列中に存在しない)のうち、1、2、3、4個がある。ある場合、共シグナル伝達ドメインは、以下の配列:
【化23】
(配列番号54)と、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%と同一又は同一である配列を含む4-1BBの共シグナル伝達ドメインである。ある場合、当該4-1BB共シグナル伝達ドメインには、配列番号24と比較して1、2、3、4又は5個のアミノ酸変化(好ましくは保存的)がある。
【0082】
当該共刺激ドメインは、膜貫通ドメインとCD3ζシグナル伝達ドメインの間に位置する。表3は、CD3ζシグナル伝達ドメインの配列と共に、適当な共刺激ドメインの例を含む。
表3: CD3ζドメインと共刺激ドメインの例
【表3】
【0083】
様々な実施形態では、共刺激ドメインは、表3に示される共刺激ドメイン又は1~5個(例えば、1又は2個)のアミノ酸修飾があるその変異体、1~5個(例えば、1又は2個)のアミノ酸修飾があるCD28共刺激ドメイン又はその変異体、1~5個(例えば、1又は2個)のアミノ酸修飾がある4-1BB共刺激ドメイン又はその変異体、及び1~5個(例えば、1又は2個)のアミノ酸修飾があるOX40共刺激ドメイン又はその変異体からなる群から選択される。特定の実施形態では、4-1BB共刺激ドメイン又はその変異体には、1~5個(例えば、1又は2個)のアミノ酸修飾がある。ある実施形態では、2つの共刺激ドメイン、例えば、1~5個(例えば、1又は2個)のアミノ酸修飾(例えば、置換)があるCD28共刺激ドメイン又はその変異体、及び1~5個(例えば、1又は2個)のアミノ酸修飾(例えば、置換)がある4-1BB共刺激ドメイン又はその変異体が存在する。様々な実施形態では1~5個(例えば、1又は2個)のアミノ酸修飾は置換である。当該共刺激ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインのアミノ末端であり、ある場合、2~10からなる短いリンカー、例えば、3つのアミノ酸(例えば、GGG)が、共刺激ドメインとCD3ζシグナル伝達ドメインの間に位置している。
【0084】
CD3ζシグナル伝達ドメイン
CD3ζシグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインと共に用いるのに適したいかなるドメインでありうる。ある場合、CD3ζシグナル伝達ドメインは、以下の配列:
【化24】
(配列番号51)と少なくとも90%、少なくとも95%、同一又は同一である配列を含む。ある場合、CD3ζシグナル伝達には、配列番号51と比較して、5個のアミノ酸変化のうち1、2、3、4個(好ましくは保存的)がある。
【0085】
切断型上皮成長因子受容体
CD3ζシグナル伝達ドメインの後には、リボソームスキップ配列(例えば、LEGGGEGRGSLLTCGDVEENPGPR;配列番号56)及び、以下の配列:
【化25】

(配列番号57と)少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%と同一又は同一である配列を有する切断型EGFRが続くことができる。ある場合、切断型EGFRには、配列番号57と比較して、5個のアミノ酸変化のうち1、2、3、4個(好ましくは保存的)がある。
【0086】
「アミノ酸修飾」とは、タンパク質又はペプチド配列におけるアミノ酸置換、挿入、及び/又は欠失を意味する。「アミノ酸置換」又は「置換」とは、親ペプチド又はタンパク質配列中の特定の位置のアミノ酸を別のアミノ酸で置換することをいう。当該置換により、非保存的様式(すなわち、コドンを、特定の大きさや特徴を持つアミノ酸のグループに属するアミノ酸から、他のグループに属するアミノ酸へと変化させることにより)で、又は保存的様式(すなわち、コドンを、特定の大きさや特徴を持つアミノ酸のグループに属するアミノ酸と同じグループに属するアミノ酸に変化させることにより)で、得られたタンパク質中のアミノ酸を変化させることができる。そのような保守的な変化は、一般に、結果として生じるタンパク質の構造及び機能の変化がより小さい。以下は、アミノ酸の様々な群:1)非極性R基があるアミノ酸:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン;2)非荷電極性R基があるアミノ酸:グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン;3)荷電極性R基があるアミノ酸(pH 6.0で負に荷電):アスパラギン酸、グルタミン酸;4)塩基性アミノ酸(pH 6.0で正に荷電):リジン、アルギニン、ヒスチジン(pH 6.0で正に荷電);の例示である。他の群はフェニル基があるアミノ酸、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンである。
【0087】
CARは、図9(配列番号29~40)に示された成熟アミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるか、又は同一である配列を含むことができ、GMCSFRaシグナル配列を含むか、又は含まないか、並びにT2Aリボソームスキップ配列及び切断型EGFRtを含むか、又は含まないかのいずれかである。
【0088】
ある場合、CARオープンリーディングフレームの後にT2Aリボソームスキップ配列と、細胞質シグナル伝達尾部欠損切断型EGFR(EGFRt)が続くベクターを用いてCARを産生することができる。この配列では、EGFRtの共発現により、遺伝子改変細胞が正確に測定できる、遺伝子改変細胞の正の選択、並びに養子移入後の治療用T細胞の生体内での効率的な細胞追跡ができる不活性な非免疫原性表面マーカーを提供する。サイトカインストーム及び標的外毒性を回避するための増殖の効率的な制御は、T細胞免疫療法の成功の重要なハードルである。CARレンチウイルスベクターに取り込まれたEGFRtは、治療関連毒性の場合にCAR+ T細胞を除去する自殺遺伝子として作用することができる。
【0089】
本明細書中に記載されるCARは、好ましくは組換えDNA技術を用いて製造されるが、当技術分野で公知のいかなる手段によって製造されうる。キメラ受容体のいくつかの領域をコードする核酸は、当技術分野で公知の分子クローニングの標準的な技術(ゲノムライブラリースクリーニング、オーバーラップPCR、プライマー支援ライゲーション、部位特異的突然変異誘発など)により、簡便に調製し、完全なコード配列に組み立てることができる。得られたコード領域は、好ましくは発現ベクターに挿入され、好適な発現宿主細胞系、好ましくはTリンパ球細胞系、最も好ましくは自己Tリンパ球細胞系を形質転換するために用いられる。
【0090】
患者から単離された様々なT細胞サブセットを、CAR発現用ベクターで形質導入することができる。セントラルメモリーT細胞は、有用なT細胞サブセットの1つである。セントラルメモリーT細胞は、例えば、CliniMACS(登録商標)装置を用いて、所望の受容体を発現する細胞を免疫磁気的に選択して、CD45RO+/CD62L+細胞を選択することにより、末梢血単核細胞(PBMC)から単離することができる。セントラルメモリーT細胞用に濃縮された細胞は、抗CD3/CD28で活性化され得、例えば、CARの発現を指示するレンチウイルスベクター、並びにインビボ検出、アブレーション、及び潜在的ex vivo選択用の非免疫原性表面マーカーで形質導入されうる。活性化/遺伝子修飾されたセントラルメモリーT細胞は、IL-2/IL-15を用いてインビトロで増殖させた後、凍結保存することができる。
【実施例1】
【0091】
二重CAR発現用T細胞集団の調製
BAFF-CD19二重CARの発現用に以下のT細胞集団:CD4+ナイーブT細胞(CD4+TN)、CD8+ナイーブT細胞(CD8+TN)、CD8+セントラルメモリーT細胞(CD8+TCM)、CD8+メモリー幹細胞(CD8+MSC)及びPan T細胞(Pan T)を調製することができる。簡潔には、5mLの血液試料を5mLのヒストパーク-1077(Sigma Aldrich)に加える。混合物を2500 RPM(室温、ブレーキなし)で20分間遠心分離する。中期末梢血単核細胞(PBMC)層を収集し、50mLのPBS(Corning)で洗浄し、1500 RPM(RT)で5分間遠心分離する。採取した細胞を10mLの赤血球溶解緩衝液(Qiagen)と混合し、7分間インキュベートする。次いで、細胞をPBSで洗浄し、5分間遠心分離する(1500 RPM、RT)。
【0092】
様々なT細胞集団は、製造業者の指示書を用いてStemCell Technologies, Inc.から入手可能な以下のキット: EasySepTM Human Naive CD4+ T細胞増菌キット(CD4+ TN)、EasySepTM Human Naive CD8+ T細胞増菌キット(CD8+ TN)、及びEasySepTM Human T細胞増菌キット(Pan T);を用いて調製することができる。CD8+ TCMは、製造業者の指示書を用いてStemCell Technologies, Inc.からEasySepTM Human CD8+ T細胞増菌キットを用いてCD8+ T細胞を単離し、次いで、CD8-PerCP-Cy5.5、CD45 RO-APC、及びCD62L-PEで染色することによって調製することができる。次いで、染色された細胞を選別して、CD8+/CD45+/CD62L+トリプル陽性細胞を単離する。CD8+メモリー幹細胞(CD8+ MSC)は、表4に示す培養条件を用いてCD8+ TNから作製することができる。他のT細胞集団は、表4に示すように培養することができる。
【表4】
【実施例2】
【0093】
BAFF-R/CD19二重CARの配列決定
様々なBAFF‐R/CD19二重CARを調製した。1250二重CAR(配列番号59)は、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて:BAFF-R scFv、リンカー、CD19 scFv(FMC63由来)、IgG4(SmP/L235E,N297Q)スペーサードメイン、CD4膜貫通ドメイン、41BB細胞質ドメイン、GGリンカー、及びCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む(図2)。1296二重CAR(配列番号61)は、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて:CD19 scFv(FMC63由来)、リンカー、BAFF-R scFv、IgG4(SmP/L235E,N297Q)スペーサードメイン、CD4膜貫通ドメイン、41BB細胞質ドメイン、GGリンカー、及びCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む(図3)。1316二重CAR(配列番号63)は、アミノ末端からカルボキシ末端にむけて:CD19 VL(FMC63由来)、GGGSリンカー、BAFF-R scFv、CD19 VH(FMC63由来)、IgG4(SmP/L235E,N297Q)スペーサードメイン、CD4膜貫通ドメイン、41BB細胞質ドメイン、GGリンカー、及びCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む。
【0094】
二シストロン性CARは、レンチウイルスベクターを用いてBAFF-R CAR及びCD19 CARを発現する。2つのCARは同じT細胞で発現する。成熟CD19 CAR(配列番号65)は、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて:CD19 scFv(FMC63由来)、IgG4(SmP/L235E,N297Q)スペーサードメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28(GG)細胞質ドメイン、GGGリンカー、及びCD3シグナル伝達ドメインを含むことができる。成熟BAFF-R CAR (配列番号67)は、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて:BAFF-R scFv、IgG4(SmP/L235E,N297Q)スペーサードメイン、CD4膜貫通ドメイン、4-1BB細胞質ドメイン、GGGリンカー、及びCD3シグナル伝達ドメインを含むことができる。
〔実施例2〕BAFF-R/CD19二重CARを発現するレンチウイルスベクターの調製
【0095】
図5は、1250二重CAR発現用レンチウイルスベクターの概略図である。1296二重CAR及び1316二重CARは、類似のレンチウイルスベクター(svFv部分の置換)を用いて作製した。
【実施例3】
【0096】
CAR発現細胞の調製
CD3/CD28ヒトT細胞活性化ビーズ(Thermo Fisher)と細胞に対するビーズ比1:1で細胞を混合し、一晩インキュベート(加湿5% CO、37℃)することで、二重CARを発現するレンチウイルスベクターを用いて形質導入のための調製において細胞を活性化した。インキュベーション後、細胞を計数し、48穴プレート中に1×10細胞/穴を分配した。細胞をMOI1で感染させた。各々の場合、全培養培地を250μLに補足し、30分間遠心分離した(800g、RT)。細胞を一晩インキュベートし(加湿5% CO、37℃)、次いで表1に示された培地中で10日間培養する。CD4+ TN、CD8+ TN、CD8+ TCM、及びPan T細胞の培養物は、CD3/CD28ビーズを1:1の細胞対ビーズ比で含んでいた。CD8+ T MSCの培養物は、CD3/CD28ビーズを含まなかった。CARの発現は、フローサイトメトリーを用いてGFP陽性細胞の比率によって評価した。
【実施例4】
【0097】
CARの発現
T細胞(Jurkat)を、各CAR構築物又は空ベクターで形質導入した。CARの発現を評価するため、細胞をプロテインL-又はEGFR-APC結合抗体で染色した。タンパク質LはscFvの可変軽鎖を標的とし、切断型EGFRはCARベクターによって共発現される。二重CARを適当に発現することができる構築物をさらに検討した。図7に見られるように、二重CAR1296及び二重CAR1316は、完全型CAR及びEGFRt選択マーカーを発現したが、二重CAR1250は、完全型CARを発現しなかった。
【実施例5】
【0098】
BAFF-R標的CAR T細胞によるインビトロ細胞殺傷
1296二重CAR、1316二重CAR、CD19 CAR又はBAFF-R CAR細胞を発現する様々なT細胞集団を用いるインビトロアッセイである。標的細胞株Nalm-6(WT、CD19ノックアウト、又はBAFF-Rノックアウト変異体)をクロミウム-31で標識し、エフェクターCAR T細胞とインキュベートした。CARには、BAFF-R/CD19二重標的CAR:1296及び1316;単一標的CAR:BAFF-R CAR及びCD19 CARが含まれた。非形質導入T細胞(非CAR)を同種対照として用いた。全T細胞は、単一の健常ドナーに由来した。エフェクターT細胞機能による標的細胞から放出されたクロムをガンマカウンターで測定し、可能な最大放出比率として計算した。図8に見られるように、1250二重CARは、BAFF-R-標的化scFvが適当に発現されないことを示唆するBAFF-R-陽性L細胞に対する応答を誘導しなかった。
【実施例6】
【0099】
BAFF-R及びCD19欠損マウスモデル
Nalm-6 B-ALL腫瘍株をCRISPRで遺伝子編集して、BAFF-R又はCD19をノックアウトした。市販のBAFF-R及びCD19抗体を用いたFACS染色により、表面タンパク質の発現を確認した。Nalm‐6野生型(WT)を対照として用いた。図9に示すように、FACS分析はノックアウトを確認する。
【実施例7】
【0100】
二重CAR T細胞のCTL機能
本研究では、その結果を図10に示すが、標的細胞株Nalm-6、WT、CD19ノックアウト、又はBAFF-Rノックアウト変異体をクロミウム-51で標識し、エフェクターCAR T細胞とインキュベートした。CARにはBAFF-R/CD19の二重標的CARが含まれた。1250の二重CAR CTLデータは、BAFF-R標的欠損の可能性を示唆する。
【実施例8】
【0101】
BAFF-R陽性CD19陰性混合型B-ALL腫瘍におけるBAFF-R/CD19二重CARの活性
図11A-11Bは、1.5×10のRFP陰性、ルシフェラーゼを発現するNalm-6-CD19KO+2.5×10のRFP陽性、ルシフェラーゼを発現するNalm-6-BAFF-RKO腫瘍細胞の混合物を用いて、0日目の腫瘍誘発のIV後の1316二重CAR及び1296NSGマウスの影響を調べる研究の結果を示す。次いで、5匹の腫瘍マウス群を、各々、単回注入として、10日目に2.5×10個のCD4 TN CAR-T + 10個のCD8 TN 1296又は1316個の二重CAR T細胞/マウスIVのいずれかによる治療に無作為に割り付けた。同一ドナー由来の非形質導入CD4/CD8 T細胞を同種対照(非CAR)として用いた。図からわかるように、1316の治療による延命効果は、1296の治療と比較して有意であった。
【実施例9】
【0102】
ノックアウト腫瘍に対する1316 BAFF-R/CD19二重CARの脱顆粒
CD107a脱顆粒を用いて、ノックアウト腫瘍に対する1316二重CARの効力を評価した。CD4又はCD8 BAFF-R CAR T細胞を、CD19BAFF-R+ Nalm-6又はCD19+ BAFF-RNalm-6系のいずれかとインキュベートした。単一標的CD19又はBAFF-R CAR T細胞を対照として用いた。
【実施例10】
【0103】
混合型B-ALL腫瘍におけるTN/MEM 1316 BAFF-R/CD19二重CARの活性
0日目に、NSGマウスに、1×10のRFP陰性、ルシフェラーゼ発現Nalm-6-CD19KO+1×10のRFP陽性、ルシフェラーゼ発現Nalm-6-BAFF-RKO腫瘍細胞の混合物を投与した。次いで、各群5匹の腫瘍マウスを、低用量(2.8×10 TN/MEM)、高用量(5.6×10 TN/MEM)のいずれかを単回注入し、それぞれ1×10及び2×10 BAFF-R CAR T細胞を産生させ、9日目に1316二重CAR T細胞/マウス静脈内投与に無作為に割り付けた。又は同一ドナー由来の5×10個の非形質導入TN/MEM細胞を同種対照(非CAR)として用いた。1316二重CARの延命効果は有意であった。2回の投与間で生存率に有意差は認められなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
【配列表】
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