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特許7593650おむつの状態を検出する検出装置およびその検出装置を収容するおむつ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】おむつの状態を検出する検出装置およびその検出装置を収容するおむつ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20241126BHJP
   G01N 27/02 20060101ALI20241126BHJP
   A61F 5/44 20060101ALI20241126BHJP
   A61F 13/42 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
G01N27/00 H
G01N27/02 D
A61F5/44 S
A61F13/42 F
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021573724
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2020066294
(87)【国際公開番号】W WO2020249725
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】19179897.4
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521541723
【氏名又は名称】エスディー・センシティブ・ダイパー・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SD SENSITIVE DIAPER GMBH
【住所又は居所原語表記】Leipziger Strasse 20 Berlin Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】パスコ・トドロフ・パスコフ
(72)【発明者】
【氏名】バイザー・ネデルチェフ・バネフ
(72)【発明者】
【氏名】スタニスラフ・チャフダロフ・ペトコフ
(72)【発明者】
【氏名】スタニスラフ・ペトコフ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・バブルコフ
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0018340(US,A1)
【文献】特開2011-136055(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109862857(CN,A)
【文献】特開平07-239990(JP,A)
【文献】特開2004-085277(JP,A)
【文献】特開2017-215209(JP,A)
【文献】特開2018-105787(JP,A)
【文献】特開2000-342615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/44
A61F 13/00 - A61F 13/84
A61L 15/16 - A61L 15/64
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺環境の電気的パラメータ(R、L、C、Z)を検出する少なくとも2つの電極を含む導電ユニットと、前記導電ユニットを取り付けるための、液体吸収材料で作られたキャリアレイヤと、を備えたセンサユニットと、
前記センサユニットに接続可能な入力部と、前記センサユニットによって検出された前記電気的パラメータ(R、L、C、Z)の値に対応する信号を受信し、前記信号を処理するように構成されたプロセッサと、電源から供給される電力を制御する電力制御手段と、所定時間内に前記電気的パラメータの所定の閾値を使用して、処理された信号を評価し、おむつの状態が変化したかどうかを判定する判定手段と、を備えた測定装置と、
を備えたおむつ状況検出装置であって、
前記センサユニットは、前記導電ユニットの少なくとも一端において、前記測定装置に接続可能な接続部をさらに備え、
前記測定装置は、判定された状況変化に関する情報を受信手段に送信する送信手段をさらに備え、
前記電力制御手段は、あらかじめ設定された物質または物質の成分を共振させるために、共振スキャン用周期信号の周波数を、前記物質または物質の成分のそれぞれの共振周波数に対応するように設定し、
前記プロセッサは、前記センサユニットに、前記電力制御手段が設定した複数の周波数で前記周期信号が送られる間、共振スキャンを実行するおむつ状況検出装置。
【請求項2】
前記測定装置が、さらに、
前記電源に並列に接続されたキャパシタを備え、
前記電力制御手段は、前記キャパシタおよび前記電源から供給された電流が所定値以下となるように制御する請求項1に記載のおむつ状況検出装置。
【請求項3】
前記電極が、粘着性材料で形成されている請求項1または2に記載のおむつ状況検出装置。
【請求項4】
前記導電ユニットを前記キャリアレイヤに固定するための液体を吸収しない固定手段をさらに備えた請求項1~3のいずれか一項に記載のおむつ状況検出装置。
【請求項5】
前記測定装置が、前記測定装置をおむつ表面に着脱可能に取り付けるように構成された、取り付け手段を有するハウジングをさらに備えた請求項1~4のいずれか1項に記載のおむつ状況検出装置。
【請求項6】
おむつが第1状態にある場合、前記少なくとも2つの電極間の電気的接続が切断され、おむつが第2状態にある場合、前記少なくとも2つの電極間の空間に蓄積された導電性物質によって電気的接続が生じる請求項1~5のいずれか1項に記載のおむつ状況検出装置。
【請求項7】
前記電力制御手段が、前記電極に正弦波交流電圧を印加するように構成されている請求項1~5のいずれか1項に記載のおむつ状況検出装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、検出された前記電気的パラメータを評価するように構成され、評価された電気的パラメータが所定の物質に関してあらかじめ設定された範囲内にあるとき、前記導電ユニットの前記電極間の空間に前記所定の物質が存在すると判定する、請求項1~7のいずれか1項に記載のおむつ状況検出装置。
【請求項9】
液体または固体の排泄物を吸収する吸収ゾーンと
請求項1~8のいずれか1項に記載のおむつ状況検出装置と、
使用者が着用したときに、おむつの非内側面に測定器を取り付けるための測定器取付手段と、
を備え、
前記センサユニットは、前記吸収ゾーンに配置され、
前記測定器取付手段は、前記おむつのポケット部によって形成されているおむつ。
【請求項10】
前記ポケット部は、二重部分によって形成されている請求項9に記載のおむつ。
【請求項11】
前記ポケット部は、おむつ素材に凹部として形成されている、請求項9に記載のおむつ。
【請求項12】
前記ポケット部は、前記センサユニットに接続された前記測定装置が、おむつに取り付けられた状態において、前記測定装置を包みこむように構成されている、請求項9~11のいずれか1項に記載のおむつ。
【請求項13】
前記センサユニットのキャリアレイヤが、前記導電ユニットと前記吸収ゾーンとの間に配置されている請求項9~12のいずれか1項に記載のおむつ。
【請求項14】
前記測定器取付手段が、使用者の後側、使用者の前側、または使用者の側方に設けられている請求項9~13のいずれか1項に記載のおむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつに含まれる尿と便を検出し、区別するための検出装置、およびその検出装置を収容したおむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙おむつの状態をモニタリングすることは、乳幼児、子供、高齢者、運動障害や難病で障害を持つ人を介護する人にとって重要である。具体的には、排尿と排便という異なる状態のモニタリング、表示、報告を行う装置やシステムが複数存在している。このような装置は、測定方法によって以下の4つのタイプに分類される。
【0003】
1. 紙おむつの吸収層に入る物質によって色が変わるインジケータを用いた化学分析。このような装置は、シンプルで比較的安価に製造することができる。しかし、このような装置によれば、介護者が直接おむつを見なければならない。
【0004】
2. 2つ以上の導電性素子間の導電率の変化を利用した尿センサ。一例が、US2018-177644A1に開示されている。このようなデバイスによれば、より高い信頼性が得られ、直接おむつを見ることなく、介護者に通知できる。しかしながら、提供されたデバイスは、主に、一般的におむつにセットされるセンサの構造が複雑なため、工場生産するにしても複雑で高価であり、頻繁に交換する必要がある。
【0005】
3. ガス分析、または2つ以上の導電性要素間の導電率を利用した排便センサ。排便時には、メタン、硫化水素などの特定のガスが放出されることが知られている。このセンサの一例は、WO2017 078502 A1によって開示されている。しかしながら、上記の第1、第2タイプのデバイスと比べると、このタイプのデバイスは複雑であり、コストおよびサイズの増大を招く。また、測定装置のエネルギー効率は低い。さらに、おならを排便とご検知する可能性がある。
【0006】
4. EP2832323A1で開示されているような第2と第3のタイプの間の組合せも知られている。第2、第3タイプを組み合わせたデバイスは、運用コストおよびエネルギーコストが高く、高い生産価値を持つ、複雑で高価な装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】US2018 177644A1
【文献】WO2017 078502 A1
【文献】EP2832323A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、おむつの状態変化(排尿や排便など)をモニタリングし、介護者に通知するための単純かつ低コストで完全なシステムを提供することである。そして同時に、非常に低コストで特定の物質や物体の有無をスキャンする尿および便の共鳴システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1. 上記目的を達成するため、本発明にあっては、
周辺環境の電気的パラメータ(R、L、C、Z)を検出する少なくとも2つの電極を含む導電ユニットと、前記導電ユニットを取り付けるための、液体吸収材料で作られたキャリアレイヤと、を備えたセンサユニットと、
前記センサユニットに接続可能な入力部と、前記センサユニットによって検出された前記電気的パラメータ(R、L、C、Z)の値に対応する信号を受信し、前記信号を処理するように構成されたプロセッサと、電源から供給される電力を制御する電力制御手段と、所定時間内に前記電気的パラメータの所定の閾値を使用して、処理された信号を評価し、おむつの状態が変化したかどうかを判定する判定手段と、を備えた測定装置と、
を備えたおむつ状況検出装置であって、
前記センサユニットは、前記導電ユニットの少なくとも一端において、前記測定装置に接続可能な接続部をさらに備え、
前記測定装置は、判定された状況変化に関する情報を受信手段に送信する送信手段をさらに備え、
前記電力制御手段は、あらかじめ設定された物質または物質の成分を共振させるために、共振スキャン用周期信号の周波数を、前記物質または物質の成分のそれぞれの共振周波数に対応するように設定し、
前記プロセッサは、前記センサユニットに、前記電力制御手段が設定した複数の周波数で前記周期信号が送られる間、共振スキャンを実行するおむつ状況検出装置を提供する。
【0010】
上記おむつ状態検出装置(以後、検出装置)によれば、単純な仕組みかつ低コストで、モニタリングと通知のための完全なシステムを提供する。具体的には、センサユニットの電極は回路を構成し、センサ間の電気的パラメータはその環境から影響を受ける。電気的パラメータが所定の閾値を超えると、電極は切断されたものとみなされる。電極近傍に導電性物質(尿液など)が入って環境が変化すると、物質の電気的パラメータと物質中の導電性粒子の濃度に基づいて、電気的パラメータが乾燥環境のものから相対的に変化する。これにより、適時のおむつ交換が保証され、不適切なおむつ交換による不快感や体調不良が解消され、早期に状態変化を検出することが可能になる。さらに、少ない部品点数で構成されたセンサユニットにより検出が可能となる。
【0011】
少ない部品で構成されるセンサユニットを用いるため、センサユニットの製造コストを削減できる。センサユニットはおむつと一緒に廃棄できるため、経時的な運用コストは主にセンサユニットの交換コストで構成される。このように、センサユニットのコストを削減することにより、より複雑なセンサユニットを有する検出装置と比較して、検出装置の運用にかかる総コストを大幅に削減することができる。
【0012】
所定の閾値は、乾燥環境下での抵抗値より低く、導電性物質の量に起因する最高抵抗値より高い適切な値に設定することが可能である。導電性物質の量や性質は、例えば、新生児には少量の液体、成人には多量の液体というように、想定されるユースケースに応じて設定することができる。
【0013】
測定装置の判定手段に所定の閾値を設定することで、測定装置を交換することなく、異なるユーザに適用することができる。これにより、検出装置の寿命まで異なるユーザに適用する場合、トータルコストをより低減することができる。
【0014】
また、センサユニットが接続される測定装置も、複雑さが少ないため、低コストで済む。さらに、測定装置は、特定の物質や物体の有無を共振スキャンすることが可能である。このように、検出とスキャンの両方に同じセンサユニットと測定装置を使用することで、非常に低コストで共鳴スキャンシステムが提供される。
【0015】
2.前記測定装置が、さらに、前記電源に並列に接続されたキャパシタを備え、前記電力制御手段は、前記キャパシタおよび前記電源から供給された電流が所定値以下となるように制御する項目1に記載のおむつ状況検出装置。
【0016】
一般に、消費電力が頻繁に急増すると、バッテリの寿命が著しく短くなることが知られている。検出装置において、このような急激な消費電力の増加は、排尿、排便などのイベントの検出やセンサユニットの脱着など装置自体の状態変化により送信機が起動する際に発生する。そのため、検出装置は、イベントの発生頻度に応じて、毎日何度も送信を行う。
【0017】
項目2により、バッテリに並列に接続されたキャパシタを設けることで、送信機の起動時に少なくとも部分的にキャパシタから電力が供給され、バッテリに過負荷がかかることがない。したがって、送信時の消費電力の急増が抑えられ、バッテリへの負担が軽減され、バッテリの寿命が延びる。
【0018】
3. 電極が、銅および銀の少なくとも一方を含む合金で作られている、項目1または2に記載の検出装置。
【0019】
銅や銀は、抗菌性を有するとともに、センサユニットの電極として適切な導電性を有している。電気的なパラメータを検出するために、電極を含むセンサユニットは、一般的におむつ内で、ユーザ(おむつを着用する人)の皮膚に近い場所に配置される。
【0020】
センサユニットの電極を製造する合金に銅と銀の少なくとも一方を含有させることで、電極に銅と銀を含まないセンサユニットと比較して、センサユニット付近での細菌の繁殖やユーザの肌荒れを低減し、センサユニットの電気特性を維持することができる。
【0021】
4. 電極が、粘着性材料で作られている、項目1から3の1つに記載の検出装置。
【0022】
一般に、電極は、例えばワイヤーを用いて別々に形成し、例えば接着剤材料または他の任意の取り付け手段によって、センサユニットのキャリアレイヤに取り付けることができる。
【0023】
粘着性材料からなる電極を設けることで、接着手段を追加することなく、キャリアレイヤ上に直接電極を形成することができる。これにより、センサユニットの製造コストをさらに削減することができる。
【0024】
5. キャリアレイヤが、液体吸収材料で作られている、項目1から4の1つに記載の検出装置。
【0025】
排尿などのイベントが発生すると、センサユニット付近に液体が飛散する。このとき、電極の間に液体があると、センサの電気特性に影響を与える。
【0026】
液体を吸収できるキャリアレイヤを設けることで、液体がキャリアレイヤを通過したり、キャリアレイヤに素早く吸収されたりすることで、センサユニットがより早く乾燥状態に戻ることができる。
【0027】
6. 項目1から5の1つに記載の検出装置であって、前記導電ユニットを前記キャリアレイヤに固定するための固定手段をさらに備え、前記固定手段は、液体を吸収しない、ことを特徴とする検出装置。
【0028】
電極は一般に液体を吸収しない。このように、液体を吸収しない固定手段を設けることで、電極付近の液体が電極や固定手段に吸収されることなく周囲を通過し、センサユニットがより早く乾燥状態に戻ることが可能となる。
【0029】
7. 項目1から6の1つに記載の検出装置であって、測定装置は、測定装置をおむつ表面に着脱可能に取り付けるように構成された、取り付け手段を備えるハウジングをさらに備える、検出装置。
【0030】
着脱可能なアタッチメントを設けることで、おむつ交換時に測定器をおむつから容易に取り外すことができ、介助者の取り扱いを容易にする。
【0031】
8. 前記電源は、前記測定装置の内部に配置された交換可能なバッテリである、項目1から7のいずれか一項に記載の検出装置。
【0032】
電源が消耗すると、充電するまで測定器が機能しなくなる。また、電源が測定器に常設されている場合、ケーブル接続で充電する必要があり、ユーザの動きが妨げられ、特に乳幼児には不快な思いをさせることになる。
【0033】
電源として交換可能なバッテリを用意することで、バッテリを交換することで測定装置を素早くフル機能させることができる。そのため、測定装置のダウンタイムが短くなり、電源の充電時のユーザの不快感や動作の制限を軽減することができる。
【0034】
9. おむつの第1の状態において、2つの電極間の電気接続が切断され、おむつの第2の状態において、2つの電極間の電気接続が、電極間の空間に蓄積された導電性物質によって引き起こされる、項目1~8の1つに記載の検出装置。
【0035】
乾燥状態を第1状態(切断状態)、導電性物質の存在を第2状態(接続状態)とし、所定の閾値と組み合わせて検出装置を構成することで、2つの状態の境界を明確にし、状態変化を確実に検出しやすくし、エネルギー効率も向上させる。
【0036】
10. 前記電力制御手段は、前記電極に正弦波交流電圧を印加するように構成されている、項目1~8のいずれかに記載の検出装置。
【0037】
電極に正弦波状の交流電圧をかけることで、導電性物質中の分子を電気的に励起し、共振スキャンを可能にする。
【0038】
11. 項目9または10に記載の検出装置であって、前記電力制御手段は、前記共振スキャン用の周期信号を、あらかじめ定められた物質または物質の成分のそれぞれの共振周波数に対応するように設定し、それによって前記物質または物質の成分の共振振動を引き起こすように構成され、前記プロセッサは、受け取った電気的パラメータを評価し、ここで、評価した電気的パラメータが前記所定の物質に関してあらかじめ定められた範囲内にあると、所定の物質が前記導電ユニットの電極間の空間に存在していると決定されるように構成されていることを特徴とする、検出装置。
【0039】
項目11の特徴を有する検出装置において、電極間の空間に存在する所定の物質またはその成分が監視される。所定の物質またはその成分は、一般的な健康状態を追跡するのに適したあらかじめ設定された周波数群、または使用者の健康状態に関連する期待される関心物質に従って設定される。
【0040】
例えば、幼児の場合、広い範囲の周波数群を検出することで全身の健康状態を把握することができ、その結果、多くの物質をモニターすることで予期せぬ健康上の合併症を判断することができる。これにより、病気の発症を早期に発見することができる。
【0041】
これに対し、例えば特定の病気の人の場合、糖尿病の人のグルコースを測定するなどして、病気に関連する物質や成分、あるいは別の合理的な期待値に従って周波数群を設定することができる。それにより、不要なスキャンを避けることでエネルギー効率を向上させながら、健康監視を実現することができる。
【0042】
12. 液体または固体廃棄物を吸収するように構成された吸収ゾーンと、項目1から11の1つに記載の検出装置と、ユーザが着用したときにおむつの非内側面に測定装置を取り付けるための測定装置取り付け手段とを備える、おむつ。前記センサユニットは、前記吸収帯に配置され、前記測定装置取付手段は、前記おむつのポケット部によって形成されていることを特徴とする。
【0043】
おむつに吸収帯を設け、そこに検出装置のセンサユニットを取り付けることで、電気的パラメータの測定に適した環境を提供することができる。さらに、おむつの非内側面に測定装置を取り付けることにより、測定装置によって使用者の快適性が損なわれることがない。また、ポケット部を設けることにより、測定装置を外部からの機械的干渉から保護することができる。
【0044】
13. ポケット部は、重なり合う部分によって形成されている、項目12に記載のおむつ。
【0045】
一般に、おむつを使用者に固定するために、粘着ストリップやその他のオーバラップ部が使用される。おむつのオーバラップ部によってポケット部を形成することにより、おむつを使用者に装着する際に介助者が与える労力を軽減することができる。また、不要な操作からの保護が図られる。
【0046】
14. ポケット部は、おむつ材料に凹部として形成されている、項目12に記載のおむつ。
【0047】
おむつ素材に凹部を設け、その中に測定器を配置することで、使用者による不要な操作から測定器を保護することができる。
【0048】
15. ポケット部は、測定装置がセンサユニットに接続され、おむつに取り付けられた状態において、測定装置を完全に包むように構成されている、項目12から14のうちの1つに記載のおむつ。
【0049】
測定装置をセンサユニットに接続し、おむつに装着した状態(動作状態)で測定装置を完全に包むことで、使用者の快適性と不要な操作や機械的干渉からの保護をさらに向上させることができる。
【0050】
16. センサユニットのキャリアレイヤが、導電ユニットと吸収ゾーンとの間に配置されている、項目12から15の1つに記載のおむつ。
【0051】
おむつに入れたとき、導電部は吸収部よりもユーザに近い上側にあり、液体を吸収している間は濡れたままである可能性がある。したがって、キャリアレイヤは吸収ゾーンと導電ユニットの間のセパレータとして機能し、それによってセンサが十分に速く乾燥することを可能にする。
【0052】
さらに、導電部と吸収部の間にキャリアレイヤを配置することで、検出精度が吸収部からの干渉を受けることなく、導電部を確実におむつに装着することができる。
【0053】
17. 測定器取付手段が、使用者の後側、好ましくは使用者の前側、より好ましくは使用者の側方に設けられている、項目12から16の1つに記載のおむつ。
【0054】
測定器装着手段を使用者の後方側に設けることにより、不要な操作からの保護が向上する。測定器取付手段を使用者の前方側に設けることにより、使用者(例えば障害者)が仰向けに寝たときの快適性が向上する。測定器取付手段を使用者の側面側に設けることにより、不要な操作が防止されつつ、寝心地がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明の一実施形態に係る検出装置を備えたおむつの斜視図である。
図2図1に示す検出装置のセンサユニットの導電部を示す斜視図である。
図3図2に示す導電ユニットを備えたおむつの断面図である。
図4】導電ユニットと測定器との結合部分を示す斜視図である。
図5】共振スキャン測定装置を含む測定装置のブロック図である。
図6】測定装置で行われる検出の動作を示すフローチャートである。
図7】測定装置が行う共振スキャンの動作を示すフローチャートである。
図8A】本発明の他の実施形態にかかるセンサユニットを示す斜視図である。
図8B図8Aに示すセンサユニットの断面を示す図である。
図9A】本発明の他の実施形態にかかる計測装置を備えたおむつの部分断面図である。
図9B】本発明のさらに他の実施形態にかかる測定装置を備えたおむつの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の実施形態によれば、おむつ3の状態を検出する検出装置1は、センサユニット2と測定装置4とを備える。センサユニット2は、図3に示すように、少なくとも2つの電極221を含む導電ユニット22を備え、この電極221は、おむつ3の底部の周辺環境の電気的パラメータR、L、C、Zを検出する。電極221は、銅および銀の少なくとも一方を含む合金で作られている。本実施形態では、電極221は、液体吸収材料、例えば不織布からなるキャリアレイヤ21に接着剤(不図示)を介して取り付けられている。接着剤は、固定手段として機能し、導電ユニット22を固定するために役立つ。本実施形態における固定手段は、導電ユニット22の一面に塗布された薄い接着剤の層であるため、導電ユニット22はキャリアレイヤ21と接触している。この実施形態では、接着剤は、液体を吸収しないように選択される。
【0057】
図2に示すように、センサユニット2は、導電ユニット22の一端に設けられた連結部25をさらに備え、連結部25が測定装置4に接続される。結合部25は、電極221の長手方向の端部23を構成するとともに、プラグ24を構成している。
【0058】
図1および図4に示す測定装置4は、センサユニット2のプラグ24と接続可能なプラグ41を有しており、プラグ41を介してセンサユニット2と接続される。入力部402から構成される。測定装置4は、センサユニット2によって検出された電気的パラメータR、L、C、Zの値に対応する信号を受信し、当該信号を処理するように構成されたプロセッサ403をさらに備えている。さらに、図5に示すように、測定装置4は、電源(バッテリ407)から供給される電力を制御するように構成された電力制御スイッチ404および充電制御回路406を含む電力制御手段45を含んでいる。プロセッサ403は、所定の時間帯における電気的パラメータR、L、C、Zの所定の閾値を用いて処理された信号を評価することに基づいて、おむつ3の状態が変化したか否かを判定するように構成された測定装置4の判定手段をさらに含む。測定装置4は、判定された状態変化に関する情報を受信手段に送信するために配置された送信手段をさらに含む。本実施形態では、送信手段は、プロセッサと一体的に設けられている。測定装置4は、共振スキャンを実行するように構成されており、その間に、複数の周波数で周期的な信号がセンサユニット2に送信される。共振スキャンについては、後で詳しく説明する。
【0059】
測定装置4は、電源と電気的に並列に接続されたキャパシタ405をさらに備え、電力制御手段45は、キャパシタ405および電源から流れる電流を所定の制限値以下に保つように制御するように構成される。なお、電源は、測定装置4の内部に配置された交換可能なバッテリ407である。
【0060】
測定装置4は、測定装置4をおむつ3の非内側面に着脱可能に取り付けるように構成された、取り付け手段(図示せず)を備えた図4に示すハウジングをさらに備えている。
【0061】
おむつ3の状態を検出するために検出装置1を使用する場合、まず、結合部25が設けられたセンサユニット2の端部をおむつ3の端部に折り曲げた状態で、センサユニット2をおむつ3の底部に装着する。第二段階として、プラグ24を測定装置4のプラグ41に差し込み、図4に見えるソケットによってそれに固定する。
【0062】
検出装置1は、おむつ3の第1状態では、2つの電極221間の電気的接続が切断され、おむつ3の第2状態では、電極221間の空間に蓄積された導電物質として機能する体液によって2つの電極221間の電気的接続が生じる。
【0063】
さらに、動作時には、電力制御手段45は、正弦波状の交流電圧を電極221に印加する。さらに、電力制御手段45は、共振スキャン用の周期信号をあらかじめ設定された周波数に設定し、この周波数は、おむつ3への浸透が予想される特定の物質またはその成分のそれぞれの共振周波数に対応するように設定されており、これにより、物質またはその成分の共振発振を起こさせることができる。次のステップとして、プロセッサ403は、評価された電気的パラメータが特定の物質に関してあらかじめ設定された範囲内にあるとき、導電ユニット22の電極間の空間に所定の物質が存在すると判定することによって、受信した電気的パラメータR,L,C,Zを評価する。
【0064】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るおむつ3は、液体または固体の排泄物を吸収する吸収ゾーン31を備えている。吸収ゾーン31は、通常、おむつ3の製造に用いられる材料を用いて構成される。おむつ3は、そのセンサユニット2がおむつ3の吸収ゾーン31に取り付けられ、キャリアレイヤ21が導電ユニット22と吸収ゾーン31との間に配置されたまま、上述した検出装置1を備えている。測定装置4は、おむつ3のポケット部33に配置され、当該ポケット部33は、ユーザが着用したときにおむつ3の後側に設けられる。
【0065】
図9Aに示すように、ポケット部33は、測定装置4がセンサユニット2に接続されておむつ3に取り付けられた状態において、測定装置4を完全に包み込むように、おむつ3の素材に凹部35として形成されている。
【0066】
以上の説明は、本発明の一実施形態について述べたものである。しかし、検出装置1およびおむつ3の特徴は、様々に変更することができる。検出装置1の一実施形態によれば、導電ユニット22をキャリアレイヤ21に固定する固定手段が設けられ、液体を吸収しない材料で構成されている。
【0067】
おむつ3の変形例によれば、おむつ3のポケット部33は、おむつ3が使用者に装着される過程において、おむつ3の一部を単に重ね合わせることによって形成することができる。一般に、ポケット部33は、使用者の前方側にも設けることができ、より好ましくは使用者の側方側にも設けることができる。
【0068】
(実施形態とその動作の詳細説明)
以下に説明するおむつ3の状態を検出するための検出装置1は、本発明の一実施形態である。ここで説明する検出装置1は、再使用可能な測定装置4と使い捨てのセンサとからなるおむつ3監視システムとしてのものであり、初期製造時におむつ3に埋め込まれてもよいし、介護者が埋め込むべき独立した製品として提供されてもよいものである。おむつ3は、例えば乳幼児、子供、高齢者、または運動困難や無力な病気によって障害を受けた人などのユーザによって着用される。
【0069】
検出装置1は、イベント(排尿または排便)の適時検出と記録、イベント分析、介護者の無線通知だけでなく、尿や便の共振スキャンを行い、その中に特定の物質があるかないかを調べることができる。これにより、適時におむつを交換することができ、不適切なおむつ交換による不快感や病気をなくすことができるとともに、早期に判定できる。
【0070】
検出装置1は、おむつに設けられるセンサユニット2、計測装置4、サーバ/クラウドストレージに接続されたアプリケーションの3つの主要コンポーネントで構成されている。
【0071】
検出装置のセンサユニット2は使い捨てであり、測定装置4は複数回使用するためのものである。図1図4に示すセンサユニット2は、おむつ3に埋め込まれ(あるいは追加的にそこに挿入され)、2つ以上の電極221(導電体)からなる導電ユニット22を、それらの間に電気的接続がないように離間させて構成されている。センサユニット2は、測定装置4に接続するための結合部25(例えばプラグ24)で終わっている。このように、センサユニット2は、可変パラメータを有する電気キャパシタ405またはインダクタンスとして考えることができる。パラメータの可変性は、環境によって成立する。センサユニット2は、測定装置4の測定回路に接続されている。
【0072】
測定装置4は、図5に示す回路図に従って設計され、イベント検出のための図6に示す動作アルゴリズムと、共振スキャンのための図7に示す動作アルゴリズムとを備えている。測定装置回路は、センサユニット2(測定装置4の一部ではない)、入力部402、プロセッサ403(内蔵送信機を含む)、スーパーキャパシタ(キャパシタ405)、充電制御回路406、バッテリ407、制御スイッチ404、整流入力スイッチ408、(反射信号の)入力アンプ409、(スキャン信号の)出力アンプ410、受信/送信スイッチ411および補償装置412という要素から構成されている。
【0073】
電気工学の分野では、各電気部品にはいくつかの基本パラメータがあることが知られている。R-能動抵抗,L-インダクタンス,C-静電容量,Z-インピーダンスとその逆数,また特性抵抗や波動抵抗などである。これらのパラメータはそれぞれ測定することができ、その値の変化は置かれた環境の変化に直接関係する。
【0074】
おむつ3の場合、環境を変化させる事象は、排尿または排便である。イベントが発生すると、環境パラメータが増加または減少して変化する。測定装置4によって測定される入力の種類は、測定のために選択された環境パラメータによって決定される。一例として、R(抵抗値)およびρ(導電率)の測定について説明する。
【0075】
イベント検出の動作アルゴリズムを図6に示す。検出装置1は次のように動作する。
【0076】
入力部402には、非常に高い入力抵抗と低消費(500nA)を有するコンパレータが設けられている。イベントが発生すると、コンパレータが作動し、プロセッサ403を「ウェイクアップ」するインパルスを生成し、それによってプロセッサ403を「フルシャットダウン」モードから「ディープスリープ」モードへ切り換える。このモードでは、CPUクロックといくつかの基本機能のみが動作する。ある期間の後、プロセッサ403は、制御測定を実行するために、整流入力スイッチ408によってセンサに接続される。測定結果に応じて、プロセッサ403は「フルシャットダウン」モードに切り替わるか、またはおむつ3の交換のための信号を送信する。
【0077】
おむつ3が乾燥しているときは、抵抗値は無限大(200MΩ以上)になる傾向があり、センサユニット2には事実上電流が流れない。排尿時には、センサユニット2が濡れ、抵抗値が急激に低下し、導電率が上昇する。これにより、測定装置4が作動し、待機状態となる。その間、尿はおむつ3内に吸収される。一定時間(例えば、100~300秒)経過後、測定装置4は、センサユニット2回路の抵抗値または導電率を測定する。抵抗値または導電率がある限界値(所定の閾値、例えばR≧15MΩまたはR≧20MΩ)を超えた場合、判定手段は、おむつ3がまだ満杯になっていないと判定し、「フルシャットダウン」モードへ切り替える。
【0078】
これは、電源に蓄えられたエネルギーを節約するためである。同じ種類の次の事象が発生すると、抵抗または導電率が別の所定の閾値(選択された測定パラメータに応じて、下または上、例えばRは200kΩと1MΩの間)を超えていることが判明するまで、プロセスが繰り返される。抵抗または導電率が別の所定の閾値を超えていれば、最上層が常に濡れたままで、おむつ3が満杯で交換する必要があることを意味する。これにより、測定装置4に内蔵された発信器が作動し、おむつ3の交換のための信号が受信装置に送信される。測定装置4の「ウェイクアップ」は、排出された尿の量とおむつ3の吸収能力に応じて、1サイクルで1回、2回、3回、4回またはそれ以上可能である。
【0079】
排便の場合は、少し動作が異なる。ウェイクアップイベント(環境パラメータの変化)は上述と同様であるが、制御測定で抵抗値が高い、または導電率が低いとそれぞれ判断されるため、排便を意味する。排泄物は、尿とは異なり、おむつ3に吸収されることはなく、この結果、測定環境における高い抵抗値が長時間にわたって維持されることになる。この場合、直ちにおむつ3の交換を促す信号が送信される。
【0080】
計測装置4には、センサユニット2の連結部25が計測装置4のプラグ41に差し込まれているかどうかを検出するセンサが内蔵されている。これは、おむつ3の交換時に、新しいおむつ3への測定装置4の挿入を忘れることを防止するためである。センサユニット2の連結部25が測定装置4から外れると、その発生をセンサが検知してタイマがオンになり、所定時間(例えば300秒)以内に測定装置4がセンサユニット2に接続されないと、リマインダー信号やメッセージが送信されるようになっている。
【0081】
上記の測定プロセスは、他のパラメータである静電容量、インダクタンス、インピーダンスを測定する際にも類推して適用することができる。測定されるパラメータは、特定の設計ソリューションと求められる測定精度に依存する。測定の種類ごとに、測定装置4の入力測定部は、異なる回路図を有する。しかし、そのようなパラメータを測定するための入力回路は当業者に周知であり、したがって、その詳細な説明は省略される。
【0082】
バッテリの長寿命化を実現するために、図5の接続図が用意されている。バッテリ寿命は、消費電力の急激な上昇によって著しく短くなることが知られている。この点で、リチウムイオンバッテリは、この動作モードに特に敏感であり、非常に迅速にその容量を失う。おむつ3の状態を検出するための検出装置1の場合、急激な電力消費は、送信機が作動したときに発生する。具体例として、「フルシャットダウン」モードでは1μA、「ディープスリープ」モードでは9~15μA、Bluetooth(登録商標)による信号送信時には13~15mA、Wi-Fi(登録商標)モジュールによる信号送信時には概ね76mAと、消費電力が大きくなっている。
【0083】
このようなバッテリ407の負荷の急増を避けるため、電源回路には、バッテリ407と並列に接続された高容量キャパシタ405(容量2.5F)が設けられ、適当な集積回路レギュレータ(充電制御回路406)を通じて充電される。充電制御回路406は、定義されたアルゴリズムを介してキャパシタ405を充電し、バッテリ407から消費される最大電流が所定値、例えば1mAを超えないように監視する。送信機が起動すると、必要な電力がキャパシタ405から供給され、バッテリ407が過負荷になることはない。このように、本発明者が行った実験によれば、キャパシタ405が設けられていない場合と比較して、使用する部品やデータ通信の方法(Wi-Fi(登録商標)またはBluetooth(登録商標))により、バッテリ寿命を20倍から100倍に延ばすことができる。
【0084】
検出装置1の起動、検出装置1を備えたおむつ3からアプリケーションへのイベントの伝達、アプリケーションから検出装置への指示の伝達のために、サイト、サーバ、クラウドからアプリケーションが提供される。このアプリケーションは、電話、タブレット、またはコンピュータにインストールされる。このアプリケーションによって、測定装置4が起動し、アプリケーションと連動する。アプリケーションは、統計を取り、必要に応じて情報を表示する。このようなアプリケーションおよび適切な送信ソリューションは、先行技術から周知であるため、その詳細な説明は省略する。
【0085】
また、測定装置4(制御回路)は、物質や小さな物体(200μm以下)の共振スキャンに使用することもできる。共振スキャンに適した測定装置4の回路図を図5に表し、動作のアルゴリズムを図7に表す。
【0086】
全ての物質や微生物(物体)には共振周波数があることが先行技術から知られている。物質を導電性環境に置き、対象物の固有周波数と共振するある周波数の電流を流すと、結果的に電流の増加が見られる。このようにして、研究対象における特定の物質や微生物の存在を確認することができる。物質や物体の密度が大きいほど、より強い信号が検出される。
【0087】
具体的には、物体(細菌やウイルス)の共振周波数と同じか近い周波数の電流を流すと、物体は同じ周波数で振動を始める。その結果、両者の波が同位相で重なり合い、信号の振幅が増大する。例えば、大腸菌の共振周波数は356kHz、A型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスの共振周波数はそれぞれ313.35kHzと323.9kHzであり、大腸菌とB型インフルエンザウイルスの共振周波数は、それぞれ356kHzと323kHzである。ウイルス、細菌、分子、個々の原子は、それぞれ厳密に固有の共振周波数を持っており、その周波数は一定で、対象の大きさや構造に依存する。共振周波数は、実験室で対象物の試料から数秒以内に簡単に求めることができる。決定された共振周波数は、測定装置4内のデータベースに格納することができる。
【0088】
本発明によれば、プロセッサ403は、異なる周波数を有する一組の周期的な電気信号をセンサユニット2に送信し、受信した電気信号を評価することによってその増幅を追跡するように構成されている。特定の物質または物体の存在は、信号が増幅される周波数に依存して決定される。探索対象となる物体の共振周波数はあらかじめ知られており、所定の周波数としてプロセッサ403のメモリに格納される。本実施形態では、処理自体が非常に高速に実行され、1秒以内に1000種類の周波数チャンネルをスキャンすることができ、すなわち1000種類の物質または物体をスキャンすることができる。本実施形態における周波数範囲は、4Hzから1MHzの間であり、予想される物体または物質のサイズおよび構造に依存する。分析の際には、精度を上げるために、基本的なスキャニング周波数の高調波も使用することができる。
【0089】
共振スキャンの動作アルゴリズムを図7に示す。検出装置1は次のように動作する。
【0090】
入力部402は、イベントが発生するとプロセッサ403を起動する。このイベントは、上述したような通常の検出イベントであってもよいし、アプリケーションを介してユーザが指示した共振スキャンの手動要求であってもよい。
【0091】
そして、プロセッサ403は、スイッチによってセンサユニット2に接続され、環境の制御測定が行われる。次に、センサユニット2のC(静電容量)の変化を補償し、比R/L=G/Cが有効であり続けるように、補償装置412が作動する(この処理については、以下で詳述する)。そして、スキャニング信号が送信される。この信号は、出力アンプ410で設定値に増幅され、受信/送信スイッチ411を介してセンサユニット2へ送られる。反射信号は、受信/送信スイッチ411を介して入力アンプ409に送られ、設定値に増幅された後、プロセッサ403に送られ、解析される。その後、データベースとの比較、物質・物体の有無の検出が行われる。この処理は、例えば約50nsの受信または送信の切り替え周波数で繰り返される。なお、切替時間は、環境パラメータに応じて一定の範囲内で変化してもよく、例えば40~60nsである。
【0092】
所望の物質または物体の共振周波数は、プリセット周波数としてプロセッサ403にプログラムされる。上述したように、この周波数は普遍的かつ一定であり、通常の条件下では環境の影響を受けるなどして変化することはない。共振周波数は、物体のサイズと構造によってのみ決定される。スキャンモードが起動されると、プロセッサ403は、周波数を順次生成し、出力増幅器410を介してセンサユニット2に送信する。増幅された信号は、受信/送信スイッチ411、整流入力スイッチ408を経てセンサユニット2に渡される。また、例えばレーダー原理に基づいて反射された信号は、整流入力スイッチ408、受信/送信スイッチ411を介してプロセッサ403に渡され、解析される。あるいは、スキャニング速度を遅くする代償として精度を向上させるために、信号の送信と受信に別々のデバイスを使用することも可能である。プロセッサ403は、異なる周波数の振幅に基づいて入力信号を分析し、それらをプリセット周波数と比較する。これらの値からの偏差が検出されると、登録された偏差を視覚化するために、その情報がアプリケーションに送信される。
【0093】
一般に、センサユニット2は、パラメータが分散した伝送路として表すことができる。すなわち、電気エネルギー変換成分(インダクタンス、キャパシタンス、抵抗)は、伝送路に沿って均等にまたは不均一に分布している。共振周波数を適切に測定するためには、センサユニット2によって作られた線路は次の条件を満たさなければならない:主要な電気的パラメータR、L、C、Gは次の関係R/L=G/Cになければならない、ここでRは活性抵抗、Gはコンダクタンス、Lはインダクタンス、Cは静電容量である。これらは、事象発生前の初期パラメータ、すなわち、センサユニット2が乾燥しており、外界(磁界、電磁波)がある最小限の範囲にあり、実用的な測定に影響を及ぼさない状態である。共振スキャンが行われる周波数は広い周波数範囲を有するため、センサユニット2を介した信号の持続的な伝送を確保するためには、上記のような条件が必要である。導電性環境における電磁波の広がりを特徴付けるパラメータは、主に減衰比α、位相速度v、特性抵抗Zcの3つである。これらのパラメータは周波数に依存する。
【0094】
補償装置412によって実行される補償について:上記で詳述した条件(R/L=G/C)が満たされる場合にのみ、パラメータα、およびZcは周波数独立となり、広い周波数スペクトルにわたる電磁波の持続的な広がりが提供される。イベント(排尿や排便)が発生すると、環境パラメータは変化する。導電率は増加し、抵抗は減少し、インダクタンスは比較的一定(測定目的)であり、静電容量は増加する(ε-誘電率が例えば1から75に増加するため)。R に対する G の変化は直線的で、L は比較的一定のままなので、測定目的のために環境のバランスを保つために C の補償に入る必要がある。このとき,回路はその性格を変える。均等に分布していたパラメータは、回路に沿って不均等に分布するようになる。この変化は、測定装置4の制御ソフトウェアによって登録され、測定の正確さのためにそれぞれの補正が入力される。補償は、パラメータR、G、C、Lの変化に応じて決定され、これらの変化は上述したとおりである。RとGは逆数であり、Lは実質的に変化しないので、Cを変化させるアルゴリズムはRの変化から導かれる。
【0095】
これにより、共振スキャンを行うことができる。
【0096】
(実施形態の変形例)
上記実施の形態に係るセンサユニット2では、導電ユニット22は、接着剤層を介してキャリアレイヤ21に直接貼り付けられていた。実施形態の変形例では、センサユニット2の電極221は、キャリアレイヤ21上に接着層として形成することも可能である。
【0097】
実施形態の第1の変形例として、カバー層211を設けてもよい。図8Aは、第1の変形例に係るセンサユニット2を示す斜視図である。なお、図8Aでは、電極221を視認できるようにするために、カバー層211の一部が隠されている。図8Bは、電極221の長手方向に垂直な平面における、第1の変形例の断面図である。
【0098】
カバー層211は、上記実施形態に係るキャリアレイヤ21と同一のキャリアレイヤ21の上に配置されている。カバー層211は、キャリアレイヤ21と同一または類似の材料、例えば、不織布からなる。導電ユニット22の電極221は、キャリアレイヤ21とカバー層211との間に挟まれ、キャリアレイヤ21とカバー層211とは、複数のカバー層固定部212によって互いに固定されている。
【0099】
図8Bに見える複数のカバー層固定部212は、例えば、2つの電極221の両側に設けられた、のりの点または別の接着剤の点である。図8Aに見えるように、カバー層固定部212は、電極221の長手方向に沿って間隔を空けて繰り返される。この例では、長手方向に沿った各ステップに3つのカバー層固定部212が設けられ、電極221の長手方向に沿って一定の間隔でステップが繰り返され、カバー層211およびカバー層固定部212はキャリアレイヤ21の全長に沿って設けられる。
【0100】
あるいは、カバー層固定部212をホットプレス成形によって形成することができる。例えば、キャリアレイヤ21、カバー層211および導電ユニット22を重ねて、加熱された凸部を備えた2つの回転する円筒体の中を通して搬送させ、それによってキャリアレイヤ21およびカバー層211を局所的に溶かし、機械的接続を確立すればよい。各円筒体は、図8Bの固定部間の距離に相当する距離に配置された3つの加熱凸部を備えればよく、一方、凸部は、円筒体において、長手方向に繰り返し距離と同じ周方向距離で連続的に配置されればよい。
【0101】
なお、本変形例では、電極221は、キャリアレイヤ21の全長に沿っては設けられていない。図8Aに見えるように、電極221は、キャリアレイヤ21の端部から距離を置いて終端している。図8Aで見えるキャリアレイヤ21の端部は、結合部25と反対側の端部である。キャリアレイヤ21の全長に沿って電極221を設けないことで、電極221の製造に必要な材料が少なくなる。
【0102】
あるいは、電極221をキャリアレイヤ21の全長に沿って設けることで、理論上無限大の長さのセンサユニット2を一括生産し、これを適当な長さに切断してから連結部25を設けることも可能である。当該大量生産においては、キャリアレイヤ21、カバー層211および電極221をロールまたは他の適切な形態の貯蔵物によって連続的に供給し、上述のホットプレス成形によって固定し、さらに加工するために連続的にロールまたは貯蔵することが可能である。接着剤を塗布する必要がないため、製造はホットプレス成形の工程のみとなり、簡便である。それにより、製造コストを削減することができる。
【0103】
さらに、本変形に係る構造では、電極221が両側から覆われている。それにより、使用者の皮膚への刺激をさらに低減することができる。
【0104】
第2の変形例では、おむつ3のオーバラップ部分にポケット部33を設ける。図9Aは、本実施の形態に係る測定装置4を備えたおむつ3の断面を示す図である。測定装置4がおむつ3に取り付けられた状態において、測定装置4の長手方向と直交する方向に断面を描いたものである。図9Bは、実施形態の第2変形例による測定装置4を備えるおむつ3の断面を示す図である。
【0105】
図9Aに示すように、本変形例によれば、ポケット部33を形成する凹部35に測定器4が収容される。他の変形例によれば、ポケット部33は、おむつ3の一部をオーバラップすることによって形成することができる。一般に、おむつ3を使用者に固定するために、おむつ3の粘着ストリップまたは他のオーバラップ部が使用される。これらの粘着ストリップは、図1および図9Bにおいて、第1オーバラップ部37および第2オーバラップ部39として示されている。おむつ3の一部を重ね合わせてポケット部33を形成することにより、おむつ3を使用者に装着する際に介助者が与える労力を軽減することができる。なお、図1に示すおむつ3では、オーバラップ部はおむつ3の前側(前面側)で重なるように構成されているため、測定装置4も前面側に設ける必要がある。しかし、オーバラップ部が重なるように構成される領域は自由に選択でき、それに応じて測定装置4が配置される。
【0106】
おむつの状態を検出するための検出装置であって、少なくとも2つの電極を含む導電ユニットであって、電極はその環境の電気的パラメータを検出するように構成されている導電ユニットと、導電ユニットの少なくとも一端側にある結合部と、結合部は測定装置に接続可能であり、導電ユニットが取り付けられるキャリアレイヤと、を備えるセンサユニットを含む検出装置。測定装置は、センサユニットに接続可能な入力部と、センサユニットによって検出された電気的パラメータの値に対応する信号を受信し、当該信号を処理するように構成されたプロセッサと、電源から供給される電力を制御するように構成された電力制御手段と、所定時間内に電気的パラメータの所定の閾値を用いて処理された信号を評価することに基づいて、おむつの状態が変化したかどうかを判断するように構成された判断手段と、判断した状態変化に関する情報を受信手段に伝送するように配置された伝送手段とを備えている。前記測定装置は、複数の周波数で周期的な信号を前記センサユニットに送信する共振スキャンを行うように構成されている。
【符号の説明】
【0107】
1 おむつ状況検出装置
2 センサユニット
21 キャリアレイヤ
22 導電性ユニット
221 電極
23 電極の長手方向端部
24 プラグ(カップリング部)
25 カップリング部
211 カバーレイヤ
212 カバーレイヤ固定部
3 おむつ
31 吸着ゾーン
33 ポケット部
35 凹部
37 第1オーバラップ部
39 第2オーバラップ部
4 測定装置
41 プラグ(測定機器用)
45 電力制御手段
402 入力部
403 プロセッサ
404 電源制御スイッチ
405 キャパシタ
406 充電制御回路
407 バッテリ
408 整流入力スイッチ
409 入力アンプ
410 出力アンプ
411 受信/送信スイッチ
412 補償装置
R,L,C,Z 電気的パラメータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B