(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】海底機器、海底機器の構成方法、及び海底ケーブルシステム
(51)【国際特許分類】
G02B 6/50 20060101AFI20241126BHJP
G02B 6/46 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
G02B6/50 311
G02B6/46 301
(21)【出願番号】P 2022511598
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2021003978
(87)【国際公開番号】W WO2021199663
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2020059951
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】長沢 敏秀
(72)【発明者】
【氏名】田中 章裕
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-142428(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0187396(US,A1)
【文献】特開昭58-019043(JP,A)
【文献】特開2017-215438(JP,A)
【文献】特開2005-215413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/46 - 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底ケーブルに接続する1本の主テールケーブルと、
前記主テールケーブルが含む複数本の光ファイバのうちの第1群を含む第1の分岐テールケーブルと、
前記複数本の光ファイバのうちの第2群を含む第2の分岐テールケーブルと、
前記主テールケーブルと前記第1及び第2の分岐テールケーブルとを連結すると共に、前記主テールケーブルが含む前記複数本の光ファイバを前記第1群及び第2群に分岐させる貫通孔を内部に備える分岐部材と、
前記第1の分岐テールケーブルを導入する第1の導入部、及び前記第2の分岐テールケーブルを導入する第2の導入部を有する機器本体と、を備える、
海底機器。
【請求項2】
前記主テールケーブルは、前記複数本の光ファイバを覆う銅管を備え、
前記第1の分岐テールケーブルは、前記第1群の光ファイバを覆う銅管を備え、
前記第2の分岐テールケーブルは、前記第2群の光ファイバを覆う銅管を備え、
前記分岐部材の前記貫通孔の各開口端に、前記主テールケーブル並びに前記第1及び第2の分岐テールケーブルの各銅管の一端部が、ろう付けされている、
請求項1に記載の海底機器。
【請求項3】
前記分岐部材の前記貫通孔の各開口端に、ザグリ穴が設けられており、
当該ザグリ穴のそれぞれに、前記主テールケーブル並びに前記第1及び第2の分岐テールケーブルの各銅管の前記一端部が、挿入され、ろう付けされている、
請求項2に記載の海底機器。
【請求項4】
前記貫通孔の各ザグリ穴の開口端に、内周面から外側に向かって拡径されたテーパ部が設けられており、
当該テーパ部のそれぞれに、ろう付け部が形成されている、
請求項3に記載の海底機器。
【請求項5】
前記分岐部材において、
前記第1及び第2の分岐テールケーブルの銅管が挿入された一対の前記ザグリ穴の間の部位が、外側に張り出している、
請求項3又は4に記載の海底機器。
【請求項6】
前記第1及び第2の分岐テールケーブルの銅管の内径よりも前記貫通孔の直径が大きく、当該貫通孔の直径よりも前記主テールケーブルの銅管の内径が大きい、
請求項2~5のいずれか一項に記載の海底機器。
【請求項7】
前記分岐部材の外周面と端面との境界に位置する角部が面取りされている、
請求項1~6のいずれか一項に記載の海底機器。
【請求項8】
前記分岐部材が、マルエージング鋼からなる、
請求項1~7のいずれか一項に記載の海底機器。
【請求項9】
海底ケーブルに接続する1本の主テールケーブルを、分岐部材を介して、前記主テールケーブルが含む複数本の光ファイバのうちの第1群を含む第1の分岐テールケーブルと第2群を含む第2の分岐テールケーブルとに分岐させるステップと、
前記第1の分岐テールケーブルを第1の導入部を介して機器本体に導入すると共に、前記第2の分岐テールケーブルを第2の導入部を介して機器本体に導入するステップと、を備
え、
前記主テールケーブルと前記第1及び第2の分岐テールケーブルとを連結すると共に、前記主テールケーブルが含む前記複数本の光ファイバを前記第1群及び第2群に分岐させる貫通孔を内部に備えるように、前記分岐部材を構成する、
海底機器の構成方法。
【請求項10】
海底ケーブルと、
前記海底ケーブルに接続された海底機器と、を備え、
前記海底機器は、
前記海底ケーブルに接続する1本の主テールケーブルと、
前記主テールケーブルが含む複数本の光ファイバのうちの第1群を含む第1の分岐テールケーブルと、
前記複数本の光ファイバのうちの第2群を含む第2の分岐テールケーブルと、
前記主テールケーブルと前記第1及び第2の分岐テールケーブルとを連結すると共に、前記主テールケーブルが含む前記複数本の光ファイバを前記第1群及び第2群に分岐させる貫通孔を内部に備える分岐部材と、
前記第1の分岐テールケーブルを導入する第1の導入部、及び前記第2の分岐テールケーブルを導入する第2の導入部を有する機器本体と、を備える、
海底ケーブルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は海底機器、海底機器の構成方法、及び海底ケーブルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
海底ケーブルに接続され、海底に設置される海底機器が知られている。特許文献1には、長距離伝送中に減衰した海底ケーブルの光信号を増幅する海底機器である海底中継装置が開示されている。海底機器としては、海底中継装置の他に、海底分岐装置や地震津波観測装置などが知られている。いずれの海底機器においても、海底ケーブルと海底機器本体とを接続するテールケーブルの構造は同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
海底ケーブルの伝送容量増加に伴い、海底ケーブルが含む光ファイバの本数を増加させる必要がある。特許文献1に開示された海底機器では、海底ケーブルに接続されたテールケーブルを機器本体に導入する導入部が1箇所設けられている。
【0005】
ここで、1つの導入部から機器本体に導入できる光ファイバの本数には、種々の理由から制限がある。そのため、光ファイバの本数を増加させるには、機器本体に導入部を複数設けることが考えられる。
しかしながら、海底ケーブルに接続された1本のテールケーブルを複数本に分岐させるのが難しかった。
【0006】
本開示は、このような課題に鑑み、海底ケーブルの伝送容量増加に対応可能な海底機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る海底機器は、
海底ケーブルに接続する1本の主テールケーブルと、
前記主テールケーブルが含む複数本の光ファイバのうちの第1群を含む第1の分岐テールケーブルと、
前記複数本の光ファイバのうちの第2群を含む第2の分岐テールケーブルと、
前記主テールケーブルと前記第1及び第2の分岐テールケーブルとを連結すると共に、前記主テールケーブルが含む前記複数本の光ファイバを前記第1群及び第2群に分岐させる貫通孔を内部に備える分岐部材と、
前記第1の分岐テールケーブルを導入する第1の導入部、及び前記第2の分岐テールケーブルを導入する第2の導入部を有する機器本体と、を備えるものである。
【0008】
本開示の一態様に係る海底機器の構成方法は、
海底ケーブルに接続する1本の主テールケーブルを、分岐部材を介して、前記主テールケーブルが含む複数本の光ファイバのうちの第1群を含む第1の分岐テールケーブルと第2群を含む第2の分岐テールケーブルとに分岐させるステップと、
前記第1の分岐テールケーブルを第1の導入部を介して機器本体に導入すると共に、前記第2の分岐テールケーブルを第2の導入部を介して機器本体に導入するステップと、を備えるものである。
【0009】
本開示の一態様に係る海底ケーブルシステムは、
海底ケーブルと、
前記海底ケーブルに接続された海底機器と、を備え、
前記海底機器は、
前記海底ケーブルに接続する1本の主テールケーブルと、
前記主テールケーブルが含む複数本の光ファイバのうちの第1群を含む第1の分岐テールケーブルと、
前記複数本の光ファイバのうちの第2群を含む第2の分岐テールケーブルと、
前記主テールケーブルと前記第1及び第2の分岐テールケーブルとを連結すると共に、前記主テールケーブルが含む前記複数本の光ファイバを前記第1群及び第2群に分岐させる貫通孔を内部に備える分岐部材と、
前記第1の分岐テールケーブルを導入する第1の導入部、及び前記第2の分岐テールケーブルを導入する第2の導入部を有する機器本体と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、海底ケーブルの伝送容量増加に対応可能な海底機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る海底機器の構成を示す模式断面図である。
【
図2】第2の実施形態に係る海底機器及び海底ケーブルシステムの構成を示す模式断面図である。
【
図5】テールケーブルの製造方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0013】
(第1の実施形態)
<海底機器の構成>
まず、
図1を参照して、第1の実施形態に係る海底機器の構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る海底機器の構成を示す模式断面図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る海底機器は、機器本体10、分岐部材20、主テールケーブルMTC、及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2を備えている。
【0014】
機器本体10は、海底機器の本体部である。
図1に示すように、機器本体10は、分岐テールケーブルBTC1を導入する導入部(第1の導入部)131、及び分岐テールケーブルBTC2を導入する導入部(第2の導入部)132を有する。
【0015】
主テールケーブルMTCの一端は、海底ケーブル(
図1では不図示)に接続する。主テールケーブルMTCの他端は、分岐部材20を介して分岐テールケーブルBTC1、BTC2に連結されている。主テールケーブルMTCは、全ての光ファイバすなわち光ファイバ群FG1、FG2を含んでいる。
なお、
図1では、理解を容易にするため、ケーブル内部の光ファイバ群FG1、FG2が、太い実線で示されている。
【0016】
図1に示すように、分岐テールケーブル(第1の分岐テールケーブル)BTC1の一端は、分岐部材20を介して主テールケーブルMTCに連結されている。分岐テールケーブルBTC1の他端は、導入部131を介して機器本体10に導入されている。分岐テールケーブルBTC1は、光ファイバ群(第1群の光ファイバ)FG1を含んでいる。
【0017】
図1に示すように、分岐テールケーブル(第2の分岐テールケーブル)BTC2の一端は、分岐部材20を介して主テールケーブルMTCに連結されている。分岐テールケーブルBTC2の他端は、導入部132を介して機器本体10に導入されている。分岐テールケーブルBTC2は、光ファイバ群(第2群の光ファイバ)FG2を含んでいる。
【0018】
図1に示すように、分岐部材20は、主テールケーブルMTCと分岐テールケーブルBTC1、BTC2とを連結している。さらに、分岐部材20は、主テールケーブルMTCが含む複数本の光ファイバを光ファイバ群FG1、FG2に分岐させる貫通孔21を内部に備えている。
分岐部材20、主テールケーブルMTC、及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2がテールケーブルを構成している。
【0019】
以上の通り、第1の実施形態に係る海底機器では、海底ケーブルに接続する1本の主テールケーブルMTCを、分岐部材20を介して、光ファイバ群FG1を含む分岐テールケーブルBTC1と光ファイバ群FG2を含む分岐テールケーブルBTC2とに分岐させる。そして、導入部131を介して分岐テールケーブルBTC1を機器本体10に導入すると共に、導入部132を介して分岐テールケーブルBTC2を機器本体10に導入する。すなわち、複数の導入部131、132を介して機器本体10に光ファイバを導入でき、海底ケーブルの伝送容量増加に対応できる。
【0020】
なお、
図1に示した分岐部材20では、主テールケーブルMTCが含む複数本の光ファイバを2つの群に分岐させているが、3つ以上の群に分岐させてもよい。その場合、分岐させた数に合わせて、機器本体10に導入部も3つ以上設ければよい。
【0021】
(第2の実施形態)
<海底機器及び海底ケーブルシステムの構成>
次に、
図2を参照して、第2の実施形態に係る海底機器及び海底ケーブルシステムの構成について説明する。
図2は、第2の実施形態に係る海底機器及び海底ケーブルシステムの構成を示す模式断面図である。海底機器は、例えば、海底中継装置、海底分岐装置、地震津波観測装置などである。
【0022】
図2に示すように、第2の実施形態に係る海底ケーブルシステムは、海底ケーブルSC及び海底機器を備えている。第2の実施形態に係る海底機器は、
図1に示した機器本体10、分岐部材20、主テールケーブルMTC、及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2に加え、ジョイントボックスJB及びジョイントカバー30を備えている。
【0023】
図2に示すように、第2の実施形態に係る海底機器は、機器本体10の長手方向両端のそれぞれに、分岐部材20、主テールケーブルMTC、分岐テールケーブルBTC1、BTC2、ジョイントボックスJB、及びジョイントカバー30を備えている。
図2に示すように、機器本体10の長手方向両端の構成は同様であるため、一端側の構成について説明する。
【0024】
機器本体10は、海底機器の本体部である。
図2に示すように、機器本体10は、内部ユニット11が、円筒状の耐圧筐体12に収容された構成を有している。海底中継装置の場合、内部ユニット11は、長距離伝送中に減衰した海底ケーブルSCの光信号を増幅する回路等を含む。
【0025】
耐圧筐体12には、分岐テールケーブルBTC1を内部ユニット11に導入する導入部131、及び分岐テールケーブルBTC2を内部ユニット11に導入する導入部132が設けられている。耐圧筐体12は、水深8000mの水圧に耐える強度を有しており、例えばベリリウム銅合金等からなる。また、導入部131、132などから耐圧筐体12の内部に海水が入り込まないように、耐圧筐体12、導入部131、132は気密構造を有している。
【0026】
図2に示すように、主テールケーブルMTCの一端は、ジョイントボックスJBを介して、海底ケーブルSCに接続されている。主テールケーブルMTCの他端は、分岐部材20を介して分岐テールケーブルBTC1、BTC2に連結されている。
【0027】
ここで、主テールケーブルMTCは、銅管内に全ての光ファイバ(すなわち
図2に示した光ファイバ群FG1、FG2)を収容する構成を有している。銅管は、光ファイバ群FG1、FG2を保護すると共に、給電線として機能している。ジョイントボックスJBでは、海底ケーブルSC及び主テールケーブルMTCの給電線同士及び光ファイバ同士が互いに接続されている。
なお、
図2でも、理解を容易にするため、ケーブル内部の光ファイバ群FG1、FG2が、太い実線で示されている。
【0028】
図2に示すように、分岐テールケーブルBTC1の一端は、分岐部材20を介して主テールケーブルMTCに連結されている。分岐テールケーブルBTC1の他端は、導入部131を介して機器本体10に導入され、内部ユニット11に接続されている。分岐テールケーブルBTC1は、光ファイバ群FG1を含んでいる。
【0029】
図2に示すように、分岐テールケーブルBTC2の一端は、分岐部材20を介して主テールケーブルMTCに連結されている。分岐テールケーブルBTC2の他端は、導入部132を介して機器本体10に導入され、内部ユニット11に接続されている。分岐テールケーブルBTC2は、光ファイバ群FG2を含んでいる。
【0030】
図2に示すように、分岐部材20は、主テールケーブルMTCと分岐テールケーブルBTC1、BTC2とを連結している。さらに、分岐部材20は、主テールケーブルMTCが含む複数本の光ファイバを光ファイバ群FG1、FG2に分岐させる貫通孔21を内部に備えている。
分岐部材20、主テールケーブルMTC、及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2からテールケーブルが構成されている。
分岐部材20の詳細については後述する。
【0031】
図2に示すように、ジョイントカバー30は、分岐部材20、主テールケーブルMTC、及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2を収容する円筒部及びジョイントボックスJBを収容する円錐部からなる中空部材である。円錐部は、海底ケーブルSC側に向かって径が細くなっている。ジョイントカバー30の一端(すなわち円筒部の一端)は、機器本体10の耐圧筐体12に嵌合もしくは螺合され、固定されている。ジョイントカバー30の他端(すなわち円錐部の先端)は、海底ケーブルSCを導入するために、開口されている。ジョイントカバー30の内部には海水が浸入する。
【0032】
以上の通り、第2の実施形態に係る海底機器も、主テールケーブルMTCが含む複数本の光ファイバを光ファイバ群FG1、FG2に分岐させる分岐部材20を備えている。そのため、複数の導入部131、132を介して機器本体10に光ファイバを導入でき、海底ケーブルの伝送容量増加に対応できる。
【0033】
<分岐部材20の詳細>
次に、
図3、
図4を参照して、分岐部材20の詳細について説明する。
図3は、分岐部材20の外観斜視図である。
図4は、分岐部材20の断面斜視図である。
図4に示すように、分岐部材20の内部には、平面視Y字状の貫通孔21が形成されている。Y字状の貫通孔21における3つの開口端には、貫通孔21よりも内径の大きいザグリ穴22、221、222が形成されている。
【0034】
図4に示すように、ザグリ穴22には、主テールケーブルMTCを構成する銅管CPの一端部が例えば数mm程度の深さで嵌入されている。また、
図3に示すように、ザグリ穴22の開口端には、ザグリ穴22の内周面から外側に向かって拡径するようにテーパ部22aが形成されている。
【0035】
テーパ部22aを設けることによって、ザグリ穴22への銅管CPの挿入、及び分岐部材20と銅管CPとのろう付けが容易になる。具体的には、
図4に示すように、このテーパ部22aと銅管CPとの隙間にろう材を充填することによって、リング状のろう付け部が形成されている。
【0036】
図4に示すように、ザグリ穴221、222には、それぞれ分岐テールケーブルBTC1、BTC2を構成する銅管CP1、CP2の一端部が例えば数mm程度の深さで嵌入されている。ザグリ穴22と同様に、ザグリ穴221、222の開口端にも、内周面から外側に向かって拡径するようにテーパ部221a、222aがそれぞれ形成されている。
【0037】
テーパ部を設けることによって、ザグリ穴221、222への銅管CP1、CP2の挿入、及び分岐部材20と銅管CP1、CP2とのろう付けが容易になる。具体的には、
図4に示すように、ザグリ穴221、222のテーパ部221a、222aにも、ザグリ穴22のテーパ部22aと同様に、リング状のろう付け部が形成されている。
【0038】
製造時には、
図4に太い矢印で示すように、分岐テールケーブルBTC1の銅管CP1、分岐部材20の貫通孔21を介して、主テールケーブルMTCの銅管CPに光ファイバ群FG1を挿通する。同様に、分岐テールケーブルBTC2の銅管CP2、分岐部材20の貫通孔21を介して、主テールケーブルMTCの銅管CPに光ファイバ群FG2を挿通する。
【0039】
そのため、
図4に示した例では、貫通孔21において、銅管CP1、CP2と銅管CPとを接続する経路は、それぞれ平面視で弧を描くように、なめらかに形成されている。このような構成によって、光ファイバ群FG1、FG2の屈曲を抑制できる。
【0040】
また、
図4に示した例では、銅管CP1、CP2の内径よりも貫通孔21の直径が大きく形成されていると共に、貫通孔21の直径よりも銅管CPの内径が大きく形成されている。そのため、光ファイバ群FG1、FG2を挿通させる際、銅管CP1、CP2の内周面と貫通孔21との段差、あるいは貫通孔21と銅管CPの内周面との段差に、光ファイバ群FG1、FG2の先端が引っ掛かることを抑制できる。
【0041】
分岐部材20は、水深8000mの水圧に耐える強度を有しており、例えば鉄鋼材料、銅、銅合金(例えばベリリウム銅合金)等からなる。また、気密性を確保するため、上述の通り、分岐部材20は、主テールケーブルMTCの銅管CP及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2の銅管CP1、CP2と、ろう付けされている。さらに、分岐部材20は、銅管CP、CP1、CP2と同様に、光ファイバ群FG1、FG2を保護すると共に、給電線としても機能している。
【0042】
このように、強度、銅管とのろう付け性、電気抵抗等を考慮して、分岐部材20の材料が選択される。なお、給電線全体の電気抵抗としては、銅管の電気抵抗が支配的であるため、分岐部材20の材料を選択する上で、電気抵抗の優先度は低い。
また、分岐部材20の製造では、Y字状に分岐した貫通孔21の機械加工が難しいため、分岐部材20は例えば金属粉末を用いた積層造形(いわゆる金属3Dプリンタ)等によって製造される。
【0043】
一例として、分岐部材20は、マルエージング鋼粉末を用いた積層造形によって製造される。高強度のマルエージング鋼を用いることによって、分岐部材20を薄肉化(すなわち小型化・軽量化)できる。さらに、分岐部材20の薄肉化によって、ろう付け時における抜熱が抑制され、ろう材が溶融し易くなり、溶接性が向上する。ここで、鉄鋼材料は、銅や銅合金に比べ、強度が高いため薄肉化できると共に、熱伝導率が低いためろう付け時の抜熱を抑制できる。例えば、銅管CPとろう付けされるザグリ穴22が形成された部位の肉厚を2mm以下(例えば1.2mm)にできる。
【0044】
図3、
図4に示すように、分岐部材20は、Y字状の貫通孔21に対応したなめらかな外形を有している。他方、分岐部材20では、銅管CP1、CP2が挿入された一対のザグリ穴221、222の間の部位が外側に張り出している。
【0045】
ここで、詳細には後述するように、分岐部材20は絶縁モールドされる。絶縁モールド時、仮にザグリ穴221、222の間に凹部が形成されていると、空隙が生じ易い。
図3、
図4に示した分岐部材20では、ザグリ穴221、222の間の部位が外側に張り出しているため、絶縁モールド時の空隙が抑制され、耐電圧が向上する。
【0046】
また、
図3に示すように、分岐部材20における外周面と端面との境界に位置する角部は面取りされている。絶縁モールド時、仮に分岐部材20に角部が形成されていると、角部に空隙が生じ易い。
図3、
図4に示した分岐部材20では、角部が面取りされているため、絶縁モールド時の空隙が抑制され、耐電圧が向上する。また、角部の電界強度自体も抑制され、耐電圧が向上する。
【0047】
<テールケーブルの製造方法>
次に、
図5を参照して、テールケーブルの製造方法について説明する。
図5は、テールケーブルの製造方法を示す平面図である。
図4も適宜参照する。
上述の通り、テールケーブルは、分岐部材20、主テールケーブルMTC、及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2から構成されている。
【0048】
図5の上段に示すように、主テールケーブルMTCは、外周面に絶縁被覆層ICLが被覆された銅管CPを備えている。分岐テールケーブルBTC1は、外周面に絶縁被覆層ICL1が被覆された銅管CP1を備えている。分岐テールケーブルBTC2は、外周面に絶縁被覆層ICL2が被覆された銅管CP2を備えている。絶縁被覆層ICL、ICL1、ICL2は、例えばポリエチレンからなる。
【0049】
まず、
図5の上段に示すように、分岐部材20に挿入する主テールケーブルMTCの一端の絶縁被覆層ICLを除去して銅管CPを露出させる。また、分岐部材20に挿入する分岐テールケーブルBTC1の一端の絶縁被覆層ICL1を除去して銅管CP1を露出させる。同様に、分岐部材20に挿入する分岐テールケーブルBTC2の一端の絶縁被覆層ICL2を除去して銅管CP2を露出させる。また、
図5に示した例では、分岐部材20に銅管CP1、CP2を挿入した後、分岐テールケーブルBTC1、BTC2が平行になるように、露出させた銅管CP1、CP2を予め湾曲させておく。
【0050】
次に、
図5の中段に示すように、分岐部材20に銅管CP、CP1、CP2を挿入して組み付け、ろう付けする。
詳細については、
図4を参照して説明した通りである。
【0051】
次に、
図5の下段に示すように、分岐部材20及び露出している銅管CP、CP1、CP2を絶縁モールドし、絶縁被覆層ICL3によって覆う。絶縁モールド時に、絶縁被覆層ICL3は、絶縁被覆層ICL、ICL1、ICL2と一体化される。絶縁被覆層ICL3、絶縁被覆層ICL、ICL1、ICL2と同様に、例えばポリエチレンからなる。
【0052】
その後、
図4に太い矢印で示すように、分岐テールケーブルBTC1の銅管CP1、分岐部材20の貫通孔21を介して、主テールケーブルMTCの銅管CPに光ファイバ群FG1を挿通する。同様に、分岐テールケーブルBTC2の銅管CP2、分岐部材20の貫通孔21を介して、主テールケーブルMTCの銅管CPに光ファイバ群FG2を挿通する。
【0053】
以上によって、テールケーブルが製造される。テールケーブルは、絶縁被覆層ICL、ICL1~ICL3によって、例えば15kV以上の耐電圧を有する。また、絶縁被覆層ICL、ICL1~ICL3によって、金属製である銅管CP、CP1、CP2及び分岐部材20の腐食を抑制できる。
【0054】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
海底ケーブルに接続する1本の主テールケーブルと、
前記主テールケーブルが含む複数本の光ファイバのうちの第1群を含む第1の分岐テールケーブルと、
前記複数本の光ファイバのうちの第2群を含む第2の分岐テールケーブルと、
前記主テールケーブルと前記第1及び第2の分岐テールケーブルとを連結すると共に、前記主テールケーブルが含む前記複数本の光ファイバを前記第1群及び第2群に分岐させる貫通孔を内部に備える分岐部材と、
前記第1の分岐テールケーブルを導入する第1の導入部、及び前記第2の分岐テールケーブルを導入する第2の導入部を有する機器本体と、を備える、
海底機器。
(付記2)
前記主テールケーブルは、前記複数本の光ファイバを覆う銅管を備え、
前記第1の分岐テールケーブルは、前記第1群の光ファイバを覆う銅管を備え、
前記第2の分岐テールケーブルは、前記第2群の光ファイバを覆う銅管を備え、
前記分岐部材の前記貫通孔の各開口端に、前記主テールケーブル並びに前記第1及び第2の分岐テールケーブルの各銅管の一端部が、ろう付けされている、
付記1に記載の海底機器。
(付記3)
前記分岐部材の前記貫通孔の各開口端に、ザグリ穴が設けられており、
当該ザグリ穴のそれぞれに、前記主テールケーブル並びに前記第1及び第2の分岐テールケーブルの各銅管の前記一端部が、挿入され、ろう付けされている、
付記2に記載の海底機器。
(付記4)
前記貫通孔の各ザグリ穴の開口端に、内周面から外側に向かって拡径されたテーパ部が設けられており、
当該テーパ部のそれぞれに、ろう付け部が形成されている、
付記3に記載の海底機器。
(付記5)
前記分岐部材において、
前記第1及び第2の分岐テールケーブルの銅管が挿入された一対の前記ザグリ穴の間の部位が、外側に張り出している、
付記3又は4に記載の海底機器。
(付記6)
前記第1及び第2の分岐テールケーブルの銅管の内径よりも前記貫通孔の直径が大きく、当該貫通孔の直径よりも前記主テールケーブルの銅管の内径が大きい、
付記2~5のいずれか一項に記載の海底機器。
(付記7)
前記分岐部材の外周面と端面との境界に位置する角部が面取りされている、
付記1~6のいずれか一項に記載の海底機器。
(付記8)
前記分岐部材が、マルエージング鋼からなる、
付記1~7のいずれか一項に記載の海底機器。
(付記9)
海底ケーブルに接続する1本の主テールケーブルを、分岐部材を介して、前記主テールケーブルが含む複数本の光ファイバのうちの第1群を含む第1の分岐テールケーブルと第2群を含む第2の分岐テールケーブルとに分岐させるステップと、
前記第1の分岐テールケーブルを第1の導入部を介して機器本体に導入すると共に、前記第2の分岐テールケーブルを第2の導入部を介して機器本体に導入するステップと、を備える、
海底機器の構成方法。
(付記10)
海底ケーブルと、
前記海底ケーブルに接続された海底機器と、を備え、
前記海底機器は、
前記海底ケーブルに接続する1本の主テールケーブルと、
前記主テールケーブルが含む複数本の光ファイバのうちの第1群を含む第1の分岐テールケーブルと、
前記複数本の光ファイバのうちの第2群を含む第2の分岐テールケーブルと、
前記主テールケーブルと前記第1及び第2の分岐テールケーブルとを連結すると共に、前記主テールケーブルが含む前記複数本の光ファイバを前記第1群及び第2群に分岐させる貫通孔を内部に備える分岐部材と、
前記第1の分岐テールケーブルを導入する第1の導入部、及び前記第2の分岐テールケーブルを導入する第2の導入部を有する機器本体と、を備える、
海底ケーブルシステム。
【0055】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0056】
この出願は、2020年3月30日に出願された日本出願特願2020-059951を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0057】
10 機器本体
11 内部ユニット
12 耐圧筐体
20 分岐部材
21 貫通孔
22、221、222 ザグリ穴
22a、221a、222a テーパ部
30 ジョイントカバー
131、132 導入部
BTC1、BTC2 分岐テールケーブル
CP、CP1、CP2 銅管
FG1、FG2 光ファイバ群
ICL、ICL1~ICL3 絶縁被覆層
JB ジョイントボックス
MTC 主テールケーブル
SC 海底ケーブル