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特許7593696フライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】フライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システム
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20241126BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20241126BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241126BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20241126BHJP
   B64U 20/80 20230101ALN20241126BHJP
   B64U 101/45 20230101ALN20241126BHJP
【FI】
B28B1/30
B33Y50/02
B33Y30/00
E04G21/16
B64U20/80
B64U101:45
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024088421
(22)【出願日】2024-05-30
【審査請求日】2024-06-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示会名 福島RDMセンター2024『結』 主催 會澤高圧コンクリート株式会社 開催日 令和 6年 4月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598037569
【氏名又は名称】會澤高圧コンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 翔太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
(72)【発明者】
【氏名】東 大智
(72)【発明者】
【氏名】青木 涼
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-087941(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0094958(US,A1)
【文献】国際公開第2022/158387(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/30
B33Y 50/02
B33Y 30/00
E04G 21/16
B64U 20/80
B64U 101/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系材料を吐出して積層造形を行う建設用3Dプリンタ装置と、
前記建設用3Dプリンタ装置を把持して積層造形される構造物の3Dモデルに基づいて設定された目標位置に自律飛行するドローンと、
前記建設用3Dプリンタ装置の動作及び前記ドローンの飛行を管理する中央管制装置と、を備え、
前記建設用3Dプリンタ装置は、
前記セメント系材料を吐出するノズルを備えたロボットアームと、
前記ノズルから吐出された前記セメント系材料が積層される前記構造物上のプリント面を撮影する画像監視ユニットと、
前記画像監視ユニットで撮影された前記プリント面の画像に基づいて前記ロボットアームを制御するプリンタ制御ユニットと、を含み、
前記ドローンは、
前記ドローンの飛行位置を検出する位置検出ユニットと、
前記検出された飛行位置に基づいて前記設定された目標位置に自律飛行するように前記ドローンの飛行を制御する飛行制御ユニットと、
前記ドローン及び前記ドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置と前記中央管制装置との間の通信を行う無線通信ユニットと、を含み、
前記中央管制装置は、
前記構造物の3Dモデルを高さ方向に沿って所定の厚さで水平にスライスした層のそれぞれに対するプリント経路を作成し、
前記作成されたプリント経路を所定の長さ区間ごとに分割し、前記分割された長さ区間のそれぞれの中間位置を前記ドローンが飛行する前記目標位置に設定し、前記設定された目標位置の座標データを前記ドローンに送信し、
前記ドローンの飛行制御ユニットは、前記目標位置の座標データに基づいて前記ドローンが自律飛行を行って前記目標位置でホバリングするように制御し、
前記建設用3Dプリンタ装置は、前記ドローンがホバリングしている前記目標位置で、前記画像監視ユニットで撮影された前記プリント面の画像を利用して、前記ロボットアームをビジュアルフィードバック制御することにより、前記ノズルを前記分割された長さ区間の前記プリント面に沿って移動させながら前記セメント系材料を吐出させ
前記中央管制装置は、
前記建設用3Dプリンタ装置から、前記画像監視ユニットで撮影された前記構造物上の第n層(nは2以上の整数である)のプリント面に吐出されたセメント系材料の積層形状の画像を受信し、前記受信した画像から前記第n層のプリント面に積層された層と前記3Dモデルとのズレ量を計測し、前記計測された第n層のズレ量と前記第n層の直前に積層された第n-1層の前記3Dモデルからのズレ量に基づいて、前記第n層の直後に積層される第n+1層のプリント経路に設定される目標位置の座標データを補正し、前記補正された第n+1層の目標位置の座標データを前記ドローンに送信することを特徴とするフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システム。
【請求項2】
前記所定の長さ区間は、前記ロボットアームの可動範囲に対応した区間として設定され、
前記ドローンは、前記目標位置において前記ロボットアームの可動範囲に対応した区間への吐出動作が終了した通知を前記建設用3Dプリンタ装置から受信すると、順次ホバリングする位置を前記目標位置に隣接する次の目標位置に移動することを特徴とする請求項1に記載のフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システム。
【請求項3】
前記ドローンの位置検出ユニットは、前記構造物の建設場所に設定された工事基準点に沿って配置されたマーカーを利用したモーションキャプチャー及び/又はRTK-GPS装置により自己位置推定を行い、
前記設定された目標位置の座標データは、前記工事基準点を用いた現場座標系で指定されることを特徴とする請求項1に記載のフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システム。
【請求項4】
前記構造物が積層造形される建設場所は、海又は湖上に浮べられた浮体の上面であり、前記工事基準点及び前記マーカーは前記浮体の前記上面に配置されることを特徴とする請求項に記載のフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システム。
【請求項5】
前記フライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムは、前記ドローン及び前記ドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置を複数備え、
前記中央管制装置は、前記複数のドローンのそれぞれに対して、前記作成されたプリント経路に沿って設定された前記目標位置のうちの重複しない目標位置を割り当てて、前記割り当てられた重複しない目標位置の座標データを前記複数のドローンのそれぞれに送信することを特徴とする請求項1に記載のフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システム。
【請求項6】
前記複数のドローンのそれぞれは、前記中央管制装置から受信した前記割り当てられた目標位置の座標データに基づいて自律飛行を行い、それぞれのドローンが互いの位置データを直接交換することにより自律的に衝突を回避するように飛行を制御することを特徴とする請求項に記載のフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムに関し、より詳しくは、ドローンによって空中移動する建設用3Dプリンタ装置から積層目標面にセメント系材料が正確に吐出されるようにドローン及び建設用3Dプリンタ装置を制御するフライング型建設用3Dプリンタ吐出位置制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設分野においても3Dプリンタ技術を用いて、コンクリートやモルタル等のセメント系材料を積層しながら構造物を造形する構築方法の適用が始まっている。建設分野で使用される3Dプリンタは、速硬性コンクリート等のセメント系材料を3次元的に自動制御されるノズル部から押し出すことで、積層造形を行うようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ガントリー式の3Dプリンタが提案されている。ガントリー式の3Dプリンタは、離間して敷設された一対のレール上をガントリーが走行し、このガントリーに設けられたノズル部が、ガントリーに対して上下方向に移動されると共にガントリーの幅方向にスライドされることで3次元的に駆動されるようになっている。このため、ガントリー式の3Dプリンタで構築される構造物は一対のレールで挟まれたエリアに限定される。
【0004】
これに対して、特許文献2には、ノズル部がロボットアームに設けられた構成の建築用3Dプリンタも提案されている。ロボットアーム式の3Dプリンタは、ロボットアームを駆動してノズル部を3次元的に駆動する。したがって、ノズル部は所定の半径内で駆動されることになり、建築物は3Dプリンタの近傍に建築される。
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術は、ノズル部の移動範囲がガントリーやロボットアームの到達域内に限定されるため、構築可能な構造物の大きさが制限されるという問題がある。ノズル部の移動範囲を超えて、構造物を構築したい場合、ロボットアーム式の3Dプリンタでは、ロボットアームに設置位置を必要な距離だけ移動した後、再度ロボットアームを固定する作業を繰り返す必要があり、時間とコストがかかるという問題がある。
【0006】
そこで、大規模な構造物の構築に対応するため、3Dプリンタを無人航空機、いわゆるドローンに搭載して、3Dプリンティングを行う技術が提案されている(例えば、特許文献3)。しかし、ドローンは、飛行時において、風の影響や機体の振動などにより飛行位置のずれや機体の揺れが生じるため、搭載した3Dプリンタから積層目標面上にプリンティング材料を正確に吐出させるように制御することが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2007-518586号公報
【文献】特表2020-26099号公報
【文献】韓国公開特許第10-2017-0127801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、大型構造物の建設等に使用されるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置を積層目標に対して高精度に安定して位置合せ可能とするフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムは、セメント系材料を吐出して積層造形を行う建設用3Dプリンタ装置と、前記建設用3Dプリンタ装置を把持して積層造形される構造物の3Dモデルに基づいて設定された目標位置に飛行するドローンと、前記建設用3Dプリンタ装置の動作及び前記ドローンの飛行を管理する中央管制装置と、を備え、前記建設用3Dプリンタ装置は、前記セメント系材料を吐出するノズルを備えたロボットアームと、前記ノズルから吐出された前記セメント系材料が積層される前記構造物上のプリント面を撮影する画像監視ユニットと、前記画像監視ユニットで撮影された前記プリント面の画像に基づいて前記ロボットアームを制御するプリンタ制御ユニットと、を含み、前記ドローンは、前記ドローンの飛行位置を検出する位置検出ユニットと、前記検出された飛行位置に基づいて前記設定された目標位置に自律飛行するように前記ドローンの飛行を制御する飛行制御ユニットと、前記ドローン及び前記ドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置と前記中央管制装置との間の通信を行う無線通信ユニットと、を含み、前記中央管制装置は、前記構造物の3Dモデルを高さ方向に沿って所定の厚さで水平にスライスした層のそれぞれに対するプリント経路を作成し、前記作成されたプリント経路を所定の長さ区間ごとに分割し、前記分割された長さ区間のそれぞれの中間位置を前記ドローンが飛行する前記目標位置に設定し、前記設定された目標位置の座標データを前記ドローンに送信し、前記ドローンの飛行制御ユニットは、前記目標位置の座標データに基づいて前記ドローンが自律飛行を行って前記目標位置でホバリングするように制御し、前記建設用3Dプリンタ装置は、前記ドローンがホバリングしている前記目標位置で、前記画像監視ユニットで撮影された前記プリント面の画像を利用して、前記ロボットアームをビジュアルフィードバック制御することにより、前記ノズルを前記分割された長さ区間の前記プリント面に沿って移動させながら前記セメント系材料を吐出させることを特徴とする。
【0010】
前記中央管制装置は、前記建設用3Dプリンタ装置から、前記画像監視ユニットで撮影された前記構造物上の第n層(nは2以上の整数である)のプリント面に吐出されたセメント系材料の積層形状の画像を受信し、前記受信した画像から前記第n層のプリント面に積層された層と前記3Dモデルとのズレ量を計測し、前記計測された第n層のズレ量と前記第n層の直前に積層された第n-1層の前記3Dモデルからのズレ量に基づいて、前記第n層の直後に積層される第n+1層のプリント経路に設定される目標位置の座標データを補正し、前記補正された第n+1層の目標位置の座標データを前記ドローンに送信することができる。
前記所定の長さ区間は、前記ロボットアームの可動範囲に対応した区間として設定され、前記ドローンは、前記目標位置において前記ロボットアームの可動範囲に対応した区間への吐出動作が終了した通知を前記建設用3Dプリンタ装置から受信すると、順次ホバリングする位置を前記目標位置に隣接する次の目標位置に移動し得る。
【0011】
前記ドローンの位置検出ユニットは、前記構造物の建設場所に設定された工事基準点に沿って配置されたマーカーを利用したモーションキャプチャー及び/又はRTK-GPS装置により自己位置推定を行い、前記設定された目標位置の座標データは、前記工事基準点を用いた現場座標系で指定されることが好ましい。
前記構造物が積層造形される建設場所は、海又は湖上に浮べられた浮体の上面であり、前記工事基準点及び前記マーカーは前記浮体の前記上面に配置され得る。
【0012】
フライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムは、前記ドローン及び前記ドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置を複数備え、前記中央管制装置は、前記複数のドローンのそれぞれに対して、前記作成されたプリント経路に沿って設定された前記目標位置のうちの重複しない目標位置を割り当てて、前記割り当てられた重複しない目標位置の座標データを前記複数のドローンのそれぞれに送信し得る。
前記複数のドローンのそれぞれは、前記中央管制装置から受信した前記割り当てられた目標位置の座標データに基づいて自律飛行を行い、それぞれのドローンが互いの位置データを直接交換することにより自律的に衝突を回避するように飛行を制御し得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大型構造物の積層造形において、セメント系材料を吐出するノズルの位置をドローンや構造物の揺れに拘わらずプリント面に対して高精度に安定して位置合せすることができる。また、積層時に設計データからのズレが生じても、セメント系材料の積層崩れが生じない範囲内の補正量で複数層に分散させて修正する機能を備えるため、高品質で信頼性の高い構造物を建設することができる。
さらに、本発明によれば、建設場所が洋上や山岳部などであっても、大型構造物を効率的に建設することが可能となり、建設工期や建設費を大幅に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムの全体構成を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムに含まれる建設用3Dプリンタ装置の構成例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムに含まれるドローンの構成例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムのドローン、建設用3Dプリンタ装置、及び中央管制装置の各機能的構成を説明するためのブロック図である。
図5】円筒状のタワー(塔)を積層造形する例を示す図である。
図6図5に示す円筒状のタワーの積層造形工程の一例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムで用いられるデータ及び制御体系を説明するための構成図である。。
図8】本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムによる積層造形動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムの全体構成を示す概略図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システム1は、セメント系材料を吐出して積層造形を行う建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)と、建設用3Dプリンタ装置を把持して飛行させるドローン(20a、20b)と、建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)及びドローン(20a、20b)が連携して積層造形を実行するよう、これらの装置の動作及び飛行に必要な情報を作成するとともに造形結果を管理する中央管制装置30とが、互いに無線通信手段を通じて相互通信可能に接続されている。
【0018】
図1には、2機のドローンがそれぞれ建設用3Dプリンタ装置を把持して飛行する例を示しているが、本発明はこれに限定されない。1機以上のドローンがそれぞれ建設用3Dプリンタ装置を把持して自律的飛行し、構造物の積層造形を行う形態全般に適用することができる。
【0019】
ドローン(20a、20b)に把持されて飛行し、セメント系材料を吐出してプリントを行う形態の建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)を、本明細書では、「フライング型建設用3Dプリンタ」と称する。
【0020】
本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システム1は、建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)を把持したドローン(20a、20b)が、建設される構造物100の設計データ、具体的には当該構造物の3Dモデルに対応した3Dデータに基づいて中央管制装置30が設定した目標位置に自律飛行し、当該目標位置においてホバリングした状態で、建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)がロボットアーム先端のノズルの位置(吐出方向)を、構造物100上のプリント面(積層目標)に対して位置合せを行いながら、造形用に調製されたセメント系材料を吐出させて積層造形を行い、所望の構造物を建設する。
【0021】
本発明において、造形用に調製されたセメント系材料は、積層造形(付加製造ともいう)において、ノズル等から積層材料を吐出させて造形を行う際に、造形直後の形状が崩れず、かつ、速硬性に優れて当該セメント系材料を積層しても、造形物の寸法安定性に優れた造形物を得ることができるように所定の混和材料等が加えられて調製されたセメント系材料である。
【0022】
造形用に調製されたセメント系材料をその付着性能が低下しない期間内に連続的に積層できるようにするため、構造物100の建設現場の隣接地、具体的には、ドローン(20a、20b)の飛行範囲内に、調製されたセメント系材料の補給ステーション(図示せず)が配置されてもよい。補給ステーションは、ドローン(20a、20b)に把持された建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)に調製されたセメント系材料を自動又は手動で補給するように構成される。
【0023】
一実施形態において、積層造形が行われる建設現場の周辺には、ドローンの位置推定にも利用される、工事基準点となるマーカー40や測量のためのトータルステーション45が配置されてもよい。建設される構造物100の積層造形において、設計データに対応した位置の指定は工事基準点に基づく座標系(現場座標系という)を用いて行われる。また、建設現場は、地面(地表面)に限定されず、洋上又は地上に設置された台座又は土台、海や湖に浮べられた浮体なども含まれ、この場合、マーカー40やトータルステーション45は、台座や土台の周辺や、浮体の端部又は角部などに配置され得る。
【0024】
ドローン(20a、20b)を飛行させる目標位置の設定や、設定された目標位置の現場座標系での3次元座標データ(以下、座標データという)への変換など処理は、中央管制装置30によって実行され、ドローン(20a、20b)は、設定された目標位置の座標データを中央管制装置30から受信すると、当該座標データにしたがって自律飛行を行い、目標位置でホバリングした状態で建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)から構造物100上のプリント面にセメント系材料を吐出させることで積層造形を行う。
【0025】
以下、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システム1に含まれる各装置について詳細に説明する。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムに含まれる建設用3Dプリンタ装置の構成例を示す図である。
【0027】
図2に示すように、本実施形態による建設用3Dプリンタ装置10は、調製されたセメント系材料を収容(貯蔵)する円錐形状のホッパー11と、ホッパー11の底部に設けられて可撓性の搬送パイプ13の一端が連結されるポンプ部12と、搬送パイプ13の他端に連結されたノズル17が取り付けられる吐出ヘッド14と、後述するドローン20に把持されるように構成された連結用部材15と、吐出ヘッド14を自在に動かすロボットアーム16とを含む。なお、本実施形態において、連結用部材15は、建設用3Dプリンタ装置10のベースフレーム(基礎構造体)を兼ねるように構成され、ホッパー11及びロボットアーム16は連結用部材15のベースフレームに取り付けられる。
【0028】
吐出ヘッド14は、ロボットアーム16の先端に取り付けられており、当該ロボットアーム16は、吐出ヘッド14が後述するプリンタ制御ユニットの制御により自在かつ精密に動くように構成された垂直多関節ロボットからなる。また、吐出ヘッド14には、ノズル17から吐出されるセメント系材料が構造物上のプリント面に積層される様子を撮影するためのカメラ18が組み込まれている。但し、本発明はこれに限定されず、カメラ18は吐出ヘッド14とは別の治具を用いて独立に設置されてもよく、ノズル17は吐出ヘッド14に組み込まれてもよい。また、カメラ18はステレオカメラで構成され、さらにミリ波レーダー又はLiDARを含む複合センサとして構成されてもよい。
【0029】
建設用3Dプリンタ装置10は、図示しない画像監視ユニットをさらに備える。画像監視ユニットは、構造物上のプリント面に対してノズル17を位置合せするために、セメント系材料の吐出目標となるプリント面(積層直前のプリント面)をカメラ18でリアルタイムに撮影し、撮影した画像(第n-1層の画像とする)を後述するプリンタ制御ユニットに送信する。また、吐出されたセメント系材料が積層された状態のプリント面が撮影されるように配置された別カメラ(図示せず)で積層後のプリント面を撮影した画像(第n層の画像)を、ドローン20に備えられた無線通信ユニットを介して中央管制装置30に送信する。ここで、nは2以上の整数である。
【0030】
画像監視ユニットは、カメラ18で撮影した画像(第n-1層の画像)から、ノズル17の吐出位置調整用画像を作成して、プリンタ制御ユニットに送信する。プリンタ制御ユニットは、画像監視ユニットから受信した構造物上の吐出位置調整用画像を用いたビジュアルフィードバック制御によりロボットアーム16を制御する。建設用3Dプリンタ装置10の機能的構成については後述する。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムに含まれるドローンの構成例を示す図である。
【0032】
図3に示すように、本実施形態によるドローン20は、本体部21、4つの支持アーム22、4つの推進ユニット23、4つのプロペラ24、及び建設用3Dプリンタ装置10を着脱可能に把持するための連結装置25を備える。支持アーム22、推進ユニット23、及びプロペラ24は、飛行のための推進装置(飛行機構)である。推進装置の動力手段(動力源)は本体部21に備えられ、本実施形態の場合、発動機(エンジン)であることが好ましいが、電動機であってもよい。なお、本実施形態において、ドローン20は、複数のプロペラを有するマルチコプターであるが、プロペラ(主回転翼)の数が1つのヘリコプターでもよく、その他の形式の無人航空機(Unnamed aerial Vehicle:UAV)から選択されてもよい。
【0033】
本体部21に連結された制御ボックス26には、ドローン20の飛行位置を検出する位置検出ユニット、位置検出ユニットで検出された位置データを使用してドローン20が所定の飛行目標(中央管制装置30によって設定された目標位置)に向かって自律飛行するように推進装置を制御する飛行制御ユニット、及び無線通信ユニットを含むドローン制御装置が備えられる。また、制御ボックス26の下部には、セメント系材料が積層された状態(積層直後)のプリント面を撮影できるように配置されたカメラ(図3のカメラ27)が配置される。当該カメラ27は、カメラ18と同様に、ステレオカメラで構成され、さらにミリ波レーダー又はLiDARを含む複合センサとして構成されてもよい。
【0034】
位置検出ユニットは、建設現場に配置されたマーカー40(反射マーカー)を観測するための赤外線カメラ(モーションキャプチャーカメラ)を含み、光学式モーションキャプチャー技術により、ドローン20の3次元位置を推定(算出)するように構成され得る。但し、本発明はこれに限定されず、位置検出ユニットは、さらにRTK-GNSSを備えて、RTK-GNSS測位により、位置検出を行うようにしてもよい。これらの技術により、ミリ単位での自己位置推定を行うことができる。
【0035】
飛行制御ユニットは、ドローン20の姿勢等を検知するためのIMU(慣性計測ユニット)と、CPU(Central Processing Unit)及び/又はGPU(Graphics Processing Unit)を搭載した小型コンピュータ及びメモリーを含み、メモリーに実装された飛行制御プログラムにより、推進装置を制御し、位置検出ユニットで取得されたドローン20の位置データを利用して、中央管制装置30によって設定された目標位置にドローン20が自律飛行するよう制御する。本実施形態において、ドローン20は、離陸後、中央管制装置30から提供された目標位置に自律飛行するようにプログラムされるが、緊急時にはマニュアル操作が行えるようになっていてもよい。
【0036】
無線通信ユニットは、中央管制御装置30及びドローン管理者の通信端末50との間で指令や情報を送受信するための通信モジュールを含む。通信モジュールは、送受信する内容に応じた、複数の周波数帯に対応するように構成される。例えば、用途に応じて、Wi-Fi(登録商標)通信、移動体通信、及び特定小電力無線局用の電波を同時に扱うことができるように構成され得る。また、無線通信ユニットは、ブロードキャスト通信機能を備えることができる。ブロードキャスト通信は、自ドローンから他の多数のドローンに対して同じデータ(自機の位置、高度、機体識別番号などのデータ)を同時かつ一方向で送信する通信形式である。
【0037】
ドローン20は、建設用3Dプリンタ装置10と所定の通信配線を介して通信可能に接続され、建設用3Dプリンタ装置10との間で情報及び指令(制御信号)を送受信する。また、制御ボックス26の下部に配置されたカメラ27で、セメント系材料が積層された状態(積層直後)のプリント面を撮影するように構成される。ドローン20は、位置検出ユニットで検出された当該ドローンの位置及び飛行制御ユニットのIMUで検知された飛行状態と、カメラ27で撮影した積層造形中の構造物上のプリント面に積層されたセメント系材料の画像のデータを、逐次、中央管制装置30に送信するように構成される。
【0038】
ドローン20は、積層造形が行われる建設現場において、複数のドローンが同時に飛行する場合、ドローン同士が直接それぞれの位置情報をブロードキャスト通信により共有して、自律的に衝突を回避する機能とそのための構成を備えることができる。
【0039】
また、建設用3Dプリンタ装置10を把持して積層造形を行うドローンとは別に、積層造形の過程を上空から観測するドローン(監視ドローンという)を飛行させて、建設中の構造物100の造形状態をリアルタイムで中央管制装置30に送信するようにしてもよい。監視ドローンは、例えば、LiDAR装置又はステレオカメラを備え、建設中の構造物100を3Dスキャンして取得した構造物全体の点群データを取得して、中央管制装置30に送信し、中央管制装置30で3次元空間での位置座標に変換する処理を行うことで、地上に配置されたトータルステーション45では対応できない高所部分の積層形状や構造物全体の施工進度などのデータを取得することができる。
【0040】
中央管制装置30は、一般的なコンピュータで構成され、図示しないが、CPU、主記憶装置、補助記憶装置等を含んで構成される制御部(以下では、システム制御部という)、各種のプログラム及びデータを保存する記憶部、ディスプレイ等からなる表示部、キーボードやマウス等の入力機器を介してユーザからの入力を受け付ける入力部、外部機器への出力インターフェイスとなる出力部、及び通信部を含む。また、中央管制装置30は、CPUに所定のプログラムを実行させることにより機能する複数の機能部を含むが、これらの機能部の詳細については後述する。
【0041】
以下、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムの機能構成について説明する。
【0042】
図4は、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムに含まれるドローン、建設用3Dプリンタ装置、及び中央管制装置の各機能的構成を説明するためのブロック図である。
【0043】
図4に示すように、本実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムは、中央管制装置30が、建設用3Dプリンタ装置10及びドローン20とWi-Fi(登録商標)や移動通信システム等による無線通信を介して互いに通信可能に接続される。建設用3Dプリンタ装置10、ドローン20、及び中央管制装置30は、互いに情報及び制御信号を送受信し、連携して動作する。
【0044】
なお、建設用3Dプリンタ装置10、ドローン20、及び中央管制装置30と通信可能に接続されて、これらの装置との間で情報や指令を送受信可能に構成されたドローン管理者の通信端末(又は操作端末)50が含まれてもよい。通信端末50の形態は特に限定されない。また、通信端末50には、無線通信に対応するため所定のアンテナ500aが備えられる。なお、ドローン管理者は、本発明のフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムの運用、指揮管理を行っている者であり、当該構造物の建設管理者であってもよい。
【0045】
本実施形態による建設用3Dプリンタ装置10は、図示しないユニットボックス(筐体)内に、図示しないプロセッサ及びメモリー含んで構成されるプリンタ制御ユニット110と、カメラ18で撮影された画像を取得してプリント面の状態を監視する画像監視ユニット130と、各種のプログラム及びデータを格納するSSD(ソリッドステートドライブ)等からなるプリンタ記憶部140と、ドローン20を介して中央管制装置30との間でデータや制御信号(指令)を送受信するプリンタ通信部150とを含む。プリンタ制御ユニット110は、ロボットアーム16の動作を制御するロボットアーム制御部120を含む。
【0046】
プリンタ制御ユニット110は、プロセッサで所定のプログラムを実行させることにより、ロボットアーム制御部120を機能させて、ロボットアーム16の動作を制御する。また、当該ロボットアーム16に取り付けられたノズル17からセメント系材料を押し出す(吐出させる)ポンプ部12の動作を制御する。
【0047】
画像監視ユニット130は、カメラ18で撮影された画像(第n-1層の画像)を解析してプリント面を識別し、識別されたプリント面の両エッジ間の中心線が画面中央に位置するように調整した画像をノズル17の吐出位置制御用画像としてロボットアーム制御部120に伝送する。この時、画像監視ユニット130は、識別されたプリント面から積層開始点(前回の積層が途切れた位置)を検出し、検出された積層開始点を含む吐出位置制御用画像をロボットアーム制御部120に伝送するようにしてもよい。画像監視ユニット130は、ドローン20が目標位置にホバリングした状態で、ロボットアーム16の先端の動作範囲に対応するプリント面が撮影されるようにカメラ18の画角を調整できる機能を備えてもよい。
【0048】
また、画像監視ユニット130は、ドローン20に配置されたカメラ27で、セメント系材料が構造物上のプリント面に積層された後の状態を撮影した画像(第n層の画像)を、無線通信ユニット230を介して中央管制装置30に送信する。
【0049】
ロボットアーム制御部120は、画像監視ユニット130から送られた積層開始点を含む吐出位置制御用画像と、中央管制装置30から受信した直前に積層された層(第n-1層)とのズレを修正するように補正されたプリント経路(第n層)の座標データに基づいて、ロボットアーム16をリアルタイムビジュアルフィードバック制御することにより、補正されたプリント経路に沿ってノズル17を移動させながら、識別されたプリント面に対してセメント系材料が吐出されるように制御する。
【0050】
本実施形態によるドローン20は、本体部21に連結された制御ボックス26内に、ドローン制御装置が備えられ、ドローン制御装置は、位置検出ユニット210、飛行制御ユニット220、及び無線通信ユニット230を含む。なお、飛行制御ユニット220は、図示しないがSSD等からなる記憶装置を含み、当該記憶装置に飛行プログラムや制御用データなどが保存される。また、無線通信ユニット230には、所定のアンテナ230aが接続されてもよい。
【0051】
位置検出ユニット210は、建設現場に配置された複数のマーカー40(反射マーカー)を利用して、光学式モーションキャプチャー技術により、ドローン20の3次元位置をミリ単位のレベルで推定(算出)し、推定されたドローン20の3次元位置の位置データを飛行制御ユニットに伝達する。これと同時に、位置検出ユニット210は、ドローン20の位置データを中央管制装置30に送信してもよい。さらに、複数のドローンが建設現場で飛行する場合には、リアルタイムで自ドローン20の位置データを他ドローンに発信するとともに、他ドローンから受信した他ドローンの位置データを飛行制御ユニット220に伝達する。
【0052】
飛行制御ユニット220は、飛行制御ユニット220に搭載された小型コンピュータで所定の飛行制御プログラムを実行させ、当該ドローン20を飛行させる目標位置の座標データを中央管制装置30から受信して、受信した目標位置にドローン20が自律飛行するよう、位置検出ユニット210から取得した当該ドローンの位置データ及び飛行制御ユニット220のIMUで検知された機体の姿勢等のデータに基づいて、推進装置を制御する。さらに、ドローン20が目標位置に到達すると、飛行制御ユニット220は、建設用3Dプリンタ装置10のロボットアーム16が当該目標位置での積層動作(ノズル移動)が実行している間、当該目標位置においてホバリングするよう推進装置を制御する。
【0053】
飛行制御ユニット220は、複数のドローンが同時に飛行している状態で、他ドローンから当該ドローン(他ドローン)の位置データを受信すると、自ドローンの位置データとリアルタイムで比較することで、自他の間の距離を計算し、異常接近を回避するように推進装置を制御する。
【0054】
無線通信ユニット230は、中央管制御装置30及びドローン管理者の通信端末50との間で指令や情報を送受信する。また、送受信される指令や情報は送信元と送信先を識別するための識別用データを含み、無線通信ユニット230は、送信先の識別用データに基づいて、受信した指令や情報をドローン20の飛行制御ユニット220又は建設用3Dプリンタ装置10のプリンタ制御ユニット110に振り分けて伝達する。
【0055】
本実施形態による中央管制装置30は、ハードウェア装置で構成されるシステム制御部310、通信部320、表示部330、入力部340、記憶部350、及び外部入力受信部360を備え、積層造形される構造物の3Dモデルに基づいて、ドローン20を飛行させる目標位置を設定し、ドローン20を介して建設用3Dプリンタ装置10から送信されるプリント面を撮影した画像に基づいて、次回ドローン20を飛行させる目標位置と建設用3Dプリンタ10のノズル17を移動させるプリント経路の座標データを補正して、ドローン20及び建設用3Dプリンタ10に補正したそれぞれの座標データを通信部320を介して送信することで、造形中に積まれた層全体が崩れない範囲内に各層の補正量を調整しながら積層作業が実行されるように管理する。
【0056】
さらに、中央管制装置30は、ドローン20及び建設用3Dプリンタ装置10からドローンの位置や機体状態及びセメント系材料の積層状態に関する情報を受信して、構造物の建設作業の進行管理に必要な情報を記憶部350に保存するとともに、ドローン管理者の通信端末(又は操作端末)50に送信するようにしてもよい。
【0057】
中央管制装置30は、システム制御部310のCPU311に所定のフライング型建設用3Dプリンタ管制プログラムを実行させることにより機能する機能部として、工事情報取得部312、施工管理部313、ドローン管制部314、及び建設用3Dプリンタ管理部315を含む。
【0058】
工事情報取得部312は、積層造形される構造物の設計データとして、当該構造物の3Dモデル(3Dデータ)を、所定の通信回線又は通信ネットワークを介して、外部のコンピュータ端末やサーバ等(図示せず)から受信して、記憶部350に保存する。また、工事情報取得部312は、建設用3Dプリンタ10のプリンティング能力情報(1回の充填で印刷可能な延べ長さ、印刷速度など)及びドローン20を飛行させるために必要な各種情報(構造物が建設される場所の測地系座標データや飛行区域の地形情報など)を、外部のコンピュータ端末やサーバ等(図示せず)から所定の通信回線又は通信ネットワークを介して受信し、記憶部350に保存するようにしてもよい。なお、上述した各情報は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に保存された形態で提供されてもよい。この場合、設計情報取得部312は、入力部340に接続された読取り装置(図示せず)で、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に保存された各情報を読み出して、記憶部350に保存してもよい。
【0059】
施工管理部313は、記憶部350から積層造形される構造物の3Dモデル(3Dデータ)を読み出し、読み出した構造物の3Dモデルから当該構造物を平面的にスライスした一層分のプリント面に沿った経路(以下、プリント経路という)を指定する座標データ(造形物座標系)を作成し、作成されたプリント経路を所定の長さ区間ごとに分割し、分割された長さ区間の中間位置をドローン20が飛行する目標位置に設定し、設定された目標位置を現場座標系の座標データに変換してドローン管制部314に伝達する。なお、施工管理部313は、構造物の3Dモデルから、現場座標系に対応した施工図面(3次元設計データ)を作成し、作成した3次元設計データに基づいて、座標を指定するようにしてもよい。
【0060】
図5は、円筒状のタワー(塔)を積層造形する例を示す図であり、図5の(a)は、積層造形されるタワーの3Dモデルを平面的にスライスする位置を例示する図であり、図5の(b)は、スライスされた位置におけるプリント面100Rを例示した水平断面図である。
【0061】
図5の(b)に示すように、プリント面100Rに沿ったプリント経路において、分割される1区間の長さLは、ロボットアーム16の可動範囲(動作範囲)に該当し、ドローン20aに送信される目標位置Pは、1回の飛行当たり1箇所に限定されず、建設用3Dプリンタ10にセメント系材料をフル充填した場合に印刷可能な延べ長さをロボットアームの可動範囲の長さで割った数に対応する複数の長さ区間(各区間は隣接する)に対してそれぞれ目標位置P(例えば、P、P、…、P)を設定し、設定された複数の目標位置Pのそれぞれを現場座標系での座標データに変換してドローン管制部314に伝達するようにしてもよい。一例として、ロボットアーム16の可動範囲(workサイズともいう)が、半径20cm~1mである場合、分割される1区間の長さLは、この可動範囲内となるように設定される。
【0062】
施工管理部313は、複数のドローン(20a、20b)及び建設用3Dプリンタ(10a、10b)が使用可能な場合、それぞれのドローン(20a、20b)に対して、設定された複数の目標位置の中から、互いに重複しない目標位置(P、P’)を設定し、設定されたそれぞれの目標位置を現場座標系の座標データに変換してドローン管制部314に伝達する。
【0063】
なお、図5に示す円筒状のタワーでは、長さ区間の設定をタワーの中心線を基準にして円周に沿って分割したが、本発明はこれに限定されず、水平断面図をメッシュ状に区切って、区切られたブロック内のプリント経路に対して、長さ区間及び目標位置を設定するようにしてもよい。
【0064】
また、施工管理部313は、ドローン20を介してカメラ27で撮影された今回積層されたセメント系材料の画像を受信し、受信した画像から今回積層されたセメント系材料により形成された平面(プリント面)の形状と、これに対応する3Dモデル(3次元設計データ)のスライス面とのズレ量を計測(算出)し、計測されたズレ量に基づいて、今回積層されたプリント面の上に積層される次回の一層分のプリント面の配置位置の補正、具体的にはノズルを移動させる際の中心線を補正する処理を実行する。施工管理部313は、今回積層されたセメント系材料により形成された平面(プリント面)の形状及び現地座標系で定義された同平面(プリント面)の配置位置を施工実績データとして記憶部350に保存する。
【0065】
図6は、図5に示す円筒状のタワーの積層造形工程の一例を示す図であり、図6の(a)は、図5に示すプリント面100Rに一層分(第n層)のセメント系材料が積層された状態を示す図であり、図6の(b)は、図6の(a)に示すA領域の拡大図である。ここで、nは2以上の整数である。
【0066】
図6の(b)には、前回積層されたプリント面100R(n-1)の上に、今回積層されたプリント面100R(n)が重複した状態を平面視した場合を例示している。図6の(b)において、CL(n-1)は、前回積層されたプリント面100R(n-1)の中心線であり、CL(n)は、今回積層されたプリント面100R(n)の中心線である。
【0067】
施工管理部313は、前回の中心線CL(n-1)及び今回の中心線CL(n)を、それぞれに対応する3Dモデルのスライス位置における水平断面(スライス面という)の中心線(設計データの中心線)と比較して、次回積層する予定のプリント面100R(n+1)の中心線CL(n+1)の位置を設定する。この時、次回の中心線CL(n+1)は、前回積層分のズレの方向と今回積層分のズレの方向とが同じであるか又は逆であるかに応じて下記のように補正した位置に設定する。
【0068】
具体的に、前回積層(第n-1層)分のズレの方向と今回積層(第n層)分のズレの方向とが同じである場合に、次回積層(第n+1層)の中心線CL(n+1)を設計データの中心線に設定しようとすると、今回積層した第n層から大幅にシフト(前回分と今回分が加算されたズレ量に相当)させた位置に次回の第n+1層が積層されることになる。この場合、施工管理部313は、セメント系材料の特性に鑑みて積層崩れが生じない範囲(許容範囲という)内に、次回積層の中心線CL(n+1)の位置を設定する。つまり、以前に積層された層のズレは、次回積層時に一度に解消するのではなく、積層崩れが生じない範囲での修正を複数層にわたって行うことで解消されるように、次回積層(第n+1層)の中心線CL(n+1)の位置を調整する。
【0069】
一方、前回積層(第n-1層)分のズレの方向と今回積層(第n層)分のズレの方向とが逆である場合、前回分と今回分のズレが相殺されるので、今回積層した第n層から許容範囲内となる位置に設計データの中心線があれば、施工管理部313は、次回積層(第n+1層)の中心線CL(n+1)を設計データの中心線に設定することができる。積層崩れが生じない上下層間のズレ(誤差)の許容範囲を指定する数値(許容値という)は、予め記憶部350に保存される。
【0070】
施工管理部313は、ドローン20を介して受信した画像を解析して算出された各層(積層済みの層)の中心線の位置座標を、施工実績データとして記憶部350に保存する。なお、建設用3Dプリンタ装置10は、積層されたセメント系材料の高さ(奥行き)方向の形状を評価するために、カメラ18をデプスカメラとしてもよい。
【0071】
ドローン管制部314は、施工管理部413で設定された1箇所以上の目標位置の座標データを通信部320を介してドローン20に送信する。また、ドローン20から送信される当該ドローンの位置及び姿勢を含む飛行状態のデータを、通信部320を介して取得し、ドローン20が正常に所定の目標位置に飛行し、ホバリングしているか否かを監視し、飛行に異常がある場合は、ドローン管理者の通信端末50に異常通知を送信してもよい。なお、異常判定は、ドローン20の飛行制御ユニット220が行ってもよい。
【0072】
また、ドローン管制部314は、ドローン20から目標位置における建設用3Dプリンタ装置10の積層作業が終了したことを知らせる通知を受信すると、当該ドローン20を補給ステーションに帰還させる時機を決定して、ドローン20に帰還指令を送信するとともに、補給ステーション又はドローン管理者の通信端末50に対して帰還の時機(補給ステーションに帰着する予定時刻)を通知(送信)するようにしてもよい。ドローン20は補給ステーションに帰還すると、ドローン管制部314に帰還完了通知を送信するようにしてもよい。
【0073】
建設用3Dプリンタ管理部315は、ドローン20の無線通信ユニット230を介して建設用3Dプリンタ装置10からロボットアーム16の動作及びノズル17から吐出されるセメント系材料の流量等の監視データを受信し、受信した監視データに異常がある場合は、ドローン管理者の通信端末50に異常通知を送信してもよい。なお、異常判定は、建設用3Dプリンタ装置10のプリンタ制御ユニット110が行ってもよい。
【0074】
また、建設用3Dプリンタ管理部315は、ドローン管制部314を介してドローン20に帰還指令が送信されたことの通知を受信すると、当該ドローン20に把持された建設用3Dプリンタ装置10の監視を終了するとともに、補給ステーション又はドローン管理者の通信端末50から当該建設用3Dプリンタ装置10へのセメント系材料の補給が完了した通知が送達されるのを待ち受ける。
【0075】
セメント系材料の補給が完了した通知を受信すると、建設用3Dプリンタ管理部315は、施工管理部313に当該建設用3Dプリンタ装置10がプリント開始可能となったことを伝達し、これを受けて施工管理部313は、次回の積層作業に用いられる補正されたノズル移動の中心線を指定するデータをドローン20の無線通信ユニット230を介して建設用3Dプリンタ装置10に送信するよう構成される。
【0076】
通信部320は、ドローン20及び建設用3Dプリンタ装置10と無線通信するための通信モジュールと、外部の端末装置等に有線又は無線でネットワーク接続するための通信モジュールを含む。なお、通信部320には、所定のアンテナ320aが接続されてもよい。表示部330及び入力部340は、一般的な表示装置及び入力装置で構成され、本システムの利用者がデータやプログラムを入力したり、飛行記録や施工実績データを参照するために使用される。
【0077】
記憶部350は、本システムで使用される各種のデータやプログラムを保存する。外部入力受信部360は、システム制御部310と外部の各種計測装置、例えば、レーザースキャナーやトータルステーションなどとの間でデータや制御信号の送受信を行う。レーザースキャナーやトータルステーションで計測された建設中の構造物の3D測量データは、ドローン20の飛行制御に反映され得る。
【0078】
次に、上述したドローン、建設用3Dプリンタ装置、及び中央管制装置を含む本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムで用いられるデータ及び制御体系を、図7を参照して説明する。
【0079】
図7は、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムで用いられるデータ及び制御体系を説明するための構成図である。
【0080】
図7に示すように、本実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムは、建設される構造物100の設計データとして3Dモデル701が中央管制装置30に提供されると、中央管制装置30は3Dモデル701から当該構造物を基準面に対して所定の厚さ(高さ)ごとに水平にスライスした複数のプリント面を設定し、設定された各プリント面の位置座標を現場座標系で指定した座標データ(設計データより生成された層データ群702という)を生成する。
【0081】
積層造形が開始されると、中央管制装置30は、生成された層データ群702の中から、造形の順番にしたがって、次に造形すべき層(第n層とする)の座標データ703を選択し、これと同時に、選択された層の直前に積層された層(第n-1層)を撮影した画像を解析して、その位置及び形状を計測した結果704を設計データ(生成された層データ群702の中の該当する層)と比較し、比較した結果に基づいて、次に造形すべき第n層の座標データ(造形すべき層のデータ)703を補正した造形用の第n層データ705を作成する。
【0082】
中央管制装置30は、造形用の第n層データ705で指定された層(プリント面)に沿ったプリント経路を所定の長さ区間ごとに分割した部分経路データ(積層レイヤーの分割データ)706を作成する。そして、ぞれぞれの部分経路の中間位置、すなわち分割された長さ区間の中間位置をドローン20が飛行する目標位置に設定し、設定された目標位置の座標データを含むドローン飛行指令707をドローン20に送信する。また、部分経路データは、ロボットアーム16のノズル先端位置制御及び吐出ポンプ制御708に利用するために建設用3Dプリンタ10に送信される。
【0083】
ドローン20は、設定された目標位置を含むドローン飛行指令707に基づいて、自律飛行し、目標位置でホバリングして、機体が目標位置において安定した姿勢を維持するように推進装置を制御する709。したがって、ドローン20は自機の空間位置及び姿勢を、位置検出ユニットで検出された座標データを使って制御する(座標系制御)。
【0084】
一方、建設用3Dプリンタ10は、部分経路データに基づいて、ロボットアームのノズル先端を移動させる710が、この際、最終的なノズル先端の位置合せは、カメラ18で撮影したプリント面の画像をリアルタイムで解析した結果を用いて実行することで、ドローン20や構造物100のプリント面の揺れに対して、動的に応答するようにノズル先端の位置が制御される(ビュジュアルフィードバック制御)711。
【0085】
このように、本発明によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御は、座標系制御(ドローンの飛行位置)と非座標系制御であるビュジュアルフィードバック制御(ノズルの吐出位置)とを組み合わせて構成されることで、第n層データ705で指定された層(プリント面)に対して、高精度かつ安定したセメント系材料の吐出を可能にする。また、造形用の第n層データ705の補正量は、許容値の範囲内に設定される(すなわち、非座標系制御は、座標系の許容値に制約される)ので、積層時に意図しない崩れ等の問題が発生しない。
【0086】
なお、上述した実施形態において、第n層データ705で指定された層(プリント面)に沿ったプリント経路を所定の長さ区間ごとに分割する際、分割される1区間の長さは、ロボットアーム16の可動範囲内に設定されることを例示したが、分割される1区間の長さは、ロボットアーム16の可動範囲を単位に設定する必要はなく、ドローンの飛行位置制御能力に応じた最小単位、例えば、1mm~10mmの長さで設定してもよく、さらに、実質的にドローン20が移動しながら、ロボットアームのビュジュアルフィードバック制御によりノズル先端の位置合せを行うことも本発明の実施形態に含まれる。
【0087】
以下、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムの動作フローについて説明する。
【0088】
図8は、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムによる積層造形動作の一例を示すフローチャートである。
【0089】
本実施形態では、中央管制装置30が、図1に示すように、2機のドローン(20a、20b)を飛行させて、構造物100の積層造形を行う場合について、図4及び図8を参照しながら説明する。本実施形態において使用される2機のドローン(20a、20b)は、それぞれ建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)を把持して、補給ステーションで調製されたセメント系材料の補給を受けながら、建設される構造物の建設現場を自律飛行して、連続的に積層造形を行うように制御される。
【0090】
構造物の積層造形を開始する指令が、中央管制装置30の入力部340又はドローン管理者の通信端末50から入力されると、中央管制装置30のシステム制御部310は施工管理部313を機能させて、工事情報取得部312を介して予め記憶部350に保存された建設される構造物の3Dモデル(設計データ)から、先に説明したように、当該構造物を高さ方向に所定の厚さ(例えば、5mm~30mm)で平面的(水平)にスライスした各層(オリジナルスライス層)の水平断面となるプリント面に沿ったプリント経路を作成し、作成されたプリント経路を所定の長さ区間ごとに分割して、分割された複数の長さ区間に対してそれぞれ目標位置を設定する(ステップS100)。
【0091】
目標位置は、ロボットアームの可動範囲に鑑みて、分割された複数の長さ区間の中間位置に設定される。但し、本発明はこれに限定されず、ロボットアームの動作特性に合わせて適正な位置に設定され得る。
【0092】
施工管理部313は、設定された複数の長さ区間に対するそれぞれの目標位置を工事基準点に基づく現場座標系の座標データに変換してドローン管制部314に伝達する。
【0093】
ドローン管制部314は、設定された複数の目標位置の座標データを2機のドローン(20a、20b)に重複しないように割り当てる(ステップS110)。そして、割り当てたそれぞれの目標位置の座標データを対応するドローン(20a、20b)に送信する。なお、ドローン管制部314は、各ドローンに割り当てられる目標位置の数を、1回の飛行当たりドローンに把持された建設用3Dプリンタ10が印刷可能な長さに基づいて決定する。したがって、1層分のプリント経路の長さが、1回の飛行で印刷可能な長さよりも長い場合、ドローン管制部314は、プリント経路上の全ての目標位置を複数回の飛行に分けて割り当てるように調整する。
【0094】
ステップS100で設定される各層のプリント経路に対する目標位置は、積層工程の進行にしたがって生じた下層のズレ(設計データを基準とした位置ズレ)を修正するように、施工管理部313によって補正され、補正された目標位置の座標データが提供される。なお、各層ごとの目標位置の割り当てにおいて、特定の目標位置に対して特定のドローンが割り当てられる必要はない。つまり、平面上の同じ位置に重畳する、垂直方向の下層と上層を同じドローンに割り当てる必要はなく、別のドローンに割り当ててもよい。
【0095】
中央管制装置30の建設用3Dプリンタ管理部315は、ドローン管制部314によって割り当てられた目標位置に飛行するドローンの建設用3Dプリンタに、施工管理部313によって補正された当該目標位置でのノズルの移動経路(動線)を指定するデータを送信する(ステップS120)。ノズルの移動経路(動線)は、補正された目標位置におけるプリント面の中心線に設定される。
【0096】
ドローン(20a、20b)及び建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)は、それぞれドローン管制部314及び建設用3Dプリンタ管理部315から、ステップS110及びS120で送信された、目標位置及びノズルの動線(移動経路)のデータ受信が完了すると、中央管制装置30のシステム制御部310及びドローン管理者の通信端末50に発進準備完了の通知を送信する。発進準備完了の通知は、それぞれのドローンの飛行制御ユニット220が送信するようにしてもよい。
【0097】
システム制御部310は、発進準備完了の通知を受信すると、ドローン(20a、20b)に発進(離陸)を許可する指令を送信する(ステップS130)。
【0098】
発進(離陸)を許可する指令を受信すると、ドローン(20a、20b)は自律飛行を行って、それぞれ設定された目標位置に到達すると、目標位置でホバリングし、建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)は予めプリンタ記憶部140に保存されたプリント制御のための所定のプログラムにより積層作業を実行する。
【0099】
建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)の積層作業が始まると、中央管制装置30のシステム制御部310は、施工管理部313に、ドローン(20a、20b)を介して今回積層されたセメント系材料の画像を受信し、受信した画像から今回積層された第n層のセメント系材料により形成された平面(プリント面)の形状と、当該プリント面に対応する3Dモデル(設計データ)のスライス面とのズレ量を計測(算出)し、計測された今回積層された第n層のズレ量及び前回積層された第n-1層のズレ量に基づいて、今回積層された第n層のプリント面の上に次回積層される第n+1層のプリント面の目標位置、具体的には、プリント面上でノズルを移動させる動線の位置を補正する処理を実行させ、補正された第n+1層のプリント面の目標位置を前記ドローンに送信する(ステップS140)。
【0100】
また、システム制御部310は、ドローン(20a、20b)の離陸後、ドローン管制部314を機能させ、ドローン管制部314は、ドローン(20a、20b)から送信されたそれぞれのドローンの飛行状態、及び建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)の動作状態を監視する。
【0101】
ドローン管制部314は、それぞれのドローン(20a、20b)から送信された目標位置における建設用3Dプリンタ装置10の積層作業が終了した通知を受信すると、それぞれのドローン(20a、20b)を補給ステーションに帰還させる時機(飛行経路から離脱させる時刻)を決定し、帰還時機が決定されると、ドローン管制部314は、それぞれのドローン(20a、20b)に帰還指令を送信する。
【0102】
これと同時に、ドローン管制部314は、補給ステーション及びドローン管理者の通信端末50にも帰還の通知を送信する。帰還の通知を受信すると、補給ステーションは補給の準備を始めることができる。
【0103】
それぞれのドローン(20a、20b)は、補給ステーションに帰還すると、ドローン管制部314に帰還完了通知を送信する。
【0104】
中央管制装置30のシステム制御部310は、ドローン管制部314から帰還完了通知を受信すると、予めプログラムされた手順により、又はドローン管理者から送信された作業継続の指令により、それぞれのドローン(20a、20b)に対して、ステップS100以降の工程が繰り返し実行されるよう制御する(ステップS150)。
【0105】
一方、ステップS150で、作業の中断又は終了が指令されると、システム制御部310は、飛行中のドローンの有無を確認し(ステップS160)、飛行中のドローンがある場合は、帰還指令を送信する(ステップS170)。そして、全てのドローンが帰還すると、ドローン管理者の通信端末(又は操作端末)50に作業が終了した旨を通知して、システムの動作を終了する。
【0106】
中央管制装置30に、上述したフローを実行させることにより、本発明によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムは、複数機のドローンを使用し、これらのドローンが連携して、調整されたセメント系材料を3Dモデルにしたがって積層するように制御することで、構造物の積層造形を効率的に進行させることを可能とする。
【0107】
以上、本発明によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムは、人が立ち入ることが困難な山間部や海上などに、従来のロボットアームやガントリー形式の3Dプリンタでは構築が困難であった大きさの大型構造物を、架台や特殊圧送装置等を用いることなく建設することを可能とし、建設工期や建設費を大幅に低減することができる。
【0108】
また、本発明によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムは、ドローンの飛行位置を建設現場に設置した基準点に基づく座標系制御により正確に維持し、建設用3Dプリンタのノズルを非座標系のビジュアルフィードバック制御することにより吐出位置を、ドローン及び構造物の揺れに拘わらず、高精度に位置合せすることができる。
【0109】
さらに、本発明によるフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムは、積層状態を継続して監視し、セメント系材料を積層する際の誤差を、層の崩れが生じない範囲で複数層に分散して逐次修正することができるため、高品質で信頼性の高い構造物を構築することすることできる。
【0110】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 フライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システム
10、10a、10b 建設用3Dプリンタ装置
11 ホッパー
12 ポンプ部
13 搬送パイプ
14 吐出ヘッド
15 連結用部材
16 ロボットアーム
17 ノズル
18、27 カメラ
20、20a、20b ドローン
21 本体部
22 支持アーム
23 推進ユニット
24 プロペラ
25 連結装置
26 制御ボックス
30 中央管制装置
40 マーカー
45 トータルステーション
50 通信端末
100 構造物
110 プリンタ制御ユニット
120 ロボットアーム制御部
130 画像監視ユニット
140 プリンタ記憶部
150 プリンタ通信部
210 位置検出ユニット
220 飛行制御ユニット
230 無線通信ユニット
230a、330a、500a アンテナ
310 システム制御部
320 通信部
330 表示部
340 入力部
350 記憶部
360 外部入力受信部
311 CPU
312 工事情報取得部
313 施工管理部
314 ドローン管制部
315 建設用3Dプリンタ管理部
【要約】      (修正有)
【課題】大型構造物の積層造形を高精度に制御可能なフライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムを提供する。
【解決手段】フライング型建設用3Dプリンタの吐出位置制御システムは、セメント系材料を吐出するノズルを備えたロボットアームを有する建設用3Dプリンタ装置と、建設用3Dプリンタ装置を把持して自律飛行するドローンと、建設用3Dプリンタ装置の動作及びドローンの飛行を管理する中央管制装置と、を備え、中央管制装置は、構造物を水平にスライスした一層分のプリント面上に設定された目標位置の座標データを前層の積層結果に基づいて補正してドローンに送信し、補正された目標位置でホバリングするドローンに把持された建設用3Dプリンタ装置は、画像監視ユニットで撮影されたプリント面の画像を使用したビジュアルフィードバック制御によりノズル位置をプリント面に対して位置合せするようにロボットアームを制御する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8