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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20241126BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A23L2/00 F
A23L2/00 B
A23L2/52
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2024088681
(22)【出願日】2024-05-31
【審査請求日】2024-06-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 太士
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇典
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-190256(JP,A)
【文献】特表2003-500077(JP,A)
【文献】特開2022-093166(JP,A)
【文献】国際公開第2021/167024(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/167026(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0145114(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109588601(CN,A)
【文献】特表2013-538576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00-2/84
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅イオン及び亜鉛イオンの中から選ばれる少なくとも1以上と、カリウムイオンを含有し、
前記銅イオン及び亜鉛イオンの濃度が1~100質量ppmであり、
前記カリウムイオンの濃度が50~500質量ppmであり、
さらに、セルロースを含有することを特徴とする、飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
銅や亜鉛は、生命を維持する上で不可欠な必須微量栄養素である。銅は、ヘモグロビン合成に必須の酵素を構成する成分であり、鉄代謝に関与し、貧血予防に不可欠なミネラルである。また、免疫細胞(マクロファージなど)においてエネルギー代謝に関わる酵素を構成する成分でもあるため、免疫機能にも寄与している。一方、亜鉛は、タンパク質やDNAの合成に必要なミネラルであり、発育や生命の維持に重要な役割を果たしている。亜鉛が欠乏すると皮膚や粘膜などの再生不良による創傷治癒障害や、味蕾細胞数の減少による味覚障害が引き起こされることが知られている。このように、銅や亜鉛は欠くことのできない重要な栄養素であるため、銅や亜鉛を補給するサプリメントが広く流通している。
【0003】
銅や亜鉛を含有するサプリメントの剤形としては、錠剤やカプセルが一般的である。一方で、錠剤やカプセルを嚥下することが苦手な消費者もいるため、銅や亜鉛を手軽に補給できる飲料の開発が求められてきた。しかしながら、銅や亜鉛は独特の金属臭や苦味を有するため、飲料の剤形には適さないという課題があった。
【0004】
飲料においてミネラルの苦味を抑制する方法としては、例えば、マグネシウムイオン0.05~10mg/100mLを含有する飲料に、ナリンギンを1μg~50mg/100mLの濃度にて配合する方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1に記載されるのはマグネシウムに起因する苦味の抑制であり、銅や亜鉛に起因する苦味や金属臭の抑制ではない。そのため、飲料において銅や亜鉛に起因する苦味や金属臭を抑制する方法の開発が求められてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-279013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、銅又は亜鉛を含有する飲料において、苦味又は金属臭が抑制された飲料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願人は、上記課題を鑑みて鋭意検討を行った結果、銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有する飲料において、カリウムの濃度を特定の範囲に調整することにより、金属臭や苦味が軽減されることを見出し、本発明を完成させるに至った。また、本発明の飲料がセルロースを含有する場合には、セルロースの沈殿が抑制されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1]
銅イオン及び亜鉛イオンの中から選ばれる少なくとも1以上と、カリウムイオンを含有し、
前記銅イオン及び亜鉛イオンの濃度が1~100質量ppmであり、
前記カリウムイオンの濃度が50~500質量ppmであることを特徴とする、飲料。
[2]
さらに、セルロースを含有することを特徴とする、[1]に記載の飲料。
[3]
飲料中におけるセルロースの濃度が300~10000質量ppmであることを特徴とする、[2]に記載の飲料。
[4]
さらに、ポリフェノールを含有することを特徴とする、[1]~[3]のいずれか一項に記載の飲料。
[5]
飲料中におけるポリフェノールの濃度が3~80質量ppmであることを特徴とする、[4]に記載の飲料。
[6]
前記銅イオン及び亜鉛イオンの濃度が3~50質量ppmであることを特徴とする、[1]~[5]のいずれか一項に記載の飲料。
[7]
前記カリウムイオンの濃度が60~400質量ppmであることを特徴とする、[1]~[6]のいずれか一項に記載の飲料。
[8]
銅イオン及び亜鉛イオン1重量部に対して、カリウムイオン0.5~100重量部を含有することを特徴とする、[1]~[7]のいずれか一項に記載の飲料。
[9]
銅イオン及び亜鉛イオン1重量部に対して、セルロース30~1500重量部を含有することを特徴とする、[1]~[8]のいずれか一項に記載の飲料。
[10]
銅イオン及び亜鉛イオン1重量部に対して、ポリフェノール0.1~30重量部を含有することを特徴とする、[1]~[9]のいずれか一項に記載の飲料。
[11]
前記飲料が容器詰飲料であることを特徴とする、[1]~[10]のいずれか一項に記載の飲料。
[12]
銅イオン及び亜鉛イオンの濃度が1~100質量ppmであり、かつ、
カリウムイオンの濃度が50~500質量ppmであるように調整する工程を含む、飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有するにもかかわらず、金属臭や苦味の少ない飲料を得ることができる。また、本発明の飲料がセルロースを含有する場合には、セルロースの沈殿が抑制された飲料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の飲料について説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
1.銅イオン及び亜鉛イオン
本発明の飲料において、銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度(両方を含有する場合には合計の濃度)の下限値は1質量ppmである。銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度が1質量ppm未満の場合には、何もしなくとも銅及び/亜鉛に起因する金属臭や苦味を感じないため、本発明の課題が存在しない。飲料中の銅イオン及び/又は亜鉛イオンの下限値としては1ppm以上の範囲であれば特に制限はないが、銅及び/又は亜鉛を多く摂取できるという観点から、3質量ppm以上であることが好ましく、4質量ppm以上であることがより好ましく、5質量ppm以上であることが特に好ましく、7質量ppm以上であることが最も好ましい。
また、本発明の飲料において、銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度(両方を含有する場合には合計の濃度)の上限値は100質量ppmである。銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度が100質量ppmを超える場合には、銅及び/又は亜鉛に起因する金属臭や苦味が強すぎるため、カリウムイオンの濃度を特定の範囲に調整したとしても、銅及び/又は亜鉛に起因する金属臭や苦味を強く感じてしまう。飲料中の銅イオン及び/又は亜鉛イオンの上限値としては100ppm以下の範囲であれば特に制限はないが、銅及び/又は亜鉛に起因する金属臭や苦味がより軽減されやすいという観点から、50質量ppm以下であることがより好ましく、30質量ppm以下であることが特に好ましく、20質量ppm以下であることが最も好ましい。
【0012】
本発明において銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度とは、銅イオン及び亜鉛イオンの両方が含まれている場合は、両金属イオンの合計濃度を意味し、一方の金属イオンのみが含まれている場合は、含まれている金属イオンの濃度を意味する。なお、本発明の飲料が粉末飲料の場合、飲料中の濃度とは水等の液体に懸濁させて飲料として摂取する際における濃度を意味する。銅イオン及び亜鉛イオンの濃度は、ICP発光分光分析法等の公知の測定方法により測定することができ、例えば、ICP発光分光分析装置として、アジレントテクノロジー株式会社「Agilent 5900 ICP-OES」を用いることにより測定することができる。
【0013】
銅イオン及び亜鉛イオンを本発明の飲料に含有させる方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、銅製や亜鉛製の鍋を用いて液体原料(水、緑色野菜含有水等)を加熱することにより鍋から銅イオンや亜鉛イオンを溶出させて含有させる方法や、銅イオン水又は亜鉛イオン水を用いる方法、銅や亜鉛を含有する添加物を配合する方法を挙げることができる。銅や亜鉛を含有する添加物としては、グルコン酸塩や硫酸塩、クエン酸塩などの銅又は亜鉛の塩、亜鉛酵母や銅酵母、銅や亜鉛を含有する植物の粉砕物や抽出物などを挙げることができる。
【0014】
2.カリウムイオン
本発明の飲料はカリウムイオンを含有する。カリウムは細胞の浸透圧を調整する働きを有する生命維持活動に欠かせない栄養素である。また、体内に含まれる余分な塩分を対外に排出する作用があることから、血圧を下げる効果があることも知られている。
【0015】
本発明の飲料におけるカリウムイオンの濃度は、50~500質量ppmの範囲である。カリウムイオンの濃度が50質量ppm未満の場合には、銅又は亜鉛に起因する苦味や金属臭を十分に抑制することができない。また、カリウムイオンの濃度が500質量ppmを超える場合には、カリウムに起因する苦味や金属臭が強くなり過ぎるため、飲料の呈味が悪くなってしまう。カリウムイオン濃度の下限値としては、50質量ppm以上であれば特に制限されるものではないが、本発明の効果をより享受できる観点と栄養素であるカリウムをより多く摂取できる観点から、60質量ppm以上であることが好ましく、70質量ppm以上であることがより好ましく、80質量ppm以上であることが特に好ましく、100質量ppm以上であることが最も好ましい。
また、飲料におけるカリウムイオン濃度の上限値としては、500質量ppm以下であれば特に制限されるものではないが、本発明の効果をより享受できる観点から、400質量ppm以下であることが好ましく、350質量ppm以下であることがより好ましく、300質量ppm以下であることが特に好ましく、250質量ppm以下であることが最も好ましい。
【0016】
カリウムイオンを本発明の飲料に含有させる方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、塩化カリウム、乳酸カリウムといったカリウム塩、カリウムイオンを含有するイオン水、カリウムを含有する植物の粉砕物や抽出物などを飲料に配合すればよい。カリウムの濃度は、一般的な分析方法によって測定することができ、例えば、原子吸光光度法によって測定することができる。
【0017】
3.セルロース
本発明の飲料は、さらにセルロースを含有してもよい。セルロースとは、グルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合した天然の高分子化合物の一種であり、植物の細胞壁に含まれる化合物である。本発明においてセルロースとは、サウスゲート法により定量されるセルロースを意味する。
【0018】
本発明の飲料にセルロースを配合することにより、銅及び/又は亜鉛を含有する飲料の金属臭や苦味をさらに抑制することができる。また、セルロースは不溶性であり、液体に分散させても底に沈殿してしまうが、本発明の飲料においては、銅イオン及び/又は亜鉛イオンとカリウムイオンを含有しない場合に比べて、セルロースの沈殿が抑制される。本発明の飲料におけるセルロースの濃度としては特に制限されるものではないが、金属臭や苦味の抑制の観点とセルロースの沈殿抑制の観点から、飲料におけるセルロースの濃度としては、100~15000質量ppmが好ましく、300~10000質量ppmがより好ましく、500~7000質量ppmが特に好ましく、1000~5000質量ppmが最も好ましい。
【0019】
本発明に用いるセルロースとしては、例えば、植物由来のセルロース、バクテリア由来のセルロース、微生物産生のセルロースを用いることができる。セルロースとしては、粉末化又は結晶化されたものを用いてもよく、公知の方法によって植物より分画または精製したセルロースや市販されるセルロースを用いてもよいし、セルロースを含有する植物の加工物(粉砕物や抽出物など)をセルロースとして用いてもよい。また、2種以上のセルロース原料を混合して用いてもよく、例えば、精製したセルロースとセルロースを含有する植物の加工物を混合して用いてもよい。
【0020】
4.ポリフェノール
本発明の飲料は、さらにポリフェノールを含有してもよい。本発明におけるポリフェノールとは、同一分子内にフェノール性ヒドロキシ基2つ以上を有する化合物のことを意味する。ポリフェノールは抗酸化作用など様々な生理活性を有しており、栄養成分として知られている。
【0021】
ポリフェノールは一般に苦味を有することが知られているが、本発明の飲料にポリフェノールを配合する場合には、ポリフェノールに起因する苦味が抑制される。飲料中におけるポリフェノールの濃度としては特に制限はないが、本発明の効果をより享受できる観点と栄養成分であるポリフェノールを多く摂取できる観点から、2~100質量ppmが好ましく、3~80質量ppmがより好ましく、5~50質量ppmが特に好ましく、8~30質量ppmが最も好ましい。
【0022】
本発明の飲料におけるポリフェノールの濃度は、Folin-Denis法にて分析することができる。具体的には、試料溶液およびカテキン溶液にFolin-Denis試薬と炭酸ナトリウムを加えて混合し、室温で1時間反応させ、カテキンとの比色定量を行うことで、試料中のポリフェノール量をカテキン当量として測定することができる。本発明におけるポリフェノールの濃度とは、Folin-Denis法によって分析させるカテキン当量としてのポリフェノール量を意味する。
【0023】
本発明に用いるポリフェノールとしては、例えば、アントシアニン、イソフラボン、フラボノール、タンニン、カテキン、ケルセチンなどを挙げられる。本発明の飲料に配合するポリフェノールとしては、合成されたポリフェノールや植物等より精製又は分画されたポリフェノールを配合してもよく、ポリフェノールを含有する植物加工物(粉砕物や抽出物など)を配合してもよい。
【0024】
5.飲料
本発明の飲料としては、ペットボトル、缶、瓶、紙パック等に充填された容器詰飲料、粉末飲料の形態を挙げることができる。本願において粉末飲料とは、摂取時に、消費者が、水や湯、牛乳、豆乳などの液体に混合して、飲料として飲用に供される粉末状の加工食品(医薬部外品や医薬品を含む)を意味する。これらの飲料のうち、本発明の効果をより享受できる観点から、容器詰飲料が特に好ましい。
【0025】
本発明の飲料において、銅イオン及び亜鉛イオンの濃度とカリウムイオンの濃度の重量比としては特に制限されるものではないが、本発明の効果をより享受できる観点から、銅イオン及び亜鉛イオン1重量部に対して、カリウムイオンが0.5~100重量部であることが好ましく、1~80重量部であることがより好ましく、3~70重量部であることが特に好ましく、5~50重量部であることが最も好ましい。
【0026】
本発明の飲料において、銅イオン及び亜鉛イオンの濃度とセルロースの濃度の重量比としては特に制限されるものではないが、本発明の効果をより享受できる観点から、銅イオン及び亜鉛イオン1重量部に対して、セルロースが30~1500重量部であることが好ましく、50~1000重量部であることがより好ましく、80~800重量部であることが特に好ましく、100~500重量部であることが最も好ましい。
【0027】
本発明の飲料において、銅イオン及び亜鉛イオンの濃度とポリフェノールの濃度の重量比としては特に制限されるものではないが、本発明の効果をより享受できる観点から、銅イオン及び亜鉛イオン1重量部に対して、ポリフェノールが0.1~30重量部であることが好ましく、0.2~20重量部であることがより好ましく、0.3~10重量部であることが特に好ましく、0.5~5重量部であることが最も好ましい。
【0028】
本発明の飲料には、適宜、通常食品分野で用いられる添加剤を配合してもよい。例えば、ビタミンAやビタミンB、ビタミンC等のビタミン類、キサンタンガムやアルギン酸Naなどの増粘多糖類甘味料、香料等を適宜配合することができる。
【実施例
【0029】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
1.金属臭及び苦味の評価
容器詰飲料を製造し、銅又は亜鉛に起因する金属臭及び苦味を評価した。具体的には以下のとおりである。
【0031】
(1)容器詰飲料の製造
表1及び表2に記載の配合率となるように各原料を均一に混合して粉末を作成した。その後、各粉末をそれぞれ3gずつ分包に充填した。なお、賦形剤としては、呈味に影響を与えないことが知られており、セルロースの沈殿性にも影響を与えないことから、デキストリンを選択した。使用したデキストリンが銅又は亜鉛に起因する金属臭や苦味、セルロースの沈殿性に影響を与えないことについては、事前に確認した。
【0032】
得られた粉末を、それぞれ1包(3g)ずつペットボトル容器(容量200mL、直径54mm×高さ132mm、口径28mm)に入れ、100mLの水を加えた。その後、ペットボトルの蓋を閉め、ペットボトルを片手で持ち、上下に20秒間振って(振れ幅約20cm、1秒あたり1.5~2往復の速度)、中身を混合することにより、投入した粉末が液体中に均一に分散するようにして、表1及び表2に示す容器詰飲料を作成した。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
(2)試験方法
得られた容器詰飲料について、飲料の官能試験に関する知識と経験を有するパネラー4人により、銅又は亜鉛に起因する金属臭及び苦味を評価した。具体的には、上記手順により作成した容器詰飲料を作成直後に各パネラーが摂取し、下記の採点基準にしたがって採点した。採点においては、実施例1~6並びに比較例1及び2についてはコントロール1、実施例7及び8についてはコントロール2、比較例3及び4についてはコントロール3、実施例9についてはコントロール4、実施例10についてはコントロール5、実施例11についてはコントロール6をそれぞれ基準とした。
【0036】
<金属臭及び苦味の採点基準>
●金属臭(口に含んだ時に感じる銅又は亜鉛に起因する金属臭)
2:コントロールに比べて明らかに金属臭を感じにくい
1:コントロールに比べると少し金属臭を感じにくい
0:コントロールと同程度に金属臭を感じる
-1:コントロールよりも強く金属臭を感じる
【0037】
●苦味(口に含んだ時に感じる銅又は亜鉛に起因する苦味)
2:コントロールに比べて明らかに苦味を感じにくい
1:コントロールに比べると少し苦味を感じにくい
0:コントロールと同程度に苦味を感じる
-1:コントロールよりも強く苦みを感じる
【0038】
採点後、4人の平均点を算出し、以下の基準によって◎、〇、△、×の4段階にて評価した。なお、4人の評価のばらつきは少なく、いずれの容器詰飲料の評価においても、4人の中で最も高い点数と最も低い点数の差は1点以内であった。
【0039】
<金属臭及び苦味の評価>
◎:平均が1.5以上
〇:平均が0.75以上、1.5未満
△:平均が0.5以上、0.75未満
×:平均が0.5未満
【0040】
(3)試験結果
結果を表1及び表2に示す。実施例1~11を見ればわかるように、銅イオン又は亜鉛イオンを1~100質量ppm含有する飲料において、カリウムイオンの濃度を50~500質量ppmの範囲に調整することにより、カリウムイオンを含有しない場合に比較して、金属臭及び苦味が抑制されていた。特に、カリウムイオンに加えてセルロースを含有する飲料(実施例3~6)においては、金属臭及び苦味がより顕著に改善されていた。また、ポリフェノールを配合した場合(実施例5及び6)であっても、苦味に影響はなかった。
一方、銅イオンの濃度が100質量ppmを超える場合には、カリウムイオンの濃度を50~500質量ppmの範囲に調整しても金属臭及び苦味の改善は認められなかった(比較例3及び4)。また、カリウムイオンの濃度が50質量ppm未満の場合(比較例1)や、500質量ppmを超える場合(比較例2)においても金属臭及び苦味の改善は認められなかった。
このことから、銅イオン及び/又は亜鉛イオンを1~100質量ppm含有する飲料において、カリウムイオンの濃度を50~500質量ppmの範囲に調整することにより、金属臭や苦味が抑制されることが明らかとなった。
【0041】
2.セルロースの沈殿性評価
セルロースを含有する容器詰飲料を製造し、セルロースの沈殿性を評価した。具体的には以下のとおりである。
【0042】
(1)容器詰飲料の製造
表3に記載の配合率となるように各原料を均一に混合し、粉末を作成した。その後、各粉末をそれぞれ3gずつ分包に充填した。得られた粉末を、それぞれ1包(3g)ずつペットボトル容器(容量200mL、直径54mm×高さ132mm、口径28mm)に入れ、100mLの水を加えた。その後、ペットボトルの蓋を閉め、ペットボトルを片手で持ち、上下に20秒間振って(振れ幅約20cm、1秒あたり1.5~2往復の速度)、中身を混合することにより、投入した粉末が液体中に均一に分散するようにして、表3に示す容器詰飲料を作成した。
【0043】
【表3】
【0044】
(2)試験方法
得られた容器詰飲料について、飲料の試験に関する知識と経験を有するパネラー4人により、セルロースの沈殿性を評価した。具体的には、上記手順により作成した容器詰飲料を静置し、作成直後から3分経過後に下記の採点基準にしたがって採点した。採点においては、実施例12~14についてはコントロール7、実施例15についてはコントロール8をそれぞれ基準とした。なお、使用したセルロースは白色の粉末である。
【0045】
<沈殿性の評価基準>
2:コントロールに比べて明らかに白い沈殿が少ない
1:コントロールに比べるとやや白い沈殿が少ない
0:コントロールと白い沈殿は同程度
-1:コントロールよりも白い沈殿が多い
【0046】
採点後、4人の平均点を算出し、以下の基準によって◎、〇、△、×の4段階にて評価した。なお、4人の評価のばらつきは少なく、いずれの容器詰飲料の評価においても、4人の中で最も高い点数と最も低い点数の差は1点以内であった。
【0047】
<沈殿性の評価>
◎:平均が1.5以上
〇:平均が0.75以上、1.5未満
△:平均が0.5以上、0.75未満
×:平均が0.5未満
【0048】
(3)試験結果
結果を表3に示す。実施例12~15を見れば明らかなように、セルロースを含有する飲料において、銅イオンを1~100質量ppm、カリウムイオンを50~500質量ppmの範囲に調整することにより、銅イオン及びカリウムイオンを含有しない場合に比べて、セルロースの沈殿が抑制されていた。
【0049】
3.容器詰飲料の製造
表4及び表5に記載のとおりに各原料を混合し、得られた混合液を100mLずつペットボトル容器に充填することにより、実施例16~37の容器詰飲料を製造した。得られた容器詰飲料はいずれも金属臭及び苦味が少なく呈味に優れており、セルロースの沈殿が抑制されていた。
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、銅及び/又は亜鉛を含有する飲料において、カリウムイオンの濃度を特定の範囲に調整することにより、銅や亜鉛に起因する金属臭や苦味が軽減された飲料を得ることができる。本発明の飲料を飲用することにより、栄養成分である銅や亜鉛を摂取できるため、本発明の飲料は食品として有用である。
【要約】
【課題】
本発明は、銅又は亜鉛を含有する飲料において、苦味又は金属臭が抑制された飲料の提供を目的とする。
【解決手段】
本出願人は、上記課題を鑑みて鋭意検討を行った結果、銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有する飲料において、カリウムの濃度を特定の範囲に調整することにより、金属臭や苦味が軽減されることを見出し、本発明を完成させるに至った。また、本発明の飲料がセルロースを含有する場合には、セルロースの沈殿が抑制されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【選択図】
なし