(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】簡易クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 23/26 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
B66C23/26 A
B66C23/26 C
(21)【出願番号】P 2024096093
(22)【出願日】2024-06-13
【審査請求日】2024-07-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523477691
【氏名又は名称】岸本無線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神田 敏彦
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-064891(JP,A)
【文献】実開昭53-148476(JP,U)
【文献】実開昭59-123080(JP,U)
【文献】実開昭60-103184(JP,U)
【文献】特開平04-292397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状のブームを備える簡易クレーンであって、
前記ブームは、第一ブームと、第二ブームと、を含み、
前記第一ブームには、その軸方向と交わる方向に貫通孔を有する取付板が一端に設けられており、
前記取付板は、前記軸方向と交わる一の方向に張り出す張出部を更に有し、
前記第二ブームは、その断面の一方向に割入れられて設けられる吊下用部材と、前記吊下用部材を挟んで対をなす旋回用部材と、を有し、
前記旋回用部材及び前記張出部には、取付孔が設けられている、簡易クレーン。
【請求項2】
前記第一ブーム及び前記第二ブームに、軸方向に直列に嵌合可能な嵌合部をそれぞれ設けている、
請求項1に記載の簡易クレーン。
【請求項3】
前記第一ブーム及び前記第二ブームに、前記嵌合部を設けている端部の端面を拡大するフランジを更に設けている、
請求項2に記載の簡易クレーン。
【請求項4】
前記ブームは、前記第一ブームと、前記第二ブームと、の間に挿入可能な柱状の中間ブームを更に有する、
請求項1に記載の簡易クレーン。
【請求項5】
前記ブームを取付可能な基礎部を更に備え、
前記基礎部は、互いに交差する又はねじれの位置にある二の回動軸を含む取付部を有している、
請求項1に記載の簡易クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所での作業において、設置及び取り扱いが容易な簡易クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
通信鉄塔や高層ビル等、高所に電気設備、通信設備等を設置する建造物においては、重量物を吊上げる仮設のクレーンが要求される。このような高所での作業においては、作業員のための足場が設けられている場合が多く、仮設のクレーンは、その足場に固定して使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の軽量簡易クレーンは、鉄塔上などの高所に設置可能で、水平方向に旋回可能な支柱と、重量物を吊上げ可能なアームと、を備える構成が記載されている。この軽量簡易クレーンは、旋回用シャフト、アーム、二本の柱体、二本の支線を底部金具(基礎部)に接続するため、部品点数が多く、また床面の占有面積が大きく、限られた空間で容易かつ安全に設置、解体するためには、いまだ改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、より少ない部品点数、且つ狭小な設置場所にも対応可能な簡易クレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本願発明は、柱状のブームを備える簡易クレーンであって、該ブームは、第一ブームと、第二ブームと、を含み、該第一ブームには、その軸方向と交わる方向に貫通孔を有する取付板が一端に設けられており、該取付板は、該軸方向と交わる一の方向に張り出す張出部を更に有し、該張出部には、取付孔が設けられている。
このような構成によって、より少ない部品点数、且つ狭小な設置場所にも対応可能になる。
【0007】
本発明の好ましい形態では、該第一ブーム及び該第二ブームに、軸方向に直列に嵌合可能な嵌合部をそれぞれ設けている。
このような構成によって、ブームの組立及び解体を容易且つ安全に行うことができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、該第一ブーム及び該第二ブームに、該嵌合部を設けている端部の端面を拡大するフランジを更に設けている。
このような構成によって、より安定且つ安全にブームの組立及び解体を行うことができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、該ブームは、該第一ブームと、該第二ブームと、の間に挿入可能な柱状の中間ブームを更に有する。
このような構成によって、簡易クレーンの長さを容易に延長することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、該ブームを取付可能な基礎部を更に備え、該基礎部は、互いに交差する又はねじれの位置にある二の回動軸を含む取付部を有している、
このような構成によって、ブームを様々な方向に向け、物体を移動させることができる。
【発明の効果】
【0011】
上記課題を解決する本発明は、より少ない部品点数、且つ狭小な設置場所にも対応可能な簡易クレーンを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る、簡易クレーンの構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る、簡易クレーンに含まれるブームの構成を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る、簡易クレーンに含まれるブームの各部の詳細な構成を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る、簡易クレーンに含まれるブームの各部の詳細な構成を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る、簡易クレーンに含まれるブームの各部の詳細な構成を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る、簡易クレーンに含まれるブーム及び基礎部の構成を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る、簡易クレーンに含まれるブームの変更例を示す説明図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る、簡易クレーンの構成の変更例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る簡易クレーンXについて説明する。説明は、実施形態の構成、実施の方法、他の実施例の順に詳述する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。
【0014】
≪実施形態≫
本実施形態に係る簡易クレーンXは、
図1に示すように、第一ブーム1と、第二ブーム2と、基礎部4と、ワイヤWと、滑車Pと、巻上機Rと、を備え、必要に応じて中間ブーム3を備え、足場S、及び足場Sを支持する梁Bに固定される。また、
図2(a)、
図2(b)に示すように、以下の説明では、第一ブーム1と、第二ブーム2と、中間ブーム3と、をまとめてブームYと呼称する。また、第一ブーム1と、第二ブーム2と、中間ブーム3は、各々の端部を接続可能な嵌合部Cを有する。以下の説明において、嵌合部Cは、第一ブーム1と、第二ブーム2と、中間ブーム3を、軸方向(各ブームの長さ方向)に直列に嵌合可能な部分をすべて含む。
【0015】
図2(a)、
図2(b)、
図3(a)、
図3(b)に示すように、第一ブーム1は、ブームYのうち、簡易クレーンXの最も根元側に設けられ、柱状のブーム本体11と、基礎部4と接続可能な取付板12と、嵌合部Cとしての嵌受部13と、フランジ14と、を有する。また、以下の説明においては、第一ブーム1の長さ方向を示す中心線を軸線Aとし、軸線Aに平行な方向を軸方向、軸方向に垂直な平面の方向を断面方向とする(第二ブーム2、及び中間ブーム3についても同様)。
【0016】
ブーム本体11は、略一定の断面を有して軸方向に伸びる柱状或いは筒状の部材であり、第一ブーム1の主要部をなす。また、ブーム本体11の断面は角がない形状が好ましく、円形であれば特に好ましい。このような構成によって、クレーンとして重量物を吊下げた際に、荷重が適切に分散され、安全かつ長期間に亘って使用することができる。
【0017】
取付板12は、ブーム本体11の一端に設けられる平板状の部材であり、貫通孔121を設けて、基礎部4との接続を可能にする。取付板12は、ブーム本体11の端面の一の直径方向と、軸方向に面方向が向くように、略軸線上に割入れられて設けられる構成であり、一部は軸方向についてブーム本体11と重複し、残りは軸方向についてブーム本体11の延長上に設けられている。
【0018】
貫通孔121は、ブーム本体11の延長上において、取付板12を厚み方向について貫通する孔である。換言すれば、取付板12は、軸方向と交わる方向に貫通孔121を有する。このような構成によって、少ない部品点数で第一ブーム1を基礎部4に取付けることができる。
【0019】
図3(a)、
図3(c)に示すように、取付板12は、軸方向についてブーム本体11と重複する部分において、軸線Aから遠ざかる方向に張り出す張出部122を設けている。張出部122は、軸方向と交わる一の方向に張り出す平板状の部材であり、面方向において取付板12と面一で一体に形成されている構成が好ましい。また、張出部122は、厚み方向について貫通する取付孔Hを設けている。このような構成によって、簡易クレーンXに必要な他の部品を容易に取付けることができる。
【0020】
嵌受部13は、ブーム本体11の他端(取付板12が設けられている端部と反対側の端部)に設けられた筒状の部材であり、第二ブーム2又は中間ブーム3と接続可能な嵌合部Cの一部をなす。
図3(a)、
図3(b)に示す例では、嵌受部13の外径はブーム本体11の外径より大きく、嵌受部13の内径がブーム本体11の外径と略等しい構成で、嵌受部13とブーム本体11とは軸線Aを同心軸とした段付きの構成である。このような構成によって、嵌合部Cの深さ(軸方向の長さ)を視認しやすいほか、ブームYの根元側の部材が、先端側の部材を外から覆うように保持するため、ブームY全体が安定しやすい。
【0021】
フランジ14は、嵌受部13の先端の開口部、すなわち第一ブーム1において嵌合部Cが設けられている端部の端面を拡大する平板状の部材であり、断面方向について嵌受部13の側面より、軸線Aから遠ざかる方向に張り出している。また、
図2(b)に示すように、フランジ14には、固定用孔が設けられており、これにより第二ブーム2又は中間ブーム3と、ボルト締結で固定可能である。このような構成によって、軸方向にはボルト締結、断面方向には嵌合部Cと、二種類の接続方法でブームYを安定して固定し、組立てることができる。
【0022】
第一ブーム1は、
図2(b)、
図3(b)に示すように、ブーム本体11の側面にステー15を複数設ける。ステー15は、ブームYの設置後に、使用者(作業員)が登る足場用ボルトを取付けるための箱型若しくは柱状の突出部であり、突出方向と平行にボルトを挿入可能な孔が設けられている。また、ステー15は、軸方向について複数且つ等間隔に設けられる構成が好ましい。本実施形態の例では、軸線Aについて反対側となる位置に、各2か所のステー15が、等間隔に、且つ互いに反対側のステー15の中間の位置に設けられている構成を示す。このような構成によって、第一ブーム1に足場用ボルトを取付け、クレーン以外の用途(はしごの代用等)に転用することができる。
【0023】
図2(a)、
図2(b)、
図4(a)、
図4(b)に示すように、第二ブーム2は、ブームYのうち、簡易クレーンXの最も先端側に設けられ、柱状のブーム本体21と、ワイヤWを取付可能な吊下用板22、及び旋回用板23と、嵌合部Cとしての嵌入部24と、フランジ25と、を有する。また、第一ブーム1と同様、以下の説明には、軸線A、軸方向、断面方向を用いる。
【0024】
ブーム本体21は、第一ブーム1のブーム本体11と同様、略一定の断面を有して軸方向に伸びる柱状或いは筒状の部材であり、第二ブーム2の主要部をなす。また、ブーム本体21の断面は、第一ブーム1のブーム本体11と略等しく、更に角がない形状が好ましく、円形であれば特に好ましい。このような構成によって、ブームYは常に略一定の断面形状であり、重量物を吊下げた際に荷重が適切に分散され、安全に使用することができる。
【0025】
吊下用板22は、
図4(a)、
図4(b)に示すように、第二ブーム2の一端、特に簡易クレーンXの先端側となる端部に設けられ、
図4(c)に示すように、ブーム本体21の断面の一の直径に沿って割入れられて設けられる平板状の部材であり、該直径を両側について延長するように、ブーム本体21の外側に張り出す。また、吊下用板22は、ブーム本体21の外側に張り出した双方の領域に、それぞれ取付孔Hを設けている。このような構成によって、簡易クレーンXの先端にワイヤW又は滑車Pを容易に取付け、また少ない力でブームYを操作可能にすることができる。
【0026】
旋回用板23は、
図4(c)に示すように、ブーム本体21の側面より、軸線Aから遠ざかる方向に張り出す平板状の部材であり、吊下用板22を挟んで少なくとも一対、好ましくは対称に設けられる。旋回用板23は、各々において厚み方向に貫通する取付孔Hを設けている。また、旋回用板23は、軸方向について吊下用板22と同じ位置、すなわちブーム本体21の端部に設けられる構成が好ましい。このような構成によって、ブームYの先端にワイヤWを追加し、そのワイヤWを引っ張ることでブームYを容易に水平方向に旋回させることができる。
【0027】
嵌入部24は、ブーム本体21の他端(吊下用板22及び旋回用板23が設けられている端部と反対側の端部)に設けられた筒状の部材であり、第一ブーム1又は中間ブーム3と接続可能な嵌合部Cの一部をなす。
図4(a)、
図4(b)に示す例では、嵌入部24はブーム本体21と略同一の断面で延長した構成であり、嵌合部Cとしての深さ(軸方向長さ)が確保された位置において、フランジ25が設けられている。
【0028】
フランジ25は、ブーム本体21の端面、特に嵌入部24との境界となる端部において、その端面(又は断面)を拡大する平板状の部材であり、断面方向について嵌入部24の側面より、軸線Aから遠ざかる方向に張り出している。また、
図2(b)に示すように、フランジ25には、固定用孔が設けられており、これにより第一ブーム1又は中間ブーム3と、ボルト締結で固定可能である。
【0029】
第二ブーム2は、
図2(b)、
図4(b)に示すように、ブーム本体21の側面にステー26を複数設ける。ステー26は、ブームYの設置後に、使用者(作業員)が登る足場用ボルトを取付けるための箱型若しくは柱状の突出部であり、突出方向と平行にボルトを挿入可能な孔が設けられている。また、ステー26は、軸方向について複数且つ等間隔に設けられる構成が好ましい。本実施形態の例では、軸線Aについて反対側となる位置に、各2か所のステー26が、等間隔に、且つ互いに反対側のステー26の中間の位置に設けられている構成を示す。ここで、軸方向についてのステー26の配置間隔は、第一ブーム1のステー15と同一である構成が好ましい。このような構成によって、ブームYを使って使用者が昇降等の移動をする際に、足場用ボルトが等間隔に配置され、移動が安全かつ容易になる。
【0030】
図2(a)、
図2(b)、
図5(a)、
図5(b)に示すように、中間ブーム3は、ブームYのうち、第一ブーム1と、第二ブーム2と、の間に挿入可能な拡張用部品であり、ブーム本体31と、嵌合部Cとしての嵌受部32及び嵌入部33と、フランジ34と、を有する。また、第一ブーム1、第二ブーム2と同様、以下の説明には、軸線A、軸方向、断面方向を用いる。
【0031】
ブーム本体31は、第一ブーム1のブーム本体11、及び第二ブーム2のブーム本体21と同様、略一定の断面を有して軸方向に伸びる柱状或いは筒状の部材であり、中間ブーム3の主要部をなす。また、ブーム本体31の断面は角がない形状が好ましく、円形であれば特に好ましい。
【0032】
嵌受部32は、ブーム本体31の一端に設けられた筒状の部材であり、第二ブーム2又は他の中間ブーム3と接続可能な嵌合部Cの一部をなす。
図5(a)、
図5(b)に示す例では、嵌受部32の外径はブーム本体31の外径より大きく、嵌受部32の内径がブーム本体31の外径と略等しい構成で、嵌受部32とブーム本体31とは軸線Aを同心軸とした段付きの構成である。
【0033】
嵌入部33は、ブーム本体31の他端(嵌受部32が設けられている端部と反対側の端部)に設けられた筒状の部材であり、第一ブーム1又は他の中間ブーム3と接続可能な嵌合部Cの一部をなす。
図5(a)、
図5(b)に示す例では、嵌入部33はブーム本体31と略同一の断面で延長した構成であり、嵌合部Cとしての深さ(軸方向長さ)が確保された位置において、フランジ34が設けられている。
【0034】
フランジ34は、嵌受部32の先端の開口部(中間ブーム3において嵌合部Cが設けられている端部)、及びブーム本体31と嵌入部33との境界となる端部に設けられ、各々の端面を拡大する平板状の部材であり、嵌受部32及び嵌入部33の側面より、軸線Aから遠ざかる方向に張り出している。また、
図2(b)に示すように、フランジ34には、固定用孔が設けられており、これにより第一ブーム1又は第二ブーム2又は他の中間ブーム3と、ボルト締結で固定可能である。
【0035】
図2(a)、
図2(b)、
図7(a)に示すように、ブームYは、以上の構成を有する第一ブーム1及び第二ブーム2を接続し、必要に応じて両者の間に中間ブーム3を追加して構成される。このとき、
図7(a)に示すように、第一ブーム1と第二ブーム2を直接接続する場合は、第二ブーム2の嵌入部24が第一ブーム1の嵌受部13に嵌入し、フランジ14、25が当接し、嵌合部Cをなす。
図2(a)、
図2(b)に示すように、中間ブーム3が含まれる場合は、第二ブーム2の嵌入部24が中間ブーム3の嵌受部32に、中間ブーム3の嵌入部33が第一ブーム1の嵌受部13に、それぞれ嵌入し、またフランジ25とフランジ34、フランジ14とフランジ34がそれぞれ当接して、嵌合部Cをなす。また、中間ブーム3同士を接続する場合は、一の中間ブーム3の嵌入部33が、他の中間ブーム3の嵌受部32に嵌入し、また一の中間ブーム3のフランジ34と他の中間ブーム3のフランジ34とが当接し、嵌合部Cをなす。
【0036】
このような構成によって、嵌合部Cにおける各ブーム同士の接続作業が容易になる。フランジ同士を当接させボルト締結で固定するのみでは、ボルトを締める作業が行われる最中、常にブーム同士の位置合わせの状態を保持している必要があった上に、接続後も、嵌合部Cに係る剪断荷重をボルトが全て受けることになり、強度上の問題もあったが、嵌入部24、33と、嵌受部13、32による位置決めが可能になり、ブームYの接続時の作業負担が軽減されるほか、剪断荷重に対する強度も向上される。
【0037】
図1、
図6(a)、
図6(b)に示すように、基礎部4は、簡易クレーンXを所定の場所に固定可能な構造体であり、固定板41と、第一ブーム1を取付可能な取付部42と、を有する。
【0038】
固定板41は、基礎部4の最下部を構成する平板状の部材であり、この部分を以て基礎部4を固定場所に載置し、固定具によって固定する。本実施形態における例では、固定具はボルト締結やアンカーボルトが挙げられ、
図6(b)に示すように、固定板41は、固定具を貫通可能な孔または溝を設けている。
【0039】
取付部42は、固定板41の上側に立設されている構造物であり、第一ブーム1の取付板12を取付可能にする。取付部42は、取付板12の厚みよりも少し広い間隔をあけて対向する一対の平板状部材を設けており、そこに貫通孔121に合わせた孔を一直線上に設けている。
図6(b)に示すように、取付板12と取付部42は、一直線上に並んだ貫通孔121と孔に、取付ボルト5(ボルトとナットの組合せによる一般的な締結具)を貫通させて接続され、これにより第一ブーム1は、取付部42に対し、回動可能に設けられる。このときの孔及び取付ボルト5の中心軸線が第一回動軸421であり、ブームYは、この第一回動軸421を軸に、仰角、俯角方向に回動可能となる。
【0040】
取付部42は、
図6(b)に示すように、第一回動軸421と交差して、又はねじれの位置において第二回動軸422を設けている。第二回動軸422は、取付板12と接続可能な平板状部材の下側において、固定板41に対し、取付部42を回動可能に接続する回動軸であって、本実施形態における例では、取付部42は、固定板41の面方向と略平行に回動可能であり、第一回動軸421と、第二回動軸422は略直交している。このような構成によって、ブームYは、固定板41の面方向と略平行に回動、すなわち旋回することができる。
【0041】
以上の構成を有するブームY及び基礎部4は、
図1に示すように、足場S及び/又は梁Bに固定され、更にワイヤW、滑車P、巻上機Rを取付けて、簡易クレーンXを形成する。なお、以下の説明において、ワイヤWは、支持ワイヤW1、旋回ワイヤW2、吊下ワイヤW3を含むものとする。
【0042】
ワイヤWは、重量物の重量による引っ張りに耐える十分な強度をもつ線材(又は組紐)であり、簡易クレーンXの各部に取り付けられる。
【0043】
支持ワイヤW1は、吊下用板22の一方の取付孔Hに挿通され、結びつけて取付けられ、他端は簡易クレーンXの周辺の構造物に固定されており、ブームYを所定の角度に保持可能にする。支持ワイヤW1は、吊下用板22に取付けられる一端から、周辺の構造物に取付けられる他端までの長さを、巻上機R等で変更可能な構成が好ましい。このような構成によって、ブームYが第一回動軸421について回動可能になり、軸方向の仰角、俯角を変更することができる。
【0044】
旋回ワイヤW2は、旋回用板23の取付孔Hに挿通され、結びつけて取付けられ、他端は簡易クレーンXの周辺の構造物において、長さを変更可能に取付けられている。また、旋回ワイヤW2は、一の旋回用板23に少なくとも一本取付けられる構成であり、このような構成によって、複数本の旋回ワイヤW2を適切に引っ張ることで、ブームYが第二回動軸422について回動し、ブームYが水平方向について旋回することができる。
【0045】
吊下ワイヤW3は、ブームYとともに簡易クレーンXの主要部をなすワイヤWであり、一端を重量物に取付けて吊下げ、他端を巻上機Rに接続して引き上げ可能にする。また、吊下ワイヤW3は、途中で吊下用板22の他方(支持ワイヤW1が取付けられていない方)の取付孔Hを経由して、ブームYに沿うように取付けられる。更に、吊下ワイヤW3は、吊下用板22及び張出部122付近において、滑車Pにより方向転換される。このような構成によって、重量物の引き上げ、引き下げを安全に行えるほか、巻上機Rの設置場所も選びやすくなる。
【0046】
滑車Pは、ワイヤWを引掛可能な回動体と、取付孔Hに取付可能なフックを有する一般的な滑車であり、本実施形態においては、
図1に示すように、吊下用板22と、張出部122の取付孔Hに取付けられて、吊下ワイヤW3の方向を変換する。
【0047】
巻上機Rは、動力装置と、それによりワイヤWを巻取り、又は引出し可能な回動部を含む一般的な巻上機であり、各ワイヤWの一端に取付可能である。また、巻上機Rは、
図1に示すように、足場S上の任意の位置に据え付ける構成や、
図8に示すように、携帯型且つ手動のウィンチを張出部122に直接取付ける構成を含み、安全に重量物を吊下げることができれば、どのような態様を選択してもよい。
【0048】
以上の構成により、簡易クレーンXは、少ない部品点数で十分な強度と安全性を担保して構成できるため、高所(足場S等)に部品を引き上げる手間が少なく、安全かつ低コストで運用することができる。
【0049】
本発明は、以下の構成を有してもよい。但し、以下の構成はあくまで一例であり、その有無は、特に従属の指定がない限り、任意に決定することができる。
【0050】
≪変更例≫
取付板12、張出部122、吊下用板22、旋回用板23において、貫通孔121又は取付孔H付近の面方向から見た周辺部は、円弧状に丸められている構成が好ましい。このような構成によって、ブームYを移動させる際に、取付板12、張出部122、吊下用板22、旋回用板23が周辺の物体に接触しても、その物体の損傷を抑えられる。また、取付板12においては、取付部42に取り付けられて回動する際に、取付部42の部材との干渉を避けることができる。
【0051】
旋回用板23の張出方向は、
図4(c)に示すように、吊下用板22に対し直角ではなく、吊下用板22の何れか一端の方に集まるように寄っていることが好ましい。このような構成によって、ブームYを
図1に示すように傾けて(或いは寝かせて)使用する場合、旋回用板23の先端がやや上を向くため、支持ワイヤW1と略同じ高さ(若しくは水平方向において、基礎部4から見たときのブームY先端の反対側)から旋回ワイヤW2を引っ張って操作しやすくなる。また、これと併せて、旋回用板23に剪断荷重がかかりにくくなり、使用中の破断の可能性を抑えることができる。また、このとき、第一ブーム1と第二ブーム2の組合せ方においては、旋回用板23から近い方の吊下用板22と、張出部122の方向を同じ向きにするのが好ましい。このような構成によって、
図1に示すように、張出部122が鉛直上側を向くようになり、基礎部4等と干渉しない。
【0052】
第一ブーム1のフランジ14と、第二ブーム2のフランジ25は、それぞれ切欠き或いはモールドを1か所だけ設ける構成としてもよい。この切欠き或いはモールドは、第一ブーム1のフランジ14においては張出部122が張り出している方向に、第二ブーム2のフランジ25においては前述の通り旋回用板23が偏っている側の吊下用板22の方向に設けられている構成が好ましい。このような構成によって、第一ブーム1と第二ブーム2とを嵌合部Cで接続する際に、ブームYの向きを合わせる作業、すなわち張出部122が張り出している方向と、前述の通り旋回用板23が偏っている法の吊下用板22の方向と、を軸線Aについて同じ方向にしてブームYを組立てる作業を容易にする。これにおいて使用者は、フランジ14、25に設けられた切欠き或いはモールドを目印とでき、ブームYの両端を見て確認する必要がなくなり、作業時のミスを削減することができる。また、中間ブーム3についても同様に、両端のフランジ34において同一の方向に切欠き或いはモールドを各1か所設けている構成が好ましい。
【0053】
図7(b)に示すように、中間ブーム3は、第一ブーム1や第二ブーム2よりも軸方向について短い構成でもよい。このような構成によって、ブームYの長さを変更する自由度を向上することができる。例えば、第一ブーム1と第二ブーム2の軸方向長さがともに2mであり、中間ブーム3の軸方向長さが1mである場合、ブームYの軸方向長さは、4m以上であれば1m刻みで調整可能である。但し、ここで示した数値はあくまで一例であり、各ブームの軸方向長さは、自由に設定されてよい。
【0054】
以下、図面を用いて、本発明の実施の方法について詳述する。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。
【0055】
≪実施の方法≫
使用者は、簡易クレーンXを組立てるにあたり、まず基礎部4を設置する。基礎部4を設置場所に載置し、固定具(ボルト締結やアンカーボルトの打込み等)で基礎部4を固定する。
【0056】
次に使用者は、第一ブーム1を取付部42に取付ける。このとき使用者は、
図6(b)に示すように、取付板12の貫通孔121と、取付部42の孔の位置を合わせ、取付ボルト5で各孔を貫通し、ナットを締めて第一ブーム1を取付部42に対し回動可能に接続する。その後使用者は、第一ブーム1を寝かせ、嵌受部13において接続する第二ブーム2若しくは中間ブーム3を用意する。
【0057】
その次に使用者は、嵌受部13に第二ブーム2の嵌入部24を貫入し、第一ブーム1のフランジ14と、第二ブーム2のフランジ25とが当接したら、両者のボルト固定孔の位置を合わせ、重なった二のフランジを、ボルト締結で固定する。この作業は、第一ブーム1と中間ブーム3との接続や、中間ブーム3同士の接続、中間ブーム3と第二ブーム2との接続においても同様の作業である。これにより、ブーム同士の接続における位置合わせの手間が削減され、短時間で安全に作業することができる。
【0058】
続いて使用者は、張出部122、吊下用板22、旋回用板23の各々の取付孔HにワイヤWを取付ける。このとき使用者は、必要に応じて、特に吊下ワイヤW3においては、張出部122、吊下用板22の取付孔Hに滑車Pを取付け、吊下ワイヤW3を引っ掛ける。その後使用者は、支持ワイヤW1を用いてブームYを引き起こし、簡易クレーンXとして稼働させる。
【0059】
使用者は、簡易クレーンXを解体するとき、上記と逆の手順で作業を行う。以上の作業により、足場Sを含む高所での簡易クレーンXの設置及び撤去が、狭い範囲で安全に行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
X 簡易クレーン
Y ブーム
1 第一ブーム
11 ブーム本体
12 取付板
121 貫通孔
122 張出部
13 嵌受部
14 フランジ
15 ステー
2 第二ブーム
21 ブーム本体
22 吊下用板
23 旋回用板
24 嵌入部
25 フランジ
26 ステー
3 中間ブーム
31 ブーム本体
32 嵌受部
33 嵌入部
34 フランジ
35 ステー
4 基礎部
41 固定板
42 取付部
421 第一回動軸
422 第二回動軸
5 取付ボルト
A 軸線
B 梁
C 嵌合部
H 取付孔
P 滑車
R 巻上機
S 足場
W ワイヤ
W1 支持ワイヤ
W2 旋回ワイヤ
W3 吊下ワイヤ
【要約】
【課題】より少ない部品点数、且つ狭小な設置場所にも対応可能な簡易クレーンを提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決する本願発明は、柱状のブームYを備える簡易クレーンXであって、ブームYは、第一ブーム1と、第二ブーム2と、を含み、第一ブーム1には、その軸方向と交わる方向に貫通孔121を有する取付板12が一端に設けられており、取付板12は、該軸方向と交わる一の方向に張り出す張出部122を更に有し、張出部122には、取付孔Hが設けられている。
【選択図】
図1