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特許7593709入浴介助システムおよび浴槽用レール装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】入浴介助システムおよび浴槽用レール装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
A61H33/00 310M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020058343
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021153956
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】小田 眞弘
(72)【発明者】
【氏名】杉 茂人
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-060639(JP,A)
【文献】特開2015-058054(JP,A)
【文献】特開2019-051113(JP,A)
【文献】特開昭55-023442(JP,A)
【文献】米国特許第05373591(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00 - A61H 35/04
A61G 1/00 - A61G 5/14
A47C 7/00 - A47C 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置される第1框部及び第2框部を有する框を備えた浴槽に配置可能に構成され、椅子ユニットを、前記第1框部及び第2框部と直交する第1方向にスライド可能に支持するレールユニットと、
前記レールユニットを収容する収容ユニットと、
前記レールユニットを前記収容ユニットに収容した収容状態と、前記レールユニットを前記浴槽の前記框に配置した設置状態との間で、前記レールユニットを前記収容ユニットに対して前記第1方向に延びる旋回軸周りに旋回させる旋回機構と、
を備え、
前記椅子ユニットは、前記レールユニット上を、前記浴槽の外側から前記第1框部を通過して前記第2框部側に移動するように構成され、
前記レールユニットは、
前記第1框部と前記第2框部との間で、前記第1方向に延びるレール本体と、
前記レール本体における前記第1框部側の第1端部から延び、当該第1端部に対して旋回可能に連結された第1アーム部材であって、前記第1框部上に設置可能な第1アーム部材と、
前記レール本体における前記第2框部側の第2端部から延び、当該第2端部に対して旋回可能に連結された第2アーム部材であって、前記第2框部上に設置可能な第2アーム部材と、
を備え、
前記旋回機構は、前記レールユニットが、前記収容状態から前記設置状態へ旋回されたとき、前記レール本体、前記第1方向において前記第1框部側へ移動させるように構成され、
前記旋回機構は、前記レールユニットが、前記収容状態から前記設置状態へ旋回される過程で、前記レール本体、前記第1方向において前記第1框部側へ移動させるように構成されている、入浴介助システム。
【請求項2】
対向配置される第1框部及び第2框部を有する框を備えた浴槽に配置可能に構成され、椅子ユニットを、前記第1框部及び第2框部と直交する第1方向にスライド可能に支持するレールユニットと、
前記レールユニットを収容する収容ユニットと、
前記レールユニットを前記収容ユニットに収容した収容状態と、前記レールユニットを前記浴槽の前記框に配置した設置状態との間で、前記レールユニットを前記収容ユニットに対して前記第1方向に延びる旋回軸周りに旋回させる旋回機構と、
を備え、
前記椅子ユニットは、前記レールユニット上を、前記浴槽の外側から前記第1框部を通過して前記第2框部側に移動するように構成され、
前記レールユニットは、
前記第1框部と前記第2框部との間で、前記第1方向に延びるレール本体と、
前記レール本体における前記第1框部側の第1端部から延び、当該第1端部に対して旋回可能に連結された第1アーム部材であって、前記第1框部上に設置可能な第1アーム部材と、
前記レール本体における前記第2框部側の第2端部から延び、当該第2端部に対して旋回可能に連結された第2アーム部材であって、前記第2框部上に設置可能な第2アーム部材と、
を備え、
前記旋回機構は、
前記レールユニットが、前記収容状態から前記設置状態へ旋回されたとき、前記レール本体が、前記第1方向において前記第1框部側へ移動するように構成されており、
前記旋回機構は、
前記レールユニットの前記レール本体に固定され、前記旋回軸周りに回転可能な少なくとも1つの軸部材と、
前記収容ユニットに固定され、前記各軸部材を前記旋回軸周りに回転可能に支持する規制部材と、
を備え、
前記レールユニットが前記収容状態から前記設置状態に遷移するときに、前記軸部材が、第1回転位置から第2回転位置に前記旋回軸周りに回転するように構成され、
前記規制部材は、前記軸部材が第1回転位置から第2回転位置に回転するときに、前記軸部材を第1位置から、当該第1位置よりも前記第1方向において前記第1框部側にずれた第2位置へ移動させるように構成されている、入浴介助システム。
【請求項3】
前記軸部材は、軸本体と、当該軸本体の外周面に形成された少なくとも1つの突部と、を備え、
前記規制部材は、前記軸部材が第1回転位置から第2回転位置に回転するときに、前記突部を前記第1位置から前記第2位置へガイドするように構成されている、請求項2に記載の入浴介助システム。
【請求項4】
前記規制部材は、前記軸本体を回転可能に支持する円筒状に形成され、
前記規制部材の前記旋回軸方向の端部が、当該旋回軸と斜めに交差するように形成され、前記突部が前記端部に沿って移動するように構成されている、請求項3に記載の入浴介助システム。
【請求項5】
前記規制部材は、らせん状に延びる溝を有しており、
前記突部は、前記溝に沿って移動するように構成されている、請求項3に記載の入浴介助システム。
【請求項6】
前記椅子ユニットと、
前記椅子ユニットを支持する移送ユニットと、
をさらに備え、
前記椅子ユニットは、
椅子と、
前記椅子を昇降可能に支持するとともに、前記レール本体に沿ってスライド可能な昇降機構部と、
を備え、
前記移送ユニットは、前記昇降機構部をスライド可能に支持するレール部材を備え、
前記レール部材に支持され前記昇降機構部が、前記レール部材から前記レール本体へ移動可能に構成されている、請求項1から5のいずれかに記載の入浴介助システム。
【請求項7】
対向配置される第1框部及び第2框部を有する框を備えた浴槽に配置可能に構成され、椅子ユニットを、前記第1框部及び第2框部と直交する第1方向にスライド可能に支持するレールユニットと、
前記レールユニットを収容する収容ユニットと、
前記レールユニットを前記収容ユニットに収容した収容状態と、前記レールユニットを前記浴槽の前記框に配置した設置状態との間で、前記レールユニットを前記収容ユニットに対して前記第1方向に延びる旋回軸周りに旋回させる旋回機構と、
を備え、
前記旋回機構は、前記レールユニットが、前記収容状態から前記設置状態へ旋回されたとき、前記レール本体、前記第1方向において前記第1框部側へ移動させるように構成され、
前記旋回機構は、前記レールユニットが、前記収容状態から前記設置状態へ旋回される過程で、前記レール本体、前記第1方向において前記第1框部側へ移動させるように構成されている、浴槽用レール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴介助システムおよび浴槽用レール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
介助者が、自力で歩行ができない老人や身体障害者などの被介助者を椅子部に着座させた状態で容易に入浴させることができる種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1には、次のような入浴介助システムが開示されている。
【0003】
この入浴介助システムでは、浴槽の框のうち、対向する框部(以下、第1框部及び第2框部と称する)に跨がるようにレールユニットを設置し、このレールユニットに、車椅子から椅子ユニットをスライドさせて固定する。これにより、椅子ユニットが浴槽の上方に配置される。この状態から、椅子のみを下降させると、被介助者は、椅子に座ったまま浴槽の湯に浸かることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-192087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のレールユニットには、第1框部及び第2框部上に配置される一対のアーム部材が設けられている。このようなアーム部材を対向する框部上にそれぞれ配置することで、レールユニットを安定的に框上に設置でき、重量のある椅子ユニット及び被介助者を安定的に支持することができる。
【0006】
しかしながら、浴槽の大きさは様々であり、例えば、椅子ユニットが設置される第1框部の幅が広いと、レールユニットに近接させた椅子ユニットと第1框部とが干渉し、椅子ユニットをレールユニットに乗り移らせることができないという問題がある。
【0007】
これを解決するため、例えば、椅子ユニットの幅を狭くすることも考えられるが、このようにすると、椅子が不安定になり、転倒するおそれがある。また、レールユニットを延長し、第1框部から突出させることも考えられるが、このようにすると、レールユニットを収容する収容ユニットに収容できなくなるおそれがある。これに対して、収容ユニットを大きくすることもできるが、浴室内での介助者の動作空間が小さくなるという問題もある。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、浴槽の框部の幅が広くても椅子ユニットをレールに乗り移らせることができる、入浴介助システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発に係る入浴介助システムは、対向配置される第1框部及び第2框部を有する框を備えた浴槽に配置可能に構成され、椅子ユニットを、前記第1框部及び第2框部と直交する第1方向にスライド可能に支持するレールユニットと、前記レールユニットを収容する収容ユニットと、前記レールユニットを前記収容ユニットに収容した収容状態と、前記レールユニットを前記浴槽の前記框に配置した設置状態との間で、前記レールユニットを前記収容ユニットに対して前記第1方向に延びる旋回軸周りに旋回させる旋回機構と、を備え、前記椅子ユニットは、前記レールユニット上を、前記浴槽の外側から前記第1框部を通過して前記第2框部側に移動するように構成され、前記レールユニットは、前記第1框部と前記第2框部との間で、前記第1方向に延びるレール本体と、前記レール本体における前記第1框部側の第1端部から延び、当該第1端部に対して旋回可能に連結された第1アーム部材であって、前記第1框部上に設置可能な第1アーム部材と、前記レール本体における前記第2框部側の第2端部から延び、当該第2端部に対して旋回可能に連結された第2アーム部材であって、前記第2框部上に設置可能な第2アーム部材と、を備え、前記旋回機構は、前記レールユニットが、前記収容状態から前記設置状態へ旋回されたとき、前記レール本体が、前記第1方向において前記第1框部側へ移動するように構成されている。
【0010】
上記入浴介助システムにおいて、前記旋回機構は、前記レールユニットの前記レール本体に固定され、前記旋回軸周りに回転可能な少なくとも1つの軸部材と、前記収容ユニットに固定され、前記各軸部材を前記旋回軸周りに回転可能に支持する規制部材と、を備えることができ、前記レールユニットが前記収容状態から前記設置状態に遷移するときに、前記軸部材が、第1回転位置から第2回転位置に前記旋回軸周りに回転するように構成され、前記規制部材は、前記軸部材が第1回転位置から第2回転位置に回転するときに、前記軸部材を第1位置から、当該第1位置よりも前記第1方向において前記第1框部側にずれた第2位置へ移動させるように構成することができる。
【0011】
上記入浴介助システムにおいて、前記軸部材は、軸本体と、当該軸本体の外周面に形成された少なくとも1つの突部と、を備えることができ、前記規制部材は、前記軸部材が第1回転位置から第2回転位置に回転するときに、前記突部を前記第1位置から前記第2位置へガイドするように構成することができる。
【0012】
上記入浴介助システムにおいて、前記規制部材は、前記軸本体を回転可能に支持する円筒状に形成することができ、前記規制部材の前記旋回軸方向の端部が、当該旋回軸と斜めに交差するように形成され、前記突部が前記端部に沿って移動するように構成することができる。
【0013】
上記入浴介助システムにおいて、前記規制部材は、らせん状に延びる溝を有することができ、前記突部は、前記溝に沿って移動するように構成することができる。
【0014】
上記入浴介助システムにおいては、前記椅子ユニットと、前記椅子ユニットを支持する移送ユニットと、をさらに備えることができ、前記椅子ユニットは、椅子と、前記椅子を昇降可能に支持するとともに、前記レール本体に沿ってスライド可能な昇降機構部と、を備えることができ、前記移送ユニットは、前記昇降機構部をスライド可能に支持するレール部材を備え、前記レール部材に支持され前記昇降機構部が、前記レール部材から前記レール本体へ移動可能に構成することができる。
【0015】
本発明に係る浴室用レール装置は、対向配置される第1框部及び第2框部を有する框を備えた浴槽に配置可能に構成され、椅子ユニットを、前記第1框部及び第2框部と直交する第1方向にスライド可能に支持するレールユニットと、前記レールユニットを収容する収容ユニットと、前記レールユニットを前記収容ユニットに収容した収容状態と、前記レールユニットを前記浴槽の前記框に配置した設置状態との間で、前記レールユニットを前記収容ユニットに対して前記第1方向に延びる旋回軸周りに旋回させる旋回機構と、を備え、前記旋回機構は、前記レールユニットが、前記収容状態から前記設置状態へ旋回されたとき、前記レール本体が、前記第1方向において前記第1框部側へ移動するように構成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、浴槽のサイズが変わっても、浴槽の框部の幅が広くても椅子ユニットをレールに乗り移らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る入浴介助システムの側面図である。
図2図1の平面図である。
図3】レールユニットが収容された状態を示す支持装置の斜視図である。
図4】レールユニットを框(図示省略)上に配置した状態を示す斜視図である。
図5】使用状態にあるレールユニットの斜視図である。
図6図5のレールユニットを下側から見た図である。
図7】框上で使用状態にあるレールユニット及び収容ユニットの平面図である。
図8】旋回機構の斜視図である。
図9】収容状態にあるレールユニットを後方から見た図である。
図10】設置状態にあるレールユニットを後方から見た図である。
図11】入浴介助システムの使用方法を説明する側面図である。
図12】入浴介助システムの使用方法を説明する側面図である。
図13】入浴介助システムの使用方法を説明する平面図である。
図14】入浴介助システムの使用方法を説明する側面図である。
図15】入浴介助システムの使用方法を説明する側面図である。
図16】旋回機構の他の例を示す斜視図である。
図17】旋回機構の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る入浴介助システムの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る入浴介助システムの側面図、図2図1の平面図である。
【0019】
<1.入浴介助システムの概要>
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る入浴介助システムは、浴室に設けられた浴槽3へ被介助者を入浴させるためのシステムであり、被介助者を浴槽3まで運ぶための移送装置10と、浴槽3に配置されるレールユニット5を有する支持装置20と、を備えている。なお、以下の説明では、図1及び図2に示す方向にしたがって説明を行うが、本発明はこの方向に限定されるものではない。
【0020】
図2に示すように、浴槽3は、平面視矩形状に形成されており、湯水が張られる湯溜め空間の周りには框が形成されている。框は、長手方向に平行に延びる第1框部31及び第2框部32と、短手方向に平行に延びる第3框部33及び第4框部34と、を備え、全体として矩形の枠状に形成されている。そして、浴槽3は、第2框部32が浴室の壁面に接し、第1框部31側に洗い場が設けられている。そのため、移送装置10は、洗い場のある第1框部31側から浴槽3に隣接するようになっている。また、浴槽3の後方には空間が形成されており、この空間に支持装置20が配置されている。
【0021】
<2.移送装置の概要>
図1及び図2に示すように、移送装置10は、被介助者が座る椅子ユニット1と、この椅子ユニット1を移動させるための台車(移送ユニット)2と、を備えている。椅子ユニット1は、被介助者が座る椅子11と、この椅子11を昇降可能に支持する昇降機構部12と、を備えている。台車2は、車輪21が設けられた基台部22と、この基台部22から上方に延びる柱部材23と、この柱部材23上において、水平方向(左右方向)に延びるレール部材24と、を備えており、レール部材24に、昇降機構部12が水平方向にスライド可能に支持されている。
【0022】
椅子11は、上下方向に延びる支柱111と、この支柱111の下端部から水平方向に延びる座板支持フレーム112と、を備えている。そして、支柱111の両側には、一対の背板支持フレーム113が設けられ、この背板支持フレーム113によって、支柱111に前側に背板114が取り付けられている。また、支柱111の上端には、ヘッドレスト115が高さ調整可能に取り付けられている。さらに、支柱111には、背板114を挟むように、左右一対のアームレスト116が設けられている。各アームレスト116は、支柱111に対して上下方向に回動可能に連結されており、回動によって被介助者の腕や体をサポートする使用位置と、座板117への乗り移りの邪魔にならない跳ね上げ位置と、を選択できるようになっている。
【0023】
座板支持フレーム112上には、被介助者が座る座板117が配置されている。さらに、座板支持フレーム112には、被介助者の足を置くためのフットサポート118が設けられている。このフットサポート118は、座板117から前方へ進退するスライド部118aと、このスライド部118aの先端に設けられた足置き部118bと、を備えており、被介助者の体型に合わせて、スライド部118aをスライドすることで、足置き部118bの位置を変えることができるようになっている。また、このフットサポート118は、座板支持フレーム112に対して回動可能となっており、座板117に対して、フットサポート118の角度を変えることができるようになっている。
【0024】
また、上述した支柱111は、昇降機構部12によって昇降するようになっている。そのため、支柱111は、リップ溝形鋼材(Cチャンネル)で形成されており、溝の開口部を昇降機構部12側に向けるように設けられている。そして、支柱111の溝内部には、上下方向に延びるラック(図示省略)が設けられている。
【0025】
一方、昇降機構部12は、台車2のレール部材24上に配置される筐体121を備えており、この筐体121の前面には、支柱111の溝の両側に嵌まるローラ(図示省略)が設けられている。これによって、支柱111は、筐体121に対して昇降可能となっている。また、筐体121の内部には、電動モータ(図示省略)が設けられており、この電動モータによって回転駆動するピニオン(図示省略)が筐体121の前面から露出するように設けられている。そして、このピニオンは支柱111のラックに噛み合っており、電動モータが駆動することで、ピニオンが回転し、支柱111が筐体121に対して昇降するようになっている。
【0026】
また、筐体121の下部には、複数の昇降機支持ローラ(図示省略)が設けられており、これら昇降機支持ローラ(図示省略)は、レール部材24に嵌め込まれている。これにより、筐体121は、レール部材24の長手方向、つまり水平方向に移動可能となっている。なお、レール部材24には、筐体121がレール部材24上で動かないようにロックするロック機構(図示省略)が設けられており、ロック機構を解除したときに、筐体121がレール部材24上をスライドできるようになっている。また、このレール部材24の高さは、後述するレールユニット5のレール本体51の高さと同じになっており、レール部材24とレール本体51とを隣接させることで、筐体121がレール部材24からレール本体51へと乗り移ってスライドできるようになっている。
【0027】
次に、台車2について説明する。台車2の基台部22は、前後方向に長い平面視矩形状のフレーム221を備えており、このフレーム221に4つの車輪21が設けられている。そして、基台部22の後端側には、上述した柱部材23が設けられ、この柱部材23の上端部に、上述したレール部材24が水平方向に延びるように設けられている。
【0028】
<3.支持装置の概要>
次に、支持装置20について、図3及び図4を参照しつつ説明する。図3はレールユニットが収容された状態を示す支持装置の斜視図、図4はレールユニットを框(図示省略)上に配置した状態を示す斜視図である。
【0029】
図3及び図4に示すように、支持装置20は、浴槽3の第3框部33側の後方の空間に配置される収容ユニット4と、この収容ユニット4に収容されるレールユニット5と、収容ユニット4とレールユニット5を連結する旋回機構6と、を備えている。そして、レールユニット5は、旋回機構6によって、収容ユニット4に収容された収容状態(図3)と、収容ユニット4から取り出され、框上に設置される設置状態(図4)とを、選択的に取り得るように構成されている。以下、各ユニットについて、詳細に説明する。
【0030】
<3-1.収容ユニット>
図3及び図4に示すように、収容ユニット4は、4つの脚部411~414と、これら脚部411~414の上下方向の中間付近を支持する支持フレーム42と、を有している。ここでは、右前にある脚部を第1脚部411、左前にある脚部を第2脚部412、右後にある脚部を第3脚部413、左後にある脚部を第4脚部414と称することとする。さらに、この収容ユニット4は、第1脚部411と第2脚部412の上端付近を連結し左右方向に延びる第1連結材43、第3脚部413と第4脚部414の上端付近を連結し左右方向に延びる第2連結材44と、を備えている。そして、第1連結材43には、上述した旋回機構6が取り付けられ、第2連結材44には、収容ユニット4の上部を開閉自在に塞ぐ、矩形状の蓋部材46が旋回可能に取り付けられている。
【0031】
<3-2.レールユニット>
次に、レールユニット5について、図5図7を参照しつつ説明する。図5は、使用状態にあるレールユニットの斜視図、図6図5のレールユニットを下側から見た図、図7は框上で使用状態にあるレールユニット及び収容ユニットの平面図である。
【0032】
図5図7に示すように、レールユニット5は、第3框部33に沿って延びるレール本体51と、このレール本体51の両端部にそれぞれ設けられた板状の連結具521,522と、を備えている。ここでは、第1框部31側(右側)に配置された連結具を第1連結具521と称し、第2框部32側(左側)に配置された連結具を第2連結具522と称することとする。レール本体51は、リップ溝形鋼材(Cチャンネル)で形成されたレールを有している。各連結具521,522は、L字状に形成され、一端部がレール本体51の下面に固定されるとともに、他端部が、旋回機構6に取り付けられている。そして、このレール本体51には、上述したように、椅子ユニット1の筐体121がスライド可能となっている。また、レール本体51上に筐体121が配置されたときには、筐体121をレール本体51上で固定するためのロック機構(図示省略)が設けられている。一方、レールユニット5が収容ユニット4に収容されるときには、図3に示すように、レールの開口が下方を向いた状態で収容される。
【0033】
<3-2-1.アーム機構>
レール本体51の下面には、レール本体51を框上に配置するためのアーム機構が設けられている。このアーム機構は、第1アーム部材53、第2アーム部材54、及び連結部材55を備えている。両アーム部材53,54は、図3に示すようにレール本体51の下方に収容される初期状態と、図5図7に示すようにレール本体51から前方へ突出する使用状態と、を取り得るようになっている。以下、これらの部材について詳細に説明する。
【0034】
第1アーム部材53は、長尺状に形成された板状の部材であり、後端側の端部が、レール本体51に対して旋回可能に連結されている。より詳細には、レール本体51の後方に設けられた第1軸部材56に、第1アーム部材53が旋回可能に連結されている。図6に示すように、第1アーム部材53の先端部及び中間部の下面には、パッド531,532がそれぞれ設けられており、これらパッド531、532が第1框部31の上面に当接する。また、第1アーム部材53の先端付近には、浴槽3の内側に位置する規制板533が設けられている。この規制板533は、使用状態において、第1アーム部材53が第1框部31上に配置されたときには、第1框部31の内面に接するようになっている。また、第1アーム部材の中間付近には、ハンドル534が設けられており、第1アーム部材53が初期状態にあるときに、このハンドル534を引くと、第1アーム部材53を使用状態に遷移させることができる。
【0035】
第2アーム部材54も長尺状の板材によって形成されているが、第1アーム部材53よりも長く形成されている。そして、第2アーム部材54の後端側の端部は、レール本体51に対して旋回可能に連結されている。より詳細には、レール本体51の後方に設けられた第2軸部材57に、第2アーム部材54が旋回可能に連結されている。第2アーム部材54の先端部及び基端部付近の下面には、第1アーム部材53と同様に、パッド541,542が設けられており、これらパッド541,542が第2框部32の上面に当接する。また、初期状態においては、第2アーム部材54は、第1アーム部材53とレール本体51との間に配置され、下側から見たときには、第1及び第2アーム部材53,54の一部が重なるように配置される。
【0036】
次に、連結部材55について説明する。連結部材55は、長尺状の棒状の部材であり、両端に第1端部551及び第2端部552を有している。図5における使用状態では、連結部材55の第1端部551は、第1アーム部材53において第1軸部材56よりもやや前方に、回転可能に連結されている。一方、連結部材55の第2端部552は、第2アーム部材54において第2軸部材57よりもやや後方に、回転可能に連結されている。
【0037】
<3-2-2.アーム機構の動作>
次に、上記のように、構成されたアーム機構の動作について説明する。初期状態から第1アーム部材53のハンドル534を引っ張ると、第1アーム部材53が、第1軸部材56を中心に旋回する。これにより、連結部材55の第1端部551が第1框部31側に引っ張られ、これに伴って連結部材55の第2端部552は、第2軸部材57を挟んで、第2框部32側から第1框部31側に移動する。その結果、第2端部552が第2アーム部材54を引っ張るため、第2アーム部材54は、第2框部32側に旋回する。したがって、第1アーム部材53が旋回するのに伴って第2アーム部材54も旋回し、使用状態では、図7に示すように、第1アーム部材53は第1框部31上に、第2アーム部材7は第2框部32上に配置される。このとき、第1アーム部材53の両パッド531、532は第1框部31上に配置され、第2アーム部材54のパッド541,542も第2框部32上に配置されるため、両アーム部材53,54は、安定的に框上に設置される。
【0038】
なお、連結部材55は、その長さを調整可能となっており、連結部材55の長さを長くすることで、第1アーム部材53または第2アーム部材54の旋回角度を大きくすることができる。これにより、第1框部31及び第2框部32の間の距離が長くても、両アーム部材53,54を各框部31,32に設置することができる。
【0039】
<3-3.旋回機構>
次に、旋回機構6について、図8図10も参照しつつ説明する。図8は旋回機構の斜視図、図9は収容状態にあるレールユニットを後方から見た図、図10は設置状態にあるレールユニットを後方から見た図である。
【0040】
図8に示すように、旋回機構6は、レールユニット5の第1連結具521の左側の面に取り付けられた円筒状の第1軸部材61と、第2連結具522の右側の面に取り付けられた円筒状の第2軸部材62と、を有している。また、第1軸部材61及び第2軸部材62の外周面には、それぞれ径方向に突出する第1突部63及び第2突部64が設けられている。なお、図8は、設置状態にある旋回機構6を示しており、この設置状態では、各突部63,64は、各軸部材61,62の最上部に位置している。
【0041】
さらに、収容ユニット4の第1連結材43には、ブラケット65,66を介して第1規制部材67材及び第2規制部材68が連結されている。第1規制部材67は、円筒状に形成され、ブラケット65から右側に突出するように固定されている。そして、この第1規制部材67には、第1軸部材61が回転可能に挿入されている。第1規制部材67の右側の端部671は、後方から見たときに斜めに延びている(図9及び図10参照)。すなわち、この端部671の上部が最も右側に位置し、下部が最も左側に位置するように斜めに切り欠かれている。そして、第1軸部材61に形成された第1突部63は、第1軸部材61の回転に伴い、第1規制部材67の右側の端部に沿って移動するようになっている。
【0042】
第2規制部材68も、円筒状に形成され、ブラケット66から左側に突出するように固定されている。そして、この第2規制部材68には、第2軸部材62が回転可能に挿入されている。第2規制部材68の左側の端部は、後方から見たときに斜めに延びている。すなわち、この端部の上部が最も右側に位置し、下部が最も左側に位置するように斜めに切り欠かれている。そして、第2軸部材62に形成された第2突部64は、第2軸部材62の回転に伴い、第2規制部材68の左側の端部に沿って移動するようになっている。
【0043】
このように構成された旋回機構6によって、レールユニット5は、次のように動作する。図9に示す収容状態では、第1突部63は、第1規制部材67の右側の端部において、下部に接している。一方、第2突部64は、第2規制部材68の左側の端部において、下部に接している。この状態から、レールユニット5を、両軸部材61,62周りに旋回させると、第1突部63は、第1規制部材67の右側の端部に沿って移動し、第1軸部材61が180度回転する過程において、右側へ移動する。これによって第1軸部材61も右側へ移動する。同様に、第2突部64も、第2規制部材68の左側の端部に沿って移動し、第2軸部材62が180度回転する過程において、右側へ移動する。これによって第2軸部材62も右側へ移動する。
【0044】
このように、第1及び第2軸部材61,62が右側へ移動するため、これらに連結されたレールユニット5も右側へ移動する。これにより、図10に示すように、設置状態に遷移したレール本体51の右端部は、第1框部31よりも右側に突出する。より詳細に説明すると、第1框部31の右端部とレール本体51の右端部との距離Xは、図10の設置状態の方が、図9の収容状態よりも大きくなっている。その後、上述したように、各アーム部材53,54を旋回させ、これらを各框部31,32の上面に設置する。使用状態における各アーム部材53,54の先端のパッド531,541が框上に配置されない場合には、上述したように、連結部材55の長さを調整し、各アーム部材53,54の旋回角度を調整すればよい。
【0045】
<4.入浴介助システムの使用方法>
次に、上記のように構成された入浴介助システムの使用方法について、図11図12も参照しつつ説明する。図11図12図14,及び図15は、入浴介助システムの使用方法を説明する側面図であり、図13は、入浴介助システムの使用方法を説明する平面図である。まず、図11に示す収容状態から、レールユニット5を旋回し、図12に示すように、框上に配置する。次に、図7に示すように、第1アーム部材53のハンドル534を引っ張り、両アーム部材53,54を旋回させて、それぞれ、第1框部31及び第2框部32上に配置する。
【0046】
次に、図13に示すように、台車2を移動させ、移送装置10のレール部材24の端部を、レール本体51の端部に隣接させ、ロック機構(図示省略)により、両者を連結する。続いて、図14に示すように、レール部材24のロックを解除して、筐体121をスライドさせ、レール本体51へと移動させる。こうして、筐体121は、椅子11とともに浴槽3へと移動する。このとき、フットサポート118が、第1框部31と干渉しないように、角度を調整することができる。また、スライド部118aをスライドし、足置き部118bを前方に移動させることができる。これにより、被介助者は足を伸ばして足置き部118bに置くことができる。そして、椅子11が浴槽3の内部空間の上方に位置したとき、筐体121の移動を停止し、ロック機構により筐体121をレール本体51上に固定する。
【0047】
続いて、図15に示すように、筐体121内の電動モータを駆動し、椅子11を下降させる。これにより、椅子11に座った被介助者が浴槽3の湯に浸かり、入浴をすることができる。このとき、台車2は、浴槽3から離しておき、入浴介助をしやすいようにする。その後、入浴が終了したときには、電動モータを駆動し、椅子11を上昇させる。そして、椅子11が框よりも上方に位置したときに電動モータを停止する。これに続いて、台車2を移動して、レール部材24をレール本体51と隣接させた上で、筐体121をスライドさせ、レール部材24へ移動させる。こうして、筐体121がレール部材24上に配置されると、ロック機構により筐体121をレール部材24上に固定する。その後、レール部材24とレール本体51との固定を解除すれば、移送装置10を浴槽3から移動させることができる。
【0048】
<5.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。すなわち、旋回機構6によって、レールユニット5が収容状態から設置状態に旋回するときに、レールユニット5を右側へ移動させることができ、レール本体51の右端部を第1框部31から十分に突出させることができる。これにより、例えば、第1框部31の幅が広い場合でも、レール本体51を第1框部31から外側へ突出させることができるため、移送装置10が浴槽3に干渉することなく、レール部材24をレール本体51に連結させることができる。特に、レール本体51を長くすることなく、レール部材24との連結が可能となるため、収容ユニット4を大型化することなく、レールユニット5を収容することができる。
【0049】
<6.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下、変形例について説明する。但し、以下の変形例は適宜組合せ可能である。
【0050】
<6-1>
旋回機構6は、種々の構成を採ることができる。すなわち、レールユニット5を収容ユニット4から旋回させたときに、右側、つまり第1框部31側に移動するように構成されていればよい。例えば、突部63,64の位置は特には限定されず、規制部材67,68の端部に沿い、各軸部材61,62を軸方向に移動できるのであれば、各軸部材61,62の外周面のいずれの位置にあってもよい。また、突部63,64を各軸部材61,62に複数設けることもできる。
【0051】
上記実施形態では、各軸部材61,62の外周面から突部63,64が突出するように形成されているが、例えば、図16に示すように、第2軸部材62の外周面に、第2規制部材68側へ軸方向に突出する突部711が形成された円筒状のカバー部材71を取り付けることもできる。そして、この突部711が規制部材68に沿って移動するように構成すればよい。この点は、第1軸部材61側でも同様にすることができる。
【0052】
あるいは、図17に示すように、円筒状の第2規制部材72に斜めに延びる溝721を形成し、この溝721に沿って突部64が移動するように構成してもよい。例えば、この第2規制部材72では、この溝721は、らせん状に延び、周方向に下側から上側に延びるにしたがって、左側から右側へ延びるように形成される。この点は、第1軸部材61側でも同様にすることができる。
【0053】
<6-2>
アーム機構の構成は特には限定されず、例えば、2つのアーム部材53,54を個々に旋回させて、框部31,32に設置するように構成されていてもよい。すなわち、各アーム部材53,54が、框部に設置されればよい。
【0054】
<6-3>
移送装置10の構成も特には限定されず、椅子ユニット1をレール本体51に沿って移動できるようなレール部材と、椅子ユニット1を上下方向に移動可能にする機構を有していればよく、その他の構成は特には限定されない。
【0055】
<6-4>
収容ユニット4の構成も特には限定されず、少なくともレールユニット5を収容できればよい。
【0056】
<6-5>
また、本発明に係る浴室用レール装置は、少なくとも上述した収容ユニット4、レールユニット5、及び連結機構6が設けられていればよく、レールユニット5は、収容ユニット4により支持されるため、必ずしもアーム機構は設けられていなくてもよい。あるいは、レール本体51を框に固定するための何らかの手段を設けてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 椅子ユニット
11 椅子
12 昇降機構部
2 台車(移送ユニット)
24 レール部材
3 浴槽
31 第1框部
32 第2框部
4 収容ユニット
5 レールユニット
51 レール本体
53 第1アーム部材
54 第2アーム部材
55 連結部材
6 旋回機構
61 第1軸部材
62 第2軸部材
63 第1突部
64 第1突部
67 第1規制部材
68 第1規制部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17