(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】入浴介助用レールユニット装置
(51)【国際特許分類】
A61H 33/00 20060101AFI20241126BHJP
A61G 5/10 20060101ALI20241126BHJP
A61G 5/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A61H33/00 310M
A61H33/00 310K
A61G5/10
A61G5/00 701
(21)【出願番号】P 2021105109
(22)【出願日】2021-06-24
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】北村 大樹
(72)【発明者】
【氏名】杉 茂人
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-124400(JP,A)
【文献】特開2005-342372(JP,A)
【文献】特開2021-058500(JP,A)
【文献】特開平10-113373(JP,A)
【文献】特表2018-501063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00
A61G 5/10
A61G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入浴介助用の椅子ユニットを案内可能に支持するレールユニット装置であって、
架台と、
前記架台に搭載されたレールと、
前記レールを、前記架台に対して、前記架台に収容された収容位置と、浴槽上に展開された展開位置との間で移動可能に連結する連結機構と、
前記浴槽が前記椅子ユニットのチルトに対応するサイズか否かを判別する判別機構と、
を備え、前記判別機構が、前記レールの展開動作に伴う前記連結機構の動きと連動する連動部と、前記連動部に設けられた係合部とを含み、前記浴槽の所定箇所に設けられた展開許容手段又は展開阻止手段と前記係合部との係合の成否に応じて、前記連動ひいては前記展開動作が許容又は阻止されることを特徴とする入浴介助用レールユニット装置。
【請求項2】
前記展開阻止手段が前記係合部と係合されることによって前記連動ひいては前記展開動作が阻止されるか、又は前記展開許容手段が前記展開阻止手段と前記係合部との係合を阻むことによって前記連動ひいては前記展開動作が許容されることを特徴とする請求項1に記載の入浴介助用レールユニット装置。
【請求項3】
前記展開阻止手段が、浴槽の框の下縁に沿う溝状の框グリップであり、
前記係合部が、前記框グリップに嵌って係合可能な係合ローラを含み、かつ前記框グリップに前記展開許容手段として展開許容板が設けられている場合は、前記係合ローラが前記展開許容板上を転動して前記框に乗り上げ可能であることを特徴とする請求項2に記載の入浴介助用レールユニット装置。
【請求項4】
前記連結機構が、前記レールと前記架台とに架け渡され、前記架台に対して前記レールの延び方向と平行な第1軸線のまわりに回転可能に連結された連結アームを含み、
前記連動部が、前記連結アームに対して前記第1軸線と平行な第2軸線のまわりに回転可能に連結された連動アームを含み、前記連動アームに前記係合部が設けられていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の入浴介助用レールユニット装置。
【請求項5】
前記レールが前記収容位置のとき、前記連動アームを回転不能に拘束し、前記レールが前記収容位置から前記展開位置へ向けて展開されるとき、前記連動アームの回転を許容する規制機構を備えたことを特徴とする請求項4に記載の入浴介助用レールユニット装置。
【請求項6】
前記連動アームには、前記レールが前記収容位置から前記展開位置へ向けて展開されるとき、前記係合部が前記所定箇所へ向かう方向への回転モーメントがかかることを特徴とする請求項4又は5に記載の入浴介助用レールユニット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴介助用のシャワーキャリーと組み合わせて使用されるレールユニット装置に関し、特に、チルト機構付きの椅子ユニットを搭載したシャワーキャリーに適した入浴介助用レールユニット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のレールユニット装置は、架台とレールを含む(特許文献1、2等参照)。架台にレールが収容、展開可能に搭載されている。使用時には、レールを浴槽上に展開させる。当該レールユニット装置と組み合わせて使用される入浴介助用シャワーキャリーの椅子ユニットには、要介助者を座らせる。その状態で、該椅子ユニットを入浴介助用シャワーキャリーの台車からレールユニット装置のレールに移行させる。続いて、椅子ユニットのリフト機能によって椅子ユニットを下降させ、要介助者を椅子ユニットごと浴槽に入れて入浴させる。その後、前記とは逆の手順によって、要介助者を浴槽から出して入浴介助用シャワーキャリーの台車へ移す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-058054号公報
【文献】特開2019-051113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
入浴介助用シャワーキャリーの椅子ユニットとして、チルト(傾倒)機構を有しているものもある。チルトによって、椅子ユニットの前後方向の寸法が延びる。使用時における椅子ユニットの前後方向は、浴槽の長手方向へ向けられる。一方、浴槽の長手寸法が、チルトされた椅子ユニットの寸法に対応していない場合がある。そうすると、椅子ユニットの足置きが浴槽に引っ掛かったり、椅子ユニットに座っている要介助者に思わぬケガをさせたりするおそれがある。このため、利用しようとする浴槽がチルト対応サイズであることを把握したうえで、椅子ユニットをチルトさせる必要がある。しかし、浴槽がチルト対応サイズであるか否かを見た目で判別するのは容易でない。判別を怠ることも有り得る。椅子ユニットの足置きにセンサを設置することも考えられるが、そうすると、センサが足置きと一緒に入槽するために防水が必要になるうえに、センサ信号線の引き回しも問題になる。
本発明は、かかる事情に鑑み、チルト機能付きの椅子ユニットを有する入浴介助用シャワーキャリー及び入浴介助用レールユニット装置を用いて入浴介助を行う際の安全性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者は、前記課題を解決するため、鋭意研究開発を行った結果、浴槽がチルト対応サイズであるか否かの判別機能をレールユニット装置に持たせ、チルト対応サイズで無い場合はレールユニット装置の作動を制限することを着想した。
本発明は、かかる着想に基づきなされたものであり、入浴介助用の椅子ユニットを案内可能に支持するレールユニット装置であって、
架台と、
前記架台に搭載されたレールと、
前記レールを、前記架台に対して、前記架台に収容された収容位置と、浴槽上に展開された展開位置との間で移動可能に連結する連結機構と、
前記浴槽が前記椅子ユニットのチルトに対応するサイズか否かを判別する判別機構と、
を備え、前記判別機構が、前記レールの展開動作に伴う前記連結機構の動きと連動する連動部と、前記連動部に設けられた係合部とを含み、前記浴槽の所定箇所に設けられた展開許容手段又は展開阻止手段と前記係合部との係合の成否に応じて、前記連動ひいては前記展開動作が許容又は阻止されることを特徴とする。
【0006】
予め、チルト対応サイズの浴槽であるか否かに応じて、前記浴槽の所定位置に展開許容手段又は展開阻止手段を設けておく。具体的には、チルト対応サイズの浴槽の場合、展開許容手段を設ける。該展開許容手段と係合部との係合によって、レールの展開が許容され、チルト機能付きのシャワーキャリーが使用可能になる。チルト非対応サイズの浴槽の場合、展開阻止手段を設ける。浴槽に元からある構造(後記框グリップなど)を展開阻止手段として用いてもよい。該展開阻止手段と係合部との係合によって、レールの展開が阻止され、チルト機能付きのシャワーキャリーを使用できなくなる。入浴介助者としては、浴槽がチルト対応サイズであるか否かを予め意識的に判別する必要が無い。この結果、入浴介助の安全性を高めることができる。
【0007】
前記判別機構の機能としては、チルト非対応サイズの浴槽において前記展開阻止手段が前記係合部と係合されることによって前記連動ひいては前記展開動作が阻止されてもよく、チルト対応サイズの浴槽において前記展開許容手段が前記展開阻止手段と前記係合部との係合を阻むことによって前記連動ひいては前記展開動作が許容されてもよい。
展開阻止手段又は展開許容手段としては、浴槽に元から有る構造(後記框グリップなど)を用いてもよく、浴槽に後付けしてもよい。
前述したように、展開阻止手段として、浴槽に元から有る構造(後記框グリップなど)を用い、チルト対応サイズの浴槽には展開許容手段を後付けしてもよい。展開許容手段が、前記浴槽に元から有る構造と係合部との係合を阻止するものであってもよい。
逆に、展開許容手段として、浴槽に元から有る構造を用い、チルト非対応の浴槽には展開阻止手段を後付けしてもよい。
【0008】
前記展開阻止手段が、浴槽の框の下縁に沿う溝状の框グリップであることが好ましい。浴槽に元から有る構造を展開阻止手段として用いることから、専用の展開阻止手段を別途取り付ける必要が無い。言い換えると、展開許容手段が設けられていない浴槽は、チルト機能付きのシャワーキャリーを使用できなくなり、入浴介助の安全性を確保できる。
前記係合部が、前記框グリップに嵌って係合可能な係合ローラを含み、かつ前記框グリップに前記展開許容手段として展開許容板が設けられている場合は、前記係合ローラが前記展開許容板上を転動して前記框に乗り上げ可能であることが好ましい。これによって、チルト対応サイズの浴槽においては、展開許容板からなる展開許容手段が、框グリップからなる展開阻止手段と、係合ローラからなる係合部との係合を阻止することで、レールの展開が許容されて、シャワーキャリーが使用可能になる。
【0009】
前記連結機構が、前記レールと前記架台とに架け渡され、前記架台に対して前記レールの延び方向と平行な第1軸線のまわりに回転可能に連結された連結アームを含み、
前記連動部が、前記連結アームに対して前記第1軸線と平行な第2軸線のまわりに回転可能に連結された連動アームを含み、前記連動アームに前記係合部が設けられていることが好ましい。
レールの展開動作時には連結アームが回転される。これと連動して連動アームが回転移動しようとする。このとき、係合部と展開阻止手段又は展開許容手段との係合の成否に応じて、連動アームの連動ひいては連結アーム回転ひいてはレールの展開動作が阻止又は許容される。
【0010】
前記入浴介助用レールユニット装置が、前記レールが前記収容位置のとき、前記連動アームを回転不能に拘束し、前記レールが前記収容位置から前記展開位置へ向けて展開されるとき、前記連動アームの回転を許容する規制機構を備えていることが好ましい。これによって、レールが収容位置のとき、判別機構ががたつくのを防止できる。レールを展開しようとすると、判別機構が作動するようにできる。
【0011】
前記連動アームには、前記レールが前記収容位置から前記展開位置へ向けて展開されるとき、前記係合部が前記所定箇所へ向かう方向への回転モーメントがかかることが好ましい。これによって、レールを展開しようとすると、判別機構が作動して、係合部が展開許容手段及び展開阻止手段の何れかと確実に係合されるようにできる。
前記連動アームの自重によって前記回転モーメントがかかるようになっていてもよい。例えば、前記レールが前記収容位置から前記展開位置へ向けて展開されるときの前記連動アームの重心が、前記第2軸線の上方かつ前記第2軸線より前記浴槽側に配置されていることが好ましい。前記係合ローラが、前記重心より上方に配置されていることが好ましい。
前記収容位置では、必ずしも、前記連動アームの重心が前記第2軸線より前記浴槽側に配置されていなくても、前記レールが収容位置から展開されるときの連結アーム及び連動アームの動きによって、前記連動アームの重心が前記第2軸線より前記浴槽側に変位されるようになっていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、浴槽がチルト対応サイズであるときはレールユニット装置のレールが展開可能な一方で、チルト対応サイズでないときはレールが展開不能であり、椅子ユニットを浴槽上に移行させることができない。これによって、入浴介助の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る入浴介助システムを配置した浴室の解説平面図である。
【
図3】
図3は、チルト対応サイズの浴槽に設置された前記入浴介助システムの入浴介助用レールユニット装置を、該装置のレールを収容状態にして示す正面図である。
【
図5】
図5は、前記チルト対応サイズの浴槽に設置されたレールユニット装置を、該装置のレールの展開動作開始直後の状態で示す正面図である。
【
図6】
図6は、前記チルト対応サイズの浴槽に設置されたレールユニット装置を、該装置のレールの展開途中の状態で示す正面図である。
【
図7】
図7は、前記チルト対応サイズの浴槽に設置されたレールユニット装置を、該装置のレールを展開状態にして示す正面図である。
【
図8】
図8は、チルト非対応サイズの浴槽に設置された入浴介助用レールユニット装置を、該装置のレールを収容状態にして示す正面図である。
【
図9】
図9は、前記チルト非対応サイズの浴槽に対してレールユニット装置のレールを展開しようとする状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、例えば介助施設においては、要介護者Aの入浴介助のため、入浴介助システムSが設備されている。入浴介助システムSは、入浴介助用シャワーキャリー3と、入浴介助用レールユニット装置10とを備えている。シャワーキャリー3は、台車3aと、第1レール3bと、椅子ユニット3cを備えている。手押し式の台車3aに、水平なレール3bを介して椅子ユニット3cが搭載されている。椅子ユニット3cは、チルト機構3dを有している。チルトによって、椅子ユニット3cが前後に延びる。入浴時における椅子ユニット3cの前後方向は、浴室1の浴槽2の幅方向(長手方向、
図1において左右方向)へ向けられる。
【0015】
浴槽2としては、
図2の実線に示すように、チルト対応サイズの幅広の浴槽2Aである場合と、
図2の二点鎖線にて示すように、チルト対応サイズではない幅小の浴槽2Bである場合とがある。チルト対応サイズの浴槽2Aの幅(長手寸法)は、例えば1400mm以上である。チルト非対応サイズの浴槽2Bの幅(長手寸法)は、一般的な浴槽と同程度の、例えば1200mm程度である。
介助施設に浴槽2が複数設備されていて、その一部がチルト対応サイズの浴槽2Aであり、他の一部がチルト非対応の浴槽2Bであってもよい。
【0016】
図1に示すように、浴槽2の前面部及び両側の側面部には、框グリップ2dが形成されている。
図4及び
図8に示すように、框グリップ2dは、框2cの下縁に沿って延びる溝状になっている。
【0017】
図3及び
図4に示すように、チルト対応サイズの浴槽2Aには、展開許容手段として展開許容板2eが後付けされている。展開許容板2eは、鉛直な平板状に形成されている。該展開許容板2eが、浴槽2Aの側方スペース1sと面する側面部2wの框グリップ2dにおける浴室奥側の所定箇所2pに嵌め込まれている。展開許容板2eの外面は、浴槽2Aの側面部2wの鉛直な外面と略面一になっている。
【0018】
図8に示すように、チルト非対応サイズの浴槽2Bには、展開許容板2e(
図4)等の展開許容手段が設けられていない。浴槽2Bにおいては側面部2wの浴室奥側の所定箇所2pにおいても、框グリップ2dが露出されている。浴槽2Bの所定箇所2pにおける框グリップ2dは、展開阻止手段を構成している。
【0019】
図1及び
図2に示すように、側方スペース1sには、入浴介助用レールユニット装置10が配置される。レールユニット装置10は、シャワーキャリー3と組み合わせて使用され、要介助者の入槽の際に椅子ユニット3cを案内可能に支持する。
【0020】
図3及び
図4に示すように、レールユニット装置10は、架台11と、第2レール20と、連結機構30を備えている。架台11にレール20が搭載されている。レール20の延び方向は、浴槽2の奥行方向(短手方向、
図3において紙面と直交する方向)へ水平に向けられている。
【0021】
図3及び
図4に示すように、レール20と架台11との間に連結機構30が設けられている。連結機構30は、レール20の両端部にそれぞれ設けられた一対の連結アーム31と、連結アーム31ごとの展開軸部32を含む。連結アーム31は、レール20と架台11とに架け渡されている。連結アーム31の形状は、例えば概略三角形の板状に形成されている。該連結アーム31の三角形の底辺をなす端部が、レール20の底面に固定されている。レール20の底面から連結アーム31がレール20の延び方向と直交する方向へ突出されている。連結アーム31の突出端部は、展開軸部32を介して、架台11のブラケット12に回転可能に連結されている。展開軸部32は、レール20の延び方向と平行かつ水平な第1軸線L
1上に配置されている。これによって、
図3~
図7に示すように、レール20が、連結機構30を介して、架台11に対して第1軸線L
1のまわりに収容位置(
図3)と展開位置(
図7)との間で回転可能に連結されている。
【0022】
図3に示すように、収容位置におけるレール20は、下向きに傾けられた状態で、架台11に収容されている。
図7に示すように、展開位置におけるレール20は、浴槽2上に水平に支持されている。レール20の展開動作に伴って、連結アーム31が第1軸線L
1のまわりに回転される。
【0023】
図3及び
図4に示すように、連結機構30には、浴槽2がチルト対応サイズか否かを判別する判別機構40が連繋されている。判別機構40は、連動アーム41(連動部)と、係合ローラ43(係合部)を含む。連動アーム41の中間部が、連結機構30における浴室奥側の連結アーム31の中間部に、連結軸部42を介して回転可能に連結されている。連結軸部42は、第1軸線L
1と平行な第2軸線L
2上に配置されている。
図3~
図7に示すように、連動アーム41は、レール20の展開動作に伴う連結機構30の動きと連動して、連結アーム3と一緒に第1軸線L
1のまわりに回転(公転)されるとともに、連結アーム31に対して第2軸線L
2のまわりに回転(自転)可能である。
【0024】
図3に示すように、連動アーム41の形状は、例えば正面視で概略Y字状になっている。詳しくは、連動アーム41は、幹アーム部44と、その両端の分岐アーム部45,46,47を含む。
図3に示すように、レール20が収容位置のとき、幹アーム部44は、連結軸部42から上方へ延びるように略直立している。幹アーム部44の上端部(先端部)から係合アーム部45及び係止アーム部46が二又状に分岐されている。幹アーム部44の下端部(基端部)の規制アーム部47は、L字状に形成されて、連結軸部42から下方へ延びている。
【0025】
図3に示すように、幹アーム部44の上端部から浴槽2側へ突出する係合アーム部45の先端部に、係合ローラ43が回転(自転)可能に設けられている。レール20が収容位置のとき、係合ローラ43は、第2軸線L
2より上方に配置され、さらには連動アーム41の重心g
41よりも上方に配置され、かつ重心g
41よりも浴槽2側(所定箇所2p側)に配置されている。好ましくは、レール20が収容位置のとき、係合ローラ43は所定箇所2pと近接して対向している。
【0026】
図5に示すように、浴槽がチルト対応の浴槽2Aである場合において、レール20が収容位置から展開位置へ移行する際の係合ローラ43は、所定箇所2pにおける展開許容板2eに当接(係合)して展開許容板2e上を転動可能である。
図9に示すように、浴槽がチルト非対応の浴槽2Bである場合においては、レール20が展開されようとするとき、係合ローラ43は、所定箇所2pにおける框グリップ2dに嵌って係合可能である。
【0027】
図3に示すように、係止アーム部46における浴槽2側の側面には、ゴム又は発泡樹脂からなる緩衝材48が設けられている。
図9に示すように、緩衝材48は、係合ローラ43と框グリップ2dとの係合時に、框2cのコーナー部に当接される。
【0028】
図3に示すように、係合アーム部45には小片状の上側ストッパー53が設けられている。規制アーム部47の浴槽2を向く側面には、下側ストッパー54が設けられている。下側ストッパー54は、ゴム、発泡樹脂等の緩衝材によって構成されている。
【0029】
図3に示すように、レール20が収容位置のとき、上側ストッパー53が展開軸部32の上面に突き当たっている。この当たりによって、連動アーム41が、正方向(係止ローラ43が所定箇所2pへ向かう向き、
図3において反時計まわり)に回転されるのが阻止されている。かつ、下側ストッパー54が架台11の梁材13の浴槽とは反対側の面に突き当たっている。この当たりによって、連動アーム41が、逆方向(係止ローラ43が所定箇所2pから遠ざかる向き、
図3において時計まわり)に回転されるのが阻止されている。したがって、レール20が収容位置のとき、連動アーム41が、規制機構50によって正逆両側へ回転されないように拘束されている。これによって、幹アーム部44が略直立姿勢に保持され、係合ローラ43が所定箇所2pと近接して対向する位置に保持されている。
【0030】
展開軸部32と梁材13とによって、レール20が収容位置における連動アーム41の動きを規制する規制機構50が構成されている。
展開軸部32は、連動アーム41の正方向回転を規制する正方向規制手段51として提供されている。
梁材13は、連動アーム41の逆方向回転を規制する逆方向規制手段52として提供されている。
【0031】
入浴介助システムSは、要介助者Aの入浴介助に際して、次のように使用される。
図1に示すように、入浴介助用シャワーキャリー3の椅子ユニット3cに要介助者Aを座らせ、要介護者Aを浴室1まで移送する。
浴室1においては、入浴介助用レールユニット装置10のレール20の展開操作を行なう。これに伴って、連結アーム31が回転され、それと連動して連動アーム41が回転される。
【0032】
図5に示すように、レール20を収容位置から展開方向へ少しだけ動かした時、第1軸線L
1を中心とする連結アーム31の回転移動によって、連結軸部42が浴槽2とは逆側(
図5において右)へ変位される。これと共に、連動アーム41の下端ストッパー54が、逆方向規制手段52から離れて浴槽2とは逆側(
図5において右)へ変位される。したがって、規制機構50は、レール20が展開されるときの連動アーム41の回転を許容する。上側ストッパー53と展開軸部32との当たりは維持される。このため、幹アーム部44が、上端部へ向かって浴槽2側へ傾く。この傾斜によって、連動アーム41の重心g
41が、第2軸線L
2よりも確実に浴槽2側かつ第2軸線L
2の上方に配置される。これによって、連動アーム41には、係合ローラ43が浴槽2側すなわち所定箇所2pへ向かうように、自重による回転モーメントがかかる。これによって、係合ローラ43が、所定箇所2pの展開許容手段又は展開阻止手段と確実に係合されるようにできる。
【0033】
詳しくは、
図5に示すように、浴槽2Aがチルト対応サイズである場合、レール20を少しだけ展開操作したとき、連動アーム41のわずかな傾斜によって、係合ローラ43が展開許容板2eに突き当たる。言い換えると、展開許容板2eが、所定箇所2pの框グリップ2d(展開阻止手段)と係合ローラ43との係合を阻む。これによって、連結機構30と連動アーム41との連動が許容され、ひいてはレール20の展開動作が許容される。
【0034】
以後、レール20を展開するにしたがって、連動アーム41が上昇されるとともに、係合ローラ43が、展開許容板2e上を上方へ向けて転動する。このとき、上側ストッパー53が展開軸部32から上方へ離れる。更に、
図6~
図7に示すように、係合ローラ43は、展開許容板2eの上側の框2cの側面上を転動し、框2cのコーナー部から框2cの上面へ回り込む。このようにして、
図7に示すように、レール20を浴槽2A上に展開できる。
【0035】
図1に示すように、展開したレール20にシャワーキャリー3のレール3bを一直線に連結する。次いで、
図2に示すように、椅子ユニット3cをレール3bからレール20上へ移行させ、ひいては浴槽2A上へ移行させる。続いて、椅子ユニット3cのリフト機構3gによって椅子ユニット3cを下降させる。このようにして、要介助者Aを椅子ユニット3cごと浴槽2に入れて入浴させることができる。
図2の実線に示すように、必要に応じて、チルト機構3dによって、椅子ユニット3cをチルトさせる。チルト対応サイズの浴槽2Aであるから、椅子ユニット3cをチルトさせても、足置き3fが浴槽2Aと干渉することがなく、要介助者Aに思わぬケガを負わせることがない。
その後、逆の手順によって、要介助者を浴槽2から出して入浴介助用シャワーキャリー3の台車3aへ移す。
【0036】
一方、浴槽2Bがチルト非対応サイズである場合(
図8)、レール20を収容位置から展開位置へ向けて展開しようとすると、
図9に示すように、途中で、係合ローラ43が框グリップ2dに嵌って係合される。かつ、緩衝材48が框2cのコーナー部に当接される。これによって、連結機構30と連動アーム41との連動が阻止される。ひいては、レール20の展開動作が阻止されることで、レール20をそれ以上展開させることができなくなる。この結果、物理的に、椅子ユニット3cを浴槽2上に移行させることができなくなる。したがって、介助者は、浴槽2Bがチルト非対応サイズであるために椅子ユニット3cのチルト機構3dを使えないことを確実に認識できる。
【0037】
要するに、レールユニット装置10には、浴槽2がチルト対応サイズであるか否かの判別機能が付与されている。具体的には、判別機構40の係合ローラ43と展開許容手段2e又は展開阻止手段2dとの係合の成否に応じて、連結機構30と連動アーム41との連動ひいてはレール20の展開動作が許容又は阻止される。これによって、入浴介助の安全性を高めることができる。介助者としては、利用しようとする浴槽2がチルト対応サイズであるか否かを予め判別する必要がなく、判別を怠ったことで安全性が損なわれる危険性を解消できる。
展開許容手段として、後付けの展開許容板2eを用いることで、市場に供給済の浴槽にも対応できる。
展開阻止手段として、浴槽2に元から有る構造(框グリップ2d)を用いることで、専用の展開阻止手段を用意しなくて済む。また、展開許容板2eを取り付けない限り、シャワーキャリー3を使用不能にすることで、安全性を確実に担保できる。
判別機構40及び展開許容板2eを浴室1の奥側部に配置することによって、シャワーキャリー3を必要としない浴室利用者の邪魔になるのを防止できる。また、浴室の意匠性が損なわれるのを回避できる。
【0038】
本発明は、前記実施形態に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態を採用できる。
例えば、展開阻止手段をチルト非対応サイズの浴槽に後付けしてもよい。浴槽に元から有る構造を展開許容手段として用いてもよい。
連結機構は平行リンクであってもよい。レール20が、架台11に対して平行移動するようになっていてもよい。
レール20が収容位置のときでも、連動アーム41の重心g41が、第2軸線L2より浴槽2側に配置されていてもよい。
バネ、ゴム等の付勢手段によって、係合ローラ43が所定箇所2p側へ向かうように、連動アーム41に回転モーメントを付与してもよい。
チルト非対応サイズの浴槽2Bの場合、係合ローラ43と框グリップ2dとの係合を手作業で解除して、レール20を展開させ、椅子ユニット3cをチルトさせないように気を付けながら、シャワーキャリー3を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、例えば、介助施設の入浴介助設備に適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
A 要介助者
S 入浴介助システム
L1 第1軸線
L2 第2軸線
1 浴室
1s スペース
2 浴槽
2A チルト対応サイズの浴槽
2B チルト非対応サイズの浴槽
2c 框
2d 框グリップ(展開阻止手段)
2e 展開許容板(展開許容手段)
2p 所定箇所
2w 側面部
3 入浴介助用シャワーキャリー
3a 台車
3b レール
3c 椅子ユニット
3d チルト機構
3f 足置き
3g リフト機構
10 入浴介助用レールユニット装置
11 架台
12 ブラケット
13 梁材
20 レール
30 連結機構
31 連結アーム
32 展開軸部
40 判別機構
41 連動アーム(連動部)
42 連結軸部
43 係合ローラ(係合部)
44 幹アーム部
45 係合アーム部
46 係止アーム部
47 規制アーム部
48 緩衝材
50 規制機構
51 正方向規制手段
52 逆方向規制手段
53 上側ストッパー
54 下側ストッパー