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特許7593713ヘモグロビン類測定用試薬及びヘモグロビン類の測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ヘモグロビン類測定用試薬及びヘモグロビン類の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/06 20060101AFI20241126BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20241126BHJP
   G01N 33/72 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
G01N30/06 C
G01N30/88 Q
G01N33/72 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023137862
(22)【出願日】2023-08-28
(62)【分割の表示】P 2019224454の分割
【原出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2023153414
(43)【公開日】2023-10-17
【審査請求日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2018170562
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018170563
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 和之
(72)【発明者】
【氏名】太平 博暁
(72)【発明者】
【氏名】井上 智雅
(72)【発明者】
【氏名】竹本 凌
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/053973(WO,A1)
【文献】特開平7-72132(JP,A)
【文献】特開平6-229994(JP,A)
【文献】特開2018-72045(JP,A)
【文献】特開平11-108932(JP,A)
【文献】特開2012-251789(JP,A)
【文献】特開2004-69640(JP,A)
【文献】特表2003-509693(JP,A)
【文献】国際公開第2006/013921(WO,A1)
【文献】国際公開第02/21142(WO,A1)
【文献】特開2003-344372(JP,A)
【文献】特開2012-27014(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008447(WO,A1)
【文献】特開平1-277755(JP,A)
【文献】特開2007-163182(JP,A)
【文献】特開2014-25918(JP,A)
【文献】国際公開第2009/116268(WO,A1)
【文献】特開2013-36959(JP,A)
【文献】特開2014-235076(JP,A)
【文献】特開2004-77457(JP,A)
【文献】国際公開第2012/153773(WO,A1)
【文献】特表平9-511575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/06,30/88,
G01N 33/48,33/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬であって、
性界面活性剤を含み
記両性界面活性剤が、下記成分B1、下記成分B2又は下記成分B3である、ヘモグロビン類測定用試薬
分B1:3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホネート
成分B2:3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシプロパンスルホネート
成分B3:ラウリルジメチルアミンオキサイド
【請求項2】
記両性界面活性剤の含有量が、0.01重量%以上1.0重量%以下である、請求項に記載のヘモグロビン類測定用試薬。
【請求項3】
赤血球含有検体と、請求項1又は2に記載のヘモグロビン類測定用試薬とを混合して混合液を得る工程と、
前記混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する工程とを備える、ヘモグロビン類の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤を含むヘモグロビン類測定用試薬に関する。また、本発明は、上記ヘモグロビン類測定用試薬を用いたヘモグロビン類の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、糖尿病及び異常ヘモグロビン病等の診断のために、ヘモグロビン類の濃度が測定されている。例えば、ヘモグロビンA1a、ヘモグロビンA1b、ヘモグロビンF、ヘモグロビンA1c、ヘモグロビンA0及びヘモグロビンA2等のヘモグロビン、アセチル化ヘモグロビン及びカルバミル化ヘモグロビン等の修飾ヘモグロビン、並びにヘモグロビンS及びヘモグロビンC等の異常ヘモグロビン等のヘモグロビン類の濃度が測定されている。これらのヘモグロビン類の中でも、特に、ヘモグロビンA1c値が測定されている。ヘモグロビン類の濃度を測定する方法としては、主に液体クロマトグラフィー法が挙げられる。
【0003】
液体クロマトグラフィー法では、血液等の検体に溶血試薬を添加し、溶血後の試料を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定し、得られたクロマトグラムのピークを演算処理することによりヘモグロビンA1c値等のヘモグロビン類の濃度を求める。従来、溶血試薬として、オキシエチレン基の平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(例えば商品名「トリトンX-100」)を含む組成物が用いられている。
【0004】
下記の特許文献1には、ヒトの血液のサンプル中のヘモグロビンA1cを他のグリコシル化及び非グリコシル化ヘモグロビン並びにヘモグロビンA1cの前駆体のシッフ塩基から分離するヘモグロビンA1cの分離方法が開示されている。また、特許文献1の実施例では、0.33重量%のトリトンX-100を含む溶血試薬が用いられている。
【0005】
下記の特許文献2には、カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬が開示されている。上記溶血試薬は、カオトロピックイオンを含有する。また、特許文献2の実施例では、0.1重量%のトリトンX-100を含む溶血試薬が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭58-191968号公報
【文献】特開2001-021555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に記載のようなオキシエチレン基の平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルを含む溶血試薬(ヘモグロビン類測定用試薬)は、溶血性能に優れる。そのため、全血等の検体を該溶血試薬で処理して、陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定すると、ヘモグロビン類のピークが良好に得られる。また、得られる全てのピークにおいてショルダーピーク及びピーク割れ等が生じにくい。そのため、高い精度でヘモグロビン類を測定することができる。
【0008】
また、オキシエチレン基の平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルを含む溶血試薬は、陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定したときに、キャリーオーバーが少ない。そのため、多数の検体を連続測定した場合でも、高い精度でヘモグロビン類を測定することができる。
【0009】
一方、欧州において、REACH規制(Registration,Evaluation,Authorisation and Restriction of Chemicals)が2007年に発効し、特定の化学品の使用が制限されることとなった。また、2017年には、オキシエチレン基の平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルを0.1重量%以上含む製品がREACH規制の対象とされた。また、欧州以外の国でもオキシエチレン基の平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルの使用量を削減することは、環境負荷の軽減と人体の安全性の向上に寄与する。
【0010】
本発明の目的は、良好に溶血させることができ、かつ高い精度でヘモグロビン類を測定することができるヘモグロビン類測定用試薬を提供することである。より具体的には、本発明の目的は、オキシエチレン基の平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルを含まなくても、該成分が配合されたヘモグロビン類測定用試薬と同等のレベルで溶血させることができ、かつ同等の精度でヘモグロビン類を測定することができるヘモグロビン類測定用試薬を提供することである。
【0011】
また、本発明の目的は、上記ヘモグロビン類測定用試薬を用いたヘモグロビン類の測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面によれば、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬であって、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤が、下記成分A1、下記成分A2、下記成分A3、下記成分A4、下記成分A5、下記成分A6、下記成分A7、下記成分A8又は下記成分A9であり、前記両性界面活性剤が、下記成分B1、下記成分B2又は下記成分B3である、ヘモグロビン類測定用試薬が提供される。
【0013】
成分A1:オキシエチレン基の平均付加モル数が8以上20以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル
【0014】
成分A2:オキシエチレン基の平均付加モル数が40以上60以下であるポリオキシエチレンステアリルエーテル
【0015】
成分A3:オキシエチレン基の平均付加モル数が9以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテル
【0016】
成分A4:オキシエチレン基の平均付加モル数が6以上10以下であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下であるポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテル
【0017】
成分A5:オキシエチレン基の平均付加モル数が15であるポリオキシエチレントリデシルエーテル
【0018】
成分A6:HLB値が11以上15以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル
【0019】
成分A7:n-ノナノイル-N-メチル-D-グルカミン
【0020】
成分A8:n-オクチル-β-D-グルコピラノシド
【0021】
成分A9:サポニン
【0022】
成分B1:3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホネート
【0023】
成分B2:3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシプロパンスルホネート
【0024】
成分B3:ラウリルジメチルアミンオキサイド
【0025】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬のある特定の局面では、前記非イオン性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤が、前記成分A1、前記成分A2、前記成分A3、前記成分A4、前記成分A5又は前記成分A6を含み、前記成分A1が、オキシエチレン基の平均付加モル数が9、12若しくは19であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、又はオキシエチレン基の平均付加モル数が13若しくは20であるポリオキシエチレンセチルエーテルであり、前記成分A2が、オキシエチレン基の平均付加モル数が50であるポリオキシエチレンステアリルエーテルであり、前記成分A3が、オキシエチレン基の平均付加モル数が9又は13であるポリオキシエチレンオレイルエーテルであり、前記成分A4が、オキシエチレン基の平均付加モル数が7又は9であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下のポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテルであり、前記成分A6が、HLB値が12.5、12.7又は14.0であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルである。
【0026】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬のある特定の局面では、前記非イオン性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤が、前記成分A1又は前記成分A3を含み、前記成分A1が、オキシエチレン基の平均付加モル数が10以上15以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルであり、前記成分A3が、オキシエチレン基の平均付加モル数が10以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテルである。
【0027】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬のある特定の局面では、前記成分A1が、オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、又はオキシエチレン基の平均付加モル数が13であるポリオキシエチレンセチルエーテルであり、前記成分A3が、オキシエチレン基の平均付加モル数が13であるポリオキシエチレンオレイルエーテルである。
【0028】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬のある特定の局面では、前記非イオン性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤の含有量が、0.01重量%以上1.0重量%以下である。
【0029】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬のある特定の局面では、前記両性界面活性剤を含み、前記両性界面活性剤の含有量が、0.01重量%以上1.0重量%以下である。
【0030】
本発明の広い局面によれば、赤血球含有検体と、上述したヘモグロビン類測定用試薬とを混合して混合液を得る工程と、前記混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する工程とを備える、ヘモグロビン類の測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬は、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられる。本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬は、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含む。本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、上記非イオン性界面活性剤が、以下の成分A1~A9のいずれかの成分であるか、上記両性界面活性剤が、以下の成分B1~B3のいずれかの成分である。成分A1:オキシエチレン基の平均付加モル数が8以上20以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル。成分A2:オキシエチレン基の平均付加モル数が40以上60以下であるポリオキシエチレンステアリルエーテル。成分A3:オキシエチレン基の平均付加モル数が9以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテル。成分A4:オキシエチレン基の平均付加モル数が6以上10以下であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下であるポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテル。成分A5:オキシエチレン基の平均付加モル数が15であるポリオキシエチレントリデシルエーテル。成分A6:HLB値が11以上15以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル。成分A7:n-ノナノイル-N-メチル-D-グルカミン。成分A8:n-オクチル-β-D-グルコピラノシド。成分A9:サポニン。成分B1:3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホネート。成分B2:3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシプロパンスルホネート。成分B3:ラウリルジメチルアミンオキサイド。本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、上記の構成が備えられているので、良好に溶血させることができ、かつ高い精度でヘモグロビン類を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るヘモグロビン類測定用試薬を用いて陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する際に得られるクロマトグラムの例である。
図2図2は、従来のヘモグロビン類測定用試薬を用いて陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する際に得られるクロマトグラムの例である。
図3図3(a)及び(b)は、ヘモグロビンA0ピークの形状を評価したクロマトグラムの例である。
図4図4(a)及び(b)は、ファーストフラクションのピーク形状を評価したクロマトグラムの例である。
図5図5(a)~(c)は、ヘモグロビンA0ピーク高さを評価したクロマトグラムの例である。
図6図6(a)及び(b)は、ヘモグロビン類測定用試薬と全血との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値及びヘモグロビンA1c値の変化量との関係を示す図である。
図7図7(a)及び(b)は、ヘモグロビン類測定用試薬と測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値及びヘモグロビンA1c値の変化量との関係を示す図である。
図8図8(a)及び(b)は、ヘモグロビン類測定用試薬と測定管理用ヘモグロビンA1c物質(高濃度)(IRC-H)との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値及びヘモグロビンA1c値の変化量との関係を示す図である。
図9図9(a)及び(b)は、ヘモグロビン類測定用試薬と測定管理用ヘモグロビンA1c物質(高濃度)(IRC-H)との混合液におけるカラム耐久性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0034】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬は、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられる。本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬は、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含む。
【0035】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、上記非イオン性界面活性剤が、オキシエチレン基の平均付加モル数が8以上20以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が40以上60以下であるポリオキシエチレンステアリルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が9以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が6以上10以下であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下であるポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が15であるポリオキシエチレントリデシルエーテル、HLB値が11以上15以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、n-ノナノイル-N-メチル-D-グルカミン、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、又はサポニンである。
【0036】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、上記両性界面活性剤が、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホネート、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシプロパンスルホネート、又はラウリルジメチルアミンオキサイドである。
【0037】
本明細書において、「オキシエチレン基の平均付加モル数が8以上20以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル」を「成分A1」と記載することがある。
【0038】
成分A1のうち、「オキシエチレン基の平均付加モル数が10以上15以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル」を、本明細書において、「成分A1’」と記載することがある。
【0039】
本明細書において、「オキシエチレン基の平均付加モル数が40以上60以下であるポリオキシエチレンステアリルエーテル」を「成分A2」と記載することがある。
【0040】
本明細書において、「オキシエチレン基の平均付加モル数が9以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテル」を「成分A3」と記載することがある。
【0041】
成分A3のうち、「オキシエチレン基の平均付加モル数が10以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテル」を、本明細書において、「成分A3’」と記載することがある。
【0042】
本明細書において、「オキシエチレン基の平均付加モル数が6以上10以下であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下であるポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテル」を「成分A4」と記載することがある。
【0043】
本明細書において、「オキシエチレン基の平均付加モル数が15であるポリオキシエチレントリデシルエーテル」を「成分A5」と記載することがある。
【0044】
本明細書において、「HLB値が11以上15以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル」を「成分A6」と記載することがある。
【0045】
本明細書において、「n-ノナノイル-N-メチル-D-グルカミン」を「成分A7」と記載することがある。
【0046】
本明細書において、「n-オクチル-β-D-グルコピラノシド」を「成分A8」と記載することがある。
【0047】
本明細書において、「サポニン」を「成分A9」と記載することがある。
【0048】
本明細書において、「3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホネート」を「成分B1」と記載することがある。
【0049】
本明細書において、「3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシプロパンスルホネート」を「成分B2」と記載することがある。
【0050】
本明細書において、「ラウリルジメチルアミンオキサイド」を「成分B3」と記載することがある。
【0051】
本明細書において、「オキシエチレン基の平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル」を「成分X」と記載することがある。
【0052】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬は、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含み、上記非イオン性界面活性剤が、成分A1、成分A2、成分A3、成分A4、成分A5、成分A6、成分A7、成分A8又は成分A9であるか、上記両性界面活性剤が、成分B1、成分B2又は成分B3である。
【0053】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、上記の構成が備えられているので、良好に溶血させることができ、かつ高い精度でヘモグロビン類を測定することができる。
【0054】
成分Xを含む従来のヘモグロビン類測定用試薬では、良好に溶血させることができ、かつ高い精度でヘモグロビン類を測定することができる。一方、成分Xを含まないヘモグロビン類測定用試薬では、良好に溶血させ、かつ高い精度でヘモグロビン類を測定することは困難である。
【0055】
これに対して、本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、上記の構成が備えられているので、成分Xを含まない場合にも、成分Xが配合されたヘモグロビン類測定用試薬と同等のレベルで溶血させることができ、かつ同等の精度でヘモグロビン類を測定することができる。
【0056】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、良好に溶血させることができるので、陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定したときに、ヘモグロビン類のピークを良好に得ることができる。また、得られる全てのピークにおいてショルダーピーク及びピーク割れ等が生じにくい。そのため、高い精度でヘモグロビン類を測定することができる。また、本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、キャリーオーバーを少なくすることができる。そのため、多数の検体を連続測定した場合でも、高い精度でヘモグロビン類を測定することができる。
【0057】
また、検査センターでは、溶血試薬(ヘモグロビン類測定用試薬)と、被検査物質とを混合したあと、混合液が陽イオン交換クロマトグラフィーで測定されるまでに、一定期間(例えば数日程度)保存されることがある。本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、該試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性を高めることができる。なお、上記被検査物質には、血液等の赤血球含有検体(例えば、被検者の血液)だけではなく、赤血球を含まないヘモグロビン類含有検体(例えば、ヘモグロビン類標準物質及び測定管理用ヘモグロビン類物質等)も含まれる。本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、上記混合液が一定期間保存されても、保存前後でヘモグロビン類のピーク形状が変化しにくく、測定値が変動しにくい。
【0058】
特に、本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬が、成分A1’又は成分A3’を含む場合には、ヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性をより一層高めることができ、また、ヘモグロビン類測定用試薬の保存安定性も高めることができる。
【0059】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬は、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられる。上記ヘモグロビン類測定用試薬は、陽イオン交換高速液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられることが好ましい。
【0060】
上記ヘモグロビン類としては、ヘモグロビンA1a、ヘモグロビンA1b、ヘモグロビンF、ヘモグロビンA1c、ヘモグロビンA0及びヘモグロビンA2等のヘモグロビン、アセチル化ヘモグロビン及びカルバミル化ヘモグロビン等の修飾ヘモグロビン、並びにヘモグロビンS及びヘモグロビンC等の異常ヘモグロビン等が挙げられる。
【0061】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬は、上記ヘモグロビンA1c値(ヘモグロビンA1cの濃度)を測定するために好適に用いられる。
【0062】
図1は、本発明の一実施形態に係るヘモグロビン類測定用試薬を用いて陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する際に得られるクロマトグラムの例である。
【0063】
図2は、従来のヘモグロビン類測定用試薬(成分Xを含む従来のヘモグロビン類測定用試薬)を用いて陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する際に得られるクロマトグラムの例である。
【0064】
図1及び図2において、約19秒に検出されたピークがヘモグロビンA1cのピークであり、約40秒に検出されたピークがヘモグロビンA0のピークである。図1及び図2は、例えば、後述する実施例で測定された測定条件で測定した際のクロマトグラムの例である。
【0065】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、成分Xを含む従来のヘモグロビン類測定用試薬と同等のピーク形状を得ることができる。
【0066】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、REACH規制の対象となっている成分を含まなくすることができるので、成分Xを含む従来のヘモグロビン類測定用試薬と比べて、環境への影響を小さくすることができ、安全性を高めることができる。
【0067】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬は、上記非イオン性界面活性剤を含んでいてもよく、上記両性界面活性剤を含んでいてもよく、上記非イオン性界面活性剤と上記両性界面活性剤との双方を含んでいてもよい。
【0068】
(非イオン性界面活性剤)
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、非イオン性界面活性剤を含むことが好ましい。上記非イオン性界面活性剤は、成分A1~A9のいずれかの成分である。上記非イオン性界面活性剤は、成分A1~A9のうちの1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
<成分A1>
成分A1は、オキシエチレン基の平均付加モル数が8以上20以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルである。成分A1は、下記式(1)で表される成分である。成分A1は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
R-O(CHCHO)H ・・・(1)
【0071】
上記式(1)中、Rは炭素数12以上17以下のアルキル基を表し、nは8以上20以下の数を表す。
【0072】
オキシエチレン基の平均付加モル数が8未満であり、かつアルキル基の炭素数が12未満であるポリオキシエチレンアルキルエーテルでは、該界面活性剤が溶解しにくく、ヘモグロビン類測定用試薬を調製できないことがある。また、オキシエチレン基の平均付加モル数が8未満であり、かつアルキル基の炭素数が12未満であるポリオキシエチレンアルキルエーテルでは、良好なピークが得られないことがある。また、オキシエチレン基の平均付加モル数が20を超え、かつアルキル基の炭素数が17を超えるポリオキシエチレンアルキルエーテルでは、良好なピークが得られなかったり、キャリーオーバーが生じたりすることがある。
【0073】
界面活性剤の溶解性を高める観点、良好に溶血させ、高い精度でヘモグロビン類を測定する観点から、成分A1におけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは11以上、好ましくは19以下である。
【0074】
本発明の効果を効果的に発揮する観点及びヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性を高める観点からは、成分A1のアルキル基の炭素数は、好ましくは17以下、より好ましくは16以下であり、特に好ましくは12又は16である。なお、上記アルキル基の炭素数が12である場合、成分A1はポリオキシエチレンラウリルエーテルであり、上記アルキル基の炭素数が16である場合、成分A1はポリオキシエチレンセチルエーテルである。
【0075】
したがって、成分A1は、オキシエチレン基の平均付加モル数が8以上20以下であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、又はオキシエチレン基の平均付加モル数が8以上20以下であるポリオキシエチレンセチルエーテルであることが特に好ましい。
【0076】
成分A1がポリオキシエチレンラウリルエーテルである場合に、該ポリオキシエチレンラウリルエーテルにおけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは11以上、好ましくは19以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは13以下である。また、該ポリオキシエチレンラウリルエーテルにおけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、9、12又は19であることも好ましく、12であることが最も好ましい。上記オキシエチレン基の平均付加モル数が上述の好ましい範囲又は値であると、界面活性剤の溶解性をより一層高めることができ、良好に溶血させ、より一層高い精度でヘモグロビン類を測定することができ、また、ヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性をより一層高めることができる。
【0077】
成分A1がポリオキシエチレンセチルエーテルである場合に、該ポリオキシエチレンセチルエーテルにおけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、好ましくは19以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下である。また、該ポリオキシエチレンセチルエーテルにおけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、13又は20であることも好ましく、13であることが最も好ましい。上記オキシエチレン基の平均付加モル数が上述の好ましい範囲又は値であると、界面活性剤の溶解性をより一層高めることができ、良好に溶血させ、より一層高い精度でヘモグロビン類を測定することができ、また、ヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性をより一層高めることができる。
【0078】
したがって、成分A1は、オキシエチレン基の平均付加モル数が9、12若しくは19であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、又はオキシエチレン基の平均付加モル数が13若しくは20であるポリオキシエチレンセチルエーテルであることが好ましい。また、成分A1は、オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、又はオキシエチレン基の平均付加モル数が13であるポリオキシエチレンセチルエーテルであることが最も好ましい。
【0079】
本発明の効果を効果的に発揮する観点、ヘモグロビン類測定用試薬の保存安定性及び該試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性を高める観点からは、成分A1は、オキシエチレン基の平均付加モル数が10以上15以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルであることが好ましい。すなわち、成分A1は、成分A1’であることが好ましい。
【0080】
成分A1のHLB(Hydrophilc Lipophilc Balance)値は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。上記HLB値が上記下限以上であると、ミセルの発生を抑えることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。上記HLB値が上記上限以下であると、血球成分の細胞膜を十分に溶解させることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。
【0081】
成分A1のHLB値、及び後述する各成分のHLB値は、グリフィン法によるHLB値を表す。HLB値は、0以上20以下の値をとり、HLB値が小さいほど疎水性(親油性)が強く、HLB値が大きいほど親水性が強い。グリフィン法によるHLB値は、下記式により算出される。
【0082】
HLB値=20×(親水基の分子量/分子量)
【0083】
成分A1の曇点は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下である。上記曇点が上記下限以上及び上記上限以下であると、界面活性剤の溶解性を高めることができ、ヘモグロビン類測定用試薬を良好に調製することができる。
【0084】
なお、曇点とは、透明又は半透明な液体で温度変化によって相分離が起き、その結果、液体が不透明になる温度のことである。曇点は、一般に、下限臨界溶解温度と呼ばれることもある。
【0085】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A1の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A1の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A1の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができ、また、ヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性をより一層高めることができる。
【0086】
成分A1の市販品としては、花王社製「エマルゲン109P」(オキシエチレン基の平均付加モル数9のポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル)、花王社製「エマルゲン120」(オキシエチレン基の平均付加モル数12のポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(12)ラウリルエーテル)、花王社製「エマルゲン147」(オキシエチレン基の平均付加モル数19のポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(19)ラウリルエーテル)、花王社製「エマルゲン220」(オキシエチレン基の平均付加モル数13のポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン(13)セチルエーテル)、及びSigma-Aldrich社製「Brij(登録商標)58」(オキシエチレン基の平均付加モル数20のポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル)等が挙げられる。
【0087】
<成分A2>
成分A2は、オキシエチレン基の平均付加モル数が40以上60以下であるポリオキシエチレンステアリルエーテルである。成分A2は、下記式(2)で表される成分である。成分A2は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0088】
1837O(CHCHO)H ・・・(2)
【0089】
上記式(2)中、nは40以上60以下の数を表す。
【0090】
オキシエチレン基の平均付加モル数が40未満であるポリオキシエチレンステアリルエーテルでは、該界面活性剤が溶解しにくく、ヘモグロビン類測定用試薬を調製できないことがある。また、オキシエチレン基の平均付加モル数が40未満であるポリオキシエチレンステアリルエーテルでは、良好なピークが得られないことがある。また、オキシエチレン基の平均付加モル数が60を超えるポリオキシエチレンステアリルエーテルでは、良好なピークが得られなかったり、キャリーオーバーが生じたりすることがある。
【0091】
界面活性剤の溶解性を高める観点、良好に溶血させ、高い精度でヘモグロビン類を測定する観点から、成分A2におけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは45以上、好ましくは55以下である。界面活性剤の溶解性をより一層高める観点、より一層良好に溶血させ、より一層高い精度でヘモグロビン類を測定する観点から、成分A2におけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、50であることが最も好ましい。
【0092】
成分A2のHLB値は、好ましくは13以上、より好ましくは15以上、好ましくは19以下、より好ましくは18以下である。上記HLB値が上記下限以上であると、ミセルの発生を抑えることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。上記HLB値が上記上限以下であると、血球成分の細胞膜を十分に溶解させることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。
【0093】
成分A2のHLB値は、上述した方法で求めることができる。
【0094】
成分A2の曇点は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上である。上記曇点が上記下限以上であると、界面活性剤の溶解性を高めることができ、ヘモグロビン類測定用試薬を良好に調製することができる。
【0095】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A2の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A2の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A2の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0096】
成分A2の市販品としては、花王社製「エマルゲン350」(オキシエチレン基の平均付加モル数50のポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(50)ステアリルエーテル)等が挙げられる。
【0097】
<成分A3>
成分A3は、オキシエチレン基の平均付加モル数が9以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテルである。成分A3は、下記式(3)で表される成分である。成分A3は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0098】
1835O(CHCHO)H ・・・(3)
【0099】
上記式(3)中、nは9以上15以下の数を表す。
【0100】
オキシエチレン基の平均付加モル数が9未満であるポリオキシエチレンオレイルエーテルでは、該界面活性剤が溶解しにくく、ヘモグロビン類測定用試薬を調製できないことがある。また、オキシエチレン基の平均付加モル数が9未満であるポリオキシエチレンオレイルエーテルでは、良好なピークが得られないことがある。また、オキシエチレン基の平均付加モル数が15を超えるポリオキシエチレンオレイルエーテルでは、良好なピークが得られなかったり、キャリーオーバーが生じたりすることがある。
【0101】
界面活性剤の溶解性を高める観点、良好に溶血させ、高い精度でヘモグロビン類を測定する観点から、成分A3におけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは14以下である。界面活性剤の溶解性をより一層高める観点、より一層良好に溶血させ、より一層高い精度でヘモグロビン類を測定する観点から、成分A3におけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、9又は13であることが特に好ましく、13であることが最も好ましい。
【0102】
本発明の効果を効果的に発揮する観点、ヘモグロビン類測定用試薬の保存安定性及び該試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性を高める観点からは、成分A3は、オキシエチレン基の平均付加モル数が10以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテルであることが好ましい。すなわち、成分A3は、成分A3’であることが好ましい。
【0103】
成分A3のHLB値は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、好ましくは17以下、より好ましくは15以下である。上記HLB値が上記下限以上であると、ミセルの発生を抑えることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。上記HLB値が上記上限以下であると、血球成分の細胞膜を十分に溶解させることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。
【0104】
成分A3のHLB値は、上述した方法で求めることができる。
【0105】
成分A3の曇点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは85℃以上、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下である。上記曇点が上記下限以上及び上記上限以下であると、界面活性剤の溶解性を高めることができ、ヘモグロビン類測定用試薬を良好に調製することができる。
【0106】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A3の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A3の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A3の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0107】
成分A3の市販品としては、花王社製「エマルゲン409PV」(オキシエチレン基の平均付加モル数9のポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン(9)オレイルエーテル)、及び花王社製「エマルゲン420」(オキシエチレン基の平均付加モル数13のポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン(13)オレイルエーテル)等が挙げられる。
【0108】
<成分A4>
成分A4は、オキシエチレン基の平均付加モル数が6以上10以下であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下であるポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテルである。成分A4は、下記式(4)で表される成分である。成分A4は、炭素数が11以上15以下である第2級アルコールのエチレンオキシドの付加物である。成分A4は、成分A1とは異なる。成分A4は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0109】
2m+1O(CHCHO)H ・・・(4)
【0110】
上記式(4)中、mは11以上15以下の数を表し、nは6以上10以下の数を表す。
【0111】
オキシエチレン基の平均付加モル数が6未満であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下であるポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテルでは、該界面活性剤が溶解しにくく、ヘモグロビン類測定用試薬を調製できないことがある。また、オキシエチレン基の平均付加モル数が6未満であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下であるポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテルでは、良好なピークが得られないことがある。
【0112】
界面活性剤の溶解性を高める観点、良好に溶血させ、高い精度でヘモグロビン類を測定する観点から、成分A4におけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは7以上、好ましくは9以下であり、7又は9であることがより好ましい。
【0113】
成分A4のHLB値は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、好ましくは17以下、より好ましくは15以下である。上記HLB値が上記下限以上であると、ミセルの発生を抑えることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。上記HLB値が上記上限以下であると、血球成分の細胞膜を十分に溶解させることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。
【0114】
成分A4のHLB値は、上述した方法で求めることができる。
【0115】
成分A4の曇点は、好ましくは30℃以上、好ましくは60℃以下である。上記曇点が上記下限以上及び上記上限以下であると、界面活性剤の溶解性を高めることができ、ヘモグロビン類測定用試薬を良好に調製することができる。
【0116】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A4の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A4の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A4の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0117】
成分A4の市販品としては、花王社製「エマルゲン707」(オキシエチレン基の平均付加モル数7、かつアルキル基の炭素数11以上15以下のポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテル)、及び花王社製「エマルゲン709」(オキシエチレン基の平均付加モル数9、かつアルキル基の炭素数11以上15以下のポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテル)等が挙げられる。
【0118】
<成分A5>
成分A5は、オキシエチレン基の平均付加モル数が15であるポリオキシエチレントリデシルエーテルである。成分A5は、下記式(5)で表される成分である。成分A5は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0119】
1327O(CHCHO)15H ・・・(5)
【0120】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A5の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A5の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A5の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0121】
成分A5の市販品としては、ライオン社製「レオコールTD-150」等が挙げられる。
【0122】
<成分A6>
成分A6は、HLB値が11以上15以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルである。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、オキシプロピレン基とオキシエチレン基とを有する。成分A6は、下記式(6)で表される成分である。成分A6は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0123】
R-(CHCH(CH)O)(CHCHO)H ・・・(6)
【0124】
上記式(6)中、Rはアルキル基を表し、mは1以上の数を表し、nは1以上の数を表す。
【0125】
成分A6のHLB値は、好ましくは11.5以上、より好ましくは12以上、好ましくは14.5以下である。上記HLB値が上記下限以上であると、ミセルの発生を抑えることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。上記HLB値が上記上限以下であると、血球成分の細胞膜を十分に溶解させることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点及びカラムの目詰まりをより一層効果的に抑える観点からは、成分A6のHLB値は、12.5、12.7又は14.0であることが好ましい。
【0126】
成分A6のHLB値は、上述した方法で求めることができる。
【0127】
成分A6の曇点は、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下である。上記曇点が上記下限以上及び上記上限以下であると、界面活性剤の溶解性を高めることができ、ヘモグロビン類測定用試薬を良好に調製することができる。
【0128】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A6の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A6の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A6の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0129】
成分A6の市販品としては、花王社製「エマルゲンLS-106」(HLB値12.5のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル)、花王社製「エマルゲンLS-114」(HLB値14.0のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキル(C12-14)エーテル)、及び花王社製「エマルゲンMS-110」(HLB値12.7のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル)等が挙げられる。
【0130】
<成分A7>
成分A7は、n-ノナノイル-N-メチル-D-グルカミンである。
【0131】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A7の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A7の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A7の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0132】
成分A7の市販品としては、同仁化学社製「MEGA-9」等が挙げられる。
【0133】
<成分A8>
成分A8は、n-オクチル-β-D-グルコピラノシドである。
【0134】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A8の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A8の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A8の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0135】
成分A8の市販品としては、同仁化学社製「n-オクチル-β-D-グルコピラノシド」等が挙げられる。
【0136】
<成分A9>
成分A9は、サポニンである。成分A9は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0137】
成分A9は、大豆サポニンであることが好ましく、下記式(9)で表される大豆サポニンであることがより好ましい。
【0138】
【化1】
【0139】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A9の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A9の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A9の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0140】
成分A9の市販品としては、ナカライテスク社製「サポニン」等が挙げられる。
【0141】
(両性界面活性剤)
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、両性界面活性剤を含むことが好ましい。上記界面活性剤は、成分B1~B3のいずれかの成分である。上記両性界面活性剤は、成分B1~B3のうちの1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0142】
<成分B1>
成分B1は、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホネート(CHAPS)である。
【0143】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分B1の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分B1の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分B1の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0144】
成分B1の市販品としては、同仁化学社製「CHAPS」等が挙げられる。
【0145】
<成分B2>
成分B2は、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシプロパンスルホネート(CHAPSO)である。
【0146】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分B2の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分B2の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分B2の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0147】
成分B2の市販品としては、同仁化学社製「CHAPSO」等が挙げられる。
【0148】
<成分B3>
成分B3は、ラウリルジメチルアミンオキサイドである。
【0149】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分B3の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分B3の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分B3の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0150】
成分B3の市販品としては、花王社製「アンヒトール20N」等が挙げられる。
【0151】
(緩衝剤)
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、緩衝剤を含むことが好ましい。上記緩衝剤を含むことにより、pHの変動を抑えることができる。上記緩衝剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0152】
上記緩衝剤としては、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム及びリン酸二水素カリウム等のリン酸塩、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、カルボン酸、ジカルボン酸、カルボン酸誘導体、ヒドロキシカルボン酸、アニリン、アニリン誘導体、アミノ酸、アミン化合物、イミダゾール化合物、アルコール化合物、エチレンジアミン四酢酸、ピロリン酸、ピリジン、カコジル酸、グリセロールリン酸、2,4,6-コリジン、N-エチルモルホリン、モルホリン、4-アミノピリジン、アンモニア、エフェドリン、ヒドロキシプロリン、ピペリジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、並びにグリシルグリシン等が挙げられる。
【0153】
上記ヘモグロビン類測定用試薬のpHを後述する好ましい範囲に維持する観点からは、上記緩衝剤は、リン酸塩であることが好ましい。
【0154】
上記ヘモグロビン類測定用試薬中の上記緩衝剤の含有量は、緩衝作用を発揮できる含有量であれば特に限定されない。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、上記緩衝剤の含有量は、0.01重量%以上であってもよく、0.02重量%以上であってもよく、0.2重量%以下であってもよく、0.1重量%以下であってもよい。
【0155】
(無機塩類)
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、無機塩類を含むことが好ましい。上記無機塩類を含むことにより、浸透圧を良好に調整することができる。上記無機塩類は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0156】
上記無機塩類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、及び硫酸カリウム等が挙げられる。
【0157】
上記ヘモグロビン類測定用試薬の浸透圧を後述する好ましい範囲に維持する観点からは、上記無機塩類は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、又は硫酸カリウムであることが好ましく、塩化ナトリウムであることがより好ましい。
【0158】
上記ヘモグロビン類測定用試薬中の上記無機塩類の含有量は、特に限定されない。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、上記無機塩類の含有量は、0.1重量%以上であってもよく、1.0重量%以下であってもよい。
【0159】
(水)
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、水を含むことが好ましい。
【0160】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、上記水の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上である。
【0161】
(その他の成分)
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、上述した成分以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、防腐剤、ヘモグロビン安定剤、及びpH調整剤等が挙げられる。上記他の成分はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0162】
上記防腐剤としては、アジ化ナトリウム、チモール、及びプロピオン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0163】
上記ヘモグロビン安定剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤、及びグルタチオン等が挙げられる。
【0164】
上記pH調整剤としては、塩酸、リン酸、硝酸、及び硫酸等の酸、並びに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、及び水酸化カルシウム等の塩基が挙げられる。
【0165】
(ヘモグロビン類測定用試薬の他の詳細)
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、上記非イオン性界面活性剤を含むことが好ましく、上記非イオン性界面活性剤として成分A1、成分A2、成分A3、成分A4、成分A5又は成分A6を含むことがより好ましく、成分A1、又は成分A3を含むことが更に好ましく、成分A1’、又は成分A3’を含むことが特に好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、ヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性をより一層高めることができる。
【0166】
上記ヘモグロビン類測定用試薬が、上記非イオン性界面活性剤を含む場合に、上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、上記非イオン性界面活性剤の含有量(成分A1~A9の合計の含有量)は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、上記非イオン性界面活性剤の含有量(成分A1~A9の合計の含有量)は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。上記非イオン性界面活性剤の含有量(成分A1~A9の合計の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、ヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性をより一層高めることができる。
【0167】
上記ヘモグロビン類測定用試薬が、上記両性界面活性剤を含む場合に、上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、上記両性界面活性剤の含有量(成分B1~B3の合計の含有量)は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、上記両性界面活性剤の含有量(成分B1~B3の合計の含有量)は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。上記両性界面活性剤の含有量(成分B1~B3の合計の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0168】
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、成分Xを含まないことが好ましい。本発明では、成分Xを含まなくても、本発明の効果を発揮させることができる。また、本発明では、成分Xを含まなくても、ヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性を高めることができる。ただし、上記ヘモグロビン類測定用試薬は、成分Xを含んでいてもよい。例えば、上記ヘモグロビン類測定用試薬は、成分Xを、REACH規制の対象とならない濃度(ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分Xの含有量が0.1重量%未満)で含んでいてもよい。
【0169】
上記ヘモグロビン類測定用試薬のpHは、好ましくは6.0以上、より好ましくは7.0以上、好ましくは8.5以下、より好ましくは8.0以下である。上記pHが上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層良好に溶血させることができる。
【0170】
上記ヘモグロビン類測定用試薬の浸透圧は、好ましくは50mOsm以上、より好ましくは75mOsm以上、好ましくは200mOsm以下、より好ましくは150mOsm以下である。上記浸透圧が上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層良好に溶血させることができる。
【0171】
上記浸透圧は、浸透圧計(例えば、Advanced Instruments社製「オズモメーター3250」)を用いて測定することができる。
【0172】
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、赤血球を溶血させるために好適に用いられる。上記ヘモグロビン類測定用試薬は、溶血試薬であることが好ましい。
【0173】
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、被検査物質と混合されて好適に用いられる。上記被検査物質としては、血液等の赤血球含有検体、ヘモグロビン類標準物質、及び測定管理用ヘモグロビン類物質等が挙げられる。
【0174】
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、赤血球を含まず、かつヘモグロビンの濃度が既知である検体(ヘモグロビン類標準物質、及び測定管理用ヘモグロビン類物質等)を溶解又は希釈する希釈液として好適に用いられる。さらに、上記ヘモグロビン類測定用試薬は、液体クロマトグラフの洗浄液及びカラムの洗浄液としても好適に用いられる。
【0175】
(ヘモグロビン類の測定方法)
本発明に係るヘモグロビン類の測定方法は、赤血球含有検体と、上述したヘモグロビン類測定用試薬とを混合して混合液を得る工程と、上記混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する工程とを備える。
【0176】
上記陽イオン交換液体クロマトグラフィーは、陽イオン交換高速液体クロマトグラフィーであることが好ましい。
【0177】
上記赤血球含有検体としては、血液等が挙げられる。
【0178】
一般に、上記陽イオン交換液体クロマトグラフィーにおいては、患者等から採取した血液(赤血球含有検体)から調製された混合液に加えて、赤血球を含まず、かつ測定対象のヘモグロビン類の濃度が既知である検体から調製された混合液も測定される。上記赤血球を含まず、かつ測定対象のヘモグロビン類の濃度が既知である検体としては、測定対象のヘモグロビン類標準物質(測定対象の既知濃度のヘモグロビン類)、測定対象の測定管理用ヘモグロビン類物質(測定対象の既知濃度のヘモグロビン類、好ましくは低濃度、中濃度、高濃度等の複数濃度を測定)等が挙げられる。上記ヘモグロビン類標準物質及び上記測定管理用ヘモグロビン類物質は、好ましくは用時調製検体、凍結乾燥検体又は凍結検体である。また、上記ヘモグロビン類標準物質及び上記測定管理用ヘモグロビン類物質は、凍結乾燥品又は凍結品として市販されている。
【0179】
上記ヘモグロビン類の測定方法では、例えば、以下のようにしてヘモグロビン類の濃度を求めることが好ましい。(1)上記赤血球含有検体と、上記ヘモグロビン類測定用試薬とを混合して混合液を得る。(2)上記混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する。(3)測定対象のヘモグロビン類のピーク面積の、ヘモグロビンのピーク面積の合計に対する比(測定対象のヘモグロビン類のピーク面積/ヘモグロビンのピーク面積の合計)を測定対象のヘモグロビン値(ヘモグロビン類の濃度)とする。例えば、ヘモグロビンA1c値を求める場合には、上記(3)において、ヘモグロビンA1cのピーク面積の、ヘモグロビンのピーク面積の合計に対する比(ヘモグロビンA1cのピーク面積/ヘモグロビンのピーク面積の合計)をヘモグロビンA1c値とする。
【0180】
上記ヘモグロビン類の測定方法では、例えば、以下のようにしてヘモグロビン類の濃度を求めることもできる。(1)上記赤血球含有検体と、上記ヘモグロビン類測定用試薬とを混合して第1の混合液を得る。(2)測定対象のヘモグロビン類の濃度が既知であるヘモグロビン類含有検体と、上記ヘモグロビン類測定用試薬とを混合して第2の混合液を得る。(3)上記第1の混合液及び上記第2の混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する。(4)測定対象のヘモグロビン類の濃度が既知である上記ヘモグロビン類含有検体を含む上記混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定して得られた測定値と、上記赤血球含有検体を含む上記混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定して得られた測定値とを比較することで、上記赤血球含有検体中のヘモグロビン類の濃度を決定する。
【0181】
より一層良好に溶血させる観点からは、上記赤血球含有検体1mLに対して、上記ヘモグロビン類測定用試薬を、好ましくは25mL以上、より好ましくは50mL以上、好ましくは400mL以下、より好ましくは200mL以下で混合することが好ましい。
【0182】
上記陽イオン交換液体クロマトグラフィーは、塩濃度のグラジエント又はpHのグラジエントで測定されることが好ましい。上記グラジエントは、リニアグラジエントであってもよく、ステップグラジエントであってもよい。
【0183】
上記グラジエントの測定では、2種以上の溶離液が用いられることが好ましい。上記塩濃度のグラジエントで測定する場合には、上記溶離液として、低塩濃度の溶離液及び高塩濃度の溶離液(例えば、NaCl濃度が50mMである溶離液及びNaCl濃度が200mMである溶離液)を用いることができる。上記pHグラジエントで測定する場合には、pHの異なる2種の溶離液(例えば、pH5.4の溶離液とpH8.0の溶離液)を用いることができる。また、上記溶離液として、市販品を用いることもできる。上記溶離液の市販品としては、アークレイ社製「溶離液80A」、「溶離液80B」、「溶離液60A-VP/TP」、「溶離液60B-VP/TP」、及び「溶離液60C-VP」等が挙げられる。
【0184】
上記陽イオン交換液体クロマトグラフィーで用いられる陽イオン交換カラムとして、従来公知の陽イオン交換カラムを用いることができる。上記陽イオン交換カラムは、カルボキシル基、スルホン酸基、又はリン酸基等のカチオン交換基を有する充填剤が充填されたカラムであることが好ましい。陽イオン交換カラムの市販品としては、例えば、アークレイ社製「カラムユニット80」及び「カラムユニットHSVI-VP」等が挙げられる。
【0185】
以下、実施例、参考例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0186】
(実施例1~30、参考例A及び比較例1~69)
ヘモグロビン類測定用試薬の調製:
リン酸二水素カリウムと、リン酸水素二カリウムと、塩化ナトリウムと、アジ化ナトリウムと、水とを混合し第1の組成物を得た。得られた第1の組成物に、表2~6に示す界面活性剤を添加して混合し、ヘモグロビン類測定用試薬を調製した。得られたヘモグロビン類測定用試薬の組成を以下の表1に示す。表1中の界面活性剤の種類、含有量、HLB値及び曇点は、表2~6に示した。なお、界面活性剤のHLB値は、上述した方法で測定された値である。
【0187】
【表1】
【0188】
(評価)
(1)界面活性剤の溶解性
上記第1の組成物に界面活性剤を添加して混合した際の界面活性剤の溶解性を目視にて確認した。界面活性剤の溶解性を以下の基準で判定した。
【0189】
[界面活性剤の溶解性の判定基準]
○○:界面活性剤が15分未満で完全に溶解する
○:界面活性剤が15分以上30分未満で完全に溶解する
△:界面活性剤が30分以上1時間未満で完全に溶解する
×:界面活性剤が1時間以上で完全に溶解する、又は溶解しない
【0190】
(2)陽イオン交換液体クロマトグラフィーによる測定
採血管(積水メディカル社製)に収容された全血(赤血球含有検体)を用意した。全血1mLに対して、得られたヘモグロビン類測定用試薬100mLを混合し、混合液を得た。得られた混合液を以下の条件で測定した。なお、「(1)界面活性剤の溶解性」の判定結果が×であるヘモグロビン類測定用試薬では、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによる測定を行わなかった。
【0191】
陽イオン交換クロマトグラフィー条件:
HPLC装置:グリコヘモグロビン分析装置(アークレイ社製「HA-8180」)
陽イオン交換カラム:カラムユニット80(アークレイ社製)
溶離液A:溶離液80A(アークレイ社製)
溶離液B:溶離液80B(アークレイ社製)
【0192】
HPLC装置に搭載されている測定メソッドを用いて、測定を行った。
【0193】
(2-1)ピーク分離パターン
混合液を測定して得られたクロマトグラムについて、以下のi)~iii)を確認した。なお、参考例Aでは、図2に示すクロマトグラムのピークパターンが得られた。得られるクロマトグラムにおいて、約19秒に検出されたピークがヘモグロビンA1cのピークであり、約40秒に検出されたピークがヘモグロビンA0のピークである。
【0194】
i)ヘモグロビンA1cピークの分離
参考例Aで得られたヘモグロビンA1cのピーク高さと、実施例及び比較例で得られたヘモグロビンA1cのピーク高さとを比較した。参考例Aで得られたヘモグロビンA1cのピーク高さに対して、得られたヘモグロビンA1cのピーク高さが吸光度基準で50以上低下していない場合に、ヘモグロビンA1cピークの分離が良好と判定し、50を超えて低下している場合に不良と判定した。
【0195】
ii)ヘモグロビンA0ピークの形状
参考例Aでは、ヘモグロビンA0ピークのピークテール部分において、ピークは検出されない。実施例及び比較例で得られたヘモグロビンA0ピークのピークテールの形状を確認した。このピークテール部分において、ピークが検出されてない場合に、ヘモグロビンA0ピークの形状が良好と判定し、ピークが検出された場合に不良と判定した。
【0196】
なお、良好と判定されるクロマトグラムの例を図3(a)に示し、不良と判定されるクロマトグラムの例を図3(b)に示した。
【0197】
iii)ファーストフラクションのピーク形状
参考例Aでは、ファーストフラクションのピークにおいて、ショルダーピークは検出されない。実施例及び比較例で得られたファーストフラクションのピーク形状を確認した。このファーストフラクションのピークにおいて、ショルダーピークが検出されてない場合に、ファーストフラクションのピーク形状が良好と判定し、ショルダーピークが検出された場合に不良と判定した。
【0198】
なお、良好と判定されるクロマトグラムの例を図4(a)に示し、不良と判定されるクロマトグラムの例を図4(b)に示した。図4(b)において矢印で示したピークがショルダーピークである。
【0199】
[ピーク分離パターンの判定基準]
○:i)~iii)の判定が全て良好
×:i)~iii)の判定のいずれかが不良
【0200】
(2-2)キャリーオーバー
全血とヘモグロビン類測定用試薬とを混合した混合液を測定した後に続けて、ヘモグロビン類測定用試薬のみを5回連続して測定した。得られたクロマトグラムについて、以下のi)~iii)を確認した。
【0201】
i)ヘモグロビンA0ピーク高さ
1回目のヘモグロビン類測定用試薬の測定において、参考例Aで得られたヘモグロビンA0のピーク高さと、実施例及び比較例で得られたヘモグロビンA0のピーク高さとを比較した。参考例Aで得られたヘモグロビンA0のピーク高さに対して、得られたヘモグロビンA0のピーク高さが吸光度基準で100以上増加していない場合に良好と判定し、100を超えて増加している場合に不良と判定した。
【0202】
なお、参考例Aで得られたクロマトグラムの例を図5(a)に示し、良好と判定されるクロマトグラムの例を図5(b)に示し、不良と判定されるクロマトグラムの例を図5(c)に示した。
【0203】
ii)ヘモグロビンA1cピークの有無
1回目のヘモグロビン類測定用試薬の測定において、ヘモグロビンA1cピークの有無を確認した。ヘモグロビンA1cピークが観察されない場合に良好と判定し、ヘモグロビンA1cピークが観察される場合に不良と判定した。
【0204】
iii)ドリフトの発生の有無
1回目のヘモグロビン類測定用試薬の測定において、ヘモグロビンA0ピークのドリフトの有無を確認した。ドリフトが観察されない場合に良好と判定し、ドリフトが観察される場合に不良と判定した。
【0205】
[キャリーオーバーの判定基準]
○:i)~iii)の判定が全て良好
×:i)~iii)の判定のいずれかが不良
【0206】
(3)pH
参考例A及び実施例で得られたヘモグロビン類測定用試薬のpHを、pH計(堀場製作所社製「F-52」)を用いて測定した。
【0207】
(4)浸透圧
参考例A及び実施例で得られたヘモグロビン類測定用試薬の浸透圧を、浸透圧計(Advanced Instruments社製「オズモメーター3250」)を用いて測定した。
【0208】
組成及び結果を下記の表2~6に示す。なお、表2,3,5中、「E.O.」で表される値は、オキシエチレン基の平均付加モル数を意味する。
【0209】
【表2】
【0210】
【表3】
【0211】
【表4】
【0212】
【表5】
【0213】
【表6】
【0214】
実施例1~30で得られたヘモグロビン類測定用試薬では、良好に溶血させることができ、かつ高い精度でヘモグロビン類を測定することができていることが理解できる。
【0215】
(参考例A及び実施例31~38)
表7に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてヘモグロビン類測定用試薬を調製した。
【0216】
(5)ヘモグロビン類測定用試薬の保存安定性
参考例A及び界面活性剤の濃度が0.5重量%である実施例32,34,36~38で得られたヘモグロビン類測定用試薬をそれぞれ、ガラス製バイアル瓶に密封し、60℃で7日間保存した。保存後、目視にて、ヘモグロビン類測定用試薬の性状を確認した。
【0217】
一般に、ヘモグロビン類測定用試薬は室温で保存されるものである。本評価項目では、通常の保存条件よりも苛酷な温度条件でヘモグロビン類測定用試薬を保存し評価している。
【0218】
[ヘモグロビン類測定用試薬の保存安定性(60℃、7日間)の判定基準]
A:相分離が生じない
B:相分離が生じる
【0219】
(6)混合液の保存安定性
(6-1)全血との混合液の保存安定性
全血(赤血球含有検体)を用意した。また、参考例A及び実施例31~36で得られたヘモグロビン類測定用試薬を用意した。全血を、ヘモグロビン類測定用試薬で101倍希釈し、混合液を得た。得られた混合液を、ガラス製バイアル瓶に収容し、4℃で保存した。保存前、保存後1日目,2日目,5日目,7日目,9日目に、「(2)陽イオン交換液体クロマトグラフィーによる測定」に記載の測定条件で混合液を繰り返し3回測定し、その平均値からヘモグロビンA1c値及びヘモグロビンA1c値の変化量を求めた。
【0220】
ヘモグロビンA1c値(%)=ヘモグロビンA1cのピーク面積/ヘモグロビンのピーク面積の合計
【0221】
ヘモグロビンA1c値の変化量(%)=保存前のヘモグロビンA1c値-保存後のヘモグロビンA1c値
【0222】
図6(a)は全血との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値との関係を示す図である。図6(b)は、全血との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値の変化量との関係を示す図である。
【0223】
[全血との混合液の判定基準]
○:5日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.2%以下である
△:5日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.2%を超え0.4%以下である
△△:5日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.4%を超え0.7%以下である
×:5日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.7%を超える
【0224】
(6-2)測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)との混合液の保存安定性
ヘモグロビンA1c値が5.8%である測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)を用意した。また、参考例A及び実施例31~36で得られたヘモグロビン類測定用試薬を用意した。測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)を、ヘモグロビン類測定用試薬で101倍希釈し、混合液を得た。得られた混合液を、ガラス製バイアル瓶に収容し、4℃で保存した。保存前、保存後1日目,2日目,3日目,9日目,14日目に、「(2)陽イオン交換液体クロマトグラフィーによる測定」での測定条件で混合液を繰り返し3回測定し、その平均値から上記と同様にしてヘモグロビンA1c値及びヘモグロビンA1c値の変化量を求めた。
【0225】
図7(a)は測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値との関係を示す図である。図7(b)は、測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値の変化量との関係を示す図である。
【0226】
[測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)との混合液の保存安定性の判定基準]
○:14日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.2%以下である
△:14日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.2%を超え0.4%以下である
△△:14日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.4%を超え0.7%以下である
×:14日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.7%を超える
【0227】
(6-3)測定管理用ヘモグロビンA1c物質(高濃度)(IRC-H)との混合液の保存安定性
測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)を、ヘモグロビンA1c値が10.4%である測定管理用ヘモグロビンA1c物質(高濃度)(IRC-H)に変更したこと以外は、「(6-2)測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)との混合液の保存安定性」と同様にして、ヘモグロビンA1c値及びヘモグロビンA1c値の変化量を求めた。
【0228】
図8(a)は測定管理用ヘモグロビンA1c物質(高濃度)(IRC-H)との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値との関係を示す図である。図8(b)は、測定管理用ヘモグロビンA1c物質(高濃度)(IRC-H)との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値の変化量との関係を示す図である。
【0229】
[測定管理用ヘモグロビンA1c物質(高濃度)(IRC-H)との混合液の保存安定性の判定基準]
○:14日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.25%以下である
△:14日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.25%を超え0.45%以下である
△△:14日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.45%を超え0.75%以下である
×:14日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.75%を超える
【0230】
組成及び結果を下記の表7に示す。
【0231】
【表7】
【0232】
実施例31~36で得られたヘモグロビン類測定用試薬では、実施例37,38で得られたヘモグロビン類測定用試薬と比べて、該試薬の保存安定性を高めることができた。また、実施例31~36で得られたヘモグロビン類測定用試薬では、該試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性も高めることができた。実施例31~36で得られたヘモグロビン類測定用試薬では、ヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液を長期間保存した後であっても、高い精度でヘモグロビン類を測定することができる。
【0233】
(7)カラム耐久性
全血(赤血球含有検体)と、ヘモグロビンA1c値が10.4%である測定管理用ヘモグロビンA1c物質(高濃度)(IRC-H)と、参考例A及び実施例32で得られたヘモグロビン類測定用試薬とを用意した。全血を、ヘモグロビン類測定用試薬で101倍希釈し、液(1)を得た。また、測定管理用ヘモグロビンA1c物質を、ヘモグロビン類測定用試薬で101倍希釈し、液(2)を得た。液(1)は、カラムに負荷を与えるための測定試料であり、液(2)は、ヘモグロビンA1c値の変化量及び理論段数の変化量を確認するための測定試料である。得られた液(1)及び液(2)を以下の手順及び条件で測定した。
【0234】
先ず、得られた液(2)を3回測定した。その後、得られた液(1)を複数回(数十回~200回)カラムに通すごとに液(2)を3回測定した。カラムへの負荷検体数が約3000検体となるまで、上記の手順に従って液(1)及び液(2)を繰り返し測定した。
【0235】
陽イオン交換クロマトグラフィー条件:
HPLC装置:グリコヘモグロビン分析装置(アークレイ社製「HA-8160VP」)
陽イオン交換カラム:カラムユニットHSVI-VP(アークレイ社製)
溶離液A:溶離液60A-VP/TP(アークレイ社製)
溶離液B:溶離液60B-VP/TP(アークレイ社製)
溶離液C:溶離液60C-VP(アークレイ社製)
【0236】
HPLC装置に搭載されている測定メソッドを用いて、測定を行った。
【0237】
図9(a)はカラムへの負荷検体数と、ヘモグロビンA1c値の変化量との関係を示す図である。図9(b)はカラムへの負荷検体数と、理論段数の変化量との関係を示す図である。
【0238】
図9(a)において、縦軸は、最初に測定した液(2)におけるヘモグロビンA1c値と、各負荷検体数で測定した液(2)におけるヘモグロビンA1c値との差(最初に測定した液(2)におけるヘモグロビンA1c値-各負荷検体数で測定した液(2)におけるヘモグロビンA1c値)である。図9(b)において、縦軸は、最初に測定した液(2)における理論段数と、各負荷検体数で測定した液(2)における理論段数との差(最初に測定した液(2)における理論段数-各負荷検体数で測定した液(2)における理論段数)である。
【0239】
実施例32で得られたヘモグロビン類測定用試薬は、参考例Aで得られたヘモグロビン類測定用試薬よりもカラム耐久性に優れていた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9