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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】バスバー
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/521 20210101AFI20241126BHJP
   H01M 50/522 20210101ALI20241126BHJP
   H01M 50/524 20210101ALI20241126BHJP
【FI】
H01M50/521
H01M50/522
H01M50/524
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023085910
(22)【出願日】2023-05-25
(65)【公開番号】P2023175657
(43)【公開日】2023-12-12
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10 2022 113 518.7
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ルートヴィッヒ
(72)【発明者】
【氏名】イザベル ブレシュ
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-508813(JP,A)
【文献】特表2019-500441(JP,A)
【文献】特表2012-523085(JP,A)
【文献】国際公開第2020/255167(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/218775(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変化材料が配置されている少なくとも1つの空洞部(13)を包囲する外側シース(12)を有するバスバー(10)であって、
前記空洞部(13)が、金属発泡体(14)を含み、前記金属発泡体(14)内に形成されている気孔が、少なくとも部分的に前記相変化材料で充填されている、
ことを特徴とするバスバー(10)。
【請求項2】
前記金属発泡体(14)が、前記外側シース(12)に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載のバスバー(10)。
【請求項3】
前記外側シース(12)が、少なくとも1mmの肉厚(16)を有することを特徴とする、請求項1に記載のバスバー(10)。
【請求項4】
前記金属発泡体(14)の前記気孔の少なくとも60%、または少なくとも80%、または少なくとも98%が、前記相変化材料で充填されていることを特徴とする、請求項1に記載のバスバー(10)。
【請求項5】
前記金属発泡体(14)の前記気孔の少なくとも30%、または少なくとも50%が開気孔であることを特徴とする、請求項1に記載のバスバー(10)。
【請求項6】
前記金属発泡体(14)の最小気孔率が10PPI、または少なくとも20PPI、または少なくとも30PPIであることを特徴とする、請求項1に記載のバスバー(10)。
【請求項7】
前記外側シース(12)が、プラスチックから形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のバスバー(10)。
【請求項8】
前記外側シース(12)および/または前記金属発泡体(14)が、銅もしくは銅合金またはアルミニウムもしくはアルミニウム合金からなる、またはこれを含むことを特徴とする、請求項1に記載のバスバー(10)。
【請求項9】
前記外側シース(12)および前記金属発泡体(14)が、同じ材料からなることを特徴とする、請求項1に記載のバスバー(10)。
【請求項10】
前記相変化材料が、40~130℃の間の相変化温度を有することを特徴とする、請求項1に記載のバスバー(10)。
【請求項11】
前記相変化材料が、前記相変化温度の付近において固体-液体転移のみを有することを特徴とする、請求項10に記載のバスバー(10)。
【請求項12】
前記相変化材料が、パラフィンをベースに構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のバスバー(10)。
【請求項13】
前記相変化材料が生分解性であることを特徴とする、請求項1に記載のバスバー(10)。
【請求項14】
電気自動車であって、前記電気自動車の充電コンタクト要素からバッテリまたはバッテリ内までの電流伝導路において請求項1から13のいずれか一項に記載のバスバー(10)を少なくとも1つ有する電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相変化材料が配置される少なくとも1つの空洞部を包囲する外側シースを有するバスバーに関する。
【0002】
本発明は、エレクトロモビリティの分野に関し、特に、充電経路およびバッテリにおける接続部、例えば電気自動車の引出しケーブルまたは引込みケーブル(lead-off or lead-in cable)およびセルコネクタに関する。これらの車両に搭載されるバッテリの充電時間を低減するために、電流加熱により引き起こされる充電電流出力の定格低減(derating)を回避することが、特にハイパワー充電(HPC)としても知られる高電流充電の場合における目標となっている。このハイパワー充電は、例えば充電ステーションなどの電源から、ユーザ、すなわち車両のバッテリへの電流の流れをますます増大させることを必要とする。結果として、導電性構成要素が500Aを超える電流にさらされ、それにより、通電構成要素(current-carrying components)の抵抗加熱が生じる。
【背景技術】
【0003】
自動車の充電コンタクト要素からバッテリまたはバッテリ内まで延びる電流伝導路およびその周囲に対する加熱損傷の可能性を低減するために、電流密度および結果として生じる発熱が低減するように、各構成要素の断面を大きくする場合がある。しかしながら、これは直接的に、重量の増大、より大きい空間の必要性および構成要素のコストにつながる。発生した熱を放散するために、追加の能動的冷却システムの使用が必要な場合もあるが、これらも同様の不利点を伴う。
【0004】
自動車用バッテリのバッテリセルを冷却するための冷却デバイスが知られている。この文脈において、冷却デバイスは、バッテリセルの電極を電気的に接続するためのバスバーにおける相変化材料(PCM)を有するバスバー装置として構成される。バスバーに沿って長手方向に延び、相変化材料を含む閉チャネルが、バスバーに一体化される。相変化材料は、相変化材料の相転移のための特定の相変化温度を超えた場合に、バスバーから熱を取り出すように適合される。
【0005】
相変化温度に達すると、発生した熱が相変化材料に伝達され、相転移のために相変化材料により吸収されるため、バスバーのさらなる加熱が遅延する。よって、熱をバスバーから放散することができ、バスバーの温度上昇を止めるまたは遅延させることができる。
【0006】
しかしながら、そのような構造は、バスバーの寸法をより大きくしない限り、バスバーが伝送可能な電流を激減させることなくバスバーに導入することが可能な相変化材料の量を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の根本的課題は、同じ幾何学的断面において伝送される電流の量を低減することなく、単純かつコンパクトな構造で効率的な冷却を可能とするバスバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明は、請求項1の特徴を有するバスバーを提供する。
【0009】
この文脈において、バスバーは、電気回路の構成要素として機能することにより電源と負荷との間の接続を可能とする導電性材料から作製される、限定されるものではないが好ましくは剛性の構成要素に相当する。したがって、本発明に係るバスバーは、モジュール式コネクタとして構成されてもよく、または、電流伝導路の隣接部分への接続のための少なくとも1つのねじ接続部または接続ラグを備えてもよい。本発明に係るバスバーは、例えば複数の異なるセルまたはモジュールを電気的に接続するために、車両の充電コンタクト要素からバッテリまたはバッテリ内までの電流伝導路に設置されてよい。通常、バスバーは細長の物体であり、その長さは一般に、その直径または相当直径よりも実質的に大きい。
バスバーは、通常は直線状であるが、湾曲していてもよく、または好ましくは鈍角で角度が付いていてもよい。バスバーは、より可撓性の高い部分または要素を有してもよく、または、例えば編組帯または布地帯から、所望の設置スペースにおけるバスバーの取付け性を向上させるように形成されてもよいことを理解されたい。
【0010】
バスバーの断面は、バスバーの全長に沿って一様に構成されることが好ましく、任意のジオメトリを有してよいが、バスバーの断面形状は、矩形、方形、円形、または楕円形であることが好ましい。
【0011】
さらに、バスバーは、バスバーに沿って長手方向に延びる、必須ではないが好ましくはバスバーの全長に沿って延びる、少なくとも1つの空洞部を包囲する外側シースを有する。好ましくは、外側シースは、前端面および/または後端面を有し、その各々が、バスバーの長さに垂直に配置され、空洞部の外方の端部をなす。空洞部は通常、外側シースにより完全に包囲される。
【0012】
好ましくは、本発明に記載のバスバーの前端面および後端面には、場合により中間層または付着促進剤または表面構造を有する、SnまたはSn合金、AgまたはAg合金、NiまたはNi合金の特殊な表面被膜が施された、端子ラグまたは堅固なプレスされた端部領域が設けられる。例えばねじ接続またはUS溶接(US-welding)により、充電口またはバッテリもしくはバッテリセルとの接触が形成される。外側シースは、押出成形などの製造プロセスにより一様な構成要素として製造されてよいが、バスバーを形成するために、例えば溶接またははんだ付けにより、外周面の部分的領域を各々が形成する個々のシートまたはプレートを接続することも可能である。外側シースは、編組帯または布地帯からなる、または複数の編組帯または布地帯の接続体からなるものであってもよい。
例えばプラスチックから形成される場合もある外側シースは、シュリンクチューブ(shrink tube)としてまたは押出成形により製造されてよい。加えて、空洞部と接する外側シースの内面には、従来技術のスズめっき加工法によりスズ層が設けられてよい。
【0013】
外側シースは一般に、少なくとも部分的に、例えば銅またはアルミニウムをベースとする導電性金属合金からなる。これは、商業的かつ技術的に純粋なアルミニウムまたは銅材料の使用を含むことを理解されたい。特に、銅から作製される材料の場合、合金化元素の添加を、完全に回避するのではないにせよ低減することが好ましい。酸素、リン、ケイ素、リチウム、マグネシウム、ホウ素、スズ、クロム、ジルコニウムおよび/または鉄などの合金化元素が、選択された材料に存在してよいが、3wt%未満であることが好ましい。外側シースに用いられ得るCu合金は、例えば、とりわけC10200、C11000、C12200、C10100を含む。
アルミニウム系材料に関しては、純アルミニウム合金、99.99wt%のAl純度を有する超高純度アルミニウム、マグネシウムおよびケイ素との合金、またはジルコニウムとの合金が、優先的に用いられてよい。可能な合金としては、とりわけ、A1050、AW5743、A1350、AW6101がある。
【0014】
バスバー全体にわたって一定のままであることが好ましい外側シースの肉厚は、バスバーの所望の重量、スペース要件(space requirements)および/または必要な通電容量に応じて調整および選択されてよい。外側シースの肉厚は、好ましくは少なくとも1mmであり、好ましくは1~3mmの間であり、好ましくは4mmを超えない。さらに、バスバーの断面から見て、外側シースは、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは35%、最も好ましくは50%の面積率を有し、残りの面積率は、空洞部により決定される。外側シースの面積率を70%超、好ましくは60%超に増大させることは推奨されない。
【0015】
本発明に係るバスバーの空洞部は、少なくとも1つの金属発泡体(metal foam)を含む。金属発泡体の固有の特徴である金属発泡体の気孔は、少なくとも部分的に相変化材料で充填される。
【0016】
金属発泡体は、導電性かつ熱伝導性の材料からなり、好ましくは銅またはアルミニウムをベースとする金属材料を含むことが好ましい。これは、技術的に純粋なアルミニウムおよび銅の合金を含んでよいが、好ましくは外側シースの前述の化学的組成を反映する合金を含んでもよい。金属発泡体の製造プロセスに起因して、Al、Mg酸化物、Ca酸化物、Ti水素化物、SiC粒子などの含有物が、その組成に存在する場合がある。本発明の好適な実施形態において、金属発泡体は、周囲の外側シースと同じ化学的組成を有する。別の好適な実施形態において、外側シースは、CuまたはCu合金からなり、一方で金属発泡体は、AlまたはAl合金からなる。さらなる好適な実施形態において、外側シースは、AlまたはAl合金からなり、一方で金属発泡体は、CuまたはCu合金からなる。
【0017】
金属発泡体は、複数の方法により製造されてよい。例えば粉末冶金法において、金属粉末がプロペラントパウダー(発泡粉末)、例えば水素化チタンなどの水素化物と均一に混合され、前駆体材料に圧縮成形される。これは、粉末成形体の一軸または静水圧プレス、粉末押出、コンフォーム押出またはチクソキャスティングにより行うことができる。その後、必要な場合には、開始材料がさらに、成形法を用いて加工され、またはミリングなどにより機械加工されてよい。前駆体材料は次いで、金属粉末の溶融温度に等しいまたはそれを超える温度まで加熱される。この加熱の間、プロペラント剤(発泡剤)がガスを放出し、それにより、溶融金属の膨張および気孔形成が生じ、よって金属発泡体が生成される。発泡体の膨張が最大に達すると、系または金属発泡体が冷却され、それにより固体相に移る。
【0018】
このプロセスは、適当な金型において行われてよく、それにより、膨張する金属発泡体が金型の内形を帯びる。例えば、前駆体材料は、好ましくは押出成形された外側シースに導入されてよく、それにより、発泡プロセスが直接外側シース内で行われる。このようにして、バスバーを外側シースおよび金属発泡体に対して一様な構成要素として製造することができる。このように製造されたバスバーは、自動車における導電性構成要素として用いられる前に、曲げ、プレスまたは切断などのさらなる加工工程を受ける場合があることを理解されたい。
【0019】
ニアネットシェイプの金属発泡体構成要素は、冷却後に金型から取り除かれ、必要な場合には機械加工法によりさらに加工されてもよい。完成した独立の金属発泡体は次いで、バスバーの最終寸法を有する外側シースの空胴プロファイルに挿入されてよい。このプロセスにおいて、金属発泡体構成要素は通常、例えば、内側被膜、例えば上記のスズ被膜への溶融または融着により、外側シースの内周面に接続される。内側被膜は、金属発泡体構成要素が導入されると、金属発泡体構成要素を巻き込みながら、内周面において加熱下で固化する。ただし、発泡体を2つのプレートまたはシートの間で挟み込み、追加のプレートまたはシートを発泡体の周囲に溶接またははんだ付けすることにより外側シースを作製することも可能である。
この変形例においても、外側シースの製造の範囲内において、プレート/シートと金属発泡体構成要素との間の直接のしたがって熱伝導性の高い接続に注意が払われ、または、熱伝導性の高い接続が金属発泡体構成要素と外側シースとの間に後で形成される。発泡体を金型において発泡させ、固化させることで外側シースを形成してもよく、外側シースは、例えば発泡体を形成する膨張した材料を金型の壁において凝結させることにより、形成されてよい。これにより、発泡体および外側シースが一体に作製される。
【0020】
金属発泡体は、ガスインジェクションを用いて溶融物を発泡させることにより製造されてもよい。この目的で、ガス放出プロペラント剤(発泡剤)を添加することに代えて、特殊なインペラを用いて溶融物に直接ガスが噴射される。溶融物において浮かび上がる気孔が、溶融槽の表面に液体発泡体を形成し、これが取り出されて固化する。インベストメント鋳造法も、金属発泡体構造の作製に適しており、したがって、ここで用いられる金属発泡体を作製するために用いられてもよい。
【0021】
上述の金属外側シースと同様に、金属発泡体の周囲に配置される、プラスチック、例えばPTFE、ポリイミドまたはポリエステルの外側シースが、任意選択的な熱の印加により、金属発泡体とより密着させられてよい。
【0022】
金属発泡体は一般に、バスバーの長手方向および横断方向に延びる気孔を有し、気孔は、製造プロセスに応じてサイズが様々であってよく、独立であっても相互に連結していてもよい。この文脈において、開気孔発泡体と閉気孔発泡体とが区別される。
【0023】
金属発泡体は、外側シースの空洞部を完全に充填することが好ましい。金属発泡体はまた、周囲の外側シースの内面との少なくとも1つの接触面を有することが好ましい。外側シースと金属発泡体との間のそのような接触を形成することにより、金属発泡体が、バスバーを通って流れる電流の一部を伝導し、よって構成要素の通電容量に好ましい影響を及ぼすことができる。加えて、金属発泡体はまた、外側シースからバスバーの最内部に向かって電流の流れにより生成される熱エネルギーを伝導し、それにより、バスバー全体にわたるこの熱エネルギーの向上したまたはより一様な分布が可能となる。相変化材料と直接接触する金属発泡体の表面が大きいことに起因して、より多くの熱エネルギーが相変化材料に達し、その結果、バスバーからの放熱がより良好になる。
【0024】
外側シースの内面と金属発泡体との間の接触領域の数を増大させる、かつ/またはこれらの接触領域を最適化するために、熱処理がバスバーに対して行われてよい。熱処理は、製造プロセスとは独立してバスバーに対して行われてよいことを理解されたい。熱処理の温度および継続時間の選定は、外側シースの材料、外側シースおよび金属発泡体の任意選択的な表面被膜の存在に依存する。スズめっき加工されるバスバーについては、230℃~400℃の間での温度処理が適当である。処理の継続時間は、バスバーのサイズにより定められる。そのような処理により、場合によっては外側シースの内側被膜の溶融を伴って、金属発泡体と外側シースとの間の金属の導電性の接続を確立し、必要な場合は向上させることができる。
【0025】
バスバーの冷却効果をさらに向上させ均質化するために、金属発泡体における相変化材料の量を最大化することがさらに好適である。したがって、相変化材料は、金属発泡体の気孔の少なくとも50%、しかしながら好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも98%を充填すべきである。70%の充填率からは、PCMの粘度に適合した気孔サイズを有する開気孔発泡体の使用が好適である。相変化材料で充填される金属発泡体の気孔の部分は、対応する断面の視覚的分析により決定されてよい。
【0026】
金属発泡体の気孔は、互いに接続され金属発泡体の最外面にも接続されている空隙または気孔(開気孔)と、互いに接続されていない空隙または気孔(閉気孔)との合計から構成される。金属発泡体が相変化材料で充填可能であることを確実にするために、金属発泡体における開気孔の数を最大化し、閉気孔の数を低減することが好適である。したがって、金属発泡体は、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも70%の開気孔を有するべきであり、金属発泡体の完全な開気孔の構造が、本発明の好適な実施形態である。
金属発泡体の気孔は、気孔サイズ、気孔数およびその分布により特徴付けられてもよい。好ましくは、金属発泡体は、略一定の気孔サイズを有する。さらに、気孔は、金属発泡体全体にわたって均一に分布することが好ましい。
【0027】
適切な気孔サイズおよび気孔数は、用いられる相変化材料の割合および種類および化学的組成に関して金属発泡体の割合を最適化することにより決定される。金属発泡体が過度に多孔性であり、最少量の金属構造のみを有する場合、外側シースからバスバーの内部の相変化材料までの熱エネルギーの伝導がより遅くなる場合がある。他方、気孔率が低すぎる場合、熱エネルギーの吸収に利用可能な相変化材料がより少量になる。金属発泡体の気孔は、気孔数および気孔サイズの組み合わせにより特徴付けられるため、適用例におけるPCMに、したがって使用領域に強く関連する。したがって、用いられる金属発泡体は、少なくとも10のインチあたり気孔数(PPI)、好ましくは20PPI、好ましくは最大45PPIを有する。PPIという用語は、1リニアインチにおける気孔数を指す。
インチあたりの気孔数(PPI)に応じて、平均気孔直径は、0.3~5mmの間である。
【0028】
金属発泡体の気孔率は、例えば密度測定により決定されてよい。金属発泡体の気孔サイズおよび気孔数は、粒度分析に用いられるものなどの金属組織学的顕微切片およびその後の評価プログラムにより決定されてよい。
【0029】
相変化材料は一般に、その比熱容量に起因して貯蔵可能な熱エネルギーよりも融解潜熱が著しく大きい材料として理解される。よって、相変化材料は、潜熱の貯蔵が可能である。相変化材料の場合、特定の相変化温度に達するまたはそれを超えると、相転移が生じる。相転移は、完全に相変化材料により行われる必要はなく、例えば周囲温度の変動に応じて、部分的にのみ生じてもよい。相転移の例は、固体から液相への変化である。よって、相変化材料は、特定の相変化温度を超えると、次第に液化または固化し、この過程において、この相転移を実現するために用いられる熱を吸収することができる。
その後、相転移中に熱が相変化材料に供給されなくなった場合、またはそれに代えて相変化材料が完全に液化する前に冷却された場合、相転移が完全には行われず、再び相変化材料が次第に固体化し、最終的には再び完全に固相に達する。換言すれば、相変化材料は、相転移が完了していない、すなわち相変化材料が第1の相または集合状態から第2の相または集合状態に完全に転移している限り、熱エネルギーを吸収することができる。相変化材料が第2の相において再び冷却した場合、相変化材料は、再び第2の相または集合状態から第1の相または集合状態に転移し、このとき、それに応じて熱が再び放出される。
【0030】
本発明の相変化材料は、相変化温度が40℃~130℃の間であり、当該相変化材料の固体-液体転移を示すように構成されることが好ましい。
【0031】
相変化材料(PCM)は、無機化合物または有機化合物から作製されてよく、有機化合物は、パラフィン材料および非パラフィン材料にさらに分類される。本発明に係る相変化材料は、有機化合物、特にパラフィンを含む。さらに、本発明は、生分解性PCMの使用を含み、よって、脂肪酸または脂肪酸エステルまたはメチルエステルをベースとする非パラフィン系相変化材料の使用を含む。持続可能性の理由から、ベンゾオキサジンまたはカルダノール+アミンなどのパルミチン酸系または樹脂系のPCMが好適である。特殊な場合においては、無機化合物が用いられてもよい。
【0032】
相変化材料は、相変化温度に等しいまたはそれよりも高い温度まで相変化材料を加熱し、液体の相変化材料を金属発泡体に導入するまたは浸透させることにより、金属発泡体に導入されてよい。金属発泡体の気孔への相変化材料の浸透は、重力下で行われてよいが、追加の圧力が印加されてもよい。金属発泡体が外側シースに入るまで、相変化材料が導入されないことが好ましい。
【0033】
さらに、本発明はまた、自動車の充電コンタクト要素からバッテリモジュールまでまたはバッテリモジュール内への電流伝導路において本発明に係るバスバーを少なくとも1つ有する電動自動車に関する。
【0034】
本発明のさらなる詳細および利点が、図面と併せて、実施形態の以下の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】2つのバスバーの斜視図である。
図2】第2のバスバーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1および図2において、参照符号10は、バスバーを表す。図1に示すように、円形の断面を有するバスバーが参照番号10.1により表され、矩形の断面を有するバスバーが参照番号10.2で表されている。バスバーの断面ジオメトリにかかわらず、両方が、気孔を有する金属発泡体14が収容される空洞部13を包囲する外側シース12を有する。
【0037】
図2は、1mmの肉厚16を有する矩形バスバー10.2の断面20を示す。外側シース12の面積率および空洞部13の面積率は各々、バスバー10の全断面の50%となる。
【符号の説明】
【0038】
10 バスバー
10.1 バスバー
10.2 バスバー
12 外側シース
13 空洞部
14 金属発泡体
16 肉厚
20 断面
図1
図2