(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】電力システムのための拡張バス・インピーダンス及びサンプ制御
(51)【国際特許分類】
H02J 3/16 20060101AFI20241126BHJP
H02J 3/18 20060101ALI20241126BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H02J3/16
H02J3/18
H02J15/00 A
(21)【出願番号】P 2023522955
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 US2021053173
(87)【国際公開番号】W WO2022081355
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-06-13
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】クズネツォフ,スティーブン ビー.
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0336928(US,A1)
【文献】国際公開第2016/066396(WO,A1)
【文献】特開昭47-003772(JP,A)
【文献】国際公開第2020/005407(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/16
H02J 3/18
H02J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電力を分配するよう構成される配電バスと、
前記電源からの前記電力の一部を受け取るよう構成される複数の電気負荷と、
前記配電バスに並列に接続される複数の周波数変換器であって、各周波数変換器は、前記電気負荷のうちの1つに対応し、各周波数変換器は、前記電源からの前記電力の周波数を、対応する電気負荷に関連付けられる出力周波数に変換し、前記対応する電気負荷に有効電力を提供するよう構成される、複数の周波数変換器と、
前記電気負荷のうちの1つ以上に電力を供給するために変換可能な慣性エネルギーを貯蔵するために回転するよう構成されるフライホイールと、
前記フライ
ホイールに結合され、かつ複数のDFIM三次巻線ポートを備える二重給電誘導機(DFIM)であって、各DFIM三次巻線ポートは、前記電気負荷のうちの対応する1つに進み無効電力を提供し、結果として前記電源からの有効電力を主に提供する前記複数の周波数変換器における無効電力需要を低減するように構成され、前記DFIMは、シャント接続され、前記電気負荷のうちの1つ以上における電力の変化に応答して、前記配電バスにおける伝送インピーダンスを低減し、前記配電バスにおける電圧降下を低減するよう構成される、二重給電誘導機(DFIM)と、
を備える、システム。
【請求項2】
前記電気負荷のうちの1つに関連付けられる電力は、サンプ状態に関連付けられる低周波数で振動し、
前記DFIMは、前記電源又は当該システムにおける前記サンプ状態の影響を最小限に抑えるために、前記サンプ状態に関連付けられるエネルギーを前記フライホイールから抽出するか、又は前記サンプ状態に関連付けられるエネルギーを前記フライホイールに戻すように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電気負荷のうちの前記1つに関連付けられる前記電力は、再生電力と非再生電力の間で振動し、
前記DFIMは、前記再生電力のうちの少なくとも一部を受け取り、前記再生電力のうちの前記少なくとも一部を使用して、前記フライホイールに貯蔵された前記慣性エネルギーを増加させるよう構成される、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記DFIMは、複数の出力ポートを含み、各出力ポートは、他の出力ポートとは独立に、前記サンプ状態に関連付けられる前記エネルギーの少なくとも一部を吸収するよう構成される、
請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
軸速度と慣性貯蔵エネルギーの変化に対して三次巻線における各出力周波数を実質的に一定の値に維持するように、前記DFIMの二次巻線における励磁電流と周波数を前記フライホイールの軸速度に反比例するように変化させるよう構成されるDFIM励磁器を更に備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電気負荷の各々は、無効電力需要又は無効電力振動を有する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
複数の電気負荷のための電力を生成するよう構成される発電機と、
前記発電機からの前記電力を受け取って分配するよう構成される配電バスと、
前記配電バスに並列に接続される複数の周波数変換器であって、各周波数変換器は、前記電気負荷のうちの1つに対応し、各周波数変換器は、前記発電機からの前記電力の周波数を、対応する電気負荷に関連付けられる出力周波数に変換し、前記対応する電気負荷に有効電力を提供するよう構成される、複数の周波数変換器と、
前記電気負荷のうちの1つ以上に電力を供給するために変換可能な慣性エネルギーを貯蔵するために回転するよう構成されるフライホイールと、
前記フライ
ホイールに結合され、かつ複数のDFIM三次巻線ポートを備える二重給電誘導機(DFIM)であって、各DFIM三次巻線ポートは、前記電気負荷のうちの対応する1つに進み無効電力を提供し、結果として前記発電機からの有効電力を主に提供する前記複数の周波数変換器における無効電力需要を低減するように構成され、前記DFIMは、シャント接続され、前記電気負荷のうちの1つ以上における電力の変化に応答して、前記配電バスにおける伝送インピーダンスを低減し、前記配電バスにおける電圧降下を低減するよう構成される二重給電誘導機(DFIM)と、
を備える、システム。
【請求項8】
前記電気負荷のうちの1つに関連付けられる有効又は無効電力は、サンプ状態に関連付けられる低周波数で振動し、
前記DFIMは、前記発電機又は当該システムにおける前記サンプ状態の影響を最小限に抑えるために、前記サンプ状態に関連付けられるエネルギーを前記フライホイールから抽出するか又は前記サンプ状態に関連付けられるエネルギーを前記フライホイールに戻すよう構成される、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記電気負荷のうちの前記1つに関連付けられる電力は、再生電力と非再生電力の間で振動し、
前記DFIMは、前記再生電力のうちの少なくとも一部を受け取り、前記再生電力のうちの前記少なくとも一部を使用して、前記フライホイールに貯蔵された前記慣性エネルギーを増加させるよう構成される、
請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記DFIMは、複数の出力ポートを含み、各出力ポートは、他の出力ポートからガルバニック分離され、前記他の出力ポートとは独立に、前記サンプ状態に関連付けられる前記エネルギーの少なくとも一部を吸収するよう構成される、
請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
軸速度における広範な変化に対して三次巻線における各出力周波数を実質的に一定の値に維持するように、前記DFIMの二次巻線における励磁電流と周波数を前記フライホイールの軸速度に反比例するように変化させるよう構成されるDFIM励磁器を更に備える、
請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記電気負荷の各々は、無効電力需要又は無効電力振動を有する、
請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
発電機を使用して複数の電気負荷のための電力を生成するステップと、
配電バスにおいて前記電力を受け取って、前記電気負荷における使用のために前記電力のうちの少なくとも一部を分配するステップと、
複数の周波数変換器によって、前記発電機からの前記電力の周波数を、対応する電気負荷に関連付けられる出力周波数に変換し、前記対応する電気負荷に有効電力を提供するステップであって、前記複数の周波数変換器は、前記配電バスに並列に接続され、各周波数変換器が、前記電気負荷のうちの1つに対応する、ステップと、
前記電気負荷のうちの1つ以上における無効電力の需要に応答して、シャント接続された二重給電誘導機(DFIM)を使用して、前記配電バスにおける伝送インピーダンスを低減するステップであって、前記DFIMは、複数のDFIM三次巻線ポートを備え、各DFIM三次巻線ポートは、前記電気負荷のうちの対応する1つに進み無効電力を提供し、結果として前記発電機からの有効電力を主に提供する前記複数の周波数変換器における無効電力需要を低減するように構成される、ステップと、
慣性エネルギーを貯蔵し、かつ前記電気負荷のうちの1つに関連付けられる電力の振動から前記発電機を守るために、前記DFIMに結合されるフライホイールを回転させるステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記電気負荷のうちの1つに関連付けられる有効電力は、サンプ状態に関連付けられる低周波数で振動し、
当該方法は、前記発電機における前記サンプ状態の影響を最小限に抑えるために、前記DFIMを介して、前記サンプ状態に関連付けられるエネルギーを前記フライホイールから抽出するか、又は前記サンプ状態に関連付けられるエネルギーを前記フライホイールに戻すステップを更に含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記DFIMは、一次又は二次巻線とは異なる電圧レベルで動作し、かつ前記電気負荷によって要求される前記無効電力の少なくとも一部を補償する、前記複数のDFIM三次巻線ポートにおいて進み無効電力を生成する非対称の空間過渡巻線を含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記DFIMの二次巻線はDFIM励磁電源に結合され、前記DFIM励磁電源は、前記複数のDFIM三次巻線ポートが進み無効電力又は遅れ無効電力を提供して、反復的又は過渡的に振動負荷状態の力率を補償することを可能にするよう構成される、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記DFIMは、複数の多相とガルバニック分離された出力ポートを含み、
当該方法は、各出力ポートにおいて、他の出力ポートとは独立に、前記サンプ状態に関連付けられる前記エネルギーの少なくとも一部を吸収するステップを更に含む、
請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電気機械を使用する電力システムに向けられる。より具体的には、本開示は、脈動負荷(pulsating loads)を有する電力システムのための拡張バス・インピーダンス(augmented bus impedance)及びサンプ制御(thump control)に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶上の多くの可変速度ドライブ又はレーダー電源物資は、エネルギー貯蔵をほとんど持たない又はまったく持たない。その結果、出力電力の過渡変動(transient swings)は、それに対応して主交流(AC)バス上で大きなエネルギー変動を示し、その結果として電圧変動が生じる。大きな有効電力(real power)変動が生じると、これらは船舶電力システム上の無効電力(reactive power)の大きな変動(kVAR)を伴い、原子炉バルブの応答を含む最高レベルでの発電機の動作に影響を与える。中電圧AC配電を備えた既存の船舶は、無効電力の制御が最小限であり、静的なボルトアンペア無効電力(VAR)コンペンセータは使用されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、電力システムのための拡張バス・インピーダンス及びサンプ制御のためのシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の実施形態において、システムは、電源からの電力を分配するよう構成される配電バスを含む。システムはまた、電源からの電力の一部を受け取るよう構成される複数の電気負荷も含む。システムは更に、電気負荷のうちの1つ以上における電力の変化に応答して、配電バス上の伝送インピーダンス及び電圧降下を低減し、エネルギー貯蔵能力を提供するよう構成される二重給電誘導機械(doubly-fed induction machine、DFIM)を含む。
【0005】
第2の実施形態において、システムは、複数の電気負荷のための電力を生成するよう構成される発電機を含む。システムはまた、発電機からの電力を受け取って分配するよう構成される配電バスも含む。システムは、電気負荷のうちの1つ以上における有効又は無効電力の変化に応答して、伝送インピーダンス及び配電バス上の電圧降下を低減するよう構成されるDFIMを含む。
【0006】
第3の実施形態において、方法は、発電機を使用して複数の電気負荷のための電力を生成するステップを含む。方法はまた、配電バスにおいて電力を受け取って、電気負荷における使用のために電力のうちの少なくとも一部を分配するステップも含む。方法は、電気負荷のうちの1つ以上における無効電力の変化に応答して、DFIMを使用して、配電バスにおける伝送インピーダンス及び配電バスにおける電圧降下を低減するステップを更に含む。
【0007】
他の技術的特徴は、以下の図面、説明及び特許請求の範囲から当業者には容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のより完全な理解のために、以下の説明は、添付図面と併せて参照される。
【0009】
【
図1】本開示による、拡張バス・インピーダンス制御(augmented bus impedance control、ABIC)の例示のシステムを示す図である。
【0010】
【
図2A】本開示による、
図1のシステムにおける発電機リアクタンスの関数として伝送可能電力を示す例示のグラフを示す図である。
【0011】
【
図2B】正及び負のスリップ値での従来の二重給電誘導発電機の動作の範囲を示す図である。
【0012】
【
図3A】本開示による、二重給電誘導機(doubly-fed induction machine、DFIM)の無効電力出力のための広範な制御を示す例示のグラフを示す図である。
【
図3B】本開示による、DFIMの無効電力出力のための広範な制御を示す例示のグラフを示す図である。
【
図3C】本開示による、DFIMの無効電力出力のための広範な制御を示す例示のグラフを示す図である。
【
図3D】本開示による、DFIMの無効電力出力のための広範な制御を示す例示のグラフを示す図である。
【0013】
【
図3E】本開示による、中間バスに進み無効電力(leading reactive power)を提供する能力を有する、三次巻線と過渡条件を持つ例示の誘導機のグラフ305を示す図である。
【0014】
【
図4】本開示による、ABICの別の例示のシステムを示す図である。
【0015】
【
図5A】本開示による、
図4のDFIMによる無効電力制御を示す例示のフェーザ図を示す図である。
【
図5B】本開示による、
図4のDFIMによる無効電力制御を示す例示のフェーザ図を示す図である。
【
図5C】本開示による、
図4のDFIMによる無効電力制御を示す例示のフェーザ図を示す図である。
【
図5D】本開示による、
図4のDFIMによる無効電力制御を示す例示のフェーザ図を示す図である。
【0016】
【
図6】本開示による、
図4に示される3つの出力分岐のうちの1つの例示の等価回路を示す図である。
【0017】
【
図7A】従来の大型電力変換器の特性を示す図である。
【
図7B】従来の大型電力変換器の特性を示す図である。
【
図7C】従来の大型電力変換器の特性を示す図である。
【
図7D】従来の大型電力変換器の特性を示す図である。
【0018】
【
図8A】本開示によるABIC機械の例示の巻線図を示す図である。
【
図8B】本開示によるABIC機械の例示の巻線図を示す図である。
【0019】
【
図9】本開示による拡張バス・インピーダンス制御の例示的な方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に説明される
図1から
図9及び本特許文書において本開示の原理を説明するために使用される様々な実施形態は、例示のみを目的としており、いかなるようにも本開示の範囲を限定するように解釈されるべきではない。当業者は、本開示の原理が、適切に配置されたすべてのタイプのデバイス又はシステムにおいても実装されてもよいことを理解するであろう。
【0021】
簡潔性及び明確性のために、一部の特徴及び構成要素は、他の図面に関連して図示されるものを含め、すべての図面において明示的に示されていない。図面に示されているすべての特徴は、説明される実施形態のいずれかにおいて採用されてもよいことが理解されよう。特定の図面からの特徴又は構成要素の省略は、簡潔性及び明確性のためであり、その図面に関連して説明されている実施形態において、その特徴又は構成要素を採用することができないことを暗示することを意味するものではない。
【0022】
上述のように、船舶上の多くの可変速度ドライブ又はレーダー電源物資は、エネルギー貯蔵をほとんど持たない又はまったく持たない。その結果、出力電力の過渡変動は、それに対応して主交流(AC)バス上で大きなエネルギー変動を示し、その結果として電圧変動が生じる。大きな有効電力変動が生じると、これらは船舶電力システム上の無効電力の大きな変動を伴い、原子炉バルブの応答を含む最高レベルでの発電機の動作に影響を与える。中電圧AC(MVAC)配電(例えば4.16kVから13.8kV)を備えた既存の船舶は、無効電力の制御が最小限であり、静的なボルトアンペア無効電力(VAR)コンペンセータは使用されない。
【0023】
現代の船舶電力システムは、一般的なAC配電システム上で、低周波数/低パルス繰返し周波数(PRF)と高周波数/高PRFの両方の脈動負荷の組合せを有する。脈動負荷間の干渉は、多くの軍用船舶で大きな問題となっている。例えばレーダー交流直流(AC/DC)電力変換器は、コンプレッサ及びポンプ装置に使用される従来の可変速度ドライブと負の相互作用をする。メガワット規模でこの問題を適切に解決するためには、エネルギー貯蔵管理と無効電力変調の組合せが望まれる。
【0024】
本開示は、電力システムのための拡張バス・インピーダンス制御の様々な実施形態を提供する。開示される実施形態は、ACバスを強化し、電圧サグを低減し、「サンプ」(低周波電力振動(power oscillation))を大幅に低減するために、有効及び無効電力制御をアクティブ・エネルギー貯蔵と組み合わせる。開示される実施形態では、二重給電マルチポート誘導機を使用して、「弱い」AC電力システムにおける補償のための無効制御及びサンプエネルギーを提供する。主力発電機から負荷サイトまでの伝送距離が長い海軍船舶は、直列電気リアクタンス(series electrical reactance)が非常に高いため、弱いシステムを構成する可能性がある。開示される実施形態は、これらのタイプのシステムにおける電圧調整と無効電力の安定性を改善する。サンプの軽減は、変動的又は確率的負荷を有する陸上ベースと船舶ベースの電力システムの両方で望ましい。
【0025】
本開示の実施形態は、本明細書で説明される特徴のいずれか1つ、2つ以上又はすべてを含むことがあることが理解されよう。また、本開示の実施形態は追加的又は代替的に、本明細書に列挙されていない他の特徴を含むことがある。開示される実施形態は、海軍船舶及び早期警戒レーダー電力システムに関して説明されることがあるが、これらの実施形態は、他の適切なシステム又は用途にも適用可能である。
【0026】
図1は、本開示による拡張バス・インピーダンス制御(ABIC)のための例示のシステム100を示す。システム100のいくつかの実施形態を、海軍船舶電力システムに使用することができるが、他の用途も本開示の範囲内である。上述のように、ABICは、ACバスを強化し、電圧サグを減少させ、「サンプ(thump)」を減少させるための、有効及び無効電力制御とエネルギー貯蔵の組合せを表す。
【0027】
図1に示されるように、システム100は、AC配電バス104に周波数f1で電力を提供する発電機セット102(例えばタービン発電機)を含む。システム100はまた、高速脈動負荷110(例えばレーザー、レーダー、レールガン等)に有効電力とエネルギー貯蔵を提供し、かつ配電バス104に電圧/VARサポートを提供するための調整可能な無効電力のソースも提供する、二重給電誘導機(DFIM)106を含む。DFIM106は、その固定子又は一次巻線に出入りする有効電力と無効電力の両方の双方向電力流を有する電気機械であり、DFIM106は、その回転子又は二次巻線に供給される励磁AC電力によって制御される。
【0028】
配電バス104は、発電機セット102からの電力を、DFIM106に及び低速脈動負荷112に分配する。低速脈動負荷112は、1つ以上のコンプレッサ、ポンプ等を表すことができる、「ハウスキーピング」負荷である。配電バス104の部分を、様々な要因に応じて、「強い」バス又は「弱い」バスとして特徴付けることができる。1つの要因は、電流が指定量(例えば80%)だけ変動するときに、高速脈動負荷110でどの程度の電圧変動が発生するかである。弱いバスでは、高速脈動負荷110における電圧が大幅に(例えば20%以上)変動することがある。強いバスでは、電圧の変動ははるかに小さい(例えば5%以下)。弱いバスは、中間変圧器に加えて、長い伝送距離(例えば約800フィート以上)にわたって存在する伝送ケーブルのインダクタンスが原因である可能性がある。バスの強さを特徴付ける別の要因は、短絡定格(short circuit rating)である。例えば強いバスはより高い短絡定格を有することがあり(例えば40MVA)、弱いバスはより低い短絡定格を有することがある(例えば6MVA)。
【0029】
DFIM106は回転機械であり、静的VARコンペンセータで典型的に使用されるACキャパシタバンクの約2倍の容量性エネルギー貯蔵密度を有することがある(例えば8.43MVAR/m3対4MVAR/m3)。DFIM106は高速フライホイール108に結合されており、これは、エネルギーを慣性エネルギーの形式で貯蔵し、発電機セット102を電気負荷のうちの1つに関連付けられる電力の振動から緩衝し、それにより、システムの電力サージを軽減する。フライホイール108はまた、標準的な船舶用タービン発電機が応答することができるよりも速い応答時間でDFIM106がサンプを軽減するのにも役立つ。サンプを軽減することにより、すべての主要な電気機器の寿命が延びる。
【0030】
図1に示されるように、DFIM106は、3つの固定子巻線ポートを含む。ポート1は、固定子への一次電源入力であり、ポート2及び3は固定子の出力ポートである。ポート1は、不安定な配電バス104から入力皮相電力(input apparent power)(MVA)を受け取る。ポート2は、反復性(recurrent)電力又は電流サージで脈動負荷110に安定した有効電力(メガワット程度)を提供する。負荷110は、整流されたDC負荷であってもよく、厳密にはAC負荷であってもよい。ポート1とポート2は、フライホイール108と電力/エネルギーを交換する。ポート3は、進み力率無効電力(leading power factor reactive power)Q3(MVAR)を生成し、これは、回転子(又は二次)励磁多相電力入力の作用によって変調され、この無効電力Q3は配電バス104に注入される。ABIC無効コントローラ114は、電圧レベルを調整して、それぞれの負荷に対する正しいVAR一致を得る。無効電力Q3は、一般に、DFIM106の出力電圧の二乗に比例する。ポート3は「同期コンデンサ」機能をサポートし、ソースエネルギーとしてDFIM106の貯蔵された磁場を利用する。多相回転子励磁は、別のAC励磁電源116から得られる。この回転子励磁電源は、出力電力の1~2回電気サイクル程度で、回転子電流と電圧レベルを迅速に変更する能力を有し、その結果、ポート2及びポート3における出力電圧を迅速に変調することができる。
図1は1つのDFIM106のみを示しているが、これは単なる一例にすぎない。他の実施形態は、反対方向に回転する1つ以上の機械を含む追加のDFIM106を含むことができる。
【0031】
図2Aは、本開示による、
図1のシステム100内の発電機リアクタンスの関数として伝送可能電力を示す例示のグラフ200を示す。
図2Aに示されるように、P
maxは、発電機セット102から負荷110への最大正規化伝送可能電力である。電力は、伝送線路特徴インピーダンスZ
oに正規化された発電機リアクタンスX
tに対して示されている。伝送線路はほとんどが誘導性である場合であっても、長さに関係なく、伝送線路は無効電力の需要(demand)がある。グラフ200内のラベル1から5の曲線は、異なる長さの伝送線路を表す。曲線1は、最も短い長さ(例えば0.5km)又は「最も強い」バスを有する伝送線路である。曲線5は、最も長い長さ(例えば2.5km)又は「最も弱い」バスを有する伝送線路である。
【0032】
点P
1は、単位あたり最大電力P
max=2.5なので、典型的な固定リアクタンスX
t/Z
o=0.20/単位の所望の動作点を表す。量P
oはソース発電機の公称出力電力である。同じ発電機リアクタンスX
t/Z
o=0.20の場合、P
maxは単位あたりわずか1.0であるため、点P
5は、最も望ましくない動作点である。比P
max/P
oを大きくし、1.0より大きくすることが望まれるか又はそのようにする必要があり得る。システム100は、シャント接続されたDFIM106によるVAR注入レベル(
図1のQ3@V1)に応じて、(許容可能な有効電力を増加させることによって)中長距離伝送線路上の動作点P5をP1とP5の間の動作点に変更する。実際には、電圧降下が大きいため、システムは典型的に、X
t/Z
o>0.40を使用しない。開示される実施形態は、本明細書で詳述されるように、AC/DC制御整流器システム及びDFIMから更に下流のDC負荷の無効需要を補償するための無効電力の必要性もカバーする。
【0033】
図2Bは、正及び負のスリップ値における従来の二重給電誘導発電機の動作の範囲を示す。
図2Bでは、有効電力出力P
Gは、ソースに接続される従来の二重励磁巻線回転子誘導機の固定子回路用であり、ここで、P
Sは公称電源レベルである。正のスリップ値は、機械がモーターとして動作しており、回転子への電力P
Rの正の流れがあり、ソースエネルギーを吸収していることを示す。負のスリップ値は、機械が発電機として動作しており、回転子から出る電力P
Rの流れがあり、エネルギーをソースに還元していることを示す。回転子の電力は、スリップ値0に関して対称である。信号P
GCは、公称値を上回る又は下回る、ソースに戻されるべき電力を推定するための制御信号である。この配置の1つの問題は、ソースが回転子又はその負荷によって発達した過剰なエネルギーを吸収できない可能性があり、これが、サンプ状態又は反復的過渡挙動を引き起こす可能性があることである。開示される実施形態は、この問題を解決する。
【0034】
図3Aから
図3Dは、本開示による、DFIM無効電力出力の広範な制御を示す例示のグラフ301~304を示す。いくつかの実施形態では、グラフ301~304は、可変スリップ励磁制御周波数を持つ60Hz出力の三次多相機械巻線に基づくことができる。明らかに、この概念を、60Hzより十分に低く、60Hzより十分に高い周波数に拡張することができる。DFIMは、
図1のDFIM106で表わされてよい。
【0035】
図3Aに示されるように、グラフ301は、
図1のポート1及びポート3の巻線に対応する固定子周辺位置(stator peripheral position)の関数として、Q軸巻線の無効電力出力に対応する磁場直交密度(magnetic field quadrature density)B
qを示している。プロット曲線311は、極6と極8との間のQ軸巻線の無効出力磁場密度B
qを示している。プロット曲線311は、15%スリップの場合、単位直交磁束密度(unit quadrature magnetic flux density)あたり約±1で、点P6と点P8との間のほぼ等しい正と負の無効電力を示している。ここで、無効電力は、
図1のポート3の巻線の固定子電流負荷と無効出力B
qの空間積分である。
【0036】
図3Bに示されるように、グラフ302は、6極までの固定子周辺位置の関数として、Q軸巻線の無効出力放射磁場密度B
qを示している。プロット曲線312は、極4と極6との間のQ軸巻線の無効出力磁場密度B
qを示している。プロット曲線312は、19%スリップの場合、点P4における0から点P6における単位あたりの高度に先行する容量性出力(highly leading capacitive output)5.8までの無効出力を示している。この特性は、固定子周辺位置s/Tp=3.0から開始するVAR生成を助ける補助的な固定子励磁巻線を有する。したがって、無効電力用の中波バスを満たすために純粋な無効出力が必要とされるとき、プロット曲線312で示されるように、DFIMを19%のスリップで動作させ、極4と極6との間に位置する巻線から出力を得ることができる。スリップ値は、出力無効需要に直接応答する回転子スリップ周波数励磁電源によって迅速に制御される。
【0037】
図3Cに示されるように、グラフ303は、4極専用の誘導発電機のスリップ値(単位あたり)と出力周波数f(Hz)の関数として、生成された無効電力Qの正規化限界を示している。f=50~600Hzの範囲の機械の場合、無効特性は、単位スリップあたり約0.05でピークに達する。2つ又は3つの出力を持つ機械の場合、適切な巻線設計を使用することによって、合計Qを出力間で均等に分割することができる。4極の倍数の機械は、4極の複数の反復可能なセクションを利用する。
【0038】
図3Dに示されるように、グラフ304は、固定子エアギャップ周辺位置と単位あたり最大0.25までのスリップ値の関数として、同相正規化エアギャップ径方向束密度(in-phase normalized airgap radial flux density)B
pを示している。束密度B
pは、ポート2又は3のいずれかのDFIMの有効電力出力の主要な成分である。グラフ304に示されるこれらの曲線は、固定子電流負荷(メートル周囲あたりAmp回転)とのスカラー積で空間位置にわたって積分され、ポート2で固定子巻線によって吸収されて、出力負荷が再生するときのモードでフライホイール加速に移される有効電力の限界を予測し、それによってエネルギーを電力システムに送り返す。例えばいくつかの実施形態では、単位あたり0.05から0.11(正又は負)のスリップ値が最も望ましい可能性がある。示される曲線は、磁化係数(magnetization factor)の1つの値、G=X
m/R2=30について有効であり、ここで、X
mは磁化リアクタンスであり、R2は回転子抵抗である。
【0039】
図3Eは、本開示による、中間バスに進み無効電力を提供する能力を有する三次巻線と過渡条件を持つ例示の誘導機のグラフ305を示している。対象のDFIM三次巻線は、これによって定義される特定の制限の下で、電流に対して有効電力と無効電力の両方を出力することができる。
図8A及び
図8Bの巻線図によって定義される空間的過渡状態において、
図3Eは、反復可能なセクションにおける一次固定子極n=1からn=4の異なる族(families)について、単位スリップあたりの関数としてプロットされた総エアギャップ束密度(Bt
2として)と直交束密度(Bq
2として)の組合せを示している。一次巻線の反復可能な固定子セクションの後、固定子周辺は多相三次巻線のセクションで巻かれ、空間過渡が発生する。例えば12極機械は3つの反復可能なセクションを有する。最も有用な特性はn=4族である。太線で示されているように、10%のサンプルスリップ値では、Bq
2値は単位あたり(per unit、p.u.)0.27であり、Bt
2値は単位あたり0.44である。これら2つの点の差は、磁束密度の同相成分Bp
2=0.17(単位あたり)である。Bt
2=Bp
2+Bq
2の関係は、すべてのスリップ値に対して成立する。
【0040】
その結果、成分値は、Bp=0.412p.u.、Bq=0.519p.u.、Bt=0.663p.u.である。単位あたりの基本量は、値Us/(p
r*Js)であり、ここで、Usは同期場速度(synchronous field speed)(ms)、p
rは回転子表面抵抗率(ohms)、Jsは固定子電流負荷(A/m周辺)である。
図3Eの曲線は、負荷から/負荷へのサンプ無効電力を吸収は生じるためのより大きな無効電力(積分Bq*Jsとして計算される)に加えて、三次巻線から利用可能な実質的な有効電力(積分Bp*Jsとして計算される)があることを示す。
図3Eからわかるように、スリップが5%のような値まで減少すると、Bpの相対レベルが減少し、スリップ値が0に近づくにつれて最終的に0に向かって減少する。これは、開示される実施形態の動作モードを定義する;サンプ電力のレベルが増加すると、DFIM406への調整可能な周波数ドライブ414(
図4に関して後述される)は、低スリップから高い値へとスリップ値を瞬間的に増加させて、より高いBpをもたらし、結果として、振動又は不安定な負荷から有効電力を吸収するために、三次巻線の少なくとも1つについてより高い有効電力能力をもたらす。サンプエネルギーは、タービンソースに送り返されるのではなく、マシン回転子内で放散する。
【0041】
DFIM巻線による純粋な有効電力吸収の必要性が生じる場合(フライホイールへの負荷エネルギーの転送等)、機械は、
図3Dに示されるように、極4と極8との間で5~11%のスリップ値で動作することができる。8%のスリップ曲線313は、この4極セクタでBpが単位あたり4.7から12に増加することを示している。対照的に、DFIMが有効サポートと無効サポートの両方を同時に提供しなければならないとき、16%などのスリップ周波数調整によって中間のスリップ値を命令することができる。同相束密度Bpは、単位あたり9.8でかなりのピークに達し、直交束密度Bqは単位あたり3.0である(
図3Bを参照されたい)。スリップ値は、同期速度ω
sを指示するDFIM回転子励磁回路の作用により、任意の機械速度ω
rで調整され、それにより、スリップ=(ω
s-ω
r)/ω
sである。同期速度(ラジアン/秒)は、ω
s=2*πf
s/極ペアの数として、適用される励磁周波数fsに正比例する。最近のドライブは数ミリ秒以内に周波数f
sを変更することができるので、回転子の同期場速度を同じ短い期間で変更することができ、それにより、DFIM出力無効電力のピークの場所を非常に高速に制御することが可能になる。
【0042】
図4は、本開示による、拡張バス・インピーダンス制御(ABIC)のための別の例示のシステム400を示す。以下で議論するように、システム400は、
図1のシステム100の対応する構成要素と同一又は類似の複数の構成要素を含む。
【0043】
図4に示されるように、システム400は、AC配電バス404に電力を提供する船舶電力発電機402を含む。いくつかの実施形態では、発電機402は、
図1の発電機セット102と同一又は類似のものとすることができる。発電機402及びバス404は、4160ボルトや周波数fx等の中程度の多相電圧電位である。
【0044】
システム400はまた、複数の(例えば3つの)多相三次巻線ポート1~3を有するDFIM406も含み、各ポートが、個別のパルス負荷(pulsed load)410~412(例えばレーダー、ジャマー、より高い電圧入力を必要とする電磁エフェクター等)を補償する。DFIM406は、一次又は二次巻線とは異なる電圧レベルで動作し、かつパルス負荷410~412によって要求される無効電力の少なくとも一部を補償する、三次巻線において進み無効電力を生成する非対称の空間過渡巻線(space-transient winding)を備える。DFIM406は、エネルギー貯蔵慣性フライホイール408に結合され、入力にソース周波数fx、出力に周波数foを有する調整可能速度の可変電圧可変周波数(variable-voltage variable-frequency、VVVF)ドライブ414によって速度を上げられる。有効電力Poは、VVVFドライブ414によってDFIM406の一次巻線に提供され、加速電力、摩擦損失、巻線損失及び一次I
2R損失を補償する。回転子とフライホイールが定格速度に達すると、DFIM406は、調整可能な出力kVARとkW特性を持つ回転コンデンサとして動作する。いくつかの実施形態では、DFIM406は8極機械を含み、7,500~11,000rpmの実用的な動作速度範囲に基づいて500~733Hzの出力範囲を有する。もちろん、他の極数、出力範囲及び動作速度範囲も可能であり、本開示の範囲内である。また、
図4は1つのDFIM406のみを示しているが、これは一例にすぎない。他の実施形態は、反対方向に回転する1つ以上のDFIMを含め、追加のDFIM406を含む。
【0045】
各負荷410~412の回路は、AC-AC間周波数変換器416~418と、負荷への所望の入力電圧に応じて昇圧又は降圧変圧器+AC/DC整流器420~422を有する。変圧器420~422は、負荷410~412を電源電力からガルバニック分離(galvanically isolate)するために設けられている。各AC-AC間周波数変換器416~418は、ソース周波数fxを、対応する負荷410~412について選択された中波f1、f2、f3に変換する。f1、f2、f3での中波中間リンクの利点は、変換器420~422のサイズの縮小と、DFIM406のサイズを含め、フィルタ成分サイズの縮小である。システム400のアーキテクチャは、DFIM406の回転子ダンパーケージが、脈動負荷410~412を供給するAC/DC整流器420~422によって生成される、より高い高調波を吸収することを可能にする。
【0046】
各周波数変換器416~418は、周波数f1、f2又はf3を出力し、これは、ソース周波数fxよりも実質的に高い(例えば10x)。DFIM励磁器424を使用してDFIM406の二次(回転子)巻線における励磁電流Ie及び周波数frを軸速度に反比例するように変化させることにより、三次巻線における出力周波数f1、f2及びf3は、エネルギーが抽出されるか又はフライホイール408に戻されるときに、広い速度変化にわたって実質的に一定のままにすることができる。DFIM406の機械巻線の磁気設計に起因して、周波数f1、f2及びf3は好ましくは等しく、DFIM406の主固定子巻線に注入されるVVVFドライブ414からの出力foと同じ周波数である。DFIM励磁器424は、三次巻線出力が、進み無効電力又は遅れ無効電力(lagging reactive power)を提供して、反復的又は過渡的に振動負荷状態の力率を補償することを可能にする。
【0047】
各パルス負荷410~412は、変圧器420~422への入力に反映されるように、等価リアクタンスXqqを有する。DFIM406の3つの別個の出力三次巻線は、対応する高周波バス上で無効電流I1、I2、I3及び無効電力Q1、Q2、Q3(Q=I
2Xqqとして)と、関連する無効エネルギーを提供するが、これらは、制限なく、異なるライン電圧V1、V2、V3とすることができる。
図4に示されるように、2つの負荷410~411は降圧変圧器420~421と整合され、3つめの負荷412は昇圧変圧器422を有する。周波数変換器416~418は、ソース電圧Vxよりも上又は下に出力電圧V1、V2、V3を押し上げる又は下げる能力を有する。DFIM406の3つの出力は、共通の周波数を有するが、出力電力/エネルギーは実質的に異なるレート(MW/s又はMJ/s)と規模とすることができる。
【0048】
DFIM406の複数の三次出力巻線は、各々出力ポート1~3のうちの1つに関連付けられており、負荷410~412のVARサポートを提供する。三次巻線はまた、スリップ値動作範囲に応答して、有効電力出力を提供するか又は有効電力を吸収する(
図3Dを参照されたい)。各出力ポート1~3は、進み無効電流と電力を、対応する負荷410~412に提供することができ、これは、無効需要又は無効電力振動を有する。これは、結果として、船舶電力発電機402からの主に有効電力を提供する周波数変換器416~418の無効電力需要と物理的なサイズ/重量を低減する。サンプ状態が発生すると(レーダーや同様の用途に典型的である可能性がある)、サンプ有効電力エネルギーは、船舶電力発電機402に悪影響を与えるのではなく、フライホイール408から抽出されるかフライホイールに戻される。これは、船舶全体の電力変調を低減し、これは、電力変調の悪影響を受けやすい原子力航空母艦にとって特に重要である。
【0049】
DFIM406のシャント接続は、システム400内で有効バス・インピーダンスがスリップ励磁制御によって調整可能であることを除いて、静的シャント・キャパシタがACバス・インピーダンスを低減するのとほぼ同じ方法で、中波バス・インピーダンスをDFIM接続なしで存在する値以下へ低減する。変圧器420~422は、負荷410~412の条件に応じて可変である、入力無効KVAR需要を有する。各負荷410~412のパルスレート(パルス/秒)が高いほど、対応する変圧器/整流器ペア420~422への入力における基本電力と調和電力の無効需要が高くなる。DFIM406は、
図5Aから
図5Dと関連して、以下で説明されるように、スリップ励磁電流「Ie」の調整とスリップ励磁周波数「fr」の調整の組合せによって、無効電力Q1、Q2又はQ3の出力を制御する。DFIM励磁器424は、DFIM回転子回路の巻線損失を補償する有効電力出力Prを有する。
【0050】
AC配電バス404のインピーダンスを下げる原理は、様々な要因に依存する。DFIM406は、低スリップモード(例えば1.5~2.5%)で制御されるとき、任意の出力周波数で負のAC抵抗を構成する。DFIM406は、高速アクティブ回転子周波数コントローラ(例えば可変周波数絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はIGBTドライブ)の使用によって、広い速度/エネルギー範囲にわたって負の抵抗領域で維持される。DFIM406の負の抵抗は、この特性について変換器に依存しないが、3つの周波数変換器416~418を用いて、バス404(例えば60Hz)を、kWとkVAR出力の両方で高い電力密度を得るために必要なDFIM出力周波数(例えば1000Hz)に一致させる。いくつかの実施形態では、システム400は、例えば60Hzで0.63オームから0.12オームまでのバスインピーダンスの減少を示す可能性があるが、他の値も可能であり、本開示の範囲内である。
【0051】
DFIM406は、高い軸速度が使用されるとき、高い電力密度(例えば6kVA/kg)を達成する。周波数変換器416~418は非常に小型で効率的かつ軽量である。DFIM406の無効電力(kVAR)出力は、全体的なkVA機械評価内の有効電力(kW)出力とは独立である。出力ポート3は実質的に直交軸の磁気回路で動作するが、出力ポート2の有効電力出力は実質的に直接軸の磁気回路で動作する。
【0052】
図5Aから
図5Dは、本開示による、DFIM406による無効電力制御を示す例示のフェーザ
図501~504を示す。
図5Aにおいて、フェーザ
図501は、それぞれ
図4の3つのパルス負荷410~412を表す3つのパルス負荷(負荷1、負荷2、負荷3)を示している。フェーザ
図501において、有効電力PはX軸で示され、無効電力QはY軸で示されている。
図5Aに示されるように、線510~512は、3つのパルス負荷についての皮相電力(apparent power)S1、S2、S3を表し、これにより、皮相電力S1>S2>S3と有効電力P1>P2>P3となる。複数の巻線/ポートでのDFIM406の出力(線513で示される)は、3つの無効電力Q1L>Q2L>Q3Lを完全に補償し、有効電力はもっぱら周波数変換器416~418を通して引き出される。
【0053】
図5Bでは、フェーザ
図502は負荷2(線511)の突然の変化を示しており、これは、現在は負荷1と負荷3を超えており(すなわち、P2>P1>P3)、したがって、Q2L>Q1L>Q3Lである。状況は安定的であり、DFIM406は2~5サイクル内の変化を補償し、負荷2の有効電力P2は周波数変換器417によって増加する。DFIM406は、その出力のほとんどが無効電力であり、摩擦及び風損にわずかな有効電力Poしか使用されないので、88~89度の位相角で動作する。実際のパルス電力の実装では、負荷2は、
図5Aと
図5Bの状態の間で、1秒間に複数回周期的に又は低周波数(例えば2Hz)で大きな有効及び無効電力変動で振動している可能性があり、したがって、サンプ状態が発生する。発電機402(例えばガスタービン)は大きな負荷からの再生電力を容易に受け入れることができないため、ほとんどの場合、周波数変換器416~418は電力の流れにおいて一方向であることに留意されたい。
【0054】
図5Cにおいて、フェーザ
図503は、負荷3(線512)が、非再生Quadrant(象限)II負荷から再生のQuadrant III負荷へ急に変化する場合を示している。原動機を保護するために、周波数変換器418が一方向である場合、システム400は、DFIM406にこの電力/エネルギーP3/E3を吸収させ、このエネルギーE3を使用して、DFIM406に結合されたフライホイール408を再充電させることによって、負荷エネルギーE3を有効電力として吸収することができる。このモードは
図5Cに示されており、この場合、DFIM406(線513)は現在Quadrant IVで動作しており、ここで、フェーザST
3は3つの負荷410~412にすべての無効電力を提供し、フライホイール408がもはや更なるエネルギー増加を受け入れることができなくなり、そのエネルギーを負荷410~412のいずれかに排出しなければならなくなるまで、反復的に、負荷3から有効電力/エネルギーを吸収する。
【0055】
DFIM406及びDFIM励磁器424の設計は、Quadrant IIからQuadrant IIIへの負荷の変動が、確率的に発生するか又は迅速な応答で定期的に交互に発生することを可能にする。フライホイール408に負荷エネルギーを吸収させることによって、これは、そうでなければシステム400全体(原動機ソース以外)に分配されるであろう、望ましくない過電圧及び過渡的影響をもたらす可能性のある、サンプエネルギーを排除する。システム400は、同時に各負荷に無効電力補償を提供しながら、DFIM406が、隣接ポートとは独立に各出力ポート1~3にサンプエネルギーを吸収させ、サンプエネルギーの各セグメントを、その取り付けられたエネルギー貯蔵ユニットに戻すことを可能にする。
【0056】
図5Dでは、フェーザ
図504は、
図4の整流器420~422のような標準的な高出力6パルス制御AC-DC整流器を例示している。
図5Dの回路
図505は、このような高出力6パルス制御AC-DC整流器の代表的な回路を示している。図面において、Q
1は基本無効電力を表し、Q
Hは調和無効電力を表す。
【0057】
図6は、本開示による、
図4に示される3つの出力分岐のうちの1つの例示の等価回路600を示している。
図6に示されるように、回路600は、発電機402をソース電圧Vxのソース602としてモデル化し、周波数変換器416~418を複合インピーダンスZx=Rxの入力周波数変換器604としてモデル化する。入力周波数変換器604は、中波バスでノード605に給電する。ノード605はDFIM406からの電力注入も有し、これは、回路600で、ソース電圧V4、直列インピーダンスZ4=R4-jX4のDFIM606としてモデル化される。負荷410~412と、整流器420~422を有する変圧器は、磁化リアクタンスXmを有するシャント分岐608と、インピーダンスZL=RL+jXLを有する直列分岐610としてモデル化される。DFIM406によって、そのポートの各々のために展開される無効電力は、XmとXLで消費される無効電力を完全に補償する。
【0058】
負荷整流器420~422がサイリスタのような位相制御ブリッジデバイスである場合、このデバイスが、ゲート遅延(α角度)と電流の位相バックスイッチングを有するとき、負荷410~412が純粋に抵抗性であるときであっても、整流器420~422への入力に対して等価な無効需要(reactive demand)が発生する。この無効需要は、負荷410~412の加速又は過渡変動で特に大きく、回路600では、負荷と直列のリアクタンスXcによって表される。結果として生じる無効需要は、以下で説明されるように、変圧器磁化リアクタンス、変圧器漏れリアクタンス(transformer leakage reactance)及びAC-DC変換器無効需要の組合せである。高電力サイリスタベースのAC-DC変換器に存在する転流重複(commutation overlap)も無効需要に加わる。このAC-DC変換器の無効需要は、出力DC電流に応じて増加する。負のリアクタンス-jX4はDFIM出力巻線の設計特徴であり、出力リアクタンスXl+XcをXmと並列に一致させることができ、そのため、入力周波数変換器は有効な無効需要を持たない。
【0059】
図7Aから
図7Dは、従来の大型電力変換器の特性を示している。
図7Aから
図7Dの図は、Albert Kloss-Brown(Boveri&Cie、1984年)によるテキストブック「Basic Guide to Power Electronics」のグラフを示している。
図7Aは、テキストブックの
図77を示している。
図7Aの右側の電力サークル図は、正規化された無効電力をサイリスタゲート遅延角αの関数として示している。AC-DC変換器の無効電力需要は、単位当たり1.0で約α=87度でピークになることに留意されたい。
図7Bは、テキストブックの
図81を示している。
図7Bの下のグラフは、正規化された無効電力をDC負荷電流i
dとα角の関数として示してる。
図7A及び
図7Bでは、線701~702が、変換後のAC-DC制御整流器の入力側の無効電力需要(遅れPF)を示すために図に追加されている。
【0060】
図7Cでは、線703は、負荷状態の加速又は過渡変化の間に、AC-DC整流器への正規化された無効電力入力q
lが最初の3サイクルで非常に高いことを示している。
図7Dでは、線704は、加速領域の間の最初の3サイクル中の単位あたり約0.75の平均無効電力を示している。したがって、急速な負荷変化の間、定常状態の要件を超える追加の無効電力が必要とされる。
【0061】
図8A及び
図8Bは、本開示による、DFIM804のようなABIC機械の例示の巻線
図801~804を示している。
図8A及び
図8Bに示されるように、ABIC機械は、108個の固定子スロットと3個の無効出力巻線を有する2極ABIC機械である。
図8Aにおいて、巻線
図801は、ABIC主入力「M」の巻線を示している。巻線
図802は、無効出力Q1グループの巻線を示している。
図8Bにおいて、巻線
図803は、無効出力Q2グループの巻線を示している。巻線
図804は、無効出力Q3グループの巻線を示している。
図8Bの下部に示されているブロックM、Q1、M、Q2等は、機械に励磁を提供する主巻線と、その後に無効巻線が続く機能ブロックである。次に、別の主巻線と別の無効巻線が続く。この一連の巻線は、機械磁気回路に過渡現象(transient)を発生させ、これは、追加の進み無効電力を生成する。
【0062】
図1から
図8Bは、拡張バス・インピーダンス制御及び関連する詳細の例示のシステムを示しているが、
図1から
図8Bに様々な変更が加えられてもよい。例えば図は1つのDFIMのみを有するシステムを示しているが、これは1つの例にすぎない。他の実施形態では、システムは、反対方向に回転する1つ以上のDFIMを含め、追加のDFIMを含むことができる。一般に、電力システムには多種多様な構成があり、
図1から
図8Bは、本開示をいずれかの特定の構成に限定するものではない。
【0063】
図9は、本開示による、拡張バス・インピーダンス制御の例示的な方法900を示す。説明の容易さのために、方法900は、
図1のシステム100又は
図4のシステム400を使用して実行されるものとして説明される。しかしながら、方法900は、いずれか他の適切なデバイス又はシステムとともに使用されることが可能である。
【0064】
図9に示されるように、ステップ902において、複数の負荷に対する電力が、発電機を使用して生成される。これは、例えば発電機402が、システム400で使用するための電力を生成することを含み得る。ステップ904において、電力が配電バスで受け取られ、電力の少なくとも一部が、負荷で使用するために分配される。これは、例えば配電バス404が電力を分配することを含むことがあり、その一部が、負荷410~412の各々において使用される。ステップ906において、負荷のうちの1つ以上における電力の変化に応答して、シャント接続されたDFIMを使用して、配電バス上のインピーダンスが低減される。これは、例えばDFIM406が、負荷410~412のうちの1つ以上における電力の変化に応答して、バス404上のインピーダンスを低減することを含み得る。
【0065】
ステップ908において、負荷リプル(ripple)又はサンプからの脈動電力が、DFIM406の三次巻線に吸収される。ステップ910において、負荷リプル又はサンプのエネルギーが、フライホイールエネルギー貯蔵の再充電電力又は加速に変換される。ステップ912において、負荷有効電力需要が高いとき、フライホイールエネルギー貯蔵からのエネルギーは、DFIM406へ及び負荷へ放出される。ステップ914において、電圧が、バスへのDFIM無効電力出力と注入によって中間負荷で変調され、出力コンバータで無効電力を使用する大きな負荷変動を補償する。
【0066】
図9は、拡張バス・インピーダンス制御の方法900の一例を示しているが、
図9に様々な変更を加えることができる。例えば一連のステップとして示されているが、
図9に示されている様々なステップは、重複したり、並列に起こったり、異なる順序で起こったり、複数回起こったりする可能性がある。さらに、いくつかのステップが組み合わされるか削除される可能性があり、特定のニーズに応じて追加のステップが追加される可能性がある。
【0067】
この特許文書全体を通して使用される特定の単語及びフレーズの定義を記載することは有利なことがある。「含む(include)」及び「備える(comprise)」という語及びその派生語は、限定ではなく包含を意味する。「又は(or)」という用語は包括的であり、及び/又は、を意味する。「関連付けられる(associated with)」というフレーズ及びその派生語は、含む、~に含まれる、~と相互接続する、包含する、~内に包含される、~に又は~と接続する、~と通信可能である、~と協力する、インターリーブする、並列する、~に近接する、~に又は~と結合される、有する、~の特性を有する、~に又は~と関係を有する等を意味する。「~のうちの少なくとも1つ」というフレーズは、項目のリストとともに使用されるとき、列挙された項目のうちの1つ以上の異なる組合せが使用されることがあり、リスト内の1つの項目のみが必要とされることがあることを意味する。例えば「A、B及びCのうちの少なくとも1つ」は、以下の組合せのうちのいずれか、すなわち、A、B、C、AとB、AとC、BとC及びAとBとCのいずれかを含む。
【0068】
本出願の説明は、特定の要素、ステップ又は機能が、特許請求の範囲に含まれなければならない本質的又は重要な要素であることを暗示するものとして読まれるべきではない。特許請求に係る主題の範囲は、許可された請求項によってのみ定義される。さらに、請求項のうちのいずれも、「~のための手段(means for)」又は「~のためのステップ(step for)」という正確な単語が特定の請求項において明示的に使用され、その後に機能を識別する分詞句が続く場合を除き、添付の請求項又は請求項の要素のいずれかに関して35 U.S.C.§112(f)を援用するように意図されていない。請求項における「メカニズム」、「モジュール」、「デバイス」、「ユニット」、「構成要素」、「要素」、「メンバ」、「装置」、「機械」又は「システム」等(これらに限定されない)の用語の使用は、請求項自体の特徴によって更に修正又は強化されるものとして、関連技術分野の専門家に公知の構造を指すように理解され、意図されており、35 U.S.C.§112(f)を援用するように意図されていない。
【0069】
本開示は、特定の実施形態及び一般的に関連する方法を説明しているが、これらの実施形態及び方法の改変及び交換は、当業者には明らかである。したがって、例示の実施形態の上記の説明は、本開示を定義又は制約するものではない。以下の請求項によって定義されるように、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、他の変更、置換及び改変も可能である。