(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/74 20180101AFI20241126BHJP
F24F 13/22 20060101ALI20241126BHJP
F24F 11/48 20180101ALI20241126BHJP
F24F 110/20 20180101ALN20241126BHJP
F24F 140/20 20180101ALN20241126BHJP
F24F 140/30 20180101ALN20241126BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F1/0007 361C
F24F11/48
F24F110:20
F24F140:20
F24F140:30
(21)【出願番号】P 2019006582
(22)【出願日】2019-01-18
【審査請求日】2021-09-30
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 順之佑
(72)【発明者】
【氏名】青木 博則
【合議体】
【審判長】鈴木 充
【審判官】槙原 進
【審判官】竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】特許第6447693(JP,B1)
【文献】特開2018-141597(JP,A)
【文献】特開平11-159832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/74
F24F 1/0007
F24F 11/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風ファンの回転に応じて熱交換器を通過する気流を生成し、吹出口から前記気流を吹き出す室内機と、
圧縮機および膨張弁の働きに応じて前記熱交換器に冷媒を供給する室外機と、
前記熱交換器の隙間
であって前記気流から遮蔽される遮蔽領域に結露水を維持しながら暖房サイクル運転を実施し、摂氏55度以上に前記熱交換器の温度を維持する加熱制御部と、
前記暖房サイクル運転に先立って、前記暖房サイクル運転の全期間にわたって前
記遮蔽領域に前記結露水を維持するように前記熱交換器に前記結露水を残存させながら、前記熱交換器の表面に付着する水分を取り除く
ように前記遮蔽領域の面積に応じた送風運転を実施する前処理制御部と
を備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機において、前記暖房サイクル運転後に送風運転を実施し、前記隙間に残存する前記結露水を蒸発させる後処理制御部を備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の空気調和機において、前記熱交換器の温度は、前記圧縮機の使用温度範囲の上限温度に対応して定められる限度温度以下に維持されることを特徴とする空気調和機。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の空気調和機において、前記前処理制御部は、それぞれ1つの固定値で、前記送風運転にあたって前記送風ファンの1分あたり回転数および送風時間を規定する参照テーブルを有することを特徴とする空気調和機。
【請求項5】
送風ファンの回転に応じて熱交換器を通過する気流を生成し、吹出口から前記気流を吹き出す室内機と、
圧縮機および膨張弁の働きに応じて前記熱交換器に冷媒を供給する室外機と、
暖房サイクル運転を実施し、予め決められた継続時間にわたって摂氏55度以上に前記熱交換器の温度を維持する加熱制御部と、
前記暖房サイクル運転に先立って送風運転を実施し、当該送風運転にあたって、前記暖房サイクル運転の前記継続時間の全期間にわたって前記熱交換器上に結露水を維持するように、前記暖房サイクル運転に先立つ冷房運転中に前記熱交換器で発生する前記結露水の量に応じて前記送風ファンの回転数を決定し、決定された前記回転数で前記送風ファンを駆動する前処理制御部と
を備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項6】
請求項5に記載の空気調和機において、前記前処理制御部は、前記冷房運転の運転時間に基づき前記送風ファンの回転数を決定することを特徴とする空気調和機。
【請求項7】
請求項5に記載の空気調和機において、前記室内機内に配置されて前記室内機内の湿度を計測する湿度センサをさらに備え、前記前処理制御部は、前記湿度センサで検出される湿度に基づき前記送風ファンの回転数を決定することを特徴とする空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿熱除菌を実施する空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は空気調和機を開示する。空気調和機は冷房運転後に内部クリーン運転を実施する。内部クリーン運転では、送風運転後に暖房運転が実施される。送風運転の開始にあたって強風が設定される。強風は室内機内部に存在する水分を吹き飛ばす。暖房運転に応じて室内機内部の水分は除去される。特許文献2に開示されるように、熱交換器の表面に生成される結露水を利用して湿熱除菌を実現する空気調和機は提案される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-299983号公報
【文献】特許第6399181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に開示される湿熱除菌では、送風運転に続いて暖房サイクル運転が実施される。ここで、暖房サイクル運転とは、いわゆる暖房運転以外であって暖房運転時と同様な冷媒の循環を確立する動作をいう。しかしながら、特許文献1のように暖房サイクル運転に応じて室内機内の水分が除去されてしまうと、十分に湿熱除菌は実現されることができない。その一方で、暖房サイクル運転後に水分が残りすぎると、室内機内の湿度が高まってカビの繁殖が誘引されてしまう。
【0005】
本発明は、湿熱除菌を実現することができ、しかも、十分にカビの繁殖を抑止することができる空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によれば、送風ファンの回転に応じて熱交換器を通過する気流を生成し、吹出口から前記気流を吹き出す室内機と、圧縮機および膨張弁の働きに応じて前記熱交換器に冷媒を供給する室外機と、前記熱交換器の隙間に結露水を維持しながら暖房サイクル運転を実施し、摂氏55度以上に前記熱交換器の温度を維持する加熱制御部と、前記暖房サイクル運転に先立って、前記暖房サイクル運転中に前記熱交換器の隙間に前記結露水を維持するように前記熱交換器に前記結露水を残存させながら、前記熱交換器の表面に付着する水分を取り除く送風運転を実施する前処理制御部とを備える空気調和機は提供される。
【0007】
暖房サイクル運転時に結露水は維持されるので、摂氏55度以上に熱交換器が維持されると、湿熱除菌は実現される。結露水中でカビ菌および細菌は効果的に除菌されることができる。送風運転は熱交換器の表面を乾燥するので、暖房サイクル運転後に室内機内の湿度は十分に低下することができる。カビの繁殖は抑止されることができる。しかも、暖房サイクル運転に先立って送風運転が実施されることから、暖房サイクル運転の開始時に吹き出し気流の湿度の上昇は抑制されることができる。その結果、在室者は湿った温かい空気に触れずに済む。在室者の肌感は良好に維持されることができる。その一方で、過度に送風運転が持続されると、熱交換器の隙間から結露水が蒸発してしまい、暖房サイクル運転時に十分な除菌効果が実現されない。反対に、送風運転時に熱交換器の表面が十分に乾燥しないと、暖房サイクル運転の開始時に吹き出し気流の湿度が著しく上昇し、在室者の肌感は悪化してしまう。
【0008】
空気調和機は、前記暖房サイクル運転後に送風運転を実施し、前記隙間に残存する前記結露水を蒸発させる後処理制御部を備えてもよい。こうして室内機の内部は乾燥するので、カビの繁殖は抑制される(防止される)ことができる。
【0009】
前記熱交換器の温度は、前記圧縮機の使用温度範囲の上限温度に対応して定められる限度温度以下に維持されればよい。圧縮機には、圧縮機の動作を保証する使用温度範囲が設定される。圧縮機の温度が使用温度範囲の上限温度以下に維持されると、圧縮機の動作は確実に確保されることができる。暖房運転時に圧縮機の動作が抑制されると、圧縮機の温度の上昇は回避されることができる。ここで、空気調和機では圧縮機の温度制御にあたって熱交換器の温度が利用される。熱交換器の温度が限度温度を超えると、圧縮機の動作は抑制される(例えば圧縮機は停止する)。したがって、熱交換器の温度が限度温度以下に抑えられると、圧縮機の動作は抑制されずに、熱交換器の加熱は良好に維持されることができる。加えて、熱交換器は限度温度を超えた温度に加熱されないので、過度に温かい気流が室内機から室内に吹き出されることは防止されることができる。室内の居住環境の悪化は防止されることができる。
【0010】
前記前処理制御部は、それぞれ1つの固定値で、前記送風運転にあたって前記送風ファンの1分あたり回転数および送風時間を規定する参照テーブルを有してもよい。結露水の水滴は熱交換器の表面でだんだん成長していき重力の働きで熱交換器の表面を伝って流れ落ちる。したがって、重力に逆らって熱交換器の表面に維持されると予想される水分量に基づき送風機の1分当たり回転数と送風時間とは特定されることができる。
【0011】
本発明の第2側面によれば、送風ファンの回転に応じて熱交換器を通過する気流を生成し、吹出口から前記気流を吹き出す室内機と、圧縮機および膨張弁の働きに応じて前記熱交換器に冷媒を供給する室外機と、暖房サイクル運転を実施し、予め決められた継続時間にわたって摂氏55度以上に前記熱交換器の温度を維持する加熱制御部と、前記暖房サイクル運転に先立って送風運転を実施し、当該送風運転にあたって、前記暖房サイクル運転の前記継続時間中に前記熱交換器上に結露水を維持するように、前記暖房サイクル運転に先立つ冷房運転中に前記熱交換器で発生する前記結露水の量に応じて前記送風ファンの回転数を決定し、決定された前記回転数で前記送風ファンを駆動する前処理制御部とを備える空気調和機は提供される。
【0012】
暖房サイクル運転時の継続時間中に結露水は維持されるので、摂氏55度以上に熱交換器が維持されると、湿熱除菌は実現される。結露水中でカビ菌および細菌は効果的に除菌されることができる。送風運転は熱交換器の表面を乾燥するので、暖房サイクル運転後に室内機内の湿度は十分に低下することができる。カビの繁殖は抑止されることができる。しかも、送風運転時には結露水の量に応じて送風ファンの回転数は決定されることから、熱交換器では結露水の維持にあたって最適な湿り具合が確立されることができる。したがって、送風運転時間は短縮されることができる。過度に送風運転が持続されると、熱交換器から結露水が蒸発してしまい、暖房サイクル運転時に十分な除菌効果が実現されない。反対に、送風運転時に熱交換器の表面が十分に乾燥しないと、暖房サイクル運転の開始時に吹き出し気流の湿度が著しく上昇し、在室者の肌感は悪化してしまう。
【0013】
前記前処理制御部は、前記冷房運転の運転時間に基づき前記送風ファンの回転数を決定してもよい。熱交換器で発生する結露水の量は冷房運転の運転時間に依存することから、冷房運転の運転時間に応じて送風運転時の送風ファンの回転数が決定されれば、送風運転の終了時に熱交換器では最適な湿り具合が確立されることができる。
【0014】
空気調和機は、前記室内機内に配置されて前記室内機内の湿度を計測する湿度センサをさらに備えてもよい。このとき、前記前処理制御部は、前記湿度センサで検出される湿度に基づき前記送風ファンの回転数を決定してもよい。熱交換器で発生する結露水の量は室内機内の湿度に依存することから、湿度センサの計測値に応じて送風運転時の送風ファンの回転数が決定されれば、送風運転の終了時に熱交換器では最適な湿り具合が確立されることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように開示の空気調和機によれば、湿熱除菌を実現することができ、しかも、十分にカビの繁殖を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空気調和機の構成を概略的に示す概念図である。
【
図2】一実施形態に係る室内機の外観を概略的に示す斜視図である。
【
図3】室内機の本体の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図4】室内機の構造を概略的に示す分解斜視図である。
【
図6】制御部の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図7】リモコンの外観および表示を概略的に示す拡大平面図である。
【
図8】加熱除菌動作を概略的に示すフローチャートである。
【
図9】1分あたり湿度変化率の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0018】
(1)空気調和機の構成
図1は本発明の一実施形態に係る空気調和機11の構成を概略的に示す。空気調和機11は室内機12および室外機13を備える。室内機12は例えば建物内の室内空間に設置される。その他、室内機12は室内空間に相当する空間に設置されればよい。室内機12には室内熱交換器14が組み込まれる。室外機13には圧縮機15、室外熱交換器16、膨張弁17および四方弁18が組み込まれる。室内熱交換器14、圧縮機15、室外熱交換器16、膨張弁17および四方弁18は冷凍回路19を形成する。室外機13は、室外空気との熱交換が可能な屋外に設置されればよい。
【0019】
冷凍回路19は第1循環経路21を備える。第1循環経路21は四方弁18の第1口18aおよび第2口18bを相互に結ぶ。第1循環経路21には圧縮機15が設けられている。圧縮機15の吸入管15aは四方弁18の第1口18aに冷媒配管を介して接続される。第1口18aからガス冷媒は圧縮機15の吸入管15aに供給される。圧縮機15は低圧のガス冷媒を所定の圧力まで圧縮する。圧縮機15の吐出管15bは四方弁18の第2口18bに冷媒配管を介して接続される。圧縮機15の吐出管15bからガス冷媒は四方弁18の第2口18bに供給される。冷媒配管は例えば銅管であればよい。
【0020】
冷凍回路19は第2循環経路22をさらに備える。第2循環経路22は四方弁18の第3口18cおよび第4口18dを相互に結ぶ。第2循環経路22には、第3口18c側から順番に室外熱交換器16、膨張弁17および室内熱交換器14が組み込まれる。室外熱交換器16は、室外熱交換器16を通過する冷媒と室外熱交換器16に接触する空気との間で熱エネルギーを交換する。室内熱交換器14は、室内熱交換器14を通過する冷媒と室内熱交換器14に接触する空気との間で熱エネルギーを交換する。
【0021】
室外機13には送風ファン23が組み込まれる。送風ファン23は室外熱交換器16に通風する。送風ファン23は例えば羽根車の回転に応じて気流を生成する。送風ファン23の働きで気流は室外熱交換器16を通り抜ける。室外の空気は室外熱交換器16を通り抜け冷媒と熱交換する。熱交換された冷気または暖気の気流は室外機13から吹き出される。通り抜ける気流の流量は羽根車の回転数に応じて調整される。
【0022】
室内機12には送風ファン24が組み込まれる。送風ファン24は室内熱交換器14に通風する。送風ファン24は羽根車の回転に応じて気流を生成する。送風ファン24の働きで室内機12には室内空気が吸い込まれる。室内空気は室内熱交換器14を通り抜け冷媒と熱交換する。熱交換された冷気または暖気の気流は室内機12から吹き出される。通り抜ける気流の流量は羽根車の回転数に応じて調整される。
【0023】
室内機12には上下風向板25a、25bを備える。上下風向板25a、25bは、室内機12から吹き出される気流の向きを規定する。上下風向板25a、25bの構造の詳細は後述される。
【0024】
冷凍回路19で冷房運転が実施される場合には、四方弁18は第2口18bおよび第3口18cを相互に接続し第1口18aおよび第4口18dを相互に接続する。したがって、圧縮機15の吐出管15bから高温高圧の冷媒が室外熱交換器16に供給される。冷媒は室外熱交換器16、膨張弁17および室内熱交換器14を順番に流通する。室外熱交換器16では冷媒から外気に放熱する。膨張弁17で冷媒は低圧まで減圧される。減圧された冷媒は室内熱交換器14で周囲の空気から吸熱する。冷気が生成される。冷気は送風ファン24の働きで室内空間に吹き出される。
【0025】
冷凍回路19で暖房運転が実施される場合には、四方弁18は第2口18bおよび第4口18dを相互に接続し第1口18aおよび第3口18cを相互に接続する。圧縮機15から高温高圧の冷媒が室内熱交換器14に供給される。冷媒は室内熱交換器14、膨張弁17および室外熱交換器16を順番に流通する。室内熱交換器14では冷媒から周囲の空気に放熱する。暖気が生成される。暖気は送風ファン24の働きで室内空間に吹き出される。膨張弁17で冷媒は低圧まで減圧される。減圧された冷媒は室外熱交換器16で周囲の空気から吸熱する。その後、冷媒は圧縮機15に戻る。
【0026】
空気調和機11は温度センサ26aおよび湿度センサ26bを備える。温度センサ26aは室内熱交換器14に取り付けられる。温度センサ26aは室内熱交換器14の温度を計測する。温度センサ26aは、計測された温度の温度情報を含む温度信号を出力する。湿度センサ26bは室内機12内に配置される。湿度センサ26bは室内機12内の相対湿度を計測する。湿度センサ26bは、計測された湿度の湿度情報を含む湿度信号を出力する。
【0027】
空気調和機11は制御部27を備える。制御部27は、例えば室外機13に組み込まれる図示しない制御ボード上に形成される。制御部27には、個別の信号線で、室外機13内の四方弁18、膨張弁17および圧縮機15が電気的に接続される。同様に、制御部27には、個別の信号線で室内機12内の送風ファン24の駆動モータ、上下風向板25a、25bの駆動源、温度センサ26aおよび湿度センサ26bが電気的に接続される。制御部27は、温度センサ26aからの温度信号や湿度センサ26bからの湿度信号に基づき、室外機13内の四方弁18、膨張弁17、送風ファン23および圧縮機15、並びに、室内機12内の送風ファン24の動作を制御する。そうした制御の結果、後述されるように、空気調和機11の冷房運転や暖房運転、加熱除菌動作は実現される。
【0028】
(2)室内機の構成
図2は一実施形態に係る室内機12の外観を概略的に示す。室内機12の本体(筐体)28aにはアウターパネル28bが覆い被さる。本体28aの下面には吹出口29が形成される。吹出口29は室内に向けて開口する。本体28aは例えば室内の壁面に固定されることができる。室内熱交換器14で冷気または暖気が生成され、冷気または暖気の気流は吹出口29から吹き出す。
【0029】
吹出口29には前後1対の上下風向板25a、25bが配置される。上下風向板25a、25bはそれぞれ本体の長手方向と平行な回転軸線32a、32b回りに回転することができる。回転に応じて上下風向板25a、25bは吹出口29を開閉する。上下風向板25a、25bの角度に応じて、吹き出される気流の方向は変えられる。
【0030】
図3に示されるように、本体28aには吸込口33が形成される。吸込口33は本体28aの正面および上面で開口する。室内の空気は吸込口33から本体28a内に取り込まれ、室内熱交換器14に向けて供給される。
【0031】
吸込口33には回転軸線32a、32bに平行な方向にエアフィルタアセンブリ34が並べられる。エアフィルタアセンブリ34はエアフィルタ35およびダストボックス36を備える。エアフィルタ35はダストボックス36に保持される。ダストボックス36は本体28aに着脱自在に取り付けられる。ダストボックス36が本体28aにセットされると、エアフィルタ35は吸込口33の全面にわたって配置される。
【0032】
ダストボックス36には前側のフィルタレール38が形成される。本体28aには前側のフィルタレール38の延長線上に対応して後側のフィルタレール39が形成される。フィルタレール38、39は回転軸線32a、32bに直交する垂直面に沿って延びる。エアフィルタ35の左右両端はスライド自在にフィルタレール38、39に保持される。エアフィルタ35は、後述する第2従動ギア52により駆動され、フィルタレール38、39に沿って移動する。
【0033】
図4に示されるように、本体28aには送風ファン24が回転自在に支持される。送風ファン24には例えばクロスフローファンが用いられる。送風ファン24は回転軸線32a、32bに平行な回転軸41回りで回転する。送風ファン24の回転軸41は本体28aの設置時の水平方向に延びる。送風ファン24は吹出口29に平行に配置される。送風ファン24には駆動源(図示されず)から回転軸41回りの駆動力が伝達される。駆動源は本体28aに支持される。送風ファン24の回転に応じて気流は室内熱交換器14を通過する。その結果、冷気または暖気の気流が生成される。冷気または暖気の気流は吹出口29から吹き出される。
【0034】
室内熱交換器14は前側体14aおよび後側体14bを備える。前側体14aは送風ファン24の前側から送風ファン24に向き合わせられる。後側体14bは送風ファン24の後側から送風ファン24に向き合わせられる。前側体14aおよび後側体14bは後述されるように上端で相互に連結される。前側体14aおよび後側体14bは冷媒管42aを有する。すなわち、冷媒管42aは、回転軸線32a、32bに平行に延び、本体28aの正面視左右端で折り返され、再び回転軸線32a、32bに平行に延び、再び本体28aの正面視左右端で折り返され、これらが繰り返される。冷媒管42aは第2循環経路22の一部を構成する。冷媒管42aには複数の放熱フィン42bが結合される。放熱フィン42bは回転軸線32a、32bに直交しつつ相互に平行に配列される。冷媒管42aおよび放熱フィン42bは例えば銅やアルミニウムといった金属材料から形成されることができる。冷媒管42aおよび放熱フィン42bを通じて冷媒と空気との間で熱交換が実現される。
【0035】
図4および
図5に示されるように、エアフィルタアセンブリ34はフィルタ清掃ユニット43を備える。ダストボックス36はフィルタ清掃ユニット43の1構成要素を担う。ダストボックス36は上ダストボックス45および下ダストボックス46を備える。上ダストボックス45はエアフィルタ35の前面側に配置される。上ダストボックス45はカバー47を有する。カバー47はボックス本体48の貯留空間49を開閉する。下ダストボックス46はエアフィルタ35の後面側に配置される。上ダストボックス45および下ダストボックス46はエアフィルタ35を挟み込む。エアフィルタ35の清掃時、概ねエアフィルタ35の前面の塵埃は上ダストボックス45のボックス本体48に回収され、エアフィルタ35の後面の塵埃は下ダストボックス46に回収される。
【0036】
フィルタ清掃ユニット43は第1従動ギア51および第2従動ギア52を備える。第1従動ギア51は上ダストボックス45に支持される。第1従動ギア51は水平軸53回りで回転する。第1従動ギア51の歯は上ダストボックス45の外面から部分的に露出する。同様に、第2従動ギア52は下ダストボックス46に支持される。第2従動ギア52は水平軸54回りで回転する。第2従動ギア52は、下ダストボックス46の両端でエアフィルタ35を駆動する。第2従動ギア52の歯は下ダストボックス46の外面から部分的に露出する。エアフィルタアセンブリ34が本体28aにセットされると、第1従動ギア51は本体28aに搭載の第1駆動ギア(図示されず)に噛み合い、同様に第2従動ギア52は本体28aに搭載の第2駆動ギア(図示されず)に噛み合う。個々の駆動ギアには個別に電動モータといった駆動源(図示されず)が連結される。個々の駆動源から供給される駆動力に応じて第1従動ギア51および第2従動ギア52は個別に回転する。
【0037】
図5に示されるように、フィルタ清掃ユニット43は清掃ブラシ56を備える。清掃ブラシ56は上ダストボックス45内に収納される。清掃ブラシ56はブラシ台座57を備える。ブラシ台座57は第1従動ギア51からの駆動力により水平軸58回りに回転することができる。ブラシ毛59はブラシ台座57の筒面上に所定の中心角範囲にわたって配置される。ブラシ毛59の植毛範囲はブラシ台座57の軸方向にエアフィルタ35を横切る広がりを有する。清掃ブラシ56は所定の回転位置でブラシ毛59をエアフィルタ35に接触させ当該回転位置以外ではブラシ毛59をエアフィルタ35から離脱させる。ブラシ毛59がエアフィルタ35に接触する状態で回転軸線32a、32bに直交する垂直面に沿った方向にエアフィルタ35が移動すると、エアフィルタ35の前面に付着した塵埃はブラシ毛59に絡め取られることができる。
【0038】
フィルタ清掃ユニット43はブラシ受け61を備える。ブラシ受け61は下ダストボックス46内に収納される。ブラシ受け61は受け面62を有する。受け面62は清掃ブラシ56に向き合わせられる。ブラシ毛59がエアフィルタ35に接触する際に受け面62はブラシ毛59との間にエアフィルタ35を挟み込む。その他、受け面62にはブラシ毛が植毛されてもよい。
【0039】
室内熱交換器14は、前側体14aおよび後側体14bを相互に連結する連結体63を備える。連結体63は前側体14aの上端および後側体14bの上端に結合される。連結体63は、例えば銅やアルミニウムといった熱伝導性の良い金属材料から成形される。連結体63は、少なくとも部分的に前側体14aの上端および後側体14bの上端に被さる板材に形成される。送風ファン24の回転時、吸込口33から送風ファン24に向かって流れる空気は連結体63で遮蔽されて室内熱交換器14の第1領域64には行き届かない。
【0040】
室内熱交換器14は、前側体14aの下端に連結される下側体14cを備える。前側体14aおよび下側体14cの隙間の前方には例えばプラズマクリーンユニットといった遮風体65が配置される。遮風体65は、本体28aの前方から送風ファン24に向かって流れる空気を遮る。送風ファン24の回転時、吸込口33から送風ファン24に向かって流れる空気は遮風体65で遮蔽されて室内熱交換器14の第2領域66には行き着かない。
【0041】
空気調和機11の室内機12は、室内熱交換器14の下方に配置されるドレンパンを備える。ドレンパンは、前側体14aの下方に配置される第1ドレンパン67aと、後側体14bの下方に配置される第2ドレンパン67bとを含む。第1ドレンパン67aは、送風ファン24の前方で本体28aに支持される。前側体14aの表面に生成される結露水は重力の作用で第1ドレンパン67aに流れ落ちる。第1ドレンパン67aは最下位置の排出口(図示されず)に向けて緩やかに傾斜する。排出口には室外機13に繋がる配管が接続される。送風ファン24の回転時、吸込口33から送風ファン24に向かって流れる空気は第1ドレンパン67aで遮蔽されて室内熱交換器14の第3領域68には行き着かない。
【0042】
第2ドレンパン67bは、送風ファン24の後方で本体28aに支持される。後側体14bの表面に生成される結露水は重力の作用で第2ドレンパン67bに流れ落ちる。第2ドレンパン67bは最下位置の排出口(図示されず)に向けて緩やかに傾斜する。排出口には室外機13に繋がる配管が接続される。第2ドレンパン67bは、送風ファン24の回転時、本体28aの背壁に沿って吸込口33から流入する空気の通り道を塞ぐ。したがって、送風ファン24の回転時、本体28aの背壁に沿って吸込口33から流入する空気は通り抜けできないことから第2ドレンパン67bに向かって流れ込むことはできず、室内熱交換器14の第4領域69まで行き着かない。
【0043】
(3)制御系の構成
図6に示されるように、制御部27は、冷房運転の動作を管理する冷房運転部78と、暖房運転の動作を管理する暖房運転部79と、加熱除菌動作を管理する加熱除菌動作部81とを備える。これら冷房運転部78、暖房運転部79および加熱除菌動作部81には弁切替制御部82、開度制御部83、圧縮機制御部84、第1送風ファン制御部85、第2送風ファン制御部86および風向制御部87が接続される。弁切替制御部82は四方弁18に接続される。弁切替制御部82は四方弁18に向けて制御信号を出力する。四方弁18は受信した制御信号に応じて第1位置および第2位置の間で切り替えられる。第1位置では四方弁18は第2口18bおよび第3口18cを相互に接続し第1口18aおよび第4口18dを相互に接続する。第2位置では四方弁18は第2口18bおよび第4口18dを相互に接続し第1口18aおよび第3口18cを相互に接続する。弁切替制御部82は、冷房運転部78、暖房運転部79または加熱除菌動作部81からの指示に応じて、第1位置または第2位置を特定する制御信号を生成する。
【0044】
開度制御部83は膨張弁17に接続される。開度制御部83は膨張弁17に向けて制御信号を出力する。膨張弁17の開度は受信した制御信号に応じて調整される。制御信号は膨張弁17の開度を特定する。室内熱交換器14の温度の設定にあたって、後述される圧縮機15の制御とともに膨張弁17の開度の調整は用いられる。開度制御部83は、冷房運転部78、暖房運転部79または加熱除菌動作部81からの指示に応じて、膨張弁17の開度を特定する制御信号を生成する。
【0045】
圧縮機制御部84は圧縮機15に接続される。圧縮機制御部84は圧縮機15に向けて制御信号を出力する。圧縮機15の動作は受信した制御信号に応じて制御される。制御信号は例えば圧縮機15の回転数を特定する。室内熱交換器14の温度の設定にあたって、膨張弁17の開度とともに圧縮機15の動作は調整される。圧縮機制御部84は、冷房運転部78、暖房運転部79または加熱除菌動作部81からの指示に応じて、圧縮機15の回転数を特定する制御信号を生成する。
【0046】
第1送風ファン制御部85は室外機13の送風ファン23に接続される。第1送風ファン制御部85は送風ファン23に向けて制御信号を出力する。送風ファン23の回転は受信した制御信号に応じて制御される。制御信号は例えば送風ファン23の回転および静止を切り替える。送風ファン23の回転時には制御信号は送風ファン23の回転数を特定する。送風ファン23の回転に基づく風量に応じて室外熱交換器16で交換される熱エネルギー量は調整される。第1送風ファン制御部85は、冷房運転部78、暖房運転部79または加熱除菌動作部81からの指示に応じて、動作の停止や送風ファン23の回転数を特定する制御信号を生成する。
【0047】
第2送風ファン制御部86は室内機12の送風ファン24に接続される。第2送風ファン制御部86は送風ファン24に向けて制御信号を出力する。送風ファン24の回転は受信した制御信号に応じて制御される。制御信号は例えば送風ファン24の回転および静止を切り替える。送風ファン24の回転時には制御信号は送風ファン24の回転数を特定する。送風ファン24の回転に基づく風量に応じて室内熱交換器14で交換される熱エネルギー量は調整される。第2送風ファン制御部86は、冷房運転部78、暖房運転部79または加熱除菌動作部81からの指示に応じて、動作の停止や送風ファン24の回転数を特定する制御信号を生成する。
【0048】
風向制御部87は上下風向板25a、25bに接続される。風向制御部87は上下風向板25a、25bに向けて制御信号を出力する。回転軸線32a、32b回りで上下風向板25a、25bの姿勢は受信した制御信号に応じて制御される。制御信号は例えば回転軸線32a、32b回りで上下風向板25a、25bの角度を特定する。最小角度で上下風向板25a、25bは吹出口33を閉じる。最大角度で上下風向板25a、25bは最大限に吹出口33を開放する。風向制御部87は、冷房運転部78、暖房運転部79または加熱除菌動作部81からの指示に応じて、上下風向板25a、25bの角度を特定する制御信号を生成する。
【0049】
冷房運転部78は、弁切替制御部82に指示して冷房運転を確立する。冷房運転部78は、冷房運転時の設定温度に応じて開度制御部83および圧縮機制御部84に指示して膨張弁17の開度および圧縮機15の回転数を制御する。暖房運転部79は、弁切替制御部82に指示して暖房運転を確立する。暖房運転部79は、暖房運転時の設定温度に応じて開度制御部83および圧縮機制御部84に指示して膨張弁17の開度および圧縮機15の回転数を制御する。こうして室内機12は、送風ファン24の回転に応じて室内熱交換器14を通過する冷気または暖気の気流を生成し、吹出口29から冷気または暖気の気流を吹き出す。室外機13は、圧縮機15および膨張弁17の働きに応じて、調整された相状態で室内熱交換器14に冷媒を供給する。
【0050】
加熱除菌動作部81は、暖房サイクル運転を実施し、予め決められた継続時間(例えば10分)にわたって摂氏55度以上に室内熱交換器14の温度を維持する加熱制御部81aと、加熱制御部81aの暖房サイクル運転に先立って送風運転(以下「第1送風運転」という)を実施する前処理制御部81bと、加熱制御部81aの暖房サイクル運転後に送風運転(以下「第2送風運転」という)を実施する後処理制御部81cとを備える。送風運転時、圧縮機15では休止状態が確立される。すなわち、圧縮機15の動作は停止する。ここで、暖房サイクル運転では、冷凍回路19で暖房運転時と同様な冷媒の循環が確立される。加熱除菌動作部81には温度センサ26aおよび湿度センサ26bが接続される。温度センサ26aおよび湿度センサ26bは、空気調和機11の冷房運転あるいは暖房運転に用いられるセンサと兼用されるものであってもよい。
【0051】
ここでは、加熱除菌動作部81は、圧縮機15の使用温度範囲の上限温度に対応して定められる限度温度を設定する。圧縮機15には、圧縮機15の動作を保証する使用温度範囲が設定される。圧縮機15の温度が使用温度範囲の上限温度以下に維持されると、圧縮機15の動作は確実に確保される。暖房運転時に圧縮機15の動作が抑制されると、圧縮機15の温度の上昇は回避されることができる。ここで、空気調和機11では圧縮機15の温度制御にあたって室内熱交換器14の温度が利用される。室内熱交換器14の温度は温度センサ26aで検出される。室内熱交換器14の温度が限度温度を超えると、加熱除菌動作部81は圧縮機15の動作を抑制する。加熱除菌動作部81は圧縮機15の動作を停止してもよい。こうして圧縮機15は保護される。限度温度は例えば摂氏59度に設定される。
【0052】
第2送風ファン制御部86には参照テーブル88が接続される。参照テーブル88には、送風ファン24の1分あたり回転数を規定する第1値88aと、第1値88aよりも小さい送風ファン24の1分あたり回転数を規定する第2値88bと、第2値88bよりも小さい送風ファン24の1分あたり回転数を規定する第3値88cと、第1値88aよりも小さく第2値88bよりも大きい送風ファン24の1分あたり回転数を規定する第4値88dとが保持される。第1値88aの回転数で送風ファン24が回転すると、吹出口29から第1風量の気流は吹き出す。第2値88bの回転数で送風ファン24が回転すると、吹出口29から第1風量よりも小さい第2風量の気流は吹き出す。第3値88cの回転数で送風ファン24が回転すると、吹出口29から第2風量よりも小さい第3風量の気流は吹き出す。第4値88dの回転数で送風ファン24が回転すると、吹出口29から第1風量よりも小さく第2風量よりも大きい風量の気流は吹き出す。参照テーブル88は例えばメモリといった記憶媒体内に構築されればよい。ここでは、第3値88cよりも小さい送風ファン24の1分あたり回転数を規定する第5値88eが参照テーブル88に保持される。第5値88eの回転数で送風ファン24が回転すると、吹出口29から第3風量よりも小さい風量の気流は吹き出す。
【0053】
参照テーブル88には、加熱制御部81aで実施される暖房サイクル運転の送風時間を特定する第1時間値89aと、前処理制御部81bで実施される第1送風運転の送風時間を特定する第2時間値89bと、後処理制御部81cで実施される第2送風運転の送風時間を特定する第3時間値89cとが保持される。ここでは、第1値88a~第5値88eおよび第1時間値89a~第3時間値89cはそれぞれ1つの固定値で特定される。
【0054】
制御部27は、冷房運転部78、暖房運転部79および加熱除菌動作部81に接続されるタイマー91を備える。タイマー91は冷房運転部78、暖房運転部79または加熱除菌動作部81の指示に従って計時する。冷房運転あるいは暖房運転の運転時間や加熱制御部81aの暖房サイクル運転時間、前処理制御部81bの送風時間、後処理制御部81cの送風時間が測定される。タイマー91は加熱除菌動作部81に向けて計時信号を出力する。計時信号は、計時された時間の値を特定する。加熱除菌動作部81は、計時された時間の値に応じて、弁切替制御部82の動作や圧縮機制御部84の動作、第2送風ファン制御部86の動作を制御する。
【0055】
制御部27は、冷房運転部78、暖房運転部79および加熱除菌動作部81に接続される受信部92を備える。受信部92はリモコン(操作ユニット)93と通信する。通信には光信号や電波が用いられる。リモコン93は、室内空間に配置されて、室内機12に操作信号を送る。
【0056】
図7に示されるように、リモコン93は、筐体94の表面に埋め込まれる操作ボタン群95およびディスプレイパネル96を備える。操作ボタン群95は、「メニュー」ボタン95a、「決定」ボタン95b、「戻る」ボタン95c、「冷房」ボタン95d、「暖房」ボタン95e、「除湿」ボタン95f、「停止」ボタン95gといった操作ボタンを含む。個々の操作ボタンが操作されると、個々の操作ボタン95a~95gに固有の電気信号が出力される。電気信号は、送信回路で光信号や電波に変換され室内機12の受信部92に向けて送信される。
【0057】
ディスプレイパネル96には、描画回路の指示に従って「自動」「冷房」「暖房」「除湿」「送風」といった運転動作の種類や設定温度が表示されるほか、「メニュー」ボタン95aの操作に応じてメニューリスト(アイコン)が表示される。メニューリストに表示される選択肢の中から「決定」ボタン95bで選択することで、加熱除菌動作を含むその他の動作に関して実行または不実行が決定されることができる。例えば冷房運転中や暖房運転中に「メニュー」ボタン95aが操作されると、
図7(B)に示されるように、ディスプレイパネル96にはメニューリスト97が表示される。「決定」ボタン95bの操作に応じて「風量」が選択されると、
図7(C)に示されるように、「風量」のリスト98が表示される。ユーザーは、「決定」ボタン95bの操作を通じて希望する風量を選択することができる。例えば「強風」が選択されると、第2送風ファン制御部86は参照テーブル88から第1値88aを取得する。第1値88aに応じて第2送風ファン制御部86は送風ファン24の動作を制御する。同様に、「弱風」が選択されると第2値88bは取得される。「微風」が選択されると第3値88cは取得される。「静音」が選択されると、第5値88eは取得される。同様にユーザーはメニューリストから「加熱除菌」を選択することができる。リモコン93で「加熱除菌」が選択されると、制御部27は加熱除菌動作を実施する。
【0058】
(4)加熱除菌動作
次に、空気調和機11で実施される加熱除菌動作を説明する。加熱除菌動作の開始に先立って空気調和機11では冷房運転が実施されていると、室温に比べて室内機12内の温度が低下することから、室内空間の湿度に応じて室内機12の筐体内で結露が生じる。このとき、放熱フィン42bは表面張力に応じて結露水の毛細管現象を引き起こす間隔で配列されることから、放熱フィン42b同士の隙間に結露水は溜まる。送風ファン24の回転で引き起こされる気流や重力の働きで結露水は部分的に室内熱交換器14から第1および第2ドレンパン67a、67bに流れ落ちる。
【0059】
加熱除菌動作は例えばユーザーのリモコン操作に応じて開始される。ユーザーは「メニュー」ボタン95aの操作に基づきリモコン93のディスプレイパネル96にメニューリストを表示する。ユーザーはメニューリストから「加熱除菌」を選択する。リモコン93から室内機12の受信部92に「加熱除菌」を特定する電波は送信される。加熱除菌動作部81は「加熱除菌」信号の受信に応じて加熱除菌動作を開始する。加熱除菌動作に先立って冷房運転部78は冷房運転を終了する。
【0060】
図8に示されるように、加熱除菌動作が開始されると、ステップS1で、前処理制御部81bは第1送風運転を実施する。第1送風運転にあたって前処理制御部81bは参照テーブル88から第4値88dおよび第2時間値89bを取得する。前処理制御部81bは圧縮機15の動作を停止する。前処理制御部81bは第2送風ファン制御部86を通じて第4値88dおよび第2時間値89bに基づき送風ファン24の動作を制御する。前処理制御部81bは第2時間値89bの計時にあたって例えばタイマー91を用いればよい。第1領域64、第2領域66、第3領域68および第4領域69では、気流が通らないことから、放熱フィン42bの隙間に結露水が残存する。隙間以外で放熱フィン42bの表面に付着する水分は取り除かれる。
【0061】
第1送風運転が終了すると、ステップS2で、加熱制御部81aは暖房サイクル運転を実施する。暖房サイクル運転にあたって加熱制御部81aは参照テーブル88から第3値88cおよび第1時間値89aを取得する。加熱制御部81aは弁切替制御部82、開度制御部83および圧縮機制御部84を通じて四方弁18、膨張弁17および圧縮機15の動作を制御し暖房運転を確立する。暖房サイクル運転にあたって加熱制御部81aは第2送風ファン制御部86を通じて第3値88cおよび第1時間値89aに基づき送風ファン24の動作を制御する。加熱制御部81aは第1時間値89aの計時にあたって例えばタイマー91を用いればよい。
【0062】
暖房サイクル運転が終了すると、ステップS3で、後処理制御部81cは第2送風運転を実施する。第2送風運転にあたって後処理制御部81cは参照テーブル88から第2値88bおよび第3時間値89cを取得する。後処理制御部81cは圧縮機15の動作を停止する。後処理制御部81cは第2送風ファン制御部86を通じて第2値88bおよび第3時間値89cに基づき送風ファン24の動作を制御する。後処理制御部81cは第3時間値89cの計時にあたって例えばタイマー91を用いればよい。
【0063】
加熱制御部81aは予め決められた継続時間(=第1時間値89a)にわたって摂氏55度以上に室内熱交換器14の温度を維持する。加熱除菌動作には時間短縮が望まれることから、第1時間値89aにはカビ菌および細菌(例えば大腸菌)が90%以上で死滅する最小時間が設定される。ここでは、既知の実験結果に基づき最小時間は5[min]に設定される。圧縮機15の保護の観点から室内熱交換器14の温度は摂氏59度以下に設定される。
【0064】
第1送風運転にあたって、第4値88dおよび第2時間値89bは、加熱制御部81aの暖房サイクル運転中に室内熱交換器14の隙間に結露水を維持することができる値に設定される。したがって、第1送風運転では、加熱制御部81aの暖房サイクル運転中に室内熱交換器14の隙間に結露水を維持する水量に、室内熱交換器14の隙間に結露水は残存する。放熱フィン42bの表面に付着する水分は取り除かれる。室内熱交換器14では、前述の第1領域64、第2領域66、第3領域68および第4領域69といった具合に、気流が通らない領域で結露水の蒸発は抑制されることから、設計段階で第1領域64、第2領域66、第3領域68および第4領域69の面積が調整されることで、残存する結露水の水量は調整されることができる。
【0065】
第2送風運転にあたって、第2値88bおよび第3時間値89cは、少なくとも十分に暖房サイクル運転後の室内熱交換器14を冷却することができる値に設定される。望ましくは、室内熱交換器14は室温まで冷やされる。ここでは、第2送風運転に応じて室内熱交換器14に残留する結露水は気化する。室内熱交換器14の表面は乾燥する。
【0066】
本実施形態では、加熱除菌動作の暖房サイクル運転時に結露水は維持されるので、摂氏55度以上に室内熱交換器14が維持されると、湿熱除菌は実現される。結露水中でカビ菌および細菌は効果的に除菌される。カビの繁殖は抑止される。しかも、暖房サイクル運転に先立って送風運転が実施されることから、暖房サイクル運転の開始時に吹き出し気流内で湿度の上昇は抑制される。その結果、在室者は湿った温かい空気に触れずに済む。在室者の肌感は良好に維持される。その一方で、過度に第1送風運転が持続されると、室内熱交換器14の隙間から結露水が蒸発してしまい、暖房サイクル運転時に十分な除菌効果が実現されない。反対に、第1送風運転時に室内熱交換器14の表面が十分に乾燥しないと、暖房サイクル運転の開始時に吹き出し気流の湿度が著しく上昇し、在室者の肌感は悪化してしまう。
【0067】
本実施形態に係る後処理制御部81は、加熱除菌動作の暖房サイクル運転後に第2送風運転を実施し、室内熱交換器14を冷却するとともに、室内熱交換器14の隙間から結露水を気化させる。こうして室内機12の内部は乾燥するので、カビの繁殖は抑制される(防止される)。
【0068】
室内熱交換器14には、過度の加熱から圧縮機15を保護する限度温度が設定される。室内熱交換器14の温度が限度温度を超えると、圧縮機15の動作は抑制される。したがって、室内熱交換器14の温度が限度温度以下に抑えられると、圧縮機15の動作は抑制されずに、室内熱交換器14の加熱は良好に維持される。加えて、室内熱交換器14には限度温度が設定されるので、過度に温かい気流が室内機12から室内に吹き出されることは防止される。室内の居住環境の悪化は防止されることができる。
【0069】
本実施形態に係る前処理制御部81aは、それぞれ1つの固定値で、第1送風運転にあたって送風ファン24の1分あたり回転数および送風時間を規定する参照テーブル88を有する。結露水は重力の働きで室内熱交換器14の表面を伝って流れ落ちる。したがって、室内熱交換器14の表面に付着する水分の量は予め想定されることができる。予め想定される水分の量に基づき送風ファン24の1分当たり回転数と送風時間とは特定されることができる。こうして前処理制御部81aの処理動作は簡素化される。
【0070】
本実施形態では、第2送風運転時には、暖房サイクル運転後で室内熱交換器14は高温に達するものの、送風ファン24は1分あたりに第1送風運転時の回転数(第4値88dの回転数)よりも小さい回転数(第3値88cの回転数)で回転するので、吹き出し気流の流量は抑制され、その結果、在室者の肌感は良好に維持される。第2送風運転で室内熱交換器14は冷まされるので、後続して冷房運転が実施される場合でも冷房運転は短時間で開始されることができる。
【0071】
加熱除菌動作にあたって暖房サイクル運転時に最も風量が抑制されれば、在室者は暖かい気流に曝されずに済む。したがって、在室者の肌感は良好に維持される。第2送風運転時には、暖房サイクル運転時よりも大きい風量が確保されれば、室内熱交換器14の乾燥および温度の下降は促進される。したがって、処理時間は短縮される。第2送風運転時には吹き出し気流の温度は下降するので、たとえ風量が増加しても在室者の肌感は良好に維持されることができる。
【0072】
冷房運転部78の冷房運転や暖房運転部79の暖房運転ではユーザーの選択に応じて室内機12の風量は調整されることができる。風量の調整にあたってユーザーの選択肢ごとに送風ファン24の回転数は予め設定される。ユーザーの選択肢はリモコン93に設定される。加熱除菌動作の暖房サイクル運転や第2送風運転にあたってリモコン93に設定される回転数が利用されると、通常制御時と回転数が変わらないので、制御は簡素化されることができる。制御部27の負荷は軽減される。参照テーブル88に新たに数値が追加される必要もないので、記憶容量も節約されることができる。
【0073】
本実施形態では、第1送風運転にあたって、送風ファン24の回転数は、「強風」よりも小さく「弱風」よりも大きい風量に対応して回転数を規定する第4値に設定される。こうして第1送風運転にあたってユーザーの選択肢とは異なる回転数は割り振られる。ユーザーの選択肢以外で第1送風運転に適した回転数は設定されることができる。こうしてできる限り第1送風運転の時間は短縮されることができる。できる限り短時間に加熱除菌動作は完了することができる。ただし、第1送風運転にあたって、前処理制御部81bは第2送風運転時の「弱風」よりも大きい「強風」に対応する第1値に設定されてもよい。こうして第1送風運転にあたってリモコン93に設定される回転数が利用されると、通常制御時と回転数が変わらないので、制御は簡素化されることができる。
【0074】
第1送風運転の第4値88dおよび第2時間値89bの設定にあたって例えば吹き出し気流内の1分あたり湿度変化率が参照されてもよい。本発明者は、第1送風運転時および暖房サイクル運転時に経過時間ごとに1分あたり湿度変化率を計測した。計測にあたって実験室に空気調和機11は設置された。実験室内で1分ごとに相対湿度は計測された。第1送風運転にあたって第2値88bに基づき送風量は「弱風」に設定された。暖房サイクル運転にあたって第3値88cに基づき送風量は「微風」に設定された。
【0075】
図9に実線で示されるように、第1送風運転が特定の運転時間にわたって継続されると、吹き出し気流内の1分あたり湿度変化率はピーク値101を示した後に所定の範囲内の値に収束することが見出された。その後、第1送風運転に引き続き暖房サイクル運転が実施されると、暖房サイクル運転の開始に伴って再び吹き出し気流内の1分あたり湿度変化率はピーク値102を示した。こうして第1送風運転時と暖房サイクル運転時とでピーク値101、102は分散されることが確認された。その一方で、第1送風運転でピーク値101が現れるまで第1送風運転が継続されず、第1送風運転から暖房サイクル運転に切り替えられると、
図9に点線で示されるように、暖房サイクル運転の開始に伴っていずれのピーク値101、102よりも大きいピーク値103が現れた。こうした1分あたり湿度変化率の増大は在室者の肌感を悪化させることから、ピーク値の低減は在室者の心地よさに繋がる。すなわち、吹き出し気流内の1分あたり湿度変化率はピーク値101を示した後に所定の範囲内の値に収束するまで第1送風運転が実施されると、その後に暖房サイクル運転が実施されても、暖房サイクル運転に基づく湿度の上昇は抑制される。したがって、在室者の肌感は良好に維持される。その一方で、1分あたり湿度変化率がピーク値を示した後であって所定の範囲に収まる前に暖房サイクル運転が開始されると、1分あたり湿度変化率がいずれのピーク値101、102よりも著しく増加する。ここでは、吹き出し気流内の1分あたり湿度変化率がピーク値101を示した後に1分あたり湿度変化率が±1.0%以内に収束すると、加熱制御部81aは第1送風運転から暖房サイクル運転に切り替えを実施する。
【0076】
加熱除菌動作の暖房サイクル運転では、前述のように暖房サイクル運転の全期間にわたって室内熱交換器14に結露水が維持される必要はなく、予め決められた継続時間にわたって摂氏55度以上に室内熱交換器14の温度が維持され室内熱交換器14に結露水が維持されればよい。この場合には、送風ファン24の1分あたり回転数および送風時間がそれぞれ1固定値で特定されるのではなく、冷房運転中に室内熱交換器14で発生する結露水の量に応じて送風ファン24の1分あたり回転数および送風時間は決定されればよい。例えば、前処理制御部81bは冷房運転の運転時間に基づき送風ファン24の回転数を決定することができる。室内熱交換器14で発生する結露水の量は冷房運転の運転時間に依存することから、制御部27で計時される冷房運転の運転時間に応じて送風運転時の送風ファン24の回転数が決定されれば、送風運転の終了時に室内熱交換器14では最適な湿り具合が確立されることができる。
【0077】
こうして第1送風運転時に結露水の量に応じて送風ファン24の回転数は決定されることから、室内熱交換器14では結露水の維持にあたって最適な湿り具合が確立されることができる。したがって、送風運転時間は短縮されることができる。過度に第1送風運転が持続されると、室内熱交換器14から結露水が蒸発してしまい、加熱除菌動作の暖房サイクル運転時に十分な除菌効果が実現されない。反対に、第1送風運転時に室内熱交換器14の表面が十分に乾燥しないと、暖房サイクル運転の開始時に吹き出し気流の湿度が著しく上昇し、在室者の肌感は悪化してしまう。
【0078】
前処理制御部81bは、湿度センサ26bで検出される湿度に基づき送風ファン24の回転数を決定してもよい。室内熱交換器14で発生する結露水の量は室内機12内の湿度に依存することから、湿度センサ26bの計測値に応じて第1送風運転時の送風ファン24の回転数が決定されれば、第1送風運転の終了時に室内熱交換器14では最適な湿り具合が確立されることができる。
【符号の説明】
【0079】
11…空気調和機、12…室内機、13…室外機、14…熱交換器(室内熱交換器)、15…圧縮機、17…膨張弁、24…(室内機の)送風ファン、26b…湿度センサ、29…吹出口、81a…加熱制御部、81b…前処理制御部、81c…後処理制御部、88…参照テーブル。