IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイションの特許一覧

特許7593737ガスタービンエンジン用のシールアセンブリ
<>
  • 特許-ガスタービンエンジン用のシールアセンブリ 図1
  • 特許-ガスタービンエンジン用のシールアセンブリ 図2
  • 特許-ガスタービンエンジン用のシールアセンブリ 図3
  • 特許-ガスタービンエンジン用のシールアセンブリ 図4
  • 特許-ガスタービンエンジン用のシールアセンブリ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジン用のシールアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/28 20060101AFI20241126BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20241126BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20241126BHJP
   F01D 25/16 20060101ALI20241126BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20241126BHJP
   F16J 15/30 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
F02C7/28 E
F02C7/00 C
F01D25/00 M
F01D25/00 L
F01D25/16 J
F02C7/28 B
F16J15/18 C
F16J15/30
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019170048
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2020045902
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】62/733,598
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】アールティーエックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】RTX CORPORATION
【住所又は居所原語表記】1000 Wilson Boulevard,Arlington,VA 22209,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】パンチョ ピー.ストヤノフ
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-001758(JP,A)
【文献】特開昭61-124727(JP,A)
【文献】特開平11-344127(JP,A)
【文献】特開2006-275286(JP,A)
【文献】特開2007-298035(JP,A)
【文献】特開2017-180788(JP,A)
【文献】米国特許第04336944(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/28
F02C 7/00
F01D 25/00
F01D 25/16
F16J 15/18
F16J 15/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン用のシールアセンブリであって、
炭素材料を含むシールと、
前記シールに対して回転するように配置されたシールシートであって、前記シールおよび前記シールシートがそれぞれ一緒になって摺動シールを画定するシール面を有し、少なくとも前記シールシートの前記シール面が、前記シールの前記シール面と同じ炭素材料で作られている、シールシートと、
を備え、
前記シールシートが、凹部領域と、前記凹部領域に取り付けられた炭素系ブロックとを有し、前記炭素系ブロック自体が、前記シールシートの前記シール面を画定し、
前記シールおよび前記シールシートの前記シール面が、エレクトログラファイト級の炭素、炭素-グラファイト級の炭素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される同じ材料である、シールアセンブリ。
【請求項2】
前記シールシート自体が、前記シールと適合する炭素系材料を含む、請求項1に記載のシールアセンブリ。
【請求項3】
前記シールおよび前記シールシートの前記シール面が、0.1未満の摩擦係数を示す、請求項1に記載のシールアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
2018年9月19日出願の「LOW FRICTION CARBON-CARBON SEAL ASSEMBLY」と題される米国特許出願第62/733,598号の利益が主張されており、この米国特許出願の開示は、参照によってその全体が本明細書にそのまま明記されているかのように組み込まれる。
【0002】
本開示は、シールアセンブリに関し、より詳細には、ガスタービンエンジン用のベアリングシールに関する。
【背景技術】
【0003】
ガスタービンエンジンは、オイルの漏れを防ぐためにシールされる必要があるベアリングの固定構成要素内に取り付けられた回転要素を有する。このようなシールは、ベアリングシールまたはオイルシールとして知られている。そのような目的のためのシールの一形態は炭素シールであり、この場合は、炭素材料シールが回転要素の周りにまたは回転要素に対して密接に配置される。このようなシールは、最初に作動したときに、炭素シールからシールアセンブリの回転要素またはシートに炭素が移動して、シート上に炭素の膜を形成する。この膜は、許容可能な低摩擦係数で動作している間に、シールとシートとの間のオイルの漏れが防止されるように、シールとの摩擦係数を低くすることが意図されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
膜が形成されるこの動作期間は、シールの慣らし段階と呼ばれる。慣らし中に過度の摩擦が発生することがあり、結果として、シールのパーツが過度に摩耗し、シールまたはシートの位置で過度の熱が起こり得るなどの問題を招く。この問題は、高速でかつ比較的低い圧力で動作するシールでは一層深刻であり、摩擦によりすでに高い温度をさらに増加させるおそれがある。本開示は、この問題に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示においては、炭素材料を含むシールと、シールに対して回転するように配置されたシールシートであって、シールおよびシールシートがそれぞれ一緒になって摺動シールを画定するシール面を有し、少なくともシールシートのシール面が、シールのシール面と同じ炭素材料で作られている、シールシートとを備えたガスタービンエンジン用のシールアセンブリが提供される。
【0006】
別の非限定的な実施形態では、シールシートが、凹部領域と、凹部に取り付けられた炭素系ブロックとを有し、炭素系ブロックが、シールシートのシール面を画定する。さらに別の非限定的な実施形態では、シールシート自体が、シールと適合する炭素系材料を含む。
【0007】
さらなる非限定的な実施形態では、シールおよびシールシートのシール面が、エレクトログラファイト級の炭素、炭素-グラファイト級の炭素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される同じ材料である。
【0008】
さらにさらなる非限定的な実施形態では、シールおよびシールシートのシール面が、0.1未満の摩擦係数を示す。
【0009】
開示されたシールアセンブリの他の詳細は、以下の詳細な説明および添付の図面に明記され、図面中、同様の参照番号は同様の要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ガスタービンエンジンの一部の簡略化された断面図である。
図2】ガスタービンエンジン用の従来技術のシールアセンブリの簡略化された断面図である。
図3】慣らし運転およびその後の定常状態運転を通じて、図2のシールアセンブリについて摩擦係数を示す図である。
図4】本明細書に開示されるガスタービンエンジン用のシールアセンブリの簡略化された断面図である。
図5】シールおよびシールシートの材料に起因する慣らし段階を経ずに定常状態動作を示す図4のシールについて摩擦係数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、ガスタービンエンジン用のシールアセンブリに関し、より詳細には、ガスタービンエンジンのオイルシール用の炭素シールアセンブリに関する。
【0012】
図1は、ガスタービンエンジンの一部の断面図であり、そのようなエンジンの典型的な構成要素を示す。本開示の関心の対象となるのは、エンジンの様々な作動している構成要素が結合される回転シャフト10と、構造10と連携して所望の機能を実行する固定構造12、14、16、18とである。エンジンの他の特徴については、本開示に関連する特徴に注目させるために、図1の図から取り除かれているか、または簡単な略図に要約されている。
【0013】
このような設定では、図1は、前部シールアセンブリ20および後部シールアセンブリ22を示し、これらのそれぞれが、シールを通るオイルの漏れまたは流れを防止し、それによって、ガスタービンエンジン内の希望されかつ必要とされる場所にオイルを維持する働きをする。
【0014】
シールアセンブリ20は、前部シールシート24および炭素シール26によって画定される。炭素シール26は、回転要素10およびシールシート24に対して静止したままである。図1に示すように、これらの構成要素の各々はシール面28、30を有し、これらが一緒になってシールを画定する。これらの面28、30は互いに対して摺動し、これらの面を通るオイルの漏れを防ぐ。同様に、シールアセンブリ22は、後部シールシート32および炭素シールアセンブリ34によって画定され、これらの各々は、これらの表面を通るオイルの漏れを防ぐためのシール面36、38を画定する。
【0015】
図2は、面36、38を含む炭素シール34およびシールシート32の部分を示す。この知られている構成のシールシート32は、典型的には、AMS6490/6491、AMS6322、またはAMS6323などのFe系合金などの材料で形成され、このシールシート32は、シールシート32に被着されるPWA50材料などの追加の材料を有してもよく、または有さなくてもよい。いずれにしても、シールシートの材料は、炭素シールに対して比較的高い摩擦係数で始まり、これは、慣らし段階が完了するまで継続する。図示のように、炭素シール34は未処理のシールシート36に隣接して配置され、このシールアセンブリの初期動作は、図3に示すように、面の間の摩擦係数が相対的に高く始まり、徐々に減少する上記の慣らし段階をもたらす。図2の右側部分に示す画像は、慣らし段階後のシールアセンブリ22を示す。この段階で、薄い転写膜40が炭素シール34からシールシート32のシール面36に転写されている。この膜40が面36に転写されてしまえば、シールアセンブリ22は、シールアセンブリの残りの寿命の間は、定常状態条件で動作し、図3は、慣らし段階中に存在していたよりも相対的に低い摩擦係数を有したシールアセンブリの動作のこの部分を示す。
【0016】
図2は、炭素シール34に設けることができる膜コントローラ42を有した炭素シール34を示す。これらの膜コントローラ42は、転写膜40の厚さの過剰な堆積を防止し、それによって、一方の側の炭素シール34と他方の転写膜40とによって画定される所望の炭素-炭素摺動面を維持する働きをする。
【0017】
図4および図5は共に、シールが作られる材料と同じかまたは同様の炭素系材料製の少なくともシール面36を含むシールシートが作成されたシールアセンブリを示す。したがって、シール面36、38は、同様の炭素系材料で作られ、シールアセンブリの初期接触から全寿命を通して非常に低い摩擦係数を有する。定常状態の動作中に、転写膜44がシールシートの表面36を覆ってなおも被着される。ただし、この転写膜44は、シールと同じ材料であり、そのため、引き続き所望の低い摩擦係数を有する。したがって、図5に示すように、動作は定常状態段階で実質的に即座に開始し、シールアセンブリの全寿命の間、そのような定常状態段階で動作は継続する。
【0018】
図4は、炭素シール34と重なるように、シールシート、例えば凹部または受け口48に取り付けられた炭素系材料のブロック46を示す。あるいは、シールシート全体をこの同じ材料から作成してもよい。したがって、シールアセンブリの動作が開始するとき、炭素シールと炭素シールシートとの間の炭素-炭素間相互作用のために、摩擦係数はすでに低い。このシールアセンブリの定常状態動作により、炭素材料の転写膜が少なくともある程度は炭素系シールシート上に配置される結果となり、この定常状態動作により、関連した構成要素の耐用寿命が長期化するようになる。このことは図5に示しており、定常状態の動作は、有意な慣らし段階なしで、実質的に即座に開始し、定常状態での摩擦係数は、図3に示すものと比較して相対的に低い。図4に示すシールアセンブリを有したガスタービンエンジンの運転中に、転写膜は、炭素シール34からDLC薄膜44を覆って最終的にさらに堆積され、この転写膜の厚さはまた、例えば、膜コントローラ42によって制御される。この膜コントローラ42は、本開示のこの態様に従って、炭素シール34内に存在させることができる。
【0019】
炭素シール34は、エレクトログラファイト級の炭素であるFT2650などの好適なエレクトロ炭素(electrocarbon)から提供され得る。シールシートは、通常は、同じ材料から提供され得る。このことは、慣らし段階を伴わずに、0.1未満の初期摩擦係数という結果をもたらす。代替形態として、炭素シール34を、P-4229などの炭素-グラファイト級から提供してもよく、これを、同じ材料から作られたシールシートのシール面に当接させてもよい。これにより、この場合もやはり慣らし段階を伴わずに、0.12未満の初期摩擦係数がもたらされる。
【0020】
再び図1を参照すると、シール26、34は、構造12、18などのいずれかの好適な構造またはシール保持具に固定することによって、ガスタービンエンジンに取り付けることができることを理解されたい。さらに、シールシート24、36は、回転性要素10が回転したときに、シール面28、30、および36、38がそれぞれ互いに近接して摺動するように、回転部材10に適切に取り付けることができる。
【0021】
図4および図5の図は、後部シールアセンブリに関して提示されていることを理解されたい。前部シールアセンブリのための同じ構成要素の図は、構造は同じであるが左から右へと反転するため、本明細書では提供されない。
【0022】
本開示による、シールと同様の炭素系材料からのシールシート、または少なくともシールシートのシール面の作成は、例えば、200~350°Fの間で、高い摺動速度の下に、効果的に動作し得る、低摩擦および耐摩耗性の炭素ベースのシール界面を生じさせることを理解されたい。このことは、摩擦係数が低下し、慣らし段階が改善されることによって、表面下の加熱(例えば摩擦加熱に起因した加熱)を減少させることができ、結果としてシールシステムの長期的な耐摩耗性を改善する。
【0023】
上記のように、シールと適合するように炭素系材料からシールシートを製造することにより、動作開始時から低摩擦の炭素-炭素界面が形成され、したがって非常に短い慣らし段階を生じさせる。初期動作の間中、転写された膜は依然としてシールシート上に形成されており、この構成はシールの定常状態の動作を通して維持される。
【0024】
本明細書に開示されるシールアセンブリによって生じる低摩擦および耐摩耗性は、例えばガスタービンエンジンのベアリングシール、および他の場所でも同様に有用であり得、エンジン構成要素の耐久寿命を大幅に延ばし得ることを理解されたい。さらに、本明細書に開示されるシールアセンブリの利用は、摩耗および熱損傷が原因で早くに取り除かれるパーツの数を減らすことによって、全体的なコストを大幅に削減することができる。
【0025】
初期に予め薄膜状に覆うステップのないシールアセンブリと比較して、慣らし段階の長さとシール構成要素への影響とが低減されるとともに、シールアセンブリの定常状態性能が改善されるシールアセンブリおよび方法が提供されている。シールアセンブリ方法およびシールアセンブリ品は、その特定の実施形態との関連で説明されたが、上記の説明を読んだ当業者にとっては、他の予期しない代替、修正、および変形が明らかになる可能性がある。したがって、添付の特許請求の範囲の広い範囲に入るそれらの代替、修正、および変形を包含することが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5