(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ノズル、接着剤塗布ヘッド、接着剤塗布装置及びおむつ製造方法
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20241126BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20241126BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241126BHJP
B05D 7/02 20060101ALI20241126BHJP
B05D 7/20 20060101ALI20241126BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20241126BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B05C5/02
B05D1/26 Z
B05D7/24 301P
B05D7/02
B05D7/20
A61F13/49 310
A61F13/15 355A
(21)【出願番号】P 2020055229
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】391019120
【氏名又は名称】ノードソン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 究
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 真仁
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/239569(WO,A1)
【文献】特開2008-212919(JP,A)
【文献】特表2017-504473(JP,A)
【文献】特開平10-183454(JP,A)
【文献】特開2009-291780(JP,A)
【文献】特開2003-071328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-5/04
B05B 7/00-7/32
B05D 1/00-7/26
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-16/64
D04H 1/00-18/04
D01D 1/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外縁から外方へ突出する複数の先細形状の第一の凸部を有するパターンシムと、
外縁から外方へ突出し、前記複数の先細形状の第一の凸部より幅広の形状を有する複数の先細形状の第二の凸部を有する接着剤シムと、
外縁から外方へ突出し、前記複数の先細形状の第一の凸部より幅広の形状を有する複数の先細形状の第三の凸部を有するガスシムと、
接着剤入口と、接着剤出口と、前記接着剤入口と前記接着剤出口を連通する接着剤流路と、
前記接着剤出口に連通する接着剤分配溝と、ガス入口と、ガス出口と、前記ガス入口と前記ガス出口を連通するガス流路と、を有するヘッド本体と、
前記ガス出口に連通する第一のガス分配溝と、前記第一のガス分配溝に連通する第二のガス分配溝と、前記第二のガス分配溝に連通する第三のガス分配溝と、を有するフェースプレートと、
前記ヘッド本体、前記接着剤シム、前記パターンシム、前記ガスシム及び前記フェースプレートをこの順に並べて固定する固定手段と、
を備え、
前記複数の先細形状の第一の凸部が前記複数の先細形状の第二の凸部と前記複数の先細形状の第三の凸部によって挟まれて接着剤吐出口を形成し、前記接着剤吐出口の両側に形成されるガス噴出口を形成し、
前記接着剤吐出口から吐出される接着剤が前記接着剤吐出口に対して移動方向に移動する被塗物に塗布されるように構成されており、
前記ヘッド本体は、前記移動方向に対して鋭角を形成するように傾斜した傾斜面を有し、前記接着剤シムは、前記傾斜面に接触して配置されており、前記パターンシム、前記接着剤シム及び前記ガスシムは、前記傾斜面に重ね合わせて配置されて前記接着剤吐出口と前記ガス噴出口を形成し、前記接着剤流路は、前記ヘッド本体を通って延在し、前記接着剤分配溝は、前記ヘッド本体の前記傾斜面に形成され、
前記接着剤分配溝は、前記接着剤吐出口に連通し、前記ガス流路は、前記ヘッド本体を通って延在し、前記ガス出口は、前記ヘッド本体の前記傾斜面に形成され
、前記第三のガス分配溝は、前記ガス噴出口に連通することを特徴とするノズル。
【請求項2】
前記パターンシムは、更に、前記複数の先細形状の第一の凸部の先端にそれぞれ開口する複数の第一のスリットと、前記複数の第一のスリットのそれぞれの両側に設けられて前記第一の凸部に隣接する部分に開口する複数の第二のスリットと、第一のガス穴と、を有し、
前記接着剤シムは、更に、接着剤流路としての複数の第一の穴と、第二のガス穴と、を有し、
前記ガスシムは、更に、ガス流路としての複数の第二の穴と、第三のガス穴と、を有し、
前記固定手段は、前記接着剤分配溝が前記複数の第一の穴に連通し、前記複数の第一の穴が前記複数の第一のスリットに連通し、前記ガス出口が前記第一のガス穴に連通し、前記第一のガス穴が前記第二のガス穴に連通し、前記第二のガス穴が前記第三のガス穴に連通し、前記第三のガス穴が前記第一のガス分配溝に連通し、前記第三のガス分配溝が前記複数の第二の穴に連通し、前記複数の第二の穴が前記複数の第二のスリットに連通するように、前記ヘッド本体、前記接着剤シム、前記パターンシム、前記ガスシム及び前記フェースプレートをこの順に並べて固定し、
前記接着剤吐出口は、前記複数の第一のスリットの開口に形成され、前記ガス噴出口は、前記複数の第二のスリットの開口部に形成され、
前記複数の第一の穴は、前記接着剤出口からの距離が長くなるほど前記接着剤吐出口からの距離が短くなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記複数の第一のスリットの前記接着剤吐出口を通る軸線は、前記傾斜面に沿って延在して前記移動方向に対して鋭角を成し、
前記複数の第二のスリットの前記ガス噴出口を通る軸線は、前記傾斜面に沿って延在して前記移動方向に対して鋭角を成すことを特徴とする請求項2に記載のノズル。
【請求項4】
前記フェースプレートは、複数のガイド溝を有し、
前記複数のガイド溝のそれぞれは、前記接着剤吐出口の付近に位置しており、且つ、前記被塗物を受け取って前記移動方向に沿って前記被塗物を案内するように構成された凹面を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項5】
前記接着剤吐出口の両側に形成される前記ガス噴出口から噴出されるガスが前記接着剤吐出口から吐出される前記接着剤に前記接着剤吐出口から同じ距離で衝突するように、前記接着剤吐出口から吐出される前記接着剤に向かって前記ガス噴出口から前記ガスが対象に噴出され、
前記移動方向に沿って見たときに、前記複数の先細形状の第二の凸部および前記複数の先細形状の第三の凸部は、前記ガス噴出口を覆うように配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項6】
前記複数の第一の穴は、前記接着剤シムの幅方向に沿って延在する線に対して所定の角度を成す線と前記複数の第一のスリットとの交点に位置することを特徴とする請求項2又は3に記載のノズル。
【請求項7】
前記複数の第一の穴は、前記複数の第一のスリットが延在する方向に長い長穴であり、前記長穴の長さは、前記接着剤出口からの前記距離に従って長くなるように設定されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のノズル。
【請求項8】
前記複数の第一の穴は、丸穴であり、
前記丸穴の直径は、前記接着剤出口からの前記距離に従って大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のノズル。
【請求項9】
前記複数の第一の穴は、丸穴であり、
前記丸穴の直径は、同じであることを特徴とする請求項2又は3に記載のノズル。
【請求項10】
前記フェースプレートの幅方向において、前記第三のガス分配溝は、前記第一のガス分配溝より長く、
前記第二のガス分配溝の深さは、前記第一のガス分配溝の深さ及び前記第三のガス分配溝の深さより浅く、
前記第二のガス分配溝の幅は、前記第一のガス分配溝から前記第三のガス分配溝へ行くにつれて前記フェースプレートの前記幅方向に拡がっていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項11】
前記フェースプレートは、一対の位置決めピンを有し、
前記パターンシムは、前記一対の位置決めピンの一方を通す位置決め穴と、前記パターンシムの外周の一部に設けられて前記一対の位置決めピンの他方に係合する位置決め溝と、を有し、
前記接着剤シムは、前記一対の位置決めピンの前記一方を通す位置決め穴と、前記接着剤シムの外周の一部に設けられて前記一対の位置決めピンの前記他方に係合する位置決め溝と、を有し、
前記ガスシムは、前記一対の位置決めピンの前記一方を通す位置決め穴と、前記ガスシムの外周の一部に設けられて前記一対の位置決めピンの前記他方に係合する位置決め溝と、を有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項12】
前記第一のガス穴は、一対の第一のガス穴
であり、前記第二のガス穴は、一対の第二のガス穴
であり、前記第三のガス穴は、一対の第三のガス穴
であり、
前記ガス入口は、一対のガス入口
であり、前記ガス出口は、一対のガス出口
であり、前記ガス流路は、一対のガス流路
であり、前記一対のガス流路のそれぞれのガス流路は、前記一対のガス入口のそれぞれのガス入口及び前記一対のガス出口のそれぞれのガス出口に接続されており、
前記一対のガス出口は、前記一対の
第一のガス穴に連通し、前記一対の第一のガス穴は、前記一対の第二のガス穴に連通し、前記一対の第二のガス穴は、前記一対の第三のガス穴に連通し、前記一対の第三のガス穴は、前記第一のガス分配溝に連通していることを特徴とする請求項2、3、6、7、8又は9に記載のノズル。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のノズルと、
前記ノズルが装着され、前記ノズルへ接着剤を供給する吐出弁と、
を備える接着剤塗布ヘッド。
【請求項14】
被塗物を塗布位置へ移動方向に搬送する搬送ローラと、
接着剤を供給するメルターと、
前記メルターから前記接着剤を圧送するポンプと、
前記ポンプによって圧送される前記接着剤を通すホースと、
前記ホースから供給される前記接着剤を分配するマニホールドと、
ガスである圧縮ガスを減圧する第一の減圧弁と、
前記第一の減圧弁によって減圧された前記圧縮ガスを外部信号に従って供給する電磁弁と、
前記マニホールドから前記接着剤が分配され、前記電磁弁から供給される前記圧縮ガスによって接着剤排出口を開閉し、前記接着剤排出口から前記接着剤を排出する吐出弁と、
ガスである圧縮ガスを減圧する第二の減圧弁と、
前記吐出弁から供給される前記接着剤を吐出し、前記第二の減圧弁によって減圧された前記圧縮ガスを前記接着剤に衝突させることによって、前記接着剤を揺動させて前記移動方向に移動する前記被塗物に塗布する請求項1乃至12のいずれか一項に記載のノズルと、
を備える接着剤塗布装置。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載されたノズルを用いておむつを製造する方法であって、
複数本の糸ゴムを移動させることと、
前記ノズルから吐出される
接着剤である複数本のホットメルト接着剤の繊維へガスを衝突させることによって形成される波状パターンで前記複数本のホットメルト接着剤の繊維を前記複数本の糸ゴムへそれぞれ塗布することと、
前記複数本のホットメルト接着剤の繊維がそれぞれ塗布された前記複数本の糸ゴムを二つの基材の間に挟んで張り合わせることと、
からなる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル、接着剤塗布ヘッド、接着剤塗布装置及びおむつ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を繊維状に吐出し、繊維状の液体の概ね両側から気体を衝突させることで液体を揺動させオメガ字形状のパターンを生成するノズルがある(特許文献1)。また、基体に紐状体を接着するためにファイバ状の接着剤を揺動させて紐状体に塗布するノズルがある(特許文献2、特許文献3)。
また、塗布装置に取り付けられたときに、一対のガス孔が基材との相対移動方向に対して所定角度で傾斜した所定方向に接着剤吐出口を挟んで対称の位置に設けられたノズルがある(特許文献4)。ノズルから吐出された粘性流体材料の繊維に対してガスが噴射され、粘性流体材料が所定方向に振動する。
【0003】
さらに、複数枚のプレートを積層して接着剤ノズルとその両側に所定角度で傾斜したガス噴出口を形成する接着剤塗布ヘッドがある(特許文献5)。具体的には、中央プレートの中央凸部と、その中央凸部を挟む両端プレートの凸部によって接着剤を吐出する接着剤ノズルが構成され、接着剤ノズルの両側のスリットの開口から噴出されるガスが、吐出されている接着剤に向かって導かれる。特許文献5に記載された接着剤塗布ヘッドにおいて、中央プレートは、外縁に並んで設けられる複数の第一の凸部と、複数の第一の凸部に対応して設けられる複数の第一のスリットと、複数の第一の凸部に対応して設けられる複数の一対の第二のスリットとを有する。一対の端プレートのそれぞれは、複数の第一の凸部に対応して設けられる複数の第二の凸部を有している。つまり、一組の重ね合わされたプレートによって複数の接着剤吐出口が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-070832号公報
【文献】特開2003-071328号公報
【文献】特開平11-333373号公報
【文献】特開2008-104998号公報
【文献】特開2011-147939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一組の重ね合わされたプレートによって複数の接着剤吐出口が形成される構成においては、複数の接着剤吐出口へ供給される接着剤の流量および複数のガス噴出口へ供給される空気の流量が、プレート内の中心部と端部とで偏りが生じていた。その結果、複数の接着剤吐出口から吐出される接着剤の吐出量、接着剤のパターンの振幅、振幅周期(周波数)が不均一となり、同一の繊維径を持つ接着剤繊維を同一周期で糸ゴムに接触させることができない。したがって、糸ゴム間で接着強度にバラつきが生じ、理想的な塗布状態を得ることができないという問題があった。
【0006】
また、製品(子供用、大人用紙おむつ、女性用衛生製品等)の生産速度を上げるためには、その原材料となる糸ゴムも生産速度に応じて高速で搬送する必要がある。しかし、従来のように糸ゴムの移動方向に対してほぼ直角に接着剤を塗布する場合、糸ゴムの移動速度が速くなるにつれて、吐出された接着剤が糸ゴムの表面によって弾かれて周囲に飛散してしまうことがある。これにより、糸ゴムの所望する箇所に接着剤が付着せず接着不良となったり、また、飛散した接着剤繊維が周辺機器を汚染したりしてしまう。これを回避するには、接着剤の飛散が生じなくなるまで生産速度を下げるか、又は、接着剤の吐出速度を上げる即ち吐出量を上げることによって、接着剤が、高速で移動する糸ゴムによって弾かれることが防止される。しかし、生産条件が制約されてしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、複数の接着剤吐出口へ分配される接着剤の分布及び複数のガス噴出口へ分配されるガスの分布を向上させ、さらに、接着剤が糸ゴムによって弾かれ飛散することを抑制することができるノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決する為に、本発明の一実施例によるノズルは、
外縁から外方へ突出する複数の先細形状の第一の凸部を有するパターンシムと、
外縁から外方へ突出し、前記複数の先細形状の第一の凸部より幅広の形状を有する複数の先細形状の第二の凸部を有する接着剤シムと、
外縁から外方へ突出し、前記複数の先細形状の第一の凸部より幅広の形状を有する複数の先細形状の第三の凸部を有するガスシムと、
接着剤入口と、接着剤出口と、前記接着剤入口と前記接着剤出口を連通する接着剤流路と、前記接着剤出口に連通する接着剤分配溝と、ガス入口と、ガス出口と、前記ガス入口と前記ガス出口を連通するガス流路と、を有するヘッド本体と、
前記ガス出口に連通する第一のガス分配溝と、前記第一のガス分配溝に連通する第二のガス分配溝と、前記第二のガス分配溝に連通する第三のガス分配溝と、を有するフェースプレートと、
前記ヘッド本体、前記接着剤シム、前記パターンシム、前記ガスシム及び前記フェースプレートをこの順に並べて固定する固定手段と、
を備え、
前記複数の先細形状の第一の凸部が前記複数の先細形状の第二の凸部と前記複数の先細形状の第三の凸部によって挟まれて接着剤吐出口を形成し、前記接着剤吐出口の両側に形成されるガス噴出口を形成し、
前記接着剤吐出口から吐出される接着剤が前記接着剤吐出口に対して移動方向に移動する被塗物に塗布されるように構成されており、
前記ヘッド本体は、前記移動方向に対して鋭角を形成するように傾斜した傾斜面を有し、前記接着剤シムは、前記傾斜面に接触して配置されており、前記パターンシム、前記接着剤シム及び前記ガスシムは、前記傾斜面に重ね合わせて配置されて前記接着剤吐出口と前記ガス噴出口を形成し、前記接着剤流路は、前記ヘッド本体を通って延在し、前記接着剤分配溝は、前記ヘッド本体の前記傾斜面に形成され、前記接着剤分配溝は、前記接着剤吐出口に連通し、前記ガス流路は、前記ヘッド本体を通って延在し、前記ガス出口は、前記ヘッド本体の前記傾斜面に形成され、前記第三のガス分配溝は、前記ガス噴出口に連通することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の接着剤吐出口へ分配される接着剤の分布及び複数のガス噴出口へ分配されるガスの分布を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図12】接着剤分配溝と第一のスリットと長穴の位置関係を示す説明図。
【
図13】変形例における接着剤分配溝と第一のスリットと丸穴の位置関係を示す説明図。
【
図14】ガス分配溝と第二のスリットとガス穴の位置関係を示す説明図。
【
図15】複数の糸ゴムに一つの接着剤の繊維を塗布するノズルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0012】
(接着剤塗布装置)
図1を参照して、接着剤塗布装置100の全体構造を説明する。接着剤塗布装置100は、例えば、子供用紙おむつ、大人用紙おむつ、女性用衛生製品等の使い捨て衛生用品の製造に用いることができる。
図1は、接着剤塗布装置100のブロック図である。接着剤塗布装置100は、ノズル1、吐出弁60、マニホールド61、メルター62、ポンプ63、パターンコントローラ64、電磁弁65、第一のレギュレータ(以下、減圧弁という)66及び第二の減圧弁67を有する。接着剤塗布ヘッド200は、ノズル1が装着された吐出弁60である。接着剤塗布装置100は、更に、ガイドローラ(搬送ローラ)68、第一の搬送ローラ69及び第二の搬送ローラ70を有する。
【0013】
ホットメルト接着剤(以下、接着剤という)5は、メルター62によって溶融されメルター62内のタンクに蓄えられている。接着剤5は、ポンプ63によってメルター62から加熱ホース74を通してマニホールド61へ圧送される。メルター62は、親機から糸ゴム4の移動速度(搬送速度)に対応する速度信号を受信し、速度信号に従ってポンプ63による接着剤5の供給量を制御する。生産速度が上がると、親機からの速度信号に従ってメルター62から供給される接着剤5の量が増加する。生産速度が下がると、親機からの速度信号に従ってメルター62から供給される接着剤5の量が減少する。
【0014】
図2は、ノズル1、吐出弁60及びマニホールド61の断面図である。接着剤5は、マニホールド61に設けられた接着剤通路81へ供給される。マニホールド61には複数の吐出弁60が装着可能である。接着剤5は、接着剤通路81から共通接着剤通路82を通ってそれぞれの吐出弁60へ分配される。接着剤5は、吐出弁60に設けられた弁室91へ供給される。吐出弁60には、ピストン室92が設けられている。吐出弁60には、弁室91とピストン室92の中を延在する弁棒93が移動可能に設けられている。
【0015】
弁棒93の端部には、ピストン室92に設けられたピストン94が取り付けられている。ピストン94は、弁棒93の先端部が接着剤排出口95に当接するようにバネ96によって付勢されている。接着剤排出口95は、接着剤排出通路97を介してノズル1に連通している。
【0016】
図1を参照して、圧縮ガスは、第一の減圧弁66によって減圧され、電磁弁65へ供給される。本実施例において、圧縮ガスは、圧縮空気であるが、圧縮された不活性ガスであってもよい。第一の減圧弁66は、圧縮ガスの圧力を所定の圧力に維持する。パターンコントローラ64は、接着剤の塗布パターンに従って電磁弁65の開閉を制御する。電磁弁65が開くと、圧縮ガスは、
図2に示すマニホールド61の第一のガス通路83へ供給される。圧縮ガスは、第一のガス通路83から第一の共通ガス通路84を通ってそれぞれの吐出弁60のピストン室92へ分配される。
【0017】
パターンコントローラ64は、塗布パターンに従って電磁弁65を連続的に又は断続的に開閉させ、吐出弁60の弁棒93が接着剤排出口95を開閉するタイミングを制御する。パターンコントローラ64からの信号(外部信号)によって電磁弁65が開くと、第一の減圧弁66によって減圧された圧縮ガスが吐出弁60へ供給されて接着剤排出口95が開き、接着剤がノズル1へ供給され、吐出される。弁棒93が接着剤排出口95を連続的に開くことによって接着剤5を糸ゴム4へ連続的に塗布する。弁棒93が接着剤排出口95を断続的に開閉することによって接着剤5を糸ゴム4へ間欠的に塗布する。
【0018】
図1を参照して、圧縮ガスは、第二の減圧弁67によって減圧され、マニホールド61へ供給される。
図2を参照して、第二の減圧弁67からの圧縮ガスは、第二のガス通路85から第二の共通ガス通路86を通ってそれぞれの吐出弁60の一対のガス排出通路98へ分配される。第二の減圧弁67によって減圧された圧縮ガスは、連続的にノズル1へ供給され、吐出される。ノズル1から吐出された圧縮ガスは、ノズル1からフィラメント状に吐出された接着剤5に衝突して接着剤5を揺動させる。揺動した接着剤5は、連続的に移動する糸ゴム4の外周上に塗布される。
【0019】
第二の減圧弁67によって圧縮ガスの圧力を調整することによって、接着剤5が揺動する幅を調整することができる。第二の減圧弁67によって調整される圧縮ガスの圧力が高いと、接着剤5が揺動する幅が広くなる。第二の減圧弁67によって調整される圧縮ガスの圧力が低いと、接着剤5が揺動する幅が狭くなる。第二の減圧弁67は、電空レギュレータであってもよい。糸ゴム4の移動速度に対応する電気信号によって、電空レギュレータを制御し、圧縮ガスの圧力を可変にすることができる。接着剤5の吐出量が多くなると接着剤5が揺動しにくくなるので、第二の減圧弁67から供給される圧縮ガスの圧力を上げて接着剤5の揺動幅を一定に保つことができる。
【0020】
糸ゴム(被塗物)4は、ロール71に巻かれている。糸ゴム4は、ロール71からガイドローラ68を介してノズル1へ供給される。第一の基材(下側基材)8は、ロール72に巻かれている。第一の基材8は、ロール72から第一の搬送ローラ69へ供給され、接着剤5が塗布された糸ゴム4に貼り付けられる。第二の基材(上側基材)9は、ロール73に巻かれている。第二の基材9は、ロール73から第二の搬送ローラ70へ供給され、接着剤が塗布された糸ゴム4に貼り付けられる。第一の基材8と第二の基材9は、接着剤5が塗布された糸ゴム4を間に挟んで互いに張り合わされる。
【0021】
(ノズル)
以下、ノズル1を説明する。
図3は、ノズル1を示す図である。
図3(a)は、ノズル1の斜視図である。
図3(b)は、ノズル1の側面図である。ノズル1は、複数の吐出口2及び複数の吐出口2にそれぞれ対応する複数のガイド溝3が設けられている。本実施例において、吐出口2及びガイド溝3は、それぞれ4つ設けられている。しかし、吐出口2及びガイド溝3の数は4つに限定されるものではなく、2つ、3つ、5つなどであってもよい。一つのノズル1に2つ以上の吐出口2が設けられていればよい。ガイド溝3は、移動方向(搬送方向)Aに沿って移動する糸ゴム4を接着剤5の塗布に最適な位置へ案内する。
【0022】
図4は、吐出口2の拡大図である。吐出口2は、接着剤5を吐出する接着剤吐出口6と圧縮ガスを噴き出すガス噴出口(空気噴出口)7とを備える。二つのガス噴出口7は、糸ゴム4の移動方向Aに直交する幅方向Bにおいて接着剤吐出口6の両側に配置されている。ノズル1は、接着剤吐出口6から吐出されている接着剤5に向かってガス噴出口7から圧縮ガスが噴き出された状態で移動方向Aに沿って移動中の糸ゴム4上に接着剤5を塗布する。ガス噴出口7から吐出された圧縮ガスは、接着剤吐出口6からフィラメント状に吐出された接着剤5に衝突して接着剤5を揺動させる。揺動された接着剤5は、移動する糸ゴム4の外周上に連続的に塗布される。
【0023】
図5は、ノズル1の分解図である。ノズル1は、ヘッド本体11、接着剤シム12、パターンシム13、ガスシム14及びフェースプレート15からなる。
図5(a)は、ヘッド本体11の側から見たノズル1の分解図である。
図5(b)は、フェースプレート15の側から見たノズル1の分解図である。パターンシム13は、接着剤シム12及びガスシム14からなる一対のサイドシムによって挟まれている。ヘッド本体11とフェースプレート15によって3枚のシム(接着剤シム12、パターンシム13及びガスシム14)を挟んで、2本のネジ(固定手段)16によって固定されている。Oリング17は、吐出弁60とノズル1の間から接着剤5が漏れることを防止する。
【0024】
(パターンシム)
図6は、パターンシム13を示す図である。パターンシム13は、外縁21から外方へ突出する複数の先細形状の凸部(第一の凸部)22が設けられている。本実施例においては、4つの凸部22が設けられている。凸部22には、凸部22の先端22aに開口するとともに、開口が接着剤吐出口6として機能する第一のスリット(貫通溝)23が設けられている。本実施例において第一のスリット23は、パターンシム13の幅方向Bに所定の間隔で配置されている。しかし、第一のスリット23は、同じ間隔で配置されていなくてもよい。パターンシム13は、外縁21の凸部22に隣接する部分に開口する一対の第二のスリット(貫通溝)24が設けられている。一対の第二のスリット24は、第一のスリット23を中心に左右に対称に配置されている。一対の第二のスリット24のそれぞれの開口端は、接着剤吐出口6を中心として対称の位置に開口する一対のガス噴出口7として機能する。
【0025】
パターンシム13は、一対のガス穴(第一のガス穴)25が設けられている。パターンシム13は、更に、2本のネジ16を通す一対の貫通穴26と、フェースプレート15に設けられた一対の位置決めピン157の一方を通す位置決め穴27及び一対の位置決めピン157の他方に係合する位置決め溝28が設けられている。位置決め溝28は、パターンシム13の縁を形成するように形成されている。位置決め溝28は、パターンシム13の外周の一部に設けられているので、ワイヤー放電によって容易に形成される。
【0026】
(接着剤シム)
図7は、接着剤シム12を示す図である。サイドシムとしての接着剤シム(ホットメルトシム)12は、外縁31から外方へ突出する複数の先細形状の凸部(第二の凸部)32が設けられている。本実施例においては、4つの凸部32が設けられている。接着剤シム12の凸部32は、パターンシム13の凸部22より幅広の形状を有する。接着剤シム12は、接着剤流路としての複数の長穴(第一の穴)33が設けられている。本実施例において、複数の長穴33は、移動方向A及び幅方向Bに直交する高さ方向Cに複数の凸部32とそれぞれ一直線に並んで設けられている。長穴33は、矩形などの任意の形状であってよい。本実施例において、長穴33は、両端部が半円形状の縦長形状を有する。
【0027】
長穴33の上部の半径rの半円形状の中心O1は、凸部32の先端部から距離Hにある。線P1は、4つの長穴33の中心O1を通る。線P2は、接着剤シム12の幅方向Bにおける線P1上の中心Oと長穴33の下部の半径rの半円形状の中心O2を結ぶ。線P1と線P2は、所定の角度γをなす。長穴33の上部の半円形状の中心O1と下部の半円形状の中心O2の距離hは、所定の角度γと接着剤シム12の幅方向Bにおける中心Oと長穴33の距離Lを用いて以下の式1で表される。
h=L×tanγ ・・・式1
なお、L=0のとき、長穴33は、半径rの丸穴とする。
【0028】
接着剤の吐出量が少なくなる傾向にあるノズルの端部付近の長穴33の長さを大きくすることによって接着剤オリフィスの長さを短くする。接着剤オリフィスの長さを短くすることによって圧力損失を低減し、接着剤吐出口6の幅方向Bの位置にかかわらず複数の接着剤吐出口6からの吐出量をほぼ均等にすることが可能になる。これによって、複数本の糸ゴム4に塗布される接着剤の量のムラを低減することができる。
【0029】
接着剤シム12は、一対のガス穴(第二のガス穴)35が設けられている。接着剤シム12は、更に、2本のネジ16を通す一対の貫通穴36と、フェースプレート15に設けられた一対の位置決めピン157の一方を通す位置決め穴37及び一対の位置決めピン157の他方に係合する位置決め溝38が設けられている。位置決め溝38は、接着剤シム12の縁を形成するように形成されている。位置決め溝38は、接着剤シム12の外周の一部に設けられているので、ワイヤー放電によって容易に形成される。接着剤シム12がパターンシム13に重ね合わされたとき、長穴33は第一のスリット23に連通し、ガス穴35はガス穴25に連通する。
【0030】
(ガスシム)
図8は、ガスシム14を示す図である。サイドシムとしてのガスシム14は、外縁41から外方へ突出する複数の先細形状の凸部(第三の凸部)42が設けられている。本実施例においては、4つの凸部42が設けられている。ガスシム14の凸部42は、パターンシム13の凸部22より幅広の形状を有する。ガスシム14は、ガス流路としての複数のガス穴(第二の穴)43が設けられている。本実施例においては、8つのガス穴43が設けられている。ガスシム14がパターンシム13に重ね合わされたとき、8つのガス穴43はパターンシム13の8つの第二のスリット24にそれぞれ連通する。
【0031】
ガスシム14は、一対のガス穴(第三のガス穴)45が設けられている。ガスシム14は、更に、2本のネジ16を通す一対の貫通穴46と、フェースプレート15に設けられた一対の位置決めピン157の一方を通す位置決め穴47及び一対の位置決めピン157の他方に係合する位置決め溝48が設けられている。位置決め溝48は、ガスシム14の縁を形成するように形成されている。位置決め溝48は、ガスシム14の外周の一部に設けられているので、ワイヤー放電によって容易に形成される。ガスシム14がパターンシム13に重ね合わされたとき、ガス穴45はパターンシム13のガス穴25に連通する。
【0032】
図3(b)に示すように、ヘッド本体11は、糸ゴム4の移動方向Aに対して傾斜する傾斜面50が設けられている。接着剤シム12、パターンシム13及びガスシム14は、ヘッド本体11の傾斜面50に積層されている。接着剤シム12は、傾斜面50に接触して配置される。第一のスリット23の接着剤吐出口6を通る軸線は、傾斜面50に沿って延在し、糸ゴム4の移動方向Aに対して鋭角を成す。第二のスリット24のガス噴出口7を通る軸線は、傾斜面50に沿って延在し、糸ゴム4の移動方向Aに対して鋭角を成す。
図4に示すように、パターンシム13の凸部22、接着剤シム12の凸部32及びガスシム14の凸部42は、互いに重ね合わされて、吐出口2を形成する。第一のスリット23及び第二のスリット24が形成されたパターンシム13を接着剤シム12とガスシム14によって挟むことによって、接着剤オリフィス及びガスオリフィスが形成される。パターンシム13は、ノズル1に形成される接着剤経路とガス経路を分断する隔壁としての機能を有する。接着剤シム12の凸部32及びガスシム14の凸部42は、吐出口2に接着剤の溜まりができることを防止する機能も有する。
【0033】
(ヘッド本体)
図9は、ヘッド本体11を示す図である。ヘッド本体11の傾斜面50には、接着剤分配溝51、ネジ16が螺合するネジ穴56、位置決めピン157に係合する位置決め穴57及びガス出口59が設けられている。接着剤分配溝51は、ノズル1の幅方向Bに延在する細長の横溝である。ヘッド本体11には、更に、接着剤入口54及び一対のガス入口55(
図5(a))が設けられている。
【0034】
図10は、ノズル1の断面図である。ヘッド本体11は、接着剤流路53及び一対のガス流路58が設けられている。
図10(a)は、接着剤流路53に沿って取ったノズル1の断面図である。接着剤流路53は、ヘッド本体11の頂面に設けられた接着剤入口54に連通している。ノズル1が吐出弁60に取り付けられたときに、接着剤入口54は、吐出弁60の接着剤排出通路97に連通する。接着剤流路53の接着剤出口52は、接着剤分配溝51に連通する。
【0035】
接着剤分配溝51は、接着剤シム12に設けられた複数の長穴33に連通する。長穴33は、パターンシム13に設けられた第一のスリット23に連通する。吐出弁60の接着剤排出通路97から排出される接着剤は、接着剤入口54、接着剤流路53、接着剤出口52、長穴33及び第一のスリット23を通り、吐出口2の接着剤吐出口6から吐出される。
【0036】
(フェースプレート)
図11は、フェースプレート15を示す図である。フェースプレート15の取付面150には、第一のガス分配溝151、第二のガス分配溝152、第三のガス分配溝153、2本のネジ16を通す一対の貫通穴156及び一対の位置決めピン157が設けられている。フェースプレート15には、更に、4つのガイド溝3が設けられている。幅方向Bにおいて、第三のガス分配溝153の長さは、第一のガス分配溝151より長い。第一のガス分配溝151と第三のガス分配溝153を連通させる第二のガス分配溝152は、第一のガス分配溝151から第三のガス分配溝153へガスを幅方向Bに広げるためにハの字状に末広がりに拡がる形状を有する。
【0037】
図10(b)は、ガス流路58に沿って取ったノズル1の断面図である。ガス流路58は、ヘッド本体11の頂面に設けられたガス入口55に連通している。ノズル1が吐出弁60に取り付けられたときに、一対のガス入口55は、吐出弁60の一対のガス排出通路98に連通する。一対のガス流路58のそれぞれのガス出口154は、接着剤シム12の一対のガス穴35に連通する。
【0038】
フェースプレート15がガスシム14、パターンシム13及び接着剤シム12を介してヘッド本体11にネジ16によって取り付けられると、フェースプレート15の第一のガス分配溝151は、ガスシム14の一対のガス穴45に連通し、第三のガス分配溝153は、8つのガス穴43に連通する。吐出弁60のガス排出通路98から排出されるガスは、ガス入口55、ガス流路58、ガス出口154、ガス穴35、ガス穴25、ガス穴45、第一のガス分配溝151、第二のガス分配溝152、第三のガス分配溝153、ガス穴43及び第二のスリット24を通り、吐出口2のガス噴出口7から噴出される。
【0039】
(接着剤の吐出角度)
図3(b)に示すように、ヘッド本体11には、糸ゴム4の移動方向Aに対し鋭角となる傾斜面50が設けられている。傾斜面50に接着剤シム12、パターンシム13及びガスシム14を重ね合わせて吐出口2を形成し、吐出口2から接着剤5を吐出させガスを噴出することによって、糸ゴム4の移動方向Aに対して鋭角に波状パターンを塗布することが可能になる。接着剤5の吐出方向が糸ゴム4の移動方向Aに対して傾斜しており、吐出された接着剤5が糸ゴム4と緩やかに接触するため接着剤5が糸ゴム4によって弾かれにくくなる。
【0040】
また、接着剤5の吐出速度ベクトルの糸ゴム4の移動方向Aの成分(=cosθ)だけ吐出された接着剤5と糸ゴム4の相対速度が下がる。したがって、糸ゴム4の移動速度がより高速な条件下においても、移動方向Aに対してほぼ直角に接着剤5を塗布する場合に比べて接着剤5が糸ゴム4によって弾かれ飛散することを抑制することが可能になる。接着剤5の粘度が低い場合、又は、接着剤5の吐出量が少ない即ち接着剤5の吐出速度が低い場合など、接着剤5が糸ゴム4に弾かれやすい条件下においても、糸ゴム4の移動方向Aに対しほぼ直角に接着剤5を塗布する場合に比べて接着剤5が糸ゴム4に付着しやすくなる。したがって、従来よりも幅広い条件下で接着剤5の安定した塗布が可能となる。
【0041】
本実施例では、
図3(b)に示すように糸ゴム4の移動方向Aに対する接着剤5の吐出角度θを45度に設定している。吐出角度θが45度より大きくなると、接着剤5と糸ゴム4の相対速度が高くなる。したがって、吐出角度θが45度より大きくなると、糸ゴム4の移動速度がより高速な条件下で接着剤5の飛散を抑制できないことがある。
【0042】
逆に、吐出角度θが45度より小さくなると、接着剤5と糸ゴム4の相対速度が低くなる。また、糸ゴム4への接着剤5の塗布位置(接触位置)APが吐出口2からより遠方になる。波状に揺動する接着剤5の揺動幅は、吐出口2から遠ざかるにつれて大きくなる。接着剤5の揺動幅が大きくなると、接着剤5がより伸延されて細くなり、接着剤5の繊維径が小さくなる。繊維径が小さい接着剤5の繊維は、外乱(主に、第一の基材8と第二の基材9の搬送によって生じる空気の流れ)によって前後方向(移動方向A)へのふらつきが大きくなる。そのため、糸ゴム4に塗布された接着剤5の繊維径および波状パターンの間隔が不規則となり、不安定な塗布状態になる。吐出角度θが小さいほど塗布安定性が損なわれる。したがって、吐出角度は、およそ20度以上が望ましい。
【0043】
本実施例においては、接着剤5を糸ゴム4の移動方向Aに対して鋭角に吐出することによって、生産ラインが高速である場合、低塗布量である場合又は接着剤の粘度が低い場合などの幅広い条件下で安定した塗布が可能となる。前述の通り、吐出角度θひいては塗布位置APを一定に保つことが塗布安定性には重要である。本実施例においては、糸ゴム4を案内するガイド溝3がフェースプレート15に設けられている。ガイド溝3は、吐出口2の付近に位置しており、且つ、糸ゴム4を受け取って移動方向Aに沿って糸ゴム4を案内するように構成された凹面3aを有する。ガイド溝3は、糸ゴム4の蛇行を接着剤5が塗布される直前まで抑制し、糸ゴム4を適正な塗布位置APまで案内する。
【0044】
ノズル1にガイド機能を有するガイド溝3が設けられているので、吐出口2と糸ゴム4の位置関係が一定に維持される。したがって、糸ゴム4をガイド溝3にあてがうだけで塗布位置APの直近まで糸ゴム4のブレが抑制される。また、ガイド溝3によって、糸ゴム4の移動方向Aに対する接着剤5の吐出方向のなす吐出角度θが一定に維持される。ノズル1それ自体が糸ゴム4のガイド機能を有しているので、糸ゴム4に対して鋭角に吐出された接着剤5が確実に糸ゴム4に塗布される。なお、ノズル1の近傍に糸ゴム4を案内するガイドローラを設けることもできる。しかし、その場合、糸ゴム4が最適な塗布位置APを通過するように、ノズル1とガイドローラの位置関係を微調整する必要がある。
【0045】
複数の糸ゴム4に揺動する接着剤の繊維を塗布する場合、それぞれの吐出口2から吐出される接着剤の吐出量、接着剤の波状パターンの振幅および振幅周期(周波数)を均一にするとよい。それによって、同一の繊維径を有する接着剤の繊維を同一周期で糸ゴム4に接触させ、糸ゴム4間で接着強度に差異の無い理想的な塗布状態を得ることが可能になる。そのためには、複数の吐出口2のそれぞれから吐出される接着剤の流量および噴出されるガスの流量を均一にすることが要求される。本実施例では、接着剤の流路およびガスの流路に吐出口2間の流量バランスを均一にする構造を設け、均一で安定した塗布を可能としている。
【0046】
(接着剤の分配)
接着剤は、
図10(a)に示すノズル1の接着剤入口54から接着剤流路53を通り
図9に示す接着剤分配溝51へ流入する。接着剤分配溝51で、接着剤は、ノズル1の幅方向Bに分配される。接着剤流路53の接着剤出口52は、幅方向Bにおいて接着剤分配溝51の中央部に配置されている。そのため、接着剤の流量は、接着剤分配溝51の中央部で多く、接着剤分配溝51の幅方向Bの両端部側で少なくなる傾向にある。接着剤分配溝51に流れる接着剤の不均一な分布を調整してより均一にするために、
図7に示すように接着剤シム12には中央部から端部へ行くにつれて長くなる複数の長穴(縦長溝穴)33が設けられている。複数の長穴33は、第一のスリット23が延在する方向に沿って長い。接着剤出口52からの距離に従って複数の長穴33の縦方向の長さを調整することによって接着剤の分布を均一にする。本実施例においては、接着剤シム12の中心Oから長穴33までの距離Lに従って長穴33の長さを変化させることで接着剤吐出口6間の接着剤の流量バランスを調整し、接着剤吐出口6間の接着剤吐出量をほぼ均等にすることができる。
【0047】
図12は、接着剤分配溝51と第一のスリット23と長穴33の位置関係を示す説明図である。接着剤シム12の凸部32の先端の位置とパターンシム13の凸部22の先端22aの位置とガスシム14の凸部42の先端の位置は、一致している。パターンシム13の凸部22の先端22aの幅Wは、接着剤シム12の凸部32の先端の幅およびガスシム14の凸部42の先端の幅と同じである。接着剤シム12の長穴33とパターンシム13の第一のスリット23により確定される接着剤オリフィスの長さH-hは、以下の式2で表される。
H-h=H-L×tanγ ・・・式2
【0048】
式2から分かるように、接着剤オリフィスの長さH-hは、パターンシム13の中心Oから第一のスリット23が離れるほど短くなる。接着剤オリフィスの長さH-hが短くなると接着剤の流れに対する抵抗が小さくなるので接着剤が流れやすくなる。このようにして、接着剤分配溝51から長穴33及び第一のスリット23を通り接着剤吐出口6へ流れる接着剤の流量が均一になるようにすることができる。なお、第一のスリット23の幅は、接着剤の粘度や吐出量などの使用条件に応じて任意に設定できる。長穴33の幅WLは、第一のスリット23の幅Wより大きい。本実施例において、長穴33の幅WLは、第一のスリット23の幅Wのほぼ2倍である。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、長穴33の幅WLは、第一のスリット23の幅Wの1.2倍から3倍の範囲内にあってもよい。長穴33の幅WLは、第一のスリット23の幅Wの3倍より大きくてもよい。
【0049】
接着剤オリフィス間の接着剤の流量を調整する手段としては、長さが異なる長穴33の代わりに直径が異なる丸穴(第一の穴)を接着剤シム12に設けてもよい。直径が異なる丸穴も、長さが異なる長穴33と同様の効果を奏することができる。圧力損失は流路直径の2乗に比例するので、接着剤オリフィス間で丸穴の直径差は非常に微小なものとなる。したがって、丸穴の直径を高精度で形成する必要がある。
【0050】
さらに、接着剤オリフィス間の接着剤の流量を調整する別の手段を
図13に示す。接着剤シム12の変形例において、複数の長穴33の代わりに凸部32からの距離が異なる位置に同じ直径の複数の丸穴(第一の穴)39が形成されている。
図13は、変形例における接着剤分配溝51と第一のスリット123と丸穴39の位置関係を示す説明図である。線P3は、接着剤シム12の幅方向Bに沿って延在する。線P4は、接着剤シム12の幅方向Bにおける線P3上の中心Oと丸穴39の中心を結ぶ。線P3と線P4は、所定の角度γをなす。丸穴39は、接着剤シム12の幅方向Bに沿って延在する線P3に対して所定の角度γを成す線P4と第一のスリット123の軸線との交点に位置する。パターンシム113は、丸穴39の凸部32からの距離に従って設定される長さHLを有する第一のスリット123が設けられている。
図13に示す変形例においては、接着剤オリフィスの長さHLがパターンシム113の中心Oから第一のスリット123までの距離Lに従って変化する。これによって、同様の効果を得ることができる。この場合、接着剤シム12の丸穴39の位置およびパターンシム113の第一のスリット123の長さの両方を変化させる必要がある。
【0051】
なお、丸穴39の直径は、第一のスリット123の幅Wより大きい。本実施例において、丸穴39の直径は、第一のスリット123の幅Wのほぼ2倍である。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、丸穴39の直径は、第一のスリット123の幅Wの1.2倍から3倍の範囲内にあってもよい。丸穴39の直径は、第一のスリット123の幅Wの3倍より大きくてもよい。
【0052】
(ガスの分配)
図10(b)に示すように、第一のガス分配溝151は、ガスの体積を大きくするバッファの役割を果たすように、第二のガス分配溝152及び第三のガス分配溝153より深さがある。第一のガス分配溝151は、二つのガス流路58から流入するガスを合流し、貯留する作用を有する。
図14は、第一のガス分配溝151、第二のガス分配溝152、第三のガス分配溝153、第二のスリット24及びガス穴43の位置関係を示す説明図である。
図14(a)に示すように、第二のガス分配溝152は、第一のガス分配溝151に貯留されたガスを薄く幅方向Bに徐々に広げ、幅方向Bに均等に拡散させる。第二のガス分配溝152は、真ん中にガスが多く流れることがないように抵抗を与えてガスを広げるために浅い溝である。
【0053】
第三のガス分配溝153は、第二のガス分配溝152より深さがあり、広がったガスを受け入れてガスシム14の8つのガス穴43へガスを送り出す。これによって、ガスは、ノズル1の幅方向Bに均等に広がる。幅方向に均等に拡散されたガスは、8つのガス穴43を通って8つの第二のスリット24へ分配される。このように、ガスは、フェースプレート15の第一のガス分配溝151、第二のガス分配溝152及び第三のガス分配溝153によって三段階に分配される。これにより、8つのガス噴出口7から噴出されるガスの吐出量をほぼ均等にすることが可能となる。
【0054】
本実施例においては、フェースプレート15に第一のガス分配溝151、第二のガス分配溝152及び第三のガス分配溝153が設けられている。しかし、第一のガス分配溝151、第二のガス分配溝152及び第三のガス分配溝153は、フェースプレート15に設けられていなくてもよい。例えば、貫通溝を設けた複数のシムを追加することで同様のガス分配溝を形成してもよい。積層された複数のシムに形成されるガス分配溝にガスを通すことによって同様の効果が得られる。
【0055】
図14(b)は、
図14(a)の円で囲まれた部分XIVBの拡大図である。接着剤吐出口6から吐出される接着剤に左右から対象にガスを衝突させるために、
図14(b)に示すように、第二のスリット24は、第一のスリット23を中心に左右対称に配置されている。ガス噴出口7の近くで第二のスリット24は第一のスリット23に対して傾斜している。一対のガス噴出口7から噴出されるガスが接着剤吐出口6から吐出される接着剤に接着剤吐出口6から同じ距離で衝突するように、接着剤吐出口6から吐出される接着剤に向かって一対のガス噴出口7からガスが対象に噴出される。一対のガス噴出口7からのガスの吐出角度αを変えることによって、接着剤の波状パターンの揺動幅を変えることができる。吐出角度αを大きくすることによって波状パターンの揺動幅を大きくすることができる。逆に、吐出角度αを小さくすることによって波状パターンの揺動幅を小さくすることができる。また、ガスの吐出圧力(吐出量)を高くすることによっても接着剤の波状パターンの揺動幅を大きくすることが可能である。
【0056】
図15は、複数本の糸ゴム4に1本の接着剤5の繊維を塗布するノズル101を示す図である。一つの吐出口2に対して複数のガイド溝103が設けられている。接着剤オリフィスを形成する第一のスリット123に対して大きな角度で傾斜するガスオリフィスを形成する一対の第二のスリット124が設けられている。
図15に示すように1本の接着剤5の繊維を複数本の糸ゴム4に塗布する場合、ガスの吐出角度αを大きくすることが有効である。
【0057】
糸ゴム4の移動方向Aに沿って見たときに、ガスシム14の凸部42及び接着剤シム12の凸部32は、ガス噴出口7を覆うように配置されている。
図14(b)に示すように、ガスシム14の凸部42及び接着剤シム12の凸部32の凸部角度βは、ガスの吐出角度αよりも大きく設定されている。これによって、パターンシム13が、後に、ガスの吐出角度αがより大きいパターンシムへ交換された場合であっても、新たなパターンシム13のガス噴出口7の両側をガスシム14の凸部42及び接着剤シム12の凸部32によって覆い、十分なシール性を確保することができる。凸部角度βが吐出角度αより小さい場合(β<α)、パターンシム13に形成されたガス噴出口7の一部が接着剤シム12及びガスシム14からはみ出してガス噴出口7の両側を十分に覆うことができない。この場合、ガスの噴出が不安定になり、また、シール性が不十部なために接着剤がシム間から漏れるおそれもある。そこで、凸部角度βは、吐出角度α以上に設定されている。
【0058】
本実施例によれば、接着剤吐出口6からの接着剤の塗布パターン及びガス噴出口7からのガスの噴出パターンを均一にすることによって安定した接着剤の塗布が可能となる。
本実施例によれば、複数の接着剤吐出口6へ分配される接着剤の分布及び複数のガス噴出口7へ分配されるガスの分布を向上させることができる。
【0059】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その特徴事項から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0060】
1・・・ノズル
6・・・接着剤吐出口
7・・・ガス噴出口
11・・・ヘッド本体
12・・・接着剤シム
13・・・パターンシム
14・・・ガスシム
15・・・フェースプレート
16・・・ネジ(固定手段)
22・・・凸部(第一の凸部)
23・・・第一のスリット
24・・・第二のスリット
25・・・ガス穴(第一のガス穴)
32・・・凸部(第二の凸部)
33、39・・・長穴(第一の穴)
35・・・ガス穴(第二のガス穴)
42・・・凸部(第三の凸部)
43・・・ガス穴(第二の穴)
45・・・ガス穴(第三のガス穴)
51・・・接着剤分配溝
52・・・接着剤出口
53・・・接着剤流路
54・・・接着剤入口
55・・・ガス入口
58・・・ガス流路
59・・・ガス出口
151・・・第一のガス分配溝
152・・・第二のガス分配溝
153・・・第三のガス分配溝