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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20241126BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20241126BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/06
A61K8/19
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/73
A61Q19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020074417
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021172587
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 英美
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-206971(JP,A)
【文献】特開2000-143436(JP,A)
【文献】特開2019-142825(JP,A)
【文献】特開2016-190835(JP,A)
【文献】特開2018-168146(JP,A)
【文献】特開2019-131492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(E):
(A)HLB10~15のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
(B)HLB10~15のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル
(C)25℃において液状の極性油
(D)ジェランガム
(E)電解質
を含有し、
前記(C)成分が、分岐構造あるいは不飽和構造を有する25℃において液状の極性油を含有し、
前記成分(A)の含有量が0.01~5質量%、前記成分(B)の含有量が0.01~5質量%、前記成分(C)の含有量が0.01~5質量%、前記成分(D)の含有量が0.001~0.5質量%であり、
25℃における電気伝導率が0.05~3S/mである、
水中油型乳化化粧料(ただし、アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体、ニコチン酸アミドは含まない)。
【請求項2】
前記分岐構造あるいは不飽和構造を有する25℃において液状の極性油がオレイン酸エチル、デシルテトラデカノール、オクチルドデカノール、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリルから選択される1種又は2種以上である請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関し、さらに詳細には電解質を含有しつつも長期安定性に優れるとともに、浸透感、使用後の肌のやわらかさに優れた水中油型乳化化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水中油型乳化化粧料は、みずみずしい使用感と油剤によるエモリエント効果を併せ持つことから、スキンケア化粧料において広く用いられている。またスキンケア化粧料には、種々の美容効果を求めて、美白剤や保湿剤等の有効成分が配合されており、これら有効成分は生理活性のある電解質であるものが多い。
【0003】
このような電解質を配合した化粧料として、例えば、アスコルビン酸-2-リン酸エステルの脂肪酸エステルの塩、炭素数が5又は6の2価アルコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、テルペン化合物を含有する皮膚化粧料(特許文献1)や、特定のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、特定のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、炭素数12~22の高級アルコール及び/又は炭素数12~22の脂肪酸モノグリセリル、水、電解質を含有し、乳化滴の平均粒径を50~300nmである水中油型乳化化粧料(特許文献2)が知られている。
【0004】
一方、これらの有効成分を含有する化粧料(医薬部外品)は、安定性試験ガイドライン(平成15年6月、医薬審発第0603001号)等の医薬品の安定性試験ガイドラインに準拠し、40℃・75%湿度環境下で6か月間の長期安定性を担保できることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-224071号公報
【文献】特開2012-77001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電解質を多量に含有する化粧料は、一般的に、長期保存すると分離等の安定性不良を生じ易いという懸念があった。そこで、安定性を向上するために、耐塩性の高分子を配合すると、べたついて浸透感を損なう場合があったり、固形油を配合すると、使用後の膜感が強く、後肌のやわらかさやしっとり感の点でも満足いくものが得られない場合があった。そこで、浸透感を高めるために極性の高い油剤を配合すると、乳化安定性に寄与する界面活性剤が溶解されてしまい、長期安定性の点で問題が生じることがあった。
従って本発明は、電解質存在下において、浸透感と後肌のやわらかさに優れ、6か月に渡る長期安定性をも兼ね備える、水中油型乳化化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、電解質を含有する水中油型乳化化粧料において、特定のノニオン界面活性剤を用いて、極性油とジェランガムとを組み合わせた乳化組成物とすることにより、6か月に渡る長期間の安定保存が可能であり、浸透感と後肌のやわらかさに優れる化粧料が実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)~(E):
(A)HLB10~15のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
(B)HLB10~15のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル
(C)25℃において液状の極性油
(D)ジェランガム
(E)電解質
を含有する水中油型乳化化粧料を提供するものである。
また、本発明の一様態としては、さらに、電気伝導率が0.01~2S/mである水中油型乳化化粧料であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電解質を含む場合でも、長期に渡る保存安定性に優れるものとなる。また、本発明の水中油型乳化化粧料は、浸透感に優れるため、肌なじみも良好であり、後肌のやわらかさにも優れるものである。そのため、美白化粧料、抗老化化粧料といった高機能なスキンケア化粧料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0011】
本発明に用いられる成分(A)HLB10~15のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、ヒマシ油に水素添加して得られる硬化ヒマシ油に、酸化エチレンを付加して得られたものであって、HLBが前記範囲内であれば、特に制限されず、何れのものも使用できる。具体的には、硬化ヒマシ油に付加される酸化エチレンのモル数が20~80モル程度であり、これらの市販品としては、NIKKOL HCO-20、30、40、50、60、80(以上、日光ケミカルズ社製)等が挙げられ、必要に応じその1種又は2種以上を用いることができる。
【0012】
本発明における成分(A)の含有量は、特に限定されないが、浸透感と長期安定性の観点から、水中油型乳化化粧料中、0.01質量%(以下、単に%と略す)以上、さらには0.1%以上が好ましく、べたつき等の使用感の観点から、5%以下、さらには2%以下が好ましい。
【0013】
本発明に用いられる成分(B)HLB10~15のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルは、ソルビトールに酸化エチレンを付加したものを、脂肪酸でエステル化したものであって、HLBが前記範囲内であれば、特に制限されず、何れのものも使用できる。成分(B)は、成分(A)と組み合わせて配合することにより乳化滴を微細化し、浸透感と長期安定性に寄与するものである。
具体的には、例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット等が挙げられ、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができるが、中でも、浸透感と長期安定性の観点で、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットが好ましい。これらの市販品としては、NIKKOL GO-4V、NIKKOL GO-430NV、NIKKOL GO-440V、NIKKOL GO-460V(以上、日光ケミカルズ社製)などが挙げられる。
【0014】
本発明における成分(B)の含有量は、特に限定されないが、浸透感と長期安定性の観点から、水中油型乳化化粧料中、0.01%以上、さらには0.1%以上が好ましく、べたつき等の使用感の観点から、5%以下、さらには2%以下が好ましい。
【0015】
本発明に用いられる成分(C)25℃において液状の極性油は、主に浸透感と後肌のやわらかさに寄与するものであり、25℃において液状であれば通常化粧料に用いられるものであれば、特に限定されず、揮発性、非揮発性や、動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、使用することができる。
【0016】
成分(C)のIOBは、特に限定されないが、0.1~0.5のものが好ましく挙げられる。IOBがこの範囲内であれば、浸透感に優れるため、好ましい。なお、IOB(Inorganic-Organicbalance)とは、下記(式1)で計算されるものである。
IOB=(Σ無機性値/Σ有機性)・・・(式1)
具体的には、2-エチルヘキサン酸セチル(IOB=0.13)、ネオペンタン酸オクチルドデシル(IOB=0.13)、ネオペンタン酸イソステアリル(IOB=0.14)、イソノナン酸イソトリデシル(IOB=0.15)、イソステアリン酸イソプロピル(IOB=0.15)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.16)、オリーブ油(IOB=0.16)、パルミチン酸イソプロピル(IOB=0.16)、オレイン酸エチル(IOB=0.16)、ラウリン酸ヘキシル(IOB=0.17)、ミリスチン酸イソプロピル(IOB=0.18)、イソノナン酸イソデシル(IOB=0.19)、安息香酸アルキル(C12~15)(IOB=0.19)、イソノナン酸イソノニル(IOB=0.20)、デシルテトラデカノール(IOB=0.21)、ネオペンタン酸イソデシル(IOB=0.22)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.25)、ジカプリン酸プロピレングリコール(IOB=0.26)、オクチルドデカノール(IOB=0.26)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB=0.28)、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル(IOB値=0.28)、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.32)、コハク酸ジエチルヘキシル(IOB=0.32)、ジカプリル酸プロピレングリコール(IOB=0.32)、ジ(カプリル/カプリン酸)プロピレングリコール(IOB=0.32)、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(IOB=0.35)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(IOB=0.35)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2(IOB=0.41)、ヒマシ油(IOB=0.42)、乳酸ミリスチル(IOB=0.47)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0017】
成分(C)の分子量は、特に限定されないが、乳化安定性に優れる点で、好ましくは400以下である。分子量が400以下である成分(C)として、具体的には、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソセチル、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、アジピン酸ジイソプロピル、ジネオペンタン酸トリプロピレングリコール、イソデシルベンゾエート、ジカプリン酸プロピレングリコール、オレイン酸エチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸エチルヘキシル、セバシン酸ジエチルヘキシル、ネオペンタン酸イソデシル、エチルヘキサン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、コハク酸ジエチルヘキシル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
成分(C)の化学構造は、特に限定されないが、成分(A)及び成分(B)と組み合わせた長期安定性の観点から、好ましくは分岐構造あるいは不飽和構造を有するものであり、例えばミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、イソノナン酸イソノニル、デシルテトラデカノール、ネオペンタン酸イソデシル、オクチルドデカノール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、コハク酸ジエチルヘキシル等が挙げられる。また、肌に浸透しやすい性質から、さらに水酸基構造を有するものが好ましく、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール等が挙げられ、これらの中でもオクチルドデカノールが、浸透感と後肌のやわらかさに優れる点で特に好ましい。市販品としては、EUTANOL G-JP(BASF社製)などが挙げられる。
【0019】
本発明における成分(C)の含有量は、特に限定されないが、浸透感と後肌のやわらかさの観点から、0.01%以上、さらには0.1%以上が好ましく、長期安定性の観点から5%以下、さらには3.5%以下が好ましい。
【0020】
本発明に用いられる成分(D)ジェランガムは、Sphingomonas elodeaという微生物が菌体外に産生する多糖類であり、水で膨潤させることで弾力のあるゲルを形成し、さらにはカルシウムイオンやナトリウムイオン等の金属イオンと結合すると増粘することが期待される。ゆえに、肌に微量に存在する金属イオンと結合して素早く肌になじむことによって、成分(C)とともに浸透感を高め、成分(E)とともに保湿効果に優れる化粧膜を形成することで、後肌のやわらかさと長期安定性の向上に寄与するものである。
【0021】
ジェランガムには、ネイティブ型及び、1-3結合したグルコースに存在するアセチル基とグリセリル基を除去した脱アシル型が知られているが、いずれをも用いることができる。市販品としては、脱アシル型のケルコゲル、ネイティブ型のケルコゲルLT-100(いずれもCPケルコ社製)等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
【0022】
本発明における成分(D)の含有量は、特に限定されないが、浸透感、長期安定性の観点から、0.001%以上が好ましく、さらに0.01%以上、0.05%以上が好ましく、べたつき等の使用感の観点から、0.5%以下が好ましく、0.3%以下がさらに好ましい。
【0023】
本発明に用いられる成分(E)電解質は、水、その他の溶媒に溶かした際、その溶液が電気伝導性を持つようになる物質であり、美白剤、消炎剤をはじめとする美容有効成分、保湿剤、pH調整剤、紫外線防御剤等として、化粧料に通常用いられるものであれば、有機・無機を問わず用いることができる。具体的には、アミノ酸、乳酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸等の有機化合物と、それらのカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等の無機塩やL-アラニン、β-アラニン、L-アルギニン、L-アルギニン塩酸塩、L-アスパラギン一水和物、L-アスパラギン酸、ポリアスパラギン酸、L-シトルリン、L-システイン、L-システイン塩酸塩一水和物、L-シスチン、L-ドーパ、L-グルタミン酸、L-グルタミン酸塩酸塩、L-グルタミン、ポリグルタミン酸、グリシン、トリメチルグリシン、L-ヒスチジン、L-ヒスチジン塩酸塩一水和物、L-ヒドロキシプロリン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-リジン塩酸塩、L-メチオニン、L-オルニチン塩酸塩、L-プロリン、L-フェニルアラニン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリン等のアミノ酸及びその誘導体や塩類、またアスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸グルコシド等とそれらのナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩等の水溶性アスコルビン酸類が挙げられる。さらに、グリチルリチン酸塩類、グリチルレチン酸塩、サリチル酸塩、トラネキサム酸塩、ニコチン酸アミド、コウジ酸、尿素、ミョウバン等が挙げられ、さらには海洋深層水、温泉水等、これら電解質を含む天然由来の水溶液も挙げられる。これらは必要に応じて、配合目的に合わせて1種又は2種以上を組み合わせて用いる事が出来る。
【0024】
本発明における成分(E)の含有量は、特に限定されず、配合目的により、適宜調整することができる。
本発明においては、電解質の含有状態を、水中油型乳化化粧料の電気伝導率で示すことができ、後肌のやわらかさと長期安定性の観点から、25℃における電気伝導率が0.01~2S/mであることが好ましい。なお、電気伝導率は、TOA社製 EC METER CM-60Gにて測定した。
【0025】
本発明の水中油型乳化化粧料には、上記成分(A)~(E)以外に、水相を構成する成分として水及び多価アルコール、低級アルコール等の水性成分、あるいは通常の水中油型乳化化粧料に使用される成分を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜、含有することができる。例えば、成分(C)以外の油剤、成分(A)、(B)以外の界面活性剤、成分(D)以外の水溶性高分子、成分(E)以外の紫外線吸収剤、抗酸化剤、抗菌剤、防腐剤、保湿剤、pH調整剤、清涼剤、粉体、ビタミン類、美容成分、香料等を含有することができる。
【0026】
本発明の水中油型乳化化粧料の製造方法は、特に限定されず、常法により調製される。例えば、成分(A)~(C)と必要に応じてその他成分を加熱溶解したものを、均一に溶解混合した成分(D)、(E)に添加混合し、さらに必要に応じて上記任意成分を加え、これを混合することにより調製する方法が挙げられる。
【0027】
本発明の水中油型乳化化粧料は、液状、ジェル状、乳液状、クリーム状等の種々の形態で実施することが可能であり、特に限定されるものではない。
【0028】
また本発明の水中油型乳化化粧料は、皮膚用の化粧料として利用可能であり、例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、マッサージ料、パック料、ハンドクリーム、ボディローション、ボディクリーム、日焼け止め料、ファンデーション、アイシャドウ、アイライナー、コンシーラー、頭皮用トリートメント等を例示することができる。浸透感の良さを実感できるという点では、スキンケア化粧料が好ましく、その使用方法は、手や指、コットンで使用する方法、不織布等に含浸させて使用する方法、直接噴霧して使用する方法等が挙げられる。
【実施例
【0029】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。また、含有量は、特記しない限り、その成分が含有される組成物に対する質量%で示す。
【0030】
実施例1~14び比較例1~8:美容液
表1に示す組成の美容液を下記の製造方法により製造し、イ:浸透感、ロ:後肌のやわらかさ、ハ:長期安定性について、以下に示す方法により評価判定した。結果を併せて表1に示す。また、実施例の電気伝導率の測定結果は、0.05~3S/mであった。
【0031】
【表1】
【0032】
(製造方法)
A:成分(1)~(8)を75℃で均一に加熱溶解した。
B:成分(9)~(17)を75℃で均一に加熱溶解した。
C:75℃にてAにBを添加し乳化した後、室温まで撹拌冷却して美容液を得た。
【0033】
(評価方法1)
20代~40代の女性で官能評価の訓練を受け、一定の基準で評価が可能な専門パネルを10名選定した。該専門パネルは、前腕に各試料を使用し、それぞれについて、使用時に感じる浸透感、後肌のやわらかさを、下記絶対評価にて5段階に評価し評点を付けた。各試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
【0034】
(イ:浸透感)
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
5点:肌への浸透感があると感じる
4点:肌への浸透感があるとやや感じる
3点:普通
2点:肌への浸透感があるとあまり感じない
1点:肌への浸透感があると感じない
<4段階判定基準>
(判定):(評点の平均点)
◎ :4.5点を超える :非常に良好
○ :3.5点を超える4.5点以下:良好
△ :1.5点を超える3.5点以下:やや不良
× :1.5点以下 :不良
【0035】
(ロ:後肌のやわらかさ)
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
5点:やわらかいと感じる
4点:やややわらかいと感じる
3点:普通
2点:あまりやわらかく感じない
1点:やわらかいと感じない
<4段階判定基準>
(判定):(評点の平均点)
◎ :4.5点を超える :非常に良好
○ :3.5点を超える4.5点以下:良好
△ :1.5点を超える3.5点以下:やや不良
× :1.5点以下 :不良
【0036】
(評価方法2)
(ハ:長期安定性)
各試料を40℃の恒温槽に入れて、6ヶ月後の外観(乳化物の均一度合)を目視にて観察し、以下の判定基準にて判定した。
<判定基準>
(判定):(評価)
◎ :全くクリーミングしていない(乳化物が均一で濃淡がない)
○ :ごくわずかにクリーミングしている
△ :かなりクリーミングしている
× :著しくクリーミングしている
【0037】
表1の結果から明らかなように、実施例1~14の美容液は、比較例1~8の美容液に比べ、浸透感、後肌のやわらかさ、長期安定性において優れたものであった。
一方、成分(A)を含有しない比較例1は、浸透感および長期安定性において劣っていた。また、成分(B)を含有しない比較例2においても、比較例1と同様の結果であった。成分(C)に代えて他の油剤を配合した比較例3~6は、化粧料が肌に浸透しにくく、浸透感および後肌のやわらかさが十分でなかった。成分(D)に代えてキサンタンガムを配合した比較例7、ヒアルロン酸ナトリウムを配合した比較例8は、化粧料が肌になじむまでに時間がかかり浸透感に劣るとともに、肌上に残る化粧膜が薄く保湿効果に乏しいために、後肌のやわらかさが十分でなかった。さらには、乳化滴の合一・分離が進み、長期安定性においても満足のいくものが得られなかった。
【0038】
実施例15:ジェル状乳液
(成分) (%)
(1) ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 ※6 4.5
(2) テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット ※7 0.5
(3) オクチルドデカノール 1
(4) デシルテトラデカノール 1
(5) オレイン酸フィトステリル ※8 2
(6) 精製水 残量
(7) ジェランガム ※5 0.025
(8) アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 ※9 0.14
(9) アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム
共重合体混合物 ※10 0.24
(10)カルボキシビニルポリマー 0.1
(11)カルボキシメチルセルロースナトリウム ※11 0.1
(12)1,3―ブチレングリコール 15
(13)エタノール 5
(14)グリセリン 0.5
(15)ポリオキシエチレンメチルグルコシド ※12 5
(16)PEG-400 0.1
(17)トラネキサム酸 2
(18)ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003
(19)水酸化ナトリウム 0.076
(20)リン酸一水素ナトリウム 0.1
(21)リン酸二水素ナトリウム 0.1
※6:NIKKOL HCO-40 (日光ケミカルズ社製)
※7:NIKKOL GO-460NV (日光ケミカルズ社製)
※8:プランドゥール SUN (日本精化社製)
※9:AQUPEC HV-803ERK (住友精化社製)
※10:SIMULGEL EG QD (SEPPICS.A.社製)
※11:CEKOL (CPケルコ社製)
※12:マクビオブライドMG-10E (日油社製)
【0039】
(製造方法)
A:成分(1)~(5)を75℃で均一に加熱溶解した。
B:成分(6)~(11)を75℃に加熱した。
C:成分(12)~(21)を75℃で均一に加熱溶解した後、35℃に冷却した。
D:75℃にてAにBを添加し乳化した後に35℃まで冷却した。
E:DにCを添加し、撹拌することでジェル状乳液を得た。
以上のようにして得られたジェル状乳液の電気伝導率は0.1S/mであり、浸透感、後肌のやわらかさ、長期安定性に優れるものであった。
【0040】
実施例16:美容液
(成分) (%)
(1) ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 ※1 0.3
(2) ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 ※6 0.2
(3) テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット ※2 0.1
(4) ポリオキシエチレンコレステリルエーテル ※13 0.1
(5) オクチルドデカノール 0.5
(6) d-δ-トコフェロール 0.1
(7) シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 0.1
(8) スクワラン 0.5
(9) 精製水 残量
(10)ジェランガム ※14 0.05
(11)キサンタンガム ※5 0.2
(12)1,3―ブチレングリコール 15
(13)グリセリン 5
(14)ジグリセリン 1
(15)エタノール 10
(16)エデト酸二ナトリウム 0.01
(17)ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
(18)クエン酸 0.1
(19)リン酸一水素ナトリウム 0.3
(20)チオ硫酸ナトリウム 0.05
(21)コメ発酵液 ※15 30
※13:EMALEX CS-24 (日光ケミカルズ社製)
※14:KELCOGEL CG-HA (CPケルコ社製)
※15:コメエキスコーケン BG (高研社製)
【0041】
(製造方法)
A:成分(1)~(8)を75℃で均一に加熱溶解した。
B:成分(9)~(11)を75℃に加熱した。
C:成分(12)~(21)を75℃で均一に加熱溶解した後、35℃に冷却した。
D:75℃にてAにBを添加し乳化した後に35℃まで冷却した。
E:DにCを添加し、撹拌することでジェル状乳液を得た。
以上のようにして得られた美容液の電気伝導率は0.3S/mであり、浸透感、後肌のやわらかさ、長期安定性に優れるものであった。
【0042】
実施例17:ゲル状化粧水
(成分) (%)
(1) ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 ※16 0.05
(2) テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット ※17 0.03
(3) ポリオキシエチレンアルキル(12~15)エーテルリン酸
(8E.O.) 0.01
(4)セトステアリルアルコール 0.001
(5)オクチルドデカノール 0.02
(6)オレイン酸エチル 0.01
(7)トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン 0.01
(8)精製水 残量
(9)ジェランガム ※4 0.15
(10)キサンタンガム ※5 0.02
(11)1,3―ブチレングリコール 12
(12)ジプロピレングリコール 5
(13)グリセリン 1
(14)ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリル
エーテル(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.) 8
(15)L-アスコルビン酸2-グルコシド 2
(16)コハク酸 0.4
(17)コハク酸二ナトリウム 0.05
(18)水酸化ナトリウム 0.315
(19)エデト酸二ナトリウム 0.1
※16:NIKKOL HCO-60 (日光ケミカルズ社製)
※17:NIKKOL GO-440NV (日光ケミカルズ社製)
【0043】
(製造方法)
A:成分(1)~(7)を75℃で均一に加熱溶解した。
B:成分(8)~(10)を75℃に加熱した。
C:成分(11)~(19)を75℃で均一に加熱溶解した後、35℃に冷却した。
D:75℃にてAにBを添加し乳化した後に35℃まで冷却した。
E:DにCを添加し、撹拌することでゲル状化粧水を得た。
以上のようにして得られたゲル状化粧水の電気伝導率は0.8S/mであり、浸透感、後肌のやわらかさ、長期安定性に優れるものであった。