IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢作建設工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-締固め軌道車 図1
  • 特許-締固め軌道車 図2
  • 特許-締固め軌道車 図3
  • 特許-締固め軌道車 図4
  • 特許-締固め軌道車 図5
  • 特許-締固め軌道車 図6
  • 特許-締固め軌道車 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】締固め軌道車
(51)【国際特許分類】
   E01B 27/12 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
E01B27/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020119720
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022016784
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2023-04-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000245852
【氏名又は名称】矢作建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恒二
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 英喜
(72)【発明者】
【氏名】花枝 直樹
(72)【発明者】
【氏名】若原 健
(72)【発明者】
【氏名】鏡味 伸也
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-126811(JP,A)
【文献】特開2014-012984(JP,A)
【文献】実開昭55-054403(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラスト軌道のレールに沿って走行する車体と、その車体に支持されているタンピングバーと、そのタンピングバーを振動させる振動装置と、前記タンピングバーを上下方向に移動させる移動装置と、を備えており、前記タンピングバーを下降させて前記バラスト軌道の道床に差し込み、その道床を形成する砕石のうちの枕木を介して前記レールからの荷重を受ける部分の砕石を、前記タンピングバーの振動を通じて締め固める締固め軌道車において、
前記タンピングバーは、前記移動装置による移動方向に長くなり、且つ、下方に向けて先細りとなる円柱状に形成され、
前記移動装置によるタンピングバーの移動範囲の下端部分では、前記タンピングバーの下端が前記枕木よりも下方、且つ、前記バラスト軌道の路盤よりも上方に位置するようにされており、
前記移動装置は、前記タンピングバーをその移動範囲の下端部分で下方に移動させようとするとき、その移動方向に作用する力を、前記タンピングバーの下端が前記枕木の下方位置に対し接近するよう同タンピングバーを傾かせる力に変換する変換機構を備え
前記移動装置は、前記タンピングバーを回動可能に支持するブラケットと、そのブラケット及び前記タンピングバーを上下方向に移動させるよう上下方向に伸縮する油圧シリンダと、を備え、
前記油圧シリンダは、前記タンピングバーをその移動範囲の下端部分よりも上側で上下に移動させるよう伸縮するとき、前記油圧シリンダの下端部が前記ブラケットと一体移動することにより、前記タンピングバーをその中心線の延びる方向に且つ上下方向に移動させるものであり、
前記油圧シリンダの下端部は、前記油圧シリンダの伸長により前記タンピングバーをその移動範囲の下端部分まで移動させたとき、前記ブラケットに対し上下方向に相対移動することが可能であり、
前記変換機構は、前記油圧シリンダの伸長による前記ブラケットに対する前記油圧シリンダの下端部の下方への前記相対移動に基づき、前記タンピングバーの下端が前記枕木の下方位置に対し接近するよう前記タンピングバーを前記ブラケットに対し回動させることによって傾かせるものであることを特徴とする締固め軌道車。
【請求項2】
前記タンピングバーは、前記枕木における前記レールの延びる方向についての両側にそれぞれ位置するよう複数設けられており、
前記移動装置は、前記枕木における前記レールの延びる方向についての両側にそれぞれ位置する前記タンピングバーを上下方向に移動させるものであり、
前記変換機構は、前記枕木における前記レールの延びる方向についての両側にそれぞれ位置する前記タンピングバーをその移動範囲の下端部分で下方に移動させようとするとき、その移動方向に作用する力を、前記枕木における前記レールの延びる方向についての両側にそれぞれ位置する前記タンピングバーの下端が前記枕木の下方位置に対し接近するよう、それらタンピングバーを傾かせる力に変換するものとされている請求項に記載の締固め軌道車。
【請求項3】
前記車体に対する前記タンピングバーの支持位置は、前記レールの幅方向に変更することが可能となっている請求項1又は2に記載の締固め軌道車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締固め軌道車に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道等に用いられるバラスト軌道では、路盤の上に砕石(バラスト)を敷いて道床を形成する。この道床の上部には枕木が並べられており、それら枕木の上にレールが敷設されている。そして、バラスト軌道のレールに沿って走行する列車の荷重は、レール及び枕木を介して道床に作用し、その道床を形成する多数の砕石によって広く分散した状態で路盤に伝達される。
【0003】
バラスト軌道の道床のうちのレール及び枕木を介して列車からの荷重を受ける部分では、その部分を形成する砕石が列車の通過毎に繰り返し荷重を受ける。その結果、砕石の角が欠けてしまう等の原因により、同砕石によって支持されたレール及び枕木が沈下等を招くおそれがある。従って、道床におけるレール及び枕木を支持する部分の砕石の締固めを、特許文献1に示される締固め軌道車を用いて定期的に行うことにより、レール及び枕木の沈下が生じないようにすることが考えられる。
【0004】
この締固め軌道車は、バラスト軌道のレールに沿って走行する車体を備えている。車体には、バラスト軌道の道床を形成する砕石を締固めるためのタンピングバーが支持されている。更に、締固め軌道車には、タンピングバーを振動させる振動装置、及び、タンピングバーを上下方向に移動させる移動装置が設けられている。
【0005】
この締固め軌道車では、移動装置によるタンピングバーの下降により、同タンピングバーがバラスト軌道の道床に差し込まれる。そして、その道床を形成する砕石のうち、枕木を介してレール側からの荷重を受ける部分の砕石が、振動装置によるタンピングバーの振動を通じて締め固められる。なお、上記タンピングバーの下端には、砕石に対し振動を効果的に伝達するため、平板状の押圧部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭52-126811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の締固め軌道車では、タンピングバーの下端に平板状の押圧部が形成されているため、タンピングバーを下降させて道床に差し込むときの抵抗が大きくなる。そして、上記抵抗に逆らってタンピングバーを道床に差し込む際、締固め軌道車がレールから浮いてしまわないよう、同締固め軌道車の重量を大きくしなければならなくなる。ただし、そうした重量の増大に伴って締固め軌道車が大がかりなものになると、締固め軌道車を使用する際の取り扱いが難しくなる。
【0008】
本発明の目的は、使用する際に容易に取り扱うことができる締固め軌道車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する締固め軌道車は、バラスト軌道のレールに沿って走行する車体と、その車体に支持されているタンピングバーと、そのタンピングバーを振動させる振動装置と、前記タンピングバーを上下方向に移動させる移動装置と、を備える。上記締固め軌道車は、タンピングバーを下降させてバラスト軌道の道床に差し込み、その道床を形成する砕石のうちの枕木を介してレールからの荷重を受ける部分の砕石を、タンピングバーの振動を通じて締め固める。上記タンピングバーは、移動装置による移動方向に長くなり、且つ、下方に向けて先細りとなる円柱状に形成されている。
【0010】
上記構成によれば、タンピングバーが移動装置による移動方向に長くなり、且つ、タンピングバーの下端が先細りとなっているため、タンピングバーを下降させて道床に差し込むときの抵抗を小さく抑えることができる。従って、上記抵抗に逆らってタンピングバーを道床に差し込む際、締固め軌道車がレールから浮かないよう同締固め軌道車の重量を大きくする必要はなくなる。その結果、重量の増大に伴って締固め軌道車が大がかりなものとなることはないため、同締固め軌道車を使用する際の取り扱いが容易になる。
【0011】
なお、上記移動装置は、タンピングバーを同タンピングバーの中心線の延びる方向に移動させるよう構成されているものとすることが考えられる。
この構成によれば、道床にタンピングバーを差し込むとき、同タンピングバーの中心線の延びる方向と同タンピングバーの移動方向とが同じ方向となるため、道床に対するタンピングバーの差し込みに伴う抵抗をより小さく抑えることができる。従って、締固め軌道車をより一層軽量化することができる。
【0012】
上記締固め軌道車において、移動装置によるタンピングバーの移動範囲の下端部分では、タンピングバーの下端が枕木よりも下方、且つ、バラスト軌道の路盤よりも上方に位置するようにされる。また、上記移動装置は、タンピングバーをその移動範囲の下端部分で下方に移動させようとするとき、その移動方向に作用する力を、タンピングバーの下端が枕木の下方位置に対し接近するよう同タンピングバーを傾かせる力に変換する変換機構を備えるものとされる。
【0013】
上記構成によれば、タンピングバーが道床に差し込まれて移動範囲の下端部分に達すると、移動装置がタンピングバーを下方に移動させようとすることに伴い、同タンピングバーの下端が枕木の下方位置に対し接近するよう、変換機構によってタンピングバーが傾けられる。こうしたタンピングバーの傾きにより、道床における枕木からの荷重を受ける砕石に対し効果的な締固めを行うことができる。また、上記タンピングバーの傾きは、移動装置によってタンピングバーの移動方向に作用する力が、変換機構を通じて上記傾きを生じさせる方向の力に変換されることによって実現される。従って、移動装置とは別にタンピングバーを傾けるための装置を設ける場合と比較して、締固め軌道車の構造を簡単なものとすることができる。更に、タンピングバーを傾ける際、同タンピングバーの下端が枕木よりも下方、且つ、バラスト軌道の路盤よりも上方に位置するようにされている。このため、タンピングバーの傾きに伴って同タンピングバーの下端部が枕木や路盤に接触し、それに伴って枕木が傷ついたり路盤が傷ついたりすることを抑制できる。
【0014】
なお、上記タンピングバーは、枕木におけるレールの延びる方向についての両側にそれぞれ位置するよう複数設けられるものとすることが考えられる。更に、上記移動装置は、枕木におけるレールの延びる方向についての両側にそれぞれ位置するタンピングバーを上下方向に移動させるものとすることが考えられる。また、上記変換機構は、枕木におけるレールの延びる方向についての両側にそれぞれ位置するタンピングバーをその移動範囲の下端部分で下方に移動させようとするとき、その移動方向に作用する力を次のようにタンピングバーを傾かせる力に変換するものとすることが考えられる。すなわち、上記変換機構は、移動装置によってタンピングバーを下方に移動させようとする際、その移動方向に作用する力を、枕木におけるレールの延びる方向についての両側にそれぞれ位置するタンピングバーの下端が枕木の下方位置に対し接近するよう、それらタンピングバーを傾かせる力に変換する。
【0015】
上記構成によれば、枕木におけるレールの延びる方向についての両側にそれぞれ位置するタンピングバーがそれぞれ上述したように傾くことにより、道床における枕木からの荷重を受ける砕石に対し効果的に締固めが行われるようになる。
【0016】
上記締固め軌道車においては、車体に対するタンピングバーの支持位置をレールの幅方向に変更することが可能となっているものとすることが考えられる。
この構成によれば、車体に対するタンピングバーの支持位置をレールの幅方向について変更することにより、レールの幅方向における複数箇所で砕石の締固めを行うことができるため、その砕石の締固めを効果的なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】締固め軌道車を示す側面図。
図2】締固め軌道車を示す平面図。
図3】締固め軌道車における移動装置の配置態様を示す断面図。
図4】締固め軌道車における移動装置の配置態様を示す断面図。
図5】移動装置及びタンピングバーの構造示す側面図。
図6】移動装置及びタンピングバーの構造示す側面図。
図7】移動装置及びタンピングバーの構造示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、締固め軌道車の一実施形態について、図1図7を参照して説明する。
図1に示すように、鉄道等に用いられるバラスト軌道1では、路盤2の上に砕石(バラスト)3を敷くことにより、所定厚さの道床4が形成される。この道床4の上部には、枕木5が水平方向に等間隔をおいて平行となるよう並べられている。それら枕木5の上には、一対のレール6(図1には一つのみ図示)が各枕木5に対し直交するように敷設されている。一対のレール6は、水平方向に間隔をおいて互いに平行となっている。
【0019】
締固め軌道車7は、道床4におけるレール6及び枕木5を支持する部分の砕石3の締固めを行うためのものである。締固め軌道車7は、バラスト軌道1のレール6に沿って走行する車体8を備えている。車体8は、車輪10aを介してレール6上に支持される前部8a、及び、車輪10bを介してレール6上に支持される後部8bを備えている。そして、車体8の前部8aと後部8bとは、車体8に設けられた一対の連結バー13(図1には一つのみ図示)により、水平方向に所定の間隔をおいた状態で互いに連結されている。
【0020】
車体8の前部8aには、車輪10aを回転させるための走行用モータ9が設けられている。この走行用モータ9の駆動を通じて車輪10aを回転させることにより、車体8がレール6に沿って走行する。また、車体8の後部8bには、ユーザーが着座するためのシート11、及び、ユーザーが締固め軌道車7を操作する際に用いる操作台12が設けられている。車体8における前部8aと後部8bとの間には、支持フレーム15及び移動装置16が設けられている。そして、車体8(連結バー13)には、それら支持フレーム15及び移動装置16を介してタンピングバー14が支持されている。タンピングバー14は、道床4におけるレール6及び枕木5を支持する部分の砕石3の締固めを行うためのものである。
【0021】
上記支持フレーム15は、車体8の連結バー13に固定されて上方に向けて突出する脚部15aと、その脚部15aの上端に固定された枠体15bと、を備えている。そして、枠体15bには、上下方向に延びる上記移動装置16が取り付けられている。この移動装置16の下端部には、一対の上記タンピングバー14が取り付けられている。一対のタンピングバー14は、レール6の延びる方向(図1の左右方向)に所定の間隔をおいて設けられている。そして、移動装置16が枕木5の上方に位置するよう車体8が移動されたときには、一対の上記タンピングバー14が枕木5におけるレール6の延びる方向の両側に位置するようになる。
【0022】
図2は、締固め軌道車7を上方から見た状態を示している。図2から分かるように、移動装置16及び一対のタンピングバー14は、一対のレール6のうち、一方のレール6における幅方向(図2の上下方向)の両側にそれぞれ位置するよう設けられているとともに、他方のレール6における幅方向の両側にそれぞれ位置するように設けられている。移動装置16は、長方形の枠状に形成されている上記枠体15bの内側を、上下方向(図2の紙面と直交する方向)に貫通している。この移動装置16における枠体15bの内側を貫通する部分には、レール6の延びる方向に突出する支持片17が形成されている。この支持片17は、枠体15bに設けられた位置決め部18により、その枠体15bに対し位置決め及び固定することが可能となっている。
【0023】
位置決め部18は、枠体15bのレール6に近い位置とレール6から離れた位置とにそれぞれ設けられている。そして、移動装置16の支持片17をレール6に近い位置の位置決め部18によって位置決め及び固定したり、レール6から遠い位置の位置決め部18によって位置決め及び固定したりすることにより、移動装置16及びタンピングバー14の車体8に対する支持位置がレール6の幅方向に変更される。
【0024】
ちなみに、図3は、移動装置16の支持片17をレール6から離れた位置にある位置決め部18によって位置決め及び固定することにより、移動装置16及びタンピングバー14がレール6から離れた位置で車体8に対し支持された状態を示している。また、図4は、移動装置16の支持片17をレール6に近い位置にある位置決め部18によって位置決め及び固定することにより、移動装置16及びタンピングバー14がレール6に近い位置で車体8に対し支持された状態を示している。
【0025】
次に、移動装置16及びタンピングバー14について詳しく説明する。
図5に示すように、移動装置16には、上記支持片17を有する四角筒状の固定柱19が設けられている。固定柱19の内部には、その固定柱19に対し上下方向に相対移動することが可能な可動柱20が設けられている。可動柱20は、固定柱19に対する上下方向についての相対移動によって、固定柱19から下方に突出したり、上方に向けて固定柱19内に侵入したりする。
【0026】
固定柱19及び可動柱20の内部には、上下方向に伸縮する油圧シリンダ21が設けられている。油圧シリンダ21の上端部は固定柱19に対し固定されている。また、油圧シリンダ21の下端部は可動柱20の下端部に対応して位置している。油圧シリンダ21の下端部には、枕木5の長手方向(図5の紙面と直交する方向)に延びる軸22が固定されている。この軸22は、可動柱20の下端部に形成された上下方向に延びる長孔23に挿入されており、長孔23内で上下方向に変位することが可能となっている。
【0027】
可動柱20等の重量は、軸22、油圧シリンダ21、及び固定柱19を介して、支持フレーム15で受けることが可能となっている。そして、可動柱20等の重量が軸22に作用した状態で、油圧シリンダ21を上下方向に伸縮させると、可動柱20が固定柱19から下方に突出したり、上方に向けて固定柱19内に侵入したりする。また、可動柱20には、上下方向に延びる鉄筋棒24の下端部が固定されている。この鉄筋棒24の上端部は、固定柱19に固定された受け部25を上下方向に貫通している。
【0028】
鉄筋棒24は、油圧シリンダ21の伸縮に伴う可動柱20の上下方向についての移動と一体的に上下方向に移動し、その際に固定柱19の受け部25に対し上下方向に相対移動する。また、鉄筋棒24における受け部25よりも上側の部分にはナット26が固定されている。そして、油圧シリンダ21の伸長により可動柱20及び鉄筋棒24が下方に移動して上記ナット26が受け部25に当接すると、そのナット26によって可動柱20及び鉄筋棒24の下方への移動が規制される。
【0029】
このように可動柱20及び鉄筋棒24の下方への移動が規制された状態のもと、油圧シリンダ21を更に伸長させると、同油圧シリンダ21の下端に固定された上記軸22が可動柱20の長孔23内で下方に変位する、言い換えれば軸22が可動柱20に対し下方に相対移動する。その後、油圧シリンダ21を収縮させると、上記軸22が長孔23内で上方に変位する、言い換えれば軸22が可動柱20に対し上方に相対移動する。そして、軸22が長孔23の上端に到達すると、軸22が可動柱20等の重量を受けるようになる。このため、油圧シリンダ21の収縮を通じて、可動柱20及び鉄筋棒24が固定柱19に対し上方に相対移動し、ナット26が受け部25に対し上方に離れるようになる。
【0030】
可動柱20の下端には、レール6と同方向(図5の左右方向)に延びるブラケット27が固定されている。ブラケット27の両端部にはそれぞれ上記タンピングバー14が取り付けられている。詳しくは、タンピングバー14の上端部が、枕木5の延びる方向(図5の紙面と直交する方向)と同じ方向に延びるピン28により、ブラケット27の端部に対し回動可能に支持されている。タンピングバー14は、移動装置16の固定柱19に対する可動柱20の上下方向についての相対移動に伴い、その可動柱20と同様に上下方向に移動する。
【0031】
タンピングバー14は、移動装置16による移動方向(図5の上下方向)に長くなり、且つ、下方に向けて先細りとなる円柱状に形成されている。上記移動装置16は、固定柱19に対する可動柱20の上下方向についての相対移動により、タンピングバー14を同タンピングバー14の中心線の延びる方向に移動させる。移動装置16によるタンピングバー14の移動範囲の下端部分では、タンピングバー14の下端が枕木5よりも下方、且つ、路盤2よりも上方に位置するようにされている。
【0032】
タンピングバー14の上端部には、そのタンピングバー14を振動させる振動装置29が設けられている。振動装置29は、モータ等のアクチュエータの駆動を通じて偏心軸を回転させ、その回転によって生じる振動をタンピングバー14に付与する。なお、上記偏心軸とは、その重心が中心線から離れた位置にある軸のことである。また、偏心軸を回転させる上記アクチュエータとして、モータに代えてエンジン等の他のアクチュエータを採用することも可能である。
【0033】
タンピングバー14の上端部における上記ピンよりも下側には腕部30が形成されている。この腕部30は、リンク31を介して軸22と連結されている。リンク31における長手方向の一方の端部は、腕部30に対し回転可能に連結されている。リンク31における長手方向のもう一方の端部は、軸22に対し回転可能に連結されている。また、リンク31の長手方向の中央部は、ブラケット27に形成された支持部32に対し回転可能に連結されている。リンク31における両端部及び中央部の回転中心C1,C2,C3は、枕木5の延びる方向と同じ方向に延びている。なお、リンク31における中央部の回転中心C3は、支持部32に対しレール6の延びる方向の所定範囲内で変位することが可能となっている。
【0034】
移動装置16における油圧シリンダ21の伸長により、一対のタンピングバー14が上下方向の移動範囲の下端部分で下方に移動しようとするとき、可動柱20に対し軸22が下方に相対移動すると、その軸22は長孔23内を図5図6図7に示すように上から下に相対移動する。この場合、軸22の上記相対移動に伴い、リンク31等によって一対のタンピングバー14がピン28周りに回動させられる。その結果、一対のタンピングバー14の下端同士が互いに接近するよう、それらタンピングバー14が上下方向に対し傾斜する。
【0035】
また、油圧シリンダ21の収縮により、可動柱20に対し軸22が上方に相対移動すると、その軸22は長孔23内を図7図6図5に示すように下から上に相対移動する。この場合、軸22の上記相対移動に伴い、リンク31等によって一対のタンピングバー14がピン28周りに上記と逆方向に回動させられる。その結果、一対のタンピングバー14の上下方向に対する上記傾斜が解消され、それらタンピングバー14の下端同士が互いに離間する。
【0036】
なお、腕部30、リンク31、及び支持部32は、油圧シリンダ21による下方に作用する力、言い換えれば一対のタンピングバー14を下方に移動させる力を、それらタンピングバー14の上述した傾斜を実施する力に変換する変換機構として機能する。また、移動装置16は、上記変換機構(腕部30、リンク31、及び支持部32)、固定柱19、可動柱20、油圧シリンダ21、軸22、及びブラケット27等によって構成されている。
【0037】
次に、締固め軌道車7の動作について説明する。
締固め軌道車7は、バラスト軌道1の道床4を形成する砕石3のうち、レール6及び枕木5を支持する砕石の締固めを行う際に用いられる。詳しくは、締固め軌道車7をレール6に沿って移動させることにより、図1及び図2に示すように移動装置16の固定柱19を枕木5の上方に位置させる。このときには、移動装置16及びタンピングバー14が、レール6に近い位置にある位置決め部18とレール6から離れた位置にある位置決め部18とのうち、例えば後者の位置決め部18によって車体8(支持フレーム15の枠体15b)に対し位置決め及び固定される。これにより、移動装置16及びタンピングバー14が、図2及び図3に示すように車体8におけるレール6から離れた位置で、支持フレーム15の枠体15bに対し支持された状態とされる。
【0038】
この状態で、振動装置29の駆動によってタンピングバー14を振動させつつ、移動装置16の油圧シリンダ21(図5)を伸長させることにより、固定柱19に対し可動柱20を下方に相対移動させる。その結果、振動するタンピングバー14が下降し、同タンピングバー14の先端(下端)がバラスト軌道1の道床4に差し込まれる。このときのタンピングバー14の移動方向は、同タンピングバー14の中心線の延びる方向と同じ方向となる。そして、振動するタンピングバー14により、砕石3(図1)の締固めが行われる。
【0039】
その後、可動柱20及び鉄筋棒24の下方への移動に伴い、タンピングバー14が上下方向についての移動範囲の下端部分に到達すると、ナット26が受け部25に当接して可動柱20及び鉄筋棒24の下方への移動が規制される。この状態のもとで油圧シリンダ21が更に伸長されると、図6及び図7に示されるように軸22が可動柱20に対し下方に相対移動し、長孔23内で下方に変位する。そして、軸22の上記相対移動に伴い、リンク31等によって一対のタンピングバー14が、それらの下端部同士を互いに接近させるよう上下方向に対し傾斜する。こうした傾斜の際にもタンピングバー14が振動しており、同タンピングバー14による砕石3の締固めが行われる。
【0040】
振動するタンピングバー14における道床4に差し込んだ後の上述した動きにより、その道床4におけるレール6及び枕木5を支持する部分、すなわちレール6からの荷重を受ける部分の砕石3の締固めが行われる。なお、この実施形態では、先細りとなっているタンピングバー14によって必要な砕石3の締固めが行えるよう、振動装置29によるタンピングバー14の振動数が従来よりも大きい値に設定されている。
【0041】
タンピングバー14における砕石3の締固めが行われた後には、移動装置16の油圧シリンダ21が収縮される。これにより、図6及び図5に示すように軸22が可動柱20に対し上方に相対移動し、長孔23内で上方に変位する。そして、軸22の上記相対移動に伴い、リンク31等によって一対のタンピングバー14の上記傾斜が解消される。更に、軸22が長孔23の上端に当接して可動柱20等の重量を受けるようになると、油圧シリンダ21の収縮に伴って軸22及び可動柱20が固定柱19に対し上方に相対移動し、タンピングバー14が道床4から抜き出される。
【0042】
続いて、移動装置16及びタンピングバー14が、レール6に近い位置にある位置決め部18とレール6から離れた位置にある位置決め部18とのうち、それまでに位置決め及び固定に用いられていた位置決め部18とは別の位置にある位置決め部18によって、車体8(支持フレーム15の枠体15b)に対し位置決め及び固定される。この例では、レール6に近い位置にある位置決め部18によって、移動装置16及びタンピングバー14が車体8に対し位置決め及び固定される。
【0043】
そして、上述した油圧シリンダ21の伸縮と同様に同油圧シリンダ21を伸縮させることにより、道床4における砕石3の締固めが行われる。この砕石3の締固めは、道床4におけるレール6及び枕木5を支持する部分、すなわちレール6からの荷重を受ける部分のうち、上述した初回の砕石3の締固め位置よりもレール6に近い位置で行われる。更に、こうした砕石3の初回及び二回目の締固めは、レール6の延びる方向に並ぶ各枕木5に対応してそれぞれ行われる。
【0044】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)タンピングバー14が移動装置16による移動方向(上下方向)に長くなり、且つ、タンピングバー14の下端が先細りとなっているため、タンピングバー14を下降させて道床4に差し込むときの抵抗を小さく抑えることができる。従って、上記抵抗に逆らってタンピングバー14を道床4に差し込む際、締固め軌道車7がレール6から浮かないよう同締固め軌道車7の重量を大きくする必要はなくなる。その結果、重量の増大に伴って締固め軌道車7が大がかりなものとなることはないため、同締固め軌道車7を使用する際の取り扱いが容易になる。
【0045】
(2)更に、移動装置16は、タンピングバー14を道床4に差し込むとき、同タンピングバー14をその中心線の延びる方向に移動させる。このため、道床4にタンピングバー14を差し込むとき、そのタンピングバー14の中心線の延びる方向と同タンピングバー14の移動方向とが同じ方向となるため、道床4に対するタンピングバー14の差し込みに伴う抵抗をより小さく抑えることができる。従って、締固め軌道車7をより一層軽量化することができる。
【0046】
(3)タンピングバー14が道床4に差し込まれて移動装置16による上下方向についての移動範囲の下端部分に達すると、移動装置16がタンピングバー14を下方に移動させようとすることに伴って、同タンピングバー14の下端が枕木5の下方位置に対し接近するよう、タンピングバー14が傾けられる。こうしたタンピングバー14の傾きにより、道床4における枕木5からの荷重を受ける砕石3に対し効果的な締固めを行うことができる。また、上記タンピングバー14の傾きは、移動装置16によってタンピングバー14の移動方向に作用する力が、腕部30、リンク31、及び支持部32によって上記傾きを生じさせる方向の力に変換されることによって実現される。従って、移動装置16とは別にタンピングバー14を傾けるための装置を設ける場合と比較して、締固め軌道車7の構造を簡単なものとすることができる。更に、タンピングバー14を傾ける際、同タンピングバー14の下端が枕木5よりも下方、且つ、バラスト軌道1の路盤2よりも上方に位置するようにされている。このため、タンピングバー14の傾きに伴って同タンピングバー14の下端部が枕木5や路盤2に接触し、それに伴って枕木5が傷ついたり路盤2が傷ついたりすることを抑制できる。
【0047】
(4)移動装置16は、枕木5におけるレール6の延びる方向についての両側にそれぞれ位置する一対のタンピングバー14を上下方向に移動させるものである。更に、一対のタンピングバー14は、その上下方向の移動範囲の下端部分で、タンピングバー14の下端部同士が互いに接近するよう傾く。このため、道床4における枕木5からの荷重を受ける砕石3に対し、上記一対のタンピングバー14によって効果的に締固めが行われるようになる。
【0048】
(5)締固め軌道車7においては、車体8に対するタンピングバー14の支持位置をレール6の幅方向に変更することが可能となっている。詳しくは、タンピングバー14を支持する移動装置16(支持片17)の位置決め及び固定をするための位置決め部18が、支持フレーム15における枠体15bのレール6に近い位置とレール6から離れた位置とにそれぞれ設けられている。そして、移動装置16の支持片17をレール6に近い位置の位置決め部18によって位置決め及び固定したり、レール6から遠い位置の位置決め部18によって位置決め及び固定したりすることにより、移動装置16及びタンピングバー14の車体8に対する支持位置がレール6の幅方向に変更される。このように、車体8に対するタンピングバー14の支持位置をレール6の幅方向について変更することにより、レール6の幅方向における複数箇所で砕石3の締固めを行うことができるため、その砕石3の締固めを効果的なものとすることができる。
【0049】
(6)タンピングバー14を振動させるアクチュエータとしてモータが用いられている。モータは駆動開始から比較的短時間で最大出力が得られるため、タンピングバー14を道床4に差し込む直前に同タンピングバー14に対しモータの駆動による振動を付与したとしても、タンピングバー14を砕石3の締固めを行うに当たって効果的に振動させることができる。従って、タンピングバー14を振動させる必要のあるとき以外は、モータの駆動を停止させておくことができ、締固め軌道車7を動作させる際のエンルギ効率を向上させることができる。
【0050】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・移動装置16及びタンピングバー14の車体8に対するレール6の幅方向についての支持位置を、そのレール6の幅方向における同レール6に近い位置にある位置決め部18で位置決め及び固定するか、あるいはレール6から遠い位置にある位置決め部18で位置決め及び固定するかによって変えるようにしたが、本発明はこれに限定されない。
【0051】
例えば、移動装置16及びタンピングバー14の車体8に対するレール6の幅方向についての支持位置を無段階に変更できる位置変更機構を設け、その位置変更機構の駆動を通じて上記支持位置を変更するようにしてもよい。この場合、レール6の幅方向における同レール6に近い位置と同レールから遠い位置での砕石3の締固めを、上記位置変更機構及び移動装置16の駆動制御を通じて自動的に行うことが可能である。
【0052】
・移動装置16及びタンピングバー14については、一対のレール6に対応するように設けたが、一方のレール6のみに対応して設けるようにしてもよい。また、一つのレール6の幅方向の両側にそれぞれ移動装置16及びタンピングバー14を設けたが、同レール6の幅方向の片側のみに移動装置16及びタンピングバー14を設けるようにしてもよい。
【0053】
・一つの移動装置16に一対のタンピングバー14を取り付けたが、一方のタンピングバー14のみ取り付けるようにしてもよい。
・移動装置16にタンピングバー14を上下方向に対し傾斜させるための変換機構(腕部30、リンク31、及び支持部32)を設ける代わりに、油圧シリンダ21とは別の油圧シリンダ等を設け、その別の油圧シリンダによってタンピングバー14を傾斜させるようにしてもよい。
【0054】
・タンピングバー14は、必ずしも上下方向に対し傾くものである必要はない。
・移動装置16によるタンピングバー14の上下方向についての移動は、必ずしもタンピングバー14の中心線と同方向について行われる必要はない。例えば、タンピングバー14の移動方向が、同タンピングバー14の中心線に対し多少傾斜していてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…バラスト軌道
2…路盤
3…砕石
4…道床
5…枕木
6…レール
7…締固め軌道車
8…車体
14…タンピングバー
15…支持フレーム
15a…脚部
15b…枠体
16…移動装置
17…支持片
18…位置決め部
19…固定柱
20…可動柱
21…油圧シリンダ
22…軸
23…長孔
24…鉄筋棒
25…受け部
26…ナット
27…ブラケット
28…ピン
29…振動装置
30…腕部
31…リンク
32…支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7