(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】送風装置と送風装置を備える延伸装置
(51)【国際特許分類】
B29C 55/02 20060101AFI20241126BHJP
B29C 55/20 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B29C55/02
B29C55/20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020128947
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】10 2019 120 794.0
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510331593
【氏名又は名称】ブリュックナー・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【氏名又は名称】清水 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・マッツェ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ヘグラウアー
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/133152(WO,A1)
【文献】特開2012-211731(JP,A)
【文献】特開2014-208456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/02
B29C 55/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体流の入口(61c)と、気体流の出口(61d)とを有する送風通路(61)を備えかつ樹脂薄膜(F)を延伸する延伸装置用送風装置において、
送風通路(61)は、気体流の入口(61c)と入口(61c)に対向しかつ長さ方向に分離される気体流の出口(61d)との間に少なくとも2つの送風路領域(61a, 61b)を形成し、
送風通路(61)の長手方向に配置される少なくとも2つの送風路領域(61a, 61b)は、樹脂薄膜(F)の引張方向(1)の横方向にかつ樹脂薄膜(F)の薄膜面(E)に対し平行に、互いに離間する方向及び接近する方向に移動して、送風通路(61)の幅(B)と送風通路(61)の断面流量を拡大し又は縮小して、送風通路(61)の送風路幅(B)と送風路断面が増減されることを特徴とする延伸装置用送風装置。
【請求項2】
両送風路領域(61a, 61b)のノズル入口(59)側及び/又は両送風路領域(61a, 61b)のノズル排出口(62)とは逆側で、2つの送風路領域(61a, 61b)は、角片(64)に移行し、角片(64)は、薄膜面(E)に平行に配置されて、送風路領域(61a, 61b)の一方の送風路領域(61a)に割り当てられる一方の角片(64a)と、一方の送風路領域(61a)に対向して配置される他方の送風出口ノズル領域(61b)に割り当てられる他方の角片(64b)とを備え、
互いに離間して配置される一方の角片(64a)と他方の角片(64b)は、送風室(57)から送風出口ノズル(61)に気体流を供給する有孔壁(83)を有する請求項1に記載の送風装置。
【請求項3】
一方の送風路領域(61a)と他方の送風路領域(61b)の各外側は、互いに離間する少なくとも1つの案内壁(77)又は金属案内板(77)により支持される請求項1又は2に記載の送風装置。
【請求項4】
a) 案内壁(77)又は金属案内板(77)は、送風路領域(61a, 61b)の対向する各外側で、薄膜面(E)及び/又はノズル排出口(62)から末広状に離間する方向に配置されて薄膜面(E)に対し平行に配置される支持領域に移行し、薄膜面(E)から遠ざかる平行な支持領域は、搬送路(35)、搬送路筐体(35a)又は搬送遮蔽壁(35b)の隣接する頂部により支持されかつ/又は、
b) 気体流又は空気流は、薄膜(F)側から、案内壁(77)又は金属案内板(77)に設けられる少なくとも単一又は複数の開口(81)を通り、案内壁又は金属案内板(77)により形成される帰還流路に流入する請求項3に記載の送風装置。
【請求項5】
送風装置を備えて樹脂薄膜(F)を延伸する延伸装置において、
互いに側方に間隔を空けて配置されて、少なくとも部分的に搬送レール及び/又は案内レール(15)により形成される2つの循環式の移動路又は案内路(2)と、
搬送レール及び/又は案内レール(15)上を移動する搬送部(7)に支持される複数の把持装置(K)と、
各把持装置(K)の薄膜側に設けられる把持部(6)とを備え、
樹脂薄膜(F)の引張方向(1)に対し、左側及び右側の移動可能な把持装置(K)は、樹脂薄膜(F)の夫々左縁(5)及び右縁(5)を把持し、延伸装置により移動されて、延伸装置により形成される薄膜面(E)に沿って樹脂薄膜(F)を搬送し、
薄膜面(E)の上方及び/又は下方に上送風ノズル及び/又は下送風ノズル(51, 51’)が設けられ、
送風通路(61)は、気体流の入口(61c)と入口(61c)に対向しかつ長さ方向に分離される気体流の出口(61d)との間に少なくとも2つの送風路領域(61a, 61b)を形成し、
送風通路(61)の長手方向に配置される少なくとも2つの送風路領域(61a, 61b)は、樹脂薄膜(F)の引張方向(1)の横方向にかつ樹脂薄膜(F)の薄膜面(E)に対し平行に、互いに離間する方向及び接近する方向に移動して、送風通路(61)の幅(B)と送風通路(61)の断面流量を拡大し又は縮小して、送風通路(61)の送風路幅(B)と送風通路(61)の送風路断面とが増減されることを特徴とする延伸装置。
【請求項6】
上送風ノズル及び/又は下送風ノズル(51, 51’)に連絡する送風路(61)は、少なくとも2つに分割される一方の送風路領域(61a)と他方の送風路領域(61b)とを備え、
一方の送風路領域(61a)は、薄膜(F)の搬送方向(1)の左側の把持装置(K)と左側の搬送路(35)とに割り当てられ、
一方の送風路領域(61a)に対向する他方の送風路領域(61b)は、薄膜(F)の搬送方向(1)の右側の把持装置(K)と右側の搬送路(35)とに割り当てられ、
薄膜(F)から遠位に配置される送風室(57)に対して直接又は間接的に2つの送風路領域(61a, 61b)を互いに接近する方向と離間する方向に移動しかつ送風室(57)及び/又は搬送路(35)により摺動可能に保持される請求項5に記載の延伸装置。
【請求項7】
a) 延伸装置の同一の延伸部の2つの搬送レール及び/又は案内レール(15)が互いに離間方向と接近方向に調整可能なとき、薄膜(F)方向に配置される2つの送風路領域(61a, 61b)は、互いに離間方向又は互いに接近方向に同一の範囲で調整され、かつ/又は、
b) 互いに側方に配置される2つの搬送レール及び/又は案内レール(15)と共にかつ/又は互いに側方に配置される2つの搬送路(35)と共に、2つの送風路領域(61a, 61b)は、互いに離間方向又は接近方向に調整されかつ/又は、
c) 送風通路(61)の幅(B)は、薄膜(F)の引張方向(1)に対し横方向の幅であり又は調節可能であり、送風通路(61)の幅(B)は、2つの対向する把持装置(K)間の最短距離に対応し又は最小距離に対し、30%未満だけずれる距離に設定され又設定できる請求項5又は6に記載の延伸装置。
【請求項8】
把持装置(K)は、把持部(6)と、接続部(8)を介して把持部(6)に連結される搬送部(7)とに分割され、
搬送部(7)は、搬送レール及び/又は案内レール(15)上で移動し、把持部(6)と搬送部(7)との間には、高さ(H)の搬送遮蔽壁(35b)が設けられ、送風通路(61)は、薄膜面(E)方向に突出し、
a) 送風通路(61)のノズル排出口(62)は、薄膜面(E)に対し遠位に配置される搬送遮蔽壁(35b)の端部よりも薄膜面(E)に接近しかつ/又は、
b) 薄膜面(E)から最も遠位の把持部(6)及び/又は把持装置レバー(25c)と薄膜面(E)との間の距離(XX)よりも小さい薄膜面(E)に近い距離(X)にノズル排出口(62c)は、配置される請求項5~7の何れか1項に記載の延伸装置。
【請求項9】
薄膜(F)方向に突出する送風通路(61)は、搬送遮蔽壁(35b)の遠位の表面よりも薄膜面(E)から遠位の送風室(51)に両送風路領域(61a, 61b)を通じて接続される請求項5~8の何れか1項に記載の延伸装置。
【請求項10】
搬送遮蔽壁(35b)は、搬送路(35)及び/又は搬送路筐体(35a)の一部である請求項5~9の何れか1項に記載の延伸装置。
【請求項11】
a) 搬送方向(1)に隣接する2つの把持装置(K)間に形成される気体帰還流路は、薄膜面(E)より遠位に配置される搬送路(35)又は搬送路筐体(35a)と、搬送路(35)又は搬送路筐体(35a)より更に遠位に配置される送風室(57)の境界壁との間に形成される隙間(43)に連絡しかつ/又は、
b) 気体帰還流路は、吸引路(69)により吸引室(71)に連絡し、吸引路(69)は、空気流又は気体流を供給する送風室(57)を通る流路により形成される請求項5~10の何れか1項に記載の延伸装置。
【請求項12】
2つの送風路領域(61a, 61b)は、薄膜面(E)とは逆側で、薄膜面(E)に平行に配置される角片(64)に移行し、一方の送風路領域(61a)に割り当てられる一方の角片(64a)と、他方の送風出口ノズル領域(61b)に割り当てられる他方の角片(64b)とは、互いに離間し、両角片(64a, 64b)は、送風室(57)の側部に形成されて、送風室(57)から送風出口ノズル(61)に気体流及び空気流を供給する有孔壁(83)を有する請求項5~11の何れか1項に記載の延伸装置。
【請求項13】
送風室(57)と、送風通路(61)のノズル入口(59)との間の最大の有孔壁(83)は、孔格子及び/又は長孔格子により形成され、孔格子及び/又は長孔格子の幅範囲(B)は、2つの送風路領域(61a, 61b)が移動可能かつ/又は設定可能な幅範囲(B)に一致し又は30%未満だけ幅範囲(B)からずれる請求項5~12の何れか1項に記載の延伸装置。
【請求項14】
互いに離間する2つの送風路領域(61a, 61b)は、少なくとも1つの案内壁(77)又は金属案内板(77)により支持される請求項5~13の何れか1項に記載の延伸装置。
【請求項15】
a) 送風路領域(61a, 61b)の対向する各外側に配置される案内壁(77)又は金属案内板(77)は、薄膜面(E)から末広状に離間する方向に配置されて薄膜面(E)に対し平行に配置される支持領域に移行し、薄膜面(E)から遠位の支持領域は、搬送路(35)、搬送路筐体(35a)又は搬送遮蔽壁(35b)の隣接する頂部で支持されかつ/又は、
b) 案内壁(77)又は金属案内板(77)には、少なくとも1つ又は複数の開口(81)が設けられ、気体流又は空気帰還流は、薄膜(F)に面する側部から案内壁(77)又は金属案内板(77)から離間する側で少なくとも1つ又は複数の開口(81)を通り帰還流路に流入する請求項14に記載の延伸装置。
【請求項16】
単一又は複数の換気装置(75)を備え、
a) 少なくとも1つの換気装置(75)は、少なくとも1つの送風室(57)又はその上流に配置される中間室の入口側に設けられて、送風室(57)を介して送風通路(61)に供給する気体流を搬送しかつ/又は、
b) 少なくとも1つの換気装置(75)は、気体流帰還路の出口端部に配置されて、帰還する気体流を吸引しかつ入口側で直接又は間接的に少なくとも1つの送風室(57)に供給しかつ/又は、
c) 換気装置(75)の吸込側より上流で循環する気体流の循環路に加熱装置(73)が設けられる請求項5~15の何れか1項に記載の延伸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風装置、特に特許請求項1の前文に記載する樹脂薄膜延伸装置用送風装置と、送風装置を備える延伸装置とに関連する。
【背景技術】
【0002】
樹脂薄膜(プラスチックフィルムシート)の製造には、送風装置が使用される。送風装置は、薄膜状材料、特に延伸すべき樹脂薄膜の加熱、保温又は冷却を行う機能がある。横断方向でしばしば薄膜材料の搬送方向に対して直角方向、即ち、薄膜材料を配置する長手方向に対して横断方向、特に、通常薄膜材料の上方及び/又は下方に送風ノズルが配置される。薄膜延伸装置に採用される送風ノズルの薄膜延伸装置は、単軸縦延伸装置、単軸横延伸装置又は縦横同時若しくは逐次延伸装置である。
【0003】
加工時に薄膜樹脂を不均一に加熱すると、薄膜樹脂の厚み形状と構造に悪影響を生ずるため、薄膜樹脂の形状と品質に悪影響を与える流出空気流の流出均一性と温度分布均一性は、薄膜延伸工程に特に重要である。加熱領域の薄膜樹脂は、低温領域の薄膜樹脂から、延伸量の大きいより薄い樹脂薄膜を形成することができる。非常に薄い薄膜樹脂と薄膜樹脂の製造法に特に決定的に重要な技術は、薄膜樹脂に対する均一な送風量である。
【0004】
樹脂薄膜に送風ノズルを極力接近させて、極力良好な熱伝達を達成する努力が基本的に行われてきた。薄膜樹脂の両側で薄膜樹脂を把持する多数の把持装置は、通常若干の構造高さで2つの閉鎖循環案内路に沿って案内され、把持装置は、通常搬送路に沿って案内され、搬送路の開口を通じて薄膜樹脂側に搬送路から突出し、延伸方向にかつ搬送方向に搬送すべき樹脂薄膜の両側縁を把持するため、薄膜樹脂に対する送風ノズルの接近可能性は、実務上搬送装置により制限される。
【0005】
種々の送風装置が従来から公知である。送風装置を送風ノズルと称することもある。特許文献1は、穿孔ノズル形態に形成される送風ノズルを示す。搬送方向と、搬送方向に対し横断方向とにずれる多数の配列孔を通過する空気量は、複数の室装置を介して薄膜樹脂に供給される。
【0006】
前記給気構造により、移動する帯状材料の作業幅全体にわたり、部分的に非常に均一な空気噴出速度を実現することができる。これにより、熱伝達量が作業幅にわたり非常に一定になる。ノズル箱からの噴出空気温度も、作業幅にわたり一定に保持される。各ノズル箱間では、通常再び空気が吸引される。この場合に、ノズル箱と薄膜樹脂の平面との間の距離が長いため、特に薄膜面領域の空気流が非常に不均一になり、薄膜樹脂に対する空気の温度分布も非常に不均一になる。また、薄膜樹脂の縁部、特に薄膜樹脂の両側縁領域の周辺空気は、薄膜縁を保持する低温の把持装置により冷却されるため、縁部領域の温度分布が不均一になる。特に、作業幅の狭い薄膜樹脂への給気では、薄膜面領域での空気温度分布が非常にムラになる難点がある。
【0007】
移動する帯状材料(特に、薄膜樹脂形態)の上方と下方に配置されるノズル箱は、嵌合式ノズル、特に嵌合式長孔ノズルを備え、ノズルから噴出する空気流が移動する帯状材料に接触するので、部分的に不利な空気の不均一温度条件を改善することができる。換言すると、ノズル本体又はノズル噴出路に対して、材料面方向又は材料面から離れる方向に、長孔ノズルの方向をある程度変更することができる。
【0008】
また、実際に用いる送風ノズルとノズル箱取付具が、実務上発生する作業幅に不適合となる不具合が別の問題である。
【0009】
即ち、部分的に異なる作業幅で薄膜樹脂を実務上製造するため、把持装置を移動するレール装置の相互間隔距離を適切に調節しなければならない。通常使用するノズル箱取付具又は送風ノズルでは、レール装置の相互間隔距離を適切に調節することはできない。作業幅の柔軟性に対する要求が大きいとき、ノズル箱取付具を送風ノズル内で交換しなければならない。例えば、50mm~250mm又は250mm~1000mmの柔軟な作業幅でも、従来のノズル箱取付具に関する送風ノズルでは、レール装置の相互間隔距離の適切な調節を実現できない。従って、大きな変位領域を何度も実務上設定しなければならず、しかも前記欠陥を解消できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】独国特許公報第196 23 471C1号明細書
【文献】欧州特許公報第0 455 632B1号明細書
【文献】独国特許公報第44 36 676C2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、従来の欠点がなくかつ特に異なる幅の帯状材料の要求に対し、送風通路の幅と断面流量を広範囲に調節できる改良型ノズルを有する送風装置を提供することにある。帯状材料幅は、最終的に作業幅又は薄膜幅である。対応する概念を、部分的に並列的に用いる。本発明の送風装置は、帯状材料面の温度分布も改良できる利点がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、請求項1に記載する特徴により本発明の送風ノズルの課題を解決し、請求項5に記載する特徴により樹脂薄膜延伸装置の課題を解決する。本発明の有利な付加構成を従属請求項に記載する。
【0013】
本発明の解決方法では、驚くべき一連の利点を実現できる。
【0014】
例えば、本発明に使用するノズルを完全な送風領域で伸縮できるので、構造を元に戻すべき中間ノズル領域を設ける必要がない。
【0015】
移動可能な把持装置を移動する搬送装置又は搬送路筐体のやや上方に送風装置のノズルが設けられる。加工すべき帯状材料を覆う領域で、ノズル排出口は、閉鎖されて、帯状材料の移動方向での中間空間はない。
【0016】
帯状材料縁を側方で把持する把持装置間の領域内に空気又は気体吸引開口が設けられる。移動する帯状材料付近、特に、樹脂薄膜付近に少なくとも1つのノズル吸引開口が設けられるので、適切なノズル吸引開口から帯状材料までの距離は、ある把持装置又は把持部(例えば、把持装置レバー形態)の最遠点から帯状材料平面への距離よりも短い。これにより、加熱若しくは加温又は冷却すべき帯状材料の所望及び設定する温度範囲で、帯状材料に供給される気体流又は空気流は、直接排出され、低温の把持装置による冷却又は有害な乱流の発生による不均一温度領域の形成と有害な温度差領域の出現を防止することができる。
【0017】
本発明では、第1に、帯状材料幅に無関係に、本発明の利点を維持できる。換言すると、本発明の送風装置は、本発明の利点を犠牲にせずかつ問題なく広範囲に使用するノズル幅を調節することができる。
【0018】
本発明に使用するノズルの設定幅に依存せず、帯状材料の上方の全般的空間(加熱又は冷却する新鮮な空気を帯状材料方向に供給する)ではなく、複数の把持装置間に目標を定めて噴出する空気を吸引することができる。これにより、薄膜を循環する空気と、低温の把持装置又は境界壁との熱交換を自動的に回避できる。
【0019】
要するに、長孔ノズル又は穿孔ノズルを備える本発明の送風装置の機能は、連続する製品又は帯状材料に対する加熱炉のために、対応する製品又は帯状材料(特に、延伸すべき樹脂薄膜形態)を帯状材料領域で加熱し、冷却しかつ/又は製品又は一定の温度に保持する状態で、製品又は帯状材料の厚さを変更できる点にある。基本的に十分に理解できるように、製品又は帯状材料に垂直状態又は傾斜状態にノズル出口を配置し、製品又は帯状材料の上方及び/又は下方に送風ノズルを配置できる。
【0020】
本発明が達成できる利点は、下記の通りである:
・ 例えば、調節幅範囲50mm~2000mmで送風ノズルの作業幅を柔軟に変更し設定できる(再構築を要せずに、高度に柔軟に作業幅を変更できる)。
・ 本発明に使用する送風ノズルは、通気性を最適化し、低温の把持装置及び/又は境界壁による影響を回避できる。
・ 本発明では、吸引する気体流又は空気流の吸引量を最適化できる。
・ 本発明に送風ノズルを使用すると、例えば、400℃以下の非常に良好な温度分布を帯状材料の平面内で達成できる。特に、帯状材料の両側縁領域にもこの温度分布を適用できる(例えば、従来では低温の把持装置で冷却される悪影響を受ける樹脂薄膜の両側縁を延伸する同時延伸装置には特に重要である。)。
・ 本発明の送風装置は、全作業幅を通じて良好な温度分布の空気を供給できる。
・ 本発明の送風装置は、本発明の解決手段に不要な貫流孔に対する被覆部により、不必要な空気流を回避できる。
・ 例えば、均一な温度制御と均一な温度分布の気体流を供給して、延伸すべき樹脂薄膜の薄膜中央部と両側縁との間の延伸比率の差異を低減できる。
・ 本発明では、特に、全作業幅を通じて、樹脂薄膜の弾性率、収縮率又は破断歪に対し、より均一な帯状材料特性を達成できる。
【0021】
下記図面について、本発明の実施の形態を以下詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の送風ノズルを備える延伸装置の略示平面図
【
図2】内側搬送路となる搬送案内レールと、搬送案内レール上で移動可能な把持装置とを備える延伸装置の把持装置に、搬送路筐体内の搬送部と、搬送路筐体の開口を通じて薄膜側に突出する把持部とを設けた実施の形態を示す断面図
【
図3】送風ノズルを除去した延伸装置内部の略示斜視図
【
図5a】小幅帯状材料の上方に本発明の送風装置の送風ノズルを配置した略示断面図
【
図5b】
図5aとは異なり、広幅の帯状材料の上方に本発明の送風装置の送風ノズルを配置した略示断面図
【
図5c】薄膜又は薄膜面の上方と下方とに送風装置を設けた単純化実施の形態を示す略示断面図
【
図6a】
図5aと
図5bを若干変更した小幅又は幅狭の帯状材料の実施の形態の略示断面図
【
図6b】
図6aとは異なり、幅広の帯状材料の実施の形態の略示断面図
【
図8a】幅狭の帯状材料の薄膜面の上方と下方とに本発明の送風装置の送風ノズルを設けた延伸装置の斜視図
【
図8b】幅広の帯状材料の薄膜面の上方と下方とに本発明の送風装置の送風ノズルを設けた延伸装置の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
延伸装置の構造
同時延伸装置の一例について本発明の送風装置を説明するが、例えば、異なる動作の帯状材料、単軸の縦延伸装置、単軸の横延伸装置、樹脂薄膜を長手方向に延伸し、その後横断方向に延伸する縦横逐次延伸装置又は逆に、最初に横断方向に延伸し、その後長手方向に延伸する縦横逐次延伸装置等別の延伸装置にも本発明の送風装置を基本的に採用できる。
【0024】
一例として
図1に示す同時延伸装置は、薄膜面に対して垂直な中央対称平面SEに対し対称に配置される2つの駆動装置を有する。同時延伸装置は、対称面SEに対して対称的に配置される一対の駆動装置を有し、延伸すべき樹脂薄膜F形態の帯状材料Fの両側縁は、複数の把持装置により把持され、複数の把持装置は、閉ループ状の一対の移動案内路2上で循環する搬送方向1に移動して、帯状材料(薄膜)Fは、延伸装置により搬送方向1に移動され、延伸される。
【0025】
樹脂溶融物は、押出機金型のノズルから基本的に冷却ロール(チルロール)上に通常送出される。冷却ロールを通過する薄膜は、直ちに「流涎薄膜」に形成され、薄膜の温度を調節する加熱炉内に通常移動する。その後、「流涎薄膜」ではなく、「薄膜」又は「樹脂薄膜」とのみ通常呼ばれる。全延伸工程後に、完全に延伸される薄膜の内部応力が加熱炉内で通常除去される応力弛緩段階を経て、巻取機上に巻取られる際に、「薄膜(帯状材料)F」とのみ呼ばれる。
【0026】
延伸すべき薄膜Fは、進入領域ERから延伸装置に導入され、閉ループ状の案内路2に沿って循環する延伸装置の搬送装置に設けられる複数の把持装置Kは、
図2に示す断面を有し、帯状材料の両側縁又は薄膜縁5を進入領域ERで把持する。操作者側OS(operator side)と駆動側DS(drive side)との搬送装置の把持装置Kは、帯状材料又は薄膜Fの両側縁5を把持する。その後、例えば、後続の予熱領域PHで加熱される薄膜Fは、延伸領域Rに搬送されて、長手方向と横断方向とに同時に延伸される。複数の把持装置Kは、延伸領域Rでは進入領域での駆動速度v1より速い延伸速度v2に加速されるので、樹脂薄膜Fは、長手方向と横断方向とに同時に延伸される。把持装置Kは、操作側OSと駆動側DSとの互いに離間する延伸領域Rでの案内路2上で移動するので、操作側OSと駆動側DSとの案内路2上で、把持装置Kが移動するにつれて、連続する2つの把持装置K間距離xは増加し、樹脂薄膜Fの対向する両側縁間距離yも増加する。延伸領域Rと熱処理領域HTとの間の接続部Gを介して案内路2を接続して、把持装置K間距離xと両側縁間距離yを所望の最適な予定値に設定できる。樹脂薄膜Fは、案内路2に沿って更に加熱炉Oが設けられる処理領域HTを通過する。
【0027】
把持装置K間の距離xと両側縁間の距離yは、長手方向と横断方向との所望の延伸比率に比例して拡大する。第2の工程の延伸領域Rの終端では、樹脂薄膜Fの延伸速度v2は、駆動速度v1を超える。
【0028】
延伸した樹脂薄膜Fは、次に樹脂薄膜Fの内部応力を弛緩する第3の工程の少なくとも1つの熱処理領域HT、即ち所謂アニール領域を通過する。そのため、延伸速度v2は、低下して、連続する把持装置K間の距離xが減少する。同時に、対向する把持装置Kの両側縁間の距離yも減少する。この場合、駆動速度v1は、所望の弛緩量に応じて減少する。
【0029】
熱処理領域HTでの熱処理間に、樹脂薄膜Fの内部応力を緩和(弛緩)することが有利である。長手方向、横断方向又は両方向に内部応力が弛緩される。長手方向にも横断方向にも内部応力を緩和することが好適である。特に、縦横同時延伸後に、長手方向、は横断方向又は双方向に応力弛緩を行うことが好適である。弛緩操作により、樹脂薄膜Fは、温度制御下で収縮可能を意味する。樹脂薄膜Fの弛緩規模は、樹脂薄膜Fの長さ及び/又は幅の各2%~12%、好適には4%~8%、特に好適には5%~7%である。
【0030】
同時延伸装置の退出端部AR、即ち退出領域Aでは、樹脂薄膜Fは、適切な手段により把持装置Kから解放される。
【0031】
案内レールと把持装置の構造
図2は、把持装置Kと搬送装置とを備えるリニアモータ駆動の同時延伸装置の断面を例示する。異なる公知の解決手段を指摘するが、図示しない実施の形態にも本発明の延伸装置を適用できる。
【0032】
図2は、把持部6と、搬送部7とを備える把持搬送装置Tを示す。把持部6は、接続部8を介して搬送部7に連結される。搬送部7又は把持部6に把持装置Kの接続部8を付加する構造と見ることもできる。
【0033】
把持部6は、把持装置Kの軸25b周りに回転可能な舌片25cと称する把持レバー25cを備える。薄膜延伸装置では、把持面25dと把持台25eとの間に樹脂薄膜Fを挟持しかつ固定する。
【0034】
洋梨状又はU字型に形成される舌片25cの端部25gを、不図示の従来装置で作動して、把持レバー25cを開閉して、把持面25dと把持台25eとの間に樹脂薄膜Fを挟持し又は開放することができる。機械的又は磁気的に端部25gを作動して、把持レバー25cを純粋に開閉する実施の形態を採用できる。
【0035】
適切なリニアモータ駆動部を備えるリニアモータで駆動される適切な公知の同時延伸装置の構造については、例えば、特許文献2又は特許文献3を参照されたい。
図2の断面図は、案内レール15を示す。
【0036】
本明細書に示す実施の形態では、少なくとも一対の軌道ローラ505は、各走行面15a, 15b上を走行し、上軌道ローラ対505aは、水平軸を中心に回転して、上走行面15a上を転動する。把持部6が連結される搬送部7の全重量は、上軌道ローラ対505aが負担しかつ支持する。
【0037】
下走行面15bを転動する一対の下軌道ローラ対505bは、安全走行性を担保する。
【0038】
把持装置K側に設けられる一対のロール505cは、垂直走行面15c上を転動し、一対のロール505cに対向する一対のロール505dは、垂直走行面15d上を転動するので、搬送部7は、案内レール15に沿って案内されかつ支持される。案内レール15は、各把持装置Kから離れて形成される搬送路筐体35a内の自由空間401内で間隔を空けて保持される上ロール505dと下ロール505dとの間に配置される水平架台により搬送路筐体35aに固定される。尤も、案内レール15と案内レール15上で転動するロール505は、例示的説明に過ぎない点に留意すべきである。ロール505の案内レール15とその支持構造を完全に異なる形態に形成できる。例えば、ロール505の代わりに、従来のように、全く異なる形態で、摺動片を用いる案内レール15を形成することができる。
【0039】
適切な搬送部7を駆動する複数のリニアモータは、搬送路筐体35aに固定される一次側502と、把持搬送装置Tと共に移動可能な二次側503とを備える。一次側502と二次側503との電磁力により、把持装置Kの把持部6は、搬送部7と共に、搬送レール(例えば、モノレール)15としても機能する案内レール15に沿って長手方向に前進し、移動する。
【0040】
一次側502は、案内レール15に平行に取り付けられる。永久磁石503aで構成される二次側503は、搬送部7に保持される保持箱503b内に固定される。
【0041】
図2に示すように、一次側502と二次側503との間に形成される(微小)隙間Spを介して、一次側で発生する電磁力は、搬送部7の永久磁石503aに作用して、搬送部7は、前方に移動する。
【0042】
把持搬送装置Tは、複数のロール505を介して案内レール15に沿って移動するが、ロール軸受の代わりに、摺動片を使用する摺動軸受を設けて、案内レール15に沿って把持搬送装置Tを基本的に滑動することもできる。また、複数のロール505と摺動軸受とを組み合わせる把持搬送装置Tも使用することができる。これについても、複数の公知の把持搬送法を指摘できる。
【0043】
例えば、リニアモータで駆動される同時延伸装置を用いて薄膜を延伸できる。好適なリニアモータ駆動構造とは異なり、パンタグラフ装置で動作する同時延伸装置を用いることもできる。この点は、公知の解決法を指摘する。
【0044】
前記の通り、同時延伸装置のみならず、純粋に縦延伸装置、純粋に横延伸装置又は縦横逐次延伸装置(薄膜を長手方向に延伸した後、横断方向に延伸し又は逆に横断方向に延伸した後、長手方向に延伸する装置)でも、本発明を実施できる。
図1は、横方向延伸段のみを示す。完全を期して言及すると、延伸装置のみで実施可能のみならず、例えば、延伸せずに薄膜を平行移動する場合、特に、加熱炉を貫通して平行に案内する場合にも、本発明を実施できる。
【0045】
図3は、比較的狭い幅の薄膜又は樹脂薄膜Fを横断方向に延伸しない状態又は同時延伸装置若しくは縦横逐次延伸装置により横方向に延伸しない先行領域での対応する延伸装置の一部を示す斜視図である。
【0046】
一対の搬送路35内に設けられる
図2に示す搬送部7は、
図3の延伸装置では、接続部Bを介して把持部6に接続され、搬送部7は、把持部6と一体に案内レール15に沿って移動する。搬送部7と共に把持部6を備える移動可能な把持装置Kは、後述する。
【0047】
図3に示す筐体状に形成される各搬送路35の両搬送路筐体35aは、移動する帯状材料Fの左右両側に配置される。
図3の各搬送路筐体35aは、搬送遮蔽壁35bと総称することもある天井壁、底壁、遠位の外側壁及び移動する帯状材料F方向の内側壁35bを有する。
【0048】
搬送路筐体35aを備える適切な搬送路35の断面は、
図2に示す通りであるが、
図2の実施の形態では、把持装置Kを搬送方向1に前方移動する案内レール15のみが搬送路筐体35a内に収容され、簡略化のため、送電経路と端子箱用の空間を省略する。復路用の案内レール15は、搬送路筐体35aの外側で別個の搬送路内に設けられ又は収容される。
【0049】
両搬送路35の各薄膜側に形成される把持部6と、搬送路筐体35a内に設けられる搬送部7とを接続する接続部Bと称する連結部8は、両搬送路35の各薄膜側に形成される隙間状の開口37を貫通しかつ薄膜方向に突出する。
図3に示す把持装置Kは、薄膜Fの対向縁5を把持する把持閉鎖状態を示し、把持装置Kは、
図1の搬送方向1に延伸装置を貫通して対向縁5を移動又は駆動する。
【0050】
従来の送風装置の構造
図4は、従来の通常の送風装置の断面図を示し、搬送部7が通過する一対の搬送路35は、薄膜Fの両側に配置され、搬送路35は、案内レール15と、接続部Bを介して把持部6に接続されかつ案内レール15に沿って移動する搬送部7とを備え、薄膜Fは、把持レバー25cの下端と把持台25eとの間に張設して保持される。
【0051】
薄膜Fの両側の搬送路35と複数の送風ノズル41は、送風空間BEを形成する。
【0052】
薄膜Fの種々の幅に適応して矢印39の互いに離間する方向又は逆に接近する方向に、両搬送路35を移動して位置決めできる。搬送路35の相対的進退移動により、薄膜Fの両側縁5を把持する対向する把持装置Kも相対的に進退自在に移動するので、
図4に示す薄膜幅より幅広の薄膜Fを把持装置K間に張設して保持し、搬送方向1に移動して、薄膜Fを加工できる。
【0053】
複数の搬送路35の搬送路筐体35cと薄膜Fの上方に適切な一方の送風ノズル41を配置すると共に、複数の搬送路35の搬送路筐体35dと薄膜Fの下方に他方の送風ノズル41を配置して、両搬送路35間と移動可能な把持装置K間とに異なる幅を設定し、側方距離を様々に設定する送風装置を提供できる。
【0054】
図4に示す従来の送風装置には、一連の欠点がある。例えば、複数の送風ノズル41から矢印141方向に薄膜Fに対し空気を供給すると、適切に調節した温度の空気が、薄膜Fの表面に供給されると同時に、複数の低温の把持装置K、特に複数の低温の把持部6に接触して空気が冷却されて、空気流の温度が不安定になり、特に、空気流に不均一な温度分布が生じて、薄膜Fの両側縁領域を冷却するので、薄膜が不均一に加熱される難点がある。矢印141方向の温度調節された空気が、移動する薄膜Fの周辺空間内で流動すると同時に、矢印143方向に逆流する空気が、複数の送風ノズル41間の間隙に設けられる不図示の上吸入路に流入して、空気温度が不安定になる。
【0055】
離間方向又は逆の接近方向に、両搬送路35を移動して薄膜幅を柔軟に設定できるが、最大薄膜幅時に、複数の送風ノズル41の実質的により広い全断面から空気流を噴出する必要のある別の欠点もある。逆に、幅狭の薄膜では、送風ノズル41からの空気噴流145は、被覆部35cの上壁と被覆部35dの下壁に衝突して、送風空間BE方向に偏向され、薄膜Fへ空気流の温度分布と流路分布に影響を与える問題もある。
【0056】
本発明の送風装置
前記欠陥を解消する解決手段を提供する本発明の第1の実施の形態の概略を、
図5aと
図5bについて説明する。
【0057】
図5aと
図5bは、互いに平行にかつ間隔を空けて配置される2つの搬送路35の上方に本発明の送風装置を設けた2つの異なる断面図を示す。2つの搬送路35間を貫通して、延伸すべき薄膜Fが搬送される。
図5aと
図5bは、両案内レール15を断面、特に垂直断面を示すが、案内レール15と、適切な搬送部7を含む詳細の図示を省略する。図示しない構成については、公知の解決法に関する
図4とその説明を参照されたい。搬送路筐体35aに設けられる隙間状の開口37と、搬送路筐体35aの接続部Bの連結部を通じて、搬送路35から突出する把持部6とを示す図示の実施の形態では、各把持部6は、薄膜面Eに張設される薄膜Fを把持する。
【0058】
図5aは、薄膜面E、即ち薄膜Fの上方に設けられる送風帰還装置、即ち送風装置のみを示す。薄膜Fの下方に対象的(鏡像的)に通常追加される対応する送風帰還装置の図示を省略する。
【0059】
図5aに示す実施の形態では、搬送路35に沿って移動する複数の把持装置K、例えば、比較的小幅の薄膜Fの両側縁5を把持し、薄膜Fは、把持装置Kの移動により延伸装置を貫通して搬送方向1に案内される。
【0060】
図5aに対応する断面図を示す
図5bは、例えば、側方最遠位の最大離間位置に互いに離間して変位する両搬送路35を示し、案内レール15も対応して変位するため、幅広の薄膜Fの両側縁5を把持する把持装置Kは、遠位に配置される案内レール15上を移動し、薄膜Fは、延伸装置を貫通して搬送方向1に引出される。
【0061】
両搬送路35の異なる前記設定に対応して、後述のように、本発明の送風装置も、相応して異なるように設定される。
【0062】
図5aに示す上送風ノズル51を備える上送風装置は、例えば、
図5aの右方に設けられる適切な送風ノズル51の供給口53を有し、適切に温度調節され又は用途に応じて冷却される空気流又は気体流は、矢印55方向に供給される(通常周辺空気であるが、別の複数種の気体若しくは複数種の気体媒体により構成され又は別の気体媒体で置換できる)。
【0063】
例えば、薄膜F方向に空気流を好適に偏向する排出口59を有する送風ノズル51の中央領域57(送風室又は送風ノズル室57)内に空気流又は気体流が供給される。
【0064】
中央領域57に接続される送風路又は送風ノズル路61(送風通路61と称することもある)を介して、中央領域57の気体流又は空気流は、矢印63方向の薄膜Fに向かって流出する。換言すると、気体流又は空気流は、気体流の入口側61cから送風ノズル路又は送風通路61に供給され、送風通路61を貫流した後、ノズル排出口62から気体流出口側61dで薄膜F方向に更に流動する。
【0065】
図示の実施の形態では、適切なノズル排出口62は、複数の把持装置K間の間隙領域に配置され、詳細には、薄膜面Eに対し被覆部35cの最遠位置と薄膜面Eとの間の距離XXより小さい距離Xにノズル排出口62が配置される。
図5aに示す薄膜面Eと、薄膜面Eから最遠位置にある被覆部35c領域との間の距離をXXと称する。
【0066】
ノズル排出口62を薄膜面Eに接近して配置する構成により、例えば、調節された温度の空気は、薄膜Fの薄膜面Eに直接供給され、特に、温度調節されて薄膜に供給する気体流の温度が把持装置Kを含む低温の塊体温度とは異なっても、調節された温度の空気は、把持装置Kを含む低温塊体により冷却されない。
【0067】
薄膜Fに供給される気体流又は空気流は、その後、搬送方向に連続する2つの把持装置間で、矢印67で示す排出方向の側方に排出される。
【0068】
要するに、空気流入側の送風供給開口53を通り、片側又は送風装置の対向する両側から、適切な気体流(加熱又は非加熱の空気が好ましい)が送風装置に供給され、気体流又は空気流は、その後均一にノズル室57に流入する。気体流又は空気流は、その後、全ノズル幅と全ノズル長さ及び排出口59の利用可能な全断面で送風室57から送風通路61に均一に流入する。複数の排出口59は、送風通路61のノズル入口59を形成する。送風室57の排出口59(後述する)には、多数の長孔及び/又は孔が形成される。気体流又は空気流は、送風通路61からノズル排出口62に流動し、複数の把持装置K又は把持部6の高さで、ノズル排出口62から薄膜F方向に流出する。そのとき、気体流又は空気流は、複数の把持装置K間で多少でも妨害されずに、薄膜Fの薄膜面E方向に流動しかつ流出する。薄膜Fで反射する気体流又は空気流は、その後、複数の把持装置(搬送方向に互いに若干の間隔を空ける)間で、薄膜Fの両側縁5を通じて、吸引ノズル方向に吸引されるが、これ点は、後述する。
【0069】
図示の実施の形態では、搬送路35の上面又は天井面35c(薄膜面Fに対して遠位側)と、送風ノズル51の帯状材料又は薄膜側51aとの間に間隙43が設けられ、帰還する気体流は、矢印67で示す流動方向から間隙43内に流入した後、対応する複数の吸引路70に流入する。帰還する空気流又は気体流は、吸引路70に貫流し、
図5aに示す実施の形態では、上吸引ノズル71又は送風室57の上方領域に達する。
【0070】
帰還する気体流又は空気流は、更に矢印72に沿って、例えば、加熱装置(気体流温度調整部、加温部又は加熱部を設けるとき)73又は冷却装置73に案内され、その後再び適切な温度に達する気体流又は空気流は、更に、換気装置(後述する)を介して、例えば、再び送風ノズル51の供給開口53に供給され、気体流は、その後再び前記の通り、矢印55方向の送風路51に供給される。
【0071】
前記又は
図5cに略示するように、薄膜面Eの高さ位置に応じて、薄膜Fの下面の搬送路35に対応する送風ノズル51を対称的(鏡像的)に配置するのが好適である。
【0072】
図5bは、複数の把持装置Kが、必要に応じて幅広の薄膜Fを搬送しかつ延伸するとき、搬送路35の側方で互いに距離を空けて離間する延伸装置を示す。
【0073】
図5bは、本発明の送風ノズル51の原理と基本構成を示す断面図である。
【0074】
図5bは、少なくとも2つに分岐する送風路領域61aと61bとを備える適切な送風通路61が薄膜F方向に突出する送風ノズル51を示す。例えば、帯状材料、即ち樹脂薄膜Fの左側に設けられる複数の把持装置K(左側の移動可能な把持装置Kの把持部6)の搬送路35側の一方の送風路領域61aと、搬送方向1の右側に設けられる複数の把持装置K(右側の移動可能な把持装置Kの把持部6)の搬送路35側の他方の送風路領域61bとに送風通路61が割り当てられる。送風路領域61aから分離する送風路領域61bは、材料又は薄膜Fの対向側、即ち
図5bの帯状材料又は薄膜Fの右側に配置され、右側で移動可能な複数の把持装置Kと、右側の搬送路35とに割り当てられる。従って、送風路領域(送風路間隔)61aと61bは、薄膜面に垂直でかつ搬送方向1に配置される仮想平面で好適に分割されかつ対称的(鏡像的)に配置され及び/又は形成される送風路半片61aと61bと原理上言える。
【0075】
両送風路領域61a, 61bは、薄膜面Eとは逆方向で、薄膜面Eに対して平行に設けられる複数の角片64に連絡し、一方の送風路領域61aに割り当てられる角片64aと、対向する他方の送風路領域61bに割り当てられる角片64bとは、互いに離間して設けられる。送風室57から送風出口ノズル61に気体と空気流を供給する有孔壁83により、角片64a, 64bは、側方に区分される。
【0076】
換言すると、両送風路領域61aと61bとの間隔を多少でも調節(個別に変更)でき、搬送方向1に対し直角方向又は横断方向に送風路61の幅を明らかに拡張できる。対応する側方の送風路壁62a又は62b(送風路金属板ともいう)を設定し又は搬送路35の幅を設定し調節し、把持装置K又は把持部6に対し送風路壁62aと62bの薄膜F側の正面端部62cを等しい相対位置に配置し、送風路幅Bの大きさを調節して搬送路35間の距離を調節し、薄膜Fの両側縁5の側方に配置される両案内レール15間の距離と、対向する把持装置K間の距離を調節することが好ましい。狭い間隔で互いに設定される搬送路35(
図5aに示す移動可能な把持装置Kを備える)の位置も同様に調節できる。
【0077】
図5bに示す変形実施の形態でも、空気流又は気体流を薄膜Fの全幅に供給するので、把持装置Kによる従来の空気流又は気体流冷却欠陥は、多少でも発生しない。
【0078】
図5bの実施の形態では、薄膜Fに供給される空気流又は気体流は、特に移動可能な把持装置K間で矢印67と69方向に間隙43と吸引路70とを通じて吸引ノズル71に流入し、必要なら加熱装置73を介して更に循環する。
【0079】
本発明の送風装置では、従来不可能な寸法でも、送風ノズル51と薄膜Fとの幅を設定できる。
図5bに示す設定幅でも、薄膜面Eに直接隣接して適切なノズル排出口62を配置して、温度を調節した気体流を薄膜Fに直接供給することができる。
【0080】
図6aと
図6bは、比較可能な実施の形態の断面図を示し、
図6aは、隣接する把持装置K間が狭い若しくは小さい距離又は最小幅FBの樹脂薄膜Fを示し、
図6bは、幅広の薄膜FBを示す。
【0081】
図6aと
図6bに示す実施の形態は、対向する把持装置Kに金属案内板又は案内壁77を各搬送路35に割り当てて、薄膜F側の送風路端部若しくは送風路縁62cに接近して又は送風路縁62cで金属案内板又は案内壁77の一端を送風路領域61a又は61bに直接連結する点で、
図5aと
図5bの実施の形態と実質的に相違する。
【0082】
図示の実施の形態では、案内壁又は金属案内板77は、送風路61の適切な固定部62dから送風路領域61aと61bの外側に対向して薄膜面Eから幅広方向に配置されて間隙43を形成する帰還路79を構成し、搬送路35又は搬送路筐体35aの例えば上面35c(天井面35c)上に直接又は間接的に帰還路79の薄膜F側の帰還路壁79aを配置することが好適である。矢印39(
図4)に示すように、互いに離間方向又は接近方向に搬送路35を移動して、搬送路35を分離し又は接近する移動により、両送風路領域61aと61bを拡大し又は縮小してノズル排出口62の設定幅B(
図5b)を好適に調節することができる。
【0083】
例えば、帰還する気体流又は空気流が、矢印67(
図5a、
図5b)方向に帰還路に流入する孔又は長孔の複数の開口81が案内壁又は金属案内板77に設けられる。
図6aと
図6bの実施の形態では、図面平面に対して直角方向に形成される長手方向長孔として開口81が設けられるので、帰還する気体流は、案内壁又は金属案内板77の下方領域(把持装置Kは下方領域を通過する)から矢印67’方向に開口81を通過して、金属案内板77上方の間隙43(上送風ノズル装置が
図6bの上空間に設けられる)を通り、帰還路79に流入する。反復するが、送風ノズル51に対応する図示しない送風ノズルが薄膜の下側にも好適に設けられる。
【0084】
図7は、例えば、扁平空間に配置される扁平状の適切な送風ノズル51又は送風通路61の斜視図を示す。空気壁又は金属案内板77の側面には、長孔状に貫通する複数の開口81が形成される。
【0085】
図8aと
図8bは、上送風ノズル51と、薄膜面Eについて上送風ノズル51と対称に配置される下送風ノズル51’とを備える組立後の送風ノズル51の薄膜Fの搬送方向1に直角な断面を示す斜視図である。
図8aは、両側の案内レール15に沿って短時間で循環する延伸装置の対向する把持装置Kが小幅FBの樹脂薄膜の両側縁5を把持する延伸装置の送風装置を示す。
【0086】
図8bは、搬送方向に移動する把持装置Kにより広幅FBの薄膜の両側縁5を張設し保持する延伸装置に設けられる上送風ノズル51と下送風ノズル51’とを備える送風ノズル51を最大離間位置に移動した送風装置を示す。
【0087】
図8bは、対向して循環する把持装置Kと、案内レール15と、搬送路筐体35aとを含む搬送路35と共に最大幅離間位置に移動した両送風路領域61aと61bを示す。
【0088】
例えば、薄膜面Eに対し平行に、互いに平行にかつ上下に並置される案内壁又は金属案内板77に、複数の長孔状の開口81を形成できる。別法として、薄膜面Eに対し直角に形成される多数の気体貫通用長孔又は平面状に分布する複数の孔開口を金属案内板に設けることもできる。
【0089】
図8aと
図8bに示すように、気体流が通過する有孔壁83を通じて、上ノズル箱51から送風路61に適切な量の供給気体流が流入する。気体流が通過する有孔壁83を構成する有孔板に形成される単一若しくは複数の排出口59又はノズル入口59は、送風室57から気体流又は空気流が流入する送風通路61に連絡する。図示の実施の形態では、長手方向と横断方向に互いにずれて配置される多数の孔又は開口として、送風通路61に連絡する複数の排出口59、即ちノズル入口59は、長手方向と横断方向の有孔壁83に穿孔格子状に形成される。
【0090】
図8bに示す送風路領域61aと61bを最大幅間隔に調節するとき及び全幅方向と全長手方向に設定するとき、有孔壁83を通り送風路61に確実に流入する領域(多数の平行矢印141で示す)に形成される貫通開口59は、適切な気体流又は空気流を極力妨害しない。
【0091】
図6a、
図6b、
図8a及び
図8bに示すように、被覆壁又は被覆金属板91は、薄膜面Eに平行に配置され、送風ノズル51又は送風室51(
図6bと
図8bの上送風ノズル51とは対称)の下壁の下面は、被覆壁又は被覆金属板91で形成され、薄膜Fに対向する送風路領域61aと61bは、送風ノズル51又は送風室51の下壁の下面に直接接触すると好適である。
図6aと
図8aに示すように、送風路領域61aと61bを互いに接近させて送風装置全体を小薄膜幅に設定すると、薄膜F側の境界壁51aとして、被覆壁又は被覆金属板91は、孔形状の有孔壁83の大部分を覆うので、気体流又は空気流は、非遮蔽開口81のみを介して、被覆壁又は被覆金属板91が閉鎖しない適切な送風路61に流入する。
【0092】
図6bと
図8bに示すように、送風装置全体を広薄膜幅FBに設定すると、両送風路領域61aと61b(搬送路35と共に)は、互いに離間して、被覆壁又は被覆金属板91と、有孔壁83とが最大領域に解放されるので、供給する気体流又は空気流は、上送風室57又はノズル箱51から全幅Bの送風路61を通り送風路61に多少でも好適に流入する。
【0093】
送風路領域61aと61bを互いに離間させて幅広の樹脂薄膜に送風する作動形態に送風装置を設定しても、薄膜Fと薄膜面Eに対しノズル排出口62を直近に配置して、送風路61を通り薄膜Fに気体流又は空気流を供給するので、低温の把持装置K又は低温の把持部6の脇を通過しても、気体流又は空気流は、多少でも渦流を発生せず又は冷却されない本発明の利点を実現できる。幅狭の樹脂薄膜の温度を適切に調節し又は冷却する設定でも、送風ノズル51を通る気体流又は空気流は、把持装置Kにより妨害されず、極めて広範囲幅の樹脂薄膜を全変位幅にわたり適切に処理できる。
【0094】
例えば、搬送方向1に互いに隣接する複数の管状路形態で、複数の吸引路69を複数個配置できることも
図8aと
図8bから明らかである。
【0095】
図8aと
図8bの実施の形態では、加熱装置、温度調節装置又は必要な場合には冷却装置73を上吸引室69の端部に設けて、帰還する空気流又は気体流を後続の換気部75により吸引し、換気部75の出口側から再びノズル装置の導入開口53に供給することもできる。