(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】運転交代制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/12 20120101AFI20241126BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241126BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20241126BHJP
【FI】
B60W50/12
B60W60/00
B60W40/08
(21)【出願番号】P 2020129719
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】本間 拓也
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/134994(WO,A1)
【文献】特開平03-096439(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0382016(US,A1)
【文献】特開2018-045450(JP,A)
【文献】特開2006-205794(JP,A)
【文献】特開平07-040757(JP,A)
【文献】国際公開第2018/056104(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/017216(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レベルに応じた自動運転により走行可能な車両に備えられ、前記レベルが高い高度自動運転から、前記レベルが低い低度自動運転に遷移する際の、運転交代動作を制御する運転交代制御装置であり、
運転者操作装置と、車両運転装置と、覚醒度検出装置と、演算制御装置と、出力制限装置と、を具備し、
前記運転者操作装置は、前記車両を運転する運転者が、前記車両の操舵および車速調整を行うべく操作するように構成され、
前記車両運転装置は、前記運転者が前記運転者操作装置に与える操作の操作量に応じて、前記車両の操舵および車速調整を行い、
前記覚醒度検出装置は、前記高度自動運転から前記低度自動運転に遷移する際の、前記運転者の覚醒状態を検出し、
前記演算制御装置は、前記高度自動運転から前記低度自動運転に遷移する際に、前記覚醒度検出装置で検出した前記運転者の覚醒度が一定以下であれば、前記出力制限装置を駆動することで出力制限動作を実行し、
前記出力制限装置は、前記出力制限動作における前記演算制御装置からの指示に基づいて、前記運転者が前記運転者操作装置に与える前記操作量に対して、前記車両運転装置の出力を制限し、
前記車両運転装置は、操舵装置と、加速装置と、減速装置と、を有し、
前記出力制限装置は、
前記減速装置の出力を制限せず、前記操舵装置および前記加速装置
の出力を制限
した後に、前記操舵装置の出力制限を解除または緩和する一方、前記加速装置の出力制限を続行することを特徴とする運転交代制御装置。
【請求項2】
車外環境認識装置を具備し、
前記車外環境認識装置は、前記車両が進行する方向における車外環境を認識し、
前記出力制限装置は、前記車外環境認識装置が認識した前記車外環境に基づいて、前記車両運転装置の出力を制限することを特徴とする請求項1に記載の運転交代制御装置。
【請求項3】
前記出力制限装置は、前記覚醒度検出装置が検出した前記運転者の覚醒度に応じて、異なる度合いで前記車両運転装置の出力を制限することを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の運転交代制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転交代制御装置に関し、特に、高度自動運転から低度自動運転に移行する際に、運転交代時に於ける安全性を向上させる運転交代制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の挙動に関する操作である、アクセル操作、ブレーキ操作及びハンドル操作の全てを車両制御ECUが制御し、運転者の操作に依らない自動運転を行うことができる自動運転支援装置が開示されている。同文献の自動運転支援装置は、エンジン装置、ブレーキ装置、電動パワーステアリング等を駆動制御して、案内経路上の中断タイミングまで自動運転を行う。
【0003】
特許文献2には、自動運転から手動運転への切り替え時に運転者に当該切り替えの警報を発する走行制御システムが記載されている。これにより、自動運転モードの切り替え時において運転者の体勢に応じて警報の内容を切り替えることができ、運転者に運転支援モードの終了を即時に気付かせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-170404号公報
【文献】特開2019-156058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献2に記載された発明では、運転切り替え時における安全性の観点から改善の余地があった。
【0006】
具体的には、車両の運転状態を自動運転から手動運転に遷移する際、運転者の覚醒度が低い状態であると、運転者が焦ることにより、ステアリングハンドルやアクセルペダルを急に操作してしまい、遷移直後の手動運転時において、車両挙動の安定性に課題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、高度自動運転から低度自動運転に遷移する際に、遷移時に於ける車両挙動の安定性を確保できる運転交代制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、レベルに応じた自動運転により走行可能な車両に備えられ、前記レベルが高い高度自動運転から、前記レベルが低い低度自動運転に遷移する際の、運転交代動作を制御する運転交代制御装置であり、運転者操作装置と、車両運転装置と、覚醒度検出装置と、演算制御装置と、出力制限装置と、を具備し、前記運転者操作装置は、前記車両を運転する運転者が、前記車両の操舵および車速調整を行うべく操作するように構成され、前記車両運転装置は、前記運転者が前記運転者操作装置に与える操作の操作量に応じて、前記車両の操舵および車速調整を行い、前記覚醒度検出装置は、前記高度自動運転から前記低度自動運転に遷移する際の、前記運転者の覚醒状態を検出し、前記演算制御装置は、前記高度自動運転から前記低度自動運転に遷移する際に、前記覚醒度検出装置で検出した前記運転者の覚醒度が一定以下であれば、前記出力制限装置を駆動することで出力制限動作を実行し、前記出力制限装置は、前記出力制限動作における前記演算制御装置からの指示に基づいて、前記運転者が前記運転者操作装置に与える前記操作量に対して、前記車両運転装置の出力を制限し、前記車両運転装置は、操舵装置と、加速装置と、減速装置と、を有し、前記出力制限装置は、前記減速装置の出力を制限せず、前記操舵装置および前記加速装置の出力を制限した後に、前記操舵装置の出力制限を解除または緩和する一方、前記加速装置の出力制限を続行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高度自動運転から低度自動運転に遷移する際に、遷移時に於ける車両挙動の安定性を確保できる運転交代制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る運転交代制御装置を備えた車両の接続構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る運転交代制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態に係る運転交代制御装置の適用例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る運転交代制御装置を図面に基づき詳細に説明する。以下の説明に於いては前後上下左右の各方向を適宜用いる。更に、以下の説明では、同一の部材には原則的に同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0020】
本実施形態において、車両10は、異なる自動運転レベルで走行することができる。
【0021】
自動運転レベルは、SAE InternationalのJ3016及びその日本語参考訳であるJASO TP 18004に定義されている。この定義によると、自動運転レベルは、次のように、レベル0からレベル5まで分類されている。
【0022】
レベル0は、手動運転と称され、具体的には、運転者が全ての動的運転タスクを実行する。レベル1は、運転支援と称され、具体的には、システムが縦方向又は横方向のいずれかの車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行する。レベル2は、部分運転自動化と称され、具体的には、システムが縦方向及び横方向両方の車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行する。レベル3は、条件付運転自動化と称され、具体的には、システムが全ての動的運転タスクを限定領域において実行作動継続が困難な場合は、システムの介入要求等に適切に応答する。レベル4は、高度運転自動化と称され、具体的には、システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域において実行する。レベル5は、完全運転自動化と称され、具体的には、システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答をする。
【0023】
本実施形態における高度自動運転および低度自動運転は、相対的な自動運転のレベルである。即ち、高度運転自動化は低度自動運転よりも自動運転のレベルが高く、高度自動運転がレベル5であれば、低度自動運転はレベル4ないしレベル0の何れかである。例えば、レベル5の運転は完全自動運転、レベル4ないしレベル1の運転は半自動運転と称される。
【0024】
本実施形態は自動運転レベルが遷移する際に於ける安全性を向上するものである。自動運転レベルの遷移としては、完全自動運転から半自動運転への遷移、完全自動運転から手動運転への遷移、自動運転レベルが高い半自動運転から自動運転レベルが低い半自動運転への遷移、半自動運転から手動運転への遷移が含まれる。本実施形態では、完全自動運転から手動運転への遷移を例示する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る運転交代制御装置13を含む車両10の概要を示すブロック図である。
【0026】
運転交代制御装置13は、レベルに応じた自動運転により走行可能な車両10に備えられ、レベルが高い高度自動運転から、レベルが低い低度自動運転に遷移する際の、運転交代動作を制御する。後述するように、運転交代制御装置13は、運転交代時に、運転者の覚醒度が低い場合には、運転者21が運転者操作装置19に与える操作量に対して、車両運転装置20の出力を制限する。
【0027】
車両10が自動運転を実現させるために備えている各部位を説明する。具体的には、車両10は、演算制御装置14と、入力装置12と、覚醒度検出装置15と、車両駆動装置16と、表示装置17と、記憶装置18と、車外環境認識装置22と、運転者操作装置19と、出力制限装置11と、車両運転装置20と、を有している。
【0028】
上記した車両10を構成する各装置のうち、運転者操作装置19と、車両運転装置20と、覚醒度検出装置15と、演算制御装置14と、出力制限装置11とは、運転交代制御装置13を構成している。また、運転交代制御装置13は、車両10を制御する制御機構の一部である。
【0029】
演算制御装置14は、車両10の制御手段であり、例えば、各種の演算等を行う演算装置等を含む電子制御ユニット(ECU)等である。演算制御装置14は、入力装置12および車外環境認識装置22から入力される入力情報等に基づき、車両運転装置20を制御することで、車両10を自動運転する。更に、演算制御装置14は、高度自動運転から低度自動運転に遷移する際に、覚醒度検出装置15で検出した運転者21の覚醒度が一定以下であれば、出力制限装置11を駆動することで、車両運転装置20の出力制限動作を実行する。
【0030】
入力装置12は、運転者である乗員が操作可能な押釦等のスイッチやタッチパネル等から成る。運転者が入力装置12を操作することで、高度自動運転の設定や、高度自動運転の開始指示や終了指示を行うことができる。
【0031】
覚醒度検出装置15は、高度自動運転から低度自動運転に遷移する際の、運転者21の覚醒状態を検出する。具体的には、覚醒度検出装置15は、運転者21の開眼度、脇見状態、姿勢、運転継続時間、車内表示機器の操作頻度、表示コンテンツの種類、上体挙動等から、運転者21の覚醒度を検出する。例えば、開眼度が小さい場合、脇見の度合いが大きい場合、姿勢が横臥状態に近い場合、運転継続時間が長い場合、車内表示機器の操作頻度が小さい場合、表示コンテンツが動画等の注意を引くものである場合、上体挙動が少ない場合、覚醒度検出装置15は、運転者21の覚醒度が低いことを検出する。ここで、覚醒度検出装置15による運転者21の覚醒度検出は、自動運転レベルが遷移する運転交代時のみに行っても良いし、車両10が走行している間において連続的に行っても良い。
【0032】
車両駆動装置16は、車両10を走行させるための動力源であるエンジンやモータ等から成る。
【0033】
表示装置17は、車室内の例えばダッシュボードまたはその近傍に配置された液晶パネル等から成る表示機器であり、車両10の走行に関連する情報を、運転者21に報知するために表示する。
【0034】
記憶装置18は、RAMやROMから成り、車両10の走行に必要とされる情報を記憶している。また、記憶装置18は、運転交代制御装置13の動作を実行するために必要なプログラムを記憶している。
【0035】
車外環境認識装置22は、車両10の外部環境を認識するための装置であり、例えば、ステレオカメラ、レーダ装置、GPS(Global Positioning System)、ITS(Intelligent Transport System)等から成る。
【0036】
運転者操作装置19は、車両10を運転する運転者21が、車両10の操舵および車速調整を行うべく行う操作を受け付けるように構成されている。具体的には、運転者操作装置19は、ステアリングハンドル191、アクセルペダル192およびブレーキペダル193を有する。
【0037】
出力制限装置11は、出力制限動作における演算制御装置14からの指示に基づいて、運転者21が運転者操作装置19に与える操作量に対して、車両運転装置20の出力を制限する。出力制限装置11は、運転者操作装置19からの入力を受けて、車両運転装置20の出力を制御する装置であり、演算制御装置14の機能の一部として実現されても良い。
【0038】
車両運転装置20は、運転者21が運転者操作装置19に与える操作の操作量に応じて、車両10の操舵および車速調整を行うアクチュエータ等である。具体的には、車両運転装置20は、操舵装置201、加速装置202および減速装置203を有している。操舵装置201は、運転者21がステアリングハンドル191を回転させる回転角に応じて、車両10を操舵する。加速装置202は、運転者21がアクセルペダル192の踏み込む踏み込み量に応じて、車両10を加速する。減速装置203は、運転者21がブレーキペダル193を踏み込む踏み込み量に応じて、車両10を減速させる。
【0039】
車両10の演算制御装置14は、例えば、次のように高度自動運転および低度自動運転を実行する。
【0040】
高度自動運転(例えば完全自動運転)では、演算制御装置14は、車外環境認識装置22等からの情報に基づき、各種の演算を実行し、現在の走行状態や外部環境等を常に監視する。そして、演算制御装置14は、車両駆動装置16および車両運転装置20等の制御を行い、現在の状況に応じて適切な自動運転を行う。このように、演算制御装置14は、自動運転機能を有し、車両10の運転操作を自動で行うことができる。
【0041】
また、演算制御装置14は、入力装置12または車外環境認識装置22から入力される入力情報に基づいて、車両10の運転を、高度自動運転から低度自動運転(例えば手動運転)に移行する。この際、後述するように、覚醒度検出装置15は、運転者21の覚醒度を検出し、検出した覚醒度が十分でなければ、演算制御装置14の指示により、出力制限装置11は、運転者操作装置19から車両運転装置20への出力を制限する。
【0042】
図2および
図3を参照して、上記した車両10が、高度自動運転から低度自動運転に遷移する際に於ける運転交代制御装置13の動作を説明する。
図2は運転交代制御装置13の動作を示すフローチャートであり、
図3は運転交代制御装置13の適用例を示す概念図である。
【0043】
図2を参照して、ステップS10では、演算制御装置14は、車外環境認識装置22から入力される車外環境情報等に基づいて、運転手交代要求を行う。運転手交代要求を行うタイミングとしては、計画的なタイミングと非計画的なタイミングが存在する。計画的なタイミングとしては、例えば、高速道路の分岐や合流に車両10が差し掛かったことを車外環境認識装置22が認識した場合である。一方、非計画的なタイミングとしては、例えば、トラック等から落下した荷物等の障害物を車外環境認識装置22が認識した場合である。
【0044】
ステップS11では、演算制御装置14は、所定時間内に、ODD(Operational Design Domain)が満たされたか否かを確認する。具体的には、演算制御装置14は、ODDとしての道路条件、地理条件、環境条件等が自動運転に適しているか否かを判断する。
【0045】
ステップS11がYESの場合、即ち、上記した所定時間内において、ODDが満たされている場合、演算制御装置14は、時間的な余裕があると判断し、ステップS12に移行し、運転者21の覚醒度に応じて、出力制限を伴う手動運転を行う。
【0046】
ステップS11がNOの場合、即ち、上記した所定時間内において、ODDが満たされていない場合、演算制御装置14は、時間的な余裕がないと判断し、ステップS15に移行する。
【0047】
ステップS12ないしステップS14では、運転者21の覚醒度を確認し、覚醒度に応じて、運転者操作装置19から車両運転装置20への出力を制限する。また、本実施形態では、運転者21の覚醒度を、覚醒している順番に、覚醒度判定Aないし覚醒度判定Dまで分類している。即ち、覚醒度判定Aが最も覚醒度が高く、覚醒度判定Dが最も覚醒度が低い。本実施形態では、運転者21の覚醒度に応じて、以下のように、出力制限の度合いを異ならせている。
【0048】
ステップS12では、演算制御装置14は、覚醒度検出装置15で運転者21を撮影した画像等に基づいて、運転者21が車両10の進行方向である前方を見ているか否かを判断する。
【0049】
ステップS12でYESの場合、即ち、運転者21が前方を見ている場合、運転者21が脇見をしておらず、運転者21の覚醒度は極めて低いレベルでは無いため、演算制御装置14は、ステップS13に移行する。
【0050】
ステップS12でNOの場合、即ち、運転者21が前方を見ていない場合、運転者21は脇見をしており、その覚醒度は極めて低い睡眠状態に近いレベルであると予測されることから、演算制御装置14は、ステップS32に移行する。
【0051】
ステップS13では、演算制御装置14は、覚醒度検出装置15で運転者21を撮影した画像等に基づいて、所定時間内に運転者21の上体に動きがあるか否かを判断する。
【0052】
ステップS13でYESの場合、即ち、所定時間内に運転者21の上体に動きがあった場合、運転者21が体を動かしているので、運転者21の覚醒度は一定レベルで確保されていると判断され、演算制御装置14は、ステップS14に移行する。
【0053】
ステップS13でNOの場合、即ち、所定時間内に運転者21の上体に動きがない場合、運転者21の体の動きが止まっており、運転者21の覚醒度は低いレベルであると予測されることから、演算制御装置14は、ステップS28に移行する。
【0054】
ステップS14では、演算制御装置14は、CID(Center Information Display)で動画コンテンツが表示されていないか否かを判断する。
【0055】
ステップS14でYESの場合、即ち、CIDで動画コンテンツが表示されていない場合、運転者21の注意は動画コンテンツには向いていないので、運転者21の覚醒度は一定レベルで確保されていると判断され、演算制御装置14は、ステップS20に移行する。
【0056】
ステップS14でNOの場合、即ち、CIDで動画コンテンツが表示されている場合、運転者21の注意が動画コンテンツには向いている恐れがあり、運転者21の覚醒度は高くないレベルであると予測されることから、演算制御装置14は、ステップS24に移行する。
【0057】
ステップS15では、演算制御装置14は、運転者21の運転への介入があるか否かを判断する。即ち、演算制御装置14は、一定時間内において、運転者21がステアリングハンドル191、アクセルペダル192またはブレーキペダル193を操作したか否かを判断する。
【0058】
ステップS15でYESの場合、即ち、一定時間内において、運転者21がステアリングハンドル191、アクセルペダル192またはブレーキペダル193を操作したら、演算制御装置14はステップS16に移行する。
【0059】
ステップS15でNOの場合、即ち、一定時間内において、運転者21がステアリングハンドル191、アクセルペダル192またはブレーキペダル193を操作しなければ、演算制御装置14は、ステップS19に移行する。
【0060】
ステップS16では、手動運転を行う。即ち、運転者21が、ステアリングハンドル191、アクセルペダル192およびブレーキペダル193を操作することで、操舵装置201、加速装置202および減速装置203を動作させ、車両10を手動運転する。この際、出力制限装置11による出力制限は行わなくても良い。
【0061】
ステップS17では、完全自動運転から手動運転への運転交代を終了し、以降は運転者21が運転者操作装置19を操作することで、車両10を手動運転する。
【0062】
ステップS18では、運転者21による運転介入が無いことから、演算制御装置14は、緊急的事情等によりODDが満たされないと判断し、緊急停止動作を実行するべく、車両運転装置20を操作する。
【0063】
ステップS19では、演算制御装置14は、車両運転装置20を操作し、車両10を路肩に寄せるなどして、緊急的に車両10を停止させる。このようにすることで、車両10に衝突事故等が発生することを防止できる。
【0064】
ステップS20ないしステップS23では、運転者21の覚醒度に応じて、演算制御装置14は、次のように、車両運転装置20の運転量を出力制限する。
【0065】
ステップS20では、演算制御装置14は、運転者21の覚醒度を、覚醒度Aと判定する。覚醒度Aは、覚醒の度合いは十分でないものの、覚醒度は比較的高い。
【0066】
ステップS21では、演算制御装置14は、運転特性Aを実行する。即ち、演算制御装置14は運転特性Aとして予め設定された度合いで、出力制限装置11を用いて、運転者操作装置19に与えられた操作量に応じて、車両運転装置20の出力量を制限する。運転特性Aは、本実施形態では出力制限が最も小さく、運転者21が運転者操作装置19に与える操作量に対して、車両運転装置20の運転量は僅かに制限される。このようにすることで、自動運転レベルが低い手動運転への運転引き継ぎをスムーズに行うことができる。
【0067】
具体的には、ステップS21では、例えば、運転者21がステアリングハンドル191を回転させた場合、出力制限装置11は、通常の手動運転状態と比較して、操舵装置201の操舵角を小さくする。更に、ステップS21では、例えば、運転者21がアクセルペダル192を踏み込んだ場合、出力制限装置11は、通常の手動運転状態と比較して、加速装置202が車両10を加速させる度合いを小さくする。
【0068】
ステップS21においては、運転者操作装置19の操作量に応じた車両運転装置20の運転量を出力制限しているが、ブレーキペダル193および減速装置203は制限除外しても良い。即ち、ステップS21において、車両10の減速または停止を行うべく、運転者21がブレーキペダル193を踏み込んだ場合、演算制御装置14は、通常の手動運転状態と比較して、減速装置203が車両10を減速する度合いを同等またはそれ以上にする。このようにすることで、運転交代時における運転者21の反射的動作を利用して、車両10を効果的に減速または停止することができる。係る事項は、後述する、ステップS25、ステップS29およびステップS33に関しても同様である。
【0069】
更に、ステップS21においては、運転者21による操作が急操作であるか否かを判断し、急操作である場合のみに上記出力制限を行うようにしても良い。具体的には、演算制御装置14は、運転者21が運転者操作装置19に与える操作の単位時間当たりの操作量を算出する。例えば、演算制御装置14は、ステアリングハンドル191の単位時間当たりの回転角、アクセルペダル192の単位時間当たりの踏み込み量等を算出する。そして、当該単位時間当たりの操作量が一定以上であれば、演算制御装置14は、運転者21が運転者操作装置19に与えた操作が急操作であると判断し、出力制限装置11は車両運転装置20の運転量を出力制限する。一方、当該単位時間当たりの操作量が一定未満であれば、演算制御装置14は、運転者21が運転者操作装置19に与えた操作が急操作でないと判断し、出力制限装置11は車両運転装置20の運転量を出力制限しない。係る事項は、後述する、ステップS25、ステップS29およびステップS33に関しても同様である。
【0070】
例えば、
図3を参照して、ステップS21の出力制限操作を更に具体的に説明する。
図3は、上記した出力制限を行う状況の一例を示す模式図である。
【0071】
ここでは、自車である車両10は、完全自動運転で道路23の走行車線24を走行しており、対向車線25は他車26が走行している。また、道路23の道端には人27および建物28が存在している。そして、完全自動運転で走行する車両10の前方に障害物29が存在しており、車外環境認識装置22が障害物29を検知したことに伴い、車両10は完全自動運転から手動運転に遷移するものとする。
【0072】
このような場合、運転者21の覚醒が不十分な状態で、何ら対策を行わずに完全自動運転から手動運転に遷移すると、遷移したことに驚いた運転者21が、ステアリングハンドル191やアクセルペダル192を誤操作してしまい、走行車線24を大幅に逸脱してしまう可能性がある。更には、走行車線24を走行する車両10が、誤って対向車線25側に向かってしまう恐れもある。
【0073】
そこで、本実施形態では、係る状況に於いて出力制限を行っている。具体的には、運転者21の覚醒度に応じて、運転者21がステアリングハンドル191やアクセルペダル192に与える操作量に対して、操舵装置201および加速装置202の運転量を出力制限している。ここで、出力制限を行うとは、ステアリングハンドル191やアクセルペダル192に与えられる操作量に対する、操舵装置201および加速装置202の運転量の大きさを、出力制限が行われない通常の手動運転の際よりも小さくすることである。よって、運転者21がアクセルペダル192を誤って踏み込んでしまった場合でも、出力制限装置11が、加速装置202を出力制限することで、車両10に衝突事故等が発生することを防止できる。更に、運転者21がステアリングハンドル191を誤って大きく回転させてしまった場合でも、出力制限装置11が、操舵装置201を出力制限することで、車両10に衝突事故等が発生することを防止できる。
【0074】
更に、ステップS21では、車外環境認識装置22からの入力情報に基づいて、事故を回避するように、出力制限装置11は出力制限を行うことができる。例えば、運転者21が、ステアリングハンドル191またはアクセルペダル192を誤操作することで、車両10が、人27、障害物29、建物28または対向車線25に進行しようとした場合、演算制御装置14の指示に基づいて、出力制限装置11が、人27等に向いた操舵装置201および加速装置202の出力を制限することで、車両10が人27等に衝突することを防止できる。
【0075】
更にまた、ステップS21等において、車両運転装置20を構成する各構成機器の出力制限の度合いを異ならせることができる。例えば、車両10が夜の繁華街を走行している場合、車両10が歩行者等に衝突しないように、出力制限装置11は、操舵装置201の出力がゼロとなるように出力制限を行う一方、加速装置202の出力制限を比較的緩くする。このようにすることで、運転者21の覚醒が不足している場合に於ける車両10の進行方向を固定し、特定の条件に於ける運転交代時の安全性を向上することができる。
【0076】
ステップS22では、出力制限解除を行う。即ち、出力制限装置11は動作せず、運転者21が運転者操作装置19を操作すると、通常の手動運転時と同様に、車両運転装置20が車両10を運転する。
【0077】
具体的には、運転者21がステップS21にて運転者操作装置19、即ち、ステアリングハンドル191、アクセルペダル192またはブレーキペダル193を操作した時点で、運転者21は覚醒したものと推定できる。ステップS22以降で出力制限を行わないことで、回避動作において運転者21は車両10を正確に運転することができる。例えば、
図3を参照して、回避動作を出力制限しないことで、運転者21の手動運転により車両10が人27や建物28に衝突することを防止でき、更には、車両10が対向車線25側にはみ出てしまうことを防止できる。
【0078】
ステップS23では、完全自動運転から手動運転への運転交代を終了し、以降は運転者21が運転者操作装置19を操作することで、車両10を手動運転する。
【0079】
ステップS24ないしステップS27における動作は、前述したステップS20ないしステップS23における動作と略同一であり、運転者21の覚醒度に基づく出力制限の度合いが異なる。
【0080】
ステップS24では、演算制御装置14は、運転者21の覚醒度を、覚醒度Bと判定する。覚醒度Bは、車室内で動画コンテンツが表示されていることから、前述した覚醒度Aよりも覚醒度が低いと推定される。
【0081】
ステップS25では、演算制御装置14は、運転特性Bを実行する。即ち、演算制御装置14は運転特性Bとして予め設定された度合いで、出力制限装置11を用いて、運転者操作装置19に与えられた操作量に応じて、車両運転装置20の出力量を制限する。運転特性Bは、前述した運転特性Aよりも出力制限が大きく、運転者21が運転者操作装置19に与える操作量に対して、車両運転装置20の運転量は更に制限される。
【0082】
具体的には、ステップS25では、例えば、運転者21がステアリングハンドル191を回転させた場合、出力制限装置11は、演算制御装置14の指示に基づいて、前述した運転特性Aよりも、操舵装置201の操舵角を小さくする。更に、ステップS25では、例えば、運転者21がアクセルペダル192を踏み込んだ場合、出力制限装置11は、前述した運転特性Aよりも、加速装置202が車両10を加速させる度合いを小さくする。
【0083】
ステップS26では、出力制限解除を行う。ステップS26以降で出力制限を行わないことで、覚醒した後の回避動作において、運転者21は車両10を正確に運転することができる。
【0084】
ステップS27では、完全自動運転から手動運転への運転交代を終了し、以降は運転者21が運転者操作装置19を操作することで、車両10を手動運転する。
【0085】
ステップS28ないしステップS31における動作は、前述したステップS24ないしステップS27における動作と略同一であり、運転者21の覚醒度に基づく出力制限の度合いが異なる。
【0086】
ステップS28では、演算制御装置14は、運転者21の覚醒度を、覚醒度Cと判定する。覚醒度Cは、ステップS13に於いて所定時間内に状態の動きが無いと判断されたことから、前述した覚醒度Bによりも覚醒度が低いと推定される。
【0087】
ステップS29では、演算制御装置14は、運転特性Cを実行する。即ち、演算制御装置14は、運転特性Cとして予め設定された度合いで、出力制限装置11を用いて、運転者操作装置19に与えられた操作量に応じて、車両運転装置20の出力量を制限する。運転特性Cは、前述した運転特性Bよりも出力制限が大きく、運転者21が運転者操作装置19に与える操作量に対して、車両運転装置20の運転量は大きく制限される。
【0088】
具体的には、ステップS29では、例えば、運転者21がステアリングハンドル191を回転させた場合、前述した運転特性Bよりも操舵装置201の操舵角を小さくする。更に、ステップS29では、例えば、運転者21がアクセルペダル192を踏み込んだ場合、前述した運転特性Bよりも加速装置202が車両10を加速させる度合いを小さくする。
【0089】
ステップS30では、出力制限解除を行う。即ち、運転者21がステップS29にて運転者操作装置19、即ち、ステアリングハンドル191、アクセルペダル192またはブレーキペダル193を操作することで、運転者21は覚醒したものと推定できる。ステップS30以降で出力制限を行わないことで、覚醒した後の回避動作において運転者21は車両10を正確に運転することができる。
【0090】
ステップS31では、完全自動運転から手動運転への運転交代を終了し、以降は運転者21が運転者操作装置19を操作することで、車両10を手動運転する。
【0091】
ステップS32ないしステップS35における動作は、前述したステップS28ないしステップS31における動作と略同一であり、運転者21の覚醒度に基づく出力制限の度合いが異なる。
【0092】
ステップS32では、演算制御装置14は、運転者21の覚醒度を、覚醒度Dと判定する。覚醒度Dは、ステップS12に於いて運転者21が前方を見ていないと判断されたことから、前述した覚醒度Cよりも更に覚醒度が低いと推定される。
【0093】
ステップS33では、演算制御装置14は、運転特性Dを実行する。即ち、演算制御装置14は運転特性Dとして予め設定された度合いで、出力制限装置11を用いて、運転者操作装置19に与えられた操作量に応じて、車両運転装置20の出力量を制限する。運転特性Dは、前述した運転特性Cよりも出力制限が大きく、運転者21が運転者操作装置19に与える操作量に対して、車両運転装置20の運転量は極めて制限される。
【0094】
具体的には、ステップS33では、例えば、出力制限装置11は、運転者21がステアリングハンドル191を回転させた場合、前述した運転特性Cよりも操舵装置201の操舵角を極めて小さくする。更に、ステップS33では、出力制限装置11は、例えば、運転者21がアクセルペダル192を踏み込んだ場合、前述した運転特性Bよりも加速装置202が車両10を加速させる度合いを極めて小さくする。
【0095】
ステップS34では、出力制限解除を行う。ステップS34以降で出力制限を行わないことで、覚醒した後の回避動作において運転者21は車両10を正確に運転することができる。
【0096】
ステップS35では、完全自動運転から手動運転への運転交代を終了し、以降は運転者21が運転者操作装置19を操作することで、車両10を手動運転する。
【0097】
以上が、運転交代制御装置13の機能に関する説明である。
【0098】
前述した本実施形態により、以下のような主要な効果を奏することができる。
【0099】
本発明によれば、高度自動運転から低度自動運転に遷移する際に、運転者21の覚醒度が不足していれば、例えば加速装置202や操舵装置201である車両運転装置20の出力を制限することで、運転交代時に於ける車両10の急激な挙動変化を抑制できる。即ち、低度自動運転への運転交代時において、運転者21の焦りに起因した車両運転装置20の誤動作を最小限にすることができる。
【0100】
更に本発明によれば、車外環境に応じて車両運転装置20の出力を制限することで、車両10の前方に障害物等が存在する場合、障害物29が存在する方向への車両10の進行を制限することができる。
【0101】
更に本発明によれば、操舵装置201または加速装置202に対する出力を制限することで、運転交代時に於ける車両10の急激な操舵および加速を制限できる。
【0102】
更に本発明によれば、車両運転装置20の出力を一旦制限すれば、制限された操作を行った運転者21は覚醒するものと予測されることから、その後の出力制限は行わないことで、運転者21による手動運転で車両10の走行時安全性を確保できる。
【0103】
更に本発明によれば、運転者21の覚醒度の度合いに応じて、車両運転装置20の出力制限を異ならせることで、更に効果的に、運転交代時に於ける車両10の急激な挙動変化を抑制できる。
【0104】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、前述した各形態は相互に組み合わせることが可能である。
【0105】
例えば、ステップS22等において、車両運転装置20を構成する各構成機器の出力制限解除の度合いを異ならせることもできる。例えば、ステップS22において、出力制限装置11は、操舵装置201の出力制限は解除または緩和する一方、加速装置202の出力制限を続行するようにしても良い。このようにすることで、運転者21による誤操作に基づく車両10の加速を抑止する一方、運転者21がステアリングハンドル191を操作することで車両10の危険回避動作を実行することができる。
【0106】
以下に、前述した本実施形態から把握できる技術的思想を、その効果と共に記載する。
【0107】
運転交代制御装置において、前記出力制限装置は、前記車両運転装置を構成する操舵装置、加速装置または減速装置の出力制限の度合いを異ならせることを特徴とする運転交代制御装置であり、このようにすることで、特定の条件に於ける運転交代時の安全性及び操縦安定性を向上することができる。
【0108】
運転交代制御装置において、前記出力制限装置は、前記車両運転装置を構成する操舵装置、加速装置または減速装置の出力制限を解除する度合いを異ならせることを特徴とする運転交代制御装置。このようにすることで、運転交代時に於ける車両の回避動作の安全性及び操縦安定性を向上することができる。
上記した本実施形態から把握できる発明を、その効果と共に下記する。
本発明の運転交代制御装置は、レベルに応じた自動運転により走行可能な車両に備えられ、前記レベルが高い高度自動運転から、前記レベルが低い低度自動運転に遷移する際の、運転交代動作を制御する運転交代制御装置であり、運転者操作装置と、車両運転装置と、覚醒度検出装置と、演算制御装置と、出力制限装置と、を具備し、前記運転者操作装置は、前記車両を運転する運転者が、前記車両の操舵および車速調整を行うべく操作するように構成され、前記車両運転装置は、前記運転者が前記運転者操作装置に与える操作の操作量に応じて、前記車両の操舵および車速調整を行い、前記覚醒度検出装置は、前記高度自動運転から前記低度自動運転に遷移する際の、前記運転者の覚醒状態を検出し、前記演算制御装置は、前記高度自動運転から前記低度自動運転に遷移する際に、前記覚醒度検出装置で検出した前記運転者の覚醒度が一定以下であれば、前記出力制限装置を駆動することで出力制限動作を実行し、前記出力制限装置は、前記出力制限動作における前記演算制御装置からの指示に基づいて、前記運転者が前記運転者操作装置に与える前記操作量に対して、前記車両運転装置の出力を制限することを特徴とする。本発明の運転交代制御装置によれば、高度自動運転から低度自動運転に遷移する際に、運転者の覚醒度が不足していれば、例えば加速装置や操舵装置である車両運転装置の出力を制限することで、運転交代時に於ける車両の急激な挙動変化を抑制できる。
本発明の運転交代制御装置は、車外環境認識装置を具備し、前記車外環境認識装置は、前記車両が進行する方向における車外環境を認識し、前記出力制限装置は、前記車外環境認識装置が認識した前記車外環境に基づいて、前記車両運転装置の出力を制限することを特徴とする。本発明の運転交代制御装置によれば、車外環境に応じて車両運転装置の出力を制限することで、車両の前方に障害物等が存在する場合、当該障害物が存在する方向への車両の進行を制限することができる。
本発明の運転交代制御装置では、前記車両運転装置は、操舵装置と、加速装置と、減速装置と、を有し、前記出力制限装置は、前記操舵装置および前記加速装置の出力を制限し、前記減速装置の出力を制限しないことを特徴とする。本発明の運転交代制御装置によれば、操舵装置または加速装置に対する出力を制限することで、運転交代時に於ける車両の急激な操舵および加速を制限できる。
本発明の運転交代制御装置では、前記出力制限装置は、前記高度自動運転から前記低度自動運転に遷移する際に、前記演算制御装置からの指示に基づいて前記車両運転装置の出力を一旦制限した後は、当該制限を解除することを特徴とする。本発明の運転交代制御装置によれば、車両運転装置の出力を一旦制限すれば、その際に運転者は覚醒するものと予測されることから、その後の出力制限は行わないことで、運転者による手動運転で車両の走行時安全性を確保できる。
本発明の運転交代制御装置では、前記出力制限装置は、前記覚醒度検出装置が検出した前記運転者の覚醒度に応じて、異なる度合いで前記車両運転装置の出力を制限することを特徴とする。本発明の運転交代制御装置によれば、運転者の覚醒度の度合いに応じて、車両運転装置の出力制限を異ならせることで、更に効果的に、運転交代時に於ける車両の急激な挙動変化を抑制できる。
【符号の説明】
【0109】
10 車両
11 出力制限装置
12 入力装置
13 運転交代制御装置
14 演算制御装置
15 覚醒度検出装置
16 車両駆動装置
17 表示装置
18 記憶装置
19 運転者操作装置
191 ステアリングハンドル
192 アクセルペダル
193 ブレーキペダル
20 車両運転装置
201 操舵装置
202 加速装置
203 減速装置
21 運転者
22 車外環境認識装置
23 道路
24 走行車線
25 対向車線
26 他車
27 人
28 建物
29 障害物