(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】集光対物光学系および光音響装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20241126BHJP
G02B 13/16 20060101ALI20241126BHJP
G01N 29/24 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/16
G01N29/24
(21)【出願番号】P 2020196356
(22)【出願日】2020-11-26
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】布施 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】福井 俊矢
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-519281(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111948297(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
G01N 29/00 - 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負の屈折力を有する第一レンズ群と、
正の屈折力を有するとともに、隣り合うレンズ群との間隔を変化させるように光軸に沿って移動可能な第二レンズ群と、
最も物体側に配置され、前記第二レンズ群側から入射する光波を物体に向けて反射し、前記光波を吸収した前記物体が発する光音響波を透過させる光音響素子と、
をこの順で有する集光対物光学系であって、
下記式(1)および式(2)を満足する少なくとも一枚のレンズを含み、かつ下記式(3)を満足する集光対物光学系。
νd>64・・・(1)
0.294≦f/fνMAX<2.140・・・(2)
1.000<ΔZ/Lf≦2.386・・・(3)
但し、
νd:d線のアッベ数
f:前記集光対物光学系の作動距離最長時の焦点距離
fνMAX:前記νdが最大であるレンズの焦点距離
ΔZ:前記光音響素子の前記物体側の表面から前記集光対物光学系における前記物体側での結像位置までの光軸上での距離の変化量
Lf:前記第二レンズ群の移動距離
【請求項2】
前記光波の光束が発散する方向を正、前記光束が集光する方向を負としたときに、下記式(4)を満足する、請求項1に記載の集光対物光学系。
-4.0°≦a12≦4.0°・・・(4)
但し、
a12:前記第一レンズ群と前記第二レンズ群との間における前記光波の前記光束の発散角度
【請求項3】
前記物体における前記光音響素子からの前記光波が通る部分であって、下記式(5)を満足する前記部分に対応して構成されている、請求項1または2に記載の集光対物光学系。
nWD<1.53・・・(5)
但し、
nWD:前記物体における前記部分のd線の屈折率
【請求項4】
前記光音響素子における前記光波が通る部分は、式(6)を満足する、請求項1~3のいずれか一項に記載の集光対物光学系。
1.729≦np≦2.051・・・(6)
但し、
np:前記光音響素子における前記部分のd線の屈折率
【請求項5】
前記光音響素子は、前記物体に対向する凹面部を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の集光対物光学系。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の集光対物光学系を有し、前記集光対物光学系から出射した光波を吸収した前記物体が発する光音響波を検出する、光音響装置。
【請求項7】
前記集光対物光学系に異なる波長を有する二種以上の光波を出力する光源をさらに有する、請求項6に記載の光音響装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集光対物光学系および光音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内部を画像化する技術分野では、光音響を利用した生体内部の画像化技術の検討が進められている。光音響を利用する画像化技術では、レーザーで生体内の組織を照射し、超音波を発生させる。
【0003】
一方で、光音響を利用する画像化技術に用いられる光学系には、従来、様々な検討がなされている。当該光学系には、大きな孔径および視野と長い作動距離とを有する構成、像側に高い開口数を有するとともに光学系全体でフォーカシングを実施する構成、ならびに、エキスパンダー部を利用してフォーカシングを実施する構成、などが知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-503514号公報
【文献】特開2005-258336号公報
【文献】特開2015-205346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フォーカシング技術の主な用途の一つには、レーザー加工の用途が挙げられる。この場合、光学素子から対象物体までの環境は、通常、空気雰囲気である。それに対して、光音響を生体内部の観察に利用する場合では、光学素子から対象物体までの環境は、血液および脂肪などの生体組織となる。この場合、対象環境の屈折率nは、通常、1よりも大きくなる。なお、「対象物体」とは、上記の画像化技術における画像化の対象となる物体であり、光波で照射されることにより光音響波を生成する物体である。
【0006】
ここで、当該環境が空気雰囲気であるときの、上記光学系におけるフォーカスレンズによるフォーカシングの距離と光学系から対象物体までの距離との関係を1:1とする。光音響による生体内部の観測では、生体組織の屈折率が1よりも大きいことから、空気雰囲気の場合と同様に1:1の関係でフォーカシングを実施すると、集光効率が大幅に低下することがある。
【0007】
このように、従来技術は、光学系から対象物体に至る環境として空気雰囲気を想定している。そのため、従来技術は、生体内部の観察のように、空気よりも大きな屈折率を有する対象物体の観察では、フォーカス時に集光性能が低下する、という問題を有している。
【0008】
本発明の一態様は、生体内部の観察にも利用可能な光音響用の光学系を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る集光対物光学系は、負の屈折力を有する第一レンズ群と、正の屈折力を有するとともに、隣り合うレンズ群との間隔を変化させるように光軸に沿って移動可能な第二レンズ群と、最も物体側に配置され、前記第二レンズ群側から入射する光波を物体に向けて反射し、前記光波を吸収した前記物体が発する光音響波を透過させる光音響素子と、をこの順で有する集光対物光学系であって、下記式(1)および式(2)を満足する少なくとも一枚のレンズを含み、かつ下記式(3)を満足する。
νd>64・・・(1)
0.294≦f/fνMAX<2.140・・・(2)
1.000<ΔZ/Lf≦2.386・・・(3)
但し、
νd:d線のアッベ数
f:前記集光対物光学系の物体距離最長時の焦点距離
fνMAX:前記νdが最大であるレンズの焦点距離
ΔZ:前記光音響素子の前記物体側の表面から前記集光対物光学系における前記物体側での結像位置までの光軸上での距離の変化量
Lf:前記第二レンズ群の移動距離
【0010】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光音響装置は、上記の集光対物光学系を有し、前記集光対物光学系から出射した光波を吸収した前記物体が発する光音響波を検出する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、生体内部の観察にも利用可能な光音響用の光学系を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光音響装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施例1における集光対物光学系の物体距離に応じた光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の実施例1における作動距離1での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図4】本発明の実施例1における作動距離2での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図5】本発明の実施例1における作動距離3での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図6】本発明の実施例2における集光対物光学系の物体距離に応じた光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の実施例2における作動距離1での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図8】本発明の実施例2における作動距離2での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図9】本発明の実施例2における作動距離3での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図10】本発明の実施例3における集光対物光学系の物体距離に応じた光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図11】本発明の実施例3における作動距離1での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図12】本発明の実施例3における作動距離2での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図13】本発明の実施例3における作動距離3での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図14】本発明の実施例4における集光対物光学系の物体距離に応じた光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図15】本発明の実施例4における作動距離1での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図16】本発明の実施例4における作動距離2での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図17】本発明の実施例4における作動距離3での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図18】本発明の実施例5における集光対物光学系の物体距離に応じた光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図19】本発明の実施例5における作動距離1での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図20】本発明の実施例5における作動距離2での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図21】本発明の実施例5における作動距離3での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図22】本発明の実施例6における集光対物光学系の物体距離に応じた光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図23】本発明の実施例6における作動距離1での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図24】本発明の実施例6における作動距離2での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図25】本発明の実施例6における作動距離3での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図26】本発明の実施例7における集光対物光学系の物体距離に応じた光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図27】本発明の実施例7における作動距離1での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図28】本発明の実施例7における作動距離2での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図29】本発明の実施例7における作動距離3での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図30】本発明の実施例8における集光対物光学系の物体距離に応じた光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図31】本発明の実施例8における作動距離1での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図32】本発明の実施例8における作動距離2での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図33】本発明の実施例8における作動距離3での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図34】本発明の実施例9における集光対物光学系の物体距離に応じた光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図35】本発明の実施例9における作動距離1での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図36】本発明の実施例9における作動距離2での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図37】本発明の実施例9における作動距離3での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図38】本発明の実施例10における集光対物光学系の物体距離に応じた光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図39】本発明の実施例10における作動距離1での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図40】本発明の実施例10における作動距離2での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図41】本発明の実施例10における作動距離3での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図42】本発明の実施例11における集光対物光学系の物体距離に応じた光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図43】本発明の実施例11における作動距離1での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図44】本発明の実施例11における作動距離2での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図45】本発明の実施例11における作動距離3での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図46】本発明の実施例12における集光対物光学系の物体距離に応じた光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図47】本発明の実施例12における作動距離1での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図48】本発明の実施例12における作動距離2での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図49】本発明の実施例12における作動距離3での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図50】本発明の実施例13における集光対物光学系の物体距離に応じた光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図51】本発明の実施例13における作動距離1での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図52】本発明の実施例13における作動距離2での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図53】本発明の実施例13における作動距離3での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図54】本発明の実施例14における集光対物光学系の物体距離に応じた光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図55】本発明の実施例14における作動距離1での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図56】本発明の実施例14における作動距離2での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【
図57】本発明の実施例14における作動距離3での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.集光対物光学系
1-1.光学的構成
本発明の一実施形態に係る集光対物光学系は、光源が出力する光波を集光し、物体に照射するとともに、当該照射によって生じる光音響波を検出するための器具である。当該集光対物光学系は、光源側から順に、負の屈折力を有する第一レンズ群と、正の屈折力を有するとともに、隣り合うレンズ群との間隔を変化させるように光軸に沿って移動可能な第二レンズ群と、最も物体側に配置され、第二レンズ群側から入射する光波を物体に向けて反射し、光波を吸収した物体が発する光音響波を透過させる光音響素子と、をこの順で有する。上記集光対物光学系は、空気以外のより大きな屈折率を有する媒質に対しても十分な集光性能を発現することができ、このような媒質で覆われている対象物体の観察にも利用可能である。なお、「媒質」とは、光音響素子から対象物体に至る光波が通る部分である。
【0014】
なお、本発明の実施形態において、「屈折率」は、特に言及されない限り、絶対屈折率を意味する。
【0015】
本実施形態において、「レンズ群」は、一つ以上のレンズ成分の集合体を意味する。レンズ群は、同一レンズ群内のレンズ成分同士の相対的な位置関係を維持したまま移動する。本実施形態では、第一レンズ群は固定されており、第二レンズ群が光軸に沿って移動可能である。本発明の実施形態では、第二レンズ群が光軸に沿って移動することにより、フォーカシングを行う。
【0016】
レンズ成分は、限定されず、レンズであってもよく、接合レンズであってもよい。接合レンズは、空気間隔を介することなく複数のレンズが一体化したレンズ成分である。当該レンズは、単レンズであってもよく、複合レンズであってもよい。単レンズは、1つの硝材からなるレンズである。複合レンズは、空気間隔を介することなく1枚の単レンズと樹脂とが一体化したレンズである。
【0017】
なお、接合レンズは、一つのレンズ成分として数えられ、二枚のレンズとして数えられる。レンズは、単レンズおよび複合レンズのいずれも、一つのレンズ成分として数えられ、また一枚のレンズとして数えられる。
【0018】
本実施形態における集光対物光学系は、空気よりも高い屈折率を有する特定の媒質に対応して構成されていてもよい。たとえば、対象物体を覆う媒質に対しても十分に高い集光性能を発現するように構成される。たとえば、集光対物光学系は、第一レンズ群、第二レンズ群および光音響素子の光学性能、および、各レンズ群におけるレンズの構成、を、後述する光学的な条件を満たすように適宜に調整することにより構成され得る。
【0019】
また、集光対物光学系は、本実施形態の効果が得られる範囲において、上記のレンズ群以外のレンズ群をさらに含んでいてもよいし、他の光学素子をさらに含んでもよい。他の光学素子の例には、絞り、防振用のレンズ、フィルター、ダミーガラス、カバーガラス、バンドパスフィルターおよびNDフィルター(減光フィルター)が含まれる。「絞り」は、集光対物光学系における光束の径を規定する絞り、すなわち当該集光対物光学系のFナンバーを規定する絞りを言う。絞りは、第一レンズ群と光源との間に配置されることが、すなわち集光対物光学系の光軸に沿う方向において第一レンズ群における光音響素子とは反対側に配置されることが、コリメートされた光波を光学的損失なく十分に集光対物光学系に入射させる観点から好ましい。
【0020】
(1)第一レンズ群
第一レンズ群は、集光対物光学系において最も光源側に配置されるレンズ群であり、負の屈折力を有する。第一レンズ群は、一以上のレンズ成分で構成されていればよく、全体として負の屈折力を有していればよい。第一レンズ群が正の屈折力を有するレンズ成分を含むことは、第二レンズ群に入射する光線角を小さくし、集光位置での収差を抑える観点から好ましい。また、第一レンズ群が少なくとも正と負を有する二枚以上のレンズ成分を含むことは、集光位置での収差を抑える観点から好ましい。さらに、第一レンズ群を構成するレンズ成分が非球面レンズを含むことは、球面収差を抑える観点から好ましい。
【0021】
(2)第二レンズ群
第二レンズ群は、第一レンズ群の光音響素子側に配置されるレンズ群であり、正の屈折力を有する。第二レンズ群は、少なくとも一枚以上のレンズ成分で構成されていればよく、全体として正の屈折力を有していればよい。第二レンズ群が負の屈折力を有するレンズ成分を含むことは、第二レンズ群に入射する光線径を大きくし、物体に向かう光線のNA(開口数)を大きくする観点から好ましい。また、第二レンズ群を構成するレンズ成分が非球面レンズを含むことは、球面収差を抑える観点から好ましい。
【0022】
(3)光音響素子
光音響素子は、集光対物光学系において、最も物体側に配置され、第二レンズ群側から入射する光波を物体に向けて反射し、光波を吸収した物体が発する光音響波を透過させる。光音響素子は、上記の反射と透過とを実現可能であればよく、例えば、金属層と、金属層の一方の主面に接合された第一部材と、金属層の他方の主面に接合された第二部材とによって構成することができる。
【0023】
光音響素子において、金属層は、主として光波を反射し、そして主として光音響波を透過する。このような金属層は、金属層を光波が透過する際に非軸対称な収差が発生することによる分解能の低下を抑制することが可能である。また、当該金属層は、金属層で光音響波を反射する際に光音響波のモード変換が発生することによる光音響波のSN比の低下を抑制することが可能である。
【0024】
当該金属層の構成は限定されない。たとえば、金属層は、主層のみにより構成されていてもよいし、主層の他に、主層の一方または両方の主面に形成された下地層をさらに含んでいてもよい。下地層は、例えば最厚部の厚みが20nm以下の金属層であってよい。下地層を有することは、第一部材および第二部材と金属層との接合強度を高める観点から好ましい。
【0025】
金属層の金属材料の例には、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Ag(銀)、Cu(銅)、Au(金)、Pt(白金)、および、これらの金属を含有する合金、が含まれる。これらの金属材料は、第一部材および第二部材の音響インピーダンスと金属層の音響インピーダンスとの差を小さく抑える観点から好ましい。
【0026】
第一部材および第二部材は、硝材により構成することができる。硝材は、光音響素子としての好ましい特性を発現する範囲において適宜に決めることができる。たとえば、当該硝材の密度が2.6×103kg/m3以上であることは、第一部材および第二部材の音響インピーダンスと金属層の音響インピーダンスとの差を小さくし、光音響波に対する反射率を低く(透過率を高く)する観点から好ましい。また、上記硝材のポアソン比が2.1以上であることも、上記の観点から好ましい。硝材が上記の特性を有することは、光音響装置において十分な強度の光音響波を検出する観点から好ましい。
【0027】
また、第一部材および第二部材の一方または両方が光学ガラスまたはセラミックスにより構成されていることは、上記の好ましい密度およびポアソン比の両方を実現する観点から好ましい。セラミックスの例には、サファイアおよびアルミナが含まれる。なお、第一部材および第二部材の一方のみを光学ガラスまたはセラミックスにより構成する場合には、第一部材および第二部材のうち、光波が入射する方の部材を光学ガラスまたはセラミックスにより構成することが好ましい。
【0028】
光音響素子が物体側に対向する凹面部を有することは、光波の照射によって物体において発生した光音響波を集音しやすくする観点から好ましい。光音響素子が物体側に対向する凸面部を有することは、光音響素子に到達した光音響波が拡散する傾向にある。
【0029】
また、光音響素子が物体側に対向する凹面部を有することは、金属層にて反射する光波を物体に向けて集光する観点から好ましい。金属層において当該光波を集光することにより、物体に照射する光波のビームウェスト径を小さくすることができ、その結果、光音響装置の分解能をより向上させることができる。また、金属層において当該光波を集光することにより、光音響素子から物体までの距離をより小さくすることができ、当該距離の短縮による集光対物光学系および光音響装置の小型化を実現することができる。
【0030】
上記凹面部は、光音響素子の物体側に対向する面に形成することが可能である。たとえば、凹面部は、金属層における物体に対向する主面で形成されていてもよいし、第一部材および第二部材うちの金属層と物体との間に配置される部材において、物体と対向する面で形成されていてもよい。当該凹面部は、光波を集光する観点から、放物面状の凹面部であることが好ましい。
【0031】
1-2.フォーカシング時の動作
本実施形態において、第二レンズ群は、フォーカシングを行う。第一レンズが光源に対して固定されたまま第二レンズ群が光軸に沿って移動してフォーカシングを行うことは、高速なフォーカシングを実現する観点から好ましい。第二レンズ群が第一レンズ群側(光源側)に移動してフォーカシングを行うことは、深度の浅い位置の対象物体にピントを合わせる観点から好ましい。第二レンズ群が光音響素子側(物体側)に移動してフォーカシングを行うことは、深度の深い位置の対象物体にピントを合わせる観点から好ましい。
【0032】
1-3.光学系の条件を表す式
本発明の実施形態に係る集光対物光学系は、前述した構成を採用すると共に、次に説明する式を少なくとも1つ以上満足することが好ましい。
【0033】
本発明の実施形態における集光対物光学系は、下記式(1)および式(2)を満足する少なくとも一枚のレンズを含むことが好ましい。
νd>64・・・(1)
0.294≦f/fνMAX<2.140・・・(2)
但し、
νd:d線のアッベ数
f:集光対物光学系の物体距離最長時の焦点距離
fνMAX:νdが最大であるレンズの焦点距離
【0034】
式(1)は、集光対物光学系における色収差の補正について材料を定義する式である。式(1)を満足するレンズを集光対物光学系が有することは、色収差の発生を抑制する観点から好ましい。当該レンズのアッベ数が式(1)の範囲を下回る場合では、色収差の発生を十分に抑制することが困難になることがある。当該レンズのアッベ数は、色収差の発生を十分に抑制する観点から、式(1)で表される範囲から適宜に決めることができる。
【0035】
式(2)は、集光対物光学系における色収差の補正について焦点距離を定義する式である。式(2)を満足するレンズを集光対物光学系が有することは、色収差の発生を抑制する観点から好ましい。νdが最大であるレンズの焦点距離に対する集光対物光学系の焦点距離の比f/fνMAXが式(2)の範囲よりも小さいか、あるいは当該範囲よりも大きいと、光波が二種の波長の光波、例えば波長1064nmの赤外線と波長700nmの赤外線の二種の光波、を含む場合に、これらの光波の光軸方向における焦点位置のずれが大きくなり、光音響装置における解像度が不十分となることがある。f/fνMAXは、二種の波長の光波を含む場合における焦点位置のずれの発生を抑制する観点から、0.935以上であることが好ましく、あるいは1.905以下であることが好ましい。
【0036】
本発明の実施形態における集光対物光学系は、下記式(3)を満足することが好ましい。
1.000<ΔZ/Lf≦2.386・・・(3)
但し、
ΔZ:物体距離の変化量
Lf:第二レンズ群の移動距離
【0037】
式(3)は、物体距離の変化量とフォーカスの移動量とを定義している。「物体距離」とは、光音響素子の物体側の表面から集光対物光学系における物体側での結像位置までの光軸上での距離である。集光対物光学系が式(3)を満足することは、集光対物光学系の球面収差の発生を抑制し、集光対物光学系における集光性能を高める観点から好ましい。第二レンズ群の移動距離に対する物体距離の変化量の比ΔZ/Lfが式(3)の範囲よりも小さいと、フォーカシングにおける第二レンズ群の移動量が少なく、ピントが合わなくなり、その結果、球面収差が大きくなって集光性能が不十分となることがある。ΔZ/Lfが式(3)の範囲よりも大きいと、フォーカシングにおける第二レンズ群の移動量が多くなり、球面収差が大きくなり、その結果、集光性能が不十分となることがある。当該集光性能を高める観点から、ΔZ/Lfは、1.040以上であることがより好ましく、1.308以上であることがさらに好ましい。同様の観点から、ΔZ/Lfは、1.515以下であることがより好ましく、1.333以下であることがさらに好ましい。
【0038】
本発明の実施形態における集光対物光学系は、光波の光束が発散する方向を正、光束が集光する方向を負としたときに、下記式(4)を満足することが好ましい。
-4.0°≦a12≦4.0°・・・(4)
但し、
a12:第一レンズ群と第二レンズ群との間における光波の光束の発散角度
【0039】
式(4)は、第二レンズ群に入射する光束の発散角を定義している。集光対物光学系が式(4)を満足することは、物体距離が変化するように第二レンズ群を移動させた場合に、光波の光束を適切に収束させる観点から好ましい。当該光束を収束させる性能を「スポット性能」とも言う。上記発散角度a12が式(4)の範囲よりも小さくなると、特に物体距離を長くする方向に第二レンズ群を移動させた場合に、スポット性能が不十分となることがある。上記発散角度a12が式(4)の範囲よりも大きくなると、物体距離を変化させるように第二レンズ群を移動させた場合に、スポット性能が不十分となることがある。スポット性能を十分に発現させる観点から、上記発散角度a12は、-2.0以上であることがより好ましく、-0.2以上であることがさらに好ましい。同様の観点から、上記発散角度a12は、2.0以下であることがより好ましく、0.2以下であることがさらに好ましい。
【0040】
本発明の実施形態における集光対物光学系は、対象物体に至る媒質が下記式(5)を満足する媒質に対応して構成されていることが好ましい。
nWD<1.53・・・(5)
但し、
nWD:媒質のd線の屈折率
【0041】
式(5)は、集光対物光学系で光波の照射および光音響波の検出の対象となる物体の媒質の屈折率を規定している。式(5)は、より具体的には、空気から光学ガラスまでを規定している。なお、「媒質」とは、前述したように、(対象)物体における光音響素子からの光波が通る部分である。集光対物光学系が式(5)を満足する媒質に対応して構成されていることは、集光対物光学系の汎用性を高める観点で好ましく、光音響装置における画像化技術を、従来の主流であるレーザー加工から生体内部の観察に至る幅広い分野に適用することが可能となる。
【0042】
このような媒質に対応する集光対物光学系は、本実施形態における式で規定される範囲内に光学特性を適宜に調整することによって構成することが可能である。たとえば、前述した式(3)の値を大きくすることにより、式(5)の値の大きな媒質に対応する集光対物光学系を構成することが可能である。
【0043】
本発明の実施形態における集光対物光学系は、下記式(6)を満足することが好ましい。
1.729≦np≦2.051・・・(6)
但し、
np:光音響素子における光波が通る部分のd線の屈折率
【0044】
式(6)は、光音響素子における光波が通る部分、例えば前述した第一部材または第二部材の硝材の屈折率を規定している。集光対物光学系が式(6)を満足することは、光音響波の透過性を高める観点から好ましい。光音響素子の上記硝材で構成される部分の屈折率npが式(6)の範囲よりも小さいか、あるいは当該範囲よりも大きいと、光波の照射によって発生した光音響波の光音響素子の透過が不十分となり、光音響装置における光音響波の検出感度が不十分となることがある。光音響素子における光音響波の透過性を高める観点から、上記屈折率npは、式(6)で表される範囲から適宜に決めてよい。
【0045】
2.光音響装置
本発明の一実施形態に係る光音響装置は、上記の集光対物光学系を有し、当該集光対物光学系から出射した光波を吸収した前記物体が発する光音響波を検出する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光音響装置の構成を模式的に示すブロック図である。
図1に示されるように、光音響装置100は、集光対物光学系10、光源20および音響波検出器30を有する。
【0046】
集光対物光学系10は、光源側から順に、絞り1、第一レンズ群G1、第二レンズ群G2および光音響素子2を有する。
【0047】
絞り1は、光源20から出力される光波の照射断面を、対象物体である被写体220の撮影したい領域の大きさに応じて調整する。
【0048】
第一レンズ群G1は、絞り1よりも光音響素子2側に配置されている。第一レンズ群G1は、二枚のレンズL1、L2で構成されており、それぞれのレンズL1、L2は、光軸に沿う方向において固定されている。第一レンズ群G1は、全体で負の屈折力を有する。
【0049】
第二レンズ群G2は、第一レンズ群G1と光音響素子2との間に配置されている。第二レンズ群G2は、三枚のレンズL3、L4、L5で構成されており、それぞれのレンズL3、L4、L5は、光軸に沿う方向における相対的な位置を変えることなく、光軸に沿う方向に移動可能に構成されている。第二レンズ群G2は、全体で正の屈折力を有する。第二レンズ群G2は、光軸に沿って移動可能なレンズ群であり、フォーカシングを実施するフォーカス群である。
【0050】
光音響素子2は、第一部材2a、第二部材2bおよび金属層2cで構成されている。第一部材2aおよび第二部材2bは、正四角柱の硝材を頂面の対角線で高さ方向に沿って切断した形状を有している。第一部材2aの正方形の側面の一方は、光源20に対向しており、側面の他方は、被写体220に対向している。
【0051】
第一部材2aの残りの側面は、金属層2cを介して第二部材2bのそれと接合している。第二部材2bの正方形の側面の一方は、音響波検出器30に対向している。
【0052】
金属層2cは、例えば、銀の主層と、その両方の主面に形成されたチタンの層である下地層とを有する三層構造である。
【0053】
なお、光音響素子2は、被写体220に対向する面に凹面部2dを有している。凹面部2dは、第一部材2aにおける他方の側面が被写体220に向けて窪む凹面状に形成された部分である。
【0054】
光源20は、光波を生成するための構成であり、例えばパルスレーザである。当該パルスレーザの波長は、被写体220の分光吸収特性に応じて設定すればよい。また、光源20にて生成するパルスレーザのパルス幅は、数ピコ秒から数百ナノ秒までの範囲で適宜設定すればよい。一例として、波長1064nm、パルス幅10nsのパルスレーザが用いられ得る。
【0055】
光源20は、異なる波長を有する二種以上の光波を出力する光源であってもよい。この場合、光源20が出力する光波は、二種以上の被写体220のそれぞれの分光吸収特性に適応する光波とすることができる。なお、光源20は、発振するパルスレーザの波長が可変なパルスレーザを光源であってもよい。この場合、被写体220の各部の吸収特性の違いを、光音響波の検出により得られる画像に反映させることが可能となる。
【0056】
音響波検出器30は、光音響波を電気信号に変換するための構成である。音響波検出器30は、光音響素子2を介して被写体220に対向して配置されており、光源20および集光対物光学系10の光軸に対して直交する方向に沿う光音響波の軸を有している。音響波検出器30は、被写体220とその音響波特性に応じた機器から適宜に選ぶことが可能である。音響波検出器30には、例えば音響トランスデューサを用いることができる。
【0057】
次に、生体内の組織を被写体220とする場合を例に、本実施形態における光音響波の検出を説明する。光音響装置100は、光音響素子2の凹面部2dが生体の表面に当接するように配置される。
【0058】
光源20から出力された光波は、絞り1によって被写体220の撮像に適した光束径を有するように調整される。絞り1を通過した光波の光束径は、第一レンズ群G1を通過することにより拡大し、第二レンズ群G2を通過することで、第二レンズ群G2が有する正の屈折力と第二レンズ群の光軸上における位置とに応じて適宜に縮小する。レンズ群のこのようなパワー配置により、光波の色収差が補正され、波長が異なる二種の光波を光源20が出力する場合では、二波長以上の光波の色消しが適切に実施される。
【0059】
次いで、光波は、光音響素子2における第一部材2aに入射し、金属層2cの表面で反射し、被写体220に向けて出力される。光波は、その光束径が漸次縮小しながら生体の媒質210を通過し、被写体220において合焦する。
【0060】
この光波を吸収した被写体220は、光音響波を発生する。この光音響波は、媒質210を通り、凹面部2dから光音響素子2の第一部材2a、金属層2c、第二部材2bの順で透過し、音響波検出器30に入射する。音響波検出器30は、入射した光音響波を検出する。音響波検出器30の検出結果の信号に応じて画像が形成されることにより、被写体220が撮像される。
【0061】
光音響装置100は、光源20を有することから被写体220の撮像に適した光波を出力することができる。また、絞り1を有することから、第一レンズ群G1および第二レンズ群G2の通過前に、光波の照射断面を被写体220に応じて適切に調整することができる。さらに、第二レンズ群G2を有することから、被写体220までの焦点距離および媒質210に応じた適切な光束径の光波を光音響素子に出力することができる。
【0062】
光音響装置100は、金属層2cを有することから光波を被写体220に向けて反射することができる。また、光音響素子2が凹面部2dを有することから、光波が被写体220に向けて集光しやすく、光音響波が被写体220において十分に発生しやすい。
【0063】
光音響装置100は、凹面部2dは、被写体220で発生した光音響波の光音響素子2の表面での発散を抑制することから、光音響波の受信が促進される。また、光音響波は、前述の第一部材2a、金属層2cおよび第二部材2bを透過するので、被写体220で発生した光音響波の減衰が抑制され、音響波検出器30は、十分な強度の光音響波を検出することが可能となる。よって、その後の画像化においてより高い解像度の画像を形成することが可能となる。
【0064】
光音響装置100は、前述した特徴を有する第一レンズ群G1および第二レンズ群G2を含む集光対物光学系10を有する。このため、生体内部の観察にも利用可能な光音響用の光学系を実現することができ、また、生体内部の観察にも利用可能な光音響波を検出することができる。
【0065】
なお、本発明の実施形態における光音響装置は、本実施形態の効果が得られる範囲において、前述した以外の他の構成をさらに有していてもよい。たとえば、本発明の実施形態における光音響装置は、光源を制御する不図示のファンクションジェネレータをさらに備えていてもよい。また、当該光音響装置は、音響波検出器にて得られた電気信号を処理する不図示のFFT(Fast Fourier Transform)アナライザをさらに備えていてもよい。
【0066】
さらに、光音響装置は、光波の焦点を被写体上で走査するためのステージをさらに備えていてもよい。このステージは、被写体を収容するための水槽を載置することができ、この水槽ごと被写体を移動させることが可能である。この場合、光音響波は、水中の被写体に照射され、光音響波は、水中の被写体から発せられる。このような形態においても本発明の実施形態における光音響装置は、高い解像度の画像形成が可能なように、十分に高い解像度で光音響波を検出することが可能である。
【0067】
また、光音響装置は、被写体と光音響素子との間に介在する不図示の音響整合材をさらに備えていてもよい。また、光音響装置は、複数の集光対物光学系と、それらから利用する集光対物光学系を切り替える不図示の切替機構とをさらに備えていてもよい。この場合、二以上の集光対物光学系を併用すると、個々の集光対物光学系を経て得られる画像を重畳することも可能になる。
【0068】
また、上述したファンクションジェネレータ、FFTアナライザ、ステージ、および切替機構は、不図示のコンピュータに接続されていてもよい。この場合、このコンピュータは、上述したファンクションジェネレータ、ステージ、および切替機構を制御するため、および、FFTアナライザの出力から被写体内部の画像を生成するために利用され得る。
【0069】
本発明は、上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0070】
本発明の集光対物光学系の実施例を、図面を参照して説明する。各実施例における光学的な構成を示す図において、「STO」は絞りを、「L1」、「L2」、「L3」、「L4」および「L5」は、それぞれレンズを、「P」は光音響素子であるプリズムを、「G1」は第一レンズ群を、そして「G2」は第二レンズ群をそれぞれ表す。各実施例において、第二レンズ群G2が光軸に沿って移動するフォーカス群である。また、図中の「WD」は、物体距離の部分を表し、光音響による画像化における被写体である対象物体と集光対物光学系のプリズムとの間を実質的に満たす媒質の部分である。「WD」は、例えば生体の組織であり、あるいは空気層である。なお、当該部分におけるプリズムPとは反対側の端縁と光軸との交点は、実施例の光学系における物体側の結像位置(物点)であり、通常、対象物体の位置を表す。
【0071】
また、各実施例における収差を示す図では、図の紙面に対して左側のグラフが、瞳に対して垂直方向の球面収差Y(μm)を示しており、その右隣のグラフは、瞳に対して水平方向の球面収差X(μm)を示している。実線は、マスターレンズの基準波長1064nmの赤外線を表し、破線は、波長700nmの赤外線を表している。さらに、それらの下に位置するグラフは、軸上色収差を表している。縦軸は波長を表し、横軸はフォーカス位置を表している。実線は波長700nmからマスターレンズの基準波長1064nmまでの赤外線のフォーカス位置における特性を表す。ここで各実施例におけるマスターレンズとは、集光対物光学系である。
【0072】
さらに、各実施例の光学的な特性に関する数値データを表に示す。各実施例の表において、「R」は、球面レンズ(SPH)の曲率半径(mm)を表し、「D」は、光軸上におけるレンズの厚さまたはレンズ間の間隔(mm)を表す。また、「N」は、d線でのレンズの屈折率を表し、「ν」は、d線でのレンズのアッベ数を表す。なお、図面と同様に、「STO」は絞りを、「P」はプリズムを表す。
【0073】
また、当該表中の「(1)」は、第一レンズ群のレンズと第二レンズ群のレンズとのうちの互いに対向するレンズの、対向する表面間の距離である。また、当該表中の「(2)」は、第二レンズ群のレンズのうちのプリズムに対向するレンズとプリズムとの、対向する表面間の距離である。また、当該表中の「(3)」は、物体距離を表し、プリズムの最も物体側の表面から前述の物点までの光軸上の距離である。
【0074】
[実施例1]
図2は、本発明の実施例1の集光対物光学系の物体距離に応じた光学的な構成を模式的に示す図である。
図3は、本発明の実施例1における作動距離1での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
図4は、本発明の実施例1における作動距離2での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。
図5は、本発明の実施例1における作動距離3での球面収差のグラフおよび軸上色収差を示すグラフを示す図である。表1は、実施例1における光学的なデータを示し、表2は、実施例1における物体距離、ならびに、それに対応する集光対物光学系の焦点距離、F値(FNo)、レンズ群間距離およびレンズ、プリズム間の距離、を示す。
【0075】
「作動距離」とは、集光対物光学系の物体距離最長時における第二レンズ群の位置から、特定の物体距離(例えば下記表2中の(3))になる第二レンズ群の位置までの光軸上の距離である。また、
図2に示されるように、本実施例におけるプリズムPは、物体距離の部分WD側に対して平面で対向している。
【0076】
[表1]
面番号 R D N ν
1 STO 0.000 10.000
2 -11.612 1.000 2.003 19.317
3 -13.968 1.000
4 -16.744 2.401 1.487 70.441
5 -14.365 (1)
6 29.629 2.665 1.437 95.100
7 -67.602 (2)
8 P 0.000 15.000 1.911 35.250
9 0.000 (3) 1.333 55.794
【0077】
[表2]
作動距離1 作動距離2 作動距離3
焦点距離 46.957 48.352 49.083
FNo 5.217 5.372 5.454
(1) 22.599 14.749 10.818
(2) 24.737 32.587 36.518
(3) 30.000 20.000 15.000
【0078】
[実施例2]
図6は、実施例2の集光対物光学系の光学的な構成を模式的に示し、
図7~
図9は、実施例2における作動距離1~3での球面収差のグラフおよび軸上色収差のグラフを示している。表3は、実施例2における光学的なデータを示し、表4は、実施例2における物体距離、ならびに、それに対応する集光対物光学系の焦点距離、F値(FNo)、レンズ群間距離およびレンズ、プリズム間の距離、を示している。
【0079】
[表3]
面番号 R D N ν
1 STO 0.000 10.000
2 -19.799 2.000 1.923 20.880
3 -28.200 10.896
4 104.948 3.000 1.500 81.608
5 -120.776 (1)
6 31.612 3.000 1.550 75.496
7 -289.948 (2)
8 P 0.000 15.000 1.911 35.250
9 0.000 (3) 1.333 55.794
【0080】
[表4]
作動距離1 作動距離2 作動距離3
焦点距離 46.832 47.064 47.392
FNo 5.203 5.229 5.266
(1) 11.103 7.310 1.999
(2) 24.036 27.830 33.140
(3) 30.000 25.000 18.000
【0081】
[実施例3]
図10は、実施例3の集光対物光学系の光学的な構成を模式的に示し、
図11~
図13は、実施例3における作動距離1~3での球面収差のグラフおよび軸上色収差のグラフを示している。表5は、実施例3における光学的なデータを示し、表6は、実施例3における物体距離、ならびに、それに対応する集光対物光学系の焦点距離、F値(FNo)、レンズ群間距離およびレンズ、プリズム間の距離、を示している。
【0082】
[表5]
面番号 R D N ν
1 STO 0.000 10.000
2 -10.259 1.936 1.752 25.048
3 -22.638 1.997
4 -45.984 2.401 1.500 81.608
5 -13.161 (1)
6 41.145 2.665 1.900 37.372
7 827.970 (2)
8 P 0.000 15.000 1.911 35.250
9 0.000 (3) 1.333 55.794
【0083】
[表6]
作動距離1 作動距離2 作動距離3
焦点距離 42.730 43.445 43.812
FNo 4.748 4.827 4.772
(1) 20.666 13.019 9.197
(2) 22.628 30.275 34.097
(3) 30.000 20.000 15.000
【0084】
[実施例4]
図14は、実施例4の集光対物光学系の光学的な構成を模式的に示し、
図15~
図17、実施例4における作動距離1~3での球面収差のグラフおよび軸上色収差のグラフを示している。表7は、実施例4における光学的なデータを示し、表8は、実施例4における物体距離、ならびに、それに対応する集光対物光学系の焦点距離、F値(FNo)、レンズ群間距離およびレンズ、プリズム間の距離、を示している。
【0085】
[表7]
面番号 R D N ν
1 STO 0.000 10.000
2 -10.513 1.000 1.805 25.456
3 -24.106 0.150
4 -96.428 2.401 1.4875 70.441
5 -12.291 (1)
6 47.344 2.665 1.954 32.319
7 7726.979 (2)
8 P 0.000 15.000 1.911 35.250
9 0.000 (3) 1.333 55.794
【0086】
[表8]
作動距離1 作動距離2 作動距離3
焦点距離 48.081 48.668 48.967
FNo 5.342 5.408 5.441
(1) 23.448 15.841 12.040
(2) 23.889 31.496 35.296
(3) 30.000 20.000 15.000
【0087】
[実施例5]
図18は、実施例5の集光対物光学系の光学的な構成を模式的に示し、
図19~
図21は、実施例5における作動距離1~3での球面収差のグラフおよび軸上色収差のグラフを示している。表9は、実施例5における光学的なデータを示し、表10は、実施例5における物体距離、ならびに、それに対応する集光対物光学系の焦点距離、F値(FNo)、レンズ群間距離およびレンズ、プリズム間の距離、を示している。
【0088】
[表9]
面番号 R D N ν
1 STO 0.000 10.000
2 -11.105 2.949 2.001 29.135
3 -13.902 1.000
4 17.465 3.000 1.673 32.171
5 20.627 (1)
6 26.505 1.500 1.847 23.623
7 13.888 4.229 1.517 64.198
8 -35.901 (2)
9 P 0.000 15.000 1.911 35.250
10 0.000 (3) 1.333 55.794
【0089】
[表10]
作動距離1 作動距離2 作動距離3
焦点距離 41.019 41.016 41.015
FNo 4.558 4.557 4.557
(1) 24.770 22.513 18.000
(2) 13.928 16.185 20.698
(3) 23.000 20.000 14.000
【0090】
[実施例6]
図22は、実施例6の集光対物光学系の光学的な構成を模式的に示し、
図23~
図25は、実施例6における作動距離1~3での球面収差のグラフおよび軸上色収差のグラフを示している。表11は、実施例6における光学的なデータを示し、表12は、実施例6における物体距離、ならびに、それに対応する集光対物光学系の焦点距離、F値(FNo)、レンズ群間距離およびレンズ、プリズム間の距離、を示している。
【0091】
[表11]
面番号 R D N ν
1 STO 0.000 10.000
2 -12.579 3.000 1.946 17.984
3 -20.399 9.000
4 -28.639 3.000 1.954 32.319
5 -20.185 (1)
6 24.559 2.000 1.773 49.624
7 40.870 0.200
8 23.370 1.000 1.805 25.456
9 13.471 3.200 1.517 64.198
10 89.072 (2)
11 P 0.000 15.000 1.911 35.250
12 0.000 (3) 1.333 55.794
【0092】
[表12]
作動距離1 作動距離2 作動距離3
焦点距離 33.369 33.369 33.369
FNo 3.708 3.708 3.708
(1) 22.960 14.998 11.018
(2) 10.586 18.548 22.528
(3) 30.594 20.000 14.703
【0093】
[実施例7]
図26は、実施例7の集光対物光学系の光学的な構成を模式的に示し、
図27~
図29は、実施例7における作動距離1~3での球面収差のグラフおよび軸上色収差のグラフを示している。表13は、実施例7における光学的なデータを示し、表14は、実施例7における物体距離、ならびに、それに対応する集光対物光学系の焦点距離、F値(FNo)、レンズ群間距離およびレンズ、プリズム間の距離、を示している。
【0094】
[表13]
面番号 R D N ν
1 STO 0.000 10.000
2 -10.487 4.400 1.946 17.984
3 -19.799 10.422
4 168.218 3.000 1.835 42.721
5 -32.890 (1)
6 3217.373 1.100 1.497 81.608
7 13.301 3.535
8 14.909 1.000 1.805 25.456
9 11.575 5.000 1.497 81.608
10 -26.222 (2)
11 P 0.000 15.000 1.911 35.250
12 0.000 (3) 1.333 55.794
【0095】
[表14]
作動距離1 作動距離2 作動距離3
焦点距離 32.521 30.309 29.338
FNo 3.613 3.368 3.260
(1) 22.628 13.000 8.313
(2) 10.917 20.546 5.233
(3) 30.000 20.000 15.000
【0096】
[実施例8]
図30は、実施例8の集光対物光学系の光学的な構成を模式的に示し、
図31~
図33は、実施例8における作動距離1~3での球面収差のグラフおよび軸上色収差のグラフを示している。表15は、実施例8における光学的なデータを示し、表16は、実施例8における物体距離、ならびに、それに対応する集光対物光学系の焦点距離、F値(FNo)、レンズ群間距離およびレンズ、プリズム間の距離、を示している。
【0097】
[表15]
面番号 R D N ν
1 STO 0.000 10.000
2 -28.495 3.000 1.946 17.984
3 -51.365 15.055
4 13.254 3.000 1.954 32.319
5 11.739 (1)
6 164.747 3.000 1.804 46.503
7 -70.873 0.200
8 16.707 1.000 1.923 20.880
9 12.563 3.200 1.487 70.441
10 185.467 (2)
11 P 0.000 15.000 1.911 35.250
12 0.000 (3) 1.333 55.794
【0098】
[表16]
作動距離1 作動距離2 作動距離3
焦点距離 24.815 28.209 30.382
FNo 2.757 3.134 3.376
(1) 28.546 19.518 14.797
(2) 4.999 14.028 18.748
(3) 30.000 20.000 15.000
【0099】
[実施例9]
図34は、実施例9の集光対物光学系の光学的な構成を模式的に示し、
図35~
図37は、実施例9における作動距離1~3での球面収差のグラフおよび軸上色収差のグラフを示している。表17は、実施例9における光学的なデータを示し、表18は、実施例9における物体距離、ならびに、それに対応する集光対物光学系の焦点距離、F値(FNo)、レンズ群間距離およびレンズ、プリズム間の距離、を示している。
【0100】
[表17]
面番号 R D N ν
1 STO 0.000 10.000
2 12.579 3.000 1.946 17.984
3 -20.399 9.000
4 -28.639 3.000 1.954 32.319
5 -20.185 (1)
6 23.853 2.000 1.773 49.624
7 37.065 0.200
8 23.534 1.000 1.805 25.456
9 13.285 3.200 1.517 64.198
10 80.632 (2)
11 P 0.000 15.000 1.911 35.250
12 0.000 (3) 1.000
【0101】
[表18]
作動距離1 作動距離2 作動距離3
焦点距離 36.748 36.748 36.748
FNo 4.083 4.083 4.083
(1) 26.141 15.542 10.249
(2) 7.405 18.003 23.297
(3) 30.594 20.000 14.703
【0102】
[実施例10]
図38は、実施例10の集光対物光学系の光学的な構成を模式的に示し、
図39~
図41は、実施例10における作動距離1~3での球面収差のグラフおよび軸上色収差のグラフを示している。表19は、実施例10における光学的なデータを示し、表20は、実施例10における物体距離、ならびに、それに対応する集光対物光学系の焦点距離、F値(FNo)、レンズ群間距離およびレンズ、プリズム間の距離、を示している。
【0103】
[表19]
面番号 R D N ν
1 STO 0.000 10.000
2 -12.579 3.000 1.946 17.984
3 -20.399 9.000
4 -28.639 3.000 1.954 32.319
5 -20.185 (1)
7 23.650 2.000 1.773 49.624
8 39.361 0.200
9 23.420 1.000 1.805 25.456
10 13.002 3.200 1.517 64.198
11 252.342 (2)
12 P 0.000 15.000 1.911 35.250
13 0.000 (3) 1.517 64.198
【0104】
[表20]
作動距離1 作動距離2 作動距離3
焦点距離 29.205 29.205 29.205
FNo 3.245 3.245 3.245
(1) 25.633 18.569 15.038
(2) 7.912 14.977 18.507
(3) 30.924 20.200 14.883
【0105】
[実施例11]
図42は、実施例11の集光対物光学系の光学的な構成を模式的に示し、
図43~
図45は、実施例11における作動距離1~3での球面収差のグラフおよび軸上色収差のグラフを示している。表21は、実施例11における光学的なデータを示し、表22は、実施例11における物体距離、ならびに、それに対応する集光対物光学系の焦点距離、F値(FNo)、レンズ群間距離およびレンズ、プリズム間の距離、を示している。
図42に示されるように、本実施例におけるプリズムPは、物体距離の部分に対して放物面状の凹曲面で対向している。
【0106】
[表21]
面番号 R D N ν
1 STO 0.000 10.000
2 -14.758 3.000 1.946 17.984
3 -25.455 0.100
4 -29.414 3.000 1.954 32.319
5 -24.091 (1)
7 48.750 2.000 1.773 49.624
8 -146.363 12.251
9 11.576 1.000 1.805 25.456
10 8.554 3.200 1.517 64.198
11 15.146 (2)
12 P 0.000 15.000 1.911 35.250
13 0.000 (3) 1.333 55.794
【0107】
[表22]
作動距離1 作動距離2 作動距離3
焦点距離 41.793 41.588 41.683
FNo 4.464 4.621 4.631
(1) 25.370 19.280 15.590
(2) 8.175 14.266 17.956
(3) 30.000 20.000 14.700
【0108】
[実施例12]
図46は、実施例12の集光対物光学系の光学的な構成を模式的に示し、
図47~
図49は、実施例12における作動距離1~3での球面収差のグラフおよび軸上色収差のグラフを示している。表23は、実施例12における光学的なデータを示し、表24は、実施例12における物体距離、ならびに、それに対応する集光対物光学系の焦点距離、F値(FNo)、レンズ群間距離およびレンズ、プリズム間の距離、を示している。
図46に示されるように、本実施例におけるプリズムPは、物体距離の部分WDに対して放物面状の凹曲面で対向している。
【0109】
[表23]
面番号 R D N ν
1 STO 0.000 10.000
2 -16.235 3.000 1.946 17.984
3 -29.358 0.100
4 -25.243 3.000 1.954 32.319
5 -22.662 (1)
7 88.733 2.000 1.773 49.624
8 -61.959 15.425
9 11.151 1.000 1.805 25.456
10 8.422 1.000
11 8.713 3.200 1.517 64.198
12 15.930 (2)
13 P 0.000 15.000 1.911 35.250
14 0.000 (3) 1.333 55.794
【0110】
[表24]
作動距離1 作動距離2 作動距離3
焦点距離 55.390 51.006 48.901
FNo 6.154 5.667 5.433
(1) 20.664 16.474 13.607
(2) 12.881 17.072 19.938
(3) 30.000 20.000 14.700
【0111】
[実施例13]
図50は、実施例13の集光対物光学系の光学的な構成を模式的に示し、
図51~
図53は、実施例13における作動距離1~3での球面収差のグラフおよび軸上色収差のグラフを示している。表25は、実施例13における光学的なデータを示し、表26は、実施例13における物体距離、ならびに、それに対応する集光対物光学系の焦点距離、F値(FNo)、レンズ群間距離およびレンズ、プリズム間の距離、を示している。
【0112】
[表25]
面番号 R D N ν
1 STO 0.000 10.000
2 -24.458 3.000 1.946 17.984
3 -58.878 22.070
4 -105.458 3.000 1.954 32.319
5 -33.519 (1)
6 21.212 2.000 1.773 49.624
7 25.732 0.200
8 24.228 1.000 1.805 25.456
9 12.578 1.000
10 13.034 3.200 1.517 64.198
11 111.044 (2)
12 P 0.000 15.000 1.729 54.674
13 0.000 (3) 1.333 55.794
【0113】
[表26]
作動距離1 作動距離2 作動距離3
焦点距離 36.101 34.753 34.117
FNo 4.011 3.861 3.791
(1) 21.612 12.999 8.698
(2) 11.934 20.546 24.847
(3) 30.000 20.000 15.000
【0114】
[実施例14]
図54は、実施例14の集光対物光学系の光学的な構成を模式的に示し、
図55~
図57は、実施例14における作動距離1~3での球面収差のグラフおよび軸上色収差のグラフを示している。表27は、実施例14における光学的なデータを示し、表28は、実施例14における物体距離、ならびに、それに対応する集光対物光学系の焦点距離、F値(FNo)、レンズ群間距離およびレンズ、プリズム間の距離、を示している。
【0115】
[表27]
面番号 R D N ν
1 STO 0.000 10.000
2 0.000 3.000 1.946 17.984
3 -57.381 5.606
4 -139.562 3.000 1.954 32.319
5 -37.993 (1)
6 20.836 2.000 1.773 49.624
7 26.299 0.200
8 24.230 1.000 1.805 25.456
9 12.578 1.000
10 12.952 3.200 1.517 64.198
11 82.587 (2)
12 P 0.000 15.000 2.051 26.942
13 0.000 (3) 1.333 55.794
【0116】
[表28]
作動距離1 作動距離2 作動距離3
焦点距離 35.493 34.122 33.480
FNo 3.943 3.791 3.720
(1) 21.632 12.999 8.718
(2) 11.914 20.546 24.827
(3) 30.000 20.000 15.000
【0117】
上記の各実施例における式に係る値の一覧を下記表に示す。
【0118】
[表29]
実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
式(1) νd 70.44、95.10 75.5、81.61 81.61 70.44
式(2) f/fνMAX 0.294 0.407 1.191 1.648
式(3) ΔZ/Lf 1.270 1.318 1.308 1.315
式(4) a12 1.262 0.440 0.701 0.480
式(5) nWD 1.333 1.333 1.333 1.333
式(6) np 1.911 1.911 1.911 1.911
【0119】
[表30]
実施例5 実施例6 実施例7 実施例8
式(1) νd 70.44 64.20 81.61 70.44
式(2) f/fνMAX 1.648 1.080 1.897 1.085
式(3) ΔZ/Lf 1.315 1.330 1.040 1.108
式(4) a12 0.480 0.000 -4.000 4.000
式(5) nWD 1.333 1.333 1.333 1.333
式(6) np 1.911 1.911 1.911 1.911
【0120】
[表31]
実施例9 実施例10 実施例11 実施例12
式(1) νd 64.20 64.20 64.20 64.20
式(2) f/fνMAX 1.210 1.084 1.253 1.265
式(3) ΔZ/Lf 1.108 1.518 1.642 2.386
式(4) a12 0.000 0.000 3.070 3.650
式(5) nWD 1.000 1.517 1.333 1.333
式(6) np 1.911 1.911 1.911 1.911
【0121】
[表32]
実施例13 実施例14
式(1) νd 64.20 64.20
式(2) f/fνMAX 1.450 1.400
式(3) ΔZ/Lf 1.161 1.159
式(4) a12 2.520 2.610
式(5) nWD 1.333 1.333
式(6) np 1.729 2.051
【符号の説明】
【0122】
1、STO 絞り
2 光音響素子
2a 第一部材
2b 第二部材
2c 金属層
2d 凹面部
10 集光対物光学系
20 光源
30 音響波検出器
100 光音響装置
210 媒質
220 被写体
G1 第一レンズ群
G2 第二レンズ群
L1~L5 レンズ
P プリズム(光音響素子)
WD 物体距離の部分(媒質)