(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】音響装置
(51)【国際特許分類】
H04S 5/02 20060101AFI20241126BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20241126BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H04S5/02
H04R3/00 310
B60R11/02 S
(21)【出願番号】P 2020203962
(22)【出願日】2020-12-09
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 哲生
(72)【発明者】
【氏名】中村 晶子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】桑山 千尋
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-121604(JP,A)
【文献】特開2003-087900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04S 1/00-7/00
H04R 3/00-3/14
H04R 5/00-5/04
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたLチャネル音響信号及びRチャネル音響信号の周波数帯域を、第1周波数帯域と、前記第1周波数帯域とは周波数帯域が異なる第2周波数帯域とに分離する帯域分離部と、
前記第1周波数帯域の前記Lチャネル音響信号と、前記第1周波数帯域の前記Rチャネル音響信号とに基づいてモノラル信号を生成する生成部と、
前記第2周波数帯域の前記Lチャネル音響信号と、前記第2周波数帯域の前記Rチャネル音響信号とに基づき、Lチャネル用のステレオ成分と、Rチャネル用のステレオ成分とを抽出する抽出部と、
前記モノラル信号と、前記Lチャネル用のステレオ成分とを合成して第1合成信号を生成する第1合成部と、
前記モノラル信号と、前記Rチャネル用のステレオ成分とを合成して第2合成信号を生成する第2合成部と、
入力された前記Lチャネル音響信号及び前記Rチャネル音響信号に基づく音響を車両の車室内に出力する
1対のフロントスピーカと、
前記第1合成信号に基づく音響を前記車室内に出力する第2音響出力装置と、
前記第2合成信号に基づく音響を前記車室内に出力する第3音響出力装置と、
を備え
、
前記第2音響出力装置が前記車両の車幅方向の中心線上に配置されたエキサイタ又はセンタスピーカである場合、前記第3音響出力装置は前記第2合成信号に基づく音響を前記車室内に出力する1対のリアスピーカであり、
前記第3音響出力装置が前記車両の車幅方向の中心線上に配置されたエキサイタ又はセンタスピーカである場合、前記第2音響出力装置は前記第1合成信号に基づく音響を前記車室内に出力する1対のリアスピーカである、ことを特徴とする音響装置。
【請求項2】
前記第1合成部の後段に設けられ、前記第1合成信号を増幅する第1アンプと、
前記第2合成部の後段に設けられ、第2合成信号を増幅する第2アンプと、
前記第1アンプによる増幅後の前記第1合成信号が、前記第2音響出力装置に出力され、
前記第2アンプによる増幅後の前記第2合成信号が、前記第3音響出力装置に出力される、請求項1記載の音響装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用の音響装置として、特許文献1に開示の技術が知られている。特許文献1に記載の装置は、車両を上方からみた場合の車両の長手方向に沿った中心線よりリスナの着座位置寄りに設けられた車両の車室を構成する構造体を加振することによって音響を出力する振動手段を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に搭載済みの音響システムに新たな音響出力装置を追加して音響システムを拡張する場合、チャネル数が増加するため、アンプや信号処理用のデバイスを追加したり、構成を変更したりする必要があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、出力チャネル数を変更することなく音響出力装置を追加し、音質を向上させた音響装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の音響装置は、入力されたLチャネル音響信号及びRチャネル音響信号の周波数帯域を、第1周波数帯域と、前記第1周波数帯域とは周波数帯域が異なる第2周波数帯域とに分離する帯域分離部と、前記第1周波数帯域の前記Lチャネル音響信号と、前記第1周波数帯域の前記Rチャネル音響信号とに基づいてモノラル信号を生成する生成部と、前記第2周波数帯域の前記Lチャネル音響信号と、前記第2周波数帯域の前記Rチャネル音響信号とに基づき、Lチャネル用のステレオ成分と、Rチャネル用のステレオ成分とを抽出する抽出部と、前記モノラル信号と、前記Lチャネル用のステレオ成分とを合成して第1合成信号を生成する第1合成部と、前記モノラル信号と、前記Rチャネル用のステレオ成分とを合成して第2合成信号を生成する第2合成部と、入力された前記Lチャネル音響信号及び前記Rチャネル音響信号に基づく音響を車両の車室内に出力する1対のフロントスピーカと、前記第1合成信号に基づく音響を前記車室内に出力する第2音響出力装置と、前記第2合成信号に基づく音響を前記車室内に出力する第3音響出力装置と、を備え、前記第2音響出力装置が前記車両の車幅方向の中心線上に配置されたエキサイタ又はセンタスピーカである場合、前記第3音響出力装置は前記第2合成信号に基づく音響を前記車室内に出力する1対のリアスピーカであり、前記第3音響出力装置が前記車両の車幅方向の中心線上に配置されたエキサイタ又はセンタスピーカである場合、前記第2音響出力装置は前記第1合成信号に基づく音響を前記車室内に出力する1対のリアスピーカである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、出力チャネル数を変更することなく音響出力装置を追加し、音質を向上させた音響装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】音響装置を備える車両の構成を示す図である。
【
図2】音響処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】左フロントスピーカ及び右フロントスピーカに入力される音響信号の周波数とゲインとの関係を示す図である。
【
図4】左リアスピーカ及び右リアスピーカと、エキサイタに入力される音響信号の周波数とゲインとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明を適用した音響装置10を備える車両1の構成を示す図である。
音響装置10は、左フロントスピーカ11a、右フロントスピーカ11b、左リアスピーカ13a、右リアスピーカ13b、エキサイタ15及び音響処理装置30を備える。
左フロントスピーカ11a、右フロントスピーカ11b、左リアスピーカ13a、右リアスピーカ13b及びエキサイタ15は、車両1の車室3内に設置される。
【0010】
左フロントスピーカ11aは、車両1の左フロントドアの内側に設置され、車室3の前席17に向けて音響を出力する。右フロントスピーカ11bは、車両1の右フロントドアの内側に設置され、車室3の前席17に向けて音響を出力する。左フロントスピーカ11a及び右フロントスピーカ11bは、第1音響出力装置に相当する。
左リアスピーカ13aは、車両1の左リアドアの内側に設置され、車室3の後席19に向けて音響を出力する。右リアスピーカ13bは、車両1の右リアドアの内側に設置され、車室3の後席19に向けて音響を出力する。左リアスピーカ13a及び右リアスピーカ13bは、第2音響出力装置又は第3音響出力装置に相当する。
【0011】
エキサイタ15は、第3音響出力装置又は第2音響出力装置に相当し、車室3の天井であって、車室3の車幅方向の中心線上に配置される。エキサイタ15は、車室3の天井材を振動板とし、不図示のボイスコイルから伝わる振動を、この天井材に伝達することで振動させて音響を出力する。本実施形態では、車室3の天井にエキサイタ15を設けた場合を例にして説明するが、エキサイタ15の代わりにセンタスピーカを用いた構成でもよい。また、エキサイタ15やセンタスピーカを設置するのも車幅方向の中心線上に配置されるのであれば天井材に限らず、例えばダッシュボードの上等に設置してもよい。
【0012】
音響処理装置30は、音源装置20に接続されている。音源装置20は、2チャンネルステレオ方式におけるLチャンネルの信号である左ステレオ信号Lと、Rチャンネルの信号である右ステレオ信号Rとを音響信号として出力する。左ステレオ信号Lは、Lチャネル音響信号に相当し、右ステレオ信号Rは、Rチャネル音響信号に相当する。音源装置20から出力された左ステレオ信号L及び右ステレオ信号Rは、音響処理装置30に入力される。
【0013】
音源装置20は、コンテンツを再生して音響信号を出力する。コンテンツには、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、ハードディスク又は半導体メモリ等に記録されたオーディオソースが含まれる。また、コンテンツは、音源装置20が無線通信部を備え、音源装置20がサーバ等の外部装置から受信したストリーミングのオーディオ信号であってもよい。
【0014】
図2は、音響処理装置30の構成を示すブロック図である。
次に、音響処理装置30の構成について
図2を参照しながら説明する。
音響処理装置30は、入力部31、帯域分離部32、生成部33、抽出部34、第1合成部35及び第2合成部36を備える。
【0015】
入力部31は、音源装置20から出力された左ステレオ信号L及び右ステレオ信号Rが入力される入力部であり、第1入力端子31a及び第2入力端子31bを備える。
第1入力端子31aには、音源装置20から左ステレオ信号Lが入力される。第1入力端子31aに入力された左ステレオ信号Lは、左フロントスピーカ11a及び帯域分離部32に出力される。
第2入力端子31bには、音源装置20から右ステレオ信号Rが入力される。第2入力端子31bに入力された右ステレオ信号Rは、右フロントスピーカ11b及び帯域分離部32に出力される。
なお、
図2には図示していないが、入力部31と、左フロントスピーカ11a及び右フロントスピーカ11bとの間には、それぞれD/A変換器やアンプが設けられている。D/A変換器によりD/A変換され、アンプにより増幅された左ステレオ信号Lが左フロントスピーカ11aに出力され、D/A変換器によりD/A変換され、アンプにより増幅された右ステレオ信号Rが右フロントスピーカ11bに出力される。
【0016】
帯域分離部32には、第1入力端子31aから左ステレオ信号Lが入力され、第2入力端子31bから右ステレオ信号Rが入力される。
帯域分離部32は、ローパスフィルタ32a及びハイパスフィルタ32bを備える。帯域分離部32に入力された左ステレオ信号L及び右ステレオ信号Rは、ローパスフィルタ32a及びハイパスフィルタ32bにそれぞれ入力される。
【0017】
ローパスフィルタ32aは、左ステレオ信号L及び右ステレオ信号Rが入力されると、入力された左ステレオ信号L及び右ステレオ信号Rのうち、予め設定された低周波数帯域の左ステレオ信号L及び右ステレオ信号Rを後段の生成部33に出力する。予め設定された低周波数帯域が第1周波数帯域に相当する。
以下、ローパスフィルタ32aを通過した低周波数帯域の左ステレオ信号を左ステレオ信号L(低)と表記し、低周波数帯域の右ステレオ信号を右ステレオ信号R(低)と表記する。
【0018】
ハイパスフィルタ32bは、左ステレオ信号L及び右ステレオ信号Rが入力されると、入力された左ステレオ信号L及び右ステレオ信号Rのうち、予め設定された高周波数帯域の左ステレオ信号L及び右ステレオ信号Rを後段の抽出部34に出力する。予め設定された高周波数帯域が第2周波数帯域に相当する。
以下、ハイパスフィルタ32bを通過した高周波数帯域の左ステレオ信号を左ステレオ信号L(高)と表記し、高周波数帯域の右ステレオ信号を右ステレオ信号R(高)と表記する。
【0019】
生成部33には、左ステレオ信号L(低)及び右ステレオ信号R(低)が入力される。生成部33は、左ステレオ信号L(低)及び右ステレオ信号R(低)が入力されると、和差方式によりモノラル信号を生成する。
具体的には、生成部33は、入力された左ステレオ信号L(低)と右ステレオ信号R(低)との和信号を、モノラル信号として第1合成部35に出力する。生成部33から出力されるモノラル信号をモノラル信号{L(低)+R(低)}と表記する。
【0020】
抽出部34には、左ステレオ信号L(高)及び右ステレオ信号R(高)が入力される。抽出部34は、左ステレオ信号L(高)及び右ステレオ信号R(高)が入力されると、和差方式によりステレオ信号を生成する。
具体的には、抽出部34は、左ステレオ信号L(高)と右ステレオ信号R(高)との差信号を、ステレオ成分として第1合成部35に出力する。すなわち、抽出部34は、左ステレオ信号L(高)から右ステレオ信号R(高)を減算することで、高周波数帯域のモノラル成分を除去し、ステレオ成分を抽出する。第1合成部35に出力される差信号を、ステレオ差信号{L(高)-R(高)}と表記する。ステレオ差信号{L(高)-R(高)}は、Lチャネル用のステレオ成分に相当する。
また、抽出部34は、右ステレオ信号R(高)と左ステレオ信号L(高)との差信号を、ステレオ成分として第2合成部36に出力する。抽出部34は、右ステレオ信号R(高)から左ステレオ信号L(高)を減算することで、高周波数帯域のモノラル成分を除去し、ステレオ成分を抽出する。第2合成部36に出力される差信号を、ステレオ差信号{R(高)-L(高)}と表記する。ステレオ差信号{R(高)-L(高)}は、Rチャネル用のステレオ成分に相当する。
【0021】
第1合成部35には、モノラル信号{L(低)+R(低)}と、ステレオ差信号{L(高)-R(高)}とが入力される。
第1合成部35は、加算器により構成される。第1合成部35は、モノラル信号{L(低)+R(低)}と、ステレオ差信号{L(高)-R(高)}とを加算する。第1合成部35は、モノラル信号{L(低)+R(低)}と、ステレオ差信号{L(高)-R(高)}とを合成した第1合成信号を左リアスピーカ13a及び右リアスピーカ13bに出力する。
なお、
図2には図示していないが、第1合成部35の後段には、D/A変換器や、アンプが設けられ、D/A変換器によりD/A変換され、アンプにより増幅された第1合成信号が左リアスピーカ13a及び右リアスピーカ13bに出力される。また、アンプは、左リアスピーカ13aと、右リアスピーカ13bとで共通のアンプが使用される。
【0022】
第2合成部36には、モノラル信号{L(低)+R(低)}と、ステレオ差信号{R(高)-L(高)}とが入力される。
第2合成部36は、加算器により構成される。第2合成部36は、モノラル信号{L(低)+R(低)}と、ステレオ差信号{R(高)-L(高)}とを加算する。第2合成部36は、モノラル信号{L(低)+R(低)}と、ステレオ差信号{R(高)-L(高)}とを合成した第2合成信号をエキサイタ15に出力する。
なお、
図2には図示していないが、第2合成部36の後段には、D/A変換器や、アンプが設けられ、D/A変換器によりD/A変換され、アンプにより増幅された第2合成信号がエキサイタ15に出力される。
【0023】
図3(A)は、左フロントスピーカ11aに入力される音響信号の周波数とゲインとの関係を示す図である。
図3(B)は、右フロントスピーカ11bに入力される音響信号の周波数とゲインとの関係を示す図である。
左フロントスピーカ11aには、左ステレオ信号Lが入力され、右フロントスピーカ11bには、右ステレオ信号Rが入力される。左ステレオ信号L及び右ステレオ信号Rは、入力部31に入力された左ステレオ信号L及び右ステレオ信号Rである。このため、左フロントスピーカ11aが出力する音響信号は、すべての周波数帯域でゲインがフラットな特性となり、右フロントスピーカ11bが出力する音響信号は、すべての周波数帯域でゲインがフラットな特性となる。
【0024】
図4(A)は、左リアスピーカ13a及び右リアスピーカ13bに入力される音響信号の周波数とゲインとの関係を示す図である。
図4(B)は、エキサイタ15に入力される音響信号の周波数とゲインとの関係を示す図である。
図4(A)及び
図4(B)に実線で示す信号は、モノラル信号{L(低)+R(低)}の周波数とゲインとの関係を示す。また、
図4(A)に破線で示す信号は、ステレオ差信号{L(高)-R(高)}の周波数とゲインとの関係を示す。
図4(B)に破線で示す信号は、ステレオ差信号{R(高)-L(高)}の周波数とゲインとの関係を示す。
また、
図4(A)に一点鎖線で示す信号は、モノラル信号{L(低)+R(低)}と、ステレオ差信号{L(高)-R(高)}とを合成した第1合成信号の周波数とゲインとの関係を示す。また、
図4(B)に一点鎖線で示す信号は、モノラル信号{L(低)+R(低)}と、ステレオ差信号{R(高)-L(高)}とを合成した第2合成信号の周波数とゲインとの関係を示す。
【0025】
左リアスピーカ13a及び右リアスピーカ13bには、モノラル信号{L(低)+R(低)}と、ステレオ差信号{L(高)-R(高)}とを合成した第1合成信号が入力される。このため、左リアスピーカ13a及び右リアスピーカ13bは、低周波数帯域では、モノラル信号{L(低)+R(低)}に対応した音響を出力し、高周波数帯域では、ステレオ差信号{L(高)-R(高)}に対応した音響を出力する。
また、エキサイタ15には、モノラル信号{L(低)+R(低)}と、ステレオ差信号{R(高)-L(高)}とを合成した第2合成信号が入力される。このため、エキサイタ15は、低周波数帯域では、モノラル信号{L(低)+R(低)}に対応した音響を出力し、高周波数帯域では、ステレオ差信号{R(高)-L(高)}に対応した音響を出力する。
従って、左リアスピーカ13a及び右リアスピーカ13bと、エキサイタ15とでステレオ感が形成され、聴取者が聴取する音響の臨場感を向上させることができる。
【0026】
以上説明したように本実施形態の音響装置10は、帯域分離部32と、生成部33と、抽出部34と、第1合成部35と、第2合成部36と、左フロントスピーカ11a及び右フロントスピーカ11bと、左リアスピーカ13a及び右リアスピーカ13bと、エキサイタ15とを備える。
【0027】
帯域分離部32は、左ステレオ信号L及び右ステレオ信号Rの周波数帯域を、低周波数帯域と、高周波数帯域とに分離する。
生成部33は、分離された低周波数帯域の左ステレオ信号L(低)と、低周波数帯域の右ステレオ信号R(低)とに基づいてモノラル信号{L(低)+R(低)}を生成する。
【0028】
抽出部34は、分離された高周波数帯域の左ステレオ信号L(高)から高周波数帯域の右ステレオ信号R(高)を減算してステレオ差信号{L(高)-R(高)}を生成する。
また、抽出部34は、分離された高周波数帯域の右ステレオ信号R(高)から高周波数帯域の左ステレオ信号L(高)を減算してステレオ差信号{R(高)-L(高)}を生成する。
【0029】
第1合成部35は、モノラル信号{L(低)+R(低)}と、ステレオ差信号{L(高)-R(高)}とを合成して第1合成信号を生成する。
第2合成部36は、モノラル信号{L(低)+R(低)}と、ステレオ差信号{R(高)-L(高)}とを合成して第2合成信号を生成する。
【0030】
左フロントスピーカ11a及び右フロントスピーカ11bは、音響処理装置30に入力された左ステレオ信号L及び右ステレオ信号Rに基づく音響を車室3内に出力する。
左リアスピーカ13a及び右リアスピーカ13bは、第1合成信号に基づく音響を車室3内に出力する。
エキサイタ15は、第2合成信号に基づく音響を車室3内に出力する。
【0031】
従来、チャネル数を変更することなく、音響装置10にエキサイタ15を新たに追加する場合、左ステレオ信号L及び右ステレオ信号Rに基づいて生成したモノラル信号を左リアスピーカ13a、右リアスピーカ13b及びエキサイタ15に出力する構成が採用されていた。
しかしながら、従来の構成では、左リアスピーカ13a、右リアスピーカ13b及びエキサイタ15からモノラル信号が出力されるため、ステレオ感が形成されるスピーカが左フロントスピーカ11a及び右フロントスピーカ11bだけとなり、音場の臨場感の低下につながった。
これに対して本実施形態の音響装置10は、モノラル信号{L(低)+R(低)}に、ステレオ差信号{L(高)-R(高)}を合成した第1合成信号を左リアスピーカ13a及び右リアスピーカ13bから出力し、モノラル信号{L(低)+R(低)}に、ステレオ差信号{R(高)-L(高)}を合成した第2合成信号をエキサイタ15から出力する。
従って、左リアスピーカ13a及び右リアスピーカ13bと、エキサイタ15とでステレオ感が形成され、聴取者が聴取する音響の臨場感を向上させることができる。このため、出力チャネル数を変更することなくエキサイタ15を追加し、音質を向上させることができる。
【0032】
また、生成部33は、低周波数帯域の左ステレオ信号L(低)と、低周波数帯域の右ステレオ信号R(低)とを加算してモノラル信号{L(低)+R(低)}を生成するため、モノラル信号の生成が容易になる。
【0033】
また、抽出部34は、分離された高周波数帯域の左ステレオ信号L(高)から高周波数帯域の右ステレオ信号R(高)を減算してステレオ差信号{L(高)-R(高)}を生成し、分離された高周波数帯域の右ステレオ信号R(高)から高周波数帯域の左ステレオ信号L(高)を減算してステレオ差信号{R(高)-L(高)}を生成する。このため、ステレオ成分の抽出が容易になる。
【0034】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示するものであって、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0035】
例えば、左リアスピーカ13a及び右リアスピーカ13bに、モノラル信号{L(低)+R(低)}とステレオ差信号{R(高)-L(高)}とを合成した第2合成信号を出力させ、エキサイタ15に、モノラル信号{L(低)+R(低)}とステレオ差信号{L(高)-R(高)}とを合成した第1合成信号を出力させてもよい。
【0036】
また、生成部33及び抽出部34は、和差方式によりモノラル信号、ステレオ成分信号を生成したが、適応フィルタを用いてモノラル成分やステレオ成分を抽出してもよい。
【0037】
また、
図2に示す音響処理装置30の構成は、これらの装置が備える機能を主な処理内容に応じて分類して示した概略図である。音響処理装置30の構成は、処理内容に応じて、さらに多くのブロックに分割することもできる。また、この機能ブロックは、
図2に示す1つのブロックによりさらに多くの処理を実行するように構成しても良い。また、各ブロックの処理は、1つのハードウェアで実行してもよいし、複数のハードウェアで実行してもよい。また、各ブロックの処理は、1つのプログラムで実現してもよいし、複数のプログラムで実現してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 車両
3 車室
10 音響装置
11a 左フロントスピーカ
11b 右フロントスピーカ
13a 左リアスピーカ
13b 右リアスピーカ
15 エキサイタ
17 前席
19 後席
20 音源装置
30 音響処理装置
31 入力部
31a 第1入力端子
31b 第2入力端子
32 帯域分離部
32a ローパスフィルタ
32b ハイパスフィルタ
33 生成部
34 抽出部
35 第1合成部
36 第2合成部