(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20241126BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20241126BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20241126BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241126BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20241126BHJP
H01L 21/76 20060101ALI20241126BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01L29/78 657G
H01L27/04 H
H01L27/06 102A
H01L27/06 311B
H01L29/78 656E
H01L29/78 652Q
H01L29/78 657F
H01L29/78 657A
H01L29/78 657B
H01L29/78 653C
H01L29/78 652F
H01L29/78 652K
H01L29/78 652N
H01L29/78 652M
H02M1/08 A
(21)【出願番号】P 2020214698
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直樹
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/130141(WO,A1)
【文献】特開2020-167338(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0258464(US,A1)
【文献】特開2010-004003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 21/822
H01L 21/8234
H01L 27/06
H01L 21/76
H02M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のゲート制御信号に応じて複数のチャネル領域が個別制御されるように構成されたゲート分割型のパワートランジスタと、
前記複数のゲート制御信号を生成するように構成されたゲート制御回路と、
温度検出素子を用いて前記パワートランジスタの異常発熱を検出する過熱保護回路と、
を有し、
前記パワートランジスタは、前記複数のチャネル領域が個別制御されるように構成された通常エリアと、前記複数のチャネル領域のうち少なくとも一つが常時オフ状態となるように構成されたチャネル低減エリアを含み、前記温度検出素子は、前記
通常エリアの内部又は周囲に配置されている、半導体装置。
【請求項2】
前記パワートランジスタは、
半導体基板の第1主面側に形成された第1電極と、
前記半導体基板の第2主面側に形成された第2電極と、
前記第1電極上に配置されたパッドと、
を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記パッドは、複数均等配置されている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記
通常エリアは、前記パッドの近傍に形成されている、請求項2又は3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1電極には、前記温度検出素子の配線を端辺まで引き出すためのスリットが形成されている、請求項2~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記過熱保護回路は、前記温度検出素子で前記パワートランジスタの異常発熱が検出されたときに前記パワートランジスタを強制的にオフさせる、請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記パワートランジスタのオフ遷移時に前記パワートランジスタの両端間電圧を所定のクランプ電圧以下に制限するアクティブクランプ回路をさらに有し、
前記ゲート制御回路は、前記アクティブクランプ回路の動作時に前記パワートランジスタのオン抵抗を引き上げるように前記複数のゲート制御信号を個別制御する、請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ゲート制御回路は、入力信号に応じて前記複数のゲート制御信号を一括制御することにより前記パワートランジスタをオン/オフする、請求項1~7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記チャネル低減エリアに属する少なくとも一つのチャネル領域は、前記通常エリアに属する一つのチャネル領域と同期してオン/オフする、請求項1~8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記通常エリア及び前記チャネル低減エリアそれぞれに属する複数のトランジスタセルのうち、同期してオン/オフするトランジスタセルのゲート配線は、電気的に接続されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記パワートランジスタがオンしているとき、前記チャネル低減エリアの特性チャネル割合は、
前記通常エリアの特性チャネル割合よりも低い、請求項1~10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の半導体装置と、
前記半導体装置に接続される負荷と、
を有する電子機器。
【請求項13】
請求項12に記載の電子機器を有する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワートランジスタを有する半導体装置の多くは、パワートランジスタの異常発熱を検出する温度検出素子を備えている。特に、大電流を流す半導体装置において、パワートランジスタの異常発熱を精度良く検出するためには、チップ内の最大発熱箇所で温度検出を行う必要がある。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の半導体装置では、チップ内における最大発熱箇所の特定手法について、更なる改善の余地があった。
【0006】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者により見出された上記課題に鑑み、パワートランジスタの異常発熱を正しく検出することのできる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、本明細書中に開示されている半導体装置は、複数のゲート制御信号に応じて複数のチャネル領域が個別制御されるように構成されたゲート分割型のパワートランジスタと、前記複数のゲート制御信号を生成するように構成されたゲート制御回路と、温度検出素子を用いて前記パワートランジスタの異常発熱を検出する過熱保護回路と、を有し、前記パワートランジスタは、前記複数のチャネル領域が個別制御されるように構成された通常エリアと、前記複数のチャネル領域のうち少なくとも一つが常時オフ状態となるように構成されたチャネル低減エリアを含み、前記温度検出素子は、前記通常エリアの内部又は周囲に配置されている構成(第1の構成)とされている。
【0008】
上記第1の構成から成る半導体装置において、前記パワートランジスタは、半導体基板の第1主面側に形成された第1電極と、前記半導体基板の第2主面側に形成された第2電極と、前記第1電極上に配置されたパッドと、を含む構成(第2の構成)にしてもよい。
【0009】
また、上記第2の構成から成る半導体装置において、前記パッドは、複数均等配置されている構成(第3の構成)にしてもよい。
【0010】
また、上記第2または第3の構成から成る半導体装置において、前記通常エリアは、前記パッドの近傍に形成されている構成(第4の構成)にしてもよい。
【0011】
また、上記第2~第4いずれかの構成から成る半導体装置において、前記第1電極には前記温度検出素子の配線を端辺まで引き出すためのスリットが形成されている構成(第5の構成)にしてもよい。
【0012】
また、上記第1~第5いずれかの構成から成る半導体装置において、前記過熱保護回路は、前記温度検出素子で前記パワートランジスタの異常発熱が検出されたときに前記パワートランジスタを強制的にオフさせる構成(第6の構成)にしてもよい。
【0013】
また、上記第1~第6いずれかの構成から成る半導体装置は、前記パワートランジスタのオフ遷移時に前記パワートランジスタの両端間電圧を所定のクランプ電圧以下に制限するアクティブクランプ回路をさらに有し、前記ゲート制御回路は、前記アクティブクランプ回路の動作時に前記パワートランジスタのオン抵抗を引き上げるように前記複数のゲート制御信号を個別制御する構成(第7の構成)にしてもよい。
【0014】
また、上記第1~第7いずれかの構成から成る半導体装置において、前記ゲート制御回路は、入力信号に応じて前記複数のゲート制御信号を一括制御することにより前記パワートランジスタをオン/オフする構成(第8の構成)にしてもよい。
【0015】
また、上記第1~第8いずれかの構成から成る半導体装置において、前記チャネル低減エリアに属する少なくとも一つのチャネル領域は、前記通常エリアに属する一つのチャネル領域と同期してオン/オフする構成(第9の構成)にしてもよい。
【0016】
また、上記第1~第9いずれかの構成から成る半導体装置において、前記通常エリア及び前記チャネル低減エリアそれぞれに属する複数のトランジスタセルのうち、同期してオン/オフするトランジスタセルのゲート配線は、電気的に接続されている構成(第10の構成)にしてもよい。
【0017】
また、上記第1~第10いずれかの構成から成る半導体装置において、前記パワートランジスタがオンしているとき、前記チャネル低減エリアの特性チャネル割合は、通常エリアの特性チャネル割合よりも低い構成(第11の構成)にしてもよい。
【0018】
また、例えば、本明細書中に開示されている電子機器は、上記第1~第11いずれかの構成から成る半導体装置と、前記半導体装置に接続される負荷と、を有する構成(第12の構成)とされている。
【0019】
また、例えば、本明細書中に開示されている車両は、上記第12の構成から成る電子機器を有する構成(第13の構成)とされている。
【発明の効果】
【0020】
本明細書中に開示されている発明によれば、パワートランジスタの異常発熱を正しく検出することのできる半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】半導体装置の電気的構造を示すブロック回路図
【
図3】半導体装置の通常動作及びアクティブクランプ動作を説明するための回路図
【
図6】アクティブクランプ耐量及び面積抵抗率の関係を実測によって調べたグラフ
【
図7】半導体装置の通常動作を説明するための断面斜視図
【
図8】半導体装置のアクティブクランプ動作を説明するための断面斜視図
【
図9】最大発熱箇所の特定手法(第1例)を模式的に示す平面図
【
図10】最大発熱箇所の特定手法(第2例)を模式的に示す平面図
【
図11】ICレイアウトの一例を模式的に示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
<半導体装置>
以下では、添付図面を参照して、半導体装置に関する種々の実施形態を説明する。
【0023】
図1は、半導体装置1を1つの方向から見た斜視図である。以下では、半導体装置1がハイサイド側のスイッチングデバイスである形態例について説明するが、半導体装置1はハイサイド側のスイッチングデバイスに限定されるものではない。半導体装置1は、各種構造の電気的な接続形態や機能を調整することにより、ローサイド側のスイッチングデバイスとしても提供されることができる。
【0024】
図1を参照して、半導体装置1は、半導体層2を含む。半導体層2はシリコンを含む。半導体層2は、直方体形状のチップ状に形成されている。半導体層2は、一方側の第1主面3、他方側の第2主面4、並びに、第1主面3および第2主面4を接続する側面5A,5B,5C,5Dを有している。
【0025】
第1主面3および第2主面4は、それらの法線方向Zから見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において四角形状に形成されている。側面5Aおよび側面5Cは、第1方向Xに沿って延び、第1方向Xに交差する第2方向Yに互いに対向している。側面5Bおよび側面5Dは、第2方向Yに沿って延び、第1方向Xに互いに対向している。第2方向Yは、より具体的には、第1方向Xに直交している。
【0026】
半導体層2には、出力領域6および入力領域7が設定されている。出力領域6は、側面5C側の領域に設定されている。入力領域7は、側面5A側の領域に設定されている。平面視において、出力領域6の面積SOUTは、入力領域7の面積SIN以上である(SIN≦SOUT)。
【0027】
面積SINに対する面積SOUTの比SOUT/SINは、1以上10以下であってもよい(1<SOUT/SIN≦10)。比SOUT/SINは、1以上2以下、2以上4以下、4以上6以下、6以上8以下、または、8以上10以下であってもよい。入力領域7の平面形状および出力領域6の平面形状は、任意であり、特定の形状に限定されない。むろん、比SOUT/SINは、0を超えて1未満であってもよい。
【0028】
出力領域6は、絶縁ゲート型のパワートランジスタの一例として、パワーMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)9を含む。パワーMISFET9は、ゲート、ドレインおよびソースを含む。
【0029】
入力領域7は、制御回路の一例としてのコントロールIC(Integrated Circuit)10を含む。コントロールIC10は、種々の機能を実現する複数種の機能回路を含む。複数種の機能回路は、外部からの電気信号に基づいてパワーMISFET9を駆動制御するゲート制御信号を生成する回路を含む。コントロールIC10は、パワーMISFET9と共に所謂IPD(Intelligent Power Device)を形成している。なお、IPDは、IPM(Intelligent Power Module)とも称される。
【0030】
入力領域7は、領域分離構造8によって出力領域6から電気的に絶縁されている。
図1では、領域分離構造8がハッチングによって示されている。具体的な説明は省略するが、領域分離構造8は、トレンチに絶縁体が埋め込まれたトレンチ絶縁構造を有してもよい。
【0031】
半導体層2の上には、複数(ここでは6つ)の電極11,12,13,14,15,16が形成されている。
図1では、ハッチングによって複数の電極11~16が示されている。複数の電極11~16は、導線(たとえばボンディングワイヤ)等によって外部接続される端子電極として形成されている。複数の電極11~16の個数、配置および平面形状は任意であり、
図1に示される形態に限定されない。
【0032】
複数の電極11~16の個数、配置および平面形状は、パワーMISFET9の仕様やコントロールIC10の仕様に応じて調整される。複数の電極11~16は、この形態では、ドレイン電極11(電源電極)、ソース電極12(出力電極)、入力電極13、基準電圧電極14、ENABLE電極15およびSENSE電極16を含む。
【0033】
ドレイン電極11は、半導体層2の第2主面4の上に形成されている。ドレイン電極11は、半導体層2の第2主面4に電気的に接続されている。ドレイン電極11は、パワーMISFET9のドレインやコントロールIC10の各種回路に電源電圧VBを伝える。
【0034】
ドレイン電極11は、Ti層、Ni層、Au層、Ag層およびAl層のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。ドレイン電極11は、Ti層、Ni層、Au層、Ag層またはAl層を含む単層構造を有していてもよい。ドレイン電極11は、Ti層、Ni層、Au層、Ag層およびAl層のうちの少なくとも2つを任意の態様で積層させた積層構造を有していてもよい。
【0035】
ソース電極12は、第1主面3において出力領域6の上に形成されている。ソース電極12は、パワーMISFET9のソースに電気的に接続されている。ソース電極12は、パワーMISFET9によって生成された電気信号を外部に伝達する。
【0036】
入力電極13、基準電圧電極14、ENABLE電極15及びSENSE電極16は、第1主面3において入力領域7の上にそれぞれ形成されている。入力電極13は、コントロールIC10を駆動するための入力電圧を伝達する。
【0037】
基準電圧電極14は、コントロールIC10に基準電圧(たとえばグランド電圧)を伝達する。ENABLE電極15は、コントロールIC10の一部または全部の機能を有効または無効にするための電気信号を伝達する。SENSE電極16は、コントロールIC10の異常を検出するための電気信号を伝達する。
【0038】
半導体層2の上には、制御配線の一例としてのゲート制御配線17がさらに形成されている。ゲート制御配線17は、出力領域6及び入力領域7に選択的に引き回されている。ゲート制御配線17は、出力領域6においてパワーMISFET9のゲートに電気的に接続され、入力領域7においてコントロールIC10に電気的に接続されている。
【0039】
ゲート制御配線17は、コントロールIC10によって生成されたゲート制御信号をパワーMISFET9のゲートに伝達する。ゲート制御信号は、オン信号Vonおよびオフ信号Voffを含み、パワーMISFET9のオン状態およびオフ状態を制御する。
【0040】
オン信号Vonは、パワーMISFET9のゲート閾値電圧Vthよりも高い(Vth<Von)。オフ信号Voffは、パワーMISFET9のゲート閾値電圧Vthよりも低い(Voff<Vth)。オフ信号Voffは、基準電圧(たとえばグランド電圧)であってもよい。
【0041】
ゲート制御配線17は、この形態では、第1ゲート制御配線17A、第2ゲート制御配線17Bおよび第3ゲート制御配線17Cを含む。第1ゲート制御配線17A、第2ゲート制御配線17Bおよび第3ゲート制御配線17Cは、互いに電気的に絶縁されている。
【0042】
この形態では、2つの第1ゲート制御配線17Aが異なる領域に引き回されている。また、2つの第2ゲート制御配線17Bが異なる領域に引き回されている。また、2つの第3ゲート制御配線17Cが異なる領域に引き回されている。
【0043】
第1ゲート制御配線17A、第2ゲート制御配線17Bおよび第3ゲート制御配線17Cは、同一のまたは異なるゲート制御信号をパワーMISFET9のゲートに伝達する。ゲート制御配線17の個数、配置、形状等は任意であり、ゲート制御信号の伝達距離や、伝達すべきゲート制御信号の数に応じて調整される。
【0044】
ソース電極12、入力電極13、基準電圧電極14、ENABLE電極15、SENSE電極16およびゲート制御配線17は、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、銅、アルミニウム合金および銅合金のうちの少なくとも1種をそれぞれ含んでいてもよい。
【0045】
ソース電極12、入力電極13、基準電圧電極14、ENABLE電極15、SENSE電極16およびゲート制御配線17は、Al-Si-Cu(アルミニウム-シリコン-銅)合金、Al-Si(アルミニウム-シリコン)合金、および、Al-Cu(アルミニウム-銅)合金のうちの少なくとも1種をそれぞれ含んでいてもよい。
【0046】
ソース電極12、入力電極13、基準電圧電極14、ENABLE電極15、SENSE電極16およびゲート制御配線17は、同一種の電極材料を含んでいてもよいし、互いに異なる電極材料を含んでいてもよい。
【0047】
図2は、
図1に示す半導体装置1の電気的構造を示すブロック回路図である。以下では半導体装置1が車両に搭載される場合を例にとって説明する。
【0048】
半導体装置1は、ドレイン電極11、ソース電極12、入力電極13、基準電圧電極14、ENABLE電極15、SENSE電極16、ゲート制御配線17、パワーMISFET9およびコントロールIC10を含む。
【0049】
ドレイン電極11は、電源に接続される。ドレイン電極11は、パワーMISFET9およびコントロールIC10に電源電圧VBを提供する。電源電圧VBは、10V以上20V以下であってもよい。ソース電極12は、負荷に接続される。
【0050】
入力電極13は、MCU(Micro Controller Unit)、DC/DCコンバータ、LDO(Low Drop Out)等に接続されてもよい。入力電極13は、コントロールIC10に入力電圧を提供する。入力電圧は、1V以上10V以下であってもよい。基準電圧電極14は基準電圧配線に接続される。基準電圧電極14は、パワーMISFET9およびコントロールIC10に基準電圧を提供する。
【0051】
ENABLE電極15は、MCUに接続されてもよい。ENABLE電極15には、コントロールIC10の一部または全部の機能を有効または無効にするための電気信号が入力される。SENSE電極16は、抵抗器に接続されてもよい。
【0052】
パワーMISFET9のゲートは、ゲート制御配線17を介してコントロールIC10(後述のゲート制御回路25)に接続されている。パワーMISFET9のドレインは、ドレイン電極11に接続されている。パワーMISFET9のソースは、コントロールIC10(後述する電流検出回路27)およびソース電極12に接続されている。
【0053】
コントロールIC10は、センサMISFET21、入力回路22、電流・電圧制御回路23、保護回路24、ゲート制御回路25、アクティブクランプ回路26、電流検出回路27、電源逆接続保護回路28および異常検出回路29を含む。
【0054】
センサMISFET21のゲートは、ゲート制御回路25に接続されている。センサMISFET21のドレインは、ドレイン電極11に接続されている。センサMISFET21のソースは、電流検出回路27に接続されている。
【0055】
入力回路22は、入力電極13および電流・電圧制御回路23に接続されている。入力回路22は、シュミットトリガ回路を含んでいてもよい。入力回路22は、入力電極13に印加された電気信号の波形を整形する。入力回路22により生成された信号は、電流・電圧制御回路23に入力される。
【0056】
電流・電圧制御回路23は、保護回路24、ゲート制御回路25、電源逆接続保護回路28および異常検出回路29に接続されている。電流・電圧制御回路23は、ロジック回路を含んでいてもよい。
【0057】
電流・電圧制御回路23は、入力回路22からの電気信号および保護回路24からの電気信号に応じて種々の電圧を生成する。電流・電圧制御回路23は、この形態では、駆動電圧生成回路30、第1定電圧生成回路31、第2定電圧生成回路32および基準電圧・基準電流生成回路33を含む。
【0058】
駆動電圧生成回路30は、ゲート制御回路25を駆動するための駆動電圧を生成する。駆動電圧は、電源電圧VBから所定値を差し引いた値に設定されてもよい。駆動電圧生成回路30は、電源電圧VBから5Vを差し引いた5V以上15V以下の駆動電圧を生成してもよい。駆動電圧は、ゲート制御回路25に入力される。
【0059】
第1定電圧生成回路31は、保護回路24を駆動するための第1定電圧を生成する。第1定電圧生成回路31は、ツェナーダイオードやレギュレータ回路(ここではツェナーダイオード)を含んでいてもよい。第1定電圧は、1V以上5V以下であってもよい。第1定電圧は、保護回路24(より具体的には、後述する負荷オープン検出回路35等)に入力される。
【0060】
第2定電圧生成回路32は、保護回路24を駆動するための第2定電圧を生成する。第2定電圧生成回路32は、ツェナーダイオードやレギュレータ回路(ここではレギュレータ回路)を含んでいてもよい。第2定電圧は、1V以上5V以下であってもよい。第2定電圧は、保護回路24(より具体的には、後述する過熱保護回路36や低電圧誤動作抑制回路37)に入力される。
【0061】
基準電圧・基準電流生成回路33は、各種回路の基準電圧および基準電流を生成する。基準電圧は、1V以上5V以下であってもよい。基準電流は、1mA以上1A以下であってもよい。基準電圧および基準電流は、各種回路に入力される。各種回路がコンパレータを含む場合、基準電圧および基準電流は、当該コンパレータに入力されてもよい。
【0062】
保護回路24は、電流・電圧制御回路23、ゲート制御回路25、異常検出回路29、パワーMISFET9のソース及びセンサMISFET21のソースに接続されている。保護回路24は、過電流保護回路34、負荷オープン検出回路35、過熱保護回路36および低電圧誤動作抑制回路37を含む。
【0063】
過電流保護回路34は、過電流からパワーMISFET9を保護する。過電流保護回路34は、ゲート制御回路25およびセンサMISFET21のソースに接続されている。過電流保護回路34は、電流モニタ回路を含んでいてもよい。過電流保護回路34によって生成された信号は、ゲート制御回路25(より具体的には、後述する駆動信号出力回路40)に入力される。
【0064】
負荷オープン検出回路35は、パワーMISFET9のショート状態やオープン状態を検出する。負荷オープン検出回路35は、電流・電圧制御回路23及びパワーMISFET9のソースに接続されている。負荷オープン検出回路35によって生成された信号は、電流・電圧制御回路23に入力される。
【0065】
過熱保護回路36は、パワーMISFET9の温度を監視し、過度な温度上昇からパワーMISFET9を保護する。過熱保護回路36は、電流・電圧制御回路23に接続されている。過熱保護回路36は、感温ダイオードやサーミスタ等の感温デバイスを含んでいてもよい。過熱保護回路36によって生成された信号は、電流・電圧制御回路23に入力される。
【0066】
低電圧誤動作抑制回路37は、電源電圧VBが所定値未満である場合にパワーMISFET9が誤動作するのを抑制する。低電圧誤動作抑制回路37は、電流・電圧制御回路23に接続されている。低電圧誤動作抑制回路37によって生成された信号は、電流・電圧制御回路23に入力される。
【0067】
ゲート制御回路25は、パワーMISFET9のオン状態およびオフ状態、ならびに、センサMISFET21のオン状態およびオフ状態を制御する。ゲート制御回路25は、電流・電圧制御回路23、保護回路24、パワーMISFET9のゲートおよびセンサMISFET21のゲートに接続されている。
【0068】
ゲート制御回路25は、電流・電圧制御回路23からの電気信号および保護回路24からの電気信号に応じて、ゲート制御配線17の個数に応じた複数のゲート制御信号を生成する。複数のゲート制御信号は、ゲート制御配線17を介してパワーMISFET9のゲートおよびセンサMISFET21のゲートにそれぞれ入力される。
【0069】
ゲート制御回路25は、具体的に述べると、入力電極13に印加された電気信号(入力信号)に応じて複数のゲート制御信号を一括制御することによりパワーMISFET9をオン/オフする一方、アクティブクランプ回路26の動作時にパワーMISFET9のオン抵抗を引き上げるように複数のゲート制御信号を個別制御する機能を備えている(詳細については後述)。
【0070】
ゲート制御回路25は、より具体的には、発振回路38、チャージポンプ回路39および駆動信号出力回路40を含む。発振回路38は、電流・電圧制御回路23からの電気信号に応じて発振し、所定の電気信号を生成する。発振回路38によって生成された電気信号は、チャージポンプ回路39に入力される。チャージポンプ回路39は、発振回路38からの電気信号を昇圧させる。チャージポンプ回路39によって昇圧された電気信号は、駆動信号出力回路40に入力される。
【0071】
駆動信号出力回路40は、チャージポンプ回路39からの電気信号および保護回路24(より具体的には、過電流保護回路34)からの電気信号に応じて複数のゲート制御信号を生成する。複数のゲート制御信号は、ゲート制御配線17を介してパワーMISFET9のゲートおよびセンサMISFET21のゲートに入力される。センサMISFET21およびパワーMISFET9は、ゲート制御回路25によって同時に制御される。
【0072】
アクティブクランプ回路26は、逆起電力からパワーMISFET9を保護する。アクティブクランプ回路26は、ドレイン電極11、パワーMISFET9のゲートおよびセンサMISFET21のゲートに接続されている。アクティブクランプ回路26は、複数のダイオードを含んでいてもよい。
【0073】
アクティブクランプ回路26は、互いに順バイアス接続された複数のダイオードを含んでいてもよい。アクティブクランプ回路26は、互いに逆バイアス接続された複数のダイオードを含んでいてもよい。アクティブクランプ回路26は、互いに順バイアス接続された複数のダイオード、および、互いに逆バイアス接続された複数のダイオードを含んでいてもよい。
【0074】
複数のダイオードは、pn接合ダイオード、または、ツェナーダイオード、もしくは、pn接合ダイオードおよびツェナーダイオードを含んでいてもよい。アクティブクランプ回路26は、互いにバイアス接続された複数のツェナーダイオードを含んでいてもよい。アクティブクランプ回路26は、互いに逆バイアス接続されたツェナーダイオードおよびpn接合ダイオードを含んでいてもよい。
【0075】
電流検出回路27は、パワーMISFET9およびセンサMISFET21を流れる電流を検出する。電流検出回路27は、保護回路24、異常検出回路29、パワーMISFET9のソースおよびセンサMISFET21のソースに接続されている。電流検出回路27は、パワーMISFET9によって生成された電気信号およびセンサMISFET21によって生成された電気信号に応じて、電流検出信号を生成する。電流検出信号は、異常検出回路29に入力される。
【0076】
電源逆接続保護回路28は、電源が逆接続された際に、逆電圧から電流・電圧制御回路23やパワーMISFET9等を保護する。電源逆接続保護回路28は、基準電圧電極14および電流・電圧制御回路23に接続されている。
【0077】
異常検出回路29は、保護回路24の電圧を監視する。異常検出回路29は、電流・電圧制御回路23、保護回路24および電流検出回路27に接続されている。過電流保護回路34、負荷オープン検出回路35、過熱保護回路36および低電圧誤動作抑制回路37のいずれかに異常(電圧の変動等)が生じた場合、異常検出回路29は、保護回路24の電圧に応じた異常検出信号を生成し、外部に出力する。
【0078】
異常検出回路29は、より具体的には、第1マルチプレクサ回路41および第2マルチプレクサ回路42を含む。第1マルチプレクサ回路41は、2つの入力部、1つの出力部および1つの選択制御入力部を含む。第1マルチプレクサ回路41の入力部には、保護回路24および電流検出回路27がそれぞれ接続されている。第1マルチプレクサ回路41の出力部には、第2マルチプレクサ回路42が接続されている。第1マルチプレクサ回路41の選択制御入力部には、電流・電圧制御回路23が接続されている。
【0079】
第1マルチプレクサ回路41は、電流・電圧制御回路23からの電気信号、保護回路24からの電圧検出信号および電流検出回路27からの電流検出信号に応じて、異常検出信号を生成する。第1マルチプレクサ回路41によって生成された異常検出信号は、第2マルチプレクサ回路42に入力される。
【0080】
第2マルチプレクサ回路42は、2つの入力部および1つの出力部を含む。第2マルチプレクサ回路42の入力部には、第2マルチプレクサ回路42の出力部およびENABLE電極15がそれぞれ接続されている。第2マルチプレクサ回路42の出力部には、SENSE電極16が接続されている。
【0081】
ENABLE電極15にMCUが接続され、SENSE電極16に抵抗器が接続されている場合、MCUからENABLE電極15にオン信号が入力され、SENSE電極16から異常検出信号が取り出される。異常検出信号は、SENSE電極16に接続された抵抗器によって電気信号に変換される。半導体装置1の状態異常は、この電気信号に基づいて検出される。
【0082】
図3は、
図1に示す半導体装置1のアクティブクランプ動作を説明するための回路図である。
図4は、
図3に示す回路図の主要な電気信号の波形図である。
【0083】
ここでは、パワーMISFET9に誘導性負荷Lが接続された回路例を用いて、半導体装置1の通常動作及びアクティブクランプ動作を説明する。ソレノイド、モータ、トランス、リレー等の巻線(コイル)を利用したデバイスが、誘導性負荷Lとして例示される。誘導性負荷Lは、L負荷とも称される。
【0084】
図3を参照して、パワーMISFET9のソースは、誘導性負荷Lに接続されている。パワーMISFET9のドレインは、ドレイン電極11に電気的に接続されている。パワーMISFET9のゲートおよびドレインは、アクティブクランプ回路26に接続されている。アクティブクランプ回路26は、この回路例では、m個(mは自然数)のツェナーダイオードDZおよびn個(nは自然数)のpn接合ダイオードDを含む。pn接合ダイオードDは、ツェナーダイオードDZに対して逆バイアス接続されている。
【0085】
図3および
図4を参照して、オフ状態のパワーMISFET9のゲートにオン信号Vonが入力されると、パワーMISFET9がオフ状態からオン状態に切り替わる(通常動作)。オン信号Vonは、ゲート閾値電圧Vth以上(Vth≦Von)の電圧を有している。パワーMISFET9は、所定のオン時間TONだけ、オン状態に維持される。
【0086】
パワーMISFET9がオン状態に切り替わると、ドレイン電流IDが、パワーMISFET9のドレインからソースに向けて流れ始める。ドレイン電流IDは、零から所定の値まで増加し、飽和する。誘導性負荷Lは、ドレイン電流IDの増加に起因して誘導性エネルギを蓄積させる。
【0087】
パワーMISFET9のゲートにオフ信号Voffが入力されると、パワーMISFET9がオン状態からオフ状態に切り替わる。オフ信号Voffは、ゲート閾値電圧Vth未満の電圧(Voff<Vth)を有している。オフ信号Voffは、基準電圧(たとえばグランド電圧)であってもよい。
【0088】
パワーMISFET9がオン状態からオフ状態に切り替わる遷移時では、誘導性負荷Lの誘導性エネルギが、逆起電力としてパワーMISFET9に印加される。これにより、パワーMISFET9がアクティブクランプ状態になる(アクティブクランプ動作)。パワーMISFET9がアクティブクランプ状態になると、ソース電圧VSSが、基準電圧(グランド電圧)未満の負電圧まで急激に下降する。
【0089】
このとき、ソース電圧VSSは、アクティブクランプ回路26の動作に起因して、電源電圧VBから制限電圧VL及びクランプオン電圧VCLPを減算した電圧以上の電圧(VSS≧VB-VL-VCLP)に制限される。
【0090】
換言すると、パワーMISFET9がアクティブクランプ状態になると、パワーMISFET9のドレイン・ソース間のドレイン電圧VDSは、クランプ電圧VDSSCLまで急激に上昇する。クランプ電圧VDSSCLは、パワーMISFET9およびアクティブクランプ回路26によって、クランプオン電圧VCLPおよび制限電圧VLを加算した電圧以下の電圧(VDS≦VCLP+VL)に制限される。
【0091】
制限電圧VLは、この形態では、アクティブクランプ回路26におけるツェナーダイオードDZの端子間電圧VZ及びpn接合ダイオードの端子間電圧VFの総和(VL=m・VZ+n・VF)である。
【0092】
クランプオン電圧VCLPは、パワーMISFET9のゲート・ソース間に印加される正電圧(つまり、ゲート電圧VGS)である。クランプオン電圧VCLPは、ゲート閾値電圧Vth以上(Vth≦VCLP)である。したがって、パワーMISFET9は、アクティブクランプ状態においてオン状態を維持する。
【0093】
クランプ電圧VDSSCLが最大定格ドレイン電圧VDSSを超えた場合(VDSS<VDSSCL)、パワーMISFET9は破壊に至る。パワーMISFET9は、クランプ電圧VDSSCLが最大定格ドレイン電圧VDSS以下(VDSSCL≦VDSS)になるように設計される。
【0094】
クランプ電圧VDSSCLが最大定格ドレイン電圧VDSS以下の場合(VDSSCL≦VDSS)、ドレイン電流IDがパワーMISFET9のドレインからソースに向けて流れ続け、誘導性負荷Lの誘導性エネルギがパワーMISFET9において消費(吸収)される。
【0095】
ドレイン電流IDは、アクティブクランプ時間TAVを経て、パワーMISFET9のオフ直前のピーク値IAVからゼロに減少する。これにより、ゲート電圧VGSが基準電圧(たとえばグランド電圧)になり、パワーMISFET9がオン状態からオフ状態に切り替わる。
【0096】
パワーMISFET9のアクティブクランプ耐量Eacは、アクティブクランプ動作時におけるパワーMISFET9の耐量によって定義される。アクティブクランプ耐量Eacは、より具体的には、パワーMISFET9のオン状態からオフ状態への遷移時において、誘導性負荷Lの誘導性エネルギに起因して生じる逆起電力に対するパワーMISFET9の耐量によって定義される。
【0097】
アクティブクランプ耐量Eacは、さらに具体的には、クランプ電圧VDSSCLに起因して生じるエネルギに対するパワーMISFET9の耐量によって定義される。たとえば、アクティブクランプ耐量Eacは、制限電圧VL、クランプオン電圧VCLP、ドレイン電流ID及びアクティブクランプ時間TAVを用いて、Eac=(VL+VCLP)×ID×TAVの式で表される。
【0098】
図5は、
図1に示す領域Vの断面斜視図である。なお、本図では、説明の便宜上、第1主面3の上部構造(ソース電極12及びゲート制御配線17、並びに、層間絶縁層など)を省略している。
【0099】
本図の半導体装置1において、半導体層2は、この形態では、n+型の半導体基板51およびn型のエピタキシャル層52を含む積層構造を有している。半導体基板51によって半導体層2の第2主面4が形成されている。エピタキシャル層52によって半導体層2の第1主面3が形成されている。半導体基板51およびエピタキシャル層52によって半導体層2の側面5A~5Dが形成されている。
【0100】
エピタキシャル層52は、半導体基板51のn型不純物濃度未満のn型不純物濃度を有する。半導体基板51のn型不純物濃度は、1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であってもよい。エピタキシャル層52のn型不純物濃度は、1×1015cm-3以上1×1018cm-3以下であってもよい。
【0101】
エピタキシャル層52は、半導体基板51の厚さTsub未満の厚さTepi(Tepi<Tsub)を有している。厚さTsubは、50μm以上450μm以下であってもよい。厚さTsubは、50μm以上150μm以下、150μm以上250μm以下、250μm以上350μm以下、又は、350μm以上450μm以下であってもよい。
【0102】
厚さTsubを低減させることにより、抵抗値を低減できる。厚さTsubは、研削によって調整される。この場合、半導体層2の第2主面4は、研削痕を有する研削面であってもよい。
【0103】
エピタキシャル層52の厚さTepiは、厚さTsubの1/10以下であることが好ましい。厚さTepiは、5μm以上20μm以下であってもよい。厚さTepiは、5μm以上10μm以下、10μm以上15μm以下、または、15μm以上20μm以下であってもよい。厚さTepiは、5μm以上15μm以下であることが好ましい。
【0104】
半導体基板51は、ドレイン領域53として半導体層2の第2主面4側に形成されている。エピタキシャル層52は、ドリフト領域54(ドレインドリフト領域)として半導体層2の第1主面3の表層部に形成されている。ドリフト領域54の底部は、半導体基板51およびエピタキシャル層52の境界によって形成されている。以下、エピタキシャル層52をドリフト領域54という。
【0105】
出力領域6において半導体層2の第1主面3の表層部には、p型のボディ領域55が形成されている。ボディ領域55は、パワーMISFET9の基礎となる領域である。ボディ領域55のp型不純物濃度は、1×1016cm-3以上1×1018cm-3以下であってもよい。
【0106】
ボディ領域55は、ドリフト領域54の表層部に形成されている。ボディ領域55の底部は、ドリフト領域54の底部に対して第1主面3側の領域に形成されている。ボディ領域55の厚さは、0.5μm以上2μm以下であってもよい。ボディ領域55の厚さは、0.5μm以上1μm以下、1μm以上1.5μm以下、または、1.5μm以上2μm以下であってもよい。
【0107】
パワーMISFET9は、第1MISFET56(第1トランジスタ)および第2MISFET57(第2トランジスタ)を含む。第1MISFET56は、第2MISFET57から電気的に分離されており、独立して制御される。第2MISFET57は、第1MISFET56から電気的に分離されており、独立して制御される。
【0108】
つまり、パワーMISFET9は、第1MISFET56及び第2MISFET57の双方がオン状態において駆動するように構成されている(Full-ON制御)。また、パワーMISFET9は、第1MISFET56がオン状態である一方で第2MISFET57がオフ状態で駆動するように構成されている(第1Half-ON制御)。更に、パワーMISFET9は、第1MISFET56がオフ状態である一方で第2MISFET57がオン状態で駆動するように構成されている(第2Half-ON制御)。
【0109】
Full-ON制御の場合、全ての電流経路が解放された状態でパワーMISFET9が駆動される。したがって、半導体層2内のオン抵抗は相対的に低下する。一方、第1Half-ON制御または第2Half-ON制御の場合、一部の電流経路が遮断された状態でパワーMISFET9が駆動される。したがって、半導体層2内のオン抵抗は相対的に増加する。
【0110】
第1MISFET56は、具体的には複数の第1FET(Field Effect Transistor)構造58を含む。複数の第1FET構造58は、平面視において第1方向Xに沿って間隔を空けて配列され、第2方向Yに沿って帯状にそれぞれ延びている。複数の第1FET構造58は、平面視において全体としてストライプ状に形成されている。
【0111】
図5では第1FET構造58の一端部側の領域を図示し、第1FET構造58の他端部側の領域の図示を省略している。なお、第1FET構造58の他端部側の領域の構造は、第1FET構造58の一端部側の領域の構造とほぼ同様である。以下では、第1FET構造58の一端部側の領域の構造を例にとって説明し、第1FET構造58の他端部側の領域の構造についての説明は省略する。
【0112】
各第1FET構造58は、この形態では、第1トレンチゲート構造60を含む。第1トレンチゲート構造60の第1幅WT1は、0.5μm以上5μm以下であってもよい。第1幅WT1は、第1トレンチゲート構造60が延びる方向(第2方向Y)に直交する方向(第1方向X)の幅である。
【0113】
なお、第1幅WT1は、0.5μm以上1μm以下、1μm以上1.5μm以下、1.5μm以上2μm以下、2μm以上2.5μm以下、2.5μm以上3μm以下、3μm以上3.5μm以下、3.5μm以上4μm以下、4μm以上4.5μm以下、または、4.5μm以上5μm以下であってもよい。第1幅WT1は、0.8μm以上1.2μm以下であることが好ましい。
【0114】
第1トレンチゲート構造60は、ボディ領域55を貫通し、ドリフト領域54に達している。第1トレンチゲート構造60の第1深さDT1は、1μm以上10μm以下であってもよい。第1深さDT1は、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、又は、8μm以上10μm以下であってもよい。第1深さDT1は、2μm以上6μm以下であることが好ましい。
【0115】
第1トレンチゲート構造60は、一方側の第1側壁61、他方側の第2側壁62、ならびに、第1側壁61および第2側壁62を接続する底壁63を含む。以下では、第1側壁61、第2側壁62および底壁63を纏めて「内壁」または「外壁」ということがある。
【0116】
半導体層2内において第1側壁61が第1主面3との間で成す角度(テーパ角)の絶対値は、90°を超えて95°以下(たとえば91°程度)であってもよい。半導体層2内において第2側壁62が第1主面3との間で成す角度(テーパ角)の絶対値は、90°を超えて95°以下(たとえば91°程度)であってもよい。第1トレンチゲート構造60は、断面視において第1主面3側から底壁63側に向けて第1幅WT1が狭まる先細り形状(テーパ形状)に形成されていてもよい。
【0117】
第1トレンチゲート構造60の底壁63は、ドリフト領域54の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。第1トレンチゲート構造60の底壁63は、ドリフト領域54の底部に向かう凸湾曲状(U字状)に形成されている。
【0118】
第1トレンチゲート構造60の底壁63は、ドリフト領域54の底部に対して1μm以上10μm以下の第1間隔IT1を空けて第1主面3側の領域に位置している。第1間隔IT1は、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、又は、8μm以上10μm以下であってもよい。第1間隔IT1は、1μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0119】
第2MISFET57は、この形態では、複数の第2FET構造68を含む。複数の第2FET構造68は、平面視において第1方向Xに沿って間隔を空けて配列され、第2方向Yに沿って帯状にそれぞれ延びている。
【0120】
複数の第2FET構造68は、複数の第1FET構造58と同一方向に沿って延びている。複数の第2FET構造68は、平面視において全体としてストライプ状に形成されている。複数の第2FET構造68は、この形態では、1個の第1FET構造58を挟む態様で複数の第1FET構造58と交互に配列されている。
【0121】
図5では第2FET構造68の一端部側の領域を図示し、第2FET構造68の他端部側の領域の図示を省略している。なお、第2FET構造68の他端部側の領域の構造は、第2FET構造68の一端部側の領域の構造とほぼ同様である。以下では、第2FET構造68の一端部側の領域の構造を例にとって説明し、第2FET構造68の他端部側の領域の構造についての説明は省略する。
【0122】
各第2FET構造68は、この形態では、第2トレンチゲート構造70を含む。第2トレンチゲート構造70の第2幅WT2は、0.5μm以上5μm以下であってもよい。第2幅WT2は、第2トレンチゲート構造70が延びる方向(第2方向Y)に直交する方向(第1方向X)の幅である。
【0123】
なお、第2幅WT2は、0.5μm以上1μm以下、1μm以上1.5μm以下、1.5μm以上2μm以下、2μm以上2.5μm以下、2.5μm以上3μm以下、3μm以上3.5μm以下、3.5μm以上4μm以下、4μm以上4.5μm以下、または、4.5μm以上5μm以下であってもよい。第2幅WT2は、0.8μm以上1.2μm以下であることが好ましい。
【0124】
第2トレンチゲート構造70の第2幅WT2は、第1トレンチゲート構造60の第1幅WT1以上(WT1≦WT2)であってもよい。第2幅WT2は、第1幅WT1以下(WT1≧WT2)であってもよい。第2幅WT2は、第1幅WT1と等しい(WT1=WT2)ことが好ましい。
【0125】
第2トレンチゲート構造70は、ボディ領域55を貫通し、ドリフト領域54に達している。第2トレンチゲート構造70の第2深さDT2は、1μm以上10μm以下であってもよい。第2深さDT2は、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、又は、8μm以上10μm以下であってもよい。第2深さDT2は、2μm以上6μm以下であることが好ましい。
【0126】
第2トレンチゲート構造70の第2深さDT2は、第1トレンチゲート構造60の第1深さDT1以上(DT1≦DT2)であってもよい。第2深さDT2は、第1深さDT1以下(DT1≧DT2)であってもよい。なお、第2深さDT2は、第1深さDT1と等しい(DT1=DT2)ことが好ましい。
【0127】
第2トレンチゲート構造70は、一方側の第1側壁71、他方側の第2側壁72、ならびに、第1側壁71および第2側壁72を接続する底壁73を含む。以下では、第1側壁71、第2側壁72および底壁73を纏めて「内壁」または「外壁」ということがある。
【0128】
半導体層2内において第1側壁71が第1主面3との間で成す角度(テーパ角)の絶対値は、90°を超えて95°以下(たとえば91°程度)であってもよい。半導体層2内において第2側壁72が第1主面3との間で成す角度(テーパ角)の絶対値は、90°を超えて95°以下(たとえば91°程度)であってもよい。第2トレンチゲート構造70は、断面視において第1主面3側から底壁73側に向けて第2幅WT2が狭まる先細り形状(テーパ形状)に形成されていてもよい。
【0129】
第2トレンチゲート構造70の底壁73は、ドリフト領域54の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。第2トレンチゲート構造70の底壁73は、ドリフト領域54の底部に向かう凸湾曲状(U字状)に形成されている。
【0130】
第2トレンチゲート構造70の底壁73は、ドリフト領域54の底部に対して1μm以上10μm以下の第2間隔IT2を空けて第1主面3側の領域に位置している。第2間隔IT2は、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、又は、8μm以上10μm以下であってもよい。第2間隔IT2は、1μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0131】
複数の第1トレンチゲート構造60および複数の第2トレンチゲート構造70の間の領域には、セル領域75がそれぞれ区画されている。複数のセル領域75は、平面視において第1方向Xに沿って間隔を空けて配列され、第2方向Yに沿って帯状にそれぞれ延びている。複数のセル領域75は、第1トレンチゲート構造60および第2トレンチゲート構造70と同一方向に沿って延びている。複数のセル領域75は、平面視において全体としてストライプ状に形成されている。
【0132】
第1トレンチゲート構造60の外壁からは、ドリフト領域54の内部に第1空乏層が拡がる。第1空乏層は、第1トレンチゲート構造60の外壁から第1主面3に沿う方向および法線方向Zに向けて広がる。同様に、第2トレンチゲート構造70の外壁からは、ドリフト領域54内に第2空乏層が拡がる。第2空乏層は、第2トレンチゲート構造70の外壁から第1主面3に沿う方向および法線方向Zに向けて広がる。
【0133】
第2トレンチゲート構造70は、第2空乏層が第1空乏層に重なる態様で、第1トレンチゲート構造60から間隔を空けて配列されている。つまり、第2空乏層は、セル領域75において第2トレンチゲート構造70の底壁73に対して第1主面3側の領域で第1空乏層に重なる。このような構造によれば、第1トレンチゲート構造60および第2トレンチゲート構造70に電界が集中するのを抑制できるから、ブレークダウン電圧の低下を抑制できる。
【0134】
第2空乏層は、第2トレンチゲート構造70の底壁73に対してドリフト領域54の底部側の領域で第1空乏層に重なることが好ましい。このような構造によれば、第1トレンチゲート構造60の底壁63および第2トレンチゲート構造70の底壁73に電界が集中するのを抑制できるから、ブレークダウン電圧の低下を適切に抑制できる。
【0135】
第1トレンチゲート構造60および第2トレンチゲート構造70の側壁間のピッチPSは、0.2μm以上2μm以下であってもよい。ピッチPSは、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61(第2側壁62)および第2トレンチゲート構造70の第2側壁72(第1側壁71)の間において、第1トレンチゲート構造60および第2トレンチゲート構造70が延びる方向(第2方向Y)に直交する方向(第1方向X)の距離である。
【0136】
ピッチPSは、0.2μm以上0.4μm以下、0.4μm以上0.6μm以下、0.6μm以上0.8μm以下、0.8μm以上1.0μm以下、1.0μm以上1.2μm以下、1.2μm以上1.4μm以下、1.4μm以上1.6μm以下、1.6μm以上1.8μm以下、又は、1.8μm以上2.0μm以下であってもよい。ピッチPSは、0.3μm以上1.5μm以下であることが好ましい。
【0137】
第1トレンチゲート構造60および第2トレンチゲート構造70の中央部間のピッチPCは、1μm以上7μm以下であってもよい。ピッチPCは、第1トレンチゲート構造60の中央部および第2トレンチゲート構造70の中央部の間において、第1トレンチゲート構造60および第2トレンチゲート構造70が延びる方向(第2方向Y)に直交する方向(第1方向X)の距離である。
【0138】
なお、ピッチPCは、1μm以上2μm以下、2μm以上3μm以下、3μm以上4μm以下、4μm以上5μm以下、5μm以上6μm以下、または、6μm以上7μm以下であってもよい。ピッチPCは、1μm以上3μm以下であることが好ましい。
【0139】
第1トレンチゲート構造60は、より具体的には、第1ゲートトレンチ81、第1絶縁層82および第1電極83を含む。第1ゲートトレンチ81は、第1主面3を第2主面4側に向けて掘り下げることによって形成されている。
【0140】
第1ゲートトレンチ81は、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61、第2側壁62および底壁63を区画している。以下では、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61、第2側壁62および底壁63を、第1ゲートトレンチ81の第1側壁61、第2側壁62および底壁63ともいう。
【0141】
第1絶縁層82は、第1ゲートトレンチ81の内壁に沿って膜状に形成されている。第1絶縁層82は、第1ゲートトレンチ81内において凹状の空間を区画している。第1絶縁層82において第1ゲートトレンチ81の底壁63を被覆する部分は、第1ゲートトレンチ81の底壁63に倣って形成されている。これにより、第1絶縁層82は、第1ゲートトレンチ81内においてU字状に窪んだU字空間を区画している。
【0142】
第1絶縁層82は、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)および酸化タンタル(Ta2O3)のうちの少なくとも1種を含む。
【0143】
第1絶縁層82は、半導体層2側からこの順に積層されたSiN層およびSiO2層を含む積層構造を有していてもよい。第1絶縁層82は、半導体層2側からこの順に積層されたSiO2層およびSiN層を含む積層構造を有していてもよい。第1絶縁層82は、SiO2層またはSiN層からなる単層構造を有していてもよい。第1絶縁層82は、この形態では、SiO2層からなる単層構造を有している。
【0144】
第1絶縁層82は、第1ゲートトレンチ81の底壁63側から第1主面3側に向けてこの順に形成された第1底側絶縁層84および第1開口側絶縁層85を含む。
【0145】
第1底側絶縁層84は、第1ゲートトレンチ81の底壁63側の内壁を被覆している。第1底側絶縁層84は、より具体的には、ボディ領域55の底部に対して第1ゲートトレンチ81の底壁63側の内壁を被覆している。第1底側絶縁層84は、第1ゲートトレンチ81の底壁63側においてU字空間を区画している。第1底側絶縁層84は、U字空間を区画する平滑な内壁面を有している。第1底側絶縁層84は、ドリフト領域54に接している。第1底側絶縁層84の一部は、ボディ領域55に接していてもよい。
【0146】
第1開口側絶縁層85は、第1ゲートトレンチ81の開口側の内壁を被覆している。第1開口側絶縁層85は、より具体的には、ボディ領域55の底部に対して第1ゲートトレンチ81の開口側の領域において第1ゲートトレンチ81の第1側壁61および第2側壁62を被覆している。第1開口側絶縁層85は、ボディ領域55に接している。第1開口側絶縁層85の一部は、ドリフト領域54に接していてもよい。
【0147】
第1底側絶縁層84は、第1厚さT1を有している。第1開口側絶縁層85は、第1厚さT1未満の第2厚さT2(T2<T1)を有している。第1厚さT1は、第1底側絶縁層84において第1ゲートトレンチ81の内壁の法線方向に沿う厚さである。第2厚さT2は、第1開口側絶縁層85において第1ゲートトレンチ81の内壁の法線方向に沿う厚さである。
【0148】
なお、第1ゲートトレンチ81の第1幅WT1に対する第1厚さT1の第1比T1/WT1は、0.1以上0.4以下であってもよい。また、第1比T1/WT1は、0.1以上0.15以下、0.15以上0.2以下、0.2以上0.25以下、0.25以上0.3以下、0.3以上0.35以下、または、0.35以上0.4以下であってもよい。第1比T1/WT1は、0.25以上0.35以下であることが好ましい。
【0149】
なお、第1底側絶縁層84の第1厚さT1は、1500Å以上4000Å以下であってもよい。第1厚さT1は、1500Å以上2000Å以下、2000Å以上2500Å以下、2500Å以上3000Å以下、3000Å以上3500Å以下、または、3500Å以上4000Å以下であってもよい。第1厚さT1は、1800Å以上3500Å以下であることが好ましい。
【0150】
第1厚さT1は、第1ゲートトレンチ81の第1幅WT1に応じて、4000Å以上12000Å以下に調整されてもよい。第1厚さT1は、4000Å以上5000Å以下、5000Å以上6000Å以下、6000Å以上7000Å以下、7000Å以上8000Å以下、8000Å以上9000Å以下、9000Å以上10000Å以下、10000Å以上11000Å以下、又は、11000Å以上12000Å以下であってもよい。この場合、第1底側絶縁層84の厚化により半導体装置1の耐圧を高めることができる。
【0151】
第1開口側絶縁層85の第2厚さT2は、第1底側絶縁層84の第1厚さT1の1/100以上1/10以下であってもよい。第2厚さT2は、100Å以上500Å以下であってもよい。第2厚さT2は、100Å以上200Å以下、200Å以上300Å以下、300Å以上400Å以下、または、400Å以上500Å以下であってもよい。第2厚さT2は、200Å以上400Å以下であることが好ましい。
【0152】
第1底側絶縁層84は、第1ゲートトレンチ81の第1側壁61および第2側壁62を被覆する部分から第1ゲートトレンチ81の底壁63を被覆する部分に向けて第1厚さT1が減少する態様で形成されている。
【0153】
第1底側絶縁層84において第1ゲートトレンチ81の底壁63を被覆する部分の厚さは、第1底側絶縁層84において第1ゲートトレンチ81の第1側壁61および第2側壁62を被覆する部分の厚さよりも小さい。第1底側絶縁層84によって区画されたU字空間の底壁側の開口幅は、第1厚さT1の減少分だけ拡張されている。これにより、U字空間の先細りが抑制されている。このようなU字空間は、たとえば、第1底側絶縁層84の内壁に対するエッチング法(たとえばウエットエッチング法)によって形成される。
【0154】
第1電極83は、第1絶縁層82を挟んで、第1ゲートトレンチ81に埋め込まれている。第1電極83にはオン信号Vonおよびオフ信号Voffを含む第1ゲート制御信号(第1制御信号)が印加される。第1電極83は、この形態では、第1底側電極86、第1開口側電極87および第1中間絶縁層88を含む絶縁分離型のスプリット電極構造を有している。
【0155】
第1底側電極86は、第1絶縁層82を挟んで第1ゲートトレンチ81の底壁63側に埋設されている。第1底側電極86は、より具体的には、第1底側絶縁層84を挟んで第1ゲートトレンチ81の底壁63側に埋設されている。第1底側電極86は、第1底側絶縁層84を挟んでドリフト領域54に対向している。第1底側電極86の一部は、第1底側絶縁層84を挟んでボディ領域55に対向していてもよい。
【0156】
第1底側電極86は、第1ゲートトレンチ81の開口側において、第1底側絶縁層84および第1開口側絶縁層85との間で、断面視において逆凹状のリセスを区画している。このような構造によれば、第1底側電極86に対する局所的な電界集中を抑制できるから、ブレークダウン電圧の低下を抑制できる。特に、第1底側絶縁層84の拡張されたU字空間に第1底側電極86を埋設することにより、第1底側電極86が上端部から下端部に向けて先細り形状になることを適切に抑制できる。これにより、第1底側電極86の下端部に対する局所的な電界集中を適切に抑制できる。
【0157】
第1底側電極86は、導電性ポリシリコン、タングステン、アルミニウム、銅、アルミニウム合金および銅合金のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。第1底側電極86は、この形態では、導電性ポリシリコンを含む。導電性ポリシリコンは、n型不純物またはp型不純物を含んでいてもよい。なお、導電性ポリシリコンは、n型不純物を含むことが好ましい。
【0158】
第1開口側電極87は、第1絶縁層82を挟んで第1ゲートトレンチ81の開口側に埋設されている。第1開口側電極87は、より具体的には、第1開口側絶縁層85を挟んで第1ゲートトレンチ81の開口側に区画された逆凹状のリセスに埋設されている。第1開口側電極87は、第1開口側絶縁層85を挟んでボディ領域55に対向している。第1開口側電極87の一部は、第1開口側絶縁層85を挟んでドリフト領域54に対向していてもよい。
【0159】
第1開口側電極87は、導電性ポリシリコン、タングステン、アルミニウム、銅、アルミニウム合金および銅合金のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。第1開口側電極87は、第1底側電極86と同一種の導電材料を含むことが好ましい。第1開口側電極87は、この形態では、導電性ポリシリコンを含む。導電性ポリシリコンは、n型不純物またはp型不純物を含んでいてもよい。導電性ポリシリコンは、n型不純物を含むことが好ましい。
【0160】
第1中間絶縁層88は、第1底側電極86および第1開口側電極87の間に介在し、第1底側電極86および第1開口側電極87を電気的に絶縁している。第1中間絶縁層88は、より具体的には、第1底側電極86及び第1開口側電極87の間の領域において第1底側絶縁層84から露出する第1底側電極86を被覆している。第1中間絶縁層88は、第1底側電極86の上端部(より具体的には突出部)を被覆している。第1中間絶縁層88は、第1絶縁層82(第1底側絶縁層84)に連なっている。
【0161】
第1中間絶縁層88は、第3厚さT3を有している。第3厚さT3は、第1底側絶縁層84の第1厚さT1未満(T3<T1)である。第3厚さT3は、第1厚さT1の1/100以上1/10以下であってもよい。第3厚さT3は、100Å以上500Å以下であってもよい。第3厚さT3は、100Å以上200Å以下、200Å以上300Å以下、300Å以上400Å以下、または、400Å以上500Å以下であってもよい。第3厚さT3は、200Å以上400Å以下であることが好ましい。
【0162】
第1中間絶縁層88は、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タンタル(Ta2O3)のうちの少なくとも1種を含む。第1中間絶縁層88は、この形態では、SiO2層からなる単層構造を有している。
【0163】
第1開口側電極87において第1ゲートトレンチ81から露出する露出部は、この形態では、第1主面3に対して第1ゲートトレンチ81の底壁63側に位置している。第1開口側電極87の露出部は、第1ゲートトレンチ81の底壁63に向かう湾曲状に形成されている。
【0164】
第1開口側電極87の露出部は、膜状に形成された第1キャップ絶縁層によって被覆されている。第1キャップ絶縁層は、第1ゲートトレンチ81内において第1絶縁層82(第1開口側絶縁層85)に連なっている。第1キャップ絶縁層は、酸化シリコン(SiO2)を含んでいてもよい。
【0165】
各第1FET構造58は、p型の第1チャネル領域91(第1チャネル)を更に含む。第1チャネル領域91は、ボディ領域55において第1絶縁層82(第1開口側絶縁層85)を挟んで第1電極83(第1開口側電極87)に対向する領域に形成される。
【0166】
第1チャネル領域91は、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61または第2側壁62、もしくは、第1側壁61および第2側壁62に沿って形成されている。第1チャネル領域91は、この形態では、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61および第2側壁62に沿って形成されている。
【0167】
各第1FET構造58は、ボディ領域55の表層部に形成されたn+型の第1ソース領域92をさらに含む。第1ソース領域92は、ボディ領域55内においてドリフト領域54との間で第1チャネル領域91を画定する。第1ソース領域92のn型不純物濃度は、ドリフト領域54のn型不純物濃度を超えている。第1ソース領域92のn型不純物濃度は、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。
【0168】
各第1FET構造58は、この形態では、複数の第1ソース領域92を含む。複数の第1ソース領域92は、ボディ領域55の表層部において第1トレンチゲート構造60に沿って間隔を空けて形成されている。複数の第1ソース領域92は、より具体的には、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61または第2側壁62、もしくは、第1側壁61及び第2側壁62に沿って形成されている。複数の第1ソース領域92は、この形態では、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61および第2側壁62に沿って間隔を空けて形成されている。
【0169】
複数の第1ソース領域92の底部は、ボディ領域55の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。これにより、複数の第1ソース領域92は、第1絶縁層82(第1開口側絶縁層85)を挟んで第1電極83(第1開口側電極87)に対向している。このようにして、第1MISFET56の第1チャネル領域91が、ボディ領域55において複数の第1ソース領域92およびドリフト領域54に挟まれた領域に形成される。
【0170】
各第1FET構造58は、ボディ領域55の表層部に形成されたp+型の第1コンタクト領域93を更に含む。第1コンタクト領域93のp型不純物濃度は、ボディ領域55のp型不純物濃度を超えている。第1コンタクト領域93のp型不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。
【0171】
各第1FET構造58は、この形態では、複数の第1コンタクト領域93を含む。複数の第1コンタクト領域93は、ボディ領域55の表層部において第1トレンチゲート構造60に沿って間隔を空けて形成されている。複数の第1コンタクト領域93は、より具体的には、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61または第2側壁62、もしくは、第1側壁61および第2側壁62に沿って形成されている。
【0172】
複数の第1コンタクト領域93は、この形態では、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61及び第2側壁62に沿って間隔を空けて形成されている。複数の第1コンタクト領域93は、より具体的には、複数の第1ソース領域92に対して交互の配列となる態様でボディ領域55の表層部に形成されている。複数の第1コンタクト領域93の底部は、ボディ領域55の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。
【0173】
第2トレンチゲート構造70は、第2ゲートトレンチ101、第2絶縁層102および第2電極103を含む。第2ゲートトレンチ101は、第1主面3を第2主面4側に向けて掘り下げることによって形成されている。
【0174】
第2ゲートトレンチ101は、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71、第2側壁72および底壁73を区画している。以下では、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71、第2側壁72および底壁73を、第2ゲートトレンチ101の第1側壁71、第2側壁72および底壁73ともいう。
【0175】
第2絶縁層102は、第2ゲートトレンチ101の内壁に沿い膜状に形成されている。第2絶縁層102は、第2ゲートトレンチ101内において凹状の空間を区画している。第2絶縁層102において第2ゲートトレンチ101の底壁73を被覆する部分は、第2ゲートトレンチ101の底壁73に倣って形成されている。これにより、第2絶縁層102は、第2ゲートトレンチ101内においてU字状に窪んだU字空間を区画している。
【0176】
第2絶縁層102は、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)及び酸化タンタル(Ta2O3)のうちの少なくとも1種を含む。
【0177】
第2絶縁層102は、半導体層2側からこの順に積層されたSiN層およびSiO2層を含む積層構造を有していてもよい。第2絶縁層102は、半導体層2側からこの順に積層されたSiO2層およびSiN層を含む積層構造を有していてもよい。第2絶縁層102は、SiO2層またはSiN層からなる単層構造を有していてもよい。第2絶縁層102は、この形態では、SiO2層からなる単層構造を有している。
【0178】
第2絶縁層102は、第2ゲートトレンチ101の底壁73側から第1主面3側に向けてこの順に形成された第2底側絶縁層104および第2開口側絶縁層105を含む。
【0179】
第2底側絶縁層104は、第2ゲートトレンチ101の底壁73側の内壁を被覆している。第2底側絶縁層104は、より具体的には、ボディ領域55の底部に対して第2ゲートトレンチ101の底壁73側の内壁を被覆している。第2底側絶縁層104は、第2ゲートトレンチ101の底壁73側においてU字空間を区画している。第2底側絶縁層104は、U字空間を区画する平滑な内壁面を有している。第2底側絶縁層104は、ドリフト領域54に接している。第2底側絶縁層104の一部は、ボディ領域55に接していてもよい。
【0180】
第2開口側絶縁層105は、第2ゲートトレンチ101の開口側内壁を被覆している。第2開口側絶縁層105は、より具体的には、ボディ領域55の底部に対して第2ゲートトレンチ101の開口側の領域において第2ゲートトレンチ101の第1側壁71及び第2側壁72を被覆している。第2開口側絶縁層105は、ボディ領域55に接している。第2開口側絶縁層105の一部は、ドリフト領域54に接していてもよい。
【0181】
第2底側絶縁層104は、第4厚さT4を有している。第2開口側絶縁層105は、第4厚さT4未満の第5厚さT5(T5<T4)を有している。第4厚さT4は、第2底側絶縁層104において第2ゲートトレンチ101の内壁の法線方向に沿う厚さである。第5厚さT5は、第2開口側絶縁層105において第2ゲートトレンチ101の内壁の法線方向に沿う厚さである。
【0182】
第2ゲートトレンチ101の第2幅WT2に対する第4厚さT4の第2比T4/WT2は、0.1以上0.4以下であってもよい。例えば、第2比T4/WT2は、0.1以上0.15以下、0.15以上0.2以下、0.2以上0.25以下、0.25以上0.3以下、0.3以上0.35以下、または、0.35以上0.4以下であってもよい。第2比T4/WT2は、0.25以上0.35以下であることが好ましい。
【0183】
第2比T4/WT2は、第1比T1/WT1以下(T4/WT2≦T1/WT1)であってもよい。第2比T4/WT2は、第1比T1/WT1以上(T4/WT2≧T1/WT1)であってもよい。また、第2比T4/WT2は、第1比T1/WT1と等しくてもよい(T4/WT2=T1/WT1)。
【0184】
第2底側絶縁層104の第4厚さT4は、1500Å以上4000Å以下であってもよい。第4厚さT4は、1500Å以上2000Å以下、2000Å以上2500Å以下、2500Å以上3000Å以下、3000Å以上3500Å以下、または、3500Å以上4000Å以下であってもよい。第4厚さT4は、1800Å以上3500Å以下であることが好ましい。
【0185】
第4厚さT4は、第2ゲートトレンチ101の第2幅WT2に応じて、4000Å以上12000Å以下であってもよい。第4厚さT4は、4000Å以上5000Å以下、5000Å以上6000Å以下、6000Å以上7000Å以下、7000Å以上8000Å以下、8000Å以上9000Å以下、9000Å以上10000Å以下、10000Å以上11000Å以下、又は、11000Å以上12000Å以下であってもよい。この場合、第2底側絶縁層104の厚化により半導体装置1の耐圧を高めることができる。
【0186】
第4厚さT4は、第1厚さT1以下(T4≦T1)であってもよい。第4厚さT4は、第1厚さT1以上(T4≧T1)であってもよい。第4厚さT4は、第1厚さT1と等しくてもよい(T4=T1)。
【0187】
第2開口側絶縁層105の第5厚さT5は、第2底側絶縁層104の第4厚さT4未満(T5<T4)である。第5厚さT5は、第4厚さT4の1/100以上1/10以下であってもよい。100Å以上500Å以下であってもよい。第5厚さT5は、100Å以上200Å以下、200Å以上300Å以下、300Å以上400Å以下、または、400Å以上500Å以下であってもよい。第5厚さT5は、200Å以上400Å以下であることが好ましい。
【0188】
第5厚さT5は、第2厚さT2以下(T5≦T2)であってもよい。第5厚さT5は、第2厚さT2以上(T5≧T2)であってもよい。第5厚さT5は、第2厚さT2と等しくてもよい(T5=T2)。
【0189】
第2底側絶縁層104は、第2ゲートトレンチ101の第1側壁71および第2側壁72を被覆する部分から第2ゲートトレンチ101の底壁73を被覆する部分に向けて第4厚さT4が減少する態様で形成されている。
【0190】
第2底側絶縁層104において第2ゲートトレンチ101の底壁73を被覆する部分の厚さは、第2底側絶縁層104において第2ゲートトレンチ101の第1側壁71及び第2側壁72を被覆する部分の厚さよりも小さい。第2底側絶縁層104により区画されたU字空間の底壁側の開口幅は、第4厚さT4の減少分だけ拡張されている。これにより、U字空間の先細りが抑制されている。このようなU字空間は、例えば、第2底側絶縁層104の内壁に対するエッチング法(例えばウエットエッチング法)によって形成される。
【0191】
第2電極103は、第2絶縁層102を挟んで第2ゲートトレンチ101に埋め込まれている。第2電極103にはオン信号Vonおよびオフ信号Voffを含む所定の第2ゲート制御信号(第2制御信号)が印加される。
【0192】
第2電極103は、この形態では、第2底側電極106、第2開口側電極107および第2中間絶縁層108を含む絶縁分離型のスプリット電極構造を有している。第2底側電極106は、この形態では、第1底側電極86に電気的に接続されている。第2開口側電極107は、第1開口側電極87から電気的に絶縁されている。
【0193】
第2底側電極106は、第2絶縁層102を挟んで第2ゲートトレンチ101の底壁73側に埋設されている。第2底側電極106は、より具体的には、第2底側絶縁層104を挟んで第2ゲートトレンチ101の底壁73側に埋設されている。第2底側電極106は、第2底側絶縁層104を挟んでドリフト領域54に対向している。第2底側電極106の一部は、第2底側絶縁層104を挟んでボディ領域55に対向していてもよい。
【0194】
第2底側電極106は、第2ゲートトレンチ101の開口側において、第2底側絶縁層104および第2開口側絶縁層105との間で、断面視において逆凹状のリセスを区画している。このような構造によれば、第2底側電極106に対する局所的な電界集中を抑制できるので、ブレークダウン電圧の低下を抑制できる。特に、第2底側絶縁層104の拡張されたU字空間に第2底側電極106を埋設することにより、第2底側電極106が上端部から下端部に向けて先細り形状になることを適切に抑制できる。これにより、第2底側電極106の下端部に対する局所的な電界集中を適切に抑制できる。
【0195】
第2底側電極106は、導電性ポリシリコン、タングステン、アルミニウム、銅、アルミニウム合金および銅合金のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。第2底側電極106は、この形態では、導電性ポリシリコンを含む。導電性ポリシリコンは、n型不純物またはp型不純物を含んでいてもよい。導電性ポリシリコンは、n型不純物を含むことが好ましい。
【0196】
第2開口側電極107は、第2絶縁層102を挟んで第2ゲートトレンチ101の開口側に埋設されている。第2開口側電極107は、より具体的には、第2開口側絶縁層105を挟んで第2ゲートトレンチ101の開口側に区画された逆凹状のリセスに埋設されている。第2開口側電極107は、第2開口側絶縁層105を挟んでボディ領域55に対向している。第2開口側電極107の一部は、第2開口側絶縁層105を挟んでドリフト領域54に対向していてもよい。
【0197】
第2開口側電極107は、導電性ポリシリコン、タングステン、アルミニウム、銅、アルミニウム合金および銅合金のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。第2開口側電極107は、第2底側電極106と同一種の導電材料を含むことが好ましい。第2開口側電極107は、この形態では、導電性ポリシリコンを含む。導電性ポリシリコンは、n型不純物またはp型不純物を含んでいてもよい。導電性ポリシリコンは、n型不純物を含むことが好ましい。
【0198】
第2中間絶縁層108は、第2底側電極106および第2開口側電極107の間に介在し、第2底側電極106および第2開口側電極107を電気的に絶縁している。第2中間絶縁層108は、より具体的には、第2底側電極106および第2開口側電極107の間の領域において第2底側絶縁層104から露出する第2底側電極106を被覆している。第2中間絶縁層108は、第2底側電極106の上端部(より具体的には突出部)を被覆している。第2中間絶縁層108は、第2絶縁層102(第2底側絶縁層104)に連なっている。
【0199】
第2中間絶縁層108は、第6厚さT6を有している。第6厚さT6は、第2底側絶縁層104の第4厚さT4未満(T6<T4)である。第6厚さT6は、第4厚さT4の1/100以上1/10以下であってもよい。第6厚さT6は、100Å以上500Å以下であってもよい。第6厚さT6は、100Å以上200Å以下、200Å以上300Å以下、300Å以上400Å以下、または、400Å以上500Å以下であってもよい。第6厚さT6は、200Å以上400Å以下であることが好ましい。
【0200】
第6厚さT6は、第3厚さT3以下(T6≦T3)であってもよい。第6厚さT6は、第3厚さT3以上(T6≧T3)であってもよい。第6厚さT6は、第3厚さT3と等しくてもよい(T6=T3)。
【0201】
第2中間絶縁層108は、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)および酸化タンタル(Ta2O3)のうちの少なくとも1種を含む。なお、第2中間絶縁層108は、この形態では、SiO2層からなる単層構造を有している。
【0202】
第2開口側電極107において第2ゲートトレンチ101から露出する露出部は、この形態では、第1主面3に対して第2ゲートトレンチ101の底壁73側に位置している。第2開口側電極107の露出部は、第2ゲートトレンチ101の底壁73に向かう湾曲状に形成されている。
【0203】
第2開口側電極107の露出部は、膜状に形成された第2キャップ絶縁層によって被覆されている。第2キャップ絶縁層は、第2ゲートトレンチ101内において第2絶縁層102(第2開口側絶縁層105)に連なっている。第2キャップ絶縁層は、酸化シリコン(SiO2)を含んでいてもよい。
【0204】
各第2FET構造68は、p型の第2チャネル領域111(第2チャネル)をさらに含む。第2チャネル領域111は、より具体的には、ボディ領域55において第2絶縁層102(第2開口側絶縁層105)を挟んで第2電極103(第2開口側電極107)に対向する領域に形成される。
【0205】
第2チャネル領域111は、より具体的には、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71または第2側壁72、もしくは、第1側壁71および第2側壁72に沿って形成されている。第2チャネル領域111は、この形態では、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71および第2側壁72に沿って形成されている。
【0206】
各第2FET構造68は、ボディ領域55の表層部に形成されたn+型の第2ソース領域112をさらに含む。第2ソース領域112は、ボディ領域55内においてドリフト領域54との間で第2チャネル領域111を画定する。
【0207】
第2ソース領域112のn型不純物濃度は、ドリフト領域54のn型不純物濃度を超えている。第2ソース領域112のn型不純物濃度は、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。第2ソース領域112のn型不純物濃度は、第1ソース領域92のn型不純物濃度と等しいことが好ましい。
【0208】
各第2FET構造68は、この形態では、複数の第2ソース領域112を含む。複数の第2ソース領域112は、ボディ領域55の表層部において第2トレンチゲート構造70に沿って間隔を空けて形成されている。複数の第2ソース領域112は、具体的には、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71または第2側壁72、もしくは、第1側壁71および第2側壁72に沿って形成されている。複数の第2ソース領域112は、この形態では、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71および第2側壁72に沿って間隔を空けて形成されている。
【0209】
各第2ソース領域112は、この形態では、第1方向Xに沿って各第1ソース領域92と対向している。また、各第2ソース領域112は、各第1ソース領域92と一体を成している。
図5では、第1ソース領域92および第2ソース領域112を境界線によって区別して示しているが、第1ソース領域92および第2ソース領域112の間の領域には、実際には明確な境界線はない。
【0210】
各第2ソース領域112は、第1方向Xに沿って各第1ソース領域92の一部または全部と対向しないように、各第1ソース領域92から第2方向Yにずれて形成されていてもよい。つまり、複数の第1ソース領域92および複数の第2ソース領域112は、平面視において千鳥状に配列されていてもよい。
【0211】
複数の第2ソース領域112の底部は、ボディ領域55の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。これによって、複数の第2ソース領域112は、第2絶縁層102(第2開口側絶縁層105)を挟んで第2電極103(第2開口側電極107)に対向している。このようにして、第2MISFET57の第2チャネル領域111が、ボディ領域55において複数の第2ソース領域112およびドリフト領域54に挟まれた領域に形成される。
【0212】
各第2FET構造68は、ボディ領域55の表層部に形成されたp+型の第2コンタクト領域113を更に含む。第2コンタクト領域113のp型不純物濃度は、ボディ領域55のp型不純物濃度を超えている。第2コンタクト領域113のp型不純物濃度は、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。第2コンタクト領域113のp型不純物濃度は、第1コンタクト領域93のp型不純物濃度と等しいことが好ましい。
【0213】
各第2FET構造68は、この形態では、複数の第2コンタクト領域113を含む。複数の第2コンタクト領域113は、ボディ領域55の表層部において第2トレンチゲート構造70に沿って間隔を空けて形成されている。複数の第2コンタクト領域113は、より具体的には、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71または第2側壁72、もしくは、第1側壁71および第2側壁72に沿って形成されている。複数の第2コンタクト領域113の底部は、ボディ領域55の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。
【0214】
複数の第2コンタクト領域113は、この形態では、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71および第2側壁72に沿って間隔を空けて形成されている。複数の第2コンタクト領域113は、より具体的には、複数の第2ソース領域112に対して交互の配列となる態様でボディ領域55の表層部に形成されている。
【0215】
図5を参照して、各第2コンタクト領域113は、この形態では、第1方向Xに沿って各第1コンタクト領域93と対向している。各第2コンタクト領域113は、各第1コンタクト領域93と一体を成している。
【0216】
図5では、第1ソース領域92および第2ソース領域112と区別するため、第1コンタクト領域93および第2コンタクト領域113を纏めて「p
+」の記号で示している。
【0217】
各第2コンタクト領域113は、第1方向Xに沿って各第1コンタクト領域93の一部または全部と対向しないように、各第1コンタクト領域93から第2方向Yにずれて形成されていてもよい。つまり、複数の第1コンタクト領域93および複数の第2コンタクト領域113は、平面視において千鳥状に配列されていてもよい。
【0218】
図5を参照して、半導体層2の第1主面3において第1トレンチゲート構造60の一端部および第2トレンチゲート構造70の一端部の間の領域からは、この形態では、ボディ領域55が露出している。第1ソース領域92、第1コンタクト領域93、第2ソース領域112および第2コンタクト領域113は、第1主面3において第1トレンチゲート構造60の一端部および第2トレンチゲート構造70の一端部に挟まれた領域に形成されていない。
【0219】
同様に、図示はしないが、半導体層2の第1主面3において第1トレンチゲート構造60の他端部及び第2トレンチゲート構造70の他端部の間の領域からは、この形態では、ボディ領域55が露出している。第1ソース領域92、第1コンタクト領域93、第2ソース領域112および第2コンタクト領域113は、第1トレンチゲート構造60の他端部および第2トレンチゲート構造70の他端部に挟まれた領域に形成されていない。
【0220】
図5を参照し、半導体層2の第1主面3には、複数(ここでは2つ)のトレンチコンタクト構造120が形成されている。複数のトレンチコンタクト構造120は、一方側のトレンチコンタクト構造120および他方側のトレンチコンタクト構造120を含む。
【0221】
一方側のトレンチコンタクト構造120は、第1トレンチゲート構造60の一端部および第2トレンチゲート構造70の一端部側の領域に位置する。他方側のトレンチコンタクト構造120は、第1トレンチゲート構造60の他端部および第2トレンチゲート構造70の他端部側の領域に位置する。
【0222】
他方側のトレンチコンタクト構造120は、一方側のトレンチコンタクト構造120とほぼ同様の構造を有している。以下では、一方側のトレンチコンタクト構造120側の構造を例にとって説明し、他方側のトレンチコンタクト構造120側の構造についての具体的な説明は、省略される。
【0223】
トレンチコンタクト構造120は、第1トレンチゲート構造60の一端部および第2トレンチゲート構造70の一端部に接続されている。トレンチコンタクト構造120は、この形態では、平面視において第1方向Xに沿って帯状に延びている。
【0224】
トレンチコンタクト構造120の幅WTCは、0.5μm以上5μm以下であってもよい。幅WTCは、トレンチコンタクト構造120が延びる方向(第1方向X)に直交する方向(第2方向Y)の幅である。
【0225】
幅WTCは、0.5μm以上1μm以下、1μm以上1.5μm以下、1.5μm以上2μm以下、2μm以上2.5μm以下、2.5μm以上3μm以下、3μm以上3.5μm以下、3.5μm以上4μm以下、4μm以上4.5μm以下、または、4.5μm以上5μm以下であってもよい。幅WTCは、0.8μm以上1.2μm以下であることが好ましい。
【0226】
幅WTCは、第1トレンチゲート構造60の第1幅WT1と等しいことが好ましい(WTC=WT1)。幅WTCは、第2トレンチゲート構造70の第2幅WT2と等しいことが好ましい(WTC=WT2)。
【0227】
トレンチコンタクト構造120は、ボディ領域55を貫通し、ドリフト領域54に達している。トレンチコンタクト構造120の深さDTCは、1μm以上10μm以下であってもよい。深さDTCは、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、または、8μm以上10μm以下であってもよい。深さDTCは、2μm以上6μm以下であることが好ましい。
【0228】
深さDTCは、第1トレンチゲート構造60の第1深さDT1と等しいことが好ましい(DTC=DT1)。深さDTCは、第2トレンチゲート構造70の第2深さDT2と等しいことが好ましい(DTC=DT2)。
【0229】
トレンチコンタクト構造120は、一方側の第1側壁121と、他方側の第2側壁122と、第1側壁121および第2側壁122を接続する底壁123とを含む。以下では、第1側壁121、第2側壁122および底壁123を纏めて「内壁」ということがある。第1側壁121は、第1トレンチゲート構造60および第2トレンチゲート構造70に接続された接続面である。
【0230】
第1側壁121、第2側壁122および底壁123は、ドリフト領域54内に位置している。第1側壁121および第2側壁122は、法線方向Zに沿って延びている。第1側壁121および第2側壁122は、第1主面3に対して垂直に形成されていてもよい。
【0231】
半導体層2内において第1側壁121が第1主面3との間で成す角度(テーパ角)の絶対値は、90°を超えて95°以下(例えば91°程度)であってもよい。半導体層2内において第2側壁122が第1主面3との間で成す角度(テーパ角)の絶対値は、90°を超えて95°以下(たとえば91°程度)であってもよい。トレンチコンタクト構造120は、断面視において半導体層2の第1主面3側から底壁123側に向けて幅WTCが狭まる先細り形状(テーパ形状)に形成されていてもよい。
【0232】
底壁123は、ドリフト領域54の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。底壁123は、ドリフト領域54の底部に向かう凸湾曲状に形成されている。底壁123は、ドリフト領域54の底部に対して1μm以上10μm以下の間隔ITCを空けて第1主面3側の領域に位置している。間隔ITCは、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、または、8μm以上10μm以下であってもよい。間隔ITCは、1μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0233】
間隔ITCは、第1トレンチゲート構造60の第1間隔IT1と等しいことが好ましい(ITC=IT1)。間隔ITCは、第2トレンチゲート構造70の第2間隔IT2と等しいことが好ましい(ITC=IT2)。
【0234】
トレンチコンタクト構造120は、コンタクトトレンチ131、コンタクト絶縁層132およびコンタクト電極133を含む。コンタクトトレンチ131は、半導体層2の第1主面3を第2主面4側に向けて掘り下げることによって形成されている。
【0235】
コンタクトトレンチ131は、トレンチコンタクト構造120の第1側壁121、第2側壁122および底壁123を区画している。以下では、トレンチコンタクト構造120の第1側壁121、第2側壁122および底壁123を、コンタクトトレンチ131の第1側壁121、第2側壁122および底壁123ともいう。
【0236】
コンタクトトレンチ131の第1側壁121は、第1ゲートトレンチ81の第1側壁61および第2側壁62に連通している。コンタクトトレンチ131の第1側壁121は、第2ゲートトレンチ101の第1側壁71および第2側壁72に連通している。コンタクトトレンチ131は、第1ゲートトレンチ81および第2ゲートトレンチ101との間で1つのトレンチを形成している。
【0237】
コンタクト絶縁層132は、コンタクトトレンチ131の内壁に沿って膜状に形成されている。コンタクト絶縁層132は、コンタクトトレンチ131内において凹状の空間を区画している。コンタクト絶縁層132においてコンタクトトレンチ131の底壁123を被覆する部分は、コンタクトトレンチ131の底壁123に倣って形成されている。
【0238】
コンタクト絶縁層132は、第1底側絶縁層84(第2底側絶縁層104)と同様の態様で、コンタクトトレンチ131内においてU字状に窪んだU字空間を区画している。つまり、コンタクト絶縁層132は、コンタクトトレンチ131の底壁123側の領域が拡張され、先細りが抑制されたU字空間を区画している。このようなU字空間は、例えば、コンタクト絶縁層132の内壁に対するエッチング法(たとえばウエットエッチング法)によって形成される。
【0239】
コンタクト絶縁層132は、第7厚さT7を有している。第7厚さT7は、1500Å以上4000Å以下であってもよい。第7厚さT7は、1500Å以上2000Å以下、2000Å以上2500Å以下、2500Å以上3000Å以下、3000Å以上3500Å以下、または、3500Å以上4000Å以下であってもよい。第7厚さT7は、1800Å以上3500Å以下であることが好ましい。
【0240】
第7厚さT7は、トレンチコンタクト構造120の幅WTCに応じて4000Å以上12000Å以下であってもよい。第7厚さT7は、4000Å以上5000Å以下、5000Å以上6000Å以下、6000Å以上7000Å以下、7000Å以上8000Å以下、8000Å以上9000Å以下、9000Å以上10000Å以下、10000Å以上11000Å以下、又は、11000Å以上12000Å以下であってもよい。この場合、コンタクト絶縁層132の厚化により半導体装置1の耐圧を高めることができる。
【0241】
第7厚さT7は、第1底側絶縁層84の第1厚さT1と等しい(T7=T1)ことが好ましい。第7厚さT7は、第2底側絶縁層104の第4厚さT4と等しい(T7=T4)ことが好ましい。
【0242】
コンタクト絶縁層132は、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)及び酸化タンタル(Ta2O3)のうちの少なくとも1種を含む。
【0243】
コンタクト絶縁層132は、半導体層2側からこの順に積層されたSiN層およびSiO2層を含む積層構造を有していてもよい。コンタクト絶縁層132は、半導体層2側からこの順に積層されたSiO2層およびSiN層を含む積層構造を有していてもよい。コンタクト絶縁層132は、SiO2層またはSiN層からなる単層構造を有していてもよい。コンタクト絶縁層132は、この形態では、SiO2層からなる単層構造を有している。コンタクト絶縁層132は、第1絶縁層82(第2絶縁層102)と同一の絶縁材料からなることが好ましい。
【0244】
コンタクト絶縁層132は、第1ゲートトレンチ81およびコンタクトトレンチ131の間の連通部において第1絶縁層82と一体を成している。コンタクト絶縁層132は、第2ゲートトレンチ101およびコンタクトトレンチ131の間の連通部において第2絶縁層102と一体を成している。
【0245】
コンタクト絶縁層132は、この形態では、第1ゲートトレンチ81の一端部および第2ゲートトレンチ101の一端部に引き出された引き出し絶縁層132Aを有している。引き出し絶縁層132Aは、連通部を横切って第1ゲートトレンチ81の一端部の内壁を被覆している。引き出し絶縁層132Aは、連通部を横切って第2ゲートトレンチ101の一端部の内壁を被覆している。
【0246】
引き出し絶縁層132Aは、第1ゲートトレンチ81内で、第1底側絶縁層84及び第1開口側絶縁層85と一体を成している。引き出し絶縁層132Aは、第1ゲートトレンチ81の一端部の内壁において、第1底側絶縁層84と共にU字空間を区画している。
【0247】
引き出し絶縁層132Aは、第2ゲートトレンチ101内において第2底側絶縁層104および第2開口側絶縁層105と一体を成している。引き出し絶縁層132Aは、第2ゲートトレンチ101の一端部の内壁において、第2底側絶縁層104と共にU字空間を区画している。
【0248】
コンタクト電極133は、コンタクト絶縁層132を挟んでコンタクトトレンチ131に埋め込まれている。コンタクト電極133は、第1電極83および第2電極103とは異なり、一体物としてコンタクトトレンチ131に埋め込まれている。コンタクト電極133は、コンタクトトレンチ131から露出する上端部、コンタクト絶縁層132に接する下端部を有している。
【0249】
コンタクト電極133の下端部は、第1底側電極86(第2底側電極106)と同様の態様で、コンタクトトレンチ131の底壁123に向かう凸湾曲状に形成されている。コンタクト電極133の下端部は、より具体的には、コンタクト絶縁層132によって区画されたU字空間の底壁に倣って形成されており、底壁123に向かう滑らかな凸湾曲状に形成されている。
【0250】
このような構造によれば、コンタクト電極133に対する局所的な電界集中を抑制できるので、ブレークダウン電圧の低下を抑制できる。特に、コンタクト絶縁層132の拡張されたU字空間にコンタクト電極133を埋設することにより、コンタクト電極133が上端部から下端部に向けて先細り形状になることを適切に抑制できる。これにより、コンタクト絶縁層132の下端部に対する局所的な電界集中を適切に抑制できる。
【0251】
コンタクト電極133は、第1ゲートトレンチ81およびコンタクトトレンチ131の間の接続部において第1底側電極86に電気的に接続されている。コンタクト電極133は、第2ゲートトレンチ101およびコンタクトトレンチ131の間の接続部において第2底側電極106に電気的に接続されている。これにより、第2底側電極106は、第1底側電極86に電気的に接続されている。
【0252】
コンタクト電極133は、より具体的には、第1ゲートトレンチ81の一端部および第2ゲートトレンチ101の一端部に引き出された引き出し電極133Aを有している。引き出し電極133Aは、第1ゲートトレンチ81およびコンタクトトレンチ131の間の連通部を横切って第1ゲートトレンチ81内に位置している。引き出し電極133Aは、さらに、第2ゲートトレンチ101およびコンタクトトレンチ131の間の連通部を横切って第2ゲートトレンチ101内に位置している。
【0253】
引き出し電極133Aは、第1ゲートトレンチ81内においてコンタクト絶縁層132によって区画されたU字空間に埋め込まれている。引き出し電極133Aは、第1ゲートトレンチ81内において第1底側電極86と一体を成している。これにより、コンタクト電極133は、第1底側電極86に電気的に接続されている。
【0254】
第1ゲートトレンチ81内においてコンタクト電極133および第1開口側電極87の間には、第1中間絶縁層88が介在している。これにより、コンタクト電極133は、第1ゲートトレンチ81内において第1開口側電極87から電気的に絶縁されている。
【0255】
引き出し電極133Aは、第2ゲートトレンチ101内においてコンタクト絶縁層132によって区画されたU字空間に埋め込まれている。引き出し電極133Aは、第2ゲートトレンチ101内において第2底側電極106と一体を成している。これにより、コンタクト電極133は、第2底側電極106に電気的に接続されている。
【0256】
第2ゲートトレンチ101内において、コンタクト電極133と第2開口側電極107との間には、第2中間絶縁層108が介在している。これにより、コンタクト電極133は、第2ゲートトレンチ101内において、第2開口側電極107から電気的に絶縁されている。
【0257】
コンタクト電極133は、導電性ポリシリコン、タングステン、アルミニウム、銅、アルミニウム合金および銅合金のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。コンタクト電極133は、この形態では、導電性ポリシリコンを含む。導電性ポリシリコンは、n型不純物またはp型不純物を含んでいてもよい。導電性ポリシリコンは、n型不純物を含むことが好ましい。コンタクト電極133は、第1底側電極86および第2底側電極106と同一の導電材料を含むことが好ましい。
【0258】
コンタクト電極133において、コンタクトトレンチ131から露出する露出部は、この形態では、第1主面3に対してコンタクトトレンチ131の底壁123側に位置している。コンタクト電極133の露出部は、コンタクトトレンチ131の底壁123に向かう湾曲状に形成されている。
【0259】
コンタクト電極133の露出部は、膜状に形成された第3キャップ絶縁層139により被覆されている。第3キャップ絶縁層139は、コンタクトトレンチ131内においてコンタクト絶縁層132に連なっている。第3キャップ絶縁層139は、酸化シリコン(SiO2)を含んでいてもよい。
【0260】
なお、コントロールIC10から第1ゲート制御配線17A(不図示)に入力されるゲート制御信号は、第1開口側電極87に伝達される。また、コントロールIC10から第2ゲート制御配線17B(不図示)に入力されるゲート制御信号は、第2開口側電極107に伝達される。また、コントロールIC10から第3ゲート制御配線17C(不図示)に入力されるゲート制御信号は、コンタクト電極133を介して第1底側電極86および第2底側電極106に伝達される。
【0261】
第1MISFET56(第1トレンチゲート構造60)及び第2MISFET57(第2トレンチゲート構造70)が共にオフ状態に制御される場合、第1チャネル領域91および第2チャネル領域111は共にオフ状態に制御される。
【0262】
第1MISFET56および第2MISFET57が共にオン状態に制御される場合、第1チャネル領域91および第2チャネル領域111は共にオン状態に制御される(Full-ON制御)。
【0263】
第1MISFET56がオン状態に制御される一方で、第2MISFET57がオフ状態に制御される場合、第1チャネル領域91はオン状態に制御され、第2チャネル領域111はオフ状態に制御される(第1Half-ON制御)。
【0264】
第1MISFET56がオフ状態に制御される一方で、第2MISFET57がオン状態に制御される場合、第1チャネル領域91はオフ状態に制御され、第2チャネル領域111はオン状態に制御される(第2Half-ON制御)。
【0265】
このようにして、パワーMISFET9では、1つの出力領域6に形成された第1MISFET56および第2MISFET57を利用して、Full-ON制御、第1Half-ON制御および第2Half-ON制御を含む複数種の制御が実現される。
【0266】
第1MISFET56を駆動させるとき(つまり、ゲートのオン制御時)、第1底側電極86にオン信号Vonが印加され、第1開口側電極87にオン信号Vonが印加されてもよい。この場合、第1底側電極86および第1開口側電極87は、ゲート電極として機能する。
【0267】
これにより、第1底側電極86および第1開口側電極87の間の電圧降下を抑制できるので、第1底側電極86及び第1開口側電極87の間の電界集中を抑制できる。また、半導体層2のオン抵抗を低下させることができるので、消費電力低減を図ることができる。
【0268】
第1MISFET56を駆動させるとき(つまり、ゲートのオン制御時)、第1底側電極86にオフ信号Voff(たとえば基準電圧)が印加され、第1開口側電極87にオン信号Vonが印加されてもよい。この場合、第1底側電極86がフィールド電極として機能する一方で、第1開口側電極87がゲート電極として機能する。これにより、寄生容量を低下させることができるから、スイッチング速度の向上を図ることができる。
【0269】
第2MISFET57を駆動させるとき(つまり、ゲートのオン制御時)、第2底側電極106にオン信号Vonが印加され、第2開口側電極107にオン信号Vonが印加されてもよい。この場合、第2底側電極106および第2開口側電極107は、ゲート電極として機能する。
【0270】
これにより、第2底側電極106および第2開口側電極107の間の電圧降下を抑制できるから、第2底側電極106及び第2開口側電極107の間の電界集中を抑制できる。また、半導体層2のオン抵抗を低下させることができるから、消費電力の低減を図ることができる。
【0271】
第2MISFET57を駆動させるとき(つまり、ゲートのオン制御時)、第2底側電極106にオフ信号Voff(基準電圧)が印加され、第2開口側電極107にオン信号Vonが印加されてもよい。この場合、第2底側電極106がフィールド電極として機能する一方で、第2開口側電極107がゲート電極として機能する。これにより、寄生容量を低下させることができるから、スイッチング速度の向上を図ることができる。
【0272】
図5を参照して、第1チャネル領域91は、各セル領域75において第1チャネル面積S1で形成されている。第1チャネル面積S1は、各セル領域75に形成された複数の第1ソース領域92のトータル平面面積によって定義される。
【0273】
第1チャネル領域91は、各セル領域75において第1チャネル割合R1(第1割合)で形成されている。第1チャネル割合R1は、各セル領域75の平面面積を100%としたとき、各セル領域75において第1チャネル面積S1が占める割合である。
【0274】
第1チャネル割合R1は、0%以上50%以下の範囲で調整される。第1チャネル割合R1は、0%以上5%以下、5%以上10%以下、10%以上15%以下、15%以上20%以下、20%以上25%以下、25%以上30%以下、30%以上35%以下、35%以上40%以下、40%以上45%以下、または、45%以上50%以下であってもよい。第1チャネル割合R1は、10%以上35%以下であることが好ましい。
【0275】
第1チャネル割合R1が50%の場合、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61および第2側壁62のほぼ全域に第1ソース領域92が形成される。この場合、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61および第2側壁62に第1コンタクト領域93は形成されない。第1チャネル割合R1は、50%未満であることが好ましい。
【0276】
第1チャネル割合R1が0%の場合、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61および第2側壁62に第1ソース領域92は形成されない。この場合、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61および第2側壁62にボディ領域55および/または第1コンタクト領域93だけが形成される。第1チャネル割合R1は、0%を超えることが好ましい。この形態では、第1チャネル割合R1が25%である例が示されている。
【0277】
第2チャネル領域111は、各セル領域75において第2チャネル面積S2で形成されている。第2チャネル面積S2は、各セル領域75に形成された複数の第2ソース領域112のトータル平面面積によって定義される。
【0278】
第2チャネル領域111は、各セル領域75において、第2チャネル割合R2(第2割合)で形成されている。第2チャネル割合R2は、各セル領域75の平面面積を100%としたとき、各セル領域75において第2チャネル面積S2が占める割合である。
【0279】
第2チャネル割合R2は、0%以上50%以下の範囲で調整される。第2チャネル割合R2は、0%以上5%以下、5%以上10%以下、10%以上15%以下、15%以上20%以下、20%以上25%以下、25%以上30%以下、30%以上35%以下、35%以上40%以下、40%以上45%以下、または、45%以上50%以下であってもよい。第2チャネル割合R2は、10%以上35%以下であることが好ましい。
【0280】
第2チャネル割合R2が50%の場合、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71および第2側壁72のほぼ全域に第2ソース領域112が形成される。この場合、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71および第2側壁72に第2コンタクト領域113は形成されない。第2チャネル割合R2は、50%未満であることが好ましい。
【0281】
第2チャネル割合R2が0%の場合、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71および第2側壁72に第2ソース領域112は形成されない。この場合、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71および第2側壁72にボディ領域55および/または第2コンタクト領域113だけが形成される。第2チャネル割合R2は、0%を超えることが好ましい。この形態では、第2チャネル割合R2が25%である例が示されている。
【0282】
このように、第1チャネル領域91および第2チャネル領域111は、各セル領域75において0%以上100%以下(好ましくは0%を超えて100%未満)の総チャネル割合RT(RT=R1+R2)で形成される。
【0283】
各セル領域75における総チャネル割合RTは、この形態では50%である。この形態では、全ての総チャネル割合RTが等しい値に設定されている。そのため、出力領域6内(単位面積)における平均チャネル割合RAVは50%となる。平均チャネル割合RAVは、全ての総チャネル割合RTの和を、総チャネル割合RTの総数で除したものである。
【0284】
なお、総チャネル割合RTは、セル領域75毎に調整されてもよい。つまり、異なる値をそれぞれ有する複数の総チャネル割合RTがセル領域75毎に適用されてもよい。総チャネル割合RTは、半導体層2の温度上昇に関係している。たとえば、総チャネル割合RTを増加させると、半導体層2の温度が上昇し易くなる。一方で、総チャネル割合RTを減少させると、半導体層2の温度が上昇し難くなる。
【0285】
これを利用して、総チャネル割合RTは、半導体層2の温度分布に応じて調整されてもよい。たとえば、半導体層2において温度が高まり易い領域の総チャネル割合RTを比較的小さくし、半導体層2において温度が高まり難い領域の総チャネル割合RTを比較的大きくしてもよい。
【0286】
半導体層2において温度が高まり易い領域として、出力領域6の中央部を例示できる。半導体層2において温度が高まり難い領域として、出力領域6の周縁部を例示できる。むろん、半導体層2の温度分布に応じて総チャネル割合RTを調整しながら、平均チャネル割合RAVが調整されてもよい。
【0287】
20%以上40%以下(たとえば25%)の総チャネル割合RTを有するセル領域75を、温度が高まり易い領域(たとえば中央部)に複数集約させてもよい。60%以上80%以下(たとえば75%)の総チャネル割合RTを有するセル領域75を、温度が高まり難い領域(たとえば周縁部)に複数集約させてもよい。40%を超えて60%未満(たとえば50%)の総チャネル割合RTを有するセル領域75を、温度が高まり易い領域および温度が高まり難い領域の間の領域に複数集約させてもよい。
【0288】
さらに、20%以上40%以下の総チャネル割合RT、40%以上60%以下の総チャネル割合RTおよび60%以上80%以下の総チャネル割合RTが、規則的な配列で、複数のセル領域75に適用されてもよい。
【0289】
一例として、25%(low)→50%(middle)→75%(high)の順に繰り返す3種の総チャネル割合RTが、複数のセル領域75に適用されてもよい。この場合、平均チャネル割合RAVは、50%に調整されてもよい。このような構造の場合、比較的簡単な設計で、半導体層2の温度分布に偏りが形成されるのを抑制できる。
【0290】
図6は、アクティブクランプ耐量Eacおよび面積抵抗率Ron・Aの関係を実測によって調べたグラフである。
図6のグラフは、第1MISFET56および第2MISFET57を同時にオン状態およびオフ状態に制御した場合の特性を示している。
【0291】
図6において、縦軸はアクティブクランプ耐量Eac[mJ/mm
2]を示しており、横軸は面積抵抗率Ron・A[mΩ・mm
2]を示している。アクティブクランプ耐量Eacは、
図3において述べた通り、逆起電力に対する耐量である。面積抵抗率Ron・Aは、通常動作時における半導体層2内のオン抵抗を表している。
【0292】
図6には、第1プロット点P1、第2プロット点P2、第3プロット点P3および第4プロット点P4が示されている。第1プロット点P1、第2プロット点P2、第3プロット点P3および第4プロット点P4は、平均チャネル割合RAV(つまり、各セル領域75に占める総チャネル割合RT)が66%、50%、33%および25%に調整された場合の特性をそれぞれ示している。
【0293】
平均チャネル割合RAVを増加させた場合、通常動作時に面積抵抗率Ron・Aが低下し、アクティブクランプ動作時にアクティブクランプ耐量Eacが低下した。これとは反対に、平均チャネル割合RAVを低下させた場合、通常動作時に面積抵抗率Ron・Aが増加し、アクティブクランプ動作時にアクティブクランプ耐量Eacが向上した。
【0294】
面積抵抗率Ron・Aを鑑みると、平均チャネル割合RAVは33%以上(より具体的には33%以上100%未満)であることが好ましい。アクティブクランプ耐量Eacを鑑みると、平均チャネル割合RAVは33%未満(より具体的には0%を超えて33%未満)であることが好ましい。
【0295】
平均チャネル割合RAVの増加に起因して面積抵抗率Ron・Aが低下したのは、電流経路が増加したためである。また、平均チャネル割合RAVの増加に起因してアクティブクランプ耐量Eacが低下したのは、逆起電力に起因する急激な温度上昇が引き起こされたためである。
【0296】
とりわけ、平均チャネル割合RAV(総チャネル割合RT)が比較的大きい場合には、互いに隣り合う第1トレンチゲート構造60および第2トレンチゲート構造70の間の領域において局所的かつ急激な温度上昇が発生する可能性が高まる。アクティブクランプ耐量Eacは、この種の温度上昇に起因して低下したと考えられる。
【0297】
一方、平均チャネル割合RAVの低下に起因して面積抵抗率Ron・Aが増加した理由は、電流経路が縮小したためである。平均チャネル割合RAVの低下に起因してアクティブクランプ耐量Eacが向上したのは、平均チャネル割合RAV(総チャネル割合RT)が比較的小さくなり、局所的かつ急激な温度上昇が抑制されたためと考えられる。
【0298】
図6のグラフの結果から、平均チャネル割合RAV(総チャネル割合RT)に基づく調整法にはトレードオフの関係が存在するため、当該トレードオフの関係から切り離して優れた面積抵抗率Ron・Aおよび優れたアクティブクランプ耐量Eacを両立することは困難であることが分かる。
【0299】
一方、
図6のグラフの結果から、パワーMISFET9において、通常動作時に第1プロット点P1(RAV=66%)に近づく動作をさせて、アクティブクランプ動作時に第4プロット点P4(RAV=25%)に近づく動作をさせることにより、優れた面積抵抗率Ron・A及び優れたアクティブクランプ耐量Eacを両立できることが分かる。そこで、半導体装置1では、以下の制御が実施される。
【0300】
図7は、
図1に示す半導体装置1の通常動作を説明するための断面斜視図である。
図8は、
図1に示す半導体装置1のアクティブクランプ動作を説明するための断面斜視図である。
図7および
図8では、説明の便宜上、第1主面3の上の構造を省略し、ゲート制御配線17を簡略化している。
【0301】
図7を参照して、パワーMISFET9の通常動作時では、第1ゲート制御配線17Aに第1オン信号Von1が入力され、第2ゲート制御配線17Bに第2オン信号Von2が入力され、第3ゲート制御配線17Cに第3オン信号Von3が入力される。
【0302】
第1オン信号Von1、第2オン信号Von2および第3オン信号Von3は、コントロールIC10からそれぞれ入力される。第1オン信号Von1、第2オン信号Von2及び第3オン信号Von3は、ゲート閾値電圧Vth以上の電圧をそれぞれ有している。第1オン信号Von1、第2オン信号Von2および第3オン信号Von3は、それぞれ等しい電圧を有していてもよい。
【0303】
この場合、第1開口側電極87、第2開口側電極107、第1底側電極86および第2底側電極106がそれぞれオン状態になる。つまり、第1開口側電極87、第2開口側電極107、第1底側電極86および第2底側電極106は、ゲート電極としてそれぞれ機能する。
【0304】
これにより、第1チャネル領域91および第2チャネル領域111は共にオン状態に制御される。
図7では、オン状態の第1チャネル領域91および第2チャネル領域111がドット状のハッチングによって示されている。
【0305】
その結果、第1MISFET56および第2MISFET57の双方が駆動される(Full-ON制御)。通常動作時のチャネル利用率RUは、100%である。通常動作時の特性チャネル割合RCは、50%である。チャネル利用率RUは、第1チャネル領域91および第2チャネル領域111のうちオン状態に制御されている第1チャネル領域91および第2チャネル領域111の割合である。
【0306】
なお、特性チャネル割合RCは、平均チャネル割合RAVにチャネル利用率RUを乗じた値(RC=RAV×RU)である。パワーMISFET9の特性(面積抵抗率Ron・Aおよびアクティブクランプ耐量Eac)は、特性チャネル割合RCに基づいて定められる。これにより、面積抵抗率Ron・Aは、
図6のグラフにおいて第2プロット点P2で示された面積抵抗率Ron・Aに近づく。
【0307】
一方、
図8を参照して、パワーMISFET9のアクティブクランプ動作時では、第1ゲート制御配線17Aにオフ信号Voffが入力され、第2ゲート制御配線17Bに第1クランプオン信号VCon1が入力され、第3ゲート制御配線17Cに第2クランプオン信号VCon2が入力される。
【0308】
オフ信号Voff、第1クランプオン信号VCon1および第2クランプオン信号VCon2は、コントロールIC10からそれぞれ入力される。オフ信号Voffは、ゲート閾値電圧Vth未満の電圧(たとえば基準電圧)を有している。第1クランプオン信号VCon1および第2クランプオン信号VCon2は、ゲート閾値電圧Vth以上の電圧をそれぞれ有している。第1クランプオン信号VCon1および第2クランプオン信号VCon2は、それぞれ等しい電圧を有していてもよい。第1クランプオン信号VCon1および第2クランプオン信号VCon2は、通常動作時の電圧以下または未満の電圧を有していてもよい。
【0309】
この場合、第1開口側電極87がオフ状態となり、第1底側電極86、第2底側電極106及び第2開口側電極107がそれぞれオン状態になる。これにより、第1チャネル領域91がオフ状態に制御されると共に第2チャネル領域111がオン状態に制御される。
図8では、オフ状態の第1チャネル領域91が塗りつぶしハッチングにより示され、オン状態の第2チャネル領域111がドット状のハッチングにより示されている。
【0310】
その結果、第1MISFET56がオフ状態に制御される一方、第2MISFET57がオン状態に制御される(第2Half-ON制御)。これによりアクティブクランプ動作時のチャネル利用率RUが、零を超えて通常動作時のチャネル利用率RU未満となる。
【0311】
アクティブクランプ動作時のチャネル利用率RUは、50%である。また、アクティブクランプ動作時の特性チャネル割合RCは、25%である。これにより、アクティブクランプ耐量Eacは、
図6のグラフにおいて第4プロット点P4で示されたアクティブクランプ耐量Eacに近づく。
【0312】
この場合、コントロールIC10は、通常動作時及びアクティブクランプ動作時の間で異なる特性チャネル割合RC(チャネルの面積)が適用されるように、第1MISFET56及び第2MISFET57を制御する。コントロールIC10は、より具体的には、アクティブクランプ動作時のチャネル利用率RUが、零を超えて通常動作時のチャネル利用率RU未満となるように第1MISFET56及び第2MISFET57を制御する。
【0313】
コントロールIC10は、さらに具体的には、通常動作時に第1MISFET56および第2MISFET57をオン状態に制御し、アクティブクランプ動作時に第1MISFET56をオフ状態に制御すると共に第2MISFET57をオン状態に制御する。
【0314】
従って、通常動作時には、特性チャネル割合RCが相対的に増加する。すなわち、通常動作時には、第1MISFET56および第2MISFET57を利用して電流を流すことができる。これにより、電流経路が相対的に増加するから、面積抵抗率Ron・A(オン抵抗)の低減を図ることができる。
【0315】
一方、アクティブクランプ動作時には、特性チャネル割合RCが相対的に減少する。すなわち、第1MISFET56を停止させた状態で第2MISFET57を利用して電流を流すことができるから、第2MISFET57により逆起電力を消費(吸収)できる。これにより、逆起電力に起因する急激な温度上昇を抑制できるから、アクティブクランプ耐量Eacの向上を図ることができる。
【0316】
その結果、
図6に示されるトレードオフの関係から切り離して、優れた面積抵抗率Ron・Aおよび優れたアクティブクランプ耐量Eacの両立を図ることができる半導体装置1を提供できる。
【0317】
なお、上記の制御例では、アクティブクランプ動作時において第2Half-ON制御が適用された例について説明した。しかし、アクティブクランプ動作時において第1Half-ON制御が適用されてもよい。
【0318】
<最大発熱箇所の特定手法>
図9は、パワーMISFET9における最大発熱箇所の特定手法(第1例)を模式的に示す平面図である。
【0319】
パワーMISFET9を有する半導体装置100は、パワーMISFET9の異常発熱を検出する温度検出素子D1を備えている。特に、大電流を流す半導体装置100において、パワーMISFET9の異常発熱を精度良く検出するためには、チップ内の最大発熱箇所で温度検出を行う必要がある。
【0320】
そこで、本図のパッドレイアウトでは、ソース電極12上におけるパッド12a~12eの均等配置を敢えて崩している。本図に即してより具体的に述べると、上記5つのパッド12a~12eのうち、パッド12cだけがソース電極12の中央寄り(下端寄り)に突出して配置されている。このような偏在配置に伴い、ソース電極12の半面(パッド12cよりもソース電極12の下端に近い領域)に流れる電流は、パッド12a~12eのうち、ソース電極12の下端に最も近いパッド12cに対して集中的に流れ込む。
【0321】
従って、パッド12a~12eそれぞれの周囲における電流密度分布については、パッド12cの下端近傍が最も電流密度の高い領域となり、同領域がパワーMISFET9の最大発熱箇所(図中のハッチング領域)となる。これに鑑み、本図の半導体装置1では、パッド12cの下端近傍領域から見てその直下に温度検出素子D1が形成されている。なお、ソース電極12には、温度検出素子D1の配線を端辺(下端)まで引き出すためのスリットSLを形成しておくとよい。
【0322】
このように、本図のパッドレイアウトを採用すれば、最も電流の集中しやすいパッド12cを唯一に特定することができるので、温度検出素子D1を形成するべき最大発熱箇所を唯一に特定することが可能となる。従って、温度検出素子D1による異常発熱の検出精度(延いては過熱保護回路36の信頼性)を高めることが可能となる。
【0323】
ただし、本図の半導体装置1では、ソース電極12上におけるパッド12a~12eの均等配置を敢えて崩しているので、IPDとして重要な特性である破壊耐量(アクティブクランプ耐量など)の低下、延いては、ショート耐久試験への影響が懸念される。以下では、このような懸念を払拭することのできる別の手法を提案する。
【0324】
図10は、パワーMISFET9における最大発熱箇所の特定手法(第2例)を模式的に示す平面図である。
【0325】
これまでに説明してきたように、パワーMISFET9は、複数のゲート制御信号に応じて第1チャネル領域91及び第2チャネル領域111(延いては第1MISFET56及び第2MISFET57)が個別制御されるように構成されたゲート分割型のパワートランジスタである。従って、例えば、通常動作時には、第1MISFET56及び第2MISFET57の双方をオンしてパワーMISFET9のオン抵抗を引き下げる一方、アクティブクランプ動作時には、第1MISFET56及び第2MISFET57の一方をオフしてパワーMISFET9のオン抵抗を引き上げることができる。
【0326】
さらに、パワーMISFET9は、第1チャネル領域91及び第2チャネル領域111がそれぞれ個別制御されるように構成された通常エリア9xのほかに、第1チャネル領域91及び第2チャネル領域111の一方が常時オフ状態となるように構成されたチャネル低減エリア9yを含む。例えば、チャネル低減エリア9yでは、第1MISFET56及び第2MISFET57のうち、常にオフしておく方のゲート・ソース間をショートしてもよいし、或いは、ゲートをローレベル(GND)にショートしてもよい。若しくは、ゲート制御信号を1本追加し、ゲート制御回路25を用いてゲートをローレベルに固定してもよい。なお、通常エリア9xは、パワーMISFET9を形成する全領域のうち、チャネル低減エリア9y以外の領域に相当する。
【0327】
また、チャネル低減エリア9yに属する少なくとも一つのチャネル領域(常時オフ状態とされない方)は、通常エリア9xに属する一つのチャネル領域と同期してオン/オフする。なお、通常エリア9x及びチャネル低減エリア9yそれぞれに属する複数のトランジスタセルのうち、同期してオン/オフするトランジスタセルのゲート配線は、電気的に接続しておいてもよい。
【0328】
上記したように、チャネル低減エリア9
yでは、パワーMISfET9がオンしている通常動作時でもアクティブクランプ動作時と同じく、第1MISFET56及び第2MISFET57の一方がオフしているので、特性チャネル割合RCが通常エリア9
xと比べて低くなる。なお、通常エリア9
x(チャネル低減エリア9
y以外)の特性チャネル割合RCがa%(例えばa=50%、先出の
図7を参照)である場合には、チャネル低減エリア9
yの特性チャネル割合RCをb%(ただしb<aであり、例えばb=25%、先出の
図8を参照)とすればよい。
【0329】
例えば、パワーMISFET9の中心部に通常エリア9xを配置すると、その部分だけオン抵抗が低くなる。従って、パワーMISFET9に大電流が流れたときには通常エリア9xの形成領域がパワーMISFET9の最大発熱箇所(図中のハッチング領域)となる。これに鑑み、本図の半導体装置1では、通常エリア9xの内部(又は周囲でも可)に温度検出素子D1が配置されているので、温度検出素子D1による異常発熱の検出精度(延いては過熱保護回路36の信頼性)を高めることができる。
【0330】
また、本図の半導体装置1であれば、ソース電極12上にパッド12a~12eを均等配置していても、温度検出素子D1を形成すべき最大発熱箇所を唯一に特定することができる。従って、パッド12a~12eの偏在配置に伴う破壊耐量(アクティブクランプ耐量など)の低下を招くことがないので、ショート耐久試験への影響を懸念せずに済む。
【0331】
なお、通常エリア9x(延いては温度検出素子D1)は、電流集中による発熱も考慮して、パッド12a~12eの近傍(本図ではパッド12cの下端近傍)に形成することが望ましい。
【0332】
ここで、「近傍」についての具体例を挙げる。例えば、温度検出素子D1からパッド12cまでの距離は、温度検出素子D1からパワーMISFET9の端辺(本図では下端)までの距離の5%~20%程度(例えば10%)に設計すればよい。
【0333】
<ICレイアウト>
図11は、ICレイアウトの一例を模式的に示す平面図である。本図の半導体装置500には、2つのNチャネル型MOS電界効果トランジスタ510及び520(それぞれ先出のパワーMISFET9に相当)が集積化されている。
【0334】
なお、トランジスタ510及び520は、それぞれ、半導体装置500の中央部ではなく側辺部に寄せて配置されている。一方、半導体装置500の中央部には、自身に入力される制御信号に応じてトランジスタ510及び520をそれぞれオン/オフするためのドライバDRV(
図2のゲート制御回路25などがこれに相当)と、温度異常検出時にトランジスタ510及び520をいずれも強制オフするための温度保護回路TSD(
図2の過熱保護回路36がこれに相当)が形成されている。また、半導体装置500の残余領域には、その他の回路要素others(
図2の電流・電圧制御回路23などがこれに相当)が形成されている。
【0335】
また、トランジスタ510及び520は、半導体装置500の平面視において、左右対称にレイアウトされている。このようなレイアウトを採用することにより、特性の均等性や配線の敷設容易性を高めることが可能となる。
【0336】
トランジスタ510のソース電極511上には、複数(ここでは2つ)のパッド512a及び512bが均等に配置されている。トランジスタ510は、複数のゲート制御信号に応じて複数のチャネル領域が個別制御されるように構成されたゲート分割型であり、複数のチャネル領域のうち少なくとも一つが常時オフ状態となるように構成されたチャネル低減エリアとこれ以外の通常エリア513(先出の通常エリア9xに相当)を含む。例えば、通常エリア513は、電流が集中しやすいパッド512aの角部近傍に形成することが望ましい。
【0337】
また、トランジスタ510の温度を検出する温度検出素子D10(先の温度検出素子D1に相当)は、トランジスタ510の形成領域内において、最大発熱箇所に配設することが望ましい。通常エリア513は、他の素子領域と比べてオン抵抗が低くなるので、相対的に発熱も大きくなる。これを鑑みると、温度検出素子D10は、本図で示すように、通常エリア513の内部(又は周囲でも良い)に設けることが望ましい。
【0338】
また、
図11では明示されていないが、ソース電極511には、先の
図10と同じく、温度検出素子D10の配設位置からソース電極511の右端に至る直線状のスリットが形成されているものとする。
【0339】
また、トランジスタ520についても、トランジスタ510と左右が反転されている以外、上記と同様のICレイアウトが採用されている。すなわち、トランジスタ510の説明中で参照した符号の十の位を「1」から「2」に読み替えることにより、トランジスタ520についての説明として理解することができる。
【0340】
<車両への適用>
図12は、車両の一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Xは、バッテリ(本図では不図示)と、バッテリから電源電圧の供給を受けて動作する種々の電子機器X11~X18と、を搭載している。なお、本図における電子機器X11~X18の搭載位置については、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0341】
電子機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0342】
電子機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0343】
電子機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0344】
電子機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行うボディコントロールユニットである。
【0345】
電子機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0346】
電子機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、及び、電動シートなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0347】
電子機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0348】
電子機器X18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0349】
なお、先に説明した半導体装置1は、電子機器X11~X18のいずれにも組み込むことが可能である。
【0350】
<その他の変形例>
なお、上記の実施形態では、車載用ハイサイドスイッチICを例に挙げて説明を行ったが、本明細書中に開示されている発明の適用対象は、これに限定されるものではなく、その他の用途に供される車載用IPD[intelligent power device](車載用ローサイドスイッチICや車載用電源ICなど)を始めとして、パワートランジスタを有する半導体装置全般に広く適用することが可能である。
【0351】
すなわち、本明細書中に開示されている発明は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0352】
1 半導体装置
9 パワーMISFET
9y チャネル低減エリア
9x 通常エリア
12 ソース電極
12a、12b、12c、12d、12e パッド
25 ゲート制御回路
26 アクティブクランプ回路
36 過熱保護回路
56 第1MISFET
57 第2MISFET
91 第1チャネル領域
111 第2チャネル領域
D1 温度検出素子
SL スリット