(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/48 20100101AFI20241126BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241126BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/38 Z
(21)【出願番号】P 2020529539
(86)(22)【出願日】2018-12-03
(86)【国際出願番号】 KR2018015213
(87)【国際公開番号】W WO2019108050
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-06-03
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】10-2017-0164207
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0154038
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517108310
【氏名又は名称】デジュ・エレクトロニック・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DAEJOO ELECTRONIC MATERIALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オ・ソンミン
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】▲高▼橋 徳浩
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106356508(CN,A)
【文献】特開2013-30428(JP,A)
【文献】特開2012-33317(JP,A)
【文献】特開2010-170943(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204366(WO,A1)
【文献】特開2016-219410(JP,A)
【文献】特表2016-504722(JP,A)
【文献】特開2005-243640(JP,A)
【文献】国際公開第2016/085953(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04- 4/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素、酸化ケイ素(SiO
x、0<x≦2)、及びケイ酸マグネシウムを含み、内部に直径が50nm乃至300nmである気孔を含むケイ素酸化物複合体を含む、非水電解質二次電池用負極活物質であって、
前記ケイ酸マグネシウムがMgSiO
3を含み、
前記ケイ素酸化物複合体の全重量に対して、マグネシウムを2wt%乃至40wt%含み、
前記ケイ素酸化物複合体の全重量に対して、酸素を25wt%乃至40wt%含み、
前記ケイ素酸化物複合体は、X線回折分析の際、Si(
111)による回折ピークが2θ=27.5°乃至29.5°で表され、
前記回折ピークの半値幅(FWHM)から計算されたケイ素結晶子の大きさが1nm乃至20nmのものであ
り、
前記ケイ素酸化物複合体を断面の全面積に対して、前記気孔部分の面積の割合が3乃至40%である、
非水電解質二次電池用負極活物質。
【請求項2】
前記酸化ケイ素は酸素原子に対するケイ素原子数の割合が、(Si/O)が0.5乃至2である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記ケイ素酸化物複合体の比重が1.8乃至3.2、平均粒径が0.5μm乃至20μmであり、比表面積が1m
2
/g乃至40m
2
/gのものである、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記ケイ素酸化物複合体は、表面に炭素を含む被覆層をさらに含み、
前記ケイ素酸化物複合体の全重量に対して、前記被覆層は2wt%乃至20wt%である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
【請求項5】
前記炭素を含む被覆層は、非晶質炭素、炭素ナノ繊維、グラフェン、及び酸化グラフェンで構成された群から選択される少なくともいずれか1つ以上を含むものである、請求項4に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
【請求項6】
前記ケイ素酸化物複合体の比重が1.8乃至3.2、平均粒径が0.5μm乃至20μm、及び比表面積が1m
2
/g乃至40m
2
/gのものである、請求項4に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
【請求項7】
請求項1及び請求項3から6のいずれか一項による非水電解質二次電池用負極活物質を含む負極。
【請求項8】
請求項7による負極を含む非水電解質リチウム二次電池。
【請求項9】
平均粒子サイズが0.1μm乃至20μmのケイ素粒子及び平均粒子サイズが10nm乃至100nmの二酸化ケイ素粒子を混合した混合物と、平均粒子サイズが1mm乃至100mmのマグネシウムを反応器に入れる第1段階と、
前記反応器の圧力を0.001torr乃至1torrに調節する第2段階と、
前記混合物と前記マグネシウム金属粒子を600℃乃至1600℃で加熱してケイ素酸化物複合体を製造する第3段階と、
前記ケイ素酸化物複合体を500℃超乃至1100℃以下の範囲の温度で冷却し、前記冷却したケイ素酸化物複合体を金属板に蒸着する第4段階と、
前記冷却及び金属板に蒸着したケイ素酸化物複合体を平均粒径0.5μm乃至15μmに粉砕及び粉級する第5段階と、を含む、
請求項1による非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記第5段階のケイ素酸化物複合体及び炭素源を混合し、600℃乃至1200℃で熱処理してケイ素酸化物複合体の表面に炭素を含む被覆層を形成する第6段階をさらに含むものである、請求項9に記載の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記炭素源は、メタン、プロパン、ブタン、アセチレン、ベンゼン、及びトルエンで構成された群から選択される少なくともいずれか1つ以上のものである、請求項10に記載の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記ケイ素酸化物複合体及び炭素源の混合は、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気からなる群から選択された少なくともいずれか1つ以上をさらに含んで混合するものである、請求項11に記載の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の携帯用小型電子機器の電源として脚光を浴びているリチウム二次電池は、有機電解液を使用することによって、既存のアルカリ水溶液を使用した電池より2倍以上の高い放電電圧を示す高いエネルギー密度を示す電池である。
【0003】
リチウム二次電池の正極活物質としては、LiCoO2、LiMn2O4、LiNi1-xCoxO2(0<x<1)等のように、リチウムのインターカレーションが可能な構造を有する遷移金属からなる酸化物を主に使用しており、負極活物質としては、リチウムの挿入及び脱離が可能な人造黒鉛、天然黒鉛、及びハードカーボンを含む様々な形態の炭素系材料が適用されてきた。
【0004】
リチウム二次電池の負極材料としては、黒鉛が主に利用されているが、黒鉛は、単位質量当たりの容量が372mAh/gと小さく、リチウム二次電池の高容量化が難しい。
【0005】
炭素系負極活物質を代替することができる新規な材料としては、Si、Sn、Al、Sb等の金属材料が検討されている。このような金属材料では、Liとの合金化/非合金化反応により充電/放電が行われ、商用負極活物質であるグラファイト(graphite)に比べて高い容量を示すものと知られている。しかしながら、Si、Sn、Al、Sb等の金属は、Liと合金化/非合金化する過程で大きい体積膨張及び収縮を引き起こすことになり、これによる微粉化、伝導経路(path)の喪失等により、寿命特性が低下するという問題点を有している。特に、Siの場合、放電容量(4200mAh/g)、放電電圧(0.4V)の側面で高容量の負極素材として最適な物質であると知られているが、Liイオンが物質内に挿入(充電)する際に誘発される約400%に至る大きい体積膨張により、活物質の退化が発生し、寿命特性の急激な低下を示してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国公開特許公報第10-2014-0042146号(公開日2014.04.07)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために、リチウムの体積膨張と収縮による寿命の急激な劣化度を防止することができる新しいケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質を製造するための製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質が含有された非水電解質リチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施例にかかる非水電解質二次電池用負極活物質は、ケイ素、酸化ケイ素(SiOx、0<x≦2)、及びケイ酸マグネシウムを含み、内部に50nm乃至300nmの大きさの気孔を含むケイ素酸化物複合体を含む。
【0011】
図1は、本発明による一実施例にかかるケイ素酸化物複合体の表面を走査電子顕微鏡(FE-SEM)で撮影したイメージである。
図1を参照すると、本発明の実施例にかかる非水電解質二次電池用負極活物質は、ケイ素酸化物複合体を含む負極活物質において、前記ケイ素酸化物複合体は、ケイ素、酸化ケイ素(SiO
x、0<x≦2)、及びケイ酸マグネシウムを含み、前記ケイ素酸化物複合体の内部に配置された50nm乃至300nmの大きさの気孔を含む。
【0012】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、内部の気孔は、画像処理によって表され得る。
【0013】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記ケイ素酸化物複合体の内部に配置された気孔は、充電過程での膨張を緩衝してくれる役割をしてスウェリングの問題を解決し、膨張と収縮による寿命の急激な劣化度を防止する役割をすることができる。本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質は、リチウム二次電池の充電及び放電の際に発生する体積膨張、及びこれによる応力を内部の気孔に集中させて体積膨張を効率的に制御し、これによって、リチウム二次電池の寿命特性を向上させることができる。
【0014】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記気孔は、ケイ素酸化物複合体の内部に配置された閉鎖された気孔であり得、前記気孔のうちの一部気孔は、外部に通じる開放された開放気孔を含み得る。
【0015】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記気孔は、ケイ素酸化物複合体の内部に配置された閉鎖された気孔が好ましいかもしれない。
【0016】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記気孔の平均直径は、50nm乃至300nmであり得る。
【0017】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記気孔の平均直径が50nm未満である場合、気孔の大きさが小さ過ぎて、リチウム二次電池の充電及び放電の際、Siの体積膨張を収容するには不足なことがあり、前記気孔の平均直径が300nmを超える場合、Siの体積膨張を収容して残った多量の気孔があるため、エネルギー密度が減少し得、多量の気孔を含む負極活物質の機械的強度が低下し得る。また、前記負極活物質の機械的強度が低下すると、スラリーの混合、コーティング後の圧延等の電池の製造過程で負極活物質が破壊され得る。
【0018】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質は、前記気孔に前記非水電解液が含浸し、リチウムイオンがケイ素酸化物複合体の内部まで投入され得るので、リチウムイオンの拡散を効率的にすることができ、リチウム二次電池の充電及び放電効率を向上させることができる。
【0019】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質は、断面の全面積に対して、前記気孔部分の面積の割合が3乃至40%であり得る。
【0020】
前記気孔部分の面積の割合が3%未満である場合には、リチウム二次電池の充電及び放電の際に負極活物質の体積膨張を抑制することができず、40%を超える場合には、負極活物質内に存在する多量の気孔により、機械的強度が低下、電池製造工程(スラリーの混合、コーティング後の圧延等)の際に負極活物質が破壊され得る。
【0021】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記ケイ素は結晶質又は非晶質であってもよく、非晶質である場合、充電及び放電の際の膨張及び収縮が減少し、二次電池の負極活物質として使用する際、バッテリーの性能を向上させることができる。
【0022】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記酸化ケイ素は、二酸化ケイ素であり得る。
【0023】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記酸化ケイ素(SiOX、0<x≦2)が非晶質の形態で放電の際、リチウムイオンと不可逆反応を起こし、Li-Si-O、Si+Li2Oを形成することができる。従って、酸化ケイ素の含有量が高いほど初期不可逆反応が増加し、初期の効率が低下し得る。本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記酸化ケイ素は、ケイ素酸化物複合体の全モル数中、5乃至45モル%で含まれることが好ましい。
【0024】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質を使用する際、前記酸化ケイ素の含有量が5モル%未満の場合、体積膨張及び寿命特性が低下し得、45モル%を超える場合、初期不可逆反応が増加し、二次電池の寿命が減少し得る。
【0025】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質は、 前記ケイ素酸化物複合体のX線回折分析の際、Si(111)による回折ピークが2θ=27.5°乃至29.5°で表され得、前記回折ピークの半値幅(FWHM)から算出されたケイ素結晶子の大きさが1nm乃至20nmのものであり得る。
【0026】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記酸化ケイ素は、酸素原子に対するケイ素原子数の割合が、(Si/O)が0.5乃至2であり得る。
【0027】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記ケイ素は、ケイ酸マグネシウム中に分散され得るため、ケイ素の膨張及び収縮をさらに抑制し、二次電池の負極活物質として使用する際、バッテリーの性能をさらに向上させることができる。
【0028】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記ケイ酸マグネシウムは、MgSiO3又はMg2SiO4を少なくとも1つ以上を含み得る。前記ケイ酸マグネシウムは、MgSiO3を主成分として含み得る。本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記ケイ酸マグネシウムは、一般式MgxSiOy(0.5≦x≦2、2.5≦y≦4)で表される化合物であり得る。
【0029】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記ケイ素酸化物複合体の全重量に対して、マグネシウムは2wt%乃至40wt%含まれたものであってもよく、好ましくは4wt%乃至30wt%、より好ましくは4wt%乃至20wt%であってもよい。
【0030】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、マグネシウムの含有量が2wt%未満である場合、初期の充電及び放電効率が減少し得、40wt%を超える場合、容量維持率及び取り扱いの安定性が減少し得る。
【0031】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記ケイ酸マグネシウムは、Liイオンと反応しにくいため、負極活物質として使用される場合、前記ケイ酸マグネシウムはリチウム二次電池で初期不可逆的反応を抑制する役割をすることができ、Liイオンが急増する際、電極の膨張及び収縮量を減少させることによって、寿命特性を向上させることができる。
【0032】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記ケイ素酸化物複合体の比重が1.8乃至3.2、平均粒径が0.5μm乃至20μmあり、比表面積が1m2/g乃至40m2/gであり得る。前記ケイ素酸化物複合体の比重が1.8未満である場合、機械的な安定性が低下し得、比重が3.2を超える場合、二次電池の負極活物質として使用する際、充電及び放電容量が低下し得る。前記ケイ素酸化物複合体の平均粒径が0.5μm未満である場合、体積密度が小さくなり、単位体積当たりの充電及び放電容量が減少し得、負極活物質で製造する場合、スラリーの分散が難しいことがあり、凝集する現象が発生し得る。
【0033】
前記ケイ素酸化物複合体の平均粒径が20μmを超える場合、電極膜の作製が難しいことがあり、ケイ素酸化物複合体を含む負極活物質は集電体から剥離されることがあり、負極活物質の内部とリチウムの均一な反応が難しいため、二次電池の寿命低下の問題が発生し得る。
【0034】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質は、前記ケイ素酸化物複合体の全重量に対して、マグネシウムは2wt%乃至40wt%含まれたものであり得る。
【0035】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質は、前記ケイ素酸化物複合体の全重量に対して、酸素が25wt%乃至40wt%含まれたものであり得る。
【0036】
本発明はまた、前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質の表面に炭素を含む被覆層をさらに含むことが可能である。本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記ケイ素酸化物複合体の全重量に対して、前記被覆層は2wt%乃至20wt%の割合であってもよく、より好ましくは2wt%乃至10wt%であってもよい。前記炭素を含む被覆層の含量が2wt%未満では、充分な導電性向上の効果を期待することができず、リチウム二次電池の電極寿命が低下し得、20wt%を超えると、放電容量が減少し得、単位体積当たりの充電及び放電容量が低下し得る。
【0037】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記炭素を含む被覆層は、非晶質炭素、炭素ナノ繊維、グラフェン、及び酸化グラフェンで構成された群から選択される少なくともいずれか1つ以上を含み得る。
【0038】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記被覆層は、ケイ素酸化物複合体の粒子と粒子間の優れた電気伝導性を提供することができるため、リチウム二次電池の性能をさらに向上させることができる。本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記炭素を含む被覆層は、電解液との副反応を抑制し、リチウム二次電池の性能を向上させることができる。
【0039】
本発明による前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質において、前記ケイ素酸化物複合体の表面に配置された炭素を含む被覆層の平均厚さは、1nm乃至5μmであってもよく、好ましくは5nm乃至2μmであってもよく、さらに好ましくは10nm乃至1μmであってもよい。
【0040】
前記被覆層の平均厚さが1nm以上であると、伝導性の向上を得ることができ、平均厚さが5μm以下であると、リチウムイオン電池の負極活物質として使用した際、バッテリー容量の低下を抑制することができる。前記被覆層の平均厚さが1nm未満である場合、前記炭素被膜による電気伝導度の上昇効果が微々であり、負極活物質に適用の際、電解液との反応性が高いため、初期の効率が低下し得る。前記被覆層の平均厚さが5μmを超える場合、リチウムイオンの移動性を妨害し、抵抗が増加する問題が発生し得る。
【0041】
本発明によるケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質は、炭素被覆層を含む場合、 前記ケイ素酸化物複合体の比重が1.8乃至3.2、平均粒径が0.5μm乃至20μm、及び比表面積が1m2/g乃至40m2/gであり得る。
【0042】
本発明による前記被覆層が含まれたケイ素酸化物複合体の全重量に対して、マグネシウムが1.5wt%乃至30wt%含まれたものであり得る。
【0043】
本発明による前記被覆層が含まれたケイ素酸化物複合体の全重量に対して、 前記ケイ素酸化物複合体は、酸素が15wt%乃至33wt%含まれたものであり得る。
【0044】
本発明の実施例にかかる非水電解質リチウム二次電池は、前記非水電解質二次電池用負極活物質を含む。
【0045】
本発明の実施例にかかる非水電解質リチウム二次電池の製造方法は、平均粒子サイズが0.1μm乃至20μmのケイ素粒子及び平均粒子サイズが10nm乃至100nmの二酸化ケイ素粒子を混合した混合物と、平均粒子サイズが1mm乃至100mmのマグネシウムを反応器に入れる第1段階と、前記反応器の圧力を0.001torr乃至1torrに調節する第2段階と、前記混合物と前記マグネシウムを600℃乃至1600℃で加熱してケイ素酸化物複合体を製造する第3段階と、前記ケイ素酸化物複合体を冷却及び金属板に蒸着する第4段階と、前記冷却及び金属板に蒸着したケイ素酸化物複合体を平均粒径0.5μm乃至15μmに粉砕する第5段階と、を含み得る。
【0046】
本発明の実施例にかかる非水電解質リチウム二次電池の製造方法において、前記蒸着する温度が1200℃以上であると、ケイ素酸化物複合体の蒸気状態の粒子が金属板に緻密に蒸着され、粒子の内部に気孔がほぼ生成されず、蒸着温度が500℃以下である場合、ケイ素酸化物複合体の蒸気状態の粒子が金属板に蒸着されない。また、蒸着温度が700乃至1000℃の範囲では、ケイ素酸化物複合体の蒸気状態の粒子が金属板に気孔を形成しやすいことがある。蒸着された塊を粗粉砕機とジェットミルで粉砕及び粉級を介して粒度を調整して、ナノ気孔を有するケイ素酸化物複合体粉末で製造することができる。
【0047】
本発明の実施例にかかる非水電解質リチウム二次電池の製造方法は、第5段階のケイ素酸化物複合体及びメタン、プロパン、ブタン、アセチレン、ベンゼン、及びトルエンで構成された群から選択される少なくともいずれかの炭素源と混合し、600℃乃至1200℃で熱処理して、表面に炭素を含む被覆層を形成する第6段階をさらに含み得る。
【0048】
前記ケイ素酸化物複合体に配置された炭素を含む被覆層は、炭酸ガス、アルゴン、メタン、エタン、プロパン、ブタン、水蒸気又は水素の混合ガス、水素、アセチレン、ベンゼン、及びトルエンから選択される1つ、又はこれらを組み合わせたガス混合物を含む炭素源を混合し、600℃乃至1200℃で 前記ケイ素酸化物複合体と反応して形成されることができる。
【0049】
前記炭素源ガスは、メタン、メタンと不活性ガスを含む混合ガス、メタンと酸素含有ガスを含む混合ガスであり得る。
【0050】
前記ガス混合物は、炭素源ガス以外に窒素、ヘリウム、アルゴンからなる群から選択された複数の不活性ガスをさらに含み得る。
【0051】
一実施例にかかる前記炭素源ガスは、CH4:CO2の混合気体、CH4:CO2の混合気体は、約1:0.20乃至0.50のモル比であってもよく、好ましくは約1:0.25乃至0.45のモル比であってもよく、より好ましくは約1:0.30乃至0.40のモル比であってもよい。
【0052】
一実施例にかかる前記炭素源は、CH4:CO2:H2Oの混合気体であり得る。CH4:CO2:H2Oの混合気体は、約1:0.20乃至0.50:0.01乃至1.45のモル比であってもよく、好ましくは約1:0.25乃至0.45:0.10乃至1.35であってもよく、さらに好ましくは約1:0.30乃至0.40:0.50乃至1.0のモル比であってもよい。
【0053】
一実施例にかかる前記炭素源は、一酸化炭素(CO)又は二酸化炭素(CO2)であり得る。
【0054】
一実施例にかかる前記炭素源は、CH4とN2との混合気体であり得る。
【0055】
前記CH4:N2の混合気体は、約1:0.20乃至0.50のモル比であってもよく、好ましくは約1:0.25乃至0.45のモル比であってもよく、より好ましくは約1:0.30乃至0.40のモル比であってもよい。
【0056】
前記被覆層が表面に配置されたケイ素酸化物複合体は、前記ガス混合物が水蒸気を含む場合には、被覆層により高い伝導性を示し得る。前記ガス混合物内の水蒸気の含量は制限されず、好ましい水蒸気の含量は、炭素源ガスの全体100体積%を基準に0.01乃至10体積%であり得る。
【0057】
本発明の実施例にかかる非水電解質リチウム二次電池は、前記非水電解質二次電池用負極活物質を含む。
【0058】
前記ケイ素酸化物複合体を負極に用いた非水電解質二次電池は、容量維持率及び初期の効率に優れる。
【0059】
前記ケイ素酸化物複合体を非水電解質二次電池用負極活物質、正極活物質、及びバインダーと導電材を含み得る。前記負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る。
【発明の効果】
【0060】
本発明にかかるケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質は、ケイ素酸化物複合体を含み、内部に50nm乃至300nmの大きさの気孔を含み、本発明の負極活物質を含む二次電池は、Siの体積膨張と収縮による寿命の急激な劣化を防止しながらも、容量特性が改善される効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】実施例1にかかるケイ素酸化物複合体の表面を30000倍として、走査電子顕微鏡(FE-SEM)で撮影したイメージである。
【
図2】実施例1にかかるケイ素酸化物複合体の表面を100000倍として、走査電子顕微鏡(FE-SEM)で撮影したイメージである。
【
図3】実施例2にかかるケイ素酸化物複合体の表面を20000倍として、走査電子顕微鏡(FE-SEM)で撮影したイメージである。
【
図4】実施例2にかかるケイ素酸化物複合体の表面を100000倍として、走査電子顕微鏡(FE-SEM)で撮影したイメージである。
【
図5】実施例3にかかるケイ素酸化物複合体の表面を20000倍として、走査電子顕微鏡(FE-SEM)で撮影したイメージである。
【
図6】実施例3にかかるケイ素酸化物複合体の表面を100000倍として、走査電子顕微鏡(FE-SEM)で撮影したイメージである。
【
図7】比較例1にかかるケイ素酸化物複合体の表面を30000倍として、走査電子顕微鏡(FE-SEM)で撮影したイメージである。
【
図8】比較例1にかかるケイ素酸化物複合体の表面を100000倍として、走査電子顕微鏡(FE-SEM)で撮影したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下では、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。しかしながら、本発明が以下の実施例により限定されるわけではない。
【0063】
<実施例1>マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体の製造
【0064】
ケイ素粉末と二酸化ケイ素(SiO2)粉末を1:1のモル比で均一に混合した粉末15kgとマグネシウム1.5kgを0.01torr 乃至1torrの減圧雰囲気で1,400℃で熱処理し、前記ケイ素、二酸化ケイ素(SiO2)の混合粉末による酸化ケイ素蒸気とマグネシウム蒸気を同時に発生させることによって気相で反応させた後、700℃で冷却させて析出してから、ジェットミルで粉砕粉級し、平均粒径(D50)が6.3μmであるマグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体粉末を回収した。
【0065】
炭素を含む被覆層を形成するために回収されたマグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体粉末をチューブ状の電気炉を用いて1,000℃、2時間の条件でアルゴン(Ar)とメタン(CH4)との混合ガス下でCVD処理をして、炭素の含量が5wt%である炭素コーティング層が形成されたマグネシウムが9wt%含まれたケイ素酸化物複合体(試料1)を製造した。
【0066】
前記マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体(試料1)に対して、BET比表面積が5.5m2/g、比重2.3g/cm3、平均粒径(D50)が6.3μmであり、X線回折分析(CuKα)により測定したケイ素の結晶子の大きさが8nmであることを確認した。
【0067】
<実施例2>マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体の製造
【0068】
800℃で冷却させて析出することを除いては、前記実施例1と同じ方法でマグネシウムが9wt%含まれたケイ素酸化物複合体(試料2)を製造し、炭素の含量が5wt%である炭素コーティング層が形成されたケイ素酸化物複合体粉末を製造した。
【0069】
前記マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体(試料2)に対して、BET比表面積が6.2m2/g、比重2.3g/cm3、平均粒径(D50)が6.5μmであり、X線回折分析(CuKα)により測定したケイ素結晶の大きさが8nmであることを確認した。
【0070】
<実施例3>マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体の製造
【0071】
900℃で冷却させて析出することを除いては、前記実施例1と同じ方法でマグネシウムが4wt%含まれたケイ素酸化物複合体(試料3)を製造し、炭素の含量が10wt%である炭素コーティング層が形成されたケイ素酸化物複合体粉末を製造した。
【0072】
前記マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体(試料3)に対して、BET比表面積が6.3m2/g、比重2.4g/cm3、平均粒径(D50)が6.2μmであり、X線回折分析(CuKα)により測定したケイ素結晶の大きさが11nmであることを確認した。
【0073】
<実施例4>マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体の製造
【0074】
1000℃で冷却させて析出することを除いては、前記実施例1と同じ方法でマグネシウムが12wt%含まれたケイ素酸化物複合体(試料4)を製造し、炭素の含量が7wt%である炭素コーティング層が形成されたケイ素酸化物複合体粉末を製造した。
【0075】
前記マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体(試料4)に対して、BET比表面積が5.8m2/g、比重2.3g/cm3、平均粒径(D50)が6.8μmであり、X線回折分析(CuKα)により測定したケイ素結晶の大きさが13nmであることを確認した。
【0076】
<実施例5>マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体の製造
【0077】
1100℃で冷却させて析出することを除いては、前記実施例1と同じ方法でマグネシウムが16wt%含まれたケイ素酸化物複合体(試料5)を製造し、炭素の含量が4wt%である炭素コーティング層が形成されたケイ素酸化物複合体粉末を製造した。
【0078】
前記マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体(試料5)に対して、BET比表面積が6.7m2/g、比重2.4g/cm3、平均粒径(D50)が6.7μmであり、X線回折分析(CuKα)により測定したケイ素結晶の大きさが14nmであることを確認した。
【0079】
<実施例6>マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体の製造
【0080】
800℃で冷却させて析出することを除いては、前記実施例1と同じ方法でマグネシウムが15wt%含まれたケイ素酸化物複合体(試料6)を製造し、炭素の含量が5wt%である炭素コーティング層が形成されたケイ素酸化物複合体粉末を製造した。
【0081】
前記マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体(試料6)に対して、BET比表面積が5.2m2/g、比重2.3g/cm3、平均粒径(D50)が6.6μmであり、X線回折分析(CuKα)により測定したケイ素結晶の大きさが14nmであることを確認した。
【0082】
<実施例7>マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体の製造
【0083】
急速冷却させて析出することを除いては、前記実施例1と同じ方法で炭素の含量が15wt%である炭素コーティング層が形成されたマグネシウムが15wt%含まれたケイ素酸化物複合体(試料7)を製造した。
【0084】
前記マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体(試料7)に対して、BET比表面積が7.2m2/g、比重2.0g/cm3、平均粒径(D50)が6.5μmであり、X線回折分析(CuKα)により測定したケイ素結晶の大きさが12nmであることを確認した。
【0085】
<比較例1>マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体の製造
【0086】
自然冷却で析出することを除いては、前記実施例1と同じ方法で炭素の含量が5wt%である炭素コーティング層が形成されたマグネシウムが1wt%含まれたケイ素酸化物複合体(試料8)を製造した。
【0087】
前記マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体(試料8)に対して、BET比表面積が5m2/g、比重2.2g/cm3、平均粒径(D50)が6.5μmであり、X線回折分析(CuKα)により測定したケイ素結晶の大きさが8nmであることを確認した。
【0088】
<比較例2>マグネシウムが含まれていないケイ素酸化物複合体の製造
【0089】
マグネシウムを添加せずに熱処理したことを除いては、前記実施例1と同じ方法で炭素の含量が5wt%である炭素コーティング層が形成されたケイ素酸化物複合体(試料9)を製造した。
【0090】
前記ケイ素酸化物複合体(試料9)に対して、BET比表面積が6.5m2/g、比重2.0g/cm3、平均粒径(D50)が6.0μmであり、X線回折分析(CuKα)により測定したケイ素結晶の大きさが5nmであることを確認した。
【0091】
<実験例1>
【0092】
前記実施例1乃至7、及び比較例1、2により製造されたケイ素酸化物複合体の孔の大きさ、孔の面積比(画像処理した断面で全面積に対する気孔部分の面積比)、ケイ素複合体粒子のD50、ケイ素複合体の比重と比表面積、Si結晶の大きさ、放電容量の初期効率、容量維持率を測定し、表1に示した。
【0093】
下記の表1で、マグネシウムが含まれていないか(比較例2)、マグネシウムが含まれても、自然冷却により製造時(比較例1)、粒子の内部に気孔が生成されないことが確認できる。
【0094】
【0095】
<製造例>
【0096】
前記実施例及び比較例によって製造されたケイ素酸化物複合体粉末を電極活物質として含むリチウム二次電池用負極と電池(コインセル)を作製した。
【0097】
前記活物質、導電材としてSUPER-P、ポリアクリル酸(polyacrylic acid)を重量比が80:10:10になるように水と混合して負極スラリーを製造した。
【0098】
前記組成物を厚さ18μmの銅箔に塗布して乾燥させることによって、厚さ70μmの電極を製造し、前記電極が塗布された銅箔を直径14mmの円形にパンチングしてコインセル用負極を製造し、反対極に厚さ0.3mmの金属リチウム箔を使用した。
【0099】
分離膜として厚さ0.1mmの多孔質ポリエチレンシートを使用し、電解液としてエチレンカーボネート(EC)とジエチレンカーボネート(DEC)を体積比1:1で混合した溶液に1M濃度のLiPF6を溶解させて電解質として使用し、前記の構成要素を適用し、厚さ2mm、直径32mm(いわゆる、2032型)のコインセル(電池)を作製した。
【0100】
<実験例>
【0101】
前記製造例で製造されたコインセルを0.1Cの定電流で電圧が0.005Vになるまで充電し、0.1Cの定電流で電圧が2.0Vになるまで放電し、充電容量(mAh/g)、放電容量(mAh/g)、及び初期の充/放電効率(%)を求めて、その結果を前記表1に示した。
【0102】
また、前記製造例で、サンプル毎に作製したコインセルを1回の充電と放電をさせた以降、2回からの充電と放電では0.5Cの定電流で電圧が0.005Vになるまで充電し、0.5Cの定電流で電圧が2.0Vになるまで放電し、サイクル特性(50回の容量維持率)を求めて、その結果を前記表1に示した。
【0103】
前記表1で粒子の内部に気孔が生成される場合、50回の容量維持率が大きく改善されることを確認することができる。