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特許7593819サーモスタット装置及びサーモスタット装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】サーモスタット装置及びサーモスタット装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/68 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
F16K31/68 Q
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021012286
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115623
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000228741
【氏名又は名称】日本サーモスタット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】沼田 雅之
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/203040(WO,A1)
【文献】特開2005-156307(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198674(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方部材の取付孔に取り付けられて、内側に冷却液の流路が形成されるハウジングと、
前記相手方部材と前記ハウジングとの間を液密にシールするシール部材と、
一端が前記ハウジングの内側に挿入されて冷却液の温度に応じて伸縮作動するサーモエレメントと、
前記サーモエレメントの伸縮作動によって前記流路を開閉する弁体と、
前記弁体を閉じ方向へ付勢する付勢部材と、を備え、
前記ハウジングには、前記シール部材が嵌る異形の環状溝が形成され、
前記シール部材は、前記環状溝の周方向長さと同等な周方向長さを有する弾性部材であって、自然長となった状態で真円形状であり、前記環状溝に嵌めた際、環状溝の形状に合わせて変形することを特徴とするサーモスタット装置。
【請求項2】
前記ハウジングには、前記ハウジングと前記相手方部材とを締結する一対のボルトが挿通される一対のボルト孔が形成されており、前記環状溝は、楕円形状または角丸矩形状で、
前記一対のボルト孔は、前記環状溝の短手方向の両側から前記環状溝を挟むように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のサーモスタット装置。
【請求項3】
前記付勢部材の一端を支持するフレームを備え、
前記ハウジングは、
一端に開口を有して内側に前記サーモエレメントの一端が挿入される中空の本体部と、
前記本体部の開口縁から起立して先端部で前記フレームを支える一対の脚とを有し、
前記一対の脚は、前記環状溝の内側であって、前記環状溝の長手方向の両端に位置することを特徴とする請求項2に記載のサーモスタット装置。
【請求項4】
内側に冷却液の流路が形成されるハウジングと、
一端が前記ハウジング内に挿入されて冷却液の温度に応じて伸縮作動するサーモエレメントと、
前記サーモエレメントの伸縮作動によって前記流路を開閉する弁体と、
前記弁体を閉じ方向へ付勢する付勢部材と、を備え、
前記ハウジングに、異形の環状溝が形成されたサーモスタット装置の製造方法であって、
前記環状溝の周方向長さと同等な周方向長さを有し、自然長となった状態で真円形状の弾性部材からなるシール部材を、前記環状溝の形状に合わせて変形させ、嵌めることを特徴とするサーモスタット装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーモスタット装置及びサーモスタット装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーモスタット装置は、例えば、自動車用エンジンの入口側又は出口側に配置され、エンジンとラジエータとを繋ぐ冷却路を開閉して、エンジンを循環する冷却液の温度を制御するのに利用される。
【0003】
このようなサーモスタット装置は、例えば、特許文献1に開示されるように(図5参照)、内側に冷却路に通じる流路が形成されるハウジング60と、一端がハウジング60内に挿入されて温度に応じて伸縮するサーモエレメント51と、サーモエレメント51の伸縮により流路を開閉する弁体52と、前記弁体52を閉じる方向へ付勢するコイルスプリング53とを有する。そして、サーモスタット装置は、相手方部材の取付孔に装着される。このとき、ハウジング60と相手方部材はボルトで締結されるとともに、ハウジング60と相手方部材との間がシール部材71で液密にシールされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-330920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、図6に示すように、ハウジング60において、シール部材71が嵌る環状溝70が真円形状である場合、この環状溝70よりも外側に締結用のボルトを挿通するためのボルト孔63aが設けられ、ボルト孔63aを形成するためのフランジ63がハウジング60の本体部から外側へ張り出すように形成される。
このように、真円状の環状溝70の外周から外側へ張り出すようにフランジ63を設けると、ハウジング60が大型化してサーモスタット装置が大型化する。
【0006】
これに対し、図7に示すように、環状溝70を異形で縦長に形成し、環状溝70の短手方向の両側から環状溝70を挟むようにボルト孔63a,63aを設けた場合、この一対のボルト孔63a,63aの間隔(締結ピッチ)が小さくなり、サーモスタット装置を小型化できる。とはいえ、図7に示すように、異形の環状溝70に、この環状溝70形状と同形状の異形のシール部材71を嵌める場合、環状溝70の曲率が大きい部分にシール部材71の曲率が大きい部分が嵌り、環状溝70の曲率小さい部分にシール部材71の曲率が小さい部分が嵌るよう、シール部材71に位置決め用の突起71aを設け、環状溝70に、その突起71aが嵌る溝70aを設けている。
これにより、シール部材71に方向性ができる。よって、シール部材71を組み付ける際、まずは位置決め用の突起71aを位置決め用の溝70aに嵌めてから、シール部材71の本体部分を環状溝70に嵌めることになり、シール部材71の組付作業が煩雑になる。加えて、環状溝70の形状に合わせて、それ専用のシール部材71を用意する必要がある。即ち、シール部材71が環状溝70の形状に合わせた専用品となってしまうので、形状の異なる環状溝70を有する種類の異なるサーモスタット装置でシール部材71を共通化できず、シール部材71の汎用性が低下してコスト高になる。
【0007】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、サーモスタット装置の大型化を抑制できるとともに、シール部材の組付性が良好で、コストを抑制できるサーモスタット装置及びサーモスタット装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決する本発明に係るサーモスタット装置は、相手方部材の取付孔に取り付けられて、内側に冷却液の流路が形成されるハウジングと、前記相手方部材と前記ハウジングとの間を液密にシールするシール部材と、一端が前記ハウジングの内側に挿入されて冷却液の温度に応じて伸縮作動するサーモエレメントと、前記サーモエレメントの伸縮作動によって前記流路を開閉する弁体と、前記弁体を閉じ方向へ付勢する付勢部材と、を備え、前記ハウジングには、前記シール部材が嵌る異形の環状溝が形成され、前記シール部材は、前記環状溝の周方向長さと同等な周方向長さを有する弾性部材であって、自然長となった状態で真円形状であり、前記環状溝に嵌めた際、環状溝の形状に合わせて変形することに特徴を有する。
【0009】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係るサーモスタット装置の製造方法は、内側に冷却液の流路が形成されるハウジングと、一端が前記ハウジング内に挿入されて冷却液の温度に応じて伸縮作動するサーモエレメントと、前記サーモエレメントの伸縮作動によって前記流路を開閉する弁体と、 前記弁体を閉じ方向へ付勢する付勢部材と、を備え、前記ハウジングに、異形の環状溝が形成されたサーモスタット装置の製造方法であって、前記環状溝の周方向長さと同等な周方向長さを有し、自然長となった状態で真円形状の弾性部材からなるシール部材を、前記環状溝の形状に合わせて変形させ、嵌めることに特徴を有する。
【0010】
前記サーモスタット装置及びサーモスタット装置の製造方法によれば、環状溝が異形であって、真円形状でないので、環状溝の中心を通る直線方向の幅が狭い部分と、広い部分ができる。これにより、幅が狭い部分の両側に締結用のボルトを挿通するボルト孔を形成するようにすれば、締結ピッチを短くできる。よって、ハウジングの大型化を抑制し、ひいてはサーモスタット装置の大型化を抑制できる。
さらに、真円ではない環状溝に対し、自然長となった状態での形状が真円のシール部材が嵌められ、シール部材は弾性変形により環状溝の形状に沿うことになる。このように、自然長となった状態でのシール部材の形状を真円とすることにより、シール部材に方向性がなくなり、シール部材のどの位置からでの環状溝にシール部材を嵌められるので、組付性を良好にできる。
さらに、真円形状のシール部材の周長と同じ周長をもつ環状溝であれば、異なる形状の環状溝にも嵌められる。これにより、サーモスタットの種類に応じて形状違いのシール部材を用意する必要がなく、専用部品を少なくし(シール部材を汎用的に用いることができ)、コストを抑制できる。
【0011】
また、前記サーモスタット装置では、前記ハウジングに、前記ハウジングと前記相手方部材とを締結する一対のボルトが挿通される一対のボルト孔が形成されていて、前記環状溝が、楕円形状又は角丸矩形状に形成され、前記一対のボルト孔が、前記環状溝の短手方向の両側から前記環状溝を挟むように配置されていてもよい。このように、環状溝を縦長に形成して、環状溝の短手方向の両側にボルト孔を設けることで、締結ピッチを容易に短くしてサーモスタット装置を小型化できる。さらには、環状溝が楕円形状又は角丸矩形状の場合、自然長状態で真円形状のシール部材を異形の環状溝に嵌め易い。
【0012】
また、前記サーモスタット装置は、前記付勢部材の一端を支持するフレームを備え、 前記ハウジングが、一端に開口を有して内側に前記サーモエレメントの一端が挿入される中空の本体部と、前記本体部の開口縁から起立して先端部で前記フレームを支える一対の脚とを有し、前記一対の脚が、前記環状溝の内側であって、前記環状溝の長手方向の両端に位置するとしてもよい。このようにすると、締結ピッチを短くしつつ、脚を配置するのが容易である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るサーモスタット装置及びサーモスタット装置の製造方法によれば、サーモスタット装置の大型化を抑制できるとともに、シール部材の組付性が良好で、コストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係るサーモスタット装置を脚の先端側から見た斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施の形態に係るサーモスタット装置の底面図である。
図3図3は、本発明の一実施の形態に係るサーモスタット装置を相手方部材に取り付けた状態を示す一部断面図である。
図4図4は、本発明の一実施の形態に係るサーモスタット装置のシール部材が自然長の状態の形状を示す平面図である。
図5図5は、従来のサーモスタット装置の一部断面図である。
図6図6は、図5のサーモスタット装置の底面図である。
図7図7は、従来の他のサーモスタット装置の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態に係るサーモスタット装置を図面に基づき説明する。図1から図3に示す本実施の形態に係るサーモスタット装置10は、例えば、エンジンの冷却液系に設けられる。具体的には、サーモスタット装置10は、ラジエータとエンジンとを繋ぐ冷却路におけるエンジンの入口側又は出口側に設けられ、冷却液の温度に応じて冷却路を開閉し、エンジンを循環する冷却液温度を制御する。
【0016】
前記サーモスタット装置10は、図3に示すように、中空で、内側に前記冷却路に通じる流路Lが形成されるハウジング1と、このハウジング1内に一端が挿入されるサーモエレメント17と、このサーモエレメント17の外周に設けられ、流路Lを開閉する弁体15と、この弁体15を閉じ方向へ付勢する付勢部材としてのコイルスプリング16と、このコイルスプリング16の一端を支持するフレーム19とを備える。以下、説明の便宜上、図3に示すサーモスタット装置10の上下を単に「上」「下」という。
【0017】
本実施の形態において、ハウジング1は、合成樹脂により形成されている。ハウジング1は、下端に開口20cが形成される略有頂筒状の本体部20と、この本体部20の下端開口縁から下方へ相対向して延びる一対の脚21,21と、本体部20の頂部に設けられるラジエータ側の接続口23と、本体部20の下端外周から外側へ張り出す一対のフランジ2,2とを有する。
また、ハウジング1は、脚21を相手方部材4の取付孔5に挿入した状態で相手方部材4に装着される。相手方部材4には、エンジン側の接続口40と、バイパス側の接続口41が形成される。ハウジング1内の流路Lは、取付孔5を介してラジエータ側の接続口23とエンジン側の接続口40とを連通する。前述のように、流路Lは、エンジンとラジエータとを繋ぐ冷却路に通じており、この冷却路の一部を構成する。
その一方、バイパス側の接続口41は、取付孔5を介してエンジン側の接続口40と連通しており、これらは、ラジエータを経由しない冷却液をエンジンに循環させるバイパス路の一部を構成する。
ここでいう相手方部材とは、例えば、サーモスタット装置10が自動車におけるエンジンの入口側に配置される場合、サーモスタット装置10は、エンジンに冷却液を供給するウォーターポンプに取り付けられる。この場合、ウォーターポンプ側のサーモスタット装置を取り付けるための部材が相手方部材である。尚、サーモスタット装置は、自動車におけるエンジンの出口側に配置されていてもよいのは勿論である。
【0018】
図2に示すように、一対のフランジ2,2には、それぞれボルト孔2aが形成される。ボルト孔2aには、金属製のスリーブ(符示せず)が圧入され、このスリーブにサーモスタット装置10を相手方部材4へ固定するためのボルト(図示せず)が挿通される。このボルト孔2aよりも内側に位置する本体部20の下端開口縁には、開口20cを取り囲むように環状溝24が形成され、この環状溝24にシール部材25が装着される。シール部材25は、ハウジング1と相手方部材4との間をシールし、サーモスタット装置10を相手方部材4に取り付けた状態で、ハウジング1及び取付孔5内を流れる冷却液が外に漏れるのを防止する。
本体部20におけるシール部材25よりも内側(内部側)が、ハウジング1の内側である。このハウジング1の内側に位置する本体部20の下端開口縁の直上部内周に、環状の弁座20bが形成されており、この弁座20bに弁体15が離着座することで、流路Lが開閉される。
【0019】
ハウジング1の内側に、サーモエレメント17の上端側が挿入される。サーモエレメント17は、本体部20の軸芯部に、その軸芯線に沿うように配置される。サーモエレメント17は、内部にワックス等の熱膨張体が封入されるエレメントケース30と、このエレメントケース30に進退可能に挿入されるピストン3とを備える。
そして、エレメントケース30周囲の冷却液の温度が上昇し、内部の熱膨張体が温められて膨張すると、ピストン3がエレメントケース30から退出し、サーモエレメント17が伸長する。反対に、エレメントケース30周囲の冷却液の温度が低下し、内部の熱膨張体が冷やされて収縮すると、ピストン3がエレメントケース30内へ侵入し、サーモエレメント17が収縮する。このように、サーモエレメント17は、冷却液の温度に応じて伸縮作動する。
サーモエレメント17の上端に位置するピストン3の先端は、本体部20の内側、頂部に形成された筒状のボス部20aに篏合する。このため、ハウジング1に対するピストン3の上方への移動が阻止される。よって、サーモエレメント17が伸縮作動すると、ハウジング1に対するピストン3の位置は変わらず、エレメントケース30が上下に移動する。
【0020】
エレメントケース30の外周に、弁体15が固定されている。これにより、弁体15は、サーモエレメント17の伸縮に伴ってエレメントケース30とともに上下に移動する。そして、サーモエレメント17が伸長して弁体15が下方へ移動すると、弁体15が弁座20bから離座してこれらの間を冷却液が通過できるようになるので、流路Lの連通が許容される。反対に、サーモエレメント17が収縮し、弁体15が上方へ移動して弁座20bに着座すると、流路Lの連通が遮断される。このように、弁体15は、流路Lを開閉する。
【0021】
弁体15の背面には、コイルスプリング16の上端が当接する。このコイルスプリング16は、サーモエレメント17の周りを囲うように配置されている。また、コイルスプリング16の下端(一端)は、フレーム19で支えられている。
【0022】
フレーム19は、ハウジング1に形成される一対の脚21,21の先端部に引っ掛かり、ハウジング1に対する下方への移動が阻止される。また、フレーム19の中心部には、貫通孔19aが形成されている。この貫通孔19aに、エレメントケース30が上下動自在に挿通される。つまり、エレメントケース30は、フレーム19に対して上下動可能となっている。
【0023】
コイルスプリング16は、圧縮ばねであり、弁体15とフレーム19との間に圧縮された状態で配置される。このため、弁体15は、コイルスプリング16で上方(弁座20b側)へ付勢される。この構成において、サーモエレメント17の周囲の冷却液が高温になり、サーモエレメント17が伸長すると、弁体15がコイルスプリング16の付勢力に抗して下方へ移動して、弁座20bから離れる。その一方、サーモエレメント17の周囲の冷却液が低温になり、サーモエレメント17が伸長すると、弁体15がコイルスプリング16の付勢力に従って上方へ移動して、弁座20bに近づく。
【0024】
図2に示すように、ハウジング1に形成される環状溝24は、本実施の形態において角丸矩形で、縦長の形状となっている。そして、一対のフランジ2,2は、環状溝24の長手側から外側へ張り出すように設けられる。前述のように、一対のフランジ2,2には、それぞれボルト孔2aが形成されている。このように、ボルト孔2aは、一対設けられ、一対のボルト孔2a,2aが環状溝24の短手方向の両側から環状溝24を挟むように配置されている。また、一対の脚21,21は、環状溝24の内側であって、環状溝24の長手方向両端に対応する位置に配置されている。
【0025】
環状溝24に嵌る、シール部材25は、ゴム等で形成された弾性部材であり、図4に示すように、自然長となった状態で真円形状である。シール部材25が自然長となった状態(自然長状態)とは、シール部材25が圧縮されたり伸長されたりせずに、シール部材25になにも負荷がかかっていない状態をいい、シール部材25を形作る金型のキャビディ形状と言い換えることもできる。また、シール部材25が真円形状とは、シール部材25を全体としてみたときに、シール部材25が平面視で真円形状となっていればよく、例えば、シール部材25の内周又は外周に、周方向に並べて突起が形成されていてもよい。
また、シール部材25の周方向長さ(周長)は、環状溝25の周方向長さ(周長)と同等である。
【0026】
以上に説明したように、本実施の形態に係るサーモスタット装置10は、相手方部材4の取付孔5に取り付けられて、内側に冷却液の流路Lが形成されるハウジング1と、相手方部材4とハウジング1との間を液密にシールするシール部材25と、一端がハウジング1の内側に挿入されて冷却液の温度に応じて伸縮作動するサーモエレメント17と、サーモエレメント17の伸縮作動によって流路Lを開閉する弁体15と、弁体15を閉じ方向へ付勢するコイルスプリング(付勢部材)16とを備える。そして、ハウジング1には、シール部材25が嵌る異形の環状溝24が形成され、シール部材25は、自然長となった状態で、真円形状である。
【0027】
上記構成によれば、環状溝24が異形であって、真円形状でないので、環状溝24の中心を通る直線方向の幅が狭い部分と、広い部分ができる。これにより、幅が狭い部分の両側にフランジ2を設け、そのフランジ2にボルト孔2aを形成すれば、締結ピッチ(ボルト孔2aの間隔)を短くしてハウジング1の大型化を抑制し、ひいてはサーモスタット装置10の大型化を抑制できる。
【0028】
さらに、前記シール部材25の形状は、前記環状溝24に嵌められる前において、図4の平面図に示すように自然長となった状態で真円である。このシール部材25の自然長での周長2πrは、環状溝24の周長と同等である。また、シール部材25は、ゴム等で形成され、弾性を有するので、環状溝24と異なる形状であっても、環状溝24の形状に合わせて変形でき、環状溝24に嵌る。
【0029】
このように環状溝24の形状が真円でなくても環状溝24に嵌める前のシール部材25の形状を真円とすることにより、シール部材25に方向性がなくなり、従来の位置決め用の突起71a(図7)も不要となって、シール部材25のどの位置からでも環状溝24に嵌められるので、シール部材25の組付性を良好にできる。
さらに、自然長状態で真円形状のシール部材25は、シール部材25の周長2πrと同じ周長をもつ環状溝であれば、図2に示す環状溝24と異なる形状の環状溝にも嵌められる。これにより、サーモスタット装置10の種類に応じて形状違いのシール部材25を用意する必要がなく、専用部品を少なくできるのでシール部材25の汎用性が向上し、コストを抑制できる。
【0030】
また、環状溝24の中心を通る直線方向の幅が広い部分では、ハウジング1の内部空間も同方向へ膨らませて膨出部を形成できる。このようにすると、前記膨出部をエンジン側の接続口40へ向けて設ければ、ハウジング1内を通過する冷却液の圧損を低減できる。反対に、膨出部をエンジン側の接続口40と反対側に設ければ、サーモスタット装置10をエンジンの入口側に設けた場合に、ラジエータ側の接続口23から流入するラジエータを経由した低温の冷却液とバイパス側の接続口41から流入するラジエータを経由しない高温の冷却液とのミキシングを良好にできる。
【0031】
また、本実施の形態に係るサーモスタット装置10では、環状溝24が角丸矩形状である。このように、環状溝24を縦長に形成すると、環状溝24の短手方向の両側にボルト孔2aを設けることで、締結ピッチを容易に短くしてサーモスタット装置10を小型化できる。さらには、環状溝24を角丸矩形とすることで、環状溝24の形状が真円でなくても、比較的単純な、曲率の変わる部分が少ない形状になるので、異形の環状溝24に自然長状態で真円形状のシール部材25を嵌める場合であっても、シール部材25を嵌め易い。
【0032】
また、本実施の形態に係るサーモスタット装置10は、コイルスプリング(付勢部材)16の一端を支持するフレーム19を備える。また、ハウジング1は、一端に開口20cを有して内側にサーモエレメント17の一端が挿入される中空の本体部20と、本体部20の開口縁から起立して先端部でフレーム19を支える一対の脚21,21とを有する。そして、一対の脚21,21は、環状溝24の内側であって、環状溝24の長手方向の両端に位置する。これにより、締結ピッチを短くしつつ、脚21を配置するのが容易である。
【0033】
しかし、脚21の配置は上記の限りではなく、適宜変更できる。さらに、脚21の数は一対(二つ)に限定されるものではなく、例えば、弁座20bの周方向に沿って等間隔に脚を3以上設けてもよく、脚21を廃して相手方部材4でコイルスプリング(付勢部材)16の一端を支持してもよい。
さらに、環状溝24の形状は、角丸矩形状に限られず、他の形状であってもよい。例えば、環状溝24が楕円形状であってもよく、この場合には、環状溝24が角丸矩形状である場合と同様の効果を得られる。ここでいう異形とは、前述の通り、真円以外の形状のことであり、角丸矩形、楕円以外にも、多角形、角丸多角形、切欠き円形、涙形等を含む。
また、フランジ2、ボルト孔2aの数も、図示する限りでなく、適宜変更できる。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 ハウジング
2 フランジ
2a ボルト孔
3 ピストン
4 相手方部材
5 取付孔
10 サーモスタット装置
15 弁体
16 コイルスプリング(付勢部材)
19 フレーム
20 本体部
20a ボス部
20b 弁座
21 脚
24 環状溝
25 シール部材
L 流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7