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特許7593822グリップ並びにこれを有するリールシート及び釣竿
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】グリップ並びにこれを有するリールシート及び釣竿
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/08 20060101AFI20241126BHJP
   A01K 87/06 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A01K87/08 B
A01K87/06 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021018245
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2022121083
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】山中 貴弘
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-154371(JP,A)
【文献】特開2019-165656(JP,A)
【文献】特開2014-117209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0022329(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/08
A01K 87/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿を構成するブランクが軸方向に挿通されると共に釣用リールが装着される筒状のリールシート本体と、
指掛部を有し、前記ブランクが移動可能に挿通される筒状体と、
前記筒状体の外周側に設けられたグリップ本体と、
前記ブランクが軸方向に移動可能な状態で前記筒状体に着脱可能に係合することにより、前記グリップ本体を前記筒状体に固定すると共に前記リールシート本体の軸方向端部に連結される固定リングと、を備え、
前記固定リングは、前記グリップ本体の一端が当接する第1座部を有し、前記固定リングの他方側が前記筒状体の一方側に螺合する、リールシート。
【請求項2】
前記グリップ本体は中空の部材である請求項1に記載のリールシート。
【請求項3】
釣竿を構成するブランクが軸方向に挿通されると共に釣用リールが装着される筒状のリールシート本体と、
指掛部を有し、前記ブランクが移動可能に挿通される筒状体と、
前記筒状体の外周側に設けられたグリップ本体と、
前記ブランクが軸方向に移動可能な状態で前記筒状体に着脱可能に係合することにより、前記グリップ本体を前記筒状体に固定すると共に前記リールシート本体の軸方向端部に連結される固定リングと、を備え、
前記筒状体の外縁に前記グリップ本体の他端が当接する第2座部が形成されている、リールシート
【請求項4】
前記グリップ本体は中空の部材である請求項3に記載のリールシート。
【請求項5】
前記筒状体の一方側に前記固定リングの他方側が螺合し、
前記固定リングは、前記グリップ本体の一端が当接する第1座部を有する請求項3又は4に記載のリールシート。
【請求項6】
前記固定リングの端面に端面部材が取り付けられている請求項1から5のいずれかに記載のリールシート。
【請求項7】
前記固定リングの軸方向後方側が前記筒状体の軸方向前方側に螺合し、且つ前記固定リングの軸方向前方側が前記リールシート本体に螺合されている請求項6に記載のリールシート。
【請求項8】
釣竿を構成するブランクが移動可能に挿通された筒状体と、
前記筒状体の外周側に設けられたグリップ本体と、
前記ブランクの後端部が軸方向に挿通された状態で前記筒状体に着脱可能に係合することにより前記グリップ本体を前記筒状体に固定する固定リングと、
前記ブランクの後端部が着脱可能に連結され且つ前記固定リングの軸方向後方側の端面に着脱可能に取り付けられた端面部材とを備えた釣竿。
【請求項9】
前記固定リングの軸方向前方側が前記筒状体の軸方向後方側に螺合し、且つ前記固定リングの軸方向後方側に前記端面部材が嵌合している請求項8に記載の釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、釣竿及びリールシートの構造に関し、詳しくは、これらに設けられたグリップの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば両軸受けタイプのリールを用いたジギングでは、釣人は、釣竿の後端部を脇に挟むと共にリールシート及びリールを把持(いわゆるパーミング)し、釣竿及びリールを操作しつつジグのさまざまなアクションを演出する。このような釣竿及びリールの操作を良好なものとするため、釣竿にグリップが設けられている。
【0003】
このグリップは、一般に、上記リールシートに設けられたフロントグリップと、釣竿の後端に設けられたエンドグリップとを有する。パーミングや釣竿の操作を良好なものとするため、フロントグリップやエンドグリップの形状等が工夫されている(たとえば、特許文献1、2及び非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-146536号公報
【文献】特許第6000107号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】2020 SHIMANO Fishing Tackle Catalogue P126
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のグリップは、多くの釣人にとって良好なパーミングや釣竿の操作を可能にするためにデザインされている。しかし、釣人の体格や手のサイズはさまざまであるから、良好なパーミング等を高いレベルで実現することを目的とした場合には、上記グリップが如何にデザインされようとも、それは、標準的な体格の釣人を想定した妥協の設計とならざるを得ない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、釣人の体格や手のサイズに応じて、釣竿の性能に変更を加えることなくグリップを簡単に交換することができる釣竿及びリールシートを提供すること、並びにそのためのグリップの構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係るグリップは、釣竿を構成するブランクがスライド可能に挿通される筒状体と、前記筒状体の外周側に設けられたグリップ本体と、前記筒状体に着脱可能に係合することにより前記グリップ本体を前記筒状体に固定する固定リングとを備えている。
【0009】
このグリップは、筒状体、グリップ本体及び固定リングを有する。筒状体は、ブランクに嵌め合わされ、ブランクの外周面を覆う。この筒状体にグリップ本体が嵌め合わされる。グリップ本体の外形形状は特に限定されるものではないが、所望のパーミングが実現されるために種々の外形がデザインされ得る。固定リングが筒状体に係合することにより、固定リング及び筒状体が協働してグリップ本体を筒状体に固定する。前記固定リングが筒状体から外されることにより、この筒状体からグリップ本体が抜脱される。すなわち、一のグリップ本体が他のグリップ本体に交換され得る。
【0010】
(2) 前記グリップ本体は、中空の部材であるのが好ましい。
【0011】
この構成では、前記筒状体の外周面と前記グリップ本体の内周面との間に空間が形成される。したがって、前記グリップ本体の外形サイズが大きくなったとしても、グリップ本体の重量が抑えられ、グリップの軽量化が図られる。
【0012】
(3) 前記筒状体の一方側に前記固定リングの他方側が螺合し、前記固定リングは、前記グリップ本体の一端が当接する第1座部を備えているのが好ましい。
【0013】
この構成では、作業者は、固定リングを回転させるだけで容易に固定リングを筒状体に対して着脱することができる。したがって、グリップ本体の取外作業が容易である。しかも、グリップ本体は固定リングの第1座部に載置された状態で筒状体に装着されるから、グリップ本体の組付作業も容易である。
【0014】
(4) 前記筒状体の外縁に前記グリップ本体の他端が当接する第2座部が形成されているのが好ましい。
【0015】
この構成では、グリップ本体が筒状体に嵌め合わされたときに、筒状体に対する所定の位置(すなわち、前記第2座部が形成された位置)に位置決めされ得る。これにより、グリップ本体の組付作業がより一層簡単になる。
【0016】
(5) 前記筒状体は、前記固定リングとの螺合を支援する指掛部を有するのが好ましい。
【0017】
この構成では、固定リングの着脱の際に、作業者は指掛部に指や工具を掛けることができるので、固定リングの操作が簡単である。
【0018】
(6) 前記固定リングの端面に端面部材が取り付けられていてもよい。
【0019】
前記筒状体に取り付けられた固定リングの端面は露出する。この端面に端面部材が設けられることにより、固定リングへの水や異物の混入が防止される。しかも、いわゆるグリップエンドとしての機能が発揮されると共に、グリップの見栄えが向上し、製品として完成度の高いものとなる。
【0020】
(7) 本発明に係るリールシートは、釣竿を構成するブランクが軸方向に挿通されると共に釣用リールが装着される筒状のリールシート本体と、前記ブランクが移動可能に挿通される筒状体と、前記筒状体の外周側に設けられたグリップ本体と、前記ブランクが軸方向に移動可能な状態で前記筒状体に着脱可能に係合することにより、前記グリップ本体を前記筒状体に固定すると共に前記リールシート本体の軸方向端部に連結される固定リングととを備えている。
【0021】
このリールシートはグリップを兼ねるものであって、リールシート本体、筒状体、グリップ本体及び固定リングを有する。リールシート本体は、ブランクに取り付けられ、釣用リールを保持する。筒状体は、ブランクに嵌め合わされ、このブランクの外周面を覆う。この筒状体にグリップ本体が嵌め合わされる。グリップ本体の外形形状は特に限定されるものではないが、所望のパーミングが実現されるために種々の外形がデザインされ得る。固定リングが筒状体に係合することにより、固定リング及び筒状体が協働してグリップ本体を筒状体に固定する。前記固定リングが筒状体から外されることにより、この筒状体からグリップ本体が抜脱される。すなわち、一のグリップ本体が他のグリップ本体に交換され得る。
【0022】
(8) 前記固定リングの軸方向後方側が前記筒状体の軸方向前方側に螺合し、且つ前記固定リングの軸方向前方側が前記リールシート本体に螺合されているのが好ましい。
【0023】
この構成では、作業者は、固定リングを回転させるだけで容易に固定リングをリールシート及び筒状体に対して着脱することができる。したがって、グリップ本体の交換作業のみならず、筒状体、グリップ本体及び固定リングからなるグリップユニットを交換する作業が容易である。
【0024】
前記固定リングは、前記グリップ本体の軸方向前方側端部が当接する第1座部を有するのが好ましい。この場合、グリップ本体は、固定リングの座部に載置された状態で筒状体に装着されるから、グリップ本体の組付作業も容易である。
【0025】
前記筒状体の外縁に前記グリップ本体の軸方向後方側端部が当接する第2座部が形成されているのが好ましい。この場合、グリップ本体は、筒状体に嵌め合わされたときに、この筒状体に対する所定の位置(すなわち、前記座部が形成された位置)に位置決めされ得る。これにより、グリップ本体の組付作業がより一層簡単になる。
【0026】
前記筒状体は、前記固定リングとの螺合を支援する指掛部を有するのが好ましい。この場合、固定リングの着脱の際に、作業者は指掛部に指や工具を掛けることができるので、固定リングの操作が簡単である。
【0027】
(9) 本発明に係る釣竿は、釣竿を構成するブランクが移動可能に挿通された筒状体と、前記筒状体の外周側に設けられたグリップ本体と、前記ブランクの後端部が軸方向に挿通された状態で前記筒状体に着脱可能に係合することにより前記グリップ本体を前記筒状体に固定する固定リングと、前記ブランクの後端部が着脱可能に連結され且つ前記固定リングの軸方向後方側の端面に着脱可能に取り付けられた端面部材とを備えている。
【0028】
この釣竿は、ブランク、筒状体、グリップ本体、固定リング及び端面部材を有する。筒状体は、前記ブランクに嵌め合わされ、このブランクの外周面を覆う。この筒状体にグリップ本体が嵌め合わされる。グリップ本体の外形形状は特に限定されるものではないが、所望のパーミングが実現されるために種々の外形がデザインされ得る。固定リングが筒状体に係合することにより、固定リング及び筒状体が協働してグリップ本体を筒状体に固定する。前記ブランクの後端部が端面部材に連結され、この端面部材が固定リングに取り付けられる。すなわち、筒状体、グリップ本体及び固定リングからなるグリップユニットが前記端面部材に支持された状態で前記ブランクに取り付けられる。したがって、前記端面部材が前記ブランクから外されることにより、前記グリップユニットが前記ブランクに対して着脱される。しかも、前記固定リングが前記筒状体から外されることにより、この筒状体からグリップ本体が抜脱される。すなわち、一のグリップユニットが他のグリップユニットに交換され、一のグリップ本体が他のグリップ本体に交換され得る。
【0029】
(10)前記固定リングの軸方向前方側が前記筒状体の軸方向後方側に螺合し、且つ前記固定リングの軸方向後方側に前記端面部材が嵌合しているのが好ましい。
【0030】
この構成では、前記端面部材が簡単に外されるので、作業者は、前記グリップユニットを簡単に着脱することができる。しかも、作業者は、固定リングを回転させるだけで容易に固定リングを筒状体に対して着脱することができる。したがって、グリップ本体の交換作業のみならず、筒状体、グリップ本体及び固定リングからなるグリップユニットを交換する作業が容易である。
【0031】
前記固定リングは、前記グリップ本体の軸方向後方側端部が当接する第1座部を備えているのが好ましい。この場合、グリップ本体は固定リングの座部に載置された状態で筒状体に装着されるから、グリップ本体の組付作業も容易である。
【0032】
前記筒状体の外縁に前記グリップ本体の軸方向前方側端部が当接する第2座部が形成されているのが好ましい。この場合、グリップ本体が筒状体に嵌め合わされたときに、筒状体に対する所定の位置(すなわち、前記座部が形成された位置)に位置決めされ得る。これにより、グリップ本体の組付作業がより一層簡単になる。
【0033】
前記筒状体は、前記固定リングとの螺合を支援する指掛部を有するのが好ましい。この場合、固定リングの着脱の際に、作業者は指掛部に指や工具を掛けることができるので、固定リングの操作が簡単である。
【発明の効果】
【0034】
この発明によれば、釣竿に設けられるグリップ乃至グリップ本体が交換され得るので、釣人は、その体格や手のサイズに応じて、釣竿の性能に変更を加えることなくグリップの形状を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿10の要部外観図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るリールシート12の要部拡大図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るフロントグリップ14の分解図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係るリヤグリップ13の断面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係るリヤグリップ13の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係る釣竿の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0037】
1.釣竿の概略
【0038】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿10の要部外観図である。
【0039】
この釣竿10は、両軸受けタイプの釣用リールが適用され、たとえばジギングに供される。釣竿10は、釣竿本体11(特許請求の範囲に記載された「ブランク」に相当)と、これに装着されたリールシート12及びリヤグリップ13とを備えている。ジギングにおいては、釣人は、たとえば左手でリールシート12及び釣用リールを把持し(いわゆるパーミング)、リヤグリップ13を脇に挟み込みながら釣竿10及び釣用リールを操作する。
【0040】
同図は、リールシート12の要部及びリヤグリップ13の拡大斜視図も示している。本実施形態に係る釣竿10の特徴とするところは、前記リールシート12及びリヤグリップ13の構造である。リールシート12は、フロントグリップ14を備えており、このフロントグリップ14並びにリヤグリップ13は、釣人の手のサイズや体格に応じて簡単に交換されるようになっている。
【0041】
2.釣竿本体
【0042】
釣竿本体11は、本実施形態では1本のブランクから構成されている。このブランクは、既知の要領で構成される。たとえば、カーボン繊維により強化された樹脂シート(いわゆるプリプレグ)が所定形状に裁断され、これがマンドレルの周囲に巻回される。この状態でプリプレグが所定温度にて加熱処理された後、マンドレルが引き抜かれることによって釣竿本体11が焼成される。もっとも、複数のブランクから釣竿本体11が構成されてもよいことは勿論である。図示されていないが、釣竿本体11の所定位置にラインガイドが設けられ、釣用リールから繰り出された釣糸がラインガイドに挿通され、支持される。
【0043】
3.リールシート
【0044】
図2は、リールシート12の要部拡大図である。
【0045】
リールシート12は、全体として筒状を呈し、前記釣用リール(典型的にはベイトキャスティングリール)を着脱自在に保持する。リールシート12は、リールシート本体15と、可動フード16と、フロントグリップ14とを備えている。本実施形態では、リールシート本体15及び可動フード16は既知の構造であり、一般に樹脂又は金属により形成されている。釣竿本体11は、これらの図が示すように、リールシート12を貫通している。釣竿本体11の軸方向17は、リールシート本体15の軸方向と一致しており、リールシート本体15が釣竿本体11の所定の位置に固定されている。両者は、典型的には接着剤により固着される。
【0046】
リールシート本体15は、図2が示すような筒状に形成され、軸方向17に沿って貫通孔24が設けられている。本実施形態では、リールシート本体15の軽量化のために空隙部25が設けられている。これにより、リールシート本体15の後端部26(特許請求の範囲に記載された「軸方向端部」に相当)は、二重の筒状を呈する。すなわち、この後端部26は、小径の内筒部27と、大径の外筒部28とを有する。本実施形態では、内筒部27の内周面に雌ねじ29が形成されている。外筒部28は、リールシート本体15の後端部26の外形形状を決定している。後に詳述されるが、この後端部26にフロントグリップ14が連結される。
【0047】
リールシート本体15は、トリガ23及び固定フード18を有する。これらはリールシート本体15と一体的に形成されている。固定フード18は、リールシート本体15の軸方向17の後方側19に一体的に形成されている。釣用リールの脚部の一方が固定フード18に挿入され、所定の保持力で保持される。可動フード16は、リールシート本体15の軸方向17の前方側20に配置されている。可動フード16は、フード本体21と螺合リング22とを有する。フード本体21は、リールシート本体15に設けられており、軸方向17に沿ってスライド可能である。螺合リング22は、リールシート本体15に螺合しており、螺合リング22が操作されることにより、フード本体21と共に軸方向17にスライドする。すなわち、フード本体21が固定フード18に対して接離することができる。釣用リールの脚部の他方がフード本体21に挿入され、螺合リング22が操作されると、固定フード18と可動フード16との間に釣用リールの脚部が挟持される。
【0048】
4.フロントグリップ
【0049】
図3は、フロントグリップ14の分解図である。
【0050】
フロントグリップ14の外形形状は、図1が示すように、略円錐台状を呈する。図2及び図3が示すように、フロントグリップ14は、芯管31(特許請求の範囲に記載された「筒状体」に相当)と、グリップ本体32と、固定リング33とを有する。図2が示すように、釣竿本体11は、芯管31に挿通され、この芯管31にグリップ本体32が被せられる。固定リング33が芯管31に連結されることにより、両者間にグリップ本体32が挟み込まれる。この固定リング33は、後述のようにリールシート本体15の後端部26に連結される。
【0051】
図2及び図3が示すように、芯管31は、円筒状に形成されている。芯管31の材質は金属又は樹脂が採用され得る。芯管31の内径は釣竿本体11の外径に対応しており、釣竿本体11は、芯管31に対して軸方向17にスライド移動が可能となっている。芯管31の外周面の一方側、すなわち軸方向17の前方側20に雄ねじ34が形成されている。
【0052】
芯管31の他方側、すなわち軸方向17の後方側19に鉤型部35が形成されている。この鉤型部35は、大径部36及び傘部37(特許請求の範囲に記載された「指掛部」に相当)を有し、これらが軸方向17に連続して一体的に形成されている。傘部37の最大外径は、大径部36の外径よりも大きく、そのため、大径部36と傘部37との境界に段部47(特許請求の範囲に記載された「第2座部」に相当)が形成されている。
【0053】
傘部37は、鍔付き帽子状を呈する。傘部37がかかる形状に形成されることにより、作業者が芯管31を摘まみやすくなり、後述のようにフロントグリップ14の組立作業が容易になる。もっとも、傘部37の形状は特に限定されるものではなく、前記段部47を形成するものであれば他の形状であってもよい。
【0054】
固定リング33は、共通の中心を有する3つの円筒状リングを有し、これらが一体的に連結されている。固定リング33の材質は金属又は樹脂が採用され得る。固定リング33は、図2が示すようにリールシート本体15の内筒部27に連結され、固定リング33の中心が前記軸方向17と一致する。すなわち、固定リング33は、軸方向17の前方側20から順に第1リング38、第2リング39及び第3リング40を備えており、第3リング40を囲繞するように第2リング39が配置されている。
【0055】
第1リング38の外径は前記内筒部27の内径に対応しており、外周面に雄ねじ41が形成されている。したがって、第1リング38は、前記内筒部27と螺合することができる。
【0056】
第2リング39は、第1リング38よりも大径であり、二つの段部42、43が形成されている。段部42は、軸方向17の前方側20に形成されている。段部42の外径及び第2リング39の最大外径は、それぞれ、前記リールシート本体15の外筒部28の内径及び外径に対応している。したがって、第2リング39は、前記リールシート本体15の後端部26に連続するように滑らかに連結される(図1及び図2参照)。段部43(特許請求の範囲に記載された「第1座部」に相当)は、軸方向17の後方側19に形成されている。この段部43の外径は、後述のグリップ本体32の一方側の内径に対応している。
【0057】
第3リング40は、第1リング38と第2リング39との境界に連続しており(図2参照)、軸方向17の後方側19に延びている。第3リング40の内径は、前記芯管31の外径に対応している。第3リング40の内周面に雌ねじ44が形成されている。したがって、芯管31は、第3リング40と螺合することができる。
【0058】
グリップ本体32は、炭素繊維により強化された樹脂により成形されている。もっとも、グリップ本体32の材質は特に限定されるものではない。グリップ本体32は、本実施形態では、図2及び図3が示すような薄肉の漏斗状を呈し、大径の円筒部45及び縮径部46を有する。これらは一体的に形成され、縮径部46は円筒部45に連続し、縮径部46の外径は、軸方向17の後方側19に向かって漸次小さくなっている。グリップ本体32の外形形状は特に限定されるものではなく、釣人の手のサイズや体格に応じて適宜設計変更が施される。
【0059】
円筒部45の外径及び内径は、それぞれ、前記第2リング39の外径及び段部43の外径に対応している。したがって、グリップ本体32の一端、すなわち軸方向17の前方側20は、前記第2リング39の他端、すなわち軸方向17の後方側19に嵌め合わされ、固定リング33とグリップ本体32とが滑らかに連続する(図1及び図2参照)。
【0060】
縮径部46の端部、すなわち軸方向17の後方側19の外径及び内径は、それぞれ、前記芯管31の鉤型部35の外径及び段部47の外径に対応している。したがって、グリップ本体32の他端、すなわち軸方向17の後方側19は、前記芯管31の外縁に形成された段部47に嵌め合わされ、グリップ本体32と芯管31とが滑らかに連続する(図1及び図2参照)。
【0061】
フロントグリップ14は、次の要領で組み立てられる。
【0062】
図2及び図3が示すように、リールシート本体15に挿通された釣竿本体11に固定リング33が嵌め合わせられる。前記第1リング38は、リールシート本体15にねじ込まれると共に、前記第2リング39がリールシート本体15に嵌め合わされ、固定リング33がリールシート本体15に固定される。本実施形態では、前記第1リング38がリールシート本体15と螺合する構造であるが、これに代えて、第1リング38の外径及びリールシート本体15の内筒部27の内径が所定のはめあい寸法に設定されることにより、両者が嵌合固定される構造であってもよい。あるいは、前記第1リング38及び第2リング39がリールシート本体15と接着剤等により固着されてもよい。また、固定リング33の段部42にOリングが介在されていてもよい。
【0063】
前記第2リング39にグリップ本体32が嵌め合わされる。具体的には、グリップ本体32の円筒部45が前記第2リング39の段部43と嵌合する。芯管31は、釣竿本体11に嵌め込まれ、釣竿本体11に沿って軸方向17の前方側20にスライドしつつグリップ本体32に挿通される。芯管31に形成された雄ねじ34が前記第3リング40に形成された雌ねじ44と螺合し、軸方向17の前方側20にねじ込まれる。これにより、グリップ本体32の縮径部46が芯管31の段部47と嵌合し、グリップ本体32は、芯管31と固定リング33との間に挟持される。芯管31は、固定リング33と螺合しているから、芯管31は固定リング33に対して着脱自在である。
【0064】
5.リヤグリップ
【0065】
図4はリヤグリップ13の断面図であり、図5はリヤグリップ13の分解図である。
【0066】
リヤグリップ13は、釣竿本体11の後端部に設けられている(図1参照)。リヤグリップ13の外形形状は、図4及び図1が示すように、細長の略円錐台状を呈する。図4及び図5が示すように、リヤグリップ13は、芯管51(特許請求の範囲に記載された「筒状体」に相当)と、グリップ本体52と、固定リング53と、尻栓71(特許請求の範囲に記載された「端面部材」に相当)を有する。釣竿本体11は、芯管51に挿通され、尻栓71に連結されている。前記フロントグリップ14と同様に、芯管51にグリップ本体52が被せられ、固定リング53が芯管51に連結されることにより、芯管51と固定リング53との間にグリップ本体52が挟み込まれる。
【0067】
芯管51は、円筒状に形成されている。芯管51の材質は金属又は樹脂が採用され得る。芯管51の内径は釣竿本体11の外径に対応しており、釣竿本体11は、芯管51に対して軸方向17にスライド移動が可能となっている。芯管51の軸方向17の後方側19に雄ねじ54が形成されている。
【0068】
芯管51の軸方向17の前方側20に鉤状部55が形成されている。この鉤状部55は、大径部56及び傘部57(特許請求の範囲に記載された「指掛部」に相当)を有し、これらが軸方向17に連続して一体的に形成されている。傘部57の最大外径は、大径部56の外径よりも大きく、そのため、図5が示すように、大径部56と傘部57との境界に段部67(特許請求の範囲に記載された「第2座部」に相当)が形成されている。
【0069】
傘部57は、鍔付き帽子状を呈する。傘部57がかかる形状に形成されることにより、作業者が芯管51を摘まみやすくなり、後述のようにリヤグリップ13の組立作業が容易になる。もっとも、傘部57の形状は特に限定されるものではなく、前記段部67を形成するものであれば他の形状であってもよい。
【0070】
固定リング53は、3つの円筒状リングを有し、図5が示すように、これらは共通の中心を有し、一体的に連結されている。固定リング53の材質は、金属又は樹脂が採用され得る。釣竿本体11の後端部が固定リング53を貫通しており、固定リング53の中心が前記軸方向17と一致している。固定リング53は、軸方向17の後方側19から順に第1リング58、第2リング59及び第3リング60を備えている。これらは軸方向17に沿って並設されており、第1リング58の外径が最も大きく、第3リング60の外径が最も小さい。
【0071】
第3リング60の内径は、芯管51の外径に対応しており、内周面に雌ねじ61が形成されている。したがって、第3リング60は、芯管31と螺合することができる。第2リング59は、第3リング60よりも大径の筒状を呈する。第2リング59の内径は、後述される尻栓71のボス部72の外径に対応している。
【0072】
第1リング58は、第2リング59よりも大径の筒状を呈し、フランジ状の段部62が形成されている(図5参照)。段部62は、軸方向17の後方側19の端面に形成されている。段部62の外径及び第1リング58の最大外径は、それぞれ、後述されるグリップ本体52の円筒部65の内径及び外径に対応している。したがって、第1リング58は、前記グリップ本体52の円筒部65に連続するように滑らかに連結される(図1及び図4参照)。第1リング58の内径は、後述する尻栓71の段部73の外径に対応している。
【0073】
尻栓71は、円盤状を呈し、金属又は樹脂からなる。尻栓71は、栓本体74及び前記ボス部72を有し、これらは一体的に形成されている。ボス部72は、円柱状を呈し、前記固定リング33の第2リング59と嵌合する。この第2リング59の内径及びボス部72の外径が所定のはめあい寸法に設定されることにより、ボス部72が第2リング59に嵌合固定されてもよいし、ボス部72の外周面に雄ねじが形成され、第2リング59に雌ねじが形成されることにより、両者が螺合される構造が採用されてもよい。
【0074】
栓本体74の一部が縮径されており、これにより前記段部73が形成されている。この段部73が第1リング58のに嵌め込まれる。第1リング58の内径及び段部73の外径が所定のはめあい寸法に設定されることにより、段部73が第1リング58に嵌合固定されてもよい。また、前記ボス部72と第2リング59とが嵌合される場合は、前記段部73の外周面に雄ねじが形成され、第1リング58に雌ねじが形成されることにより、両者が螺合される構造が採用されてもよい。なお、栓本体74の後端面75は、外方に緩やかに膨出しており、尻栓71の見栄えを向上させている。
【0075】
グリップ本体52は、炭素繊維により強化された樹脂により成形されている。もっとも、グリップ本体52の材質は特に限定されるものではない。グリップ本体52は、本実施形態では、図4及び図5が示すような薄肉の漏斗状を呈し、大径の円筒部65及び縮径部66を有する。これらは一体的に形成され、縮径部66は円筒部65に連続し、縮径部66の外径は、軸方向17の前方側20に向かって漸次小さくなっている。グリップ本体52の外形形状は特に限定されるものではなく、釣人の手のサイズや体格に応じて適宜設計変更が施される。
【0076】
円筒部65の外径及び内径は、それぞれ、前記第1リング58の外径及び段部62の外径に対応しているから、グリップ本体52の軸方向17の後方側19は、前記第1リング58の前方側20に嵌め合わされ、固定リング53とグリップ本体52とが滑らかに連続する(図1及び図4参照)。
【0077】
縮径部66の端部、すなわち軸方向17の前方側20の外径及び内径は、それぞれ、前記芯管51の鉤状部55の外径及び段部67の外径に対応している。したがって、グリップ本体52の軸方向17の前方側20は、前記芯管51の外縁に形成された段部67に嵌め合わされ、グリップ本体52と芯管51とが滑らかに連続する(図1及び図4参照)。
【0078】
リヤグリップ13は、次の要領で組み立てられる。
【0079】
図4及び図5が示すように、釣竿本体11の後端部が芯管51に挿通される。芯管51にグリップ本体52が嵌め合わされる。具体的には、グリップ本体52の縮径部66が前芯管51の段部67と嵌合する。芯管51に固定リング53が連結される。具体的には、作業者が芯管51の傘部57を操作することにより、芯管51に形成された雄ねじ54が前記第3リング60に形成された雌ねじ61と螺合する。これにより、グリップ本体52の円筒部65が固定リング53の段部62と嵌合し、グリップ本体52は、芯管51と固定リング53との間に挟持される。芯管51は、固定リング53と螺合しているから、芯管51は固定リング53に対して着脱自在である。
【0080】
釣竿本体11は、芯管51に対してスライド自在であるから、釣竿本体11が芯管51に対して軸方向17後方側19に相対的にスライドされる。固定リング53から釣竿本体11が露出した状態で、尻栓71が固定リング53に嵌め合わされる。このとき、釣竿本体11の後端部76が尻栓71のボス部72と連結される。ボス部72の内径と釣竿本体11の後端部76の外径が所定のはめあい寸法に設定されることにより、釣竿本体11の後端部76がボス部72と嵌合固定される。もっとも、釣竿本体11の後端部76の外周面に雄ねじが形成され、前記ボス部72の内周面に雌ねじが形成されることにより、釣竿本体11が尻栓71と螺合される構造であってもよい。
【0081】
6.作用効果
【0082】
本実施形態に係る釣竿10は、フロントグリップ14を備えたリールシート12を搭載している。フロントグリップ14は、芯管31、グリップ本体32及び固定リング33を有し、芯管31が固定リング33に着脱されることにより(図2参照)、グリップ本体32が着脱される。すなわち、グリップ本体32が他のものに容易に交換され得る。このことは、リヤグリップ13においても同様であり、芯管51及び釣竿本体11が固定リング53から外されることにより(図4参照)、グリップ本体52が着脱される。すなわち、グリップ本体32、グリップ本体52が他のものに容易に交換され得る。したがって、釣人は、その体格や手のサイズに応じて、釣竿の性能に変更を加えることなくグリップの形状を変更することができる。
【0083】
本実施形態では、グリップ本体32及びグリップ本体52は、薄肉の筒状に形成されているので、図2及び図4が示すように中空の部材として構成される。すなわち、芯管31の外周面とグリップ本体32の内周面及び芯管51の外周面とグリップ本体5の内周面との間に空間が形成される。したがって、グリップ本体32、52の外形サイズが大きくなったとしても、グリップ本体32、52の重量が抑えられ、フロントグリップ14及びリヤグリップ13の軽量化が図られる。
【0084】
本実施形態では、芯管31及び芯管51が固定リング33及び固定リング53に対して相対的に回転されるだけで、芯管31及び芯管51が取り外される。したがって、グリップ本体32及びグリップ本体52の交換作業が容易である。しかも、芯管31、芯管51は、それぞれ傘部37、傘部57を備えているので、作業者は傘部37、57を指で摘まむことができ、あるいは所要の工具で把持することができる。したがって、芯管31、51の操作が簡単になる。傘部37、57に工具が掛けられる場合は、この工具に対応して傘部37、57の外形形状がデザインされてもよい。たとえば、スパナにより芯管31、51が操作される場合は、傘部37、57が六角柱に形成されてもよい。
【0085】
本実施形態では、グリップ本体32が芯管31に嵌め合わされる際に、グリップ本体32が固定リング33の段部43に載置されるから(図3参照)、グリップ本体52の組付作業が一層容易である。同様に、グリップ本体52が芯管51に嵌め合わされる際に(図5参照)、グリップ本体52が固定リング53の段部62に載置されるから、グリップ本体52の組付作業が一層容易になる。
【0086】
本実施形態では、前記グリップ本体32、52の取付作業において、グリップ本体32は、芯管31の段部43に載置され、グリップ本体52は、芯管51の段部62に載置される。すなわち、グリップ本体32、52は、芯管31、51の所定の位置に位置決めされるので、グリップ本体32、52の組付作業がなお一層簡単になる。
【0087】
このように本実施形態に係る釣竿10では、リールシート12がフロントグリップ14を兼ねており、グリップ本体32が交換され得る。特に、芯管31、グリップ本体32及び固定リング33によりグリップユニットが構成されるので、グリップユニットごとの交換も可能となる。他方、リアグリップ13についても、グリップ本体52が交換され得ると共に、芯管51、グリップ本体52及び固定リング53によりグリップユニットが構成されるので、グリップユニットごとの交換も可能となる。したがって、釣人は、自己の体格や好みに合わせて釣竿をカスタマイズすることができる。加えて、リアグリップ13は、尻栓71を備えているので、固定リング53及び釣竿本体11への水や異物の混入が防止されると共に、いわゆるグリップエンドとしての機能が発揮される。
【符号の説明】
【0088】
10・・・釣竿
11・・・釣竿本体
12・・・リールシート
13・・・リヤグリップ
14・・・フロントグリップ
15・・・リールシート本体
17・・・軸方向
19・・・後方側
20・・・前方側
26・・・後端部
27・・・内筒部
28・・・外筒部
29・・・雌ねじ
31・・・芯管
32・・・グリップ本体
33・・・固定リング
34・・・雄ねじ
35・・・鉤型部
36・・・大径部
37・・・傘部
38・・・第1リング
39・・・第2リング
40・・・第3リング
41・・・雄ねじ
43・・・段部
44・・・雌ねじ
45・・・円筒部
46・・・縮径部
47・・・段部
51・・・芯管
52・・・グリップ本体
53・・・固定リング
54・・・雄ねじ
55・・・鉤型部
56・・・大径部
57・・・傘部
58・・・第1リング
59・・・第2リング
60・・・第3リング
61・・・雌ねじ
65・・・円筒部
66・・・縮径部
67・・・段部
71・・・尻栓
72・・・ボス部
76・・・後端部


図1
図2
図3
図4
図5