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特許7593828電線用外装部材、ワイヤハーネスおよびワイヤハーネスの配索構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】電線用外装部材、ワイヤハーネスおよびワイヤハーネスの配索構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20241126BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20241126BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20241126BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H02G3/04 043
H02G3/04 062
H01B7/00 301
H01B7/18 D
H05K9/00 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021025336
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022127276
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴 正秀
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203895176(CN,U)
【文献】登録実用新案第3223935(JP,U)
【文献】特開2018-102037(JP,A)
【文献】特開昭62-190610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H01B 7/00
H01B 7/18
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単数または複数の電線の外周を覆って電磁シールド機能を発揮する電線用外装部材であって、
前記電線の長手方向の少なくとも一部の外周を覆う編組と、
前記編組よりも剛性が高く前記電線の長手方向の少なくとも一部の外周を覆う金網と、
を有し、
前記電線の長手方向の電磁シールドすべき区間を前記編組および金網の少なくともいずれかによって電磁シールドするように形成されており
前記金網の素線として、前記編組の素線よりも1桁大きい値の径の素線が用いられる、
ことを特徴とする電線用外装部材。
【請求項2】
前記編組が、前記電線の長手方向の電磁シールドすべき区間の全体を覆うように設けられると共に、前記金網が、前記編組の長手方向の少なくとも一部の外周を覆うように設けられ、前記編組と前記金網とが電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電線用外装部材。
【請求項3】
単数または複数の電線の外周を覆って電磁シールド機能を発揮する電線用外装部材であって、
前記電線の長手方向の少なくとも一部の外周を覆う編組と、
前記編組よりも剛性が高く前記電線の長手方向の少なくとも一部の外周を覆う金網と、
を有し、
前記電線の長手方向の電磁シールドすべき区間を前記編組および金網の少なくともいずれかによって電磁シールドするように形成されており、
前記編組が、前記電線の長手方向の電磁シールドすべき区間の一部を覆うように設けられると共に、前記金網が、前記電線の長手方向の電磁シールドすべき区間の残りの部分を覆うように設けられ、互いに隣接する前記編組の端部と前記金網の端部とが電気的に接続されている、
ことを特徴とする線用外装部材。
【請求項4】
前記金網の外周が樹脂製の筒状外装体によって覆われている、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電線用外装部材。
【請求項5】
前記筒状外装体に、車両の固定対象部位に固定するための固定手段が設けられている、
ことを特徴とする請求項4に記載の電線用外装部材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電線用外装部材と、該電線用外装部材の内側に挿通された単数または複数の電線と、を備えている、
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項7】
請求項6に記載のワイヤハーネスを構成する電線のうち、車両において直線状に配索される箇所は前記金網、又は、前記編組および前記金網により覆われ、曲線状に配索される箇所は前記編組により覆われている、
ことを特徴とするワイヤハーネスの配索構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などに用いられる電線用外装部材、ワイヤハーネスおよびワイヤハーネスの配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスを車両に配索するにあたり、配索するワイヤハーネスに電磁シールド機能を持たせる場合は、電線の周囲を編組で覆って編組の両端を接続対象物の金属シェルに固定することが行われていた(例えば、特許文献1参照)。また、このような編組を使用したワイヤハーネスの場合も、編組は柔軟性を有していてそれ自体で配索経路保持の機能は持たないために、必要箇所を硬質樹脂製のプロテクタで覆うことで配索経路保持を行うようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-85374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、配索経路保持のためのプロテクタは、必要箇所ごとに、その箇所にあった形状に作製する必要があって高価なため、ワイヤハーネスがコスト高になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高価な専用プロテクタを使用せずに配索経路保持を行えるようにしてコストの低減が図れるようにした電線用外装部材、ワイヤハーネスおよびワイヤハーネスの配索構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電線用外装部材、ワイヤハーネスおよびワイヤハーネスの配索構造は、下記(1)~(7)を特徴としている。
(1) 単数または複数の電線の外周を覆って電磁シールド機能を発揮する電線用外装部材であって、
前記電線の長手方向の少なくとも一部の外周を覆う編組と、
前記編組よりも剛性が高く前記電線の長手方向の少なくとも一部の外周を覆う金網と、
を有し、
前記電線の長手方向の電磁シールドすべき区間を前記編組および金網の少なくともいずれかによって電磁シールドするように形成されており
前記金網の素線として、前記編組の素線よりも1桁大きい値の径の素線が用いられる、
ことを特徴とする電線用外装部材。
【0007】
(2) 前記編組が、前記電線の長手方向の電磁シールドすべき区間の全体を覆うように設けられると共に、前記金網が、前記編組の長手方向の少なくとも一部の外周を覆うように設けられ、前記編組と前記金網とが電気的に接続されている、
ことを特徴とする上記(1)に記載の電線用外装部材。
【0008】
(3) 単数または複数の電線の外周を覆って電磁シールド機能を発揮する電線用外装部材であって、
前記電線の長手方向の少なくとも一部の外周を覆う編組と、
前記編組よりも剛性が高く前記電線の長手方向の少なくとも一部の外周を覆う金網と、
を有し、
前記電線の長手方向の電磁シールドすべき区間を前記編組および金網の少なくともいずれかによって電磁シールドするように形成されており、
前記編組が、前記電線の長手方向の電磁シールドすべき区間の一部を覆うように設けられると共に、前記金網が、前記電線の長手方向の電磁シールドすべき区間の残りの部分を覆うように設けられ、互いに隣接する前記編組の端部と前記金網の端部とが電気的に接続されている、
ことを特徴とする線用外装部材。
【0009】
(4) 前記金網の外周が樹脂製の筒状外装体によって覆われている、
ことを特徴とする上記(1)~(3)のいずれか1項に記載の電線用外装部材。
【0010】
(5) 前記筒状外装体に、車両の固定対象部位に固定するための固定手段が設けられている、
ことを特徴とする上記(4)に記載の電線用外装部材。
【0011】
(6) 上記(1)~(5)のいずれか1項に記載の電線用外装部材と、該電線用外装部材の内側に挿通された単数または複数の電線と、を備えている、
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【0012】
(7) 上記(6)に記載のワイヤハーネスを構成する電線のうち、車両において直線状に配索される箇所は前記金網、又は、前記編組および前記金網により覆われ、曲線状に配索される箇所は前記編組により覆われている、
ことを特徴とするワイヤハーネスの配索構造。
【0013】
上記(1)の構成の電線用外装部材によれば、金網を設けた箇所は、編組よりも高い金網の剛性によって電線経路保持を行うことができる。したがって、配索形状に応じて設計製作する必要のある高価な専用のプロテクタが不要になり、プロテクタの代わりに安価な金網を使用することで、ワイヤハーネスのコストの低減が図れる。また、金属素線を縦横に間隔をおいて織った金網にはシールド機能が備わっているので、編組の上に金網を設けた場合は、当該箇所のシールド性能をより一層高めることができる。また、ある範囲の編組の代わりに金網でシールド機能を代替させる場合は、金網を設けた部分の編組を省略できるので、高価な編組の使用量を低減でき、その分のコスト低減を図ることができる。
【0014】
上記(2)の構成の電線用外装部材によれば、編組の上を覆う金網のシールド機能により、編組のみの場合よりもシールド特性(特に低周波成分)を向上させることができる。また、金網の持つ剛性により、プロテクタを使用しないで、配索経路保持機能を発揮することができる。また、編組の上を金網で覆うだけであるから、構造が簡単であり、編組と金網の縁部同士の接合も不要となる。したがって、作製時間の増加を抑制できる。例えば、金網を必要とする箇所が多い場合には、単に金網を必要個数だけ編組の上に被せるだけでよいため、編組と金網の接合が必要でない分だけ、作製時間の抑制効果が増大する。また、金網の長さは、必要箇所の長さに応じて容易に変えることができるから、余分なコストを低減できる。なお、編組と金網の電気的接続は、編組の外周と金網の内周が接していさえすれば十分に達成できる。
【0015】
上記(3)の構成の電線用外装部材によれば、編組の一部を金網に置き換えることができるので、金網を設けた部分の編組を省略できる分だけ、高価な編組の使用量を低減でき、コスト低減が図れる。特に金網の長手方向の長さが長くなる場合には、編組の使用量を大幅に減らせることから、コスト削減効果を高めることができる。
【0016】
上記(4)の構成の電線用外装部材によれば、金網の外周を樹脂製の筒状外装体によって覆っているので、金網を設けた部分の保護を行うことができる。例えば、筒状外装体によって防水機能を発揮することができる。
【0017】
上記(5)の構成の電線用外装部材によれば、筒状外装体に設けた固定手段によって、高価なプロテクタを用いることなくワイヤハーネスを車両に固定することができる。
【0018】
上記(6)の構成のワイヤハーネスによれば、電線用外装部材として、上記(1)~(5)のいずれかのものを使用しているので、上述の作用効果を有するワイヤハーネスを実現できる。
【0019】
上記(7)の構成のワイヤハーネスの配索構造によれば、直線状に配索される箇所には金網が設けられているので、車両に配索した際に、金網の剛性により、直線状の配索経路を安定して保持することができる。また、曲線状に配索される箇所には編組が設けられているので、編組の柔らかさを利用して、曲線状経路に沿って柔軟にワイヤハーネスを配索することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高価な専用プロテクタを使用せずに配索経路保持を行うことができ、コストの低減が図れる。
【0021】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネスおよび電線用外装部材の構成を示す図で、図1(a)は概略斜視図、図1(b)は概略縦断面図である。
図2図2は、第1実施形態において、電線の外周に設けた編組の外側に更に金網を装着する場合の方法の説明図で、図2(a)は四角シート状の金網を編組の外周に巻き付けて装着する場合の方法を説明するための斜視図、図2(b)は予め円筒状に成形した金網の内側に電線および編組を挿通させて装着する場合の方法を説明するための斜視図である。
図3図3は、第1実施形態において、金網に芯棒を取り付ける場合の例を示す斜視図である。
図4図4は、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネスおよび電線用外装部材の構成を示す図で、図4(a)は概略斜視図、図4(b)は概略縦断面図である。
図5図5は、第2実施形態の電線用外装部材における編組と金網の接合の仕方を説明するための図で、図5(a)は内側リングと外側リングを装着する前の状態を示す斜視図、図5(b)は接合後の状態を示す断面図である。
図6図6は、第1実施形態および第2実施形態のワイヤハーネスの金網の外側に更にコルゲートチューブ(筒状外装体)を装着して、コルゲートチューブに設けた固定部により車両に取り付けられるようにした状態を示す斜視図である。
図7図7は、第1実施形態および第2実施形態のワイヤハーネスの車両に対する実際の配索例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るワイヤハーネスWXおよび電線用外装部材G1の構成を示す図で、図1(a)は概略斜視図、図1(b)は概略縦断面図である。
【0025】
図1(a)、(b)に示すように、このワイヤハーネスWXは、単数または複数の電線Wの外周を、電磁シールド機能を発揮する電線用外装部材G1で覆ったものである。この電線用外装部材G1は、電線Wの長手方向の少なくとも一部の外周を覆う編組10と、編組10よりも剛性が高く電線Wの長手方向の少なくとも一部の外周を覆う金網20と、を有している。本実施形態では、編組10が、電線Wの長手方向の電磁シールドすべき区間の全体を覆うように設けられると共に、金網20が、編組10の長手方向の少なくとも一部の外周を覆うように設けられている。そして、編組10と金網20とが互いに電気的に接続されて、電磁シールド機能が発揮されるようアース接続されている。
【0026】
金網20は、例えば、縦素線と横素線が一定の間隔を保って1本ずつ交互に交わっているような平織りで構成されている。金網20の素線としては、1mm以上あるいは編組10の素線よりも1桁程度大きい値の径の素線が用いられている。
【0027】
このような構成の電線用外装部材G1を用いた場合、金網20を設けた箇所は、編組10よりも高い金網20の剛性によって電線経路保持機能を発揮することができる。したがって、配索形状に応じて設計製作する必要のある高価な専用のプロテクタが不要になり、プロテクタの代わりに安価な金網20を使用することで、ワイヤハーネスWXのコストの低減を図ることができる。
【0028】
また、金属素線を縦横に間隔をおいて織った金網20は、樹脂製プロテクタと異なりシールド機能を有しているので、金網20が編組10の外周を覆うことにより、編組10のみの場合よりも、例えば低周波領域においてシールド特性がさらに向上される。また、電線用外装部材G1は、編組10の外周を金網20で覆うだけであるから、構造が簡単であり、編組10と金網20の特別な接合も不要である。したがって、作製時間の増加を抑制できる。なお、編組10と金網20の電気的な接続は、編組10の外周と金網20の内周が接していさえすれば十分に達成できる。
【0029】
編組10の上に金網20を被せる方法としては、図2(a)に示すように、四角シート状の金網20を編組10の外周に矢印Mのように巻き付けて装着する方法を採用することができる。この場合、金網20の強度は、機械あるいは手で巻き付けられる程度に設定する。また、巻き付けた後に解けないように、例えば、巻き始め縁部と巻き終わり縁部を接合あるいは係合してもよい。
【0030】
また、編組10の上に金網20を被せる方法として、図2(b)に示すように、予め筒状に成形した金網20の内側に矢印Nのように電線Wおよび編組10を挿通させて装着する方法を採用することもできる。筒状に成形した金網20の内側に電線Wおよび編組10を挿通させる場合は、上述の金網を巻き付ける場合よりも、金網の剛性を高めに設定してもよい。
【0031】
また、金網20の強度を増すために、図3に示すように、金網20を芯材21(金網20の素線よりも剛性の高い線材)で補強してもよい。芯材21の入れ方は任意である。
【0032】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態のワイヤハーネスWYおよび電線用外装部材G2の構成を示す図で、図4(a)は概略斜視図、図4(b)は概略縦断面図である。
【0033】
図4(a)、(b)に示すように、ワイヤハーネスWYは、単数または複数の電線Wの外周を、電磁シールド機能を発揮する電線用外装部材G2で覆ったものである。この電線用外装部材G2は、電線Wの長手方向の少なくとも一部の外周を覆う編組10と、編組10よりも剛性が高く電線Wの長手方向の少なくとも一部の外周を覆う金網20と、を有している。本実施形態では、編組10が、電線Wの長手方向の電磁シールドすべき区間の一部(電線Wの長手方向の両端部)を覆うように設けられると共に、金網20が、電線の長手方向の電磁シールドすべき区間の残りの部分(両端部の編組10により挟まれた中間部)を覆うように設けられている。そして、互いに隣接する編組10の端部と金網20の端部とが電気的に接続されている。つまり、電線用外装部材G2は、編組10と金網20とが接合部30で繋がれ、長手方向に連続した円筒状に成形されている。
【0034】
図5は、編組10と金網20の接合例を説明するための図である。
この図示例では、図5(a)、(b)に示すように、編組10と金網20の端部同士を、例えば、編組10を内周側にし金網20を外周側にして重ね合わせる。そして、重ね合わせ部分の編組10の内周に設けた内側リング22と、重ね合わせ部分の金網20の外周に設けた外周リング23との間に編組10と金網20を挟み込んで、当該部分(図5(b)中の矢印Hの部分)を圧接(加締め)あるいは溶接により接合する。
【0035】
このような構成の電線用外装部材G2を用いた場合、金網20を設けた箇所は、編組10よりも高い金網20の剛性によって電線経路保持機能を発揮することができる。したがって、配索形状に応じて設計製作する必要のある高価な専用のプロテクタが不要になり、プロテクタの代わりに安価な金網20を使用することで、ワイヤハーネスWYのコストの低減が図れる。
【0036】
また、金属素線を縦横に間隔をおいて織った金網20にはシールド機能が備わっているので、編組10の一部を金網20に置き換えたことにより、金網20を設けた部分の編組10を省略できる分だけ、高価な編組10の使用量を低減でき、コスト低減が図れる。特に金網20の長手方向の長さが長くなる場合には、編組10の使用量を大幅に減らせることから、コスト削減効果を高めることができる。
【0037】
なお、第2実施形態の電線用外装部材G2では、編組10と金網20を接合部30で接合する必要があるので、その手間分だけ作製時間が増加する可能性があるが、一方で高価な編組10の使用量を減らせるメリットがある。また、第1実施形態の電線用外装部材G1と同様、第2実施形態の電線用外装部材G2においても、金網20の長さは、必要箇所の長さに応じて容易に変えることができるから、専用のプロテクタを使用する場合に比べて、余分なコストを低減できる。なお、第1実施形態の電線用外装部材G1と第2実施形態の電線用外装部材G2とを組み合わせた構成としてもよい。すなわち、電線用外装部材は、ある区間では金網20が編組10を覆い、別の区間では、金網20と編組10が長手方向に接続された構成となっていてもよい。
【0038】
以上に説明した電線用外装部材G1、G2には、防水性確保などの保護のために、更に金網20の外側にコルゲートチューブなどの筒状外装体を装着することが望ましい。以下、電線用外装部材G1またはG2の外側にコルゲートチューブ(筒状外装体)40を装着したものを電線用外装部材G3と呼ぶ。
【0039】
図6は、第1実施形態および第2実施形態のワイヤハーネスWX、WYの金網20の外側に更にコルゲートチューブ40を装着して、コルゲートチューブ40に設けた固定部(固定手段)41により車両に取り付けられるようにしたワイヤハーネスWZを示している。
【0040】
このワイヤハーネスWZでは、両端のコネクタ80の間の電線Wの全長の外周を覆うように、第1実施形態あるいは第2実施形態の電線用外装部材G1、G2が設けられており、所定範囲に設けられた金網20の外周を覆うように更にコルゲートチューブ40が設けられている。つまり、ワイヤハーネスWZは、電線Wの外周にコルゲートチューブ40を含む電線用外装部材G3が装着された構成となっている。そして、コルゲートチューブ40の所定箇所に、車両の固定対象部位に固定するための固定部(クリップやクランプ等の固定手段)41が設けられている。
【0041】
なお、コルゲートチューブ40は量産品であるため、専用品であるプロテクタと異なり、コスト上昇を抑制できる。なお、防水性確保が必要が無ければ、コルゲートチューブ40を必ずしも設ける必要はない。また、金網20を設けた部分は強度が高まるので、当該部分を覆うコルゲートチューブ40に固定部41を設けることによりワイヤハーネスの安定性が高まるが、必ずしもコルゲートチューブ40が固定部41を有していなくてもよい。
【0042】
図7は、上述した第1実施形態および第2実施形態のワイヤハーネスWX、WYの車両に対する実際の配索例を示す概略図である。
【0043】
図7に示すように、車両に配索された状態のワイヤハーネスWX、WY、WZにおいては、直線状に配索される箇所Bでは電線が金網20により覆われており、曲線状に配索される箇所Aでは電線が編組10により覆われている。
【0044】
このように直線状に配索される箇所Bには金網20が設けられているので、金網20の剛性により、直線状の配索経路を安定して保持することができる。また、曲線状に配索される箇所Aには編組10が設けられているので、編組10の柔らかさを利用して、曲線状経路に沿って柔軟にワイヤハーネスWX、WYを配索することができる。
【0045】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。例えば、上記の実施形態においては、金網20が、編組10の長手方向の少なくとも一部の外周を覆うように設けられている場合、および編組10と金網20とが接合部30で繋がれ、長手方向に連続した円筒状に成形されている場合について説明したが、これに限定されず、電線Wの長手方向の少なくとも一部の外周を金網20で覆い、この金網20の外周を編組10で覆うようにしてもよい。
【0046】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る電線用外装部材、ワイヤハーネスおよびワイヤハーネスの配索構造の特徴をそれぞれ以下[1]~[7]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 単数または複数の電線(W)の外周を覆って電磁シールド機能を発揮する電線用外装部材(G1、G2)であって、
前記電線(W)の長手方向の少なくとも一部の外周を覆う編組(10)と、
前記編組(10)よりも剛性が高く前記電線(W)の長手方向の少なくとも一部の外周を覆う金網(20)と、
を有し、
前記電線(W)の長手方向の電磁シールドすべき区間を前記編組(10)および金網(20)の少なくともいずれかによって電磁シールドするように形成されている、
ことを特徴とする電線用外装部材(G1、G2)。
【0047】
[2] 前記編組(10)が、前記電線(W)の長手方向の電磁シールドすべき区間の全体を覆うように設けられると共に、前記金網(20)が、前記編組(10)の長手方向の少なくとも一部の外周を覆うように設けられ、前記編組(10)と前記金網(20)とが電気的に接続されている、
ことを特徴とする[1]に記載の電線用外装部材(G1)。
【0048】
[3] 前記編組(10)が、前記電線(W)の長手方向の電磁シールドすべき区間の一部を覆うように設けられると共に、前記金網(20)が、前記電線(W)の長手方向の電磁シールドすべき区間の残りの部分を覆うように設けられ、互いに隣接する前記編組(10)の端部と前記金網(20)の端部とが電気的に接続されている、
ことを特徴とする[1]に記載の電線用外装部材(G2)。
【0049】
[4] 前記金網(20)の外周が樹脂製の筒状外装体(40)によって覆われている、
ことを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の電線用外装部材(G3)。
【0050】
[5] 前記筒状外装体(40)に、車両の固定対象部位に固定するための固定手段(41)が設けられている、
ことを特徴とする上記[4]に記載の電線用外装部材(G3)。
【0051】
[6] 上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の電線用外装部材(G1、G2、G3)と、該電線用外装部材(G1、G2、G3)の内側に挿通された単数または複数の電線(W)と、を備えている、
ことを特徴とするワイヤハーネス(WX、WY、WZ)。
【0052】
[7] 上記[6]に記載のワイヤハーネス(WX、WY、WZ)を構成する電線(W)のうち、車両において直線状に配索される箇所(B)は前記金網(20)により覆われ、曲線状に配索される箇所(A)は前記編組(10)により覆われている、
ことを特徴とするワイヤハーネス(WX、WY、WZ)の配索構造。
【符号の説明】
【0053】
10 編組
20 金網
21 芯材
30 接合部
40 コルゲートチューブ(筒状外装体)
41 固定部(固定手段)
W 電線
WX,WY,WZ ワイヤハーネス
G1,G2,G3 電線用外装部材
A 曲線状に配索される箇所
B 直線状に配索される箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7