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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20241126BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20241126BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01L23/36 A
H01L23/36 D
H01L23/28 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021041332
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141152
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長井 彰平
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0133907(US,A1)
【文献】特開2012-004358(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0185836(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 23/36
H01L 23/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップ(11a、11b、11)を収容しているとともに、前記半導体チップの熱を吸収するヒートシンク(12a、12b、112、212)が互いに反対方向を向く2つの表面の夫々に配置されている樹脂パッケージ(10、110、210)と、
夫々の前記ヒートシンクに対向している冷却板(30a、30b、130、230)と、
流動性を有しており、夫々の前記ヒートシンクと前記冷却板の間に充填されている伝熱材(40)と、
前記伝熱材の中に分散配置されているとともに、夫々の前記ヒートシンクと前記冷却板に接している複数のスペーサ(41、141、241)と、
を備えている、半導体装置(2)。
【請求項2】
一方の前記ヒートシンク(12b)と前記半導体チップ(11a)との間に配置されている銅ブロック(21)をさらに備えている、請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、半導体チップとヒートシンクの間に伝熱材が充填されている半導体装置が開示されている。伝熱材には流動性を有する材料が用いられている。流動性を有する伝熱材が外界へ漏れることを防止するため、半導体チップを囲むようにシール部材が配置されている。半導体チップはヒートシンクと基板の間に配置されており、シール部材はヒートシンクと基板に接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/162417号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
伝熱材が流動性を有するため、半導体チップとヒートシンクの平行を保持することが難しい。特許文献1の半導体装置の場合、シール部材が半導体チップとヒートシンクを平行に保持することに寄与する。しかしながら、シール部材は半導体チップから離れているため、シール部材では半導体チップとヒートシンクを正確に平行に保持することは難しい。一方、半導体チップを収容した樹脂パッケージと、樹脂パッケージの表面に配置されているヒートシンクと、ヒートシンクに対向している冷却板を備えた半導体装置が知られている。本明細書は、半導体チップが樹脂パッケージに収容されており、樹脂パッケージの表面のヒートシンクと冷却板の間に流動性を有する伝熱材が充填されている半導体装置に関し、シンプルな構造でヒートシンクと冷却板を正確に平行に保つ技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体装置は、半導体チップを収容している樹脂パッケージと、冷却板と、流動性を有する伝熱材と、複数のスペーサを備える。樹脂パッケージの表面には、半導体チップの熱を吸収するヒートシンクが配置されている。冷却器は、ヒートシンクに対向している。伝熱材は、ヒートシンクと冷却器の間に充填されている。複数のスペーサは、伝熱材の中に分散配置されているとともに、ヒートシンクと冷却器に接している。複数のスペーサが、ヒートシンクと冷却板を正確に平行に保持する。本明細書が開示する技術は、複数のスペーサを分散配置するというシンプルな構造でヒートシンクと冷却板を正確に平行に保持することができる。
【0006】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施例の半導体装置の斜視図である。
図2】半導体装置の平面図である。
図3図2のIII-III線に沿った半導体装置の断面図である。
図4第1参考例の半導体装置の断面図である。
図5第2参考例の半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施例)図1図3を参照して第1実施例の半導体装置2を説明する。図1に、半導体装置2の斜視図を示す。ただし、図1は、樹脂パッケージ10から一方の冷却板30aを外した図を示している。冷却板30aは、樹脂パッケージ10の幅広面に取り付けられる。図1では、直線MLの左右で座標系の向きが異なる点に留意されたい。
【0009】
半導体装置2は、樹脂パッケージ10の中に2個の半導体チップ11a、11bを収容したパワーモジュールである。2個の半導体チップ11a、11bは、パワートランジスタであり。樹脂パッケージ10の中で直列に接続されている。半導体装置2は、例えば、パワートランジスタの直列接続を3セット備えるインバータに用いられる。
【0010】
樹脂パッケージ10は扁平であり、その一つの幅狭面に3個のパワー端子13a、13b、13cが備えられており、反対側の幅狭面に制御端子14a、14bが設けられている。3個のパワー端子13a、13b、13cは、それぞれ、2個の半導体チップ11a、11bの直列接続の正極、負極、中点に接続されている。制御端子14aは、半導体チップ11aの制御電極に接続されており、制御端子14bは半導体チップ11bの制御電極に接続されている。制御電極は、半導体チップ(パワートランジスタ)のゲート、半導体チップが備えている温度センサ、電流センサなどに導通している。
【0011】
樹脂パッケージ10は扁平形状であり、その一方の幅広面にヒートシンク12aが配置されている。図1では見えないが、他方の幅広面にはヒートシンク12bが配置されている。ヒートシンク12a、12bは、半導体チップ11a、11bと熱的に接続されており、半導体チップ11a、11bの熱を吸収する。ヒートシンク12aには冷却板30aが対向しており、ヒートシンク12bには冷却板30bが対向している。図1では図示を省略しているが、ヒートシンク12aと冷却板30aの間には、伝熱材とスペーサが挟まれている。ヒートシンク12aが半導体チップ11a、11bから吸収した熱は、伝熱材を介して冷却板30aに吸収される。すなわち、冷却板30aによって半導体チップ11a、11bが冷却される。同様に、ヒートシンク12bと冷却板30bの間にも伝熱材とスペーサが挟まれている。半導体チップ11a、11bは、冷却板30bによっても冷却される。
【0012】
樹脂パッケージ10には、ヒートシンク12aを囲むように、溝15が設けられており、ヒートシンク12aに対向する冷却板30aには、凸条31が設けられている。冷却板30aが樹脂パッケージ10に取り付けられると、凸条31が溝15に嵌合し、溝15とともに凸条31がヒートシンク12aを囲む。ヒートシンク12aと冷却板30aの間に充填される伝熱材は流動性を有しており、溝15と凸条31は、伝熱材が外へ漏れることを防止する。樹脂パッケージ10の反対側の冷却板30bと放熱板も同様の構造を有している。
【0013】
図2に、半導体装置2の平面図を示す。図2では、冷却板30aを仮想線で描いてある。また、樹脂パッケージ10に収容されている半導体チップ11a、11bは破線で描いてある。
【0014】
図2のIII-III線に沿った半導体装置2の断面を図3に示す。図3は、パワー端子13a、半導体チップ11a、制御端子14aを横断する平面で半導体装置2をカットした断面を示している。図3では、理解を助けるために、樹脂パッケージ10の断面に付すべきハッチングは省略してある。また、半導体チップ11aは扁平形状を有しており、説明の便宜上、その幅広面を主面と称する。
【0015】
樹脂パッケージ10の内部構造について説明する。ヒートシンク12aの裏面にハンダ層22を介して半導体チップ11aの一方の主面が接合されている。一方の主面にはコレクタ電極が配置されており、ヒートシンク12aとコレクタ電極は、ハンダ層22を介して導通する。図3に示されているように、ヒートシンク12aにはパワー端子13aがつながっている。ヒートシンク12aとパワー端子13aは一枚の金属板から作られている。半導体チップ11aのコレクタ電極は、ハンダ層22とヒートシンク12aを介してパワー端子13aと導通する。
【0016】
半導体チップ11aの他方の主面には、エミッタ電極と制御電極が配置されている。エミッタ電極はハンダ層23を介して銅ブロック21に接合されており、銅ブロック21はハンダ層24を介してヒートシンク12bに接合されている。図2には表れていないが、ヒートシンク12bには半導体チップ11bのコレクタ電極が導通している。すなわち、ヒートシンク12bを介して2個の半導体チップ11a、11bが直列に接続される。半導体チップ11aの他方の主面には、制御電極も配置されており、制御電極は、ボンディングワイヤ25で制御端子14aに接続されている。
【0017】
先に述べたように、樹脂パッケージ10の表面(ヒートシンク12aが配置されている表面)には溝15が設けられており、冷却板30aには凸条31が設けられている。冷却板30aが樹脂パッケージ10に取り付けられると、凸条31は、溝15に嵌合するとともに、ヒートシンク12aを囲む。後述するように、ヒートシンク12aと冷却板30aの間には、流動性を有する伝熱材40が充填されている。溝15と凸条31は、伝熱材40がヒートシンク12aと冷却板30aの間から漏れることを防止する。ヒートシンク12bと冷却板30bも同様の構造を有している。
【0018】
ヒートシンク12aと冷却板30aの間には、伝熱材40が充填されている。伝熱材40は、半導体チップ11a、11bの作動温度範囲で流動性を有する。伝熱材40には、例えば、常温で流動性を有するガリウムGa(融点:29.8度)を主原料とする。ほかに、伝熱材40には、インジウムIn(融点:156.4度)や、スズSn(融点:232.0度)が含有されていてもよい。InやSnは常温では固体であるが、半導体チップ11a、11bの動作温度範囲では液状化することがある。これらの金属は熱伝導率が高く、伝熱材として用いられることがある。流動性を有する伝熱材として、グリスが採用されてもよい。
【0019】
伝熱材40には、複数のスペーサ41が分散配置されている。複数のスペーサ41は、同じ直径を有している金属球であり、伝熱材40が流動性を有するとき、伝熱材40の中を自在に移動可能である。複数のスペーサ41はヒートシンク12aと冷却板30aに接している。伝熱材40の中に分散配置されている複数のスペーサ41は、ヒートシンク12aと冷却板30aを平行に保つ。直径の同じ金属球(スペーサ41)をヒートシンク12aと冷却板30aの間の空間に分散配置するので、ヒートシンク12aと冷却板30aを精確に平行に保つことができる。ヒートシンク12aと冷却板30aが平行であれば、ヒートシンク12aから冷却板30aへ熱が均一に拡散する。すなわち、半導体チップ11a、11bに対する冷却効率が良くなる。なお、スペーサ41には、その融点が伝熱材40の融点よりも高い材料が用いられる。
【0020】
半導体装置2は、扁平な樹脂パッケージ10の両方の幅広面にヒートシンク12a、12bを備えており、ヒートシンク12a、12bのそれぞれに対向する冷却板30a、30bを備えている。ヒートシンク12bと冷却板30bの間にも、伝熱材40が挟まれているとともに、伝熱材40に、複数のスペーサ41が分散配置されている。半導体チップ11a、11bは、両面の冷却板30a、30bにより冷却される。
【0021】
第1参考例図4に、第1参考例の半導体装置102の断面図を示す。第1参考例の半導体装置102は、扁平な樹脂パッケージ110の一方の幅広面にのみヒートシンク112を備えている。半導体装置102は、ヒートシンク112に対向する冷却板130も備えている。図4でも、樹脂パッケージ110の断面に付すべきハッチングは省略した。樹脂パッケージ110には、半導体チップ11が収容されており、ハンダ層22によりヒートシンク112に接合されている。ハンダ層22により、半導体チップ11とヒートシンク112は、電気的にも熱的にも接続される。ヒートシンク112は、半導体チップ11の熱を吸収する。ヒートシンク112には冷却板130が対向しており、ヒートシンク112と冷却板130の間には、流動性を有する伝熱材40が充填されている。ヒートシンク112の熱は、伝熱材40を介して冷却板130に吸収される。
【0022】
伝熱材40の中に、複数のスペーサ141が分散配置されている。複数のスペーサ141は、冷却板130の表面に設けられた突起群であり、その高さは等しい。複数のスペーサ141は、冷却板130の表面に固定されている。冷却板130に設けられた高さの等しい複数のスペーサ141も、ヒートシンク112と冷却板130を平行に保つ。
【0023】
第2参考例図5に、第2参考例の半導体装置202の断面図を示す。図5でも、樹脂パッケージ210の断面に付すべきハッチングは省略した。樹脂パッケージ210の中に半導体チップ11aが収容されている。樹脂パッケージ210の一方の幅広面には、ヒートシンク212が配置されており、半導体チップ11とヒートシンク212は、内面が銅メッキされたビアホール222で電気的にも熱的にも接続されている。ヒートシンク212は、ビアホール222の内面の銅メッキを介して半導体チップ11の熱を吸収する。
【0024】
第2参考例の半導体装置202では、扁平な樹脂パッケージ210が、回路基板を兼ねている。樹脂パッケージ210の上面には、いくつかの電子デバイス203が実装されている。電子デバイス203と半導体チップ11は、不図示の配線パターンで電気的に接続されている。
【0025】
ヒートシンク212には冷却板230が対向しており、ヒートシンク212と冷却板230の間には、流動性を有する伝熱材40が充填されている。伝熱材40の中に、複数のスペーサ241が分散配置されている。複数のスペーサ141は、ヒートシンク212の表面(冷却板230に対向する面)に設けられた突起群であり、その高さは等しい。複数のスペーサ141は、ヒートシンク212の表面に固定されている。ヒートシンク212に設けられた高さの等しい複数のスペーサ241も、ヒートシンク212と冷却板230を平行に保つ。
【0026】
実施例の技術に関する留意点を述べる。半導体装置2(102、202)は、複数のスペーサ41(141、241)を伝熱材40の中に分散配置するというシンプルな構造によってヒートシンク12a(12b、112、212)と冷却板30a(30b、130、230)の正確な平行が保持される。別言すれば、ヒートシンク12a(12b、112、212)と冷却板30a(30b、130、230)の間に充填される伝熱材40の厚みが均一に保持される。伝熱材40の厚みが均一に保持されることで、ヒートシンク12a(12b、112、212)から冷却板30a(30b、130、230)への伝熱効率が高くなる。
【0027】
実施例の特徴の幾つかを以下に列記する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0028】
スペーサ141、241は、ヒートシンク112、212と冷却板130、230の一方に固定されている。スペーサ141、241は、例えば、ハンダバンプであってもよい。スペーサ141。241がヒートシンク112、212と冷却板130、230の一方に固定されていることで、スペーサ141、241が動かなくなる。また、樹脂パッケージ110(210)に冷却板130(230)を組み付ける作業がシンプルになる。
【0029】
樹脂パッケージ10(110、210)に、ヒートシンク12a(12b、112、212)、を囲む溝15が備えられており、冷却板30a(30b、130、230)に、ヒートシンク12a(12b、112、212)を囲むとともに溝15に嵌合する凸条31が備えられている。溝15と凸条31が、伝熱材40が外界へ漏れることを防止する。本明細書が開示する技術の一つは、流動性を有する伝熱材が外界へ漏れることを防止する。
【0030】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0031】
2、102、202:半導体装置 10、110、210:樹脂パッケージ 11、11a、11b:半導体チップ 12a、12b、112、212:ヒートシンク 13a、13b、13c:パワー端子 14a、14b:制御端子 15:溝 21:銅ブロック 22、23、24:ハンダ層 25:ボンディングワイヤ 30a、30b、130、230:冷却板 31:凸条 40:伝熱材 41、141、241:スペーサ 203 :電子デバイス 222 :ビアホール
図1
図2
図3
図4
図5