(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】生体情報検出装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/256 20210101AFI20241126BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20241126BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20241126BHJP
A61B 5/0531 20210101ALI20241126BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A61B5/256 110
A61B5/16 130
A61B5/0245 A
A61B5/0531
A61B5/113
A61B5/16 110
(21)【出願番号】P 2021045144
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】大橋 智昭
(72)【発明者】
【氏名】今井 友裕
【審査官】村田 泰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-037211(JP,A)
【文献】特開2021-009713(JP,A)
【文献】米国特許第07648463(US,B1)
【文献】特開2018-186934(JP,A)
【文献】国際公開第2017/125081(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0101984(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 - 5/0538
A61B 5/06 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの生体情報を検出するための生体情報検出装置であって、
前記ユーザの頭部に装着される装着部と、
前記装着部に配置され、前記ユーザの顔部の筋肉の動きを検出可能な情報を検出する表情筋検出手段と、
前記装着部に配置され、前記ユーザの脈拍を検出可能な情報を検出する脈拍検出手段と、
前記装着部に配置され、前記ユーザの皮膚表面電位を検出可能な情報を検出する表面電位検出手段と、
を備え
、
前記脈拍検出手段は、前記装着部がユーザの鼻に当接する第1当接部に配置される光学式心拍センサであり、前記第1当接部は、ユーザの鼻に当接し、前記光学式心拍センサを囲む枠状の弾性体を備えることを特徴とする生体情報検出装置。
【請求項2】
前記表情筋検出手段は、前記ユーザの眉部分と頬部分との少なくともいずれかの筋肉の動きを検出することを特徴とする請求項1に記載の生体情報検出装置。
【請求項3】
前記表情筋検出手段は、前記ユーザの眉部分および頬部分の画像を取得する撮像装置であることを特徴とする請求項2に記載の生体情報検出装置。
【請求項4】
前記表面電位検出手段は、2つの電極を有する皮膚表面電位センサであることを特徴とする
請求項1から3の何れか1項に記載の生体情報検出装置。
【請求項5】
前記2つの電極は、前記装着部がユーザの側頭部または頸部に当接する第2当接部に設けられることを特徴とする
請求項4に記載の生体情報検出装置。
【請求項6】
前記装着部に配置され、前記ユーザの呼吸を検出可能な情報を検出するための呼吸検出手段をさらに備えることを特徴とする
請求項1から5の何れか1項に記載の生体情報検出装置。
【請求項7】
前記呼吸検出手段は、前記ユーザの呼吸音を検出するマイクであることを特徴とする
請求項6に記載の生体情報検出装置。
【請求項8】
前記呼吸検出手段は、前記装着部が前記ユーザの鼻に当接する位置に配置されることを特徴とする
請求項7に記載の生体情報検出装置。
【請求項9】
前記装着部に配置され、前記ユーザの視線の向きを検出可能な視線検出手段をさらに備えることを特徴とする
請求項1から8の何れか1項に記載の生体情報検出装置。
【請求項10】
前記表情筋検出手段、前記脈拍検出手段、および前記表面電位検出手段によって検出した結果を外部装置に送信する無線通信手段をさらに備えることを特徴とする
請求項1から9の何れか1項に記載の生体情報検出装置。
【請求項11】
前記表情筋検出手段、前記脈拍検出手段、および前記表面電位検出手段によって検出した結果を記憶する記憶手段をさらに備えることを特徴とする
請求項1から10の何れか1項に記載の生体情報検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体情報検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、頭部に装着して生理情報を取得する可搬型の生理情報検出デバイスが知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-247361号公報
【文献】特開2015-202187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような生理情報検出デバイスでは、検出可能な生理情報の種類が少なく、ユーザの状態を正確に把握することができなかった。
【0005】
本発明は、ユーザの状態を正確に把握することができる生理情報検出デバイスを提供することを目的とする。
【0006】
本発明の一態様によれば、
ユーザの生体情報を検出するための生体情報検出装置であって、
前記ユーザの頭部に装着される装着部と、
前記装着部に配置され、前記ユーザの顔部の筋肉の動きを検出可能な情報を検出する表情筋検出手段と、
前記装着部に配置され、前記ユーザの脈拍を検出可能な情報を検出する脈拍検出手段と、
前記装着部に配置され、前記ユーザの皮膚表面電位を検出可能な情報を検出する表面電位検出手段と、
を備え、
前記脈拍検出手段は、前記装着部がユーザの鼻に当接する第1当接部に配置される光学式心拍センサであり、前記第1当接部は、ユーザの鼻に当接し、前記光学式心拍センサを囲む枠状の弾性体を備えることを特徴とする生体情報検出装置が提供される。
【0007】
本発明によれば、ユーザの状態を正確に把握することができる生体情報検出デバイスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】生体情報検出デバイスのハードウェアブロック図。
【
図3】生体情報検出デバイスが実行する処理を示すフローチャート。
【
図4】表情筋検出ユニット、PPG検出ユニット、および呼吸検出ユニットの配置の一例を示す図。
【
図5】(A)は第一実施形態に係るPPG検出ユニットの側面図、(B)はPPG検出ユニットの正面図。
【
図7】呼吸検出ユニット13の内部構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
本実施形態に係る生体情報検出デバイス1は、装着したユーザの生体情報から肉体や精神の状態を計測して人の状態を検知する。人の状態とは、例えば眠気(または覚醒度)のレベルや、快適か不快かなどのストレスレベル、あるいは人が注目している対象や、興奮度などが含まれる。
【0011】
これによって、例えば授業などにおいて生徒が生体情報検出デバイス1を使用することで、生徒が眠気を感じているか、教師に注目しているかなどの、生徒が授業に集中しているか否かを判定することができる。
【0012】
また、例えば四輪車や二輪車などの車両において乗員が生体情報検出デバイス1を使用することで乗員の覚醒状態や、ストレスレベルを検知できれば、車両から乗員に対して情報を提供することでより安全な運転に導くことができる。
【0013】
また、生体情報検出デバイス1のユーザの客観的な生体情報を取得し、得られた生体情報をもとに他の機器を操作し、ユーザに作用するということも可能になる。この場合、ユーザが他の機器を操作する負荷を軽減することができるため、ユーザの利便性を向上させるだけなく、ユーザが気づかないユーザの不快な状態を生体情報に基づいて検出して、ユーザが不快さを自覚する前に自動で対応することができる。例えば、ユーザが眠気を感じていることを検出すれば、通知を行ってユーザの眠気を解消することができる。以下、生体情報検出デバイス1の構成について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る生体情報検出デバイス1の概略を示す図である。
【0015】
生体情報検出デバイス1は、フレーム10と、フレーム10に配置された表情筋検出ユニット11a、11b、光学式心拍(PPG)検出ユニット12、呼吸検出ユニット13、電気伝導度(GSR)検出ユニット14、視線検出ユニット15、制御部20、無線通信部30、記憶部40、およびバッテリ50を備える。以下、表情筋検出ユニット11、光学式心拍(PPG)検出ユニット12、呼吸検出ユニット13、電気伝導度(GSR)検出ユニット14、および視線検出ユニット15を検出ユニット11~15とも称する。
【0016】
フレーム10は、ユーザの頭部に着脱可能に構成される装着部として機能する。本実施形態では、フレーム10はメガネ型の形状を有する。ユーザは生体情報検出デバイス1を装着することで、後述するように各検出ユニットによる状態検知が可能となる。また、フレーム10は、各検出ユニットによる生体情報の検出を可能にするように支持する。
【0017】
表情筋検出ユニット11aは、生体情報検出デバイス1を装着したユーザの眉部分の筋肉の動きを検出するセンサであり、表情筋検出ユニット11bは、頬部分の筋肉の動きを検出するセンサである。一例では、表情筋検出ユニット11a、11bはカメラであり、これによって電極などを使用しなくても表情筋の動きを検出することができる。例えば、表情筋検出ユニット11a、11bによって取得した複数の画像の輪郭検出を行い、色調に基づいて顔表面の境界を判定し、境界の変位差分を判定することで、筋肉が収縮したことを検知することができる。表情筋検出ユニット11aおよび11bがカメラである場合には、画角が110度以上の広角カメラが使用されうる。
【0018】
例えば人が不快に感じている場合には眉部分の筋肉(雛眉筋)が収縮する場合がある。このため、眉部分の筋肉が収縮したことを検知した場合には、生体情報検出デバイス1を装着しているユーザが不快に感じていると推定することができる。また、人が快適に感じている場合には頬部分の筋肉(大頬筋)が収縮する場合がある。このため、頬部分の筋肉が収縮したことを検出した場合には、生体情報検出デバイス1を装着しているユーザが快適に感じていると推定することができる。
【0019】
一例では、表情筋検出ユニット11aは眉の内側端部を含む鼻の稜線線分の左右±1cmかつ、目の中心位置から皺眉筋の間に対向する位置に配置される。一例では、表情筋検出ユニット11bは頬骨の直上より顔面中央から外側寄りにかけて、鼻稜線と頬骨凸部の外側の間に対向する位置に配置される。
【0020】
PPG検出ユニット12は、LED(Light Emitting Diode)から光を出力し、受光部で反射波の強度を検出する光学式センサである。生体情報検出デバイス1を装着したユーザのヘモグロビンの量に応じて反射波の強度が変わるため、反射波の強度変化をモニタリングすることで血流量を把握することができる。すなわち、PPG検出ユニットから取得した生体情報に基づいて、生体情報検出デバイス1は脈拍検出を行うことができる。一例では、PPG検出ユニット12は、脈拍を光電容積脈波法によって測定する。
【0021】
図1において、PPG検出ユニット12は、メガネの鼻あてパッドに相当する部位(当接部101)に配置され、パッドは鼻の稜線(特に鼻根から鼻尖の間)に当接する。これによって、皮膚の厚みが小さく、血流量が精度よく計測可能な位置にPPG検出ユニット12を配置することができ、PPG検出ユニット12の測定精度を高めることができる。
【0022】
ここで、
図5(A)、
図5(B)を参照して、PPG検出ユニット12の配置について説明する。
図5(B)に示すように、LED501および502と受光部503とが鼻の稜線に沿って直線状に配置され、LED501、502および受光部503を囲むように枠上の弾性体504が配置される。
図5(A)に示すように人の肌に密着するように枠状の弾性体504が配置されることで、LED501、502からの発光以外の外光の影響を抑え、皮膚からの反射波の検出精度を高めることができる。
【0023】
なお、弾性体が厚すぎるとLED501および502から受光部503との間の空間で発生した反射経路の影響が大きくなるため、反射経路の影響を抑えながら様々なユーザの鼻に弾性体504が接触するように、一例では厚みが0.1mm~1.0mmの間の弾性体が使用される。
【0024】
また、受光部503の表面には入射光の反射防止を目的とした多膜層、またはモスアイ構造のような凹凸が配置されることで、ノイズを抑えながら受光部503に入射した光を検出することができる。このように、PPG検出ユニット12を鼻に当接する部位に配置することで、外光がPPG検出ユニット12の受光部503に入射し、測定精度が下がることを防ぐことができる。
【0025】
呼吸検出ユニット13は、呼気、吸気によって鼻に生じる呼吸音を検出するための検出ユニットであり、例えばピエゾ式マイクまたはMEMS(Micro Electronics Mechanical System)マイクである。呼吸音は、吸気と呼気とで異なる周波数の呼吸音を生じることが知られている。このため、呼吸検出ユニット13が呼吸音を集音し、検出した呼吸音の大きさや、周波数を解析することで、呼気と吸気との周期を検知することができる。
【0026】
図7は、呼吸検出ユニット13の内部構造を示す断面図である。呼吸検出ユニット13は、ハウジング131と、振動板132と、集音部133とを含む。
【0027】
ハウジング131は、呼吸検出ユニット13の外形を構成する部材である。ハウジング131は、周壁1311と、底壁1312とを含む。周壁1311は、筒状の形状を有し、筒状の形状の両端には開口1311a及び開口1311bが形成されている。また、周壁1311の内面1311cには、集音部133の軸方向の位置決めを行うための段差1311dが形成されている。この段差1311dにより、組み立て時に振動板132と集音部133との間隔を一定の値にすることができる。底壁1312は、開口1311bを覆うように周壁1311に対して取り付けられるとともに、フレーム10に設けられた変位部材と接続するように設けられる。ハウジング131の材料には金属材料や樹脂材料等公知の材料を適宜採用可能である。例えば、ハウジング131はアルミニウムで形成されてもよい。また、周壁1311は円筒形状であるが、形状は適宜変更可能である。
【0028】
振動板132は、呼吸音により振動する板状の部材である。振動板132は、例えばダイヤフラムである。振動板132は、ハウジング131に取り付けられる。具体的には、振動板132は、周壁1311の開口1311aを塞ぐように、周壁1311に対して取り付けられる。振動板132は、例えばエポキシ樹脂系の接着剤による接着等、公知の態様で周壁1311に固定される。
【0029】
また、本実施形態では、振動板132は、生体情報検出デバイス1がユーザの頭部に装着された状態で、ユーザの鼻に接するように配置される。これにより、振動板132は、ノイズとなる外部の音は集音部133に伝達せずに、鼻との接触部分から呼吸音を集音部133へと伝達することができる。したがって、SN比が低減される。振動板132の接触位置は、より詳細には、装着者であるユーザの鼻根から鼻尖までのいずれかの部分の鼻表面であってもよい。また、振動板132がユーザの鼻の骨の無い部分に接触するように配置されることにより、検出可能な音圧が大きくなり、SN比がより低減される。
【0030】
なお、生体情報検出デバイス1がユーザの頭部に装着された状態で、振動板132がユーザの頭部に接触せずに所定の間隔で離間する構成も採用可能である。このような場合には、振動板132は、声による骨伝導又は皮膚伝導による振動板132の振動は集音部133に伝達することなく呼吸音を集音部133に伝達することができる。
【0031】
振動板132は、その共振周波数が100Hzから600Hzまでの値となるように構成されてもよい。さらに言えば、振動板132の共振周波数は200Hzから500Hzまでの間であってもよい。ここで、共振周波数f(Hz)は、
f=(Kt/2πd2)*√(E/3ρ(1-σ2)) 式(1)
(K:節円係数、t:厚さ(m)、d:半径(m)、E:ヤング率(Pa)、ρ:密度(kg/m3)、σ:ポアソン比)
で表される。よって、上記式(1)に基づいて、振動板132の厚さ(t)、半径(d)、材料(E、ρに影響)等が設定されてもよい。振動板132の共振周波数を呼吸音の周波数帯に含まれるような値にすることにより、呼吸検出ユニット13が効果的に呼吸音を検出することができる。一実施形態において、振動板132はアルミニウムであってもよい。
【0032】
集音部133は、振動板132を通して呼吸音を集音する。詳細には、集音部133は、振動板132を介して入力された呼吸音の音波を電気信号に変更する。集音部133は、例えばマイクロフォンであってもよく、詳細にはコンデンサマイク又はMEMS(Micro Electronics Mechanical System)マイクロフォン等であってもよい。集音部133は、周壁1311の内部において、振動板132と離間して配置されている。すなわち、集音部133の構成部品として振動板が設けられる場合、それとは異なる振動板である振動板132が、集音部133と離間して設けられている。
【0033】
本実施形態では、ハウジング131の周壁1311の内面1311c、振動板132及び集音部133により、ハウジング131の内部に内部空間131aが画定される。このように、外部と区画された内部空間31aを介して振動板132から集音部133へと呼吸音が伝達されるので、ノイズの発生を抑制しつつ、呼吸音を集音することができる。
【0034】
また、内部空間131aは密閉空間であってもよく、不活性ガス又はドライ空気で満たされてもよい。これにより、内部空間131aにおける呼吸音の伝達性を向上することができる。例えば、周壁1311に振動板132が取り付けられた状態で、ドライ空気雰囲気にて集音部133が周壁1311に接着や機械封止等により固定されることにより、内部空間131aがドライ雰囲気で満たされる。不活性ガスは、窒素又はヘリウム等であってもよい。
【0035】
一例では、呼吸検出ユニット13は、鼻翼及び鼻骨を外し鼻孔から上部1cm以上5cm以下の部位であって、鼻骨より下であって、鼻稜線から左右±15mm以内の位置に配置される。
【0036】
GSR検出ユニット14は、ユーザの後頭部の耳付近または頸部に当接するフレーム10(当接部102)に設けられた2つの電極を備えた電気伝導度センサ(皮膚表面電位センサ)である。2つの電極間の電位差を測定することで、皮膚の表面電位や伝導率の変化を測定して電気活動を検出する。耳周辺の側頭部における汗腺を開くための抹消神経の応答状態によって皮膚の電気伝導度が変化するため、皮膚の表面電位を測定することで、ユーザの汗腺からの汗の分泌量を推定することができ、ユーザが暑いと感じているか否かや、ユーザが緊張しているか否かを判断することができる。また、皮膚の表面電位を測定することによって、生体情報検出デバイス1を装着したユーザの覚醒状態を判定することができる。
【0037】
なお、ユーザの後頭部側の形状はユーザごとに個人差があるため、当接部102は可撓性のある材料で構成され、形状の異なる複数のユーザの後頭部に電極が当接するように構成される。また、一例ではGSR検出ユニット14の2つの電極は2cm以上離れる位置に配置され、これによって電位差を正確に測定することができる。
【0038】
一例では、GSR検出ユニット14は、毛髪のない耳周辺の上側から裏側に当たる側頭部、後頭部、頸部までの間に2つ以上の電極が配置される。
【0039】
視線検出ユニット15は、例えばカメラなどの撮像装置であって、撮影した画像の輪郭検出を行うことで、瞳孔の位置に基づく視線検出することができる。一例では、瞳孔の大きさに基づいて、ユーザが注目している対象までの距離や明るさを検出してもよい。また、一例では、ユーザの瞬きを検出し、瞬きの回数を検出してもよい。
【0040】
一例では、視線検出ユニット15は、ユーザが正面を見た時の瞳の位置から左右に5mm以内のユーザの瞳に対向する位置に配置される。
【0041】
制御部20は、各検出ユニットに生体情報の検出指示を出したり、各検出ユニットから取得した生体情報を加工する。制御部20は、プロセッサとメモリを備え、メモリに格納されたプログラムをプログラムで実行することで生体情報検出デバイス1全体の制御を行う。一例では、プロセッサはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)またはマイクロコントローラである。一例では、制御部20は、外部装置と通信バスを接続することを可能にするインタフェースを有してもよい。
【0042】
無線通信部30は、各検出ユニットで取得した生体情報を外部装置に送信するための無線通信回路である。一例では、無線通信部30はBluetooth(登録商標)またはWi-Fi(登録商標)に準拠した通信を行うことができる。
【0043】
記憶部40は、各検出ユニットが測定した測定結果を生体情報として格納する。一例では、検出ユニットごとに取得した時刻情報(タイムスタンプ)と関連付けて生体情報を格納する。一例では、記憶部40はフラッシュメモリである。
【0044】
なお、本実施形態では、無線通信部30および記憶部40は制御部20とは別に示されているが、制御部20が無線通信部30および記憶部40を含んでもよい。
【0045】
バッテリ50は、各検出ユニット11~15、制御部20、無線通信部30、および記憶部40に動作電源を供給する。一例では、バッテリ50は、リチウムイオン電池などの充電可能な小型電池である。なお、バッテリ50と各検出ユニット11~15、制御部20、無線通信部30、および記憶部40を接続する電源バスは、
図1では省略しているが、フレーム10の内部に配線されてもよい。あるいは、バッテリ50は各検出ユニット11~15、制御部20、無線通信部30、および記憶部40の少なくともいずれかに無線給電を行ってもよい。バッテリ50は、バッテリ50に充電するための電極を有する。
【0046】
次に、
図2を参照して各ハードウェアのブロック図について説明する。バッテリ50は、各検出ユニット11~15、制御部20、無線通信部30、および記憶部40に電源バスを介して駆動電源を提供する。また、制御部20は、通信バスを介して各検出ユニット11~15、無線通信部30、および記憶部40に制御信号を送信して生体情報検出デバイス1の全体の動作を制御する。
【0047】
なお、本実施形態においては、制御部20は各検出ユニット11~15、無線通信部30、および記憶部40と有線の通信バスで接続されるものとして説明を行う。しかしながら各検出ユニット11~15、無線通信部30、および記憶部40の少なくともいずれかと制御部20とが無線通信回路を有し、無線通信が可能な場合には、無線通信を介して制御信号や生体情報の送受信を行ってもよい。これによって、生体情報検出デバイス1内の配線を減らすことができ、設計の自由度を高めることができる。
【0048】
次に、
図3を参照して、生体情報検出デバイス1の制御部20が実行する処理のフローチャートについて説明する。制御部20は、所定の時間間隔で
図3に示す処理を実行する。
【0049】
まず、S301で制御部20は、各検出ユニット11~15に生体情報の検出指示を行う。なお、制御部20は、検出ユニット11~15の設定ごとに、各検出ユニット11~15に検出指示を行う時間間隔は異なってもよい。
【0050】
制御部20は、各検出ユニット11~15から生体情報を受け取ると、S302で各検出ユニット11~15が生体情報を取得した時刻、または制御部20が生体情報を受信した時刻をタイムスタンプとして記憶部40に格納する。
【0051】
続いて、制御部20は、S303で所定の時間間隔で外部装置に生体情報を送信する。一例では、タイムスタンプと合わせて生体情報を外部装置に送信してもよい。あるいは、生体情報に所定の信号処理を行って加工を施して送信してもよい。例えば、制御部20は、表情筋検出ユニット11a、11bから取得した撮影画像に基づいて、表情筋の動き(差分)を検出し、ユーザが快適に感じているか、不快に感じているかを示す情報を外部装置に送信してもよい。あるいは、制御部20は、PPG検出ユニット12から取得した情報から、呼吸の周期情報を抽出して、当該周期情報を送信してもよい。これによって、生体情報検出デバイス1から外部装置に送信するデータ量を削減することができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る生体情報検出デバイス1は、複数の検出ユニットから生体情報を取得する。これによって、複数の生体の特徴に基づいてユーザの状態を特定することができるため、ユーザの状態の検出精度を高めることができる。また、アプリケーションに合わせて様々な生体情報を取得することができる。
【0053】
これまで、複数のパラメータを測定するには、複数の測定装置が必要になり、人が装着して活動する際の利便性の低さが問題であった。そこで1つの生体情報検出装置で複数の生体情報を測定できれば、人の状態を検知する上で有用となる。また、生体情報検出装置は、ユーザが装着するだけで測定を行うことができ、追加の電極の設置などが必要ない。これによって、生体情報を検出するためのユーザの利便性を向上することができる。
【0054】
また、生体情報検出デバイスは、ユーザの快不快の感情、情動、覚醒状態を同時に検知できるため、ユーザの状態をより正確に常時検知できる。
【0055】
<その他の実施形態>
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【0056】
例えば、本実施形態では、生体情報検出デバイスはメガネ型の装置であるものとして説明を行ったが、頭部に装着可能であればよく、生体情報検出デバイスはヘルメット型デバイスであってもよいし、帽子型デバイスであってもよい。
図6にヘルメット型の生体情報検出デバイス600を示す。なお、
図1と同様の構成については説明を省略する。ヘルメット型の生体情報検出デバイス600にも、ユーザの生体情報を検出するための検出ユニット11~15および制御部20、無線通信部30、記憶部40、バッテリ50が設けられる。
【0057】
ヘルメット型の生体情報検出デバイス600は、メガネ型と比較して、各検出ユニット11~15、制御部20、無線通信部30、記憶部40、バッテリ50の配置の自由度を高めることができる。また、容量の大きなバッテリ50を配置することができる。また、ヘルメット型であれば、メガネ型と比較して振動などによってユーザの頭部に対して生体情報検出デバイスの位置がずれることを防ぐことができ、生体情報の検出が失敗する可能性を下げることができる。
【0058】
また、本実施形態において、表情筋検出ユニット11b、光学式心拍(PPG)検出ユニット12、呼吸検出ユニット13、および電気伝導度(GSR)検出ユニット14は、顔の左右の一方に設けられている。しかしながら、顔の両側に表情筋検出ユニット11b、光学式心拍(PPG)検出ユニット12、呼吸検出ユニット13、電気伝導度(GSR)検出ユニット14の少なくともいずれかが設けられてもよい。これによって、測定精度を高めることができる。
【0059】
<実施形態のまとめ>
1.上記実施形態の生体情報検出装置は、
ユーザの生体情報を検出するための生体情報検出装置(1)であって、
前記ユーザの頭部に装着される装着部(10)と、
前記装着部に配置され、前記ユーザの顔部の筋肉の動きを検出可能な情報を検出する表情筋検出手段(11a、11b)と、
前記装着部に配置され、前記ユーザの脈拍を検出可能な情報を検出する脈拍検出手段(12)と、
前記装着部に配置され、前記ユーザの皮膚表面電位を検出可能な情報を検出する表面電位検出手段(14)と、
を備える。
【0060】
これによって、ユーザの状態を正確に把握することができる生理情報検出デバイスを提供することができる。
【0061】
2.上記実施形態の生体情報検出装置において、
前記表情筋検出手段は、前記ユーザの眉部分と頬部分との少なくともいずれかの筋肉の動きを検出する。
【0062】
これによって、ユーザが快適に感じているか不快に感じているかを検出することができる。
【0063】
3.上記実施形態の生体情報検出装置において、
前記表情筋検出手段は、前記ユーザの眉部分および頬部分の画像を取得する撮像装置である。
【0064】
これによって、非接触でユーザの表情筋の動きを検出することができ、生体情報の検出の利便性が向上する。
【0065】
4.上記実施形態の生体情報検出装置において、
前記脈拍検出手段は、光学式心拍センサである。
【0066】
これによって、光学式心拍センサによってユーザの脈拍を測定することができる。
【0067】
5.上記実施形態の生体情報検出装置において、
前記脈拍検出手段は、前記装着部がユーザの鼻に当接する第1当接部に配置される
これによって、ユーザの脈拍を高精度に測定することができる。
【0068】
6.上記実施形態の生体情報検出装置において、
前記表面電位検出手段は、2つの電極を有する皮膚表面電位センサである。
【0069】
これによって、電極間の電位差から皮膚表面電位を検出することができる。
【0070】
7.上記実施形態の生体情報検出装置において、
前記2つの電極は、前記装着部がユーザの側頭部または頸部に当接する第2当接部に設けられる。
【0071】
これによって、ユーザの皮膚表面電位を正確に測定することができる。
【0072】
8.上記実施形態の生体情報検出装置において、
前記装着部に配置され、前記ユーザの呼吸を検出可能な情報を検出するための呼吸検出手段(13)をさらに備える
これによって、ユーザの呼吸間隔を検出することができ、ユーザの覚醒度を検知することができる。
【0073】
9.上記実施形態の生体情報検出装置において、
前記呼吸検出手段は、前記ユーザの呼吸音を検出するマイクである。
【0074】
これによって、呼吸音に基づいてユーザの呼吸を検出することができる。
【0075】
10.上記実施形態の生体情報検出装置において、
前記呼吸検出手段は、前記装着部が前記ユーザの鼻に当接する位置に配置される。
【0076】
これによって、ユーザの呼吸音を正確に測定することができる。
【0077】
11.上記実施形態の生体情報検出装置は、
前記装着部に配置され、前記ユーザの視線の向きを検出可能な視線検出手段(15)をさらに備える。
【0078】
これによって、ユーザが注目している対象の方向を検知することができる。
【0079】
12.上記実施形態の生体情報検出装置において、
前記表情筋検出手段、前記脈拍検出手段、および前記表面電位検出手段によって検出した結果を外部装置に送信する無線通信手段をさらに備える。
【0080】
これによって、外部装置がユーザの状態を判定することができる。
【符号の説明】
【0081】
1:生体情報検出デバイス、11a:表情筋検出ユニット、11b:表情筋検出ユニット、12:光学式心拍検出ユニット、13:呼吸検出ユニット、14:電気伝導度検出ユニット、15:視線検出ユニット、20:制御部、30:無線通信部、40:記憶部、50:バッテリ