(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】生産計画立案装置、生産計画立案方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20241126BHJP
【FI】
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2021048365
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小林 寛嗣
【審査官】塚田 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-181626(JP,A)
【文献】特開2016-181039(JP,A)
【文献】特表2013-536103(JP,A)
【文献】特開2010-262539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間に発生する製造コストに対して特定日数毎に正規化された製造コスト指標を算出する製造コスト指標算出手段と、
所定期間に発生するフロアコストに対して前記特定日数毎に正規化されたフロアコスト指標を算出するフロアコスト指標算出手段と、
所定期間に発生する資材コストに対して前記特定日数毎に正規化された資材コスト指標を算出する資材コスト指標算出手段と、
前記製造コスト指標と、前記フロアコスト指標と、前記資材コスト指標との和である、総コスト指標が小さくなる生産計画を算出する生産計画算出手段と、
前記生産計画算出手段によって、算出された生産計画を出力する生産計画出力手段と、を備える、生産計画立案装置。
【請求項2】
前記生産計画算出手段は、前記総コスト指標が小さくなる生産計画と共に、当該生産計画と生産スケジュールの異なる生産計画候補を更に算出し、
前記生産計画と前記生産計画候補を同じ画面上に表示して、ユーザが選択する生産計画の情報を受付する生産計画選択手段を更に備え、
生産計画出力手段は、前記生産計画選択手段によって受付された前記生産計画を出力する、請求項1に記載の生産計画立案装置。
【請求項3】
前記生産計画選択手段は、前記生産計画及び前記生産計画候補のそれぞれに前記製造コスト、前記フロアコスト又は前記資材コストのいずれかを画面上に表示する、請求項2に記載の生産計画立案装置。
【請求項4】
所定期間に発生する製造コストに対して特定日数毎に正規化された製造コスト指標を算出し、
所定期間に発生するフロアコストに対して前記特定日数毎に正規化されたフロアコスト指標を算出し、
所定期間に発生する資材コストに対して前記特定日数毎に正規化された資材コスト指標を算出し、
前記製造コスト指標と、前記フロアコスト指標と、前記資材コスト指標との和である、総コスト指標が小さくなる生産計画を算出し、
算出された前記生産計画を出力する、生産計画立案方法。
【請求項5】
所定期間に発生する製造コストに対して特定日数毎に正規化された製造コスト指標を算出し、
所定期間に発生するフロアコストに対して前記特定日数毎に正規化されたフロアコスト指標を算出し、
所定期間に発生する資材コストに対して前記特定日数毎に正規化された資材コスト指標を算出し、
前記製造コスト指標と、前記フロアコスト指標と、前記資材コスト指標との和である、総コスト指標が小さくなる生産計画を算出し、算出した前記生産計画を出力することをコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生産計画立案装置、生産計画立案方法、及びコンピュータプログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の製品を生産する製造業において、生産時のコストを抑えられるように製品の生産計画を求める生産計画するシステムが知られている。
【0003】
特許文献1には、原料からそれぞれに独立した需要がある製品および副産物を生成する業務を支援する業務支援システムであって、原料の調達コスト、製品と副産物の生産コスト、および、製品と副産物の在庫コストの合計である総コストを最小化するための方法が開示されている。特許文献2には、製品の原材料ごとに、当該原材料を発注から到着するまでのリードタイム(LT)を受け付け、受け付けた原材料ごとのリードタイムと製品の需要予測量を用いて、製品の製造に関するコストが最小となる原材料ごとの発注量と製品の生産量を算出する計画決定方法が開示されている。特許文献3には、販売管理部門からのオーダ情報と物流部門からの在庫情報から策定された最適な生産計画から原材料の所要量を演算して購買部門に伝達する所要量管理部含む医薬品製造企業の統合生産システムが開示されている。また、特許文献3には、上述の所要量管理部が、原材料を必要とする時期と量並びに購入価格から、購入コストを最適化する時期と量を定めて、購入先に発注することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-262539 号公報
【文献】特開2016-181039 号公報
【文献】特開平11-306233 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1~3に記載された発明は、原材料を購入する時期を考慮して生産コストを算出しているものの、コストの支払が発生する時期を考慮していない。このため、実際にコストが発生するタイミングを考慮した生産計画となっていない。
【0006】
本開示の目的の一例は、実際にコストが発生するタイミングを考慮した生産計画立案装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様における生産計画立案装置は、所定期間に発生する製造コストに対して特定日数に正規化された製造コスト指標を算出する製造コスト指標算出手段と、所定期間に発生するフロアコストに対して特定日数毎に正規化されたフロアコスト指標を算出するフロアコスト指標算出手段と、所定期間に発生する資材コストに対して特定日数毎に正規化された資材コスト指標を算出する資材コスト指標算出手段と、製造コスト指標と、フロアコスト指標と、資材コスト指標との和である、総コスト指標が小さくなる生産計画を算出する生産計画算出手段と、生産計画算出手段によって、算出された生産計画を出力する生産計画出力手段と、を備える。
【0008】
本開示の一態様における生産計画方法は、所定期間に発生する製造コストに対して特定日数毎に正規化された製造コスト指標を算出し、所定期間に発生するフロアコストに対して特定日数毎に正規化されたフロアコスト指標を算出し、所定期間に発生する資材コストに対して特定日数毎に正規化された資材コスト指標を算出し、製造コスト指標と、フロアコスト指標と、資材コスト指標との和である、総コスト指標が小さくなる生産計画を算出し、算出された生産計画を出力するする。
【0009】
本開示の一態様におけるプログラムは、コンピュータに、所定期間に発生する製造コストに対して特定日数毎に正規化された製造コスト指標を算出し、所定期間に発生するフロアコストに対して特定日数毎に正規化されたフロアコスト指標を算出し、所定期間に発生する資材コストに対して特定日数毎に正規化された資材コスト指標を算出し、製造コスト指標と、フロアコスト指標と、資材コスト指標との和である、総コスト指標が小さくなる生産計画を算出し、算出された生産計画を出力することを実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明による効果の一例は、実際にコストが発生するタイミングを考慮した生産計画を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第一の実施形態における生産計画立案装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第一の実施形態における生産計画立案装置をコンピュータ装置とその周辺装置で実現したハードウェア構成を示す図である。
【
図3】
図3は、記憶装置に格納されている生産情報の例を示す図である。
【
図4】
図4は、製造コスト指標の算出例を示す図である。
【
図5】
図5は、フロアコスト指標の算出例を示す図である。
【
図6】
図6は、資材コスト指標の算出方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、総コスト指標が小さくなる生産日を特定する方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第一の実施形態における生産計画立案の動作を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第二の実施形態における生産計画立案装置の構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、生産スケジュールが異なる場合の三つの生産計画を示す図である。
【
図11】
図11は、支払LTが1~4週の場合の週毎の生産計画及びコストを示す図である。
【
図12】
図12は、支払LTが1~8週の場合の週毎の生産計画及びコストを示す図である。
【
図13】
図13は、支払LTが1~40週の場合の週毎の生産計画及びコストを示す図である。
【
図14】
図14は、生産計画選択部が表示する生産計画を表示する画面の例である。
【
図15】
図15は、第二の実施形態における生産計画立案の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
本実施形態における生産計画立案装置は、生産条件を満たし、顧客からの製品の出荷要請に対して最適な生産計画を算出する装置である。
図1は、第一の実施形態における生産計画立案装置100の構成を示すブロック図である。
図1を参照すると、生産計画立案装置100は、製造コスト指標算出部101とフロアコスト指標算出部102と資材コスト指標算出部103と生産計画算出部104と生産計画出力部105を備える。次に、第一の実施形態における生産計画立案装置100の構成について詳しく説明する。
【0014】
図2は、本開示の第一の実施形態における生産計画立案装置100を、プロセッサを含むコンピュータ装置500で実現したハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示されるように、生産計画立案装置100は、CPU(Central Processing Unit)501、ROM(Read Only Memory)502、RAM(Random Access Memory)503等のメモリ、プログラム504を格納するハードディスク等の記憶装置505、ネットワーク接続用の通信I/F(Interface)508、データの入出力を行う入出力インタフェース511を含む。また、生産計画立案装置100は、バス512を介して入力装置509および出力装置510に接続されている。
【0015】
CPU501は、オペレーティングシステムを動作させて本発明の第一の実施の形態に係る生産計画立案装置100の全体を制御する。また、CPU501は、例えばドライブ装置507などに装着された記録媒体506からメモリにプログラムやデータを読み出す。また、CPU501は、第一の実施の形態における製造コスト指標算出部101とフロアコスト指標算出部102と資材コスト指標算出部103と生産計画算出部104と生産計画出力部105及びこの一部として機能し、プログラムに基づいて後述する
図8に示すフローチャートにおける処理または命令を実行する。
【0016】
記録媒体506は、例えば光ディスク、フレキシブルディスク、磁気光ディスク、外付けハードディスク、または半導体メモリ等である。一部の記録媒体は、不揮発性記憶装置であり、そこにプログラムを記録する。また、プログラムは、通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからダウンロードされてもよい。
【0017】
入力装置509は、例えば、マウスやキーボード、内蔵のキーボタンなどで実現され、入力操作に用いられる。入力装置509は、マウスやキーボード、内蔵のキーボタンに限らず、例えばタッチパネルでもよい。出力装置510は、例えばディスプレイで実現され、出力を確認するために用いられる。本実施形態において、生産計画立案装置100は、ユーザにより入力装置509から生産計画立案に必要な操作を受付したことを検知すると、生産計画の立案を開始する。
【0018】
以上のように、
図1に示す第一の実施形態は、
図2に示されるコンピュータ・ハードウェアによって実現される。ただし、
図1の生産計画立案装置100が備える各部の実現手段は、以上説明した構成に限定されない。また生産計画立案装置100は、物理的に結合した一つの装置により実現されてもよいし、物理的に分離した二つ以上の装置を有線または無線で接続し、これら複数の装置により実現されてもよい。たとえば、入力装置509及び出力装置510は、コンピュータ装置500とネットワークを経由して接続されていてもよい。なお、本実施形態においては、記憶装置505に、顧客から要求された目標出荷数を出荷する出荷計画や生産能力、コストを算出するためのマスタ情報等の生産情報が予め格納されている。
【0019】
図3は、記憶装置505に格納されている生産情報の例を示す図である。
図3に示すように、記憶装置505には、目標出荷数を出荷する出荷計画や生産能力、コストを算出するためのマスタ情報の生産情報が格納されている。
図3の例では、生産品の出荷計画として、1月15日に2500個、1月30日に2500個をそれぞれ出荷することが計画されている。また、既に存在する完成品在庫の情報として、1月1日に1000個あることが格納されている。生産能力としては、生産可能開始日、一日の生産能力の上限値及び下限値、完成品在庫数の上限値及び下限値、並びにその他生産能力に影響する、習熟度、歩留り及び直行率に関する情報が格納されている。マスタ情報としては、製造コストを算出するのに用いられる人件費、フロアコスト及び資材コストに関係する情報が格納されている。
図3の例では、会社Aから人を雇用した場合の一日当たりの人件費は、一人当たり5,000円/日で10人分必要であり、会社Bから人を雇用した場合の一日当たりの人件費は、一人当たり6,000円/日で10人分必要である。また、工場のラインが停止した場合、ライン停止中による休業補償が人件費として発生する。会社Aから人を雇用した場合のライン停止中の一日当たりの人件費は、一人当たり5,000円×100%×10人分となり、会社Bから人を雇用した場合のライン停止中の一日当たりの人件費は、一人当たり6,000円×60%×10人分となる。フロアコストは、完成品在庫を管理するフロア面積と、そのフロア面積を利用する費用及びフロアの使用日数に関する情報が格納されている。資材コストは、種類ごとに資材の単価費用とその個数に関する情報が格納されている。なお、上述した生産情報の例は、記憶装置505に格納されている情報の一例であり、以下に説明する、製造コスト指標算出部101、フロアコスト指標算出部102及び資材コスト指標算出部103でのそれぞれの指標の算出方法は、説明の都合上、別の数値を用いて説明する。
【0020】
製造コスト指標算出部101は、所定期間に発生する製造コストに対して特定日数毎に正規化した指標を算出する手段である。所定期間とは、製品を生産する期間であり、ライン停止中の期間も含む。本実施形態において、特定日数は、1週間(7日間)であるが、特定日数はこれに限られない。所定期間に発生するコストとは、費用を支払うべき日のコストであり、例えば、発注先から受け取った請求書に記載された支払期限日であって、実際に生産した日とは必ずしも一致しない。製造コストとは、例えば、目標生産数に対して必要な人件費を含む概念である。基本的に、より早く人を雇うほど、言い換えると、発注先に人件費を支払う時期がより早いほど一人当たりの人件費は安くなる。製造コストは、人件費以外に、歩留り、直行率及び習熟度が考慮されて算出される。例えば、習熟度に関しては、生産を立ち上げた1日目から数日間は、作業が習熟していないため通常の生産能力の8割程度しか生産できない場合がある。直行率に関しては、不良製品等が発生し、目標の生産数に対して9割程度しか生産できない場合がある。このため、歩留り、直行率及び習熟度を考慮する場合は、理論上の生産能力にこれらの比率を掛け合わせて、生産能力を設定する必要がある。
【0021】
製造コスト指標算出部101は、ユーザにより入力装置509等から生産計画立案に必要な操作を受付したことを検知すると、記憶装置505に格納された生産能力及びマスタ情報を参照し、所定期間に発生する製造コストを特定日数毎に算出する。具体的には、生産能力の情報から生産に必要な作業人数及び作業量を割り出し、マスタ情報に基づいて発生する人件費を算出する。次いで、製造コスト指標算出部101は、算出した特定日数毎の製造コストを正規化する。本実施形態において、正規化とは、所定期間の数値において、所定期間のコストの数値が0~1に比例配分されるように変換する方法であり、例えば、コスト指標は、コストを所定期間のコストの最大値と最小値の和で割った数値により表される。但し、本発明の正規化の方法はこれに限られない。例えば、所定期間の数値の平均を0、分散が1となるよう換算して正規化しても構わない。
【0022】
図4は、製造コスト指標の算出例を示す図である。
図4の例において、生産期間を週毎に分け、支払LTの時期をカウントしている。
図4中、支払LTとは、出荷日より何週前に支払いするかを示す支払いリードタイムである。
図4に示すように、支払LTが4週のときの製造コストを100とし、支払LTが8週のとき、支払LTが40週のときの製造コストをそれぞれ50、10とする。
図4に示すように、生産期間がLT4週から40週までの製造コストは比例して減少する。これは、発注先への製造コスト(人件費)支払時期が早いほど費用が安くなるからである。製造コスト指標は、製造コストを正規化した数値であるので、製造コストを所定期間の製造コストの最大値と最小値の和で割った数値となる。例えば、支払LTが4週のときは、100/(100+10)=0.909と算出される。製造コスト指標算出部101は、製造コスト指標を算出すると、生産計画算出部104に出力する。
【0023】
フロアコスト指標算出部102は、所定期間に発生したフロアコストに対して特定日数毎に正規化した指標を算出する手段である。フロアコスト指標算出部102は、ユーザによる入力装置509等から生産計画立案に必要な操作を受付したことを検知すると、記憶装置505に格納されたマスタ情報を参照し、所定期間に発生する週毎のフロアコストを算出する。フロアコストとは、完成品を管理するフロア面積(数)にかかる費用であり、具体的には、完成品在庫数の上限値を、完成品を入れる容器一個当たりの収納数で割ることで完成品を入れる容器の必要な数を算出する。この容器の数を管理するのに必要なフロア数がフロアコストとなる。また、基本的に完成品を管理する週数が多いほど、フロアコストが高くなる。
【0024】
図5は、フロアコスト指標の算出例を示す図である。
図5の例において、生産期間を週毎に分け、支払LTの時期をカウントしている。
図5に示すように、支払LTが4週のときのフロアコストを10とし、支払LTが8週のとき、支払LTが40週のときのフロアコストがそれぞれ20、100とする。その間のフロアコストは
図5に示すように管理週数に比例して増加する。フロアコスト指標は、フロアコストを正規化した数値であるので、フロアコストを所定期間である4~40週の間の製造コストの最大値と最小値の和で割った数値となる。例えば、支払LTが4週のときは、10/(100+10)=0.091と算出される。フロアコスト指標算出部102は、算出したフロアコスト指標を生産計画算出部104に出力する。
【0025】
資材コスト指標算出部103は、所定期間に発生した資材コストに対して特定日数毎に正規化した指標を算出する手段である。資材コスト指標算出部103は、ユーザによる入力装置509等から生産計画立案に必要な操作を受付したことを検知すると、記憶装置505に格納されたマスタ情報を参照し、所定期間に発生する週毎の資材コストを算出する。資材コストとは、目標の出荷数に間に合うように資材をサプライヤーに発注をしてから出荷されるまでに発生するコストを含む概念であり、より早く購入するほど資材の在庫にかかる費用が発生する。
【0026】
図6は、資材コスト指標の算出方法を説明するための図である。
図6の例において、生産期間を週毎に分け、LTの時期をカウントしている。
図6中、支払LTとは、出荷日より何週前に支払いするかを示す週数であり、発注LTとは、発注してから資材が納入され出荷するまで必要な週数である。例えば、出荷日より何週前に発注するかを示す週数を示す。通常、生産に必要な資材は、サプライヤーへ発注した後、資材コストを支払い、その後生産を開始し出荷する。よって、発注LTの週数は、支払LTの週数を含んでいるため、所定期間に発生する資材コストは、発注LTに基づいて算出する。
図6では、品目A、B、C、D、E及びFにおける支払LTが0、4、8及び40週の資材コスト指標を算出するための方法を示しており、品目毎に発注までのLTが異なる。支払LTが0週の場合の発注LTは、単に発注から生産までにかかる週数を示しており、例えば、品目A及びBにおいて4週かかり、品目Cにおいて10週かかる。支払LTが4週の場合は、支払LTが0のときの発注LTにそれぞれ4週を足した週数が発注LTとなり、支払LTが8週のとき及び支払LTが40のときは、支払LTが0のときの発注LTにそれぞれ8週、40週を足した週数が発注LTの週数となる。
図6における費用とは、発注後、週当たり各品目に対して発生する費用であり、例えば、支払LT4週の場合の品目Aであると、週当たり発生する費用が2であり、発注から出荷まで4週かかるので、累計費用が8となる。全ての品目の累計費用の合計値が支払LT4週のときの資材コストになる。但し、資材コスト指標の算出方法は、これに限られない。資材コスト指標は、累計費用の合計値を各累計費用の最大値と最小値の和で割って算出する。
図6において、例えば、支払LTが0のときの、資材コスト指標は、1128/(1128+3888)=0.225と算出される。資材コスト指標算出部103は、算出した資材コスト指標を生産計画算出部104に出力する。
【0027】
生産計画算出部104は、製造コスト指標と、フロアコスト指標と、資材コスト指標との和である、総コスト指標が小さくなるような、生産計画を立案する手段である。生産計画算出部104は、製造コスト指標算出部101、フロアコスト指標算出部102及び資材コスト指標算出部103から算出された各指標が入力されると、それぞれの和が小さくなるような生産日を特定する。
【0028】
図7は、総コスト指標が小さくなる生産日を特定する方法を説明するための図である。
図7中、製造コスト指標は、
図4で示した数値を用いており、フロアコスト指標は、
図5で示した数値を用いている。また、
図7中、資材コスト指標は、
図6で用いた数値に加えて、
図6とは支払LTが異なる数値については、
図6と同様の方法で資材コスト指標を算出している。生産計画算出部104は、例えば、所定期間である生産期間が40週間であるとした場合、総コスト指標が小さくなる週を特定する。
図7の例においては、支払LTが10週の総コスト数が最も小さくなるため、生産計画算出部104は、支払LTが10週の生産計画の情報を生産計画出力部105に出力する。生産計画は、例えば、生産を開始する週と週当たりの生産量等の生産スケジュールの情報を含む。この生産スケジュールは、記憶装置505に格納された出荷数を生産するためのスケジュールであり、記憶装置505に格納された生産能力の条件を満たしている。
【0029】
生産計画出力部105は、生産計画算出部104が算出した計画を出力する手段である。生産計画出力部105は、生産計画算出部104から生産計画についての情報が入力されると、ディスプレイ等の出力装置510にその生産計画を表示する。出力装置510は、例えば、工場等のオペレーション操作を行うタッチパネル画面で構成される。
【0030】
以上のように構成された生産計画立案装置100の動作について、
図8のフローチャートを参照して説明する。
【0031】
図8は、第一の実施形態における生産計画立案装置100の動作の概要を示すフローチャートである。尚、このフローチャートによる処理は、前述したプロセッサによるプログラム制御に基づいて、実行されてもよい。
【0032】
図8に示すように、まず製造コスト指標算出部101、フロアコスト指標算出部102及び資材コスト指標算出部103は、各指標を算出し、生産計画算出部104に出力する。(ステップS101)。
次に、生産計画算出部104は、それぞれの指標の和である、総コスト指標が小さくなるような生産計画を算出し、生産計画出力部105に出力する(ステップS102)。
最後に、生産計画出力部105は、入力された生産計画を表示して出力する(ステップS103)。
以上で、生産計画立案装置100は、生産計画立案の動作を終了する。
【0033】
次に、本開示の第一の実施形態の効果について説明する。上述した本実施形態における生産計画立案装置100は、実際にコストが発生するタイミングを考慮した生産計画立案装置を提供することができる。この理由は、各指標算出部から算出された指標が、支払いが発生する時期を考慮して、所定期間に発生したコストに対して特定日数毎に正規化した指標を算出する。これにより、支払日までの支払LTを考慮した生産計画を立案することができる。既存の生産計画方法では、実際に費用を支払う日を考慮しておらず、実情とはコストの発生時期が異なっていた。
【0034】
[第2の実施形態]
次に、本開示の第二の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下、本実施形態の説明が不明確にならない範囲で、前述の説明と重複する内容については説明を省略する。本開示の各実施形態における各構成要素は、
図2に示すコンピュータ装置と同様に、その機能をハードウェア的に実現することはもちろん、プログラム制御に基づくコンピュータ装置、ファームウェアで実現することができる。
【0035】
図9は、本開示の第二の実施形態に係る生産計画立案装置110の構成を示すブロック図である。
図9を参照して、第一の実施形態に係る生産計画立案装置100と異なる部分を中心に、第二の実施形態に係る生産計画立案装置110を説明する。第二の実施形態に係る生産計画立案装置110は、製造コスト指標算出部111とフロアコスト指標算出部112と資材コスト指標算出部113と生産計画算出部114と生産計画選択部115と生産計画出力部116を備える。すなわち、第一の実施形態とは、特に、生産計画選択部115を備えている点で大きく異なっている。
【0036】
第一の実施形態において、生産計画算出部104は、算出した生産計画の情報を生産計画出力部105に出力していた。第二の実施形態においては、生産計画算出部114は、総コスト指標が小さくなる生産計画と共に、生産計画とは異なる生産計画候補を更に算出し、生産計画選択部115が、総コスト指標が小さくなる生産計画と上述の生産計画候補を同じ画面上に表示して、ユーザが選択する生産計画の情報を受付する。なお、第二の実施形態の製造コスト指標算出部111とフロアコスト指標算出部112と資材コスト指標算出部113は、第一の実施形態の製造コスト指標算出部101及びフロアコスト指標算出部102及び資材コスト指標算出部103と構成や機能が基本的に同じであるため、説明を省略する。
【0037】
生産計画算出部114は、生産計画算出部104が備える機能に加え、生産スケジュールが異なる複数の生産計画候補を算出する機能を備える。生産計画算出部114は、製造コスト指標算出部111、フロアコスト指標算出部112及び資材コスト指標算出部113から算出された指標が入力されると、総コスト指標が小さくなるような生産計画と共に、生産スケジュールが異なる複数の生産計画候補を算出する。生産計画候補とは、記憶装置505に格納されている、生産可能開始日、一日の生産能力の上限値及び下限値、完成品在庫数の上限値及び下限値等の条件を満たし、生産スケジュールが異なる生産計画である。生産スケジュールとは、生産日と一日当たりの生産量を含む情報である。
【0038】
図10は、条件が異なる三つの生産計画を示す図である。また、また、
図11~13は、それぞれの生産計画の場合における週毎の生産スケジュールを示す図である。
図10~12において、フロアコスト及び資材コストは、第一実施形態で用いた数値と同じ数値を用いている。
図10における三つの生産計画では、生産能力の週当たりの生産能力の上限値が異なっている。また、
図10に示すように、三つの生産計画では、3月4日に3900個出荷するとの出荷計画は同じであるが、
図11~13に示すように生産スケジュールや支払LTが異なっている。
図11に示す生産計画では、支払LTが1~4週であり、出荷日3月4日の4週間前から1週間前までコストが発生する。
図12に示す生産計画では、LTが1~8週であり、出荷日3月4日の8週間前から1週間前までコストが発生する。
図13に示す生産計画では、LTが1~40週であり、出荷日3月4日の40週間前から1週間前までコストが発生する。ここで、支払LTが1~4週、1~8週又は1~40週の場合のうち、総コスト指標が最小なのは、総コストが最小である支払LTが1~8週の場合であるとする。この場合、生産計画算出部114は、総コスト指標が最小である支払LTが1~8週の場合の生産計画に加えて、生産スケジュールが異なる生産計画候補として、支払LTが1~4週及び1~40週の場合の生産計画も算出し、生産計画選択部115に出力する。なお、
図11~13において、出荷日前日から出荷日の7日前までを出荷日の1週間前とカウントする。
【0039】
生産計画選択部115は、生産計画及び生産スケジュールが異なる生産計画候補の中から、ユーザが選択する生産計画を受付する手段である。生産計画選択部115は、生産計画算出部114から総コスト指標が最小の場合の生産計画と、生産スケジュールが異なる生産計画候補についての情報が入力されると、出力装置510等に表示する。
図14は、生産計画選択部115が表示する生産計画及び生産計画候補を表示する画面の例である。
図14の画面は、
図12及び
図13に示した生産計画において、横軸に出荷日の何週前かの情報、縦軸に在庫数を表す折れ線グラフと、週当たりの生産計画数を表す棒グラフが示されている。
図14のグラフ中、四角に囲われている数字は、それぞれの生産計画で生産した場合の製造コスト及びフロアコストを示す。本実施形態において、総コスト指標が最小となるのは、LTが1~8週の場合であったが、生産計画選択部115は、ユーザに対し、総コスト指標が最小となるLT1~8週の場合と、生産スケジュールが異なるLT1~4週及び1~40週の場合の生産計画を同一画面上に表示させることで、総コスト指標が最小の場合の生産計画と、製造コストやフロアコスト等の各指標が小さい場合の生産計画とを比較して表示させる。次いで、生産計画選択部115は、入力装置509等を通じていずれかの生産計画が選択されたことを検知すると、選択された生産計画の情報を生産計画出力部116に出力する。
【0040】
生産計画出力部116は、生産計画選択部115によって選択された生産計画を出力する手段である。生産計画出力部116は、生産計画選択部115から選択された生産計画についての情報が入力されると、ディスプレイ等の出力装置510にその生産計画を表示する。出力装置510は、例えば、工場等のオペレーション操作を行うタッチパネル画面である。
【0041】
次に、生産計画立案装置110の動作について
図15に示すフローチャートを参照して説明する。尚、このフローチャートによる処理も、前述したCPUによるプログラム制御に基づいて、実行されても良い。
【0042】
図15に示すように、まず製造コスト指標算出部111、フロアコスト指標算出部112及び資材コスト指標算出部113は、各指標を算出し、生産計画算出部114に出力する。(ステップS201)。
次に、生産計画算出部114は、それぞれの指標の和である、総コスト指標が小さくなるような生産計画と共に、生産スケジュールが異なる生産計画候補を算出し、生産計画選択部115に出力する(ステップS202)。
次に、生産計画選択部115は、生産計画及び生産スケジュールが異なる生産計画候補の中から、ユーザが選択する生産計画を受付する(ステップS203)
最後に、生産計画出力部116は、選択された生産計画を表示して出力する(ステップS204)。
以上で、生産計画立案装置110は、生産計画立案の動作を終了する。以上で、生産計画立案装置110は、生産計画立案の動作を終了する。
【0043】
本実施形態によれば、生産計画算出部114は、それぞれの指標の和である、総コスト指標が小さくなるような生産計画と共に、生産スケジュールが異なる生産計画候補を算出する。これにより、総コスト指標ではなく、製造コスト、フロアコスト又は資材コストが小さい生産計画を実行したい場合に工場のオペレータ等のユーザが計画を容易に選択することができる。例えば、
図14において、人件費を含む製造コストを抑えたい場合は、総コスト指標が最小となる生産計画であるLT1~8週ではなく、製造コストが100の生産計画であるLT1~40週を選択することで達成できる。
【0044】
以上、各実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しえる様々な変更をすることができる。例えば、複数の動作をフローチャートの形式で順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の動作を実行する順番を限定するものではない。このため、各実施形態を実施するときには、その複数の動作の順番は内容的に支障しない範囲で変更することができる。
【0045】
本実施形態において、生産計画選択部115は、総コスト指標が最小となるLT1~8週の場合と、生産スケジュールが異なるLT1~4週及び1~40週の場合の生産計画を並べて表示していたが、生産計画選択部115が表示する生産計画は、これらに限られない。まず、生産計画算出部104,114が算出する生産計画は、総コスト指標が小さければよく、最小でなくてもよい。そして、生産計画算出部104,114が算出する生産計画候補は、生産能力の条件を満たす生産スケジュールであれば、いずれの生産計画を表示しても構わない。これにより、ユーザが優先したい条件(例えば、生産能力、製造コスト、フロアコスト又は資材コスト)で算出した生産計画と比較することができる。
【0046】
また、本実施形態において、製造コスト指標算出部101,111は、人件費に基づいて製造コストを算出していたが、製造コストを算出する際に、設備費等の生産にかかる他のコストを加味しても構わない。同様に、フロアコストや資材コストについても本実施形態の算出方法に限定されず、それぞれ生産時に必要なコストを加えて算出しても構わない。
【0047】
また、本実施形態において、各コスト指標算出部は、支払日又は発注日から出荷日までの週数をリードタイムとしてコストを算出していたが、リードタイムの数値はこれに限られない。リードタイムの起算日は、コストを算出する際に実際にコストが発生するタイミングを考慮した数値であれば構わない。例えば、支払日又は発注日から生産日までの週数をリードタイムとしてコストを算出しても構わない。
【符号の説明】
【0048】
100、110 生産計画立案装置
101、111 製造コスト指標算出部
102、112 フロアコスト指標算出部
103、113 資材コスト指標算出部
104、114 生産計画算出部
105、116 生産計画出力部
115 生産計画選択部