(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】インク充填装置及びインク充填方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20241126BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B41J2/175 131
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/175 143
B41J2/175 501
(21)【出願番号】P 2021053537
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】高田 淳
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-305863(JP,A)
【文献】特開2008-126444(JP,A)
【文献】特開2001-225480(JP,A)
【文献】特開2017-087482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが収納される可撓性の収納容器と、
前記収納容器に設けられたインクの供給路と、
付勢されて前記供給路を閉止する弁部と、
を備えたインク容器にインクを充填するインク充填装置であって、
前記収納容器が前記供給路を介して外部と連通するように前記収納容器を内部に収納する気密構造の充填室と、
前記充填室の内部を吸引する吸引手段と、
を具備
し、
前記充填室は一対の蓋部を備える固定部をさらに備え、前記一対の蓋部の各分割面には、前記供給路を挟む保持孔が設けられており、前記供給路を前記保持孔に嵌入することで前記収納容器は前記固定部に保持されて前記充填室内に吊り下げられることを特徴とするインク充填装置。
【請求項2】
前記充填室の内部の圧力を測定する圧力測定部と、
インクの物性値と、前記インクが前記供給路から前記収納容器に流入するために必要な前記充填室の内部の圧力との関係を示す制御データを備えており、前記収納容器に収納されたインクの物性値と、前記圧力測定部が検出した前記充填室の内部の圧力と前記制御データに基づいて前記吸引手段を制御する制御部と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載のインク充填装置。
【請求項3】
前記インク充填装置に取り付けられた前記収納容器に充填する前記インクを複数の前記インクの中から指定するインク指定手段を具備することを特徴とする請求項2に記載のインク充填装置。
【請求項4】
インクが収納される可撓性の収納容器と、
前記収納容器に設けられたインクの供給路と、
付勢されて前記供給路を閉止する弁部と、
を備えたインク容器に
、請求項1に記載されたインク充填装置を用いてインクを充填するインク充填方法であって、
前記供給路を前記保持孔に嵌入することで前記収納容器を前記固定部に保持させて前記充填室内に吊り下げ、前記
充填室の内部を前記収納容器の内部に対して負圧とすることにより、前記弁部を開放して前記収納容器の外部から前記供給路を介して前記収納容器の内部にインクを充填することを特徴とするインク充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉止方向に付勢された弁部を有するインクカートリッジにインクを再充填するインク充填装置に係り、特に、弁部を外から押し込む煩雑な操作を行なわなくても、インクを容易に充填することができるインク充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記許文献1には、高生産性のインクジェット印刷機に適したインクカートリッジの発明が開示されている。この発明のインクカートリッジのように、インクジェット印刷機に使用されるインクカートリッジは、一般的にインク容量が多く、またインクの粘度が低い場合が多いため、インク容器としては、インクの供給路が一体構造で設けられた熱可塑性フィルム容器が使用されている。このような構造のインク容器は、一般に「スパウトバッグ」の呼称で知られている。
【0003】
図6は、このような構造のインク容器100の供給路101付近の構造を示す断面図である。このようなインク容器100の製造は、通常、熱可塑性フィルムの袋状の収納容器102にインクを充填した後、収納容器102の開口に供給路101を配置し、収納容器102の開口を供給路101と一体となるように熱溶着によって接合し、収納容器102内にインクを密封することによって行われている。
【0004】
図6(a)に示すように、前述した構造のインク容器100では、一般に供給路101の内部に開閉自在の弁部103が設けられている。この弁部103は、
図6(a)に示すように、付勢手段104により閉方向に付勢されており、インクカートリッジに装着されていない時には供給路101を閉止しているが、
図6(b)に示すように、インクジェット印刷機に装着された際には、図示しない印刷装置側の機構によって内方に押し込まれ、供給路101を開放するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、環境保全や資源保護等の観点から種々の工業製品について再利用(リサイクル)が行われるようになっており、家庭用及び事業所用等の印刷装置(プリンタ)の普及で消費が増大しているインクカートリッジについても、そのインク容器を再利用したいとの要望が社会的に高まっている。例えば、上述したインクカートリッジを再利用する場合には、インクカートリッジのインクを消費した後、空となったインク容器を外箱である外装体から取り出し、このインク容器に同じインクを再充填した後、インク容器を外装体に収納して元のインクカートリッジの形態に戻し、印刷装置に再度装着して使用できるようにしている。
【0007】
ところが、インクカートリッジを再利用する場合のインクの再充填では、袋状の収納容器102とインクの供給路101が既に溶着されているため、収納容器102の開口を開いてインクを充填することはできず、また供給路101には閉止方向に付勢された弁部103が設けられているため、供給路101の外側からインクを再充填することはできない。
【0008】
そこで、
図7に示すように、供給路101の外側から棒状部材110などで弁部103を押し込んでインクの流路を開放し、その状態を維持しつつ供給路101からインクの充填を行う方法も考えられる。しかしながら、この作業は非常に煩雑であり、再充填の作業に熟練と長時間を要するという問題がある。なお、インクの収納容器102は熱可塑性フィル製であるため可撓性であり、剛性がないため、空の収納容器102を、供給路101を上に向けた姿勢で作業台上に自立させることは困難であり、一旦自立させても充填中に収納容器102に座屈などが発生すると、上述した再充填作業を行うことは一層困難になる。
【0009】
そこで、本発明は、従来の技術と、その課題に鑑みてなされたものであり、閉止方向に付勢された弁部を有する供給路からインクを供給するインクカートリッジにインクを再充填するインク充填装置において、弁部を外から押し込む煩雑な操作を行うことなく、インクを容易に充填することができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のインク充填装置は、
インクが収納される可撓性の収納容器と、
前記収納容器に設けられたインクの供給路と、
付勢されて前記供給路を閉止する弁部と、
を備えたインク容器にインクを充填するインク充填装置であって、
前記収納容器が前記供給路を介して外部と連通するように前記収納容器を内部に収納する気密構造の充填室と、
前記充填室の内部を吸引する吸引手段と、
を具備し、
前記充填室は一対の蓋部を備える固定部をさらに備え、前記一対の蓋部の各分割面には、前記供給路を挟む保持孔が設けられており、前記供給路を前記保持孔に嵌入することで前記収納容器は前記固定部に保持されて前記充填室内に吊り下げられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインク充填装置によれば、
吸引手段で充填室を負圧にすれば、付勢された弁部を内方に押し込む操作を行うことなく、弁部は負圧によって内方に引き込まれて供給路が開放されるので、インクは外部から収納容器に流入してインクの充填が容易に行える。すなわち、物理的に弁部を外側から押し込まなくても、負圧により弁部が開いてインクを充填することが出来る。また、可撓性の収納容器は剛性がないため自立できず、充填室の底に立たせた状態でインクを充填すると、座屈して再充填が出来ない場合が考えられる。しかしながら、吊り下げられた状態であれば、剛性のない可撓性の収納容器であっても、充填室内で直立した姿勢を維持することができるため、インクの再充填を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態のインク充填装置によるインク充填の対象となるインク容器の正面図及び側面図である。
【
図2】実施形態のインク充填装置による充填開始前の状態を示す断面図である。
【
図3】実施形態のインク充填装置に設けられたインク容器の固定部を示す斜視図である。
【
図4】実施形態のインク充填装置の機能ブロック図である。
【
図5】実施形態のインク充填装置による充填開始中の状態を示す断面図である。
【
図6】従来のインク容器における供給路等の構造と、弁部による供給路の閉止及び開放を説明するための断面図である。
【
図7】従来のインク容器に対してインクを再充填する従来の手法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について、
図1~
図5を参照して説明する。
実施形態のインク充填装置の構成について
図1~
図4を参照して説明する。
図1は、実施形態のインク充填装置を用いたインク充填方法の適用対象であるインク容器1の正面図及び側面図である。このインク容器1は、図示しない箱型の外装体に収納された状態ではインクカートリッジと呼ばれているが、インクを使い切り、インクを再充填する際には外装体から取り出されて
図1に示す状態となる。すなわち、
図1に示すインク容器1にはインクは殆ど充填されていない。
【0014】
図1に示すように、インク容器1は、熱可塑性フィルムからなる袋状の収納容器2と、収納容器2の開口に設けられて収納容器2の内外を連通させるインク流路となる略円筒形の供給路3を有している。袋状の収納容器2の開口であった部分と、供給路3とは熱溶着されて気密状態で一体化しており、供給路3の内側端部は収納容器2の内部にあり、外側端部は収納容器2の外部にある。従って収納容器2の内部は供給路3を介して外部と連通可能となっている。
【0015】
図2の部分拡大断面図に示すように、このインク容器1の供給路3は、インクの流路4と、流路4の中途に設けられた座部5と、流路4に設けられて座部5に当接することで流路4を閉止する弁部6と、弁部6を閉止方向に付勢して座部5に当接させる付勢手段7を有している。
【0016】
図2は、空のインク容器1にインクを再充填するためのインク充填装置10の断面図である。インク充填装置10は、箱型で気密構造の充填室11を備えている。充填室11の内部には、後述する固定部12により空のインク容器1が吊り下げられた状態で収納されている。また、充填室11の上面側から上方に突出した供給路3の外側端部には、再充填用のインクKを収納した補充容器13が接続されている。
【0017】
図2及び
図3に示すように、充填室11の上部には、収納容器2の供給路3を挟み、収納容器2を充填室11内に吊り下げた状態に保持する機能を備えた固定部12が設けられている。
図3に拡大して詳細を示すように、この固定部12は、充填室11の上部に設けられ、図示しないヒンジで連結されて水平方向に開閉可能な一対の蓋部14,14を本体としている。一対の蓋部14,14はヒンジで連結される代わりに、単に分割可能な構造であってもよい。
図3(c)に示すように、一対の蓋部14,14の各分割面には、収納容器2の供給路3を挟む半円柱孔状の保持孔15が設けられている。各蓋部14は、保持孔15の内周面と、蓋部14の分割面のうち内周面に連続する一部に、一体構造の封止部材16(パッキン等)を備えている。
【0018】
このように、実施形態のインク充填装置10は、充填室11内に収納された収納容器2の供給路3を保持して収納容器2を充填室11内に吊り下げる固定部12を具備している。従って、
図3(a)に示すように、収納容器2の供給路3を固定部12の保持孔15に嵌入した状態で収納容器2を充填室11内に配置し、
図3(b)に示すように一対の蓋部14,14を閉止して供給路3を挟み込めば、
図2に示したように、収納容器2は固定部12に保持されて充填室11内に吊り下げられた状態となる。なお、固定部12の蓋部14と充填室11の上端部との間は気密状態に保たれている。可撓性の収納容器2は剛性がないため自立できず、充填室11の底に立たせた状態でインクを充填すると、座屈して再充填が出来ない場合が考えられる。しかしながら、実施形態のように吊り下げられた状態であれば、剛性のない可撓性の収納容器2であっても、充填室11内で直立した姿勢を維持することができるため、後述する本実施形態によるインクの再充填を円滑に行うことができる。
【0019】
図2に示すように、充填室11には、充填室11の内部の空気を吸引する吸引手段としてのポンプ20が接続されている。また、充填室11には、充填室11の内部の圧力を測定する圧力測定部としての圧力センサ21が設けられている。
【0020】
図4に示すように、実施形態のインク充填装置10は、制御部としてのCPU30を備えている。CPU30には、圧力センサ21が接続されており、圧力センサ21が検出した充填室11の内部の圧力の測定値が入力されるようになっている。また、CPU30には、ポンプ20を駆動するポンプ駆動回路31が接続されており、ポンプ駆動回路31を介してポンプ20を任意に駆動し、充填室11内の空気を吸引して任意の負圧に設定することができるようになっている。また、CPU30には、設定入力部32が接続されている。設定入力部32は、インク充填装置10の操作に必要な各種設定値やデータ等を必要に応じて設定し、入力するための設定入力手段であるとともに、空の収納容器2に充填しようとするインクの物性(例えば粘度等)に適した負圧が充填室11内に生じるように、充填するインクの種類(又は物性)を指定するインク指定手段でもある。また、CPU30は、図示しない記憶部を有しており、この記憶部は、インク充填装置10を制御するために必要なプログラムやデータを記憶しているが、特に充填するインクの物性に適した負圧を充填室11内に発生させるために必要な制御データを記憶している。この制御データは、インクの物性値と、インクが供給路3から収納容器2に流入するために必要な充填室11の内部の圧力(負圧)との関係を示すデータであって、CPU30は、収納容器2に収納するインクの物性値と、圧力センサ21が検出した充填室11の内部の圧力と、制御データに基づいてポンプ駆動回路31を介してポンプ20を制御し、充填室11内に必要な負圧を発生させることができる。
【0021】
実施形態のインク充填装置10の作用について
図2及び
図5を参照して説明する。
図5は、空のインク容器1にインク充填装置10でインクを再充填している途中の状態を示す断面図である。
図2に示す状態では、前述した通り、空のインク容器1が固定部12により吊り下げられ、充填室11内に収納されている。充填室11の上面外側から突出した供給路3の外側端部には、再充填用のインクKを収納した補充容器13が接続されているが、拡大図に示すように、弁部6は付勢手段7の付勢力によって座部5に押し付けられて流路4は塞がれている。従って、補充容器13のインクKは、収納容器2の供給路3の外側端部から弁部6の外側までには達しているが、収納容器2には入っていない。
【0022】
図2の状態において、ユーザが設定入力部32を操作して充填開始の指令を入力する。設定入力部32からの開始信号を受けて、CPU30がポンプ駆動回路31を介してポンプ20の駆動を開始する。充填室11の内部の空気は徐々に排出され、充填室11の内部の圧力は低下していく。そして、収納容器2内の圧力及び補充容器13内の圧力(大気圧)よりも、充填室11の内部の圧力の方が小さい状態、すなわち充填室11の内部の圧力が大気圧よりも低い負圧の状態となる。
【0023】
図5の拡大図中に示すように、収納容器2内及び補充容器13内に対する充填室11の内部の負圧が一定の値を越えたところで、弁部6が付勢手段7の付勢力に抗して下がり、流路4が開放される。そして、
図5に示すように、補充容器13内のインクKが供給路3を経て収納容器2内に流入していき、収納容器2はインクKで満たされて膨らんでいく。この充填工程において、収納容器2は固定部12から吊り下げられた状態にあるため、剛性のない可撓性の収納容器2であっても充填室11内で直立した姿勢を維持することができるため、インクKの流入は円滑である。
【0024】
また、インクKの充填工程では、収納容器2に充填しようとするインクKの種類や粘度等の物性値を設定入力部32から予め入力しておけば、CPU30は、圧力センサ21から得られる充填室11内の圧力値と、記憶部にある制御データ(インクの物性値と、充填に必要な充填室11内の負圧との関係を示すデータ)に基づき、充填室11内の負圧を、当該インクKを収納容器2内に吸い込むために最適なレベルに設定できるため、インクKの充填を最短時間で好適に行なうことができる。なお、インクKの種類や粘度等の物性値は、設定入力部32から入力してもよいが、収納容器2に付されたタグに必要な情報が記憶されているのであれば、インク充填装置10の側に読み取り装置を設けておき、タグから必要な制御情報を読み取るようにしてもよい。
【0025】
インクの物性によっては、充填時に、インクの流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる現象、すなわちキャビテーションが発生する場合がある。キャビテーションは、収納容器2等の破損・劣化を招き、また振動や騒音を発生させる可能性がある。具体的には、キャビテーションは水分が多いインク(水性インク)や、揮発性溶剤等、特定の成分が多いインクで発生し易い。実施形態では、CPU30がポンプ20で充填室11内に負圧を発生させる際に用いる前記制御データには、インクの物性値を示すデータとして粘度のデータが含まれているが、この他、キャビテーションの発生に関連する水分・揮発性溶剤等の含有量に関するデータが含まれていてもよい。具体的には、このようなキャビテーションを発生させやすい成分を多く含むインクほど、ポンプ20の動作を弱くし、充填室11に発生する負圧を弱くする。このような制御データを用いて負圧の発生を制御すれば、インク充填中の収納容器2がキャビテーションの発生で損傷する等の不都合は未然に防止できる。
【0026】
以上のようにしてインクKを再充填した収納容器2は、箱型の外装体に収納してインクカートリッジの形態に戻せば、印刷装置に装着して再利用に供することができる。
【0027】
以上説明したように、実施形態のインク充填装置10を用いた充填方法によれば、収納容器2の供給路3を固定し、かつ供給路3に密着する固定部12の機構により、収納容器2を充填室11内で垂直方向にぶら下げて収納できる。そして、充填室11を密閉した後にポンプ20を動作させて収納容器2の周囲環境を負圧にすれば、供給路3の弁部6が開方向に移動して流路4が開放され、インクKは負圧によって収納容器2内に滞りなく吸い込まれ、空だった収納容器2を速やかにインクKで再充填することができる。
【0028】
以上説明した実施形態では、収納容器2は、充填室11の中で吊り下げられていたが、横置きの充填室11の中で室底の上に載置した状態であってもよい。また、このような横置きの場合、そして前述した実施形態においても、必要であれば、補充容器13を人手又は機械によって加圧し、インクKの収納容器2への流入を促すようにしてもよい。
【0029】
また、以上説明した実施形態では、一つの補充容器13から一つの収納容器2にインクKを充填していたが、充填室を大型化して複数の収納容器2を収容できるようにしてもよい。この場合、この充填室の上面には、個々に開閉可能な複数の気密構造の固定部12を適当な配置で設けておき、各収納容器2の供給路3を、実施形態と同様の態様で各固定部12によって気密状態で固定し、収納容器2内に並べて吊るすように収納する。また、この場合は、インクの収容量が大きい大型の補充容器を一つ用意し、補充容器から導いたインクの供給管を複数の分岐管に分岐させ、充填室に収納された複数の収納容器2から充填室の外に突出している複数の外側端部に、各分岐管を接続する。このような構造であれば、複数の収納容器2に同時にインクを再充填することができ、能率的である。
【0030】
以上説明した実施形態及びその変形例の装置及び方法は、インクを使い切ったインクカートリッジの収納容器2にインクKを再充填するために好適に使用されるものであった。しかしながら、上記装置及び方法は、新規のインクカートリッジを製造するために、新規の収納容器2にインクKを充填するためにも用いることができる。
【0031】
《実施形態の各態様とその効果について》
第1態様のインク充填装置10は、
インクKが収納される可撓性の収納容器2と、
前記収納容器2に設けられたインクKの供給路3と、
付勢されて前記供給路3を閉止する弁部6と、
を備えたインク容器1にインクKを充填するインク充填装置10であって、
前記収納容器2が前記供給路3を介して外部と連通するように前記収納容器2を内部に収納する気密構造の充填室11と、
前記充填室11の内部を吸引する吸引手段(ポンプ20)と、
を具備し、
前記充填室11は一対の蓋部14,14を備える固定部12をさらに備え、前記一対の蓋部14,14の各分割面には、前記供給路3を挟む保持孔15が設けられており、前記供給路3を前記保持孔15に嵌入することで前記収納容器2は前記固定部12に保持されて前記充填室11内に吊り下げられることを特徴としている。
【0032】
第1態様のインク充填装置10によれば、
吸引手段(ポンプ20)で充填室11を負圧にすれば、付勢された弁部6を内方に押し込む操作を行うことなく、弁部6は負圧によって内方に引き込まれて供給路3が開放されるので、インクKは外部から収納容器2に流入してインクKの充填が容易に行える。すなわち、物理的に弁部6を外側から押し込まなくても、負圧により弁部6が開いてインクKを充填することが出来る。また、可撓性の収納容器2は剛性がないため自立できず、充填室11の底に立たせた状態でインクKを充填すると、座屈して再充填が出来ない場合が考えられる。しかしながら、吊り下げられた状態であれば、剛性のない可撓性の収納容器2であっても、充填室11内で直立した姿勢を維持することができるため、インクKの再充填を円滑に行うことができる。
【0033】
第2態様のインク充填装置10は、第1態様のインク充填装置10において、
前記充填室11の内部の圧力を測定する圧力測定部(圧力センサ21)と、
インクKの物性値と、前記インクKが前記供給路3から前記収納容器2に流入するために必要な前記充填室11の内部の圧力との関係を示す制御データを備えており、前記収納容器2に収納されたインクの物性値と、前記圧力測定部(圧力センサ21)が検出した前記充填室11の内部の圧力と前記制御データに基づいて前記吸引手段(ポンプ20)を制御する制御部( CPU30)と、
を具備することを特徴としている。
【0034】
第2態様のインク充填装置10によれば、
充填室11内の圧力を、収納容器2に充填しようとするインクKの粘度等の物性に合わせて、当該インクKを収納容器2内に吸い込むために最適な負圧となるように吸引手段(ポンプ20)を制御できるので、インクKの充填を最短時間で好適に行なうことができる。
【0035】
第3態様のインク充填装置10は、第2態様のインク充填装置10において、
前記インク充填装置10に取り付けられた前記収納容器2に充填する前記インクKを複数の前記インクKの中から指定するインク指定手段(設定入力部32)を具備することを特徴としている。
【0036】
第3態様のインク充填装置10によれば、
インク充填装置10に取り付けた収納容器2に充填しようとする特定のインクKを、複数のインクKの中からインク指定手段(設定入力部32)で指定するだけで、当該特定のインクKの充填を最短時間で好適に行なうことができる。インク指定手段(設定入力部32)としては、インク充填装置10に設けられてインクKの種類等をユーザが入力する入力手段でもよいし、またインクカートリッジに充填されるべきインクKの種類等が書き込まれて収納容器2等に取り付けられた電子素子であるタグと、インク充填装置10に設けられて前記タグの情報を読み取る読み取り手段との組み合わせでもよい。
【0037】
第4態様のインク充填方法は、
インクKが収納される可撓性の収納容器2と、
前記収納容器2に設けられたインクKの供給路3と、
付勢されて前記供給路3を閉止する弁部6と、
を備えたインク容器1に、第1態様のインク充填装置10を用いてインクを充填するインク充填方法であって、
前記供給路3を前記保持孔15に嵌入することで前記収納容器2を前記固定部12に保持させて前記充填室11内に吊り下げ、前記充填室11の内部を前記収納容器2の内部に対して負圧とすることにより、前記弁部6を開放して前記収納容器2の外部から前記供給路3を介して前記収納容器2の内部に
インクKを充填することを特徴としている。
【0038】
第4態様のインク充填方法によれば、
収納容器2の外部の環境を、収納容器2の内部に対して負圧にすれば、付勢された弁部6を機械的に内方に押し込む煩雑な操作を行わなくても、弁部6は負圧によって内方に引き込まれて供給路3が開放されるので、インクKは外部から収納容器2に流入してインクKの充填が円滑かつ容易に行える。また、可撓性の収納容器2は剛性がないため自立できず、充填室11の底に立たせた状態でインクKを充填すると、座屈して再充填が出来ない場合が考えられる。しかしながら、吊り下げられた状態であれば、剛性のない可撓性の収納容器2であっても、充填室11内で直立した姿勢を維持することができるため、インクKの再充填を円滑に行うことができる。
【符号の説明】
【0039】
1…インク容器
2…収納容器
3…供給路
6…弁部
10…インク充填装置
11…充填室
12…固定部
13…補充容器
20…吸引手段としてのポンプ
21…圧力測定部としての圧力センサ
30…制御部としてのCPU
32…インク指定手段としての設定入力部