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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】アンテナフィルム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/38 20060101AFI20241126BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20241126BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01Q1/38
B32B7/025
H05K1/03 630H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021059272
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022155846
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】永岡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】竹安 智宏
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181726(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/175649(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/38
B32B 7/025
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に直交する面方向において、X方向と、前記X方向に直交するY方向を有するアンテナフィルムであって、
支持層と、金属層とを厚み方向一方側に向かって順に備え、
前記支持層は、N個の基材を厚み方向一方側に向かって順に備え、
下記式(1)~下記式(4)を満足する、アンテナフィルム。
N≧2 (1)
εiX≠εiY (2)
|εiX-εiY|<2 (3)
【数1】

式(2)~式(4)において、εiXは、i番目の基材における、アンテナフィルムのX方向の所定の周波数における誘電率を示し、εiYは、i番目の基材における、アンテナフィルムのY方向の前記所定の周波数における誘電率を示す。
【請求項2】
Nが偶数であり、nを自然数とした場合に、
ε(2n-1)Xが、2n-1番目の基材における最大の誘電率を有し、かつ、
ε(2n-1)Yが、2n-1番目の基材における最小の誘電率を有し、かつ、
ε(2n)Xが、2n番目の基材における最小の誘電率を有し、かつ、
ε(2n)Yが、2n番目の基材における最大の誘電率を有するか、または、
ε(2n-1)Xが、2n-1番目の基材における最小の誘電率を有し、かつ、
ε(2n-1)Yが、2n-1番目の基材における最大の誘電率を有し、かつ、
ε(2n)Xが、2n番目の基材における最大の誘電率を有し、かつ、
ε(2n)Yが、2n番目の基材における最小の誘電率を有し、
ε(2n-1)Xと、ε(2n)Xと、ε(2n)Yと、ε(2n-1)Yとが、下記式(5)を満足する、請求項1に記載のアンテナフィルム。
|(ε(2n-1)X+ε(2n)X)-(ε(2n)Y+ε(2n-1)Y)|<0.2 (5)
【請求項3】
前記支持層が、厚み方向一方側に硬化樹脂層を備える、請求項1または2に記載のアンテナフィルム。
【請求項4】
前記支持層と前記金属層の間に、密着層を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のアンテナフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁波を用いた機器の増加により,アンテナの需要が高まっている。
【0003】
このようなアンテナとして、例えば、基材(ポリエチレンテレフタレート)と、基材上に設けられたアンテナ部とを備えるアンテナ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、このアンテナ装置は、マイクロ波に対応する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-109806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、5G通信の発展に伴って、電磁波として、1GHz以上20GHz未満の周波数に代えて、準ミリ波領域(20GHz以上30GHz未満)、および、ミリ波領域(30GHz以上300GHz以下)の周波数を活用することが要求されている。
【0006】
一方、しかし、特許文献1のアンテナ装置で用いる基材などの基材の中には、面方向の異なる方向同士の誘電率が異なる異方性基材がある。
【0007】
基材によっては、1GHz以上20GHz未満の周波数においては、アンテナが発信する電磁波の波長に対し、基材の誘電率異方性が及ぼす影響は小さい一方、準ミリ波領域およびミリ波領域においては、アンテナが発信する電磁波の波長に対し、基材の誘電率異方性が及ぼす影響が大きくなる場合がある。
【0008】
そうすると、準ミリ波領域およびミリ波領域において使用するアンテナにおいては、基材によってはアンテナが発信する電磁波の波長が望んだ設計からズレが生じ、アンテナが目標とする波長の電磁波を発信できなくなるできなくなるという不具合がある。
【0009】
本発明は、所定の周波数領域において、リターンロスのピークシフトを抑制できるアンテナフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明[1]は、厚み方向に直交する面方向において、X方向と、前記X方向に直交するY方向を有するアンテナフィルムであって、支持層と、金属層とを厚み方向一方側に向かって順に備え、前記支持層は、N個の基材を厚み方向一方側に向かって順に備え、下記式(1)~下記式(4)を満足する、アンテナフィルムである。
N≧2 (1)
εiX≠εiY (2)
|εiX-εiY|<2 (3)
【数1】

式(2)~式(4)において、εiXは、i番目の基材における、アンテナフィルムのX方向の所定の周波数における誘電率を示し、εiYは、i番目の基材における、アンテナフィルムのY方向の前記所定の周波数における誘電率を示す。
【0011】
本発明[2]は、Nが偶数であり、nを自然数とした場合に、ε(2n-1)Xが、2n-1番目の基材における最大の誘電率を有し、かつ、ε(2n-1)Yが、2n-1番目の基材における最小の誘電率を有し、かつ、ε(2n)Xが、2n番目の基材における最小の誘電率を有し、かつ、ε(2n)Yが、2n番目の基材における最大の誘電率を有するか、または、ε(2n-1)Xが、2n-1番目の基材における最小の誘電率を有し、かつ、ε(2n-1)Yが、2n-1番目の基材における最大の誘電率を有し、かつ、ε(2n)Xが、2n番目の基材における最大の誘電率を有し、かつ、ε(2n)Yが、2n番目の基材における最小の誘電率を有し、ε(2n-1)Xと、ε(2n)Xと、ε(2n)Yと、ε(2n-1)Yとが、下記式(5)を満足する、上記[1]に記載のアンテナフィルムを含んでいる。
|(ε(2n-1)X+ε(2n)X)-(ε(2n)Y+ε(2n-1)Y)|<0.2 (5)
【0012】
本発明[3]は、前記支持層が、厚み方向一方側に硬化樹脂層を備える、上記[1]または[2]に記載のアンテナフィルムを含んでいる。
【0013】
本発明[4]は、前記支持層と前記金属層の間に、密着層を備える、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のアンテナフィルムを含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアンテナフィルムにおける支持層は、N個の基材を厚み方向一方側に向かって順に備える。i番目の基材において、アンテナフィルムのX方向の所定の周波数における誘電率εiX、および、アンテナフィルムのY方向の所定の周波数における誘電率εiYが、所定の関係を満足し、かつ、各基材のX方向の誘電率の総和と、各基材のY方向の誘電率の総和と差の絶対値が、所定の関係を満足する。これにより、所定の周波数領域において、リターンロスのピークシフトを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明のアンテナフィルムの第1実施形態を示す概略図である。
図2図2は、アンテナフィルムの製造方法の一実施形態を示す概略図である。図2Aは、支持層を準備する第1工程を示す。図2Bは、支持層の厚み方向一方面に、金属層を配置する第2工程を示す。
図3図3は、本発明のアンテナフィルムの第2実施形態を示す概略図である。
図4図4は、本発明のアンテナフィルムの第2実施形態において、Nが2である場合のアンテナフィルムを示す概略図である。
図5図5は、グランド導体層を備えるアンテナフィルムを示す概略図である。
図6図6は、支持層が、硬化樹脂層を備えるアンテナフィルムを示す概略図である。
図7図7は、密着層を備えるアンテナフィルムを示す概略図である。
図8図8は、各実施例および各比較例のリターンロス評価の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<アンテナフィルム>
図1を参照して、本発明のアンテナフィルムの第1実施形態を説明する。
【0017】
図1において、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向)であって、紙面上側が、上側(厚み方向一方側)、紙面下側が、下側(厚み方向他方側)である。また、図1において、紙面左右方向および奥行き方向は、上下方向に直交する面方向である。具体的には、図1において、紙面奥行方向は、X方向(厚み方向と直交する方向、面方向X方向)であり、紙面手前側がX方向一方側、紙面奥側がX方向他方側である。図1において、紙面左右方向は、Y方向(厚み方向およびX方向と直交する方向、面方向Y方向)であり、紙面左側がY方向一方側、紙面右側がY方向他方側である。具体的には、各図の方向矢印に準拠する。
【0018】
アンテナフィルム1は、図1に示すように、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有する。アンテナフィルム1は、厚み方向と直交する面方向に延びる。アンテナフィルム1は、平坦な上面および平坦な下面を有する。
【0019】
アンテナフィルム1は、支持層2と、金属層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える。具体的には、アンテナフィルム1は、支持層2と、支持層2の上面(厚み方向一方面)に配置される金属層3とを備える。
【0020】
アンテナフィルム1の厚みは、例えば、25μm以上、好ましくは、100μm以上、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0021】
<支持層>
支持層2は、アンテナフィルム1の機械強度を確保するための層である。
【0022】
支持層2は、フィルム形状を有する。支持層2は、金属層3の下面に接触するように、金属層3の下面全面に、配置されている。
【0023】
支持層2は、N個の基材Sを厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0024】
Nは、下記式(1)で示される。
N≧2 (1)
【0025】
つまり、支持層2は、2個以上の基材Sを厚み方向一方側に向かって順に備える。図1では、支持層2は、第1基材Sから第N基材Sを厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0026】
基材Sは、フィルム形状を有する。基材Sは、好ましくは、可撓性を有する。
【0027】
基材Sは、厚み方向に直交する面方向において、X´方向と、X´方向に直交するY´方向を有する。
【0028】
また、各基材Sの面方向において、任意の測定軸を0°と設定し、例えば、45°、90°、135°方向の4軸方向で、それぞれ誘電率を測定し、誘電率が最も大きい方向がX´方向であり、X´方向に直交する方向が、Y´方向であると定義できる。一方、誘電率が最も小さい方向がX´方向であり、X´方向に直交する方向が、Y´方向であると定義することもできる。
【0029】
また、各基材Sが一軸延伸である場合には、延伸方向がX´方向であり、X´方向に直交する方向が、Y´方向であると定義することもできる。一方、延伸していない方向がX´方向であり、X´方向直交する方向が、Y´方向であると定義することもできる。
【0030】
各基材SのX´方向は、アンテナフィルム1のX方向およびY方向のうちいずれか一方と対応し、他方と直交する。一方、各基材SのY´方向は、アンテナフィルム1のX方向およびY方向のうちいずれか他方と対応し、一方と直交する。
【0031】
基材Sの材料としては、例えば、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂(アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、および、ポリスチレン樹脂が挙げられる。オレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、および、シクロオレフィンポリマーが挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、および、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、ポリメタクリレートが挙げられる。基材Sの材料としては、好ましくは、ポリエステル樹脂、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0032】
基材Sは、好ましくは、透明性を有する。具体的には、基材Sの全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、例えば、60%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは、85%以上である。
【0033】
基材Sの厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、30μm以上、また、例えば、150μm以下、好ましくは、100μm以下である。
【0034】
そして、基材Sは、所定の周波数における誘電率において、異方性を有する異方性基材である。所定の周波数としては、例えば、1GHz以上20GHz未満の周波数、準ミリ波領域(20GHz以上30GHz未満)、および、ミリ波領域(30GHz以上300GHz以下)の周波数が挙げられる。以下の説明では、所定の周波数が準ミリ波領域(20GHz以上30GHz未満)の周波数、具体的には、所定の周波数が、28GHzである場合について、詳述する。
【0035】
このような場合には、基材Sは、周波数28GHzにおける誘電率において、異方性を有する異方性基材である。詳しくは、各基材Sにおいて、X´方向の周波数28GHzにおける誘電率と、Y´方向の周波数28GHzにおける誘電率とが、相異なる。また、上記したように、各基材SのX´方向およびY´方向とアンテナフィルムのX方向およびアンテナフィルム1のY方向とは、対応または直交する関係にある。そのため、各基材Sは、アンテナフィルムのX方向の誘電率およびアンテナフィルム1のY方向の誘電率についても、異方性を有する。詳しくは、各基材Sにおいて、アンテナフィルム1のX方向の周波数28GHzにおける誘電率と、アンテナフィルム1のY方向の周波数28GHzにおける誘電率とが、相異なる。このような関係(異方性)は、下記式(2)で示される。
εiX≠εiY (2)
【0036】
式(2)において、εiXは、i番目の基材における、X方向の周波数28GHzにおける誘電率を示す。εiYは、i番目の基材における、Y方向の周波数28GHzにおける誘電率を示す。なお、以下の説明では、特に言及しない限り、誘電率は、周波数28GHzにおける誘電率である。
【0037】
上記の誘電率は、基材Sに対する延伸の程度によって、変化する。つまり、基材Sにおいて、X´方向への延伸の程度と、Y´方向への延伸の程度とが異なるため、基材Sに異方性が生じる。例えば、第1基材Sにおいて、X´方向のみに延伸した場合(1軸延伸)には、X´方向の誘電率は、Y´方向の誘電率よりも、大きくなる。
【0038】
誘電率ε1Xは、例えば、2.5以上、好ましくは、3.0以上、また、例えば、4.0以下、好ましくは、3.5以下である。
【0039】
誘電率ε1Yは、誘電率ε1Xより大きく(または小さく)、例えば、2.5以上、好ましくは、3.0以上、また、例えば、4.0以下、好ましくは、3.5以下である。
【0040】
誘電率ε1Xおよび誘電率ε1Yは、例えば、ファブリペロー共振器(キーコム株式会社製)により測定できる。また、後述する実施例で詳述するように、誘電率ε1Xおよび誘電率ε1Yは、ダッソー・システムズ社の CST Studio Suiteを用いて、シミュレーションすることもできる。
【0041】
そして、このアンテナフィルム1では、誘電率ε1Xおよび誘電率ε1Yが、所定の関係を有することによって、複数の基材S全体として、異方性を緩和できる。
【0042】
第1に、各基材Sの誘電率ε1Xと誘電率ε1Yとの差が、所定の関係を有する。具体的には、アンテナフィルム1では、複数の基材S全体として、異方性を緩和するために、各基材Sの誘電率ε1Xと誘電率ε1Yとの差を小さくする。より具体的には、誘電率ε1Xと誘電率ε1Yとの差の絶対値は、2未満である。換言すれば、誘電率εiXおよび誘電率εiYは、下記式(3)を満足する。
|εiX-εiY|<2 (3)
【0043】
誘電率εiXおよび誘電率εiYが、上記式(3)を満足すれば、各基材Sの誘電率ε1Xと誘電率ε1Yとの差を小さくできる。そうすると、複数の基材S全体として、異方性を緩和できる。その結果、アンテナフィルム1は、準ミリ波領域において、リターンロスのピークシフトを抑制できる。
【0044】
また、誘電率εiXおよび誘電率εiYは、好ましくは、下記式(4)、より好ましくは、下記式(5)を満足する。
|εiX-εiY|<1 (4)
|εiX-εiY|<0.6 (5)
【0045】
誘電率εiXおよび誘電率εiYが、上記式(4)または上記式(5)を満足すれば、各基材Sの誘電率ε1Xと誘電率ε1Yとの差を、より一層小さくできる。そうすると、複数の基材S全体として、異方性をより一層緩和できる。その結果、アンテナフィルム1は、準ミリ波領域において、リターンロスのピークシフトを抑制できる。
【0046】
そして、上記式(3)~上記式(5)を満足させるためには、例えば、基材SのX´方向およびY´方向の延伸の程度を調整する。
【0047】
第2に、各基材SのX方向の誘電率の総和と、各基材SのY方向の誘電率の総和と差が、所定の関係を有する。詳しくは、各基材SのX方向の誘電率の総和と、各基材SのY方向の誘電率の総和と差によって、複数の基材S全体としてのX方向の誘電率と、複数の基材S全体としてのY方向の誘電率との差を、見積もることができる。
【0048】
つまり、各基材SのX方向の誘電率の総和と、各基材SのY方向の誘電率の総和と差が、小さければ、複数の基材S全体としてのX方向の誘電率と、複数の基材S全体としてのY方向の誘電率との差が小さくなる。
【0049】
アンテナフィルム1では、複数の基材S全体として、異方性を緩和するために、各基材SのX方向の誘電率の総和と、各基材SのY方向の誘電率の総和と差を、小さくし、複数の基材S全体としてのX方向の誘電率と、複数の基材S全体としてのY方向の誘電率との差を小さくする。
【0050】
具体的には、誘電率εiXおよび誘電率εiYは、下記式(6)を満足する。
【数2】
【0051】
上記式(6)において、各基材SのX方向の誘電率の総和と、各基材SのY方向の誘電率の総和との差の絶対値が、0.2未満である。
【0052】
各基材SのX方向の誘電率の総和と、各基材SのY方向の誘電率の総和が、上記式(6)を満足すれば、複数の基材S全体としてのX方向の誘電率と、複数の基材S全体としてのY方向の誘電率との差を小さくできる。そうすると、複数の基材S全体として、異方性を緩和できる。その結果、アンテナフィルム1は、準ミリ波領域において、リターンロスのピークシフトを抑制できる。
【0053】
また、誘電率εiXおよび誘電率εiYは、好ましくは、下記式(7)、より好ましくは、下記式(8)を満足する。
【数3】

【数4】
【0054】
各基材SのX方向の誘電率の総和と、各基材SのY方向の誘電率の総和とが、上記式(7)または上記式(8)を満足すれば、複数の基材S全体としてのX方向の誘電率と、複数の基材S全体としてのY方向の誘電率との差を、より一層小さくできる。そうすると、複数の基材S全体として、異方性をより一層緩和できる。その結果、アンテナフィルム1は、準ミリ波領域において、リターンロスのピークシフトを抑制できる。
【0055】
そして、上記式(6)~上記式(8)を満足させるため方法として、例えば、Nが偶数である場合には、奇数番目の基材SのX´方向が、アンテナフィルム1のX方向に対応し、かつ、アンテナフィルム1のY方向と直交する一方、偶数番目の基材SのY´方向が、アンテナフィルム1のX方向に対応し、かつ、アンテナフィルム1のY方向と直交するように、各基材Sを配置する。
【0056】
以上より、このアンテナフィルム1では、第1に、各基材Sにおいて、誘電率ε1Xと誘電率ε1Yとの差を小さくし、第2に、各基材SのX方向の誘電率の総和と、各基材SのY方向の誘電率の総和との差を小さくする。
【0057】
これにより、複数の基材S全体として、異方性を緩和できる。その結果、アンテナフィルム1は、準ミリ波領域において、リターンロスのピークシフトを抑制できる。
【0058】
<金属層>
金属層3は、外部から照射された電波を電流に変換し、または、給電された電流を外部に放射する電波に変換する導体層である。
【0059】
金属層3の材料としては、例えば、銅、金、アルミニウム、ニッケル、クロム、これらの合金、これらの酸化物が挙げられる。
【0060】
また、金属層3の材料として、例えば、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、導電性高分子、および、カーボンナノチューブも挙げられる。
【0061】
金属層3の材料としては、好ましくは、銅が挙げられる。
【0062】
金属層3の厚みは、例えば、0.05μm以上、好ましくは、1μm以上、また、例えば、20μm以下、好ましくは、10μm以下である。
【0063】
<アンテナフィルムの製造方法>
図2を参照して、アンテナフィルム1の製造方法の一実施形態を説明する。
【0064】
アンテナフィルム1の製造方法は、支持層2を準備する第1工程と、支持層2の厚み方向一方面に、金属層3を配置する第2工程を備える。
【0065】
<第1工程>
第1工程では、図2Aに示すように、支持層2を準備する。
【0066】
支持層2を準備するには、各基材Sを厚み方向一方側に向かって順に配置する。具体的には、第1基材Sから順に、第N基材Sまで配置する。具体的には、Nが偶数である場合には、奇数番目の基材SのX´方向が、アンテナフィルム1のX方向に対応し、かつ、アンテナフィルム1のY方向と直交する一方、偶数番目の基材SのY´方向が、アンテナフィルム1のX方向に対応し、かつ、アンテナフィルム1のY方向と直交するように、各基材Sを配置する。
【0067】
また、各基材S同士は、公知の接着剤で接着することもできる。
【0068】
これにより、支持層2を準備する。
【0069】
<第2工程>
第2工程では、図2Bに示すように、支持層2の厚み方向一方面に、金属層3を配置する。
【0070】
支持層2の厚み方向一方面に、金属層3を配置する方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、および、めっき法が挙げられる。
【0071】
これにより、支持層2の厚み方向一方面に、金属層3を配置し、アンテナフィルム1を製造する。
【0072】
<第2実施形態(Nが偶数であるアンテナフィルム)>
第2実施形態において、第1実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、第2実施形態は、特記する以外、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第1実施形態、第2実施形態およびこれらの変形例を適宜組み合わせることができる。
【0073】
第2実施形態では、図3に示すように、アンテナフィルム1は、支持層2と、金属層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える。支持層2は、偶数の一例として、6個の基材Sを備える。詳しくは、支持層2は、第1基材Sと、第2基材Sと、第3基材Sと、第4基材Sと、第5基材Sと、第6基材Sとを厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0074】
そして、各基材Sにおいて、奇数番目の基材の誘電率と、偶数番目の基材の誘電率とが所定の関係を有する。つまり、nを自然数とした場合、2n-1(奇数)番目の基材S2n-1の誘電率と、2n(偶数)番目の基材S2nの誘電率とが、所定の関係を有する。換言すれば、第1基材Sと第2基材Sとが所定の関係を有し、かつ、第3基材Sと第4基材Sとが所定の関係を有し、かつ、第5基材Sと第6基材Sとが所定の関係を有する。
【0075】
所定の関係として、具体的には、ε(2n-1)Xが、基材S2n-1における最大の誘電率を有し、かつ、ε(2n-1)Yが、基材S2n-1における最小の誘電率を有し、かつ、ε(2n)Xが、基材S2nにおける最小の誘電率を有し、かつ、ε(2n)Yが、基材S2nにおける最大の誘電率を有する第1の関係、または、ε(2n-1)Xが、基材S2n-1における最小の誘電率を有し、かつ、ε(2n-1)Yが、基材S2n-1における最大の誘電率を有し、かつ、ε(2n)Xが、基材S2nにおける最大の誘電率を有し、かつ、ε(2n)Yが、基材S2nにおける最小の誘電率を有する第2の関係が挙げられる。
【0076】
第1の関係において、2n-1番目の基材S2n-1では、X方向の誘電率が、最大となり、Y方向の誘電率が最小となる。一方、2n番目の基材S2nでは、X方向の誘電率が、最小となり、Y方向の誘電率が最大となる。
【0077】
第1の関係は、例えば、各基材Sにおいて、誘電率が最も大きい方向がX´方向であり、X´方向に直交する方向が、Y´方向である場合において、2n-1(奇数)番目の基材SのX´方向が、アンテナフィルム1のX方向に対応し、かつ、アンテナフィルム1のY方向と直交する一方、2n(偶数)番目の基材SのY´方向が、アンテナフィルム1のX方向に対応し、かつ、アンテナフィルム1のY方向と直交するように、各基材Sを配置することにより、成立する。
【0078】
一方、第1基材Sおよび第2基材Sの組合せにおけるX方向の誘電率およびY方向の誘電率との差は、第1基材SのX方向の誘電率と、第2基材SのX方向の誘電率との和(X方向の和)と、第1基材SのY方向の誘電率と、第2基材SのY方向の誘電率との和(Y方向の和)との差で見積もることができる。
【0079】
そして、X方向の和は、第1基材Sの最大の誘電率と、第2基材Sの最小の誘電率と和であり、また、Y方向の和は、第1基材Sの最小の誘電率と、第2基材Sの最大の誘電率と和である。
【0080】
つまり、X方向の和は、一の最大の誘電率と、他の最小の誘電率と和であり、Y方向の和は、他の最大の誘電率と、一の最小の誘電率との和である。そうすると、X方向の和とY方向の和の差を小さくできる。これにより、第1基材Sおよび第2基材Sの組合せにおいて、X方向およびY方向の誘電率の差を小さくできる。
【0081】
具体的には、ε(2n-1)Xと、ε(2n)Xと、ε(2n)Yと、ε(2n-1)Yとが、下記式(9)を満足する。
|(ε(2n-1)X+ε(2n)X)-(ε(2n)Y+ε(2n-1)Y)|<0.2 (9)
【0082】
なお、第3基材Sと第4基材Sとの組合せ、および、第5基材Sと第6基材Sとの組合せにおいても、同様の関係が成り立つ。
【0083】
これにより、アンテナフィルム1は、準ミリ波領域において、リターンロスのピークシフトを抑制できる。
【0084】
また、第2の関係において、2n-1番目の基材S2n-1では、X方向の誘電率が、最小となり、Y方向の誘電率が最大となる。一方、2n番目の基材S2nでは、X方向の誘電率が、最大となり、Y方向の誘電率が最小となる。
【0085】
第2の関係は、例えば、各基材Sにおいて、誘電率が最も大きい方向がX´方向であり、X´方向に直交する方向が、Y´方向である場合において、2n-1(奇数)番目の基材SのX´方向が、アンテナフィルム1のY方向に対応し、かつ、アンテナフィルム1のX方向と直交する一方、2n(偶数)番目の基材SのY´方向が、アンテナフィルム1のY方向に対応し、かつ、アンテナフィルム1のX方向と直交するように、各基材Sを配置することにより、成立する。
【0086】
一方、上記したように、第1基材Sおよび第2基材Sの組合せにおけるX方向の誘電率およびY方向の誘電率との差は、第1基材SのX方向の誘電率と、第2基材SのX方向の誘電率との和(X方向の和)と、第1基材SのY方向の誘電率と、第2基材SのY方向の誘電率との和(Y方向の和)との差で見積もることができる。
【0087】
そして、X方向の和は、第1基材Sの最小の誘電率と、第2基材Sの最大の誘電率と和であり、また、Y方向の和は、第1基材Sの最大の誘電率と、第2基材Sの最小の誘電率と和である。
【0088】
つまり、X方向の和は、一の最小の誘電率と、他の最大の誘電率と和であり、Y方向の和は、他の最小の誘電率と、一の最大の誘電率との和である。そうすると、X方向の和とY方向の和の差を小さくできる。これにより、第1基材Sおよび第2基材Sの組合せにおいて、X方向およびY方向の誘電率の差を小さくできる。
【0089】
具体的には、ε(2n-1)Xと、ε(2n)Xと、ε(2n)Yと、ε(2n-1)Yとが、上記式(9)を満足する。
【0090】
なお、第3基材Sと第4基材Sとの組合せ、および、第5基材Sと第6基材Sとの組合せにおいても、同様の関係が成り立つ。
【0091】
これにより、アンテナフィルム1は、準ミリ波領域において、リターンロスのピークシフトを抑制できる。
【0092】
以上により、第2実施形態では、2n-1番目の基材Sの誘電率と、2n番目の基材Sの誘電率とが、所定の関係を有することにより、2n-1番目の基材Sおよび2n番目の基材Sの組合せにおいて、X方向およびY方向の誘電率の差を小さくできる。その結果、複数の基材S全体として、異方性を緩和できる。
【0093】
とりわけ、第2実施形態において、Nが2である場合には、図4に示すように、アンテナフィルム1は、支持層2と、金属層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える。支持層2は、第1基材Sと、第2基材Sとを厚み方向一方側に向かって順に備える。つまり、支持層2は、2個の基材Sを備える。
【0094】
このような場合には、第1基材Sおよび第2基材Sを、同一基材Sから切り出し、例えば、第1基材SのX´方向と第2基材SのX´方向とが、互いに直交するように、第1基材Sおよび第2基材Sを配置する。これにより、上記第1の関係または上記第2の関係を満足し、かつ、上記式(9)を満足する。
【0095】
<作用効果>
本発明のアンテナフィルムにおける支持層2は、N個の基材Sを厚み方向一方側に向かって順に備える。そして、i番目の基材において、アンテナフィルムのX方向の周波数28GHzにおける誘電率εiX、および、アンテナフィルムのY方向の周波数28GHzにおける誘電率εiYが、上記式(2)を満足し、かつ、各基材のX方向の誘電率の総和と、各基材のY方向の誘電率の総和と差の絶対値が、上記式(6)を満足する。これにより、準ミリ波領域において、リターンロスのピークシフトを抑制できる。
【0096】
そして、アンテナフィルム1の使用時には、必要により、金属層3を公知の方法により、パターン化する。また、図5に示すように、支持層2の厚み方向他方面に、グランド導体層10を配置する。このような場合には、アンテナフィルム1は、グランド導体層10と、支持層2と、金属層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える。グランド導体層10は、例えば、銅から形成されている。
【0097】
<変形例>
変形例において、第1実施形態および第2実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、第1実施形態および第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第1実施形態、第2実施形態およびこれらの変形例を適宜組み合わせることができる。
【0098】
第2実施形態では、2n-1番目の基材S2n-1および2n番目の基材Sの組合せにおいて、X方向およびY方向の誘電率の差を小さくし、その結果、複数の基材S全体として、異方性を緩和する。一方、複数の基材S全体として、異方性を緩和できれば、X方向およびY方向の誘電率の差を小さくする基材Sの組合せは、限定されない。
【0099】
例えば、支持層2が、第1基材S、第2基材S・・・第t基材S、第(t+1)基材St+1・・・第N基材Sを備える場合において、第1基材S、第2基材S・・・第t基材Sの組合せにおいて、基材SのX´方向が、アンテナフィルム1のX方向に対応し、かつ、アンテナフィルム1のY方向と直交する一方、第(t+1)基材St+1・・・第N基材Sの組合せにおいて、基材SのY´方向が、アンテナフィルム1のX方向に対応し、かつ、アンテナフィルム1のY方向と直交するように、各基材Sを配置することにより、アンテナフィルム1のX方向およびY方向の誘電率の差を小さくできる。その結果、複数の基材S全体として、異方性を緩和することもできる。
【0100】
また、上記した説明では、各基材Sの面方向において、任意の測定軸を0°と設定し、例えば、45°、90°、135°方向の4軸方向で、それぞれ誘電率を測定し、各基材SのX´方向およびY´方向を定義した。一方、誘電率を測定する方向(軸)は、特に限定されず、目的および用途に応じて、360°を任意の数で分割した軸において、誘電率を測定し、各基材SのX´方向およびY´方向を定義することもできる。
【0101】
また、図6に示すように、支持層2は、厚み方向一方側に硬化樹脂層4を備えることもできる。
【0102】
硬化樹脂層4は、フィルム形状を有する。硬化樹脂層4は、第N基材Sの上面全面に、第N基材Sの上面に接触するように、配置されている。
【0103】
硬化樹脂層4としては、例えば、ハードコート層が挙げられる。
【0104】
このような場合には、支持層2は、複数の基材Sと、ハードコート層とを、厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0105】
ハードコート層は、アンテナフィルム1に擦り傷を生じ難くするための擦傷保護層である。
【0106】
ハードコート層の材料は、例えば、ハードコート組成物である。ハードコート組成物としては、例えば、特開2016-179686号公報に記載の混合物などが挙げられる。混合物は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂(バインダー樹脂)を含有する。
【0107】
ハードコート層の厚みは、例えば、0.1μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、5μm以下である。
【0108】
また、図7に示すように、支持層2と金属層3の間に、密着層5を備えることもできる。このような場合には、アンテナフィルム1は、支持層2と、密着層5と、金属層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0109】
密着層5は、フィルム形状を有する。密着層5は、支持層2の上面全面に、支持層2の上面に接触するように、配置されている。
【0110】
密着層5は、支持層2と、金属層3との間の密着力を確保するための層である。
【0111】
密着層5の材料としては、例えば、金属が挙げられる。金属としては、例えば、インジウム、シリコン、ニッケル、クロム、アルミニウム、錫、金、銀、白金、亜鉛、チタン、タングステン、ジルコニウム、および、パラジウムが挙げられる。また、密着層5の材料としては、上記金属の2種類以上の合金、および、上記金属の酸化物も挙げられる。
【0112】
密着層5の厚みは、支持層2と、金属層3との間の密着力の確保の観点から、例えば、1nm以上、また、例えば、10nm以下である。
【0113】
また、アンテナフィルム1は、硬化樹脂層4および密着層5の両方を備えることもできる。
【0114】
また、第1実施形態および第2実施形態において、支持層2は、N個の基材Sを厚み方向一方側に向かって順に積層されているが、各基材Sの間に他の層を介在させることもできる。
【0115】
他の層としては、誘電体、例えば、上記した硬化樹脂層4、等方性基材、および、粘着剤層が挙げられる。
【0116】
等方性基材は、アンテナフィルム1のX方向の周波数28GHzにおける誘電率と、アンテナフィルム1のY方向の周波数28GHzにおける誘電率とが、同一である基材である。また、等方性基材は、例えば、上記した基材S(異方性基材)と同様の材料から形成される。
【0117】
上記した説明では、所定の周波数が、準ミリ波領域(20GHz以上30GHz未満)の周波数、具体的には、所定の周波数が、28GHzである場合について、詳述したが、所定の周波数は、これに限定されない。所定の周波数は、例えば、1GHz以上20GH未満の周波数、または、ミリ波領域(30GHz以上300GHz以下)の周波数でもよい。これにより、上記の周波数領域において、リターンロスのピークシフトを抑制できる。
好ましくは、5G通信に対応する観点から、所定の周波数は、準ミリ波領域の周波数またはミリ波領域の周波数である。
【実施例
【0118】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0119】
1.アンテナフィルムの製造
実施例1~実施例4、および、比較例2
【0120】
<第1工程>
第1基材および第2基材として、厚み50μmのPETフィルム(異方性基材)を準備した。
【0121】
第1基材および第2基材において、任意の測定軸を0°と設定し、45°、90°、135°方向の4軸方向で、それぞれ誘電率を測定し、誘電率が最も大きい方向がX´方向であり、X´方向に直交する方向が、Y´方向であると定義した。
【0122】
そして、第1基材SのX´方向と第2基材のX´方向とが、互いに直交するように、かつ、アンテナフィルムのX方向と、第1基材のX´方向および第2基材のY´方向が対応するように、第1基材の厚み方向一方面に、第2基材を配置し、支持層を準備した。なお、第1基材と第2基材とは公知の接着剤で接着した。なお、第1基材および第2基材の誘電率を、表1に示す。
【0123】
<第2工程>
スパッタリング法により、支持層の厚み方向一方面に、銅からなる金属層を配置(形成)した。次いで、金属層を所定の形状(パッチ寸法3.07mm×3.07mm)にパターン化した。また、支持層の厚み方向他方側に、銅からなるグランド導体層を配置した。これにより、グランド導体層と、支持層(第1基材および第2基材)と、金属層とを厚み方向一方側に向かって順に備えるアンテナフィルムを得た。
【0124】
比較例1および参考例1
実施例1と同様の手順で、アンテナフィルムを得た。但し、第1基材の厚み方向一方面に、第2基材を配置しなかった。つまり、比較例2および参考例1において、支持層は、第1基材からなる。また、第1基材の誘電率を、表1に示す。
【0125】
また、参考例1では、第1基材として、アンテナフィルムのX方向の周波数28GHzにおける誘電率と、アンテナフィルムのY方向の周波数28GHzにおける誘電率とが、同一である基材であり、厚み100μmのPETフィルム(等方性基材)を用いた。
【0126】
また、比較例1および参考例1では、アンテナフィルムのX方向と、第1基材のX´方向が対応するように配置した。
【0127】
2.リターンロス評価
各実施例、各比較例および参考例のアンテナフィルムに対して、ダッソー・システムズ社の CST Studio Suiteを用いて、電気特性のシミュレーションを実施した。
【0128】
具体的には、中心周波数が28GHzとなるように設計したパッチアンテナに給電線を通して給電した場合のリターンロス測定を実施した場合の、中心周波数をシミュレーションした。その結果を表1および図8に示す。
【0129】
3.考察
下記式(10)および下記式(11)を満足する実施例1~実施例4は、中心周波数を28GHz±0.3に設定することができた。とりわけ、実施例1~実施例3は、中心周波数を28GHzに設定することができた。つまり、参考例1の等方性基材と同様の性能を示したとわかる。このことから、下記式(10)および下記式(11)を満足すれば、リターンロスのピークシフトを抑制できるとわかる。
|εiX-εiY|<2 (9)
【数5】
【0130】
一方、上記式(11)を満足しない比較例1は、中心周波数が、28.7GHzであった。また、上記式(10)を満足しない比較例2は、中心周波数が、29.3GHzであった。このことから、上記式(10)および上記式(11)のいずれかを満足しなければ、リターンロスのピークシフトを抑制できないとわかる。
【0131】
【表1】
【符号の説明】
【0132】
1 アンテナフィルム
2 支持層
3 金属層
4 硬化樹脂層
5 密着層
S 基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8