(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】心電信号計測ベルト
(51)【国際特許分類】
A61B 5/256 20210101AFI20241126BHJP
A61B 5/28 20210101ALI20241126BHJP
【FI】
A61B5/256 210
A61B5/28
(21)【出願番号】P 2021064281
(22)【出願日】2021-04-05
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】日野 吉晴
(72)【発明者】
【氏名】舞田 剛
(72)【発明者】
【氏名】吉本 慎之介
(72)【発明者】
【氏名】石橋 和馬
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-158709(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0049515(US,A1)
【文献】特開2019-088438(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107137076(CN,A)
【文献】特開2015-77226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538、5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸周りに装着されるベルト本体(1)と、ベルト本体(1)の肌密着面側に設けられる複数個の心電電極(36・
37・38)とを備える心電信号計測ベルトであって、
ベルト本体(1)は、左側の第1ベルト(4L)と、右側の第2ベルト(4R)と、第1ベルト(4L)の右端に固定され、第2ベルト(4R)の左端に設けられたベルト環(27)に通される第1締付ベルト(5)と、第2ベルト(4R)の左端に固定され、第1ベルト(4L)の右端に設けられたベルト環(14)に通される第2締付ベルト(6)と、第1ベルト(4L)の表面側に設けられた第1面ファスナー(7)と、第2ベルト(4R)の肌密着面側に設けられて第1面ファスナー(7)に止着可能に構成された第2面ファスナー(8)と、第2ベルト(4R)の表面側に設けられた第3面ファスナー(26)と、第1締付ベルト(5)の肌密着面側に設けられて第1面ファスナー(7)に止着可能に構成された第4面ファスナー(30)と、第2締付ベルト(6)の肌密着面側に設けられて第3面ファスナー(26)に止着可能に構成された第5面ファスナー(31)とを備え、
複数個の心電電極(36・37・38)は、第1ベルト(4L)に左右方向に並設されており、
第1ベルト(4L)に、ベルト本体(1)を胸回りに装着したときに、各心電電極(36・37・38)を適正な身体部位に配置し装着するための位置決め基準となる位置指標(50)が設けられており、
位置指標(50)は、ベルト本体(1)の長手方向線と直交する帯状の縦指標体(51)で形成されており、
縦指標体(51)が身体のみぞおちを通る縦体幹軸(P)と合致する状態で、第1ベルト(4L)を胸周りに配し、第2ベルト(4R)の第2面ファスナー(8)を第1ベルト(4L)の第1面ファスナー(7)に止着して、これら第1ベルト(4L)と第2ベルト(4R)とを胸周りに仮止めし、次いで第1締付ベルト(5)と第2締付ベルト(6)を体の前側に引っ張った状態で、第1締付ベルト(5)の第4面ファスナー(30)を第1ベルト(4L)の第1面ファスナー(7)に止着するとともに、第2締付ベルト(6)の第5面ファスナー(31)を第2ベルト(4R)の第3面ファスナー(26)に止着することで、第1ベルト(4L)と第2ベルト(4R)とを互いに接近させて両ベルト(4L・4R)で胸周りを締め付けるとともに、心電電極(36・37・38)が適正な身体部位に配置される状態でベルト本体(1)を胸周りに装着させることができるように構成されていることを特徴とする心電信号計測ベルト。
【請求項2】
心電電極は、第1ベルト(4L)の左側に配されて、アンプの正入力信号を出力する第1心電電極(36)と、第1心電電極(36)よりも右側に配されて、アンプ入力の同相モード信号を反転出力するRLD電極となる第2心電電極(37)と、第2心電電極(37)よりも右側に配されて、アンプの負入力信号を出力する第3心電電極(38)とからなり、
第1ベルト(4L)の第2心電電極(37)と第3心電電極(38)の間に、位置指標(50)が設けられている請求項1に記載の心電信号計測ベルト。
【請求項3】
位置指標(50)が、第1ベルト(4L)の長手方向線と平行な横指標体(55)と、第1ベルト(4L)の長手方向線と直交する帯状の縦指標体(51)とで十文字状に形成されている請求項
1に記載の心電信号計測ベルト。
【請求項4】
縦指標体(51)と横指標体(55)に、各指標体(51・55)の長手方向と平行な中心表示(52・56)が線状に形成されている請求
項3に記載の心電信号計測ベルト
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓の拍動に伴う心電信号を計測する心電信号計測ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の計測ベルトは例えば特許文献1に公知である。特許文献1の心電信号計測ベルト(生体センサベルト)は、胸周りに装着されるセンサベルトと、センサベルトの肌接触面に設けられる3個の心電電極と、電流電極および電圧電極などで構成される。3個の心電電極の一つは、共通電極(設置電極)であって、ユーザーの背中に配置され、残る2個の心電電極は胸部左右に配置されている。
【0003】
同様の計測ベルトは例えば特許文献2にも開示されている。特許文献2の心電信号計測ベルト(ウエアラブル電極)は、胸周りに装着されるベースバンドと、片方の肩に斜めに掛渡される斜めバンド部とを備えており、肌面と接触するベースバンドの内面の左右と、斜めバンド部の内面の合計3個所に電極が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-253610号公報
【文献】特開2015-77226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の生体センサベルトによれば、使用者自身が生体センサベルトを胸周りに装着することで、心電電極で心臓の拍動に伴う心電信号を計測できる。また、電流電極および電圧電極から出力される電流信号および電圧信号から、使用者の体脂肪率の目安となるインピーダンスを測定できる。しかし、使用者自身が生体センサベルトを胸周りに装着するので、心電電極が最適な位置に配置されていない状態のままで、心電信号を計測していることが起こり得る。より具体的には、例えば心電電極が最適な位置から左右方向や上下方向へ位置ずれした状態や、最適な位置から斜め方向へ位置ずれした状態のままで心電信号を計測しているおそれがある。このように、心電電極の装着位置が不適切であると、心電信号を安定して計測できないため、心臓の拍動状況を正しく評価できない。
【0006】
その点、特許文献2のウエアラブル電極では、斜めバンド部の高さを予め調整しておくことで、ベースバンドを適正な高さ位置に装着して、電極の配置高さを適正化できる。しかし、ベースバンドを適正な高さ位置に装着できたとしても、電極の装着位置が左右方向へ位置ずれしていることがあり、特許文献1の生体センサベルトと同様に、心臓の拍動状況を正しく評価できない点に改善の余地があった。
【0007】
本発明の目的は、心電電極を備えたベルト本体を胸周りに正しく装着して、心電電極を適正な身体部位に配置でき、心臓の拍動状況を正しく評価できる心電信号計測ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、胸周りに装着されるベルト本体1と、ベルト本体1の肌密着面側に設けられる複数個の心電電極36・37・38とを備える心電信号計測ベルトを対象とする。ベルト本体1は、左側の第1ベルト4Lと、右側の第2ベルト4Rと、第1ベルト4Lの右端に固定され、第2ベルト4Rの左端に設けられたベルト環27に通される第1締付ベルト5と、第2ベルト4Rの左端に固定され、第1ベルト4Lの右端に設けられたベルト環14に通される第2締付ベルト6と、第1ベルト4Lの表面側に設けられた第1面ファスナー7と、第2ベルト4Rの肌密着面側に設けられて第1面ファスナー7に止着可能に構成された第2面ファスナー8と、第2ベルト4Rの表面側に設けられた第3面ファスナー26と、第1締付ベルト5の肌密着面側に設けられて第1面ファスナー7に止着可能に構成された第4面ファスナー30と、第2締付ベルト6の肌密着面側に設けられて第3面ファスナー26に止着可能に構成された第5面ファスナー31とを備える。複数個の心電電極36・37・38は、第1ベルト4Lに左右方向に並設されている。第1ベルト4Lに、ベルト本体1を胸回りに装着したときに、各心電電極36・37・38を適正な身体部位に配置し装着するための位置決め基準となる位置指標50が設けられている。位置指標50は、ベルト本体1の長手方向線と直交する帯状の縦指標体51で形成されている。そして、縦指標体51が身体のみぞおちを通る縦体幹軸Pと合致する状態で、第1ベルト4Lを胸周りに配し、第2ベルト4Rの第2面ファスナー8を第1ベルト4Lの第1面ファスナー7に止着して、これら第1ベルト4Lと第2ベルト4Rとを胸周りに仮止めし、次いで第1締付ベルト5と第2締付ベルト6を体の前側に引っ張った状態で、第1締付ベルト5の第4面ファスナー30を第1ベルト4Lの第1面ファスナー7に止着するとともに、第2締付ベルト6の第5面ファスナー31を第2ベルト4Rの第3面ファスナー26に止着することで、第1ベルト4Lと第2ベルト4Rとを互いに接近させて両ベルト4L・4Rで胸周りを締め付けるとともに、心電電極36・37・38が適正な身体部位に配置される状態でベルト本体1を胸周りに装着させることができるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
心電電極は、第1ベルト4Lの左側に配されて、アンプの正入力信号を出力する第1心電電極36と、第1心電電極36よりも右側に配されて、アンプ入力の同相モード信号を反転出力するRLD電極となる第2心電電極37と、第2心電電極37よりも右側に配されて、アンプの負入力信号を出力する第3心電電極38とからなる。第1ベルト4Lの第2心電電極37と第3心電電極38の間に、位置指標50が設けられている。
【0010】
位置指標50は、第1ベルト4Lの長手方向線と平行な横指標体55と、第1ベルト4Lの長手方向線と直交する帯状の縦指標体51とで十文字状に形成されている。
【0011】
縦指標体51と横指標体55に、各指標体51・55の長手方向と平行な中心表示52・56が線状に形成されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明のように、ベルト本体1に複数個の心電電極36・38が設けられている心電信号計測ベルトにおいて、ベルト本体1に位置指標50が設けられていると、ベルト本体1を胸周りに装着する際に、位置指標50を位置基準にしてベルト本体1を装着することで、心電電極36・38を適正な身体部位にあてがうことができる。したがって本発明によれば、使用者が心電信号計測ベルトを使用する際に、より容易にベルト本体1を胸周りに正しく装着することが可能となる。また、本発明の心電信号計測ベルトを用いれば、心臓の拍動状況をより正しく評価することができる。
【0022】
ベルト本体1の肌密着面側に第1から第3の3個の心電電極36・37・38が設けられていると、ベルト本体1を胸周りに装着する際に、位置指標50を位置基準にしてベルト本体1を装着することで、これら3個の心電電極36・37・38を適正な身体部位にあてがうことができる。したがって、使用者が日常的に心電信号計測ベルトを使用する際に、ベルト本体1を胸周りに正しく装着して、心臓の拍動状況を正しく評価できる。
【0023】
心電電極は、みぞおちを通る縦体幹軸Pの左右に隣接配置される第2心電電極37および第3心電電極38と、第2心電電極37の隣接位置であって、縦体幹軸Pから最も離れた位置に配置される第1心電電極36からなり、位置指標50が心電電極36・37・38に隣接するベルト本体1の肌密着面1a側に形成されている構成を採ることができる。これによれば、心電電極36・37・38と位置指標50の両者の位置を同時に確認しながらベルト本体1を胸周りに装着することができるので、各心電電極36~38を胸周りの正しい位置にあてがって、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握をより正確に行うことができる。
【0024】
位置指標50が、ベルト本体1の長手方向線と平行な帯状の横指標体55で形成されていると、横指標体55がみぞおちの中央を通る胸周り線上に位置する状態で、ベルト本体1を胸周りに装着することで、各心電電極36~38の装着高さを適正なものとすることができる。したがって、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握を正確に行うことができる。
【0025】
位置指標50が、ベルト本体1の長手方向線と直交する帯状の縦指標体51で形成されていると、縦指標体51がみぞおちの中央を通る縦体幹軸P上に位置する状態で、ベルト本体1を胸周りに装着することで、各心電電極36~38の胸周りの装着位置を適正なものとすることができる。したがって、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握を正確に行うことができる。
【0026】
位置指標50が、横指標体55と縦指標体51で十文字状に形成されていると、横指標体55でベルト本体1の装着高さを位置決めし、さらに縦指標体51でベルト本体1の胸周りの装着位置を位置決めできる。したがって、位置指標50が横指標体55のみ、または縦指標体51のみで構成されている場合に比べて、ベルト本体1を胸周りに正しく装着して、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握をさらに的確に行うことができる。
【0027】
位置指標50が、ベルト本体1の形成材とは別の形成材で形成されていると、見た目の違いや触感の違いなどで位置指標50とベルト本体1を明確に識別できるので、位置指標50を位置基準とするベルト本体1の胸周りへの装着を的確にかつ簡便に行うことができる。
【0028】
ベルト本体1の肌密着面1aの呈色状態と、位置指標50の呈色状態が異なるものとされていると、位置指標50をさらに確実に識別できるので、位置指標50を位置基準とするベルト本体1の胸周りへの装着をさらに的確にかつ簡便に行うことができる。
【0029】
縦指標体51または横指標体55に、線状の中心表示52・56が設けられていると、中心表示52・56を位置基準にしてベルト本体1を装着することで、ベルト本体1をさらに正確に位置決めした状態で胸周りに装着することができるので、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握をさらに的確に行うことができる。
【0030】
ベルト本体1に設けた電極収容部11に、各心電電極36~38を収容し、電極収容部11の肌密着面側に位置指標50が形成されていると、各心電電極36・37・38と位置指標50の両者の位置を同時に確認しながらベルト本体1を胸周りに装着することができるので、各心電電極36~38を胸周りの正しい位置にあてがって、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握をより正確に行うことができる。
【0031】
位置指標50が、第2心電電極37と第3心電電極38の間に形成されていると、第2心電電極37および第3心電電極38と、位置指標50の3者を同時に目視しながらベルト本体1を胸周りに装着することができるので、各心電電極36~38を胸周りの正しい位置にあてがって、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握をさらに正確に行うことができる。
【0032】
位置指標50が、電極収容部11を除くベルト本体1の肌密着面1a側に形成されていると、同指標50が乳首や脇の下などの身体の特定部位に位置する状態で、ベルト本体1を胸周りに装着することで、各心電電極36~38を胸周りの正しい位置にあてがうことができる。したがって、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握を正確に行うことができる。
【0033】
位置指標50が、電極収容部11に隣接して分離配置されていると、ベルト本体1を胸周りに装着した状態において、位置指標50を覆うベルト本体1が大きく膨出するのを防止できる。これによれば、着こんだ衣服がいびつに膨らむことを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る心電信号計測ベルトの背面図である。
【
図2】心電信号計測ベルトを胸周りに装着した状態を示す正面図である。
【
図3】心電信号計測ベルトを肌密着面側から見た背面図である。
【
図4】心電信号計測ベルトを前面側から見た正面図である。
【
図5】第1ベルトを肌密着面側から見た背面図である。
【
図8】心電電極および制御ユニットを示すブロック図である。
【
図9】心電信号計測システムの概略を示す概念図である。
【
図11】胸周りに装着した心電信号計測ベルトの概略平面図である。
【
図12】本発明の第
1参考例に係る心電信号計測ベルトの背面図である。
【
図13】本発明の第
2実施形態に係る心電信号計測ベルトの背面図である。
【
図14】本発明の第
3実施形態に係る心電信号計測ベルトの背面図である。
【
図15】本発明の第
2参考例に係る心電信号計測ベルトの正面図である。
【
図16】本発明の第
3参考例に係る心電信号計測ベルトの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1実施形態)
図1から
図11に本発明に係る心電信号計測ベルトの第1実施形態を示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、
図1および
図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
図2ないし
図4において心電信号計測ベルトは、胸周りに装着されるベルト本体1と、ベルト本体1の肌密着面1a側に配置される電極ユニット2と、ベルト本体1の表面側に設けられる制御ユニット3などで構成される。ベルト本体1は、
図3に向かって左側の第1ベルト4Lと、右側の第2ベルト4Rと、各ベルト4L・4Rの隣接端に連結される一対の締付ベルト5・6と、第1ベルト4Lの表面側、および第2ベルト4Rの肌密着面側に設けられる一対の面ファスナー7・8などで構成される。
【0036】
第1ベルト4Lは、ダブルラッセル生地に代表される通気性に富むメッシュ素材で形成されており、
図5に示すように肌密着面側に電極ユニット2を収容する電極収容部11と、上下一対の市販の滑り止めテープ12が配置され、表面側に制御ユニット3を収容するポケット13と、ループ状の面ファスナー7が設けられている。また、第2ベルト4Rに隣接するベルト端部の下側と、表面側の上下中央の2か所には、矩形状のベルト環14・15が固定されている。電極収容部11は、非伸縮性のメッシュ素材で形成されるポケット本体16と、ポケット本体16の肌密着面側の3個所に開口される電極窓17と、電極窓17を覆う電極カバー18と、ポケット本体16の上開口の内面2か所に固定されるフラップ19などで構成されている。電極カバー18はメッシュ素材で形成されている。電極窓17の上下にはループ状の面ファスナー20が、電極カバー18の上下にはフック状の面ファスナー21がそれぞれ設けられている。フラップ19の遊端にはフック状の面ファスナー19aが設けられている。
図5において符号22はハトメである。ポケット13の内面上部と対向する第1ベルト4Lには、ポケット13を止着する面ファスナー13aが設けられている。
【0037】
第2ベルト4Rは第1ベルト4Lと同様のメッシュ素材で形成されており、
図3に示すように肌密着面側に上下一対の市販品の滑り止めテープ25と、フック状の面ファスナー8とが設けられ、表面全体にループ状の面ファスナー26が設けられている。また、第1ベルト4Lに隣接するベルト端部の上側と、表面側の上下中央の2か所には、矩形状のベルト環27・28が固定されている。締付ベルト
5の遊端の表面にはループ状の面ファスナー29が設けられている。第2ベルト4Rの左右長さは、第1ベルト4Lの左右長さに比べて小さく設定されている。第1ベルト4Lと第2ベルト4Rは、締付ベルト5・6を介して連結されている。詳しくは、締付ベルト5の右半は輪奈状に形成されており(
図10参照)、この輪奈部分が第1ベルト4Lの表面側のベルト環15と、第2ベルト4Rのベルト端部のベルト環27に通されている。同様に、締付ベルト6の左半は輪奈状に形成されており、この輪奈部分が第2ベルト4Rの表面側のベルト環28と、第1ベルト4Lのベルト端部のベルト環14に通されている。したがって、各締付ベルト5・6の輪奈部分の周長の範囲内で、ベルト本体1の全長寸法を加減できる。また、各締付ベルト5・6を胸周り前方へ引っ張ることにより、第1ベルト4Lと第2ベルト4Rを互いに接近させて締め付けることができる。
【0038】
図5に示すように電極ユニット2は、左右に長い発泡ウレタン製のベースマット34と、ベースマット34の3個所に間隔をあけて固定される四角形状の発泡ウレタン製の電極マット35と、各電極マット35の肌密着面側に固定される第1~第3の心電電極36・37・38と、各心電電極36・37・38と制御ユニット3を接続する信号リード39とで構成されている。3個の電極マット35の間のベースマット34には、電極ユニット2を胸周りに沿って曲がりやすくするための上凹み状の切欠部40が形成されている。各心電電極36・37・38は、耐食性に優れたチタン製またはステンレス製の薄板、あるいは可撓性に優れたフレキシブル基板で形成されている。3個の心電電極36・37・38のうち、左側の第1心電電極36はアンプの正入力信号を出力し、右側の第3心電電極38はアンプの負入力信号を出力する電極からなり、中央の第2心電電極37はアンプ入力の同相モード信号を反転出力するRLD電極からなる。第1~第3の心電電極36・37・38は容量結合型電極として構成されている。そのため、各電極36・37・38は、肌面に直接接触させることはもちろん、衣服を介して肌面に接触させることも可能である。
【0039】
図6に示すように電極ユニット2は、ポケット本体16と第1ベルト4Lの間に差し込み装填されて、面ファスナー7に止着されるフラップ19で抜け外れ不能に保持される。この状態の各心電電極36・37・38は、電極マット35の厚み相当分だけ電極窓17から突出するが、電極窓17に止着した電極カバー18で肌密着面が覆われる。制御ユニット3は、
図7に示すように表面側のポケット13の内部に装着されて、ポケット13の開口上縁を面ファスナー13aに止着することで、抜け外れ不能に保持される。信号リード39は、ハトメ22を介して第1ベルト4Lの表面側へ導出されたのち、制御ユニット3に接続される。
【0040】
図8に示すように、制御ユニット3には電源となる電池(2次電池)42と、回路基板43とが設けられており、回路基板43には各心電電極36・37・38から出力された信号を処理する信号処理部44と、信号処理部44で処理された信号を発信する無線通信部45とが設けられている。図示していないが、電池42および回路基板43は四角形状のケースの内部に収容されており、ケースの外面には、電源スイッチ、充電用コネクター、および信号リード39用のコネクターなどが設けられている。心電信号計測ベルトを含む心電信号計測システムの概略を
図9に示す。心電信号計測ベルトの無線通信部45から発信された信号は、スマートフォン46とインターネット回線47を介してサーバー48およびパーソナルコンピューター49へ送られ、予め蓄積してある心電信号と比較されて心臓の拍動状況が評価される。評価結果は、インターネット回線47を介してスマートフォン46に送信される。
【0041】
上記の心電信号計測ベルトにおいて、ベルト本体1を胸周りに正しく装着して、各心電電極36・37・38を適正な身体部位に配置し装着するために、ポケット本体16の肌密着面側であって、
図5に向かって右側の電極窓17と中央の電極窓17の間に、心電電極36・37・38を適正な身体部位に装着するための位置基準となる位置指標50が形成されている。位置指標50は、ベルト本体1の長手方向線と直交する帯状の縦指標体51で形成されており、その左右中央には縦指標体51の長手方向と平行な中心表示52が線状に形成されている。縦指標体51はポケット本体16とは別の形成材で形成されており、ポケット本体16の呈色状態と、縦指標体51の呈色状態とは大きく異なるものとされている。例えば、ポケット本体16を黒色のメッシュ素材で形成した場合に、縦指標体51は青、赤、黄色などの有彩色の生地で形成されている。これにより、縦指標体51を一見するだけでその位置および姿勢を認識することができる。
【0042】
以上のように構成した心電信号計測ベルトは、
図2および
図11に示すように位置指標50の中心表示52が身体のみぞおちを通る縦体幹軸Pと合致し、かつ第2心電電極37が心臓の近傍に位置する状態で、第1ベルト4Lと第2ベルト4Rを胸周りに装着し、第2ベルト4Rの面ファスナー8を第1ベルト4Lの面ファスナー7に止着して仮止めする。さらに左右の締付ベルト5・6を体の前側へ引っ張った状態で、第1ベルト4L側の締付ベルト5の面ファスナー30を、第2ベルト4Rの表面側の面ファスナー26に止着する。同様に、第2ベルト4R側の締付ベルト6の面ファスナー31を、締付ベルト5の表面側の面ファスナー29に止着する。衣服の上から心電信号計測ベルトを装着する場合、前身頃の合わせ目に対して位置指標50の中心表示52を合致させるようにするとよい。なお、
図11においては、図面が煩雑になるのを避けるために制御ユニット3等を省略している。
【0043】
以上のように、本実施形態に係る心電信号計測ベルトにおいては、複数個の心電電極36・37・38が設けてあるベルト本体1に位置指標50を設けたので、ベルト本体1を胸周りに装着する際に、位置指標50がみぞおちに臨む状態でベルト本体1を装着することで、心電電極36・37・38を適正な身体部位にあてがうことができる。したがって、使用者が日常的に心電信号計測ベルトを使用する際に、ベルト本体1を胸周りに正しく装着して心臓の拍動状況を正しく評価できる。
【0044】
また、位置指標50を心電電極36・37・38に隣接するベルト本体1の肌密着面1a側に形成するようにしたので、心電電極36・37・38と位置指標50の両者の位置を同時に確認しながらベルト本体1を胸周りに装着することができる。したがって、各心電電極36~38を胸周りの正しい位置にあてがって、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握をより正確に行うことができる。
【0045】
位置指標50をベルト本体1の長手方向線と直交する帯状の縦指標体51で形成したので、縦指標体51がみぞおちの中央を通る縦体幹軸P上に位置する状態で、ベルト本体1を胸周りに装着することで、各心電電極36~38の胸周りの装着位置を適正なものとすることができる。したがって、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握をさらに正確に行うことができる。
【0046】
位置指標50をベルト本体1の形成材とは別の形成材で形成したので、見た目の違いや触感の違いなどで位置指標50とベルト本体1とを明確に識別することができる。したがって、位置指標50を位置基準とするベルト本体1の胸周りへの装着を的確にかつ簡便に行うことができる。
【0047】
ベルト本体1の肌密着面1aの呈色状態と、位置指標50の呈色状態とを異なるものとしたので、位置指標50をさらに明確に識別することが可能となる。したがって、位置指標50を位置基準とするベルト本体1の胸周りへの装着をさらに的確にかつ簡便に行うことができる。
【0048】
縦指標体51または横指標体55に、線状の中心表示52・56を設けたので、中心表示52・56を位置基準にしてベルト本体1を装着することで、ベルト本体1をさらに正確に位置決めした状態で胸周りに装着することができる。したがって、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握をさらに的確に行うことができる。
【0049】
ベルト本体1に設けた電極収容部11に、各心電電極36~38を収容し、電極収容部11の肌密着面側に位置指標50を形成したので、各心電電極36・37・38と位置指標50の両者の位置を同時に確認しながらベルト本体1を胸周りに装着することができる。したがって、各心電電極36~38を胸周りの正しい位置にあてがって、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握をより正確に行うことができる。
【0050】
位置指標50を第2心電電極37と第3心電電極38の間に形成したので、第2心電電極37および第3心電電極38と、位置指標50の3者を同時に目視しながらベルト本体1を胸周りに装着することができる。したがって、各心電電極36~38を胸周りの正しい位置にあてがって、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握をさらに正確に行うことができる。
【0051】
位置指標50を電極収容部11を除くベルト本体1の肌密着面1a側に形成したので、同指標50が乳首や脇の下などの身体の特定部位に位置する状態で、ベルト本体1を胸周りに装着することで、各心電電極36~38を胸周りの正しい位置にあてがうことができる。したがって、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握を正確に行うことができる。
【0052】
位置指標50を電極収容部11に隣接して分離配置したので、ベルト本体1を胸周りに装着した状態において、位置指標50を覆うベルト本体1が大きく膨出するのを防止できる。したがって、着こんだ衣服がいびつに膨らむのを解消できる。
【0053】
また、この心電信号計測ベルトを用いた場合、各心電電極36~38を適正な身体部位に配置して、心臓の拍動状況を正しく評価することができるので、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の目標3(すべての人に健康と福祉を)に貢献することができる。
【0054】
(第1
参考例)
図12に
、心電信号計測ベルトの第
1参考例を示す。本
参考例では、位置指標50を、ベルト本体1の長手方向線と平行な帯状の横指標体55で形成し、その上下中央に縦指標体51の長手方向と平行な中心表示56を線状に形成している。他は、第1実施形態の心電信号計測ベルトと同じであるので、同じ部材に同じ符号を付して、その説明を省略する。第
2実施形態以降の各実施形態
および参考例の心電信号計測ベルトにおいても同じとする。
【0055】
本参考例の心電信号計測ベルトによれば、横指標体55が、みぞおちの中央を通る胸周り線上に位置する状態で、ベルト本体1を胸周りに装着することで、各心電電極36~38の装着高さを適正なものとすることができる。したがって、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握を正確に行うことができる。
【0056】
(第
2実施形態)
図13に、本発明に係る心電信号計測ベルトの第
2実施形態を示す。本実施形態では、位置指標50を、ベルト本体1の長手方向線と平行な帯状の横指標体55と、ベルト本体1の長手方向線と直交する帯状の縦指標体51とで十文字状に形成している。縦指標体51は横指標体55の肌密着面側に固定している。
【0057】
本実施形態の心電信号計測ベルトによれば、横指標体55の中心表示56でベルト本体1の装着高さを位置決めし、さらに縦指標体51の中心表示52をみぞおち中心の縦体幹軸Pと合致させることで、ベルト本体1の胸周りの装着位置を正確に位置決めできる。したがって、位置指標50が横指標体55のみ、または縦指標体51のみで構成されている場合に比べて、ベルト本体1を胸周りにさらに正しく装着できるので、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握をさらに的確に行うことができる。
【0058】
(第
3実施形態)
図14に、本発明に係る心電信号計測ベルトの第
3実施形態を示す。本実施形態では、位置指標50を縦指標体51のみで形成し、同指標50を第1ベルト4Lの電極収容部11と滑り止めテープ12との間に固定した。
【0059】
本実施形態のように、縦指標体51が電極収容部11に隣接して分離配置されていると、縦指標体51の中心表示52が右側の乳首の位置に合致するようにベルト本体1を装着することで、ベルト本体1の胸周りの装着位置を位置決めすることができる。したがって、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握を的確に行うことができる。このように、縦指標体51はみぞおち中心を通る縦体幹軸Pを基準とするものである必要はない。
【0060】
(第
2参考例)
図15に
、心電信号計測ベルトの第
2参考例を示す。本
参考例では、胸周りに装着されるベルト本体1と、右肩(または左肩)に袈裟掛け状に装着される肩ベルト58とで、心電信号計測ベルトを構成している。肩ベルト58の一端は第1ベルト4L(または第2ベルト4R)の背中側に固定されており、他端はベルト本体1の前面に面ファスナー59で固定されている。
【0061】
本参考例の心電信号計測ベルトによれば、ベルト本体1の縦指標体51で胸周りの装着位置を位置決めでき、さらに肩ベルト58でベルト本体1の装着高さを調整できるので、ベルト本体1を胸周りにさらに正しく装着して、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握を的確に行うことができる。
【0062】
(第
3参考例)
図16に
、心電信号計測ベルトの第
3参考例を示す。本
参考例では、右肩に袈裟掛け状に装着されるベルト本体1と、ベルト本体1の背面と前面に固定される胴ベルト62で心電信号計測ベルトを構成した。ベルト本体1には縦指標体51と横指標体55を設けるようにした。胴ベルト62の一端は第1ベルト4L(または第2ベルト4R)の背中側に固定されており、他端はベルト本体1の前面に面ファスナー63で固定される。
【0063】
本参考例の心電信号計測ベルトによれば、縦指標体51と横指標体55の交差部分をみぞおちの中心と合致させることで、ベルト本体1の胸周りの装着位置を正確に位置決めすることができる。したがって、さらに胴ベルト62でベルト本体1が左肩側へずれ動こうとするのを規制して、各心電電極36~38による心臓の拍動状況の把握を的確に行える。
【0064】
上記以外に、ベルト本体1の第1ベルト4Lと第2ベルト4Rは、面ファスナー7・8以外の留め具で連結することができ、例えばバックル、ボタン、ホックなどの留め具で連結してもよい。また、締付ベルト5・6は、第1ベルト4Lと第2ベルト4Rの脇腹付近に固定してもよい。ベルト本体1の肌密着面側には、少なくとも2個の心電電極36・38が設けてあってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 ベルト本体
1a 肌密着面
11 電極収容部
36 心電電極(第1心電電極)
37 心電電極(第2心電電極)
38 心電電極(第3心電電極)
50 位置指標
51 縦指標体
52 中心表示
55 横指標体
56 中心表示
P 縦体幹軸