(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】試料加工装置およびシールド
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20241126BHJP
H01J 37/305 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01J37/20 A
H01J37/305 A
(21)【出願番号】P 2021108772
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】根岸 勉
(72)【発明者】
【氏名】木村 達人
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-173874(JP,A)
【文献】特開2007-333682(JP,A)
【文献】特開2016-100203(JP,A)
【文献】国際公開第2021/038650(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置であって、
前記試料に前記イオンビームを照射するイオン源と、
前記試料が収容される真空チャンバーと、
前記試料上に配置され、前記イオンビームを遮蔽する遮蔽部材と、
前記イオンビームが前記遮蔽部材に照射されることによって前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突するシールドと、
を含み、
前記イオンビームは、前記シールドと前記遮蔽部材との間を通過して前記試料に照射され
、
前記シールドは、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する第1捕集面を有し、
前記第1捕集面には、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記試料の後段に配置され、前記イオンビームが照射される被照射部材を含み、
前記シールドは、前記イオンビームが前記被照射部材に照射されることによって前記被照射部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する第2捕集面を有し、
前記第2捕集面には、前記被照射部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記第1捕集面が向く方向と前記第2捕集面が向く方向とは、異なっている、試料加工装置。
【請求項2】
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置であって、
前記試料に前記イオンビームを照射するイオン源と、
前記試料が収容される真空チャンバーと、
前記試料上に配置され、前記イオンビームを遮蔽する遮蔽部材と、
前記イオンビームが前記遮蔽部材に照射されることによって前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突するシールドと、
を含み、
前記イオンビームは、前記シールドと前記遮蔽部材との間を通過して前記試料に照射され
、
前記シールドは、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する第1捕集面を有し、
前記第1捕集面には、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記第1捕集面を有する部材の材質は、樹脂である、試料加工装置。
【請求項3】
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置であって、
前記試料に前記イオンビームを照射するイオン源と、
前記試料が収容される真空チャンバーと、
前記試料上に配置され、前記イオンビームを遮蔽する遮蔽部材と、
前記イオンビームが前記遮蔽部材に照射されることによって前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突するシールドと、
を含み、
前記イオンビームは、前記シールドと前記遮蔽部材との間を通過して前記試料に照射され
、
前記シールドは、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する第1捕集面を有し、
前記第1捕集面には、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記シールドは、
前記第1捕集面を有する捕集部材と、
前記捕集部材を支持する支持部材と、
を有し、
前記捕集部材は、前記支持部材に着脱可能に装着される、試料加工装置。
【請求項4】
請求項
1ないし3のいずれか1項において、
前記遮蔽部材は、前記イオンビームが照射される被照射領域を含む被照射面を有し、
前記イオンビームは、前記第1捕集面と前記被照射面との間を通過する、試料加工装置。
【請求項5】
請求項
4において、
前記被照射面の垂線方向から見て、前記第1捕集面は前記被照射領域と重なっている、試料加工装置。
【請求項6】
請求項
1ないし5のいずれか1項において、
前記第1捕集面は、凹凸面である、試料加工装置。
【請求項7】
請求項
1ないし6のいずれか1項において、
前記第1捕集面には、複数の溝が設けられている、試料加工装置。
【請求項8】
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置であって、
前記試料に前記イオンビームを照射するイオン源と、
前記試料が収容される真空チャンバーと、
前記試料上に配置され、前記イオンビームを遮蔽する遮蔽部材と、
前記イオンビームが前記遮蔽部材に照射されることによって前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突するシールドと、
を含み、
前記イオンビームは、前記シールドと前記遮蔽部材との間を通過して前記試料に照射され
、
前記シールドは、前記遮蔽部材に着脱可能に装着するための磁石を有している、試料加工装置。
【請求項9】
請求項
8において、
前記シールドが前記遮蔽部材に装着された状態において、前記磁石と前記遮蔽部材とは離間している、試料加工装置。
【請求項10】
真空チャンバーに収容された試料に遮蔽部材を介してイオンビームを照射して前記試料を加工
し、前記試料の後段に配置され、前記イオンビームが照射される被照射部材を含む試料加工装置で用いられるシールドであって、
前記イオンビームが前記遮蔽部材に照射されることによって前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する
第1捕集面を有し、
前記
第1捕集面には、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記遮蔽部材に装着された場合に、前記イオンビームが前記
第1捕集面と前記遮蔽部材との間を通過するように配置さ
れ、
前記イオンビームが前記被照射部材に照射されることによって前記被照射部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する第2捕集面を有し、
前記第2捕集面には、前記被照射部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記第1捕集面が向く方向と前記第2捕集面が向く方向とは、異なっている、シールド。
【請求項11】
真空チャンバーに収容された試料に遮蔽部材を介してイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置で用いられるシールドであって、
前記イオンビームが前記遮蔽部材に照射されることによって前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する捕集面を有し、
前記捕集面には、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記遮蔽部材に装着された場合に、前記イオンビームが前記捕集面と前記遮蔽部材との間を通過するように配置さ
れ、
前記捕集面を有する部材の材質は、樹脂である、シールド。
【請求項12】
真空チャンバーに収容された試料に遮蔽部材を介してイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置で用いられるシールドであって、
前記イオンビームが前記遮蔽部材に照射されることによって前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する捕集面を有し、
前記捕集面には、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記遮蔽部材に装着された場合に、前記イオンビームが前記捕集面と前記遮蔽部材との間を通過するように配置さ
れ、
前記捕集面を有する捕集部材と、
前記捕集部材を支持する支持部材と、
を有し、
前記捕集部材は、前記支持部材に着脱可能に装着される、シールド。
【請求項13】
真空チャンバーに収容された試料に遮蔽部材を介してイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置で用いられるシールドであって、
前記イオンビームが前記遮蔽部材に照射されることによって前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する捕集面を有し、
前記捕集面には、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記遮蔽部材に装着された場合に、前記イオンビームが前記捕集面と前記遮蔽部材との間を通過するように配置さ
れ、
前記遮蔽部材に着脱可能に装着するための磁石を有している、シールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料加工装置およびシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
イオンビームを用いて試料を加工する試料加工装置として、試料の断面を加工するためのクロスセクションポリッシャ(登録商標)や、薄膜試料を作製するためのイオンスライサ(登録商標)などが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、試料の一部を遮蔽部材で覆い、遮蔽部材側から試料にイオンビームを照射することによって、試料の遮蔽部材で覆われていない部分をイオンビームで切削して、試料の断面を加工する試料加工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、このような試料加工装置を用いて、より面積の大きな断面を作製したいという要望がある。しかしながら、面積の大きさ断面を作製する場合、イオンビームの照射により発生するスパッタ粒子の量が多くなり、真空チャンバーの内壁に多くのスパッタ粒子が付着してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る試料加工装置の一態様は、
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置であって、
前記試料に前記イオンビームを照射するイオン源と、
前記試料が収容される真空チャンバーと、
前記試料上に配置され、前記イオンビームを遮蔽する遮蔽部材と、
前記イオンビームが前記遮蔽部材に照射されることによって前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突するシールドと、
を含み、
前記イオンビームは、前記シールドと前記遮蔽部材との間を通過して前記試料に照射され、
前記シールドは、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する第1捕集面を有し、
前記第1捕集面には、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記試料の後段に配置され、前記イオンビームが照射される被照射部材を含み、
前記シールドは、前記イオンビームが前記被照射部材に照射されることによって前記被照射部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する第2捕集面を有し、
前記第2捕集面には、前記被照射部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記第1捕集面が向く方向と前記第2捕集面が向く方向とは、異なっている。
本発明に係る試料加工装置の一態様は、
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置であって、
前記試料に前記イオンビームを照射するイオン源と、
前記試料が収容される真空チャンバーと、
前記試料上に配置され、前記イオンビームを遮蔽する遮蔽部材と、
前記イオンビームが前記遮蔽部材に照射されることによって前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突するシールドと、
を含み、
前記イオンビームは、前記シールドと前記遮蔽部材との間を通過して前記試料に照射され、
前記シールドは、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する第1捕集面を有し、
前記第1捕集面には、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記第1捕集面を有する部材の材質は、樹脂である。
本発明に係る試料加工装置の一態様は、
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置であって、
前記試料に前記イオンビームを照射するイオン源と、
前記試料が収容される真空チャンバーと、
前記試料上に配置され、前記イオンビームを遮蔽する遮蔽部材と、
前記イオンビームが前記遮蔽部材に照射されることによって前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突するシールドと、
を含み、
前記イオンビームは、前記シールドと前記遮蔽部材との間を通過して前記試料に照射され、
前記シールドは、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する第1捕集面を有し、
前記第1捕集面には、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記シールドは、
前記第1捕集面を有する捕集部材と、
前記捕集部材を支持する支持部材と、
を有し、
前記捕集部材は、前記支持部材に着脱可能に装着される。
本発明に係る試料加工装置の一態様は、
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置であって、
前記試料に前記イオンビームを照射するイオン源と、
前記試料が収容される真空チャンバーと、
前記試料上に配置され、前記イオンビームを遮蔽する遮蔽部材と、
前記イオンビームが前記遮蔽部材に照射されることによって前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突するシールドと、
を含み、
前記イオンビームは、前記シールドと前記遮蔽部材との間を通過して前記試料に照射され、
前記シールドは、前記遮蔽部材に着脱可能に装着するための磁石を有している。
【0007】
このような試料加工装置では、イオンビームが遮蔽部材に照射されることによって発生したスパッタ粒子が衝突するシールドを含み、イオンビームはシールドと遮蔽部材の間を通過するため、スパッタ粒子を効率よく捕集できる。したがって、このような試料加工装置では、真空チャンバーの内壁に付着するスパッタ粒子を低減できる。
【0008】
本発明に係るシールドの一態様は、
真空チャンバーに収容された試料に遮蔽部材を介してイオンビームを照射して前記試料を加工し、前記試料の後段に配置され、前記イオンビームが照射される被照射部材を含む試料加工装置で用いられるシールドであって、
前記イオンビームが前記遮蔽部材に照射されることによって前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する第1捕集面を有し、
前記第1捕集面には、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記遮蔽部材に装着された場合に、前記イオンビームが前記第1捕集面と前記遮蔽部材との間を通過するように配置され、
前記イオンビームが前記被照射部材に照射されることによって前記被照射部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する第2捕集面を有し、
前記第2捕集面には、前記被照射部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記第1捕集面が向く方向と前記第2捕集面が向く方向とは、異なっている。
本発明に係るシールドの一態様は、
真空チャンバーに収容された試料に遮蔽部材を介してイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置で用いられるシールドであって、
前記イオンビームが前記遮蔽部材に照射されることによって前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する捕集面を有し、
前記捕集面には、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記遮蔽部材に装着された場合に、前記イオンビームが前記捕集面と前記遮蔽部材との間を通過するように配置され、
前記捕集面を有する部材の材質は、樹脂である。
本発明に係るシールドの一態様は、
真空チャンバーに収容された試料に遮蔽部材を介してイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置で用いられるシールドであって、
前記イオンビームが前記遮蔽部材に照射されることによって前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する捕集面を有し、
前記捕集面には、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記遮蔽部材に装着された場合に、前記イオンビームが前記捕集面と前記遮蔽部材との間を通過するように配置され、
前記捕集面を有する捕集部材と、
前記捕集部材を支持する支持部材と、
を有し、
前記捕集部材は、前記支持部材に着脱可能に装着される。
本発明に係るシールドの一態様は、
真空チャンバーに収容された試料に遮蔽部材を介してイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置で用いられるシールドであって、
前記イオンビームが前記遮蔽部材に照射されることによって前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する捕集面を有し、
前記捕集面には、前記遮蔽部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、
前記遮蔽部材に装着された場合に、前記イオンビームが前記捕集面と前記遮蔽部材との間を通過するように配置され、
前記遮蔽部材に着脱可能に装着するための磁石を有している。
【0009】
このようなシールドでは、イオンビームが遮蔽部材に照射されることによって発生したスパッタ粒子が衝突する捕集面を含み、イオンビームは捕集面と遮蔽部材の間を通過するため、スパッタ粒子を効率よく捕集できる。したがって、このようなシールドでは、真空チャンバーの内壁に付着するスパッタ粒子を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る試料加工装置の構成を示す図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る試料加工装置の構成を示す図。
【
図3】シールドを装着する前の遮蔽部材を模式的に示す斜視図。
【
図4】遮蔽部材に装着されたシールドを模式的に示す斜視図。
【
図7】ABS樹脂の凹凸面と平滑面を示すSEM像。
【
図8】ABS樹脂の凹凸面に付着したスパッタ粒子によって形成された膜と平滑面に付着したスパッタ粒子によって形成された膜を示すSEM像。
【
図9】加工中の遮蔽部材および試料を模式的に示す斜視図。
【
図11】第1変形例に係る試料加工装置のシールド、遮蔽部材、および試料ホルダーを模式的に示す斜視図。
【
図12】遮蔽部材に装着されたシールドを模式的に示す斜視図。
【
図14】第2変形例に係る試料加工装置において、遮蔽部材に装着されたシールドを模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0012】
1. 試料加工装置
1.1. 試料加工装置の構成
まず、本発明の一実施形態に係る試料加工装置について図面を参照しながら説明する。
図1および
図2は、本発明の一実施形態に係る試料加工装置100の構成を示す図である。
図1および
図2には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示いている。
【0013】
試料加工装置100は、イオンビームIBを照射して試料2を加工し、観察や分析用の試料を作製するための装置である。試料加工装置100では、試料2の断面を加工することができる。
【0014】
試料加工装置100は、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)や、透過電子顕微鏡(TEM)、走査透過電子顕微鏡(STEM)などの電子顕微鏡用の試料を作製するために用いられる。また、試料加工装置100は、例えば、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)やオージェマイクロプローブなどの試料を作製するために用いられる。
【0015】
試料加工装置100は、
図1および
図2に示すように、真空チャンバー10と、試料ステージ引出機構12と、排気装置14と、排気制御部16と、イオン源20と、試料ホル
ダー30と、試料ステージ40と、試料ステージ回転機構42と、遮蔽部材50と、シールド60と、位置合わせ用カメラ70と、加工観察用カメラ80と、を含む。
【0016】
真空チャンバー10には、試料2が収容されている。真空チャンバー10内において、試料2にイオンビームIBが照射される。真空チャンバー10内は、排気装置14で真空排気される。排気装置14は、排気制御部16で制御される。
【0017】
試料ステージ引出機構12は、真空チャンバー10内から試料ステージ40を引き出すための機構である。試料ステージ引出機構12は、真空チャンバー10の開口部を塞ぐように、真空チャンバー10に開閉可能に取り付けられている。試料ステージ引出機構12には、試料ステージ40が取り付けられている。
【0018】
イオン源20は、イオンビームIBを試料2に照射する。イオン源20は、真空チャンバー10の上部に取り付けられている。イオン源20は、例えば、イオン銃である。イオン源20は、所定の加速電圧でイオンビームIBを加速させて放出する。イオン源20は、例えば、Arガスをイオン化させてイオンビームIBを放出する。
【0019】
イオンビームIBの径は、例えば、1~2mm程度である。イオン源20は、イオンビームIBをZ軸に沿って放出する。イオンビームIBの光軸(中心軸)は、Z軸に平行である。イオン源20は、イオンビームIBの径を変化させるためのレンズ(電極)を有していてもよい。
【0020】
試料ホルダー30は、試料ステージ40に取り付けられている。試料ホルダー30は、試料ステージ40に対して着脱可能である。試料ホルダー30は、試料2を保持している。試料ホルダー30には、遮蔽部材50が取り付けられている。
【0021】
試料ステージ40は、試料2を保持している。試料ステージ40は、試料ホルダー30を介して試料2を保持している。試料ステージ40は、試料ステージ回転機構42を介して試料ステージ引出機構12に取り付けられている。
【0022】
試料ステージ40は、試料ステージ回転機構42によって回転する。試料ステージ40が回転することによって、試料ホルダー30が回転する。これにより、試料2を揺動(往復傾斜運動)させることができる。試料ステージ回転機構42は、試料ステージ40を軸A2を回転軸として回転させる。軸A2は、Y軸に平行である。試料ステージ回転機構42は、例えば、試料ステージ40を回転させるモーターを含む。
【0023】
遮蔽部材50は、試料2上に配置され、イオンビームIBを遮蔽する。試料加工装置100では、試料2の遮蔽部材50から突き出た部分にイオンビームIBが照射される。これにより、試料2の断面を加工できる。遮蔽部材50は、イオンビームIBで切削され難い材料からなる。遮蔽部材50の材質は、例えば、金属である。遮蔽部材50の材質は、例えば、強磁性材料である。
【0024】
シールド60は、遮蔽部材50に装着されている。シールド60は、遮蔽部材50や、試料2、真空チャンバー10の底面などにイオンビームIBが照射されることによって発生したスパッタ粒子が衝突する。これにより、真空チャンバー10の内壁に付着するスパッタ粒子を低減できる。シールド60の詳細については後述する。
【0025】
位置合わせ用カメラ70は、試料ステージ引出機構12の上端部に取り付けられている。位置合わせ用カメラ70は、例えば、光学顕微鏡に取り付けられたカメラである。位置合わせ用カメラ70では、試料ステージ40に配置された試料2をZ方向から観察するこ
とができる。
【0026】
図2に示す試料ステージ引出機構12を開いた状態において位置合わせ用カメラ70の視野の中心に試料2の目標加工位置を合わせると、
図1に示す試料ステージ引出機構12を閉じた状態においてイオン源20から放出されるイオンビームIBが目標加工位置に照射される。このように、試料加工装置100では、位置合わせ用カメラ70を用いて試料2の位置を調整することで、試料2の目標加工位置にイオンビームIBを照射できる。
【0027】
加工観察用カメラ80は、真空チャンバー10の外に配置されている。加工観察用カメラ80は、真空チャンバー10に設けられた観察窓82を通して真空チャンバー10内を観察可能である。加工観察用カメラ80の光軸は、例えば、軸A2と一致する。加工観察用カメラ80は、試料ステージ40に配置された試料2をY方向から観察することができる。
【0028】
1.2. シールド
図3は、シールド60を装着する前の遮蔽部材50を模式的に示す斜視図である。
【0029】
遮蔽部材50は、板状である。遮蔽部材50の高さは、例えば、1cm程度である。遮蔽部材50は、イオンビームIBが照射される被照射面52を有している。被照射面52は、イオンビームIBが照射される被照射領域を含む面である。
【0030】
遮蔽部材50は、試料2上に配置されている。遮蔽部材50は、試料2の一部が遮蔽部材50から突き出るように試料2上に配置される。試料2が遮蔽部材50から突き出た部分の長さは、例えば、100μm程度である。
【0031】
図4は、遮蔽部材50に装着されたシールド60を模式的に示す斜視図である。
図5および
図6は、シールド60を模式的に示す斜視図である。
【0032】
シールド60は、遮蔽部材50に装着される。イオンビームIBが遮蔽部材50や試料2等に照射されることによって発生したスパッタ粒子は、シールド60に衝突する。シールド60は、シールド本体61と、2つの磁石66と、を含む。
【0033】
シールド60は、遮蔽部材50に着脱可能に装着される。シールド60は、2つの磁石66の磁力によって遮蔽部材50に固定される。
【0034】
シールド本体61の材質は、例えば、樹脂である。シールド本体61の材質は、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル(Acrylonitrile)、ブタジエン(Butadiene)、スチレン(Styrene)共重合合成樹脂)である。なお、シールド本体61の材質は、樹脂に限定されず、金属など樹脂以外の材料であってもよい。シールド本体61は、例えば、3Dプリンターを用いて作製できる。なお、シールド本体61の製造方法は、3Dプリンターに限定されない。例えば、シールド本体61を射出成型で製造してもよい。
【0035】
シールド60は、
図5および
図6に示すように、第1捕集面63aおよび第2捕集面63bを有している。第1捕集面63aおよび第2捕集面63bは、スパッタ粒子を捕集するための面である。第1捕集面63aが向く方向と第2捕集面63bが向く方向は、異なっている。
【0036】
第1捕集面63aは、イオンビームIBが遮蔽部材50に照射されることによって発生したスパッタ粒子が衝突する面である。スパッタ粒子が第1捕集面63aに衝突することによって、第1捕集面63aにスパッタ粒子が付着する。スパッタ粒子は、第1捕集面6
3aにおいて膜(スパッタ膜)を形成する。
【0037】
第1捕集面63aは、凹凸面である。第1捕集面63aには、凹凸が短い周期で規則的に設けられていてもよいし、凹凸がランダムに設けられていてもよい。走査電子顕微鏡で第1捕集面63aのSEM像を観察し、SEM像から第1捕集面63aの凹凸の大きさを測定した場合、第1捕集面63aの凹凸の大きさは、例えば、2μm以上10μm以下である。このように、第1捕集面63aが凹凸面であることによって、第1捕集面63aに付着したスパッタ粒子によって形成された膜の剥離を低減できる。
【0038】
図7は、ABS樹脂の凹凸面とABS樹脂の平滑面を示すSEM像である。
図8は、ABS樹脂の凹凸面に付着したスパッタ粒子によって形成された膜と平滑面に付着したスパッタ粒子によって形成された膜を示すSEM像である。凹凸面は、3Dプリンターで形成した面であり、平滑面は、3Dプリンターで形成した面に熱を加えて平滑化した面である。
【0039】
図7および
図8に示すABS樹脂の凹凸面には、約5μm程度の凹凸が形成されている。走査電子顕微鏡で測定した凹凸面の凹凸の大きさは、5μm程度である。また、ABS樹脂の平滑面は、
図7に示すようにほとんど凹凸がない。このようなABS樹脂の凹凸面および平滑面にスパッタ粒子を付着させ、スパッタ粒子を堆積させていくと、
図8に示すように、平滑面では、スパッタ粒子によって形成された膜が剥離してしまう。これに対して、凹凸面では膜の剥離が見られなかった。
【0040】
第1捕集面63aには、
図5および
図6に示すように複数の溝65が設けられている。第1捕集面63aに複数の溝65を形成することによって、第1捕集面63aの表面積を大きくでき、より多くのスパッタ粒子を捕集できる。
【0041】
第2捕集面63bは、イオンビームIBが試料2に照射されることによって発生したスパッタ粒子が衝突する。さらに、第2捕集面63bは、試料2の後段に配置され、イオンビームIBが照射される被照射部材に照射されることによって被照射部材から放出されたスパッタ粒子が衝突する。被照射部材は、例えば、イオンビームIBの電流量を計測するための電流検出板や、真空チャンバー10の底部などである。スパッタ粒子が第2捕集面63bに衝突することによって、第2捕集面63bにスパッタ粒子が付着する。第2捕集面63bは、第1捕集面63aと同様に凹凸面である。このように、第2捕集面63bは、試料や被照射部材から放出されるスパッタ粒子を捕集する面である。
【0042】
なお、
図6に示す例では、第2捕集面63bには溝が設けられていないが、第1捕集面63aと同様に、第2捕集面63bにも複数の溝が設けられていてもよい。
【0043】
シールド60は、
図4に示すように遮蔽部材50に装着される。シールド本体61には、2つの突出部62が設けられている。突出部62は、シールド60が遮蔽部材50に装着された場合に、第1捕集面63aよりも遮蔽部材50側に突出する部分である。突出部62の端面67は、シールド60が遮蔽部材50に装着された場合に、遮蔽部材50に接触する。
【0044】
2つの突出部62の間には、第1捕集面63aが設けられている。そのため、2つの突出部62の端面67が遮蔽部材50の被照射面52に接触した場合に、第1捕集面63aは、被照射面52に接触しない。これにより、第1捕集面63aと被照射面52との間にイオンビームIBを通過させるための通路を形成できる。2つの端面67を遮蔽部材50に接触させることによって、第1捕集面63aが遮蔽部材50の被照射面52の正面に位置する。
【0045】
突出部62には、孔68が設けられている。孔68の開口は、端面67に設けられている。孔68の中に、磁石66が固定されている。
【0046】
シールド60が遮蔽部材50に装着された状態において、磁石66と遮蔽部材50とは離間している。図示の例では、磁石66は、端面67に設けられた孔68の開口よりも奥に配置されている。そのため、端面67が遮蔽部材50の被照射面52に接触しても、2つの磁石66は遮蔽部材50に接触しない。
【0047】
シールド60には、切り欠き69が設けられている。切り欠き69は、第1捕集面63aと、2つの突出部62と、で囲まれた空間である。
図4に示すように、シールド60が遮蔽部材50に装着されている場合に、イオンビームIBは、切り欠き69を通過して試料2に照射される。すなわち、切り欠き69は、イオンビームIBを通過させるための通路となる。
【0048】
2. 試料加工装置の動作
次に、試料加工装置100の動作について説明する。
【0049】
まず、試料2を試料ステージ40に装着する。具体的には、試料2および遮蔽部材50を試料ホルダー30に装着した後、遮蔽部材50にシールド60を装着する。シールド60は、2つの磁石66によって遮蔽部材50に固定される。次に、
図2に示すように、試料ステージ引出機構12を開いて真空チャンバー10から試料ステージ40を引き出し、試料ステージ40に試料ホルダー30を装着する。次に、位置合わせ用カメラ70の視野の中心に試料2の目標加工位置を合わせる。位置合わせを行った後、
図1に示すように試料ステージ引出機構12を閉じて真空チャンバー10内に試料2を導入する。以上の工程により、試料2を試料ステージ40に装着できる。
【0050】
次に、イオン源20からイオンビームIBを試料2に照射する。イオンビームIBは、遮蔽部材50を介して、試料2に照射される。イオンビームIBは、試料2の遮蔽部材50から突き出た部分に照射される。
【0051】
イオンビームIBを照射している間は、試料ステージ回転機構42を動作させて、軸A2を軸として、試料ステージ40を揺動させる。これにより、試料2および遮蔽部材50が揺動する。試料2を揺動させることによって、試料2の断面に形成される、イオンビームIBの照射痕である加工筋を低減できる。加工中の試料2の様子は、加工観察用カメラ80で確認できる。
【0052】
図9は、加工中の遮蔽部材50および試料2を模式的に示す斜視図である。
図10は、シールド60の機能を説明するための図である。なお、
図10では、イオンを実線の矢印で示し、スパッタ粒子を破線の矢印で示している。
【0053】
図10に示すように、イオン源20から放出されたイオンビームIBは、シールド60と遮蔽部材50との間を通過して試料2に照射される。イオンビームIBは、
図9に示すように、遮蔽部材50および試料2に照射される。遮蔽部材50のイオンビームIBが照射される被照射面52の被照射領域54からは、スパッタ粒子が放出される。空間に放出されたスパッタ粒子は、被照射領域54から直線運動してシールド60の第1捕集面63aに衝突し、第1捕集面63aで捕集される。
【0054】
ここで、イオンビームIBは、第1捕集面63aと被照射面52との間を通過する。また、被照射面52の垂線Pの方向、すなわち、垂線Pに沿った方向から見て、第1捕集面
63aは、被照射領域54と重なっている。そのため、シールド60によって、被照射領域54から放出されるスパッタ粒子を効率よく捕集できる。シールド60を遮蔽部材50に装着することによって、
図4に示すように、被照射領域54で発生したスパッタ粒子が放出される空間を、シールド60および遮蔽部材50で囲むことができる。
【0055】
遮蔽部材50とシールド60との間を通過したイオンビームIBは、試料2に照射され、試料2からは、スパッタ粒子が放出される。試料2から放出されたスパッタ粒子は、直線運動してシールド60の第2捕集面63bに衝突し、第2捕集面63bで捕集される。
【0056】
また、遮蔽部材50とシールド60との間を通過したイオンビームIBの一部は、試料2(試料ステージ40)の後段に配置された部材に照射される。例えば、図示はしないが、試料2の後段には、イオンビームIBの電流量を計測するための電流検出板が配置されている。この電流検出板にイオンビームIBが照射されることによって、電流検出板からスパッタ粒子が放出される。また、試料2の後段には、真空チャンバー10の底部がある。この真空チャンバー10の底部にイオンビームIBが照射されることによって、真空チャンバー10の底部からスパッタ粒子が放出される。電流検出板や真空チャンバー10などの試料2の後段に配置された被照射部材から放出されたスパッタ粒子は、シールド60の第2捕集面63bに衝突し、第2捕集面63bで捕集される。第2捕集面63bは、図示の例では、下方向、すなわち、真空チャンバー10の底部を向いている。そのため、試料2の後段に配置された電流検出板や真空チャンバー10の底部から放出されたスパッタ粒子を効率よく捕集できる。
【0057】
試料2の加工中は、加工観察用カメラ80で試料2を観察できる。
図10に示すように、加工観察用カメラ80の視野をシールド60が遮らないように、シールド60は、試料2よりも上(+Z方向)に配置される。
【0058】
3. 効果
試料加工装置100は、イオンビームIBが遮蔽部材50に照射されることによって遮蔽部材50から放出されたスパッタ粒子が衝突するシールド60を含み、イオンビームIBは、シールド60と遮蔽部材50との間を通過して試料2に照射される。そのため、試料加工装置100では、遮蔽部材50から放出されたスパッタ粒子を効率よく捕集できる。これにより、真空チャンバー10の内壁に付着するスパッタ粒子を低減できる。
【0059】
例えば、従来の試料加工装置では、真空チャンバーの内壁に付着したスパッタ粒子は、ヘラやブラシ等で削り取らなければならなかった。この作業は発塵を伴うため、作業者は防塵マスクや手袋といった装備で身体を守りながら、作業を行わなければならなかった。試料加工装置100では、シールド60を用いることによって、真空チャンバー10の内壁に付着するスパッタ粒子を低減できるため、作業の頻度を低減できる。
【0060】
また、例えば、真空チャンバーに付着する汚れを低減するために、汚れの原因となる微粒子等を冷却部材に吸着させる手法が知られている。しかしながら、イオンビームが遮蔽部材に照射されることによって発生するスパッタ粒子は、高いエネルギーを持って遮蔽部材から空間に放出される。そのため、このようなスパッタ粒子は、直線運動する。したがって、微粒子を冷却部材に吸着させる手法では、イオンビームが遮蔽部材に照射されることによって発生するスパッタ粒子をほとんど捕集できない。
【0061】
これに対して、試料加工装置100では、イオンビームIBは、シールド60と遮蔽部材50との間を通過するように、シールド60が配置されるため、シールド60で遮蔽部材50から放出されるスパッタ粒子を効率よく捕集できる。
【0062】
試料加工装置100では、シールド60は、スパッタ粒子を捕集する第1捕集面63aを有し、第1捕集面63aには、遮蔽部材50から放出されたスパッタ粒子が衝突し、遮蔽部材50は、イオンビームIBが照射される被照射領域54を含む被照射面52を有し、イオンビームIBは、第1捕集面63aと被照射面52との間を通過する。そのため、被照射領域54から放出されるスパッタ粒子を第1捕集面63aで効率よく捕集できる。
【0063】
試料加工装置100では、被照射面52の垂線P方向から見て、第1捕集面63aは被照射領域54と重なっている。そのため、被照射領域54から放出されるスパッタ粒子を第1捕集面63aで効率よく捕集できる。
【0064】
試料加工装置100では、第1捕集面63aは、凹凸面である。そのため、第1捕集面63aに付着したスパッタ粒子によって形成された膜の剥離を低減できる。
【0065】
試料加工装置100では、第1捕集面63aには、複数の溝65が設けられている。そのため、試料加工装置100では、第1捕集面63aの面積を増やすことができ、より多くのスパッタ粒子を捕集できる。
【0066】
試料加工装置100は、試料2の後段に配置され、イオンビームIBが照射される被照射部材を含み、シールド60は、イオンビームIBが被照射部材に照射されることによって被照射部材から放出されたスパッタ粒子を捕集する第2捕集面63bを有している。第2捕集面63bには、被照射部材から放出されたスパッタ粒子が衝突し、第1捕集面63aが向く方向と第2捕集面63bが向く方向とは、異なっている。そのため、試料加工装置100では、遮蔽部材50から放出されたスパッタ粒子だけでなく、試料2の後段に配置された被照射部材から放出されたスパッタ粒子を捕集できる。これにより、真空チャンバー10の内壁に付着するスパッタ粒子を低減できる。
【0067】
試料加工装置100では、シールド60は、遮蔽部材50に着脱可能に装着される。そのため、シールド60に付着したスパッタ粒子を容易に除去できる。また、シールド60を使い捨てにしてもよい。
【0068】
試料加工装置100では、シールド60は、遮蔽部材50に着脱可能に装着するための磁石66を有している。そのため、シールド60を容易に遮蔽部材50に着脱可能に装着できる。
【0069】
試料加工装置100では、シールド60が遮蔽部材50に装着された状態において、磁石66と遮蔽部材50とは離間している。そのため、熱による磁石66の劣化を低減できる。
【0070】
ここで、磁石は、一般的に熱によって劣化する。遮蔽部材50にはイオンビームIBが照射されるため、遮蔽部材50は高温になる。試料加工装置100では、上記のように、シールド60が遮蔽部材50に装着された状態において、磁石66と遮蔽部材50とは離間しているため、磁石66と遮蔽部材50が接触している場合と比べて、遮蔽部材50の熱が磁石66に伝わりにくい。したがって、試料加工装置100では、熱による磁石66の劣化を低減できる。
【0071】
シールド60は、イオンビームIBが遮蔽部材50に照射されることによって遮蔽部材50から放出されたスパッタ粒子を捕集する第1捕集面63aを含み、遮蔽部材50から放出されたスパッタ粒子は、第1捕集面63aに衝突する。また、シールド60は、遮蔽部材50に装着された場合に、イオンビームIBが捕集部材60aと遮蔽部材50との間を通過するように配置される。そのため、シールド60を用いることによって、試料加工
装置100において、遮蔽部材50から放出されるスパッタ粒子を効率よく捕集できる。
【0072】
4. 変形例
4.1. 第1変形例
図11は、第1変形例に係る試料加工装置のシールド60、遮蔽部材50、および試料ホルダー30を模式的に示す斜視図である。
図12は、遮蔽部材50に装着されたシールド60を模式的に示す斜視図である。
図13は、シールド60を模式的に示す斜視図である。以下、
図11~
図13に示す第1変形例に係る試料加工装置において、上述した試料加工装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0073】
上述した
図4~
図6に示す例では、シールド60は、磁石66によって遮蔽部材50に装着されていた。
【0074】
これに対して、
図11~
図13に示すように、シールド60は、機械的に遮蔽部材50に装着されてもよい。
【0075】
図11~
図13に示す例では、シールド60には、遮蔽部材50を差し込むための挿入口202が設けられている。シールド60は、2つの突出部62から延び、遮蔽部材50を囲むように設けられた梁部204を有しており、梁部204で囲まれた領域が挿入口202となる。
【0076】
挿入口202に遮蔽部材50を差し込むことによって、シールド60が遮蔽部材50に固定される。このように、シールド60が遮蔽部材50に機械的に装着されることによって、遮蔽部材50の材質によらずに、シールド60を遮蔽部材50に着脱可能に装着できる。
【0077】
シールド60の2つの孔68には、例えば、重りが入っている。これにより、シールド60を遮蔽部材50により安定して固定できる。
【0078】
第1変形例に係る試料加工装置では、上述した試料加工装置100と同様の作用効果を奏することができる。
【0079】
4.2. 第2変形例
図14は、第2変形例に係る試料加工装置において、遮蔽部材50に装着されたシールド60を模式的に示す斜視図である。
図15は、シールド60を模式的に示す斜視図である。以下、
図14および
図15に示す第2変形例に係る試料加工装置において、上述した試料加工装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0080】
図14および
図15に示すように、シールド60は、第1捕集面63aおよび第2捕集面63bを有する捕集部材60aと、捕集部材60aを支持する支持部材60bと、を有し、捕集部材60aが支持部材60bに対して着脱可能である。
【0081】
捕集部材60aの材質は、例えば、支持部材60bの材質と異なっている。捕集部材60aの材質は、例えば、ABS樹脂である。捕集部材60aは、例えば、第1捕集面63aおよび第2捕集面63bを有する樹脂ブロックである。
【0082】
支持部材60bは、捕集部材60aを支持している。支持部材60bは、捕集部材60aが差し込まれる開口部301を有している。開口部301に捕集部材60aが差し込ま
れることによって、捕集部材60aが支持部材60bで支持される。
【0083】
シールド60は、支持部材60bから延びる2つの腕部302を有している。この2つの腕部302で試料ホルダー30を掴むことで、シールド60が遮蔽部材50に装着されている。2つの腕部302にはそれぞれ切り欠き304が形成されており、切り欠き304に試料ホルダー30が差し込まれることで、シールド60を遮蔽部材50に装着できる。
【0084】
なお、シールド60を遮蔽部材50に装着する方法は特に限定されない。例えば、
図12および
図15に示すように、シールド60を遮蔽部材50が固定された試料ホルダー30に固定することで、シールド60を遮蔽部材50に装着してもよいし、
図4に示すようにシールド60を遮蔽部材50に直接固定することで、シールド60を遮蔽部材50に装着してもよい。
【0085】
捕集部材60aを支持部材60bに対して着脱可能とすることによって、捕集部材60aのみを交換することができる。例えば、捕集部材60aの材料を安価で加工の容易なABS樹脂などにして、捕集部材60aを使い捨てにしてもよい。
【0086】
第2変形例に係る試料加工装置では、上述した試料加工装置100と同様の作用効果を奏することができる。
【0087】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0088】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0089】
2…試料、10…真空チャンバー、12…試料ステージ引出機構、14…排気装置、16…排気制御部、20…イオン源、30…試料ホルダー、40…試料ステージ、42…試料ステージ回転機構、50…遮蔽部材、52…被照射面、54…被照射領域、60…シールド、60a…捕集部材、60b…支持部材、61…シールド本体、62…突出部、63a…第1捕集面、63b…第2捕集面、65…溝、66…磁石、67…端面、68…孔、69…切り欠き、70…位置合わせ用カメラ、80…加工観察用カメラ、82…観察窓、100…試料加工装置、202…挿入口、204…梁部、301…開口部、302…腕部、304…切り欠き