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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】死角補助装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20241126BHJP
   B60R 1/04 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
B60R1/04 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021114370
(22)【出願日】2021-07-09
(65)【公開番号】P2023010317
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石原 和幸
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-024798(JP,A)
【文献】特開昭56-150702(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057000(WO,A1)
【文献】特開2009-169036(JP,A)
【文献】特開2000-105303(JP,A)
【文献】特開2016-002975(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0146229(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112606768(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00- 5/136
G02B27/00-30/60
B60R 1/00- 1/04
B60R 1/08- 1/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
死角領域(300)から入射した光線(LA)を内部で伝搬させて、観察者へ向けて前記光線を出射するように構成された光伝搬部(130)と、
前記光伝搬部と前記観察者との間に設けられた遮光部(10)と、を備え、
前記遮光部は、
複数の第1の空孔部(13)と複数の第1の遮光部(21)とを有する第1の遮光層(101)と、
前記第1の遮光層よりも前記観察者側に配置され、複数の第2の空孔部(14)と複数の第2の遮光部(22)とを有する第2の遮光層(102)とを備え、
前記複数の第2の遮光部の各々は、前記複数の第1の遮光部の各々から延伸した第1の平行線(A2)上に配置されており、前記第1の平行線は、第1の直線(A1)に平行な直線であり、前記第1の直線は、前記第1の遮光層の面中心(CE)と前記観察者の固定の観察位置中心(410)とを繋ぎ、前記第1の遮光層の面法線(N)に対して第1角度(θ)傾斜しており、
前記複数の第1の遮光部の各々及び前記複数の第2の遮光部の各々は、前記面法線に対して前記第1角度傾斜した面上の複数の遮光ポイント(211,213,221,223)を有し、
前記第1の遮光層及び前記第2の遮光層の各々は、
前記第1角度の方向へずらして積層されている2つの板状メッシュ部材(105)から構成され、
前記2つの板状メッシュ部材の各々は、第1の方向及び前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って複数の矩形状の穴が形成されており、
前記複数の第1の空孔部及び前記複数の第2の空孔部は、前記複数の矩形状の穴に相当し、
前記複数の第1の遮光部及び前記複数の第2の遮光部は、前記第1の方向において隣り合う2つの前記穴を仕切る部材に相当する、
死角補助装置。
【請求項2】
死角領域(300)から入射した光線(LA)を内部で伝搬させて、観察者へ向けて前記光線を出射するように構成された光伝搬部(130)と、
前記光伝搬部と前記観察者との間に設けられた遮光部(10)と、を備え、
前記遮光部は、
複数の第1の空孔部(13)と複数の第1の遮光部(21)とを有する第1の遮光層(101)と、
前記第1の遮光層よりも前記観察者側に配置され、複数の第2の空孔部(14)と複数の第2の遮光部(22)とを有する第2の遮光層(102)とを備え、
前記複数の第2の遮光部の各々は、前記複数の第1の遮光部の各々から延伸した第1の平行線(A2)上に配置されており、前記第1の平行線は、第1の直線(A1)に平行な直線であり、前記第1の直線は、前記第1の遮光層の面中心(CE)と前記観察者の固定の観察位置中心(410)とを繋ぎ、前記第1の遮光層の面法線(N)に対して第1角度(θ)傾斜しており、
前記複数の第1の遮光部の各々及び前記複数の第2の遮光部の各々は、前記面法線に対して前記第1角度傾斜した面上の複数の遮光ポイント(211,213,221,223)を有し、
前記第1の遮光層及び前記第2の遮光層の各々は、
前記第1角度の方向へずらして積層されている2つの板状スリット部材(106)から構成され、
前記2つの板状スリット部材の各々は、第1の方向に沿って、前記第1の方向に直交する第2の方向に延伸した複数の孔が形成されており、
前記複数の第1の空孔部及び前記複数の第2の空孔部は、前記複数の孔に相当し、
前記複数の第1の遮光部及び前記複数の第2の遮光部は、前記第1の方向において隣り合う2つの前記孔を仕切る部材に相当する、
死角補助装置。
【請求項3】
前記複数の第2の遮光部の各々は、前記複数の第1の空孔部の各々から延伸した第2の平行線(B2)上に配置されており、前記第2の平行線は、第2の直線(B1)に平行な直線であり、前記第2の直線は、前記第1の直線を前記第1の遮光層の面に対して鏡映対にした線である、
請求項1又は2に記載の死角補助装置。
【請求項4】
前記複数の第1の遮光部は、所定間隔(P)で配置されており、
前記複数の第2の遮光部は、前記所定間隔(P)で配置されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の死角補助装置。
【請求項5】
前記複数の第1の遮光部(21)の各々、及び/又は前記複数の第2の遮光部(22)の各々は、第1の矩形部(21a,22a)と第2の矩形部(22a,22b)とを有し、
前記第1の矩形部及び前記第2の矩形部は、前記第1の直線と前記面法線とで張る断面において、矩形形状を有し、
前記第2の矩形部は、前記第1の矩形部の前記観察者側に、前記面法線に対して前記第1角度の方向へ前記第1の矩形部からずらして配置されており、
前記第1の矩形部及び前記第2の矩形部は、前記第1角度傾斜した面上の複数の端部(211,213,221,223)を有する、
請求項1~のいずれか1項に記載の死角補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、死角領域の像を映す死角補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の死角補助装置は、一対の平行平面ミラーと、複数の遮光部材とを備える。一対の平行平面ミラーは、平面ミラーと半透過平面ミラーとを備え、平面ミラーと半透過平面ミラーとの間で死角領域の光を伝搬して、透過平面ミラーから観察者の方へ光を放射する。複数の遮光部材は、透過平面ミラーの面に沿って設けられており、死角領域以外から到来する不要光の入射を遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-24798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記死角補助装置の各遮光部材は比較的長いため、装置の体格が増大している。各遮光部材を短くする場合、遮光部材のピッチを狭くしないと、不要光を遮断できなくなる。すなわち、ピッチに対する遮光部材の長さの比であるアスペクト比を一定値以上にしないと、不要光を遮断できない。しかしながら、一定値以上のアスペクト比を維持しつつ遮光部材のピッチを狭くすると、装置の製造が困難になる。
【0005】
本開示は、装置の体格を低減しつつ、観察者の視界への不要光の入り込みを抑制して死角領域の像を観察者に提示することが可能な死角補助装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの局面の死角補助装置は、光伝搬部(130,130A,130B)と、遮光部(10)と、を備える。光伝搬部は、死角領域(300)から入射した光線(LA)を内部で伝搬させて、観察者へ向けて光線を出射するように構成される。遮光部は、光伝搬部と観察者との間に設けられる。また、遮光部は、第1の遮光層(101)と、第2の遮光層(102)とを備える。第1の遮光層は、複数の第1の空孔部(13)と複数の第1の遮光部(11,21,31,41)とを有する。第2の遮光層は、第1の遮光層よりも観察者側に配置され、複数の第2の空孔部(14)と複数の第2の遮光部(12,22,32,42)と、を有する。複数の第2の遮光部の各々は、複数の第1の遮光部の各々から延伸した第1の平行線(A2)上に配置されており、第1の平行線は、第1の直線(A1)に平行な直線であり、第1の直線は、第1の遮光層の面中心(CE)と観察者の固定の観察位置中心(410)とを繋ぎ、第1の遮光層の面法線(N)に対して第1角度(θ)傾斜している。複数の第1の遮光部の各々及び複数の第2の遮光部の各々は、面法線に対して第1角度傾斜した面(11a,12a,31a,32a)、又は、面法線に対して第1角度傾斜した面上の複数の遮光ポイント(211,213,221,223,41a,41b,42a,42b)を有する。
【0007】
本開示の1つの局面の死角補助装置は、遮光部が第1の遮光層と第2の遮光層とに分かれている。そのため、第1の遮光部と第2の遮光部の各々の長さを縮小して、第1の遮光層と第2の遮光層の各々のアスペクト比を減少させても、遮光部全体としてのアスペクト比が一定値以上になり、光伝搬部への不要光の入射が遮断される。すなわち、第1の遮光層と第2の遮光層の製造を容易にしつつ、光伝搬部への不要光の入射を遮断することができる。また、複数の第2の遮光部の各々が第1の平行線上に配置されているため、死角領域から光伝搬部へ入射した光線が、観察位置中心へ放射されることが妨げられない。したがって、装置の体格を低減しつつ、観察者の視界への不要光の入り込みを抑制して死角領域の像を観察者に提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】死角補助装置の全体を示す図である。
図2】第1実施形態に係る死角補助装置の遮光部を示す断面図である。
図3】第2実施形態に係る死角補助装置の遮光部を示す断面図である。
図4】第2実施形態に係る死角補助装置の第1及び第2の遮光部を構成する遮光部材の一例を示す斜視図である。
図5】第2実施形態に係る死角補助装置の第1及び第2の遮光部を構成する遮光部材の別の一例を示す斜視図である。
図6】第3実施形態に係る死角補助装置の遮光部を示す断面図である。
図7】第4実施形態に係る死角補助装置の遮光部を示す断面図である。
図8】第4実施形態に係る死角補助装置の第1及び第2の遮光部を構成する遮光部材の一例を示す平面図である。
図9】第4実施形態に係る死角補助装置の第1及び第2の遮光部を示す平面図である。
図10】他の実施形態に係る死角補助装置の光伝搬部を示す断面図である。
図11】他の実施形態に係る死角補助装置の光伝搬部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
(1.第1実施形態)
<1-1.構成>
本実施形態に係る死角補助装置100の構成について、図1及び図2を参照して説明する。本実施形態では、死角補助装置100は、車両のピラー200に設置され、ピラー200等の障害物によって遮られる死角領域300の像を観察者へ提供する。
【0010】
死角補助装置100は、光伝搬部130と、遮光部10と、を備える。光伝搬部130は、平面ミラー120と、半透過平面ミラー110とを備える。平面ミラー120は、入射した光を反射する。半透過平面ミラー110は、入射した光の一部を透過し、残りを反射する。
【0011】
平面ミラー120と半透過平面ミラー110は、平面ミラー120の反射面と半透過平面ミラー110の半透過反射面とが互いに略平行になるように配置されている。平面ミラー120は、ピラー200に取り付けられ、半透過平面ミラー110は、平面ミラー120よりも観察者側に設けられている。平面ミラー120及び半透過平面ミラー110は、図示しないホルダー等により位置が固定されている。
【0012】
半透過平面ミラー110は、平面ミラー120と対向する基部と、基部から延設された延設部とを含む。死角領域300から放射された光線LAは、半透過平面ミラー110の延設部へ入射し、半透過平面ミラー110と平面ミラー120との間で、透過と反射を繰り返して伝搬する。そして、光線LAは、半透過平面ミラー110からアイリプス400へ向けて出射される。アイリプス400は、固定された観察者の眼の存在領域である。本実施形態では、アイリプス400は、車両の運転席に座った観察者の目の位置が入る固定の領域に相当する。目の位置は統計的に解析された位置である。アイリプス400に光線LAが到達することにより、観察者は死角領域300内の物体の像を視認することができる。
【0013】
遮光部10は、光伝搬部130と観察者との間に設けられている。具体的には、遮光部10は、半透過平面ミラー110の第1の面と第2の面のうちの第2の面に設けられている。第1の面は、半透過反射面に相当し、第2の面は、半透過反射面と反対側の観察者側の面に相当する。
【0014】
遮光部10は、遮光性の部材であり、死角領域300以外からの不要光LBの光伝搬部130への入射を遮断する。不要光LBが光伝搬部130へ入射すると、その一部が半透過平面ミラー110で反射され、別の一部が半透過平面ミラー110を透過して平面ミラー120で反射されて半透過平面ミラー110から出射される。半透過平面ミラー110で反射された不要光LB、及び半透過平面ミラー110から出射された不要光LBがアイリプス400に到来すると、観察者にゴースト像が提示される。その結果、死角領域300内の物体の視認性が低下する可能性がある。
【0015】
遮光部10は、第1の遮光層101と、第2の遮光層102とを備える。第1の遮光層101は、半透過平面ミラー110の第2の面上に設けられている。第2の遮光層102は、第1の遮光層101よりも観察者側に設けられている。
【0016】
第1の遮光層101は、複数の第1の遮光部11と、複数の第1の空孔部13とを備える。複数の第1の遮光部11は、間隔Pで配置されており、間隔Pの部分が第1の空孔部13になっている。すなわち、複数の第1の遮光部11の各々と複数の第1の空孔部13の各々は、交互に配置されている。
【0017】
同様に、第2の遮光層102は、複数の第2の遮光部12と、複数の第2の空孔部14とを備える。複数の第2の遮光部12は、複数の第1の遮光部11と同じ間隔Pで配置されており、間隔Pの部分が第2の空孔部14になっている。
【0018】
複数の第1の遮光部11及び複数の第2の遮光部12は、ルーバー構造を有する。すなわち、第1の遮光部11の各々及び第2の遮光部12の各々は、板状の部材であり、面法線Nに対して傾けて設置されている。面法線Nは、第1の遮光層101の面法線、すなわち半透過平面ミラー110の面法線である。第1の遮光部11の各々及び第2の遮光部12の各々は、不透過性の塗装(例えば黒色塗装)を施した金属や、光不透過性の樹脂で構成されている。
【0019】
第2の遮光部12の各々は、面法線Nに対して第1の遮光部11の各々からずらして配置されている。詳しくは、第2の遮光部12の各々は、第1の遮光部11の各々から延伸した第1の平行線A2上に配置されている。第1の平行線A2は、第1の直線A1に平行な直性である。第1の直線A1は、第1の遮光層101の面中心CEと観察位置中心410とを繋ぎ、面法線Nに対して第1角度θ傾斜した直線である。観察位置中心410は、固定されたアイリプス400の中心であり、観察者の両目を結んだ線文の中点の統計的な中心位置に相当する。
【0020】
第1の遮光部11の各々は、面法線Nに対して第1角度θ傾斜した傾斜面11aを有する。また、第2の遮光部12の各々は、面法線Nに対して第1角度θ傾斜した傾斜面12aを有する。
【0021】
第2の遮光部12の各々が第1の平行線A2上に設けられているため、半透過平面ミラー110から出射された光線LAが、第2の遮光部12の各々により観察位置中心410へ到来することが妨げられない。
【0022】
また、アイリプス中心に到来する不要光LB1は、隣り合う第1の遮光部11により遮光される。第1の遮光部11は、左上端部11bと右下端部11cとを有する。ここでは、死角領域300側(すなわち、紙面右側)を右、アイリプス400側(すなわち、紙面左側)を左と称する。右側の第1の遮光部11の左上端部11bと、左側の第1の遮光部11の右下端部11cとで不要光LBを遮断する条件が、最も厳しい遮光条件になる。すなわち、右側の第1の遮光部11の左上端部11bと、左側の第1の遮光部11の右下端部11cとが遮光ポイントになる条件が、最も厳しい遮光条件になる。したがって、アスペクト比Aと、遮蔽率αと、第1角度θとが、以下の式1を満たす場合に、中心視野に到来する不要光LB1が隣り合う第1の遮光部11により遮光される。
【0023】
【数1】
【0024】
アスペクト比Aは、第1の遮光部11の各々及び第2の遮光部12の各々のアスペクト比であり、h/dで定義される。hは、第1の遮光部11の各々及び第2の遮光部12の各々の面法線N方向の高さである。遮蔽率αは、第1の遮光部11の各々及び第2の遮光部12の各々の遮蔽率であり、α=d/Pで定義される。幅dは、第1の遮光部11の各々及び第2の遮光部12の各々の幅(具体的には、第1の直線A1と面法線Nとで張る断面のおける幅)である。また、第1角度θは、面法線Nに対する第1の直線A1の傾斜角である。
【0025】
また、第2の遮光部12の各々は、第1の空孔部13の各々から延伸した第2の平行線B2上に配置されている。第2の平行線B2は、第2の直線B1に平行な直線である。第2の直線B1は、第1の直線A1を第1の遮光層101の面に対して鏡映対象にした直線である。
【0026】
第2の遮光部12の各々を第2の平行線B2上に設けることにより、アイリプス周辺部に到来する不要光LB2が第2の遮光部12の各々により遮光される。アイリプス周辺部は、アイリプス400の右側周辺部に相当する。詳しくは、離間量Lと、遮蔽率αと、第1角度θと、間隔Pとが、以下の式2を満たす場合に、周辺視野に到来する不要光LB2が第2の遮光部12の各々により遮光される。
【0027】
【数2】
【0028】
離間量Lは、第1の遮光層101の下辺から第2の遮光層102の下辺までの距離、すなわち、第1の遮光部11の下辺から第2の遮光部12の下辺までの距離である。ここでは、光伝搬部130側を下、観察者側を上と称する。
【0029】
第2の遮光部12は、左上端部12bと右下端部12cとを有する。式(2)において、離間量Lが最小値以上となる条件は、第2の遮光部12の左上端部12bで不要光LB2を遮光できる条件に相当する。すなわち、第2の遮光部12の左上端部12bが遮光ポイントになる条件に相当する。式(2)において、離間量Lが最大値以下となる条件は、第2の遮光部12の右下端部12cで不要光LB2を遮光できる条件に相当する。すなわち、第2の遮光部12の右下端部12cが遮光ポイントになる条件に相当する。
【0030】
<1-2.効果>
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)遮光部10が第1の遮光層101と第2の遮光層102とに分かれている。そのため、第1の遮光層101と第2の遮光層102の各々の長さを縮小して、第1の遮光層101と第2の遮光層102の各々のアスペクト比Aを減少させても、遮光部10全体としてのアスペクト比が一定値以上になり、光伝搬部130への不要光LBの入射が遮断される。すなわち、第1の遮光層101と第2の遮光層102の製造を容易にしつつ、光伝搬部130への不要光LBの入射を遮断することができる。また、複数の第2の遮光部12の各々が第2の平行線B2上に配置されているため、死角領域300から光伝搬部130へ入射した光線LAが、観察位置中心410へ放射されることが妨げられない。したがって、死角補助装置100の体格を低減しつつ、観察者の視界への不要光LBの入り込みを抑制して死角領域300の像を観察者に提示することができる。
【0031】
(2)第2の遮光部12の各々が、第2の平行線B2上に配置されていることにより、観察位置中心410に到達する不要光LB1だけでなく、アイリプス400の右側周辺部周辺部に到達する不要光LB2も遮断することができる。
【0032】
(3)第2の遮光部12の各々の間隔Pが、第1の遮光部11の各々の間隔Pと等しいことにより、どの方向からアイリプス400に到来する不要光LBも常に遮断することができる。
(2.第2実施形態)
<2-1.第1実施形態との相違点>
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0033】
前述した第1実施形態では、第1の遮光層101は複数の第1の遮光部11を備え、第2の遮光層102は複数の第2の遮光部12を備えていた。これに対し、第2実施形態では、第1の遮光層101は複数の第1の遮光部11の代わりに複数の第1の遮光部21を備え、第2の遮光層102は複数の第2の遮光部12の代わりに複数の第2の遮光部22を備えている点で、第1実施形態と相違する。
【0034】
第2実施形態に係る遮光部10の構成について、図3~5を参照して説明する。
第1の遮光部21の各々は、第1の矩形部21aと、第2の矩形部21bとを備える。同様に、第2の遮光部22の各々は、第1の矩形部22aと、第2の矩形部22bとを備える。第1の矩形部21a,22a及び第2の矩形部21b,22bは、第1の直線A1と面法線Nとで張る断面において、矩形形状を有する。
【0035】
第2の矩形部21b,22bの各々は、第1の矩形部21a,22aの観察者側に、第1の矩形部21a,22aの各々からずらして配置されている。詳しくは、第2の矩形部21b,22bの各々は、第1の矩形部21a,22aの各々から面法線Nに対して第1角度θの方向へずらして配置されている。
【0036】
第1の遮光部21及び第2の遮光部22は、図4に示すメッシュ部材105を、第1角度θの方向へずらして積層して構成する。メッシュ部材105は、複数の矩形状の穴が設けられた板状の部材である。メッシュ部材105に設けられた複数の矩形状の穴は、第1の空孔部13及び第2の空孔部14になる。よって、第1の遮光部21及び第2の遮光部22は、直方体で構成されている。
【0037】
あるいは、第1の遮光部21及び第2の遮光部22は、図5に示すスリット部材106を、第1角度θの方向へずらして積層して構成してもよい。スリット部材106は、複数の細長い孔が設けられた板状の部材である。メッシュ部材105及びスリット部材106は、不透過性の塗装(例えば黒色塗装)を施した金属や光不透過性の樹脂で構成される。メッシュ部材105及びスリット部材106は、エッチングやパンチングメタル等の製法により製造される。
【0038】
第1の矩形部21a,22aは、右上端部211,221と右下端部212,222を有する。第2の矩形部21b,22bは、右上端部213,223と左上端部214,224を有する。第1の矩形部21a,22aの右上端部211,221及び第2の矩形部21b,22bの右上端部213,223は、面法線N対して第1角度θ傾斜した面上に位置している。よって、第1の遮光部21及び第2の遮光部22は、それぞれ2個の遮光ポイントを有する。
【0039】
そして、(i)d≧(1/5)P又は(ii)d≧(1/4)Pの条件を満たす場合に、隣り合う第1の遮光部21により、観察位置中心410に到来する不要光LB1が遮光される。条件(i)は、死角補助装置100へ到来した不要光LBが半透過平面ミラー110で反射した後、第1の遮光部21に当たって遮光される条件に相当する。条件(ii)は、死角補助装置100へ到来した不要光LBが半透過平面ミラー110で反射することなく、第1の遮光部21に当たって遮光される条件に相当する。
【0040】
さらに、本実施形態では、d=1/4Pのときに、離間量Lと、厚さhが以下の式(3)を満たす場合に、第2の平行線B2上に設けられた第2の遮光部22の各々により、アイリプスの右周辺部に到来する不要光LB2が遮光される。ここで、厚さhは、第1の矩形部21a,22a及び第2の矩形部21b,22bの面法線N方向の厚さである。
【0041】
【数3】
【0042】
式(3)において、離間量Lが最小値以上となる条件は、第1の矩形部22aの左上端部224で不要光LB2を遮光できる条件に相当する。すなわち、第1の矩形部22aの左上端部224が遮光ポイントになる条件に相当する。式(3)において、離間量Lが最大値以下となる条件は、第1の矩形部22aの右下端部222で不要光LB2を遮光できる条件に相当する。すなわち、第1の矩形部22aの右下端部222が遮光ポイントになる条件に相当する。
【0043】
<2-3.効果>
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1)~(3)を奏する。
【0044】
(3.第3実施形態)
<3-1.第1実施形態との相違点>
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0045】
前述した第1実施形態では、第1の遮光層101は複数の第1の遮光部11を備え、第2の遮光層102は複数の第2の遮光部12を備えていた。これに対して、第3実施形態では、第1の遮光層101は複数の第1の遮光部11の代わりに複数の第1の遮光部31を備え、第2の遮光層102は複数の第2の遮光部12の代わりに複数の第2の遮光部32を備えている点で、第1実施形態と相違する。
【0046】
第3実施形態に係る遮光部10の構成について、図6を参照して説明する。
第1の遮光部31及び第2の遮光部32の各々は、第1の直線A1と面法線Nとで張る断面において、底辺が第1の遮光層101の面に平行な三角形状を有する。すなわち、第1の遮光部31の各々及び第2の遮光部32の各々は、三角柱状に構成されている。
【0047】
第1の遮光部31の各々及び第2の遮光部32の各々は、不透過性の塗装(例えば黒色塗装)を施した金属や光不透過性の樹脂で構成される。第1の遮光部31の各々及び第2の遮光部32の各々は、パンチングメタルなどの製法で製造される。
【0048】
第1の遮光部31の各々は、面法線Nに対して第1角度θ傾斜した傾斜面31aを有する。また、第2の遮光部32の各々は、面法線Nに対して第1角度θ傾斜した傾斜面32aを有する。また、第1の遮光部31は、上端部31bと右下端部31cとを有する。第2の遮光部32は、上端部32bと右下端部32cとを有する。上端部31b,32bは、三角形の頂点に相当する。
【0049】
また、観察位置中心410に到来する不要光LB1は、隣り合う第1の遮光部31により遮光される。右側の第1の遮光部31の上端部31bと、左側の第1の遮光部31の右下端部31cとが遮光ポイントになる場合が、もっとも厳しい遮光条件になる。したがって、d≧(1/2)Pの条件を満たす場合に、観察位置中心410に到来する不要光LB1が隣り合う第1の遮光部31により遮光される。
【0050】
さらに、離間量Lと、間隔Pと、幅dと、底辺の長さDとが、以下の式(4)を満たす場合に、n個隣の第2の遮光部32により、アイリプス右側周辺部に到来する不要光LB2が遮光される。ここで、幅dは、傾斜面31a,32aを三角形の底辺に射影した長さである。nは、1以上の整数である。例えば、隣り合う第2の遮光部32により不要光LB2を遮光する場合は、n=1である。また、ある第2の遮光部32と、その第2の遮光部32から2つ目の第2の遮光部32とで不要光LB2を遮光する場合は、n=2である。
【0051】
【数4】
【0052】
式(4)において、離間量Lが最小値以上となる条件は、第2の遮光部32の上端部32bが遮光ポイントになる条件に相当する。式(2)において、離間量Lが最大値以下となる条件は、第2の遮光部32の右下端部32cが遮光ポイントになる条件に相当する。
【0053】
<3-3.効果>
以上詳述した第3実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1)~(3)を奏し、さらに以下の効果を奏する。
【0054】
(4)第1の遮光部31の各々及び第2の遮光部32の各々を、三角柱形状に構成したことにより、遮光部10の製造が容易になる。
(4.第4実施形態)
<4-1.第1実施形態との相違点>
第4実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0055】
前述した第1実施形態では、第1の遮光層101は複数の第1の遮光部11を備え、第2の遮光層102は複数の第2の遮光部12を備えていた。これに対して、第4実施形態では、第1の遮光層101は、複数の第1の遮光部11の代わりに、複数の第1の遮光部41を備え、第2の遮光層102は、複数の第2の遮光部12の代わりに、複数の第2の遮光部42を備える。
【0056】
第4実施形態に係る遮光部10の構成について、図7~9を参照して説明する。
複数の第1の遮光部41は、第1の織網51aの複数の経糸41aと、第2の織網51bの複数の経糸41bにより構成されている。複数の第2の遮光部42は、第1の織網52aの複数の経糸42aと、第2の織網52bの複数の経糸42bにより構成されている。
【0057】
第1の織網51a,52aは、複数の緯糸43と、複数の経糸41a,42aとで構成されている。複数の緯糸43は、第1の直線A1と面法線Nとで張る断面に対して平行に並んでいる。複数の経糸41a,42aは、断面に対して垂直に並んでいる。同様に、第2の織網51b,52bは、複数の緯糸43と、複数の経糸41b,42bとで構成されている。複数の経糸41b,42bは、断面に対して垂直に並んでいる。
【0058】
第1の織網51a,52a及び第2の織網51b,52bは、不透過性の塗装(例えば黒色塗装)を施した金属や光不透過性の樹脂で構成される。第1の織網51a,52a及び第2の織網51b,52bは、平織や綾織でメッシュ状に構成されている。複数の経糸41a,42a,41b,42bと複数の緯糸43とで囲まれた矩形状の空孔が、複数の第1の空孔部13及び複数の第2の空孔部14になっている。
【0059】
第2の織網51b,52bは、第1の織網51a,52aの観察者側に配置されている。第2の織網51b,52bの緯糸43は、第1の織網51a,52aの緯糸43と、面法線N方向において並べて配置されている。
【0060】
第2の織網51b,52bの経糸41b,42bは、面法線Nに対して第1角度θの方向へ第1の織網51a,52aの経糸41a,42aからずらして配置されている。経糸41a,42a,41b,42bの各々は、面法線Nに対して第1角度θ傾斜した面上に配置されている。
【0061】
<4-3.効果>
以上詳述した第4実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1)~(3)を奏する。
【0062】
(5.他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0063】
(a)上記各実施形態では、光伝搬部130が、半透過平面ミラー110と平面ミラー120とから構成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、図10に示すように、死角補助装置100は、光伝搬部130の代わりに、光伝搬部130Aを備えていてもよい。光伝搬部130Aは、半透過平面ミラー110Aと、平面ミラー120Aと、樹脂平板140と、遮光板150と、から構成されている。半透過平面ミラー110A及び平面ミラー120Aは、誘電体多層膜や金属膜で構成されている。樹脂平板140は、アクリルなどの樹脂で構成されている。遮光板150は、光不透過性の樹脂又は金属で構成されている。半透過平面ミラー110A及び平面ミラー120Aの大きさ及び配置は、半透過平面ミラー110及び平面ミラー120と同じである。光伝搬部130の半透過平面ミラー110と平面ミラー120は別体であった。これに対して、光伝搬部130Aの半透過平面ミラー110Aと平面ミラー120Aは、樹脂平板140を介して一体化されているため、半透過平面ミラー110Aと平面ミラー120Aとの間での角度調整が不要になる。
【0064】
(b)また、図11に示すように、死角補助装置100は、光伝搬部130の代わりに、光伝搬部130Bを備えていてもよい。光伝搬部130Bは、出射回折光学素子110Bと、入射回折光学素子120Bと、樹脂平板140Bと、から構成されている。入射回折光学素子120Bは、樹脂平板140Bの死角側の面において、死角領域300からの光線LAが入射する領域に設けられている。出射回折光学素子110Bは、樹脂平板140Bの観察者側の全面に設けられている。
【0065】
死角領域300から入射回折光学素子120Bへ入射した光線LAの角度は、入射回折光学素子120Bによって樹脂平板140Bを全反射で導波する角度に変換される。樹脂平板140Bを導波して出射回折光学素子110Bから出射される光線LAの角度は、出射回折光学素子110Bにより再度入射時の角度に変換される。これにより、出射回折光学素子110Bから出射された光線LAは、アイリプス400から死角領域300の方向の像として視認される。
【0066】
また、入射回折光学素子120Bの回折格子ピッチを出射回折光学素子110Bの回折格子ピッチと同一にすることにより、出射時の光線LAの角度を入射時の光線LAの角度に合わせることができる。これにより、回折格子による色収差の影響を低減できる。
【0067】
光伝搬部130Bは、半透過平面ミラー及び平面ミラーを用いないので、プレス成型などのより安価な方法で製造することができる。また、回折格子の形状を最適化することにより、出射光の回折効率を制御することができる。ひいては、出射光の光量ムラを低減することができる。なお、入射回折光学素子120Bは、表面レリーフ型の回折格子で構成されていてもよいし、体積ホログラムを用いた回折格子で構成されていてもよい。
【0068】
(c)上記各実施形態では、第1の遮光部11,21,31,41が、第2の遮光部12,22,32,42と同じ構成を有していたが、第1の遮光部11,21,31,41の構成は、第2の遮光部12,22,32,42の構成と異なっていてもよい。例えば、遮光部10は、第1の遮光部11と第2の遮光部22を備えていてもよいし、第1の遮光部31と第2の遮光部12を備えていても良い。
【0069】
(d)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10…遮光部、11,21,31,41…第1の遮光部、12,22,32,42…第2の遮光部、13…第1の空孔部、14…第2の空孔部、100…死角補助装置、101…第1の遮光層、102…第2の遮光層、130,130A,130B…光伝搬部、300…死角領域、400…アイリプス、410…観察位置中心、A1…第1の直線、A2…第1の平行線。
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
図10
図11