(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】イメージセンサ
(51)【国際特許分類】
H04N 25/78 20230101AFI20241126BHJP
H03M 1/08 20060101ALI20241126BHJP
H03M 1/56 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H04N25/78
H03M1/08 A
H03M1/56
(21)【出願番号】P 2021119572
(22)【出願日】2021-07-20
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 玄
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-041205(JP,A)
【文献】特開2015-162751(JP,A)
【文献】特開2012-005126(JP,A)
【文献】国際公開第2012/144234(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0244388(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/78
H03M 1/08
H03M 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮像素子を備える画素アレイと、
前記画素アレイから画素データが並列的に供給されるADC回路であって、デジタルコードに従った参照信号を出力する参照信号生成回路と、前記参照信号と前記画素データとを比較する比較回路とを備え、前記参照信号と前記画素データとが所定の関係になったときの前記デジタルコードを出力するADC回路と、
を備え、
前記参照信号生成回路は、
前記デジタルコードが、第1範囲にあるときと、前記第1範囲と異なる第2範囲にあるときとで、前記デジタルコードの変化に対して、互いに異なる傾きのランプ信号を出力するランプ信号発生回路と、
前記ランプ信号が供給され、前記第1範囲と前記第2範囲において、同一の傾きの前記参照信号を出力するアッテネータと、
を備える、イメージセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のイメージセンサにおいて、
前記比較回路は、並列的に供給される前記画素データに対応した複数の比較器を備え、
前記ADC回路は、前記複数の比較器に対応した複数のラッチ回路を備え、
前記複数のラッチ回路には、前記デジタルコードが供給され、前記ラッチ回路は、対応する比較器が画素データと参照信号とが一致したことを示すとき、前記デジタルコードを、画素データに対応するデジタルコードとして保持する、イメージセンサ。
【請求項3】
請求項2に記載のイメージセンサにおいて、
前記アッテネータは、前記ランプ信号の電圧を分圧する分圧回路を備える、イメージセンサ。
【請求項4】
請求項2に記載のイメージセンサにおいて、
前記参照信号生成回路は、コードを発生するコード発生回路と、前記コード発生回路によって発生されたコードを受けて、前記デジタルコードを出力する演算器とを備え、前記演算器は、前記第1範囲から前記第2範囲に変化するとき、前記ランプ信号を連続的に変化させるようなデジタルコード値を出力する、イメージセンサ。
【請求項5】
請求項2に記載のイメージセンサにおいて、
前記アッテネータは、前記複数の比較器に対応した複数の単位アッテネータを備えている、イメージセンサ。
【請求項6】
請求項2に記載のイメージセンサにおいて、
前記アッテネータから出力される前記参照信号は、前記複数の比較器に対して共通に供給される、イメージセンサ。
【請求項7】
請求項1に記載のイメージセンサにおいて、
前記画素アレイは、第1電圧によって動作し、前記ADC回路は、前記第1電圧よりも低い電圧値の第2電圧によって動作する、イメージセンサ。
【請求項8】
複数の撮像素子を備え、第1電圧によって動作する画素アレイと、
前記画素アレイから画素データが並列的に供給されるADC回路であって、デジタルコード値に従った参照信号を出力する参照信号生成回路と、前記参照信号と前記画素データとを比較する比較回路とを備え、前記参照信号と前記画素データとが所定の関係になったときの前記デジタルコード値を出力するADC回路と、
を備え、
前記参照信号生成回路は、
前記第1電圧よりも電圧値の低い第2電圧によって動作する回路であって、前記デジタルコード値の変化に従って、第1の傾きのランプ信号を出力する発生回路と、
前記第1電圧によって動作する回路であって、前記ランプ信号の電圧を変換する電圧変換回路と、
前記電圧変換回路によって変換された前記ランプ信号が供給され、前記第1の傾きとは異なる第2の傾きのランプ信号を、前記参照信号として出力するアッテネータと、
を備える、イメージセンサ。
【請求項9】
請求項8に記載のイメージセンサにおいて、
前記発生回路は、前記デジタルコード値をアナログ信号に変換するDAC回路を備え、前記電圧変換回路は、前記第1電圧によって動作する分圧フィードバックレギュレータを備え、前記アッテネータは、複数の容量素子によって構成された分圧回路を備える、イメージセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージセンサに関し、例えば、複数の撮像素子がアレイ状に配置された画素アレイとアナログ/デジタル変換(以下、ADCとも称する)回路とを備え、画素アレイからの画素データをデジタル信号に変換して、出力するイメージセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
画素アレイに相当する画像センサと、ADC回路と、ランプ波発生器とを備えたイメージセンサ(個体撮像素子)は、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画素アレイから出力される画素データをデジタル信号に変換するADC回路として、デジタルコードに従って変化するランプ信号と画素データとを比較し、ランプ信号と画素データとが、例えば一致したときのデジタルコードの値を、画素データに対応するデジタル信号として出力するものがある。本発明者が検討したところ、熱雑音、フリッカノイズ等の例えば数十μVのノイズが、ランプ信号に重畳すると、ADC回路によって変換されたデジタル信号を画面に表示した際に、横筋として認識されることがあることが判明した。
【0005】
人の目は、明るい光に比べて、暗い光に敏感である。そのため、特に、暗い光を撮像した画素データをデジタル信号に変換する際に、ランプ信号にノイズが重畳すると、画面上の横筋が目立つことになり、ISO感度の向上が制限されることになる。
【0006】
特許文献1には、ランプ信号に重畳したノイズによって、横筋が目立つことは記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される実施の形態のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0008】
イメージセンサは、複数の撮像素子を備える画素アレイと、画素アレイから画素データが並列的に供給されるADC回路とを備えている。ADC回路は、デジタルコードに従った参照信号を出力する参照信号生成回路と、参照信号と画素データとを比較する比較回路とを備え、参照信号と画素データとが所定の関係になったときのデジタルコードの値を出力する。ここで、参照信号生成回路は、デジタルコードの値が、第1範囲にあるときと、第1範囲と異なる第2範囲にあるときとで、デジタルコードの変化に対して、互いに異なる傾きのランプ信号を出力するランプ信号発生回路と、ランプ信号が供給され、第1範囲と第2範囲において、同一の傾きの参照信号を出力するアッテネータとを備えている。
【0009】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、ノイズ低減によりISO感度の向上を図ることが可能なイメージセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係るイメージセンサの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係るイメージセンサの動作を説明するための図である。
【
図3】実施の形態1に係るイメージセンサの動作を説明するための図である。
【
図4】(A)~(C)は、実施の形態1に係るイメージセンサの動作を説明するための波形図である。
【
図5】(A)~(C)は、実施の形態1に係るランプ信号発生回路を説明するための図である。
【
図6】実施の形態1の変形例に係るイメージセンサを説明するための図である。
【
図7】(A)~(C)は、実施の形態1の変形例に係るイメージセンサを説明するための波形図である。
【
図8】(A)および(B)は、実施の形態1に係るイメージセンサにおいて発生する課題を説明するための波形図である。
【
図9】実施の形態2に係るイメージセンサの構成を示すブロック図である。
【
図10】実施の形態2に係る演算器を説明するための図である。
【
図11】(A)~(C)は、実施の形態2に係るイメージセンサの動作を説明するための波形図である。
【
図12】実施の形態3に係るイメージセンサの構成を示すブロック図である。
【
図13】(A)および(B)は、実施の形態3に係るイメージセンサの動作を説明するための波形図である。
【
図14】実施の形態4に係るイメージセンサの構成を示すブロック図である。
【
図15】(A)および(B)は、実施の形態4に係るイメージセンサの動作を説明するための波形図である。
【
図16】実施の形態1に係るイメージセンサの模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまでも一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。
【0013】
また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0014】
以下の説明では、1つの半導体チップに、画素アレイとADC回路が配置されたイメージセンサを例にして説明するが、これに限定されるものではない。例えば、画素アレイとADC回路とは、異なる半導体チップに配置されていてもよい。
【0015】
(実施の形態1)
<全体構成>
図16は、実施の形態1に係るイメージセンサの模式的な平面図である。イメージセンサ100は、1つの半導体チップに配置された複数の回路ブロックによって構成されているが、同図には説明に必要な回路ブロックのみが描かれている。
図16において、Pixは、撮像を行う撮像素子を示している。複数の撮像素子Pixが、アレイ(行列)状に配置され、画素アレイPXAが構成されている。
【0016】
特に制限されないが、画素アレイPXAにおいて、同じ列(画素列)に配置された複数の撮像素子は、画素データ線に接続され、同じ行(画素行)に配置された複数の撮像素子は、読み出し時に、同時に選択される。
図16では、画素行がPIL_0~PIL_nとして例示され、画素データ線がPID_0~PID_mとして例示されている。
【0017】
画素アレイPXAの画素データ線PID_0~PID_mは、ADC回路1に接続されている。画素アレイPXAの読み出し時には、例えば
図16に示すように、画素行PIL_0からPIL_nに向けて、順次、同一の画素行に配置されている複数の撮像素子Pixから、画素データ線PID_0~PID_mに画素データが読み出される。読み出された画素データは、ADC回路1によって対応するデジタル信号に変換され、デジタルの画素データDPIとして、ADC回路1から出力される。
【0018】
<ADC回路の構成>
図1は、実施の形態1に係るイメージセンサの構成を示すブロック図である。
図1において、画素アレイPXAは、第1電圧V1を動作電圧として動作し、ADC回路1は、第1電圧V1よりも絶対値の低い第2電圧V2を動作電圧として動作する。第1電圧V1は、例えば5(V)であり、第2電圧V2は、例えば3.3(V)である。
【0019】
撮像素子Pix(
図16)は、最も暗い光を撮像したとき、例えば2(V)の画素データを出力し、最も明るい光を撮像したとき、例えば1(V)の画素データを出力するものとする。すなわち、撮像した光の輝度に応じて、画素データの値は、1(V)と2(V)の間で変化することになる。
【0020】
読み出しにより、画素アレイPXAからは、画素データ線PID_0~PID_mを介して、並列的に、1(V)~2(V)の画素データが、ADC回路1に供給されることになる。
【0021】
ADC回路1は、ランプ信号RAMPを発生するランプ信号発生回路(発生回路)RAMP_Gと、アッテネータATTと、制御回路CNTと、比較回路CPと、バイアス回路BSCと、ラッチ回路LTCと、デジタルコードDCDを発生するコード発生回路DCD_Gとを備えている。
【0022】
ランプ信号発生回路RAMP_Gは、デジタル/アナログ変換(以下、DACとも称する)回路2と、ボルテージフォロアー回路3とを備えている。DAC回路2には、デジタルコードDCDが供給され、デジタルコードDCDの値(デジタルコード値)をアナログ信号に変換する。変換されたアナログ信号は、演算器によって構成されたボルテージフォロアー回路3に供給される。ボルテージフォロアー回路3の出力が、ランプ信号RAMPとして、ランプ信号線RAMP_Lに供給される。
【0023】
ランプ信号発生回路RAMP_Gは、第2電圧V2を動作電圧として動作する。デジタルコードDCDは、コード発生回路DCD_Gによって発生される。実施の形態1においては、コード発生回路DCD_Gは、12ビットカウンタによって構成され、デジタルコードDCDは、12ビットの2値信号によって構成されている。12ビットカウンタが、時間の経過に伴ってカウントアップまたはカウントダウンすることにより、デジタルコードDCDの値は、時間に伴って変化する。デジタルコードDCDの値を十進数で表した場合、時間の経過に伴って、デジタルコードDCDの値は、例えば0から4095へと変化する。
【0024】
デジタルコードDCDの値が、時間の経過に伴って変化(増加または減少)することにより、DAC回路2から出力されるアナログ信号の電圧も変化し、ランプ信号RAMPの電圧も、時間の経過に伴って変化する。実施の形態1においては、制御回路CNTからのランプ制御信号RAMP_Cによって、DAC回路2が制御される。後で図面を用いて説明するが、DAC回路2においては、ランプ制御信号RAMP_Cによって、その基準電流が切り替えられる。基準電流を切り替えることにより、デジタルコードDCDに対してランプ信号RAMPの傾きが変更される。
【0025】
ランプ信号RAMPは、アッテネータATTを介して、参照信号SD(SD_0~SD_m)として比較回路CPに供給される。アッテネータATTのゲインは、制御回路CNTからのアッテネータ制御信号ATT_Cによって切り替えられる。すなわち、アッテネータATTは、アッテネータ制御信号ATT_Cによって示されるゲインに従って、ランプ信号RAMPを減衰させる減衰器である。制御回路CNTは、ランプ制御信号RAMP_Cによってランプ信号RAMPの傾きを切り替えたとき、アッテネータ制御信号ATT_CによってアッテネータATTのゲインも切り替える。
【0026】
実施の形態1においては、アッテネータATTは、画素データ線PID_0~PID_mに対応した複数の単位アッテネータAT_0~AT_mによって構成されている。比較回路CPも、画素データ線PID_0~PID_mに対応する複数の比較器CP_0~CP_mによって構成されている。画素データ線PID_0を例にして述べると、対応する単位アッテネータAT_0から、ランプ信号RAMPが、参照信号SD_0として、対応する比較器CP_0に供給される。比較器CP_0は、供給された参照信号SD_0と対応する画素データ線PID_0を介して供給される画素データとを比較する。他の単位アッテネータAT_1~AT_mおよび比較器CP_1~CP_mも、単位アッテネータAT_0および比較器CP_0と同様である。
【0027】
比較器CP_0~CP_mには、バイアス回路BSCから所定のバイアス電圧が供給されている。比較器CP_0を例にして、比較器の構成を説明すると、比較器は、容量素子C1~C4と、差動アンプA1と、比較器A2とシュミットトリガ回路STとを備えている。参照信号SD_0と画素データは、容量素子C1とC2を介して差動アンプA1に供給され、増幅される。差動アンプA1の出力は、容量素子C3とC4を介して比較器A2に供給され、参照信号SD_0の電圧と画素データの電圧が比較される。比較器A2の出力は、シュミットトリガ回路STに供給される。参照信号SD_0の電圧と画素データの電圧とが、所定の関係、例えば一致したとき、シュミットトリガ回路STからラッチトリガ(トリガ)信号LT_Cが、ラッチ回路LTCに出力される。
【0028】
ラッチ回路LTCも、画素データ線PID_0~PID_mに対応する複数の単位ラッチ回路LT_0~LT_mによって構成されている。単位ラッチ回路LT_0~LT_mのそれぞれには、12本の信号線によって、コード発生回路DCD_Gを構成する12ビットカウンタから出力されているデジタルコードDCDが供給され、対応する比較器からのトリガ信号LT_Cに応答して、そのときのデジタルコードDCDの値をラッチ(保持)する。単位ラッチ回路LT_0を例にして述べると、対応する比較器CP_0からトリガ信号LT_Cが供給されると、これをトリガとして、そのときに供給されているデジタルコードDCDの値をラッチする。他の単位ラッチ回路LT_1~LT_mも、単位ラッチ回路LT_0と同様である。
【0029】
以上の構成により、参照信号SD_0~SD_mと画素データ線PID_0~PID_mにおける画素データとの比較が行われ、一致したときに、そのときのデジタルコードDCDの値が、単位ラッチ回路LT_0~LT_mにラッチされることになる。ラッチ回路LTCにラッチされたデジタルコードDCDの値が、画素データに対応したデジタルの画素データDPI(
図16)として出力されることになる。
【0030】
図1においては、デジタルコード信号DCDに従った参照信号SD_0~SD_mが、ランプ信号発生回路RAMP_Gと、アッテネータATTと、制御回路CNTとによって生成される。そのため、参照信号を生成する参照信号生成回路が、ランプ信号発生回路RAMP_G、アッテネータATTおよび制御回路CNTによって構成されていると見なすことができる。また、比較器CP_0~CP_mは、1ビットのADC回路と見なすことができる。なお、
図1に示した比較器CP_0~CP_mの構成は、一例であって、この構成に限定されるものではない。
【0031】
<参照信号生成回路の動作>
次に、参照信号生成回路の動作を、図面を用いて説明する。
図2~
図4は、実施の形態1に係るイメージセンサの動作を説明するための図である。
【0032】
図2には、
図1に示した構成のうち、ランプ信号発生回路RAMP_Gと、制御回路CNTと、画素データ線PID_0に対応する単位アッテネータAT_0および比較器CP_0とが示されている。ここでは、画素データ線PID_0に対応する単位アッテネータAT_0および比較器CP_0を例にして、動作を説明するが、他の画素データ線に対応する単位アッテネータおよび比較器でも、動作は同様である。なお、
図2において、SD_Gは、参照信号生成回路が、ランプ信号発生回路RAMP_G、アッテネータATTおよび制御回路CNTによって構成されていると見なした場合の参照信号生成回路を示している。
【0033】
図2においては、単位アッテネータAT_0は、ランプ信号線RAMP_L(
図1)と所定の電圧との間に直列接続された4つの容量素子CD1~CD4によって構成されている。4つの容量素子CD1~CD4は、同じ値にされている。ランプ信号RAMPの電圧は、4つの容量素子によって分圧され、どの容量素子から、参照信号SD_0取り出すかによって、ゲインが決定される。ここで、所定の電圧は、画素アレイPXAから出力される画素データの電圧が、最も暗いときの電圧値(2(V))に相当している。単位アッテネータAT_0は、容量素子によって構成され、ランプ信号RAMPと所定の電圧との間の差電圧を分圧する分圧回路と見なすことができる。
【0034】
図2に示した単位アッテネータAT_0は、アッテネータ制御信号ATT_Cによって、そのゲインを1倍または1/4倍に設定することが可能となっている。すなわち、アッテネータ制御信号ATT_Cによって、スイッチDW1をオン状態にすることで、ゲインを1倍に設定し、スイッチDW2をオン状態にすることで、ゲインを1/4倍に設定することが可能となっている。ランプ信号線RAMP_Lにおけるランプ信号RAMPの電圧と所定の電圧(2(V))との間の電圧差に、設定されたゲインが掛け算され、掛け算により算出された分圧電圧が所定の電圧から減算され、減算結果の電圧値が、アッテネータAT_0から出力される。例えば、
図2に示すように、ゲインが1/4倍に設定されている場合には、ランプ信号RAMPの電圧と所定の電圧との間の差電圧に、1/4が掛け算され、掛け算の結果の電圧が、2(V)から減算され、減算結果の電圧が単位アッテネータAT_0から出力されることになる。
【0035】
また、
図2において、NZは、ランプ信号発生回路RAMP_Gから出力されるランプ信号RAMPに重畳されるノイズを示している。このノイズNZは、前記したように例えば熱雑音、フリッカノイズ等に起因して発生し、例えば接地電圧を基準として、時間の経過に伴って、
図2に示すように上下に変動する。
【0036】
図2においては、DAC回路2の基準電流は、ランプ制御信号RAMP_Cによって、1倍、またはその4倍に切り替えられるものとする。なお、DAC回路2と、その基準電流の切り替えについては、後で
図5を用いて一例を説明する。また、アッテネータ制御信号ATT_Cによって、単位アッテネータAT_0のゲインは、前記したように1倍または1/4倍に切り替えられる。
【0037】
ランプ信号RAMPの電圧は、暗い光の画素データの電圧に相当する2(V)から明るい光の画素データの電圧に相当する1(V)との間で変化する。また、暗い光の画素データは、ADC回路1によって、0~1023(十進数)の範囲(第1範囲)のデジタルコードDCDの値に変換され、明るい光の画素データは、1024~4095(十進数)の範囲(第2範囲)のデジタルコードDCDの値に変換されるものとする。
【0038】
実施の形態1においては、
図3に示すように、制御回路CNTは、デジタルコードDCDの値が、第1範囲にあるとき、ランプ制御信号RAMP_Cによって、ランプ信号発生回路RAMP_Gにおける基準電流を4倍に設定し、アッテネータ制御信号ATT_Cによって、単位アッテネータAT_0のゲインを1/4倍に設定する。一方、デジタルコードDCDの値が、第2範囲にあるとき、制御回路CNTは、ランプ制御信号RAMP_Cによって、ランプ信号発生回路RAMP_Gにおける基準電流を1倍に設定し、アッテネータ制御信号ATT_Cによって、単位アッテネータAT_0のゲインを1倍に設定する。
【0039】
デジタルコードDCDの値が第1範囲にあるときには、ランプ信号発生回路RAMP_Gにおける基準電流が4倍に設定されるため、デジタルコードDCDの最下位ビットによって変化するランプ信号RAMPの電圧変化が、4倍となる。そのため、
図3に示すように、デジタルコードDCDの値が、0から1023に変化することで、ランプ信号RAMPの電圧は、2(V)から1(V)まで変化することになり、デジタルコードDCDの値の変化に対するランプ信号RAMPの電圧変化の傾きが、基準電流が1倍のときに比べて、4倍となる。
【0040】
一方、デジタルコードDCDの値が第2範囲のとき、すなわち1024~4095の範囲では、基準電流が1倍に設定されるため、ランプ信号RAMPの電圧の傾きは、1倍となり、4倍のときと比べて、小さくなる。第1範囲において、ランプ信号RAMPの電圧は、2(V)から1(V)に変化し、第2範囲に切り替わると、ランプ信号RAMPの電圧は、デジタルコードDCDの値“1024”で定まる1.75(V)へ変化し、その後ランプ信号RAMPの電圧は1(V)へ向かって変化することになる。
【0041】
単位アッテネータAT_0のゲインは、デジタルコードDCDの値が第1範囲にあるとき、1/4倍となる。そのため、第1範囲においては、ランプ信号RAMPの電圧は減衰され、
図3において、実線の参照信号SD_0として示されているように、2(V)から1.75(V)へ向かって変化する。すなわち、単位アッテネータAT_0によって、4倍の傾きとなっているランプ信号RAMPが、1/4倍にされて、参照信号SD_0として出力されることになる。このとき、ランプ信号RAMPに重畳しているノイズNZも1/4倍に減衰されるため、ノイズNZを小さな値に抑制することが可能である。
【0042】
これに対して、デジタルコードDCDが第2範囲にあるときには、単位アッテネータAT_0のゲインは、1倍となっている。そのため、単位アッテネータAT_0からは、ランプ信号RAMPが、参照信号SD_0として出力されることになる。
【0043】
図4(A)~(C)には、デジタルコードDCDの変化に伴う、ランプ信号RAMPの電圧変化、単位アッテネータAT_0のゲイン変化および参照信号SD_0の電圧変化が示されている。
図4(A)に示すように、デジタルコードDCDの変化に対して、第1範囲と第2範囲では、ランプ信号RAMPの電圧変化の傾きが異なっている。これに対して、参照信号SD_0の電圧変化は、
図4(C)に示すように、デジタルコードDCDの変化に対して、第1範囲と第2範囲とで、同一である。
【0044】
実施の形態1においては、暗い光の画素データに対応するランプ信号RAMP、すなわちデジタルコードDCDの値が第1範囲にあるときのランプ信号RAMPに重畳されているノイズは、単位アッテネータAT_0のゲインが1/4倍となっているため、減衰され、参照信号SD_0に重畳されるノイズ量を小さく抑制することが可能である。ノイズ量が抑制されるため、人が見たときに横筋が認識されるのを低減することが可能であり、ISO感度の向上を図ることが可能である。
【0045】
なお、実施の形態1に係るコード発生回路DCD_Gである12ビットカウンタは、時間の経過に伴って、デジタルコードDCDの値を0から4095に向けてカウントアップする。そのため、
図4(A)~(C)は、時間の経過に伴う、ランプ信号RAMPの電圧変化、単位アッテネータAT_0のゲイン変化および参照信号SD_0の電圧変化を示していると見なすことができる。
【0046】
<ランプ信号発生回路の構成例>
図5は、実施の形態1に係るランプ信号発生回路を説明するための図である。ここで、
図5(A)は、ランプ信号発生回路RAMP_Gの構成を示す図であり、
図5(B)は、DAC回路2に用いられる電流セルおよび基準電流回路の構成を示す図である。また、
図5(C)は、基準電流を切り替えることによるランプ信号RAMPの電圧変化を示す波形図である。
【0047】
図5(A)において、DAC回路2は、行列状に配置された複数の電流セルICLを備える電流セルアレイと、電流セルアレイから行を選択する行デコーダ2_Rと、電流セルアレイから列を選択する列デコーダ2_Cと、電流セルアレイから選択された電流セルと電圧2(V)との間に接続される負荷抵抗素子Rとを備えている。
【0048】
行デコーダ2_Rおよび列デコーダ2_Cには、デジタルコードDCDが供給される。行デコーダ2_Rは、デジタルコードDCDをデコードして、0行、1行または複数の行を選択する。同様に、列デコーダ2_Cは、デジタルコードDCDをデコードして、0列、1列または複数の列を選択する。行デコーダ2_Rおよび列デコーダ2_Cの両方によって選択された電流セルICLが、負荷抵抗素子Rを介して電圧2(V)に接続され、負荷抵抗素子Rと電流セルアレイとの間の接続ノードVOUTから、デジタルコードDCDに従ってランプ信号RAMPの電圧が出力される。
【0049】
なお、
図5では、図面が複雑になるのを避けるために、電流セルICLが8行×8列に配置された電流セルアレイが例示されている。デジタルコードDCDが、0~4095まで変化する場合には、電流セルアレイには、電流セルICLが64行×64列で配置されていることになる。デジタルコードDCDの値に従って、電流セルアレイから選択される電流セルの数が増加し、接続ノードVOUTにおける電圧が低下することになる。
【0050】
電流セルICLは、
図5(B)に示すように、Nチャンネル型電界効果トランジスタ(トランジスタ)NT1とスイッチSW1とによって構成されている。電流セルICLが、行デコード2_Rおよび列デコーダ2_Cの両方によって選択されることにより、当該電流セルICLのスイッチSW1がオン状態となる。
【0051】
Nチャンネル型トランジスタNT1のゲートは、特に制限されないが、全ての電流セルICLに対して共通のバイアス回路に接続されている。このバイアス回路は、
図5(B)に示すように、ダイオード接続されたNチャンネル型トランジスタNT2と、ランプ制御信号RAMP_Cによって選択的にオン状態にされるスイッチSW2、SW3と、2つの定電流源RI1、RI2とを備えている。
【0052】
定電流源RI1は、1倍の基準電流iを出力し、定電流源RI2は、基準電流iに対して4倍の基準電流4iを出力する。Nチャンネル型トランジスタNT1のゲートとNチャンネル型トランジスタNT2のゲートは共通に接続され、カレントミラー回路が構成されている。ランプ制御信号RAMP_Cによって、スイッチSW2またはSW3をオン状態にすることで、4倍の基準電流4iまたは1倍の基準電流iがカレントミラー回路に供給され、電流セルICL内のトランジスタNT1には、4倍の基準電流4iまたは1倍の基準電流iが流れるようになる。
【0053】
これにより、
図5(C)に示すように、4倍の基準電流4iの場合には、デジタルコードDCDに値が、1023で、ランプ信号RAMPの電圧は、1(V)に到達し、1倍の基準電流iの場合には、デジタルコードDCDに値が、4095で、ランプ信号RAMPの電圧は、1(V)に到達する。なお、負荷抵抗素子Rの抵抗値と基準電流iの電流値は、全ての電流セルICLのトランジスタNT1がオン状態となったときに、接続ノードVOUTが1(V)となるように設定されている。
【0054】
ここでは、基準電流を切り替えることが可能なDAC回路2として、電流セルが行列状に配置された電流セルマトリクス型DAC回路を説明したが、DAC回路の構成は、電流セルマトリクス型DAC回路に限定されるものではない。
【0055】
<変形例>
図2では、アッテネータATTのゲインを、1/4倍と1倍に切り替える例を示したが、これに限定されるものではなく、切り替えるゲインの数を増加させてもよい。変形例として、ゲインを、1/4倍、1/2倍、3/4倍、1倍に切り替える例を説明する。
【0056】
図6は、実施の形態1の変形例に係るイメージセンサの構成を示すブロック図である。また、
図7は、実施の形態1の変形例に係るイメージセンサを説明するための波形図である。
図6は、
図2と類似しており、
図7(A)~(C)は、
図4(A)~(C)と類似しているので、以下は主に相違点を説明する。
【0057】
図6には、ランプ信号線RAMP_Lに接続された単位アッテネータAT_0~AT_mと、これらに対応する比較器CP_0~CP_mと、ランプ信号発生回路RAMP_Gとが示されている。
図6に示すように、ランプ信号発生回路RAMP_Gは、複数の単位アッテネータおよび複数の比較器に対して共通である。
図2との相違点は、
図6に示したDAC回路2は、ランプ制御信号RAMP_Cによって、基準電流を1倍、4/3倍、2倍、4倍に切り替えることが可能となっている点である。また、単位アッテネータにおいては、アッテネータ制御信号ATT_Cによって、スイッチDW1、DW3、DW4、DW2を選択的にオン状態とすることで、ゲインを1倍、3/4倍、1/2倍、1/4倍に切り替えることが可能となっている点である。
【0058】
変形例においては、デジタルコードDCDの値が、0~1023の範囲が第1範囲、1024~2047の範囲が第2範囲、2048~3071の範囲が第3範囲、3072~4095の範囲が第4範囲として設定されている。ランプ制御信号RAMP_Cによって、第1範囲では、DAC回路2の基準電流が4倍に設定され、第2範囲では、DAC回路2の基準電流が2倍に設定され、第3範囲では、DAC回路2の基準電流が4/3倍に設定され、第4範囲では、DAC回路2の基準電流が1倍に設定される。また、アッテネータ制御信号AAT_Cによって、第1範囲では、単位アッテネータのゲインが、1/4倍に設定され、第2範囲では、単位アッテネータのゲインが、1/2倍に設定され、第3範囲では、単位アッテネータのゲインが、3/4倍に設定され、第4範囲では、単位アッテネータのゲインが、1倍に設定される。
【0059】
DAC回路2の基準電流が、デジタルコードDCDの存在する範囲に従って変化するため、
図7(A)に示すように、ランプ信号RAMPの電圧は、第1範囲において、2(V)から1(V)へ変化し、第2範囲において、1.5(V)から1(V)に変化し、第3範囲では、1.33(V)から1(V)へ変化し、第4範囲では、1.25(V)から1(V)へ変化することになる。すなわち、デジタルコードDCDの値の変化に対して、ランプ信号の電圧の傾きが、第1範囲~第4範囲において異なることになる。
【0060】
単位アッテネータのゲインも、
図7(B)に示すように、デジタルコードDCDの値の変化に従って、変化する。すなわち、第1範囲では、単位アッテネータのゲインは1/4倍に設定され、第2範囲では、ゲインは1/2倍に設定され、第3範囲では、ゲインは3/4倍に設定され、第4範囲では、ゲインは1倍に設定される。その結果、参照信号(例えばSD_0)の電位は、
図7(C)に示すように、デジタルコードDCDの変化に対して、同じ傾きで、2(V)から1(V)へ変化することになる。
【0061】
変形例によれば、
図7(C)に示すように、明るい光と暗い光の間である中間輝度に対応する第2範囲(1024~2047)および第3範囲(2048~3071)では、単位アッテネータのゲインが1/2倍および3/4倍となるため、ノイズ量が低減され、ISO感度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0062】
実施の形態1においては、ランプ信号発生回路RAMP_Gからは、デジタルコードDCDの値が存在する範囲(第1範囲~第4範囲)によって、デジタルコードDCDの値に対して電圧変化の傾きが異なるランプ信号が出力される。また、ランプ信号が供給されるアッテネータは、デジタルコードDCDの値が存在する範囲(第1範囲~第4範囲)によって、ゲインが変化するように制御され、アッテネータからは、デジタルコードDCDの値の変化に対して、電圧変化の傾きが一定の参照信号が出力される。人の目の特性を考慮して、中間輝度を含む光の暗い画素データに対応する第1範囲~第3範囲において、アッテネータが、ノイズ量を減衰するため、ISO感度の向上を図ることができる。
【0063】
(実施の形態2)
実施の形態1においては、
図1に示したように、ランプ信号線RAMP_Lに画素データ線PID_0~PID_mに対応する単位アッテネータAT_0~AT_mが接続されることになる。画素データ線の数は、例えば4000本にもなるため、ランプ信号線RAMP_Lに接続される単位アッテネータの個数も同様に非常に多くなる。その結果、ランプ信号線RAMP_Lに接続されている寄生容量が非常に大きくなる。
【0064】
実施の形態1では、デジタルコードDCDの値が第1範囲から第2範囲へ変化すると、ランプ信号RAMPの電圧は、1(V)から1.75(V)へ変化することになるが、非常に大きな寄生容量がランプ信号線RAMP_Lに存在するため、この電圧変化に時間が掛かることになる。
【0065】
図8は、実施の形態1に係るイメージセンサにおいて発生する課題を説明するための波形図である。
図8(A)に示すように、ランプ信号RAMPの電圧は、デジタルコードDCDが、1023から1024に変化すると、1(V)から1.75(V)に変化するが、この電圧変化に期間tdが必要となる。これに起因して、
図8(B)に示すように、参照信号SD_0においても、期間tdにおいて、その電圧が、1(V)から1.75(V)に上昇することになる。その結果、参照電圧SD_0の電圧値が、2(V)から1(V)に到達するまでの時間が長くなり、画素アレイPXA(
図16)において1つの画素行をデジタル信号に変換するのに要する時間が長くなり、フレームレートが遅くなると言う課題が発生する。
【0066】
図9は、実施の形態2に係るイメージセンサの構成を示すブロック図である。
図9は、
図1と類似しているので、以下は主に相違点を説明する。相違点は、
図9では、コード発生回路DCD_Gの出力が、演算器4に供給され、演算器4の出力がデジタルコードDCDとなっている点と、制御回路CNTが演算器4を制御するコード制御信号DCD_Cを出力する点である。
【0067】
図10は、実施の形態2に係る演算器を説明するための図である。また、
図11は、実施の形態2に係るイメージセンサの動作を説明するための波形図である。
【0068】
演算器4には、制御回路CNTからのコード制御信号DCD_Cによって、デジタルコードDCDの値が、第1範囲(0~1023)に存在するのか、第2範囲(1024~2095)に存在するのかが通知される。
【0069】
第1範囲に存在することが通知された場合、演算器4は、コード発生回路DCD_Gからの入力Nを、出力Nとして、そのまま出力する。すなわち、第1範囲の場合には、コード発生回路DCD_Gの出力が、デジタルコードDCDとして使用される。
【0070】
これに対して、第2範囲が通知されると、演算器4は、5119(十進数)から、コード発生回路DCD_Gからの入力Nを減算し、減算結果(5119-N)を出力する。すなわち、第2範囲では、減算結果が、デジタルコードDCDとして使用される。
【0071】
コード発生回路DCD_Gから、“1023”のコード値が出力され、次に“1024”のコード値が出力されると、演算器4は、“1023”のデジタルコードDCDの値を出力した後、減算によって得た“4095”のデジタルコードの値を出力することになる。その後、コード発生回路DCD_Gである12ビットカウンタがカウントアップを繰り返すことにより、演算器4からは、“4095”から“1024”に向けて変化するデジタルコードDCDが出力されることになる。
【0072】
その結果、
図11(A)に示すように、ランプ信号発生回路RAMP_Gからは、第2範囲においては、1(V)から1.75(V)に向かって上昇するように変化するランプ信号RAMPが出力される。すなわち、ランプ信号発生回路RAMP_Gは、第1範囲において、1(V)のランプ信号RAMPを出力したあと、連続して1(V)から1.75(V)へとランプ信号RAMPの電圧を変化させる。ランプ信号RAMPの電圧が連続的に変化するため、
図8で説明したように、ランプ信号RAMPの電圧が1(V)から1.75(V)に到達するまでの期間tdを待つ必要がなくなる。
【0073】
参照電圧SD_0は、
図11(B)において実線で示すように、デジタルコードDCDの値“1023”に対応する電圧1.75(V)に到達した後、デジタルコードDCDの値“4095”に対応する1(V)に変化し、その後、デジタルコードDCDの値“1024”に対応する電圧に向けて上昇する。
【0074】
デジタルコードDCDの値が第2範囲にあるとき、比較器CP_0は、時間の経過に伴って、デジタルコードDCDの値が“4095”に対応する参照電圧SD_0からデジタルコードDCDの値が“1024”に対応する参照電圧SD_0に向けて、画素データとの比較を行うことになる。デジタルコードDCDの値が、第2範囲にあるときのデジタル変換結果を、デジタルコードDCDの順番で並び替える(ソートする)ことで、
図11(C)に示すように、連続したADC回路1の結果を得ることが可能である。
【0075】
ここでは、DAC回路2の基準電流を1倍または4倍に切り替え、アッテネータATTのゲインを1倍または1/4倍に切り替える例を基にして説明したが、これに限定されるものではない。例えば実施の形態1の変形例で説明したように、基準電流の切り替え数およびゲインの切り替え数は4つ、あるいはそれ以上であってもよい。
【0076】
また、演算器4にデクリメントカウンタを設け、第2範囲おけるデジタルコードDCDは、デクリメントカウンタによって、“4095”から“1024”までデクリメントすることで、形成するようにしてもよい。
【0077】
実施の形態2によれば、ノイズ量を減らしてISO感度の向上を図ることが可能であるとともに、フレームレートが遅くなると言う課題を解決することが可能である。
【0078】
(実施の形態3)
図12は、実施の形態3に係るイメージセンサの構成を示すブロック図である。また、
図13は、実施の形態3に係るイメージセンサの動作を説明するための波形図である。
【0079】
図12は、
図6と類似しているので、主に相違点を説明する。
図12では、単位アッテネータAT_0~AT_mが取り除かれ、ランプ信号線RAMP_Lが比較器CP_0~CP_mに接続されている。また、DAC回路2とボルテージフォロアー回路3との間に、単位アッテネータがアッテネータATTとして接続されている。すなわち、ランプ信号発生回路RAMP_Gが、DAC回路2と、アッテネータATTと、ボルテージフォロアー回路3とを備えている。
【0080】
DAC回路2は、デジタルコードDCDに従ってランプ信号RAMP_CSを出力する。ランプ信号RAMP_CSは、アッテネータATTおよびボルテージフォロアー回路3を介して、ランプ信号RAMPとして、ランプ信号線RAMP_Lに供給される。比較器CP_0~CP_mは、参照信号SD_0~SD_mの代わりに、ランプ信号RAMPと画素データとを比較して、トリガ信号LT_Cを出力する。
【0081】
実施の形態3に係るアッテネータATTは、比較器CP_0~CP_mに対して共通であるため、アッテネータATTは、共通アッテネータと見なすことができる。DAC回路2およびアッテネータATTは、実施の形態1で述べたように、ランプ制御信号RAMP_Cおよびアッテネータ制御信号ATT_Cによって、基準電流およびゲインの切り替えが行われる。
【0082】
図12において、Cpは、ランプ信号線RAMP_Lに接続された比較器CP_0~CP_mによって生じる寄生容量を示している。実施の形態2で述べたように、画素データ線が4000本であった場合、4000個の比較器が、ランプ信号線RAMP_Lに接続されるため、寄生容量Cpは、非常に大きな値となる。
【0083】
実施の形態3においては、DAC回路2の出力は、アッテネータATTに接続されているだけである。そのため、DAC回路2の出力に接続される寄生容量を小さくすることが可能である。寄生容量が小さいため、
図13(A)に示すように、ランプ信号RAMP_CSは、デジタルコード値“1023”において1(V)に到達した後、デジタルコード値“1024”が供給されると、速やかにランプ信号RAMP_CSを1.75(V)に上昇させることが可能である。一方、ボルテージフォロアー回路3の出力には、寄生容量Cpが接続されることになるが、ボルテージフォロアー回路3によって、
図13(B)に示すように、ランプ信号RAMP(SD_0~SD_mに相当)を滑らかに変化させることが可能である。
【0084】
実施の形態3によれば、ノイズ量を減らしてISO感度の向上を図ることが可能であるとともに、フレームレートが遅くなるのを抑制し、さらに部品数の削減を図ることにより専有面積の増加を抑制することが可能となる。
【0085】
図13には、基準電流を1倍、4倍に切り替え、ゲインの1倍、1/4倍に切り替えるようにした場合の波形が示されているが、切り替える倍数は、これに限定されるものではない。
【0086】
(実施の形態4)
実施の形態1~3では、ランプ信号発生回路RAMP_Gを動作させる第2電圧V2の電圧が、画素アレイPXAを動作させる第1電圧V1よりも低い場合に好適なイメージセンサを説明した。実施の形態4においては、ランプ信号発生回路RAMP_Gを動作させる電圧の電圧値が、第2電圧V2よりも高い、例えば第1電圧V1と同じ電圧値の場合に好適なイメージセンサを説明する。
【0087】
図14は、実施の形態4に係るイメージセンサの構成を示すブロック図である。
図14は、
図2と類似している。すなわち、
図14には、
図1に示したADC回路1において、ランプ信号発生回路RAMP_G、画素データ線PID_0に対応する単位アッテネータAT_0および比較器CP_0のみが示されている。
図14には示されていない他の単位アッテネータおよび比較器等も同様な構成にされている。なお、実施の形態4においては、
図2に示した制御回路CNTは設けられていない。
【0088】
実施の形態4に係るランプ信号発生回路RAMP_Gは、デジタルコードDCDをアナログ信号のランプ信号VOUTに変換するDAC回路2と、電圧レギュレータ(分圧フィードバックレギュレータ)VRGとを備えている。
【0089】
電圧レギュレータVRGには、画素アレイPXAと同じ第1電圧V1が供給され、電圧レギュレータVRGは、この第1電圧V1によって動作する。一方、DAC回路2には、実施の形態1~3と同様に第2電圧V2が供給され、DAC回路2は、この第2電圧V2によって動作する。特に制限されないが、第2電圧V2は、図示しない降圧回路によって、第1電圧V1から形成されている。
【0090】
電圧レギュレータVRGは、比較器6、トランジスタPTおよび抵抗素子R1、R2によって構成されている。トランジスタPTは、Pチャンネル型トランジスタによって構成されている。トランジスタPT、抵抗素子R2、R1は、第1電圧V1と電圧1(V)との間で直列的に接続されている。比較器6の一方の入力(+)には、ランプ信号VOUTが供給され、他方の入力(-)は、抵抗素子R2とR1間の接続ノードに接続され、比較器6の出力はトランジスタPTのゲートに供給されている。トランジスタPTと抵抗素子R2との間の接続ノードからランプ信号RAMPが出力される。
【0091】
DAC回路2は、第2電圧V2によって動作するため、実施の形態1~3と同様に、デジタルコードDCDの値に従って、2(V)~1(V)の間で変化するランプ信号VOUTを出力することになる。これに対し、電圧レギュレータVRGは、第2電圧V2よりも高い第1電圧V1によって動作するため、2(V)~1(V)の間で変化するランプ信号VOUTを、2(V)よりも高い電圧と1(V)との間で変化するランプ信号RAMPに変換して出力することになる。トランジスタPTのオン抵抗を無視した場合、ランプ信号RAMPの電圧は、(R1+R2)/R1×(VOUT-1(V))+1(V)で表される。以下では、第1電圧V1が5(V)で、抵抗素子R1とR2との比が1:2の場合を例として説明する。この場合、ランプ信号RAMPの電圧は、デジタルコードDCDの値に従って、4(V)~1(V)の間で変化することになる。すなわち、電圧レギュレータVRGは、DAC回路2から出力されるランプ信号VOUT(2(V)~1(V))の振幅を広げて、ランプ信号RAMP(4(V)~1(V))として出力する分圧レギュレータとして機能する。
【0092】
単位アッテネータAT_0は、ランプ信号RAMPと電圧1(V)との間で直列的に接続された3個の容量素子CD1~CD3によって構成されており、容量素子CD2とCD3との間の接続ノードから、参照信号SD_0が出力される。すなわち、
図14に示した単位アッテネータAT_0のゲインは、1/3倍に固定されている。
【0093】
比較器CP_0は、例えば第2電圧V2によって動作する。比較器CP_0は、既に説明したように、画素データと参照信号SD_0との比較を行うように動作する。
【0094】
図15は、実施の形態4に係るイメージセンサの動作を説明するための波形図である。ここで、
図15(A)は、ランプ信号RAMPの電圧波形を示し、
図15(B)は、参照信号SD_0の電圧波形を示している。なお、
図15(A)および15(B)のいずれにおいても、横軸は、デジタルコードDCDを示している。
【0095】
電圧レギュレータVRGから出力されるランプ信号RAMPの電圧は、
図15(A)に示すように、4(V)から1(V)に向かって、第1の傾きで低下する。参照信号SD_0は、単位アッテネータAT_0によって、ランプ信号RAMPが1/3倍に減衰されて、出力される。そのため、
図15(B)に示すように、参照信号SD_0は、例えば2(V)から1(V)に向かって、第1の傾きよりも小さな第2の傾きで、低下する。
図15(A)に示すように、ノイズNZが、ランプ信号RAMPに重畳されていた場合、ノイズNZは、単位アッテネータAT_0によって1/3倍に減衰されることになる。
【0096】
実施の形態4によれば、全輝度において、ノイズを減衰することが可能であり、ISO感度の向上を図ることが可能である。また、実施の形態1~3において示した制御回路CNTが必要とされないため、これによる専有面積の増加を抑制することが可能である。
【0097】
図14では、単位アッテネータAT_0のゲインが、1/3倍の場合を示したが、これに限定されるものではない。また、
図12に示したように、単位アッテネータではなく、共通のアッテネータを用いるようにしてもよい。
【0098】
実施の形態1~3において、制御回路CNTは、特に制限されないが、デジタルコードDCDを基にして、ランプ制御信号RAMP_C、アッテネータ制御信号ATT_Cおよびコード制御信号DCD_Cを出力する。例えば、制御回路CNTは、前記した第1範囲から第4範囲等を定めるデジタルコードの値と、コード発生回路DCD_Gから出力されたデジタルコードDCDの値とを比較して、一致している期間に対応するランプ制御信号RAMP_C、アッテネータ制御信号ATT_Cおよびコード制御信号DCD_Cを出力する。
【0099】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、実施の形態1~3では、共通の制御回路CNTが、ランプ制御信号RAMP_C、アッテネータ制御信号ATT_Cおよびコード制御信号DCD_Cを出力する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、ランプ信号発生回路RAMP_G、アッテネータATTおよび演算器4が、コード発生回路DCD_Gの出力を基にして、それぞれの制御信号を生成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 ADC回路
2 DAC回路
3 ボルテージフォロアー回路
4 演算器
100 イメージセンサ
ATT アッテネータ
BSC バイアス回路
CNT 制御回路
CP 比較回路
DCD_G コード発生回路
PID_0~PID_m 画素データ線
RAMP ランプ信号
RAMP_G ランプ信号発生回路
SD_0~SD_m 参照信号