(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】NH3合成・クラッキング用金属被覆バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物触媒およびその形成方法
(51)【国際特許分類】
C01C 1/04 20060101AFI20241126BHJP
B01J 23/58 20060101ALI20241126BHJP
B01J 23/78 20060101ALI20241126BHJP
C01B 3/04 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C01C1/04 E
B01J23/58 M
B01J23/78 M
C01B3/04 B
(21)【出願番号】P 2021544907
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(86)【国際出願番号】 US2020016258
(87)【国際公開番号】W WO2020160500
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-06
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521338857
【氏名又は名称】スターファイアー エナジー
【氏名又は名称原語表記】STARFIRE ENERGY
【住所又は居所原語表記】403 Laredo St., Unit S, Aurora, CO 80011 United States of America
(73)【特許権者】
【識別番号】502032275
【氏名又は名称】コロラド・スクール・オブ・マインズ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】キャディガン クリス
(72)【発明者】
【氏名】オヘイル ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ビーチ ジョセフ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ウェルチ アダム ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】キントナー ジョナサン ディー.
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/213305(WO,A1)
【文献】特表2016-538127(JP,A)
【文献】国際公開第2017/082265(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/088896(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/099715(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0087537(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0253492(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01C 1/04
B01J 23/58
B01J 23/78
C01B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NH
3をN
2+H
2+NH
3混合物にクラッキングする方法であって、以下を含むことを特徴とする方法。
触媒種で装飾されたバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物からなる触媒にNH
3を曝露すること
、
ここで、前記バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物は、Ba
21
Ca
16
Al
6
O
46
(B21C16A3)、BaCaAl
4
O
8
(BCA2)、Ba
5
Ca
7
Al
8
O
24
(B5C7A4)、Ba
3
Ca
3
Al
2
O
12
(B3C3A2)、Ba
2
Ca
5
Al
2
O
10
(B2C5A)、及びBaCaAl
2
O
5
(BCA)からなる群から選択される。
【請求項2】
触媒種がルテニウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒種がコバルトからなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
触媒種が酸化コバルトからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
触媒種が、ルテニウムとコバルトの混合物、ルテニウムと酸化コバルトの混合物、またはルテニウムとコバルトと酸化コバルトの混合物からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物中のアルミニウム酸化物が、部分的
に酸化ホウ素で置換されている請求項1に記載の方法。
【請求項7】
NH
3が曝露される触媒種で装飾されたバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物が、金属モノリスに結合されている請求項1に記載の方法。
【請求項8】
NH
3が触媒に曝露されている間に、金属モノリスに電流を流して加熱する請求項
7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、35 U.S.C. §1 19(e)に基づく優先権と利益を主張するものである。2019年1月31日に出願された米国仮特許出願番号62/799,595(“Metal-Decorated Barium Calcium Aluminum Oxide Catalyst for Cracking NH3”)、2019年2月5日に出願された62/801,578(“Metal Monolith Supported Catalysts for NH3 Synthesis and Cracking”)、2019年11月6日に出願された62/931,537(“Cobalt-Decorated Barium Calcium Aluminum Oxide for NH3 Synthesis and Cracking”)に記載されており、これらの各内容は参照により全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
本出願は、2018年5月15日に出願された「Metal-Decorated Barium Calcium Aluminum Oxide and Related Materials for NH3 Catalysis」と題された国際公開第WO2018/213305号に関連する。その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
[技術分野]
【0003】
本開示は、(1)アンモニアを窒素、水素、およびアンモニアの混合物にクラッキングすることと、(2)窒素および水素の混合物からアンモニアを合成することの両方のための触媒に関するものである。触媒を製造する方法、ならびに触媒を用いてNH3をクラッキングおよび/または合成する方法も本明細書に記載されている。
【背景技術】
【0004】
人為的に排出された二酸化炭素(CO2)は、地球温暖化、気候変動、海洋酸性化を引き起こしており、そのいずれもが人類の継続的な経済発展と安全保障を脅かしている。この脅威に対抗するために、CO2を実質的に排出しないエネルギー源が、先進国でも発展途上国でも強く求められている。いくつかのCO2フリーのエネルギー生成オプションが広範囲に開発されているが、現在のところ、実用的なCO2フリーの燃料を含むものはない。
【0005】
アンモニア(NH3)は、以下の反応式(1)に従って、燃料として燃焼させることができる。
【0006】
4NH3(g)+3O2 → 2N2+6H2O(g)+熱(1)
【0007】
NH3は、カーボンフリーの燃料として直接使用することができ、また、水素ガスと窒素ガスに熱改質すれば、水素源として使用することもできる。また、特定のプロセスや装置に合わせて燃焼特性を調整するために、NH3、H2、N2の混合物として使用することも可能である。ガス状水素、液体水素、電池に比べて、エネルギー密度が高く、貯蔵条件が容易で、長期的な貯蔵や流通が安価であることが特徴である。
【0008】
アンモニアを製造するための主な工業的手順は、以下の反応式(2)で示されるハーバー・ボッシュ・プロセスである。
【0009】
N2(g)+3H2(g) → 2NH3(g)(DH=-92.2 kJ/mol) (2)
【0010】
2005年、ハーバー・ボッシュのアンモニア合成は、NH3生産量1トンあたり平均約2.1トンのCO2を発生させた。CO2発生量の約3分の2は、炭化水素を水蒸気改質して水素ガスを生産することに由来し、残りの3分の1は、合成プラントにエネルギーを供給するための炭化水素燃料の燃焼に由来するものである。2005年現在、ハーバー・ボッシュ社のNH3プラントの約75%が天然ガスを原料・燃料として使用しており、残りは石炭や石油を使用している。ハーバー・ボッシュのNH3合成は、世界の天然ガス生産量の約3%から5%、世界のエネルギー生産量の約1%から2%を消費している。
【0011】
ハーバー・ボッシュ反応は一般的に、酸化鉄またはルテニウム触媒を含む反応器で、約300℃から約550℃の間の温度、約90barから約180barの間の圧力で実施される。適度な反応速度を得るためには、この高温が必要です。NH3合成の発熱性の性質により、高温は平衡を反応物側に向かわせるが、これは高い圧力によって打ち消される。
【0012】
アンモニア合成における最近の進歩により、約300℃から約600℃の間の温度と、1バールから圧力容器と圧縮機の設計の実用的な限界までの範囲の圧力で動作可能な反応器が得られている。より低い圧力で動作するように設計された新世代の反応器は、装置コストとガス圧縮コストを削減することができるが、触媒床を通過するたびにN2とH2の反応物がNH3に変換される割合も減少する。このため、一定量のNH3を生成するために必要な再循環の回数が増え、適切な熱交換器を用いて反応器の熱を効率的に再利用しない限り、一定量のNH3の熱損失が増加する可能性がある。反応物の再循環の回数が増えると、高いガスコンダクタンスを持つ触媒層を使用しない限り、再循環ポンプのエネルギー要件も増加する可能性がある。
【0013】
NH3の熱クラッキングには、現在の市販触媒を使用した場合、700~900℃の温度が必要となる。触媒を使用しない場合はさらに高い温度が必要となる。このような高温は、NH3をクラッキングするのに必要なエネルギーを増加させるため、また多くの材料の変形や劣化を引き起こすため、好ましくない。アルミナ担体上のルテニウムは、NH3クラッキングを触媒することが知られているが、比較的高い金属の担持と比較的高い(約700℃)操作が必要である。ルテニウムの高担持は、触媒コストを上昇させるので好ましくない。ルテニウムは白金族金属の一種で、比較的希少であり、グラム当たりのコストが高い。700℃の動作温度は、低コストの鋼やステンレス鋼を迅速に劣化または変形させるのに十分な温度であるため、これも望ましくない。
【0014】
自動車やピーキング発電所のように、頻繁に起動したり停止したりするNH3を燃料とする装置には、動作温度に素早く加熱でき、何度も温度サイクルを繰り返しても良好な触媒の付着を維持できるNH3クラッカーの設計が必要である。限られたスペースに収める必要がある機器には、コンパクトなNH3クラッカーの設計が必要である。かなりの量の燃料を必要とする装置や、燃料流量が大きく変動する装置には、高流量運転時の燃料圧力低下を最小限に抑えるために、高いガスコンダクタンスを持つNH3クラッカーが有効である。
【0015】
NH3燃料は、現在、アルカリ燃料電池メーカーによって使用されている。NH3燃料は、海上輸送の脱炭素化と、カーボンフリーの電力網のための季節的エネルギー貯蔵のための有力な候補である。また、長距離トラック輸送用の内燃機関を脱炭素化するための最も可能性の高いソリューションでもある。
【0016】
最近開発されたNH3合成反応器およびNH3燃料使用のためのNH3クラッキング反応器は、(a)700℃以下で十分に動作することができ、(b)その動作温度まで迅速に加熱することができ、(c)熱サイクルによる劣化が最小限であり、(d)少量の白金族金属の担持しか必要とせず、または白金族金属を全く必要とせず、(e)高いガスコンダクタンスを有するNH3活性触媒層の必要性を当技術分野で明らかにしている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実験室試験のために作られた波形金属モノリスの半径方向の断面を示す。
【
図2A】
図2Aは、金属モノリスおよびベンチトップ装置での試験のためにチューブ接続部を備えたその種のモノリスの軸方向の断面を示す。
【
図2B】
図2Bは、金属モノリスおよびベンチトップ装置での試験のためにチューブ接続部を備えたその種のモノリスの軸方向の断面を示す。
【
図3】
図3は、1wt%Ru/B2CA充填触媒床の触媒温度の関数としてのNH
3クラッキング率を示す図である。
【
図4】
図4は、触媒の試験に使用したベンチトップ型NH
3クラッキング装置を示す。
【
図5】
図5は、Ru/B2CAおよびCo/B2CAのNH
3クラッキング性能を温度の関数として示す図である。
【
図6】
図6は、20wt%のCo/B2CAのNH
3クラッキング性能をNH
3流量の関数として示す。
【
図7】
図7は、20wt% Co/B2CAのNH
3クラッキング性能を時間の関数として示している。
【
図8】
図8は、耐久試験の前後における20wt% Co/B2CAのNH
3クラッキング性能をRu/B2CAのそれと比較している。
【
図9】
図9は、コバルトで装飾されたB2CAと酸化コバルトで装飾されたB2CAのNH
3合成性能を比較したものである。
【
図10】
図10は、組成の異なるコバルトで装飾されたバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物とルテニウムで装飾された酸化バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物のNH
3合成性能を比較したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書には、N2+H2混合物からNH3を合成することと、NH3をN2+H2+NH3混合物にクラッキングすることの両方に適した、コバルトで装飾された、ルテニウムおよびコバルトで装飾されたバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物触媒の様々な実施形態、ならびに開示された触媒を使用してNH3を合成およびクラッキングする関連方法が記載されている。また、本明細書では、NH3クラッキングに適したルテニウム装飾バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物触媒の様々な実施形態、および開示された触媒を使用してNH3をクラッキングする関連方法が記載されている。このように、本明細書に記載されているように、開示された触媒は、低いルテニウムの装填、コバルトの装填(ルテニウムを全く使用しない)、またはルテニウムとコバルトの混合物のいずれかを使用することができる。本明細書に記載されている触媒は、金属構造に結合することができ、これにより、熱伝導性およびガス伝導性が向上する。本明細書に記載の技術は、少なくとも、(a)白金族金属の担持量が少ないまたは全くない高NH3活性触媒を提供すること、(b)NH3のクラッキングに必要な温度を低くすること、および/または(c)触媒床の熱質量を低減し、その熱伝導率を高め、そのガス伝導率を高める正確に設計された金属モノリスに強固に結合することができる触媒を提供することによって、技術の現状を改善するものである。
【0019】
本開示は、B=BaO(酸化バリウム)、C=CaO(酸化カルシウム)、およびA=Al2O3(酸化アルミニウム)であるセメント化学の表記法である「B2CA」を参照している。したがって、本明細書では、用語「B2CA」=Ba2CaAl2O6(バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物化合物)である。同様のセメント化学表記を用いて、本開示は、B21C16A3(Ba21Ca16Al6O46)、BCA2(BaCaAl2O6)、B5C7A4、(Ba5Ca7Al8O24)、B3C3A2(Ba3Ca3Al2O12)、B2C5A(Ba2Ca5Al2O10)、およびBCA(BaCaAl2O5)などの追加のバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物化合物も参照している。
【0020】
[触媒の合成]
本明細書に記載されている触媒であって、本明細書に記載されているNH3クラッキングおよび合成方法での使用に一般的に適している触媒は、まずB2CA粉末または関連するバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物組成物を合成することによって調製される。B2CAまたは関連するバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物組成物を合成する任意の方法を使用することができる。また、本明細書に記載の触媒を調製する際に使用される酸化バリウム・カルシウム・アルミニウム化合物は、酸化アルミニウムの一部または全部が酸化ホウ素で置換されていてもよい。いくつかの実施形態では、酸化アルミニウムの一部または全部を酸化ホウ素で置換した酸化バリウム・カルシウム・アルミニウム化合物の調製を含む、酸化バリウム・カルシウム・アルミニウム化合物の調製方法は、国際公開第WO2018/213305号に記載されている方法と類似または同一であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
次に、得られた粉末を、0.1wt%から10wt%のルテニウム、0.1wt%から50wt%のコバルト、またはこれらの既述の範囲内のルテニウムとコバルトの組み合わせのいずれかで装飾する。触媒活性金属を用いた酸化バリウム・カルシウム・アルミニウム粉末の装飾は、WO2018/213305に記載された方法と同様または同一の方法を含むがこれに限定されない、任意の適切な方法論を用いて実施することができる。WO2018/213305に記載の方法に従う場合、装飾は一般に、(a)金属塩+アセトン溶液中で粉末を撹拌して、その表面を所望の金属の塩で装飾し、(b)得られた材料を水素含有雰囲気中でアニールして、金属塩を金属に還元することによって実施される。適切な金属塩の非限定的な例は、Ru装飾のためのRuCl3水和物およびCo装飾のためのCOCl2六水和物である。Ru+Co金属装飾混合物は、Ru塩とCo塩の両方を含む溶液を使用するか、または金属を連続して堆積させることによって製造することができる。水和塩に存在する水は、バリウム・カルシウム・アルミニウム粉末を水和させてもダメージを与えない。RuCl3水和物は、典型的には購入費用が安く、無水RuCl3よりもアセトンに溶解しやすいため、いくつかの実施形態では好ましいと考えられる。
【0022】
いくつかの実施形態では、ステップ(b)を省略することができ、例えば、NH3合成またはクラッキング装置において、H2またはNH3の流れの下で動作温度に加熱された最初のときに、金属塩を金属に還元することが望まれる場合などである。しかし、これを行う場合には、塩の発した陰イオン(例えば、塩素)が合成装置またはクラッキング装置の下流の装置を損傷しないように注意しなければならない。
【0023】
Co/バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物触媒は、Co/バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物を酸素含有雰囲気中でアニールすることにより、Co酸化物/バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物触媒に変換することができる。いくつかのコバルト担持量では、NH3合成において、触媒の酸化バージョンは金属バージョンよりも優れた性能を発揮する。Co/バリウムアルミニウム酸化物をアニールしてCo酸化物/バリウムアルミニウム酸化物を形成する例は、Co/バリウムアルミニウム酸化物を、50%酸素/50%窒素雰囲気中で、5℃/分で400℃まで昇温し、400℃で2時間滞留し、次いで5℃/分で室温まで昇温することを用いてアニールする。
【0024】
このようにして形成された金属装飾バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物組成物は、国際公開第WO2018/213305号に記載された方法のいずれかによって、または他の適切な方法を介して、触媒床に形成することができる。WO2018/213305に記載されている方法は、例として、材料を粉末として使用すること、押出してペレットにすること、プレスしてペレットにすること、および構造支持体に結合することを含む。表面に金属装飾バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物の薄層が結合された金属モノリスは、高いガス伝導性、高い熱伝導性、および高い触媒利用率により、NH3の合成およびクラッキングに特に有益であることが分かっている。
【0025】
[金属装飾バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物触媒コートメタルモノリスの作製]
金属で装飾されたバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物触媒被覆金属モノリスを作製する方法は、一般に、モノリスを作製するステップ、モノリスをバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物化合物で被覆するステップ、およびバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物被覆を触媒活性金属で装飾するステップの3つのステップを含む。
【0026】
金属モノリスは、ガス伝導性、熱伝導性、モノリスの単位長さ当たりの表面積などの工学的要件によって必要とされるあらゆる特定の形状に形成することができる。金属モノリスは、様々な構成で商用ベンダーから入手可能である。
図1は、スターファイアーエナジー社(Starfire Energy)が実験用に製作したスパイラル型金属モノリス100の半径方向の断面図である。この場合、金属モノリス100は、螺旋状に互いを重ねる2枚の金属シートから形成されている。一方の金属シート片101は平らであり、他方の102はコルゲートである。金属シート片101と102の一端はロッド103に溶接されている。金属シート片101、102をロッド103に巻き付けることで、反応物が流れる軸方向の溝104ができる。螺旋状のモノリス100は、金属管105に挿入され、これにより螺旋がほどけないようにし、モノリス100を反応物ガス入口および製品ガス出口用のプロセスガス管に後から接合することができる。他の多くの金属モノリスの設計が可能である。
【0027】
図2Aはモノリス200の軸方向断面を示し、
図2Bはモノリス200がベンチトップ触媒試験装置での試験のためにエンドキャップおよびチューブ接続部を装着した後のモノリス250を示す。本実施形態では、モノリス200は、金属チューブシェル201と、波形の金属箔内部202とを含む。試験用に準備されたモノリス250は、同じ金属チューブシェル201と箔内部202を含み、これにエンドキャップ254および255が溶接されている。チューブ251、252、253は、エンドキャップに溶接されている。チューブ252は、反応物を触媒モノリスに供給し、チューブ253は、触媒モノリスから生成ガスを受け入れる。チューブ251は、モノリスの反応物入口側の近くまたは上に熱電対を配置して、その温度を測定することができる。
【0028】
モノリスシートメタルは、その温度耐性、化学的適合性、および/または触媒の結合特性、ならびにその他の特性に基づいて選択することができる。NH3クラッキングの場合、シートメタルは、少なくとも450℃まで、好ましくは700℃までの温度で、還元性雰囲気(特にH2およびNH3)に耐性があることが好ましい。また、バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物化合物がモノリス板金によく付着していることが好ましい。フェクラロイ(Fecralloy:アルミニウム含有ステンレス鋼の商品名)、アルミ化ステンレス鋼(亜鉛メッキのような工程でアルミニウムをディップコーティングしたステンレス鋼)、ステンレス合金などがこの条件を満たすことができ、市販されている。アルミ化した軟鋼合金も好適である。
【0029】
金属モノリスを酸化して、バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物の結合を促進することができる。フェクラロイまたはアルミ化ステンレス鋼モノリスの場合、酸化により、金属シート表面に酸化アルミニウムの良好に結合した層が形成される。この酸化アルミニウム層は、バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物の結合を促進することができる。また、表面酸化は、ステンレス鋼へのバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物の付着を促進することができる。フェクラロイを酸化させるためのアニールプロファイルの一例として、50%O2+50%N2の雰囲気中、1015℃で6時間のアニールを行う。アルミ化されたステンレス鋼を酸化させるためのアニールプロファイルの例は、50%O2+50%N2雰囲気中、700℃で6時間アニールすることである。
【0030】
いくつかの実施形態では、金属モノリスは、電気的に加熱することができるように、電流を通すことができるように設計および製造することができる。そのようなモノリスの例は、コンチネンタル・コーポレーション(Continental Corporation)が製造するエミキャット(EmiCat)金属モノリスである。
【0031】
バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物の粉末は、有機バインダーを含む有機溶媒スラリーから金属モノリス上に堆積される。有機溶媒は好ましくは、モノリスを通るスラリーの流れを容易にするために低粘度を有し、スラリーで被覆されたモノリスからの溶媒の迅速な蒸発を容易にするために高い蒸気圧を有する。適切な有機溶媒の一例はアセトンである。適切な有機バインダーの例は、クエン酸である。アセトン1mlあたり10mgのクエン酸が、試験したモノリスに良好な結合特性を与えることが分かっているが、特定の用途に合わせてスラリーの特性を調整するために、特定のクエン酸濃度を調整することができる。バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物スラリーの溶媒の実質的な成分として、水は好ましくは使用されない。なぜなら、バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物はセメント形成剤であり、水に触れると水和するからである。この水和は、その物理的および化学的特性を変化させる可能性がある。
【0032】
バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物スラリーは、細かく粉砕したバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化化合物を有機溶媒+バインダー溶液に添加することで形成することができる。「細かく粉砕」の例としては、遊星ボールミルで粉砕し、窒素BET法で測定した表面積が4m2/g程度になった粉末が挙げられる。これより表面積の小さい粉体は、有機溶媒+バインダー溶液に懸濁してスラリー状にならない場合がある。より高い表面積を有するバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物の粉末は、うまく機能することができるが、厳密には必要ではない。
【0033】
バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物は、モノリスをスラリーに浸すことによって、モノリスを通してスラリーを注ぐことによって、あるいはモノリスを通してスラリーをポンピングすることによって、また他の適切な手段によってモノリスに塗布することができる。いずれの場合も、モノリスから十分な量のスラリーが排出されて流路が開いた後、モノリスを「右側を上にして」から「上側を下にして」回転させることで、均一なスラリーのコーティングを促すことができる。スラリーから十分な溶媒が蒸発してモノリスの表面を流れなくなるまで、回転を続けることができる。
【0034】
乾燥したスラリーでコーティングされたモノリスは、残留溶媒を蒸発させ、有機バインダーを燃焼させ、バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物粒子の相互およびモノリスへの結合を促進するために、酸素雰囲気中でアニールすることができる。酸素雰囲気の例としては、窒素中の50%酸素や大気などがある。バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物を金属モノリスに結合させるためのアニールプロファイルの一例は、5℃/分で700℃まで昇温し、700℃で6時間滞留し、5℃/分で室温まで昇温するものである。他のアニーリングプロファイルを使用することもでき、モノリスの温度公差や、最終的なバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物の表面積と結合強度の間のトレードオフに基づいて選択することができる。アニール温度が1200℃を超えると、バリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物が溶けてしまい、その結果、金属モノリスが損傷する可能性が高いため、好ましくは1200℃を超えない。
【0035】
モノリス上のバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物コーティングは、モノリスを適切な金属塩溶液に浸すか、またはそのチャネルに適切な金属塩溶液を流し込むことによって、RuまたはCoまたはその両方で装飾することができる。Co溶液の例としては、アセトンに溶解した塩化コバルト六水和物がある。コバルトの含有量は0.1~50wt%(モノリス上の酸化バリウム・カルシウム・アルミニウムの質量を基準とする)のものが使用でき、15~25wt%のCoが一つの好ましい範囲である。Ru溶液の一例は、アセトンに溶解したRuCl3水和物である。0.1~10wt%(モノリス上の酸化バリウム・カルシウム・アルミニウムの質量を基準にして)のRuの負荷を使用することができ、1~5wt%のRuが1つの好ましい範囲である。いずれの場合も、金属塩が溶液中からバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物に吸着し、溶液の色が薄くなる。所望の金属装填は、少量の濃縮溶液を使用するか、多量の希釈溶液を使用するかのいずれかによって達成できる。狭い流路のモノリスでは、アセトン溶液が毛細管現象によって流路内に保持され、蒸発時間が非常に長くなることがある。この場合、金属塩溶液をモノリスのチャネルから圧縮ガスの入った容器に吹き込み、圧縮ガスを流し続けてチャネルから残留溶媒を蒸発させ、その後、取り込んだ溶液をモノリスに戻して、金属塩の堆積を促進することもできる。このプロセスは、溶液が消費されるまで繰り返すことができる。金属塩化物の装飾は、アニーリングによって金属に変換することができる。いくつかの実施形態では、水素雰囲気中でのアニールが好ましい。なぜなら、水素は塩素が金属塩化物から離れてHClガスになるのを促し、アニールをより低い温度(200℃程度)で行うことができるからである。また、窒素中でのアニールも可能だが、より高い温度(例えば500℃)が必要となる。金属塩化物を金属に変換するための水素雰囲気中でのアニールの例としては、5℃/分で400℃まで昇温し、400℃で2時間滞留した後、5℃/分で室温まで昇温する方法がある。他の例としては、水素雰囲気中で240℃で12時間のアニーリングがある。
【0036】
[NH3クラッキングのための触媒の使用]
例示的な触媒クラッキング方法では、クラッキング触媒床またはモノリスが300~650℃に加熱され、NH3ガスがそこに導かれる。NH3流入は、触媒床に導かれる前に予熱することができる。NH3のクラッキングは吸熱プロセスであるため、クラッキング床は使用中にその温度を維持するための加熱が必要である。
【0037】
NH3ガスが高温の触媒床を流れると、N2+H2+NH3の混合物にクラッキングされる。N2とH2は、NH3反応物の組成によって決まる化学量論的な3H2:1N2の比率になる。クラッキング生成物ガス中の残留NH3の濃度は、(a)クラッキング機で反応が平衡に進んだかどうか、(b)クラッキング機で使用された温度と圧力に対するN2+H2+NH3混合物中のNH3の熱力学的平衡濃度に応じて変化し得る。
【0038】
生成物ストリーム中のNH3の平衡濃度は、触媒床の温度を上げるか、その圧力を下げることによって低減することができる。生成物ストリーム中のNH3の平衡濃度は、触媒床の温度を下げるか、その圧力を上げることによって増加させることができる。
【0039】
所与の触媒床容積、温度、及び圧力に対して、流入するNH3がN2+H2にクラッキングされる割合は、NH3流量を減少させて触媒床での滞留時間を増加させることにより、熱力学的平衡値に近づけることができる。NH3ガスの部分的なクラッキングのみを望む場合は、NH3流量を増やして触媒層での滞留時間を短くすることで、反応器でクラッキングされるNH3の割合を減らすことができる。一定のNH3入力流量、圧力、および触媒床容積の場合、クラッキングされるNH3の割合は、床温度を上げると増加し、床温度を下げると減少する。
【0040】
[NH3合成のための触媒の使用]
例示的な触媒合成方法では、合成触媒床またはモノリスが200~650℃に加熱され、N2+H2ガス混合物がそれを介して導かれる。反応物の圧力は、0.1バールから500バールの範囲とすることができる。反応物の入力ストリームは、触媒床に誘導する前に予熱することができる。N2+H2の混合ガスが高温の触媒層を流れると、その一部がNH3に変換される。生成ガス中のNH3の濃度は、(a)反応器内で反応が平衡に進んだかどうか、および(b)反応器で使用される温度および圧力に対するN2+H2+NH3混合物中のNH3の熱力学的平衡濃度に応じて変化し得る。
【0041】
生成物ストリーム中のNH3の平衡濃度は、触媒床の温度を下げたり、その圧力を上げたりすることで増加させることができる。NH3の合成は発熱プロセスであるため、NH3が合成されるとクラッキング床は高温になる可能性がある。このことは、反応器の過熱を防ぐために熱除去機構が必要となるような、高い動作圧力において特に重要となり得る。
【0042】
所与の触媒床容積、温度、および圧力に対して、流入するN2+H2のうちNH3に変換される割合は、NH3の流量を減少させて触媒床内の滞留時間を増加させることによって、熱力学的平衡値に近づけることができる。
【0043】
[実施例1]
B2CA粉末を調製し、国際公開番号WO2018/213305に記載の方法に従って1wt%のRu金属で装飾した。Ruで装飾された粉末を冷間プレスして、バインダーを含まないペレットにした。ペレットを粉砕して一連の顆粒サイズを生成し、得られた混合物をふるいにかけ、約20メッシュの顆粒を選択した。0.2gのRuで装飾されたB2CA顆粒を、0.4gの触媒を含まないアルミナ顆粒希釈剤と混合し、触媒-希釈剤混合物を触媒ホルダーに装填した。
【0044】
触媒-希釈剤混合物のクラッキング能力を、NH3ガス供給装置、NH3フローコントローラ、管状炉、NH3予熱管、触媒ホルダー、およびガスクロマトグラフを含む実験室装置で試験した。NH3予熱管と触媒ホルダーはともに管状炉に設置されていた。NH3ガスは、NH3フローコントローラー、予熱管、触媒ホルダーを順次通過した。製品ガスはチューブを通過して室温まで冷却された後、ガスクロマトグラフでサンプリングされ、その組成が決定された。
【0045】
図3は、600℃までの炉の温度に対して、常圧(海抜約1700m)で10標準mL/分のNH
3流量を使用した3つのテストからのNH
3クラッキングデータを示す。
図3に示すデータは、触媒が600℃から200℃に冷却されたときに収集されたものである。クラッキング率0.6付近の各データカーブに小さなオフセットがあるが、これはガスクロマトグラフがその時点で検量線を変更したためである。3つのテストすべてにおいて、NH
3は475℃以上の温度で完全にクラッキングされていることがわかる。クラッキング率は475℃以下の温度では減少し、250℃以下ではゼロに近づく。
【0046】
[実施例2]
金属モノリスを、上述のように10、15、および20wt%のCo/B2CAでコーティングした。モノリスには、
図2に示すようなチューブ接続部を取り付けた。各モノリスのNH
3クラッキング能力は、
図4に描かれているベンチトップ型アンモニアクラッキング装置400に入れて試験した。触媒でコーティングされたモノリス401は、円筒形のヒーター402によって加熱される。貯蔵容器403からのアンモニアガスは、フローコントローラ404と予熱管405を通過して、触媒モノリス401に入る。モノリス401を通過した後、製品ガスはチューブ406を続けて通り、熱伝導率計407によって分析され、その後フレア408で燃焼される。
【0047】
触媒モノリスは、毎分1標準リットル(sLm)の常圧NH
3の流れを供給しながら、300~650℃の温度に加熱された。これらのモノリスの場合、その流れは300hr
-1のGHSVと12秒のNH
3滞留時間に相当する。触媒モノリスから排出されるガスの水素含有量を熱伝導率測定装置で測定した。
図5は、Co/B2CAコーティングしたモノリス(薄いグレー、濃いグレー、破線の曲線)と、比較のために3wt%のRu/B2CAコーティングしたモノリス(点線の曲線)のクラッキング率(0 = NH
3が全くクラッキングされない、1 = NH
3がほぼ全てN
2 + H
2にクラッキングされる)を示している。これによると、10wt%、15wt%、20wt%のCo/B2CAモノリスは同様の性能を示し、15wt%のモノリスは10wt%および20wt%のモノリスよりも所定の温度でのクラッキング率がわずかに高かった。Co/B2CAモノリスは、3wt%のRu/B2CAモノリスと同じクラッキング率を達成するために、約30℃高い温度に加熱しなければならなかった。
【0048】
[実施例3]
金属モノリスを上述のように20wt%のCo/B2CAでコーティングした。モノリスは、
図2に示すようにチューブ接続部を装着し、
図4に示すベンチトップNH
3クラッキング試験装置内に配置した。モノリスを公称650℃に加熱し、常圧のNH
3を0.5~14標準リットル/分(sLm)の速度で流した。
【0049】
流量の関数としてのクラッキング分率を
図6に示す。完全なクラッキングは、0.5sLmおよび1.0sLmのNH
3反応物流量で達成された。2sLm以上のNH
3反応物流量では、クラッキング率が低下した。生成ガスフレア炎は、14sLmのNH
3流量で不安定になることが観察され、このときのクラッキング率は約0.3であった。その流量では、試験したモノリスの空間速度は4200hr
-1であり、NH
3の滞留時間は0.8秒であった。
【0050】
[実施例4]
実施例2で使用した20wt%Co/B2CAモノリスを、
図4に示したベンチトップNH
3クラッキング試験装置に入れた。モノリスを公称温度550℃に加熱し、常圧のNH
3を1標準リットル/分(sLm)で90時間にわたって供給した。クラッキング率の時間依存性を
図7に示す。90時間の間、クラッキング率に大きな変化はなく、この期間中、Co/B2CA触媒は安定していたことがわかる。
【0051】
90時間の試験が終了した後、モノリスのクラッキング率を温度の関数として、1sLmのNH
3流量で測定した。
図8は、耐久試験前の20wt%Co/B2CAモノリス(黒の実線)、耐久試験後の20wt%Co/B2CAモノリス(灰色の実線)、および耐久試験を行っていない3wt%Ru/B2CAモノリス(黒の点線)の温度の関数としてのNH
3クラッキングを示す。20wt%Co/B2CAのクラック性能は、90時間の耐久試験後に向上し、3wt%Ru/B2CAの性能とほぼ同じになった。
【0052】
[実施例5]
Co/B2CAおよびCo-oxide/B2CA粉末を、上述した方法を用いて、1wt%、5wt%、10wt%、15wt%、および20wt%のコバルト負荷で調製した。この場合、塩化コバルト六水和物をアセトンに溶かして所望の量のコバルトを加えた溶液を作り、そこにB2CA粉末を混合し、アセトンが蒸発するまで攪拌を繰り返すことで、B2CA粉末にコバルト塩を析出させた。アセトンが蒸発すると、混合液は青色からピンク色に変化し、塩化コバルトの塩イオンが再結合したことが確認できた。
【0053】
コバルト塩で装飾されたB2CA粉末を、50%H2+50%N2のガスフロー中で700℃で4時間アニールすることによって、コバルト金属に還元した。アニール後、サンプルはすべて黒の色合いに変化しており、塩がコバルト金属に還元されたことを示していた。このCo/B2CAサンプルのNH3合成特性は、ベンチトップ型の差動式NH3合成反応器で測定した。その後、管状炉を用いて50%N2+50%02の流量で700℃×4時間のアニールを行い、試料を酸化させた。酸素中でのアニール後、サンプルの色は、1wt%のコバルトがわずかに赤みを帯びた色になった以外は変化がなかった。酸化されたサンプルは、その後、ベンチトップNH3合成反応器で再試験された。
【0054】
金属コバルトと酸化コバルトの装飾品の両方をテストするために、1グラムの触媒粉末を反応器に入れた。75%H
2+25%N
2の10気圧混合物を、2~20sLmの範囲の流量および室温~625℃の範囲の温度で、粉末触媒床に流した。
図9には、各触媒粉末から生成されたアンモニアの濃度が最も高かった4sLmの反応物の流れが示されている。酸化コバルトを担持した触媒粉末は、5、10、15wt%の担持量でより高いアンモニア濃度を生成した。1wt%および20wt%の担持量では、金属コバルトの装飾と酸化コバルトの装飾は、ほぼ同じアンモニア濃度を生成する。
【0055】
[実施例6]
NH3合成のためのルテニウム装飾およびコバルト装飾された触媒性能に対するバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物組成物の効果を調べた。BaO-CaO-Al2O3の三元空間にある7つの組成物を合成した。具体的な組成は、B21C16A3、BCA2、B5C7A4、B3C3A2、B2C5A、BCA、B2CAであった。各組成物は、20wt%のコバルトまたは1wt%のルテニウムで装飾された2つのサンプルに分けられた。金属で装飾された各サンプル1グラムのNH3合成特性は、ベンチトップ型の差動式NH3合成反応器で、75%H2+25%N2を10.6バールで4sLmの一定流量で、最高温度625℃まで調べた。
【0056】
図10は、各サンプルの製品ガス最大NH
3濃度を示している。B2CAは、コバルト装飾とルテニウム装飾の両方で、最も高いNH
3濃度が得られた。しかし、ルテニウムを装飾したB5C7A4、B3C3A2、B2C5AおよびBCAは、Ru/B2CAとして75%以上のNH
3濃度が得られ、Ruを装飾したバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物を用いたNH
3合成にも適した組成物であることがわかる。さらに、コバルトで装飾されたB21C16A3、B5C7A4、B3C3A2、B2C5A、およびBCAは、Co/B2CAとして75%以上のNH
3濃度を生成したことから、Coで装飾されたバリウム・カルシウム・アルミニウム酸化物を用いたNH
3合成にも適した組成物であることがわかる。
【0057】
以上から、本発明の特定の実施形態は、説明のために本明細書に記載されているが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更が可能であることが理解されるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除き、限定されるものではない。