(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】炭素熱還元プロセスおよび高温湿式製錬プロセスの少なくとも1つを使用して鉄または鋼スラグから目的金属を回収するための方法
(51)【国際特許分類】
C22B 7/04 20060101AFI20241126BHJP
C22B 1/02 20060101ALI20241126BHJP
C22B 3/04 20060101ALI20241126BHJP
C22B 3/22 20060101ALI20241126BHJP
C22B 11/00 20060101ALI20241126BHJP
C22B 15/00 20060101ALI20241126BHJP
C22B 21/00 20060101ALI20241126BHJP
C22B 26/20 20060101ALI20241126BHJP
C22B 26/22 20060101ALI20241126BHJP
C22B 34/12 20060101ALI20241126BHJP
C22B 34/24 20060101ALI20241126BHJP
C22B 34/32 20060101ALI20241126BHJP
C22B 47/00 20060101ALI20241126BHJP
C22B 59/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C22B7/04 B
C22B1/02
C22B3/04
C22B3/22
C22B11/00 101
C22B15/00
C22B21/00
C22B26/20
C22B26/22
C22B34/12
C22B34/24
C22B34/32
C22B47/00
C22B59/00
(21)【出願番号】P 2021560138
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 CA2020050410
(87)【国際公開番号】W WO2020191504
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-27
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512080756
【氏名又は名称】ザ ガバニング カウンシル オブ ザ ユニバーシティ オブ トロント
【氏名又は名称原語表記】THE GOVERNING COUNCIL OF THE UNIVERSITY OF TORONTO
(73)【特許権者】
【識別番号】521438537
【氏名又は名称】テノヴァ グッドフェロウ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アジミ,ジゼル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジヘ
(72)【発明者】
【氏名】シポロ,ヴィットリオ
(72)【発明者】
【氏名】マルファ,エンリコ
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1904097(CN,A)
【文献】中国特許第103667728(CN,B)
【文献】特表平03-505612(JP,A)
【文献】XiaoMing Qu et al.,Performance of Sulfuric Acid Leaching of Titanium from Titanium-Bearing Electric Furnace Slag,Journal of Materials Science Research,2016年,Vol. 5, No. 4,p.1-9,DOI:10.5539/jmsr.v5n4p1
【文献】Farzaneh Valighazvini et al.,Recovery of Titanium from Blast Furnace Slag,Industrial & Engineering Chemistry Research,American Chemical Society,2013年01月30日,Volume 52, Issue 4,Pages1379-1774,https://doi.org/10.1021/ie301837mopen_in_new
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鋼プロセスの副産物として生成される鋼スラグから少なくとも2種の目的金属を回収する方法であって、以下のステップ:
(i)前記鋼スラグを炭素熱還元プロセスに供して、第1の目的金属として鉄を回収するステップiであって、以下の
前記鋼スラグの粒子と、少なくとも1種の還元剤であって、前記還元剤対前記鋼スラグの粒子の質量比が0.06~0.12の範囲内である、少なくとも1種の還元剤と、少なくとも1種の融剤であって、前記融剤対前記鋼スラグの粒子の質量比が0~0.1の範囲内であり、前記融剤は、シリカ、アルミナ、及びそれらの混合物から成る群から選択される、少なくとも1種の融剤と、を混合して混合物を生成するステップと、
前記混合物を1300℃~1800℃の温度で製錬して、前記第1の目的金属を含有する金属相及びスラグ相を形成するステップと、
前記第1の目的金属を含有する前記金属相を前記スラグ相から分離して、前記第1の目的金属を含有する金属相と鉄枯渇スラグ相を生成するステップと
を包含するステップi;及び
(ii)前記ステップiの前記炭素熱還元プロセスに由来する鉄枯渇スラグを高温湿式製錬プロセスに供して、他の第2の目的金属を回収するステップiiであって、前記高温湿式製錬プロセスは以下の
前記鉄枯渇スラグの粒子と酸を、前記酸対前記鉄枯渇スラグの粒子の質量比が0.5~5の範囲内となるように混合して、更なる混合物を生成するステップであって、前記酸が硫酸、塩酸、硝酸、およびそれらのうち少なくとも2種の混合物からなる群から選択される、ステップと、
前記更なる混合物を、100℃~600℃の温度で焼成し、余剰の水分及び前記酸を除去し、熱分解ガス及び少なくとも1種の可溶性金属塩を含む乾燥混合物を生成するステップと、
水を添加して前記乾燥混合物が、50g/L~250g/Lの範囲の密度となるように浸出し、前記第2の目的金属に富む水性浸出液及び固体残渣を含む水溶液を生成するステップと、
前記第2の目的金属に富む水性浸出液を前記固体残渣から分離するステップと
を包含するステップii;
を包含する方法。
【請求項2】
前記
第2の目的金属は、チタン、ニオブ、マンガン、クロム
、スカンジウム、ネオジム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、プラセオジム、ユーロピウム、テルビウム、エルビウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、ケイ素、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金
から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鋼スラグは、電気アーク炉スラグであ
る、
前記鉄
枯渇スラグの粒子は、200メッシュ未満の大きさを有する
、または
前記鉄
枯渇スラグの粒子は、1μm
~130μmの範囲
の径を有する、
請求項1または
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
混合する前に前記鉄
枯渇スラグの粒子を粉砕するステップ
であって、前記粉砕
するステップは
、ボールミリングにより行われる、
ステップ、
大きさにより前記鉄
枯渇スラグの粒子を画分へと分類および分離するステップ、
混合する前に前記鉄
枯渇スラグの粒子を乾燥するステップ
であって、前記乾燥
するステップは
、50℃
~80℃の範囲の温度で
、また
は12時間
~24時間の範囲内の期間
で行われる、
ステップ、
熱分解ガスをリサイクルするステップ
であって、前記熱分解ガスをリサイクルする
ステップは、
前記鉄枯渇スラグの粒子及び前記酸を混合するステップにおいて
、前記熱分解ガスを再利用することを含む、
ステップ、
前記
第2の目的金属に富む前記水性浸出液および前記固体残渣を含む前記水溶液を撹拌するステップ
であって、前記撹拌は
、150rpm
~650rpmの撹拌速度で行われる、
ステップ、及び
前記
第2の目的金属に富む前記水性浸出液を精製するステップ
であって、前記精製ステップは
、選択的沈殿、溶媒抽出、およびイオン交換の少なくとも1つにより行われる、
ステップ
の
うち、少なくとも1つ
のステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記鉄枯渇スラグの粒子及び前記酸を混合
するステップおよび前記焼成
するステップは、同時に行われる、
前記鉄枯渇スラグの粒子及び前記酸を混合するステップおよび前記焼成
するステップは、高温処理装置中で行われ、前記高温処理装置は
、ロータリーキルンである、
前記焼成は
、200℃
~600℃の温度で行われる
、または、
前記焼成は
、30分
~120分の範囲内の期間行われる、
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸は、
濃酸である、
95%~99.999%の範囲の濃度を有する
、または
硫酸、塩酸、硝酸、およびそれらの
うち少なくとも2
種の混合物からなる群から選択され
る、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記浸出は、周囲温度で行われる、
前記浸出は
、30分
~360分の範囲内の期間行われる
、または、
前記分離ステップは、前記
第2の目的金属に富む前記水性浸出液および前記固体残渣を含む前記水溶液を濾過することを含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
(i)前記
第2の目的金属はニオブであり、前記酸対鉄
枯渇スラグの粒子
の質量比
が2.5
~3.5の範囲であり、前記焼成
は375℃
~425℃の温度で行われ、前記焼成
は30分
~240分の範囲内の期間行われ
、撹拌ステップは、存在する場合
、150
~600rpmの撹拌速度で行われ、かつ、前記乾燥混合物の密度
は175g/L
~225g/Lの範囲である、
(ii)前記
第2の目的金属はチタンであり、前記酸対鉄
枯渇スラグの粒子
の質量比は
2~3の範囲であり、前記焼成
は200℃
~600℃の温度で行われ、前記焼成
は30分
~120分の範囲内の期間行われ、前記撹拌ステップは、存在する場合
、150
~600rpmの撹拌速度で行われ、かつ、前記乾燥混合物の密度
は50g/L
~200g/Lの範囲である、
(iii)前記
第2の目的金属はスカンジウムであり、前記酸対鉄
枯渇スラグの粒子
の質量比は
1.5~2.5の範囲であり、前記焼成
は175℃
~225℃の温度で行われ、前記焼成
は60分
~120分の範囲内の期間行われ、前記撹拌ステップは、存在する場合
、600rpmの撹拌速度で行われ、かつ、前記乾燥混合物の密度
は50g/L
~70g/Lの範囲である、または、
(iv)前記
第2の目的金属はネオジムであり、前記酸対鉄
枯渇スラグの粒子
の質量比は
1.5~2.5の範囲であり、前記焼成は
、175℃
~225℃の温度で行われ、前記焼成
は30分
~60分の範囲内の期間行われ、前記撹拌ステップは、存在する場合
、600rpmの撹拌速度で行われ、かつ、前記乾燥混合物の密度
は50g/L
~70g/Lの範囲である、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸は、硫酸
である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記
第2の目的金属はチタンであり、
(i)前記鋼スラグは、電気アーク炉スラグであり、前記酸対
前記鉄枯渇スラグの粒子の質量比は、2.7~3.3の範囲であり、前記焼成は、360℃~440℃の範囲の温度で行われかつ前記乾燥混合物の前記密度は、180g/L~220g/Lの範囲である、または、
(ii)前記
鋼スラグは、高炉スラグであり、前記酸対
前記鉄枯渇スラグの粒子の質量比は、1.8~2.2の範囲であり、前記焼成は、180℃~220℃の範囲の温度で行われかつ前記乾燥混合物の前記密度は、55.8g/L~68.2g/Lの範囲内である、
請求項8または
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記鋼スラグは、電気アーク炉スラグである、
前記鋼スラグは、基本的な酸素炉スラグである、
前記還元剤は、炭素源を含む、ここで、前記炭素源は
、冶金用石炭、木炭、石油コークス(petroleum coke)、石油コークス(pet coke)、天然ガス、およびそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択され、
又は
前記融剤は、シリカ、アルミナ、およびそれらの混合物からなる群から選択される
、
請求項
1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
混合する前に前
記鋼スラグ
の粒子を粉砕するステップ
であって、前記粉砕は
、ジョークラッシャおよびディスクミルの少なくとも1つを使用して行われる、
ステップ、
大きさにより前
記鋼スラグ
の粒子を画分へと分類および分離するステップ、
混合する前に前
記鋼スラグ
の粒子を乾燥するステップ
であって、前記乾燥は、少なくと
も50℃の温度
で行われ、または少なくと
も24時間の期間行われる、
ステップ、
前記製錬の前に前記混合物をペレット化するステップ、
又は
前記スラグ相を粉砕して
前記鉄枯渇スラグの粒子を得、大きさにより前記
鉄枯渇スラグの粒子を画分へと分類および分離するステップ、
の少なくとも1つをさらに含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記分離ステップは、機械的分離法により行われる、
前記分離ステップは、手動で行われる、
前記製錬は
、1500℃~1600℃の範囲の温度で行われる
、または
前
記鋼スラグ
の粒子および前記還元剤は、化学エネルギーを放出する酸化還元(レドックス)反応を経る、
請求項
1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記製鋼プロセスは前
記鋼スラグに熱エネルギーを提供し、
前記鋼スラグ
の粒子は、前記混合の前に上昇された温度である、請求項
1~13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、適用法の下で、2019年3月27日に出願された米国仮出願第62/824.588号の優先権を主張し、その内容は、あらゆる目的で、その全体が参照により本明細に組み込まれる。
【0002】
技術分野は概して、鉄スラグおよび鋼スラグなどの冶金スラグから、少なくとも1つの有価元素を回収するための方法、より具体的には、炭素熱還元プロセスおよび高温湿式製錬プロセスの少なくとも1つを利用して鉄スラグおよび鋼スラグから少なくとも1つの目的金属を回収する、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
循環型経済を確立するために、廃棄物の高付加価値化(valorization)の重要性がますます強調されるにつれて、テクノスフィア採掘(すなわち、産業廃棄物残渣などの代替二次資源からの戦略物質の抽出)が、脚光を浴びている。例えば、代替二次資源は、製鉄または製鋼炉での溶鉄または溶鋼の、その不純物からの分離中に、鉄鋼製造業または鉄鋼精錬業により発生した鉄スラグおよび鋼スラグを含む、鉄系スラグなどの冶金スラグであり得る。
【0004】
およそ1500~2000万トンの鋼スラグが、米国単独で年間に生産される。鋼スラグの処分は、環境に対する有害性をもたらす。実際に、鋼スラグの約15%~40%は、製鋼プラントに貯蔵され、次いで埋立地に送られる。
【0005】
鉄スラグおよび鋼スラグは、チタン、ニオブ、白金族金属(PGMと略す)、金、銀、および希土類元素(REEと略す)などの、かなりの量の有価物を含む。例えば、電気アーク炉(EAF)スラグは、鉄、マンガン、マグネシウム、クロム、ニオブ、およびアルミニウムを含むが、これらに限定されない多くの有価金属の、重要な潜在的な供給源である。
【0006】
これらの有価物は、抽出冶金によって回収され、高付加価値化され得る。結果として、有価物の抽出は、天然資源を保全し、埋立用地の温存に役立つ。それはまた、環境的に持続可能な方法での、鉄鋼製造業の収益の増加も意味する。
【0007】
従来、一次および二次供給源からのNb、Ti、およびREEの抽出は、直接酸浸出などの湿式製錬法によって行われる(Valighazviniら, Industrial & Engineering Chemistry Research 52, no. 4 (2013): 1723-1730; El-Hussainiら, Hydrometallurgy 64, no. 3 (2002): 219-229;およびKimら, Minerals 6, no. 3 (2016): 63)。
【0008】
しかしながら、従来の湿式製錬法を使用する場合、いくつかの課題に直面し得る。例えば、従来の湿式製錬法は、いくつかの前処理ステップを必要とする。従来の湿式製錬法に関連する主要な懸念事項としては、大量の酸、塩基、および有機溶媒の消費、ならびに大量の有害廃棄物の生産が挙げられる。別の例では、Zhengらは、NH4HF2-HF浸出および加水分解プロセスの使用によって、Ti担持電気炉スラグから二酸化チタンを調製した(Zhengら, Journal of hazardous materials 344 (2018): 490-498)。しかしながら、フッ化水素酸系浸出剤の使用は、環境に著しい悪影響を及ぼす。
【0009】
酸焼成-浸出プロセスなどの複合高温湿式製錬法に基づくプロセスは、直接浸出の代替プロセスである。高温湿式製錬法を使用して、金属担持試料は、濃酸と混合され、上昇した温度の炉で焼成され、次いで、周囲温度で浸出される。このプロセスは、伝統的な湿式製錬法と比較して、短い滞留時間、小さい浸出液体積、および著しく低減された酸消費量で、抽出効率の上昇をもたらす。
【0010】
高温湿式製錬法による有価物の抽出に関する報告は、わずかしかない。例えば、Wuらは、Ta-Nb鉱石を濃硫酸で焙焼し、焼成した試料を希硫酸で浸出することを提唱した(Wuら, In Advanced Materials Research, vol. 997, pp. 651-654. Trans Tech Publications Ltd, 2014)。Wuらは高い浸出効率を得たが、酸浸出および高い浸出温度に関連するいくつかの欠点が存在する。別の例では、Quらは、酸焼成、および50℃~80℃の上昇した温度での水を用いた浸出によって、チタン担持電気アーク炉スラグからチタンを抽出することを提唱した(Quら, Journal of Materials Science Research Vol. 5, No. 4 (2016))。Quらは、84.3%の中程度の浸出効率しか達成せず、高い浸出温度を使用した。
達成した。
【0011】
炭素熱還元プロセスもまた、金属酸化物を還元して、それにより金属を生成するために使用される。例えば、この種のプロセスを使用して、鉄酸化物は、石炭、コークス、および天然ガスなどの炭素質材料によって還元されて、金属を抽出する。
【0012】
したがって、従来の鉄スラグおよび鋼スラグのテクノスフィア採掘プロセスで遭遇する欠点の1つまたは複数を克服するプロセスが必要である。
【発明の概要】
【0013】
第1の態様によれば、本技術は、鉄または鋼スラグから目的金属を回収するための方法に関し、方法は、
約0.5~約5の範囲の酸対鉄または鋼スラグ粒子質量比で、鉄または鋼スラグ粒子と酸を共に混合して、混合物を生成するステップと、
混合物を約100℃~約600℃の温度で焼成して混合物を温浸し、過剰な水および酸を除去し、熱分解ガスおよび少なくとも1つの可溶性金属塩を含む乾燥混合物を生成するステップと、
約50g/L~約250g/Lの範囲の密度を得るように水を加えることによって乾燥混合物を浸出して、前述の目的金属に富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を生成するステップと、
固体残渣から前述の目的金属に富む水性浸出液を分離するステップと
を含む。
【0014】
一実施形態では、目的金属は、チタン、ニオブ、マンガン、クロム、鉄、スカンジウム、ネオジム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、プラセオジム、ユーロピウム、テルビウム、エルビウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、ケイ素、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金の少なくとも1つである。
【0015】
別の実施形態では、方法は、混合する前に、鉄または鋼スラグ粒子を粉砕することをさらに含む。一例では、粉砕は、ボールミリングによって行われる。
【0016】
別の実施形態では、方法は、大きさにより鉄または鋼スラグ粒子を画分へと分類および分離することをさらに含む。一例では、鉄または鋼スラグ粒子は、約200メッシュ未満の大きさを有する。別の例では、鉄または鋼スラグ粒子は、約1μm~約150μm、または約1μm~約140μm、または約1μm~約130μm、または約1μm~約120μm、または約1μm~約110μm、または約1μm~約100μm、または約1μm~約90μm、または約5μm~約90μmの範囲の直径を有する。
【0017】
別の実施形態では、方法は、混合する前に、鉄または鋼スラグ粒子を乾燥することをさらに含む。一例では、乾燥は、約50℃~約80℃の範囲の温度で行われる。別の例では、乾燥は、約12時間~約24時間の範囲内の期間行われる。
【0018】
別の実施形態では、酸は、硫酸、塩酸、硝酸、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。一例では、酸は、硫酸を含み、可溶性金属塩は、少なくとも1つの可溶性金属硫酸塩を含む。
【0019】
別の実施形態では、酸対鉄または鋼スラグ粒子質量比は、約1~約3、または約2~約3、または約1~約1.75の範囲である。
【0020】
別の実施形態では、焼成は、約100℃~約500℃、または約200℃~約600℃、または約200℃~約500℃、または約200℃~約400℃、または約300℃~約400℃の温度で行われる。
【0021】
別の実施形態では、焼成は、約30分~約240分、または約30分~約120分、または約30分~約60分の範囲内の期間行われる。
【0022】
別の実施形態では、方法は、熱分解ガスをリサイクルすることをさらに含む。一例では、熱分解ガスをリサイクルすることは、熱分解ガスを混合ステップで再利用することを含む。
【0023】
別の実施形態では、浸出ステップは、約30分~約360分、または約120分~約360分、または約180分~約360分の範囲内の期間行われる。
【0024】
別の実施形態では、乾燥混合物の密度は、約100g/L~約200g/L、または約125g/L~約200g/L、約150g/L~約200g/Lの範囲である。
【0025】
別の実施形態では、方法は、前述の目的金属に富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を撹拌することをさらに含む。一例では、撹拌は、約150rpm~約650rpmの撹拌速度で行われる。
【0026】
別の実施形態では、分離は、前述の目的金属に富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を濾過することを含む。
【0027】
別の実施形態では、方法は、前述の目的金属に富む水性浸出液を精製することをさらに含む。一例では、精製ステップは、選択的沈殿、溶媒抽出、およびイオン交換の少なくとも1つによって行われる。
【0028】
別の態様によれば、本技術は、鉄または鋼スラグからニオブを回収するための方法に関し、方法は、
約2.5~約3.5の範囲の酸対鉄または鋼スラグ粒子質量比で、鉄または鋼スラグ粒子と酸を共に混合して、混合物を生成するステップと、
混合物を約375℃~約425℃の温度で焼成して混合物を温浸し、過剰な水および酸を除去し、熱分解ガスおよび少なくとも1つの可溶性ニオブ塩を含む乾燥混合物を生成するステップと、
約175g/L~約225g/Lの範囲の密度を得るように水を加えることによって乾燥混合物を浸出して、ニオブに富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を生成するステップと、
水を加えて乾燥混合物を浸出させて、約50g / Lから約70g / Lの範囲の密度を得て、スカンジウムに富む浸出液水溶液および固体残留物を含む水溶液を生成するステップと、
固体残渣からニオブに富む水性浸出液を分離するステップとを含む。
【0029】
一実施形態では、酸は、硫酸、塩酸、硝酸、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。一例では、酸は、硫酸を含み、可溶性ニオブ塩は、少なくとも1つの可溶性ニオブ硫酸塩を含む。
【0030】
別の実施形態では、酸対鉄または鋼スラグ粒子質量比は、約3である。
【0031】
別の実施形態では、焼成は、約400℃の温度で行われる。
【0032】
別の実施形態では、乾燥混合物の密度は、約200g/Lである。
【0033】
別の実施形態では、焼成は、約30分~約240分の範囲内の期間行われる。一例では、焼成は、約120分の期間行われる。
【0034】
別の実施形態では、方法は、約150~約600rpmの撹拌速度でニオブに富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を撹拌することをさらに含む。一例では、撹拌速度は、約150rpmである。
【0035】
別の態様によれば、本技術は、鉄または鋼スラグからチタンを回収するための方法に関し、方法は、
約2~約3の範囲の酸対鉄または鋼スラグ粒子質量比で、鉄または鋼スラグ粒子と酸を共に混合して、混合物を生成するステップと、
混合物を約200℃~約400℃の温度で焼成して混合物を温浸し、過剰な水および酸を除去し、熱分解ガスおよび少なくとも1つの可溶性チタン塩を含む乾燥混合物を生成するステップと、
約50g/L~約200g/Lの範囲の密度を得るように水を加えることによって乾燥混合物を浸出して、チタンに富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を生成するステップと、
固体残渣からチタンに富む水性浸出液を分離するステップと
を含む。
【0036】
一実施形態では、酸は、硫酸、塩酸、硝酸、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。一例では、酸は、硫酸を含み、可溶性チタン塩は、少なくとも1つの可溶性チタン硫酸塩を含む。
【0037】
別の実施形態では、焼成は、約30分~約120分、または約30分~約90分の範囲内の期間行われる。
【0038】
別の実施形態では、乾燥混合物の密度は、約60g/L~約200g/Lの範囲である。
【0039】
別の実施形態では、方法は、約150rpm~約550rpmの範囲の撹拌速度でチタンに富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を撹拌することをさらに含む。一例では、撹拌速度は、約200rpm~約550rpmの範囲である。
【0040】
別の実施形態では、鋼スラグは、電気アーク炉スラグであり、酸対鋼スラグ粒子質量比は、約3であり、焼成は、約400℃の温度で行われ、乾燥混合物の密度は、約200g/Lである。一例では、焼成は、約120分の期間行われる。別の例では、方法は、約150rpmの撹拌速度でチタンに富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を撹拌することをさらに含む。
【0041】
別の実施形態では、鉄スラグは、高炉スラグであり、酸対鉄スラグ粒子質量比は、約2であり、焼成は、約200℃の温度で行われ、乾燥混合物の密度は、約62g/Lである。一例では、焼成は、約90分の期間行われる。別の例では、方法は、約600rpmの撹拌速度でチタンに富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を撹拌することをさらに含む。
【0042】
別の態様によれば、本技術は、鉄または鋼スラグからスカンジウムを回収するための方法に関し、方法は、
約1.5~約2.5の範囲の酸対鉄または鋼スラグ粒子質量比で、鉄または鋼スラグ粒子と酸を共に混合して、混合物を生成するステップと、
混合物を約175℃~約225℃の温度で焼成して混合物を温浸し、過剰な水および酸を除去し、熱分解ガスおよび少なくとも1つの可溶性スカンジウム塩を含む乾燥混合物を生成するステップと、
約50g/L~約70g/Lの範囲の密度を得るように水を加えることによって乾燥混合物を浸出して、スカンジウムに富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を生成するステップと、
固体残渣からスカンジウムに富む水性浸出液を分離するステップと
を含む。
【0043】
一実施形態では、酸は、硫酸、塩酸、硝酸、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。一例では、酸は、硫酸を含み、可溶性スカンジウム塩は、少なくとも1つの可溶性スカンジウム硫酸塩を含む。
【0044】
別の実施形態では、酸対鉄または鋼スラグ粒子質量比は、約2である。
【0045】
別の実施形態では、焼成は、約200℃の温度で行われる。
【0046】
別の実施形態では、乾燥混合物の密度は、約60g/Lである。
【0047】
別の実施形態では、焼成は、約60分~約120分の範囲内の期間行われる。一例では、焼成は、約90分の期間行われる。
【0048】
別の実施形態では、方法は、約600rpmの撹拌速度でスカンジウムに富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を撹拌することをさらに含む。
【0049】
別の態様によれば、本技術は、鉄または鋼スラグからネオジムを回収するための方法に関し、方法は、
約1.5~約2.5の範囲の酸対鉄または鋼スラグ粒子質量比で、鉄または鋼スラグ粒子と酸を共に混合して、混合物を生成するステップと、
混合物を約175℃~約225℃の温度で焼成して混合物を温浸し、過剰な水および酸を除去し、熱分解ガスおよび少なくとも1つの可溶性ネオジム塩を含む乾燥混合物を生成するステップと、
約50g/L~約70g/Lの範囲の密度を得るように水を加えることによって乾燥混合物を浸出して、ネオジムに富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を生成するステップと、
固体残渣からネオジムに富む水性浸出液を分離するステップと
を含む。
【0050】
一実施形態では、酸は、硫酸、塩酸、硝酸、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。一例では、酸は、硫酸を含み、可溶性ネオジム塩は、少なくとも1つの可溶性ネオジム硫酸塩を含む。
【0051】
別の実施形態では、酸対鉄または鋼スラグ粒子質量比は、約2である。
【0052】
別の実施形態では、焼成は、約200℃の温度で行われる。
【0053】
別の実施形態では、乾燥混合物の密度は、約60g/Lである。
【0054】
別の実施形態では、焼成は、約30分~約60分の範囲内の期間行われる。一例では、焼成は、約30分の期間行われる。
【0055】
別の実施形態では、方法は、約600rpmの撹拌速度でネオジムに富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を撹拌することをさらに含む。
【0056】
別の態様によれば、本技術は、鉄または鋼スラグから目的金属を回収するための方法に関し、方法は、
鉄または鋼スラグ粒子、約0.06~約0.12の範囲の還元剤対鉄または鋼スラグ粒子質量比の少なくとも1つの還元剤、および0~約0.1の範囲の融剤対鉄または鋼スラグ粒子質量比の少なくとも1つの融剤を混合して、混合物を生成するステップと、
混合物を約1300℃~約1800℃の温度で製錬して、目的元素を含む金属相およびスラグ層を形成するステップと、
スラグ相から目的元素を含む金属相を分離して、目的元素を含む金属相およびスラグ層を生成するステップと
を含む。
【0057】
一実施形態では、目的金属は、鉄、マンガン、クロム、およびニオブの少なくとも1つである。一例では、目的金属は、鉄である。
【0058】
別の実施形態では、鉄または鋼スラグは、電気アーク炉スラグである。
【0059】
別の実施形態では、還元剤は、炭素源を含む。一例では、炭素源は、冶金用石炭、木炭、石油コークス(petroleum coke)、石油コークス(pet coke)、天然ガス、およびそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。1つの重要な例では、炭素源は、褐炭である。
【0060】
別の実施形態では、還元剤対鉄または鋼スラグ粒子質量比は、約0.06、約0.09、または約0.12である。
【0061】
別の実施形態では、融剤は、シリカ、アルミナ、およびそれらの混合物からなる群から選択される。1つの重要な例では、融剤は、アルミナである。別の重要な例では、融剤は、シリカである。別の重要な例では、融剤は、シリカおよびアルミナの混合物である。
【0062】
別の実施形態では、還元剤対鉄または鋼スラグ粒子質量比は、約0.05、または約0.1である。
【0063】
別の実施形態では、方法は、混合する前に、鉄または鋼スラグ粒子を粉砕することをさらに含む。一例では、粉砕は、ジョークラッシャおよびディスクミルの少なくとも1つを使用して行われる。
【0064】
別の実施形態では、方法は、大きさにより鉄または鋼スラグ粒子を画分へと分類および分離することをさらに含む。
【0065】
別の実施形態では、鉄または鋼スラグ粒子は、約200メッシュ未満の大きさを有する。
【0066】
別の実施形態では、方法は、混合する前に、鉄または鋼スラグ粒子を乾燥することをさらに含む。一例では、乾燥は、少なくとも約50℃の温度で行われる。別の例では、乾燥は、約50℃~約80℃の範囲の温度で行われる。別の例では、乾燥は、少なくとも約24時間の期間行われる。
【0067】
別の実施形態では、方法は、製錬ステップの前に、混合物をペレット化することをさらに含む。
【0068】
別の実施形態では、分離ステップは、機械的分離法によって行われる。一例では、分離ステップは、手動で行われる。
【0069】
別の実施形態では、方法は、スラグ相を粉砕してスラグ粒子を得ることをさらに含む。
【0070】
別の実施形態では、方法は、大きさによりスラグ粒子を画分へと分類および分離することをさらに含む。
【0071】
別の実施形態では、方法は、スラグ相中の目的金属含有量を低減して、目的金属枯渇スラグを生成することをさらに含む。一例では、スラグ相中の目的金属含有量を低減することは、磁気分離によって行われる。例えば、磁気分離は、Davis(商標)管を使用して行われる。
【0072】
別の実施形態では、製錬ステップは、約1300℃~約1700℃、または約1300℃~約1600℃、または約1400℃~約1800℃、または約1400℃~約1700℃、または約1400℃~約1600℃、または約1500℃~約1800℃、または約1500℃~約1700℃、または約1500℃~約1600℃の範囲の温度で行われる。一例では、製錬ステップは、約1500℃~約1600℃の範囲の温度で行われる。
【0073】
別の実施形態では、鉄または鋼スラグは、製鉄または製鋼プロセスの副産物である。一例では、製鉄または製鋼プロセスは、鉄または鋼スラグに熱エネルギーを提供する。例えば、鉄または鋼スラグ粒子は、混合ステップの前に上昇された温度である。
【0074】
別の実施形態では、鉄または鋼スラグ粒子および還元剤は、化学エネルギーを放出する酸化還元(レドックス)反応を経る。例えば、レドックス反応は、副産物として熱を生成する(発熱反応)。あるいは、鉄または鋼スラグ粒子および還元剤は、化学エネルギーを放出しない酸化還元(レドックス)反応を経る。
【0075】
別の実施形態では、方法は、目的金属枯渇スラグを高温湿式製錬プロセスにかけて第2の目的金属を回収することをさらに含む。一例では、高温湿式製錬プロセスは、本明細書に記載されるような方法である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】一実施形態による、鉄スラグおよび鋼スラグから有価元素を回収するためのプロセスのフロー図である。
【
図2】一実施形態による、鉄スラグおよび鋼スラグから有価元素を回収するためのプロセスの概略図である。
【
図3】別の実施形態による、鉄スラグおよび鋼スラグから有価元素を回収するためのプロセスのフロー図である。
【
図4】実施例1(a)に記載されるような、粉砕された電気アーク炉(EAF)スラグの粒子径分布のグラフである。
【
図5】実施例1(a)に記載されるような、粉砕EAFスラグの特性評価結果を示し、(a)および(b)に、元素組成を示す誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)の結果のグラフ、(c)にX線回折パターン、(d)に、スラグ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)像(スケールバーは5μmを表す)、およびスラグ粒子のエネルギー分散型X線分光法(EDS)元素マッピングを示す。
【
図6】実施例1(d)に記載されるような、異なる因子レベルでのいくつかの元素の抽出効率の結果を示し、(a)に焼成温度のグラフ、(b)に酸対スラグ質量比、(c)に焼成時間、(d)にスラグ対水密度、および(e)に撹拌速度を示す。
【
図7】実施例1(d)に記載されるような、それぞれ200℃および400℃の焼成温度での様々な元素の速度試験結果のグラフを(a)および(b)に、1.25、1.50、および1.75の比率での追加の試験結果を含む、異なる酸対スラグ質量比での様々な元素の抽出効率のグラフを(c)に示す。
【
図8】実施例1(e)に記載されるような、経験的抽出モデルの因子効果係数のグラフであり、(a)にNdの結果、(b)にTiの結果、(c)にFeの結果、(d)にCaの結果、(e)にMnの結果、(f)にMgの結果、(g)にAlの結果、および(h)にCrの結果を示す。挿入グラフは、経験的モデルから予測される結果と実験結果との間の相関を示す。
【
図9】実施例1(g)に記載されるような、酸焼成プロセス前後のEAFスラグの特性評価結果を示し、(a)に、酸焼成プロセス前後のEAFスラグのXRD(粉末X線回折)ディフラクトグラム、(b)~(e)に、様々な酸焼成条件で調製された様々なスラグ粒子試料のSEM像を示す。
【
図10】実施例1(h)に記載されるように、(a)に、酸焼成プロセス前後のチタン酸カルシウムのXRDディフラクトグラムを示し、(b)に、チタン酸カルシウムの3D構造の図であり、(c)~(m)に、酸焼成プロセス前後のチタン酸カルシウムのSEM像および様々な元素についてのEDS元素マッピングである。
【
図11】実施例2(a)に記載されるような、粉砕された高炉(BF)スラグの粒子径分布のグラフである。
【
図12】実施例2(a)に記載されるような、粉砕BFスラグの特性評価結果を示し、(a)および(b)に、元素組成を示すICP-OESおよび誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)の結果のグラフ、(c)に粉末X線ディフラクトグラム、(d)に、BFスラグ粒子のSEM像、EDS元素マッピングを示す。
【
図13】実施例2(d)に記載されるような、中レベルの他の操作パラメータ条件で、(a)-1レベルの焼成温度条件(200℃)および(b)1レベルの焼成温度条件(400℃)下での、希土類元素および卑金属の速度試験結果のグラフを示す。
【
図14】実施例2(e)に記載されるような、経験的抽出モデルの因子効果係数のグラフであり、(a)にScの結果、(b)にNdの結果、(c)にCaの結果、(d)にAlの結果、(e)にMgの結果、および(f)にFeの結果を示す。挿入グラフは、経験的モデルから予測される結果と実験結果との間の相関を示す。
【
図15】実施例2(f)に記載されるような、Sc、Nd、Al、Mg、およびFeの、予測および実際の抽出効率のグラフである。
【
図16】実施例4(e)に記載されるような、経験的抽出モデルの因子効果係数のグラフであり、(a)にFeの結果、(b)にNbの結果、(c)にCrの結果、(d)にMnの結果、および(e)にTiの結果を示す。挿入グラフは、経験的モデルから予測される結果と実験結果との間の相関を示す。
【
図17】実施例4(e)に記載されるような、炭素熱還元後に得られた金属相の電子線マイクロアナライザ(EPMA)相マッピングの結果を示す。
【
図18】実施例4(g)に記載されるような、Fe枯渇スラグの特性評価結果を示し、(a)に、元素組成を示すICP-OESの結果のグラフ、(b)に粉末X線ディフラクトグラム、(c)にEPMA相マッピングの結果、ならびに(d)に、Fe枯渇スラグ粒子の二次電子像(スケールバーは10μmを表す)およびEDS元素マッピングを示す。
【
図19】実施例4(h)に記載されるような、経験的抽出モデルの因子効果係数のグラフであり、(a)にTiの結果、(b)にFeの結果、(c)にCaの結果、(d)にMnの結果、(e)にMgの結果、(f)にAlの結果、(g)にCrの結果、および(h)にSrの結果を示す。挿入グラフは、経験的モデルから予測される結果と実験結果との間の相関を示す。
【
図20】実施例4(h)に記載されるような、酸焼成水浸出プロセスの2つの主因子の、平均抽出効率に対する交互作用効果を示す二次元等高線プロットを示し、(a)に、焼成温度(X
1)および酸対スラグ質量比(X
2)の結果、(b)に、焼成温度(X
1)および焼成時間(X
3)の結果、(c)に、焼成温度(X
1)および水対スラグ比(X
4)の結果、(d)に、酸対スラグ質量比(X
2)および焼成時間(X
3)の結果、(e)に、酸対スラグ質量比(X
2)および水対スラグ比(X
4)の結果、ならびに(f)に、焼成時間(X
3)および水対スラグ比(X
4)の結果を示す。
【
図21】実施例4(i)に記載されるような、Ti、Fe、Ca、Mn、Mg、Al、Cr、およびSrの、予測および実際の抽出効率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0077】
詳細な説明
以下の詳細な説明および実施例は、例示的なものであり、本発明の範囲をさらに限定するものとして解釈されるべきではない。反対に、本説明で定義されるように含めることができるすべての代替物、修正形態、および均等物をカバーすることが意図される。方法の目的、利点、および他の特徴は、以下の非限定的な説明を読み、添付の図面を参照すると、より明らかになり、より良く理解されるであろう。
【0078】
本明細書で使用されるすべての専門および科学用語および表現は、本技術に関する場合、当業者に一般に理解されるものと同じ定義を有する。しかしながら、本明細書で使用されるいくつかの用語および表現の定義が、明確にするために以下に提供される。
【0079】
用語「約(about)」が本明細書で使用される場合、およそ(approximately)、辺り(in the region of)、または大体(around)を意味する。用語「約」が数値に関連して使用される場合、それは、例えば、その名目上の値の上下10%の変動で数値を修飾する。この用語は、数字の丸め、または、例えば機器限界による、実験的測定の偶然誤差の確率も考慮し得る。値の範囲が本出願で言及される場合、範囲の下限および上限は、特に指示のない限り、常に定義に含まれる。値の範囲が本出願で言及される場合、したがって、すべての中間範囲および部分範囲ならびに範囲に含まれる個々の値を含むことが意図される。
【0080】
表現「粒子径」は、本明細書では粒子径のその分布dxによって記述される。そこでは、値dxは、粒子のx%がdx未満の直径を有する直径を表す。例えば、d10値は、全粒子の10%がその粒子径より小さい粒子径である。d90値は、全粒子の90%がその粒子径より小さい粒子径である。したがって、d50値は、メジアン粒子径であり、すなわち、全粒子の50%がその粒子径より大きく、50%がその粒子径より小さい。
【0081】
用語「平衡」が本明細書で使用される場合、それは、進行中のプロセスは変数を変えるように努めるが、述べられた変数は系の特性に観察可能な影響(または正味の影響)を及ぼさない、定常状態を指す。
【0082】
用語「細孔」が本明細書で使用される場合、それは、粒子内に見られる空間、すなわち、多孔質粒子内のボイド空間(粒子内細孔)を指す。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語「乾燥する」は、それにより水の少なくとも一部が、乾燥される材料から除去される、プロセスを指す。本明細書で使用される場合、用語「乾燥された」またはその同義語「乾燥」材料は、特に指定のない限り、乾燥された材料の全重量に基づいて5.0wt.%以下である前述の材料の全含水率を定義する。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語「温浸」またはその同義語「温浸すること」は、ペースト状の試料を得、次いで温度を上昇させて粉末状の試料を得るための、濃硫酸(H2SO4)、塩酸(HCl)、および硝酸(HNO3)などの強酸中での試料の分解または溶解を指す。
【0085】
以下の説明全体にわたって、冠詞「1つの(a)」が要素を導入するのに使用される場合、それは、「ただ1つ」の意味を有さず、むしろ「1つまたは複数」を意味することは言及するに値する。明細書が、ステップ、構成要素、特徴、または特性が含まれ「てよい(may)」か、含まれ「てよい(might)」か、含まれ「得る(can)」か、または含まれ「得る(could)」ことを述べる場合、その特定の構成要素、特徴、または特性は、すべての代替物に含まれる必要はないことを理解すべきである。用語「含む(comprising)」またはその同義語「含む(including)」もしくは「有する(having)」が本明細書で使用される場合、それは、他の要素を除外しない。本発明の目的のために、表現「からなる(consisting of)」は、用語「含む(comprising)」の好ましい実施形態と見なされる。群が、少なくともある数の実施形態を含むように以下に定義される場合、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を開示することも理解すべきである。
【0086】
本明細書に記載される様々な方法は、高温湿式製錬プロセスによる、鉄系スラグ(例えば、鉄スラグおよび鋼スラグ)からの少なくとも1つの有価元素の回収に関する。例えば、高温湿式製錬プロセスは、以下、酸焼成水浸出(ABWL)と称する、酸焼成および水浸出の両方を含む。
【0087】
より具体的には、本技術は、鉄スラグまたは鋼スラグから少なくとも1つの有価元素を回収するための方法に関する。有価元素は、目的金属である。例えば、目的金属は、遷移金属、白金族金属、半金属、ポスト遷移金属、アルカリ土類金属、および/または希土類金属から選択され得る。目的金属の非限定的な例としては、チタン、ニオブ、マンガン、クロム、鉄、スカンジウム、ネオジム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、プラセオジム、ユーロピウム、テルビウム、エルビウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、ケイ素、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金が挙げられる。好ましくは、目的金属としては、チタン、ニオブ、マンガン、クロム、鉄、スカンジウム、ネオジム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、プラセオジム、ユーロピウム、テルビウム、エルビウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、およびケイ素の少なくとも1つが挙げられる。重要な変形によれば、目的金属としては、チタン、ニオブ、スカンジウム、およびネオジムの少なくとも1つが挙げられる。
【0088】
いくつかの実施形態では、2つ以上の有価元素が、共回収(または共抽出)され得る。あるいは、他の元素の共回収(または共抽出)を妨げながら、1つの有価元素が選択的に回収(または抽出)され得る。
【0089】
鉄または鋼スラグは、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化鉄(III)(Fe2O3)、酸化鉄(II)(FeO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化マンガン(II)(MnO)、五酸化リン(P2O5)、硫黄、およびそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つの構成成分を含み得る。例えば、鉄または鋼スラグは、SiO2、CaO、Fe2O3、FeO、Al2O3、MgO、MnO、P2O5、および/または硫黄を主に含む。
【0090】
場合によっては、鋼スラグは、製鋼炉スラグである。例えば、製鋼炉スラグは、塩基性酸素転炉(BOF)スラグ、電気アーク炉(EAF)スラグ、または取鍋スラグであり得る。1つの重要な変形では、製鋼炉スラグは、EAFスラグまたはBOFスラグである。例えば、EAFスラグの構成成分としては、FeO、Fe2O3、MnO、CaO、およびそれらの少なくとも2つの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。例えば、EAFスラグは、FeO、Fe2O3、MnO、および/またはCaOで主に構成される。
【0091】
他の場合では、鉄スラグは、高炉(BF)スラグ(製鉄スラグ)である。BFスラグの構成成分は、Al2O3、MgO、および硫黄を含み得る。例えば、BFスラグは、Al2O3、MgO、および/または硫黄で主に構成される。
【0092】
いくつかの実施形態では、鉄または鋼スラグは、マグネシウム、カルシウム、バナジウム、タングステン、銅、鉛、亜鉛、REE、ウラン、トリウムが挙げられるが、これらに限定されない少なくとも1つの他の構成成分をさらに含む。
【0093】
開示のより詳細な理解のために、可能な実施形態による、鉄または鋼スラグから少なくとも1つの有価元素を回収するための方法のフロー図を提供する、
図1をまず参照する。
【0094】
図1に示すように、スラグから少なくとも1つの有価元素(または目的金属)を回収するための方法は、鉄または鋼スラグ粒子と酸を共に混合して混合物を生成するステップを含む。
【0095】
鉄または鋼スラグ粒子および酸は、約0.5~約5の範囲の酸対鉄または鋼スラグ粒子質量比で共に混合される。例えば、酸対鉄または鋼スラグ粒子質量比は、約1~約4、または約1~約3.5、または約1~約3、または約2~約3、または約1~約2、または約1~約1.75の範囲であり得る。重要な変形によれば、酸対鉄または鋼スラグ粒子質量比は、約2~約3の範囲である。
【0096】
例えば、酸は、適用可能な場合、硫酸、塩酸、硝酸、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択され得る。1つの重要な変形では、酸は、硫酸を含む。
【0097】
酸は、濃酸であり得る。例えば、酸は、約95%~約99.999%の範囲の濃度を有し得る。
【0098】
なお
図1を参照して、方法は、混合物を焼成して混合物を温浸し、過剰な水および酸を除去し、熱分解ガスおよび少なくとも1つの可溶性金属塩を含む乾燥混合物を生成するステップも含む。
【0099】
焼成は、約100℃~約600℃の範囲の温度で行われる。例えば、焼成は、約200℃~約600℃、または約200℃~約550℃、または約200℃~約500℃、または約200℃~約450℃、または約200℃~約400℃、または約200℃~約300℃、または約300℃~約400℃の範囲の温度で行われてよい。重要な変形によれば、焼成は、約200℃~約400℃の範囲の温度で行われる。
【0100】
いくつかの実施形態では、焼成は、少なくとも30分の期間行われる。例えば、焼成は、約30分~約240分、または約30分~約180分、または約30分~約120分、または約30分~約90分、または約30分~約60分の範囲の期間行われてよい。1つの重要な変形では、焼成は、約120分の期間行われる、
【0101】
酸が硫酸を含む例では、可溶性金属塩は、少なくとも1つの可溶性金属硫酸塩を含む。
【0102】
酸が硫酸を含む例では、熱分解ガスは、三酸化硫黄および二酸化硫黄の少なくとも1つを含んでよい。
図1に示すように、焼成ステップ中に生成される熱分解ガスは、リサイクルされ得る。例えば、熱分解ガスは、混合ステップで再利用され得、それにより、化学薬品コストを低減し、方法の環境持続可能性を高める。
【0103】
混合ステップおよび焼成ステップは、順次に、同時に、または互いの時間が部分的に重複して行われ得る。いくつかの実施形態では、混合ステップおよび焼成ステップは、順次行われ、混合ステップは、焼成ステップの前に行われる。
【0104】
いくつかの実施形態では、混合ステップおよび焼成ステップは、高温処理装置、例えばロータリーキルンで行われる。
【0105】
いくつかの実施形態では、鉄または鋼スラグは、製鉄または製鋼プロセス(
図1には示されていない)の副産物である。例えば、製鉄または製鋼プロセスは、鉄または鋼スラグに熱エネルギーを提供し、鉄または鋼スラグ粒子は、混合ステップおよび焼成ステップの前に上昇した温度であり得、それにより焼成ステップに必要な温度を得るのに要するエネルギー入力を低減する。
【0106】
なお
図1を参照して、方法は、水を加えることによって乾燥混合物を浸出して、前述の目的金属に富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を生成することも含む。
【0107】
水は、約50g/L~約250g/Lの範囲の水対乾燥混合物密度を得るように加えられる。少なくとも1つの実施形態では、水対乾燥混合物密度は、約60g/L~約200g/L、または約75g/L~約200g/L、または約100g/L~約200g/L、または約125g/L~約200g/L、または約150g/L~約200g/L、または約55g/L~約200g/Lの範囲である。
【0108】
いくつかの実施形態では、浸出ステップは、周囲温度で行われる。いくつかの実施形態では、浸出ステップは、系が平衡に達するまで行われる。例えば、浸出ステップは、約30分~約360分、または約120分~約360分、または約180分~約360分の範囲内の期間行われる。
【0109】
なお
図1を参照して、方法は、固体残渣から前述の目的金属に富む水性浸出液を分離することも含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、分離は、前述の目的金属に富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を濾過することを含む。例えば、濾過は、減圧濾過、加圧濾過などの少なくとも1つであってよい。あるいは、重要な変形では、分離は、沈降ステップを含み、その際固体残渣は、前述の目的金属に富む水性浸出液を含有する容器の底部に沈降し、沈降物またはスラリーを形成する。例えば、沈降は、重力沈降または遠心沈降であってよい。
【0111】
図1に示すように、方法は、混合する前に、鉄または鋼スラグを粉砕して鉄または鋼スラグ粒子を得ることをさらに含んでよい。重要な変形によれば、粉砕は、ボールミリングによって行われる。例えば、ボールミリングは、粒子を活性化してよく、それにより抽出効率を上昇させる。いくつかの実施形態では、方法は、大きさにより鉄または鋼スラグ粒子を画分へと分類および分離することをさらに含む。例えば、スラグ粒子は、約200メッシュ未満の大きさを有する鉄または鋼スラグ粒子を得るために、狭い幅の画分に選別および分類されてよい。いくつかの実施形態では、鉄または鋼スラグ粒子は、実質的に均一な大きさである。例えば、鉄または鋼スラグ粒子は、約1μm~約150μm、または約1μm~約140μm、または約1μm~約130μm、または約1μm~約120μm、または約1μm~約110μm、または約1μm~約100μm、または約1μm~約90μm、または約5μm~約90μmの範囲の直径を有してよい。重要な変形によれば、鉄または鋼スラグ粒子は、約1μm~約130μmの範囲の直径を有する。
【0112】
なお
図1を参照して、いくつかの実施形態によれば、方法は、混合する前に、鉄または鋼スラグ粒子を乾燥することをさらに含んでよい。例えば、乾燥は、少なくとも約50℃の温度で行われてよい。例えば、乾燥は、約50℃~約80℃の範囲の温度で行われてよい。例えば、乾燥は、少なくとも約12時間の期間行われてよい。例えば、乾燥は、約12時間~約24時間の範囲の期間行われてよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、方法は、前述の目的金属に富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を撹拌することをさらに含む(
図1には示されていない)。撹拌および浸出は、順次に、同時に、または互いの時間が部分的に重複して行われ得る。いくつかの実施形態では、撹拌および浸出は、同時に行われる。例えば、撹拌は、約150rpm~約650rpmの範囲の撹拌速度で行われてよい。例えば、撹拌速度は、約200rpm~約600rpmの範囲であってよい。
【0114】
図1に示すように、過剰な酸は、分離ステップの後に回収されてよい。例えば、回収された酸は、混合ステップで再利用されてよく、それにより、コストを低減し、方法の環境持続可能性を高める。
【0115】
いくつかの実施形態では、方法は、前述の目的金属に富む水性浸出液を精製することをさらに含んでよい(
図1には示されていない)。例えば、精製ステップは、選択的沈殿法、溶媒抽出法、およびイオン交換法の少なくとも1つによって行われてよい。
【0116】
少なくとも1つの実施形態では、目的金属は、ニオブである。酸対鉄または鋼スラグ粒子質量比は、約2.5~約3.5の範囲、好ましくは約3である。焼成は、約375℃~約425℃の温度、好ましくは約400℃の温度で行われる。乾燥混合物の密度は、約175g/L~約225g/Lの範囲であり、好ましくは約200g/Lである。例えば、焼成は、約30分~約240分、または約30分~約150分、または約30分~約120分の範囲内の期間、好ましくは約120分間行われてよい。例えば、方法は、ニオブに富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を、約150rpm~600rpmの範囲、好ましくは約150rpmの撹拌速度で撹拌することを含み得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、ニオブの抽出効率は、少なくとも約90%であってよい。例えば、ニオブの抽出効率は、少なくとも約92%、または少なくとも約95%、または約92%~約99%、または約92%~約98%、または約92%~約97%の範囲であってよい。
【0118】
少なくとも1つの実施形態では、目的金属は、チタンである。酸対鉄または鋼スラグ粒子質量比は、約2~約3の範囲である。焼成は、約200℃~約400℃の温度で行われる。乾燥混合物の密度は、約50g/L~約200g/L、または約60g/L~約200g/Lの範囲である。例えば、焼成は、約30分~約120分、または約30分~約90分の範囲で行われてよい。例えば、方法は、チタンに富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を、約150rpm~約550rpm、または約200rpm~約550rpmの範囲の撹拌速度で撹拌することをさらに含む。一実施形態では、鋼スラグは、電気アーク炉スラグであり、酸対鋼スラグ粒子質量比は、約3であり、焼成は、約400℃の温度で行われ、乾燥混合物の密度は、約200g/Lである。焼成は、約120分の期間行われ、撹拌速度は、約150rpmである。一実施形態では、鉄スラグは、BFスラグであり、酸対鉄スラグ粒子質量比は、約2であり、焼成は、約200℃の温度で行われ、乾燥混合物の密度は、約62g/Lである。焼成は、約90分の期間行われ、撹拌速度は、約600rpmである。
【0119】
いくつかの実施形態では、チタンの抽出効率は、少なくとも約90%であってよい。例えば、チタンの抽出効率は、少なくとも約92%、または少なくとも約95%、または少なくとも約97%であり得る。
【0120】
少なくとも1つの実施形態では、目的金属は、スカンジウムである。酸対鉄または鋼スラグ粒子質量比は、約1.5~約2.5の範囲、好ましくは約2である。焼成は、約175℃~約225℃の温度、好ましくは約200℃の温度で行われる。乾燥混合物の密度は、約50g/L~約70g/Lの範囲、好ましくは約60g/Lである。焼成は、約60分~約120分の範囲内の期間、好ましくは約90分間行われる。方法は、スカンジウムに富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を、約550rpm~約650rpmの範囲、好ましくは約600rpmの撹拌速度で撹拌することをさらに含み得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、スカンジウムの抽出効率は、少なくとも約70%であってよい。例えば、スカンジウムの抽出効率は、約70%~約98%、または約70%~約89%、または約70%~約85%、または約75%~約85%、または約75%~約82%の範囲であり得る。
【0122】
少なくとも1つの実施形態では、目的金属は、ネオジムである。酸対鉄または鋼スラグ粒子質量比は、約1.5~約2.5の範囲、好ましくは約2である。焼成は、約175℃~約225℃の温度、好ましくは約200℃の温度で行われる。乾燥混合物の密度は、約50g/L~約70g/Lの範囲、好ましくは約60g/Lである。焼成は、約30分~約60分の範囲内の期間、好ましくは約30分間行われる。方法は、ネオジムに富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液を、約550rpm~約650rpmの範囲、好ましくは約600rpmの撹拌速度で撹拌することをさらに含んでよい。いくつかの実施形態では、ネオジムの抽出効率は、約60%未満、または約40%未満である。
【0123】
いくつかの実施形態では、鉄の抽出効率は、少なくとも約85%であり得る。例えば、Fe抽出効率は、少なくとも約90%、または少なくとも約91%であり得る。いくつかの実施形態では、マンガンの抽出効率は、少なくとも約90%であり得る。例えば、Mn抽出効率は、少なくとも約95%、または少なくとも約97%であり得る。いくつかの実施形態では、マグネシウムの抽出効率は、少なくとも約95%であり得る。例えば、Mg抽出効率は、少なくとも約97%、または少なくとも約98%であり得る。いくつかの実施形態では、アルミニウムの抽出効率は、少なくとも約58%であり得る。例えば、Al抽出効率は、少なくとも約65%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%であり得る。いくつかの実施形態では、クロムの抽出効率は、少なくとも約90%であり得る。例えば、Cr抽出効率は、少なくとも約95%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%であり得る。
【0124】
開示のより詳細な理解のために、可能な実施形態による、ABWL回収システム10の概略図を提供する、
図2を次に参照する。ABWL回収システム10は、高温処理装置12および水浸出ユニット14を含む。一実施形態によれば、回収システム10は、沈降容器16をさらに含んでよい。
【0125】
いくつかの実施形態では、高温処理装置12は、例えば、産業排出物ライン(
図2には示されていない)から直接、鉄または鋼スラグを含む第1の供給流18を受け取り、酸、例えば硫酸を含む第2の供給流20を受け取るように構成される。
図2に示すように、高温処理装置12は、乾燥混合物22を放出するようにさらに構成される。なお
図2を参照して、水浸出ユニット14は、乾燥混合物22、および水を含む第3の供給流24を受け取るように構成される。一実施形態によれば、水浸出ユニット14は、撹拌装置26をさらに含んでよい。水浸出ユニット14は、目的金属に富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液28を放出するようにさらに構成される。
図2に示すように、沈降容器16は、目的金属に富む水性浸出液および固体残渣を含む水溶液28を受け取り、固体残渣30および目的金属に富む浸出液32を放出するように構成される。
【0126】
本出願は、炭素熱還元プロセスによる、鉄または鋼スラグからの少なくとも1つの有価元素の回収に関する様々な方法についても記載した。例えば、炭素熱還元プロセスは、単独で、または高温湿式製錬プロセスと組み合わせて使用され得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、炭素熱還元プロセスは、高温湿式製錬プロセス、例えば、本明細書に記載されるようなABWLプロセスと組み合わせて使用され得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、炭素熱還元プロセスは、高温湿式製錬プロセスの前に行われ得る。
【0129】
より具体的には、本技術はまた、鉄または鋼スラグから少なくとも1つの有価元素を回収するための方法に関する。有価元素は、目的金属である。例えば、目的金属は、遷移金属、半金属、ポスト遷移金属、アルカリ土類金属、および/または希土類金属から選択され得る。目的金属の非限定的な例としては、鉄、カルシウム、ケイ素、マンガン、アルミニウム、クロム、ストロンチウム、銅、ニッケル、チタン、ニオブが挙げられる。重要な変形によれば、目的金属としては、鉄、マンガン、クロム、ニオブ、マグネシウム、およびアルミニウムの少なくとも1つが挙げられる。いくつかの実施形態では、鋼スラグは、EAFスラグである。例えば、EAFスラグは、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、ニオブ、およびアルミニウムの少なくとも1つを含み得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、2つ以上の有価元素が、共回収(または共抽出)され得る。あるいは、他の元素の共回収(または共抽出)を妨げながら、1つの有価元素が、選択的に回収(または抽出)され得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの有価元素が、炭素熱還元プロセスによって、鉄または鋼スラグから金属相として選択的に抽出され得る。例えば、鉄、マンガン、クロム、およびニオブの少なくとも1つが、炭素熱還元プロセスによって、鉄または鋼スラグから金属相として選択的に抽出され得る。1つの重要な変形では、鉄が、金属相として選択的に抽出される。
【0132】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの有価元素が、炭素熱還元プロセスによって、鉄または鋼スラグから金属相として選択的に抽出され得、少なくとも1つの他の有価元素が、後続の高温湿式製錬プロセスによって抽出され得る。例えば、マグネシウムおよびアルミニウムの少なくとも1つが、後続の高温湿式製錬プロセスによって抽出され得る。いくつかの例では、鉄、マンガン、クロム、およびニオブの少なくとも1つが、炭素熱還元プロセスによって、鉄または鋼スラグから金属相として選択的に抽出され得、マグネシウムおよびアルミニウムの少なくとも1つが、後続の高温湿式製錬プロセスによって抽出され得る。
【0133】
例えば、炭素熱還元プロセスは、鉄または鋼スラグから少なくとも1つの有価元素の存在を実質的に低減するために、および後続の高温湿式製錬プロセスによる少なくとも1つの目的金属の抽出を実質的に増大させるために使用され得る。
【0134】
開示のより詳細な理解のために、次に、可能な実施形態による、鉄または鋼スラグから少なくとも1つの有価元素を回収するための方法のフロー図を提供する
図3を参照する。
【0135】
図3に示すように、鉄または鋼スラグから少なくとも1つの有価元素(または目的金属)を回収するための方法は、鉄または鋼スラグ粒子、および少なくとも1つの還元剤、および任意選択で少なくとも1つの融剤を混合するステップを含む。
【0136】
好適な還元剤の非限定的な例としては、冶金用石炭、木炭、石油コークス(petroleum coke)、石油コークス(pet coke)、天然ガス、またはそれらの少なくとも2つの組み合わせなどの炭素源が挙げられる。1つの重要な変形では、還元剤は、褐炭を含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、鉄または鋼スラグ粒子および還元剤は、鉄または鋼スラグ1g当たり少なくとも約0.06gの炭素の、炭素対スラグ質量比で混合される。例えば、鉄または鋼スラグ粒子および還元剤は、限界値を含む、鉄または鋼スラグ1g当たり約0.06~約0.12gの範囲の炭素の、炭素対スラグ質量比で混合される。例えば、鉄もしくは鋼スラグ粒子および還元剤は、鉄もしくは鋼スラグ1g当たり約0.06gの炭素、または鉄もしくは鋼スラグ1g当たり約0.09gの炭素、または鉄もしくは鋼スラグ1g当たり約0.12gの炭素の、炭素対スラグ質量比で混合される。
【0138】
好適な融剤の例としては、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、およびそれらの少なくとも2つの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。1つの重要な変形では、融剤は、シリカである。別の重要な変形では、融剤は、アルミナである。別の重要な変形では、融剤は、アルミナおよびシリカの両方を含む。例えば、融剤は、液相形成を促進するか、または鉄または鋼スラグの金属相から化学的不純物を除去するその能力で選択され得る。
【0139】
いくつかの実施形態では、鉄または鋼スラグ粒子および融剤は、鉄または鋼スラグ1g当たり0~約0.1gの範囲の融剤の、融剤対スラグ質量比で混合される。例えば、鉄もしくは鋼スラグ粒子および融剤は、鉄もしくは鋼スラグ1g当たり0gの融剤、または鉄もしくは鋼スラグ1g当たり約0.05gの融剤、または鉄もしくは鋼スラグ1g当たり約0.1gの融剤の、融剤対スラグ質量比で混合される。
【0140】
図3に示すように、方法は、混合する前に鉄または鋼スラグを粉砕して鉄または鋼スラグ粒子を得ることをさらに含み得る。例えば、任意の適合する粉砕法が企図される。重要な変形によれば、粉砕は、ジョークラッシャおよびディスクミルの少なくとも1つを使用して行われる。いくつかの実施形態では、方法は、大きさにより鉄または鋼スラグ粒子を画分へと分類および分離することをさらに含む。例えば、スラグ粒子は、約200メッシュ(約74μm)未満の大きさを有する鉄または鋼スラグ粒子を得るために、狭い幅の画分に選別および分類されてよい。いくつかの例では、鉄または鋼スラグ粒子は、実質的に均一な大きさである。
【0141】
なお
図3を参照して、方法は、水分含有量を除去するために、混合する前に鉄または鋼スラグ粒子を乾燥することをさらに含み得る。例えば、乾燥は、少なくとも約50℃の温度で行われ得る。例えば、乾燥は、約50℃~約80℃の範囲の温度で行われてよい。例えば、乾燥は、少なくとも約24時間の期間行われてよい。
【0142】
なお
図3を参照して、方法は、鉄または鋼スラグ粒子、還元剤、および融剤を含む混合物をペレット化してペレットを作製するステップをさらに含み得る。例えば、ペレット化ステップは、還元剤と鉄または鋼スラグ粒子との間の接触面積を実質的に増大させて、後続の製錬ステップ中の還元速度を上昇させるために行われ得る。
【0143】
いくつかの実施形態では、ペレット化ステップは、プレスを使用して混合物をペレットにプレス加工することによって行われ得る。任意の適合するペレット化法が企図される。重要な変形によれば、ペレット化は、空気/液圧プレスを使用して混合物をペレットにプレス加工することによって行われる。いくつかの例では、ペレット化は、約250MPaの圧力で約3分間行われ、例えば、これらの条件下で、ペレットは、約28.6mmの直径を有する。
【0144】
なお
図3を参照して、方法は、鉄または鋼スラグ粒子、還元剤、および融剤を含む混合物、またはペレットを製錬して、スラグ相、および金属相としての目的金属を得るステップも含む。製錬ステップは、目的金属を抽出するために、混合物またはペレットに熱を加えることによって行われる。熱を加える任意の適合する手段が企図される。例えば、製錬ステップは、溶融または製錬炉を使用して行われる。
【0145】
いくつかの実施形態では、製錬ステップは、約1300℃~約1800℃の範囲の温度で、1時間当たり約180℃の加熱速度、1時間当たり約180℃の冷却速度、および約1.5時間の保持時間で行われる。例えば、製錬ステップは、限界値を含む、約1300℃~約1700℃、または約1300℃~約1600℃、または約1400℃~約1800℃、または約1400℃~約1700℃、または約1400℃~約1600℃、または約1500℃~約1800℃、または約1500℃~約1700℃、または約1500℃~約1600℃の範囲の温度で行われる。1つの重要な変形では、製錬ステップは、限界値を含む、約1500℃~約1600℃の範囲の温度で行われる。いくつかの実施形態では、製錬ステップは、不活性雰囲気下、例えば、アルゴン雰囲気下で行われ得る。1つの重要な変形では、製錬ステップは、約1500℃の温度で行われる。別の重要な変形では、製錬ステップは、約1550℃の温度で行われる。さらに別の重要な変形では、製錬ステップは、約1600℃の温度で行われる。例えば、製錬温度を上昇させることは、鉄または鋼スラグの粘度を低下させ、それにより金属相としての目的金属の、スラグ相からの分離を向上させ、抽出効率の上昇をもたらす。
【0146】
いくつかの実施形態では、鉄または鋼スラグは、製鉄または製鋼プロセス(
図3には示されていない)の副産物である。例えば、製鉄または製鋼プロセスは、鉄または鋼スラグに熱エネルギーを提供し、鉄または鋼スラグ粒子は、混合ステップおよび製錬ステップの前に上昇した温度であり得、それにより製錬ステップに必要な温度を得るのに要するエネルギー入力を低減する。
【0147】
いくつかの実施形態では、鉄または鋼スラグ粒子および還元剤は、化学エネルギーを放出する酸化還元(レドックス)反応を経る。例えば、レドックス反応は、副産物として熱を生成する(発熱反応)。あるいは、鉄または鋼スラグ粒子および還元剤は、化学エネルギーを放出しないレドックス反応を経る。例えば、レドックス反応が化学エネルギーを放出する場合、それは、製錬ステップに必要な温度を得るのに要するエネルギー入力を低減してよい。
【0148】
また
図3に示すように、方法は、スラグ相から金属相(例えば、鉄)を分離するステップも含む。スラグ相から金属相を分離する任意の適合する手段が企図される。例えば、金属相は、例えば、任意の適合する機械的分離法を使用して、手動でスラグ相から分離され得る。
【0149】
なお
図3を参照して、方法は、スラグ相を粉砕してスラグ粒子を得るステップをさらに含む。例えば、任意の適合する粉砕法が企図される。いくつかの実施形態では、方法は、大きさによりスラグ粒子を画分へと分類および分離することをさらに含む。例えば、スラグ粒子は、実質的に低減された大きさを有するスラグ粒子を得るために、狭い幅の画分に選別および分類されてよい。いくつかの例では、スラグ粒子は、実質的に均一な大きさである。
【0150】
なお
図3を参照して、方法は任意選択で、スラグ相中の金属相(例えば、鉄)含有量をさらに低減して、目的金属の枯渇したスラグ、例えば、鉄枯渇スラグを生成するステップを含み得る。
【0151】
いくつかの実施形態では、スラグ相中の金属相含有量をさらに低減するステップは、磁気分離によって行われ得る。任意の磁気分離法が企図される。例えば、磁気分離は、Davis(商標)管を使用して行われ得る。
【0152】
なお
図3を参照して、方法は、目的金属の枯渇したスラグ(例えば、鉄枯渇スラグ)を高温湿式製錬プロセスにかけて、目的金属の枯渇したスラグから少なくとも1つの有価元素を回収することをさらに含み得る。例えば、高温湿式製錬プロセスは、本明細書に記載されるようなABWLプロセスであり得る。
【0153】
鉄または鋼スラグからの有価元素の回収は、戦略物質の供給、天然資源の保護と関連する持続可能性の課題に取り組み得、産業廃棄物の隠れた価値を効果的に明らかにする。本明細書に記載される技術は、処分される廃棄物の量を著しく低減し得、コストの節約および環境的利益をもたらす。加えて、湿式製錬プロセスで発生する熱分解ガスおよび廃浸出液をリサイクルすることは、化学薬品コストをさらに低減し得る。この酸焼成水浸出方法は、従来の方法と比較して、目的金属の効率的な回収を容易にし得る。本明細書に記載される技術の別の利点は、製鉄または製鋼プロセスの余熱を酸焼成ステップに使用することが可能であり得ることであり、これはまた、さらに環境的に持続可能な方法を提唱することによりコストを低減し環境に利益をもたらすことも意味する。したがって、この方法は、鉄または鋼スラグの高付加価値化に適用可能である。
【0154】
実施例
以下の非限定的な実施例は、例示的実施形態であり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。これらの実施例は、添付の図面を参照してより良く理解されるであろう。
【0155】
実施例1:ABWLによるEAFスラグからの有価元素の回収
(a)EAFスラグ粒子の調製および特性評価
EAFスラグ試料を、ボールミルを使用して破砕および粉砕して、EAFスラグ粒子を得た。EAFスラグ粒子を次いで、狭い幅の画分に選別および分類して、実質的に均一な約200メッシュの粒子径を得た。選別したEAFスラグ粒子を次いで、コンベクションオーブン中で24時間超にわたって乾燥した。
【0156】
EAFスラグ粒子を、X線回折(XRD)、走査型電子顕微鏡付属エネルギー分散型分光法(SEM-EDS)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)、および誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)によって特性評価した。
【0157】
粉砕EAFスラグの粒子径分布を、粒子径分析装置を使用して測定した。
図4に見られるように、メジアン粒子径は、約16.0μmであり、平均粒子径は、約25.3μmであり、D
90は、約58.4μmである。
【0158】
図5に示すように、EAFスラグの元素組成を、王水温浸後にICP-OESによって特性評価した(
図5(a)および(b))。EAFスラグ試料は、約0.05wt.%のNb、約0.19wt.%のTi、約24wt.%のFe、約17wt.%のCa、約6wt.%のMn、約6wt.%のMg、約3wt.%のAl、および約2wt.%のCrを含有した。
【0159】
図5(c)に示すように、ウスタイトFe
0.944O、ヘマタイトFe
2O
3、ブラウンミラライトCa
2((Fe
1.63Al
0.37)O
5)、スピネルマグネシオフェライトFe
2MgO
4、およびラーナイトCa
2Siを含む、いくつかの酸化物相が検出された。結果は、試料が主に酸化物形態であることを示したが、試料ピークの複雑さのために同定されなかった他の相も、存在する可能性があった。さらに、NbおよびTiの低い濃度は、これらの元素を含む相の検出を妨げた。
【0160】
表面形態および元素マッピングを、
図5(d)に示すように、SEM-EDSを使用して検討した。EDSの結果は、NbおよびTiが特定の領域に集中し、互いおよびCaに高度に関連することを示した。例えば、Tiは、チタン酸カルシウムとして存在し得、Nbは、同形置換によって同じ化合物中に存在し得る。
【0161】
(b)EAFスラグ粒子からの金属の回収
乾燥後、いくつかの試料を、実施例1(a)で調製した2gの選別したEAFスラグ粒子を濃(96wt.%)H2SO4と混合し、次いで混合物を200℃~400℃の異なる温度の炉で焼成することによって、調製した。酸焼成した試料を次いで、異なるスラグ対水密度および撹拌速度で6時間マグネチックスターラでの撹拌下にて25℃の温度で、水中で浸出した。浸出溶液を、Hamilton(商標)Microlab 600(商標)デュアル希釈および分注装置システムを使用して希釈し、ICP-OESによって特性評価した。試料を、酸焼成前後に、XRDおよびSEM-EDSによって特性評価した。
【0162】
(c)実験計画および経験的モデル構築
系統的研究を行って、5つの操作因子、すなわち、酸焼成温度(X1)、酸対スラグ粒子質量比(X2)、酸焼成時間(X3)、浸出パルプ密度(またはスラグ粒子対水密度)(X4)、撹拌速度(X5)、およびこれらの因子の組み合わせの、Nb、Ti、Fe、Ca、Mn、Mg、Al、およびCrの抽出効率に対する定量的効果を検討した。
【0163】
統計的検討のために、試験因子を、低(-1)、中(0)、および高(+1)レベルに符号化して、因子モデル係数の大きさに基づく各因子の相対的効果の直接比較を可能にした。
【0164】
因子レベルについての詳細な情報を、表1に示す。因子レベルの上限および下限を、予備実験に基づいて、系の応答が実質的に線形であり得る操作範囲内で選択した。
【表1】
【0165】
その5つの操作因子を有する実験行列を、応答に対する各因子の効果および因子間の交互作用を評価するのに使用される統計的手法の1つである、一部実施要因計画法を使用して設計した。一連の
【数1】
要因試験を、計画行列に基づいて、実行の分散を推定するための3回の中心点実験を含み、合計19回行った。実験の実行は、標準的な順序で示されているが、実際の実行は、偶然誤差の可能性を最小化するために無作為化された順序で行われた。
【0166】
追加の試験を、1.25、1.50、および1.75のX2で行ってX2の効果を検討し、速度研究を、7時間X1=200℃および400℃で行った。これらの実験は、計画行列のバランスを崩し、そのため経験的モデル構築データセットに含まれない。
【0167】
経験的モデル構築のための
【数2】
実験計画行列を、以下の表2に示す。
【表2】
【0168】
目的元素i(y
i)の実験的応答を、濃度のICP-OES測定、および式1に概説されるように計算された抽出効率に基づいて、決定した。
【数3】
【0169】
式中、Ciは、浸出液中の分析物(目的元素)の濃度であり、Viは、浸出液の体積であり、m0は、使用された原料試料中に存在する各目的元素の重量である。
【0170】
各研究された因子およびこれらの因子の組み合わせの抽出効率に対する効果を、実験データをフィットすることによって定量的に評価し、式2(下記)で与えられる各目的元素の経験的モデルを構築して、目的元素の抽出効率
【数4】
を推定し、ABWLプロセスを最適化した。
【0171】
モデルを、式3(下記)で示す最小二乗法による線形重回帰分析(mLLSR)によって実験データにフィットし、式中、
【数5】
は、モデル因子の各々を含有するベクトルであり、定数因子(β
0)は、その分析物のベースラインバイアスに対応し、β
1は、酸焼成温度に対応し、β
2は、酸対スラグ質量比を表し、β
3は、酸焼成時間に対応し、β
4は、スラグ対水密度を表し、β
5は、撹拌速度に対応する。β
ijは、2つの因子の組み合わせに対応し、X
iは、実験計画行列(表2)であり、Y
iは、分析物iの測定された抽出効率を含有する応答行列である。
【数6】
【0172】
式4(下記)で示す両側t分布に基づいて、モデルパラメータの各々の有意性を、95%信頼区間(CI
95%)を決定することによって検証した。
パラメータ分散
【数7】
を、反復実行の組の各々のプールされた標準偏差の二乗として推定した。
信頼区間がゼロを含む任意のパラメータを、モデルから除去し、応答に有意な効果を有するパラメータのみを残した。
【数8】
【0173】
分散分析(ANOVA)を、単純化モデルについて行って、モデルへの一致の正確度を評価した。決定係数(R
2)、測定された分析物抽出効率(y
i)と予測値
【数9】
との間の相関の程度を、式5に従って決定した。モデルの有意性を次いで、F検定(式6および7)によって評価し、モデルの妥当性を、R検定(式8および9)によって評価した。
【数10】
【0174】
(d)操作パラメータの決定、ならびにNb、Ti、Fe、Ca、および他の元素の抽出効率に対するそれらの効果の評価
Nb、Ti、Fe、Ca、および他の元素の抽出効率に対するABWL操作パラメータの効果を、X1、X2、X3、X4、およびX5に関して検討した。
【0175】
操作条件、ならびに対応するNb、Ti、Fe、Ca、Mn、Mg、Al、およびCrの抽出効率の概要を、以下の表3で提供する。これらの試行では、NbおよびTiの最大抽出効率は、100%であり、Fe、Mn、およびMgなどの他の元素は、95%超の効率で共抽出された。
【表3】
【0176】
表3中、実行番号17~21は、Inorganic Ventures, Inc(商標)によって供給された、濃度100mg/LのNbおよびTiの標準原液、ならびに濃度1000mg/LのFe、Ca、Mn、Mg、Al、およびCrの標準原液で分析された検証実行である。
【0177】
各因子(X
1~X
5)の効果を決定し、異なる因子レベルでの各元素の抽出効率を
図6に示す。
【0178】
図6(a)に見られるように、X
1は、6時間の浸出時間で、NbおよびCrの抽出効率に大きな正の影響を及ぼす。同じ浸出時間で、Ca抽出効率は、X
1の増加によって負の影響を受ける。
【0179】
図6(e)に見られるように、X
5は、Caを除くほとんどすべての元素の抽出効率に実質的にごくわずかな影響を及し、Caでは、X
5は、わずかだが正の影響を及ぼす。これらの結果は、150rpmのX
5は、系が化学平衡に達し、EAFスラグからほとんどすべての元素を抽出するのに十分であることを示すが、このパラメータの二次効果は、最大抽出効率を正確に予測することと見なされるべきである。
【0180】
図7(a)および(b)に示すように、水浸出速度実験を、200℃および400℃で最長7時間焼成した試料について行い、それは、浸出プロセスの速度論は、X
1=200℃で調製された試料と比較してX
1=400℃で調製された試料でより遅く、かつ十分な量の時間が与えられて平衡に達する場合、X
1の増加は、Caを除くすべての元素の浸出効率に正の効果をもたらし、これはおそらく、Caが硫酸媒体中で、非常に低い水溶性を有するCaSO
4として沈殿するためであることを示した。
【0181】
検討された操作因子の中で、X2は、たいていの元素の抽出に最も大きな正の影響を示し、これは、より高い酸対スラグ比では、スラグ粒子試料と反応する酸分子がより多く存在し、抽出効率の大幅な上昇を有効にもたらすという事実に起因し得る。
【0182】
FeおよびTiでは、X
2=2が、それらのそれぞれの最大抽出効率に達するのに十分であることに留意すべきである。したがって、因子レベル0(比率2)での中心点の結果は、因子レベル+1(比率3)での結果に類似した。したがって、因子レベル-1(比率1)~レベル0(比率2)の範囲の追加の実験が、FeおよびTiの抽出効率に対するこれらの因子の効果についてのさらなる洞察を得るために必要である。追加の試験を、1.25、1.50、および1.75の酸対スラグ質量比で行い、結果を
図7(c)に示す。
【0183】
図7(c)に示すように、NbおよびCaの抽出効率は、X
2と、より具体的には1~3の範囲で直線関係を有し、一方、二次交互作用もまた、X
2とFe、Ti、および他の元素との間で観察され得る(二次曲率)。
【0184】
(e)経験的モデル構築
経験的抽出モデルを、式2で示すように、mLLSRにより構築して、主実験因子およびエイリアスされた二次交互作用の相対的効果を評価した。
図8は、各元素の経験的抽出モデルの順序付けられた因子効果係数を示す。
【0185】
図8(a)に示すように、Nb抽出に最も大きな正の影響を有する因子は、X
1およびX
3である。この観察の背後にある理由は、Nb
5+が、CaTiO
3相中のTi
4+と置き換わる可能性があることである。Nb
5+の電荷密度はTi
4+の電荷密度より高いため、この置換は、より高い安定性をもたらす。したがって、より多くのエネルギーが、Nbの硫酸化反応に必要である。また、Nb酸化物は、高温になって初めて、硫酸媒体中に溶解し始めることが知られている。X
1およびX
3の正の効果の別の理由は、X
1の400℃への増加が、H
2SO
4を放出しそれによりNbの抽出効率を上昇させる、(H
3O)Fe(SO
4)
2相のFe
2(SO
4)
3相への変換をもたらすことである。X
3の増加は、滞留時間を増加させ、したがって抽出効率に正の効果をもたらす。
【0186】
X1およびX3に加えて、Nb抽出は、X2の増加によってわずかに正の影響を受ける。Eh-pH図(またはPourbaix図、電位/pH図としても知られる)に基づいて、水浸出ステップの酸性条件下で、Nb2O5は可溶であり、これは、Nb抽出効率に対するそれほど顕著でないX2の効果を説明する。
【0187】
Tiの場合、抽出効率は、X
2の増加と共に著しく上昇し、これは、温浸反応では、酸が限定試薬であり、したがって、より多くの酸分子が利用可能な場合、より多くのTi分子が可溶性Ti硫酸塩に変換されることを示唆する(
図8(b))。上述のように、Tiは、立方晶構造を有するCaTiO
3として、Ca担持相内に存在し得る。Tiは、単位格子の中心にあり、Ca原子に取り囲まれているため、Caは、酸焼成プロセス中にTiを抽出するために、H
2SO
4とまず反応しなければならない。これは、Ti抽出効率に対するX
2の正の効果を説明する。Eh-pH図によれば、Ti
2(SO
4)
3は、低いpHでのみ可溶性であり、これは、X
2の正の効果をさらに説明する。
【0188】
他の元素(Fe、Mn、Mg)は、Tiに類似した抽出挙動を有するが、各因子効果の大きさは、わずかに異なる(
図8(c)、(e)、および(f)。X
4は、Caを除くすべての元素の抽出効率に、ごくわずかまたはわずかな正の影響を示す(
図8(d))。X
5は、Caを除くすべての元素の抽出効率に対しごくわずかな効果をもたらし、これは、膜拡散が律速段階である場合にのみ撹拌速度の正の効果が観察され得るためと予想され得る。したがって、150rpmの撹拌速度は、EAFスラグからほとんどすべての元素を抽出するのに十分である。
【0189】
X4は、ほとんどすべての元素の抽出効率に対し正の効果をもたらす。この理由で、200g/Lは、EAFスラグからほとんどすべての元素を抽出するのに十分であると見なすことができる。
【0190】
Caは、独特の抽出挙動を示し、そこでX4は、負の影響を及ぼし、X2は、正の影響を及ぼす。高X4では、抽出のための十分な酸が存在する場合、より多くの固体が浸出に利用可能であるが、CaSO4の溶解性は、水中で低い。したがって、溶液からより多くのCaが、高X4で沈殿し、ゆえに、抽出効率の低下が観察され得る。X2の正の影響は、CaSO4の溶解性が、本実施例で検討されたpH範囲では、H2SO4濃度の上昇と共に増大するという事実に起因し得る。
【0191】
Nb、Ti、Fe、Ca、Mn、Mg、Al、およびCrの抽出効率に対する主効果および二次効果についての詳細な情報を、表4に示す。
【表4】
【0192】
(f)酸焼成水浸出プロセス
この経験的抽出モデルから、最適化された回収条件は、高X
1(400℃、+1レベル)、高X
2(3、+1レベル)、高X
3(120分、+1レベル)、高X
4(200g/L、+1レベル)、および低X
5(150rpm、+1レベル)であると決定された。最適条件下での実験を行って、経験的モデルの適用可能性を検証した。実際の浸出効率と共に、経験的モデルから予測される抽出効率を、表5に示す。
【表5】
【0193】
表5に見られるように、98.7%のNb、93.4%のTi、97%超のFe、Mn、およびMgの抽出が、これらの条件下で達成された。したがって、この研究で構築された経験的モデルは、最適操作条件および対応する抽出効率を、高い正確度(絶対平均相対偏差(AARD)=12.8%)でうまく予測できると結論づけられた。
【0194】
(g)酸焼成プロセス前後のEAFスラグの特性評価
異なる操作条件下での酸焼成前後のEAFスラグの結晶構造および表面形態を、XRDおよびSEM-EDSによって検討した(
図9)。
図9(a)は、酸焼成および水浸出プロセス前後のEAFスラグ粒子のXRDディフラクトグラムを示す。SEM-EDS像を、
図9(b)~(e)に示し、(b)に原料EAFスラグ粒子、(c)に200℃で調製された試料、(d)に400℃で焼成された試料、(e)に水浸出ステップ後に得られた残渣を示す。
【0195】
これらの試料を、酸焼成、焼成温度、および水浸出の影響を研究するために選択した。XRDおよびSEMの結果を、
図9に示す。EAFスラグ中、NbおよびTiは、微量で存在し、
図5(d)に関して先に記載されたように、Caと関連している。ゆえに、NbおよびTiの温浸機構についての検討は、酸焼成プロセスの温浸中の、主要な元素(すなわち、CaまたはFe)相の鉱物学的および形態学的変化の観察を必要とする。
【0196】
酸焼成中のCaおよびFe相の鉱物学的変化を検討するために、200℃および400℃で焼成された試料を、XRDによって特性評価した。
図9(a)に見られるように、XRDの結果は、酸焼成プロセス中に、Fe主要相、すなわちウスタイト(FeO)およびヘマタイト(Fe
2O
3)、ならびにCa担持相(Ca
2SiO
4)は、温浸され、硫酸塩相と置き換えられることを示す。より低い焼成温度(200℃)では、オキソニウム鉄硫酸複塩((H
3O)Fe(SO
4)
2)、ゾモルノカイト(FeSO
4・H
2O)、および硬石膏(CaSO
4)が形成されるが、鉄相は、より高い焼成温度で無水Fe
2(SO
4)
3に変換される。XRDの結果に基づいて、200℃では、以下の反応が起こると予想される:
4FeO
(s)+8H
2SO
4(aq)+O
2(g)→4(H
3O)Fe(SO
4)
2(s)+2H
2O
(g) [式10]
Ca
2SiO
4(s)+2H
2SO
4(aq)→2CaSO
4(s)+H
4SiO
4(aq) [式11]
【0197】
より高い焼成温度(400℃)では、FeSO
4・H
2Oおよび(H
3O)Fe(SO
4)
2相は、
図9(a)に見られるように、以下の反応に従って、Fe
2(SO
4)
3に変換された:
2(H
3O)Fe(SO
4)
2(s)→Fe
2(SO
4)
3(s)+H
2SO
4(g)+2H
2O
(g)
[式12]
4FeSO
4・H
2O
(s)+4H
2SO
4(aq)→2Fe
2(SO
4)
3(s)+2SO
2(g)+8H
2O
(g) [式13]
4FeSO
4・H
2O
(s)+2H
2SO
4(aq)+O
2(g)→2Fe
2(SO
4)
3(s)+6H
2O
(g) [式14]
【0198】
式12に見られるように、(H
3O)Fe(SO
4)
2のFe
2(SO
4)
3への変換は、さらなるH
2SO
4を放出する。この追加の酸は、硫酸化反応に関与し得、それにより目的元素の抽出効率を上昇させ得る。弱い層状水素結合構造を有するFeSO
4・H
2Oおよび(H
3O)Fe(SO
4)
2と異なり、400℃で生成されたFe
2(SO
4)
3は、立方晶構造を有し、したがって、400℃で焼成された試料の浸出速度論は、
図7(a)および(b)に示すように、200℃で焼成された試料のものより遅い。
【0199】
図9(a)に見られるように、水浸出ステップ後の残渣は、主にCaSO
4からなり、それは水溶性が低いため、Caの抽出効率は低い。
【0200】
ケイ酸塩に富む相のマイクロ流体輸送環境は時折、シリカゲルの重合をもたらし得、これは、浸出プロセスに悪影響を及ぼす。
図9(a)に示すように、EAFスラグ中の主要なケイ酸塩相(CaSiO
4)は、酸焼成プロセス中に完全に温浸され、Si担持相は、両方の焼成温度で酸焼成された試料中に検出されなかった。結果として、シリカゲルの形成は、水浸出ステップ中に検出されなかった。
【0201】
焼成前、ならびに200℃および400℃での焼成後、ならびに水浸出後の、EAFスラグの形態変化を、SEMを使用して特性評価した。
図9(b)に示すEAFスラグ原料は、平均粒子径が25.3μmの粗い表面を有する(
図4)。
図9(c)に示すように、スラグ試料を低温(200℃)で酸焼成した場合、形態は、大きい板状結晶に変化し、(H
3O)Fe(SO
4)
2の結晶で報告された6面平板状形態と一致した。反対に、
図9(d)に示すように、高温(400℃)で焼成されたスラグ試料は、立方晶構造を有し、菱面体Fe
2(SO
4)
3の構造と一致した。
図9(e)は、100% CaSO
4である、水浸出後の試料のSEM像を示す。これらの微細構造観察は、XRDスペクトルと一致する。
【0202】
(h)EAFスラグ抽出の機構的検討
参照試料としてCaTiO3からTiを抽出するために、ABWL実験を行った。
【0203】
図10(a)~(m)は、酸焼成プロセス前後のCaTiO
3試料のXRDおよびSEM-EDSの結果を示す。
図10(a)のXRDディフラクトグラムに示すように、CaTiO
3相は、酸焼成プロセス後、主に4つの異なる相、すなわち、硬石膏(CaSO
4)、硫酸チタン(Ti
2(SO
4)
3)、硫酸オキソチタン(TiOSO
4)、および酸化チタン(TiO
2)に変換される。結晶構造の変化は、ABWLプロセス中に以下の反応が起きたことを示唆し得る。
CaTiO
3+H
2SO
4→CaSO
4+TiO
2+H
2O [式15]
TiO
2+H
2SO
4→TiOSO
4+H
2O [式16]
4TiOSO
4+2H
2SO
4→2Ti
2(SO
4)
3+2H
2O+O
2 [式17]
【0204】
CaTiO3がH2SO4と反応すると、硬石膏の沈殿およびTiO2の形成がまず起こり、続いてTiO2とH2SO4の間の反応が起こり、Ti2(SO4)3またはTiOSO4のいずれかを形成することが実証された。
【0205】
図10(b)に示すように、CaTiO
3は、空間群Pm-3mの立方晶構造を有し、Tiは、単位格子の中心にあり、8つのCa原子に取り囲まれている。したがって、酸焼成プロセスを使用してTiを抽出するために、Caがまず、H
2SO
4によって硫酸化されてCaSO
4を形成しなければならない(
図8(b))。
【0206】
図10(c)~(m)は、酸焼成前後の試料のSEM顕微鏡写真およびEDS元素マッピングを示し、結果は、XRDによって得られたCaおよびTiの結果と良く一致する。酸焼成前の試料では、CaおよびTiは、CaTiO
3として互いに高度に関連し、約3μm未満の粒子径および実質的に滑らかな表面を有していた。しかしながら、酸焼成プロセス後、粒子径は、約20~30μmに増加し、粒子の表面は、著しく粗く多孔質になった。さらに、元素マッピングの結果は、TiおよびCaが、酸焼成プロセス後に分離され、異なる領域に集中していることを示した。これは、Caが、容易に沈殿するCaSO
4に変換され、一方、Ti
2(SO
4)
3およびTiOSO
4粒子が、TiとH
2SO
4の間の反応後に生成され、凝集しより大きい粒子を作ったことを暗示する。TiOSO
4が高い水溶性を有することは周知であるが、Ti
2(SO
4)
3を溶解するためには希硫酸溶液が必要である。TiOSO
4はおそらく、低い焼成温度で形成され、400℃でTi
2(SO
4)
3に変換されるが、浸出液の十分に低いpHは、両Ti相が、水浸出プロセス中に容易に溶解することを可能にする。
【0207】
実施例2:ABWLによるBFスラグからの有価元素の回収
(a)BF粒子の調製および特性評価
BFスラグ試料を、ボールミルを使用して破砕および粉砕して、BFスラグ粒子を得た。BFスラグ粒子を次いで、狭い幅の画分に選別および分類して、実質的に均一な約200メッシュの粒子径を得た。
【0208】
粉砕BFスラグの粒子径分布を、粒子径分析装置を使用して計算し、結果を
図11に示す。
図11に見られるように、メジアン粒子径は、約44.75μmであり、平均粒子径は、約51.23μmであり、D
10は、約11.44μmであり、D
90は、約98.76μmである。
【0209】
BFスラグ粒子を特性評価して、BFスラグ中の有価物を同定し、ベースライン濃度を得て抽出効率を計算し、構造的、物理的、および形態学的変化に重点を置いて反応機構を解明した。
【0210】
BFスラグの元素組成を、王水温浸後にICP-OESおよびICP-MSによって特性評価した(
図12(a)および(b))。ICP-OESを、卑金属の定量に使用し、一方で、ICP-OES測定中のマトリックスの複雑さの効果がBFスラグ浸出液中のREEの正確かつ精密な定量を妨害するため、ICP-MSをREEの分析に利用した。
【0211】
図12(a)および(b)に示すように、BFスラグ粒子の主成分は、Ca(約21.7wt.%)、Al(約10.3wt.%)、Mg(約9.4wt.%)、およびFe(約1.3wt.%)である。シリカがBFスラグの主な構成成分であることは周知であるが、王水温浸はシリカを完全に溶解できなかったため、それは、ICP-OESにより測定されなかった。しかしながら、
図12(c)に示す蛍光X線(XRF)の結果に基づいて、シリカ含有量は、約14.3wt.%であると決定された。ICP-MS(
図12(b))の結果は、試料が、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、およびDyを、約355mg/kgの全REE濃度で含有することを示した。
【0212】
XRD分析を、BFスラグ粒子の結晶構造を研究するために行い、その結果を
図12(c)に示す。
図12(c)に次召すように、BFスラグ粒子は、3つの主要な酸化物相、Ca
2(Mg
0.75Al
0.25)(Si
1.75Al
0.25O
7)(オケルマナイト)、CaMgSiO
4(モンチセライト)、および(Ca,Ce)(Ti,Fe
3+,Cr,Mg)
21O
38(ラブリンジャイト(loveringite))を含む。これらの結果は、ICP-OESの結果と良く一致する。
【0213】
SEM-EDS分析を、BFスラグ粒子の物理的および形態学的特性を検討するために行った(
図12(d))。SEMの結果は、BFスラグ粒子が、粗い多孔質の表面を有することを示す。
【0214】
元素マッピングの結果は、Ca、Si、およびAlは互いに高度に関連するが、これらの元素とのMgの関連の度合いはより低く見えることを示した。Feは、低濃度で粒子の表面上にほとんど均一に分布し、一方でMgおよびTiは、特定の領域に集中している。REEは、それらの低い濃度のため、XRDおよびEDS元素マッピングでは検出されなかった。
【0215】
(b)BFスラグ粒子からの金属の回収
この例は、BFスラグ粒子からの金属の回収を示す。実施例2(a)の選別したBFスラグ粒子を、コンベクションオーブンで24時間超にわたって乾燥した。
【0216】
乾燥後、実施例2(a)に記載された選別したBFスラグ粒子を、濃(96wt.%~98wt.%)H2SO4と混合し、次いで、200℃~400℃の温度の箱形炉で焼成した。酸焼成した試料を次いで、6時間マグネチックスターラを使用して25℃の温度にて水中で浸出した。浸出溶液を、指定の時間間隔で採取し、希釈後、ICP-OESおよびICP-MSによって特性評価した。
【0217】
BFスラグ粒子試料を、酸焼成および水浸出の前後に、XRDおよびSEM-EDSを使用して特性評価した。
【0218】
(c)実験計画および経験的モデル構築
系統的研究を行って、6つの操作因子、すなわち、酸焼成温度(X1)、酸対スラグ粒子質量比(X2)、酸焼成時間(X3)、水対スラグ粒子密度(X4)、撹拌速度(X5)、および水対スラグ質量比(X6)、ならびにこれらの因子の組み合わせの、REE(ScおよびNd)ならびに卑金属(Ca、Al、Mg、およびFe)の抽出効率に対する定量的効果を検討した。
【0219】
統計的検討のために、試験因子を、低(-1)、中(0)、および高(+1)レベルに符号化して、因子モデル係数の大きさに基づく各因子の相対的効果の直接比較を可能にした。因子レベルについての詳細な情報を、表6に示す。因子レベルの上限および下限を、実施例1(c)および予備実験に基づいて選択した。
【表6】
【0220】
経験的抽出モデルを構築するために、一定の浸出時間(360分)での
【数11】
実験行列を、一部実施要因計画を利用して設計した(表7)。
【表7】
【0221】
式18で示す形式のモデルを次いで、mLLSRによって抽出効率データにフィットした。有意なパラメータ(α=0.05)のみを含む単純化モデルを、ANOVAによって評価して、実行の分散を適切に推定した。異なる温度での抽出効率に対する速度論の効果をより良く例示するために、速度試験を、他のパラメータを中因子レベルに維持しながら、焼成温度の下限および上限で行った。
【数12】
【0222】
統計的分析の詳細な説明を、実施例1(c)で提供する。
【0223】
(d)速度実験
一方はX1が200℃の-1レベルであり、他方は400℃の+1レベルである2つの速度実験を、他の因子を中レベル(X2=1.25g/gDBFS、X3=60分、X4=10mL/gABBFS、X5=400rpm、およびX6=1g/gDBFS)に維持しながら行って、異なる焼成温度での抽出効率に対する時間の効果を検討した。
【0224】
図13に示すように、-1レベルのX
1では、Ndを除くすべての元素が、6時間以内に平衡に達した。AlおよびMgは、1時間でプラトーに達する速い速度論を示し、一方でFeおよびScの抽出効率は、わずかに上昇した。Nd濃度は、時間と共に上昇し続け、それが、対象の元素の中で最も遅い速度論を有することを示した。X
1が+1レベルに変化した場合、ScおよびAlの最大抽出は、2時間の浸出時間以内に得られた。他の元素の抽出の速度論は、より遅く、したがって、6時間超が、平衡に達するために必要であった。概して、卑金属の抽出効率は、REEのものより高く、Scは、Ndと比較してより高い抽出を示した。
【0225】
6時間の浸出時間では、X1の増加は、Alを除くすべての元素の抽出効率に負の効果をもたらすことが見出された。具体的には、Sc、Nd、およびFeの抽出は、この因子によって著しく影響を受け、抽出効率の変化は、それぞれ52.6%、32.8%、および71.1%から35.8%、22.8%、および57.2%に変化する。
【0226】
この速度論的検討の結果は、浸出時間が抽出プロセスに著しく影響を及ぼすことを示した。さらなる実験の浸出時間を、平衡がたいていの場合に達されるのを確実にするため、360分に設定した。
【0227】
(e)操作パラメータの効果および経験的モデル構築
実験を行って、6つの操作パラメータ、および少なくとも2つのパラメータ間の二次交互作用の定量的効果を検討した。
【0228】
合計19回の実行を、3回の中心点実行を含んで行い、浸出液試料を、360分の浸出時間後に採取した。
図14は、各元素の経験的モデルの順序付けられた因子効果係数に基づく、主因子および二次交互作用の定量的効果を示す。十分な有意性(α=0.05)を有する因子のみを示す。
【0229】
図14(a)に示すように、Scの抽出効率は、X
2によって正の影響を受け、一方でX
12+X
35(焼成温度および酸対スラグ質量比、焼成時間および撹拌速度)ならびにX
1は、負の効果をもたらした。X
2の正の効果は、酸の量が、非水溶性の酸化物およびケイ酸塩から水溶性硫酸塩への相変換を制御するので、理解できる。X
1の効果は、Alを除くたいていの元素の抽出効率に対するX
1の悪影響をすでに示した、速度試験の結果と一致する。この効果は、高温での硫酸の分解に起因し得る。250℃より高く上昇された温度では、液体硫酸は、気相に変化するか、またはSO
3、SO
2、H
2O、およびO
2ガスに分解するかのいずれかであることが明らかになった。
【0230】
図14(b)に示すように、Ndの抽出効率は、X
2、X
4、ならびに2つの二次交互作用(X
24+X
36およびX
13+X
25)によって正の影響を受け、一方でX
1、X
3、X
6、ならびにいくつかの二次交互作用(X
26+X
34、X
15+X
23+X
46、およびX
12+X
35)によって負の影響を受けた。
【0231】
まず、より高いレベルの水の比率では、溶液は不飽和であり、したがってより多くの塩が溶解され得る。より長い期間およびより高い焼成温度は、硫酸のより活発な分解および相転移をもたらし得、それにより抽出を妨害する。X6の負の効果は、スラグおよび酸の混合物に水を加えることが硫酸の沸点を低下させ、したがって酸焼成ステップにおける酸とスラグとの間の反応を妨害する、という事実によって説明され得る。+1レベルのX2およびX6が使用される場合、酸の最終濃度は、98%から49%に低下し、沸点は、約337℃から約195℃に低下する。したがって、X1が-1レベルであっても、酸は、設定温度に到達しBFスラグ粒子と反応する前に、蒸発する。
【0232】
図14(c)に示すように、Alの抽出効率は、2つの因子、すなわち、X
2およびX
4にのみ依存する。
図14(d)および(e)に示すように、MgおよびFeの抽出効率は、X
2、X
3、X
4、ならびにいくつかの二次交互作用(X
26+X
34およびX
16+X
45を含む)によって正の影響を受け、一方でX
1、X
6、ならびに少数の二次項(X
24+X
36およびX
15+X
23+X
46を含む)によって負の影響を受けた。さらに、他の元素と異なり、Mgの溶解は、X
6の増加と共に改善された。操作条件、ならびに対応するSc、Nd、Ca、Al、Mg、およびFeの抽出効率の概要を、以下の表8で提供する。
【表8】
【0233】
(f)検証および最適化
経験的抽出モデルを、式18を使用して各元素について構築して、特定の条件下での抽出効率を予測した。
図15に示すように、2回の検証試験を行って、モデルの適用可能性を評価した。第1の検証試験は、X
1=400℃、X
2=2g/g
DBFS、X
3=30分、X
4=16mL/g
ABBFS、X
5=200rpm、およびX
6=2g/g
DBFSであった。結果は、モデル予測値と一致し、モデル正確度は7.7%であった。第2の検証試験を、温和な条件(X
1=200℃、X
2=0.5g/g
DBFS、X
3=30分、X
4=4mL/g
ABBFS、X
5=600rpm、およびX
6=0g/g
DBFS)で行い、これらの条件を使用して、REEおよびAlの実際の抽出効率は、11%未満であり、モデル正確度は、15.8%であると決定された。
【0234】
すべての研究された元素から得られる経済的利益を最大化するために、最適化試験を行った。この最適化を満たす条件は、X
1=200℃、X
2=2g/g
DBFS、X
3=90分、X
4=16mL/g
ABBFS、X
5=600rpm、およびX
6=0g/g
DBFSであった。すべての元素からの予測利益は、264.3USD/トン
DBFSであり、実際の利益は、238.1USD/トン
DBFSであると計算された(正確度=±20.4%)。最適化計算で考慮されたSc、Nd、Al、Mg、およびFeの価格を、表9に示す。
【表9】
【0235】
REEから得られる経済的利益を最大化するために、最適化試験を行った。
【0236】
この最適化を満たす条件は、X
1=200℃、X
2=2g/g
DBFS、X
3=30分、X
4=16mL/g
ABBFS、X
5=600rpm、およびX
6=0g/g
DBFSであった。
図15に見られるように、実際の抽出効率は、高い正確度(±12.8%)を有して予測されたものに類似した。REEを考慮した予測および実際の利益は、それぞれ、69.0および71.1USD/トン
DBFSであると計算された。
【0237】
全体的な検証および最適化の結果は、経験的モデルが、最適条件および抽出効率をうまく予測できることを実証する。
【0238】
実施例3:ABWLによる個々の目的金属の回収用の最適化されたパラメータ
(a)EAFスラグからの有価元素の回収
実施例1で決定されたような、EAFスラグからのNb、Ti、Fe、Ca、Mn、Mg、およびAlの回収用に最適化されたパラメータを、以下の表10に示す。
【表10】
【0239】
(b)BFスラグからの有価元素の回収
実施例2で決定されたような、BFスラグからのSc、Nd、Ca、Al、Mg、およびFeの回収用に最適化されたパラメータを、以下の表11に示す。
【表11】
【0240】
実施例4:炭素熱還元とそれに続くABWLによる、EAFスラグからの有価元素の回収
(a)EAFスラグ粒子の調製および特性評価
EAFをまず、ジョークラッシャおよびディスクを使用して破砕および粉砕して、実質的に均一な約200メッシュ(約74μm)の粒子径を得た。粉砕スラグ試料を、コンベクションオーブンで、50℃の温度で24時間超にわたって乾燥して、水分含有量を除去した。
【0241】
次に、試料を、褐炭および融剤(SiO2および/またはAl2O3)と混合し、混合物を次いで、空気/液圧プレスを使用して、約250MPaの圧力で3分間ペレット化した(ペレット直径=28.6mm)。ペレットを次いで、黒鉛るつぼに入れ、アルゴン雰囲気下にて、異なる設定温度(1500℃または1600℃、加熱速度180℃/時間、冷却速度180℃/時間、1.5時間の保持時間)で、箱型炉中で製錬した。製錬後、金属Fe相およびスラグ相を、Dremel(商標)およびハンマーを使用して手動で分離し、スラグ相を、ミキサーミルを使用して粉砕した。スラグ相中のFe含有量を低減するために、粉砕スラグ試料を、Davis(商標)管を使用して磁気分離した。このようにして得られたFe枯渇スラグ試料を次いで、コンベクションオーブン中で乾燥し、特性評価のために、マイクロ波温浸装置(昇温時間40分、保持時間30分、設定温度220℃)を使用して、王水溶液中で温浸した。
【0242】
乾燥したFe枯渇スラグ試料を次いで、濃硫酸と混合した。混合物を磁製るつぼに入れ、マッフル炉中で焼成した。酸焼成試料を次いで、マグネチックスターラを使用して、周囲温度および圧力で水浸出した。このようにして得られた浸出溶液を次いで、濾過し、特性評価のためにHamilton(商標)Microlab 600(商標)デュアル希釈および分注装置システムを使用して希釈した。各プロセス前後の特定の固体試料も、事後特性評価用に調製した。
【0243】
(b)実験計画および経験的モデル構築
炭素熱還元プロセスについて、一部実施要因計画法を使用して実験行列を設計し、経験的モデルを構築し、結果としてプロセスを最適化した。系統的研究を行って、4つの操作パラメータ、すなわち製錬温度(X1)、炭素対スラグ質量比(X2)、融剤対スラグ質量比(X3)、融剤の種類(X4)、およびこれらの因子の二次交互作用の、スラグ相の組成に対する効果を検討した。低レベルの製錬温度(X1)を、ペレットの完全な溶融、および金属Fe相とスラグ相との間の明確な相分離を確実にするために、予備試験結果に基づいて選択した。化学量論計算の結果は、EAFスラグ1g当たり少なくとも0.06gの炭素が、スラグ中の、FeOの形態のすべての鉄を還元するのに必要であることを示し、したがって、低レベルの炭素対スラグ質量比(X2)を、0.06g/gEAFSに設定した。EAFスラグ中の高いカルシウム含有量のため、この研究で使用される融剤を、シリカまたはアルミナに決定した。
【0244】
ABWLプロセスについて、応答曲面法を用いて、4つの操作パラメータ、すなわち焼成温度(X1)、酸対スラグ質量比(X2)、焼成時間(X3)、および水対スラグ比(X4)の、対象の元素(Ti、Fe、Ca、Mn、Mg、Al、Cr、およびSr)の抽出に対する効果を検討した。
【0245】
このプロセスのために、因子レベルの境界を、系の応答が比較的線形であり得る操作範囲内で、予備試験結果および文献中の類似プロセスの操作範囲に基づいて選択した(Anawatiら, Waste Management 95 (2019): 549-559; Demolら, Hydrometallurgy 179 (2018): 254-267; Kimら, Hydrometallurgy 191 (2020): 105203; Meshram,ら, Journal of Cleaner Production 157 (2017): 322-332; Sadriら, International Journal of Mineral Processing 159 (2017): 7-15; Safarzadehら, Mining, Metallurgy & Exploration 29, no. 2 (2012): 97-102;およびSafarzadehら, International Journal of Mineral Processing 124 (2013): 128-131)。
【0246】
一部実施要因計画および応答曲面法に基づいて、2つの実験行列を、それぞれ、炭素熱還元プロセスおよびABWLプロセスのために設計した。炭素熱還元プロセスについて、一連の
【数13】
要因試験(合計14回の実行)を、実行の分散を推定するための3回の中心点実行、経験的モデルの予測可能性を評価するための2回の検証実行、および1回の最適実行を含んで行った。ABWLプロセスについて、28回の実験計画実行および2回の最適実行を行った。式19および式20で示す経験的モデルを次いで、式21(下記)に示すmLLSRを使用して実験データにフィットした。
【数14】
式中、
【数15】
は、モデルパラメータの各々を含有するベクトルであり、β
0は、分析物のベースラインバイアスに対応し、β
1は、製錬温度に対応し、β
2は、炭素対スラグ質量比に対応し、β
3は、融剤対スラグ質量比に対応し、β
4は、融剤の種類に対応し、β
ijは、2つの異なる因子の組み合わせに対応する。
【数16】
式中、
【数17】
は、モデルパラメータの各々を含有するベクトルであり、β
0は、分析物のベースラインバイアスに対応し、β
1は、焼成温度に対応し、β
2は、酸対スラグ質量比に対応し、β
3は、焼成時間に対応し、β
4は、水対酸比に対応し、β
ijは、2つの異なる因子の組み合わせに対応し、β
iiは、二次項に対応する。
【数18】
式中、Xは、実験計画行列であり、Y
iは、分析物iの実際の応答を含む応答行列である。
【0247】
(c)鉱物学的、形態学的、および組成上の特性評価
固体試料の鉱物学的特性を、XRDによって検討した。形態学的および組成分析を、SEM-EDSによって行った。固体試料の組成上の特性評価のために、電子線マイクロアナライザを使用した。液体試料中の元素濃度を、ICP-OESによって測定した。固体試料のシリカ含有量を、XRFによって定量した。金属Fe相の炭素含有量を、LECO(CS 444炭素-硫黄分析装置)を使用して分析した。
【0248】
(d)EAFスラグの特性評価
EAFスラグの化学組成を、王水温浸後のICP-OES分析およびXRF分析で検討した(表12)。表12に示すように、EAFスラグの主成分は、組成の24.3wt.%を占めるFeである。高いFe含有量は、EAFスラグ試料が、炭素熱還元プロセスを受けるのに適していることを確証した。表12に示すように、EAFスラグは、Ca(17.3wt.%)、Si(XRFによる測定で7.5wt.%)、Mg(5.5wt.%)、Mn(5.5wt.%)、Al(2.5wt.%)、およびCr(1.9wt.%)も含む。EAFは、微量のTi(1862mg/kg)、Na(1184mg/kg)、Nb(489mg/kg)、Sr(341mg/kg)、Cu(303mg/kg)、およびNi(300mg/kg)も含有する。
【表12】
【0249】
(e)操作パラメータの効果および経験的モデル構築
炭素熱還元を行って、Fe、Nb、Cr、Mn、および部分的にTiを、それらを金属相中に報告する一方で他の元素をスラグ相中に報告することによって、選択的に分離した。
一部実施要因計画法に基づいて、
【数19】
実験行列を設計し、合計11回の実行を、3回の中心点実行を含んで行った。実験条件、ならびにスラグ相中の5つの元素(Fe、Nb、Cr、Mn、およびTi)の濃度についての詳細な情報を、表13に示す。
【表13】
【0250】
スラグ相中の各元素の濃度について、十分な有意性(α=0.05)を有する順序付けられた因子効果係数を、
図16に示す。ここで、このプロセスの目標は、5つの元素が金属相中に報告されることが予想されるように、スラグ相中のそれらの濃度を最小化することであることに、留意すべきである。
【0251】
図16(a)に示すように、スラグ相中のFe濃度は、3つの主因子:X
1、X
2、およびX
3によって負の影響を受けた。言い換えれば、これらの因子の増加は、望ましい、スラグ相中のFe濃度の低下をもたらした。X
1の負の影響は、より高いX
1はスラグの粘度を低下させ、かつ結果として金属相のスラグ相からの分離を向上させるので、理解できる。X
1とスラグ粘度との間の逆相関を、式22で示す。
【数20】
式中、ηはスラグ粘度であり、Rは一般気体定数であり、E
aは活性化エネルギーであり、Tは絶対温度(K)である。
【0252】
スラグ相中のFe濃度は、X2の減少と共に上昇することが観察された。低レベルのX2(0.06g/gEAFS)は、このレベルはスラグ中のすべてのFeを還元するための炭素の化学量論値に基づいて選択されたが、すべてのFeを還元するのに十分ではなかったことを意味する。この現象は、製錬プロセス中に起こるMnおよびCrの炭化物形成によって説明され得る。
【0253】
金属相のEPMA元素マッピングの結果が、炭素熱還元プロセス(実行10)の後に得られ、結果を、
図17に示す。結果は、Fe濃度が比較的低かった、C、Mn、およびCrに富む領域間のかなり強い相関を示した。これは、Fe-Mn-C、Fe-Cr-C、およびFe-Mn-Cr-Cの合金形成反応が起こり、混合物中に存在する炭素のかなりの量を消費したことを示す。EAFスラグの化学組成に基づいて、低レベルのX
2(EAFスラグ1g当たり0.06gの炭素)では、30wt.%超のMnおよびCrが炭化物形成反応に関与する場合、EAFスラグ中に存在するFeO相を、金属Feに完全に還元できないと計算された。しかしながら、この反応は、X
2が中レベル(EAFスラグ1g当たり0.09gの炭素)および高レベル(EAFスラグ1g当たり0.12gの炭素)であった場合、FeO還元速度に影響を及ぼすことはできなかった。
【0254】
X
3の負の影響は、スラグの塩基度によって説明され得る。4変数の塩基度(R)を、式23に基づいて計算した:
【数21】
【0255】
融剤を加えなかった場合、炭素熱還元プロセス後に得られたスラグ相は、EAFスラグ中の高い塩基性酸化物含有量のため、実質的に過剰な塩基度(R=2.584)を有する。この実質的に過剰な塩基度は、EAFスラグの溶融温度を上昇させ得、これは、固体の沈殿物、すなわちCaOおよびMgO、ならびにEAFスラグの高い見かけ粘度を生じる。したがって、金属鉄液滴は、スラグ中により容易に捕捉され得る。このプロセスに使用される融剤は、酸性(SiO2)または両性(Al2O3)のいずれかである。系における塩基性条件および低アルミナ含有量(<15wt%)を考慮すると、Al2O3は、酸性酸化物として作用する可能性が高い。これらの酸性融剤を加えることは、例えば、EAFスラグの塩基度および液相点を低下させ得、金属相とスラグ相の間の明確な分離をもたらす。したがって、スラグ相中のFe含有量は、SiO2またはAl2O3の存在下で減少する。これらの説明を検証するために、0.09g/gEAFS(0レベル)の炭素対スラグ質量比で、融剤(SiO2またはAl2O3)有り/無しのEAFスラグ試料の炭素熱還元を、FactSageソフトウェアを使用してシミュレートし、結果は、SiO2またはAl2O3のいずれかを融剤として加えた場合、スラグの液相点が著しく低下することを確証した。
【0256】
スラグ相中の他の元素の濃度は、Feのものと比較して同様の傾向を示した。しかしながら、融剤の種類(X
4)は、NbおよびMnの濃度に対するさらなる正の効果を示した。スラグ相中のNbおよびMnの濃度は、Al
2O
3ではなくSiO
2が融剤として使用される場合、低下する(
図16(b)および(d))。これは、SiO
2がAl
2O
3より強い酸性酸化物であるという事実に起因し得る。SiO
2の存在は、EAFスラグの液相線を下げ、相分離を向上させることに寄与し、Al
2O
3は、同じ効果を有するが、程度がより低い。さらに、X
2は、他の元素と異なり、スラグ相中のMnの濃度に正の影響を及ぼすことが捕らえられた。これは、Mnによる金属の脱硫によって説明され得る。実施例4(a)に記載されるように、褐炭が、還元剤として使用され、この種の石炭は、約0.4~1.0wt.%の硫黄を含有し、主な硫黄源になる。実質的に高い硫黄含有量は、金属生成物を、脆く、溶接性の低い、腐食に弱いものにし得、硫黄含有量を0.015wt.%未満に維持することが望ましい(Schramaら, Ironmaking & Steelmaking 44, no. 5 (2017): 333-343)。MnOは、CaOおよびMgOと共に主要な脱硫剤の1つであり、硫黄を金属からスラグに移動させるのに利用され、以下に示す反応を辿る(式24):
FeS
(metal)+Mn
(metal)→Fe
(metal)+MnS
(slag) [式24]
【0257】
より多量の炭素(高レベルのX2)が、系内に導入される場合、より多くの硫黄が、導入され、Fe金属と反応し、結果としてより多くのFeSを生成する。ルシャトリエの原理に従い、脱硫は、スラグ相に現れるMnSの形成によって活発に起こる。
【0258】
炭素熱還元後に得られた金属相の事後特性評価を、XRDおよびEPMA分析を使用して行った。X線ディフラクトグラムは、金属相がFe、Fe3C、およびCで構成されることを示し、金属相とスラグ相との間の明確な分離を確認した。リン化ニオブの存在が、EPMAで観察された。
【0259】
(f)炭素熱還元プロセスの最適化および検証
実験結果および因子効果係数に基づいて、経験的モデルを構築して、スラグ相中のFe、Nb、Cr、Mn、およびTiの濃度を予測した。Fe濃度の経験的モデルを、式25で示す:
【数22】
【0260】
2回の検証試験を行って、モデルの予測可能性を評価した。表14に示すように、結果は、モデルが、スラグ相中の5つの元素(Fe、Nb、Cr、Mn、およびTi)の濃度の予測について、高いモデル正確度を有することを示した(各試験セットについて、15.6および12.1%の平均絶対相対偏差(AARD))。
【表14】
【0261】
炭素熱還元プロセスを次いで、最適化して、スラグ相中のFe濃度を最小化した。最適化された条件は、高レベルの製錬温度(X
1、1600℃)および炭素対スラグ質量比(X
2、0.12g/g
EAFS)、ならびに低レベルの融剤対スラグ質量比(X
3、0g/g
EAFS)および融剤の種類(X
4、シリカ)であった。Mn、Cr、およびNbに富む金属鉄(約70wt.%のFe、約4.14wt.%のC、約17wt.%のMn、約7wt.%のCr、および約0.2wt.%のNb)と共に、濃度1620mg/kgでスラグ相中の最小Fe量を、最適条件下の製錬プロセス後に得た(表14)。表15は、原料EAFスラグの組成、ならびに最適条件下の炭素熱還元プロセス後に得られた金属相およびスラグ相の組成を示す。
【表15】
【0262】
(g)Fe枯渇スラグの酸焼成水浸出結果および特性評価
最適条件下の炭素熱還元プロセス後に生成されたスラグを、王水温浸後にICP-OES、XRD、EPMA、およびSEM-EDSを使用して徹底的に特性評価した(
図18)。大部分のFe、Nb、Cr、Mn、および部分的にTiは、金属相中に報告され、スラグ相中のこれらの元素の濃度は、最小限であった。
【0263】
図18(a)は、Fe枯渇スラグの元素組成を示す。スラグ試料は主に、Ca(30.2wt.%)、Mg(11.7wt.%)、およびAl(4.9wt.%)で構成され、一方で微量のMn(6803mg/kg)、Ti(2993mg/kg)、Fe(1620mg/kg)、Sr(628mg/kg)、およびCr(175mg/kg)が存在した。
図18(b)に示すXRDの結果に基づいて、スラグは、4つの相、すなわち、ラーナイト(Ca
2SiO
4)、マグネシウム鉄酸化物(Mg
0.91Fe
0.09O)、カルサイト(CaCO
3)、およびゲーレナイト(Ca
2Al
2SiO
7)からなる。EPMA相マッピングの結果は、スラグが、これらの4つの相と共に、微量のFeおよびCrに寄与する少量のクロマイトを含有することをさらに確証する(
図18(c))。
図18(d)のEDS元素マッピングは、CaおよびSiが互いに高度に関連することを示し、Ca
2SiO
4の存在を確証する。アルミニウムも、場合によっては、CaおよびSiに富む領域中に存在し、これはCa
2Al
2SiO
7を示す。Mgは、酸素とのみ一致し、Mg
0.91Fe
0.09Oの存在を確認する。SEM像は、Ca
2Al
2SiO
7は滑らかな表面の鋭い形状を有し、一方でCa
2SiO
4およびMg
0.91Fe
0.09Oは層状構造を有することを示す(
図18(d))。
【0264】
(h)操作パラメータの効果および経験的モデル構築
ABWLプロセスについて、応答曲面法を使用して、外接中心複合実験行列を設計し、目的元素の二次経験的抽出モデルを構築した。詳細な実験条件、ならびに対応するTi、Fe、Ca、Mn、Mg、Al、Cr、およびSrの抽出効率を、表16に示す。各元素の抽出効率について、十分な有意性(α=0.05)を有する順序付けられた因子効果係数を、
図19に示す。
【表16】
【0265】
図19に見られるように、酸対スラグ質量比(X
2)は、すべての元素の抽出に対する大きな正の影響を示した。これは、H
2SO
4が温浸反応の限定試薬であることを示唆し得る。0レベルの酸対スラグ比(1.5g/g)で、系中でスラグ試料と完全に反応し得るH
2SO
4の当量が存在すると計算され、したがって、温浸反応は、より低いレベルの酸の比率(0.5g/gおよび1g/g)では十分に起こらなかった。
【0266】
他の元素と異なり、CaおよびSrはまた、水対スラグ比(X
4)によって正の影響を受けた(
図19(c)および
図19(h))。これは、CaSO
4およびSrSO
4の低い水溶性に起因し得る。水中のCaSO
4およびSrSO
4の溶解度は、それぞれ2.00g/Lおよび0.117g/Lであり、これは、一般的な塩の溶解度の100分の1未満である。したがって、より高い水対スラグ比が、CaおよびSrの抽出を増大させるために必要とされた。
【0267】
焼成温度(X1)は、対象のすべての元素の抽出に対する負の効果を示した。この効果は、例えば、高い焼成温度でのH2SO4の相転移および分解によって説明され得る。250℃超の温度で、液体H2SO4は、蒸発ならびにSO2、SO3、H2O、およびO2ガスへの分解を始め、したがって、液体H2SO4は、350℃より高い温度で存在できない。この現象は、スラグ粒子との反応性が高い液体H2SO4の相当量の減少をもたらす。焼成温度は潜在的に、質量減少の主な寄与因子であり、この因子の悪影響を確認する。より高いレベルの酸対スラグ質量比(X2)、焼成時間(X3)、ならびに焼成温度×酸対スラグ質量比(X12)および焼成温度×焼成時間(X13)の二次交互作用は、酸およびスラグの混合物の質量減少を加速することも明らかになった。これは、X1と共にX3、X12、およびX13が、たいていの場合、抽出に負の影響を及ぼす理由を説明し、より大きな質量減少が、より高いレベルのX2で起きたが、利用可能なH2SO4分子のより高い絶対量は、抽出に対するこの因子の正の効果を引き起こす。
【0268】
図20は、2つの主因子の、Caを除くすべての元素の平均抽出効率に対する交互作用効果を視覚化する2D等高線プロットを示す。Caの抽出効率は、このプロセスがCaを残渣中の石膏(CaSO
4・2H
2O)として回収するように設計されたため、考慮されなかった。見られるように、酸対スラグ質量比(X
2)は、全体的な抽出効率の上昇に重要な役割を果たし、一方で他の因子は、抽出に大きな影響を及ぼさない。
【0269】
(i)酸焼成水浸出プロセスの最適化
実験計画試験後に得られた因子効果係数に基づいて、ABWLプロセスを、Ti、Fe、Mn、Mg、Al、Cr、およびSrの抽出の最大化のために最適化した。カルシウムの抽出効率は、Caが残渣中の石膏(CaSO4・2H2O)として回収されるため、プロセス最適化に考慮されなかった。
【0270】
応答曲面法は、ユークリッド距離が一定に維持される限り、より広い範囲の応答曲面を探索することを可能にする。したがって、一部実施要因計画法と異なり、最適化された因子レベルは、-1および1に制限されず、任意の数であり得る。しかしながら、予測された抽出効率は、特定の条件下で100%を超え得るが、実際の効率は、100%を超えることはあり得ず、したがって、抽出効率≦100%が、プロセス最適化の制約条件として加えられたことにも留意すべきである。2つの最適化された条件を次いで、-1および1に制限される因子レベルの制約有りおよび無しで決定した。
図21は、酸焼成水浸出プロセスの最適化結果(すなわち、抽出効率)を示す。結果は、80%超の抽出効率が、因子レベルの制約にかかわらず、CaおよびSrを除くほとんどすべての元素で達成されたことを示した。CaおよびSrの低い効率は、それらの低い水溶性に起因し得る。