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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】試料検査を容易にする装置および方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241126BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20241126BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/34 B
C12Q1/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021568526
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 US2020033058
(87)【国際公開番号】W WO2020236552
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】62/849,509
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】300004500
【氏名又は名称】アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IDEXX Laboratories, Inc.
【住所又は居所原語表記】One IDEXX Drive, Westbrook, Maine 04092, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ブローダー,ダニエル ハワード
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,スコット ダブリュー.
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-105669(JP,A)
【文献】特表2017-503489(JP,A)
【文献】特開2011-167187(JP,A)
【文献】米国特許第03886047(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養皿であって、
長手方向軸を画定し、上端および下端を有する基部であって、前記基部は、
前記基部の上端から前記基部の下端に向かって延在する側壁であって、前記側壁は、環状内面と環状外面とを含む、側壁、
前記基部の上端と下端との間に配置された位置で前記側壁によって支持される床部であって、前記床部は、前記側壁の環状内面から半径方向内方にかつ前記基部の下端に向かって長手方向に延在し、前記床部は、前記基部の上端に面する凹面と前記基部の下端に面する凸面とを有し、前記床部の凹面および前記側壁の環状内面は、前記基部の上端で開口している第1の内容積を画定する、床部、および
前記床部と前記基部の下端との間に配置された位置で前記側壁から延在する環状リム
を含む、基部と、
長手方向軸を画定し、上端および下端を有する蓋であって、前記蓋は、
前記蓋の上端から前記蓋の下端に向かって延在する側壁であって、前記側壁は、環状内面と環状外面とを含む、側壁、
前記蓋の上端部において前記側壁の上に配置された天井であって、前記天井は、前記蓋の下端に面する内面と前記蓋の上端に面する外面とを画定し、前記天井の内面および前記側壁の環状内面は、前記蓋の下端で開口している第2の内容積を画定する天井、および
前記側壁の環状外面から半径方向外方に延在する環状リム
を含む、蓋と、
を備える、培養皿であり、
前記蓋の側壁の内側環状面は、前記基部の側壁の外側環状面の周囲に摺動可能に受容されることにより前記第1の内容積および前記第2の内容積が互いに少なくとも部分的に重なり合う状態で前記基部の周囲に前記蓋が係合されて、前記基部および前記蓋の側壁と前記床部と前記天井とによって境界付けられた密閉結合内容積が画定されるように構成され
前記蓋の側壁の内側環状面は、前記長手方向軸に対して第1の角度で前記長手方向軸に沿って上から下の方向に半径方向外方に傾斜しており、前記基部の側壁の外側環状面は、前記長手方向軸に対して第2の角度で前記長手方向軸に沿って前記上から下の方向に半径方向外方に傾斜しており、前記第2の角度は前記第1の角度よりも大きい、培養皿。
【請求項2】
前記基部は光学的に透明な材料から形成され、前記蓋は不透明な材料から形成される、請求項1に記載の培養皿。
【請求項3】
前記基部は比較的硬質の材料から形成され、前記蓋は比較的可撓性の材料から形成される、請求項1に記載の培養皿。
【請求項4】
前記基部の環状リムは、前記側壁から半径方向外方に延在する半径方向部分と、前記側壁から前記基部の下端まで長手方向に延在する長手方向部分とを含み、前記環状リムは円筒状容積を取り囲む、請求項1に記載の培養皿。
【請求項5】
前記蓋の環状リムの外径は、前記天井の外径よりも大きく、前記蓋の環状リムの上および前記天井の周囲にリング状凹部を画定する、請求項4に記載の培養皿。
【請求項6】
前記天井は、前記基部を前記蓋の上に積み重ねるために前記基部の環状リムの長手方向部分が前記蓋のリング状凹部内に配置された状態で、前記基部の環状リムの長手方向部分の円筒状容積内に受容されるように構成される、請求項5に記載の培養皿。
【請求項7】
前記蓋および前記基部の環状リムは、前記蓋および前記基部の操作、係合、および係脱を容易にするように構成された指掛け部を画定する、請求項1に記載の培養皿。
【請求項8】
前記基部の周囲における前記蓋の完全係合位置に対応する底付き状態では、前記基部の側壁が前記蓋の天井に当接する状態、または前記蓋の側壁が前記基部の環状リムに当接する状態の少なくとも一方である、請求項1に記載の培養皿。
【請求項9】
前記基部の周囲における前記蓋の完全係合位置に対応する底付き状態では、前記基部の側壁が前記蓋の天井に当接し、前記蓋の側壁が前記基部の環状リムから離間される、請求項1に記載の培養皿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年5月17日に出願された、米国仮特許出願第62/849,509号の利益および優先権を主張するものであり、参照によりその全体が本願に組み込まれる。
【0002】
本開示は、試料検査に関し、特に、微生物に関する試料(例えば、水試料または他の好適な試料)の検査を容易にする装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
細菌汚染は、世界における水系感染の主な原因であり、胃腸炎、下痢、痙攣、嘔吐および発熱をもたらす。発展途上国では、これらの感染により毎年何百万人もの人々が死亡している。
【0004】
ヒト疾患を引き起こすことが示されている主要な細菌性水中病原体としては、サルモネラ属細菌、志賀赤痢菌、シゲラ・フレックスネリ、シゲラ・ソネイ、コレラ菌、レプトスピラ属細菌、エンテロコリチカ菌、野兎病菌、大腸菌、および緑膿菌が挙げられる。
【0005】
天然資源としての水の重要性および水中細菌による汚染の影響のために、汚染の全体的なレベルおよび病原微生物を含んでいる可能性を決定するために、特にこのような細菌の存在について水試料を検査することが重要である。
【発明の概要】
【0006】
本開示の態様に従って、蓋および基部を含む培養皿が提供される。基部は、長手方向軸を画定し、上端および下端を有する。基部は、側壁と、床部と、環状リムとを含む。側壁は、基部の上端から基部の下端に向かって延在する。側壁は、環状内面および環状外面を含む。床部は、基部の上端と下端との間に配置された位置で側壁によって支持される。床部は、側壁の環状内面から半径方向内方に、かつ基部の下端に向かって長手方向に延在する。床部は、基部の上端に面する凹面と、基部の下端に面する凸面とを有する。床部の凹面および側壁の環状内面は、基部の上端で開口している第1の内容積を画定する。環状リムは、床部と基部の下端との間に配置された位置で側壁から延在する。蓋は、長手方向軸を画定し、上端および下端を有する。蓋は、蓋の上端から蓋の下端に向かって延在する側壁を含む。側壁は、環状内面および環状外面を含む。蓋は、蓋の上端で側壁の上に配置された天井をさらに含む。天井は、蓋の下端に面する内面と、蓋の上端に面する外面とを画定する。天井の内面および側壁の環状内面は、蓋の下端で開口している第2の内容積を画定する。蓋はさらに、側壁の環状外面から半径方向外方に延在する環状リムを含む。蓋の側壁の内側環状面は、基部の側壁の外側環状面の周囲に摺動可能に受容されることにより第1の内容積および第2の内容積が互いに少なくとも部分的に重なり合う状態で基部の周囲に蓋が係合されて、基部および蓋の側壁と床部と天井とによって境界付けられた密閉結合内容積が画定されるように構成される。
【0007】
本開示の一態様では、基部は光学的に透明な材料から形成され、蓋は不透明な材料から形成される。
【0008】
本開示の別の態様では、基部は比較的硬質の材料から形成され、蓋は比較的可撓性の材料から形成される。
【0009】
本開示のさらに別の態様では、基部の環状リムは、側壁から半径方向外方に延在する半径方向部分と、側壁から基部の下端まで長手方向に延在する長手方向部分とを含む。環状リムは、円筒状容積を取り囲む。
【0010】
本開示のさらに別の態様では、蓋の環状リムの外径は、天井の外径よりも大きく、蓋の環状リムの上および天井の周囲にリング状凹部を画定する。
【0011】
本開示のさらに別の態様では、天井は、基部を蓋の上に積み重ねるために基部の環状リムの長手方向部分が蓋のリング状凹部内に配置された状態で、基部の環状リムの長手方向部分の円筒状容積内に受容されるように構成される。
【0012】
本開示の別の態様では、蓋の側壁の内側環状面は第1の角度で配置され、基部の側壁の外側環状面は第1の角度とは異なる第2の角度で配置される。
【0013】
本開示の別の態様では、蓋および基部の環状リムは、蓋および基部の操作、係合、および係脱を容易にするように構成された指掛け部を画定する。
【0014】
本開示のさらに別の態様では、基部の周囲における蓋の完全係合位置に対応する底付き状態では、基部の側壁が蓋の天井に当接し、および/または蓋の側壁が基部の環状リムに当接する。
【0015】
本開示のさらに別の態様では、基部周囲における蓋の完全係合位置に対応する底付き状態では、基部の側壁が蓋の天井に当接し、蓋の側壁が基部の環状リムから離間される。
【0016】
本開示の態様に従って提供される別の培養皿は、基部および蓋を含む。基部は、長手方向軸を画定し、上端および下端を有する。基部は、環状内面および環状外面を含む側壁と、基部の上端と下端との間に配置された位置で側壁によって支持される床部とをさらに含む。蓋は、長手方向軸を画定し、上端および下端を有する。蓋は、環状内面および環状外面を含む側壁と、蓋の上端で側壁の上に配置された天井とを含む。基部または蓋の一方は、比較的硬質の構成を画定し、基部または蓋の他方は、比較的可撓性の構成を画定する。蓋の側壁の内側環状面は、基部の側壁の外側環状面の周囲に摺動可能に受容されるように構成される。基部または蓋のうち比較的可撓性のある一方は、撓むことにより基部の側壁の外側環状面の周囲に蓋の側壁の内側環状面を摺動可能に受容することができ、基部周囲で蓋を密閉係合するように構成されている。
【0017】
本開示の一態様では、基部は比較的硬質の構成を画定し、蓋は比較的可撓性の構成を画定する。そのような実施形態では、基部は、硬質ポリスチレンから形成され得、および/または蓋は、低密度ポリエチレンから形成され得る。
【0018】
本開示のさらに別の態様では、基部および/または蓋は、高い酸素透過性および低い水蒸気透過性を有する材料から形成される。
【0019】
本開示のさらに別の態様では、基部および/または蓋は、それぞれの側壁から延在する環状リムを含む。環状リム(単数または複数)は、基部および/または蓋の操作、係合、および係脱を容易にするように構成された指掛け部を画定する。
【0020】
本開示のさらに別の態様では、基部は、その側壁から延在する環状リムを含み、蓋の天井は、基部を蓋の上に積み重ねるために基部の環状リム内に少なくとも部分的に受容されるように構成される。
【0021】
さらに試料中の微生物の存在または不存在を決定する方法が、本開示の態様に従って提供される。該方法は、培養皿を得ることを含む。培養皿は、上記または別様に本明細書に詳述される培養皿の特徴のいずれかまたは全てを含み得る。態様では、培養皿は、基部および蓋を含む。基部は、側壁と、側壁によって支持される床部とを含む。床部は、基部の開口上端に面する凹面と、基部の下端に面する凸面とを有する。蓋は、側壁と、蓋の上端で側壁の上に配置された天井とを含む。天井は、蓋の下端に面する内面と、蓋の上端に面する外面とを画定する。蓋は、蓋の側壁の内側環状面が基部の側壁の外側環状面の周囲に配置された状態で基部の周囲に係合されて、基部および蓋の側壁と床部と天井とによって境界付けられた密閉内容積が画定される。
【0022】
該方法はさらに、蓋を基部から係脱することと、試料が床部の凹面全体に分配されるように試料を基部内に注入することと、蓋の側壁の内側環状面が摺動して基部の側壁の外側環状面の周囲に密閉係合して試料を密閉内容積内に密閉封入するように蓋を基部に対して接近させることと、培養皿をインキュベートすることと、密閉内容積内に形成された任意の細菌コロニーを計数することとを含む。
【0023】
本開示の一態様では、増殖培地は、基部内に配置されるか、または試料を基部内に注入する前に基部内に導入される。
【0024】
本開示の別の態様では、試料を注入することは、増殖培地上に試料を注入することを含む。
【0025】
本開示のさらに別の態様では、任意の細菌コロニーを計数することは、基部を通して観察すること、およびカバーを背景として利用することを含む。
【0026】
本開示のさらに別の態様では、蓋の側壁の内側環状面が摺動して基部の側壁の外側環状面の周囲に密閉係合されるにつれて、蓋の側壁が撓む。
【0027】
本開示のさらに別の態様では、蓋の側壁の内側環状面が次第に摺動して基部の側壁の外側環状面の周囲に密閉係合されるにつれて、それらの間の係合強度が次第に増加するように、蓋の側壁の内側環状面は第1の角度で配置され、基部の側壁の外側環状面は第2の異なる角度で配置される。
【0028】
本開示の別の態様では、培養皿をインキュベートすることは、酸素が蓋または基部の少なくとも一方を通過して密閉内容積へと透過することを可能にすること、および水蒸気が密閉内容積から蓋または基部を通って透過することを阻止することを含む。
【0029】
本開示のさらに別の態様では、該方法は、培養皿を別の培養皿の上に積み重ねること、および/または別の培養皿を培養皿の上に積み重ねることをさらに含む。
【0030】
本開示の別の態様では、該方法は、培養皿が蓋によって支持されるように、培養皿を反転させることをさらに含む。培養皿は、インキュベーション前または計数前に反転され得る。
【0031】
本開示のさらに別の態様では、蓋を基部から係脱することは、蓋および基部に関連する環状リムを把持すること、および蓋または基部の少なくとも一方を他方から引き離すことを含む。追加的または代替的に、密閉内容積内に試料を密閉封入するために蓋を基部に対して接近させることは、蓋および基部に関連する環状リムを把持することと、蓋または基部の少なくとも一方を他方に向かって押しやることとを含む。
【0032】
本開示のさらに別の態様では、基部に対して蓋を接近させることはさらに、基部に対して蓋を、および/または蓋に対して基部を底付けすることを含む。
【0033】
本開示の様々な態様および特徴は、図面を参照しながら本明細書内で説明されており、図面において、同様の参照番号は、類似または同一の要素を示すものとする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】蓋が基部から取り外された状態の培養皿の基部の上面斜視図および培養皿の蓋の底面斜視図を含む、本開示に従って提供される培養皿の図である。
図2】蓋が基部に係合された状態の図1の培養皿の上面斜視図である。
図3】蓋が基部に係合された状態の図1の培養皿の底面斜視図である。
図4A図1の培養皿の基部の上面斜視図である。
図4B図1の培養皿の基部の底面斜視図である。
図5図1の培養皿の基部の側面面斜視図である。
図6図1の培養皿の基部の上面図である。
図7図6の切断線「7-7」に沿った断面図である。
図8図7内の「8」で示された細部領域の拡大断面図である。
図9】刻印を含む、図1の培養皿の蓋の上面斜視図である。
図9A】刻印の無い、図1の培養皿の蓋の上面斜視図である。
図9B図1の培養皿の蓋の底面斜視図である。
図10図1の培養皿の蓋の側面斜視図である。
図11図1の培養皿の蓋の上面図である。
図12図11の切断線「12-12」に沿った断面図である。
図13図12内の「13」で示された細部領域の拡大断面図である。
図14】本開示に従う、水試料中の微生物の存在または不存在を判定する方法を示すフロー図である。
図15】互いの上に積み重ねられた状態の本開示に従う2つの培養皿を示す側面斜視図である。
図16図15の積み重ねられた培養皿の側面図である。
図17図16の切断線「17-17」に沿った横断面図である。
図18A図1の培養皿の上面斜視図である。
図18B図1の培養皿の底面斜視図である。
図18C図1の培養皿の上面図である。
図18D図1の培養皿の底面図である。
図18E図1の培養皿の側面図である。
図19A図1の培養皿の蓋の上面斜視図である。
図19B図1の培養皿の蓋の底面斜視図である。
図19C図1の培養皿の蓋の上面図である。
図19D図1の培養皿の蓋の底面図である。
図19E図1の培養皿の蓋の側面図である。
図20A図1の培養皿の基部の上面斜視図である。
図20B図1の培養皿の基部の底面斜視図である。
図20C図1の培養皿の基部の上面図である。
図20D図1の培養皿の基部の底面図である。
図20E図1の培養皿の基部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
全般的に図1図3を参照すると、本開示は、全体が参照番号10で示されている培養皿と、培養皿を使用して、試料(例えば、水試料)を検査する方法(図14を参照)とを提供する。検査される他の好適な試料としては、例えば、飲料、牛乳、肉汁、食品、環境試料、医薬品、尿、喀痰、精液、組織、スワブまたはぬぐい液、血液、血清、および血漿が挙げられる。培養皿10は、基部100と、蓋200とを含む。培養皿10は、蓋200および基部100の操作(別個の構成要素として、および互いに係合される場合)、増殖培地および/または検査試料の基部100への注入(しかしながら、以下に詳述するように、製造時に増殖培地が基部100内に配置されることが想定される)、蓋200の基部100との密閉係合、蓋200の基部100からの係脱、複数の培養皿10の積み重ね、インキュベーション、およびインキュベーション後の得られた細菌コロニーの計数を容易にするものである。
【0036】
図4A図8を参照すると、基部100は、成形または他の好適なプロセスにより、単一の一体材料片として形成される。基部100は、光学的に透明な材料から形成され、可視化を可能にする。実施形態において、基部100を形成する材料は、「高い」酸素透過性を有するが、水蒸気に対しては「低い」透過性を有する。酸素透過性は、好気性微生物または通性好気性微生物の増殖を促進するのに有益であり得る。本明細書における目的のための基部100の「高い」酸素透過性は、25μg/m/24時で測定される酸素透過率が、実施形態では少なくとも2000、他の実施形態では少なくとも3000、さらに他の実施形態では少なくとも4000であると考えられる。本明細書における目的のための基部100の水蒸気に対する「低い」透過性は、25μg/m/24時で測定される水蒸気透過率が、実施形態では200以下、他の実施形態では170以下、さらに他の実施形態では140以下であると考えられる。さらに、実施形態において、基部100を形成する材料は、比較的高い酸素透過性および水蒸気に対する比較的低い透過性を有し、本明細書における目的のためのそのような相関性は、実施形態では少なくとも10:1、他の実施形態では少なくとも20:1、さらに他の実施形態では少なくとも30:1の酸素透過性対水蒸気透過性の比であると考えられる。
【0037】
基部100は、比較的硬質の材料から形成される。比較的硬質の基部100は、基部100が通常の使用時に、例えば、表面上に配置されたとき、積み重ねられたとき、蓋が係合/係脱されたときなどに破損し得るほど脆くならずに、使用時に基部100の大きな変形を阻止するのに十分な硬さで構成される。
【0038】
上記の基準を満たす1つの好適な材料は硬質ポリスチレンであるが、他の好適な材料(例えば、ポリカーボネート、アクリル、環状オレフィンポリマー(COP)、またはウレタン)も想定される。基部100がポリスチレンから形成される実施形態では、基部100の少なくとも一部(例えば、床部140および/または側壁120の内面、またはその全体)をプラズマ処理してポリスチレンの表面エネルギーを増加させ、そのことにより疎水性を低下させる(ひいては、より親水性の高いポリスチレンにする)ことができる。このような構成は、以下に詳述するように、製造時に基部100まで乾燥され得る基部100への増殖培地の接着を促進する。この構成は、追加的または代替的に、(製造時に増殖培地が基部100内に配置されるのではなく、ユーザによって基部100に注入される実施形態において)検査試料および/または増殖培地の基部100内への注入および検査試料および/または増殖培地の基部100内での分配を容易にし得る。基部100が異なる材料から形成される実施形態では、同様の目的のためにプラズマ処理が同様に利用され得る。
【0039】
引き続き図4A図8を参照すると、基部100は、上端102および下端104を画定し、側壁120と、床部140と、環状リム160とを含む。側壁120は、略円筒形状を画定し、基部100の上端102で開口している。床部140は、基部100の上端102および下端104それぞれの間の中間位置で側壁120によって支持され、側壁120から垂下している。環状リム160は、基部100の下端104において側壁120から延在する。
【0040】
側壁120は、上述したように、略円筒形状を画定する。側壁120は、円形横断面を有する円筒状容積を取り囲む。しかしながら、実施形態において、側壁120は完全な円筒状ではない。むしろ、このような実施形態では、側壁120の外側環状面122は、側壁120の長さの少なくとも一部に沿って下から上への方向に、例えば、基部の下端104から上端102へ、半径方向内方にテーパー状になる。一旦図7および図8を参照すると、側壁120の外側環状面122は、基部100の長手方向軸「X」に対して(平行ではなく)傾斜し得る。より具体的には、外側環状面122は、下から上への方向に角度「A」で平行線から半径方向内方に傾斜する。角度「A」は、実施形態において、2°~4°であり得、実施形態において、2.5°~3.5°であり得、さらに他の実施形態において、3°であり得る。
【0041】
再び図4A図8を参照すると、基部100の床部140は、基部100の上端102および下端104それぞれの間の中間位置で側壁120によって支持され、側壁120から垂下している。より具体的には、床部140は、側壁120の内側環状面124から基部100の下端104に向かって半径方向内方に延在する。床部140は、半径方向に対称な(例えば、長手方向軸「X」を中心とした)凹面142を画定し、凹面142は基部100の上端102に面している。したがって、床部140の最下点は、長手方向軸「X」を中心とする。逆に、床部140は、半径方向に対称な(例えば、長手方向軸「X」を中心とした)凸面144を画定し、凸面144は、その先端が長手方向軸「X」を中心として基部100の下端104に面している。
【0042】
側壁120および床部140の上記で詳述した構成は、側壁120の内側環状面124によって半径方向に、かつ床部140の凹面142によって基部100の下端104に向かって境界付けられる、内容積「VB」を画定する。基部100の上端102は開口しており、したがって、内容積「VB」へのアクセスを提供し、検査試料(および実施形態では、増殖培地)の内容積「VB」への注入を可能にする。内容積「VB」の凹状底面142は、不均一な分配をもたらすメニスカス形成を阻止または低減することによって試料(および実施形態では増殖培地)の注入および分配を容易にし、試料(および/または培地)が環状外周の周囲に、例えば内側環状面124に蓄積する。他の実施形態では、凹状底面142の代替形態として、底面142は、傾斜している、異なる深さを画定する、異なるピッチを画定するなどの場合がある。基部100は、凹状底面142の表面積が1mLの試料(例えば、水)をその周囲に均一に分配できるように構成される。当然ながら、他の試料体積については、基部100は、異なるサイズの検査試料を凹状底面142の周囲に均一に分配することができるように別様に構成され得る。
【0043】
図5図7と共に図8を参照すると、基部100の環状リム160は、基部100の下端104において側壁120から延在する。環状リム160は、より具体的には、基部の下端104において側壁120に対して半径方向外方に延在する半径方向部分162と、側壁120から長手方向に離れるように延在する長手方向部分164とを含む。第1のエルボ166は、側壁120と環状リム160の半径方向部分162とを相互接続し、第2のエルボ168は、環状リム160の半径方向部分を環状リム160の長手方向部分164と相互接続する。この構成により、環状リム160は、基部100の上端102の方向を向いた環状棚部170を含む。環状棚部170は、長手方向軸「X」に対して垂直に延在する平面内にある上面を画定する。
【0044】
環状リム160の長手方向部分164の自由端174は、基部100が表面(例えば、テーブル、棚など)上で支持されるように構成される支持縁部を画定する。このようにして、床部140は、表面の上方に支持され、表面から離間される。円筒状領域「C」は、環状リム160の長手方向部分164内で半径方向に、かつ環状リム160の長手方向部分164の自由端174と環状リム160の第2のエルボ168との間で長手方向に画定される。側壁120内で半径方向に、かつ床部140の凸面144と環状リム160の第1のエルボ166との間で長手方向に、追加領域が画定される。この追加領域は、円筒領域「C」の直径よりも小さい直径を画定する。さらに、この追加領域は、床部140の凸状形状により不規則である。床部140の凸面144は、側壁120の下端を越えて延在せず、したがって、追加領域を超えて円筒状領域「C」内へと延在しない。
【0045】
図9図13を参照すると、培養皿10の蓋200は、基部100(図1図8)に解放可能に密閉係合するように構成される。蓋200は、成形または他の好適なプロセスにより、単一の一体材料片として形成される。蓋200は、不透明であり、蓋200を形成する材料全体にわたる不透明顔料によって不透明性を実現し得る。代替的には、蓋200は、蓋200の少なくとも一部の艶消し、塗装、ステッカー貼り付けなどによって不透明性を実現してよい。図9に示されるように、蓋100は、製品情報(例えば、製品名、製造業者名など)を伝える刻印、および/または異なる培養皿10の追跡、識別などを行うための他の情報(例えば、数字、文字など)を伝える刻印を含み得る。刻印は、(図示されているように)蓋200の天井240から延在する凸刻印であり得る、または蓋200の天井240(および/または培養皿10の任意の他の好適な部分)上にエッチング、成形、描画、転写、印刷、もしくは別様に形成され得る。あるいは、図9Aに示されているように、刻印は省略されてもよい。
【0046】
実施形態において、蓋200は、基部100内で増殖する細菌コロニーとコントラストを成すように白色である。増殖培地は、コントラストを高め、蓋200の白い背景に対してコロニーをより見やすくするために、コロニーを(例えば、赤、青などに)着色する変色指示薬を含み得る。しかしながら、白色は、特定の細菌コロニーを視認するための良好なコントラストを成す(例えば、指示薬は赤色、青色などに変色する)が、他の不透明な色は、細菌コロニーの色に基づいて選択され得る。例えば、実質的に無色のコロニーは、より暗い背景に対してより良好に視認され得、したがって、蓋200は、そのようなコントラストを成すようにより暗い色であり得る。他の実施形態では、蓋200は、光学的に透明な材料から形成され、蓋200とは別個の不透明な(例えば、白色または暗色の)背景の上におよび/または背景に対して配置される。さらに、実施形態では、蓋200は、基部100を通して見たときに見える異なる色、暗さ、質感などのグリッドパターン(図示せず)を、蓋200上(例えば、天井240上)に含み得る。グリッドパターンは、単位表面積当たりのコロニー数の決定を容易にする。追加的または代替的に、基部100(図1図8)は、グリッドパターンを含み得る。基部100(図1図8)および/または蓋200上に形成されるかどうかにかかわらず、グリッドパターンは、基部100(図1図8)の内面および/または外面および/または蓋200上に配置され得、表面(単数または複数)上にレーザエッチング、成形、描画、転写、印刷などで施され得る。さらに、基部100(図1図8)、蓋200、または組み合わされた培養皿10は、同様の目的のために、その上にグリッドパターンを有する表面またはキャリア上に配置され得る。
【0047】
蓋200は、以下に詳述するように、蓋200が基部100と密閉係合した状態で基部100の上で変形および/または伸長できるように比較的可撓性の材料から形成される。本明細書で使用される「可撓性」は、変形特性(例えば、永久特性または弾性特性)の任意の組み合わせを含む。すなわち、可撓性は、基部100を密閉係合するための永久変形を可能にする柔軟性(例えば、低硬度)、および/または基部100を密閉係合するための弾性変形を可能にするコンプライアンス(例えば、高い伸び)によって示され得る。さらに、蓋200および基部100を形成する材料は、以下に詳述するように、それらの間の密閉された十分に確実な締まり嵌め係合を実現するように選択される。これは、好適な摩擦係数および嵌合係合を有するように協働する蓋200および基部100のための材料を選択することによって実現される。基部100と蓋200との間に確立される「シール」は、直接接触シールであり、例えば、基部100を形成する材料と蓋200を形成する材料とが直接接触および相互作用することで、本明細書内で詳述する蓋200および基部100の構成の結果として形成されるシールが実現される。シールは、気密シール、液体不透過性シール、または他の好適なシールであり得る。
【0048】
実施形態において、蓋200を形成する材料は、「高い」酸素透過性を有するが、水蒸気に対しては「低い」透過性を有する。酸素透過性は、好気性微生物または通性好気性微生物の増殖を促進するのに有益であり得る。本明細書における目的のための蓋200の「高い」酸素透過性は、25μg/m/24時で測定される酸素透過率が、実施形態では少なくとも4000、他の実施形態では少なくとも6000、さらに他の実施形態では少なくとも8000であると考えられる。あるいは、蓋200の「高い」酸素透過性は、基部100(図1図8)の酸素透過性と一致してもよい。本明細書における目的のための蓋200の水蒸気に対する「低い」透過性は、25μg/m/24時で測定される水蒸気透過率が、実施形態では100以下、他の実施形態では50以下、さらに他の実施形態では25以下であると考えられる。あるいは、蓋200の「低い」水蒸気透過性は、基部100(図1図8)の水蒸気透過性と一致してもよい。さらに、実施形態において、基部100を形成する材料は、比較的高い酸素透過性および水蒸気に対する比較的低い透過性を有し、本明細書における目的のためのそのような相関性は、実施形態では少なくとも100:1、他の実施形態では少なくとも200:1、さらに他の実施形態では少なくとも400:1の酸素透過性対水蒸気透過性の比であると考えられ、あるいは、基部100(図1図8)の酸素透過性対水蒸気透過性の比と一致してもよい。上記の基準を満たす1つの好適な材料は、可撓性の低密度ポリエチレン(LDPE)であるが、他の好適な材料(例えば、ゴム成分を有するプラスチック)も想定される。
【0049】
基部100(図4A図8)および蓋200の上記で詳述した材料特性の代替形態として、上記形態を逆にしてもよく、例えば、基部100(図4A図8)がLDPEなどの可撓性材料から形成され、蓋200がポリスチレンなどの硬質材料から形成される。
【0050】
引き続き図9図13を参照すると、蓋200は、上端202および下端204を画定し、側壁220と、床部240と、環状リム260とを含む。側壁220は、略円筒形状を画定し、蓋220の下端204で開口している。天井240は、上端202に配置され、側壁220を横切って延在して蓋200の上端202を囲む。蓋200の下端204は、側壁220によって画定される内容積「VL」に対して開口している。 環状リム260は、ある位置で側壁220から蓋200の上端202に向かって延在するが、上端202から離間している。
【0051】
特に図12および図13を参照すると、側壁220は、上述したように、略円筒形状を画定する。側壁220は、円形横断面を有する円筒状内容積「VL」を取り囲む。しかしながら、実施形態において、側壁220は完全な円筒状ではない。むしろ、このような実施形態では、側壁220の内側環状面224は、側壁220の長さの少なくとも一部分に沿って上から下への方向に、例えば、蓋200の上端202から下端204へ、半径方向外方にテーパー状になり、その結果、側壁220の内側環状面224は、蓋200の長手方向軸「XX」に対して(平行ではなく)傾斜している。より具体的には、側壁220の内側環状面224は、上から下への方向に角度「AA」で平行線から半径方向外方に傾斜している。角度「AA」は、実施形態において、1°~3°であり得、実施形態において、1.5°~2.5°であり得、さらに他の実施形態において、2°であり得る。さらに、角度「AA」は、実施形態において、0.5°~1.5°であり得、他の実施形態において、0.75°~1.25°であり得、さらに他の実施形態において、基部100の側壁120の外側環状面122と基部100の長手方向軸「X」との間に画定される角度「A」(図8を参照)よりも1°小さい角度であり得る。この構成は、以下に詳述するように、蓋200と基部100との間の強固な密閉係合を容易にする。長手方向軸「X」および「XX」は互いに同軸であるが、他の構成も想定されることに留意されたい。
【0052】
再び図9図13を参照すると、蓋200の天井240は、上述したように、蓋200の上端202に配置され、側壁220を横切って延在して蓋200の上端202を囲む。天井240は、より具体的には、略平面の円形形状を画定するが、蓋200の可撓性の構成により、天井240は、完全な平面ではない場合がある。すなわち、天井240は、作用する力および/または圧力に応じて、凸状、凹状、または他の非平面形状を画定し得る。天井240は、蓋200の下端204に面している内面242を画定し、蓋200の上端202において側壁220の内側環状面224によって画定される内容積「VL」の上端境界を画定する。天井240は、内面242の反対側にあり、蓋200の外部の一部を画定する外面244をさらに画定する。蓋200の下端204は、開口しており、したがって内容積「VL」へのアクセスを提供する。
【0053】
図13に示されているように、環状リム260は、上述したように、側壁220から蓋200の上端204に向かって延在するが、上端204から離間している。このようにして、リング状凹部266が、環状リム260の上端対向面262の上かつ天井240の周囲に位置する。環状リム260はさらに、上端対向面262の反対側に下端対向面264を画定する。
【0054】
図1図13を参照すると、培養皿10の上記で詳述した構成は、蓋200および基部100の操作(別個の構成要素として、および互いに係合される場合)、検査試料(および/または増殖培地)の基部100への注入、蓋200の基部100との密閉係合、蓋200の基部100からの係脱、複数の培養皿10の積み重ね、インキュベーション、およびインキュベーション後の得られた細菌コロニーの数の計数(他の検査方法も想定されるが)を容易にする。
【0055】
操作、係合および係脱に関して、基部100および蓋200の環状リム160、260はそれぞれ、それぞれの側壁120、220から突出して、ユーザが滑らせずに基部100および蓋200をそれぞれ把持して操作するための指掛け部を形成する。環状リム160、260の環状構成は、基部および蓋200の外周全体におけるそのような指保持部を形成する。環状リム160、260によって形成された指掛け部の上記で詳述した構成は、基部100および蓋200の片手での操作、係合、および係脱を可能にする。より具体的には、片手での係合および係脱は、以下のようにして実現され得る。手の1本以上の指を使用して環状リム160または基部100の別の部分を係合させて、基部100を(例えば、テーブルまたは他の支持構造に対して)保持するか、別様に安定化させる一方で、同じ手の別の1本または複数本の指を使用して、環状リム260または蓋200の別の部分を係合させて、蓋200を基部100と係合させるか、または蓋200を基部100から係脱させる。さらに、係脱に関して、片側のみで蓋200を持ち上げるのは(例えば、片側で蓋200を上方に傾けると同時に、反対側が最初に基部100と接触して少なくとも部分的に基部100と係合したままである)、例えば、反対の手で保持されたピペットを用いて試料の添加を可能にする開口部を形成するのに十分であり得る。
【0056】
基部100の周囲における蓋200の密閉係合に関して、より具体的には、下端204によって案内される蓋200、および/または上端102によって案内される基部100は、蓋200の側壁220が基部100の側壁120の周囲を摺動するように、互いに対して接近される。蓋200の側壁220の内側環状面224の最大直径、最小直径、または平均直径は、基部100の側壁120の外側環状面122の最大直径、最小直径、または平均直径に等しくなり得る。これは、蓋200の可撓性および角度「A」(図8)と角度「AA」(図13)との差と共に、蓋200と基部100との間の強固な密閉係合を確立しやすくし、蓋200の側壁220が基部100の側壁120の周囲において完全係合位置へとさらに摺動する(そして蓋200がさらに撓む)につれて、密閉係合が次第にきつくなる。
【0057】
一旦図17をさらに参照すると、完全係合位置において、基部100の側壁120の上端縁が蓋200の天井240の内面242に当接し得、および/または蓋200の側壁220の下端縁が基部100の環状リム160の環状棚部170の外面に当接し得る。望ましい当接(単数または複数)は、当接が側壁120と天井240との間、側壁220と環状棚部170との間、または側壁120と天井240との間および側壁220と環状棚部170との間の両方(例えば、実質的に同時に)において生じるように、側壁120、220の相対高さを変化させることによって実現され得る。例えば、側壁120と天井240との間および/または側壁220と環状棚部170との間の当接(単数または複数)は、完全係合位置に対応する底付き状態を示しており、基部100と蓋200とが互いに対してそれ以上接近するのを阻止する。蓋200の側壁220が基部100の側壁120と比較して低い高さを示す実施形態では、底付き状態(完全係合位置)において、側壁120が天井240に当接し、側壁220と環状棚部170との間に間隔が定められる。この底付き状態では、(側壁120の高さに対して側壁220の高さが高い実施形態と比較して)蓋200と基部100との間の重なりの少ない環状面の接触が形成され、したがって蓋200を取り外すのに必要な力が低減される。完全係合位置に対応する底付き状態では、内容積「VB」および「VL」が互いに重なり連通して、培養皿10内に集合密閉内容積「VS」を画定する。
【0058】
実施形態では、底付き状態で蓋200が基部100の周囲で密閉された状態で培養皿10内に画定される密閉内容積「VS」は、実施形態では、約5mL~約10mLであり、他の実施形態では、約6mL~約9mLであり、さらに他の実施形態では、約7mL~約8mLである。培養皿10内の約1mLの試料および/または約3.5mLの試薬は、上述した体積範囲で利用され得るが、他の試料体積、試薬体積、および/または密閉容積「VS」も想定される。
【0059】
上記の体積および/または他の好適な体積に関して、培養皿10の密閉内容積「VS」は、実施形態では、約40mm~約48mm、他の実施形態では、約42mm~約46mm、さらに他の実施形態では、約43mm~約45mmの最大内径を画定し得る。培養皿10内の約1mLの試料および/または約3.5mLの試薬が、上記の直径範囲と共に利用され得るが、他の試料体積、試薬体積、および/または直径も想定される。
【0060】
上記の体積および/または他の好適な体積に関して、培養皿10の密閉内容積「VS」は、実施形態では、約4mm~約8mm、他の実施形態では、約5mm~約7mm、さらに他の実施形態では、約5.5mm~約6.5mmの最大内高さを画定し得る。培養皿10内の約1mLの試料および/または約3.5mLの試薬が、上記の高さ範囲と共に利用され得るが、他の試料体積、試薬体積、および/または直径も想定される。
【0061】
さらに、試料体積に対する密閉内容積「VS」の比は、実施形態では、約5~約10、他の実施形態では、約6~約9、さらに他の実施形態では、約7~約8であり得る。試薬体積に対する密閉内容積「VS」の比は、実施形態では、約1.4~約2.8、他の実施形態では、約1.8~約2.4、さらに他の実施形態では、約2.0~約2.2であり得る。追加的または代替的に、本開示は、上記から容易に計算され得るように、培養皿10の密閉内容積「VS」の容積、最大高さ、および/または最大幅に対して、まとめてまたは個別に、試料体積および/または試薬体積の比率範囲を企図する。
【0062】
再び図1図13全体を参照すると、上記で詳述した基部100の周囲における蓋200の係合は、例えば、培養皿10が落下したときに、開口しにくくする。理解され得るように、これは、試料の損失および数が増幅された微生物の播種の両方を防止するのに役立つ。
【0063】
検査試料(および/または増殖培地)の基部100への注入に関して、上記で詳述したように、基部100の床部140の凹状底面142は、環状外周の周囲に(例えば、内側環状面124に対して)不均一な分配および蓄積をもたらすメニスカス形成を阻止または低減することによって、基部100の床部140の周囲への検査試料(および/または増殖培地)の注入および分配を容易にする。同様に、基部100は、上記で詳述したように、1mLの試料(例えば、水)を注入して均一に分配できるように構成される。
【0064】
図15図17を参照すると、2つ以上の培養皿10を積み重ねるために、上部培養皿100の基部100の環状リム160の長手方向部分164の自由端174が下部培養皿10の蓋200の環状リム260の上端対向面262上に着座するように、上部培養皿10の基部100が下部培養皿の蓋200に対して接近される。このようにして、上部培養皿100の基部100の下端104内に画定される円筒状領域「C」は、下部培養皿100の蓋200の天井240を受容する。蓋200の天井240は、2つ以上の培養皿10の積み重ね構成において最小限の遊びがそれらの間に画定されるように、基部100の円筒状領域「C」の直径に概ね近似する外径を画定し得る。上記で詳述した構成により、複数の培養皿10を安定して積み重ねることができる。
【0065】
図1図13全体を参照すると、インキュベーションに関して、蓋200と基部100との密閉係合は、インキュベーション中の増殖培地からの水(または他の)試料の蒸発を防止する。これは、比較的少量の試料、すなわち1mLの検査試料(例えば、水)の使用が企図されることを考えると、特に重要であり、インキュベーション期間が長いほどより重要になる。例えば、R2A増殖培地上での水試料のインキュベーションは、7日間を要しうる。さらに、基部100および蓋200の高いまたは比較的高い酸素透過性および低いまたは比較的低い水蒸気透過性は、好気性微生物または通性好気性微生物の増殖を促進するのに有益であり得る。
【0066】
インキュベーション後の得られた細菌コロニーの数の計数に関して、光学的に透明な基部100は、それを通して基部100の内部への可視化を可能にするが、不透明な(例えば、白色)の蓋200は、計数を容易にするために好適なコントラストを有する背景となる。蓋200の追加の特徴は、上記で詳述した特徴などのように、計数能力をさらに高めることができる。計数は、追加的または代替的に、蓋200が基部100から取り外された状態で行われてもよい。
【0067】
図1図3と併せて図14を参照すると、本開示に従って提供される方法は、培養皿(例えば、培養皿10)を提供することを含む。培養皿10は、製造時にその中に配置される増殖培地を含み、蓋200は、基部100内の増殖培地と共に基部100の周囲に密閉係合され、培養皿10は、使用の準備が整うまで、輸送、貯蔵などのために包装されるか、または別様に梱包されることが想定される。製造時に基部100内に増殖培地を配置することに関して、より具体的には、増殖培地は、流体として基部100に添加され、冷却されてゲルを形成し、次いで基部100の床部140まで乾燥(脱水)され得る。増殖培地は、R2A(Reasoner’s 2A寒天培地)増殖培地または他の好適な増殖培地(例えば、YEA(酵母エキス寒天培地)、PCA(プレートカウント寒天培地)、またはSMALL(標準寒天培地)などの好適な増殖培地であり得る。
【0068】
該方法はさらに、梱包材料を培養皿の周囲から剥がしおよび/または取り外すことと、例えば、基部100の環状リム160および/または蓋200の環状リム260を把持して、基部100および/または蓋200を互いから引き離すことによって、蓋を培養皿から取り外すこととを含む。
【0069】
蓋が取り外されると、検査試料が培養皿の基部の内容積に注入され、例えば、基部100の床部140の形状により培養皿の中に均一に分配される。増殖培地が基部100内にまだ配置されていない場合、例えば、増殖培地が製造中に基部100の床部140まで乾燥されてない実施形態では、増殖培地は同様に、試料の注入前、試料の注入後、または試料の注入と重複して基部100へと注入され得る。特に培養皿10に関して、基部100は、基部100の内容積「VB」へと注入される1mLの試料(例えば、水)が、基部100の床部140の周囲に均一に分配されるように構成される。しかしながら、他の試料の大きさおよび構成も想定される。試料(例えば、水または他の好適な試料)は、増殖培地全体に試料を広げるために撹拌され得る。1mLの水試料が基部100へ注入されると、水は乾燥した増殖培地と相互作用して増殖培地を再構成(再水和)する。水試料に関して以下に詳述するが、同じまたは同様の方法が、上記したような他の試料を検査するために利用され得ることが分かる。
【0070】
基部内の増殖培地および水試料(および水試料によって再構成された増殖培地)と共に、培養皿の蓋は、例えば、基部100の側壁120の周囲における蓋200の側壁220の摺動密閉締まり嵌め係合によって、水試料および増殖培地を封入および密閉するように、基部の周囲で密閉係合される。密閉されると、培養皿は反転され、蓋の上に載るように配置され得る。あるいは、培養皿は、非反転姿勢で基部100の上に載るように配置され得る。培養皿10に関して上記で詳述したのと同様に、複数の培養皿が積み重ねられ得る。次に、密閉された培養皿が、増殖を支持するのに好適な時間および好適な条件下でインキュベートされる。
【0071】
インキュベーション後、細菌増殖コロニーの数が蓋を背景にして計数され、水試料中の微生物の存在または不存在が決定される。より具体的には、培養皿10に関して、ユーザは、光学的に透明な基部100を通して見ることができ、コントラストを提供する背景として白色の不透明な蓋200を使用して、細菌増殖コロニーの数を計数することができる。培養皿10の反転(インキュベーションのためにまだ反転が行われていない場合)は、一部の例では、計数を容易にするように行われてもよく、他の例では、培養皿10は反転される必要はない。計数は、追加的または代替的に、蓋200が基部100から取り外された状態で行われてもよい。
【0072】
上記で詳述されている方法は、動作の一部または全ての間に待機期間(単数または複数)をさらに含み得る。例えば、試料を攪拌した後かつ蓋を密閉係合させる前の十分な待機期間、および/または蓋を密閉係合させた後かつ密閉培養皿を反転させる前の十分な待機期間が組み入れられ、そのことにより、試料/増殖培地混合物の凝固、ゲル化、冷却などを可能にし得る。追加または代替の待機期間が、同様の目的または異なる目的のために他の動作の間に組み入れられ得る。
【0073】
本明細書における任意の特定の数値への言及は、当技術分野で一般に受け入れられている材料および製造公差ならびに/もしくは当技術分野で一般に受け入れられている測定機器の誤差を考慮に入れるために値の範囲を包含することが理解される。
【0074】
上述の内容から、および様々な図面を参照すれば、当業者であれば、本開示の範囲から逸脱せずに、本開示に対して特定の修正を行うこともできることを理解するであろう。本開示のいくつかの実施形態が図面に示されているが、本開示の範囲が当技術分野で許容される限りにおいて広範囲であり、本明細書が同様に読み取られることを意図しているので、本開示はそれらの実施形態に限定されることを意図するものではない。したがって、上記の説明は、限定的なものと解釈すべきではなく、単に特定の実施形態の例示として解釈すべきである。当業者であれば、本明細書に添付された請求項の範囲および精神に該当する他の修正を想定するであろう。
図1
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図4A
図4B
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