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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】薄膜トランジスター
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20241126BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01L29/78 618E
H01L29/78 618B
H01L29/78 618A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021577145
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 KR2020008749
(87)【国際公開番号】W WO2021006565
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】10-2019-0081423
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510149600
【氏名又は名称】ジュソン エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェワン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク チャンキュン
(72)【発明者】
【氏名】イ ドンホワン
(72)【発明者】
【氏名】ファン チョルチュ
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-045173(JP,A)
【文献】特開2014-057049(JP,A)
【文献】特開2014-045178(JP,A)
【文献】特開2010-067954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート絶縁膜とソース及びドレイン電極との間に形成される活性層を備える薄膜トランジスターであって、
前記活性層は、
第1の金属酸化物薄膜と、
前記第1の金属酸化物薄膜とゲート絶縁膜の間に配設され、前記第1の金属酸化物薄膜よりも低い電気伝導度を有する第2の金属酸化物薄膜と、
前記第1の金属酸化物薄膜とソース及びドレイン電極の間に配設され、前記第1の金属酸化物薄膜よりも低い電気伝導度を有する第3の金属酸化物薄膜と、
を備え
前記第1の金属酸化物薄膜は、インジウム(In)及び亜鉛(Zn)を含む第1の金属物質の酸化物から形成され、
前記第2の金属酸化物薄膜は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)を含む第2の金属物質の酸化物から形成され、
前記第3の金属酸化物薄膜は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)を含む第3の金属物質の酸化物から形成され、
前記第3の金属酸化物薄膜は、前記第2の金属酸化物薄膜よりも低い電気伝導度を有する薄膜トランジスター。
【請求項2】
前記第1の金属酸化物薄膜におけるインジウム(In)は、前記第1の金属物質の全体に対して、30at%以上、且つ、80at%未満にて含まれる請求項に記載の薄膜トランジスター。
【請求項3】
前記第2の金属酸化物薄膜におけるガリウム(Ga)は、前記第2の金属物質の全体に対して、30at%以上、且つ、60at%未満にて含まれ、
前記第3の金属酸化物薄膜におけるガリウム(Ga)は、前記第3の金属物質の全体に対して、30at%以上、且つ、60at%未満にて含まれる請求項に記載の薄膜トランジスター。
【請求項4】
前記第3の金属物質に含まれるガリウム(Ga)の量は、前記第2の金属物質に含まれるガリウム(Ga)の量よりも多い請求項に記載の薄膜トランジスター。
【請求項5】
前記第1の金属物質は、ガリウム(Ga)をさらに含み、
前記第1の金属酸化物薄膜におけるガリウム(Ga)は、前記第1の金属物質の全体に対して30at%未満にて含まれる請求項に記載の薄膜トランジスター。
【請求項6】
ゲート絶縁膜と、ソース及びドレイン電極との間に形成される活性層を備える薄膜トランジスターであって、
前記活性層は、
第1の金属酸化物薄膜と、
前記第1の金属酸化物薄膜とゲート絶縁膜との間に配設され、前記第1の金属酸化物薄膜よりも低い電気伝導度を有する第2の金属酸化物薄膜と、
前記第1の金属酸化物薄膜とソース及びドレイン電極との間に配設され、前記第1の金属酸化物薄膜よりも低い電気伝導度を有する第3の金属酸化物薄膜と、
を備え、
前記第1の金属酸化物薄膜は、インジウム(In)及び亜鉛(Zn)を含む第1の金属物質の酸化物から形成され、
前記第2の金属酸化物薄膜は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)を含む第2の金属物質の酸化物から形成され、
前記第3の金属酸化物薄膜は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)を含む第3の金属物質の酸化物から形成され、
前記第1の金属物質は、ガリウム(Ga)をさらに含み、
前記第1の金属酸化物薄膜におけるガリウム(Ga)は、前記活性層の全体に含まれるガリウム(Ga)に対して、20at%以上、且つ、60at%未満にて含まれる薄膜トランジスター。
【請求項7】
前記第2の金属酸化物薄膜の厚さは、前記第1の金属酸化物薄膜の厚さよりも薄く、
前記第3の金属酸化物薄膜の厚さは、前記第1の金属酸化物薄膜の厚さよりも厚い請求項に記載の薄膜トランジスター。
【請求項8】
前記第1の金属酸化物薄膜は、100Å以上、且つ、150Å未満の厚さに形成され、
前記第2の金属酸化物薄膜は、50Å未満の厚さに形成され、
前記第3の金属酸化物薄膜は、150Å以上、且つ、200Å未満の厚さに形成される請求項に記載の薄膜トランジスター。
【請求項9】
前記第1の金属酸化物薄膜は、第1の不純物がドープされた酸化亜鉛(ZnO)薄膜を備え、
前記第2の金属酸化物薄膜は、第1の不純物及び第2の不純物がドープされた酸化亜鉛(ZnO)薄膜を備え、
前記第3の金属酸化物薄膜は、第1の不純物及び第2の不純物がドープされた酸化亜鉛(ZnO)薄膜を備え、
前記第1の不純物は、インジウム(In)を含み、
前記第2の不純物は、ガリウム(Ga)及び錫(Sn)のうちの少なくとも一方を含む請求項1に記載の薄膜トランジスター。
【請求項10】
前記第1の金属酸化物薄膜には、第2の不純物がさらにドープされる請求項に記載の薄膜トランジスター。
【請求項11】
前記第2の金属酸化物薄膜と前記第1の金属酸化物薄膜との界面領域及び前記第1の金属酸化物薄膜と前記第3の金属酸化物薄膜との界面領域において、前記ガリウム(Ga)の含量は、漸進的に変わる請求項1または請求項に記載の薄膜トランジスター。
【請求項12】
前記第2の金属酸化物薄膜と前記第1の金属酸化物薄膜との界面領域及び前記第1の金属酸化物薄膜と前記第3の金属酸化物薄膜との界面領域において、前記ガリウム(Ga)の含量は、連続していない2つ以上の値を有する請求項1または請求項に記載の薄膜トランジスター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスターに係り、さらに詳しくは、金属酸化物薄膜を活性層として用いる薄膜トランジスターに関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor)は、半導体素子、液晶表示装置(Liquid Crystal Display;LCD)、有機エレクトロルミネセンス(EL:Electro Luminescence)表示装置などにおいて各画素をそれぞれ独立して駆動するための回路として用いられる。
【0003】
かような薄膜トランジスターは、表示装置の下部基板にゲートライン及びデータラインとともに形成される。すなわち、薄膜トランジスターは、ゲートラインの一部であるゲート電極、チャンネルとして用いられる活性層、データラインの一部であるソース電極とドレイン電極、並びにゲート絶縁膜などからできている。
【0004】
薄膜トランジスターの活性層は、ゲート電極とソース電極及びドレイン電極との間においてチャンネルの領域をなし、非晶質シリコン(Amorphous Silicon)または結晶質シリコン(Crystalline Silicon)を用いて形成していた。しかしながら、シリコンを用いた薄膜トランジスターの基板は、ガラス基板を用いることを余儀なくされるが故に重いだけではなく、撓まないが故に可撓性表示装置として利用できないという欠点がある。なお、高速素子の実現、すなわち、移動度(mobility)の向上のために、電荷の濃度(carrier concentration)が高く、しかも、電気伝導度に優れた結晶質薄膜を活性層に適用する必要性は次第に高くなってきており、このために、金属酸化物薄膜を活性層として用いる技術への取り組みが盛んに行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】大韓民国公開特許第10-2004-0013273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、金属酸化物薄膜を活性層として用いて、高い移動度を有するとともに、安定性を向上させることのできる薄膜トランジスターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る薄膜トランジスターは、ゲート絶縁膜とソース及びドレイン電極との間に形成される活性層を備える薄膜トランジスターであって、前記活性層は、第1の金属酸化物薄膜と、前記第1の金属酸化物薄膜とゲート絶縁膜との間に配設され、前記第1の金属酸化物薄膜よりも低い電気伝導度を有する第2の金属酸化物薄膜と、前記第1の金属酸化物薄膜とソース及びドレイン電極との間に配設され、前記第1の金属酸化物薄膜よりも低い電気伝導度を有する第3の金属酸化物薄膜と、を備える。
【0008】
前記第1の金属酸化物薄膜は、インジウム(In)及び亜鉛(Zn)を含む第1の金属物質の酸化物から形成され、前記第2の金属酸化物薄膜は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)を含む第2の金属物質の酸化物から形成され、前記第3の金属酸化物薄膜は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)を含む第3の金属物質の酸化物から形成されてもよい。
【0009】
前記第1の金属酸化物薄膜におけるインジウム(In)は、前記第1の金属物質の全体に対して、30at%以上、且つ、80at%未満にて含まれてもよい。
【0010】
前記第2の金属酸化物薄膜におけるガリウム(Ga)は、前記第2の金属物質の全体に対して、30at%以上、且つ、60at%未満にて含まれ、前記第3の金属酸化物薄膜におけるガリウム(Ga)は、前記第3の金属物質の全体に対して、30at%以上、且つ、60at%未満にて含まれてもよい。
【0011】
前記第3の金属酸化物薄膜は、前記第2の金属酸化物薄膜よりも低い電気伝導度を有していてもよい。
【0012】
前記第3の金属物質に含まれるガリウム(Ga)の量は、前記第2の金属物質に含まれるガリウム(Ga)の量よりも多くてもよい。
【0013】
前記第1の金属物質は、ガリウム(Ga)をさらに含み、前記第1の金属酸化物薄膜におけるガリウム(Ga)は、前記第1の金属物質の全体に対して30at%未満にて含まれてもよい。
【0014】
前記第1の金属酸化物薄膜におけるガリウム(Ga)は、前記活性層の全体に含まれるガリウム(Ga)に対して、20at%以上、且つ、60at%未満にて含まれてもよい。
【0015】
前記第2の金属酸化物薄膜の厚さは、前記第1の金属酸化物薄膜の厚さよりも薄く、前記第3の金属酸化物薄膜の厚さは、前記第1の金属酸化物薄膜の厚さよりも厚くてもよい。
【0016】
前記第1の金属酸化物薄膜は、100Å以上、且つ、150Å未満の厚さに形成され、
前記第2の金属酸化物薄膜は、50Å未満の厚さに形成され、記第3の金属酸化物薄膜は、150Å以上、且つ、200Å未満の厚さに形成されてもよい。
【0017】
前記第1の金属酸化物薄膜は、第1の不純物がドープされた酸化亜鉛(ZnO)薄膜を備え、前記第2の金属酸化物薄膜は、第1の不純物及び第2の不純物がドープされた酸化亜鉛(ZnO)薄膜を備え、前記第3の金属酸化物薄膜は、第1の不純物及び第2の不純物がドープされた酸化亜鉛(ZnO)薄膜を備え、前記第1の不純物は、インジウム(In)を含み、前記第2の不純物は、ガリウム(Ga)及び錫(Sn)のうちの少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0018】
前記第1の金属酸化物薄膜には、第2の不純物がさらにドープされてもよい。
【0019】
前記ガリウム(Ga)の含量は、漸進的に変わってもよい。
【0020】
前記ガリウム(Ga)の含量は、連続していない2つ以上の値を有していてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態に係る薄膜トランジスターによれば、活性層を構成する金属酸化物薄膜内のガリウムの割合を異ならせることにより、高速にて動作させることができ、しかも、安定性を向上させることができる。
【0022】
また、活性層を複数の金属酸化物薄膜層から形成する場合、活性層に含まれる複数の金属酸化物薄膜のガリウムの割合をそれぞれ異ならせることにより、高速にて動作させることができ、しかも、安定性を向上させることができる。
【0023】
すなわち、ゲート電極とソース及びドレイン電極との間において電荷の主な移動経路を形成する第1の金属酸化物薄膜の成分及び厚さを調節して移動度を向上させ、ゲート絶縁膜と第1の金属酸化物薄膜との間のインタフェースを形成する第2の金属酸化物薄膜及び第1の金属酸化物薄膜とソース及びドレイン電極との間のインタフェースを形成する第3の金属酸化物薄膜の成分及び厚さを調節して素子安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスターを概略的に示す図。
図2】本発明の一実施形態に係る活性層が金属酸化物薄膜を備える様子を示す図。
図3】本発明の他の実施形態に係る薄膜トランジスターを概略的に示す図。
図4】本発明の実施形態に係る薄膜トランジスターの製造に適用される蒸着装置を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化され、単にこれらの実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものである。
【0026】
明細書の全体に亘って、膜、領域または基板といったある構成要素が他の構成要素の「上に」位置すると言及するときには、前記ある構成要素が直接的に前記他の構成要素の「上に」接触されるか、または、これらの間に介在されるさらに他の構成要素が存在する可能性があると解釈されてもよい。
【0027】
また、「上部」または「下部」といった相対的な用語は、図示のごとく、他の要素に対するある要素の相対的な関係を述べるためにここで用いられてもよい。相対的な用語は、図中に描かれる方向に加えて、素子の他の方向を含むことを意図するものと理解されてもよい。ここで、発明を詳しく説明するために、図面は誇張されて示されてもよく、図中、同じ符号は、同じ要素を指し示す。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスターを概略的に示す図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る活性層が金属酸化物薄膜を備える様子を示す図である。
【0029】
図1及び図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスターは、ゲート絶縁膜120と、ソース及びドレイン電極140と、ゲート絶縁膜120とソース及びドレイン電極140との間に形成される活性層130と、を備える薄膜トランジスターであって、前記活性層130は、第1の金属酸化物薄膜130a、前記第1の金属酸化物薄膜130aとゲート絶縁膜120との間に配設され、前記第1の金属酸化物薄膜130aよりも低い電気伝導度を有する第2の金属酸化物薄膜130b及び前記第1の金属酸化物薄膜130aとソース及びドレイン電極140との間に配設され、前記第1の金属酸化物薄膜130aよりも低い電気伝導度を有する第3の金属酸化物薄膜130cを備える。
【0030】
ここで、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスターは、図1に示すように、基板100の上に形成されるゲート電極110と、ゲート電極110の上に形成されるゲート絶縁膜120と、ゲート絶縁膜120の上に形成される活性層130と、活性層130の上に互いに離れて形成されるソース及びドレイン電極140と、を備えるボトムゲート(bottom gate)型薄膜トランジスターであってもよい。
【0031】
基板100としては、透明基板を用いてもよく、例えば、シリコン基板、ガラス基板またはフレキシブル(flexible)ディスプレイを実現する場合にはプラスチック基板が用いられてもよい。また、基板100としては、反射型基板が用いられてもよく、この場合、メタル基板を用いてもよい。メタル基板は、ステンレス鋼(SUS)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)またはこれらの合金から形成されてもよい。一方、基板100としてメタル基板を用いる場合、メタル基板の上部に絶縁膜を形成することが好ましい。
【0032】
ゲート電極110は、導電物質を用いて形成してもよいが、例えば、アルミニウム(Al)、ネオジム(Nd)、銀(Ag)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)及び銅(Cu)のうちの少なくともいずれか一種の金属またはこれらを含む合金から形成してもよい。また、ゲート電極110は、単一層にだけではなく、複数の金属層からなる多重層に形成してもよい。すなわち、物理化学的な特性に優れたクロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)などの金属層と比抵抗の小さなアルミニウム(Al)系、銀(Ag)系または、銅(Cu)系の金属層を備える二重層から形成してもよい。
【0033】
ゲート絶縁膜120は、少なくともゲート電極110の上部に形成される。すなわち、ゲート絶縁膜120は、ゲート電極110の上部及び側部を含めた基板100の上に形成されてもよい。ゲート絶縁膜120は、金属物質への密着性に優れており、卓越した絶縁耐圧を有するシリコンオキシド(SiO)、シリコンニトリド(SiN)、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)をはじめとする無機絶縁膜のうちのいずれか一種またはそれ以上の絶縁物質を用いて形成してもよい。
【0034】
活性層130は、ゲート絶縁膜120とソース及びドレイン電極140との間に形成され、少なくとも一部がゲート電極110と重なり合うように形成される。ここで、活性層130は、単一の金属酸化物薄膜130から形成されてもよく、複数の金属酸化物薄膜から形成されてもよい。複数の金属酸化物薄膜の場合、第1の金属酸化物薄膜130a、第2の金属酸化物薄膜130b及び第3の金属酸化物薄膜130cを備える複数の金属酸化物薄膜から形成され、本発明の一実施形態によれば、ゲート絶縁膜120とソース及びドレイン電極140との間には第2の金属酸化物薄膜130bが形成され、ゲート絶縁膜120と第2の金属酸化物薄膜130bとの間には第1の金属酸化物薄膜130aが形成され、第1の金属酸化物薄膜130aとソース及びドレイン電極140との間には第3の金属酸化物薄膜130cが形成されてもよい。
【0035】
ここで、第2の金属酸化物薄膜130b及び第3の金属酸化物薄膜130cは、第1の金属酸化物薄膜130aよりも低い電気伝導度を有していてもよい。さらに詳しくは、第2の金属酸化物薄膜130b及び第3の金属酸化物薄膜130cは、第1の金属酸化物薄膜130aよりも高い抵抗値を有し、これにより、第2の金属酸化物薄膜130b及び第3の金属酸化物薄膜130cは、第1の金属酸化物薄膜130aよりも低い電気伝導度を有していてもよい。これらの第1の金属酸化物薄膜130a、第2の金属酸化物薄膜130b及び第3の金属酸化物薄膜130cの電気伝導度は、第1の金属酸化物薄膜130a、第2の金属酸化物薄膜130b及び第3の金属酸化物薄膜130cにそれぞれ含有される金属元素の種類及び含量と、各金属酸化物薄膜の厚さを制御して調節されてもよい。
【0036】
ここで、第1の金属酸化物薄膜130aは、ゲート電極110とソース及びドレイン電極140との間において主チャンネル(main channel)を形成する。第1の金属酸化物薄膜130aは、ゲート電極110に電圧が加えられる場合、活性層130内において電荷の主な移動経路を形成するため、移動度(mobility)を向上させるために相対的に高めの電気伝導度を有する必要がある。
【0037】
一方、第2の金属酸化物薄膜130bは、ゲート絶縁膜120と第1の金属酸化物薄膜130aとの間のインタフェースを形成する。また、第2の金属酸化物薄膜130bは、ゲート絶縁膜120の内部に含まれている水素(H)イオンが第1の金属酸化物薄膜130aに拡散することを防ぐ役割を果たす。すなわち、薄膜トランジスターを製造するに当たって、使用材料及び工程の仕方に応じて、薄膜内に水素(H)イオンが必ず存在することになるが、このような水素(H)イオンは、活性層130の内部における空き領域を埋めて駆動の安定性を確保するというメリットもあるものの、ゲート絶縁膜120から過剰の水素(H)イオンが拡散する場合、界面電荷特性を悪化させるという不都合を引き起こす。このため、第2の金属酸化物薄膜130bは、向上した安定性(stability)を有することが求められ、第1の金属酸化物薄膜130aに比べて低い電気伝導度を有する必要がある。
【0038】
第3の金属酸化物薄膜130cは、第1の金属酸化物薄膜130aとソース及びドレイン電極140との間のインタフェースを形成する。また、第3の金属酸化物薄膜130cは、外部の環境から浸透する水素(H)イオン及び水酸化(OH)イオンを遮へいする役割を果たす。このような第3の金属酸化物薄膜130cは、チャンネルの形成に伴う導体化を防ぐためのものであり、このために、第3の金属酸化物薄膜130cは、高い安定性を有することが求められ、第1の金属酸化物薄膜130aに比べて低い電気伝導度を有する必要がある。
【0039】
このとき、第2の金属酸化物薄膜130bは、第3の金属酸化物薄膜130cよりも高い電気伝導度を有していてもよい。前述したように、第2の金属酸化物薄膜130bは、ゲート絶縁膜120と隣り合う個所に配設される。したがって、第2の金属酸化物薄膜130bには、ゲート電極110に電圧が加えられることにより電荷が蓄積され、これにより、第1の金属酸化物薄膜130aを介した電荷の主な移動経路が形成されるため、第2の金属酸化物薄膜130bは、第3の金属酸化物薄膜130cよりも高い電気伝導度を有するように形成する。また、第3の金属酸化物薄膜130cは、薄膜トランジスターの導体化と深い関連性がある。すなわち、第3の金属酸化物薄膜130cの電気伝導度が高い場合、活性層130は、ゲート電極110の電圧の印加とは無関係に、ソース及びドレイン電極140の間において電荷の移動通路を形成してしまうという不都合があるため、第3の金属酸化物薄膜130cの抵抗は、第2の金属酸化物薄膜130bに比べて高い値を有することが必要である。
【0040】
ここで、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスターは、第1の金属酸化物薄膜103a、第2の金属酸化物薄膜130b及び第3の金属酸化物薄膜130cの電気伝導度を各金属酸化物薄膜に含有される金属元素の種類及び含量を制御して調節してもよい。
【0041】
インジウム(In)は、バンドギャップ(band gap)が相対的に低く、標準電極電位(standard electrode potential)が相対的に高い金属であって、抵抗を下げ、しかも、電気伝導度を増やして移動度を向上させるという特徴がある。これに対し、ガリウム(Ga)は、バンドギャップが相対的に高く、標準電極電位が相対的に高い金属であって、抵抗を上げ、しかも、電気伝導度を減らして安定性を向上させるという特徴がある。
【0042】
したがって、第1の金属酸化物薄膜130aは、移動度を向上させるべく、インジウム(In)及び亜鉛(Zn)を含有するか、あるいは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)を含有する第1の金属物質の酸化物から形成されてもよく、第2の金属酸化物薄膜130bは、安定性を向上させるべく、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)を含有する第2の金属物質の酸化物から形成されてもよく、第3の金属酸化物薄膜130bは、安定性を向上させるべく、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)を含有する第3の金属物質の酸化物から形成されてもよい。
【0043】
すなわち、第1の金属酸化物薄膜130aは、インジウム(In)がドープされるか、あるいは、インジウム(In)及びガリウム(Ga)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)薄膜を備え、第2の金属酸化物薄膜130bは、インジウム(In)及びガリウム(Ga)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)薄膜を備え、第3の金属酸化物薄膜130bは、インジウム(In)及びガリウム(Ga)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)薄膜を備えていてもよい。ここで、インジウム(In)または、ガリウム(Ga)は、不純物であって、酸化亜鉛(ZnO)薄膜にドープされてもよく、酸化亜鉛(ZnO)薄膜にドープされるガリウム(Ga)は、少なくとも一部またはすべてが錫(Sn)に置き換えられてもよい。以下では、第2の金属酸化物薄膜130b及び第3の金属酸化物薄膜130bにガリウム(Ga)が含有される実施形態に重点をおいて説明するが、錫(Sn)が含有される場合であっても、下記の内容がそのまま適用可能であるということはいうまでもない。
【0044】
さらに詳しくは、第1の金属酸化物薄膜130aは、インジウム-亜鉛酸化物(IZO;In-Zn-O)またはインジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO;In-Ga-Zn-O)を含んでいてもよく、前記第2の金属酸化物薄膜130b及び第3の金属酸化物薄膜130cは、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO;In-Ga-Zn-O)を含んでいてもよい。
【0045】
第1の金属酸化物薄膜130aは、インジウム(In)と亜鉛(Zn)を含んでいてもよい。第1の金属酸化物薄膜130aにおけるインジウム(In)は、第1の金属物質の全体に対して、30at%(atomic %)以上、且つ、80at%未満にて含まれてもよい。ここで、インジウム(In)が30at%未満にて含有されれば、電気伝導度が減って移動度が低下され、インジウム(In)が80at%以上にて含有されれば、電気伝導度が余計に増えて漏れ電流(leakage current)及びオフ電流(off current)が増えてしまうという不都合がある。このため、第1の金属酸化物薄膜130aにおけるインジウム(In)は、第1の金属物質の全体に対して、30at%以上、且つ、80at%未満の範囲内の値をもって含まれてもよく、前記範囲内において連続していない値を有する少なくとも2つ以上の含量にて含まれてもよく、あるいは、前記範囲内において含量が連続して異なってきてもよい。この場合、向上した移動度を有するとともに、漏れ電流及びオフ電流が最小化されることが可能になる。
【0046】
ここで、第1の金属酸化物薄膜を形成する第1の金属物質がインジウム(In)及び亜鉛(Zn)を含む場合、亜鉛(Zn)は、第1の金属物質の全体に対して、20~70at%(atomic %)にて含まれてもよい。
【0047】
また、第1の金属酸化物薄膜130aを形成する第1の金属物質は、ガリウム(Ga)をさらに含んでいてもよい。すなわち、第1の金属酸化物薄膜130aは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)を含有する第1の金属物質の酸化物から形成されてもよく、このとき、第1の金属酸化物薄膜130aにおけるガリウム(Ga)は、前記第1の金属酸化物薄膜130aにおける前記第1の金属物質の全体に対して、30at%未満にて含まれてもよい。第1の金属物質におけるガリウム(Ga)は、安定性を向上させるために含まれ、第1の金属物質の全体に対して、ガリウム(Ga)の含量が30at%以上になると、抵抗が過剰に上がってしまうため、第1の金属酸化物薄膜130aにおけるガリウム(Ga)は、第1の金属物質の全体に対して、0at%超え、且つ、30at%未満にて含まれればよい。一方、安定性を向上させるとともに、主チャンネルを形成する第1の金属酸化物薄膜130aの電気伝導度を保つために、第1の金属物質に含まれるガリウム(Ga)は、前記活性層130の全体に含まれるガリウム(Ga)に対して、20at%以上、且つ、60at%未満にて含まれてもよく、前記範囲内において連続していない値を有する少なくとも2つ以上の含量にて含まれてもよく、前記範囲内において含量が連続して異なってきてもよい。上記の内容は、第1の金属酸化物薄膜130aがガリウム(Ga)の代わりに錫(Sn)をさらに含有する場合であっても、同様に適用可能である。
【0048】
一方、第2の金属酸化物薄膜130bにおけるガリウム(Ga)は、第2の金属酸化物薄膜130bにおける第2の金属物質の全体に対して、30at%以上、且つ、60at%未満にて含まれてもよい。ここで、ガリウム(Ga)が30at%未満にて含有されれば、負バイアス温度不安定性(NBTS:Negative Bias Temperature Instability)、正バイアス温度不安定性(PBTI:Positive Bias Temperature Instability)などといった安定性と関わる特性が低下してしまうという不都合があり、ガリウム(Ga)が60at%以上にて含有されれば、多孔性(porous)の膜質を形成してしまう結果、表面粗さの増加及び移動度の著しい低下が招かれてしまうという不都合がある。このため、第2の金属酸化物薄膜130bにおけるガリウム(Ga)は、第2の金属物質の全体に対して、30at%以上、且つ、60at%未満の範囲内の値をもって含まれてもよく、前記範囲内において連続していない値を有する少なくとも2つ以上の含量にて含まれてもよく、あるいは、前記範囲内において含量が連続して異なってきてもよく、この場合、素子の安定性を向上させることができる。
【0049】
さらに、第3の金属酸化物薄膜130cにおけるガリウム(Ga)は、第3の金属酸化物薄膜130cにおける第3の金属物質の全体に対して、30at%以上、且つ、60at%未満にて含まれてもよい。ここで、ガリウム(Ga)が30at%未満にて含有されれば、薄膜トランジスターが導体化し易いという不都合があり、ガリウム(Ga)が60at%以上にて含有されれば、多孔性(porous)の膜質を形成してしまう結果、表面粗さの増加及び移動度の著しい低下が招かれてしまうという不都合がある。ここで、ガリウム(Ga)が30at%以上60at%未満の範囲内において連続していない値を有する少なくとも2つ以上の含量にて含まれれば、あるいは、前記範囲内において含量が連続して異なってくるように含まれれば、薄膜トランジスターの活性層130の導体化を防ぎながらも、素子の安定性を向上させることができるということは上述した通りである。
【0050】
前記第3の金属酸化物薄膜130cにおける第3の金属物質に含まれるガリウム(Ga)の量は、前記第2の金属酸化物薄膜130bにおける第2の金属物質に含まれるガリウム(Ga)の量よりも多くてもよい。前述したように、前記第2の金属酸化物薄膜130bは、前記第3の金属酸化物薄膜130cよりも高い電気伝導度を有するように形成する。ここで、ガリウム(Ga)は、抵抗を上げ、しかも、電気伝導度を減らして安定性を向上させるという特徴があるため、前記第3の金属酸化物薄膜130cにおける第3の金属物質に含まれるガリウム(Ga)の量の方を前記第2の金属酸化物薄膜130bにおける第2の金属物質に含まれるガリウム(Ga)の量よりも多くして、相対的に前記第3の金属酸化物薄膜130cの安定性を前記第2の金属酸化物薄膜130bに比べて向上させ、薄膜トランジスターの導体化を防ぐことができる。
【0051】
一方、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスターは、第1の金属酸化物薄膜130a、第2の金属酸化物薄膜130b及び第3の金属酸化物薄膜130cの電気伝導度を各金属酸化物薄膜の厚さを制御して調節してもよい。
【0052】
さらに詳しくは、第1の金属酸化物薄膜130aの電気伝導度は、前記第1の金属酸化物薄膜130aを形成する第1の金属物質に含有されるインジウム(In)の含量を調節して制御されてもよい。また、第2の金属酸化物薄膜130b及び第3の金属酸化物薄膜130cの電気伝導度は、前記第2の金属酸化物薄膜130b及び前記第3の金属酸化物薄膜130cの厚さを制御して制御されてもよい。このために、前記第2の金属酸化物薄膜130bの厚さd2は、前記第1の金属酸化物薄膜130aの厚さd1よりも薄く、前記第3の金属酸化物薄膜130cの厚さd3は、前記第1の金属酸化物薄膜130aの厚さd1よりも厚くてもよい。
【0053】
第1の金属酸化物薄膜130aは、ゲート電極110とソース及びドレイン電極140との間において主チャンネルを形成し、第2の金属酸化物薄膜130b及び第3の金属酸化物薄膜130cは、素子の安定性のためのものであって、前記第1の金属酸化物薄膜130aは、前記第2の金属酸化物薄膜130b及び前記第3の金属酸化物薄膜130cに比べてインジウム(In)の含量を増やし、ガリウム(Ga)が含まれる場合、ガリウム(Ga)の含量を減らして低い抵抗値と高い電気伝導度を有するように制御される。
【0054】
これに対し、前記第2の金属酸化物薄膜130bは、素子の安定性のためのものであるが、前記第2の金属酸化物薄膜130bは、ゲート絶縁膜120と隣り合う個所に配設されるため、所定のレベル以上の電気伝導度を有する必要がある。このため、前記第2の金属酸化物薄膜130は、前記第1の金属酸化物薄膜130aに比べてインジウム(In)の含量を減らし、ガリウム(Ga)の含量を増やすとともに、前記第2の金属酸化物薄膜130bの厚さd2を第1の金属酸化物薄膜130aの厚さd1よりも薄く形成して、所定のレベル以上の電気伝導度を有するようにする。
【0055】
また、前記第3の金属酸化物薄膜130cは、前記第2の金属酸化物薄膜130bと同様に、素子の安定性のためのものであるが、前記第3の金属酸化物薄膜130cの電気伝導度が高い場合、薄膜トランジスターは導体化されてしまうという不都合があるため、前記第3の金属酸化物薄膜130cは、前記第1の金属酸化物薄膜130aに比べてインジウム(In)の含量を減らし、ガリウム(Ga)の含量を増やすとともに、前記第3の金属酸化物薄膜130cの厚さd3を前記第1の金属酸化物薄膜130aの厚さd1よりも厚く形成して抵抗を上げ、素子の安定性を確保する。前記第1の金属酸化物薄膜130aは、100Å以上、且つ、150Å未満の厚さに形成されてもよく、前記第2の金属酸化物薄膜130bは、50Å未満の厚さに形成されてもよく、前記第3の金属酸化物薄膜130cは、150Å以上、且つ、200Å未満の厚さに形成されてもよい。
【0056】
ソース及びドレイン電極140は、活性層130の上部に形成され、ゲート電極110と一部が重なり合ってゲート電極110を間に挟んでソース電極とドレイン電極とが互いに離れて形成される。ソース及びドレイン電極140bは、互いに同一の物質を用いた同一の工程により形成してもよく、導電性物質を用いて形成してもよいが、例えば、アルミニウム(Al)、ネオジム(Nd)、銀(Ag)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)及びモリブデン(Mo)のうちの少なくともいずれか一種の金属またはこれらを含む合金から形成してもよい。すなわち、ゲート電極110と同じ物質から形成してもよいが、ゲート電極110とは異なる物質から形成してもよい。なお、ソース及びドレイン電極140は、単一層にだけではなく、複数の金属層の多重層に形成してもよい。
【0057】
図3は、本発明の他の実施形態に係る薄膜トランジスターを概略的に示す図である。
【0058】
図3を参照すると、本発明の他の実施形態に係る薄膜トランジスターは、基板100の上に互いに離れて形成されるソース及びドレイン電極140と、ソース及びドレイン電極の上に形成される活性層130と、活性層の上に形成されるゲート絶縁膜120と、ゲート絶縁膜の上に形成されるゲート電極110と、を備えるトップゲート(top gate)型薄膜トランジスターであってもよい。
【0059】
このようなトップゲート(top gate)型薄膜トランジスターの場合であっても、図1及び図2と結び付けて前述した内容がそのまま適用可能である。すなわち、本発明の他の実施形態に係る薄膜トランジスターの場合であっても、活性層130は、複数の金属酸化物薄膜から形成されてもよく、この場合、ソース及びドレイン電極140と第1の金属酸化物薄膜130aとの間には第3の金属酸化物薄膜130cが位置し、ゲート絶縁膜120と第1の金属酸化物薄膜130aとの間には第2の金属酸化物薄膜130bが位置することになる。このように、本発明の他の実施形態に係る薄膜トランジスターの場合であっても、金属酸化物薄膜の積層順番のみに相違点があるだけであり、前述した本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスターにおいて述べた内容がそのまま適用可能であるため、重複する説明は省略する。
【0060】
図4は、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスターの製造に適用される蒸着装置を概略的に示す図である。
【0061】
図4を参照すると、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスターは、化学気相蒸着工程(CVD)または原子層蒸着工程(ALD)を行ったり、化学気相蒸着工程(CVD)及び原子層蒸着工程(ALD)をこの順に行ったりして、複数の金属酸化物薄膜を同じ反応チャンバー内において形成できる蒸着装置によって製造される。
【0062】
本発明の実施形態に用いられる蒸着装置は、所定の反応空間が設けられた反応チャンバー300と、反応チャンバー300の内部の下側に設けられたサセプター310と、反応チャンバー300の内部の上側にサセプター310と対応するように設けられた噴射器320と、インジウム(In)ガスを供給するための第1の原料ガス供給部330と、ガリウム(Ga)ガスを供給するための第2の原料ガス供給部340と、亜鉛(Zn)ガスを供給するための第3の原料ガス供給部350と、酸素(O)ガスを供給するための反応ガス供給部360と、を備える。ここで、反応ガスとしては、酸素(O)を含む物質を用いてもよく、O、NO、COをプラズマ状態に励起させて用いてもよく、Oを用いてもよいということはいうまでもない。なお、図示はしないが、蒸着装置は、不活性ガスなどのパージガスを供給するパージガス供給部をさらに備えていてもよい。
【0063】
ここで、第1、第2及び第3の原料ガス供給部330、340、350は、各原料物質を貯留する原料物質貯留部332、342、352と、原料物質を気化させて原料ガスを生成するバブラー334、344、354及び原料物質の供給経路を形成する原料物質供給配管336、346、356を備えていてもよい。また、反応ガス供給部360は、反応物質を貯留する反応物質貯留部362及び反応物質の供給経路を形成する反応物質供給配管366を備え、反応物質としてHOなどを用いる場合、バブラーをさらに備えていてもよい。一方、サセプター310は、ヒーター(図示せず)及び冷却手段(図示せず)が組み込まれて基板100を所望の工程温度に保つことができる。ここで、基板100の上には、ゲート電極、ゲート絶縁膜などが形成されてもよく、サセプター310の上には、少なくとも一枚の基板100が載置されてもよい。
【0064】
ここで、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスターの第1の金属酸化物薄膜330aは、前記の蒸着装置を用いて、化学気相蒸着工程(CVD)または原子層蒸着工程(ALD)によって形成してもよく、第2の金属酸化物薄膜130b及び第3の金属酸化物薄膜130cもまた、前記の蒸着装置を用いて、化学気相蒸着工程(CVD)または原子層蒸着工程(ALD)によって形成してもよい。一方、第1の金属酸化物薄膜330aは、上記の蒸着装置を用いて化学気相蒸着工程(CVD)によって形成してもよく、第2の金属酸化物薄膜130b及び第3の金属酸化物薄膜130cもまた、上記の蒸着装置を用いて原子層蒸着工程(ALD)によって形成してもよいということはいうまでもない。本発明の実施形態に係る薄膜トランジスターは、活性層130を化学気相蒸着工程または原子層蒸着工程によって形成することにより、均一な膜質を保ちながらも、薄膜を蒸着することが可能になり、原料ガス及び反応ガスの供給量を調節することにより手軽に多層構造の活性層を形成することができる。
【0065】
このとき、この順に積層される第2の金属酸化物薄膜130b、第1の金属酸化物薄膜130a及び第3の金属酸化物薄膜130cに対して、前記第2の金属酸化物薄膜130bと前記第1の金属酸化物薄膜130aとの界面領域及び前記第1の金属酸化物薄膜130aと前記第3の金属酸化物薄膜130cとの界面領域においては、インジウム(In)またはガリウム(Ga)の含量が漸進的に増減してもよい。また、前記第2の金属酸化物薄膜130bと前記第1の金属酸化物薄膜130a及び前記第3の金属酸化物薄膜130cのそれぞれの薄膜内において、インジウム(In)またはガリウム(Ga)の含量が不連続してまたは漸進的に増減してもよい。本発明の実施形態においては、活性層130を化学気相蒸着工程または原子層蒸着工程などの蒸着工程を用いて形成するためであり、形成される薄膜の種類に応じてターゲットを変えなければならないスパッターリング工程によって活性層130を形成する場合には、このような含量の変化が起こらない。
【0066】
例えば、第1の金属酸化物薄膜130aがインジウム-亜鉛酸化物(IZO)を含む場合、第1の原料ガス供給部330及び第3の原料ガス供給部350を介してインジウム(In)ガス及び亜鉛(Zn)ガスを供給し、反応ガス供給部360を介して酸素(O)ガスを反応チャンバー300に供給してもよい。このとき、化学気相蒸着工程においては、原料ガス及び反応ガスを前記反応チャンバー300に同時に供給する。また、原子層蒸着工程においては、原料ガスを前記反応チャンバー300に供給して基板100の上に原料物質を吸着させる。そして、原料ガスの供給を止め、不活性ガスなどのパージガスを供給して未吸着の原料ガスをパージする。次いで、反応ガス供給部360を介して酸素(O)ガスを前記反応チャンバー300内に供給して前記基板100の上に吸着された原料物質を酸化させて原子層の金属酸化物薄膜を形成する。なお、反応ガスの供給を止め、不活性ガスなどのパージガスを前記反応チャンバー300内に供給して未反応の反応ガスをパージする。このような原料ガスの供給及びパージ、反応ガスの供給及びパージのサイクルを複数回繰り返し行って所定の厚さの金属酸化物薄膜を形成することになる。
【0067】
一方、第1の金属酸化物薄膜130aがインジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO)を含む場合や、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO)を含む第2の金属酸化物薄膜130b及び第3の金属酸化物薄膜130cの場合、原料ガスとしてインジウム(In)ガス、ガリウム(Ga)ガス及び亜鉛(Zn)ガスを用いるというところ及びその供給量にのみ相違点があるため、重複する説明は省略する。
【0068】
ここで、第1の金属酸化物薄膜130a、第2の金属酸化物薄膜130b及び第3の金属酸化物薄膜130cを形成する工程は、同じ反応チャンバー200内において行われてもよい。また、前述したボトムゲート(bottom gate)型薄膜トランジスターを形成するためには、ソース及びドレイン電極140の上に第3の金属酸化物薄膜130cを形成し、第2の金属酸化物薄膜130bを形成した後、第1の金属酸化物薄膜130aを形成するというところにのみ相違点があるため、重複する説明は省略する。
【0069】
このように、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスターによれば、活性層130に含まれる複数の金属酸化物薄膜130a、103b、130cの電気伝導度を互いに異なるように調節することにより、高速にて動作させることができ、しかも、安定性を向上させることができる。
【0070】
すなわち、ゲート電極110とソース及びドレイン電極140との間において電荷の主な移動経路を形成する第1の金属酸化物薄膜130aの成分及び厚さを調節して移動度を向上させ、ゲート絶縁膜120と第1の金属酸化物薄膜130aとの間のインタフェースを形成する第2の金属酸化物薄膜130b及び第1の金属酸化物薄膜130aとソース及びドレイン電極140との間のインタフェースを形成する第3の金属酸化物薄膜130cの成分及び厚さを調節して素子の安定性を向上させることができる。
【0071】
以上、本発明の好適な実施形態が特定の用語を用いて説明及び図示されたが、これらの用語は、単に本発明を明確に説明するためのものに過ぎず、本発明の実施形態及び記述された用語は、特許請求の範囲の技術的思想及び範囲から逸脱することなく、種々の変更及び変化が加えられるということは明らかである。これらの変形された実施形態は、本発明の思想及び範囲から個別的に理解されてはならず、本発明の特許請求の範囲内に属するものといえるべきである。
図1
図2
図3
図4