(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06V 40/19 20220101AFI20241126BHJP
【FI】
G06V40/19
(21)【出願番号】P 2022104241
(22)【出願日】2022-06-29
(62)【分割の表示】P 2020118392の分割
【原出願日】2015-05-21
【審査請求日】2022-06-29
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】清水 公人
【合議体】
【審判長】高橋 宣博
【審判官】樫本 剛
【審判官】圓道 浩史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/058514(WO,A1)
【文献】特開2006-48266(JP,A)
【文献】特開2003-333388(JP,A)
【文献】特開2011-118452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06V 40/10 - 40/19
G06T 1/00 - 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラと人体の眼とを結ぶ直線上にあるフィルタを介して前記人体の生体情報を前記カメラに読み取らせる第1の状態から、前記カメラと前記人体の眼とを結ぶ直線上にある前記フィルタを介して前記人体の生体情報を前記カメラに読み取らせる
状態であって、前記フィルタを介して前記カメラに読み取られる前記人体の生体情報が、前記第1の状態よりも
少ない第2の状態へと
、前記フィルタの状態を切り替え可能であり、
前記フィルタを介して前記カメラに読み取られる前記人体の生体情報は、あらかじめ取得されて記憶されている照合用生体情報と照合される生体情報である、
装置。
【請求項2】
装置が、
カメラと人体の眼とを結ぶ直線上にあるフィルタを介して前記人体の生体情報を前記カメラに読み取らせる第1の状態から、前記カメラと前記人体の眼とを結ぶ直線上にある前記フィルタを介して前記人体の生体情報を前記カメラに読み取らせる
状態であって、前記フィルタを介して前記カメラに読み取られる前記人体の生体情報が、前記第1の状態よりも
少ない第2の状態へと
、前記フィルタの状態を切り替え可能であり、
前記フィルタを介して前記カメラに読み取られる前記人体の生体情報は、あらかじめ取得されて記憶されている照合用生体情報と照合される生体情報である、
方法。
【請求項3】
コンピュータに、
カメラと人体の眼とを結ぶ直線上にあるフィルタを介して前記人体の生体情報を前記カメラに読み取らせる第1の状態から、前記カメラと前記人体の眼とを結ぶ直線上にある前記フィルタを介して前記人体の生体情報を前記カメラに読み取らせる
状態であって、前記フィルタを介して前記カメラに読み取られる前記人体の生体情報が、前記第1の状態よりも
少ない第2の状態へと
、前記フィルタの状態を切り替える機能
を実現させ、
前記フィルタを介して前記カメラに読み取られる前記人体の生体情報は、あらかじめ取得されて記憶されている照合用生体情報と照合される生体情報である、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体認証において、生体情報を読み取る際のオリジナルの生体情報の盗難を防ぐ、生体情報変更フィルタ、プログラムおよび生体認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体情報を用いて認証を行う生体認証には、高い精度での本人確認が可能であり、また、紛失リスクがないというメリットがある。
【0003】
しかし、生体情報自体は変更することがほぼ不可能である。一般的な生体認証では、生体情報を読み取る生体情報読取装置に指、眼球等の人体部位をかざして生体情報を読み取らせる。その際、銀行のATM(Automated Teller Machine)におけるキャッシュカードのスキミングと同様に、悪意のある生体情報読取装置に生体情報を盗み取られてしまう可能性がある。生体情報を盗難された場合、生体情報は変更がほぼ不可能なため、その生体情報を用いた生体認証の利用が困難になってしまう。
【0004】
生体情報の盗難による不正認証を防ぐ方法として、特許文献1に記載の方法では、生体情報を加工して生体情報読取装置に表示している。この方法では、加工した生体情報を生体情報読取装置に表示するため、表示画面から生体情報を盗み取られても、盗み取った生体情報で認証を行うことができず、不正認証を防ぐことができる。
【0005】
また、特許文献2に記載の方法では、生体情報を加工したテンプレートを基に認証を行っている。この方法では、生体認証装置からテンプレートを盗み取られても、オリジナルの生体情報とは異なるため、テンプレートを変更することで、不正認証を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-046677号公報
【文献】特開2007-293807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1あるいは特許文献2に記載の方法では、生体情報読取装置が読み取る生体情報はオリジナルの生体情報である。そのため、上述のように、悪意のある生体情報読取装置に、オリジナルの生体情報を盗み取られてしまう可能性がある。オリジナルの生体情報を盗難されてしまうと、生体情報を偽造することで不正認証が可能となってしまい、また、オリジナルの生体情報の変更はほぼ不可能なため、その後、盗難された生体情報を用いた生体認証の利用が困難になってしまう。
【0008】
本発明の目的は、生体認証において、生体情報を読み取る際のオリジナルの生体情報の盗難を防ぐ、生体情報変更フィルタ、プログラムおよび生体認証方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1側面による装置は、カメラと人体の眼とを結ぶ直線上にあるフィルタを介して前記人体の生体情報を前記カメラに読み取らせる第1の状態から、前記カメラと前記人体の眼とを結ぶ直線上にある前記フィルタを介して前記人体の生体情報を前記カメラに読み取らせる、前記第1の状態よりも生体認証が困難な第2の状態へと切り替え可能である。
【0010】
本発明の他の側面による装置は、電子化された前記生体情報に関する第1の電子生体情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記第1の電子生体情報を、所定の関数を用いて、前記第1の電子生体情報よりも生体認証が困難な第2の電子生体情報へと変換する変換部と、前記変換部が変換した前記第2の電子生体情報を外部に出力する出力部と、を備える。
【0011】
本発明の他の側面による方法は、カメラと人体の眼とを結ぶ直線上にあるフィルタを介して前記人体の生体情報を前記カメラに読み取らせる第1の状態から、前記カメラと前記人体の眼とを結ぶ直線上にある前記フィルタを介して前記人体の生体情報を前記カメラに読み取らせる、前記第1の状態よりも生体認証が困難な第2の状態へと切り替え可能である。
【0012】
本発明の他の側面による方法は、電子化された前記生体情報に関する第1の電子生体情報を取得し、取得した前記第1の電子生体情報を、所定の関数を用いて、前記第1の電子生体情報よりも生体認証が困難な第2の電子生体情報へと変換し、変換した前記第2の電子生体情報を外部に出力する。
【0013】
本発明の他の側面によるプログラムは、コンピュータに、カメラと人体の眼とを結ぶ直線上にあるフィルタを介して前記人体の生体情報を前記カメラに読み取らせる第1の状態から、前記カメラと前記人体の眼とを結ぶ直線上にある前記フィルタを介して前記人体の生体情報を前記カメラに読み取らせる、前記第1の状態よりも生体認証が困難な第2の状態へと切り替える機能を実現させる。
【0014】
本発明の他の側面によるプログラムは、コンピュータに、電子化された前記生体情報に関する第1の電子生体情報を取得し、取得した前記第1の電子生体情報を、所定の関数を用いて、前記第1の電子生体情報よりも生体認証が困難な第2の電子生体情報へと変換し、変換した前記第2の電子生体情報を外部に出力する機能を実現させる。
【0015】
本発明の他の側面による生体情報変更プログラムは、カメラが人体から読み取る生体情報を変更するための生体情報変更部材に関し、コンピュータに、当該生体情報変更部材を介して、前記カメラに前記生体情報の全部を読み取らせる第1の状態から、前記カメラに前記生体情報の少なくとも一部を読み取らせない第2の状態とを切り替える機能を実現させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の生体情報変更フィルタ、プログラムおよび生体認証方法により、生体認証において、生体情報を読み取る際のオリジナルの生体情報の盗難を防ぐことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第一および第二の実施形態の生体情報変更フィルタの構成例を示す図である。
【
図2】本発明の第一および第二の実施形態の生体情報変更フィルタの動作例を示す図である。
【
図3】本発明の第二の実施形態の生体認証システムの構成例を示す図である。
【
図4】本発明の第二の実施形態の生体認証システムの構成例を示す図である。
【
図5】本発明の第二の実施形態の生体認証システムの構成要素の例を示す図である。
【
図6】本発明の第二の実施形態の生体情報変更フィルタの具体例を示す図である。
【
図7】生体情報読取装置の読取情報の例を示す図である。
【
図8】本発明の第二の実施形態の生体情報読取装置の読取情報の例を示す図である。
【
図9】本発明の第二の実施形態の生体認証装置の動作例を示す図である。
【
図10】本発明の第三の実施形態の生体情報変更フィルタの構成例を示す図である。
【
図11】本発明の第三の実施形態の生体情報変更フィルタの構成要素の例を示す図である。
【
図12】本発明の第三の実施形態の生体情報変更フィルタの構成要素の例を示す図である。
【
図13】本発明の第三の実施形態の生体情報変更フィルタの動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第一の実施形態]
本発明の第一の実施の形態について説明する。
【0019】
図1に本実施形態の生体情報変更フィルタ10の構成例を示す。
【0020】
生体情報変更フィルタ10は、変更部11および出力部12により構成される。
【0021】
変更部11は、生体情報を変更後情報へ、生体情報の集合から変更後情報の集合への写像が全射となる変更を行う部分である。なお、変更後情報の集合の要素の数は複数である。
【0022】
出力部12は、生体情報を読み取る装置へ変更後情報を出力する部分である。
【0023】
このように生体情報変更フィルタ10を構成することによって、生体情報を読み取る装置が生体情報を読み取る際のオリジナルの生体情報の盗難を防ぐことが可能になる。
【0024】
次に、
図2に本実施形態の生体情報変更フィルタ10の動作の例を示す。
【0025】
生体情報変更フィルタ10は、生体情報を変更後情報へ、生体情報の集合から変更後情報の集合への写像が全射となる変更を行う(ステップS101)。
【0026】
そして、生体情報を読み取る装置へ変更後情報を出力する(ステップS102)。
【0027】
このように生体情報変更フィルタ10を動作させることによって、生体情報を読み取る装置が生体情報を読み取る際のオリジナルの生体情報の盗難を防ぐことが可能になる。
【0028】
以上で説明したように、本発明の第一の実施形態では、生体情報変更フィルタが、生体情報を読み取る装置が読み取る生体情報を変更する。そのため、生体認証において、生体情報を読み取る際のオリジナルの生体情報の盗難を防ぐことが可能になる。
【0029】
また、悪意のある生体情報読取装置が生体情報(変更後情報)を盗み取ったとしても、生体情報変更フィルタの変更方法を更新することで、生体情報の盗難による不正認証を防ぐことが可能になる。
【0030】
[第二の実施形態]
次に、本発明の第二の実施の形態について説明する。
【0031】
本実施形態の生体情報変更フィルタ10の構成例および動作例は、第一の実施形態(
図1、
図2)と同様である。
【0032】
本実施形態では、第一の実施形態の生体情報変更フィルタ10について、生体情報が指静脈画像である場合を例に、具体的に説明する。
【0033】
図3に本実施形態の生体認証システムのシステム構成例を示す。本システム構成例は、生体情報変更フィルタ10、生体情報読取装置30および生体認証装置40により構成される。銀行のATMの場合、生体情報読取装置30はATM端末、生体認証装置40はATM端末で取得した生体情報の認証を行う装置に該当し、生体情報読取装置30は一台の生体認証装置40に対して複数存在することが可能である。
【0034】
生体情報変更フィルタ10は、生体認証を利用する個人が保有管理する。たとえば、生体認証を利用する前に、あらかじめ、銀行等で発行を受けて利用者が所持しておく。
【0035】
生体情報読取装置30は、読取部31および読取情報出力部32により構成される。
【0036】
読取部31は、生体情報変更フィルタ10で変更された変更後情報を読み取る部分である。読取部31では、生体情報変更フィルタ10を設置しなければ、オリジナルの生体情報を読み取ることが可能である。
【0037】
読取情報出力部32は、読取部31で読み取った変更後情報を出力する部分である。
図3のシステム構成例の場合、変更後情報を生体認証装置40へ出力する。
【0038】
生体認証装置40は、照合部43および照合結果出力部44により構成される。
【0039】
照合部43は、生体情報変更フィルタ10で変更された変更後情報と、あらかじめ取得しておいた照合用生体情報とを照合する部分である。照合用生体情報は、あらかじめ、生体認証装置40に記憶しておく。たとえば、利用者個人が銀行等で生体情報変更フィルタ10の発行を受ける際に、生体情報登録用の生体情報読取装置と生体情報変更フィルタ10を使用して照合用生体情報を取得し、生体認証装置40に記憶させておく。
【0040】
照合結果出力部44は、照合部43での照合の結果を出力する部分である。たとえば、照合の結果を生体情報読取装置30へ出力し、生体情報読取装置30上に照合の結果を出力させることが可能である。
【0041】
また、本実施形態の生体認証システムは、
図4のように、生体情報読取装置30と生体認証装置40を一体化し、生体認証装置50内に読取部51を持たせることも可能である。
【0042】
次に、
図5に本実施形態の生体認証システムの構成要素の例を示す。生体情報読取装置30は、赤外線ランプ、赤外線カメラおよび位置決め板により構成される。生体情報読取装置30は、生体情報を読み取る対象である指に対して、赤外線ランプで赤外線を照射し、透過した赤外線を赤外線カメラで読み取ることで、指静脈画像を取得する。指静脈部分は赤外線を透過しないため、赤外線を指に照射して透過した赤外線を赤外線カメラで読み取ることで、指静脈画像を取得することができる。位置決め板は、生体情報変更フィルタ10と指の位置を固定するために用いられる。生体情報変更フィルタ10は、生体情報を読み取らせる人体部位(本実施形態の場合は指)と生体情報読取装置30との間に設置する。
【0043】
なお、赤外線を照射して手のひらの静脈画像等、指静脈以外の生体情報を取得する場合や、可視光線などの赤外線以外の電磁波を透過させて生体情報の画像を取得する場合であっても、同様の構成要素により、本実施形態の生体認証システムを構成可能である。
【0044】
次に、
図6に、
図5の生体認証システムの例における、生体情報変更フィルタ10の具体例を示す。生体情報変更フィルタ10は、透過領域、非透過領域および変更要素により構成される。
【0045】
透過領域は、赤外線ランプから照射された赤外線を透過させる領域である。非透過領域は、赤外線を遮断する領域であり、生体情報の盗難保護を目的に、個人を識別するために最低限必要な生体情報のみを赤外線カメラに読み取らせ、過剰な生体情報の読み取りを防ぐ機能を持つ。変更要素は、読み取らせる生体情報をオリジナルの情報から変更する機能を持ち、指静脈部分をオリジナルの指静脈画像に追加する。
【0046】
透過領域は、アクリルやプラスチックのような赤外線を透過する素材、非透過領域および変更要素は、赤外線を遮断する性質を持つ顔料等の素材により実現することができる。また、電圧印加によって赤外線の透過と非透過を切り替える液晶パネルにより透過領域と非透過領域を実現することも可能である。
【0047】
生体情報変更フィルタ10を用いないで生体情報読取装置30が生体情報を読み取った場合、
図7のようにオリジナルの生体情報と生体情報読取装置30が読み取った生体情報は同じとなる。つまり、悪意がある生体情報読取装置が設置されていた場合、盗難される生体情報はオリジナルの生体情報となる。
【0048】
しかし、
図6のような生体情報変更フィルタ10を用いると、生体情報読取装置30が読み取る生体情報は、
図8のように、オリジナルの生体情報に対して、非透過領域の生体情報をマスクし、変更要素を追加した生体情報(変更後情報)となる。悪意のある生体情報読取装置が設置されていて生体情報を盗み取られた場合でも、盗難される生体情報は、オリジナルの生体情報ではなく、変更後の生体情報となる。そのため、生体情報変更フィルタ10の非透過領域や変更要素を変更した生体情報変更フィルタ10を再発行することで、盗難された生体情報を偽造しての不正認証を防ぐことが可能になる。
【0049】
次に、
図2および
図9を用いて、本実施形態の生体情報変更フィルタ10、生体情報読取装置30および生体認証装置40の動作の例について説明する。
【0050】
まず、生体情報読取装置30は、読み取り対象の生体情報を読み取る。その際、生体情報変更フィルタ10は、生体情報読取装置30が読み取る生体情報を、オリジナルの生体情報から変更後情報へ変更する(
図2のステップS101)。そして、変更後情報を生体情報読取装置30へ出力する(ステップS102)。
【0051】
生体情報変更フィルタ10で変更された変更後情報を読み取った生体情報読取装置30は、読み取った変更後情報を、生体認証装置40へ出力する。
【0052】
生体認証装置40は、生体情報読取装置30からの変更後情報の入力を受け付け(
図9のステップS201)、あらかじめ記憶しておいた照合用生体情報とステップS201で入力された変更後情報とを照合する(ステップS202)。そして、照合の結果を、生体情報読取装置30等へ出力する(ステップS203)。
【0053】
このように生体情報変更フィルタ10、生体情報読取装置30および生体認証装置40を動作させることによって、生体情報読取装置30が読み取る生体情報をオリジナルの生体情報から変更する。そのため、生体情報を読み取る際のオリジナルの生体情報の盗難を防ぐことが可能になる。
【0054】
なお、生体情報読取装置30で読み取る生体情報については、電磁波を照射して取得する生体情報以外に、赤外線や可視光線などの電磁波を受光するカメラで撮影される、虹彩情報、顔情報、網膜情報、指紋情報などについても用いることが可能である。また、静電容量を計測することで読み取られる生体情報(指紋など)についても用いることが可能である。たとえば、これらの情報においても、人体部位と生体情報読取装置(カメラ等)の間に、生体情報の読み取り範囲を限定する生体情報変更フィルタを置くことで、読み取る生体情報を変更することが可能になる。
【0055】
また、生体情報変更フィルタ10で行う変更については、オリジナルの生体情報の集合から変更後情報の集合への写像が全射となる変更を行う。オリジナルの生体情報と変更後情報が1対1(全単射)の場合、本人以外で認証が成功する可能性が最小となる。しかし、その場合、複雑な変更パターンを採用する必要があるため、本人以外で認証が成功する可能性がある程度低くなる範囲内で、1つの変換後情報に対してオリジナルの生体情報が複数対応するように変更を行っても良い。ただし、変更後情報の集合の要素の数が一つの場合、すべての変更後情報が同一となり、だれでも認証が成功する状態となるため、変更後情報の集合の要素の数は、最低限、複数である必要がある。
【0056】
図6のように指静脈情報の読取範囲を限定する場合、オリジナルの生体情報に比べて、同じ変更後情報を持つ人物が存在する可能性が高くなる。しかし、指の太さを1cm、血管の太さを0.5mm、読み取りの精度を0.5mmと仮定すると、1か所の透過領域について血管1本が通る場所の組み合わせは20通り、血管が2本の場合は190通り(=(20*19)/2)となる。透過領域を複数個所とすることで、本人以外で認証が成功する可能性を低く抑えることが可能と考えられる。
【0057】
なお、ここでの集合は、生体情報変更フィルタの発行を受けている人物についての集合を指すものとする。すなわち、変更後情報の集合は、生体情報変更フィルタの発行を受けている人物の生体情報を変更した変更後情報の集合であるため、変更後情報の集合の各要素は、必ずいずれかのオリジナルの生体情報に対応していることになる。
【0058】
以上で説明したように、本発明の第二の実施形態では、第一の実施形態と同様に、生体情報変更フィルタが、生体情報を読み取る装置が読み取る生体情報を変更する。そのため、生体認証において、生体情報を読み取る際のオリジナルの生体情報の盗難を防ぐことが可能になる。
【0059】
また、悪意のある生体情報読取装置が生体情報(変更後情報)を盗み取ったとしても、生体情報変更フィルタの変更方法を更新することで、生体情報の盗難による不正認証を防ぐことが可能になる。
【0060】
[第三の実施形態]
次に、本発明の第三の実施の形態について説明する。
【0061】
本実施形態は、生体情報変更フィルタを電子化した形態である。
【0062】
図10は、本実施形態の生体情報変更フィルタ20の構成例である。
【0063】
生体情報変更フィルタ20は、読取部23、変更部21および出力部22により構成される。
【0064】
読取部23は、生体情報を読み取る部分である。
【0065】
変更部21は、第一、第二の実施形態の変更部11と同様に、生体情報を読み取る装置(生体情報読取装置30や生体認証装置50)が読み取る生体情報を変更後情報へ変更する部分である。変更部11と異なる点は、読取部23が読み取って電子化された生体情報に対して変更を行うため、コンピュータ処理により、より複雑な変更を行うことが可能になる点である。たとえば、読取部23で読み取った生体情報を変換関数で変換して、元の生体情報と全く異なる画像を変更後情報とすることも可能である。また、変更方法を更新する場合には、変更部21に記憶している変更方法を更新すれば良いため、変更方法の更新を容易に行うことが可能である。
【0066】
出力部22は、変更部21で変更を行った変更後情報を、生体情報読取装置30や生体認証装置50に対して出力する部分である。
【0067】
生体情報読取装置30や生体認証装置50の生体情報読取機能をそのまま使用する場合には、生体情報読取装置30や生体認証装置50で読み取り可能な形式にて出力する。たとえば、赤外線を透過させて指静脈を読み取る場合には、電圧印加により赤外線の透過と非透過を切り替えることが可能な液晶パネルにより構成された透過型ディスプレイに変更後情報を出力する。
【0068】
生体情報変更フィルタ20から生体情報読取装置30や生体認証装置50に情報を送信するインタフェースを設け、そのインタフェース経由で変更後情報を出力することも可能である。
【0069】
このように生体情報変更フィルタ20を構成することによって、生体情報を読み取る際のオリジナルの生体情報の盗難を防ぐことが可能になる。
【0070】
図11に、生体情報が指静脈情報である場合の、生体情報変更フィルタ20の構成要素の例を示す。たとえば、生体情報変更フィルタ20を読取部と透過型ディスプレイにより構成する。読取部は、
図10の読取部23に該当し、指静脈情報を取得する部分、透過型ディスプレイは、
図10の出力部22に該当し、変更後の生体情報を出力する部分である。このように構成すると、生体情報読取装置30の赤外線ランプ、赤外線カメラを用いた読取機能はそのままで、変更後情報を読み取らせることが可能になる。
【0071】
また、生体情報が電磁波をカメラで受光して撮影する画像情報(虹彩情報、顔情報、網膜情報、指紋情報など)である場合には、たとえば、
図12のように、生体情報変更フィルタ20をカメラと電磁波を出力するディスプレイにより構成することが可能である。
【0072】
次に、
図13を用いて、本実施形態の生体情報変更フィルタ20の動作例について説明する。
【0073】
まず、生体情報変更フィルタ20の読取部23は生体情報を読み取る(ステップS301)。次に、読取部23で読み取った生体情報に変換関数や読取領域の限定等による変更を行い、変更後情報を生成する(ステップS302)。そして、変更後情報を出力する(ステップS303)。
【0074】
このように生体情報変更フィルタ20を動作させることによって、生体情報読取装置30が読み取る生体情報をオリジナルの生体情報から変更するため、生体情報を読み取る際のオリジナルの生体情報の盗難を防ぐことが可能になる。
【0075】
以上で説明したように、本発明の第三の実施形態でも、第一、第二の実施形態と同様に、生体情報変更フィルタが、生体情報を読み取る装置が読み取る生体情報を変更する。そのため、生体認証において、生体情報を読み取る際のオリジナルの生体情報の盗難を防ぐことが可能になる。
【0076】
また、悪意のある生体情報読取装置が生体情報(変更後情報)を盗み取ったとしても、生体情報変更フィルタの変更方法を更新することで、生体情報の盗難による不正認証を防ぐことが可能になる。
【0077】
また、さらに、本実施形態では、電子化された生体情報に対して変更を行うため、より複雑な変更を行うことが可能になる。また、変更方法の更新を容易に行うことが可能になる。
【0078】
なお、上述する各実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更実施が可能である。
【0079】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0080】
(付記1)
生体情報を変更後情報へ、前記生体情報の集合から前記変更後情報の集合への写像が全射となる変更を行う変更部と、
前記生体情報を読み取る装置へ前記変更後情報を出力する出力部と
を備え、
前記変更後情報の集合の要素の数は複数である
ことを特徴とする生体情報変更フィルタ。
【0081】
(付記2)
前記変更部は、前記生体情報の読取範囲を限定する前記変更を行う
ことを特徴とする付記1に記載の生体情報変更フィルタ。
【0082】
(付記3)
前記生体情報は、電磁波を前記人体部位に照射して前記電磁波の透過有無により取得される情報であり、
前記変更部は、前記電磁波を遮断する非透過部により前記読取範囲を限定する
ことを特徴とする付記2に記載の生体情報変更フィルタ。
【0083】
(付記4)
前記非透過部は、前記電磁波を遮断する非透過素材により構成される
ことを特徴とする付記3に記載の生体情報変更フィルタ。
【0084】
(付記5)
前記生体情報変更フィルタは、電圧印加の有無により前記電磁波の透過と非透過が切り替わる液晶パネルにより構成される
ことを特徴とする付記3に記載の生体情報変更フィルタ。
【0085】
(付記6)
前記生体情報は、前記人体部位と前記装置との間の静電容量の大きさにより読み取られる情報である
ことを特徴とする付記1あるいは付記2に記載の生体情報変更フィルタ。
【0086】
(付記7)
前記生体情報は、電磁波を受光するカメラで撮影される画像情報である
ことを特徴とする付記1あるいは付記2に記載の生体情報変更フィルタ。
【0087】
(付記8)
前記生体情報変更フィルタは、さらに、
前記生体情報を読み取る読取部
を備え、
前記変更部は、前記読取部で読み取った前記生体情報を前記変更後情報へ変更する
ことを特徴とする付記1あるいは付記2に記載の生体情報変更フィルタ。
【0088】
(付記9)
前記変更部は、前記読取部で読み取った前記生体情報を変更関数により変更する
ことを特徴とする付記8に記載の生体情報変更フィルタ。
【0089】
(付記10)
前記生体情報は、電磁波を前記人体部位に照射して前記電磁波の透過有無により取得される画像情報であり、
前記出力部は、電圧印加の有無により前記電磁波の透過と非透過が切り替わる液晶パネルにより構成された透過型ディスプレイに、前記変更後情報を出力する
ことを特徴とする付記8あるいは付記9に記載の生体情報変更フィルタ。
【0090】
(付記11)
前記生体情報は、電磁波を受光するカメラで撮影される画像情報であり、
前記出力部は、前記電磁波を出力するディスプレイに前記変更後情報を出力する
ことを特徴とする付記8あるいは付記9に記載の生体情報変更フィルタ。
【0091】
(付記12)
付記1から付記11のいずれかに記載の生体情報変更フィルタで変更された前記変更後情報と、あらかじめ取得しておいた照合用生体情報とを照合する照合部と、
前記照合の結果を出力する結果出力部と
を備えることを特徴とする生体認証装置。
【0092】
(付記13)
前記生体認証装置は、さらに、
前記変更後情報を読み取る読取部
を備えることを特徴とする付記12に記載の生体認証装置。
【0093】
(付記14)
付記1から付記11のいずれかに記載の生体情報変更フィルタで変更された前記変更後情報を読み取る読取部と、
前記変更後情報を出力する読取情報出力部と
を備えることを特徴とする生体情報読取装置。
【0094】
(付記15)
付記1から付記11のいずれかに記載の生体情報変更フィルタと、
付記12に記載の生体認証装置と、
付記14に記載の生体情報読取装置と
を備え、
前記生体情報変更フィルタは、前記生体情報読取装置へ前記変更後情報を出力し、
前記生体情報読取装置は、前記変更後情報を前記生体認証装置へ出力する
ことを特徴とする生体認証システム。
【0095】
(付記16)
付記1から付記11のいずれかに記載の生体情報変更フィルタと、
付記13に記載の生体認証装置と
を備え、
前記生体情報変更フィルタは、前記生体認証装置へ前記変更後情報を出力する
ことを特徴とする生体認証システム。
【0096】
(付記17)
付記1から付記11のいずれかに記載の生体情報変更フィルタにより、前記生体情報を変更する
ことを特徴とする生体情報変更方法。
【0097】
(付記18)
付記1から付記11のいずれかに記載の生体情報変更フィルタで変更された前記変更後情報と、あらかじめ取得しておいた照合用生体情報とを照合し、前記照合の結果を出力する
ことを特徴とする生体認証方法。
【0098】
(付記19)
前記生体認証方法は、さらに、前記変更後情報を読み取る
ことを特徴とする付記18に記載の生体認証方法。
【0099】
(付記20)
付記1から付記11のいずれかに記載の生体情報変更フィルタで変更された前記変更後情報を読み取り、前記変更後情報を出力する
ことを特徴とする生体情報読取方法。
【0100】
(付記21)
コンピュータに、
生体情報を読み取る読取機能と、
前記生体情報を変更後情報へ、前記生体情報の集合から前記変更後情報の集合への写像が全射となる変更を行う変更機能と、
前記変更後情報を出力する出力機能と
を実現させ、
前記変更後情報の集合の要素の数は複数である
ことを特徴とする生体情報変更プログラム。
【0101】
(付記22)
前記変更機能は、前記生体情報の読取範囲を限定する前記変更を行う
ことを特徴とする付記21に記載の生体情報変更プログラム。
【0102】
(付記23)
前記変更機能は、前記生体情報を変更関数により変更する
ことを特徴とする付記21あるいは付記22に記載の生体情報変更プログラム。
【0103】
(付記24)
前記生体情報は、前記生体情報を読み取らせる人体部位に電磁波を照射して前記電磁波の透過有無により取得される画像情報であり、
前記出力機能は、電圧印加の有無により前記電磁波の透過と非透過が切り替わる液晶パネルにより構成された透過型ディスプレイに、前記変更後情報を出力する
ことを特徴とする付記21から付記23のいずれかに記載の生体情報変更プログラム。
【0104】
(付記25)
前記生体情報は、電磁波を受光するカメラで撮影される画像情報であり、
前記出力機能は、前記電磁波を出力するディスプレイに前記変更後情報を出力する
ことを特徴とする付記21から付記23のいずれかに記載の生体情報変更プログラム。
【0105】
(付記26)
コンピュータに、
付記1から付記11のいずれかに記載の生体情報変更フィルタで変更された前記変更後情報と、あらかじめ取得しておいた照合用生体情報とを照合する照合機能と、
前記照合の結果を出力する結果出力機能と
を実現させることを特徴とする生体認証プログラム。
【0106】
(付記27)
コンピュータに、さらに、
前記変更後情報を読み取る読取機能
を備えることを特徴とする付記26に記載の生体認証プログラム。
【0107】
(付記28)
コンピュータに、
付記1から付記11のいずれかに記載の生体情報変更フィルタで変更された前記変更後情報を読み取る読取機能と、
前記変更後情報を出力する読取情報出力機能と
を実現させることを特徴とする生体情報読取プログラム。
【符号の説明】
【0108】
10、20 生体情報変更フィルタ
11、21 変更部
12、22 出力部
23 読取部
30 生体情報読取装置
31 読取部
32 読取情報出力部
40、50 生体認証装置
51 読取部
43 照合部
44 照合結果出力部