(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】収容箱
(51)【国際特許分類】
H05K 5/06 20060101AFI20241126BHJP
H02G 3/14 20060101ALI20241126BHJP
H02G 3/08 20060101ALI20241126BHJP
H02G 3/16 20060101ALI20241126BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20241126BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20241126BHJP
F16J 15/14 20060101ALI20241126BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H05K5/06 D
H02G3/14
H02G3/08 080
H02G3/16
B29C45/26
B29C45/16
F16J15/14 C
H05K5/03 A
(21)【出願番号】P 2022175501
(22)【出願日】2022-11-01
【審査請求日】2024-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】清田 浩孝
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-119960(JP,A)
【文献】特開2016-200636(JP,A)
【文献】国際公開第2004/018906(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/185168(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00- 5/06
H02G 3/14
H02G 3/08
H02G 3/16
B29C 45/26
B29C 45/16
F16J 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電子部品を収容可能とし、内外を連通する開口部を有する本体部と、
前記本体部に取り付けられ、前記開口部に対し着脱可能に設けられるカバー部と、
前記カバー部に設けられ、少なくとも前記本体部と前記カバー部の間の止水領域に配置され、前記本体部と前記カバー部の間の止水を行う樹脂製のパッキン部材と、を備え、
前記カバー部は、前記開口部を覆う天面部と、前記天面部の外縁から下方へ延びる下壁部と、を有し、前記下壁部の下部に溝を形成し、
前記パッキン部材は、前記溝内に設けられ、前記止水領域から外れた非止水領域に形成され樹脂成形時において樹脂注入位置となる樹脂注入部を有し、
前記樹脂注入部は、前記止水領域から前記カバー部を貫通し前記カバー部の外部表面に露出して形成されている、
収容箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収容箱として、例えば、特許文献1に記載されるように、筐体に対し開閉可能な蓋体を備えた収容体が知られている。この収容体は、蓋体において筐体と当接する位置にパッキンが配置され、このパッキンにより筐体と蓋体の間の止水機能を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した収容体では、収容体の内外の止水機能が確保できないおそれがある。例えば、蓋体に設けられるパッキンを樹脂成形により製造する場合、パッキンの一部に樹脂注入跡が形成される。樹脂成形跡は、樹脂成形時のゲートをカットした跡であり、パッキンの表面上の凹凸となる。このため、パッキンに樹脂注入跡が形成されると、パッキンと筐体と間などに隙間ができるおそれがあり、筐体と蓋体の間の止水機能が十分に確保できない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、パッキン部材の止水機能を確保できる収容箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る収容箱は、内部に電子部品を収容可能とし内外を連通する開口部を有する本体部と、本体部に取り付けられ開口部に対し着脱可能に設けられるカバー部と、カバー部に設けられ少なくとも本体部とカバー部の間の止水領域に配置され本体部とカバー部の間の止水を行う樹脂製のパッキン部材とを備え、パッキン部材は、止水領域と連結され止水領域から外れた非止水領域に形成され、樹脂成形時において樹脂注入位置となる樹脂注入部を有するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る収容箱によれば、パッキン部材の止水機能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る収容箱の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、第一実施形態に係る収容箱のパッキン部材の説明図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-IIIにおける収容箱の断面図である。
【
図4】
図4は、第一実施形態に係る収容箱の製造方法の説明図である。
【
図5】
図5は、第一実施形態に係る収容箱の製造方法の説明図である。
【
図6】
図6は、第一実施形態に係る収容箱の製造方法の説明図である。
【
図7】
図7は、第二実施形態に係る収容箱の分解斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7のVIII-VIIIにおける収容箱の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
本発明の第一実施形態に係る収容箱について説明する。
【0011】
図1は、第一実施形態に係る収容箱の分解斜視図であり、
図2は、第一実施形態に係る収容箱のパッキン部材の説明図であり、
図3は、
図2のIII-IIIにおける収容箱の断面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る収容箱1は、電子部品を収容する箱体であり、例えば車両に搭載され、フューズ及びリレーを含む電子部品を収容する電気接続箱として用いられる。収容箱1は、本体部2、カバー部3及びパッキン部材4を備えている。本体部2は、内部に電子部品を収容可能とし、内外を連通する開口部21を有している。本体部2は、例えば、底部及び天井部を開放した箱型であり、サイドカバーとして機能する。この場合、例えば、本体部2の底部は、ロアカバー5が取り付けられることで閉鎖される。本体部2の天井部は、内外を連通する開口部21であり、カバー部3が設置されることで閉鎖される。開口部21は、例えば本体部2の上面全体を開放した開口である。なお、
図1において、本体部2は、収容箱1の側面部分を全周に渡って覆うように構成されているが、別部品と組み合わせて収容箱1の側面部分を覆うように構成されていてもよい。例えば、本体部2は、収容箱1の側面部分の一部を切り欠いた形状とされ、その切り欠いた部分に別部品を取り付けて収容箱1の側面部分を覆うようにしてもよい。
【0013】
カバー部3は、本体部2の開口部21を覆うアッパーカバーであり、本体部2に取り付けられて開口部21を覆い、開口部21に対し着脱可能に設けられている。カバー部3は、天面部31及び下壁部32を有する。天面部31は、カバー部3の上面部分であり、本体部2を上から見た形状に合わせた形状とされ、例えば矩形又は略矩形の形状とされる。下壁部32は、天面部31の外縁から下方へ向けて延びる壁部分であり、天面部31の外縁全周に渡って形成されている。下壁部32の下方への延出長さは、本体部2の上縁部22の形状に応じて設定される。すなわち、本体部2の上縁部22は、収容箱1の設置空間、外形などの条件に応じ外縁に沿って上下に変動している。下壁部32が全周に渡って上縁部22に接合できるように、下壁部32の下方への延出長さが設定されている。カバー部3には、係合部33が設けられている。係合部33は、本体部2の被係合部23と係合して本体部2に対しカバー部3を保持及び保持解除を行う部位である。係合部33は、例えば下壁部32の外面に形成され、複数設けられる。
【0014】
パッキン部材4は、本体部2とカバー部3の間の止水を行う止水部材であり、樹脂により形成されている。パッキン部材4は、カバー部3より剛性の低い樹脂により形成され、例えば、エラストマなどの弾性樹脂により形成される。パッキン部材4は、本体41と樹脂注入部42を有している。本体41は、止水部材として機能する部位であり、本体部2とカバー部3の間の止水領域Sに配置され、環状に形成されている。止水領域Sは、本体部2のカバー部3の間の領域であり、一方側で本体部2と当接し他方側でカバー部3と当接する領域である。樹脂注入部42は、パッキン部材4の樹脂成形時における樹脂注入位置となる部分であり、本体41と連結され止水領域Sから外れた非止水領域Nに形成されている。例えば、
図2に示すように、本体41は、カバー部3の外縁の止水領域Sに沿って配置されている。そして、樹脂注入部42は、本体41から分岐し突出して形成されている。例えば、樹脂注入部42は、本体41が配置される止水領域Sからカバー部3の内側へ延びるように形成されている。つまり、樹脂注入部42は、本体41から分岐してカバー部3の中心側へ延びるように形成され、本体部2とカバー部3の間に挟まれない非止水領域Nに形成されている。このため、樹脂注入部42にゲート跡があり、樹脂注入部42の表面に凹凸があったとしても、パッキン部材4による止水性能に影響を与えない。従って、パッキン部材4の止水性能を確実に確保することができる。なお、
図2は、カバー部3の裏側(下方側)から見た図であり、本体部2の図示を省略している。
【0015】
図3に示すように、パッキン部材4は、カバー部3に形成される溝322内に設けられている。溝322は、垂下部321の下方に設けられる外壁323と内壁324の間に形成される。垂下部321は、下壁部32の一部であって、天面部31から下方へ延びる壁部である。内壁324は、垂下部321の下部に連なる壁部である。外壁323は、突出部225を介し垂下部321の下部に連なる壁部であり、内壁324の外側に位置し内壁324から所定距離を隔てて設けられる。突出部325は、垂下部321の下端から外側に向けて突出して設けられ、先端が外壁323と連なっている。また、外壁323の下方には、延長部326が連なって形成されている。延長部326は、本体部2の側壁24の外側を覆う壁部である。溝322は、内壁324、突出部325及び外壁323に囲われて形成され、下方を開放した空間となっている。この溝322は、下壁部32の下縁の延在方向(
図3では、Y方向)に沿って形成されている。パッキン部材4は、例えば、溝322の上部の奥の位置に配置され、突出部325に接触するように配置される。カバー部3が本体部2に取り付けられる場合、溝332内に本体部2の上縁部22が挿入される。例えば、上縁部22は、上端から上方へ突出する二つの突起片221、222が形成され、一方の突起片221が溝332に挿入される。突起片221、222は、上縁部22の延在方向(
図3では、Y方向)に沿って形成される突条であり、内外に平行して形成され、内壁324の外側と内側に位置するように設けられている。
【0016】
次に、第一実施形態に係る収容箱の製造方法について説明する。
【0017】
図4、
図5及び
図6は、第一実施形態に係る収容箱の製造方法の説明図であり、カバー部及びパッキン部材の樹脂成形の説明図である。
【0018】
収容箱1は、本体部2に対し、パッキン部材4を設けたカバー部3を取り付けることにより製造される。本体部2と、カバー部3及びパッキン部材4とは、個別に製造される。本体部2は、例えば樹脂成形により製造される。なお、本体部2が樹脂製でない場合には、樹脂成形以外の手法により製造されてもよい。
【0019】
カバー部3及びパッキン部材4は、樹脂成形により製造される。例えば、カバー部3及びパッキン部材4は、異なる二種類の樹脂を用いた二色成形により製造される。具体的には、まず、
図4に示すように、金型101、102の間に形成される成形空間103に対し高温で流動性のある成形用の第一樹脂110が注入される。成形空間103は、カバー部3の形状に対応して形成されている。そして、第一樹脂110は、成形空間103内に充填され、冷やされることで硬化し、カバー部3となる。
【0020】
そして、
図5に示すように、金型101とカバー部3の間に形成される成形空間105に対し高温で流動性のある成形用の第二樹脂111が注入される。成形空間105は、パッキン部材4の形状に対応して形成されている。このとき、第二樹脂111は、樹脂注入部42となる位置から成形空間105へ注入される。すなわち、金型104のゲート104Aは、樹脂注入部42となる位置に設けられている。第二樹脂111は、第一樹脂110と異なる樹脂であり、硬化した場合に第一樹脂110より剛性の低い樹脂となる。そして、第二樹脂111は、ゲート104Aを通じて成形空間105に注入され、成形空間105内に充填される。そして、第二樹脂111が冷やされることで硬化し、第二樹脂111はパッキン部材4となる。
【0021】
そして、
図6に示すように、カバー部3及びパッキン部材4が二色成形により製造される。このとき、パッキン部材4の樹脂注入部42の表面には、ゲート跡42Aが形成される。ゲート跡42Aは、ゲート104Aの樹脂をカットすることで形成される凸部又は凹部であり、バリ、凹み、ギャップ又は隙間となる場合もある。しかしながら、樹脂注入部42が本体部2とカバー部3の止水領域Sから外れた位置にあるため、樹脂注入部42にゲート跡42Aが形成されていても、パッキン部材4の止水性能に影響を与えない。従って、パッキン部材4による高い止水性能が確保され、パッキン部材4による止水性能の向上を図ることができる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態に係る収容箱1によれば、本体部2とカバー部3の止水を行うパッキン部材4が止水領域Sから外れた非止水領域Nに樹脂注入部42を有している。このため、止水領域Sに樹脂注入部42が形成されず、止水領域Sの表面に樹脂注入による凹凸が生じない。従って、収容箱1は、パッキン部材4による止水機能を確実に確保することができる。
【0023】
また、本実施形態に係る収容箱1は、樹脂注入部42が止水領域Sからカバー部3の内側へ延びて形成されている。このため、止水領域Sの表面に樹脂注入による凹凸が生じない。従って、収容箱1は、パッキン部材4による止水機能を確実に確保することができる。
【0024】
次に、第二実施形態に係る収容箱について説明する。
【0025】
図7は、第二実施形態に係る収容箱の分解斜視図であり、
図8は、
図7のVIII-VIIIにおける収容箱の断面図である。
【0026】
第二実施形態に係る収容箱1Aは、第一実施形態に係る収容箱1とほぼ同様に構成され、パッキン部材4の樹脂注入部42の構成が異なっている。すなわち、第一実施形態に係る収容箱1のパッキン部材4は樹脂注入部42が止水領域Sからカバー部3の内側へ延びているが、第二実施形態に係る収容箱1Aのパッキン部材4は樹脂注入部42が止水領域Sからカバー部3の外側へ延びている点で異なっている。
【0027】
図8に示すように、樹脂注入部42は、本体41が配置される止水領域Sからカバー部3の外側へ延びるように形成されている。つまり、樹脂注入部42は、本体41から分岐してカバー部3の外側へ延びるように形成され、カバー部3を貫通しカバー部3の外部表面に露出するように形成されている。このように樹脂注入部42が形成されることにより、樹脂注入部42は、本体部2とカバー部3の間に挟まれない非止水領域Nに形成される。このため、樹脂注入部42にゲート跡があり、樹脂注入部42の表面に凹凸があったとしても、パッキン部材4による止水性能に影響を与えない。従って、収容箱1Aは、パッキン部材4の止水性能を確実に確保することができる。
【0028】
収容箱1Aのカバー部3及びパッキン部材4は、例えば、第一実施形態に係る収容箱1と同様に、二色成形により製造される。この場合、パッキン部材4の成形において、第二樹脂111の注入は、カバー部3の外部表面に露出する位置から行われる。このため、樹脂注入部42の表面にゲート跡の凹凸が形成されたとしても、本体部2とカバー部3の間の止水領域Sでないため、パッキン部材4の止水機能に影響を与えない。
【0029】
このように、本実施形態に係る収容箱1Aは、樹脂注入部42が止水領域Sからカバー部3の外側へ延びて形成されている。このため、止水領域Sの表面に樹脂注入による凹凸が生じない。従って、収容箱1Aは、パッキン部材4による止水機能を確実に確保することができる。また、収容箱1Aは、樹脂注入部42がカバー部3の内外を貫通するため、パッキン部材4を止水領域Sから外れにくくすることができる。このため、収容箱1Aは、パッキン部材4による止水機能を確実に確保することができる。
【0030】
なお、上述した本発明の各実施形態に係る収容箱は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。また、本実施形態に係る収容箱は、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【0031】
例えば、上述した実施形態では、収容箱として、車両に搭載され電子部品を収容する電気接続箱に適用する場合について説明したが、本発明に係る収容箱は、電気接続箱以外の収容箱に適用してもよい。
【0032】
また、上述した実施形態では、アッパーカバーにカバー部3を取り付けた収容箱について説明したが、ロアカバーにカバー部3を取り付けた収容箱として構成されてもよい。また、アッパーカバー及びロアカバーとしてカバー部3を取り付けた収容箱として構成されてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 収容箱
2 本体部
3 カバー部
4 パッキン部材
21 開口部
42 樹脂注入部
S 止水領域
N 非止水領域