(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】導電性シート、樹脂成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/20 20060101AFI20241126BHJP
H05B 3/10 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H05B3/20 347
H05B3/10 A
(21)【出願番号】P 2022189254
(22)【出願日】2022-11-28
【審査請求日】2024-04-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 拓弥
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-111484(JP,U)
【文献】特開2003-173860(JP,A)
【文献】国際公開第2015/133217(WO,A1)
【文献】実開平05-087886(JP,U)
【文献】特開2019-169417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00-3/86
B29C 45/14,65/48-65/54
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲領域を有する
熱可塑性樹脂からなる基体シートと、
前記基体シートの上に
埋め込まれて固着された導電性のワイヤにより形成された導電性パターンとを備え、
前記ワイヤは、一部が前記屈曲領域を横断し、前記屈曲領域において前記基体シートの上方にたるんだ未固着部分を含む、導電性シート。
【請求項2】
前記未固着部分の前記ワイヤの長さは、前記未固着部分の前記ワイヤを前記基体シートの表面に投影した長さと屈曲によって前記基体シートが伸びた長さの合計より大きく設定された、請求項1の導電性シート。
【請求項3】
前記未固着部分の前記ワイヤの長さLmmは、前記未固着部分の前記ワイヤを前記基体シートの表面に投影した長さd1と屈曲によって前記基体シートが伸びた長さd2の合計をDmmとすると、
(数1) D-1≦L≦D+2
の関係を有するように設定された、請求項1記載の導電性シート。
【請求項4】
前記未固着部分の前記ワイヤを前記基体シートの表面に投影した長さの半分の長さをa、前記基体シートの表面から前記未固着部分の頂点までの距離をb、前記基体シートの平行方面と前記未固着部分の前記ワイヤの軸方向とのなす角をθ、
前記基体シートを屈曲させたときの前記基体シートの屈曲
領域を円弧とみなして、その半径をR、その中心角をαとすると、
【数2】
の関係を有するように設定された、請求項1記載の導電性シート。
【請求項5】
前記導電性パターンは、連続した1本の前記ワイヤからなり、ヒータ部と接続端子部とを含み、前記屈曲領域は前記接続端子部にある、請求項1記載の導電性シート。
【請求項6】
請求項1記載の導電性シートを屈曲領域で屈曲させたプレフォーム体と、
前記プレフォーム体の表面、裏面又は両面に積層された樹脂成形体とを備えた、樹脂成形品。
【請求項7】
固定型と、
型締めによって前記固定型との間にキャビティを形成する可動型と、を有する射出成形用金型のいずれかのキャビ
ティ面に、請求項1記載の導電性シートを配置する工程と、
前記射出成形用金型を型締めする工程と、
前記キャビティ内に溶融樹脂を射出して樹脂成形体を成形すると同時に、前記樹脂成形体の表面に前記導電性シートを固着させる工程と、
前記射出成形用金型を型開きして、前記樹脂成形体を取り出す工程とを備えた、樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記導電性シートは、屈曲領域で屈曲させたプレフォーム体である、請求項7記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
請求項1記載の導電性シートを屈曲領域で屈曲させた前記プレフォーム体を準備する工程と、
前記プレフォーム体の表面、裏面又は両面に、その表面、裏面又は両面の形状に対応した表面形状を有する樹脂成形体を固着させる工程とを備えた、樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
基体シートの一方の面に導電性のワイヤからなる導電性パターンが形成された導電性シートであるフィルムヒータがある。導電性のワイヤは、超音波融着により、基体シートの表面に、全長にわたって埋め込まれている(例えば、特許文献1参照)。
【背景技術】
【0002】
従来、基体シートの上に導電性パターンを有した導電性シートが提案されている。
【文献】特開2019-169417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような従来の導電性シートを立体形状にする場合、フィルムの伸びとワイヤの伸びが異なることから、屈曲部分でワイヤが基体シートから剥がれたり、ワイヤの断線が生じたりすることがある。
【0004】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、立体形状にすることによって生じるワイヤの剥がれや断線を防止する導電性シート、樹脂成形品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、屈曲領域を有する基体シートと、基体シートの上に固着された導電性のワイヤにより形成された導電性パターンとを備え、ワイヤは、一部が屈曲領域を横断し、屈曲領域において基体シートの上方にたるんだ未固着部分を含んだものである。
【0006】
このように構成すると、ワイヤのたるんだ未固着部分が、屈曲による基体シートの伸びを吸収するため、基体シートを屈曲させたときのワイヤの断線を防止することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の構成において、未固着部分のワイヤの長さは、未固着部分のワイヤを基体シートの表面に投影した長さと屈曲によって基体シートが伸びた長さの合計より大きく設定されたものである。
【0008】
このように構成すると、ワイヤの未固着部分が、屈曲した基体シートに引っ張られないため、基体シートを屈曲させたときのワイヤの断線を防止することができる。
【0009】
第3の発明は、第1の発明の構成において、未固着部分のワイヤの長さLmmは、未固着部分のワイヤを基体シートの表面に投影した長さd1と屈曲によって基体シートが伸びた長さd2の合計をDmmとすると、
(数1) D-1≦L≦D+2
の関係を有するように設定されたものである。
【0010】
このように構成すると、基体シートを屈曲させたときに、未固着部分のワイヤが基体シートの表面に沿うため、屈曲領域のワイヤの突出の少ない立体の導電性シートになる。
【0011】
第4の発明は、第1の発明の構成において、未固着部分のワイヤを基体シートの表面に投影した長さの半分の長さをa、基体シートの表面から未固着部分の頂点までの距離をb、基体シートの平行方面と未固着部分のワイヤの軸方向とのなす角をθ、
基体シートを屈曲させたときの基体シートの屈曲
領域を円弧とみなして、その半径をR、その中心角をαとすると、
【数2】
の関係を有するように設定されたものである。
【0012】
このように構成すると、基体シートを屈曲させたときに、未固着部分のワイヤが基体シートの表面に沿うため、屈曲領域のワイヤの突出の少ない立体の導電性シートになる。
【0013】
第5の発明は、第1の発明の構成において、導電性パターンは、連続した1本のワイヤからなり、ヒータ部と接続端子部とを含み、屈曲領域は接続端子部にあるものである。
【0014】
このように構成すると、導電性パターンが1本のワイヤからなるため、導電性パターンを1本のワイヤで連続形成でき、接続端子部の基体シートを屈曲させたときのワイヤの断線を防止することができる。
【0015】
第6の発明は、第1の発明の導電性シートを屈曲領域で屈曲させたプレフォーム体と、プレフォーム体の表面、裏面又は両面に積層された樹脂成形体とを備えた、樹脂成形品である。
【0016】
このように構成すると、ワイヤが断線していないプレフォーム体が樹脂成形体に積層されるため、ワイヤが断線していない樹脂成形品となる。
【0017】
第7の発明は、固定型と、型締めによって固定型との間にキャビティを形成する可動型と、を有する射出成形用金型のいずれかのキャビティ面に、請求項1記載の導電性シートを配置する工程と、射出成形用金型を型締めする工程と、キャビティ内に溶融樹脂を射出して樹脂成形体を成形すると同時に、樹脂成形体の表面に導電性シートを固着させる工程と、射出成形用金型を型開きして、樹脂成形体を取り出す工程とを備えた、樹脂成形品の製造方法である。
【0018】
このように構成すると、ワイヤのたるんだ未固着部分が、溶融樹脂の射出時の屈曲による基体シートの伸びを吸収するため、ワイヤが断線していない樹脂成形品を射出成形することができる。
【0019】
第8の発明は、第1の発明の導電性シートを屈曲領域で屈曲させたプレフォーム体である、第7の発明の樹脂成形品の製造方法である。
【0020】
このように構成すると、ワイヤが断線していないプレフォーム体が射出成形用金型にインサートされるため、ワイヤが断線していない樹脂成形品を得ることができる。
【0021】
第9の発明は、第1の発明の導電性シートを屈曲領域で屈曲させたプレフォーム体を準備する工程と、プレフォーム体の表面、裏面又は両面に、その表面、裏面又は両面の形状に対応した表面形状を有する樹脂成形体を固着させる工程とを備えた、樹脂成形品の製造方法である。
【0022】
このように構成すると、ワイヤが断線していないプレフォーム体が樹脂成形体に積層されるため、ワイヤが断線していない樹脂成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、この発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
【0024】
図1を参照して、導電性シートであるフィルムヒータ10は、平面視で長方形形状を有する基体シート11と、基体シート11の上に固着された導電性のワイヤ12により形成された導電性パターン13を備えている。フィルムヒータ10は、例えば、自動車のエンブレムやバンパーに組み込まれて融雪に利用される。基体シート11の端部には、基体シート11の長手方向に帯状に延びる屈曲領域Bがある。導電性パターン13は、基体シート11の短手方向に左右に一定の幅で整列するUターンを繰り返し、長手方向に等間隔となるように一筆書きに形成されたメアンダ状のパターンである。このパターンがヒータ部14を構成する。ワイヤ12の両端はパターンの1か所で合流し、2本が一定間隔で平行になって屈曲領域Bに直交するようにして横断し、基体シート11の外縁から外方に延びている。この部分が接続端子部15を構成する。フィルムヒータ10では、2つのメアンダ状のパターンが、それらのパターン間隔をワイヤ12の間隔にそろえるようにして基体シート11の長手方向に配置され、合計4本のワイヤ12が接続端子部15を構成している。ワイヤ12は拡大
図Aで示した領域に未固着部分を有する。基体シート11の導電性パターン13が設けられた面と反対の面には、加飾層、転写層、接着層その他機能層が積層されてもよい。
【0025】
図2の(4)を参照して、ヒータ部14と接続端子部15は、未固着部分を除き、導電性のワイヤ12が、断面の一部が基体シート11に埋め込まれた状態で、基体シート11の上に固着している。基体シート11へのワイヤ12の埋込み方法としては、例えば、超音波融着の原理を活用してワイヤ12を基体シート11の上に埋め込むことが望ましい。超音波融着を行うに際しては、ワイヤ12を繰り出しながら熱可塑性樹脂からなる基体シート11の表面を溶融させ、ワイヤ12を基体シート11の上に埋め込むことが可能な配線描画装置を用いることができる。基体シート11へのワイヤ12の埋込みにより、基体シート11の上で導電性パターン13の位置決めを行い、基体シート11を屈曲させたときのワイヤ12の位置ずれを抑制することができる。
【0026】
図2の(2)、(3)を参照して、屈曲領域Bにおいてはワイヤ12は未固着部分を有し、未固着部分のワイヤ12が、基体シート11の上方にたるんだ状態になっている。具体的には、固着部分から斜め上方に角度θで立ち上がり、頂点Cを介して角度θで斜め下方に基体シート11に向かって下りて固着部分へとつながる。角度θは、基体シート11の平面方向30と未固着部分のワイヤ12の軸方向31とのなす角度である。
フィルムヒータ10では、未固着部分のワイヤ12が、屈曲による基体シート11の伸びを吸収するため、基体シート11を屈曲させたときのワイヤ12の断線を防止することができる。
【0027】
図2の(2)を参照して、フィルムヒータ10の屈曲領域Bにおいて、ワイヤ12は基体シート11に未固着で上方にたるんだ状態になっている。未固着部分のワイヤ12は、固着部分から斜め上方に角度45度で立ち上がり、頂点Cを90度で曲がるようにして斜め下方に基体シート11に向かって下りて固着部分へとつながる。未固着部分のワイヤ12を基体シート11の表面に投影したとき、その投影した線は直線になっている。
図3の(3)を参照して、フィルムヒータ10は、ワイヤ12が固着された面を上面として、下方に向かって屈曲した状態となっている。屈曲によって基体シート11が伸ばされ、屈曲後の基体シート11の長さは屈曲前の基体シート11の長さより長くなる。
未固着部分のワイヤ12の長さは、未固着部分のワイヤ12を基体シート11の表面に投影した長さと屈曲によって基体シート11が伸びた長さの合計より大きくなるように設定されている。
【0028】
図2の(2)を参照して、フィルムヒータ10の未固着部分のワイヤ12の長さをLmm、未固着部分のワイヤ12を基体シート11の表面に投影した長さをd1とする。d1は、
図2の(2)の2点鎖線で示した屈曲前の基体シート11の上に固着させた状態のワイヤ12の長さである。
図3の(3)を参照して、フィルムヒータ10を屈曲したときの基体シート11の伸びた長さをd2とする。d1とd2の長さの合計をDとすると、未固着部分のワイヤ12の長さLmmは、次の式の関係を満たすように設定されている。
(数1) D-1≦L≦D+2
このように設定することにより、フィルムヒータ10を屈曲させたときに、未固着部分のワイヤ12が基体シート11の表面に沿うため、屈曲領域Bのワイヤ12の突出の少ない立体のフィルムヒータ10になる。
【0029】
図2の(2)を参照して、フィルムヒータ10では、未固着部分のワイヤ12を基体シート11の表面に投影した長さの半分の長さをa、基体シート11の表面から未固着部分の頂点Cまでの距離をb、基体シート11の平行方面30と未固着部分のワイヤ12の軸方向31とのなす角をθとする。
図3の(3)を参照して、フィルムヒータ10を屈曲したときの基体シート11の屈曲
領域を円弧とみなして、その半径をR、その中心角をαとすると、次の式の関係を満たすように設定されている。
【数2】
このように設定することにより、基体シート11を屈曲させたときに、未固着部分のワイヤ12が基体シート11の表面に沿うため、屈曲領域Bのワイヤ12の突出の少ない立体のフィルムヒータ10になる。
【0030】
基体シート11には、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、PC―ABS等の熱可塑性樹脂シートが使用される。例えば、樹脂成形体17と同一の種類からなる熱可塑性樹脂シートを使用すれば、樹脂成形体17に基体シート11を固着し易くなる。特に、成形性、機械的強度、柔軟性、耐候性に優れる熱可塑性樹脂シートを用いるのがよい。
基体シート11の厚みは、0.2mm~0.5mmが好ましい。0.2mmより薄いと基体シート11へのワイヤ12の埋込みにより、基体シート11のワイヤ12が埋め込まれた面と反対の面にワイヤ12の形が浮き出てしまい、その反対の面に積層された加飾層に亀裂が入ったり、その反対の面が成形品の外観となった場合に見栄えが悪くなったりするおそれがある。0.5mmより厚いとフィルムヒータ10の立体形状への成形が難しくなる。
【0031】
ワイヤ12には、製造する成形品の使用用途や目的に合わせて各種導電性金属材料を選択することができる。例えば、純銅や銅に銀や鉛、錫、アルミ、ニッケル、ベリリウム、ジルコニウム等を単独又は複数組み合わせてある銅合金等の材料が挙げられる。特に、抵抗値の低い純銅や機械的強度に優れた合金がよい。
ワイヤ12の直径は、好ましくは0.05mm~0.2mm、更に好ましくは0.15mm~0.2mmである。0.05mmより細いと、抵抗値が高くなるためヒータとしての性能が下がり、又、フィルムヒータ10を立体形状にするときに断線するおそれがある。0.2mmより太いとフィルムヒータ10の立体形状への成形が難しくなる。ワイヤ12の長さは、導電性パターン13のパターン形態等に応じたものとすることができる。
【0032】
樹脂成形体17には、製造する成形品の使用用途や目的に適した特性を有する材料が使用される。例えば、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジェンスチレン、PC―ABSアロイ等が挙げられる。
フィルムヒータ10を自動車のエンブレムやバンパーの使用する場合には、基体シート11はポリカーボネート、ワイヤ12は純銅、樹脂成形体17は光を透過する必要があるパーツの場合はポリカーボネート、強度を必要とするパーツの場合はPC―ABSを使用するのが適している。
【0033】
次に、樹脂成形品であるフィルムヒータ成形品18を製造する工程を説明する。
【0034】
図3の(1)を参照して、フォーミング用金型19は、フィルムヒータ10を配置する面の上方に加熱装置20を備えている。フィルムヒータ10を未固着部分のワイヤ12が下方にたるむようにフォーミング用金型19に配置する。加熱装置20を用いてフィルムヒータ10の屈曲領域Bを熱することで、フィルムヒータ10を軟化させる。
次に、
図3の(2)を参照して、軟化させたフィルムヒータ10にフォーミング用金型19の形状に沿うように圧を加え、プレフォーム体16を形成する。そのままの状態で冷却して固化させ、プレフォーム体16を取り出す。
【0035】
図4の(1)を参照して、射出成形用金型22は、可動型23と固定型24を備えている。本実施形態では、射出成形用金型22の左側の金型を可動型23、右側の金型を固定型24とし、可動型23が水平方向(
図4の(1)における左右方向)に移動することで、固定型24に接近し、又は固定型24から離れる。可動型23は、プレフォーム体16の形状に対応するキャビ
ティ面26を備え、固定型24は、溶融樹脂28を射出するための樹脂流路25を備えている。射出成形用金型22が左右に型開きした状態で、可動型23のキャビ
ティ面26にプレフォーム体16を配置する。
【0036】
次に、
図4の(2)を参照して、固定型24と可動型23を左右から型締めして、固定型24と可動型23の間にキャビティ27を形成する。固定型24の樹脂流路25からキャビティ27内に溶融樹脂28を射出して樹脂成形体17を成形すると同時に、フィルムヒータ成形品18が成形される。成形されたフィルムヒータ成形品18をそのまま型締めした状態で冷却して固化させる。
次に、
図4の(3)を参照して、射出成形用金型22を左右に型開きして、フィルムヒータ成形品18を取り出す。このようにして、プレフォーム体16と樹脂成形体17が射出成形と同時に成形されたフィルムヒータ成形品18が製造される。
【0037】
図5を参照して、本実施形態では、プレフォーム体16のワイヤ12が固着された面を表面として、その表面にプレフォーム体16の表面形状に対応した樹脂成形体17を積層させる。積層には、必要によりプレフォーム体16と樹脂成形体17の間に、接着層を介在させ固着させてもよい。接着層には、例えば、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、ゴム系、ポリエステル系、セルロース系、エマルジョン等の接着剤が使用される。このようにして、フィルムヒータ成形品18が製造される。
【0038】
以上から、上記のように構成されるフィルムヒータ10では、フィルムヒータ10を立体形状に成形するときに、ワイヤ12の未固着部分が屈曲した基体シート11に引っ張られないため、屈曲によるワイヤ12の断線や剥がれを防止することができる。そして、上記のように構成されるフィルムヒータ10を用いたフィルムヒータ成形品18の製造方法では、ワイヤ12が断線していないフィルムヒータ成形品18を製造することができる。
【0039】
尚、上記の実施形態では、ワイヤ12が基体シート11に直接埋め込まれているが、屈曲領域に未固着部分を設ければ、保護層や接着層等基体シートの上に他の層が形成され、その層にワイヤを固着させてもよい。
【0040】
又、上記の実施形態では、基体シート11の上に2本のワイヤ12により2つの導電性パターン13が設けられているが、ワイヤが屈曲領域を横断するように構成すれば、ワイヤの本数もパターンの数や形状も上記の実施形態に限定されない。
【0041】
更に、上記の実施形態では、フィルムヒータ10の接続端子部15に屈曲領域が設けられているが、屈曲領域のワイヤを未固着にさせることができる位置であれば、ヒータ部14に屈曲領域を設けてもよい。
【0042】
更に、上記の実施形態では、未固着部分のワイヤ12を基体シート11の表面に投影したときの線は直線であるが、屈曲領域のワイヤが未固着となっていれば、その投影した線は曲線や折曲げ線等であってもよい。
【0043】
更に、上記の実施形態では、フィルムヒータ成形品18を製造する他の工程において、プレフォーム体16のワイヤ12が固着された面を表面として、その表面を覆うように樹脂成形体17が積層されているが、樹脂成形体17はプレフォーム体16の表面、裏面又は両面に積層することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】この発明の実施形態によるフィルムヒータの概略構成を示した平面図である。
【
図2】その(1)が
図1で示したA部分の拡大図であり、その(2)がその(1)で示したII―IIラインの断面図であり、その(3)がその(1)で示したIII―IIIラインの断面図であり、その(4)がその(1)で示したIV-IVラインの断面図である。
【
図3】
図1で示したフィルムヒータを屈曲させる工程を示した図である。
【
図4】フィルムヒータ成形品を製造する工程を示した図である。
【
図5】フィルムヒータ成形品を製造する他の工程を示した図である。
【符号の説明】
【0045】
10 フィルムヒータ
11 基体シート
12 ワイヤ
13 導電性パターン
14 ヒータ部
15 接続端子部
16 プレフォーム体
17 樹脂成形体
18 フィルムヒータ成形品
22 射出成形用金型
23 可動型
24 固定型
26 キャビティ面
27 キャビティ
B 屈曲領域