IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファルマリーズの特許一覧

特許7593987ネプリライシン(NEP)阻害剤、特にアミノペプチダーゼN(APN)及びネプリライシン(NEP)の混合阻害剤としてのN-ホルミルヒドロキシルアミン
<>
  • 特許-ネプリライシン(NEP)阻害剤、特にアミノペプチダーゼN(APN)及びネプリライシン(NEP)の混合阻害剤としてのN-ホルミルヒドロキシルアミン 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ネプリライシン(NEP)阻害剤、特にアミノペプチダーゼN(APN)及びネプリライシン(NEP)の混合阻害剤としてのN-ホルミルヒドロキシルアミン
(51)【国際特許分類】
   C07C 259/06 20060101AFI20241126BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C07C259/06 CSP
A61K31/197
A61K31/198
A61K45/00
A61P25/02
A61P25/04
A61P25/22
A61P25/24
A61P29/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022500094
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 FR2020051190
(87)【国際公開番号】W WO2021005294
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】1907537
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508125896
【氏名又は名称】ファルマリーズ
【氏名又は名称原語表記】PHARMALEADS
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エルヴェ・ポラ
(72)【発明者】
【氏名】マリー-クロード・フルニエ-ザルスキ
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール・ロック
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-535272(JP,A)
【文献】特表2002-532417(JP,A)
【文献】特表2002-503649(JP,A)
【文献】特表2002-502815(JP,A)
【文献】国際公開第2004/033441(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/070198(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/070195(WO,A1)
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2003年,13(19),P.3161-3166
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2003年,13(16),P.2715-2718
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 217/
A61K 31/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(I):
H-CO-N(OH)-CH2-CH(R1)-CO-NH-(CH2)n-CH(R2)-(CH2)m-CO-R3 (I)
[式中、
R1は、以下:
- アリールであって、非置換であるか、又はハロゲン、フェニル基、ベンジル基、OR4基(R4は、水素、及び1から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基から選択される)、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で置換されている、アリールから選択される1種又は複数種の基で置換された1から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素基
を表し、
R2は、以下:
- 非置換であるか、又は、アリールであって、非置換であるか、又はハロゲン、OR5基(R5、水素、1から4個の炭素を含む直鎖状又は分岐状アルキル基から選択される)、及びそれらの組み合わせら選択される1種又は複数種の基で置換されているアリールから選択される1種又は複数種の基で置換された、1個から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素基
を表し、
R3は、OHを表し、
m及びnは、互いに独立して、0及び1から選択される整数であり、
R1を有する炭素原子は絶対配置(R)を有し、かつ、R2を有する炭素原子は絶対配置(S)を有する。]
の化合物、並びにそれらの薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物。
【請求項2】
R1、1から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基であって、それ自体は非置換であるか又はフェニル基で置換されたフェニル基で置換されたものを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R2は、非置換であるか、又はアリールで置換された、1から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基を表す、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
- R1 = (R)-CH2Ph; R2 = (S)-CH3; R3 = OH; n=m=0;
- R1 = (R)-CH2Ph; R2 = (S)-CH2Ph; R3 = OH; n=m=0;
- R1 = (R)-CH2Ph; R2 = (S)-CH2Ph; R3 = OH; n=0; m=1;
- R1 = (R)-CH2Ph-4-Ph; R2 = (S)-CH3; R3 = OH; n=m=0;
- R1 = (R)-CH2Ph; R2 = (S)-CH2Ph; R3 = OH; n=1; m=0
である、請求項1から3のいずれ一項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物少なくとも1種と、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の他の有効成分を更に含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記他の有効成分、モルヒネ及びその誘導体、内在性カンナビノイド及びそれらの代謝の阻害剤、GABA誘導体、及びデュロキセチン又はチャネル阻害剤から選択される鎮痛剤を更に含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
鎮痛剤、抗不安剤、抗うつ剤又は抗炎症剤としての使用のための、請求項5から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
急性又は慢性の痛みの治療のための、請求項5から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記急性又は慢性の痛みが、術後の痛み、癌性の痛み、外傷性の痛み、頭痛、片頭痛、内臓の痛み、神経原性の痛み、神経障害性の痛み、神経抗炎症性の痛み、侵害受容性疼痛、又は一般的な痛みからなる群から選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
下記化学式(II):
H-CO-N(OR)-CH2-CH(R1)-CO-NH-(CH2)n-CH(R2)-(CH2)m-CO-R3 (II)
[式中、
Rは以下:
- 非置換であるか、又は、アリール基であって、非置換であるか又はアリール若しくは1~4個の炭素を含む直鎖状又は分岐状アルキル基から選択される1種又は複数種の基で置換されているアリール基1種若しくは複数種で置換された、1~6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素基、又は
- Si(R10)3基であって、R10は1~4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基であるSi(R10)3
を表し、
R1は、以下:
- アリールであって、非置換であるか、又はハロゲン、フェニル基、ベンジル基、OR4基(R4は、水素及び1から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基から選択される)、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で置換されている、アリールから選択される1種又は複数種の基で置換された1から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素基
を表し、
R2は以下:
- 非置換であるか、又は、アリールであって、非置換であるか、又は、ハロゲン、OR5基(R5、水素、1から4個の炭素を含む直鎖状又は分岐状アルキル基から選択される)、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で置換されている、アリールから選択される1種又は複数種の基で置換された、1個から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素基
を表し、
R3は、OHを表し、
m及びnは、互いに独立して、0及び1から選択される整数であり、
R1を有する炭素原子は絶対配置(R)を有し、かつ、R2を有する炭素原子は絶対配置(S)を有する]
の化合物、並びにそれらの薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規N-ホルミルヒドロキシルアミン誘導体及びそれらの混合ネプリライシン(NEP)阻害剤としての使用、及び有利には、エンケファリンの分解、とりわけ痛みの治療に関与する酵素であるNEP及びアミノペプチダーゼN(APN)の混合阻害剤としての使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
過去数年間に渡り、生命科学研究は、新しい治療標的を選択することによって人間の健康を改善するために、金属酵素とその活性モジュレーター(阻害剤及び/又は活性化剤)の研究に科学者を大幅に引き付けてきた。
【0003】
金属タンパク質の最大のカテゴリーは、亜鉛酵素で構成されている。過去数年間に渡り、感染症から癌に至るまでの多種多様なヒトの障害の生理病理学及び病因にZn2+酵素を関係付ける実質的な証拠が蓄積してきた。
【0004】
Zn2+メタロプロテアーゼは、呼吸、動脈圧、腸管通過、痛みの感覚や幸福の感覚、関節のレベルにおける細胞外マトリックスの再編成の維持、血管新生、脳活動に不可欠なタンパク質のホメオスタシス、水和・カロリー平衡の制御等、数多くの生理的調節プロセスに関与する重要なヒドロラーゼ群を示す。これらの酵素は、ペプチドやタンパク質の成熟化(不活性前駆体からの活性分子の形成)や不活性化(活性分子からの不活性代謝物の形成)を担う。例えば、エンケファリン、痛みの制御に関与するペプチドが挙げられるが、これらは2つの亜鉛メタロプロテアーゼ、中性アミノペプチダーゼ(APN)(Meek J.L. et al. (1977), Neuropharmacology, 16, 151-154)及びネプリライシン(NEP)(Milroy B. et al. (1978), Nature, 276, 523-526)によって不活性ペプチドに分解される。亜鉛メタロプロテアーゼの一般的な特徴は、少なくとも1個のZn2+カチオンの存在であり、酵素のヒドロラーゼ活性には不可欠である。従って、このタイプの酵素の効率的な阻害剤を開発するための従来の戦略は、酵素の様々な結合サブサイトを認識し、Zn2+に強い親和性を持つ基を持つ分子を構想することである(review of Roques B.P. et al. (1993), Pharmacol Rev, 45, 87-146; Roques B.P. et al. (2000), TIPS, 21, 475-483)。
【0005】
Zn2+イオンは、これらの酵素の触媒活性に必須であり、酵素の活性部位のレベルに位置し、変化を受ける基質分子との相互作用を通じて触媒機構に直接関与している。Zn2+の配位の変化は、酵素の活性の阻害を誘発するタンパク質のコンフォメーションの変化に関与しているようである。
【0006】
そのメカニズムを考えると、これらの亜鉛金属酵素の阻害剤の一般的な構造は、Zn2+の優れたキレート剤であり、Zn2+が4配位又は5配位になる酵素-阻害剤複合体を導くために、Zn2+に対して単座又は二座配位子のように振る舞うことができる基を含む。
【0007】
したがって、Zn2+キレート基を含む化合物は、NEP酵素阻害剤として、更に有利には、内因性エンケファリンをその酵素分解から完全に保護することにより、エンケファリンの薬理学的活性、特に、鎮痛剤と抗うつ剤としての薬理学的活性を明らかにすることを可能にする、APN及びNEP酵素阻害剤の混合物として考えられ得る(Noble et al. (2007) Expert.Opin. Ther. Targets, 11, 145-149)。これら2つの酵素の特定の混合阻害剤はすでに存在し、ヒドロキサム酸(FR2518088及びFR2605004)、アミノホスフィン化合物(FR2755135、FR2777780、FR0855015)、チオール官能基を持つアミノ酸誘導体(FR2651229、FR0510862、FR0604030、FR0853092)、内因性ペプチド(Wisner et al. (2006), PNAS, 103, 17979-17984)が、文献には記載されている。
【0008】
これらの様々な分子は、静脈内経路により、又は経口経路により、異なるタイプの痛み、特に過剰な侵害受容(Noble et al. (2007), Expert. Opin. Ther. Targets, 11, 145-149)及び神経因性疼痛(Menendez et al. (2008), Eur J Pharmacol, 596, 50-55; Thibault et al. (2008), Eur. J. Pharmacol., 600, 71-77)を介する急性又は慢性痛みに対しする薬理効果を付与するこれらの分子に物理化学的(溶解度)及び薬力学的(生物学的利用能)特性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】FR2518088
【文献】FR2605004
【文献】FR2755135
【文献】FR2777780
【文献】FR0855015
【文献】FR2651229
【文献】FR0510862
【文献】FR0604030
【文献】FR0853092
【非特許文献】
【0010】
【文献】Meek J.L. et al. (1977), Neuropharmacology, 16, 151-154
【文献】Malfroy B. et al. (1978), Nature, 276, 523-526
【文献】review of Roques B.P. et al. (1993), Pharmacol Rev, 45, 87-146
【文献】Roques B.P. et al. (2000), TIPS, 21, 475-483
【文献】Noble et al. (2007) Expert.Opin. Ther. Targets, 11, 145-149
【文献】Wisner et al. (2006), PNAS, 103, 17979-17984
【文献】Menendez et al. (2008), Eur J Pharmacol, 596, 50-55
【文献】Thibault et al. (2008), Eur. J. Pharmacol., 600, 71-77
【文献】Mas Nieto et al. (2001), Neuropharmacol. 41, 496-506
【文献】Valverde et al. (2001), Eur. J. Neurosci., 13, 1816-1824
【文献】Menendez et al. (2007), Eur. J. Pharmacol., 596, 50-55
【文献】Heravi M&Zadsirjan V(2014)、Tetrahedron:Asymmetry、1061-1090
【文献】Naeslund C et al. (2005), Tetrahedron, 61, 1181-1186
【文献】Organic Syntheses, (1955) coll. Vol. 3, p.377; (1945) vol.25, p.42
【文献】Fournie-Zaluski et al. in J Med Chem (1986), 29, 751-753
【文献】Hassner A and Alexanian V (1978), Tetrahedron Lett, 19, 4475
【文献】Ripka AS et al. (1998), Bioorg Med Chem Lett, 8, 357
【文献】Aubry M et al. (1987), Biochem Cell Biol 65, 398-404
【文献】Goudreau N et al. (1994), Anal Biochem, 219, 87-95
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、Zn2+イオンを効率的にキレート化し、NEP酵素の異なるサブサイトと相互作用でき、有利な方法で、APNの酵素サブサイトと相互作用することもでき、モルヒネ物質の有益な特性、特に鎮痛、行動効果(痛みと抗うつ反応の感情的要素の減少)を有し、その欠点(中毒、身体的及び精神的依存、呼吸障害、便秘)を欠く化合物を提供することである。更に、化合物が前述の欠点なしで有益な末梢効果(抗炎症性及び神経因性疼痛)を有することが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、次の一般化学式(I)を有する化合物に関連する:
H-CO-N(OH)-CH2-CH(R1)-CO-NH-(CH2)n-CH(R2)-(CH2)m-CO-R3(I)
ここで、
R1は、非置換の又は以下から選択される1種又は複数種の基で置換された1から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素基を表し:
- それ自体は非置換又はフッ素や臭素等のハロゲン、フェニル基、ベンジル基、OR4基、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で置換されているアリールであって、R4は、水素及び1から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基から選択されるアリール、
- 1個又は2個のヘテロ原子を含む5員又は6員のヘテロアリールであって、各ヘテロ原子は酸素、窒素、硫黄から選択されるヘテロアリール、
- 5員又は6員のシクロアルキル、及び
- 1個又は2個のヘテロ原子を含む5員又は6員のシクロヘテロアルキルであって、各ヘテロ原子は酸素、窒素、硫黄から選択されるシクロヘテロアルキル、
R2は以下を表し:
- 水素、
- 非置換、又は以下から選択される1種又は複数種の基で置換された、1個から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素基:
・OR5、SR5及びS(O)R5から選択される基であって、R5は水素、1から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基から選択される、基、
・CO2R6基であって、R6は水素、2から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基及びベンジル基から選択されるCO2R6基、
・それ自体は非置換又はフッ素や臭素等のハロゲン、OR5基、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で置換されているアリールであって、R5は前述した定義と同じ定義を有するアリール、
・1個又は2個のヘテロ原子を含む5員又は6員のヘテロアリールであって、各ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄から選択されるヘテロアリール、
・5員又は6員のシクロアルキル、及び
・1個又は2個のヘテロ原子を含む5員又は6員のシクロヘテロアルキルであって、各ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄から選択されるシクロヘテロアルキル、
- 非置換又はフッ素や臭素等のハロゲン、OR5基、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で置換されているアリールであって、R5は前述した定義と同じ定義を有するアリール、又は
- 非置換又はフッ素及び臭素等のハロゲン、OR5基、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で置換されている、1個又は複数個、好ましくは1個又は2個のヘテロ原子を含むヘテロアリールであって、各ヘテロ原子は酸素、窒素及び硫黄から選択され、R5は前述した定義と同じ定義を有しするヘテロアリール、
R3は以下を表し:
- R7は以下から選択されるOR7基:
・水素、
・2から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基、
・ベンジル基、及び
・R8及びR9は、互いに独立して、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアリール基及びヘテロアリールアルキル基から選択されるCHR8-COOR9、CHR8-O-C(=O)R9又はCHR8-O-C(=O)-OR9基、
mとnは、互いに独立して、0と1から選択される整数である、化合物に関連し、並びにそれらの薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物に関連する。
【0013】
本発明の式(I)の化合物は、触媒作用のZn2+に関して二座配位子のように振る舞うことができる、Zn2+の配位子としてのN-ホルミルヒドロキシルアミンH-CO-N(OH)-官能基を含む。
【0014】
本発明は、次の化学式(II)の化合物にも関する:
H-CO-N(OR)-CH2-CH(R1)-CO-NH-(CH2)n-CH(R2)-(CH2)m-CO-R3(II)
Rは以下を表し:
- 非置換、又はそれ自体は非置換又はアリール若しくは1~4個の炭素を含む直鎖状又は分岐状アルキル基から選択される1種又は複数種の基で置換されている、1種若しくは複数種のアリール基で置換された1~6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素基、又は
- Si(R10)3基であって、R10は1~4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基であるSi(R10)3基、
R1、R2及びR3は前記定義の通りであり、
並びにそれらの薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物にも関する。
【0015】
本発明は、前記のような化学式(I)の化合物又は化学式(II)の化合物にも関し、ただし、化学式(II)の化合物中のR基は、医薬として、特に、鎮痛剤、抗不安剤、抗うつ剤、又は抗炎症剤としての使用のために、生理的条件下で不安定な基である。
【0016】
本発明は、化学式(II)の化合物中のR基が生理的条件下で不安定な基であることを条件として、本発明による化学式(I)の化合物又は化学式(II)の化合物を少なくとも1種含む医薬組成物にも関連する。
【0017】
本発明は、化学式(II)の化合物中のR基が生理的条件下で不安定な基であるという条件で、前記のような化学式(I)の化合物又は化学式(II)の化合物少なくとも1種、並びにモルヒネ及びその誘導体、内在性カンナビノイド及びそれらの代謝の阻害剤、ガバペンチン又はプレガバリン等のGABA誘導体、デュロキセチン又はNav1.7阻害剤等のチャネル阻害剤から選択される少なくとも1種の化合物を含む医薬組成物にも関連する。
【0018】
本発明は、鎮痛剤、抗不安剤、抗うつ剤又は抗炎症剤としての使用のための前記のような医薬組成物に関する。
【0019】
最後に、本発明は、本発明による化学式(I)の化合物及び化学式(II)の化合物を調製するための方法に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、マウスのホットプレート試験でビヒクルとして(EtOH/Tween 80/水)(1/1/8)に可溶化されたTHCと化合物Ib-1の静脈内同時投与の効果を示している。灰色のバーは、化合物Ib-1を単独で(10mg/kgのレベルで)注射した後の鎮痛反応(10%)に対応する。市松模様のバーは、THCを単独で(0.375mg/kgのレベルで)注射した後の鎮痛反応(12%)に対応する。水平線を含むバーは、化合物Ib-1と共に化合物Ib-1を(0.375mg/kgのTHCに対して10mg/kgの1b-1のレベルで)注射した後の鎮痛反応(65%)に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の範囲内で、「炭化水素基」という表現は、以下に定義するアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を指す。「アルキル基」は、本発明の意味の範囲内で、飽和状態の直鎖状又は分岐状の炭化水素鎖を指すと解釈される。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基が挙げられる。
【0022】
「アルケニル基」は、本発明の意味の範囲内で、1個又は複数個の二重結合を含む直鎖状又は分岐状の炭化水素鎖を指すものと解釈される。例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基又はヘキセニル基が挙げられる。
【0023】
「アルキニル基」は、本発明の意味の範囲内で、少なくとも1個の三重結合を含む直鎖状又は分岐状の炭化水素鎖を指すと解釈される。例えば、エチニル基又はプロピニル基が挙げられる。
【0024】
本発明の意味の範囲内で、炭化水素基は、有利には、アルキル基の場合は1個から6個の炭素原子を、アルケニル基又はアルキニル基の場合は2個から6個の炭素原子を含む。
【0025】
「シクロアルキル」は、本発明の意味の範囲内で、有利には5個又は6個の炭素原子を含む飽和炭化水素環、特に、シクロヘキシル基又はシクロペンチル基を指すと解釈される。
【0026】
「シクロヘテロアルキル」は、本発明の意味の範囲内で、有利には5個又は6個の炭素原子を含む飽和炭化水素環であって、ここで、1個又は複数個、有利には1個から2個の炭素原子が、硫黄原子、窒素原子、酸素原子から選択されるヘテロ原子によって交換された飽和炭化水素環を指すと解釈される。
【0027】
「ヘテロアルキル」は、本発明の意味の範囲内で、前記で定義されたようなアルキル基であって、ここで、1個又は複数個、有利には1個から2個の炭素原子が、硫黄原子、窒素原子、酸素原子から選択されるヘテロ原子によって交換されたアルキル基を指すと解釈される。
【0028】
「アリール」は、本発明の意味の範囲内で、好ましくは6個から10個の炭素原子を含み、1個又は複数個の縮合環を含む芳香族炭化水素基を指すと解釈される。それは、有利には、フェニル基又はナフチル基であり、好ましはフェニル基である。
【0029】
「アリールアルキル」は、本発明の意味の範囲内で、前記のようなアルキル基であって、同じ炭素原子又はいくつかの異なる炭素原子が有する、1個又は複数個、好ましくは1個又は2個の水素原子が前記のようなアリール基に交換されたアルキル基を指すと解釈される。それは有利には、ベンジル基である。
【0030】
「ヘテロアリール」は、本発明の意味の範囲内で、有利には5個又は6個の原子を含む芳香族基であって、ここで、1個又は複数個、有利には1個から2個の炭素原子が、硫黄原子、窒素原子、酸素原子から選択されるヘテロ原子によって交換された芳香族基を指すと解釈される。ヘテロアリール基の例は、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、キノリル基、キノキサリル基又はインドリル基である。好ましくは、フェニル基の同配体であるチエニル基である。
【0031】
「ヘテロアリールアルキル」は、本発明の意味の範囲内で、前記で定義されたようなアルキル基であって、ここで、同じ炭素原子又はいくつかの異なる炭素原子が有する、1個又は複数個、好ましくは1個又は2個の水素原子が、上記で定義されたようなヘテロアリール基によって交換されたアルキル基を指すと解釈される。
【0032】
用語「ハロゲン」は、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素を指す。有利には、それはフッ素原子、臭素原子又は塩素原子である。更に有利には、フッ素原子又は臭素原子であり、好ましくはフッ素原子である。
【0033】
「不飽和」は、本発明の意味の範囲内で、炭化水素鎖が1個又は複数個の不飽和、有利には1個を含んでいてもよいことを指すと解釈される。
【0034】
「不飽和」は、本発明の意味の範囲内で、二重又は三重の炭素-炭素結合(C=C又はC≡C)を指すと解釈される。
【0035】
「立体異性体」は、本発明の意味の範囲内で、幾何学的異性体又は光学的異性体を指すと解釈される。
【0036】
幾何学的異性体は、二重結合上の置換基の異なる配置から生じ、Z又はEの配置になることがある。
【0037】
光学異性体は、とりわけ、4つの異なる置換基を含む炭素原子における置換基の空間における別の配置の結果である。この炭素原子は、その結果、キラル中心又は非対称中心を構成する。光学異性体は、ジアステレオ異性体及びエナンチオ異性体で構成されている。お互いに鏡像であるが重ね合わせ可能ではない光学異性体は、「エナンチオ異性体」を指す。重ね合わせ可能でも鏡像でもない光学異性体は、「ジアステレオ異性体」を指す。
【0038】
反対のキラリティーの2つの個々のエナンチオ異性体形態を等量含む混合物は、「ラセミ混合物」を指す。
【0039】
「キラル基」は、本発明の意味の範囲内で、その鏡像と重ね合わせ可能ではない基を指すと解釈される。このようなキラル基は、特に不斉炭素原子、つまり4つの異なる置換基(水素を含有する)による炭素原子置換を含む。
【0040】
「絶対配置」は、本発明の意味の範囲内で、原子又は化学基が結合している不斉炭素原子の周りの原子又は化学基の空間的配置を指すと解釈される。不斉炭素の2つの可能な絶対配置をS及びRと表記する。
【0041】
「エナンチオ選択的合成」は、本発明の意味の範囲内で、得られる合成分子の単一のエナンチオ異性体を導く合成を指すと解釈される。
【0042】
用語「N-ホルミル化反応」は、反応の過程で、有機化合物の窒素原子がホルミル-CHO基によって置換される反応を指す。
【0043】
用語「ペプチドカップリング剤」は、有機化合物のカルボン酸官能基が他の有機化合物の末端アミン官能基とペプチド結合を形成できるように、カルボン酸官能基を活性化できる有機試薬を示している。最も一般的な使用のカップリング剤としては、HATU(ジメチルアミノ)-N、N-ジメチル(3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-3-イルオキシ)メタニミニウムヘキサフルオロホスフェート)、TBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート)、BOP(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)、PyBOP(ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)、HOBt(ヒドロキシベンゾトリアゾール)、又はDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)及びEDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)等のカルボジイミドが挙げられる。このようなカップリング剤は、他と一緒に組み合わせて使用することもある。例えば、ペプチドカップリング反応で、EDCはHOBtと組み合わせて使用されることが多い。
【0044】
「生理的条件下で不安定な基」は、本発明の意味の範囲内で、それらが体に浸透したときに、生理的条件下で除去される化学基、例えばヒドロキシル、アミン又は酸官能基の一般的な保護基を指すと解釈される。例えば、経口投与では、胃の酸性pHが不安定な基の脱保護の原因となるだろう。
【0045】
本発明の化合物は、その薬学的に許容される塩又は溶媒和物の形態であってよい。本発明において、「薬学的に許容される」とは、一般に安全で毒性がなく、獣医の使用及びヒトの医薬の使用が許容される、医薬組成物の調製に有用なものを指すと解釈される。
【0046】
化合物の「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容される塩であり、本明細書で定義されるように、親化合物の所望の薬理学的活性を有する塩を指すと解釈される。そのような塩は以下を含む:
(1)塩基で形成された薬学的に許容される付加塩、及び
(2)その水和物及び溶媒和物。
【0047】
通常、化学式(I)の化合物は、薬理学的に許容される有機若しくは無機塩基、又はアルカリ金属イオン若しくはアルカリ土類金属イオン等の金属イオンで得られる付加塩の形態である。有機塩基は、例えば、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N-メチルグルカミン、トリエタノールアミン及びトロメタミンである。無機塩基は、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムである。本発明の化合物の治療的使用に許容される溶媒和物は、溶媒の潜在的な存在のために、化合物の調製の最終段階中に形成されるもの等の従来の溶媒和物を含む。例えば、水(水和物と呼ばれる)又はエタノールの存在により、溶媒和物である可能性がある。溶媒和物は、好ましくは、エタノラート等のアルコラートである。
【0048】
好ましくは、本発明の化合物は、そのナトリウム塩又は水和物の形態である。
【0049】
R1は、有利には、以下から選択される1種又は複数種の基で置換された1から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素基を表し:
- それ自体は非置換又はフッ素や臭素等のハロゲン、フェニル基、ベンジル基、OR4基、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で置換されているアリールであって、R4は、水素及び1から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基から選択されるアリール、
- 1個又は2個のヘテロ原子を含む5員又は6員のヘテロアリールであって、各ヘテロ原子は酸素、窒素、硫黄から選択されるヘテロアリール、
- 1個又は2個のヘテロ原子を含む5員又は6員のシクロヘテロアルキルであって、各ヘテロ原子は酸素、窒素、硫黄から選択されるシクロヘテロアルキル、
【0050】
R1は、有利には、非置換、又はそれ自体は非置換又はフッ素及び臭素等のハロゲン、フェニル基、ベンジル基、OR4基、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で置換されているアリールで置換されている、1から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素基を表し、R4は水素及び1~4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基から選択される。
【0051】
好ましい実施形態によれば、R1は、それ自体は非置換又はフッ素及び臭素等のハロゲン、フェニル基、ベンジル基、OR4基、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で置換されているアリールで置換されている、1から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素基を表し、R4は水素及び1~4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基から選択される。
【0052】
より有利には、R1は、それ自体は非置換又はフェニル基で置換されているアリール、好ましくはフェニル基で置換されている炭化水素基、好ましくは1から6個、好ましくは1個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基を表す。
【0053】
特定の実施形態によれば、R1を有する炭素は、絶対配置(R)又は(S)、好ましくは(R)を有する。
【0054】
R2は、有利には、以下を表す:
- 水素、又は
- 非置換又は以下から選択される1種又は複数種の基で置換されている、1個から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素基:
・OR5、SR5及びS(O)R5から選択される基であって、R5は水素、1から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基から選択される、基、
・CO2R6基であって、R6は水素、2から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基及びベンジル基から選択されるCO2R6基、
・それ自体は非置換又はフッ素や臭素等のハロゲン、OR5基、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で置換されているアリールであって、R5は前述した定義と同じ定義を有するアリール
・1個又は2個のヘテロ原子を含む5員又は6員のヘテロアリールであって、各ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄から選択されるヘテロアリール、
・5員又は6員のシクロアルキル、及び
・1個又は2個のヘテロ原子を含む5員又は6員のシクロヘテロアルキルであって、各ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄から選択されるシクロヘテロアルキル。
【0055】
他の実施態様によれば、R2は、有利には、以下を表す:
- 非置換又は以下から選択される1種又は複数種の基で置換されている、1個から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素基:
・OR5、SR5及びS(O)R5から選択される基であって、R5は水素、1から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基から選択される、基、
・CO2R6基であって、R6は水素、2から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基及びベンジル基から選択されるCO2R6基、
・それ自体は非置換又はフッ素や臭素等のハロゲン、OR5基、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で置換されているアリールであって、R5は前述した定義と同じ定義を有するアリール
・1個又は2個のヘテロ原子を含む5員又は6員のヘテロアリールであって、各ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄から選択されるヘテロアリール、
・5員又は6員のシクロアルキル、及び
・1個又は2個のヘテロ原子を含む5員又は6員のシクロヘテロアルキルであって、各ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄から選択されるシクロヘテロアルキル、
- 非置換又はフッ素や臭素等のハロゲン、OR5基、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で置換されているアリールであって、R5は前述した定義と同じ定義を有するアリール、又は
- 非置換、又はフッ素及び臭素等のハロゲン、OR5基、及びそれらの組み合わせから選択される、1種又は複数種の基で置換されている1個又は複数個、好ましくは1個又は2個のヘテロ原子を含むヘテロアリールであって、R5は前述した定義と同じ定義を有し、各ヘテロ原子は酸素、窒素及び硫黄から選択されるヘテロアリール。
【0056】
好ましい実施態様によれば、R2は、非置換、又は以下から選択される1種又は複数種の基で置換されている、1個から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素基を表す:
・OR5、SR5及びS(O)R5から選択される基であって、R5は水素、1から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基から選択される、基、
・CO2R6基であって、R6は水素、2から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基及びベンジル基から選択されるCO2R6基、
・それ自体は非置換又はフッ素や臭素等のハロゲン、OR5基、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で置換されているアリールであって、R5は前述した定義と同じ定義を有するアリール
・1個又は2個のヘテロ原子を含む5員又は6員のヘテロアリールであって、各ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄から選択されるヘテロアリール、
・5員又は6員のシクロアルキル、及び
・1個又は2個のヘテロ原子を含む5員又は6員のシクロヘテロアルキルであって、各ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄から選択されるシクロヘテロアルキル。
【0057】
より有利には、R2は、非置換又は以下から選択される1種又は複数種の基で置換されている、1個から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の、炭化水素基、好ましくはアルキル基を表す:
・それ自体は非置換又はフッ素や臭素等のハロゲン、OR5基、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で置換されているアリールであって、R5は前述した定義と同じ定義を有するアリール
・5員又は6員のシクロアルキル、及び
・1個又は2個のヘテロ原子を含む5員又は6員のシクロヘテロアルキルであって、各ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄から選択されるシクロヘテロアルキル。
【0058】
特に、R2は、非置換、又はそれ自体は非置換又はフッ素や臭素等のハロゲン、OR5基、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で置換されているアリールで置換されている、1個から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の炭化水素基、好ましくはアルキル基を表し、R5は前述した定義と同じ定義を有する。より具体的には、基R2は、非置換、又はそれ自体は非置換であるアリールで置換されている、1個から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の、炭化水素基、好ましくはアルキル基を表す。好ましくは、アリール基はフェニル基である。更により有利には、基R2は、非置換、又はそれ自体は非置換であるフェニルで置換されている、1個から6個、好ましくは1個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。
【0059】
特定の実施形態によれば、R2を有する炭素は、絶対配置(R)又は(S)、好ましくは(S)を有する。
【0060】
R3は、有利には、R7が以下から選択されるOR7基を表す:
・水素、
・2から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基、及び
・ベンジル基。
【0061】
好ましい実施形態によれば、R3は、R7が以下から選択されるOR7基を表す:
・水素、及び
・2から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基。
【0062】
更により好ましい方法では、R3はOH基を表す。
【0063】
特定の実施形態によれば、化学式(I)の範囲内で、
R1は、それ自体は非置換又はフッ素、臭素、フェニル基、ベンジル基、OR4基、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で、好ましくはフェニル基で置換されているアリール、好ましくはフェニルで置換されている、1から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素基、とりわけアルキル基を表し、R4は水素及び1~4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基から選択される、
R2は、非置換又は以下から選択される1種又は複数種の基で置換されている、1から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素基、好ましくはアルキル基を表し:
・それ自体は非置換又はフッ素、臭素、OR5基、及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数種の基で置換されているアリールであって、R5は水素、1から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基から選択されるアリール
・1個又は2個のヘテロ原子を含む5員又は6員のヘテロアリールであって、各ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄から選択されるヘテロアリール、
・5員又は6員のシクロアルキル、及び
・1個又は2個のヘテロ原子を含む5員又は6員のシクロヘテロアルキルであって、各ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄から選択されるシクロヘテロアルキル、
好ましくは、R2は、非置換又はフェニルで置換されている、1から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基を表し
R3は、R7は以下から選択されるOR7基を表し:
・水素、及び
・2から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基、
好ましくは、R7は水素である。
【0064】
特定の実施形態によれば、本発明による化学式(I)の化合物は次の化合物である:
- R1 = (R)-CH2Ph; R2 = (S)-CH3; R3 = OH; n=m=0;
- R1 = (S)-CH2Ph; R2 = (S)-CH3; R3 = OH; n=m=0;
- R1 = (R)-CH2Ph; R2 = (S)-CH2Ph; R3 = OH; n=m=0;
- R1 = (S)-CH2Ph; R2 = (S)-CH2Ph; R3 = OH; n=m=0;
- R1 = (R)-CH2Ph; R2 = (S)-CH2Ph; R3 = OH; n=0; m=1;
- R1 = (S)-CH2Ph; R2 = (S)-CH2Ph; R3 = OH; n=0; m=1;
- R1 = (R)-CH2Ph-4-Ph; R2 = (S)-CH3; R3 = OH; n=m=0;
- R1 = (S)-CH2Ph-4-Ph; R2 = (S)-CH3; R3 = OH; n=m=0;
- R1 = (S)-CH2Ph; R2 = (S)-CH2Ph; R3 = OH; n=1; m=0;若しくは
- R1 = (R)-CH2Ph; R2 = (S)-CH2Ph; R3 = OH; n=1; m=0のいずれかの化合物
又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物。
【0065】
好ましい方法では、本発明の化合物は、
- R1 = (R)-CH2Ph; R2 = (S)-CH3; R3 = OH; n=m=0;
- R1 = (R)-CH2Ph; R2 = (S)-CH2Ph; R3 = OH; n=m=0;
- R1 = (R)-CH2Ph; R2 = (S)-CH2Ph; R3 = OH; n=0; m=1;
- R1 = (R)-CH2Ph-4-Ph; R2 = (S)-CH3; R3 = OH; n=m=0;又は
- R1 = (R)-CH2Ph; R2 = (S)-CH2Ph; R3 = OH; n=1; m=0のいずれかの化合物である。
【0066】
本発明は、次の化学式(II)の化合物にも関する:
H-CO-N(OR)-CH2-CH(R1)-CO-NH-(CH2)n-CH(R2)-(CH2)m-CO-R3(II)
ここで:
Rは以下を表し:
- 非置換、又はそれ自体は非置換又はアリール若しくは1~4個の炭素を含む直鎖状又は分岐状アリール基から選択される1種又は複数種の基で置換されている、1種若しくは複数種のアリール基で置換された1~6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素基、又は
- Si(R10)3基であって、R10は1~4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基であるSi(R10)3基、並びに
R1、R2、R3、m及びnは前記で定義されたとおりである。
【0067】
好ましくは、Rは、1から6個の炭素原子を含み、非置換若しくはアリール基、好ましくはフェニルで置換された直鎖状若しくは分岐状アルキル基を表す、又はRはSi(R10)3基を表し、R10は好ましくはメチルである。より好ましい方法では、Rはベンジル基を表す。
【0068】
Rが前記のような不安定な化学基である場合、化合物(II)は、R基の脱保護に適した生理的条件の作用下で体内に浸透すると、化合物(I)に変換される。その結果、化合物(II)は、化合物(I)のプロドラッグを構成する。
【0069】
化学式(I)又は化学式(II)の本発明の化合物は、R基が生理的条件下で不安定な基であれば、医薬として使用できる。より具体的には、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせ、これらの化合物を使用することにより、有効成分である前記の化合物の少なくとも1種を含む医薬組成物を調製できる。前記賦形剤は、当業者に知られている通常の賦形剤の中から、所望の剤形及び投与様式に従って選択される。
【0070】
本発明の化合物は、エンケファリンの分解に関与する酵素活性を共同で阻害し、それらの細胞外内因性レベルを増加させ、この点で効率的な鎮痛剤及び/又は抗うつ剤であることが判明した。化合物の鎮痛効果は、術後の痛み、癌性の痛み、外傷性の痛み、頭痛、片頭痛、内臓の痛み、神経原性の痛み、神経障害性の痛み、神経抗炎症性の痛み、侵害受容性の痛み又は線維筋痛症等の一般的な痛み等、急性又は慢性のさまざまなタイプの痛みに現れる。痛みの例としては、機械的痛み(例えば、筋肉痛、血管虚血)、帯状疱疹によって引き起こされる痛み、癌自体又は治療の結果に関連する癌性の痛み、抗炎症性又は変性疾患(例えば、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、痛風)に関連する痛み、1型及び2型糖尿病に関連する痛み、片頭痛に関連する痛み、顔面神経痛、頭痛、末梢神経の障害に関連する痛み、背側腰神経痛、頸部上腕、歯の痛み、火傷に関連する痛み、日焼け、咬傷又は刺痛、感染症に関連する痛み、代謝障害(糖尿病、アルコール依存症)、神経圧迫(椎間板ヘルニア、手根管、線維症等)、骨折、火傷、血腫、切り傷及び炎症、内臓痛(腸、腸の抗炎症性疾患及び機能性腸障害によって引き起こされる、腎疝痛等の尿性胆嚢炎、膀胱炎、月経困難症等の生殖器、膀胱炎、心臓心筋梗塞の痛み等の心内膜炎(cardiac endometriosis)が挙げられる。
【0071】
最後に、通常、及び有利には、本発明の化合物は、モルヒネに基づく物質の主要な欠点(耐性、身体的依存、呼吸抑制、吐き気、鎮静作用、便秘等)を有さない。
【0072】
したがって、化学式(I)又は化学式(II)の本発明の化合物は、R基が生理的条件下で不安定な基であり、医薬組成物がそれを含んでいれば、鎮痛剤、抗不安剤、抗うつ剤又は抗炎症剤から選択される少なくとも1種の用途に有用であり得る。
【0073】
本発明は、R基が生理的条件下で不安定な基であるのであれば、前記のように定義される化学式(I)又は化学式(II)の化合物、及び鎮痛剤、抗不安剤、抗うつ剤、又は抗炎症剤、より具体的には痛みの治療を目的とした医薬の製造のためにそれを含む医薬組成物の使用にも関する。痛みは、とりわけ、前記で定義されたような慢性又は急性の痛みである可能性がある。
【0074】
本発明は、痛み、とりわけ、前記で定義された慢性又は急性の痛みを治療するための方法にも関し、この方法は、R基が生理的条件下で不安定な基であれば、本発明による化学式(I)又は化学式(II)又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物、又は本発明の組成物の化合物の有効量を必要とする患者に投与、好ましくは非経口経路、経口経路又は経鼻経路で投与することを含んでいる。
【0075】
本発明では、患者(前記で定義したような痛み、とりわけ、慢性又は急性の痛みに罹患している)は、通常は動物、好ましくは哺乳類、有利にはヒトである。
【0076】
本発明の化合物は、単独で、又はその抗侵害受容特性で知られている化合物と組み合わせて使用できる。この組み合わせは、特に既知の抗侵害受容性化合物が一般的に強い用量で望ましくない二次的効果を有するため、薬理効果の相互作用を可能とする可能性がある。
【0077】
このような薬理効果の相乗効果(シナジー)は、本発明の混合阻害剤とは異なる化学構造を持つ混合阻害剤と、既知の抗侵害受容剤である化合物を組み合わせることにより過去に実証されている。したがって、抗侵害受容反応の強力な相互作用は、例えば、モルヒネ(Mas Nieto et al. (2001), Neuropharmacol. 41, 496-506)、THC(Valverde et al. (2001), Eur. J. Neurosci., 13, 1816-1824)、ガバペンチン(Menendez et al. (2007), Eur. J. Pharmacol., 596, 50-55)及びプレガバリン等の類似体との組み合わせで得られている。これらの関連は、同等の薬理効果のために、関連する成分(例えば、モルヒネ及び阻害剤)の用量を3~10倍減らすことを可能にする。
【0078】
したがって、一実施形態によれば、医薬組成物は、有効成分である、本発明の化合物の少なくとも1種と、少なくとも1種の抗侵害受容剤及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを組み合わせて含む。抗侵害受容剤は、以下から選択できる:
- モルヒネ及びその誘導体、
- 内在性カンナビノイド及びそれらの代謝阻害剤、Δ9THC、合成カンナビノイド受容体アゴニスト又はアナンダミド分解阻害剤(FAAH)、
- ガバペンチンやプレガバリン等のGABA誘導体、
- デュロキセチン、セロトニン、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤又は
- Nav1.7阻害剤等のチャネル阻害剤。
【0079】
一実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、THCと組み合わせて、有効成分として、本発明の化合物の少なくとも1種を含む。別の実施形態では、本発明は、:
a)R基が生理的条件下で不安定な基である場合、前記で定義されたような化学式(I)又は化学式(II)の少なくとも1つの化合物を含む第1の組成物、及び
b)モルヒネ及びその誘導体、内在性カンナビノイド及びそれらの代謝阻害剤、ガバペンチン又はプレガバリン等のGABA誘導体、デュロキセチン又はNav1.7阻害剤等のチャネル阻害剤から選択される少なくとも1つの他の有効成分、とりわけ鎮痛剤を含む第2の組成物、
を含み、同時使用、個別使用、又は時間の経過とともに使用するための組み合わせ製品である、キットに関する。
【0080】
本発明によるキットは、特に、痛みの治療、通常は前記で定義されたような慢性又は急性の痛みの治療のために、鎮痛剤、抗不安剤、抗うつ剤又は抗炎症剤としてとりわけ使用される。
【0081】
本発明による医薬組成物は、静脈内経路若しくは皮膚内経路等の非経口経路、又は局所経路、経口若しくは経鼻経路によって投与できる。
【0082】
非経口経路により投与可能な形態は、分散剤及び/又は薬理学的に適合性のある湿潤剤を含み得る、水性懸濁液、等張食塩水、又は滅菌した注射可能な溶液を含む。経口経路により投与可能な形態は、錠剤、ソフト又はハードカプセル、粉末、丸薬、経口溶液及び懸濁液を含む。経鼻経路により投与可能な形態はエアロゾルを含む。局所経路により投与可能な形態としては、パッチ、ゲル、クリーム、軟膏、ローション、スプレー、点眼薬が挙げられる。
【0083】
本発明の化合物の有効量は、例えば、選択された投与経路、体重、年齢、性別、治療する病状の進行状態、及び治療される固体の感受性等の多くのパラメーターの関数として変化する。
【0084】
本発明は、本発明による化学式(I)の化合物及び化学式(II)の化合物を調製するための方法にも関し、前記方法は、次の連続する工程を含む:
(a)次の化学式(III):
H-CO-N(OR)-CH2-CH(R1)-C(O)OH(III)
の化合物と、次の化学式(IV):
H3N+-(CH2)n-CH(R2)-(CH2)m-C(O)R3(IV)
の化合物との、TBTU、HATU、EDC、HOBt、BOP、PyBOP、DCC又はそれらの組み合わせ等のペプチドカップリング剤の存在下での反応であって、R、R1、R2、R3、n及びmは、前記で定義されたものであり、前記で定義されたような化学式(II)の化合物が形成される、反応、
(b)化学式(I)の化合物の誘導をもたらす、工程(a)に由来する化学式(II)の化合物の脱保護。
【0085】
化学式(I)の化合物は、潜在的に1個から3個の非対称中心を有する。基R1、R2、及びR3は、関係する酵素の活性部位との相互作用が認められる立体化学に対応する光学的に純粋な配置を得るように、通常導入される。
【0086】
工程(a):
特定の実施形態によれば、化学式IIの化合物は、次の合成工程によって得ることができる:
(i-1)アクリル酸誘導体VとヒドロキシルアミンVIとの反応による酸VIIへの誘導、
【0087】
【化1】
【0088】
ここで、RとR1は以前に定義したものである。
【0089】
好ましくは、ヒドロキシルアミンVIは、ベンジルヒドロキシルアミンに対応する。
【0090】
(i-2)無水酢酸の存在下でのギ酸中での酸VIIのN-ホルミル化反応により、化学式IIIの化合物が得られる。
【0091】
【化2】
【0092】
次に、化合物IIIは、式IVの化合物とペプチドカップリングを受けて、式IIの化合物をもたらす:
【0093】
【化3】
【0094】
ここで、R、R1、R2、R3、n及びmは、前記で定義されたものである。
【0095】
好ましくは、使用されるカップリング剤はTBTUである。有利には、反応は、DMF等の非プロトン性極性溶媒中でDIEA(ジイソプロピルエチルアミン)の存在下で実行される。
【0096】
好ましい実施形態によれば、化合物IVは鏡像異性的に純粋である。R2基を有する炭素は、分解された絶対配置を有し、有利には絶対配置(S)に対応する。
【0097】
別の方法によれば、化学式Iの化合物を調製するための方法は、次の工程を含む:
(a')前記の化学式IIIの化合物と次の化学式VIII:
H3N+-(CH2)n-CH(R2)-(CH2)m-C(O)OP(VIII)
の化合物との反応であって、R2は前記で定義されたものであり、OPはR3の前駆体であり、
Pは、例えば、Rと同一であってよく、特に、Pは、ベンジル基であってよく、次の式IXの化合物:
H-CO-N(OR)-CH2-CH(R1)-CO-NH-(CH2)n-CH(R2)-(CH2)m-C(O)-OP(IX)
の形成がもたらされ、
ここで、R、R1、R2、P、n、及びmは、前記で定義されたものである、反応
(b')上記で定義した化学式II又は化学式Iの化合物をもたらす、化合物IXのOP基の、前記で定義したR3基への変換。
【0098】
(c')必要に応じた、化学式Iの化合物をもたらす、工程(b')から得られた化学式IIの化合物の脱保護。
【0099】
R3基のOP基前駆体のR3基への変換の工程(b')は、当業者に周知の方法に従って行われる。それは、例えば、脱保護、酸化又は還元工程を含む。
【0100】
PがRと同一である場合、P基の脱保護の状態は、R基を有するアミンの脱保護をももたらし、化学式Iの化合物は、工程(b')の終わりに直接得られる。この場合、工程(c')は必要ない。この状況は、とりわけR3がOHに等しい場合、とりわけPとRが両方ともベンジルであり、例えば水素化反応によって除去される場合に発生する。
【0101】
工程(b):
工程(b)は、OR基を有するアミンを脱保護して化学式Iの化合物をもたらす工程に対応し、ここで、前記アミンはOH基を有する。
【0102】
【化4】
【0103】
化合物Iは、少なくとも2つのジアステレオ異性体の形態で得られる。ジアステレオ異性体は、当業者にとってのよく知られている方法、通常、分取又はセミ分取HPLCにより、ジアステレオ異性体的に純粋な形態の化合物Iを得ることができ、ここで、R1、R2及び任意にR8又はR9(R3の定義による)を有する炭素は分離され、本発明の化合物の特性を最適化するそれぞれの絶対配置である。特に、R1を有する炭素は絶対配置(R)又は(S)であり、好ましくは(R)であり、R2を有する炭素は絶対配置(S)である。存在する場合、R8又はR9を有する炭素は、絶対配置(R)又は(S)である。
【0104】
したがって、優先的な方法で、化学式Iの化合物は、次の2つのジアステレオ異性体に対応できる。
【0105】
【化5】
【0106】
及び
【0107】
【化6】
【0108】
ここで、R3は好ましくはOHを表す。
【0109】
エナンチオ選択的合成
化学式(II)の化合物は、Oppolzerの補助剤(Heravi M&Zadsirjan V(2014)、Tetrahedron:Asymmetry、1061-1090)の手法によって、次の工程に従ってエナンチオ選択的に合成することもできる:
【0110】
1°アクリル酸誘導体Vは塩化チオニルSOCl2と反応して、酸塩化物Xを誘導する:
【0111】
【化7】
【0112】
2°次に、強塩基の存在下で、酸塩化物XをOppolzerの補助剤((1R)-(+)-2.10-カンファースルタム)に結合させて、化合物XIを得る:
【0113】
【化8】
【0114】
3°化合物XIへのヒドロキシルアミンVIの立体選択的マイケル付加により、光学的に純粋な方法で化合物XIIを得ることができる:
【0115】
【化9】
【0116】
4°キラル補助剤は強塩基によって切断され、光学的に純粋な化合物XIII-1が得られる(Naeslund C et al. (2005), Tetrahedron, 61, 1181-1186):
【0117】
【化10】
【0118】
5°化合物III-1及びII-1に至る合成工程は、前に記載のラセミ生成物の合成に使用されるものと同じである。
【実施例
【0119】
本発明は、次の実施例によって決して限定されることなく、更に説明される。
【0120】
略語のリスト:
Ac2O:無水酢酸
AcOEt:酢酸エチル
Bn:ベンジル
DIEA:ジイソプロピルエチルアミン
DMF:ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
Ph:フェニル
Yd:収率
NMR:核磁気共鳴
Rt:保持時間
TFA:トリフルオロ酢酸
【0121】
本発明の化合物の合成
アクリル酸Vは市販されているか、代わりに、Organic Syntheses, (1955) coll. Vol. 3, p.377; (1945) vol.25, p.42.に記載されているように合成する。
【0122】
R1を有する炭素の絶対配置は、Fournie-Zaluski et al. in J Med Chem (1986), 29, 751-753.で確立した規則に従って、2つのジアステレオ異性体Iaの分離と、CH3基の化学的置換のプロトンのNMRによる分析の後に決定した。
【0123】
このため、化合物Ia-1に帰属する絶対配置は(2R、3S)、化合物Ia-2のそれは(2S、3S)となる。類似体の絶対配置は、最高の酵素親和性を有する正しいジアステレオ異性体の立体化学構造の類似性によって固定した。
【0124】
工程1:R=Bnである2-アルキル-3-(ベンジルアミノ)プロパン酸VIIaの合成
【0125】
【化11】
【0126】
ベンジルヒドロキシルアミンVIa(4当量)を、アクリル酸Vと50℃で8時間反応する。混合物をAcOEtに投入する。過剰のベンジルヒドロキシルアミンは、1N HClで洗浄することにより除去する。有機相をNaClの飽和溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮する。油をエーテル中で粉砕して、固体化合物VIIaを得る。
【0127】
VIIa-1 2-ベンジル-3-(ベンジルオキシアミノ)プロパン酸
R1 = CH2Ph:固体、(Yd: 80.9 %)
NMR (DMSO + TFA, 400 MHz): 2.7-3.3 (4H, m); 3.51 (1H, q); 4.95 (2H, s); 7.1-7.4 (10H, m)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 6/4 Rt= 7.3分
【0128】
VIIa-2 3-(ベンジルオキシアミノ)-2-(ビフェニル-4-イルメチル)プロパン酸
R1 = CH2Ph(4-Ph):固体、(Yd: 87.7%)
NMR (DMSO + TFA, 400 MHz): 2.8-3.1 (3H, m); 3.25-3.35 (1H, q); 3.55 (1H, q); 4.95 (2H, s); 7.1-7.6 (14H, m)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 7/3 Rt= 8.7分
【0129】
工程2:2-アルキル-3-(N-(ベンジルオキシ)ホルムアミド)プロパン酸(IIIa、R = Bn)の合成
【0130】
【化12】
【0131】
酸VIIaを0℃でギ酸に可溶化する。無水酢酸を0℃で加え、混合物を0℃で3時間撹拌する。混合物をエーテルに投入した後、混合物を蒸発乾固させて酸IIIaを得て、これをそのまま次の工程で使用する。
【0132】
IIIa-1 2-ベンジル-3-(N-(ベンジルオキシ)ホルムアミド)プロパン酸
R1 = CH2Ph:油、(Yd: 100%)
NMR (DMSO + TFA, 400 MHz): 2.6-3.0 (4H, m); 3.51 (1H, q); 4.80 (2H, s); 7.1-7.4 (10H, m); 7.85 (0.5H, s), 8.15 (0.5H, s) (CHO) シス/トランス
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 6/4 Rt= 7.2分
【0133】
IIIa-2 3-(N-(ベンジルオキシ)ホルムアミド)-2-(ビフェニル-4-イルメチル)プロパン酸
R1 = CH2Ph(4-Ph):油、(Yd: 100%)
NMR (DMSO + TFA, 400 MHz): 2.8-3.1 (3H, m); 3.25-3.35 (1H, q); 3.55 (1H, q); 4.95 (2H, s); 7.1-7.6 (14H, m); 7.85 (0.5H, s), 8.15 (0.5H, s) (CHO) シス/トランス
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 7/3 Rt= 8.7分
【0134】
工程3:アミノ酸カップリング、化合物IIaの合成
【0135】
【化13】
【0136】
酸IIIa及びアミノ酸塩、ベンジルエステル(1.2当量)IVを0℃でDMFに可溶化する。TBTU(1.2当量)とDIEA(3当量)を加え、混合物を周囲温度で15分間撹拌する。DMFを減圧下で蒸発させ、混合物をAcOEtに投入する。有機相をクエン酸の10%水溶液、飽和溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させる。
【0137】
溶出系としてCH3CN/H2O(0.05%TFA)65/35を使用して、Kromasil C18カラム 21.2×250mmでのセミ分取HPLCによって、粗混合物を精製して、化合物IIaを得る。
【0138】
IIa-1 (2S)-ベンジル2-(2-ベンジル-3-(N-(ベンジルオキシ)ホルムアミド)プロパナミド)プロパン酸
R1 = CH2Ph, R2 = (S)-CH3, n=m=0:固体、(Yd: 58.2%)
NMR (DMSO + TFA, 400 MHz): 1.0-1.3 (3H, m); 2.5-3.1 (3H, m); 3.15-3.60 (1H, m), 3.60 (1H, qt); 4.25 (1H, q); 4.6-4.85 (2H, m); 515 (2H, s); 7.0-7.4 (10H, m); 7.7-8.15 (1H, m); 8.3-8.6 (1H, m)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 7/3, Rt= 151及び16.6分
ESI (+): [M + Na]+ = 497.35; [(M-CH2Ph) + Na]+ = 406.24
【0139】
IIa-2 (2S)-ベンジル2-(2-ベンジル-3-(N-(ベンジルオキシ)ホルムアミド)プロパナミド)-3-フェニルプロパン酸
R1 = CH2Ph, R2 = (S)-CH2Ph, n=m=0:固体、(Yd: 64.5%)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 6/4, Rt= 16.9及び17.9分
ESI (+): [M + Na]+ = 573.25; [(M-CH2Ph) + Na]+ = 482.14
【0140】
IIa-3 (3S)-フェニル3-(2-ベンジル-3-(N-(ベンジルオキシ)ホルムアミド)プロパナミド)-4-フェニルブタン酸
R1 = CH2Ph, R2 = (S)-CH2Ph, n=0; m=1:固体、(Yd: 66.5%)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 6/4, Rt= 15.2及び16.1分
ESI (+): [M + Na]+ = 587.26; [(M-CH2Ph) + Na]+ = 496.14
【0141】
IIa-4 (2S)-ベンジル2-(3-(N-(ベンジルオキシ)ホルムアミド)-2-(ビフェニル-4-イルメチル)プロパナミド)プロパン酸
R1 = CH2Ph(4-Ph), R2 = (S)-CH3, n=m=0:固体、(Yd: 59.2%)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 7/3, Rt= 16.2及び17.2分
ESI (+): [M + Na]+ = 497.26; [(M-CH2Ph) + Na]+ = 406.14
【0142】
IIa-5 (2S)-フェニル2-ベンジル-3-(2-ベンジル-3-(N-(ベンジルオキシ)ホルムアミド)プロパナミド)プロパン酸
R1 = CH2Ph, R2 = (S)-CH2Ph, n=1, m=0:無色の油、(Yd: 31.0%)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 7/3, Rt= 10.6及び11.3分
ESI (+): [M + Na]+ = 587.26; [(M-CH2Ph) + Na]+ = 496.14
【0143】
(S)-アラニンベンジルエステル(R2 =(S)-CH3、n = m = 0)、(S)-フェニルアラニンベンジルエステル(R2 =(S)-CH2Ph、n = m = 0)は市販されている。
【0144】
(S)-ベータ-ホモフェニルアラニンベンジルエステル(R2 =(S)-CH2Ph、n = 0、m = 1)、(R)-ベータ-2-ホモフェニルアラニンベンジルエステル(R2 =(S)-CH2Ph、n = 1、m = 0)は、文献に記載されるとともに、当業者(Hassner A and Alexanian V (1978), Tetrahedron Lett, 19, 4475; Ripka AS et al. (1998), Bioorg Med Chem Lett, 8, 357)に知られているように、ベンジルエステルへのエステル化及びBocの脱保護によって、市販されているBoc(S)-ベータ-ホモフェニルアラニン及びBoc(R)-ベータ-2-ホモフェニルアラニンからそれぞれ生成される。
【0145】
工程4:化合物IIaの脱保護及びR3=OHとなるジアステレオ異性体Iの分離
【0146】
【化14】
【0147】
化合物IIaをMeOHに可溶化する。Pd/Cを加え、混合物を室温で水素の雰囲気下に2時間放置する。変換の後にHPLCが続く。Pd/Cはセライトでろ過する。溶媒を減圧下で蒸発して混合物を得て、溶出系としてCH3CN/H2O(0.05%TFA)35/65を使用して、Kromasil C18カラム 21.2×250mmでのセミ分取HPLCによって、混合物を精製して、2種類のジアステレオ異性体Iに分離する。
【0148】
Ia-1 (S)-2-((R)-2-ベンジル-3-(N-ヒドロキシホルムアミド)プロパナミド)プロパン酸
R1 = (R)-CH2Ph, R2 = (S)-CH3, n=m=0:固体、(Yd: 31.6 %)
NMR (DMSO + TFA, 400 MHz): 1.15 (3H, t); 2.5-3.2 (4H, m); 3.35-3.70 (1H, m); 4.15 (1H, t); 7.1-7.3 (5H, m); 7.7-8.15 (1H, m)及び8.1-8.3 (1H, m) (CHO, シス/トランス異性)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 3/7, Rt= 6.2分
【0149】
Ia-2 (S)-2-((S)-2-ベンジル-3-(N-ヒドロキシホルムアミド)プロパナミド)プロパン酸
R1 = (S)-CH2Ph, R2 = (S)-CH3, n=m=0:固体、(Yd: 23.4 %)
NMR (DMSO + TFA, 400 MHz): 1.0 (3H, t); 2.5-2.75 (2H, m); 2.95 (1H, m); 3.35-3.70 (2H, m); 4.05 (1H, qt); 7.1-7.3 (5H, m); 7.8-8.25 (1H, m)及び8.05-8.2 (1H, m) (CHO, シス/トランス異性)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 3/7, Rt= 8.5分
【0150】
Ib-1 (S)-2-((R)-2-ベンジル-3-(N-ヒドロキシホルムアミド)プロパナミド)-3-フェニルプロパン酸
R1 = (R)-CH2Ph, R2 = (S)-CH2Ph, n=m=0:固体、(Yd: 23.0 %)
NMR (DMSO + TFA, 400 MHz): 2.6-3.1 (5H, m); 3.15-3.40 (2H, m), 3.55 (1H, q); 4.40 (1H, m); 6.9-7.3 (10H, m); 7.7-8.15 (1H, m)及び8.20-8.35 (1H, m) (CHO, シス/トランス異性)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 35/65, Rt= 12.2分
【0151】
Ib-2 (S)-2-((S)-2-ベンジル-3-(N-ヒドロキシホルムアミド)プロパナミド)-3-フェニルプロパン酸
R1 = (S)-CH2Ph, R2 = (S)-CH2Ph, n=m=0:固体、(Yd: 29.0 %)
NMR (DMSO + TFA, 400 MHz): 2.6-3.1 (5H, m); 3.15-3.40 (2H, m), 3.55 (1H, q); 4.40 (1H, m); 6.9-7.3 (10H, m); 7.7-8.15 (1H, m)及び8.10-8.35 (1H, m) (CHO, シス/トランス異性)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 35/65, Rt= 20.5分
【0152】
Ic-1 (S)-3-((R)-2-ベンジル-3-(N-ヒドロキシホルムアミド)プロパナミド)-4-フェニルブタン酸
R1 = (R)-CH2Ph, R2 = (S)-CH2Ph, n=0, m=1:固体、(Yd: 35.0 %)
NMR (DMSO + TFA, 400 MHz): 2.15-2.85 (7H, m); 3.15-3.40 (2H, m); 4.25 (1H, m); 6.9-7.3 (10H, m); 7.6-8.3 (2H, m) (CHO, シス/トランス異性)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 35/65, Rt= 9.95分
【0153】
Ic-2 (S)-3-((R)-2-ベンジル-3-(N-ヒドロキシホルムアミド)プロパナミド)-4-フェニルブタン酸
R1 = (S)-CH2Ph, R2 = (S)-CH2Ph, n=0, m=1:固体、(Yd: 40.0 %)
NMR (DMSO + TFA, 400 MHz): 2.6-3.1 (7H, m); 3.2-3.60 (2H, m); 4.15 (1H, m); 6.9-7.2 (10H, m); 7.7- 8.4(2H, m) (CHO, シス/トランス異性)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 35/65, Rt= 16.7分
【0154】
Id-1 (S)-2-((R)-3-(ビフェニル-4-イル)-2-(N-ヒドロキシホルムアミド)プロパナミド)プロパン酸
R1 = (R)-CH2Ph(4-Ph), R2 = (S)-CH3, n=m=0:固体、(Yd: 21.9 %)
NMR (DMSO + TFA, 400 MHz): 1.15 (3H, t); 2.5-3.2 (4H, m); 3.40-3.70 (1H, m); 4.15 (1H, t); 7.1-7.5 (9H, m); 7.7- 8.4(2H, m) (CHO, シス/トランス異性)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 4/6, Rt= 9.6分
【0155】
Id-2 (S)-2-((S)-3-(ビフェニル-4-イル)-2-(N-ヒドロキシホルムアミド)プロパナミド)プロパン酸
R1 = (S)-CH2Ph(4-Ph), R2 = (S)-CH3, n=m=0:固体、(Yd: 29.2 %)
NMR (DMSO + TFA, 400 MHz): 1.0 (3H, t); 2.5-2.75 (2H, m); 3.0 (1H, m); 3.30-3.70 (2H, m); 4.05 (1H, qt); 7.1-7.55 (9H, m); 7.7- 8.4(2H, m) (CHO, シス/トランス異性)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 4/6, Rt= 12.6分
【0156】
Ie-1 (S)-2-ベンジル-3-((R)-2-ベンジル-3-(N-ヒドロキシホルムアミド)プロパナミド)プロパン酸
R1 = (R)-CH2Ph, R2 = (S)-CH2Ph, n=1, m=0:固体、(Yd: 8.7 %)
NMR (DMSO + TFA, 400 MHz): 2.15-2.85 (9H, m); 3.15-3.40 (2H, m); 7.0-7.4 (10H, m); 7.7-8.2 (2H, m) (CHO, シス/トランス異性)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 30/70, Rt= 17.6分
【0157】
Ie-2 (S)-2-ベンジル-3-((S)-2-ベンジル-3-(N-ヒドロキシホルムアミド)プロパナミド)プロパン酸
R1= (S)-CH2Ph, R2 = (S)-CH2Ph, n=1, m=0:固体、(Yd: 9.6 %)
NMR (DMSO + TFA, 400 MHz): 2.15-2.85 (9H, m); 3.15-3.40 (2H, m); 7.05-7.35 (10H, m); 7.9-8.35 (2H, m) (CHO, シス/トランス異性)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 30/70, Rt= 20.0分
【0158】
化合物XIIIa-1のキラル合成
工程1:2-ベンジルアクリル酸Xaの塩化の合成
【0159】
【化15】
【0160】
2-ベンジルアクリル酸Va(2g、12.3mmol)を塩化チオニル14mL中で加熱して3時間還流する。過剰なSOCl2は減圧下で蒸発する。透明な黄色の油を定量的に得て、次の工程のために使用する。
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.05% TFA) 50/50, Rt= 3.77分
【0161】
工程2:付加物2-ベンジルアクリル酸-(1R)-(+)-2,10-カンファースルタムXiaの合成
【0162】
【化16】
【0163】
(1R)-(+)-2,10-カンファースルタム(19.7g、90.0mmol)を200mLのTHFに可溶化する。混合物を0℃に冷却して、油中の60%NaH(4.4g、110mmol、1.2当量)を加えた。塩の形態で混合物を0℃で30分間撹拌する。100mLのTHF溶液中の酸塩化物Xa(19.98g、110mmol、1.2当量)を加え、混合物を室温で48時間撹拌する。THFを蒸発して乾燥し、混合物をAcOEtに投入する。有機相を1N HCl、10%NaHCO3、H2O、NaClの飽和溶液で洗浄した後、Na2SO4で乾燥して、蒸発して乾燥させ、エーテルで再結晶後した後、白色固体の化合物XIa(18.3g、Yd: 56%)を得る。
NMR (CDCl3, 400 MHz): 0.8-2.0 (12H, m); 2.55 (1H, q); 3.05(1H, d); 3.40 (1H, dd); 3.55 (1H, dd); 3.95 (1H, t); 5.30 (1H, s); 5.80 (1H, s); 7.10-7.40 (5H, m)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.1% TFA) 70/30, Rt= 13.7分
【0164】
工程3:付加物2-ベンジル-3-(ベンジルオキシアミノ)プロパン酸-(1R)-(+)-2,10-カンファースルタムXIIaの合成
【0165】
【化17】
【0166】
化合物XIa(1.05g、2.9mmol)を、10mLのCH2Cl2に可溶化する。ベンジルヒドロキシルアミンVIa(864mg、7mmol、2.4当量)を加え、混合物は加熱して24時間還流する。混合物をCH2Cl2及び水で希釈する。有機相を1N HCl、H2O、NaClの飽和溶液で洗浄して、Na2SO4で乾燥した後、蒸発により乾燥して1.45gの無色の油を得る。
【0167】
EtOHで結晶化した後、790mgの白色固体(XIIa)を得る(Yd:56%)。
NMR (CDCl3, 400 MHz): 0.8 (3H, s); 1.0 (3H, s); 1.1-1.9 (7H, m); 2.55 (1H, q); 2.95(1H, dd); 3.05(1H, dd); 3.15 (1H, t); 3.35 (3H, m); 3.60 (4H, m); 3.80 (1H, t); 4.45 (2H, s); 7.10-7.40 (10H, m)
HPLC Symmetry C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.1% TFA) 60/40, Rt= 15.0分
【0168】
工程4:キラル補助基の加水分解:2-ベンジル-3-(ベンジルオキシアミノ)プロパン酸XIIIa-1の合成
【0169】
【化18】
【0170】
化合物XIIa(700mg、1.45mmol)を、30mLのTHF中に可溶化する。6mLの1N LiOHを加え、混合物を55℃で48時間撹拌する。混合物を1N HClによって、pH1~2に酸性化する。THFを蒸発して乾燥し、混合物をAcOEtに投入する。有機相をH2O、NaClの飽和溶液で洗浄して、Na2SO4で乾燥した後、蒸発して乾燥し、400mgのわずかに黄色い油を得る。溶出系としてCH2Cl2/MeOH 9/1を使用するシリカカラムによって、生成物を精製し、174mgの化合物XIIIa-1(Yd:44.0%)を、結晶化する油として得る。
NMR (CDCl3, 400 MHz): 2.75 (1H, m); 2.85-3.10 (1H, q); 4.65 (2H, s); 7.1-7.4 (10H, m)
HPLC Kromasil C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.1% TFA) 4/6 Rt= 12.3分
【0171】
工程5:(2S)-ベンジル2-(2-ベンジル-3-(N-(ベンジルオキシ)ホルムアミド)プロパナミド)プロパン酸IIIa-1の合成
【0172】
【化19】
【0173】
酸XIIIa-1(12mg,0.042mmol)を0℃でギ酸(1mL)に可溶化して、無水酢酸(0.5mL)を0℃で加え、混合物を0℃で4時間撹拌した。混合物をジクロロメタン及び水に投入する。有機相をNaClの飽和溶液で洗浄して、Na2SO4で乾燥し、蒸発して乾燥し、酸IIIa-1(13mg、Yd:100%)を無色の油の形で得て、これを次の工程でそのまま使用する。
【0174】
【化20】
【0175】
前記の酸IIIa-1(13mg,0.042mmol)、及び(S)-アラニンのベンジルエステルの塩(11mg,0.054mmol,1.3当量)を0℃でDMF 1mLに可溶化し、TBTU(12mg,0.052mmol,1.3当量)及びDIEA(22μL,0.126mmol,3当量)を加え、混合物を室温で15分間撹拌した。DMFを減圧下で蒸発させ、混合物をAcOEtに投入する。クエン酸の10%水溶液、飽和水溶液で有機相を洗浄して、Na2SO4で乾燥する。
【0176】
CH3CN/H2O(0.1%TFA)65/35を溶出系として使用して、Kromasil C18カラム 21.2×250mmでのセミ分取HPLCによって、粗混合物を精製し、3.8mgの化合物IIa-1を得る(Yd=19.0%)。
NMR (DMSO + TFA, 400 MHz): 1.3 (3H, t); 2.8-3.8 (5H, m); 4.25 (1H, q); 4.65-4.85 (2H, m); 5.15 (2H, s); 7.0-7.4 (10H, m); 7.7及び8.15 (1H, m) CHO (シス/トランス異性); 8.45-8.65 (1H, NH, m) (シス/トランス異性)
HPLC Symmetry C18, 4.6 x 250 mm, CH3CN/H2O (0.1% TFA) 6/4, Rt= 11.94 (96.0% ジアステレオマー2R, 3S)及び11.69分 (4.0 % ジアステレオマー2S, 3S)
【0177】
ベンジル基を有する炭素の絶対配置を、Fournie-Zaluski et al. in J Med Chem (1986), 29, 751-753によって確立された規則に従って、NMR分析によって決定する。
【0178】
したがって、化合物IIa-1に帰属する絶対配置は(2R、3S)であり、キラル補助基の存在下でのマイケル付加中の鏡像体過剰率は96%である。このキラル合成は、もう一方の類似体にも当てはまる可能性もある。
【0179】
抑制力の計測
タイプ1のネプリライシン(E.C.3.4.24.11、NEP-1)、中性アミノペプチダーゼ(E.C.3.4.11.2、APN)及びLTA4Hのような、阻害可能であり、このファミリーの酵素の代表的である、異なるZn2+ペプチダーゼに対して、請求した阻害剤を試験した。
【0180】
アッセイは、それぞれの酵素に特異的な蛍光性基質が存在する99ウェルプレートで実行する。
【0181】
一般的に言えば、漸増濃度で、阻害剤を酵素と37℃で10分間プレインキュベートする。その後、基質を加え、混合物を37℃で30~60分インキュベートする。反応を4℃で停止して、放出された蛍光の読み取りは、Berthold Twinkle LS970Bプレートの読み取りによって行う。次に、GraphPadソフトウェアを使用して、阻害曲線を阻害剤の濃度の関数としてプロットする。その後、KiをCheng Prusoffの式:Ki=IC50/(1+(S/Km))から決定した。
【0182】
ネプリライシン(NEP)アッセイ
ネプリライシン、ウサギ腎臓から精製(Aubry M et al. (1987), Biochem Cell Biol 65, 398-404)は、50mM トリス緩衝液、pH7.4中で、最終200ng/mLで使用する。基質であるDansyl-Gly-(NO2)Phe-ss-Ala(Goudreau N et al. (1994), Anal Biochem, 219, 87-95)(Km=37μM)は、エタノールに溶解しており、最終20μMで使用する。50mMトリス緩衝液、pH7.4中のNEPとともに、漸増濃度の阻害剤(10-10から10-3M)を37℃で15分間プレインキュベートする。次に基質を加え、インキュベーションを60分まで続ける。プレートを氷に10分間配置することによって、反応を停止する。放出された蛍光の読み取りは、λex=355nm、λem=535nmにおける蛍光光度計により実行する。
【0183】
中性アミノペプチダーゼ(APN)アッセイ
アミノペプチダーゼN(APN)の阻害の計測は、基質L-Ala↓ss-NA(50μM、Sigma Aldrich社)の使用により実行する。阻害力は、組換えヒト酵素(rh)(50ng/mL;R&D System社)を使用により決定する。50mMトリス緩衝液、pH7.4中のAPN-rhとともに、漸増濃度の阻害剤(10-10から10-3M)を37℃で30分間プレインキュベートする。次に基質を加え、インキュベーションを37℃で30分間続ける。プレートを氷に10分間配置することによって、反応を停止する。放出された蛍光の読み取りは、λex=340nm、λem=405nmにおける蛍光光度計により測定する。
【0184】
LTA4加水分解酵素アッセイ
LTA4Hに関して異なる阻害剤のKi値を決定するために、50mMトリス塩酸緩衝液、pH7.4、100mM NaClの中で、0.6μg/mLの組換え酵素を37℃で30分間し、漸増濃度の(最終濃度を10-10Mから10-4Mまで)と予めインキュベートした。蛍光基質(L)-Ala-β-ナフチルアミド(1mM)を最終容量が100μLとなるよう加えて、37℃で15分間インキュベートする。Berthold Twinkle LB 970(λex=340nm,λem=405nm,ランプのエネルギー10000)で、蛍光値を測定する。0%の加水分解を含むサンプルは、基質を緩衝液に加えることによって得られ、100%の相対的な活性を有するサンプルは、阻害剤なしで調製された。切断率を評価して、100%の相対的活性と比較し、結果としてIC50値を決定した。Ki=IC50/(1+[S]/Km)の式を用いて、阻害剤のKi値(少なくとも3つの二重独立アッセイの平均)を算出した。
【0185】
結果:NEP、APN、LTA4Hの抑制力
H-CO-N(OH)-CH2-CH(R1)-CO-NH-(CH2)nCH(R2)(CH2)m-CO-R3 (1)
【0186】
【表1】
【0187】
薬理試験
図1は、本試験において不活性な用量のTHC及び化合物Ib-1を静脈内で組み合わせれば、注入の10分後に、オスのOF1マウスに対するホットプレート試験において、かなり相乗的な鎮痛効果を誘発することを示している。
図1