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特許7593997有機カルボン酸またはその塩を含むグリコール系熱伝達流体、その調製方法およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】有機カルボン酸またはその塩を含むグリコール系熱伝達流体、その調製方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/10 20060101AFI20241126BHJP
   C09K 5/20 20060101ALI20241126BHJP
   C23F 11/12 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C09K5/10 E
C09K5/20
C23F11/12 101
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022511030
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2020073554
(87)【国際公開番号】W WO2021032886
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】19193153.4
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517207808
【氏名又は名称】アルテコ エヌ.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】ARTECO N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ド キンぺ, ユルゲン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】リーベンス, セルジュ
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-531920(JP,A)
【文献】特表2004-537611(JP,A)
【文献】特開平01-095179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/00-5/20
C23F11/00-11/18
C23F14/00-17/00
C09K3/00
C09K3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって
・ 組成物の総重量に対して5重量%超のモノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールまたはそれらの組合せからなる群から選択されるグリコール;および
・ 組成物の総重量に対して2重量%超10質量%未満のC有機カルボン酸またはその塩、C有機カルボン酸またはその塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される短鎖有機カルボン酸またはその塩
を含み、
グリコールと短鎖有機カルボン酸またはその塩との合計量が、組成物の総重量に対して15重量%超であり、且つ
組成物は、高速サイクリック動電位分極走査(RCP)によって測定した場合に、2500mV超のアルミニウム孔食電位を示し、
~C16有機カルボン酸またはその塩から選択される長鎖有機カルボン酸腐食防止剤を更に含む、組成物。
【請求項2】
グリコールおよび短鎖有機カルボン酸塩を合わせた重量に対して6重量%超の短鎖有機カルボン酸またはその塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
グリコールおよび短鎖有機カルボン酸塩を合わせた重量に対して30重量%超の短鎖有機カルボン酸またはその塩を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物の総重量に対して10重量%超のグリコールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
水を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
短鎖有機カルボン酸またはその塩が、C有機カルボン酸またはその塩である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
短鎖有機カルボン酸またはその塩が、C有機カルボン酸またはその塩である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
長鎖有機カルボン酸腐食防止剤が、
・ C~C脂肪族モノカルボン酸およびその塩;
・ C~C12脂肪族ジカルボン酸およびその塩;
・ C~C11芳香族モノカルボン酸およびその塩;ならびに
・ C~C14芳香族ジカルボン酸およびその塩
からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
長鎖有機カルボン酸腐食防止剤が、C~C16脂肪族カルボン酸およびその塩からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物の総重量に対して0.1重量%未満のC~C16有機カルボン酸またはその塩を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
組成物の総重量に対して0.001~10重量%の範囲内の量で、さらなる腐食防止剤、酸化防止剤、耐摩耗剤、界面活性剤、スケール防止剤、消泡剤からなる群から選択される1種以上の添加剤を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
即時使用可能な組成物である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物であって、組成物が水を更に含み
・ グリコールと短鎖有機カルボン酸またはその塩との合計量が、組成物の総重量に対して30~70重量%の範囲であり、
・ 水、グリコールおよび短鎖有機カルボン酸またはその塩の合計量は、組成物の総重量に対して95重量%超である、組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の即時使用可能な組成物を調製するのに適した濃縮物である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
濃縮物が、水および/またはアルコールの添加によって、請求項12に記載の即時使用可能な組成物を調製するのに適している、請求項13に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機カルボン酸またはその塩を含むグリコール系熱伝達流体に関する。本発明はさらに、熱伝達流体を調製するための濃縮物、熱伝達流体の調製方法、ならびに熱伝達流体を使用する方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝達流体は、内燃機関、ソーラーシステム、燃料電池、電気モーター、発電機、電子機器などに関連する熱交換システムにおいて広く使用されている。熱伝達流体は、一般に、ベース流体および1種以上の添加剤から構成される。
【0003】
歴史的には、熱伝達を考慮すると、水が好ましいベース流体であった。多くの用途において、不凍特性が必要とされ、アルコール、グリコールまたは塩のような凝固点降下剤と混合された水からなるベース流体が使用される。凝固点降下剤として使用されるアルコールまたはグリコールは、凝固点降下剤として塩が使用される場合とは異なって、伝熱流体の特性(例えば、密度、動粘度、熱伝導率、熱容量)に影響するので、2つの別個のクラスの伝熱流体、すなわち、アルコール/グリコールを含まない伝熱流体またはアルコール/グリコールを含有する伝熱流体が出現した。
【0004】
水とグリコールとの混合物は、比較的安定であり、現代の熱交換システムで使用されるエラストマーおよびプラスチックと適合性があり、費用効率の高い凍結および沸騰保護を提供し、特定の熱交換システムに必要とされる特定の腐食保護を提供するために様々な腐食防止剤と配合することができるので、最も広く使用されているベース流体である。
【0005】
熱伝達流体は、一般に、熱交換特性の改善、腐食の防止などの様々な機能性を得るために用いることができるさらなる添加剤を含有する。熱伝達流体は、アルミニウム合金、鋳鉄、鋼、銅、黄銅、はんだなどの金属部品と連続的に接触しているので、ほとんどの場合、1種以上の腐食防止剤を含有する。
【0006】
自動車冷却システムにおける腐食を防止するカルボン酸の性能は、60年以上前に最初に報告された。安息香酸およびその誘導体などの芳香族カルボン酸は、広範に研究されており、欧州では、市販の冷却剤中の腐食防止剤として使用されている。OAT(有機酸技術)冷却剤と呼ばれることもある有機酸腐食防止剤のみを含む冷却剤は、低い消耗率を示し、冷却剤の寿命の延長をもたらし、多くの場合、腐食防止のために無機塩に依存する冷却剤よりも環境に優しい。
【0007】
最近の研究努力は、長鎖脂肪族有機カルボキシレートに向けられてきた。6個以上の炭素原子を含む脂肪族カルボン酸は、腐食防止剤として作用することが見出されているが、酸および基材に依存して性能が大きく変動する。例えば、米国特許出願公開第2007/0152191号は、腐食防止剤としてのC10~C12ジカルボン酸の使用を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
OAT伝熱流体のような有機カルボキシレート腐食防止剤を使用する公知の伝熱流体は、いくつかの欠点を示す。例えば、それらは、一般に高価であるC以上のカルボキシレート、例えばCまたはC10カルボキシレートの腐食防止に基づく。さらに、多くの高級カルボキシレートの適用は、それらの低い水/グリコール溶解度のために制限され、または完全に利用することができない。
【0009】
本発明の目的は、改良されたグリコール系熱伝達流体を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、C以上の有機カルボキシレートなどの長鎖有機カルボキシレートの量が低減されたグリコール系熱伝達流体であって、同等のまたは改善されたアルミニウム合金腐食防止を有するグリコール系熱伝達流体を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、公知のグリコール系熱伝達流体、例えばC以上の有機カルボキシレートを含有する公知のグリコール系熱伝達流体と比較して延長された使用寿命を有するグリコール系熱伝達流体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、驚くべきことに、これらの目的の1つまたは複数が、組成物であって、
・ (組成物の総重量に対して)5重量%超のモノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールまたはそれらの組合せからなる群から選択されるグリコール;および
・ (組成物の総重量に対して)1重量%超、好ましくは2重量%超のC有機カルボン酸またはその塩、C有機カルボン酸またはその塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される短鎖有機カルボン酸またはその塩
を含み、
グリコールと短鎖有機カルボン酸またはその塩との合計量が、(組成物の総重量に対して)15重量%超である、組成物を採用することによって達成されることを見出した。
【0013】
添付の実施例に示されるように、驚くべきことに、例えば1重量%超、好ましくは2重量%超の短鎖有機カルボン酸またはその塩のような大量の短鎖カルボン酸を含むグリコール系組成物が、アルミニウムなどの金属基材上で驚くべき腐食防止を示すことが見出された。さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、本発明者らは、短鎖有機カルボン酸またはその塩を含むグリコール系組成物が、短鎖有機カルボン酸またはその塩の濃度を増加させると、腐食防止の急激な非線形的増加を示すことを見出した。
【0014】
当該技術分野では、短鎖有機カルボキシレートが顕著な腐食保護を示すことは知られていない。短鎖有機カルボキシレートは、グリコールを含まない伝熱流体中の凝固点降下剤として研究されてきた。例えば、米国特許出願公開第2007/158612号は、C有機カルボキシレート凝固点降下剤およびC~C16有機酸塩腐食防止剤を含む、グリコールを含まない伝熱組成物を開示している。
【0015】
本開示に照らして、本発明による組成物は、さらなる添加剤をほとんどもしくは全く必要とせず、かつ/または当該技術分野において既知の同等の組成物よりも長期間にわたって金属腐食防止を維持することができる熱伝達流体または冷却剤の提供を効果的に可能にすることが当業者に理解されるであろう。
【0016】
したがって、第1の態様において、本発明は、組成物であって、
・ (組成物の総重量に対して)5重量%超のモノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールまたはそれらの組合せからなる群から選択されるグリコール;および
・ (組成物の総重量に対して)1重量%超のC有機カルボン酸またはその塩、C有機カルボン酸またはその塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される短鎖有機カルボン酸またはその塩
を含み、
グリコールと短鎖有機カルボン酸またはその塩との合計量が、(組成物の総重量に対して)15重量%超である、組成物を提供する。
【0017】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、即時使用可能な組成物の形態で提供される。
【0018】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、本明細書中に記載される即時使用可能な組成物を調製するための濃縮物の形態で提供される。
【0019】
本発明の別の態様は、本明細書中に記載される組成物を調製するための方法に関する。
【0020】
本発明の別の態様は、濃縮物から本明細書に記載の即時使用可能な組成物を調製するための方法に関する。
【0021】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の組成物、好ましくは即時使用可能な組成物の対応する使用に関する。
【0022】
本発明のさらなる別の態様は、C有機カルボン酸またはその塩、C有機カルボン酸またはその塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、好ましくはプロピオン酸およびその塩、酢酸およびその塩、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるカルボン酸の、(組成物の総重量に対して)5重量%超のモノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールまたはそれらの組合せからなる群から選択されるグリコールを含む組成物の腐食防止を増大させるための;好ましくは孔食電位を上昇させるための;最も好ましくはアルミニウムの孔食電位を上昇させるための使用に関する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、本明細書で言及される孔食電位は、高速サイクリック動電位分極走査(RCP)によって測定される。
【0024】
本発明の非常に好ましい実施形態では、本明細書で言及される孔食電位は、CEBELCOR (Centre Belge d’Etude de laCorrosion)の刊行物Rapports Techniques, vol. 147, R.T. 272 (1984年8月)によって測定される。この方法は、100グラムの試験液中に沈め、固体銀参照電極(6 0331.010参照、供給業者Methrohom)を使用しながら、固体白金補助電極(6 0330.0040参照、供給業者Metroohm)に対して0.5mV/sの走査速度で、0.5cmの研磨(600グリット研磨シリコンカーバイド紙を使用)された作用表面を有する棒状のエポキシ埋め込み停滞アルミニウム作用電極(合金AlMgSi0.5)の電位を変化させる工程;ポテンシオスタット(VeraSTAT; Ametek(登録商標)Scientifc Instruments)を用いて、作用電極と補助電極との間を流れる電流密度を電位差の関数として記録する工程;および電流密度の急激な指数関数的増加により孔食電位Epを同定する工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1の態様は、組成物であって、
・ (組成物の総重量に対して)5重量%超のモノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールまたはそれらの組合せからなる群から選択されるグリコール;および
・ (組成物の総重量に対して)1重量%超のC有機カルボン酸またはその塩、C有機カルボン酸またはその塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される短鎖有機カルボン酸またはその塩
を含み、
グリコールと短鎖有機カルボン酸またはその塩との合計量が、(組成物の総重量に対して)15重量%超である、組成物に関する。
【0026】
グリコール
本明細書で使用される場合、「モノエチレングリコール」という用語は、「エタン-1,2-ジオール」を意味し、「MEG」とも称され得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「モノプロピレングリコール」という用語は、「プロパン-1,2-ジオール」を意味し、「MPG」とも称され得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「グリセロール」は、「プロパン-1,2,3-トリオール」を意味し、グリセリンと同義である。
【0029】
本発明の実施形態では、(組成物の総重量に対して)5重量%超、例えば、6重量%超、7重量%超、8重量%超、9重量%超、10重量%超、11重量%超、12重量%超、13重量%超、14重量%超、15重量%超、16重量%超、17重量%超、19重量%超、20重量%超、25重量%超、35重量%超、40重量%超、45重量%超、50重量%超、55重量%超、60重量%超、65重量%超または70重量%超のグリコールを含む,本明細書に記載の組成物が提供される。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、(組成物の総重量に対して)10重量%超、好ましくは20重量%超、好ましくは50重量%超のグリコールを含む、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0031】
本発明の実施形態では、(組成物の総重量に対して)99重量%未満、例えば、98重量%未満、97重量%未満、96重量%未満、95重量%未満、94重量%未満、93重量%未満、92重量%未満、91重量%未満、90重量%未満、89重量%未満、88重量%未満、87重量%未満、84重量%未満、83重量%未満、82重量%未満、81重量%未満、80重量%未満、75重量%未満、70重量%未満、65重量%未満、60重量%未満または55重量%未満のグリコールを含む、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、グリコールは、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、およびこれらの組み合わせから選択される。そのような実施形態では、モノエチレングリコールおよびモノプロピレングリコールとは異なるグリコールの総量、特に組成物中に存在するグリセロールの総量は、(組成物の総重量に対して)5重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満、最も好ましくは約0重量%であることが好ましい。実施形態では、組成物はグリセロールを本質的に含まない。本発明の特定の実施形態では、短鎖有機カルボン酸またはその塩が、本明細書に記載のC有機カルボン酸またはその塩、好ましくはプロピオン酸またはその塩からなる群から選択される、本明細書に記載の低グリセロール実施形態が提供される。
【0033】
短鎖有機カルボン酸またはその塩
本発明の非常に好ましい実施形態において、本明細書に記載の短鎖有機カルボン酸またはその塩が、カルボキシレートアニオンおよびカチオン性対イオンからなる塩の形態である、本明細書に記載の組成物が提供される。カチオン性対イオンは、好ましくはアルカリ土類金属カチオン、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオンまたはそれらの組み合わせ、より好ましくはアルカリ金属カチオン、最も好ましくはナトリウム若しくはカリウムまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明の実施形態において、アンモニウムカチオンは、式(NRR’R’’R’’’)(式中、R、R’、R’’およびR’’’は、独立して、分枝状または直鎖状C~Cアルキルおよび分枝状または直鎖状C~Cヒドロキシアルキルの群から、好ましくはメチル、エチル、n-プロピルおよびイソプロピルから選択される)によって表される四級アンモニウムカチオンである。本発明の実施形態において、アンモニウムカチオンは、式(HNRR’R’’)によって表される第三級アミンカチオンであり、ここで、R、R’およびR’’は、独立して、分枝または直鎖C~Cアルキルおよび分枝または直鎖C~Cヒドロキシアルキルの群から、好ましくはメチル、エチル、n-プロピルおよびイソプロピルから選択される。本発明の実施形態において、アンモニウムカチオンは、式(HNRR’)によって表される第二級アミンカチオンであり、式中、RおよびR’は、独立して、分岐または直鎖C~Cアルキルおよび分岐または直鎖C~Cヒドロキシアルキルの群から、好ましくはメチル、エチル、n-プロピルおよびイソプロピルから選択される。
【0034】
短鎖有機カルボン酸またはその塩が塩の形態で用いられる場合、本明細書で使用される有機カルボン酸またはその塩の量は、有機カルボキシレートアニオンおよびカチオン性対イオンの量を指す(すなわち、カチオン性対イオンの重量を含む)。
【0035】
本発明の実施形態において、C有機カルボン酸またはその塩は、酢酸、シュウ酸、グリコール酸、グリオキシル酸もしくはその塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは酢酸カリウムまたは酢酸ナトリウムであり、最も好ましくは酢酸カリウムである。
【0036】
本発明の実施形態では、C有機カルボン酸またはその塩は、プロピオン酸、アクリル酸、プロピオール酸、マロン酸、タルトロン酸、メソシュウ酸、ジヒドロキシマロン酸、ピルビン酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、グリセリン酸、グリシド酸、2-アミノプロパン酸もしくはその塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、C有機カルボン酸またはその塩は、プロピオン酸または乳酸およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、C有機カルボン酸またはその塩は、プロピオン酸またはその塩からなる群から選択され、より好ましくは、C有機カルボン酸またはその塩は、プロピオン酸カリウムまたはプロピオン酸ナトリウムから選択され、特に好ましくは、C有機カルボン酸またはその塩は、プロピオン酸カリウムから選択される。
【0037】
好ましい実施形態では、短鎖有機カルボン酸またはその塩は、本明細書に記載のC有機カルボン酸またはその塩である。
【0038】
好ましい実施形態では、短鎖有機カルボン酸またはその塩は、本明細書に記載のC有機カルボン酸またはその塩である。本発明の実施形態では、(組成物の総重量に対して)2重量%超、4重量%超、5重量%超、6重量%超、7重量%超、8重量%超、9重量%超、10重量%超、11重量%超、12重量%超、13重量%超、14重量%超、15重量%超、16重量%超、17重量%超、18重量%超、19重量%超または20重量%超の短鎖有機カルボン酸またはその塩を含む、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、(組成物の総重量に対して)10重量%超、好ましくは15重量%超の短鎖有機カルボン酸またはその塩を含む、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0040】
本発明の実施形態では、(組成物の総重量に対して)50重量%未満、好ましくは40重量%未満、好ましくは30重量%未満の短鎖有機カルボン酸またはその塩を含む、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0041】
本発明の実施形態では、(組成物の総重量に対して)10重量%未満、好ましくは5重量%未満の短鎖有機カルボン酸またはその塩を含む、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0042】
グリコールと短鎖有機カルボン酸またはその塩との組合せ
本発明の実施形態では、グリコールと短鎖有機カルボン酸またはその塩との合計量が、(組成物の総重量に対して)16重量%超、17重量%超、18重量%超、19重量%超、20重量%超、25重量%超、30重量%超、35重量%超、40重量%超または45重量%超である、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、グリコールと短鎖有機カルボン酸またはその塩との合計量が、(組成物の総重量に対して)30重量%超、好ましくは35重量%超、好ましくは40重量%超である、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0044】
本発明の実施形態では、グリコールと短鎖有機カルボン酸またはその塩との合計量が、(組成物の総重量に対して)90重量%未満、好ましくは80重量%未満、好ましくは70重量%未満である、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0045】
本発明の非常に好ましい実施形態では、グリコールと短鎖有機カルボン酸またはその塩との合計量が、(組成物の総重量に対して)30~70重量%の範囲、好ましくは35~65重量%の範囲、より好ましくは40~60重量%の範囲である、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0046】
本発明の実施形態において、(グリコールおよび短鎖有機カルボキシレートを合わせた重量に対して)5重量%超の短鎖有機カルボキシレート、6重量%超、7重量%超、8重量%超、9重量%超、10重量%超、11重量%超、12重量%超、13重量%超、14重量%超、15重量%超、16重量%超、17重量%超、18重量%超、19重量%超、20重量%超、25重量%超、30重量%超、または35重量%超の短鎖有機カルボン酸またはその塩を含む、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、(グリコールと短鎖有機カルボキシレートとの合計重量に対して)6重量%超、好ましくは30重量%超の短鎖有機カルボン酸またはその塩を含む、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0048】
添付の実施例に示され、本明細書で前に説明されているように、本発明者らは、驚くべきことに、短鎖有機カルボン酸またはその塩を含むグリコール系組成物が、短鎖有機カルボン酸またはその塩の濃度を増加させると、腐食防止の突然の非線形増加を示すことを見出した。しかしながら、本発明者らは、改善された腐食効果を得るために、特に融氷液において使用され得るような、グリコールに対する短鎖有機カルボン酸の極端に高い割合が必要でないことも見出した。したがって、本発明の実施形態において、(グリコールおよび短鎖有機カルボキシレートを合わせた重量に対して)50重量%未満の短鎖有機カルボキシレート、48重量%未満、46重量%未満、44重量%未満、42重量%未満、40重量%未満、38重量%未満、36重量%未満、34重量%未満、32重量%未満、30重量%未満、26重量%未満、24重量%未満、22重量%未満、20重量%未満、18重量%未満、16重量%未満、または14重量%未満の短鎖有機カルボン酸またはその塩を含む、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0049】
本発明の好ましい実施形態において、(グリコールおよび短鎖有機カルボキシレートを合わせた重量に対して)50重量%未満、好ましくは40重量%未満の短鎖有機カルボン酸またはその塩を含む、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0050】
本発明の非常に好ましい実施形態において、(グリコールおよび短鎖有機カルボキシレートを合わせた重量に対して)6~48重量%、好ましくは7~45重量%、より好ましくは7~40重量%の短鎖有機カルボン酸またはその塩を含む、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0051】
長鎖有機カルボン酸
本発明の特定の実施形態では、C~C16有機カルボン酸またはその塩、好ましくはC~C11有機カルボン酸またはその塩からなる群から選択される長鎖有機カルボン酸腐食防止剤を更に含む、本明細書に記載の組成物が提供される。好ましいC~C16有機カルボン酸としては、ヘキサン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、ノナン酸、イソノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、ネオデカン酸、シクロヘキシルブチル酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびそれらの塩が挙げられる。
【0052】
本発明の特定の実施形態において、
・ C~C脂肪族モノカルボン酸およびその塩、好ましくはヘキサン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、ノナン酸およびその塩;
・ C~C12脂肪族ジカルボン酸およびその塩、好ましくはアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸およびその塩;
・ C~C11芳香族モノカルボン酸およびその塩、好ましくは安息香酸、サリチル酸、ケイ皮酸、p-ヒドロキシ安息香酸、没食子酸、バニリン酸、シリンガ酸、トランスケイ皮酸、p-クマル酸、コーヒー酸、フェルラ酸およびそれらの塩;
・ C~C14芳香族ジカルボン酸およびその塩、好ましくはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸およびその塩
から選択される群より選択される高カルボン酸腐食防止剤を更に含む、本明細書に記載の組成物が提供される。
いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、これらの腐食防止剤は、一般に、グリコール系熱伝達流体において一般的に用いられる濃度では、いかなる溶解性の問題も示さないと考える。
【0053】
本発明の特定の実施形態では、C~C16脂肪族カルボン酸およびその塩、好ましくはC~C16脂肪族ジカルボン酸およびその塩、好ましくはC~C12脂肪族ジカルボン酸およびその塩、最も好ましくはC~C10脂肪族ジカルボン酸およびその塩からなる群から選択される長鎖有機カルボン酸腐食防止剤を更に含む、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0054】
本発明の実施形態において、本明細書に記載の長鎖有機カルボン酸腐食防止剤は、カルボキシレートアニオンおよびカチオン性対イオンからなる塩の形態で提供される。カチオン性対イオンは、好ましくはアルカリ土類金属カチオン、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオンまたはそれらの組み合わせ、より好ましくはアルカリ金属カチオン、最も好ましくはナトリウム若しくはカリウムまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明の実施形態において、アンモニウムカチオンは、式(NRR’R’’R’’’)(式中、R、R’、R’’およびR’’’は、独立して、分枝状または直鎖状C~Cアルキルおよび分枝状または直鎖状C~Cヒドロキシアルキルの群から、好ましくはメチル、エチル、n-プロピルおよびイソプロピルから選択される)によって表される四級アンモニウムカチオンである。本発明の実施形態において、アンモニウムカチオンは、式(HNRR’R’’)によって表される第三級アミンカチオンであり、ここで、R、R’およびR’’は、独立して、分枝または直鎖C~Cアルキルおよび分枝または直鎖C~Cヒドロキシアルキルの群から、好ましくはメチル、エチル、n-プロピルおよびイソプロピルから選択される。本発明の実施形態において、アンモニウムカチオンは、式(HNRR’)によって表される第二級アミンカチオンであり、式中、RおよびR’は、独立して、分岐または直鎖C~Cアルキルおよび分岐または直鎖C~Cヒドロキシアルキルの群から、好ましくはメチル、エチル、n-プロピルおよびイソプロピルから選択される。長鎖有機カルボン酸またはその塩が塩の形態で使用される場合、本明細書で使用される長鎖有機カルボン酸またはその塩の量は、有機カルボキシレートアニオンおよびカチオン性対イオンの量を指す(すなわち、カチオン性対イオンの重量を含む)。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、本明細書に記載の長鎖有機カルボン酸腐食防止剤を(組成物の総重量に対して)0.001重量%超、好ましくは0.01重量%超、好ましくは0.1重量%超更に含む、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0056】
本発明の特定の実施形態では、本明細書に記載の長鎖有機カルボン酸腐食防止剤を(組成物の総重量に対して)5重量%未満、好ましくは4重量%未満、好ましくは3重量%未満、好ましくは2重量%未満、好ましくは1重量%未満含む、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、本明細書に記載の長鎖有機カルボン酸腐食防止剤を(組成物の総重量に対して)0.01~5重量%の範囲内、好ましくは0.01~2重量%の範囲、好ましくは0.01~1重量%の範囲の量で含む、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0058】
本発明の特定の実施態様において、(組成物の総重量に対して)1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満、より好ましくは0.001重量%未満のC~C16脂肪族カルボン酸およびその塩を含む、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0059】
腐食防止
本発明の実施形態では、高速サイクリック動電位分極走査(RCP)によって、好ましくはAlMgSi0.5合金作用電極を使用して測定した場合に、0mV超、好ましくは2500mV超のアルミニウム孔食電位を示す、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0060】
本発明の非常に好ましい実施形態では、CEBELCOR (Centre Belge d’Etude de laCorrosion)の刊行物Rapports Techniques, vol. 147, R.T. 272(1984年8月)に記載されている方法に従って測定したときに、0mVを超える、好ましくは2500mVを超えるアルミニウム孔食電位を示す、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0061】
本発明の非常に好ましい実施形態では、100グラムの試験液に浸漬し、固体銀参照電極(6.0330.0040参照、供給元Metroohm)を使用しながら、固体白金補助電極(6.0331.010参照、供給元Methrohom)に対して0.5mV/秒の走査速度で0.5mV/秒のステップで0.5cmの研磨(600グリット研磨炭化ケイ素紙を使用)加工面を有する棒状のエポキシ埋め込み停滞アルミニウム加工電極(合金AlMgSi0.5)の電位を変化させる工程;ポテンシオスタット(VeraSTAT; Ametek(登録商標)Scientifc Instruments)を用いて、作用電極と補助電極との間を流れる電流密度を電位差の関数として記録する工程;および電流密度の急激な指数関数的増加により孔食電位Epを同定する工程により決定したときに、0mV超、好ましくは2500mV超のアルミニウム孔食電位を示す、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0062】
当業者には理解されるように、また添付の実施例に示すように、他の腐食防止剤の存在および量に応じて、高速サイクリック動電位分極走査(RCP)によって測定したときに0mV超、好ましくは2500mV超のアルミニウム孔食電位を達成するのに必要な低カルボン酸またはその塩の最小量は変化する。高速サイクリック動電位分極走査(RCP)によって測定したときに2500mV超のアルミニウム孔食電位腐食を示す組成物を配合することは、本開示に照らして、当業者の日常的な能力の範囲内である。
【0063】
添加剤
本発明の特定の実施形態において、本明細書で定義される組成物は、更なる腐食防止剤、抗酸化剤、耐摩耗剤、界面活性剤および/または消泡剤からなる群から選択される1種以上の添加剤を更に含む。この文脈において、さらなる腐食防止剤は、本明細書に記載の短鎖および長鎖有機カルボン酸ならびにそれらの塩以外の腐食防止剤を意味すると解釈されるべきである。好ましい更なる腐食防止剤は、無機腐食防止剤、ホスホネート腐食防止剤、アゾール腐食防止剤およびチアゾール腐食防止剤からなる群から選択される。
【0064】
本発明の特定の実施形態では、組成物は、(組成物の総重量に対して)0.001重量%超、好ましくは0.01重量%超、好ましくは0.1重量%超の添加剤を更に含む。
【0065】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、チアゾール、トリアゾール、ポリオレフィン、ポリアルキレンオキシド、シリコンオイル、鉱油、ケイ酸塩、モリブデン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、ホスホン酸塩およびリン酸塩からなる群から選択される1種以上の添加剤を更に含む。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、(組成物の総重量に対して)0.001~10重量%、好ましくは0.01~5重量%の範囲内の量の1つ以上の添加剤を更に含む。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、トリアゾール、チアゾールまたはそれらの組み合わせ、好ましくは芳香族トリアゾール、芳香族チアゾールまたはそれらの組み合わせを更に含む、本明細書で定義される組成物が提供される。本発明の好ましい実施形態では、トリルトリアゾール、ベンゾトリアゾールまたはそれらの組合せからなる群から選択される1種または複数のトリアゾールの形態の腐食防止剤を更に含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0067】
本発明の実施形態では、トリアゾールまたはチアゾールを、(組成物の総重量に対して)0.001重量%超、好ましくは0.01重量%超、好ましくは0.1重量%超、および/または3重量%未満、好ましくは1重量%未満、好ましくは0.35重量%未満の量で含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0068】
本発明の実施形態では、消泡剤を更に含む、本明細書で定義される組成物が提供される。好ましくは、消泡剤は、ポリオレフィン、ポリアルキレンオキシド、シリコンポリマー(例えば、3Dシリコンポリマー)またはシリコンオイルからなる群から選択される。
【0069】
本発明の実施形態では、消泡剤を(組成物の総重量に対して)0.001重量%超、好ましくは0.005重量%超、好ましくは0.01重量%超、および/または1重量%未満、好ましくは0.25重量%未満、好ましくは0.1重量%未満の量で更に含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0070】
本発明の実施形態では、モリブデン酸塩、好ましくは無機モリブデン酸塩の形態の腐食防止剤を、(組成物の総重量に対して)1ppm超、好ましくは10ppm超、好ましくは100ppm超、および/または10000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満のモリブデン酸塩の量で更に含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0071】
モリブデン酸塩が塩の形態で使用される場合、本明細書で使用されるモリブデン酸塩の量は、モリブデン酸アニオンの量(すなわち、カチオン性対イオンの重量を除く)を指す。
【0072】
本発明の実施形態では、硝酸塩、好ましくは無機硝酸塩を、(組成物の総重量に対して)1ppm超、好ましくは10ppm超、好ましくは100ppm超の硝酸塩、および/または10000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満の硝酸塩の量で更に含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0073】
硝酸塩が塩の形態で使用される場合、本明細書で使用される硝酸塩の量は、硝酸塩アニオンの量(すなわち、カチオン性対イオンの重量を除く)を指す。
【0074】
本発明の実施形態では、亜硝酸塩、好ましくは無機亜硝酸塩を、(組成物の総重量に対して)1ppm超、好ましくは10ppm超、好ましくは100ppm超の亜硝酸塩および/または10000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満の亜硝酸塩の量で更に含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0075】
亜硝酸塩が塩の形態で使用される場合、本明細書で使用される亜硝酸塩の量は、亜硝酸アニオンの量(すなわち、カチオン性対イオンの重量を除く)を指す。
【0076】
本発明の実施形態では、ホスホネート、好ましくは無機ホスホネートを、(組成物の総重量に対して)10ppm超のホスホネート、好ましくは250ppm超、好ましくは1000ppm超のホスホネート、および/または10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、好ましくは2500ppm未満の量で更に含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0077】
ホスホネートが塩の形態で使用される場合、本明細書中で使用されるホスホネートの量は、ホスホネートアニオンの量(すなわち、カチオン性対イオンの重量を除く)を指す。
【0078】
本発明の実施形態では、リン酸塩、好ましくは無機リン酸塩の形態の腐食防止剤を、(組成物の総重量に対して)10ppm超、好ましくは250ppm超、好ましくは1000ppm超のリン酸塩、および/または10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、好ましくは2500ppm未満のリン酸塩の量で更に含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0079】
リン酸塩が塩の形態で使用される場合、本明細書で使用されるリン酸塩の量は、リン酸アニオンの量(すなわち、カチオン性対イオンの重量を除く)を指す。
【0080】
本発明の実施形態では、ケイ酸塩、好ましくは無機ケイ酸塩、好ましくはメタケイ酸ナトリウムの形態の腐食防止剤を、(組成物の総重量に対して)1ppm超のSi、好ましくは10ppm超のSi、最も好ましくは100ppm超のSiおよび/または10000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満のSiの量で更に含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0081】
本発明の実施形態では、抗酸化剤を更に含む、本明細書で定義される組成物が提供される。好ましくは、酸化防止剤は、2,6-ジ-t-ブチルメチルフェノールおよび4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)などのフェノール類;p,p-ジオクチルフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミン、フェノチアジン、3,7-ジオクチルフェノチアジン、フェニル-1-ナフチルアミン、フェニル-2-ナフチルアミン、アルキルフェニル-1-ナフタルアミンおよびアルキル-フェニル-2-ナフタルアミンなどの芳香族アミン類;ジチオホスフェート、ホスファイト、スルフィドおよびジチオ金属塩、例えばベンゾチアゾール、スズ-ジアルキルジチオホスフェートおよび亜鉛ジアリールジチオホスフェートなどの硫黄含有化合物からなる群から選択される。
【0082】
本発明の実施形態では、(組成物の総重量に対して)0.001重量%超、好ましくは0.005重量%超、好ましくは0.01重量%超、および/または10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量の酸化防止剤を更に含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0083】
本発明の実施形態において、耐摩耗剤を更に含む、本明細書中で定義される組成物が提供される。好ましくは、耐摩耗剤は、リン酸エステル、ホスファイト、チオホスファイト(例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛)、リン酸トリクレジル、塩素化ワックス、硫化脂肪およびオレフィン(例えば、チオジプロピオン酸エステル、ジアルキルスルフィド、ジアルキルポリスルフィド、アルキルメルカプタン、ジベンゾチオフェンおよび2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール))、有機鉛化合物、脂肪酸、ハロゲン置換有機ケイ素化合物、およびハロゲン置換リン化合物からなる群から選択される。
【0084】
本発明の実施形態において、耐摩耗剤を、(この組成物の総重量に対して)0.001重量%より多く、好ましくは0.005重量%より多く、好ましくは0.01重量%より多く、および/または10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量で更に含む、本明細書中で定義されるような組成物が提供される。
【0085】
本発明の実施形態では、界面活性剤を更に含む、本明細書で定義される組成物が提供される。好ましくは、界面活性剤は、R-Xによって表される化合物の塩であるアニオン性界面活性剤などのアニオン性界面活性剤からなる群から選択される。式中、Xは、硫酸基、リン酸基、スルホン酸基またはカルボン酸基を表し、好ましくは硫酸基であり、Rは
-分岐または直鎖C~C24アルキル基;
-分岐または直鎖モノ不飽和C~C24アルケニル基;
-分岐または直鎖ポリ不飽和C~C24アルケニル基;
-C~C15アルキルを含むアルキルベンゼン基;
-C~C15アルケニルを含むアルケニルベンゼン基;
-C~C15アルキルを含むアルキルナフタレン基;
-C~C15アルケニルを含むアルケニルナフタレン基;
-C~C15アルキルを含むアルキルフェノール基;
-C~C15アルケニルを含むアルケニルフェノール基
から選択される。
【0086】
本発明の実施形態では、(組成物の総重量に対して)0.001重量%超、好ましくは0.005重量%超、好ましくは0.01重量%超、および/または10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量の界面活性剤を更に含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
本発明の実施形態において、組成物はスケール防止剤を更に含む、本明細書に定義される組成物が提供される。好ましくは、スケール防止剤は、キレート剤、限界沈殿防止剤またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明の実施形態では、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、クエン酸、およびグルコン酸からなる群から選択されるキレート剤であるスケール防止剤を更に含む、本明細書で定義される組成物が提供される。本発明の実施形態では、ポリリン酸塩(例えば、三リン酸ナトリウムまたはヘキサメタリン酸ナトリウム);ホスホン酸塩(例えば、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DETPMP)、ペンタエチレンヘキサミンオクタキスメチレンホスホン酸(PEHOMP)、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸(2-PBTCA)、ポリビニルホスホン酸(PPA);ポリ(ホスフィノ-アクリル酸)(PPCA)またはスルホン化ホスフィノ-カルボン酸(SPOCA)などのホスフィノ-カルボン酸(PCA));ポリカルボン酸およびそれらの誘導体(例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸またはメタクリル酸のポリマー;アクリルアミド、ビニルスルホン酸、スルホン化スチレン、およびイタコン酸などのさらなるモノマーを使用する上記ポリマーのコポリマー;ポリエポキシコハク酸のようなエポキシカルボン酸のポリマーまたはポリアスパラギン酸のようなアミノ酸のポリマーからなる群から選択される限界沈殿阻害剤であるスケール阻害剤を更に含む、本明細書で定義される組成物が提供される。本発明の実施形態では、(組成物の総重量に対して)0.001重量%超、好ましくは0.005重量%超、好ましくは0.01重量%超、および/または10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量のスケール防止剤を更に含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0087】
当業者に理解されるように、(例えば)意図される用途に応じて、本発明による組成物は、様々な濃度で配合され、使用され得る。したがって、本発明は、グリコールまたは短鎖有機カルボン酸の最大濃度によって、または本明細書に記載の他の添加剤の濃度によって特に限定されない。したがって、想定される用途に応じて、本明細書に記載の組成物は、そのまま使用するのに好適であり得るか、または使用前にベース流体による希釈を必要とし得る。しかしながら、本発明者らは、本発明の組成物を、燃焼機関冷却剤としての使用に好適であり得る即時使用可能な組成物の形態で、即時使用可能な組成物を調製するのに好適である濃縮物の形態で提供することが特に有利であることを見出した。
【0088】
即時使用可能な組成物
本発明の非常に好ましい実施形態において、本明細書に記載の組成物は、即時使用可能な組成物の形態で提供され、ここで、組成物は水を更に含み、
・ グリコールと短鎖有機カルボン酸またはその塩との合計量が、(組成物の総重量に対して)30~70重量%の範囲、好ましくは35~65重量%の範囲、より好ましくは40~60重量%の範囲であり、且つ
・ 水、グリコールおよび短鎖有機カルボン酸またはその塩の合計量は、(組成物の総重量に対して)90重量%超、好ましくは95重量%超、好ましくは98重量%超、最も好ましくは99重量%超である。
【0089】
本発明の好ましい実施形態では、(組成物の総重量に対して)30重量%超、例えば、35重量%超、40重量%超、45重量%超、50重量%超、55重量%超、60重量%超、または65重量%超の水を含む、即時使用可能な組成物が提供される。
【0090】
好ましい組合せ実施形態-使用準備
従って、本発明の非常に好ましい実施形態において、組成物であって、
・ 水
・ (組成物の総重量に対して)5重量%超のモノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールまたはそれらの組合せからなる群から選択されるグリコール、および
・ (組成物の総重量に対して)1重量%超、好ましくは2重量%超の、C有機カルボン酸またはその塩、C有機カルボン酸またはその塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される短鎖有機カルボン酸またはその塩
を含み、
グリコールと短鎖有機カルボン酸またはその塩との合計量が、(組成物の総重量に対して)30~70重量%の範囲、好ましくは35~65重量%の範囲、より好ましくは40~60重量%の範囲であり、
水、グリコールおよび短鎖有機カルボン酸またはその塩の合計量は、(組成物の総重量に対して)95重量%超、好ましくは98重量%超、最も好ましくは99重量%超であり、
ここで、グリコールは、好ましくは、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、およびそれらの組み合わせから選択される、組成物が提供される。
非常に好ましい実施形態では、(グリコールと短鎖有機カルボキシレートとを合わせた重量に対して)6重量%超、好ましくは30重量%超の短鎖有機カルボン酸またはその塩を含む組成物が提供される。
【0091】
本発明の好ましい実施形態において、組成物であって、
・ 水、
・ (組成物の総重量に対して)5重量%超のモノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールまたはそれらの組合せからなる群から選択されるグリコール、および
・ (組成物の総重量に対して)1重量%超、好ましくは2重量%超、より好ましくは10重量%超のC有機カルボン酸またはその塩、好ましくはプロピオン酸またはその塩、より好ましくはプロピオン酸カリウム
を含み、
グリコールと短鎖有機カルボン酸またはその塩との合計量が、(組成物の総重量に対して)30~70重量%の範囲、好ましくは35~65重量%の範囲、より好ましくは40~60重量%の範囲であり、
水、グリコールおよびC有機カルボン酸またはその塩の合計量が、(組成物の総重量に対して)95重量%超、好ましくは98重量%超、最も好ましくは99重量%超であり、
ここで、グリコールは、好ましくは、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、およびそれらの組み合わせから選択される、組成物が提供される。
非常に好ましい実施形態では、(グリコールおよび短鎖有機カルボキシレートを合わせた重量に対して)6重量%超、好ましくは30重量%超のC有機カルボン酸またはその塩を含む組成物が提供される。
【0092】
本発明の好ましい実施形態において、組成物であって、
・ 水、
・ (組成物の総重量に対して)5重量%超のモノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールまたはそれらの組合せからなる群から選択されるグリコール、および
・ (組成物の総重量に対して)1重量%超、好ましくは2重量%超、より好ましくは10重量%超、より好ましくは15重量%超のC有機カルボン酸またはその塩、好ましくは酢酸またはその塩、より好ましくは酢酸カリウム
を含み、
グリコールと短鎖有機カルボン酸またはその塩との合計量が、(組成物の総重量に対して)30~70重量%の範囲、好ましくは35~65重量%の範囲、より好ましくは40~60重量%の範囲であり、
水、グリコール、C有機カルボン酸またはその塩の合計量が、(組成物の総重量に対して)95重量%超、好ましくは98重量%超、最も好ましくは99重量%超であり、
ここで、グリコールは、好ましくは、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、およびそれらの組み合わせから選択される、組成物が提供される。
非常に好ましい実施形態では、(グリコールおよび短鎖有機カルボキシレートを合わせた重量に対して)6重量%超、好ましくは30重量%超のC有機カルボン酸またはその塩を含む組成物が提供される。
【0093】
pH
本発明の好ましい実施形態では、組成物、好ましくは本明細書で定義される即時使用可能な組成物であって、7.5~10のpHを有する組成物が提供される。
【0094】
濃縮物
本発明の別の態様では、本明細書で先に記載した即時使用可能な組成物を調製するのに適した濃縮物の形態の、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0095】
好ましい実施形態において、濃縮物は、水および/またはアルコールの添加によって;好ましくは、水、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオールおよび/またはグリセロールの添加によって;最も好ましくは、水の添加によって、本明細書に記載の即時使用可能な組成物を調製するのに適している。非常に好ましい実施形態では、濃縮物は、水および/またはアルコールの添加のみによって;好ましくは、水、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオールおよび/またはグリセロールの添加のみによって;最も好ましくは、水の添加のみによって、即時使用可能な組成物を調製するのに適している(すなわち、濃縮物から本明細書に記載の即時使用可能な組成物を調製するために、他の成分を添加する必要がない)。
【0096】
本発明の特定の実施形態では、濃縮物は、(濃縮物の総重量に対して)70重量%超のポリアルコール、好ましくはモノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオールおよびグリセロールからなる群から選択されるポリアルコールを含む。
【0097】
調製方法
本発明の別の態様では、本明細書で定義される組成物を調製する方法であって、
(i)本明細書に記載の短鎖有機カルボン酸またはその塩を提供する工程;
(ii)本明細書に記載のグリコールを提供する工程;
(iii)任意選択で、本明細書に記載の長鎖有機カルボン酸またはその塩を提供する工程;
(iv)任意選択で、本明細書で定義されるさらなる添加剤を提供する工程;および
(v)工程(i)の短鎖有機カルボン酸またはその塩を、工程(ii)のグリコール、工程(iii)の任意選択の高カルボン酸またはその塩、および工程(iv)の任意選択のさらなる添加剤と合わせて、組成物を得る工程;
を備える方法が提供される。
【0098】
本発明によれば、化合物の添加順序は特に限定されない。
【0099】
本発明の別の態様では、本明細書で定義される即時使用可能な組成物を調製する方法であって、
(i)本明細書において先に定義された濃縮物を提供する工程;
(ii)水、アルコールまたはそれらの混合物を提供する工程;
(iii)任意選択で、本明細書において先に定義されたさらなる添加剤を提供する工程;および
(iv)工程(i)の濃縮物を、工程(ii)の水、アルコールまたはそれらの混合物および工程(iii)の任意のさらなる添加剤と合わせて、即時使用可能な組成物を得る工程;
を備える方法が提供される。
【0100】
好ましい実施形態では、本明細書で定義される即時使用可能な組成物を調製する方法であって、
(i)本明細書において先に定義された濃縮物を提供する工程;
(ii)水、アルコールまたはそれらの混合物を提供する工程;および
(iii)工程(i)の濃縮物を、工程(ii)の水、アルコールまたはそれらの混合物と合わせて、即時使用可能な組成物を得る工程
からなる方法が提供される。
【0101】
非常に好ましい実施形態において、工程(ii)のアルコールは、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましい実施形態において、工程(ii)は、水を提供することからなる。
【0102】
好ましい実施形態では、工程(ii)は、(濃縮物の重量に対して)50重量%超、好ましくは100重量%超、150重量%超、200重量%超、または350重量%超の水、アルコール、またはこれらの混合物を提供することを含む。
【0103】
使用/方法
本発明の別の態様では、伝熱流体として、好ましくは燃焼機関、ターボ冷却器、排気ガス回収冷却器、ブレーキ熱回収システム、ソーラーシステム、燃料電池、電気モーター、発電機、バッテリー、バッテリー電気自動車、または電子機器における伝熱流体として、最も好ましくは燃焼機関における伝熱流体としての、本明細書で上述した組成物、好ましくは本明細書で提供される即時使用可能な組成物の使用が提供される。
【0104】
本発明の別の態様では、組成物、好ましくは本明細書で提供される即時使用可能な組成物を金属表面と接触させることを含む、腐食を防止する方法が提供される。
【0105】
本発明の別の態様では、組成物、好ましくは本明細書に記載の即時使用可能な組成物を含む、燃焼機関、ターボ冷却器、排気ガス回収冷却器、ブレーキ熱回収システム、ソーラーシステム、燃料電池、電気モーター、発電機、または電子機器が提供される。
【0106】
本発明の別の態様では、熱を交換する方法であって、
a. 燃焼機関、ターボ冷却器、排気ガス回収冷却器、ブレーキ熱回収システム、ソーラーシステム、燃料電池、電気モーター、発電機、バッテリー、バッテリー電気自動車、または電子機器から選択されるシステム、好ましくは燃焼機関において熱を発生させる工程;
b. 本明細書に記載の組成物、好ましくは本明細書に記載の即時使用可能な組成物を、工程aのシステムと接触させる工程;
c. 上記システムから上記組成物に熱を伝達する工程;
d. 上記組成物を熱交換器に通す工程;および
e. 上記組成物から熱を移動させる工程;
を備える方法が提供される。
【0107】
本発明の別の態様では、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールまたはそれらの組合せからなる群から選択されるグリコールを(組成物の総重量に対して)5重量%超含む組成物の腐食防止を増大させるための、好ましくは孔食電位を上昇させるための、最も好ましくはアルミニウムの孔食電位を上昇させるための、C有機カルボン酸またはその塩、C有機カルボン酸またはその塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、好ましくはプロピオン酸およびその塩、酢酸およびその塩、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される短鎖有機カルボン酸の使用が提供される。本発明の好ましい実施形態では、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコールおよびそれらの組合せからなる群から選択されるグリコールを(組成物の総重量に対して)5重量%超含む組成物の腐食防止を増大させるための、好ましくは孔食電位を上昇させるための、最も好ましくはアルミニウムの孔食電位を上昇させるための、C有機カルボン酸またはその塩、C有機カルボン酸またはその塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される、好ましくはプロピオン酸およびその塩、酢酸およびその塩、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される短鎖有機カルボン酸の使用が提供される。
【実施例
【0108】
表1~4中の全ての重量%の値は、(別段の記載がない限り)組成物の全重量に基づいている。腐食防止剤溶液は、水中の23重量%のCおよびC10カルボン酸塩の混合物(ここで、重量%は、有機カルボン酸塩アニオンに基づいて計算される(すなわち、カチオン性対イオンの重量を除外する))からなる。腐食性水は、硫酸ナトリウム148mg、塩化ナトリウム165mg、炭酸水素ナトリウム138mgおよび塩化カルシウム二水和物364mgを1リットルの水に溶解したものである。孔食電位は、CEBELCOR (Centre Belge d’Etude de laCorrosion)の刊行物であるRapports Techniques, vol.147, R.T.272 (1984年8月)に記載されている方法に従って、高速サイクリック動電位分極走査(Rapid Cyclic Potentiokinetic Polarization Scanning:RCP)によって測定される。高いEp値は局部腐食のより効果的な防止を示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【0112】
【表4】