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特許7594004フェロポーチン阻害剤(VIT-2763)を用いる鎌状赤血球症を治療するための方法及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】フェロポーチン阻害剤(VIT-2763)を用いる鎌状赤血球症を治療するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4439 20060101AFI20241126BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/17 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P7/06
A61P9/14
A61P1/16
A61P11/00
A61P29/00
A61K9/48
A61K45/00
A61K31/17
A61P43/00 111
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022523485
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2020079802
(87)【国際公開番号】W WO2021078889
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】19000483.8
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/924,556
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】20163777.4
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20176336.4
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509203050
【氏名又は名称】ヴィフォール (インターナショナル) アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Vifor (International) AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】マノロヴァ,ヴァニア
(72)【発明者】
【氏名】デュレンベルガー,フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ニッフェネガー,ナジャ
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/192973(WO,A1)
【文献】MANOLOVA Vania, et al.,The oral ferroportin inhibitor VIT-2763 prevents hemolysis and vaso-occlusion in a sickle cell diseases model II,LIPPINCOTT WILLIAMS AND WILKINS NLD,2020年06月12日,vol. 4, no. Supplement 1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00-33/44
A61K47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎌状赤血球症に罹患している患者における血管炎症及び血管閉塞の予防及び治療における使用のための、下記式による化合物の3HCl塩を含む医薬組成物。
【化3】
【請求項2】
前記鎌状赤血球症が、HbSS;HbSC;HbSβ0サラセミア;HbSβ+サラセミア、HbSD、HbSE及びHbSOから選択される、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
経口投与用の形態である、請求項1又は2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
経口投与用の充填カプセルの形態である、請求項1~のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
前記治療が、治療を必要とする患者に、前記塩の5mg、15mg、30mg、60mg、120mg又は240mgの1日用量を投与することを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項6】
前記治療が、治療を必要とする患者に、体重50kg以上及び100kg以下の患者に対して、前記塩の30mg又は60mgの1日用量を投与することを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項7】
前記治療が、治療を必要とする患者に、前記塩の選択された1日用量を1日1回又は2回投与することを含む、請求項5又は6に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物が、当該化合物の併用投与のための逐次使用のための少なくとも一つの追加の医薬活性化合物と、固定用量又は自由用量の組み合わせで存在する、併用療法組成物。
【請求項9】
少なくとも一つの追加の医薬活性化合物が、SCD医薬類の群から選択される、請求項に記載の使用のための併用療法組成物。
【請求項10】
少なくとも一つの追加の医薬活性化合物が、ヒドロキシ尿素及び/又は疼痛緩和薬の群から選択される、請求項8又は9に記載の使用のための併用療法組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
鎌状赤血球症(SCD)は、生涯続く重度の溶血性貧血、再発性疼痛発作、慢性臓器障害及び平均余命の顕著な減少を特徴とするヘモグロビン合成の遺伝性障害である。SCDは、ヘモグロビン(Hb)β遺伝子の変異により、βグロビンタンパク質のアミノ酸置換が起こり、鎌状ヘモグロビン(HbS)対立遺伝子βSが生じることで発症する。SCDのマウスモデル(Townesマウス)では、マウスのHb遺伝子が欠失され、ヒト鎌状Hb遺伝子に置き換わっている。HbSにホモ接合性であるマウスは、専らヒト鎌状Hbを発現し、剛体鎌状赤血球(sRBC)、溶血性貧血、鉄過剰症、脾赤色髄の拡大、炎症、内皮血管への血球付着の増加による血管閉塞/血管閉塞(VO)、及び臓器損傷を有するヒトでのSCDとよく似た病態を発症する。デオキシHbSの重合は、鎌状RBXCの寿命を縮め、血管内溶血及び血管外溶血を促進する。血管内溶血は、RBCから無細胞Hbを放出させる。この無細胞Hbは、第一鉄(Fe2+)から第二鉄(Fe3+)Hb(metHb)に容易に酸化され、そこからヘムが血管内に容易に解離して、酸化ストレス、炎症、VO、虚血及び組織損傷を引き起こす(Umbreit J.,Am.J.Hematol.,2007)。
【0002】
それに関連するSCDを治療するための従来の(承認された)薬剤は、ヒドロキシ尿素(ドロキシア、ハイドレア、シクロス)、L-グルタミン経口粉剤(エンダリ)、クリザンリズマブ(アダクベオ)、ボキセロートル(オキシブリタ)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2017/068089A1
【文献】WO2017068090A1
【非特許文献】
【0004】
【文献】Umbreit J., Am. J. Hematol., 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒドロキシ尿素の連日投与は、疼痛発作の頻度を減らし、輸血や入院の必要性を減らす可能性があると考えられる。それは感染症のリスクを高める可能性がある。
【0006】
L-グルタミン経口粉剤(エンダリ)は、疼痛発作の頻度を減らすのに役立つ。
【0007】
クリザンリズマブ(アダクベオ)は静脈内投与薬であり、疼痛発作の頻度を下げるのに役立つ。副作用には、吐き気、関節痛、背部痛及び発熱を含み得る。
【0008】
ボクセロトール(オクスブライタ)は経口投与薬であり、鎌状赤血球症患者における貧血を改善する。副作用には、頭痛、吐き気、下痢、疲労、発疹及び発熱を含み得る。
【0009】
さらに、SCD患者には鎮痛剤が定期的に投与され、それは鎌状赤血球疼痛発作時の疼痛を和らげるのに役立つが、疼痛の原因を治療するものではない。
【0010】
本発明の目的は、SCDを治療するための新規で改良された薬物又は治療法を提供することであった。特に、新規な薬物又はSCD療法は、SCDに関連するマーカー、症状又は事象の1以上を改善、緩和又は変化させ、本明細書でさらに定義されるように、正常化レベルに向かわせるものでなければならない。本発明のさらなる目的は、従来のヒドロキシ尿素治療と比較して安全性プロファイルが改善されたSCD薬剤又は治療法を提供することであった。本発明のさらなる目的は、従来のボキセロトール治療と比較して、少なくとも同じ又はさらに改善された安全性プロファイルを有するSCD薬物又は治療法を提供することであった。本発明は、本明細書において下記でより詳細に説明される1以上の態様を考慮して、改善されたSCD療法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書では、下記式の化合物(化合物127):
【化1】
又は薬学的に許容されるその塩を投与することを含む、SCDの治療方法が記載されている。好適な塩の中には、安息香酸塩、HCl塩、クエン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩及びトルエンスルホン酸塩がある。各種実施形態において、化合物:塩の比率は、1:1、2:1、1:2又は1:3である。本明細書で使用される場合、化合物の塩は、特定の比率が示されていない限り、任意の比率の化合物:塩を指す。
【0012】
化合物127及び化合物127の合成方法は、WO2017/068089及びWO2017068090A1に記載されており、それらは参照により本明細書に組み込まれる。化合物127の特定の塩、並びに化合物127の各種多形体が、WO2018/192973に記載されており、それは参照により本明細書に組み込まれる。鎌状赤血球症の治療におけるそこに開示された特定の塩の使用の可能性が、各種他の適応症の中のリストで言及されている。実施例13には、化合物127のHSO及びHCl-モノ塩を用いた単回投与静脈及び経口薬物動態試験が記載されている。
【0013】
Vania Manolova:″First-in-class oral Ferroportin Inhibitor:Mode of Action and Efficacy in a mouse model of Beta-Thalassemia Intermedia″;EHA Abstract,14.06.2019には、中間型サラセミアの治療において化合物127を使用することが開示されているが、それの任意の特定の塩形態については一言もない。さらに、鎌状赤血球症の治療における潜在的な有効性についても、そこでは言及されていない。
【0014】
J.H.Baekら、″Ferroportin inhibition attenuates plasma iron, oxidant stress,and renal injury following red blood cell transfusion in guinea pigs″;TRANSFUSION,00,1-11,2020では、モルモットを用いたモデルでの急性赤血球輸血直後にVifor(International)社提供の低分子フェロポーチン阻害剤VIT-2653を静脈投与することで、血漿鉄、NTBIレベル、酸化ストレス及び細胞損傷が減弱される結果となったと報告されている。
【0015】
フェロポーチン-ヘプシジン軸が、血中鉄レベルを調節している。化合物127は、フェロポーチンの結合及び内在化においてヘプシジンと競合する。化合物127はフェロポーチンを阻害することで、血中への鉄輸送を阻害する。
【0016】
本発明の新たな使用の文脈における「治療する(treat)」、「治療(treatment)」又は「治療する(treating)」という用語は、SCDに関連する少なくとも一つの症状又は病的症状の改善を含む。本発明の文脈における「治療する(treat)」、「治療(treatment)」又は「治療する(treating)」という用語は、さらに、予防を含む。本発明による化合物127による治療は、特に、下記のマーカー、症状又は事象の一つ以上を、例えば正常化レベルに向けて改善、緩和又は変化させる。
【0017】
本発明による処置の効果
本発明の特定の態様は、上記若しくは下記の、又は特に実施例に記載されているマーカー、症状又は事象の1以上の治療、予防又は軽減における使用のための、本明細書のいずれかの箇所に記載されている化合物127に関するものである。
【0018】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、溶血を減少させる(例えば、無細胞ヘモグロビン(Hb)の減少、無細胞ヘムの減少、総ビリルビン及び間接血漿ビリルビンの減少又は血清LDH(乳酸脱水素酵素)の減少によって評価される)。
【0019】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、総血清鉄、血清フェリチン、血清トランスフェリン、及び計算TSAT(トランスフェリン飽和)の1以上を改善する。
【0020】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、網状赤血球増多症を軽減し、網状赤血球数及び/又は%網状赤血球を改善する。
【0021】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、総Hb、RBC数、ヘマトクリット、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン(MCH)、及び平均赤血球ヘモグロビン濃度(CHCM)の1以上を低下させる。
【0022】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、RBC分布幅(RDW)、血小板及び網状赤血球数の1以上を改善する。
【0023】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、小球性RBC(RBC容積対Hb散布図)を改善する。
【0024】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、異常RBC(鎌状化)における変化を達成し、及び/又はRBC鎌形化(末梢血スメア)を改善する。
【0025】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、白血球増加を軽減させる。
【0026】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、血中白血球数を低下させる(例えば、血中好中球数及び/又は血中リンパ球数を低下させる)。
【0027】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、血管外及び/又は血管内溶血を減少させる。
【0028】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、1以上の溶血マーカー、例えば間接/総ビリルビン、hsCRP(高感受性C反応性タンパク質)によって測定される血中炎症マーカー、IL-1及びIL-6(インターロイキン)、TNF-α、sVCAM-1、エンドセリン-1、sP-セレクチン、sICAM-1、及びキサンチンオキシダーゼを改善する。
【0029】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、Hb濃度、RBC数、ヘマトクリット(Hct)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球Hb(MCH)、平均赤血球Hb濃度(MCHC)、小体Hb濃度平均(CHCM)、RBC分布幅、血小板及び網状赤血球数、%網状赤血球、%低色素性、小球性RBC(RBC容積対Hb散布図)、CHCM(平均赤血球ヘモグロビン濃度)、総血清鉄、血清フェリチン、血清トランスフェリン、計算TSAT、ヘプシジン、EPO(エリトロポエチン)、NTBI(非トランスフェリン結合鉄)、可溶性トランスフェリン受容体(sTFR)、(sTFR-2)、及びLDHを含むRBC指数の1以上を改善する。
【0030】
これは、上述及び後述のパラメータの1以上を測定することで、SCDの治療における本発明の化合物の有効性を評価することができることを意味している。本発明の化合物127は、これらのパラメータのうち少なくとも一つを改善するのに適している。
【0031】
本発明の意味において、「改善する」又は「向上する」という用語は、治療効果の意味において、それぞれのマーカー又は症状の調節又は変化を含むことができる。
【0032】
より具体的には、本発明によるSCD治療は、以下をもたらし得る:
投与後最長72時間、最長60時間、最長48時間、最長36時間、最長24時間又は最長12、8、6、5、4、3、2、1及び0.5時間の期間内のいずれかの時点で測定され、そして本発明の治療の開始前0.5、1、2、3、4、5、6、8、12、24、36、又は48時間、又は最長<1週間以内のいずれかの時点で測定される患者におけるNTBIレベルと比較して、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は少なくとも100%の患者におけるNTBIレベルの低下。
【0033】
投与後最長72時間、最長60時間、最長48時間、最長36時間、最長24時間又は最長12、8、6、5、4、3、2、1及び0.5時間の期間内のいずれかの時点で測定され、そして本発明の治療の開始前0.5、1、2、3、4、5、6、8、12、24、36、又は48時間、又は最長<1週間以内のいずれかの時点で測定される患者における総LPIレベルと比較して、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は少なくとも100%の患者におけるLPIレベルの低下。
【0034】
初回投与後最長1週間、最長2週間、最長3週間、最長4週間、最長3ヶ月の期間内のいずれかの時点で測定され、そして本発明の治療開始前1週間、2週間、3週間、又は4週間以内のいずれかの時点で測定される対象者における個々のパラメータと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は少なくとも100%の、患者におけるパラメータHct、MCV、MCH、RDW及び網状赤血球数のうち少なくとも一つの改善。
【0035】
初回投与後最長1週間、最長2週間、最長3週間、最長4週間、最長3ヶ月の期間内のいずれかの時点で測定され、そして本発明の治療開始前1週間、2週間、3週間、又は4週間以内のいずれかの時点で測定される患者における血清フェリチンレベルと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は少なくとも100%の、患者における血清フェリチンレベルの低下。
【0036】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、肝臓、腎臓及び/又は脾臓におけるさらなる鉄蓄積を低減又は防止する。
【0037】
従って、さらなる態様において、当該新たな治療により、初回投与後最長1週間、最長2週間、最長3週間、最長4週間、最長3ヶ月の期間内のいずれかの時点で測定され、そして本発明の治療開始前1週間、2週間、3週間、又は4週間以内のいずれかの時点で測定されるSCD患者での肝臓、腎臓及び/又は脾臓鉄濃度のレベルと比較して、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は少なくとも100%の、SCD患者における肝臓、腎臓及び/又は脾臓鉄濃度の低下が生じ得る。
【0038】
場合により、化合物127による治療によって、腎臓での鉄過剰が減少する。
【0039】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、血管炎症マーカー、例えばsVCAM-1のレベルを低下させる。
【0040】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、血管の炎症を軽減する。
【0041】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、炎症を起こした静脈内又は微小血管への血球の付着を低減し、微小血管における血流を改善する。
【0042】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、微小血管への血球の付着、血管閉塞(VO)を低減し、VO事象を軽減する。
【0043】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、VOC又は疼痛性VOC発作の頻度を低下させ、及び/又はACS(急性胸部症候群)を含む疼痛性VOCの再発を防止する。
【0044】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、VOC又は疼痛VOC発作の頻度を低下させ、及び/又は、本発明の治療開始前1週間、2週間、3週間又は4週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、24ヶ月以内に患者におけるACSを含む再発性疼痛VOCを予防し;又は治療後少なくとも2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月又はそれ以上にわたり、SCD患者がVOC又は疼痛VOC発作を患わないことを達成する。
【0045】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、48週間を通じて、疼痛(VOC)発作の平均数の減少を達成する。
【0046】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、OH-尿素ナイーブ患者において48週間を通じて疼痛(VOC)発作の平均数の減少を達成する。
【0047】
好ましい態様は、血管炎症又はVO及びVO事象の治療、予防又は緩和における使用のための、本明細書のいずれかの箇所に記載の化合物127に関する。
【0048】
場合により、SCDに罹患している対象者の化合物127による治療は、特には本発明の治療開始前1週間、2週間、3週間又は4週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、24ヶ月以内の患者における輸血負担と比較して患者での輸血負担の低減のようなRBC輸血の必要性を低下させ;又は治療後少なくとも2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月又はそれ以上にわたりSCD患者が赤血球輸血を必要とせず、赤血球輸血に依存しなくなるようにすることを達成する。
【0049】
さらなる態様において、当該新規治療は、本発明の治療開始前1、2、3、又は4週間以内に決定されるSCD患者での生活の質と比較して、SCD患者の生活の質の改善をもたらすことができる。生活の質の改善は、治療開始後3、6、9、12、15、18、21又は24ヶ月以内に決定される。生活の質は、成人鎌状赤血球症生活の質測定システム(ASCQ-ME)を用いて、患者報告転帰(PRO)における変化を評価することにより決定されることができる。
【0050】
上記で定義されたパラメータの測定は、当技術分野の従来の方法を用いて、特に未公開のPCT出願PCT/EP2020/070391に記載された方法によって実施することができ、そのそれぞれの内容は、参照によりここに包含される。
【0051】
治療される患者群
基本的に、本発明による新しい使用において治療される対象者は、齧歯類及び霊長類のような任意の哺乳類であることができ、好ましい態様では、その新たな医学的使用はヒトの治療に関するものである。SCDに罹患し、本発明による新たな方法で治療されるべき対象者は、「患者」とも称される。
【0052】
治療されるべき対象者は、いずれの年齢であっても良い。本発明の好ましい態様は、小児及び青年の治療に関するものである。従って、本発明の好ましい態様では、本明細書に記載の新規な方法で治療される対象者は、≦18歳である。より詳細には、本明細書に記載の新規の方法で治療すべき対象者は、≦16歳、≦15歳、≦14歳、≦13歳、≦12歳、≦11歳、≦10歳、≦9歳、≦8歳、≦7歳、≦6歳、又は≦5歳である。本発明のさらなる態様では、本明細書に記載される新たな方法で治療される対象者は、1~3歳、3~5歳、5~7歳、7~9歳、9~11歳、11~13歳、13~15歳、15~20歳、20~25歳、25~30歳、又は>30歳である。好ましくは、治療される小児患者は、≦16歳又は≦12歳である。小児を治療する場合、本明細書に記載の新たな方法で治療される対象者は、≧2歳、好ましくは≧2歳かつ≦16歳又は≦12歳であることが好ましい。
【0053】
成人及び青年の治療のさらなる態様では、患者は、≧12歳又は≧16歳である。
【0054】
成人を治療する場合、本明細書に記載の新規な方法で治療される対象者は、18~50歳、好ましくは18~25歳、20~25歳、25~30歳、30~35歳、35~40歳、40~45歳、45~50歳である。また、50~55歳、55~60歳、又は60歳より高齢である高齢者を治療することも可能である。高齢者を治療する場合、本明細書に記載の新たな方法で治療される対象者は、60~80歳、例えば60~65歳、65~70歳、70~75歳、75~80歳、又は80歳より高齢である。
【0055】
本発明の化合物による治療によってかなりの利点が提供されることから、小児及び青年の治療が特に好ましい。前記化合物は、経口投与することができ、その方が非経口投与より有利である。さらに、本発明の経口的に生物学的利用可能な化合物は、体内では適度な生物学的利用能及び半減期を有することがわかっていることから、比較的迅速に排出される。それにより、副作用が少なくなり、薬物の可逆性がより早くなり、それは小児の治療において特に重要である。
【0056】
化合物127は、HbSS、HbSC、HbSβ0サラセミア、HbSβ+サラセミア、HbSD、HbSE、及びHbSOを含む各種形態のSCDを患う患者を治療するのに用いることができる。特に、化合物127は、HbSS又はHbSβ0サラセミアに罹患している患者を治療するのに用いることができる。
【0057】
化合物127は、特に、例えばヒドロキシ尿素による単独療法では十分に制御できない、本明細書のいずれかの箇所で定義のSCDに罹患している患者の治療に使用することができる。
【0058】
化合物127は、年に1回以上のVOCを有する本明細書に記載のSCDに罹患している患者の治療に用いることができる。
【0059】
化合物127は、年に1回以上及び6回以下のVOCを有する本明細書に記載のSCDに罹患している患者の治療に用いることができる。
【0060】
化合物127は、>1.5×正常値上限(ULN)の絶対網状赤血球数及び%網状赤血球数を有する本明細書に記載のSCDに罹患している患者の治療に用いることができる。
【0061】
化合物127は、脾臓の部分切除又は全摘出術の履歴を有する患者、心臓障害若しくは肺障害の病歴又は臨床的に重要な所見を有する患者、及び/又は赤血球(RBC)輸血療法(SCDを治療するための慢性、予防的又は防止的輸血を含む)を受けたことがあるか頻繁に若しくは定期的に受けている患者の治療に使用することができる。
【0062】
投与形態
本発明による化合物は、好ましくは、例えば経口投与のための丸薬、錠剤、例えば腸溶コーティング錠、フィルム錠及び層状錠剤、経口投与のための徐放製剤、デポー製剤、糖衣錠、粒剤、乳濁液、散剤、マイクロカプセル、マイクロ製剤、ナノ製剤、リポソーム製剤、カプセル、例えば、腸溶コーティングカプセル、粉剤、微結晶製剤、散布剤、滴剤、アンプル、液剤及び懸濁液を含む経口投与形態での医薬又は医薬組成物で提供される。
【0063】
本発明の好ましい実施形態では、本発明による化合物は、上記で定義の錠剤又はカプセルの形態で投与される。より好ましいものは、薬剤化合物127を充填したカプセルである。これらは、例えば、耐酸性形態として、又はpH依存性コーティングを有して存在することができる。
【0064】
薬剤化合物は、純粋な薬剤物質として、又はさらなる薬学的に許容されるアジュバント、補助剤、溶媒、添加剤などを含む医薬組成物の形態でカプセルに充填されてもよい。
【0065】
一般に、本発明の化合物を含む投与形態は、さらなる薬学的に許容されるアジュバント、補助剤、充填剤、溶媒、添加剤などを含んでいてもよい。
【0066】
医薬組成物は、例えば、最大99重量%又は最大90重量%又は最大80重量%又は最大70重量%の本発明の薬剤化合物を含むことができ、残りはそれぞれ、薬理的に許容される担体及び/又は補助剤及び/又は溶媒及び/又は任意にさらなる薬学的に活性な化合物によって形成される。
【0067】
薬学的に許容される担体、補助剤又は溶媒などは、医薬目的、特に固体医薬製剤のために慣用的に使用される種々の有機若しくは無機担体及び/又は補助剤を含む、一般的な医薬担体、補助剤又は溶媒である。例としては、賦形剤(例えば、サッカロース、デンプン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム);結合剤(例えば、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、サッカロース、デンプン);崩壊剤(例えば、デンプン、加水分解デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのカルシウム塩、ヒドロキシプロピルデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム);香味剤(例えば、クエン酸、メントール、グリシン、オレンジ粉末);保存剤(例えば、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、パラベン(例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン));安定剤(例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸及びtitriplexシリーズの多価カルボン酸、例えばジエチレントリアミン五酢酸(DTPA));懸濁化剤(例えば、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム);分散剤;希釈剤(例えば、水、有機溶剤);ワックス、脂肪及び油(例えば、ミツロウ、カカオ脂);ポリエチレングリコール;白色ワセリン等を含む。
【0068】
液剤、懸濁剤及びゲルのような液体医薬製剤は、通常、水及び/又は薬学的に許容される有機溶媒のような液体担体を含む。さらに、このような液体製剤は、例えば、上で定義される、pH調整剤、乳化剤又は分散剤、緩衝剤、保存剤、湿潤剤、ゼラチン化剤(例えばメチルセルロース)、染料及び/又は香味剤を含むこともできる。組成物は等張性であってもよく、すなわち血液と同じ浸透圧を有することができる。組成物の等張性は、塩化ナトリウム及び他の薬学的に許容される薬剤、例えば、デキストロース、マルトース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール及び他の無機又は有機可溶性物質を用いることによって調整することができる。液体組成物の粘度は、メチルセルロースのような薬学的に許容される増粘剤によって調整することができる。他の好適な増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマーを含む。増粘剤の好ましい濃度は、選択される薬剤に依存する。
【0069】
液体組成物の貯蔵寿命を延ばすために薬学的に許容される保存剤を使用することができる。例えば、パラベン、チメロサール、クロロブタノール及び塩化ベンザルコニウムを含む複数の保存剤も使用することができるが、ベンジルアルコールが適切であり得る。
【0070】
したがって、本発明のさらなる態様は、薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物及び多形体を含む本発明による化合物、並びに、経口投与形態で本明細書に定義のSCDの治療における使用のためのそれらを含む医薬、組成物及び組み合わせ製剤に関する。
【0071】
投与法
本発明による使用のための本発明による化合物は、下記の投与法の一つによって投与することができる。
【0072】
1態様において、本発明による化合物は、例えば1日1~4回、好ましくは1日1回又は2回、0.001~500mgの用量で、治療を必要とする患者に投与することができる。しかしながら、年齢、体重、患者の症状、疾患の重症度又は投与の種類に応じて、用量を増減することができる。本発明のさらなる態様において、本発明の化合物は、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、250mg、255mg、260mg、265mg、270mg、275mg、280mg、285mg、290mg、295mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mgの用量として投与することができる。
【0073】
好ましいのは0.5~500mg、より好ましいのは1~300mg又は3~300mg、さらに好ましいのは1~250mg又は5~250mgの用量である。
【0074】
最も好ましいのは、5mg、15mg、30mg、60mg、120mg又は240mgの用量である。特に好ましいのは、30mg、60mg、90mg、120mg又は240mgの用量であり、より特に好ましいのは30mg、60mg、90mg又は120mgの用量である。最も好ましいのは、30mg、60mg及び120mgの用量である。
【0075】
上記で定義された投与量を、総1日用量として1日1回投与で、又は1日2回以上の投与のために小分け用量に分割して投与することができる。
【0076】
さらなる好ましい態様において、30mg、60mg、90mg又は120mgの1日用量を、1日1回の単回投与として投与されることが好ましい。さらなる好ましい態様では、60mg又は120mgの1日用量を、それぞれ1日2回、二つの30mg又は二つの60mgとして投与される。また、1日用量90mgを30mgの用量で1日3回投与することも可能である。
【0077】
さらなる態様では、0.001~60mg/kg、0.01~60mg/kg、0.1~60mg/kg、又は0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35及び60mg/kgの用量を投与することが可能である。体重50kg以上の患者に120mg又は最大240mg、及び体重50kg以上の患者に60mgの用量をそれぞれ1日1回又は1日2回投与することができる。体重50kg以上の患者に60mgを、及び体重50kg以下の患者に30mgを、各場合で1日1回又は2回投与することが好ましい。さらに、体重50kg以上100kg以下の患者に、上記で定義の用量30mg及び60mgを投与することが好ましい。
【0078】
一般に、体重調整した投与が可能であり、さらなる態様ではそれが好ましい。
【0079】
本発明の化合物を年齢相応の製剤で投与することも好ましい。特に、2歳以上の患者に対する小児用投与形態は、特定の投与形態を必要とし、例としては、シロップ、液剤、滴剤、又は液体飲料に溶解させるための製剤を含む。
【0080】
さらなる態様では、初期用量として上記で定義の投与量の一つを選択し、その後、1~7日、1~5日、好ましくは1~3日、又は2日に1回の間隔を繰り返して、上記定義されたものと同じ又は変更させた用量を1回以上投与することが可能である。
【0081】
初期用量及びその後の用量は、上記で定義された投与量の中から選択し、提供された範囲内で患者のニーズに応じて調整/変動させることができる。
【0082】
特に、その後の用量は、個々の患者、疾患の経過、治療効果に応じて適切に選択することができる。1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、及びそれ以上の用量を投与することができる。
【0083】
初期用量は、1回以上の後続用量と等量又は異なっていても良い。さらに、後続の用量が等量であっても異なっていても良い。
【0084】
繰り返し投与の間隔は同じ長さであることができるか、個々の患者、疾患の経過及び治療応答に応じて変えることができる。
【0085】
好ましくは、後続用量は、後続投与回数の増加とともに減少するものである。
【0086】
好ましくは、3mg~300mg、より好ましくは5mg~250mg、最も好ましくは5mg、15mg、30mg、60mg、90mg、120mg又は240mgの用量を、少なくとも3日間、少なくとも5日間、少なくとも7日間、最長4週間の治療期間にわたって1日1回投与する。さらなる好ましい態様では、30mg、60mg又は120mgの用量を1日1回投与する。さらなる好ましい態様では、30mg、60mg又は120mgの総1日用量の投与を、それぞれ15mg、30mg又は60mgの用量を1日2回投与することによって行う。
【0087】
さらなる態様では、240mgの総1日用量の投与を、120mg用量を1日2回投与することによって行う。
【0088】
さらなる態様では、上記で定義された用量の中から選択される初期用量を、最初に1週間、2週間、3週間、4週間以上投与し、その後、上記で定義された用量の中から選択される増加した用量をさらに1週間、2週間、3週間、4週間以上の期間投与することにより用量を投与することで用量を変えて投与を行う。治療結果に応じて、上記で定義された期間、より高い初期用量で開始し、次いで、その後の治療間隔の間、用量を低下させることも可能である。好ましくは、30mg又は60mgの初期1日用量を4週間投与し、その後、さらに4週間同じ用量を投与するか、又はその後、さらに4週間増量した用量を投与する。そのような投与法は、1日30mgを4週間投与し、その後1日60mgをさらに4週間投与することを含むことができる。
【0089】
特に、総1日用量240mgまでの用量が、安全かつ良好に耐容されることがわかっている。その好ましい投与法はさらに、経口吸収が速く、投与後15~30分という早期に検出可能なレベルとなることを示した。吸収レベルは、繰り返し投与しても安定に維持され、臨界蓄積は観察されない。
【0090】
この好ましい投与方法はさらに、平均血清鉄レベル及び平均トランスフェリン飽和度計算値を効率的に低下させることがわかっており、SCDの治療にそれが有効であることが示している。
【0091】
併用療法
本発明のさらなる目的は、本発明の化合物及び少なくとも一つのさらなる医薬活性化合物(「併用療法化合物」)を含む医薬又は組み合わせ製剤に関するものであり、好ましくは、追加の活性化合物はSCDの治療に有用である。併用療法化合物は、鉄キレート化合物を含む鉄過剰症及び関連症状の予防及び治療に用いられる活性化合物、又は鉄過剰症に付随する又は起因する症状、障害若しくは疾患のいずれかの予防及び治療のための化合物から選択することができる。好適な併用療法化合物は、SCD、サラセミア、ヘモクロマトーシス、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病又はパーキンソン病)及び関連症状の予防及び治療のための医薬活性化合物から選択することができる。好ましくは、少なくとも一つの追加の医薬活性併用療法化合物は、SCDを治療するための薬剤、例えばヒドロキシ尿素、ボキセロートル、ADAKVEO(登録商標)(クリザンリズマブ)、L-グルタミン経口粉剤(エンダリ)、胎児ヘモグロビン(HbF)誘発剤、PDE9の阻害剤(例えばIMR-687)、及び/又は疼痛緩和薬から選択される。SCDを治療するための薬剤群からの最も好ましい併用療法化合物は、胎児ヘモグロビン(HbF)誘発剤である。
【0092】
前記少なくとも一つの別の医薬活性併用療法化合物は、さらに、鉄過剰症を軽減する薬剤(例えば、Tmprss6-ASO)及び鉄キレート剤、特にはクルクミン、SSP-004184、デフェリトリン、デフェラシロクス、デフェロキサミン及びデフェリプロン、並びに、JAK2阻害剤から選択することができる。鉄キレート化合物の群からの最も好ましい併用療法化合物は、デフェラシロクスである。
【0093】
さらなる好ましい併用療法化合物は、ルスパテルセプト、レンチグロビンBB305(会社ブルーバードバイオ社によって開発された遺伝子療法合成ヒトヘプシジン(LJPC-401)、ヘプシジンペプチド模倣物PTG-300及びTmprss6(IONIS-TMPRSS6-L RX)標的アンチセンスオリゴ核酸)のようなβ-サラセミアを治療するための薬剤から選択することができる。
【0094】
さらなる態様において、本発明は、本明細書に定義される新規な使用及び医学的治療であって、本明細書に定義される化合物を、順次使用するために固定用量又は自由用量の組み合わせで、上記で定義の併用療法化合物の1以上との併用療法で、処置を必要とする患者に投与する。そのような併用療法は、本発明で定義の化合物と、少なくとも一つの追加の医薬活性化合物(薬剤/併用療法化合物)との同時投与を含む。
【0095】
固定用量併用療法における併用療法は、固定用量製剤での本明細書で定義の化合物と少なくとも一つの追加の医薬活性化合物との同時投与を含む。
【0096】
自由用量併用療法における併用療法は、個々の化合物の同時投与又はある期間にわたって分散させた個々の化合物の順次使用のいずれかによる、本明細書で定義の化合物及び少なくとも一つの追加の医薬活性化合物の、個々の化合物の自由用量での同時投与を含む。
【0097】
特に好ましい実施形態では、併用療法は、化合物番号127と、SCD医薬類、好ましくはヒドロキシ尿素及び/又は疼痛緩和薬の群からの併用療法化合物の同時経口投与を含む。
【0098】
本発明のさらなる態様は、薬剤化合物が、WO2020/123850A1に記載のものの中から選択される一つ、特に後述するその特定の例示化合物の一つである、本明細書に記載の併用療法に関するものである。
【0099】
さらなる態様は、ボキセロートル、ADAKVEO(登録商標)(クリザンリズマブ)、L-グルタミン経口粉剤(エンダリ)、胎児ヘモグロビン(HbF)誘発剤、PDE9の阻害剤(IMR-687等)、及び/又は疼痛緩和薬との併用療法で、本明細書に記載の化合物127を投与することによるSCD治療の新規な併用療法の提供に関するものである。化合物127と組み合わせてSCDを治療するための薬剤群からの最も好ましい併用療法化合物は、胎児ヘモグロビン(HbF)誘発薬である。
【0100】
さらなる有用な化合物
SCDを治療するための他の有用な化合物は、WO2017/068089、WO2017068090A1及びWO2018/192973に記載されている。したがって、一部の実施形態において、患者は、式(I)の化合物を投与することによって治療され、
【化2】
式中、
は、N又はOであり;そして
は、N、S又はOであり;
ただし、X及びXは異なっており;
は、
-水素及び
-置換されていても良いアルキル
からなる群から選択され;
nは、1~3の整数であり;
及びAは、独立に、アルカンジイル(alkanediy)の群から選択され;
は、
-水素、又は
-置換されていても良いアルキル
であり;
又は
及びRが、それらが結合している窒素原子とともに、置換されていても良い4~6員環を形成し;
は、1、2又は3個の任意の置換基を示し、その置換基は独立に、
ハロゲン、
シアノ、
置換されていても良いアルキル、
置換されていても良いアルコキシ、及び
カルボキシル基
からなる群から選択することができ;
は、
水素、
ハロゲン、
C1-C3-アルキル、及び
ハロゲン置換されたアルキル
からなる群から選択される。
【0101】
一部の実施形態において、
n=1であり;
=水素であり;
=水素であり;
=水素であり;
=メチレン又はエタン-1,2-ジイルであり;
=メチレン、エタン-1,2-ジイル又はプロパン-1、3-ジイルであり;
又はA及びRが、それらが結合している窒素原子とともに、置換されていても良い4員環を形成し、式(II)又は式(III)による化合物:
【化3】
を形成し、
ここで、式(II)及び(III)において、
mは、1、2又は3の整数であり、
、X、及びRは、式(I)による化合物について定義の意味を有する。
【0102】
一部の実施形態において、下記のもの及び薬学的に許容されるその塩からなる群から選択される化合物によって患者が治療される。
【0103】
【表1】
【0104】
さらなる好ましい態様において、本発明は、式(I)、(II)又は(III)の化合物が、下記のもの及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、本明細書で定義の新たな使用及び治療方法に関する。
【0105】
【表2】
【0106】
さらなる好ましい態様において、本発明は、式(I)、(II)又は(III)の化合物が、下記のもの及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、本明細書で定義の新たな使用及び治療方法に関する。
【0107】
【表3】
【0108】
一部の実施形態において、当該方法は、下記のもの及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物を投与することを含む。
【化4】
【0109】
式I、II及びIIIにおいて、置換基は、次のように定義される:
置換されていても良いアルキルは、好ましくは、好ましくは1~8個、より好ましくは1~6個、特に好ましくは1~4個、さらにより好ましくは1、2若しくは3個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキルを含み、C-C-アルキル又はC-C-アルキルとしても示される。
【0110】
置換されていてもよいアルキルは、好ましくは3~8個、より好ましくは5個又は6個の炭素原子を含むシクロアルキルをさらに含む。
【0111】
1~8個の炭素原子を含むアルキル残基の例には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、sec-ペンチル基、t-ペンチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、3-エチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、4-エチルペンチル基、1,1-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、4,4-ジメチルペンチル基、1-プロピルブチル基、n-オクチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、5-エチルヘキシル基、1,1-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、5,5-ジメチルヘキシル基、1-プロピルペンチル基、2-プロピルペンチル基などを含む。1~4個の炭素原子を含むもの(C-C-アルキル)、例えば特にメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル及びt-ブチルが好ましい。C-Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル及びi-プロピルがより好ましい。C及びCアルキル、例えばメチル及びエチルが最も好ましい。
【0112】
3~8個の炭素原子を含むシクロアルキル残基には、好ましくは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基を含む。シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が好ましい。シクロプロピル基が特に好ましい。
【0113】
上記で定義の置換されていても良いアルキルの置換基には、好ましくは、例えば、下記で定義のハロゲン、例えば好ましくはF、上記で定義のシクロアルキル、例えば好ましくはシクロプロピル、下記で定義の置換されていても良いヘテロアリール、例えば好ましくはベンゾイミダゾリル基、下記で定義の置換されていても良いアミノ、例えば好ましくはアミノ基又はベンジルオキシカルボニルアミノ、カルボキシル基、下記で定義のアミノカルボニル基、並びに、アルキレン基、例えば特には、例えばメチレン置換されたエチル基(CH-(C=CH)-又は
【化5】
、式中、は結合箇所を示す。)を形成しているメチレン基からなる群から選択される、同一若しくは異なる置換基の1、2及び3個を含む。
【0114】
ハロゲンにはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素、好ましくはフッ素又は塩素を含み、フッ素が最も好ましい。
【0115】
ハロゲンによって置換された1~8個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキル残基の例には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、1-フルオロエチル基、1-クロロエチル基、1-ブロモエチル基、2-フルオロエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、ジフルオロエチル基(例えば、1,2-ジフルオロエチル基)、1,2-ジクロロエチル基、1,2-ジブロモエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ヘプタフルオロエチル基、1-フルオロプロピル基、1-クロロプロピル基、1-ブロモプロピル基、2-フルオロプロピル基、2-クロロプロピル基、2-ブロモプロピル基、3-フルオロプロピル基、3-クロロプロピル基、3-ブロモプロピル基、1,2-ジフルオロプロピル基、1,2-ジクロロプロピル基、1,2-ジブロモプロピル基、2,3-ジフルオロプロピル基、2,3-ジクロロプロピル基、2,3-ジブロモプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2-フルオロブチル基、2-クロロブチル基、2-ブロモブチル基、4-フルオロブチル基、4-クロロブチル基、4-ブロモブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、パーフルオロブチル基、2-フルオロペンチル基、2-クロロペンチル基、2-ブロモペンチル基、5-フルオロペンチル基、5-クロロペンチル基、5-ブロモペンチル基、パーフルオロペンチル基、2-フルオロヘキシル基、2-クロロヘキシル基、2-ブロモヘキシル基、6-フルオロヘキシル基、6-クロロヘキシル基、6-ブロモヘキシル基、パーフルオロヘキシル基、2-フルオロヘプチル基、2-クロロヘプチル基、2-ブロモヘプトイル基、7-フルオロヘプチル基、7-クロロヘプチル基、7-ブロモヘプチル基、パーフルオロヘプチル基などを含む。フルオロアルキル、ジフルオロアルキル及びトリフルオロアルキルが特に挙げられ、トリフルオロメチル並びにモノ-及びジ-フルオロエチルが好ましい。トリフルオロメチルが特に好ましい。
【0116】
シクロアルキル置換されたアルキル基の例には、1~3個、好ましくは1個のシクロアルキルを含む上記のアルキル残基を含み、例えばシクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチルシクロヘキシルメチル、2-シクロプロピルエチル、2-シクロブチルエチル、2-シクロペンチルエチル2-シクロヘキシルエチル、2-又は3-シクロプロピルプロピル、2-又は3-シクロブチルプロピル、2-又は3-シクロペンチルプロピル、2-又は3-シクロヘキシルプロピルなどである。好ましいものは、シクロプロピルメチルである。
【0117】
ヘテロアリール置換されたアルキル基の例には、1~3個、好ましくは1個の(置換されていても良い)ヘテロアリール基を含む上記のアルキル残基を含み、例えばピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピラゾリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、チオフェニル又はオキサゾリル基、例えばピリジン-2-イル-メチル、ピリジン-3-イル-メチル、ピリジン-4-イル-メチル、2-ピリジン-2-イル-エチル、2-ピリジン-1-イル-エチル、2-ピリジン-3-イル-エチル、ピリダジン-3-イル-メチル、ピリミジン-2-イル-メチル、ピリミジン-4-イル-メチル、ピラジン-2-イル-メチル、ピラゾール-3-イル-メチル、ピラゾール-4-イル-メチル、ピラゾール-5-イル-メチル、イミダゾール-2-イル-メチル、イミダゾール-5-イル-メチル、ベンゾイミダゾール-2-イル-メチル、チオフェン-2-イル-メチル、チオフェン-3-イル-メチル、1,3-オキサゾール-2-イル-メチルである。
【0118】
好ましいものは、ベンゾイミダゾリル基で置換されたアルキル基であり、例えばベンゾイミダゾール-2-イル-メチル及びベンゾイミダゾール-2-イル-エチルである。
【0119】
アミノ置換されたアルキル残基の例には、1~3個、好ましくは1個の(置換されていても良い)下記で定義のアミノ基を含む上記のアルキル残基を含み、例えば、アミノアルキル(NH-アルキル)又はモノ-若しくはジアルキルアミノ-アルキル、例えばアミノメチル、2-アミノエチル、2-又は3-アミノプロピル、メチルアミノメチル、メチルアミノエチル、メチルアミノプロピル、2-エチルアミノメチル、3-エチルアミノメチル、2-エチルアミノエチル、3-エチルアミノエチルなど(3-アミノプロピルが好ましい)、又は下記式による基などの置換されていても良いアルキルオキシカルボニルアミノ基で置換されていても良いアルキル基であり、
【化6】
式中、Rはフェニル基を定義し、ベンジルオキシカルボニルアミノプロピル基を形成している。
【0120】
置換されていても良いアミノには、好ましくは、アミノ(-NH)、置換されていても良いモノ-又はジアルキルアミノ(アルキル-NH-、(アルキル)N-)を含み、「アルキル」に関しては、上記の置換されていても良いアルキルの定義を参照することができる。好ましいものは、モノ-又はジメチルアミノ、モノ-又はジエチルアミノ及びモノプロピルアミノである。最も好ましいものは、アミノ基(-NH)、及びモノプロピルアミノである。
【0121】
さらに、カルボキシル基は、基[-(C=O)-OH]を示し、アミノカルボニル基は、基[NH-(C=O)-]を示す。
【0122】
置換されていても良いアルコキシには、置換されていても良いアルキル-O-基を含み、前述のアルキル基の定義を参照することができる。好ましいアルコキシ基は、最大6個の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐アルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、i-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、i-ブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、t-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、t-ペンチルオキシ基、2-メチルブトキシ基、n-ヘキシルオキシ基、i-ヘキシルオキシ基、t-ヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、1-エチルブチルオキシ基、2-エチルブチルオキシ基、1,1-ジメチルブチルオキシ基、2,2-ジメチルブチルオキシ基、3,3-ジメチルブチルオキシ基、1-エチル-1-メチルプロピルオキシ基、並びに、シクロアルキルオキシ基、例えばシクロペンチルオキシ基又はシクロヘキシルオキシ基である。メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基及びi-プロピルオキシ基が好ましい。メトキシ及びエトキシ基がより好ましい。特に好ましいものはメトキシ基である。
【0123】
置換されていても良いアルカンジイルは、好ましくは1~6個、好ましくは1~4個、より好ましくは1、2又は3個の炭素原子を有する二価の直鎖若しくは分岐アルカンジイル基であり、それは、ハロゲン、ヒドロキシル(-OH)、オキソ基((=O;カルボニル又はアシル基[-(C=O)-]を形成)及び上記で定義のアルキル基、例えば好ましくはメチルからなる群から選択される1~3個、好ましくは1又は2個の置換基を有していても良い。好ましい例として、メチレン、エタン-1,2-ジイル、エタン-1,1-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、プロパン-1,1-ジイル、プロパン-1,2-ジイル、プロパン-2,2-ジイル、ブタン-1,4-ジイル、ブタン-1,2-ジイル、ブタン-1,3-ジイル、ブタン-2,3-ジイル、ブタン-1,1-ジイル、ブタン-2,2-ジイル、ブタン-3,3-ジイル、ペンタン-1,5-ジイルなどを挙げることができる。特に好ましいものは、メチレン、エタン-1,2-ジイル、エタン-1,1-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、プロパン-2,2-ジイル、及びブタン-2,2-ジイルである。最も好ましいものは、メチレン、エタン-1,2-ジイル及びプロパン-1、3-ジイルである。
【0124】
好ましい置換されたアルカンジイル基は、ヒドロキシ置換されたアルカンジイル、例えばヒドロキシ置換されたエタンジイル、オキソ置換されたアルカンジイル、例えばオキソ置換されたメチレン又はエタンジイル基であり、カルボニル又はアシル(アセチル)基、ハロゲン置換されたアルカンジイル基を形成している。
【0125】
場合により、上記で定義の直鎖若しくは分岐アルカンジイル基の意味を有するA、及び上記で定義の置換されていても良いアルキル基の意味を有するRが、それらが結合している窒素原子とともに、置換されていても良い4~6員環を形成しており、それは上記で定義の1~3個の置換基で置換されていても良い。従って、A及びRが一緒になって、下記式の一つによる基を形成していることができる。
【化7】
この場合、(置換された又は置換されていない)4員環形成が好ましく、例えば特には、下記の基である。
【化8】
この場合、左側の結合箇所は、式(I)における位置XとXの間の複素5員環への直接結合箇所を示す。右側の結合箇所は、本明細書で定義のアルカンジイル基の意味を有する基A2への結合箇所を示す。
【0126】
本明細書で定義の式(I)において、nは、1~3の整数、例えば1、2若しくは3の意味を有しており、従ってメチレン基、エタン-1,2-ジイル基又はプロパン-1、3-ジイル基を示す。より好ましくは、nは1又は2、さらにより好ましくは、nは1であり、メチレン基を示す。
【0127】
一部の実施形態において、
A)
は、N又はOであり;
は、N、S又はOであり;
ただし、X及びXは異なっており;
従って、下記式による5員複素環:
【化9】
を形成し、
式中、はアミノカルボニル基への結合箇所を示し、**はA基への結合箇所を示す。
【0128】
B)
nは、1、2又は3の整数であり;好ましくは、nは1又は2であり、より好ましくは、nは1である。
【0129】
C)
は、
-水素及び
-置換されていても良いアルキル(上記で定義)
からなる群から選択され;
好ましくは、Rは、水素又はメチルであり、より好ましくは、Rは水素である。
【0130】
D)
は、
-水素、及び
-置換されていても良いアルキル(上記で定義)
からなる群から選択され;
好ましくは、Rは、水素又はC-C-アルキルであり、より好ましくは、Rは水素又はメチルであり、さらにより好ましくは、Rは水素である。
【0131】
E)
は、1、2又は3個の任意の置換基を示し、それは独立に、
-ハロゲン(上記で定義)、
-シアノ、
-置換されていても良いアルキル(上記で定義)、
-置換されていても良いアルコキシ(上記で定義)、及び
-カルボキシル基(上記で定義)
からなる群から選択することができ;
好ましくは、Rは、1又は2個の任意の置換基を示し、それは独立に、
-ハロゲン、
-シアノ、
-1、2又は3個のハロゲン原子(上記で定義)で置換されていても良いアルキル(上記で定義)、
置換されていても良いアルコキシ(上記で定義)、及び
カルボキシル基(上記で定義)
からなる群から選択することができ;
より好ましくは、Rは、1又は2個の任意の置換基を示し、それは独立に、
-F及びCl、
-シアノ、
-トリフルオロメチル、
-メトキシ、及び
-カルボキシル基
からなる群から選択することができ;
さらにより好ましくは、Rは水素であり、式(I)における未置換の末端ベンゾイミダゾリル環を示している。
【0132】
F)
は、
-水素、
-ハロゲン(上記で定義)、
-C-C-アルキル、及び
-ハロゲン置換されたアルキル(上記で定義)
からなる群から選択され;
好ましくは、Rは、
-水素、
-Cl、
-メチル、エチル、イソ-プロピル、及び
-トリフルオロメチル
からなる群から選択され;
より好ましくは、Rは、
-水素、
-Cl、
-メチル、及び
-トリフルオロメチル
からなる群から選択され;
より好ましくは、Rは、
-水素、
-Cl、及び
-メチル
からなる群から選択され;
さらにより好ましくは、Rは水素である。
【0133】
G)
はアルカンジイルであり、
好ましくは、Aは、メチレン又はエタン-1,2-ジイルであり、より好ましくは、Aはエタン-1,2-ジイルである。
【0134】
H)
はアルカンジイルであり、
好ましくは、Aは、メチレン、エタン-1,2-ジイル又はプロパン-1、3-ジイルであり、
より好ましくは、Aは、メチレン又はエタン-1,2-ジイルであり、さらにより好ましくは、Aはエタン-1,2-ジイルである。
【0135】
I)又は
及びRが、それらが結合している窒素原子とともに、上記で定義の置換されていても良い4~6員環を形成し;
その場合、A及びRは、それらが結合している窒素原子とともに、好ましくは、上記で定義の置換されていても良い4員環を形成し、
その場合、A及びRは、それらが結合している窒素原子とともに、より好ましくは、未置換の4員環(アゼチジニル環)を形成している。
【0136】
ここで、下記の(I)の化合物の置換基は、特に、下記の意味を有することができる:
nは、上記のB)による意味のいずれかを有し、残りの置換基は、A)及びC)~I)で定義の意味のいずれかを有することができる。
【0137】
は、上記のC)による意味のいずれかを有し、残りの置換基は、A)及びB)及びD)~I)で定義の意味のいずれかを有することができる。
【0138】
は、上記のD)による意味のいずれかを有し、残りの置換基は、A)~C)及びE)~H)又はI)で定義の意味のいずれかを有することができる。
【0139】
は、上記のE)による意味のいずれかを有し、残りの置換基は、A)~D)及びF)~I)で定義の意味のいずれかを有することができる。
【0140】
は、上記のF)による意味のいずれかを有し、残りの置換基は、A)~E)及びG)~I)で定義の意味のいずれかを有することができる。
【0141】
は、上記のG)による意味のいずれかを有し、残りの置換基は、A)~F)及びH)又はI)で定義の意味のいずれかを有することができる。
【0142】
は、上記のH)による意味のいずれかを有し、残りの置換基は、A)~G)及びI)で定義の意味のいずれかを有することができる。
【0143】
及びAは、I)で定義の意味のいずれかを有し、残りの置換基は、A)~C)、E)、F)及びH)で定義の意味のいずれかを有することができる。
【0144】
場合により、Xは、N又はOであり;Xは、N、S又はOであり;ただし、X及びXは異なっており;Rは水素であり;nは1、2又は3であり;Aは、メチレン又はエタン-1,2-ジイルであり;Aは、メチレン、エタン-1,2-ジイル又はプロパン-1,3-ジイルであり;Rは水素又はC-C-アルキルであり;
又は
及びRが、それらが結合している窒素原子とともに、置換されていても良い4員環を形成し;Rは、1又は2個の任意の置換基を示し、それは
-ハロゲン、
-シアノ、
-1、2又は3個のハロゲン原子によって置換されていても良いアルキル、
-置換されていても良いアルコキシ、及び
-カルボキシル基
からなる群から選択することができ;
は、
-水素、
-Cl、
-メチル、エチル、イソ-プロピル、及び
-トリフルオロメチル
からなる群から選択され;又はそれの塩である。
【0145】
場合により、その塩は、式(I)の化合物の安息香酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸及びトルエンスルホン酸からなる群からの酸との塩から選択され、化合物(I):酸の比が1~2:1~3であることを特徴とする。
【0146】
一般式Iの化合物の一部の場合では、Xは、N又はOであり;Xは、N、S又はOであり;ただし、X及びXは異なっており;Rは水素であり;nは1又は2であり;Aは、メチレン又はエタン-1,2-ジイルであり;Aは、メチレン、エタン-1,2-ジイル又はプロパン-1,3-ジイルであり;Rは水素又はメチルであり;
又は
及びRが、それらが結合している窒素原子とともに、未置換の4員環を形成し;
は1又は2個の任意の置換基を示しており、それは独立に、
-F及びCl、
-シアノ、
-トリフルオロメチル、
-メトキシ、及び
-カルボキシル基
からなる群から選択することができ;
は、
-水素、
-Cl、
-メチル、及び
-トリフルオロメチル
からなる群から選択される。
【0147】
場合により、その塩は、式(I)の化合物の安息香酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸及びトルエンスルホン酸からなる群からの酸との塩から選択され、化合物(I):酸の比が1~2:1~3であることを特徴とする。
【0148】
式(I)の化合物の一部の実施形態において、XはN又はOであり;XはN、S又はOであり;ただし、X及びXは異なっており;Rは水素であり;nは1であり;Aは、メチレン又はエタン-1,2-ジイルであり;Aは、メチレン、エタン-1,2-ジイル又はプロパン-1,3-ジイルであり;Rは水素であり;
又は
及びRが、それらが結合している窒素原子とともに、未置換の4員環を形成し;Rは水素を示していることで、未置換の末端ベンゾイミダゾリル環を形成し;Rは、
-水素、
-Cl、及び
-メチル又はそれの塩
からなる群から選択され;
その塩は、式(I)の化合物の安息香酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸及びトルエンスルホン酸からなる群からの酸との塩から選択され、化合物(I):酸の比が1~2:1~3であることを特徴とする。
【0149】
式(I)の化合物の一部の実施形態において、XはN又はOであり;XはN、S又はOであり;ただし、X及びXは異なっており;Rは水素であり;nは1であり;Aは、メチレン又はエタン-1,2-ジイルであり;Aは、メチレン、エタン-1,2-ジイル又はプロパン-1、3-ジイルであり;Rは水素であり;
又は
及びRが、それらが結合している窒素原子とともに、未置換の4員環を形成し;Rは水素を示していることから、未置換の末端ベンゾイミダゾリル環を形成し;Rは水素であり;又はそれの塩である。
【0150】
一部の実施形態において、前記塩は、式(I)、(II)、(III)の化合物又は下記で定義のWO2020/123850A1による化合物の安息香酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸及びトルエンスルホン酸からなる群からの酸との塩から選択され、化合物(I):酸の比が1~2:1~3であることを特徴とし;及び
式(I)の化合物の一部の実施形態において、n=1であり;R=水素であり;R=水素であり;A=エタン-1,2-ジイルであり;A=メチレン、エタン-1,2-ジイル又はプロパン-1,3-ジイルであり;R=水素であり;又はA及びRが、それらが結合している窒素原子とともに、置換されていても良い4員環を形成していることで、下記の式(II)又は(III)による化合物:
【化10】
を形成し、
ここで、式(II)及び(III)において、
mは、1、2又は3の整数であり、そして
、X、及びRは、式(I)の化合物を含むいずれかの実施形態において上記で定義された意味を有する。
【0151】
特に、式(II)及び(III)において、X及びXは、A)において上記で定義の意味を有する。
【0152】
式(II)において、R及びRは、好ましくは水素である。
【0153】
式(III)において、Rは、好ましくは水素であり、mは、好ましくは2である。
【0154】
一般式(II)の化合物のさらなる好ましい実施形態において、X及びXは、N及びOから選択され、そして、異なっており;R=水素であり;R=水素であり;及びm=2である。
【0155】
塩を形成する、化合物(I)、(II)又は(III)、又は下記で定義のWO2020/123850A1による化合物は、「塩基」又は「遊離塩基」とも称される。遊離塩基の形態での、式(I)、(II)又は(III)による化合物又は下記で定義のWO2020/123850A1による化合物は、酸性基が結合し得るアミノ基のような少なくとも一つの塩基性基を有する。
【0156】
式(I)、(II)又は(III)の化合物又は下記で定義のWO2020/123850A1による化合物の塩は、塩基(化合物(I)、(II)又は(III)):酸の比1~2:1~3を有する塩から選択することができ、ここで、塩形成性の酸に関しては、上記で定義の選択を参照する。
【0157】
当該化合物は、塩(化合物(I)、(II)又は(III))の上記で示された酸の1以上との混合塩であって、同じ又は異なる塩基:酸比を有することができる混合塩であることができる。その酸は、カチオン型の化合物(I)、(II)又は(III)の対アニオンを提供するものである。
【0158】
特に好ましいものは、上記で記載の化合物の3HCl塩である。
【0159】
特に好ましい実施形態において、当該方法は、化合物127の3HCl塩を投与することを含む。
【化11】
【0160】
本発明のさらなる態様において、化合物127は、下記の塩の一つの形態で投与することができる。
【0161】
下記式を有する1:1硫酸塩:
【化12】
下記式を有する1:1リン酸塩:
【化13】
2:1リン酸塩(ヘミリン酸塩)。
【化14】
【0162】
フェロポーチン阻害剤として作用し、本明細書で定義のSCDの治療において好適であるさらなる化合物は、WO2020/123850A1に記載のものであり、その文献は参照によって全体が本明細書に組み込まれる。本明細書で定義のSCDの治療において好適であるWO2020/123850A1に記載の化合物の中の特定の化合物は、下記のものからなる群から選択することができる:
【0163】
【表4】
【0164】
WO2020/123850A1に記載され、上記の群から選択される化合物は、胎児性ヘモグロビン(HbF)誘発剤との新たな併用療法で化合物を投与することによる、SCDを治療するための新たな併用療法として提供することができる。好ましい実施形態において、化合物2-(2-{[2-(1H-1,3-ベンゾジアゾール-2-イル)エチル]アミノ}エチル)-N-[(3-フルオロピリジン-2-イル)メチル]-[1,3]オキサゾロ[4,5-c]ピリジン-4-アミンが、SCDを治療するための胎児性ヘモグロビン(HbF)誘発剤との併用療法で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0165】
図1】TownesマウスからのRBCの溶血に対する化合物127の効果。無細胞Hb、ヘム及び乳酸脱水素酵素(LDH)の血漿レベルを示している。溶血マーカーは、市販のキット(無細胞Hbキット#CSB E09632h、Cusabio;ヘムアッセイキット#MAK316、Sigma Aldrich)を用い、製造者の説明書にしたがって測定した。LDHは、日立臨床化学自動分析装置を用いて、血漿中で測定した。個々の値及び平均±SDを示し、ダネットの多重比較検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n=マウス9~10匹/群での一元配置ANOVAを用いて全ての処置群をHbSSビヒクル群と比較することで統計解析を行った。
図2】化合物127又はビヒクルで6週間処置したTownesマウスのRBC指数。個々の値及び平均±SDを示し、ダネットの多重比較検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n=マウス9~10匹/群での一元配置ANOVAを用いて、全ての処置群をHbSSビヒクル群と比較することで統計解析を行った。
図3】化合物127は、Townesマウスにおける高WBC数を修正した。個々の値及び平均±SDを示し、ダネットの多重比較検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n=マウス5~10匹/群での一元配置ANOVAを用いて、全ての処置群をHbSSビヒクル群と比較することで統計解析を行った。
図4】化合物127は、Townesマウスにおける脾臓及び肝臓の大きさを低下させた。個々の値及び平均±SDを示し、ダネットの多重比較検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n=マウス9~10匹/群での一元配置ANOVAを用いて、全ての処置群をHbSSビヒクル群と比較することで統計解析を行った。
図5】6週間にわたり化合物127又はビヒクルで処置したTownesマウスにおける総及び58Fe臓器鉄レベル。個々の値及び平均±SDを示し、ダネットの多重比較検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n=マウス8~10匹/群での一元配置ANOVAを用いて、全ての処置群をHbSSビヒクル群と比較することで統計解析を行った。
図6】化合物127は、6週間にわたり化合物127で処置した鎌状赤血球マウスでのミトコンドリアを含む成熟RBCのパーセントを低下させた。
図7】化合物127は、TownesマウスにおけるsVCAM-1の血漿レベルを低下させた。sVCAM-1を、ELISAによって測定した。個々の値及び平均±SDを示し、ダネットの多重比較検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n=マウス6~9匹/群での一元配置ANOVAを用いて全ての処置群をHbSSビヒクル群と比較することで統計解析を行った。
図8】第43/44日の化合物127の最終投与から3時間後に血漿鉄を測定した。個々の値と平均±SDを示している。HbSSビヒクル群に対する有意差を示している:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(ダネットの多重比較検定での一元配置ANOVA)。
図9】Siemens Advia 120自動血液分析装置を用いて測定した第43/44日のHbSS及びHbAAマウスにおけるMCHC(左)及びCHCM(右)。個々の値と平均±SDを示している。HbSSビヒクル群に対する有意差を示している:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(ダネットの多重比較検定での一元配置ANOVA)。
図10】Siemens Advia 120自動血液分析装置を用いて測定した第43/44日の雄及び雌HbSS及びHbAAにおける低色素性(左上)、小球性(右上)、高色素性(左下)及び大球性(右下)RBCのパーセント。個々の値と平均±SDを示している。HbSSビヒクル群に対する有意差を示している:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(ダネットの多重比較検定での一元配置ANOVA)。
図11】試験第43/44日のHbSS及びHbAAマウスの血漿中の総ビリルビン及び間接ビリルビン。個々の値と平均±SDを示している。HbSSビヒクル群に対する有意差を示している:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(ダネットの多重比較検定での一元配置ANOVA)。
図12】試験終了後のHbSS及びHbAAマウスの血漿中のsP-セレクチン(左)及びRANTES(右)の血漿レベル。HbSSビヒクル群に対する有意差を示している:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(ダネットの多重比較検定での一元配置ANOVA)。
図13】HbSS及びHbAAマウスの全血での血漿キサンチンオキシダーゼ(XO)活性及び細胞内ROS。XOの血漿活性及びROS陽性成熟RBCのパーセントを、個々の値と平均±SDとして示している。HbSSビヒクル群と比較した有意差を示している:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(ダネットの多重比較検定での一元配置ANOVA)。
図14】化合物127は、TownesマウスのRBC中の細胞内鉄(56Fe及び58Fe)を減少させた。56Fe及び58Feの細胞内含有量を、ICP-MSによってTownesマウスからの洗浄RBCで測定し、RBC数に正規化した。個々の値と平均±SDを示してあり、ダネットの多重比較検定、*p<0.05、n=マウス6~9匹/群での一元配置ANOVAを用いて、全ての処置群をHbSSビヒクル群と比較することで統計解析を行った。
図15】化合物127は、Townesマウスの肝臓における門脈周囲炎症及びケモカインCXCL1mRNA発現を低下させた。門脈周囲炎症の発生は、H&E染色パラフィン切片で評価した。総肝臓RNAからのCXCL1のmRNA発現を、RT-qPCRによって評価した。個々のスコア又は個々のΔCt及び平均±SDを示してあり、ダネットの多重比較検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n=マウス7~11匹/群での一元配置ANOVAを用いて全ての処置群をHbSSビヒクル群と比較することで統計解析を行った。
図16】化合物127は、肝臓損傷のバイオマーカーを低下させた。血漿中のアラニントランスアミナーゼ(ALT)活性を、日立臨床化学自動分析装置を用いて測定した。個々の値と平均±SDを示してあり、対応のない両側スチューデントt検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n=マウス9~10匹/群によって統計解析を行った。
図17】化合物127は、Townesマウスの肺におけるIL-1βmRNA発現を低下させた。総肺RNAからのIL-1βのmRNA発現を、RT-qPCRによって評価した。個々のΔCt及び平均±SDを示してあり、ダネットの多重比較検定、*p<0.05、n=マウス8~12匹/群での一元配置ANOVAを用いて、全ての処置群をHbSSビヒクル群と比較することで統計解析を行った。
【0166】
図1~17において、「VIT-2763」は、化合物127を示す(それの3HCl塩の形態で)。
【発明を実施するための形態】
【0167】
Townesマウスを遺伝子操作して、専らヒト鎌状ヘモグロビンを発現するようにした(Ryan et al. 1990 Science 247:566)。Townesマウスは、貧血、網状赤血球数の上昇、脾臓の肥大、血管の炎症があり、低酸素、炎症及び溶血に応答してVOになりやすい。
【0168】
以下に記載する試験では、ヒトHbSホモ接合体の雄及び雌マウス(HbSS)及び野生型(WT)ヒトヘモグロビンHbAを発現する対照マウス(HbAA)を使用した。
【0169】
第1の試験(図1~7):
マウスは、10~12週齢でJackson Laboratoriesから購入し(B6;129 Hbbtm2(HBG1,HBB*)Tow/Hbbtm3(HBG1,HBB)Tow Hbatm1(HBA)Tow/J、品番:013071;「Townesマウス」)、鉄含有率の低い飼料(鉄10~13ppm、Granovit)を与え、週末を除き6週間にわたって60若しくは120mg/kgの化合物127又はビヒクル(0.5%メチルセルロース/水)を1日2回経口投与(bid)した。化合物投与の合間で、マウスには、標準的な齧歯類飼料に存在する鉄(250ppmの鉄)の代わりに、安定な鉄同位体58Fe(還元剤としての10mMアスコルビン酸を補充した1mM58Fe(II)SO)を含む飲料水を摂取させた。標識58Feにより、試験中に吸収された鉄と試験前に吸収された鉄を区別することができた。
【0170】
第2の試験(図8~13):
HbS(HbSS)ホモ接合体Townesマウス(6週齢、Jackson Laboratories、品番013071)に、低鉄飼料(LID、Granovit、カタログ2039、バッチ0001906903、鉄含有量8.6mg/kg)を与え、化合物127を60mg/kgで1日2回(bid)経口投与するか、ビヒクルとしての0.5%メチルセルロース(MC)を投与した。マウスには、初回投与後6時間にわたり、1mM硫酸58Fe(II)と10mMアスコルビン酸を補充した飲料水(DW)を摂取させた。DW中に補充した硫酸58Fe(II)の濃度を、鉄含有量250mg/kgの標準的な齧歯類飼料のレベルまで飼料による鉄分補給を補完するように調整している。残りの18時間の間、鉄及びアスコルビン酸を含まない水を提供した。正常なヒトヘモグロビン(野生型、WT)を発現する非鎌状Townesマウス(HbAA)には、ビヒクルを1日2回投与し、対照として使用した。化合物127又はビヒクルの投与とそれに続く58Fe含有水への曝露を44日間繰り返した。週末(WE)には投与を休止し、マウスにはLIDと58Feを含まないミネラルウォーターを自由に摂取させた。
【0171】
MULTIGENT鉄アッセイ(Abbott Diagnostics)を用いて血漿鉄を測定した。
【0172】
血液パラメータを、試験最終日(第43/44日)に採取した全血試料で測定し、Siemens Advia ADVIA 120システムを使用して測定した。
【0173】
RBC中のROCを、APC-eFluor780結合ラット抗マウスTer119抗体及びPE結合ラット抗マウスCD71抗体(eBioscience、カタログ番号47-5921-82及び12-0711)で標識した成熟RBC中の指示薬クロロメチル-2′,7′-ジクロロジフルオロセインジアセテート(CM-H2DCFDA、Invitrogen、カタログ番号C6827)で検出した。
【0174】
血漿中のキサンチンオキシダーゼの活性は、キサンチンオキシダーゼ活性測定キット(Sigma-Aldrichカタログ番号MAK078)を用いて測定した。
【0175】
血漿ビリルビンは、アッセイキット(Sigma-Aldrichカタログ番号MAK126)を用い、製造者の説明書に従って測定した。
【0176】
血漿sP-セレクチン及びRANTESは、ELISAキット(R&D Systems、それぞれカタログ番号MVC00及びカタログ番号DY478-05)により、製造者説明書に従って測定した。
【0177】
鎌状赤血球貧血(鎌状赤血球症)の治療のためのVOの予防における化合物127の活性は、例えばYulin Zhao et al., ″MEK1/2 inhibitors reverse acute vascular occlusion in mouse models of sickle cell disease″; The FASEB Journal Vol. 30, No. 3, pp 1171-1186, 2016に記載のものなどのWO2018/192973に記載のマウスモデルを用いることで測定することができる。当該マウスモデルは、鎌状赤血球貧血におけるVOの治療における化合物127又は本発明のさらなる実施形態の化合物の活性を測定するのに好適に適合させることができる。最適化された試験条件への好適な適合を実施することができ、これは当業者の日常的な業務の範囲内である。
【0178】
実施例1~17に記載の二つの試験では、化合物127の3HCl塩を使用する。
【0179】
実施例1:化合物127はTownesマウスにおける溶血を低減した。
【0180】
Townesマウスの赤血球は、ビヒクル処置された対照HbSS群における無細胞Hb、ヘム、LDHのレベルの上昇によって示されるように、溶血しやすい(図1)。特に、化合物127は、無細胞Hb、ヘム、LDHのレベルを有意に減少させたことから、化合物127によるフェロポーチン阻害が、Townesマウスにおける溶血を減少させたことが示唆される(図1)。
【0181】
実施例2:RBC指数に対する化合物127の効果
第1の試験(図1~7):
HbSSマウスは、HbAAマウスと比較して、RBC数の減少、Hb及び代償性網状赤血球増多症及び白血球数上昇のような溶血性貧血を示す血液パラメータが病的に変化している貧血である。血液パラメータは、化合物127による処置を6週間行った後、自動血球分析装置により新鮮なEDTA-血液で測定した。6週間にわたるHbSSマウスでの化合物127の経口投与により、総Hb、RBC数、ヘマトクリット、平均赤血球容積(MCV)及び平均赤血球ヘモグロビン(MCH)が低下した。SCD患者のRBC中のHbSの低下は、HbS凝集の減少及び臨床上の便益と関連している(Castro O. Am. J. Hematol., 1994)。
【0182】
第2の試験(図8~13):
Townes HbSSマウスは、HbAA対照と同様の血漿鉄レベルを有する。第2の試験では、化合物127をHbSSマウスに60mg/kgで44日間1日2回投与し、急性有効性のマーカーとして化合物の最終投与の3時間後に血漿鉄を測定した。化合物127投与を受けたHbSSマウスの血漿鉄濃度は有意に低下し、それは、化合物127が血液循環への鉄輸送を阻害する効果があることを示している(図8)。
【0183】
また、化合物127で処置したTownesマウスでは、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)が有意に低下した(図9、左)。MCHCは、溶解血液中の平均Hb濃度をヘマトクリットで割ることで計算される。SCDのような溶血性疾患では、溶血した血液サンプルに遊離Hbが存在するため、MCHC値が誤って過大に推算される可能性がある。そこで、Townesマウスにおける過度の溶血によるアーチファクトの可能性を回避するため、RBC内のHbS濃度を、小体Hb濃度平均(CHCM)パラメータに基づいて評価した。CHCMはレーザー光散乱から測定され、無傷のRBC内のヘモグロビン含有量を反映する細胞Hbを逆算するのに用いられる。CHCMは溶血の影響を受けず、化合物127で処置したHbSSマウスにおいて有意に低く、そのことは、化合物127による鉄制限によって、SCDモデルでのHbSの濃度が低下することをさらに示している(図9、右)。さらに、RBC容積とHb濃度に基づくRBCの分布の散布図解析により、化合物127で処置したHbSSマウスにおいて、大球性RBCの減少に伴い、低球性及び小球性RBCのパーセントに有意な増加があることが明らかとなった(図10)。Townesマウスからの血液サンプルの血液学的分析は、フェロポーチンを遮断することによって、化合物127が鉄制限赤血球生成を誘発し、その結果、RBCにおけるHbS濃度が低下していることを示している。SCD患者のRBCにおけるHbS低下は、HbS凝集の減少及び臨床的利益と関連していた(Castro O. Am. J. Hematol., 1994)。したがって、化合物127によるHbS低下は、SCDにおける新規な治療アプローチとなる可能性がある。
【0184】
第1の試験で示されるように、化合物127は、無細胞Hb、ヘム及びLDHの減少によって示されるように、Townesマウスの溶血を減弱させた(図1)。さらに、第2の試験で示されるように、化合物127は、臨床的に関連する溶血マーカーである総ビリルビン及び間接ビリルビンを低下させ、それはさらに、溶血を低減する化合物の有効性をさらに裏付けるものである(図11)。
【0185】
sRBC、活性化白血球及び遊離ヘムの内皮との相互作用は、血管の炎症を引き起こし、血管閉塞及び臓器損傷を促進する。SCDにおける内皮機能障害は、sVCAM-1及びsP-セレクチンなどの可溶性接着分子のレベル上昇と関連している。
【0186】
二つの独立した試験は、化合物127がsVCAM-1(図7、第1の試験)及びsP-セレクチン(図12左、第2の独立の試験)を有意に減少させたことを示しており、それは、化合物127が血管の炎症を抑え、それによってSCDのTownesモデルにおける血管閉塞を防止する可能性を示唆している。
【0187】
RBC由来のヘムは、自然免疫系を活性化する損傷関連分子パターンとして作用し、酸化物質の産生、炎症、血管閉塞、虚血及び組織損傷を生じる(Belcher JD et al. J. Clin. invest, 2006)。Townesマウス及びSCD患者は、循環中の白血球が上昇し、それが炎症性サイトカインやケモカインを産生して、さらなる炎症細胞を引き寄せ、内皮を活性化する。例として、HbSSマウスは、炎症部位への白血球の動員に関与するケモカインRANTES(CCL5)の血漿レベル上昇を示した。化合物127による処置により、HbSSマウスにおけるRANTESレベルが有意に低下し(図12、右)、それは、化合物127が、血液循環中の白血球数を低下させる(図3)だけでなく、それの炎症促進活性も抑制することを示唆している。
【0188】
血漿キサンチンオキシダーゼ(XO)活性は、SCD患者で上昇し、血管内スーパーオキシドや過酸化水素の産生を促進する原因と定義された。XO活性の上昇は、Townesマウスの血漿でも報告されており(Osarogiagbon UR et al, Blood, 2000;Aslan M et al, PNAS, 2001)、ROS産生及び酸化的組織損傷の重要な原因であると考えられている。実際、HbSSマウスでは、HbAAマウスに比べ、XO活性が有意に高かった。化合物127は、HbSSマウスの血漿中のXO活性を低下させ、そのことは、血管の酸化的損傷が減少していることを示唆している(図13左)。さらに、蛍光指示薬CM-H2DCFDAを用いた血球での細胞内ROSのフローサイトメトリー分析により、HbSSマウスからのRBCの大部分がROCレベルが高く、60mg/kg bid化合物127による処置を行うと、ROCレベルは有意に低下した(図13右)。
【0189】
化合物127によるHbSの低下は、sRBCに好ましい効果をもたらす可能性がある。重要な点として、化合物127は、溶血に対する代償応答のためにSCDにおいて大きく拡大する網状赤血球数を有意に低下させた(図2)。
【0190】
これらのデータを合わせると、化合物127が酸化ストレス及び血管の炎症を低減する可能性が明らかに示されており、結果的に、血球の血管内皮への接着が減少し、最終的にSCDのTownesモデルにおいてVO事象が予防される可能性がある。
【0191】
実施例3:化合物127のWBC指数に対する効果
SCDにおける白血球増加は、疼痛発作、急性胸部症候群、卒中及び死亡の発生率の増加と関連している(Platt, NEJM, 1991)。予想外に、化合物127によるTownesマウスの処置により、血中白血球数、特に好中球及びリンパ球が有意に減少した(図3)。このデータは、化合物127がSCDにおける炎症に有益な効果を有する可能性を示唆している。
【0192】
実施例4:化合物127は、Townesマウスにおける脾臓及び肝臓の大きさを低下させた。
【0193】
Townesマウスの脾臓は、ストレス性の赤血球生成により大きく肥大している(WTと比較して最大で7倍)。注目すべき点として、化合物127はTownesマウスの脾臓サイズを縮小させ、そのことは、化合物127が髄外赤血球造血を改善することを実証している(図4、左)。さらに、化合物127は、Townesマウスの肝臓重量の増加をWTに近いレベルまで矯正した(図4、中央)。Townesマウスにおける腎臓重量は、WT同腹仔の範囲内であり、化合物127処置によっても変化しなかった(図4、右)。
【0194】
実施例5:化合物127は、Townesマウスにおける臓器鉄負荷を防ぎ、総腎臓鉄を減少させた。
【0195】
Townesマウスは、欠損RBCの血管内及び血管外溶血の結果として、肝臓、腎臓及び脾臓のような臓器に過剰な鉄を蓄積している。SCDにおける溶血の約1/3は、変形して弾性のないsRBCの機械的破壊による血管内のものであり、2/3はマクロファージによる異常sRBCの除去による血管外のものであると推定されている(Hebbel RP, Am. J. Hematol., 2011)。さらに、貧血になると腸内の低酸素誘導因子(HIF)-2αの発現が上昇し、それが鉄の過剰吸収を引き起こす(Das N. et al, J. Biol. Chem., 2015)。
【0196】
齧歯類PK試験における経口投与は、化合物127が全身的に利用できることを示しており、それは、十二指腸(食事性鉄吸収)、肝臓(肝細胞及びマクロファージでの鉄貯蔵)及び脾臓(マクロファージ中の鉄が老化赤血球を形成)を含むすべてのフェロポーチン発現組織における鉄排出を遮断できることを示唆している。臓器にすでに存在する鉄と新たに吸収された鉄に対する化合物127の影響を区別するために、試験中に、マウスには、安定な鉄同位体58Feを含む飲料水を摂取できるようにした。ビヒクル又は化合物127で処置したHbSSマウスの臓器中の総鉄及び58Fe含有量を、それぞれ誘導結合型プラズマ発光分光分析(ICP-OES)及び誘導結合型プラズマ質量分析(ICP-MS)によって分析した。化合物127は、Townesマウスにおける総肝臓鉄濃度及び脾臓鉄含有量を変化させず、それはこれら組織からのフェロポーチン介在鉄排出と一致していた(図5、左上及び中央のパネル)。驚くべきことに、化合物127は、Townesマウスからの腎臓における総鉄濃度を有意に低下させた(図5、右上パネル)。腎臓の鉄代謝及び皮質鉄沈着の異常がSCDに特徴的であり、腎臓合併症に関与している(Vazquez-Meves G et al., Blood, 2016)。したがって、化合物127による腎臓鉄の低下は、SCDにおける腎機能に対する有益な効果を有する可能性がある。
【0197】
重要な点として、化合物127を投与したTownesマウスの肝臓、腎臓及び脾臓における58Fe濃度は、ビヒクル処置マウスの濃度と比較して有意に低く、それは、化合物127がさらなる臓器鉄蓄積を防止することを示している(図5、下パネル)。
【0198】
実施例6:化合物127は、Townesマウスの成熟sRBCにおいてアポトーシスマーカーを減少させ、ミトコンドリアクリアランスを改善した。
【0199】
HbSの重合が、sRBCにおけるフリーラジカル形成、脱水及び膜損傷を誘発し、それが細胞アポトーシスにつながる可能性がある。アポトーシスを起こした赤血球はホスファチジルセリン(PS)を細胞外空間に露出させ、それは赤血球を貪食の標的とするシグナルである。RBC上のPS露出は、RBCのアネキシンV染色とフローサイトメトリーによって測定した。化合物127は、用量依存的にsRBC上のPS露出を減少させており、そのことは、鉄の制限が、膜構成及び可能性としてRBCの生存を改善することを示すものである(図6、左)。
【0200】
健常者のRBC前駆体は、マイトファジーによって末端分化時にミトコンドリアを除去する。成熟RBCにおけるミトコンドリアの異常な保持が、SCDの患者及びマウスについて報告されている(Jagadeeswaran et al., 2017)。RBCにおけるミトコンドリアの保持を、Ter119及びCD71抗体を用いるフローサイトメトリーによって調べて、RBC成熟状態を識別し、MitoTrackerによって、ミトコンドリアを検出した。特に、両用量で化合物127により処置されたTownesマウスの赤血球は、ミトコンドリアを含む成熟RBCの割合が低かった(図6、右)。マイトファジー遺伝子における特異的欠失を有するマウスモデルは、ミトコンドリア保持に起因するRBCの生存の減少を示した(Sandoval et al., 2008;Mortensen et al., 2010)。このことは、SCDにおける化合物127によるミトコンドリア保持RBCの割合低下が、RBCの寿命に良い影響を与える可能性を強く示唆している。
【0201】
実施例7:化合物127は、SCDのTownesモデルにおいて、血管炎症マーカーを減少させた。
【0202】
sRBC、活性化白血球及び遊離ヘムの内皮との相互作用は、血管炎症を引き起こし、VO及び臓器傷害を促進する。SCDにおける内皮機能障害は、血管接着分子1(sVCAM-1)のような可溶性接着分子のレベル上昇と関連している。溶血の減少(図1)及び白血球数の減少(図3)と一致して、化合物127による処置は、TownesマウスにおけるsVCAM-1レベルを有意に低下させた(図7)。このデータは、化合物127がSCDのTownesモデルにおいて血管炎症を減少させ、それがVO事象を防止する可能性があることを示している。
【0203】
実施例8:マウスモデルでの鎌状赤血球症におけるVOの治療における化合物127の活性の測定
WO 2018/192973に記載の方法を用いて、本発明のフェロポーチン阻害剤化合物の活性を求めることができる。
【0204】
Yulin Zhao et al. in ″MEK1/2 inhibitors reverse acute vascular occlusion in mouse models of sickle cell disease″; The FASEB Journal Vol. 30, No. 3, pp 1171-1186, 2016によって記載されているマウスモデルを用いて、鎌状赤血球症治療における化合物127の活性を以下のように求めることができる。
【0205】
血管閉塞(VO)発作は、SCD患者における罹患率及び死亡率の主要な原因である。低酸素、脱水、炎症又は溶血はすべて、小血管における活性化内皮への鎌状RBC、好中球及び血小板の付着の増加に寄与して、凝血、血管閉塞、疼痛性発作及び不可逆的多臓器損傷を促進する。高白血球数、特に活性化好中球が、SCD患者における早期死亡、無症候性脳梗塞、出血性脳卒中、及び急性胸部症候群と相関していた(Platt OS, NEJM, 1994)。SCDにおける溶血は、鎌状RBC膜の損傷から生じて、慢性貧血とHbの循環中への放出を引き起こし、それがNOの枯渇、酸化ストレスの発生、ヘムの放出によって炎症を促進する。鎌状RBCは微小胞を放出し、それは内皮細胞による活性酸素種(ROS)産生を誘発し、白血球の接着を促進し、ホスファチジルセリン依存的に内皮アポトーシスを誘発し、それがSCDにおける急性VOに寄与する(Camus M, Blood, 2012)。
【0206】
このデータに基づくと、本発明の化合物は、鎌状RBCにおける溶血を減少させ、内皮への白血球の接着を引き続いて防止することによって、SCDにおけるVOを緩和し得るという仮説を立てることができる。
【0207】
この仮説を検証するために、SCDのTownesマウスモデルにおいて、ビヒクル又は本発明の化合物を30又は100mg/kgで1日2回(BID)4週間経口投与する(Ryan T, Science, 1990)。これらのマウスは、ヒトヘモグロビン(hα/hα:βS/βS、The Jackson Laboratories)を専ら発現するように遺伝子操作されている。Townesマウスは、貧血、網状赤血球数の上昇、脾臓の肥大、血管炎症を有しており、低酸素、炎症、溶血に応答してVOになりやすい。炎症内皮への白血球及び鎌状赤血球の接着に対するフェロポーチン阻害剤の効果を調べるために、25日間ビヒクル又はフェロポーチン阻害剤で処置したTownesマウスに麻酔を施し、既報の方法に従って(Kalambur VS et al., Am J Hematol, 2004;Zennadi, R et al., Blood, 2007)、滅菌条件下に窓付きチャンバを背面皮膚ひだに外科的に埋め込んだ。手術の3日後に、マウスにTNFα(R&D Systems)0.5μgを注射し、炎症を誘発させてVOとする。TNFα投与90分後に、ローダミン結合Ly6G(Sigma)及びフィコエリスリン結合抗TER119mAb(BioLegend)をそれぞれ静脈注射することで、白血球及びRBCをイン・ビボで標識する。微小血管の内皮への白血球及びRBSの付着を、既報の方法(Zhao et al, FASEB J, 2016)に従って、蛍光生体顕微鏡検査によってその後の90分間モニタリングする。すなわち、窓付きチャンバを備えた麻酔動物を37℃に維持し、血流及び細胞接着事象を、蛍光顕微鏡(Axoplan顕微鏡、Carl Zeiss)に接続したデジタルビデオカメラC2400(浜松ホトニクス株式会社、浜松市、日本)を使用して記録する。マウス1匹につき20~30セグメントの微小毛細管を調べ、ImageJソフトウェアを用いて付着した蛍光標識細胞の蛍光強度を測定することにより、静止画上で細胞付着を定量する。結果は、細胞100万当たりの蛍光単位で表した。
【0208】
結論:
要約すると、経口フェロポーチン阻害剤化合物127による鉄制限が、溶血、酸化ストレス、血管及び全身性炎症を有意に減少させ、RBC形態を改善し、それによってSCDのTownesモデルにおいて血管閉塞事象が緩和され、血行動態が改善された。
【0209】
フェロポーチン阻害剤は、鎌状赤血球病のマウスモデルにおいて、急性血管閉塞及び臓器損傷を予防する。
【0216】
他の実施形態
理解すべき点として、以上において本発明をその詳細な説明とともに説明してきたが、前記の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を説明するためのものであり、限定するものではない。他の態様、利点及び変更は、下記の特許請求の範囲に包含されるものである。
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