(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】眼科観察装置、その制御方法、プログラム、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 3/15 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
A61B3/15
(21)【出願番号】P 2022558822
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2020045760
(87)【国際公開番号】W WO2022091430
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-11-21
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】山田 和広
(72)【発明者】
【氏名】大森 和宏
(72)【発明者】
【氏名】福間 康文
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-116140(JP,A)
【文献】特開2001-276111(JP,A)
【文献】特開2017-012430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を観察するための眼科観察装置であって、
前記被検眼を照明及び撮影して動画像を生成する動画像生成部と、
前記動画像生成部を移動
させる移動機構と、
前記移動機構により移動される前記動画像生成部によって生成される前記動画像に含まれる複数の静止画像を逐次に解析して、前記被検眼の所定部位の像を逐次に検出する解析部と、
前記解析部により逐次に検出される前記像における所定の画像パラメータの変化に基づいて前記移動機構を制御する第1の制御部と
を含
み、
前記第1の制御部により実行される前記画像パラメータの変化に基づく前記移動機構の制御の有効化及び無効化を行うことが可能である、
眼科観察装置。
【請求項2】
被検眼を観察するための眼科観察装置であって、
前記被検眼を照明及び撮影して動画像を生成する動画像生成部と、
前記動画像生成部を移動
させる移動機構と、
前記移動機構により移動される前記動画像生成部によって生成される前記動画像に含まれる複数の静止画像を逐次に解析して、前記被検眼の所定部位の像を逐次に検出する解析部と、
前記解析部により逐次に検出される前記像における所定の画像パラメータの変化に基づいて前記移動機構を制御する第1の制御部と
、
前記第1の制御部により実行される前記画像パラメータの変化に基づく前記移動機構の制御を実行するか否か判定する判定部と
を含む、眼科観察装置。
【請求項3】
前記第1の制御部は、前記解析部により逐次に検出される前記像における前記画像パラメータが第1の条件を満足したとき、前記動画像生成部の移動を停止するように前記移動機構を制御する、
請求項1
又は2の眼科観察装置。
【請求項4】
前記画像パラメータは、輝度を含み、
前記第1の条件は、前記輝度が最大であること、及び、前記輝度が第1の閾値以上であることの少なくとも一方を含む、
請求項
3の眼科観察装置。
【請求項5】
前記第1の制御部は、前記解析部により逐次に検出される前記像における前記画像パラメータが第2の条件を満足したとき、前記動画像生成部の移動を開始するように前記移動機構を制御する、
請求項1~
4のいずれかの眼科観察装置。
【請求項6】
前記画像パラメータは、輝度を含み、
前記第2の条件は、前記輝度が第2の閾値未満であることを含む、
請求項
5の眼科観察装置。
【請求項7】
前記第1の制御部は、前記画像パラメータの変化に基づいて前記動画像生成部の移動方向を決定し、決定された前記移動方向に基づいて前記移動機構の制御を行う、
請求項1~
6のいずれかの眼科観察装置。
【請求項8】
前記動画像生成部は、前記被検眼の前眼部の動画像を生成し、
前記所定部位は、瞳孔を含む、
請求項1~
7のいずれかの眼科観察装置。
【請求項9】
前記動画像生成部は、前記被検眼の後眼部の動画像を生成し、
前記所定部位は、視神経乳頭を含む、
請求項1~
7のいずれかの眼科観察装置。
【請求項10】
前記解析部により逐次に検出される前記像における前記画像パラメータが第3の条件を満足したときに報知を行う報知部を更に含む、
請求項1~9のいずれかの眼科観察装置。
【請求項11】
前記報知に対するユーザーの応答を受け付ける応答受付部を更に含み、
前記第1の制御部は、前記応答受付部により受け付けられた前記応答に基づいて前記移動機構の制御を行う、
請求項10の眼科観察装置。
【請求項12】
前記判定部は、前記動画像生成部によって生成される前記動画像に基づいて判定を行う、
請求項
2の眼科観察装置。
【請求項13】
前記判定部は、前記動画像生成部によって生成される前記動画像に基づいて前記被検眼に対する処置が行われているか判定し、前記処置が行われていると判定されたときには前記移動機構の制御を実行しないと判定する、
請求項
12の眼科観察装置。
【請求項14】
前記画像パラメータの変化に基づく前記移動機構の制御において得られた前記画像パラメータの最適値が第4の条件を満足したときに、報知、前記動画像生成部による照明光量の増加、前記動画像生成部の撮像素子のゲインの増加、及び、前記画像パラメータに関する判定条件の変更の少なくとも1つを実行する第2の制御部を更に含む、
請求項1~
13のいずれかの眼科観察装置。
【請求項15】
前記画像パラメータの変化に基づく前記移動機構の制御の後、前記画像パラメータが所定の範囲に含まれることを条件として、前記動画像生成部による照明光量を低下させる第3の制御部を更に含む、
請求項1~
14のいずれかの眼科観察装置。
【請求項16】
前記画像パラメータは、輝度、コントラスト、鮮鋭度、及び色調の少なくとも1つを含む、
請求項1~
15のいずれかの眼科観察装置。
【請求項17】
被検眼を観察するための光学系とプロセッサとを含む眼科観察装置を制御する方法であって、
前記光学系の移動と前記光学系による前記被検眼の動画像の生成とを並行して実行させ、
前記プロセッサに、前記動画像に含まれる複数の静止画像の逐次解析を実行させて前記被検眼の所定部位の像を逐次に検出させ、
前記プロセッサに、逐次に検出される前記像における所定の画像パラメータの変化に基づいて前記光学系の移動を実行さ
せ、
前記プロセッサに、前記画像パラメータの変化に基づく前記光学系の移動の有効化及び無効化を実行させる、
方法。
【請求項18】
被検眼を観察するための光学系とプロセッサとを含む眼科観察装置を制御する方法であって、
前記光学系の移動と前記光学系による前記被検眼の動画像の生成とを並行して実行させ、
前記プロセッサに、前記動画像に含まれる複数の静止画像の逐次解析を実行させて前記被検眼の所定部位の像を逐次に検出させ、
前記プロセッサに、逐次に検出される前記像における所定の画像パラメータの変化に基づいて前記光学系の移動を実行さ
せ、
前記プロセッサに、前記画像パラメータの変化に基づく前記光学系の移動を実行するか否かの判定を実行させる、
方法。
【請求項19】
請求項
17又は18の方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項20】
請求項19のプログラムが記録されたコンピュータ可読な非一時的記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年10月27日に出願された「APPARATUS AND METHOD FOR OPHTHALMIC OBSERVATION(眼科観察のための装置及び方法)」と題する米国仮特許出願第63/106,087号に基づく優先権を主張するものであり、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、眼科観察装置、その制御方法、プログラム、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
眼科観察装置は、患者の眼(被検眼と呼ぶ)を観察するための装置である。眼科観察は、検査、手術、治療などの様々な場面において被検眼の状態を把握するために行われる。
【0004】
旧来の眼科観察装置は、対物レンズや変倍光学系により得られた拡大像を接眼レンズを介してユーザーに提供するものであったが、近年の眼科観察装置には、対物レンズや変倍光学系により得られた拡大像を撮像素子で撮影し、得られた撮影像を表示するように構成されたものがある(デジタル眼科観察装置と呼ぶ)。デジタル眼科観察装置の種類としては、手術用顕微鏡、スリットランプ顕微鏡、眼底カメラなどがある。また、レフラクトメーター、ケラトメーター、眼圧計、スペキュラーマイクロスコープ、ウェーブフロントアナライザー、マイクロペリメーターといった各種の眼科検査装置にも、デジタル眼科観察装置としての機能が設けられている。
【0005】
更に、近年の眼科観察装置には、光走査を利用したものもある(走査型眼科観察装置)。そのような眼科装置として、走査型レーザー検眼鏡(SLO)、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)装置などがある。
【0006】
一般に、眼科観察装置は、被検眼の動画像をユーザー(例えば、医師などの医療従事者)に提供する。デジタル眼科観察装置は、典型的には、赤外光及び/又は可視光を照明光とした動画撮影と、それにより得られた画像のリアルタイム動画表示とを実行するように構成されている。一方、走査型眼科観察装置は、典型的には、反復的な光走査によるデータ収集と、逐次に収集されるデータセットに基づくリアルタイム画像再構成と、逐次に再構成された画像のリアルタイム動画表示とを実行するように構成されている。このようにして提供されるリアルタイム動画像を観察画像又はライブ画像と呼ぶ。
【0007】
被検眼を観察する手法(観察モードと呼ぶ)には様々なものがある。例えば、特許文献1には、照明角度、倍率、光量などの条件が異なる様々な観察モードを選択的に適用可能な装置が開示されている。また、特許文献2には、照明角度の変更と光量の変更とを連係可能な装置が開示されている。
【0008】
代表的な観察モードの1つに同軸照明(0度照明)がある。同軸照明は、観察光学系(撮影光学系)の光軸に沿って(又は、光軸に対して微小角度だけ傾斜した方向に沿って)照明光を被検眼に投射する観察モードであり、眼底での拡散反射による徹照像を得るために用いられる。徹照像は、典型的には、中間透光体(水晶体、硝子体など)の混濁や、眼内レンズの配置を観察するために利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-310556号公報
【文献】特開2009-118955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
同軸照明においては、照明光の眼底反射が光学系に戻ってくる範囲が限られているため、より広い範囲をより明るく観察できるように光学系の位置を調整する必要がある。従来は、光学系の位置調整は手動で行われていたため、光学系の最適位置の探索には手間や時間が掛かっていた。また、最適位置が実際に達成されているか把握するために手段がなかった。例えば、手動操作によって最適と思われる位置に光学系を導いたとしても、より好適な位置が存在する可能性があったが、それを知るすべがなかった。なお、或る程度好適な位置に光学系が配置されていれば何とか手術を行うことはできるが、手術の成功率の向上、手術時間の短縮、手術し易さの向上、照明光量の低減などを考慮すると、改善の余地はある。なお、同軸照明以外の照明法が適用される場合においても、一般に、観察画像の状態は光学系の位置に依存するため、同様の課題がある。
【0011】
本開示の1つの目的は、眼科観察を容易化するための新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
幾つかの例示的な態様は、被検眼を観察するための眼科観察装置であって、前記被検眼を照明及び撮影して動画像を生成するように構成された動画像生成部と、前記動画像生成部を移動するように構成された移動機構と、前記移動機構により移動される前記動画像生成部によって生成される前記動画像に含まれる複数の静止画像を逐次に解析して、前記被検眼の所定部位の像を逐次に検出するように構成された解析部と、前記解析部により逐次に検出される前記像における所定の画像パラメータの変化に基づいて前記移動機構を制御するように構成された第1の制御部とを含んでいてよい。
【0013】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置において、前記第1の制御部は、前記解析部により逐次に検出される前記像における前記画像パラメータが第1の条件を満足したとき、前記動画像生成部の移動を停止するように前記移動機構を制御するように構成されていてよい。
【0014】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置において、前記画像パラメータは、輝度を含んでいてよく、前記第1の条件は、前記輝度が最大であること、及び、前記輝度が第1の閾値以上であることの少なくとも一方を含んでいてよい。
【0015】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置において、前記第1の制御部は、前記解析部により逐次に検出される前記像における前記画像パラメータが第2の条件を満足したときに、前記動画像生成部の移動を開始するように前記移動機構を制御するように構成されていてよい。
【0016】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置において、前記画像パラメータは、輝度を含んでいてよく、前記第2の条件は、前記輝度が第2の閾値未満であることを含んでいてよい。
【0017】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置において、前記第1の制御部は、前記画像パラメータの変化に基づいて前記動画像生成部の移動方向を決定し、決定された前記移動方向に基づいて前記移動機構の制御を行うように構成されていてよい。
【0018】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置において、前記動画像生成部は、前記被検眼の前眼部の動画像を生成するように構成されていてよく、前記所定部位は、瞳孔を含んでいてよい。
【0019】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置において、前記動画像生成部は、前記被検眼の後眼部の動画像を生成するように構成されていてよく、前記所定部位は、視神経乳頭を含んでいてよい。
【0020】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置において、前記第1の制御部により実行される前記画像パラメータの変化に基づく前記移動機構の制御の有効化及び無効化を行うことが可能であってよい。
【0021】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置は、前記解析部により逐次に検出される前記像における前記画像パラメータが第3の条件を満足したときに報知を行うように構成された報知部を更に含んでいてよい。
【0022】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置は、前記報知に対するユーザーの応答を受け付ける応答受付部を更に含んでいてよく、前記第1の制御部は、前記応答受付部により受け付けられた前記応答に基づいて前記移動機構の制御を行うように構成されていてよい。
【0023】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置は、前記第1の制御部により実行される前記画像パラメータの変化に基づく前記移動機構の制御を実行するか否か判定するように構成された判定部を更に含んでいてよい。
【0024】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置において、前記判定部は、前記動画像生成部によって生成される前記動画像に基づいて判定を行うように構成されていてよい。
【0025】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置において、前記判定部は、前記動画像生成部によって生成される前記動画像に基づいて前記被検眼に対する処置が行われているか判定し、前記処置が行われていると判定されたときには前記移動機構の制御を実行しないと判定するように構成されていてよい。
【0026】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置は、前記画像パラメータの変化に基づく前記移動機構の制御において得られた前記画像パラメータの最適値が第4の条件を満足したときに、報知、前記動画像生成部による照明光量の増加、前記動画像生成部の撮像素子のゲインの増加、及び、前記画像パラメータに関する判定条件の変更の少なくとも1つを実行するように構成された第2の制御部を更に含んでいてよい。
【0027】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置は、前記画像パラメータの変化に基づく前記移動機構の制御の後に、前記画像パラメータが所定の範囲に含まれることを条件として、前記動画像生成部による照明光量を低下させるように構成された第3の制御部を更に含んでいてよい。
【0028】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置において、前記画像パラメータは、輝度、コントラスト、鮮鋭度、及び色調の少なくとも1つを含んでいてよい。
【0029】
幾つかの例示的な態様は、被検眼を観察するための光学系とプロセッサとを含む眼科観察装置を制御する方法であって、前記光学系の移動と前記光学系による前記被検眼の動画像の生成とを並行して実行させ、前記プロセッサに、前記動画像に含まれる複数の静止画像の逐次解析を実行させて前記被検眼の所定部位の像を逐次に検出させ、前記プロセッサに、逐次に検出される前記像における所定の画像パラメータの変化に基づいて前記光学系の移動を実行させる。
【0030】
幾つかの例示的な態様は、例示的な態様に係る方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【0031】
幾つかの例示的な態様は、例示的な態様に係るプログラムが記録されたコンピュータ可読な非一時的記録媒体である。
【発明の効果】
【0032】
例示的な態様によれば、眼科観察を容易化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】例示的な実施形態に係る眼科観察装置(眼科手術用顕微鏡)の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】例示的な実施形態に係る眼科観察装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図3】例示的な実施形態に係る眼科観察装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図4】例示的な実施形態に係る眼科観察装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図5】例示的な実施形態に係る眼科観察装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図6】例示的な実施形態に係る眼科観察装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7A】例示的な実施形態に係る眼科観察装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
【
図7B】例示的な実施形態に係る眼科観察装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
【
図7C】例示的な実施形態に係る眼科観察装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
実施形態に係る眼科観察装置、それを制御する方法、プログラム、及び記録媒体の幾つかの例示的な態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献に記載された事項や任意の公知技術を例示的な態様に組み合わせることが可能である。
【0035】
なお、眼科観察装置の照明性能(例えば同軸照明の性能)の向上を目的として光学系を工夫した従来技術もあるが、そのような従来技術を応用した製品においても、本開示に係る技術を組み合わせることによって照明性能の更なる向上を図ることが可能である。
【0036】
例示的な態様に係る眼科観察装置は、被検眼の検査、手術、治療などの医療行為において被検眼の状態を把握するために使用される。以下に説明される例示的な態様の眼科観察装置は手術用顕微鏡システムであるが、眼科観察装置は手術用顕微鏡システムに限定されない。例えば、眼科観察装置は、スリットランプ顕微鏡、眼底カメラ、レフラクトメーター、ケラトメーター、眼圧計、スペキュラーマイクロスコープ、ウェーブフロントアナライザー、マイクロペリメーター、SLO、及びOCT装置のうちのいずれかであってよく、また、これらのうちのいずれか1つ以上を含むシステムであってよい。より一般に、眼科観察装置は、観察機能を有する任意の眼科装置であってよい。
【0037】
眼科観察装置を用いた観察の対象部位は、被検眼の任意の部位であってよく、前眼部の任意の部位及び/又は後眼部の任意の部位であってよい。前眼部の観察対象部位としては、例えば、角膜、虹彩、前房、隅角、水晶体、毛様体、チン小帯などがある。後眼部の観察対象部位としては、例えば、網膜、脈絡膜、強膜、硝子体などがある。観察対象部位は、眼球組織に限定されるものではなく、瞼、マイボーム腺、眼窩など、眼科(及び/又は他科)において観察対象となる任意の部位であってもよい。
【0038】
本明細書に開示された要素の機能の少なくとも一部は、回路構成(circuitry)又は処理回路構成(processing circuitry)を用いて実装される。回路構成又は処理回路構成は、開示された機能の少なくとも一部を実行するように構成及び/又はプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、従来の回路構成、及びそれらの任意の組み合わせのいずれかを含む。プロセッサは、トランジスタ及び/又は他の回路構成を含む、処理回路構成又は回路構成とみなされる。本開示において、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、開示された機能の少なくとも一部を実行するハードウェア、又は、開示された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されたハードウェアであってよく、或いは、記載された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラム及び/又は構成された既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが或るタイプの回路構成とみなされ得るプロセッサである場合、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、このソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサを構成するために使用される。
【0039】
<眼科観察装置>
例示的な態様の眼科観察装置の構成を
図1に示す。
【0040】
実施形態に係る眼科観察装置1(手術用顕微鏡システム)は、操作装置2と、表示装置3と、手術用顕微鏡10とを含む。幾つかの態様では、手術用顕微鏡10が操作装置2及び表示装置3の少なくとも1つを含んでいてよい。また、幾つかの態様では、表示装置3は眼科観察装置1に含まれていなくてもよい。つまり、表示装置3は眼科観察装置1の周辺機器であってよい。
【0041】
<操作装置2>
操作装置2は、操作デバイス及び/又は入力デバイスを含む。例えば、操作装置2は、ボタン、スイッチ、マウス、キーボード、トラックボール、操作パネル、ダイアルなどを含んでいてよい。典型的には、操作装置2は、一般的な眼科手術用顕微鏡と同様に、フットスイッチを含んでいる。また、音声認識や視線入力などを用いて操作を行うように構成されてもよい。
【0042】
<表示装置3>
表示装置3は、手術用顕微鏡10により取得された被検眼の画像を表示させる。表示装置3は、フラットパネルディスプレイなどの表示デバイスを含む。また、表示装置3は、タッチパネルなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。典型的な表示装置3は、大画面の表示デバイスを含む。表示装置3は、1つ以上の表示デバイスを含む。表示装置3が2つ以上の表示デバイスを含む場合、例えば、1つは比較的大画面の表示デバイスであり、他の1つは比較的小画面の表示デバイスであってよい。また、1つの表示デバイスに複数の表示領域を設けて複数の情報を表示させる構成を採用してもよい。
【0043】
操作装置2と表示装置3は、それぞれ個別のデバイスである必要はない。例えば、タッチパネルのように操作機能と表示機能とが一体化されたデバイスを表示装置3として用いてもよい。その場合、操作装置2は、このタッチパネルとコンピュータプログラムとを含む。操作装置2に対する操作内容は、電気信号としてプロセッサ(不図示)に入力される。また、表示装置3に表示されたグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)と、操作装置2とを用いて、操作や情報入力を行うようにしてもよい。幾つかの態様では、操作装置2及び表示装置3の機能はタッチスクリーンによって実現されてよい。
【0044】
<手術用顕微鏡10>
手術用顕微鏡10は、仰臥位の患者の眼(被検眼)を観察するために用いられる。手術用顕微鏡10は、被検眼を撮影してデジタル画像データを生成する。特に、手術用顕微鏡10は、被検眼の動画像を生成する。手術用顕微鏡10により生成された動画像(映像)は、有線及び/又は無線の信号路を通じて表示装置3に送信されて表示される。ユーザー(術者)は、表示される映像によって被検眼を観察しつつ手術を行うことができる。幾つかの態様の手術用顕微鏡10は、このような表示映像の観察に加えて、旧来のような接眼レンズを介した観察が可能であってもよい。
【0045】
幾つかの態様では、手術用顕微鏡10は、操作装置2との間で電気信号を送受信するための通信デバイスを含む。操作装置2は、ユーザーによる操作を受け付け、それに対応する電気信号(操作信号)を生成する。操作信号は、有線及び/又は無線の信号路を通じて手術用顕微鏡10に送信される。手術用顕微鏡10は、受信した操作信号に対応した処理を実行する。
【0046】
<手術用顕微鏡10の光学系>
手術用顕微鏡10の光学系の構成の例を説明する。以下では、説明の便宜上、対物レンズの光軸方向をz方向(例えば、手術時には鉛直方向、上下方向)とし、z方向に直交する所定方向をx方向(例えば、手術時には水平方向、術者及び患者にとって左右方向)とし、z方向及びx方向の双方に直交する方向をy方向(例えば、手術時には水平方向、術者にとって前後方向、患者にとって体軸方向)とする。
【0047】
また、以下では、主として、観察光学系が左右一対の光学系(双眼観察が可能な光学系)を有している場合について説明する。しかしながら、他の態様の観察光学系は単眼観察用の光学系を有していてもよく、そのような態様に以下に説明する構成を援用できることは当業者であれば理解できるであろう。
【0048】
手術用顕微鏡10の光学系の構成例を
図2に示す。
図2は、光学系を上から見た模式的な上面図(top view)と光学系を側方から見た模式的な側面図(side view)とを対応付けて図示したものである。図示を簡略化するため、上面図においては、対物レンズ20の上方に配置される照明光学系30の図示が省略されている。
【0049】
手術用顕微鏡10は、対物レンズ20と、ダイクロイックミラーDM1と、照明光学系30と、観察光学系40とを含む。観察光学系40は、ズームエキスパンダ50と、撮像カメラ60とを含む。幾つかの態様では、照明光学系30又は観察光学系40は、ダイクロイックミラーDM1を含む。
【0050】
対物レンズ20は、被検眼に対向するように配置される。対物レンズ20は、その光軸がz方向に沿うように配置されている。対物レンズ20は、2枚以上のレンズを含んでいてもよい。
【0051】
ダイクロイックミラーDM1は、照明光学系30の光路と観察光学系40の光路とを結合する。ダイクロイックミラーDM1は、照明光学系30と対物レンズ20との間に配置される。ダイクロイックミラーDM1は、照明光学系30からの照明光を透過して対物レンズ20を介して被検眼に導くとともに、対物レンズ20を介して入射する被検眼からの戻り光を反射して観察光学系40の撮像カメラ60に導く。
【0052】
ダイクロイックミラーDM1は、照明光学系30の光路と観察光学系40の光路とを同軸に結合する。つまり、照明光学系30の光軸と観察光学系40の光軸とがダイクロイックミラーDM1において交差している。照明光学系30が左眼用照明光学系(31L)及び右眼用照明光学系(31R)を含み、且つ、観察光学系40が左眼用観察光学系40L及び右眼用観察光学系40Rを含む場合において、ダイクロイックミラーDM1は、左眼用照明光学系(第1照明光学系31L)の光路と左眼用観察光学系40Lの光路とを同軸に結合し、且つ、右眼用照明光学系(第1照明光学系31R)の光路と右眼用観察光学系40Rの光路とを同軸に結合する。
【0053】
照明光学系30は、対物レンズ20を介して被検眼を照明するための光学系である。照明光学系30は、色温度が異なる2以上の照明光のいずれかによって被検眼を照明するように構成されていてよい。照明光学系30は、後述の制御部(200)の制御の下に、指定された色温度の照明光を被検眼に投射する。
【0054】
照明光学系30は、第1照明光学系31L及び31Rと、第2照明光学系32とを含んでいる。
【0055】
第1照明光学系31Lの光軸OL及び第1照明光学系31Rの光軸ORのそれぞれは、対物レンズ20の光軸と略同軸に配置されている。これにより、同軸照明を実現することができ、眼底での拡散反射を利用した徹照像を得ることが可能となる。本態様では、被検眼の徹照像を双眼で観察することが可能である。
【0056】
第2照明光学系32は、その光軸OSが対物レンズ20の光軸から偏心するように配置されている。第1照明光学系31L及び31R並びに第2照明光学系32は、対物レンズ20の光軸に対する光軸OSの偏位が対物レンズ20の光軸に対する光軸OL及びORの偏位よりも大きくなるように配置されている。これにより、いわゆる「角度付き照明(斜め照明)」を実現することができ、角膜反射などに起因するゴーストの混入を防止しつつ被検眼を双眼で観察することが可能になる。更に、被検眼の部位や組織の凹凸を詳細に観察することも可能になる。
【0057】
第1照明光学系31Lは、光源31LAと、コンデンサーレンズ31LBとを含む。光源31LAは、例えば、3000K(ケルビン)の色温度に相当する可視領域の波長の照明光を出力する。光源31LAから出力された照明光は、コンデンサーレンズ31LBを通過し、ダイクロイックミラーDM1を透過し、対物レンズ20を通過して被検眼に入射する。
【0058】
第1照明光学系31Rは、光源31RAと、コンデンサーレンズ31RBとを含む。光源31RAもまた、例えば、3000Kの色温度に相当する可視領域の波長の照明光を出力する。光源31RAから出力された照明光は、コンデンサーレンズ31RBを通過し、ダイクロイックミラーDM1を透過し、対物レンズ20を通過して被検眼に入射する。
【0059】
第2照明光学系32は、光源32Aと、コンデンサーレンズ32Bとを含む。光源32Aは、例えば、4000K~6000Kの色温度に相当する可視領域の波長の照明光を出力する。光源32Aから出力された照明光は、コンデンサーレンズ32Bを通過し、ダイクロイックミラーDM1を経由することなく対物レンズ20を通過して被検眼に入射する。
【0060】
すなわち、第1照明光学系31L及び31Rからの照明光の色温度は、第2照明光学系32からの照明光の色温度よりも低い。このような構成とすることで、第1照明光学系31L及び31Rを用いて暖色系の色で被検眼を観察することが可能になり、被検眼の構造や形態を詳細に観察することが可能となる。
【0061】
幾つかの態様では、光軸OL及びORのそれぞれが対物レンズ20の光軸に対して相対的に移動可能とされる。この相対移動の方向は対物レンズ20の光軸に交差する方向であり、この相対移動はx成分及びy成分の少なくとも一方がゼロでない変位ベクトルで表現される。幾つかの態様では、光軸OL及びORのそれぞれが独立に移動可能であってよい。一方、幾つかの態様では、光軸OL及びORが一体的に移動可能であってよい。例えば、手術用顕微鏡10は、第1照明光学系31L及び31Rを独立に又は一体的に移動する移動機構(31d)を備えており、この移動機構によって第1照明光学系31L及び31Rを独立に又は一体的に対物レンズ20の光軸に交差する方向に移動する。それにより、被検眼の見え具合を調整することが可能になる。幾つかの態様では、後述の制御部(200)の制御の下に移動機構が動作する。
【0062】
幾つかの態様では、光軸OSが対物レンズ20の光軸に対して相対的に移動可能とされる。この相対移動の方向は、対物レンズ20の光軸に交差する方向であり、この相対移動はx成分及びy成分の少なくとも一方がゼロでない変位ベクトルで表現される。例えば、手術用顕微鏡10は、第2照明光学系32を移動する移動機構(32d)を備えており、この移動機構によって第2照明光学系32を対物レンズ20の光軸に交差する方向に移動する。それにより、被検眼の部位や組織における凹凸の見え具合を調整することが可能になる。幾つかの態様では、後述の制御部(200)の制御の下に移動機構が動作する。
【0063】
以上のように、本態様では、対物レンズ20の直上の位置(ダイクロイックミラーDM1の透過方向の位置)に照明光学系30が配置され、且つ、ダイクロイックミラーDM1の反射方向の位置に観察光学系40が配置されている。例えば、観察光学系40の光軸と対物レンズ20の光軸に直交する平面(xy平面)とのなす角が±20度以下になるように、観察光学系40が配置されていてよい。
【0064】
本態様の構成によれば、一般的に照明光学系30よりも光路長が長い観察光学系40がxy平面に対して略平行に配置されるため、術者の眼前に観察光学系が鉛直方向に配置される従来の手術用顕微鏡のように術者の視野を邪魔することがない。したがって、術者は、正面に設置された表示装置3の画面を容易に見ることができる。つまり、手術中などにおける表示情報(被検眼の画像や映像、その他の各種参照情報)の視認性が向上する。また、術者の眼前に筐体が配置されることがないため、術者に圧迫感を与えることがなく、術者の負担が軽減される。
【0065】
観察光学系40は、対物レンズ20を介して被検眼から入射した照明光の戻り光に基づき形成される像を観察するための光学系である。本態様では、観察光学系40は、撮像カメラ60の撮像素子に像を提供する。
【0066】
上記したように、観察光学系40は、左眼用観察光学系40Lと、右眼用観察光学系40Rとを含んでいる。左眼用観察光学系40Lの構成は、右眼用観察光学系40Rの構成と同様である。幾つかの態様では、左眼用観察光学系40L及び右眼用観察光学系40Rは、互いに独立に光学配置の変更が可能であってよい。
【0067】
ズームエキスパンダ50は、ビームエキスパンダ、可変ビームエキスパンダなどとも呼ばれる。ズームエキスパンダ50は、左眼用ズームエキスパンダ50Lと、右眼用ズームエキスパンダ50Rとを含んでいる。左眼用ズームエキスパンダ50Lの構成は、右眼用ズームエキスパンダ50Rの構成と同様である。幾つかの態様では、左眼用ズームエキスパンダ50L及び右眼用ズームエキスパンダ50Rは、互いに独立に光学配置の変更が可能であってよい。
【0068】
左眼用ズームエキスパンダ50Lは、複数のズームレンズ51L、52L及び53Lを含む。複数のズームレンズ51L、52L及び53Lの少なくとも1つは、変倍機構(不図示)によって光軸方向に移動可能である。
【0069】
同様に、右眼用ズームエキスパンダ50Rは、複数のズームレンズ51R、52R及び53Rを含んでおり、複数のズームレンズ51R、52R、53Rの少なくとも1つは、変倍機構(不図示)によって光軸方向に移動可能である。
【0070】
変倍機構は、左眼用ズームエキスパンダ50Lの各ズームレンズ及び右眼用ズームエキスパンダ50Rの各ズームレンズを独立に又は一体的に光軸方向に移動するように構成されてよい。それにより、被検眼を撮影する際の拡大倍率が変更される。幾つかの態様では、後述の制御部(200)の制御の下に変倍機構が動作する。
【0071】
撮像カメラ60は、観察光学系40により形成される像を撮影してデジタル画像データを生成するデバイスであり、典型的にはデジタルカメラ(デジタルビデオカメラ)である。撮像カメラ60は、左眼用撮像カメラ60Lと、右眼用撮像カメラ60Rとを含んでいる。左眼用撮像カメラ60Lの構成は、右眼用撮像カメラ60Rの構成と同様である。幾つかの態様では、左眼用撮像カメラ60L及び右眼用撮像カメラ60Rは、互いに独立に光学配置の変更が可能である。
【0072】
左眼用撮像カメラ60Lは、結像レンズ61Lと、撮像素子62Lとを含んでいる。結像レンズ61Lは、左眼用ズームエキスパンダ50Lを通過した戻り光に基づく像を撮像素子62Lの撮像面に形成する。撮像素子62Lは、エリアセンサであり、典型的には電荷結合素子(CCD)イメージセンサ又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサであってよい。撮像素子62Lは、後述の制御部(200)の制御の下に動作する。
【0073】
右眼用撮像カメラ60Rは、結像レンズ61Rと、撮像素子62Rとを含んでいる。結像レンズ61Rは、右眼用ズームエキスパンダ50Rを通過した戻り光に基づく像を撮像素子62Lの撮像面に形成する。撮像素子62Rは、エリアセンサであり、典型的にはCCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサであってよい。撮像素子62Rは、後述の制御部(200)の制御の下に動作する。
【0074】
<処理系>
眼科観察装置1の処理系について説明する。処理系の構成例を
図3及び
図4に示す。以下に説明される複数の構成例のうちの任意の2つ以上を少なくとも部分的に組み合わせることができる。なお、処理系の構成はこれらの例に限定されない。
【0075】
制御部200は、眼科観察装置1の各部の制御を行う。制御部200は、主制御部201と記憶部202とを含む。主制御部201は、プロセッサを含み、眼科観察装置1の各部を制御する。例えば、プロセッサは、本態様に係る機能を実現するために、記憶部202又は他の記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することができ、また、記憶部202又は他の記憶装置に格納されているデータや情報を利用(参照、加工、演算など)することができる。
【0076】
主制御部201は、照明光学系30の光源31LA、31RA及び32A、観察光学系40の撮像素子62L及び62R、移動機構31d及び32d、変倍機構50Ld及び50Rd、操作装置2、表示装置3などの制御を行うことができる。
【0077】
光源31LAの制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞りの調整などがある。光源31RAの制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞りの調整などがある。主制御部201は、光源31LA及び31RAに対して互いに排他的に制御を行うことができる。光源32Aの制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞りの調整などがある。
【0078】
照明光学系30が色温度を変更可能な光源を含む場合、主制御部201は、この光源を制御することによって、出力される照明光の色温度を変更することができる。
【0079】
撮像素子62Lの制御には、露光調整、ゲイン調整、撮影レート調整などがある。撮像素子62Rの制御には、露光調整、ゲイン調整、撮影レート調整などがある。また、主制御部201は、撮像素子62L、62Rの撮影タイミングが一致するように、又は両者の撮影タイミングの差が所定時間以内になるように、撮像素子62L及び62Rを制御することができる。更に、主制御部201は、撮像素子62L及び62Rにより得られたデジタルデータの読み出し制御を行うことができる。
【0080】
移動機構31dは、対物レンズ20の光軸に交差する方向に光源31LA及び31RAを独立に又は一体的に移動する。主制御部201は、移動機構31dを制御することにより、対物レンズ20の光軸に対して光軸OL及びORを独立に又は一体的に移動することができる。
【0081】
移動機構32dは、対物レンズ20の光軸に交差する方向に光源32Aを移動する。主制御部201は、移動機構32dを制御することにより、対物レンズ20の光軸に対して光軸OSを移動することができる。
【0082】
移動機構70は、手術用顕微鏡10を移動する。例えば、移動機構70は、照明光学系30の少なくとも一部と観察光学系40とを一体的にするように構成されている。これにより、照明光学系30の少なくとも一部と観察光学系40との間の相対位置関係を保ちつつ、照明光学系30の少なくとも一部及び観察光学系40の被検眼に対する相対位置を変更することができる。幾つかの態様では、移動機構70は、第1照明光学系31L及び31Rと観察光学系40とを一体的に移動するように構成されている。これにより、同軸照明の状態を保ちつつ、第1照明光学系31L及び31R並びに観察光学系40の被検眼に対する相対位置を変更することが可能になる。幾つかの態様では、移動機構70は、第2照明光学系32と観察光学系40とを一体的に移動するように構成されている。これにより、斜め照明の照明角度を保ちつつ、第2照明光学系32及び観察光学系40の被検眼に対する相対位置を変更することが可能になる。幾つかの態様では、移動機構70は、第1照明光学系31L及び31R並びに第2照明光学系32と観察光学系40とを一体的に移動するように構成されている。これにより、同軸照明の状態及び斜め照明の照明角度の双方を保ちつつ、照明光学系30及び観察光学系40の被検眼に対する相対位置を変更することが可能になる。移動機構70は、制御部200の制御の下に動作する。
【0083】
幾つかの態様では、主制御部201は、移動機構31d、32d及び70のうちの少なくとも2つを連係的に制御することができる。
【0084】
変倍機構50Ldは、左眼用ズームエキスパンダ50Lの複数のズームレンズ51L~53Lの少なくとも1つを光軸方向に移動する。主制御部201は、変倍機構50Ldを制御することによって左眼用観察光学系40Lの拡大倍率を変更することができる。
【0085】
同様に、変倍機構50Rdは、右眼用ズームエキスパンダ50Rの複数のズームレンズ51R~53Rの少なくとも1つを光軸方向に移動する。主制御部201は、変倍機構50Rdを制御することによって右眼用観察光学系40Rの拡大倍率を変更することができる。
【0086】
操作装置2に対する制御には、操作許可制御、操作禁止制御、操作装置2からの操作信号の送信制御及び/又は受信制御などがある。主制御部201は、操作装置2により生成された操作信号を受信し、この受信信号に対応する制御を実行する。
【0087】
表示装置3に対する制御には、情報表示制御などがある。主制御部201は、表示制御部として、撮像素子62L及び62Rにより生成されたデジタル画像データに基づく画像を表示装置3に表示させることができる。典型的には、撮像素子62L及び62Rにより生成されたデジタル画像データ(映像信号)に基づく動画像(映像)を表示装置3に表示させることができ、また、この動画像に含まれる静止画像(フレーム)を表示装置3に表示させることができる。更に、主制御部201は、撮像素子62L及び62Rにより生成されたデジタル画像データを加工して得られた画像(動画像、静止画像など)を表示装置3に表示させることができる。また、主制御部201は、眼科観察装置1により生成された任意の情報や、眼科観察装置1が外部から取得した任意の情報を表示装置3に表示させることができる。
【0088】
また、主制御部201は、表示制御部として、撮像素子62Lによって生成されたデジタル画像データから左眼用画像を作成するとともに撮像素子62Rによって生成されたデジタル画像データから右眼用画像を作成し、作成された左眼用画像及び右眼用画像を立体視可能な態様で表示装置3に表示させることができる。例えば、主制御部201は、左眼用画像及び右眼用画像から左右一対の視差画像を作成し、この一対の視差画像を表示装置3に表示させることができる。ユーザー(術者など)は、公知の立体視手法を利用して一対の視差画像を立体画像として認識することができる。本態様に適用可能な立体視手法は任意であってよく、例えば、裸眼での立体視手法、補助器具(偏光眼鏡など)を用いた立体視手法、左眼用画像及び右眼用画像に対する画像処理(画像合成、レンダリングなど)を利用した立体視手法、一対の視差画像を同時に表示させる立体視手法、一対の視差画像を切り換え表示させる立体視手法、及び、これらのうちの2つ以上を組み合わせた立体視手法のうちのいずれかであってよい。
【0089】
データ処理部210は、各種のデータ処理を実行する。データ処理部210が実行可能な処理については、幾つかの例を以下に説明する。データ処理部210(その各要素)は、所定のソフトウェア(プログラム)にしたがって動作するプロセッサを含んでおり、ハードウェアとソフトウェアとの協働によって実現される。
【0090】
データ処理部210が実行可能な処理の幾つかの例について、関連する要素とともに説明する。
図4は、データ処理部210(及び関連要素)の構成例を示している。
図4に示すデータ処理部210Aは、
図3のデータ処理部210の例であり、解析部211を含んでいる。
【0091】
本態様の制御部200は、照明光学系30と観察光学系40とを一体的に移動するための移動機構70の制御(移動制御)と、被検眼の動画撮影(照明及び撮影)を行うための照明光学系30及び観察光学系40の制御(撮影制御)とを並行して実行することができる。この並行制御の態様は任意であってよく、例えば、移動制御と撮影制御とを同時に行ってもよいし、移動制御と撮影制御とを交互に行ってもよいし、同時制御と交互制御とを組み合わせであってもよい。
【0092】
このような並行制御によって取得される動画像(フレーム群、静止画像群)の少なくとも一部が解析部211に入力される。ここで、並行制御によって取得される全ての静止画像を解析部211に入力してもよいし、間引き処理などによって選択された静止画像のみを解析部211に入力してもよい。後者の場合、例えば、制御部200又はデータ処理部210Aによって静止画像選択処理が実行される。なお、前者の場合において、解析部211が静止画像選択処理を行ってもよい。本態様では、上記並行制御と解析部211による処理とが逐次に且つリアルタイムで実行されるため、静止画像選択処理を加えることによって処理負荷の低減を図ることができる。なお、処理負荷低減法は静止画像選択処理に限定されない。また、眼科観察装置1が十分な処理リソースを有している場合などには、処理負荷低減法を採用しなくてもよい。
【0093】
解析部211は、移動制御と並行して実行される撮影制御によって生成される動画像に含まれる複数の静止画像を逐次に解析して、被検眼の所定部位の像を逐次に検出するように構成されている。
【0094】
解析部211により検出される被検眼の部位は任意であってよい。眼科観察装置1による観察対象が前眼部である場合、解析部211は、例えば、瞳孔(全体、又は、瞳孔縁、瞳孔中心、瞳孔重心などの特徴部位)、角膜(全体、又は、角膜輪、角膜縁、角膜中心、角膜頂点などの特徴部位)、虹彩(全体、又は、虹彩内縁、虹彩外縁、虹彩パターンなどの特徴部位)、前房(全体、又は、前側境界、後側境界などの特徴部位)、隅角(全体、周辺部位など)、水晶体(全体、又は、水晶体嚢、前嚢、後嚢、水晶体核などの特徴部位)、毛様体、チン小帯、血管、及び病変部のうちのいずれかを検出するように構成されてよい。眼科観察装置1による観察対象が後眼部である場合、解析部211は、例えば、視神経乳頭、黄斑、血管、網膜(全体、表面、又は、1つ以上のサブ組織)、脈絡膜(全体、前面、後面、又は、1つ以上のサブ組織)、強膜(全体、前面、後面、又は、1つ以上のサブ組織)、硝子体(全体、混濁、浮遊物、剥離組織など)、及び病変部のうちのいずれかを検出するように構成されてよい。眼科観察装置1による観察対象が眼球組織ではない場合、解析部211は、例えば、瞼、マイボーム腺、眼窩などの任意の部位(組織)を検出するように構成されていてよい。解析部211によって検出される部位は、照明法、手術部位、手術法などに応じて決定されてよい。
【0095】
解析部211は、任意の領域抽出法を用いて静止画像から被検眼の所定部位の像を検出することができる。例えば、輝度に特徴のある部位の像を検出する場合、解析部211は、二値化などの輝度閾値処理を用いて静止画像から被検眼の所定部位の像を検出するように構成されてよい。形状に特徴のある部位の像を検出する場合、解析部211は、パターンマッチングなどの形状解析処理を用いて静止画像から被検眼の所定部位の像を検出するように構成されてよい。色調に特徴のある部位の像を検出する場合、解析部211は、特徴色抽出などの色解析処理を用いて静止画像から被検眼の所定部位の像を検出するように構成されてよい。また、解析部211は、被検眼の所定部位の像を特定するためのセグメンテーションを静止画像に適用することによって被検眼の所定部位の像を検出するように構成されてよい。一般に、セグメンテーションは、画像中の部分領域を特定する処理である。セグメンテーションは、任意の公知の画像処理技術を含んでいてよく、例えば、エッジ検出などの画像処理を利用したセグメンテーション、及び/又は、機械学習(例えば、深層学習)を利用したセグメンテーションを含んでいてよい。
【0096】
制御部200(及びデータ処理部210A)は、解析部211によって動画像から逐次に検出される所定部位の像における所定の画像パラメータの変化に基づいて移動機構70の制御を行う(第1の制御部)。この移動機構70の制御による照明光学系30及び観察光学系40の移動方向は任意であってよく、上下方向(Z方向)、左右方向(X方向)、及び前後方向(Y方向)のいずれか1つ以上の方向であってよい。
【0097】
これにより、眼科観察装置1は、被検眼に対する手術用顕微鏡10の位置の変化に応じた画像パラメータの変化に応じて手術用顕微鏡10の位置調整を行うことが可能となる。例えば、前述したように、同軸照明においては、照明光の眼底反射が光学系に戻ってくる範囲が限られているため、より広い範囲をより明るく観察できるように光学系の位置を調整する必要があるが、従来は光学系の位置調整を手動で行っていたため、光学系の最適位置の探索には手間や時間が掛かっていた。これに対し、本態様によれば、光学系の最適位置の探索を画像パラメータを監視しつつ自動で行うことが可能である。また、本態様によれば、画像パラメータを参照することによって、最適位置が実際に達成されているか把握することができる。このように、本態様によれば、眼科観察を容易化することができるとともに、手術の成功率、手術時間、手術し易さなどの改善を図ることができる。同軸照明以外の照明法(例えば、斜め照明)が適用される場合においても同様である。
【0098】
制御部200(及びデータ処理部210A)によって参照される画像パラメータの種類は任意であってよい。例えば、画像パラメータは、輝度、コントラスト、鮮鋭度、及び色調の少なくとも1つであってよい。
【0099】
制御部200(及びデータ処理部210A)は、解析部211により動画像から逐次に検出される所定部位の像における画像パラメータが第1の条件を満足したとき、照明光学系30及び観察光学系40の移動を停止するように移動機構70を制御するように構成されてよい。例えば、制御部200(及びデータ処理部210A)は、解析部211により動画像から逐次に検出される所定部位の像の輝度(又は、コントラスト若しくは鮮鋭度)が最大になったときに、照明光学系30及び観察光学系40の移動を停止するように移動機構70を制御するように構成されてよい。また、制御部200(及びデータ処理部210A)は、解析部211により動画像から逐次に検出される所定部位の像の輝度(又は、コントラスト若しくは鮮鋭度)が所定の閾値以上になったときに、照明光学系30及び観察光学系40の移動を停止するように移動機構70を制御するように構成されてよい。また、制御部200(及びデータ処理部210A)は、解析部211により動画像から逐次に検出される所定部位の像の色調が所定の許容範囲に含まれたときに、照明光学系30及び観察光学系40の移動を停止するように移動機構70を制御するように構成されてよい。第1の条件における閾値や範囲は固定でもよいし可変でもよい。
【0100】
これにより、好適な画像パラメータが得られる位置に照明光学系30及び観察光学系40を自動で誘導し配置することが可能となり、眼科観察の容易化などの効果が奏される。
【0101】
制御部200(及びデータ処理部210A)は、解析部211により動画像から逐次に検出される所定部位の像における画像パラメータが第2の条件を満足したとき、照明光学系30及び観察光学系40の移動を開始するように移動機構70を制御するように構成されてよい。例えば、制御部200(及びデータ処理部210A)は、解析部211により動画像から逐次に検出される所定部位の像の輝度(又は、コントラスト若しくは鮮鋭度)が所定の閾値未満になったときに、照明光学系30及び観察光学系40の移動を開始するように移動機構70を制御するように構成されてよい。また、制御部200(及びデータ処理部210A)は、解析部211により動画像から逐次に検出される所定部位の像の色調が所定の許容範囲から外れたときに、照明光学系30及び観察光学系40の移動を開始するように移動機構70を制御するように構成されてよい。第2の条件における閾値や範囲は固定でもよいし可変でもよい。また、第2の条件は、第1の条件と同じでもよいし異なってもよい。
【0102】
これにより、画像パラメータが悪化したことに対応して照明光学系30及び観察光学系40の移動を自動で開始し、光学系の最適位置の探索を行うことができるため、観察画像の品質を維持することが可能となる。例えば、自動探索によって光学系が最適位置に配置された後に、眼球運動などにより被検眼と手術用顕微鏡10との位置関係が変化して画像パラメータが悪化することがあるが、本態様によれば、画像パラメータの悪化を自動で検知して光学系の最適位置の探索を再開することが可能となり、眼科観察の容易化などの効果が奏される。
【0103】
制御部200(及びデータ処理部210A)は、画像パラメータの変化に基づいて照明光学系30及び観察光学系40の移動方向を決定することができる。例えば、制御部200(及びデータ処理部210A)は、照明光学系30及び観察光学系40が或る方向に移動したときの画像パラメータの変化が好適な変化であるか否か判定し、画像パラメータの変化が好適な変化である場合には当該方向を移動方向として決定し、画像パラメータの変化が好適な変化でない場合には当該方向ではない方向(例えば、当該方向の逆方向)を移動方向として決定する。例えば、制御部200(及びデータ処理部210A)は、照明光学系30及び観察光学系40が或る方向に移動したときの画像パラメータの変化が好適な変化であるか否か判定し、画像パラメータの変化が好適な変化である場合には当該方向を移動方向として決定し、画像パラメータの変化が好適な変化でない場合には当該方向ではない方向(例えば、当該方向の逆方向)を移動方向として決定する。制御部200は、決定された移動方向に基づいて移動機構70の制御を行う。具体例として、制御部200(及びデータ処理部210A)は、或る方向への照明光学系30及び観察光学系40の移動に伴って輝度が増加した場合には当該方向への移動を継続し、当該移動に伴って輝度が減少した場合にはその逆方向への移動に切り替えることができる。
【0104】
これにより、手術用顕微鏡10の移動方向を画像パラメータの変化に応じて自動で決定することができるので、眼科観察の容易化などの効果が奏される。
【0105】
制御部200(及びデータ処理部210A)により実行される処理(つまり、画像パラメータの変化に基づく移動機構70の制御)の有効化及び無効化を行うことが可能であってよい。つまり、眼科観察装置1は、このような制御機能をオン/オフできるように構成されていてよい。例えば、手術用顕微鏡10が自動で(つまり、ユーザーの意図しないタイミングで)移動することを避けたい場合には当該制御機能を無効化(オフ)にすることができる。有効化/無効化の切り替えは、例えば、操作装置2(フットスイッチ)を用いた操作によって行われてよい。また、音声認識などを利用して有効化/無効化の切り替えを行えるように眼科観察装置1を構成してもよい。このような操作やそれに伴う処理や作業を補助するために、眼科観察装置1は、画像パラメータの悪化(例えば、瞳孔の像の輝度が下がったこと)を報知する手段、手術用顕微鏡10の移動開始を報知する手段、手術用顕微鏡10の移動許可をユーザーに求める手段などを備えていてもよい。
【0106】
これにより、手術用顕微鏡10の自動移動機能をユーザーが使用したくないときや、被検眼に対する処置をユーザーが行っているときには、自動移動機能を停止することができる。また、画像パラメータの悪化などの条件が満足されたことを報知することが可能となる。なお、報知の方法は任意であってよく、例えば、表示装置3への情報の表示、音声出力、光源の点灯などであってよい。また、報知のトリガーとなる条件(第3の条件)は任意であり、例えば、前述した第1の条件及び/又は第2の条件と同じでもよいし異なってもよい。
【0107】
眼科観察装置1は、画像パラメータの悪化などの報知に対するユーザーの応答を受け付けることができる。ユーザーの応答の受け付けは、操作装置2、音声認識装置などによって行われる(応答受付部)。制御部200(及びデータ処理部210A)は、応答受付部により受け付けられたユーザーの応答に基づき移動機構70の制御を行って照明光学系30及び観察光学系40を移動させることができる。
【0108】
これにより、眼科観察装置1は、第3の条件が満足されたこと(例えば、画像パラメータが悪化したこと)を自動で検知し、それを報知し、これに応じたユーザーの応答を受け付け、手術用顕微鏡10を移動させることが可能となる。よって、ユーザーは、第3の条件が満足されたことを認識し、照明光学系30及び観察光学系40の最適位置の探索の開始を指示することができる。
【0109】
図5に示すデータ処理部210Bは、
図3のデータ処理部210の例であり、
図4のデータ処理部210Aの解析部211に加えて判定部212を含んでいる。特に言及しない限り、データ処理部21Bは、データ処理部210Aと同様の処理を実行することができる。
【0110】
判定部212は、制御部200(及びデータ処理部210B)により実行される処理(つまり、画像パラメータの変化に基づく移動機構70の制御)を実行するか否か判定するように構成されている。例えば、判定部212は、手術用顕微鏡10によって生成される動画像に基づいて判定を行うように構成される。例えば、判定部212は、手術用顕微鏡10によって生成される動画像に基づいて被検眼に対する処置が行われているか判定し、処置が行われていると判定されたときには画像パラメータの変化に基づく移動機構70の制御を実行しないと判定するように構成されてよい。このように、幾つかの態様では、眼科観察装置1は、手術用顕微鏡10により得られる観察画像を解析して手術用顕微鏡10の移動の可否を自動判定する手段を備えていてもよい。例えば、被検眼に対する処置をユーザーが行っている間には手術用顕微鏡10の移動を禁止するようにしてもよい。例えば、眼科観察装置1は、観察画像に器具(手術器具など)が映っているか判定部212によって判定し、観察画像に器具が映っていると判定された場合には手術用顕微鏡10の移動を禁止するように構成されていてよい。また、眼科観察装置1は、観察画像(動画像)に移っている器具が動いているか判定部212によって判定し、観察画像に映っている器具が動いていると判定された場合には手術用顕微鏡10の移動を禁止するように構成されていてよい。
【0111】
これにより、眼科観察装置1は、手術用顕微鏡10の光学系の位置の自動探索の実行の可否を自動判定することが可能になる。また、被検眼に対する処置が行われているときなどに、ユーザーの意図しない(予期しない、所望しない)タイミングで手術用顕微鏡10が移動することを防止することが可能になる。
【0112】
手術用顕微鏡10の光学系の位置の自動探索を実行しても良好な品質の画像が得られない場合も想定される。このような場合への対処のために、眼科観察装置1は、次のような機能を有していてもよい(第2の制御部)。まず、眼科観察装置1(例えば、データ処理部210)は、例えば、画像パラメータの変化に基づく移動機構70の制御を行うことにより画像パラメータの最適値を決定することができる。次に、眼科観察装置1(例えば、データ処理部210)は、この最適値が第4の条件を満足するか否か判定することができる。画像パラメータの最適値が第4の条件を満足すると判定された場合、眼科観察装置1(例えば、制御部200)は、報知、照明光学系30による照明光量の増加、観察光学系40の撮像素子のゲインの増加、及び、画像パラメータに関する判定条件の変更の少なくとも1つを実行することができる。このような機能の具体例を説明する。まず、眼科観察装置1は、照明光学系30及び観察光学系40を移動しながら動画撮影を行うとともに瞳孔像の輝度値を逐次に検出することによって、輝度の最大値を求める。この最大輝度値は、画像パラメータの最適値の例であり、光学系の最適位置の探索において得られた輝度の最大値である。次に、眼科観察装置1は、この最大輝度値と前述した第1の条件の閾値とを比較し、最大輝度値が閾値未満であるか判定する。本例では、最大輝度値が閾値未満であることが、第4の条件を満足したことに相当する。最大輝度値が閾値未満であると判定された場合、眼科観察装置1は、照明光学系30による照明光量の増加、観察光学系40の撮像素子のゲインの増加、及び、画像パラメータに関する判定条件の変更の少なくとも1つを実行することができる。報知は、光学系の位置の自動探索では十分な明るさの瞳孔像(徹照像)が得られないことをユーザーに知らせるものであり、これを認識したユーザーは所望の対処を行うことができる。照明光量の増加及びゲインの増加は、いずれも、瞳孔像(徹照像)の輝度の増加に寄与する。画像パラメータに関する判定条件の変更は、例えば、第1の条件の閾値を下げるものであり、瞳孔像(徹照像)の明るさが多少不十分であっても医療行為(手術など)の継続を優先するものであると言える。報知、照明光の増加、ゲインの増加、及び、画像パラメータに関する判定条件の変更のうちから眼科観察装置1が処理を選択して実行してもよい。また、報知、照明光の増加、ゲインの増加、及び、画像パラメータに関する判定条件の変更のうちのいずれかをデフォルトで実行するように構成されてもよい。また、報知、照明光の増加、ゲインの増加、及び、画像パラメータに関する判定条件の変更のうちの2つ以上の組み合わせて実行してもよい。例えば、照明光学系30及び観察光学系40を移動しても第1の条件の閾値以上の輝度が得られなかった場合、眼科観察装置1は、まず、報知を行うことができる。これにより、ユーザーは、光学系の位置の自動探索で十分な明るさの徹照像が得られなかったことを知ることができる。次に、眼科観察装置1は、(例えば、ユーザーの指示を受けて、又は、自動的に)光源31LA及び31RAの光量を増加する。次に、眼科観察装置1は、光学系の位置の自動探索を再度実行する。この自動探索でも徹照像の輝度が不足している場合、眼科観察装置1は、観察光学系40の撮像素子62L及び62Rのゲインを上げる。次に、眼科観察装置1は、光学系の位置の自動探索を再度実行する。この自動探索でも徹照像の輝度が不足している場合、眼科観察装置1は、第1の条件の閾値を所定値だけ下げる。次に、眼科観察装置1は、光学系の位置の自動探索を再度実行する。この自動探索でも徹照像の輝度が不足している場合、眼科観察装置1は、再度報知を行う。この報知は、一連の自動探索では十分な明るさの徹照像が得られないことをユーザーに知らせるものであり、手動操作への移行を促すものである。手動操作では、例えば、照明光学系30及び観察光学系40の位置調整、照明光量の調整、ゲインの調整、第1の条件の閾値の調整などを含んでいてよい。
【0113】
これにより、手術用顕微鏡10の光学系の位置の自動探索を実行しても良好な品質の画像が得られない場合において、様々な好適な対処を行うことが可能になる。
【0114】
手術用顕微鏡10の光学系の位置の自動探索によって良好な品質の画像が得られた場合(自動探索に成功した場合)において、必要最低限の明るさの像が得られる場合も想定される。そのような場合、被検者への負担を低減するために、照明光量を低下させることができる(第3の制御部)。例えば、光学系の位置の自動探索に成功した後、眼科観察装置1の制御部200は、画像パラメータが所定の範囲に含まれることを条件として、照明光学系30による照明光量を低下させることができる。この所定の範囲は、例えば、第1の条件の閾値以上の範囲である。
【0115】
これにより、手術用顕微鏡10の光学系の位置の自動探索に成功した場合に、良好な品質の画像が得られることを条件として照明光量を低下させて被検者への負担を低減させることが可能になる。
【0116】
後眼部手術を行う場合のように観察対象が後眼部である場合において、眼科観察装置1は、上記した前眼部観察の場合と同様の処理を実行することができる。例えば、眼科観察装置1は、移動機構70により照明光学系30及び観察光学系40を移動しつつ手術用顕微鏡10により動画像を生成し、この動画像に含まれる複数の静止画像を解析部211により逐次に解析して後眼部の所定部位(例えば、視神経乳頭)の像を逐次に検出し、逐次に検出される像における所定の画像パラメータ(例えば、輝度)の変化に基づいて移動機構70を制御することができる。これにより、前眼部観察の場合と同様の作用及び効果が後眼部観察においても奏される。前眼部観察の場合について説明された任意の事項を後眼部観察の場合に組み合わせることが可能である。
【0117】
<動作・使用形態>
眼科観察装置1の動作及び使用形態について説明する。眼科観察装置1の動作及び使用形態の例を
図6に示す。本例では、同軸照明の場合について説明するが、他の照明法(例えば、斜め照明)の場合や、後眼部観察の場合においても、同様の動作及び使用形態を実施することが可能である。
【0118】
(S1:同軸照明でライブ画像の生成及び表示を開始)
まず、ユーザーは、操作装置2を用いて所定の操作を行うことで、同軸照明を選択するとともに、眼科観察装置1による被検眼(前眼部)のライブ画像の生成及び表示を開始させる。具体的には、手術用顕微鏡10は、照明光学系30(第1照明光学系31L及び31R)によって被検眼を照明しつつ撮像素子62L及び62Rによって被検眼のデジタル画像データ(映像)を生成する。生成された映像(ライブ画像301)は、表示装置3にリアルタイムで表示される(
図7Aを参照)。つまり、手術用顕微鏡10により取得される動画像が表示装置3にライブ画像(観察画像)として表示される。ユーザーは、このライブ画像を観察しながら手術を行うことができる。
【0119】
(S2:ライブ画像から瞳孔中心を検出する)
次に、データ処理部210(例えば、解析部211)は、ステップS1で生成が開始されたライブ画像(そのフレーム)から瞳孔中心を検出する。幾つかの態様では、データ処理部210は、まず、二値化やセグメンテーションを適用して角膜輪部302を検出する(
図7Bを参照)。なお、データ処理部210は瞳孔縁303を検出してもよい。瞳孔縁303を検出する場合、例えば、瞳孔に相当する低輝度領域を探索し、この低輝度領域をがフレームの中央に配置されるようにした後に、この低輝度領域に楕円近似を適用するようにしてもよい。データ処理部210は、検出された角膜輪部302に基づいて瞳孔中心に相当する位置(ピクセル)304を特定する(
図7Cを参照)。例えば、データ処理部210は、検出された角膜輪部302の近似楕円(近似円)を求め、この近似楕円の中心を特定する。近似楕円の中心の特定は、例えば、公知の幾何学的方法によって実行される。
【0120】
(S3:瞳孔中心に光学系の光軸を合わせる)
次に、眼科観察装置1は、手術用顕微鏡10(照明光学系30、観察光学系40)の光軸を、ステップS2で特定された瞳孔中心304に合わせる。例えば、眼科観察装置1は、新たに取得されたフレームと瞳孔中心304の検出に用いられたフレームとのレジストレーションを実行し、このレジストレーションの結果に基づいて新たなフレームにおける瞳孔中心相当位置を特定し、この瞳孔中心相当位置に光軸が配置されるように照明光学系30及び観察光学系40を移動する。
【0121】
なお、ユーザーが手動操作によって、手術用顕微鏡10の光軸を瞳孔中心に配置させてもよい。
【0122】
(S4:瞳孔像を検出する)
眼科観察装置1(解析部211)は、ステップS3によって手術用顕微鏡10の光軸が瞳孔中心304に移動された後のライブ画像から瞳孔像を検出する。
【0123】
(S5:瞳孔像の輝度を算出する)
次に、眼科観察装置1は、ステップS4で検出された瞳孔像の輝度を算出する。瞳孔像の輝度算出の第1の例として、データ処理部210(例えば、解析部211)は、瞳孔像(及びその近傍)を複数の部分領域に分割する処理と、各部分領域の輝度の代表値(例えばい、平均値、最大値、最頻値、中央値など、任意の統計値)を求める処理と、複数の部分領域について得られた輝度の代表値の分布に基づき瞳孔像の輝度を決定する処理とを実行する。瞳孔像の輝度を当該分布から決定する処理は、任意の統計処理を含んでよく、例えば、平均の算出、最大値の特定、最頻値の特定、中央値の特定などを含んでいてよい。瞳孔像の輝度算出の第2の例として、データ処理部210(例えば、解析部211)は、瞳孔像内の複数の画素(全ての画素、又は、選択された画素群)の輝度から所定の統計手法によって瞳孔像の輝度を決定することができる。
【0124】
(S6:輝度は閾値以上且つ最大か?)
次に、眼科観察装置1(制御部200又はデータ処理部210)は、ステップS5で算出された瞳孔像の輝度が所定の閾値以上であるか判定し、且つ、瞳孔像の輝度が最大値(極大値)であるか判定する。なお、これらの判定処理の一方のみを実行してもよい。閾値判定は、瞳孔像の輝度と閾値との比較によって行われる。この閾値は、例えば、前述した第1の条件の閾値であってよい。最大値判定は、照明光学系30及び観察光学系40の移動に伴う輝度の変化を監視することによって行われる。例えば、輝度の変化が増加から減少に変わる位置を探索することによって、照明光学系30及び観察光学系40の或る位置が輝度最大となる位置であるか判定することができる(つまり、輝度が最大となる照明光学系30及び観察光学系40の位置を求めることができる)。
【0125】
ステップS5で算出された瞳孔像の輝度が閾値以上であると判定され、且つ、瞳孔像の輝度が最大値であると判定された場合(S6:Yes)、動作はステップS8に移行する。ステップS5で算出された瞳孔像の輝度が閾値未満であると判定された場合、及び/又は、瞳孔像の輝度が最大値ではないと判定された場合(S6:No)、動作はステップS7に移行する。
【0126】
(S7:光学系を移動する)
ステップS6において「No」と判定された場合、眼科観察装置1(制御部200、移動機構70)は、照明光学系30及び観察光学系40を移動する。移動方向は任意であってよく、上下方向(Z方向)、左右方向(X方向)、及び前後方向(Y方向)のいずれか1つ以上の方向であってよい。また、前述したように、輝度の変化に基づいて移動方向を決定してもよい。移動量(移動距離)は、予め設定されていてもよいし、輝度の変化に基づいて決定してもよい。
【0127】
(S8:光学系の移動を終了する)
ステップS6において「Yes」と判定された場合、眼科観察装置1(制御部200)は、照明光学系30及び観察光学系40の移動を終了する(エンド)。これにより、瞳孔像の輝度が閾値以上且つ最大となる位置に照明光学系30及び観察光学系40が配置される。つまり、輝度が閾値以上且つ最大である徹照像が得られる。
【0128】
本例の動作及び使用形態に、前述した事項のいずれかを組み合わせることができる。例えば、瞳孔像の輝度が規定値(前述した第2の条件の閾値)を下回ったときに、照明光学系30及び観察光学系40を再度移動させて瞳孔像の輝度が最大になる位置を探索し、その位置に照明光学系30及び観察光学系40を配置することができる。また、照明光学系30及び観察光学系40を移動しても閾値以上の輝度が得られない場合、報知、照明光量の増加、撮像素子のゲインの増加、閾値の低減などの処理を実行することができる。また、瞳孔像の輝度が閾値以上且つ最大となる位置に照明光学系30及び観察光学系40が移動された後、瞳孔像の輝度が規定値以上となる範囲において照明光量を下げることによって、被検者への負担を低減させてもよい。
【0129】
<眼科観察装置を制御する方法>
例示的な実施形態(例えば、上記した眼科観察装置1)は、眼科観察装置を制御する方法を提供する。以下に説明する例示的な方法に対し、上記実施形態の眼科観察装置1に関する任意の事項を組み合わせることが可能である。
【0130】
例示的な態様の方法によって制御される眼科観察装置は、被検眼を観察するための光学系(例えば、移動機構70によって移動される照明光学系30及び観察光学系40)と、プロセッサ(例えば、制御部200及びデータ処理部210)とを含む。例示的な態様の方法は、まず、光学系の移動と光学系による被検眼の動画像の生成とを並行して実行させる。更に、例示的な態様の方法は、プロセッサに、動画像に含まれる複数の静止画像の逐次解析を実行させて被検眼の所定部位の像を逐次に検出させる。加えて、例示的な態様の方法は、プロセッサに、逐次に検出される所定部位の像における所定の画像パラメータの変化に基づいて光学系の移動を実行させる。
【0131】
このような例示的な態様の方法によれば、上記実施形態の眼科観察装置1と同様の作用及び効果を奏することができる。また、上記実施形態の眼科観察装置1に関する事項を例示的な態様の方法に組み合わせることで、その結果として得られる方法は、組み合わされた事項に対応する作用及び効果を奏することができる。
【0132】
<プログラム>
例示的な実施形態は、上記した例示的な態様の方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供する。このようなプログラムに対して、上記実施形態の眼科観察装置1に関する事項を組み合わせることが可能である。
【0133】
このようなプログラムによれば、上記実施形態の眼科観察装置1と同様の作用及び効果を奏することができる。また、上記実施形態の眼科観察装置1に関する事項をプログラムに組み合わせることで、その結果として得られるプログラムは、組み合わされた事項に対応する作用及び効果を奏することができる。
【0134】
<記録媒体>
例示的な実施形態は、上記したプログラムを記録したコンピュータ可読な非一時的記録媒体を提供する。このような記録媒体に対して、上記実施形態の眼科観察装置1に関する事項を組み合わせることが可能である。非一時的記録媒体の形態は、任意であってよく、その例として、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどがある。
【0135】
このような記録媒体によれば、上記実施形態の眼科観察装置1と同様の作用及び効果を奏することができる。また、上記実施形態の眼科観察装置1に関する事項を記録媒体に組み合わせることで、その結果として得られる記録媒体は、組み合わされた事項に対応する作用及び効果を奏することができる。
【0136】
本開示によれば、例えば同軸照明の眼底反射の戻り強度が良好(閾値以上、最大)となる位置を自動で決定して顕微鏡光学系を移動することで、観察環境の自動的な最適化を図ることができる。また、被検者や被検眼が動いたときにも同様の動作を行うことで、良好な観察環境を保つことができる。また、同軸照明以外の照明法(例えば、斜め照明)においても同様の動作を行うことができるが、ユーザーの好みなどが反映される場合などにおいてはユーザー毎のプリセット情報を準備しておいてもよい。
【0137】
また、本開示によれば、その動作が正しく機能している限り、ユーザーは常に最適な照明状態で眼を観察することができ、手術の成功率の向上、手術時間の短縮、照明光量の低減などを図ることができる。これにより、患者の負担が軽減される。例えば、白内障手術において本開示を利用すれば、同軸照明において好適な徹照像が得られるため、水晶体乳化吸引作業や後嚢研磨作業などを適切に且つ効率的に行うことが可能になる。
【0138】
本開示は、実施態様を例示したものに過ぎず、本開示及びその均等の範囲内において任意の変形、省略、追加、置換などを施すことが可能である。
【符号の説明】
【0139】
1 眼科観察装置
2 操作装置
3 表示装置
10 手術用顕微鏡
30 照明光学系
40 観察光学系
200 制御部
210 データ処理部
211 解析部
212 判定部