(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】工具搬送システム、工具搬送システムの制御方法、および、工具搬送システムの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B23Q 41/00 20060101AFI20241126BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B23Q41/00 F
B23Q3/155 F
B23Q3/155 E
(21)【出願番号】P 2022563267
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 JP2020042777
(87)【国際公開番号】W WO2022107198
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安木 詠介
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特許第6775704(JP,B1)
【文献】特開昭63-105852(JP,A)
【文献】特開平03-221340(JP,A)
【文献】特開2013-022661(JP,A)
【文献】特開平10-100033(JP,A)
【文献】特開平11-156657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 41/00
B23Q 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具搬送システムであって、
工作機械と、
複数の工具ホルダーを収納するための工具収納部とを備え、前記複数の工具ホルダーの各々は、工具を保持可能に構成されており、
前記工具搬送システムは、さらに、
作業者が工具ホルダーに係る作業を行うための作業ステーションと、
前記工作機械内、前記工具収納部内、および前記作業ステーション内にある工具ホルダーの内の指定された工具ホルダーを、前記工作機械、前記工具収納部、および前記作業ステーションの内の指定された搬送先に搬送するための搬送装置と、
前記工具搬送システムを制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、
工具ホルダーの回収指示を受けたことに基づいて、前記工作機械内にある工具ホルダーの中から、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーを特定する処理と、
前記特定する処理で特定された工具ホルダーを前記工作機械内にある他の工具ホルダーよりも優先的に前記工作機械から搬出するように前記搬送装置を制御する処理と、
前記制御する処理で前記工作機械から搬出された工具ホルダーを前記工具収納部または前記作業ステーションに搬送するように前記搬送装置を制御する処理とを実行
し、
前記工作機械内にある前記他の工具ホルダーは、工具を保持していない空の工具ホルダーを含む、工具搬送システム。
【請求項2】
前記工作機械内にある前記他の工具ホルダーは、使用可能状態の工具を保持している工具ホルダーを含み、
前記制御部は、さらに、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーが前記工作機械内にない場合には、使用可能状態の工具を保持している工具ホルダーよりも前記空の工具ホルダーを優先的に前記工作機械から搬出するように前記搬送装置を制御する処理を実行する、請求項
1に記載の工具搬送システム。
【請求項3】
前記工作機械内にある前記他の工具ホルダーは、
前記工作機械で使用予定のない工具を保持している工具ホルダーと、
前記工作機械で使用予定のある工具を保持している工具ホルダーとを含み、
前記制御部は、さらに、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーと、空の工具ホルダーとが前記工作機械内にない場合には、使用予定のない工具を保持している前記工具ホルダーを、使用予定のある工具を保持している前記工具ホルダーよりも優先的に前記工作機械から搬出するように前記搬送装置を制御する処理を実行する、請求項
2に記載の工具搬送システム。
【請求項4】
前記工具収納部に収納されている工具ホルダーは、
第1工具を保持している第1工具ホルダーと、
前記第1工具よりも残りの寿命が短い第2工具を保持している第2工具ホルダーとを含み、
前記制御部は、工具ホルダーの搬入指示を受けたことに基づいて、前記第2工具ホルダーを前記第1工具ホルダーよりも優先的に前記工作機械に搬入するように前記搬送装置を制御する処理を実行する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の工具搬送システム。
【請求項5】
工具搬送システムの制御方法であって、
前記工具搬送システムは、
工作機械と、
複数の工具ホルダーを収納するための工具収納部とを備え、前記複数の工具ホルダーの各々は、工具を保持可能に構成されており、
前記工具搬送システムは、さらに、
作業者が工具ホルダーに係る作業を行うための作業ステーションと、
前記工作機械内、前記工具収納部内、および前記作業ステーション内にある工具ホルダーの内の指定された工具ホルダーを、前記工作機械、前記工具収納部、および前記作業ステーションの内の指定された搬送先に搬送するための搬送装置とを備え、
前記制御方法は、
工具ホルダーの回収指示を受けたことに基づいて、前記工作機械内にある工具ホルダーの中から、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーを特定するステップと、
前記特定するステップで特定された工具ホルダーを前記工作機械内にある他の工具ホルダーよりも優先的に前記工作機械から搬出するように前記搬送装置を制御するステップと、
前記制御するステップで前記工作機械から搬出された工具ホルダーを前記工具収納部または前記作業ステーションに搬送するように前記搬送装置を制御するステップとを
備え、
前記工作機械内にある前記他の工具ホルダーは、工具を保持していない空の工具ホルダーを含む、制御方法。
【請求項6】
工具搬送システムの制御プログラムであって、
前記工具搬送システムは、
工作機械と、
複数の工具ホルダーを収納するための工具収納部とを備え、前記複数の工具ホルダーの各々は、工具を保持可能に構成されており、
前記工具搬送システムは、さらに、
作業者が工具ホルダーに係る作業を行うための作業ステーションと、
前記工作機械内、前記工具収納部内、および前記作業ステーション内にある工具ホルダーの内の指定された工具ホルダーを、前記工作機械、前記工具収納部、および前記作業ステーションの内の指定された搬送先に搬送するための搬送装置とを備え、
前記制御プログラムは、前記工具搬送システムに、
工具ホルダーの回収指示を受けたことに基づいて、前記工作機械内にある工具ホルダーの中から、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーを特定するステップと、
前記特定するステップで特定された工具ホルダーを前記工作機械内にある他の工具ホルダーよりも優先的に前記工作機械から搬出するように前記搬送装置を制御するステップと、
前記制御するステップで前記工作機械から搬出された工具ホルダーを前記工具収納部または前記作業ステーションに搬送するように前記搬送装置を制御するステップとを実行さ
せ、
前記工作機械内にある前記他の工具ホルダーは、工具を保持していない空の工具ホルダーを含む、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工具搬送システム内の工具ホルダーを搬送するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の工作機械を運用する企業が増えている。管理する工作機械の数が増えると、各工作機械で使用される工具の管理が難しくなる。これに関して、特許文献1(国際公開第2015/029232号)は、複数の工作機械で用いられる工具を管理する工具管理システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、工具搬送システムの開発が進められている。当該工具搬送システムは、複数の工具ホルダーを備えている。各工具ホルダーには、工具が装着されている。工具搬送システムは、工具ホルダーを工作機械に自動で搬入することで、必要な工具を工作機械に供給する。また、工具搬送システムは、不要な工具を保持している工具ホルダーを工作機械から自動で搬出する。特許文献1に開示される工具管理システムは、このような工具搬送システムに関するものではない。
【0005】
工作機械は、使用可能状態の工具だけでなく、使用不能状態の工具も含み得る。工作機械に収納可能な工具ホルダーの数は、限られている。使用不能状態の工具ホルダーが工作機械にあると、工具ホルダーの収納スペースが無駄に使用されることになる。したがって、工作機械に収納されている工具ホルダーに優先度を付けて回収することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例では、工具搬送システムは、工作機械と、複数の工具ホルダーを収納するための工具収納部とを備える。上記複数の工具ホルダーの各々は、工具を保持可能に構成されている。上記工具搬送システムは、さらに、作業者が工具ホルダーに係る作業を行うための作業ステーションと、上記工作機械内、上記工具収納部内、および上記作業ステーション内にある工具ホルダーの内の指定された工具ホルダーを、上記工作機械、上記工具収納部、および上記作業ステーションの内の指定された搬送先に搬送するための搬送装置と、上記工具搬送システムを制御するための制御部とを備える。上記制御部は、工具ホルダーの回収指示を受けたことに基づいて、上記工作機械内にある工具ホルダーの中から、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーを特定する処理と、上記特定する処理で特定された工具ホルダーを上記工作機械内にある他の工具ホルダーよりも優先的に上記工作機械から搬出するように上記搬送装置を制御する処理と、上記制御する処理で上記工作機械から搬出された工具ホルダーを上記工具収納部または上記作業ステーションに搬送するように上記搬送装置を制御する処理とを実行する。
【0007】
本開示の一例では、上記工作機械内にある上記他の工具ホルダーは、工具を保持していない空の工具ホルダーを含む。
【0008】
本開示の一例では、上記工作機械内にある上記他の工具ホルダーは、使用可能状態の工具を保持している工具ホルダーを含む。上記制御部は、さらに、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーが上記工作機械内にない場合には、使用可能状態の工具を保持している工具ホルダーよりも上記空の工具ホルダーを優先的に上記工作機械から搬出するように上記搬送装置を制御する処理を実行する。
【0009】
本開示の一例では、上記工作機械内にある上記他の工具ホルダーは、上記工作機械で使用予定のない工具を保持している工具ホルダーと、上記工作機械で使用予定のある工具を保持している工具ホルダーとを含む。上記制御部は、さらに、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーと、空の工具ホルダーとが上記工作機械内にない場合には、使用予定のない工具を保持している上記工具ホルダーを、使用予定のある工具を保持している上記工具ホルダーよりも優先的に上記工作機械から搬出するように上記搬送装置を制御する処理を実行する。
【0010】
本開示の一例では、上記工具収納部に収納されている工具ホルダーは、第1工具を保持している第1工具ホルダーと、上記第1工具よりも残りの寿命が短い第2工具を保持している第2工具ホルダーとを含む。上記制御部は、工具ホルダーの搬入指示を受けたことに基づいて、上記第2工具ホルダーを上記第1工具ホルダーよりも優先的に上記工作機械に搬入するように上記搬送装置を制御する処理を実行する。
【0011】
本開示の他の例では、工具搬送システムの制御方法が提供される。上記工具搬送システムは、工作機械と、複数の工具ホルダーを収納するための工具収納部とを備え、上記複数の工具ホルダーの各々は、工具を保持可能に構成されている。上記工具搬送システムは、さらに、作業者が工具ホルダーに係る作業を行うための作業ステーションと、上記工作機械内、上記工具収納部内、および上記作業ステーション内にある工具ホルダーの内の指定された工具ホルダーを、上記工作機械、上記工具収納部、および上記作業ステーションの内の指定された搬送先に搬送するための搬送装置とを備える。上記制御方法は、工具ホルダーの回収指示を受けたことに基づいて、上記工作機械内にある工具ホルダーの中から、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーを特定するステップと、上記特定するステップで特定された工具ホルダーを上記工作機械内にある他の工具ホルダーよりも優先的に上記工作機械から搬出するように上記搬送装置を制御するステップと、上記制御するステップで上記工作機械から搬出された工具ホルダーを上記工具収納部または上記作業ステーションに搬送するように上記搬送装置を制御するステップとを備える。
【0012】
本開示の他の例では、工具搬送システムの制御プログラムが提供される。上記工具搬送システムは、工作機械と、複数の工具ホルダーを収納するための工具収納部とを備え、上記複数の工具ホルダーの各々は、工具を保持可能に構成されている。上記工具搬送システムは、さらに、作業者が工具ホルダーに係る作業を行うための作業ステーションと、上記工作機械内、上記工具収納部内、および上記作業ステーション内にある工具ホルダーの内の指定された工具ホルダーを、上記工作機械、上記工具収納部、および上記作業ステーションの内の指定された搬送先に搬送するための搬送装置とを備える。上記制御プログラムは、上記工具搬送システムに、工具ホルダーの回収指示を受けたことに基づいて、上記工作機械内にある工具ホルダーの中から、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーを特定するステップと、上記特定するステップで特定された工具ホルダーを上記工作機械内にある他の工具ホルダーよりも優先的に上記工作機械から搬出するように上記搬送装置を制御するステップと、上記制御するステップで上記工作機械から搬出された工具ホルダーを上記工具収納部または上記作業ステーションに搬送するように上記搬送装置を制御するステップとを実行させる。
【0013】
本発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解される本発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】工具搬送システムの駆動機構の構成例を示す図である。
【
図3】工作機械から工具ホルダーを搬出している様子を概略的に示す図である。
【
図4】工具搬送システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図5】収納情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図6】作業ステーションから工具収納部への工具ホルダーの搬入工程の流れを概略的に示す図である。
【
図7】工具収納部から工作機械への工具ホルダーの搬入工程の流れを概略的に示す図である。
【
図8】工作機械から作業ステーションへの工具ホルダーの搬出工程の流れを概略的に示す図である。
【
図9】管理装置のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【
図10】PLC(Programmable Logic Controller)の主要なハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図11】操作端末のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【
図12】工作機械への工具ホルダーの搬入処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】工作機械からの工具ホルダーの搬出処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0016】
<A.工具搬送システム10の外観>
図1を参照して、工具搬送システム10について説明する。
図1は、工具搬送システム10の外観を示す図である。
【0017】
図1に示されるように、工具搬送システム10は、作業ステーション200と、工具収納部250と、搬送装置300と、工作機械400とを含む。
【0018】
作業ステーション200は、作業者が工具ホルダーに係る作業を行うための場所である。工具ホルダーは、工具を保持可能に構成されるポットである。作業者は、たとえば、作業ステーション200において、工具ホルダーのセット作業、または工具ホルダーの回収作業を行う。作業ステーション200は、操作端末200Aを含む。操作端末200Aは、工具搬送システム10に対する各種の操作を受け付ける。
【0019】
工具収納部250には、複数の工具ホルダーが収納され得る。典型的には、工具収納部250は、レール331と平行に設けられる。
【0020】
搬送装置300は、作業ステーション200内、工具収納部250内、および工作機械400内にある工具ホルダーの内の指定された工具ホルダーを、作業ステーション200、工具収納部250、および工作機械400の内の指定された搬送先に搬送する。
【0021】
以下では、搬送装置300が作業ステーション200から工具収納部250若しくは工作機械400に工具ホルダーを運ぶ搬送態様、または、搬送装置300が工具収納部250から工作機械400に工具ホルダーを運ぶ搬送態様を「搬入」とも言う。
【0022】
また、搬送装置300が工具収納部250若しくは工作機械400から作業ステーション200に工具ホルダーを運ぶ搬送態様、または、搬送装置300が工作機械400から工具収納部250に工具ホルダーを運ぶ搬送態様を「搬出」とも言う。
【0023】
また、本明細書でいう「搬送装置」とは、工具ホルダーを搬送する機能を備えた種々の装置を包含する概念である。すなわち、搬送装置300は、工具ホルダーを介して工具を搬送する。以下では、搬送装置300の一例として、4~7軸駆動の多関節ロボットを例に挙げて説明を行うが、搬送装置300は、多関節ロボットに限定されない。一例として、搬送装置300は、2~3軸駆動の直交ロボット(オートローダ)であってもよい。あるいは、搬送装置300は、自走式のロボットであってもよい。
【0024】
搬送装置300は、アームロボット330と、レール331と、台車332とを含む。アームロボット330は、台車332の上に固定されている。台車332は、レール331上を移動可能に構成される。工具収納部250および工作機械400は、レール331を挟むように、かつ、レール331に沿って平行に配置される。搬送装置300は、作業ステーション200と工具収納部250との間で工具ホルダーを搬送するように構成されるとともに、工具収納部250と工作機械400との間で工具ホルダーを搬送するように構成される。
【0025】
工作機械400は、搬送装置300による工具ホルダーの搬送先の1つである。
図1には、工作機械400として、6台の工作機械400A~400Fが示されているが、工具搬送システム10に備えられる工作機械400の数は、1台以上であればよい。工作機械400は、予め設計された加工プログラムに従って、指定された工具を用いてワークを加工する。
【0026】
本明細書でいう「工作機械」とは、ワークを加工する機能を備えた種々の装置を包含する概念である。工作機械400は、横形のマシニングセンタであってもよいし、縦形のマシニングセンタであってもよい。あるいは、工作機械400は、旋盤であってもよいし、付加加工機であってもよいし、その他の切削機械や研削機械であってもよい。
【0027】
なお、工具搬送システム10は、パレット搬送システム(図示しない)をさらに備えても良い。パレット搬送システムは、予め定められた加工スケジュールに従って、ワークを載せたパレットを工作機械400に搬送するためのシステムである。
【0028】
<B.工具搬送システム10の駆動機構>
次に、
図2を参照して、工具搬送システム10における各種の駆動機構について説明する。
図2は、工具搬送システム10の駆動機構の構成例を示す図である。
【0029】
図2に示されるように、工具搬送システム10は、制御部50と、リモートI/O(Input/Output)ユニット71~73と、作業ステーション200と、搬送装置300と、工作機械400とを含む。
【0030】
本明細書でいう「制御部50」とは、工具搬送システム10を制御する装置を意味する。制御部50の装置構成は、任意である。制御部50は、単体の制御ユニットで構成されてもよいし、複数の制御ユニットで構成されてもよい。
図2の例では、制御部50は、管理装置100と、PLC150と、上述の操作端末200Aとで構成されている。また、制御部50は、CNC(Computer Numerical Control)401を含んでもよい。
【0031】
管理装置100は、工具搬送システム10を管理するメインコンピュータである。管理装置100は、1つのコンピュータで構成されてもよいし、複数のコンピュータで構成されてもよい。一例として、管理装置100は、工具ホルダーの搬送を担うコンピュータと、パレット搬送を担うコンピュータとで構成される。
【0032】
PLC150は、加工工程を自動化するための種々の産業用機器を制御する。操作端末200Aは、工具ホルダーの搬出入に関する各種の操作を受け付けるための端末である。
【0033】
管理装置100、PLC150、および操作端末200Aは、ネットワークNW1に接続される。管理装置100、PLC150、および操作端末200Aは、有線で通信接続されてもよいし、無線で通信接続されてもよい。ネットワークNW1には、EtherNET(登録商標)などが採用される。管理装置100および操作端末200Aは、ネットワークNW1を介して、PLC150に制御指令を送る。当該制御指令によって、搬送対象の工具ホルダー、当該工具ホルダーの搬送先、当該工具ホルダーの搬送開始/停止などが指定される。
【0034】
リモートI/Oユニット71~73およびPLC150は、ネットワークNW2に接続されている。ネットワークNW2には、データの到達時間が保証される、定周期通信を行うフィールドネットワークを採用することが好ましい。このような定周期通信を行うフィールドネットワークとして、EtherCAT(登録商標)、EtherNet/IP(登録商標)、CC-Link(登録商標)、またはCompoNet(登録商標)などが採用される。
【0035】
作業ステーション200は、1つ以上のモータドライバ234と、1つ以上のモータ235とを含む。
図2の例では、2つのモータドライバ234A,234Bと、2つのモータ235A,235Bとが示されている。
【0036】
作業ステーション200内または作業ステーション200周辺には、リモートI/Oユニット71が設置される。リモートI/Oユニット71は、作業ステーション200内の各種駆動ユニット(たとえば、モータドライバ234)と、PLC150との間のデータのやり取りを仲介する。一例として、モータドライバ234は、リモートI/Oユニット71を介してPLC150からの制御指令を一定周期ごとに受け、当該制御指令に従ってモータ235の駆動を制御する。
【0037】
モータ235Aは、たとえば、後述のマガジンM1(
図6参照)の駆動を制御する。モータ235Bは、たとえば、作業ステーション200内のATC(Automatic Train Control)の駆動を制御する。
【0038】
モータドライバ234は、たとえば、サーボモータ用のドライバであってもよいし、ステッピングモータ用のドライバであってもよい。モータ235は、サーボモータであってもよいし、ステッピングモータであってもよい。
【0039】
搬送装置300は、1つ以上のモータドライバ334と、1つ以上のモータ335とを含む。
図2の例では、2つのモータドライバ334A,334Bと、2つのモータ335A,335Bとが示されている。
【0040】
搬送装置300内または搬送装置300周辺には、リモートI/Oユニット72が設置される。リモートI/Oユニット72は、搬送装置300内の各種駆動ユニット(たとえば、モータドライバ334)と、PLC150との間のデータのやり取りを仲介する。一例として、モータドライバ334は、リモートI/Oユニット72を介してPLC150からの制御指令を一定周期ごとに受け、当該制御指令に従ってモータ335の駆動を制御する。
【0041】
モータ335Aは、たとえば、上述の台車332(
図1参照)の駆動を制御する。モータ335Bは、たとえば、アームロボット330(
図1参照)の駆動を制御する。モータ335Bは、アームロボット330の関節の数に応じて設けられる。
【0042】
モータドライバ334は、たとえば、サーボモータ用のドライバであってもよいし、ステッピングモータ用のドライバであってもよい。モータ335は、サーボモータであってもよいし、ステッピングモータであってもよい。
【0043】
工作機械400は、CNC401と、1つ以上のモータドライバ411と、1つ以上のモータ412とを含む。
図2の例では、2つのモータドライバ411A,411Bと、2つのモータ412A,412Bとが示されている。
【0044】
工作機械400内または工作機械400周辺には、リモートI/Oユニット72が設置される。リモートI/Oユニット72は、工作機械400内の各種駆動ユニット(たとえば、CNC401)と、PLC150との間のデータのやり取りを仲介する。モータドライバ411は、モータドライバ334と同様に、リモートI/Oユニット72を介してPLC150からの制御指令を一定周期ごとに受け、当該制御指令に従って、モータ412の駆動を制御する。
【0045】
モータ412Aは、たとえば、工具を装着可能に構成される主軸を当該主軸の軸方向に駆動する。モータ412Bは、たとえば、主軸の軸方向を中心とした回転方向に主軸を回転駆動する。
【0046】
モータドライバ411は、たとえば、サーボモータ用のドライバであってもよいし、ステッピングモータ用のドライバであってもよい。モータ412は、サーボモータであってもよいし、ステッピングモータであってもよい。
【0047】
<C.概要>
図3を参照して、工具ホルダーの回収処理の概略について説明する。
図3は、工作機械400から工具ホルダーを搬出している様子を概略的に示す図である。
【0048】
工作機械400は、使用可能状態の工具を保持している工具ホルダーだけでなく、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーや、工具を保持していない空の工具ホルダーなども収納している可能性がある。
【0049】
「使用不能状態の工具」とは、工作機械400において加工に用いることができない状態の異常な工具を意味する。一例として、使用不能状態の工具は、摩耗などにより寿命が尽きた工具と、損傷が生じている工具とを含む。工具の損傷の種類としては、たとえば、過大な力がかかったことによる工具の変形、工具の刃欠け、および工具の折損などが挙げられる。
【0050】
これに対して、「使用可能状態の工具」とは、使用不能態様の工具以外の工具であり、工作機械400において加工に用いることが可能な状態の正常な工具を意味する。
【0051】
図3の例では、使用不能状態の工具T1を保持している工具ホルダーH1と、工具を保持していない空の工具ホルダーH2と、使用可能状態の工具T3を保持している工具ホルダーH3とが工作機械400に収納されている様子が示されている。
【0052】
工作機械400に収納可能な工具ホルダーの数は、限られている。使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーが工具搬送システム10にあると、工具ホルダーの収納スペースが無駄に使用されることになる。そこで、工具搬送システム10は、工具ホルダーの回収指示を受けた時に、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーH1を他の工具ホルダーH2,H3よりも優先して工作機械400から回収する。
【0053】
より具体的には、工具搬送システム10の制御部50は、工具ホルダーの回収指示を受けたことに基づいて、工作機械400内にある工具ホルダーH1~H3の中から、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーH1を特定する。次に、制御部50は、当該特定した工具ホルダーH1を他の工具ホルダーH2,H3よりも優先的に工作機械400から搬出するように搬送装置300を制御する。これにより、搬送装置300は、工作機械400から工具ホルダーH1を搬出する。その後、制御部50は、工作機械400から搬出された工具ホルダーH1を作業ステーション200または工具収納部250に搬送するように搬送装置300を制御する。これにより、搬送装置300は、工具ホルダーH1を指定された搬送先に搬送する。
【0054】
以上の処理により、工具搬送システム10は、工作機械400内における工具ホルダーの収納スペースを確保することができる。また、工具の種類によっては、刃部分のみを交換できる工具がある。当該工具は、損傷している刃部分のみを交換すれば再利用可能になる。このような工具を保持している工具ホルダーが優先的に回収されることで、作業者は、工具の準備時間を短縮することができ、工具ホルダーをいち早く再利用できる。
【0055】
<D.工具搬送システム10の機能構成>
次に、
図4および
図5を参照して、工具ホルダーの搬送処理を実現するための機能構成について説明する。
図4は、工具搬送システム10の機能構成の一例を示す図である。
【0056】
図4に示されるように、工具搬送システム10は、機能構成として、監視部52と、搬出工具特定部54と、搬出制御部56と、搬入工具特定部60と、搬入制御部62とを含む。以下では、これらの構成について順に説明する。
【0057】
なお、各機能構成の配置は、任意である。
図4に示される機能構成の一部または全部は、上述の管理装置100(
図2参照)に実装されてもよいし、上述のPLC150(
図2参照)に実装されてもよいし、上述の操作端末200A(
図2参照)に実装されてもよいし、上述のCNC401(
図2参照)に実装されてもよい。一例として、監視部52は、CNC401に実装される。搬出工具特定部54と、搬出制御部56と、搬入工具特定部60と、搬入制御部62とは、たとえば、管理装置100または操作端末200Aに実装される。
【0058】
(D1.監視部52)
まず、
図5を参照して、
図4に示される監視部52の機能について説明する。
【0059】
監視部52は、工具搬送システム10に収納されている各工具ホルダーの状態と、各工具ホルダーに保持されている工具の状態とを監視する。一例として、監視部52は、工具搬送システム10内における各工具ホルダーの収納場所と、各工具ホルダーに保持されている工具の種類と、当該工具の状態と、当該工具の寿命が尽きるまでの残寿命とを、
図5に示される収納情報224において管理する。
図5は、収納情報224のデータ構造の一例を示す図である。
【0060】
収納情報224において、工具搬送システム10内における各工具ホルダーの収納場所と、当該収納場所に収納されている工具ホルダーの識別情報と、当該工具ホルダーに保持されている工具の識別情報と、当該工具の状態と、当該工具の残寿命とが対応付けられている。
【0061】
(a)収納情報224に規定される収納場所
収納情報224に規定される収納場所は、工具搬送システム10内の場所を一意に特定するための情報である。典型的には、収納情報224に規定される収納場所は、不変である。
【0062】
収納情報224に規定される収納場所は、たとえば、作業ステーション200内の位置情報、工具収納部250内の位置情報、搬送装置300内の位置情報と、および、工作機械400内の位置情報とのいずれかを示す。
【0063】
(b)収納情報224に規定される工具ホルダーの識別情報
収納情報224に規定される工具ホルダーの識別情報は、工具ホルダーを一意に特定するための情報である。当該識別情報は、工具ホルダーごとに予め割り当てられている。当該識別情報は、ID(Identification)などの工具ホルダー番号で示されてもよいし、工具ホルダー名で示されてもよい。
【0064】
監視部52は、工具搬送システム10内における各工具ホルダーの搬送を監視し、搬送装置300によって工具ホルダーが搬送される度に、収納場所と工具ホルダーとの対応付けを更新する。これにより、各工具ホルダーがいずれの場所にあるのかを特定することができる。
【0065】
(c)収納情報224に規定される工具の識別情報
収納情報224に規定される工具の識別情報は、工具を一意に特定するための情報である。当該識別情報は、工具ごとに予め割り当てられている。当該識別情報は、IDなどの工具番号で示されてもよいし、工具名で示されてもよい。
【0066】
監視部52は、工具搬送システム10内における各工具ホルダーの搬送を監視し、搬送装置300によって工具ホルダーが搬送される度に、当該工具ホルダーに保持されている工具と、収納場所との対応付けを更新する。
【0067】
(d)収納情報224に規定される工具状態
収納情報224に規定される工具状態は、たとえば、工具ホルダーに保持されている工具が使用可能状態であるか否か、または、工具ホルダーが工具を保持していなかを示す。
【0068】
図5の例では、使用可能状態の工具は、「正常」または「寿命警告」として示されている。「寿命警告」は、寿命が尽きそうであることを示す警告である。一例として、監視部52は、工具の残寿命が所定閾値を下回った場合に、収納情報224において工具の状態を「正常」から「寿命警告」に変更する。工具の残寿命の特定方法については後述する。
【0069】
また、
図5の例では、使用不能状態の工具は、「寿命切」、「空」、または「損傷」として示されている。一例として、監視部52は、工具の寿命がゼロになったことに基づいて、収納情報224において、工具の状態を「寿命警告」から「寿命切」に変更する。
【0070】
また、工具ホルダーが「空」である状態であるか否かは、たとえば、ユーザ入力により手動で設定され得る。一例として、当該ユーザ入力は、管理装置100、上述の操作端末200A、または、工作機械400に設けられている操作端末(図示しない)において受け付けられる。より具体的には、作業者は、工作機械400内の工具ホルダーから工具を手で引き抜いたときに、当該工具ホルダーをユーザ入力により指定する。このことに基づいて、監視部52は、収納情報224において、対応する工具ホルダーの状態を「空」に変更する。
【0071】
他の局面において、工具ホルダーが「空」であるか否かは、自動で設定され得る。一例として、各工具ホルダーには、工具が装着されているか否かを検出するためのセンサが設けられる。当該センサは、たとえば、圧力センサであってもよいし、距離センサであってもよいし、工具の脱着を検出することが可能なその他のセンサであってもよい。監視部52は、工具ホルダーから工具が取り外されたことを当該センサが検出したことに基づいて、収納情報224において、対応する工具ホルダーの状態を「空」に変更する。
【0072】
また、工具が「損傷」している状態であるか否かは、たとえば、工作機械400内に設けられている損傷センサによって検出される。
【0073】
一例として、当該損傷センサは、工作機械400内の主軸に設けられている圧力センサを含む。当該圧力センサは、ワークの加工中に主軸にかかる力を検出する。監視部52は、当該圧力センサの出力値を監視し、当該出力値が所定値を超えたことに基づいて、工具に過大な力がかかったと判断する。監視部52は、工具に過大な力がかかったと判断した場合、工具が曲がってしまった可能性があると判断し、対応する工具を保持している工具ホルダーの状態を「損傷」に変更する。
【0074】
他の例として、上記損傷センサは、工具外形の測定センサを含む。当該測定センサは、たとえば、距離センサ、タッチセンサ、または、工具の外形を検出することが可能なその他のセンサである。一例として、距離センサを用いて工具の損傷を検出する例について説明する。工作機械400は、主軸に装着されている工具を距離センサの前で回転させることで、当該距離センサから工具の外形を表わす時系列データを取得する。監視部52は、当該時系列データと予め定められた正常値との差分を算出し、当該差分結果の絶対値が所定値を超えている場合に、工具が刃欠けしていると判断する。監視部52は、工具が刃欠けしていると判断した場合、対応する工具を保持している工具ホルダーの状態を「損傷」に変更する。
【0075】
他の例として、上記損傷センサは、工作機械400内の工具を撮影するためのカメラを含む。監視部52は、当該カメラから得られた画像に対して所定の画像処理を実行することで、工具が損傷しているか否かを判断する。監視部52は、工具が損傷していると判断した場合、対応する工具を保持している工具ホルダーの状態を「損傷」に変更する。
【0076】
一例として、損傷している工具が画像に写っているか否かは、学習済みモデルを用いて認識される。学習済みモデルは、学習用データセットを用いた学習処理により予め生成されている。学習用データセットは、工具が写っている複数の学習用画像を含む。各学習用画像には、正常な工具が写っているか否かを示すラベル(あるいは、損傷の種別を示すラベル)が関連付けられている。学習済みモデルの内部パラメータは、このような学習用データセットを用いた学習処理により予め最適化されている。
【0077】
学習済みモデルを生成するための学習手法には、種々の機械学習アルゴリズムが採用され得る。一例として、当該機械学習アルゴリズムとして、ディープラーニング、コンボリューションニューラルネットワーク(CNN)、全層畳み込みニューラルネットワーク(FCN)、サポートベクターマシンなどが採用される。
【0078】
監視部52は、カメラから得られた入力画像上において矩形領域をずらしながら、当該矩形領域内の部分画像を学習済モデルに順次入力する。その結果、当該学習済モデルは、入力された部分画像に損傷している工具が写っている確率を出力する。監視部52は、当該確率が所定値を超えた部分画像に、損傷している工具が写っていると判断する。
【0079】
(e)収納情報224に規定される工具の残寿命
監視部52は、工作機械400の加工プログラムを監視し、各工具が加工に使用されているか否かを判断する。監視部52は、使用中の工具については、収納情報224に示される残寿命をカウントダウンする。工具の新品時における残寿命は、工具ごとに予め決められている。
【0080】
ここでいう「残寿命」とは、工具が使用不能になるまでの工具の残りの使用可能量を意味する。「量」との用語は、時間、距離、および回数を含む概念である。すなわち、「工具の残りの使用可能量」は、工具寿命が尽きるまでの工具の残りの使用可能時間と、工具寿命が尽きるまでの工具の残りの移動可能距離と、工具寿命が尽きるまでの工具の残りの使用可能回数とを含む概念である。
【0081】
工具の残寿命の監視方法の一例について説明する。工作機械400の加工プログラムは、Gコードで規定されており、主軸に装着する工具を指定するための工具交換命令や、主軸や工具を回転駆動/送り駆動するための駆動命令などを含む。監視部52は、加工プログラムに規定されている工具交換命令に基づいて、ワークの加工に用いられる工具の種別を特定しておく。次に、監視部52は、加工プログラムに規定されている駆動命令が実行されたことに基づいて、当該工具の残寿命のカウントダウンを開始する。続いて、監視部52は、加工プログラムに規定されている停止命令または最終行の命令が実行されたことに基づいて、当該工具の残寿命のカウントダウンを停止する。これにより、監視部52は、収納情報224において各工具の残寿命を監視する。
【0082】
(D2.搬出工具特定部54)
次に、上述の
図5を参照して、
図4に示される搬出工具特定部54の機能について説明する。
【0083】
搬出工具特定部54は、工具ホルダーの回収指示を受けたことに基づいて、工作機械400内に収納されている工具ホルダーの中から、回収対象の工具ホルダーを特定する。一例として、当該回収指示は、後述の入力デバイス108(
図9参照)や後述の入力デバイス208(
図11参照)などの各種入力デバイスで受け付けられる。
【0084】
回収対象の工具ホルダーは、予め決められた優先順位に従って決定される。一例として、回収の優先度が1番高い工具ホルダーは、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーである。回収の優先度が2番目に高い工具ホルダーは、工具を保持していない空の工具ホルダーである。回収の優先度が3番目に高い工具ホルダーは、使用可能状態の工具を保持している工具ホルダーである。
【0085】
より具体的には、搬出工具特定部54は、上述の収納情報224を参照して、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーを回収対象として特定する。当該工具ホルダーが複数ある場合には、搬出工具特定部54は、予め定められたルールに従って回収対象の工具ホルダーを決定する。一例として、搬出工具特定部54は、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーの中からランダムに回収対象を決定する。他の例として、搬出工具特定部54は、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーの中から、搬送装置300からの距離が最短である工具ホルダーを回収対象として決定する。
【0086】
使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーが工作機械400にない場合には、搬出工具特定部54は、上述の収納情報224を参照して、工具を保持していない空の工具ホルダーを回収対象として特定する。空の工具ホルダーが複数ある場合には、搬出工具特定部54は、予め定められたルールに従って回収対象の工具ホルダーを決定する。一例として、搬出工具特定部54は、空の工具ホルダーの中からランダムに回収対象を決定する。他の例として、搬出工具特定部54は、空の工具ホルダーの中から、搬送装置300からの距離が最短である工具ホルダーを回収対象として決定する。
【0087】
使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーと、空の工具ホルダーとが工作機械400にない場合には、搬出工具特定部54は、上述の収納情報224を参照して、使用可能状態の工具を保持している工具ホルダーを回収対象として特定する。当該工具ホルダーが複数ある場合には、搬出工具特定部54は、予め定められたルールに従って回収対象の工具ホルダーを決定する。
【0088】
この場合、搬出工具特定部54は、工具の使用予定の有無に基づいて、回収対象の工具ホルダーを決定する。一例として、搬出工具特定部54は、工作機械400で使用予定のない工具を保持している工具ホルダーを、工作機械400で使用予定のある工具を保持している工具ホルダーよりも優先して回収対象として決定する。
【0089】
使用予定の有無は、たとえば、工作機械400の加工プログラムに基づいて判断される。加工プログラムには、使用する工具を呼び出すための命令コードが規定されている。当該命令コードは、たとえば、主軸に装着する工具を指定するためのTコードである。搬出工具特定部54は、各加工プログラムから当該Tコードを検索することにより、各ワークの加工で使用される工具を特定する。次に、搬出工具特定部54は、当該特定した工具を保持している工具ホルダーを使用予定のある工具ホルダーとして特定し、当該工具以外を保持している工具ホルダーを使用予定のなる工具ホルダーとして特定する。
【0090】
好ましくは、使用予定のある工具を保持している工具ホルダーが複数ある場合には、搬出工具特定部54は、使用予定時刻が最も遅い工具ホルダーを回収対象とする。使用予定時刻は、たとえば、加工スケジュールに基づいて特定され得る。加工スケジュールは、ユーザにより入力されてもよいし、実行対象の加工プログラムなどから自動で生成されてもよい。一例として、加工スケジュールは、工作機械400の各々におけるワークの加工予定と、各加工工程で使用される工具の順番とを規定している。
【0091】
なお、上述では、使用予定の有無に基づいて、回収対象の工具ホルダーが決定される例について説明を行ったが、回収対象の工具ホルダーは、工具の残寿命に基づいて決定されてもよい。この場合、搬出工具特定部54は、残寿命がより長い工具を保持している工具ホルダーを優先的に回収対象とする。これにより、残寿命が短い工具は、工作機械400に残り、優先的に使用されることになる。その結果、残寿命が短い工具が工作機械400内に多数あるような事態を避けることが可能になる。
【0092】
(D3.搬出制御部56)
次に、上述の
図5を参照して、
図4に示される搬出制御部56の機能について説明する。
【0093】
搬出制御部56は、搬出工具特定部54によって回収対象として特定された工具ホルダーを工作機械400から搬出するように搬送装置300を制御する。これにより、搬送装置300は、回収対象の工具ホルダーを保持している工作機械400の前に移動する。その後、搬送装置300は、工作機械400に備えられる後述のATC438(
図7参照)を介して、回収対象の工具ホルダーを工作機械400から受け取る。
【0094】
その後、搬出制御部56は、工作機械400から搬出された工具ホルダーが直接的または間接的に作業ステーション200に搬送されるように搬送装置300を制御する。すなわち、回収対象の工具ホルダーは、工作機械400から作業ステーション200に直接的に搬送されてもうよいし、工具収納部250に一時的に収納された後に作業ステーション200に間接的に搬送されてもよい。
【0095】
(D4.搬入工具特定部60)
次に、上述の
図5を参照して、
図4に示される搬入工具特定部60の機能について説明する。
【0096】
搬入工具特定部60は、工具ホルダーの搬入指示を受けたことに基づいて、作業ステーション200または工具収納部250から工作機械400に搬入する対象の工具ホルダーを特定する。工具ホルダーの搬入指示は、たとえば、搬入先の工作機械400の指定と、搬入対象の工具種別の指定とを含む。
【0097】
工具ホルダーの搬入指示は、後述の入力デバイス108(
図9参照)や後述の入力デバイス208(
図11参照)などの各種入力デバイスで受け付けられる。あるいは、搬入指示は、工作機械400の加工プログラムにおいて特定のコードが実行されることにより発せられてもよい。
【0098】
搬入対象の工具が同種で複数ある場合には、搬入工具特定部60は、工具の残寿命に基づいて、搬入対象の工具ホルダーを決定する。一例として、搬入工具特定部60は、残寿命がより短い工具を保持している工具ホルダーを搬入対象とする。工具の残寿命は、たとえば、収納情報224に基づいて特定され得る。
【0099】
一例として、作業ステーション200または工具収納部250は、種別「A」の第1工具を保持している第1工具ホルダーと、種別「A」の第2工具を保持している第2工具ホルダーとを収納しているとする。また、第2工具の残寿命は、第1工具の残寿命よりも短いとする。この場合、搬入工具特定部60は、種別「A」の工具の搬入指示を受けたことに基づいて、第1工具ホルダーではなく、第2工具ホルダーを搬入対象として決定する。これにより、残寿命が短い工具を保持している工具ホルダーが優先的に工作機械400に搬入される。結果として、残寿命が短い工具が優先的に加工に使用され、残寿命が短い工具が工具搬送システム10内に多数あるような事態を避けることができる。
【0100】
(D5.搬入制御部62)
次に、上述の
図5を参照して、
図4に示される搬入制御部62の機能について説明する。
【0101】
搬入制御部62は、搬入工具特定部60によって搬入対象として特定された工具ホルダーを作業ステーション200または工具収納部250から工作機械400に搬入するように搬送装置300を制御する。これにより、搬送装置300は、搬入対象の工具ホルダーの格納場所の前に移動する。その後、搬送装置300は、当該格納場所にある工具ホルダーを把持し、指定された工作機械400の前に移動する。次に、搬送装置300は、後述のATC438(
図7参照)を介して、搬入対象の工具ホルダーを工作機械400に搬入する。
【0102】
<E.工具収納部250への工具搬入工程>
次に、
図6を参照して、作業ステーション200から工具収納部250への工具ホルダーの搬入工程について説明する。
図6は、作業ステーション200から工具収納部250への工具ホルダーの搬入工程の流れを概略的に示す図である。
【0103】
ステップS1において、作業者は、搬入対象の工具ホルダーH1をマガジンM1にセットする。工具ホルダーH1をセットする位置の付近には、バーコードまたはQRコード(登録商標)の読み取り装置(図示しない)が設けられており、当該読み取り装置は、工具ホルダーH1に付されているバーコードまたはQRコードを読み取る。これにより、搬入対象の工具ホルダーH1の識別情報が読み取られる。作業者は、工具ホルダーH1のセットが完了すると、操作端末200Aに対して完了操作を行う。
【0104】
次に、ステップS2において、制御部50は、モータ235A(
図2参照)を制御し、作業ステーション200内のマガジンM1を駆動する。これにより、制御部50は、搬入対象の工具ホルダーH1を所定の工具交換位置に移動する。当該工具交換位置の近傍には、ATC238が設けられている。ATC238は、当該工具交換位置にある工具ホルダーH1をマガジンM1から取り外し、半回転する。
【0105】
次に、ステップS3において、アームロボット330は、ATC238から工具ホルダーH1を取り外し、当該工具ホルダーH1を台車332上の仮置き場336に置く。搬入対象の工具ホルダーが他にある場合には、仮置き場336の収納最大数を超えない範囲で、ステップS1~S3の工程が繰り返される。
【0106】
次に、ステップS4において、制御部50は、モータ335Aを制御し、台車332を駆動する。これにより、制御部50は、指示された工具搬入位置に台車332を移動する。当該工具搬入位置は、たとえば、上述の収納情報224(
図5参照)に基づいて決定される。
【0107】
制御部50は、収納情報224に規定される空の収納場所を参照して、工具ホルダーH1の収納先を決定する。空の収納場所が複数ある場合には、制御部50は、複数の空の収納場所の中からランダムに選択された1つの収納場所を収納先として決定してもよいし、複数の空の収納場所の中から選択された搬送装置300により近い1つの収納場所を収納先として決定してもよい。
【0108】
次に、ステップS5において、アームロボット330は、搬入対象の工具ホルダーH1を仮置き場336から取り外し、当該工具ホルダーH1を決定した収納先に収納する。その後、制御部50は、対応する収納場所に工具ホルダーH1の識別情報を対応付けて収納情報224を更新する。
【0109】
搬入対象の工具ホルダーが他に仮置き場336に残っている場合には、制御部50は、仮置き場336上の工具ホルダーがなくなるまでステップS4,S5の工程を繰り返す。
【0110】
<F.工作機械400への工具搬入工程>
次に、
図7を参照して、
図6に引き続く工具ホルダーの搬入工程について説明する。
図7は、工具収納部250から工作機械400への工具ホルダーの搬入工程の流れを概略的に示す図である。
【0111】
あるタイミングにおいて、制御部50は、工作機械400への工具ホルダーの搬入指示を受け付けたとする。搬入対象の工具および搬送先の工作機械400は、たとえば、操作端末200Aに対して作業者によって指定される。作業者によって指定された工具を保持している工具ホルダーが工具収納部250内に複数ある場合には、制御部50は、搬入工具特定部60として機能し、搬入対象の工具ホルダーを特定する。これにより、工具ホルダーH2が搬入対象の工具として特定されたとする。この場合、制御部50は、上述の収納情報224(
図5参照)から工具ホルダーH2の収納場所を特定する。その後、制御部50は、モータ335A(
図2参照)を制御することで台車332を駆動し、工具ホルダーH2の収納場所の前に台車332を移動する。
【0112】
次に、ステップS11において、アームロボット330は、搬送対象の工具ホルダーH2を工具収納部250から取り出し、台車332上の仮置き場336に工具ホルダーH2を置く。
【0113】
次に、ステップS12において、制御部50は、モータ335Aを制御することで、搬送先の工作機械400の位置に台車332を駆動する。
【0114】
次に、ステップS13において、アームロボット330は、搬送先の工作機械400に備えられるATC438に工具ホルダーH2を渡す。その後、ATC438は、アームロボット330から受けた工具ホルダーH2を工作機械400内のATC438に装着する。その後、ATC438は、工作機械400内のマガジンに工具ホルダーH2をセットする。これにより、工具ホルダーH2が工作機械400で使用可能な状態になる。
【0115】
<G.作業ステーション200への工具の搬出工程>
次に、
図8を参照して、工具ホルダーの搬出工程について説明する。
図8は、工作機械400から作業ステーション200への工具ホルダーの搬出工程の流れを概略的に示す図である。
【0116】
あるタイミングにおいて、制御部50は、工具ホルダーの回収指示を受け付けたとする。このことに基づいて、制御部50は、上述の搬出工具特定部54として機能し、工作機械400に収納されている工具ホルダーの中から、回収対象の工具ホルダーを特定する。その結果、工具ホルダーH3が回収対象として特定されたとする。この場合、制御部50は、上述の収納情報224(
図5参照)に基づいて、工具ホルダーH3の収納先を特定する。その後、制御部50は、上述のモータ335A(
図2参照)を制御することで台車332を駆動し、工具ホルダーH3を収納している工作機械400の前に台車332を移動する。次に、アームロボット330は、工作機械400から工具ホルダーH3を取り出し、当該工具ホルダーH3を台車332上の仮置き場336に置く。また、制御部50は、収納情報224から工具ホルダーH3の識別情報を削除し、工具ホルダーH3の収納元を空の状態に書き換える。
【0117】
次に、ステップS21において、制御部50は、上述のモータ335Aを制御することで台車332を駆動し、作業ステーション200の前に台車332を移動する。
【0118】
次に、ステップS22において、アームロボット330は、搬出対象の工具ホルダーH3を仮置き場336から取り外し、作業ステーション200に備えられる上述のATC238(
図6参照)に工具ホルダーH3を装着する。その後、ATC238は、作業ステーション200のマガジンM1に工具ホルダーH3を装着する。
【0119】
次に、ステップS23において、制御部50は、上述のモータ235Aを制御することでマガジンM1を駆動し、搬出対象の工具ホルダーH3を出口に移動する。その後、作業者は、当該出口から搬出対象の工具ホルダーH3を取り出す。
【0120】
なお、
図8の例では、工作機械400から回収された工具ホルダーが作業ステーション200に搬出される例について説明を行ったが、当該工具ホルダーは、工具収納部250に搬出されてもよい。
【0121】
<H.管理装置100のハードウェア構成>
次に、
図9を参照して、
図2に示される管理装置100のハードウェア構成について説明する。
図9は、管理装置100のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【0122】
管理装置100は、制御回路101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、通信インターフェイス104と、表示インターフェイス105と、入力インターフェイス107と、記憶装置120とを含む。これらのコンポーネントは、バス110に接続される。
【0123】
制御回路101は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1つのGPU(Graphics Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。
【0124】
制御回路101は、制御プログラム122やオペレーティングシステムなどの各種プログラムを実行することで管理装置100の動作を制御する。制御回路101は、制御プログラム122の実行命令を受け付けたことに基づいて、記憶装置120またはROM102からRAM103に制御プログラム122を読み出す。RAM103は、ワーキングメモリとして機能し、制御プログラム122の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0125】
通信インターフェイス104には、LAN(Local Area Network)やアンテナなどが接続される。管理装置100は、通信インターフェイス104を介してネットワークNW1に接続される。これにより、管理装置100は、ネットワークNW1に接続される外部機器とデータをやり取りする。当該外部機器は、たとえば、PLC150やサーバー(図示しない)などを含む。
【0126】
表示インターフェイス105には、ディスプレイ106が接続される。表示インターフェイス105は、制御回路101などからの指令に従って、ディスプレイ106に対して、画像を表示するための画像信号を送出する。ディスプレイ106は、たとえば、工具ホルダーの回収指示を受け付けるための操作画面や、搬入対象の工具ホルダーを指定するための選択画面などを表示する。ディスプレイ106は、たとえば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、またはその他の表示機器である。なお、ディスプレイ106は、管理装置100と一体的に構成されてもよいし、管理装置100とは別に構成されてもよい。
【0127】
入力インターフェイス107には、入力デバイス108が接続される。入力デバイス108は、たとえば、マウス、キーボード、タッチパネル、またはユーザの操作を受け付けることが可能なその他の装置である。なお、入力デバイス108は、管理装置100と一体的に構成されてもよいし、管理装置100とは別に構成されてもよい。
【0128】
記憶装置120は、たとえば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体である。記憶装置120は、制御プログラム122などを格納する。制御プログラム122の格納場所は、記憶装置120に限定されず、制御回路101の記憶領域(たとえば、キャッシュメモリなど)、ROM102、RAM103、他の装置(たとえば、サーバー、PLC150、または操作端末200A)などに格納されていてもよい。
【0129】
制御プログラム122は、上記
図4に示される機能構成の一部または全部を実現するためのプログラムである。制御プログラム122は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、制御プログラム122による搬送制御処理は、任意のプログラムと協働して実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う制御プログラム122の趣旨を逸脱するものではない。さらに、制御プログラム122によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、少なくとも1つのサーバーが制御プログラム122の処理の一部を実行する所謂クラウドサービスのような形態で管理装置100が構成されてもよい。
【0130】
<I.PLC150のハードウェア構成>
図10を参照して、
図2に示されるPLC150のハードウェア構成の一例について説明する。
図10は、PLC150の主要なハードウェア構成を示すブロック図である。
【0131】
PLC150は、制御回路151と、ROM(Read Only Memory)152と、RAM(Random Access Memory)153と、通信インターフェイス154,155と、記憶装置170とを含む。これらのコンポーネントは、バス160に接続される。
【0132】
制御回路151は、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのMPU(Micro Processing Unit)、少なくとも1つのASIC、少なくとも1つのFPGAまたはそれらの組み合わせなどによって構成される。
【0133】
制御回路151は、制御プログラム172など各種プログラムを実行することで搬送装置300や工作機械400の動作を制御する。制御回路151は、制御プログラム172の実行命令を受け付けたことに基づいて、記憶装置170からROM152に制御プログラム172を読み出す。RAM153は、ワーキングメモリとして機能し、制御プログラム172の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0134】
通信インターフェイス154には、LANやアンテナなどが接続される。PLC150は、通信インターフェイス154を介してネットワークNW1に接続される。これにより、PLC150は、ネットワークNW1に接続される外部機器とデータをやり取りする。当該外部機器は、たとえば、管理装置100やサーバー(図示しない)などを含む。
【0135】
通信インターフェイス155は、フィールドネットワークであるネットワークNW2に接続するためのインターフェイスである。PLC150は、通信インターフェイス155を介してネットワークNW2に接続される外部機器とデータをやり取りする。当該外部機器は、たとえば、上述のリモートI/Oユニット71~73などを含む。
【0136】
記憶装置170は、たとえば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体である。記憶装置170は、制御プログラム172などを格納する。制御プログラム172の格納場所は、記憶装置170に限定されず、制御回路151の記憶領域(たとえば、キャッシュ領域など)、ROM152、RAM153、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
【0137】
制御プログラム172は、上記
図4に示される機能構成の一部または全部を実現するためのプログラムである。制御プログラム172は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、本実施の形態に従う制御処理は、任意のプログラムと協働して実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う制御プログラム172の趣旨を逸脱するものではない。さらに、制御プログラム172によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、少なくとも1つのサーバーが制御プログラム172の処理の一部を実行する所謂クラウドサービスのような形態でPLC150が構成されてもよい。
【0138】
<J.操作端末200Aのハードウェア構成>
図11を参照して、
図1に示される操作端末200Aのハードウェア構成について説明する。
図11は、操作端末200Aのハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【0139】
操作端末200Aは、制御回路201と、ROM202と、RAM203と、通信インターフェイス204と、表示インターフェイス205と、入力インターフェイス207と、記憶装置220とを含む。これらのコンポーネントは、バス210に接続される。
【0140】
制御回路201は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのGPU、少なくとも1つのASIC、少なくとも1つのFPGA、またはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。
【0141】
制御回路201は、制御プログラム222やオペレーティングシステムなどの各種プログラムを実行することで操作端末200Aの動作を制御する。制御回路201は、制御プログラム222の実行命令を受け付けたことに基づいて、記憶装置220またはROM202からRAM203に制御プログラム222を読み出す。RAM203は、ワーキングメモリとして機能し、制御プログラム222の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0142】
通信インターフェイス204には、LANやアンテナなどが接続される。操作端末200Aは、通信インターフェイス204を介してネットワークNW1に接続される。これにより、操作端末200Aは、ネットワークNW1に接続される外部機器とデータをやり取りする。当該外部機器は、たとえば、PLC150やサーバー(図示しない)などを含む。
【0143】
表示インターフェイス205には、ディスプレイ206が接続される。表示インターフェイス205は、制御回路201などからの指令に従って、ディスプレイ206に対して、画像を表示するための画像信号を送出する。ディスプレイ206は、たとえば、工具ホルダーの回収指示を受け付けるための操作画面、搬入対象の工具ホルダーを指定するための工具選択画面、または、搬入先の工作機械400を指定するための工作機械選択画面などを表示する。ディスプレイ206は、たとえば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、またはその他の表示機器である。なお、ディスプレイ206は、操作端末200Aと一体的に構成されてもよいし、操作端末200Aとは別に構成されてもよい。
【0144】
入力インターフェイス207には、入力デバイス208が接続される。入力デバイス208は、たとえば、マウス、キーボード、タッチパネル、またはユーザの操作を受け付けることが可能なその他の装置である。なお、入力デバイス208は、操作端末200Aと一体的に構成されてもよいし、操作端末200Aとは別に構成されてもよい。
【0145】
記憶装置220は、たとえば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体である。記憶装置220は、制御プログラム222および収納情報224などを格納する。収納情報224は、管理装置100またはPLC150に格納されてもよい。これらの格納場所は、記憶装置220に限定されず、制御回路201の記憶領域(たとえば、キャッシュメモリなど)、ROM202、RAM203、管理装置100、PLC150、または外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
【0146】
制御プログラム222は、上記
図4に示される機能構成の一部または全部を実現するためのプログラムである。制御プログラム222は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、制御プログラム222による制御処理は、任意のプログラムと協働して実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う制御プログラム222の趣旨を逸脱するものではない。さらに、制御プログラム222によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、少なくとも1つのサーバーが制御プログラム222の処理の一部を実行する所謂クラウドサービスのような形態で操作端末200Aが構成されてもよい。
【0147】
<K.工具ホルダーの搬入フロー>
次に、
図12を参照して、工具ホルダーの搬入処理に係る制御フローについて説明する。
図12は、工作機械400への工具ホルダーの搬入処理の流れを示すフローチャートである。
【0148】
図12に示される処理は、制御部50が制御プログラムを実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
【0149】
ステップS50において、制御部50は、工作機械400への工具ホルダーの搬入指示を受け付けたか否かを判断する。当該搬入指示は、たとえば、搬入先の工作機械400の指定と、搬入対象の工具種別の指定とを含む。制御部50は、工作機械400への工具ホルダーの搬入指示を受け付けたと判断した場合(ステップS50においてYES)、制御をステップS52に切り替える。そうでない場合には(ステップS50においてNO)、制御部50は、ステップS50の処理を再び実行する。
【0150】
ステップS52において、制御部50は、上述の搬入工具特定部60(
図4参照)として機能し、搬入対象として指定された工具が複数ある場合には、各工具の残寿命に基づいて、搬入対象の工具ホルダーを特定する。一例として、制御部50は、残寿命が最短の工具を保持している工具ホルダーを搬入対象とする。工具の残寿命は、上述の収納情報224に基づいて特定され得る。
【0151】
ステップS54において、制御部50は、上述の搬入制御部62(
図4参照)として機能し、ステップS52で特定した搬入対象の工具ホルダーを作業ステーション200または工具収納部250から搬送先の工作機械400に搬入するように搬送装置300を制御する。
【0152】
<L.工具ホルダーの搬入フロー>
次に、
図13を参照して、工具ホルダーの搬出処理に係る制御フローについて説明する。
図13は、工作機械400からの工具ホルダーの搬出処理の流れを示すフローチャートである。
【0153】
図13に示される処理は、制御部50が制御プログラムを実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
【0154】
ステップS110において、制御部50は、工具ホルダーの回収指示を受け付けたか否かを判断する。一例として、当該回収指示は、管理装置100、操作端末200A、または工作機械400に設けられている各種入力デバイスによって受け付けられる。制御部50は、工具ホルダーの回収指示を受け付けたと判断した場合(ステップS110においてYES)、制御をステップS120に切り替える。そうでない場合には(ステップS110においてNO)、制御部50は、ステップS110の処理を再び実行する。
【0155】
ステップS120において、制御部50は、上述の搬出工具特定部54(
図4参照)として機能し、上述の収納情報224を参照して、工作機械400内にある工具ホルダーの中に、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーがあるか否かを判断する。制御部50は、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーがあると判断した場合(ステップS120においてYES)、制御をステップS122に切り替える。そうでない場合には(ステップS120においてNO)、制御部50は、制御をステップS130に切り替える。
【0156】
ステップS122において、制御部50は、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーを回収対象として決定する。
【0157】
ステップS130において、制御部50は、上述の搬出工具特定部54として機能し、上述の収納情報224を参照して、工作機械400内にある工具ホルダーの中に、工具を保持していない空の工具ホルダーがあるか否かを判断する。制御部50は、空の工具ホルダーがあると判断した場合(ステップS130においてYES)、制御をステップS132に切り替える。そうでない場合には(ステップS130においてNO)、制御部50は、制御をステップS140に切り替える。
【0158】
ステップS132において、制御部50は、空の工具ホルダーを回収対象として決定する。
【0159】
ステップS140において、制御部50は、上述の搬出工具特定部54として機能し、工作機械400の各々の加工プログラムに基づいて、工作機械400内にある工具ホルダーの中に、使用予定のない工具を保持している工具ホルダーがあるか否かを判断する。制御部50は、使用予定のない工具を保持している工具ホルダーがあると判断した場合(ステップS140においてYES)、制御をステップS142に切り替える。そうでない場合には(ステップS140においてNO)、制御部50は、制御をステップS150に切り替える。
【0160】
ステップS142において、制御部50は、使用予定のない工具を保持している工具ホルダーを回収対象として決定する。
【0161】
ステップS150において、制御部50は、上述の搬出工具特定部54として機能し、使用予定時刻が最も後の工具を保持している工具ホルダーを回収対象として決定する。
【0162】
ステップS152において、制御部50は、上述の搬出制御部56として機能し、回収対象として決定された工具ホルダーを工作機械400から搬出するように搬送装置300を制御する。その後、制御部50は、工作機械400から搬出された工具ホルダーを作業ステーション200または工具収納部250に搬送されるように搬送装置300を制御する。
【0163】
なお、上述では、回収対象の工具ホルダーを1つだけ決定する例について説明を行ったが、回収対象のとして決定される工具ホルダーは、複数あってもよい。この場合、回収対象として決定された工具ホルダーを除いて、ステップS120、S122、S130、S132、S140、S142、S150が再度実行される。
【0164】
<M.まとめ>
以上のようにして、工具搬送システム10は、工作機械400内にある工具ホルダーの中から、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーを回収対象として特定する。これにより、使用不能状態の工具を保持している工具ホルダーが他の工具ホルダーよりも優先して回収される。
【0165】
これにより、工具搬送システム10は、工作機械400内における工具ホルダーの収納スペースを確保することができる。また、工具の種類によっては、刃部分のみを交換できる工具がある。当該工具は、損傷している刃部分のみを交換すれば再利用可能になる。このような工具を保持している工具ホルダーが優先的に回収されることで、作業者は、工具の準備時間を短縮することができ、工具ホルダーをいち早く再利用できる。
【0166】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0167】
10 工具搬送システム、50 制御部、52 監視部、54 搬出工具特定部、56 搬出制御部、60 搬入工具特定部、62 搬入制御部、71,72,73 リモートI/Oユニット、100 管理装置、101,151,201 制御回路、102,152,202 ROM、103,153,203 RAM、104,154,155,204 通信インターフェイス、105,205 表示インターフェイス、106,206 ディスプレイ、107,207 入力インターフェイス、108,208 入力デバイス、110,160,210 バス、120,170,220 記憶装置、122,172,222 制御プログラム、200 作業ステーション、200A 操作端末、224 収納情報、234,234A,234B,334,334A,334B,411,411A,411B モータドライバ、235,235A,235B,335,335A,335B,412,412A,412B モータ、238,438 ATC、250 工具収納部、300 搬送装置、330 アームロボット、331 レール、332 台車、336 仮置き場、400,400A~400F 工作機械。